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JP2012507272A - 新規な方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞培養により生産されるウイルス又はそのウイルス抗原に付随する宿主細胞核酸を分解するための方法であって、i)エンドヌクレアーゼ、及びii)DNAアルキル化剤から選択される化合物を用いる少なくとも2つの核酸分解ステップを含む方法に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウイルス又はウイルス抗原を生産する細胞培養に基づく方法、この方法により取得可能なウイルス又はウイルス抗原、及びそのようなウイルス又はウイルス抗原を含有するワクチンに関する。特に、本発明は、宿主細胞に由来する混入残留核酸の量及び/又はサイズを低減するための方法を提供する。本発明によると、宿主細胞核酸は、Benzonase(商標)等のエンドヌクレアーゼにより、及び/又はβ−プロピオラクトン(BPL)等のDNAアルキル化剤により、又はそれらの組合せにより実施される少なくとも2つの個別の分解ステップを実施することにより分解される。
ウイルスワクチンを製造するための卵に基づく従来の生産系の代替として、細胞培養に基づく技術を開発することは、卵に基づく従来の系に伴う欠点及び制約を克服するための最も迅速で最も有望な解決策である可能性が高い。ウイルスワクチンの商業生産では、典型的には、抗原供給源として大量のウイルスが必要とされる。しかしながら、卵に基づくプロセスは、卵の生物学的品質の変動の影響を受け易く、大量の好適な卵が入手可能でないことによる物流が問題となるため、柔軟性を欠いている。
細胞培養系は、ワクチン調製の、より単純で柔軟性があり一貫した好適な代替法と考えられており、ワクチン生産能力のスケールアップの可能性を向上させ、したがって必要に応じて、例えば自然の大流行脅威又はテロ攻撃に対応して、大量のウイルス調達を可能にする。
商業的量のウイルスは、種ウイルスを細胞培養系で複製することにより達成することができる。ウイルス複製、又はウイルス抗原の調製に好適な細胞培養系には、哺乳動物、トリ、又は昆虫細胞が含まれる。
しかしながら、細胞培養をワクチン生産に使用するには、ワクチン接種者が、混入完全細胞、細胞成分、及び/又は残留細胞DNAに曝されるというリスクが伴うことが、当技術分野で知られている。
細胞培養は、天然に存在する状態から改変されていない場合、複製能力に限界があり、したがって商業的ワクチンに必要な物質量を生産するには非実用的及び非効率的である。したがって、製造目的の場合、細胞を改変して「連続」又は「不死化」細胞系にして、それらが分裂することができる回数を増加させることが好ましい。これら改変の多くでは、細胞の癌化に関与する機序に類似した機序が使用される。そのため、したがって、宿主細胞DNA等の、細胞培養プロセスに由来するあらゆる残留物質を、これらの系で製造されるワクチンの最終製剤から除去して、最終産物からあらゆる潜在的癌化物質を除去することが重要である。
したがって、ワクチン用の細胞培養に基づくウイルス又はウイルス抗原は、それらの抗原性及び免疫原性の特性を保ちつつ、それらの細胞の環境から適切に及び注意深く単離されなければならない。
規制当局により課されている、より厳密な要求を考慮すると、できるだけ低い残留DNA含量のウイルス又はウイルス抗原を提供するだけでなく、生産プロセスの各ステップにおいて、細胞DNAのサイズ、分布、及び量を含む特性をモニターすることを可能にする方法を提供する必要性も依然として存在する。特に、10ng未満の細胞残留DNAを含有し、該細胞残留DNAが300塩基対を超過すべきでないウイルス又はウイルス抗原を含むワクチン用量を開発する必要性が存在する。
欧州特許第0870508号明細書では、DNA分解剤としてDNA消化酵素の使用が開示されている。
国際公開第2007/052163号パンフレットでは、DNA分解剤としてβ−プロピオラクトン(BPL)の使用が開示されている。
欧州特許第0870508号明細書 国際公開第2007/052163号パンフレット
本発明による方法は、高ウイルス収率、及びウイルス又はウイルス抗原免疫原性の保存を達成しつつ、高DNA断片化及び低含有量の残留DNAを両方とも達成することを可能にする。
したがって、本発明の第1の態様では、細胞培養により生産されるウイルス又はそのウイルス抗原に付随する宿主細胞核酸を分解するための方法であって、i)エンドヌクレアーゼ、及びii)DNAアルキル化剤から選択される化合物を用いる少なくとも2つの核酸分解ステップを含む方法が提供される。
本発明の第2の態様では、ウイルス又はそのウイルス抗原を細胞培養で生産するための方法であって、
(a)細胞培養培地中で培養された細胞集団を準備するステップと、
(b)該細胞集団にウイルスを接種するステップと、
(c)該ウイルスの複製が可能になるように該細胞集団を培養するステップと、
(d)生産されたウイルスを収集して、それによりウイルス回収物を準備するステップと、
(e)該ウイルスを単離するステップとを含み、
i)エンドヌクレアーゼ、及びii)DNAアルキル化剤から選択される化合物を用いる少なくとも2つの宿主細胞核酸分解ステップを含む方法が提供される。
第3の態様では、本発明の方法により取得可能なウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物が提供される。
第4の態様では、Threshold(商標)アッセイで測定した際に10ng未満、5ng未満、1ng未満、100pg未満、又は10pg未満の残留宿主細胞DNA含量を有する、細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物が提供される。
第5の態様では、サザンブロットで測定した際に、サイズが500塩基対未満、300塩基対未満、200塩基対未満、及び100塩基対未満である残留宿主細胞DNA含量を有する、細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物が提供される。
更なる態様では、好適な医薬担体と混合された本発明のウイルス又はそのウイルス抗原を含む免疫原性組成物が提供される。
また更なる態様では、本発明の方法を含む、ウイルスを生産するための細胞培養に基づく方法の実施中に、残留宿主細胞DNAをモニターし、残留細胞DNAの量及びサイズを両方とも測定することを可能にするための方法が提供される。
また更なる態様では、少なくとも以下のステップを含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法が提供される:
(a)スクロース勾配超遠心分離ステップであり、該スクロース勾配が、ウイルスを分割するように界面活性剤を含むステップ、及び
(b)該スクロース勾配から収集された分割ウイルス貯留を、0.1%〜0.5%の非イオン性界面活性剤の存在下で1〜5日間インキュベートするステップ。
また更なる態様では、両性イオン界面活性剤の存在下で実施される少なくとも1つのサイズ排除クロマトグラフィーステップを含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法が提供される。
また更なる態様では、少なくとも以下のステップを含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法が提供される:
(a)1つのスクロース勾配超遠心分離ステップ、及び
(b)1つのクロマトグラフィーステップ。
定量PCR(Q−PCR)によるSINE及びLINE配列の増幅の検証。図1Aは、制限酵素EcoRI/XhoIで同時消化したMDCK DNAで実施したSINE及びLINE増幅について確立された曲線を示す図である。図1Bは、SINE及びLINE配列を増幅するために実施されたQ−PCR反応に由来する等量を負荷したアガロースゲルを示す図である。Ctは、Thresholdサイクルを表す。 定量PCR(Q−PCR)により、EB66(登録商標)細胞の99塩基対(bp)、185塩基対(bp)、及び280塩基対(bp)の配列を増幅するために使用されたプライマーを示す略図である。 MDCK細胞に接種しウイルスを感染させた後で細胞培養培地を収集することにより得られた細胞培養産生インフルエンザウイルス回収物中に存在する残留宿主細胞DNAのプロファイルである。DNAプロファイルの比較 − DNA分解ステップ無し、対培養段階中に実施された1つのDNA分解ステップ。図3は、表示されているウイルス回収物、JP115、NCP117、JP125、及びNCP127から調製されたDNA試料を負荷したアガロースゲルの紫外線下で撮影された画像を示す。Dは、DNaseを表し、Rは、RNaseを表す。 エンドヌクレアーゼを用いて及びDNAアルキル化剤を用いて実施された2つのDNA分解ステップにかけた細胞培養産生インフルエンザウイルスの精製バルク中の残留MDCK DNAの特徴付け。図4Aは、矢印で示されている試料JP115(レーン6)及びJP125(レーン8)の精製バルクのDNA含有量を、サザンブロットにより分析した後で得られたオートラジオグラフィーを示す。レーン10〜15には、制限酵素Sau3で消化された表示既知量のMDCK対照DNAを負荷し、JP115及びJP125のDNAの半定量化はそれに基づいていた。図4Bは、試料NCP124(レーン5、矢印で示されている)の精製バルクのDNA含量を、サザンブロットにより分析した後で得られたオートラジオグラフィーを示す。レーン7〜12には、制限酵素Sau3で消化された表示既知量のMDCK対照DNAを負荷し、NCP124のDNAの半定量化はそれに基づいていた。 MDCK細胞で生産され、エンドヌクレアーゼを用いて及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップにかけられたインフルエンザウイルス抗原の、未感作マウスモデルにおける免疫原性。図5Aは、試料NCP124由来の製剤により誘導されたHI抗体反応を示す。図5Bは、試料NCP124由来の製剤により誘導された中和抗体反応を示す。 MDCK細胞で生産され、エンドヌクレアーゼを用いて及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップにかけられたインフルエンザウイルス抗原の、初回刺激マウスモデルにおける免疫原性。図6Aは、試料NCP124由来の製剤により誘導されたHI抗体反応を示す。図6Bは、試料NCP124由来の製剤により誘導された中和抗体反応を示す。
本発明は、ウイルス又はウイルス抗原を生産するための細胞培養に基づく方法を提供する。この方法は、精製されたウイルス又はウイルス抗原に付随したままの残留宿主細胞核酸、特にDNAのサイズ及び量を両方とも制限することを意図している。特に、本発明は、DNA分解の改良された方法及び分解されたDNAのより良好な除去を提供する。本発明によると、本方法では、少なくとも2つの宿主細胞核酸分解ステップが、Benzonase(商標)等のエンドヌクレアーゼ、及び/又はBPL(β−プロピオラクトン)等のDNAアルキル化剤、又はそれらの組合せを使用して実施される。この方法は、ある範囲の細胞培養産生ウイルス又はウイルス抗原を処理するために使用することができる。
本発明の方法は、アデノウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、オルトミクソウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、及びレトロウイルスを含むがそれらに限定されない広範囲のウイルスであり、ワクチンの標的である任意のウイルスに適している。特に、本発明の方法は、ミクソウイルス等のエンベロープウイルスに好適である。1つの実施形態では、本発明の方法により生産されるウイルスは、オルトミクソウイルスのファミリーに属しており、特にインフルエンザウイルスである。
ウイルス又はウイルス抗原は、インフルエンザウイルス等のオルトミクソウイルスに由来していてもよい。オルトミクソウイルス抗原は、赤血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、1つ又は複数のトランスクリプターゼ(PB1、PB2、及びPA)を含む1つ又は複数のウイルスタンパク質から選択されてもよい。特に好適な抗原には、インフルエンザ亜型の抗原特異性を決定する2つの表面糖タンパク質であるHA及びNAが含まれる。
インフルエンザウイルスは、ヒトインフルエンザウイルス、トリインフルエンザウイルス、ウマインフルエンザウイルス、ブタ(例えば、豚)インフルエンザウイルス、ネコインフルエンザウイルスからなる群から選択される。より具体的には、インフルエンザウイルスは、A、B、及びC株から、好ましくはA株及びB株から選択される。
インフルエンザウイルス又はその抗原は、大流行間期(例年の又は季節性の)インフルエンザ株に由来してもよい。あるいは、インフルエンザウイルス又はその抗原は、大流行発生を引き起こす能力を有する株に由来してもよい(つまり、現在流行している株の赤血球凝集素と比較して新しい赤血球凝集素を有するインフルエンザ株、又はトリ対象体において病原性であり、ヒト集団中で水平伝染する可能性を有するインフルエンザ株、又はヒトに病原性であるインフルエンザ株)。特定の季節、及びワクチンに含まれている抗原の性質に応じて、インフルエンザウイルス又はその抗原は、以下の赤血球凝集素亜型、すなわちH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、又はH16のうち1つ又は複数に由来してもよい。好ましくは、インフルエンザウイルス又はその抗原は、H1、H2、H3、H5、H7、又はH9亜型に由来する。
本発明による方法で使用される細胞は、基本的には、細胞培養で培養することができ、ウイルス複製を支援することができる任意の所望の細胞タイプの細胞であり得る。それらは、接着して増殖する細胞であってもよく、又は懸濁状態で増殖する細胞であってもよい。それらは、初代細胞であってもよく、又は連続細胞系であってもよい。遺伝学的に安定した細胞系が好ましい。
哺乳動物細胞、例えばヒト、ハムスター、ウシ、サル、又はイヌ細胞が、特に好適である。
多数の哺乳動物細胞系が当技術分野で公知であり、それらには、PER.C6、HEK細胞、ヒト胚腎臓細胞(293細胞)、HeLa細胞、CHO細胞、ベロ細胞、及びMDCK細胞が含まれる。
好適なサル細胞は、例えば、ベロ細胞系における腎臓細胞等のアフリカミドリザル細胞である。好適なイヌ細胞は、例えば、MDCK細胞系における腎臓細胞である。
インフルエンザウイルスを増殖させるのに好適な哺乳動物細胞系には、MDCK細胞、ベロ細胞、又はPER.C6細胞が含まれる。これら細胞系は全て、例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から広く入手可能である。
特定の実施形態によると、本発明の方法では、MDCK細胞が使用される。元のMDCK細胞系は、CCL−34としてATCCから入手可能であるが、懸濁状態での増殖に適したMDCK細胞等、この細胞系の誘導体も使用することができる(国際公開第1997/37000号パンフレット)。
あるいは、本発明で使用するための細胞系は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、又はキジ等のトリ起源に由来していてもよい。トリ細胞系は、胚、ヒヨコ、及び成体を含む様々な発生段階に由来してもよい。特に、細胞系は、胚線維芽細胞、生殖細胞等の胚細胞、又はニューロン、脳、網膜、腎臓、肝臓、心臓、筋肉を含む個々の器官、又は胚外組織及び胚を保護する膜に由来してもよい。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を使用してもよい。トリ細胞系の例には、トリ胚性幹細胞(国際公開第01/85938号パンフレット)及びアヒル網膜細胞(国際公開第05/042728号パンフレット)が含まれる。特に、アヒル胚性幹細胞に由来するEB66(登録商標)細胞系が、本発明で企図される(国際公開第2008/129058号パンフレット)。他の好適なトリ胚性幹細胞には、ニワトリ胚性幹細胞、EB45、EB14、及びEB14−074に由来するEBx細胞系が含まれる(国際公開第2006/108846号パンフレット)。このEBx細胞系には、その樹立が天然的にもたらされ、いかなる遺伝的、化学的、又はウイルス性の修飾も必要としなかった、遺伝学的に安定した細胞系であるという利点がある。これらトリ細胞は、インフルエンザウイルスを増殖させるのに特に好適である。
特定の実施形態によると、本発明の方法では、EB66(登録商標)細胞が使用される。
細胞培養条件(温度、細胞密度、pH値等)は、使用される細胞の適合性に応じて非常に広い範囲にわたって変動し、特定のウイルスの詳細な増殖条件の要求に適応させることができる。細胞培養は、当技術分野において広範に文書化されているため、適切な培養条件を決定することは、当業者の能力内にある(例えば、Tissue Culture, Academic Press, Kruse and Paterson編 (1973)、及びR.I. Freshney, Culture of animal cells: A manual of basic technique, 第4版(Wiley-Liss Inc., 2000, ISBN 0-471-34889-9)を参照。
特定の実施形態では、本発明に記載の方法で使用される宿主細胞は、無血清及び/又は無タンパク質培地中で培養される。「無血清培地」(SFM)は、細胞生存及び細胞増殖を可能にする血清添加を必要としない使用準備済の細胞培養培地を意味する。この培地は、必ずしも化学的に定義されていなくともよく、種々の由来、例えば植物由来の水解物を含有していてもよい。そのような無血清培地には、ウイルス、マイコプラズマ、又は未知の伝染性因子による汚染を排除することができるという利点がある。「無タンパク質」とは、タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物、及び非血清タンパク質が除外されていても細胞増殖が生じる培養を意味するが、随意に、ウイルス増殖に必要な場合があるトリプシン又は他のプロテアーゼ等のタンパク質を含んでいてもよいことが理解されている。そのような培養で自然に増殖する細胞は、それら自体にタンパク質を含有している。
無血清培地は、多数の供給業者、例えばVP SFM(Invitrogen社 カタログ番号11681−020)、Opti−Pro(Invitrogen社 カタログ番号12309−019)、又はEX−CELL(JHR Bioscience社)から商業的に入手可能である。
細胞は、種々の方法で増殖させることができ、例えば懸濁状態で増殖させてもよく、又はマイクロキャリア上での増殖のように表面に接着させて増殖させてもよく、又はそれらの組合せであってもよい。培養は、培養皿、フラスコ、ローラーボトル、又はバッチ、流加バッチ、灌流システム等の半連続型若しくは連続型システムを使用するバイオリアクターで実施することができる。典型的には、細胞は、主細胞バンクバイアル又は作業用細胞バンクバイアルから、種々のサイズのフラスコ又はローラーボトルを介して、最終的にはバイオリアクターへとスケールアップされる。1つの実施形態では、本発明の方法により使用される細胞は、撹拌バイオリアクター内の無血清培地中のマイクロキャリアビーズ上で培養され、培養培地は灌流により提供される。
代替的な実施形態では、細胞は、バッチ法で懸濁状態で培養される。
ウイルスによる感染に先立って、細胞は、約37℃、より好適には36.5℃で、6.7〜7.8の範囲のpH、好適には約6.8〜7.5、より好適には約7.2のpHで培養される。
本発明の方法によると、細胞培養に基づくウイルス生産は、一般的に、生産しようとするウイルス株を培養細胞に接種するステップと、ウイルス複製を可能とするために感染細胞を所望の期間培養するステップとを含む。
大量の細胞産生ウイルスを生産するためには、細胞が高密度に達した時に、所望のウイルス株を細胞に接種することが好ましい。通常、細胞密度が、少なくとも約1.5×10細胞/ml、好適には約3×10細胞/ml、より好適には約5×10細胞/ml、又は更により好適には7×10細胞/ml、あるいはさらにそれ以上接種を実施する。最大のウイルス生産を得るための最適な細胞密度は、ウイルス増殖に使用される細胞タイプにより異なる場合がある。
接種は、約10−1〜10−7のMOI(感染多重度)、好適には約10−2〜10−6、及びより好適には約10−5のMOIで実施される。
ウイルス感染の温度及びpH条件は、異なる場合がある。温度は、ウイルスタイプに応じて、32℃〜39℃の範囲であってもよい。インフルエンザウイルスを生産する場合は、細胞培養感染は、生産される株に応じて異なる場合がある。インフルエンザウイルス感染は、好適には、32℃〜35℃の範囲の温度で、好適には33℃で実施される。1つの実施形態では、ウイルス感染は33℃で行う。代替的な実施形態では、ウイルス感染は35℃で行う。ウイルス株に応じて、プロテアーゼ、典型的にはトリプシンを細胞培養に添加して、ウイルス複製を可能にすることができる。プロテアーゼは、任意の好適な培養段階で添加することができる。トリプシン(Tryspin)は、好ましくは非動物由来であり、つまりプロテアーゼは、動物供給源から精製されていない。トリプシンは、好適には、細菌、酵母等の微生物中で又は植物中で組換え的に生産される。組換えトリプシンの好適な例は、トウモロコシ中で産生された組換えトリプシンであるTrypzean(Prodigen社製、101 ゲートウエイ ブルーバード スイート100 カレッジステイション テキサス州 77845。メーカーコード:TRY)、又は真菌中で発現されたトリプシン様酵素であるTrpLE(Invitrogen社製)(国際公開第2004/020612号パンフレット)である。
感染すると、細胞は、受動溶解とも呼ばれる宿主細胞の自然溶解により、新しく形成されたウイルス粒子を培養培地に放出することができる。したがって、1つの実施形態では、細胞ベースのウイルス回収物は、細胞培養培地又は上清を収集することにより、ウイルス接種後の任意の時間に提供することができる。特定の実施形態では、細胞培養培地は灌流により収集される。ウイルス接種後の異なる時点で細胞由来ウイルスを回収し、必要に応じてその異なる回収物を貯留することが所望の場合、この回収方法は特に好適である。
あるいは、ウイルス感染後に、細胞ベースのウイルスは、能動溶解とも呼ばれる、宿主細胞を溶解するための外的因子を使用することにより回収することができる。しかしながら、前述のものとは対照的に、能動的な細胞溶解は細胞培養を直ちに終了させるため、そのような回収方法は、細胞ベースのウイルス回収物を単一の時点で収集することを必要とする。
能動的細胞溶解に使用することができる方法は公知である。この点で有用な方法は、例えば、凍結融解、固体剪断、高浸透圧及び/又は低浸透圧溶解、液体剪断、高圧放出、界面活性剤による溶解、又はそれらの任意の組合せである。
1つの実施形態によると、細胞ベースのウイルス回収物は、細胞培養培地又は上清を収集すること、接種された細胞を溶解すること、又はその両方により、ウイルス接種後の任意の時間に提供することができる。
回収する前に、細胞感染を2〜10日間継続することができる。特定の実施形態によると、接種後3、4、及び5日目の培養液上清を、更なる下流プロセス(ウイルス単離)のために回収及び貯留する。別の実施形態によると、細胞培養上清は、接種後5日目から収集される。細胞産生ウイルスを回収するのに最適な時間は、通常、感染のピークを決定することに基づく。例えば、CPE(細胞変性効果)は、細胞球状化、配位喪失(disorientation)、膨潤又は収縮、死滅、表面からの剥離を含む、ウイルス接種後に宿主細胞に生じる形態学的変化をモニターすることにより測定される。特定のウイルス抗原の検出は、ウエスタンブロット分析等のタンパク質検出の標準技術によりモニターすることもできる。その後、所望の検出レベルの達成時に、回収物を収集することができる。インフルエンザウイルスの特定の場合では、HAの含有量は、当業者によく知られている技術であるSRDアッセイにより、細胞にウイルスを接種した後の任意の時間にモニターすることができる(Wood, JM, et al. (1977). J. Biol. Standard. 5, 237-247)。加えて、SRDアッセイは、最適化されたウイルス収率を得るのに必要とされる、最適な細胞密度範囲を決定するために使用することもできる。
本発明では、細胞培養に基づくウイルス又はウイルス抗原を生産する際に、宿主細胞核酸を分解するための少なくとも2つのステップでの処理が使用される。核酸分解化合物は、エンドヌクレアーゼであってもよく、DNAアルキル化剤であってもよく、又はその両方であってもよい。例えば、第1の処理をエンドヌクレアーゼにより実施し、その後第2の処理をDNAアルキル化剤により実施してもよく、その逆でもよい。したがって、1つの実施形態では、少なくとも1つのエンドヌクレアーゼステップ及び少なくとも1つのDNAアルキル化ステップが、任意の順序で順次実施される。あるいは、本発明による方法では、各々のステップがエンドヌクレアーゼにより実施されるか又は各々のステップがDNAアルキル化剤により実施される2つの別個の核酸分解ステップを実施してもよい。核酸分解の第1のステップ及び第2のステップは、本発明による方法の任意の時点で実施することができる。それらは、連続した様式、つまり前のステップの直後に次のステップという様式で実施することができる。あるいは、2つの核酸分解ステップは、本発明による方法中で行う他のステップにより隔てられていてもよい。
本発明は、2つの宿主細胞核酸分解ステップに限定されておらず、別の実施形態では、各追加的ステップがエンドヌクレアーゼ又はDNAアルキル化剤により実施され、任意の順序で任意の時間に実施される、2つを超える核酸分解ステップも企図される。
1つの実施形態によると、少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップは、生産されたウイルスを回収する前、つまりウイルス単離段階ではなく細胞培養段階中に実施される。本発明の状況では、細胞培養段階及びウイルス単離段階は、ウイルス回収ステップにより隔てられている。細胞培養段階は、ウイルス回収ステップ前のあらゆるステップを包含すると理解されるべきであり、ウイルス単離段階は、前記回収段階後のあらゆるステップを包含すると理解されるべきである。細胞培養段階は、具体的には、(a)培養下の細胞集団を提供するステップと、(b)該細胞集団にウイルスを接種するステップと、(c)該ウイルスの複製が可能になるように該細胞集団を培養するステップとを含む。ウイルス単離段階は、ウイルス回収物に含まれるウイルスの精製を目的とする任意のステップ、つまり宿主細胞核酸を含む宿主細胞混入物質の除去を目的とする任意のステップであると理解されるべきである。
1つの実施形態では、少なくとも2つの核酸分解ステップは、エンドヌクレアーゼを用いて実施される。特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、細胞培養段階中及びウイルス単離段階中に添加される。別の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、感染細胞の細胞培養上清を収集した後に得られるウイルス回収物、及びウイルス単離段階中に得られるウイルス回収物の両方に添加される。
代替的な実施形態では、少なくとも1つの核酸分解ステップは、エンドヌクレアーゼを用いて実施され、少なくとも1つの核酸分解ステップは、アルキル化剤を用いて実施される。特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、細胞培養段階中に添加され、DNAアルキル化剤は、ウイルス単離段階中に添加される。別の実施形態では、エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤の両方が、ウイルス単離段階中に添加される。
宿主細胞核酸分解は、細胞培養段階中に実施される場合、好適には、エンドヌクレアーゼを細胞培養に添加することにより実施される。エンドヌクレアーゼは、ウイルスによる細胞の接種と同時又はウイルス接種後の任意の適切な時点を含む、細胞培養段階の任意の好適なステップにおいて添加することができる。細胞培養段階におけるそのような初期添加により、特に、核酸が細胞から培養培地に放出されるとすぐ、すなわちエンドヌクレアーゼによる核酸認識を妨害することになる細胞残渣との複合体又は凝集体が発生する可能性が生じる前に、核酸分解を標的とすることが可能になる。細胞培養にエンドヌクレアーゼを添加することによる別の結果は、エンドヌクレアーゼ作用を、ウイルス接種ステップのような通常はプログラム化された細胞培養ステップと全く同じ条件及び同じ時点で行うことができ、したがって、最終産物の安定性に影響を及ぼしプロセスを遅延させる場合がある、特定の温度でのインキュベーションも、追加的なインキュベーション期間も設定する必要がないことである。エンドヌクレアーゼを添加する方法は、使用される培養の方法に応じて変わる場合がある。細胞がバイオリアクターで培養される場合、エンドヌクレアーゼは、細胞培養を含有するバイオリアクターに直接添加することができる。あるいは、細胞培養培地を提供するために灌流システムが使用される場合、エンドヌクレアーゼは、灌流培地に添加することができる。
1つの実施形態では、本発明の方法による細胞培養段階中に少なくとも1つのDNA分解ステップを実施することにより、ウイルス単離段階に移行する前に、定量PCR(Q−PCR)により測定して、300塩基対長のDNA断片の量が、DNA分解が全く実施されない場合と比較して、50%を超えて、特に60%を超えて、その中でも特に70%を超えて、及び80%をさえ超えて低減されることが可能となる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られるウイルス回収物を提供し、該ウイルス回収物中では、定量PCR(Q−PCR)により測定して、300塩基対長のDNA断片の量が、DNA分解ステップを実施せずに得られたウイルス回収物と比較して、50%を超えて、特に60%を超えて、その中でも特に70%を超えて、及び80%をさえ超えて低減される。
別の実施形態では、本発明の方法による細胞培養段階中に少なくとも1つのDNA分解ステップを実施することにより、ウイルス単離段階に移行する前に、定量PCR(Q−PCR)により測定して、60塩基対長のDNA断片の量が、DNA分解を全く実施しない場合と比較して、30%を超えて、特に40%を超えて、その中でも特に50%を超えて、及び55%をさえ超えて低減されることが可能となる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られるウイルス回収物を提供し、該ウイルス回収物中では、定量PCR(Q−PCR)により測定して、30塩基対長のDNA断片の量が、DNA分解ステップを実施せずに得られたウイルス回収物と比較して、40%を超えて、特に50%を超えて、その中でも特に55%を超えて低減されている。
第2の実施形態によると、少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップは、細胞感染後に収集されるウイルス回収物中で実施される。特に、エンドヌクレアーゼは、収集されたウイルス回収物を含有する容器に添加することができる。ウイルス回収物が、ウイルス接種後の数日間にわたって連日収集される場合、連日の回収物は貯溜される。その後、エンドヌクレアーゼを、貯溜後に添加することができる。
第3の実施形態によると、少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップは、ウイルス単離段階中に実施される。この分解ステップは、ウイルス単離段階の任意の好適な段階で行うことができる。
本発明の方法により生産されるウイルス又はウイルス抗原は、それらの生産方法に関わりなく、ウイルス精製に使用される標準技術を使用して、更なる精製に供することができる。例えば、細胞培養ベースのウイルスのウイルス単離段階は、限外ろ過、超遠心分離(密度勾配超遠心分離を含む)、クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー等)等の多くの様々なろ過、濃縮、及び/又は他の分離ステップ、並びに吸着ステップを様々な組合せで含むことができる。特に、そのような精製は、残留宿主細胞核酸が実質的に存在しない最終精製産物を得るために、分解された宿主細胞核酸を除去することを可能にする。「実質的に」とは、最終精製産物、つまり最終精製ウイルス又はそのウイルス抗原が、10ng未満のDNA、特に5ng未満のDNA、その中でも特に1ng未満のDNA、更に特に0.1ng未満のDNA、好適には100pg未満のDNA、より好適には10pg未満のDNAを含むことを意味する。
1つの実施形態では、本発明による方法は、感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られるウイルス回収物に最初に存在するDNA含有量と比較して、総DNA含有量を、少なくとも20000倍、好適には少なくとも40000倍、より好適には少なくとも50000倍低減することを可能にする。
更なる実施形態では、本発明による方法は、感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られるウイルス回収物に最初に存在するDNA含有量と比較して、総DNA含有量を、Threshold(商標)アッセイで測定して、90%を超えて、特に95%を超えて、その中でも特に99%を超えて、及び99.9%をさえ超えて低減することを可能にする。
1つの実施形態では、本発明の方法は、ウイルス単離段階中に、ウイルス回収物の清澄化、限外ろ過/ダイアフィルトレーション、超遠心分離、及びクロマトグラフィー、又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つのステップを含む。所望の純度レベルに応じて、上記ステップは、いかようにも組合せることができる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、ウイルス単離段階中に、少なくとも、ウイルス回収物の清澄化ステップ、濃縮液を提供するための限外ろ過/ダイアフィルトレーションステップ、及び1つ又は2つの超遠心分離ステップを含む。
ウイルスを含有する感染細胞の細胞培養上清を収集した後、提供されたウイルス回収物は、浮遊完全細胞又は細胞残渣等の細胞性物質からウイルスを分離するために清澄化することができる。清澄化は、ろ過ステップにより実施することができる。好適なフィルターには、セルロースフィルター、再生セルロースフィルター、無機ろ過助剤と組合せたセルロース繊維、無機ろ過助剤及び有機樹脂と組合せたセルロースフィルター、又はそれらの任意の組合せ、及びポリマー性フィルターを使用することができる。必須ではないが、例えば、適切な公称孔径を有するフィルター、特に減少する公称孔径を有するフィルターを使用して、大きな沈殿物及び細胞残渣の除去から始めることを可能にし、サイズに応じて不純物を連続的に及び徐々に除去することを含む2段階又は3段階等の多重ろ過プロセスを実施してもよい。加えて、比較的細かいフィルター又は遠心分離を使用する単一段階作業を、清澄化に使用することもできる。より一般的には、限定されないが、デッドエンドろ過(dead-end filtration)、デプスろ過(depth filtration)、精密ろ過、又は遠心分離を含み、その後のステップで膜及び/又は樹脂を詰まらせない好適な清澄性のろ過液を提供する任意の清澄化手法が、本発明の清澄化ステップで使用できる。1つの実施形態では、ウイルス清澄化ステップは、デプスろ過により、具体的には、例えば、5μm−0.5μm−0.2μmの公称多孔度を有する3つの異なるデプスフィルターで構成される3段階連続ろ過を使用して実施される。別の実施形態では、ウイルス回収物は、遠心分離により前清澄化され、その後デプスろ過、例えば、0.5μm−0.2μmの公称多孔度を有する2つの異なるフィルターで構成される連続ろ過を使用して清澄化される。
本発明によると、ウイルスを濃縮するため、及び/又は緩衝液を交換するために、ウイルス懸濁液を限外ろ過(緩衝液交換に使用される場合は、ダイアフィルトレーションと呼ばれる場合もある)に供することができる。このステップは、接種後数日にわたって灌流により収集されたウイルス回収物を貯溜する場合のように、精製しようとするウイルスが希釈されている場合に特に有利である。本発明の方法によりウイルスを濃縮するために使用されるプロセスは、希釈液はウイルス懸濁液から除去されるがウイルスはフィルターを通り抜けることができず、それによりウイルス調製物中の濃縮形態が維持できるように、希釈液を強制的にフィルターに通してウイルスの濃度を増加させる任意のろ過プロセスを含むことができる。
限外ろ過はダイアフィルトレーションを含んでもよい。ダイアフィルトレーションは、塩、糖、非水性溶媒の除去及び交換、低分子量物質の除去、イオン及び/又はpH環境の迅速な変化にとって理想的な方法である。微細溶質は、限外ろ過速度と等しい速度で、限外ろ過されている溶液に溶媒を添加することにより最も効率的に除去される。これにより、一定容積の溶液から微細種が洗浄され、保持されたウイルスが単離される。下流のステップが、最適な反応を得るために特定の緩衝液の使用を必要とする場合、ダイアフィルトレーションは特に有利である。例えば、エンドヌクレアーゼを用いて宿主細胞核酸を分解する前にダイアフィルトレーションステップを実施することにより、そのエンドヌクレアーゼに特異的で最適な緩衝液中でエンドヌクレアーゼ反応を実施することが可能になる場合がある。スクロース勾配超遠心分離後のスクロース、又はホルムアルデヒドによるウイルス不活性化ステップ後のホルムアルデヒド等の望ましくない化合物を除去することが求められる場合、濃縮及びダイアフィルトレーションを、精製プロセスの任意の好適なステップで実施することもできる。この系は、3つの別個のプロセス流、すなわち供給溶液(ウイルスを含む)、透過液、及び濃縮液で構成される。応用例に応じて、異なる孔径を有するフィルターを使用することができる。本発明では、濃縮液は、ウイルスを含有しており、必要に応じて、更なる精製ステップに使用することができる。膜組成は、限定されないが、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、又はそれらの誘導体であってもよい。膜は、平板(フラットスクリーンとも呼ばれる)であってもよく、又は中空繊維であってもよい。
1つの実施形態では、本発明の方法のウイルス単離段階は、少なくとも1つの限外ろ過/ダイアフィルトレーションステップ、好適には少なくとも2つの限外ろ過/ダイアフィルトレーションステップを含む。
1つの特定の実施形態では、少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、限外ろ過/ダイアフィルトレーション後に得られる濃縮液にエンドヌクレアーゼを添加することにより実施される。
特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、細胞培養段階中、及び限外ろ過/ダイアフィルトレーションがウイルス単離段階中に実施された後に得られる濃縮液の両方に添加される。
本発明の方法により得られるウイルス懸濁液は、密度勾配遠心分離、例えばスクロース勾配超遠心分離及び/又はクロマトグラフィー等の当業者に一般的に公知の方法によりさらに精製することができる。しかしながら、1つの実施形態では、本発明の方法のウイルス単離ステップは、いかなるクロマトグラフィーステップも含んでいない。
したがって、ある実施形態では、ウイルス単離段階は、ウイルスを単離するために一般的に使用される技術であり当技術分野で公知である、少なくとも1つのスクロース勾配超遠心分離ステップを含む。
特定の実施形態では、本発明の方法のウイルス単離ステップは、少なくとも2つのスクロース勾配超遠心分離ステップを含む。
別の実施形態では、ウイルス単離段階は、少なくとも2つの超遠心分離ステップを含み、それらのうち1つは、スクロース勾配超遠心分離ステップであってもよい。
本発明の方法によると、スクロース勾配超遠心分離等の精製ステップをウイルス分割ステップと組合せることが可能である。特に、分割剤をスクロース勾配に添加することができる。この実施形態は、ウイルスの精製及び分割の両方が単一作業で可能になるため、本発明の方法のステップの総数を最小限に抑えることが望ましい場合、特に好適である。したがって、ある実施形態では、少なくとも1つのスクロース勾配超遠心分離が実施される場合、スクロース勾配は分割剤をさらに含む。
あるいは、本発明の方法のウイルス分割ステップは、バッチで実施される。
陰イオン性又は陽イオン性のイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過又はゲル浸透等のサイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト、又はそれらの任意の組合せを含むクロマトグラフィーによりウイルスを単離することも可能である。上記で言及したように、クロマトグラフィーステップは、密度勾配超遠心分離等の他の精製ステップと組合せて実施することができる。当業者であれば、これらのプロセスを認識し、これら追加的ステップを使用する正確な方法を変化させて、本発明の方法を最適化することができる。
ゲルろ過クロマトグラフィーは、本発明の方法により生産されるウイルス又はウイルス抗原に混入する宿主細胞タンパク質の排除をさらに向上させることが望ましい場合、特にウイルス精製段階の終わりで使用することがより好適である場合がある。当業者であれば、この技術に精通しており、生産されるウイルス及び使用する細胞に応じて条件を変化させる方法を知っているであろう。当業者であれば、例えば、ウエスタンブロット分析又はThreshold(商標)アッセイ等の当技術分野で公知の任意のタンパク質検出法を使用することにより宿主細胞タンパク質含量をモニター及び評価する方法を知っているであろう。イオン性界面活性剤の存在下でゲルろ過クロマトグラフィーを実施する場合、宿主細胞タンパク質混入物質の分離は、より良好に達成される。界面活性剤は、イオン性又は両性イオン性のいずれであってもよく、特にエンピゲンであってもよい。エンピゲンは、精製ウイルス又はウイルス抗原の完全性を保ちつつ、宿主細胞不純物の効率的な分離を可能にする能力があるため、その使用はより好適である。界面活性剤は、デオキシコレート、サルコシン、ラウリルサルコシンナトリウム、エンピゲン、又はそれらの任意の組合せから選択することができる。界面活性剤は、様々なサブステップで添加することができる。例えば、界面活性剤は、精製を必要とするウイルス又はウイルスタンパク質含有試料に最初に添加してもよい。その後、その結果生じた混合物をゲルろ過にかけてもよく、又は界面活性剤は、最初に、ある期間、試料中でインキュベートしたままにしておいてもよい。また、界面活性剤は平衡緩衝液中に存在していてもよい。界面活性剤は、様々なサブステップで使用される場合、必ずしも同一である必要はない。例えば、試料中で使用される界面活性剤は、平衡緩衝液中で使用されるものとは異なっていてもよい。同じサブステップ内では、界面活性剤は、それらの1つ又は複数の混合物であると理解することもできる。1つの実施形態では、両性イオン性界面活性剤の存在下で実施される少なくとも1つのサイズ排除クロマトグラフィーステップ、例えばゲルろ過を含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法が提供される。
1つの実施形態では、本発明の方法のウイルス単離段階は、ゲルろ過クロマトグラフィーを含む。更なる実施形態では、ゲルろ過は、両性イオン性界面活性剤の存在下で実施され、両性イオン性界面活性剤は、精製しようとする試料中、又は平衡緩衝液中、又はその両方に存在していてもよい。界面活性剤は、様々な濃度で使用することができる。特に、0.001%〜1%で、その中でも特に0.005%〜0.5%で、その中でも特に0.1%で使用される。
ある実施形態では、ウイルス単離段階は、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びそれらの組合せから選択される少なくとも1つのクロマトグラフィーステップを含む。
特定の実施形態では、ウイルス単離段階は、少なくとも1つのスクロース勾配超遠心分離と少なくとも1つのクロマトグラフィーステップとの組合せ、特にヒドロキシアパタイト又はサイズ排除を含む。この組合せは、品質を維持しつつ、ウイルス又はウイルス抗原回収の増加を可能にするので、2つのスクロース勾配超遠心分離ステップの実施と比べてより単純で有利な代替法として使用することができる。ウイルスの分割が望ましい場合、分割は、上述のようにスクロース勾配に分割剤を添加することによりスクロース勾配超遠心分離中で行ってもよく、又は下記で考察されているように特に超遠心分離後にバッチ法で行ってもよい。
したがって、本発明は、少なくとも1つのスクロース勾配超遠心分離ステップ及び1つのクロマトグラフィーステップ、具体的にはヒドロキシアパタイトを含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法も企図する。
本発明によると、ウイルス単離段階中に実施される少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップは、エンドヌクレアーゼ及び/又はアルキル化剤を、精製中に行う任意の好適なステップに添加することにより実施することができる。例えば、エンドヌクレアーゼは、限外ろ過ステップの後で添加してもよい。界面活性剤が分割剤として使用される場合、界面活性剤が存在すると、最適条件下での酵素作用を妨げる凝集体の形成からDNAを分離するのに役立つと予測されるため、エンドヌクレアーゼを、ウイルス分割ステップの後で添加することもできる。
ウイルス単離段階の終わりで、ウイルス調製物は、好適にはろ過滅菌法にかけられるが、これは免疫原性組成物又はワクチン等の医薬品等級物質のプロセスに一般的であり、当業者に公知である。そのようなろ過滅菌は、例えば好適には、0.22μmフィルターで調製物をろ過することにより実施することができる。無菌調製した後、ウイルス又はウイルス抗原は、臨床使用の準備が整ったことになる。
本発明は、更に、本発明による方法により取得可能なウイルス、本発明による方法により取得可能なウイルス又はウイルス抗原を含む組成物、及び医学におけるそれらの使用に関する。それらは、ヒト又は動物に投与するためのワクチンをもたらす任意の公知の方法により製剤化することができる。したがって、このタイプのウイルス又はウイルス抗原を含む、ワクチン等の免疫原性組成物も、本発明により企図される。
本発明は、ウイルス又はウイルス抗原、特に細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含み、残留宿主細胞DNAの含有量が、Threshold(商標)アッセイにより測定して、10ng未満、好適には5ng未満、及びより好適には1ng未満、特に100pg未満、及びその中でも特に10pg未満である組成物、例えばワクチン用量等の免疫原性組成物も提供する。
本発明は、ウイルス又はウイルス抗原、特に細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含み、任意の残留宿主細胞DNAが、500塩基対未満、好適には300塩基対未満、より好適には200塩基対未満、及び100塩基対未満でさえあるサイズを有する組成物、例えばワクチン用量等の免疫原性組成物も提供する。
ある実施形態では、本発明のウイルス及び組成物は、サイズが60塩基対であるDNA断片の含有量が、定量PCR(Q−PCR)で測定して、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng、及び0.01ng未満でさえあることを示す。
更なる実施形態では、本発明のウイルス及び組成物は、サイズが300塩基対であるDNA断片の含有量が、定量PCR(Q−PCR)で測定して、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng、及び0.01ng未満でさえあることを示す。
また更なる実施形態では、本発明のウイルス及び組成物は、サイズが300塩基対であるDNA断片の含有量が、定量PCR(Q−PCR)で測定して、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng、及び0.01ng未満でさえあり、そのサイズが60塩基対であるDNA断片の含有量が、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng、及び0.01ng未満でさえあることを示す。
本発明の方法で使用するに好適な例示的エンドヌクレアーゼには、Benzonase(商標)、Pulmozyme(商標)、DNaseI、又は当技術分野で一般的に使用される任意の他のDNase及び/若しくはRNaseが含まれる。1つの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、特定のヌクレオチド間の内部リン酸ジエステル結合を加水分解することにより迅速に核酸を加水分解し、それにより細胞DNAを断片化するBenzonase(商標)である。
エンドヌクレアーゼが使用される濃度、温度、及びインキュベーション時間は、それが使用されるステップに依存する。それは、エンドヌクレアーゼを使用するための最適条件を見出す当業者の能力内にある。エンドヌクレアーゼは、好ましくは1〜300単位/mlの範囲内で使用される。非限定的な例として、細胞培養に添加される場合、Benzonase(商標)は、1〜10単位/ml、特に1〜3単位/mlの様々な濃度で、好適には1単位/mlの濃度で使用される。製造業者によると、Benzonase(商標)は、その核酸分解活性の最適温度は37℃であることが判明しているが、0〜42℃の温度範囲にわたって効果的である。しかしながら、温度によっては、インキュベーション時間を調整することが推奨されている。原則として、より低温度では、同じ結果を達成するためにより長いインキュベーション時間が必要とされる(Merck KGaA社製のBenzonase(商標)パンフレットを参照)。細胞培養に添加される場合、Benzonase(商標)反応は、細胞培養に使用される温度で行う。後のウイルス生産プロセスで実施される場合、ウイルス含有懸濁液はより濃縮されているはずであり、Benzonase(商標)は、より高い濃度、例えば、50〜300単位/ml、好適には60〜200単位/mlの様々な範囲、特に100単位/mlで使用してもよい。非限定的な例として、ウイルス精製段階の任意のステップにおいて、Benzonase(商標)反応用のインキュベーション時間及び温度は、37℃で1時間であってもよい。
本発明で使用されるアルキル化剤には、アルキルラジカルを化合物に導入する物質が含まれる。特に、アルキル化剤は、BPL又はエチレンイミン等のモノアルキル化剤である。国際公開第2007/052163号パンフレットでは、最終産物に付随したままのあらゆる残留機能性細胞培養DNAを分解するためのBPLの使用が開示されている。BPLは、種々の生体分子と反応し、特に、ウイルスゲノムの核酸塩基を修飾し、その複製を阻止する(Budowsky et al. 1993, Vaccine, 11(3): 343-348)。BPLは、無毒性産物であるβ−プロピオン酸及びラケート(lacate)の異性体へと完全に加水分解されるため、37℃で2時間加熱することにより迅速に不活化することができる。BPLは、その反応を停止するのに中和剤を必要としない。過剰なBPLは、チオ硫酸塩を添加することにより、ウイルス完全性を維持しつつ容易に中和することができる。BPL処理の最適条件は、核酸、特にDNAの分解に及ぼすBPLの効果を様々な条件においてモニターすることにより決定されるだろう。核酸分解を測定するための方法は、下記に記述及び考察されている。これらの方法は、DNAサイズの測定に依存する。したがって、DNA分解効率を評価しようとする場合、例えば、分解ステップに移行する前にDNAサイズを測定し、分解ステップに移行し、そして分解ステップを行った後でDNAサイズを測定することが可能である。DNA分解ステップ前後にサイズを比較し、分解後にDNAサイズの減少が観察されれば、そのステップの有効性が示されることになる。
宿主細胞核酸分解は、1%未満のBPLで達成することができる。好適には、BPLは、0.01%〜01%の範囲の濃度、より好適には0.5%の濃度で使用される。アルキル化剤は、好適には緩衝化溶液に添加され、pH溶液は、5〜10の間に維持される。より好適には、溶液のpHは、6〜9の間に維持される。更により好適には、溶液のpHは、7〜8の間に維持される。インキュベーション時間は、様々であってもよい。特に、BPLは、好適には終夜インキュベートされる。BPLは、広範囲の温度で活性である。本発明の1つの実施形態では、BPLは、2〜8℃の範囲の温度でインキュベートされる。別の実施形態では、BPLは室温でインキュベートされる。
1つの実施形態では、BPLは、クエン酸含有リン酸緩衝液中で使用される。
BPLには、単一作業内で2つの効果を達成するという利点、すなわち混入宿主細胞核酸を分解すること、及びウイルス調製物を不活化することを可能にするという利点がある。しかしながら、本発明による方法は、BPLの単一使用に限定されておらず、上述のように複数のBPLステップが企図される。BPLは、本方法の任意の好適なステップで添加することができる。BPLを細胞培養に添加するのではなく、ウイルス単離段階の任意のステップに添加されるのが好ましい。加えて、BPLとは異なる不活化剤を使用することも、本発明の範囲内にある。本発明の方法では、BPLステップは、好適には1つのエンドヌクレアーゼステップと組合せて使用される。特に、エンドヌクレアーゼは、細胞培養段階中に又はウイルス回収物に添加され、BPLは、ウイルス単離段階中に添加される。例えば、BPLは、清澄化されたウイルス回収物に添加される。つまりウイルス回収物が清澄化ステップにかけられた後で添加される。あるいは、BPLステップは、好適には2つのエンドヌクレアーゼステップと組合せて使用される。特に、1つのヌクレアーゼステップは、細胞培養段階中に実施され、第2のステップは、ウイルス単離段階中に、例えば、清澄化されたウイルス回収物が限外ろ過/ダイアフィルトレーションにより濃縮された後で実施され、BPLは、ウイルス単離段階の任意のステップで、特に第2のエンドヌクレアーゼステップの直後に添加される。1つの実施形態では、BPLは、清澄化された回収物に添加され、清澄化された回収物は、限外ろ過により濃縮され、エンドヌクレアーゼは、限外ろ過システムから取り出した濃縮液に添加される。
本発明の免疫原性組成物、特にワクチンは、一般的にはサブビリオン形態、例えば、脂質エンベロープが溶解されているか又は分解されている分割ウイルスの形態で、又は1つ若しくは複数の精製ウイルスタンパク質(サブユニットワクチン)の形態で製剤されるだろう。代案として、免疫原性組成物は、全ウイルス、例えば生弱毒化全ウイルス、又は不活化全ウイルスを含んでいてもよい。
インフルエンザウイルス等のウイルスを分割する方法は、当技術分野で周知である(国際公開第02/28422号パンフレット)。ウイルスの分割は、分解濃度の分割剤を用いて、感染性(野生型又は弱毒化)か又は非感染性(不活化)かに関わらず、全ウイルスを分解又は断片化することにより実施される。分割剤には、一般的に、脂質膜を分解及び溶解可能な作用剤が含まれる。伝統的に、分割インフルエンザウイルスは、トリ−n−ブチルホスフェート、又はTween(商標)と組合せたジエチルエーテル(「Tween−エーテル」分割として知られている)等の溶媒/界面活性剤処理を使用して生産され、このプロセスは、幾つかの生産設備で未だに使用されている。現在使用されている他の分割剤には、界面活性剤又はタンパク質分解酵素又は胆汁酸塩、例えばデオキシコール酸ナトリウムが含まれる。分割剤として使用することができる界面活性剤には、陽イオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、他のイオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、タウロデオキシコレート、又はTween若しくはトリトンX−100等の非イオン性界面活性剤、又は任意の2つ以上の界面活性剤の組合せが含まれる。
1つの実施形態では、分割剤はデオキシコレートである。別の実施形態では、分割剤はトリトンX−100である。更なる実施形態では、本発明による方法では、分割剤としてトリトンX−100及びラウリル硫酸ナトリウムの組合せが使用される。
分割プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして実施することができる。バッチで実施される場合、分割ウイルスは、クロマトグラフィーステップ等の、界面活性剤を除去するための追加的精製ステップが必要とされる場合がある。精製ステップと同時に分割を実施することが可能であるため、分割ステップそれ自体は実施する必要はない。例えば、界面活性剤は、上述のように、超遠心分離によりウイルスを精製することを目的としたスクロース勾配に添加することができる。
スクロース勾配から収集された分割ウイルス貯留は、例えば、細胞の50%を感染可能なウイルスの量を表す、貯留の組織培養感染量(TCID50/ml)を測定することにより一般的に検出されるような、依然として感染性であるウイルスの残留画分を含有している場合がある。試験しようとする感染性試料について一連の連続希釈を実施し、各希釈の一部を感染可能な細胞への接種に使用する。ウイルスが感染性である場合に複製できるように、細胞を数日間インキュベートした後、ウイルスの存在は、当業者に公知の2つの読み取り法、つまり細胞の細胞変性効果(CPE)の分析及び/又は培養液上清で実施されるニワトリ赤血球による血球凝集反応アッセイにより検出することができる。その後、ウイルス力価は、Reed−Muench法により計算される(Reed, L.J. and Muench, H., 1938, The American Journal of Hygiene 27: 493-497)。
ウイルス感染力の排除をさらに増加させることが望ましい場合、スクロース勾配超遠心分離ステップから分割ウイルス貯留を収集した後、高濃度の非イオン性界面活性剤の存在下で分割ウイルスを保管するステップを、随意に実施することができる。この保管ステップで使用される界面活性剤は、スクロース勾配超遠心分離ステップで使用されるものと同一であっても又は異なっていてもよい。界面活性剤の濃度は、0.1%から1%まで、好適には0.2%から0.5%まで変動してもよく、より好適には0.3%である。保管は、任意の温度で行うことができ、特に4℃〜37℃、その中でも特に室温で行うことができる。保管は、1〜5日間継続してもよく、より具体的には3日間である。1つの実施形態では、スクロース勾配超遠心分離ステップであり、該スクロース勾配がウイルスを分割するための界面活性剤を含むステップと、1〜5日間0.1%〜0.5%の非イオン性界面活性剤、特にトリトンX−100の存在下で該スクロース勾配から収集された分割ウイルス貯留のインキュベーションステップとを含む、細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法が提供される。
別の実施形態では、界面活性剤を含有するスクロース勾配超遠心分離ステップが実施される宿主細胞核酸を分解するための本発明による方法は、0.1%〜0.5%、特に0.3%の非イオン性界面活性剤、特にトリトンX−100の存在下でスクロース勾配から収集されたウイルス貯留の連続保管ステップをさらに含む。
ワクチンの安全性のため、精製プロセスの様々なステップにわたってウイルス懸濁液の感染力を低減することが必要とされる場合がある。ウイルスの感染力は、ウイルスが細胞系で複製する能力により決定される。したがって、本発明による方法は、随意に、少なくとも1つのウイルス不活化ステップを含む。以前に記述されているように、不活化は、本方法の任意の好適なステップでBPLを使用することにより実施することができる。あるいは、不活化は、加熱、ホルムアルデヒド、又はUV等の当技術分野で公知の他の不活化剤を用いて達成することができる。特定の実施形態では、本発明による方法は、BPL、ホルムアルデヒド、及びUVから選択される1つ又は複数の不活化剤を用いてウイルスを不活化することをさらに含む。1つの特定の実施形態では、本発明による方法は、少なくとも1つのBPL処理ステップをさらに含む。特定の実施形態では、本発明による方法は、少なくとも1つのBPL処理ステップ及び少なくとも1つのホルムアルデヒド処理ステップをさらに含む。ホルムアルデヒド及びBPLは、連続して任意の順序で使用することができ、例えばホルムアルデヒドは、BPLの後に使用される。ウイルス不活化の条件は様々であってもよく、組織培養感染量(TCID50/ml)を測定することにより残留ウイルス感染力を評価することにより特に決定されるだろう。
ワクチンを含む本発明の免疫原性組成物は、随意にワクチン用に通例となっている添加剤、特に組成物を受容する患者で誘発される免疫応答を増加させる物質、つまりいわゆるアジュバントを含有することができる。
1つの実施形態では、免疫原性組成物は、好適な医薬担体と混合された、本発明により取得可能なウイルス又はそのウイルス抗原を含む。特定の実施形態では、それらはアジュバントをさらに含む。
アジュバント組成物は、代謝可能な油及び乳化剤を含む水中油型乳剤を含んでいてもよい。任意の水中油型組成物がヒト投与に好適であるためには、乳剤系の油相は、代謝可能な油で構成されていなければならない。代謝可能な油という用語の意味は、当技術分野で周知である。代謝可能とは、「代謝により変換することが可能である」と定義することができる(Dorland’s Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company, 第25版 (1974))。油は、任意の植物油、魚油、動物油、又は合成油であってもよく、受容者に毒性でなく、代謝により変換が可能である。ナッツ、種子、及び穀物は、植物油の一般的供給源である。合成油も本発明の一部であり、NEOBEE(登録商標)等の市販の油が含まれていてもよい。
特に好適な代謝可能な油は、スクアレンである。スクアレン(2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン)は、鮫肝油中に多量に見出され、オリーブ油、麦芽油、米糠油、及び酵母中により少量見出される不飽和油であり、本発明で使用するために特に好ましい油である。スクアレンは、コレステロール生合成の中間体であるという事実により、代謝可能な油である(メルクインデックス、第10版、エントリー番号8619)。本発明の更なる実施形態では、代謝可能な油は、免疫原性組成物中に、組成物の全容積の0.5%〜10%(容積/容積)の量で存在する。
水中油型乳剤は、乳化剤をさらに含む。乳化剤は、適切にはポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってもよい。さらに前記乳化剤は、好適には、ワクチン又は免疫原性組成物中に、組成物の全容積の0.125〜4%(容積/容積)存在する。
本発明の水中油型乳剤は、随意にトコールを含む。トコールは、当技術分野で周知であり、欧州特許第0382271号明細書に記述されている。好適には、トコールは、α−トコフェロール又はα−トコフェロールスクシナート(ビタミンEスクシナートとしても知られている)等のその誘導体であってもよい。前記トコールは、好適にはアジュバント組成物中に、免疫原性組成物の全容積の0.25%〜10%(容積/容積)の量で存在する。
水中油型乳剤を生成する方法は、当業者に周知である。一般的には、その方法は、油相(随意にトコールを含む)をPBS/TWEEN80(商標)溶液等の界面活性剤と混合し、その後ホモジナイザーを使用して均質化することを含み、少量の液体を均質化するには、混合物を注射器針に2回通すことを含む方法が好適であることは、当業者であれば明らかだろう。同様に、当業者であれば、マイクロ流動化器(microfluidiser)(M110Sマイクロ流体装置、最高50回通過、最大圧力入力6bar(約850barの出力圧力)で2分間)による乳化プロセスを調整して、より少量又はより大量の乳剤を生成することができるだろう。この調整は、要求直径の油滴で調製が達成されるまで、結果的に生じる乳剤の測定を含む日常的な実験作業により達成することができるだろう。
水中油型乳剤では、油及び乳化剤は水性担体中にある。水性担体は、例えばリン酸緩衝生理食塩水であってもよい。
特に、本発明の水中油型乳剤系は、サブミクロン範囲の小さな油滴サイズを有する。好適には、液滴サイズは、直径が120〜750nmの範囲、特に120〜600nmのサイズであろう。更により具体的には、水中油型乳剤は、強度(intensity)で少なくとも70%が、500nm未満の直径であり、特に強度で少なくとも80%が、300nm未満の直径であり、その中でも特に強度で少なくとも90%が、120〜200nmの範囲の直径である油滴を含有する。
油滴サイズ、つまり直径は、本発明によると、強度により与えられる。油滴サイズの直径を強度により決定するには幾つかの方法がある。強度は、サイズ測定装置、好適には、Malvern Zetasizer 4000又は好適にはMalvern Zetasizer 3000HS等の動的光散乱を使用することにより測定される。詳細な手順は、実施例II.2に示されている。第1の可能性は、動的光散乱(PCS−光子相関分光法)によりz平均直径ZADを決定することであり、この方法では、多分散性指数(PDI)がさらにもたらされ、ZAD及びPDIは両方ともキュミュラントアルゴリズムで算出される。これらの値は、粒子屈折率に関する知識を必要としない。第2の手段は、別のアルゴリズムであるContin、又はNNLS、又は自動化「Malvern」アルゴリズム(サイズ測定装置により提供される初期設定アルゴリズム)のいずれかにより全粒度分布を決定することにより、油滴の直径を計算することである。ほとんどの場合、複雑な組成物の粒子屈折率は未知であるため、強度分布のみが考慮され、必要に応じて、強度平均はこの分布からもたらされる。
アジュバント組成物は、トール様受容体(TLR)4アゴニストをさらに含んでいてもよい。「TLR4アゴニスト」とは、リガンドとして直接的に、又は内在性若しくは外来性リガンドの生成により間接的に、TLR4シグナル伝達経路を介してシグナル伝達応答を引き起こすことが可能な成分を意味する(Sabroe et al, JI2003 p1630−5)。TLR4は、リピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドA、又はその中でも特に3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)であってもよい。
3D−MPLは、GlaxoSmithKline Biologicals North America社によるMPL(登録商標)の商標で入手可能であり、IFN−g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞応答を主に促進する。3D−MPLは、英国特許出願公開第2 220 211号明細書に開示されている方法により生成することができる。化学的には、これは、3、4、5、又は6つのアシル化鎖を有する3−脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。特に、本発明のアジュバント組成物では、小粒子3D−MPLが使用される。小粒子3D−MPLは、0.22μmフィルターで滅菌ろ過することができるような粒子サイズを有する。そのような調製物は、国際公開第94/21292号パンフレットに記述されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、TLR4アゴニストであると考えられており、これらに限定されないが、以下のものを含む:
OM174(2−デオキシ−6−O−[2−デオキシ−2−[(R)−3−ドデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−4−O−ホスホノ−β−D−グルコピラノシル]−2−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]−α−D−グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)、(国際公開第95/14026号パンフレット)
OM294 DP (3S,9R)−3−[(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9(R)−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール,1,10−ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(国際公開第99/64301号パンフレット及び国際公開第00/0462号パンフレット)
OM197 MP−Ac DP(3S−、9R)−3−[(R)−ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−4−オキソ−5−アザ−9−[(R)−3−ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン−1,10−ジオール,1−ジヒドロゲノホスフェート10−(6−アミノヘキサノアート)(国際公開第01/46127号パンフレット)
使用することができる他のTLR4リガンドは、国際公開第9850399号パンフレット又は米国特許第6303347号明細書(AGPを調製するためのプロセスも開示されている)で開示されているもの等のアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、又は米国特許第6764840号明細書で開示されているようなAGPの薬学的に許容される塩である。幾つかのAGPは、TLR4アゴニストであり、幾つかは、TLR4アンタゴニストである。両方ともアジュバントとして有用であると考えられる。加えて、さらに好適なTLR−4アゴニストは、米国特許出願公開第2003/0153532号明細書及び米国特許出願公開第2205/0164988号明細書で開示されている。
本発明は、ワクチンを含むインフルエンザウイルス免疫原性組成物を調製するために特に好適である。種々の形態のインフルエンザウイルスが、現在入手可能である。それらは、一般的に、生ウイルス又は不活化ウイルスのいずれかに基づく。不活化ワクチンは、全ビリオン、分割ビリオン、又は精製された表面抗原(HAを含む)に基づいていてもよい。インフルエンザ抗原は、ビロソーム(無核酸のウイルス様リポソーム粒子)の形態で提示することもできる。
ウイルス不活性化法及び分割法は上述されており、インフルエンザウイルスに適用可能である。
ワクチンに使用するためのインフルエンザウイルス株は、季節毎に変化する。現行の大流行間期では、ワクチンは、典型的には2つのインフルエンザA型株及び1つのインフルエンザB型株を含んでいる。三価ワクチンが典型的であるが、四価等のより高い価数も本発明で企図される。本発明は、大流行株(つまりワクチン受容者及び一般ヒト集団が免疫学的に未感作である菌株)に由来するHAを使用することもでき、大流行株のインフルエンザワクチンは一価であってもよく、大流行株で補完された通常の三価ワクチンに基づいていてもよい。
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルス及び/又はインフルエンザB型ウイルスを含む、1つ又は複数のインフルエンザウイルス株に由来する抗原(複数可)を含んでいてもよい。特に、2つのインフルエンザA型ウイルス株及び1つのインフルエンザB型ウイルス株に由来する抗原を含む三価ワクチンが、本発明により企図される。
本発明の組成物は、一価組成物、つまり1つの菌株タイプのみ、つまり季節性株のみ又は大流行株のみを含むものに制限されない。本発明は、季節性株及び/又は大流行株の組合せを含む多価性組成物も包含する。特に、3つの季節性株及び1つの大流行株を含み、アジュバント化されていもよい四価組成物は、本発明の範囲内にある。本発明の範囲内にある他の組成物は、H1N1、H3N2、及びB型株等の、2つのA型株及び1つのB型株を含む三価組成物、並びにH1N1、H3N2、B/Victoria、及びB/Yamagata等の異なる系統の2つのA型株及び2つのB型株を含む4価組成物である。
HAは、現行の不活化インフルエンザワクチンの主な免疫原であり、ワクチン用量は、典型的にはSRDにより測定されるHAレベルを基準にすることにより正規化される。既存のワクチンは典型的には1株当たり約15μgのHAを含有しているが、例えば、小児用には、又は大流行の状況においては、又はアジュバントを使用する場合は、より低い用量を使用することができる。半量(つまり1株当たり7.5μgのHA)又は4分の1量等の分割量が使用されており、同様により高い用量、特に3倍又は9倍の用量も使用されている。したがって、本発明の免疫原性組成物は、1インフルエンザ株当たり0.1〜150μg、特に0.1〜50μg、例えば0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μg等のHAを含んでいてもよい。特定の用量には、1株当たり約15、約10、約7.5、約5μg、1株当たり約3.8μg、及び1株当たり約1.9μgが含まれる。
特定の菌株のインフルエンザウイルスが精製されれば、例えば、上述のような三価ワクチンを製作するために、他の菌種に由来するウイルスと混合することができる。ウイルスを混合し、DNAを分解し、多価性混合物からそれを精製するのではなく、各菌株を別々に処理し、一価性バルクを混合して、最終多価性混合物を得ることがより好適である。
本方法で使用される核酸分解処理は、本方法により生産されるウイルス又はウイルス抗原の免疫原性の保存を可能にするため、本発明の方法は、特に有用である。特に、本発明の方法により生産されるインフルエンザウイルス、その中でも特にHA抗原は、従来の卵で生産されるHA抗原と少なくとも同じ程度に免疫原性である。免疫原性を評価する方法は、そのための古典的な技術に精通している当業者の知識の一部である。
残留宿主細胞核酸の測定は、当業者の通常の能力内にある。DNA量及びDNAサイズを両方とも測定するために使用されるアッセイは、典型的には検証済アッセイであろう。検証済アッセイの性能特性は、数学的及び数量化可能な用語で記述することができ、その考え得る誤差発生源が特定されているだろう。このアッセイは、一般的には、正確性、精度、特異性等の特徴について試験されているだろう。このアッセイが、例えば既知の標準量の宿主細胞DNAに対して較正され試験されていれば、定量的DNA測定を日常的に実施することができる。例としては、DNA定量化の3つの主要技術を使用することができる。第1の方法であるMolecular Device社製のThreshold(商標)系は、そのサイズに関わりなく全DNAの存在の検出を可能にする感度の高い正確な方法である。したがって、本発明の意味では、「全DNA」という用語は、任意のサイズのDNAとして理解されるべきである。しかしながら、この方法では、検出される残留DNAのサイズを特定することは可能ではない。残留宿主細胞DNAのサイズを特徴付けるためには、サザンブロット等のハイブリダイゼーション法及び定量PCR(Q−PCR)を使用することができる。これらの技術は全て、本発明の方法の様々なステップにわたって残留宿主細胞DNAの量及びサイズをモニターするために使用することができる。サザンブロットは、残留宿主細胞DNAのサイズ分布の視覚化を直接的な方法で可能にする。サイズ分布は、既知量の適切な標準DNA、例えば宿主細胞ゲノムDNAと比較して、例えば、PhosphoImager(Storm 860型;Amersham Biosciences社製)により、ImageQuant TL分析ソフトウェア(Amersham社製)を使用して半定量化することができる。言い換えれば、サザンブロット分析は、試験される試料内に存在するDNAのサイズ(複数可)及び量を決定することを可能にする。その一方で、Q−PCRは、任意の所望サイズの任意の所望の特定配列を標的とすることが可能であり、試験される試料中のその存在が定量化される。本発明による方法は、残留宿主細胞DNAのサイズ及び量を大きく低減することが目的であるため、予測される残留DNAが非常に少量である故に、残留DNAを測定するために使用される方法の感度が問題となる場合がある。特に、大量の出発物質が必要とされる場合があり、DNA濃縮ステップの実施が必要とされる場合がある。この種の問題を克服する非限定的な方法は、ウイルス生産に使用された宿主細胞のゲノムに非常に豊富に存在する適切なサイズの配列をQ−PCRで標的とすることである。例えば、2つの高度反復配列がイヌゲノムで同定されており、そのサイズは、それぞれ63塩基対及び314塩基対である。試験される試料がイヌ腎臓に由来するMDCK細胞を起源とする場合、これら配列を選択することにより、アッセイの感度が増加する。これら2つの配列は、短鎖散在反復DNA配列(SINE)及び長鎖散在反復DNA配列(LINE)と呼ばれる(Bentolila et al. 1999, Mamm. Genome 10(7):699-705)。これらSINE及びLINE配列は、アヒル等の他の種でも同定されている(Walker, J.A., et al. 2004. Genomics. 83(3): 518-527)。したがって、任意の所望の種のゲノムの任意の適切な配列を選択すること、Q−PCRによりその配列の増幅を可能にするプライマーを設計すること、及び残留DNAのサイズ分布及び量を評価するための分析ツールとしてその配列を使用することは、本発明の範囲内にある。アッセイの感度を増加させることにより、出発物質の量及びその物質中のDNA濃度は、もはやそれほど重要ではなくなる。例えば、生産プロセスの任意のステップで得られたウイルス調製物、特に、本発明による方法の終わりで取得された精製ウイルスから、いかなる以前のDNA抽出及び/又は濃縮ステップに移行せずに、直接Q−PCRを実施することが可能であり得る。試験される試料中に潜在的な阻害分子が存在するため、反応中にPCR阻害が起こる場合があるので、各Q−PCR反応は重複して実施することが望ましい場合がある。2つの反応のうちの1つには、Q−PCR阻害がもしあればそれを推定し、必要に応じて最終値を修正するために、ウイルス生産に使用したものと同じ供給源に由来する既知量のDNAを混ぜる(spike)べきである。DNA抽出/濃縮のステップが実施される場合、そのステップ中に潜在的な物質の損失が生じる場合があるため、DNA回収の効率を評価することが有用である場合がある。例えば、損失の程度がDNA断片のサイズにより変わる場合があるため、DNA抽出/濃縮に移行する前に、既知量の種々のサイズの特定の外部DNA増幅産物を試料に混ぜてもよい。標的配列を増幅するためのQ−PCRと平行に、様々な外部DNA増幅産物を増幅するQ−PCRを実施して、混ぜられた断片のDNA回収率を決定する。回収が完全でない場合、所望の標的配列の量を推定する最終値は、試料中に存在するDNAの量を正確に反映し、それを過小評価しないように、回収率に従って修正される。Q−PCRは、任意の所望の長さの任意の所望のDNA配列を定量化することが可能であり、単一試料内の多数の異なる配列の定量化を可能にする有利な技術である。Q−PCR反応に移行する際は、幾つかのプライマー組を、同じ反応チューブ内で混合してもよく、又はプライマー組の数と一致する数の一定量に同一試料を等分してもよく、そのためPCR条件は、各プライマー組の特徴により変わる場合がある。
したがって、本発明の態様によると、細胞培養ベースのウイルス生産方法の様々なステップにわたってDNAプロファイルをモニターすることが可能である。特に、全DNA量は、例えばThreshold(商標)アッセイでDNA量を測定することによりモニターすることができ、全DNA量を低減させるにあたって、各ステップの効率及びプロセス全体の全体的効率をそれぞれ反映する、当該プロセスの各ステップの除去倍率及び総除去倍率を確立することが可能である。任意の所望のサイズの任意の特定配列の量も、適切な組のプライマーを設計し、Q−PCRによりそれらを増幅することにより、ウイルス生産プロセスにわたってモニターすることができる。また、残留細胞DNAの分布は、サザンブロット分析により、プロセスの任意の時点で評価することができる。
ある実施形態では、本発明の方法により得られるウイルス又はそのウイルス抗原は、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng未満、及び0.01ng未満でさえある60塩基対長のDNA断片を含む。
更なる実施形態では、本発明のウイルス又はそのウイルス抗原は、0.5ng未満、特に0.1ng未満、及び0.01ng未満でさえある300塩基対長のDNA断片を含む。
また更なる実施形態では、本発明のウイルス及びウイルス抗原は、1ng未満、特に0.5ng未満、その中でも特に0.1ng未満、及び0.01ng未満でさえある60塩基対長のDNA断片、並びに0.5ng未満、その中でも特に0.1ng未満、及び0.01ng未満でさえある300塩基対長のDNA断片を含む。
本発明は、下記の非限定的な例を参照することによりさらに説明される。
ウイルス単離段階中にエンドヌクレアーゼを用いて実施された1つのDNA分解ステップの存在下における、MDCK細胞でのインフルエンザウイルスの生産(JP115−Jiangsu B型株、NCP117−New Caledonia A型株)
1.ウイルス増殖
MDCK接着細胞を、36.5℃で、20リットルの撹拌バイオリアクター規模の灌流培養法によりマイクロキャリア上で増殖させた。増殖段階の後、適切な細胞密度(7×10細胞/ml超)に到達したら、インフルエンザウイルス(1×10−5の感染多重度)を灌流法で細胞に接種し、温度を33℃に切替えた。ウイルスを、接種後の3及び4日目(JP115)に、又は接種後の3、4、及び5日目(NCP117)に、灌流により細胞培養培地を収集することによって回収した。灌流回収物を貯留し、次の処理まで2〜8℃の範囲の温度で保管した。
2.ウイルス単離
a)ウイルス回収物を、5μm−0.5μm−0.2μmの公称多孔度を有する3つの異なるデプスフィルターで構成される連続ろ過で清澄化した。清澄化された回収物を、2〜8℃の範囲の温度で終夜保管した。
b)その後、清澄化された回収物を、750kDの中空糸膜で限外ろ過することにより10倍に濃縮し、125mMクエン酸及び0.001%トリトンX−100 pH7.4を含有する5容積のPBS、及び10mMトリス、2mM MgCl、100μM CaCl、0.001%トリトンX−100 pH8の4容積に対してダイアフィルトレートした。
c)濃縮液を限外ろ過システムから取り出し、水浴で37℃まで暖めた。Benzonase(商標)(Merck社製)を270単位/ml(JP115)又は135単位/ml(NCP117)の終濃度で濃縮液に添加することにより、DNA分解を実施し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。
d)次に、400mlのローターを使用して、限外ろ過濃縮液をスクロース勾配(0〜55%)超遠心分離にかけ、ウイルス及び夾雑物をそれぞれの密度に到達するまで勾配を移動させる。濃縮液を全て勾配に負荷したら、60分間の取扱時間で、ほとんどのウイルスを勾配内でその密度に到達させることが可能である。ウイルス粒子を少数の画分内に濃縮した。産物画分は、125mMクエン酸及びスクロースを含有するPBS pH 7.4に入れた。精製された全ビリオンを、およそ28〜50%の範囲のスクロースから貯留した。この範囲は、抗HA及び抗MDCK抗体を使用して、SDS−PAGE及びウエスタンブロット分析からのプロファイルに基づいて決定された。全ビリオンを貯留した画分を、2〜8℃の範囲の温度で保管し、その後PBS pH7.4(NCP117)又はPO 66mM pH7.4(JP115)で9〜10倍に希釈した。
e)ウイルスをさらに精製し、同時にウイルスを分割するため、第2のスクロース勾配超遠心分離を実施した。1%トリトンX−100、1%デオキシコレート、及び0.5mMα−トコフェリル水素スクシナートの組合せ(JP115)、又は1%トリトンX−100及び0.5%ラウリル硫酸ナトリウムの組合せ(NCP117)をスクロース層に添加して、界面活性剤ミセル障壁を達成した。この界面活性剤障壁に進入する全ウイルスが分割された。ウイルス膜タンパク質赤血球凝集素(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)を含有するウイルス断片は、ミセル密度部分に移動した。残りのビリオン、宿主細胞タンパク質夾雑物の幾つか及びDNAは、ウイルスタンパク質と共には貯留されないより高いスクロース濃度の画分に移動した。およそ15〜40%スクロースの範囲の画分に存在するウイルスタンパク質を貯留した。この範囲は、抗HA及び抗MDCK抗体を使用して、SDS−PAGE及びウエスタンブロット分析からのプロファイルに基づいて決定された。ウイルスタンパク質を含有する画分貯留は、PBS pH7.4に入れた。その後、この貯留を全タンパク質含有量についてアッセイし、0.01%Tween80及びα−トコフェリル水素スクシナート0.1mM pH7.4(NCP117)を含有するPBS又はPO 66mM pH7.4(JP115)で、250μgタンパク質/mlに希釈した。
f)ホルムアルデヒドを、界面活性剤で不活化されたウイルス貯留に添加して、ウイルスをさらに不活化した。ホルムアルデヒドは、250μgの全タンパク質につき50μgの比率で添加する。ホルムアルデヒド添加直後に、0.2μm滅菌等級ろ過を実施した。インキュベーションは、無菌条件下、室温で72時間継続する。
g)ホルムアルデヒド不活化からの産物を、200mM NaCl(JP115)又は250mM(NCP117)で補完し、陰イオン交換膜でろ過して、膜に結合する残留DNAを除去した。NaClの添加は、産物が膜に結合するのを防止するものであり、したがって前記産物は、膜通過画分に収集される。
h)バイオビーズ−SM2、つまり界面活性剤吸着に対して高度に特異的な区域を有する微孔ジビニル−ベンゼン架橋ポリスチレンを、陰イオン交換膜通過画分にバッチで添加し、撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。このステップの終わりで、バイオビーズ−SM2を取り除いた。
i)その後、ウイルスタンパク質を濃縮し、30kDのセルロース再生平板Hydrosart膜(Sartorius社製)を使用して、0.01%Tween80及び0.1mMα−トコフェリル水素スクシナートを含有するPBS pH7.4に対してダイアフィルトレーションし、残留スクロース及びホルムアルデヒド量を低減した。
j)その結果生じたバルクを、クラス100の無菌区域で0.2μm膜によりろ過した。必要に応じて、バルクを、0.01%Tween80及び0.01%トリトンX−100を含有するPBS pH7.4でろ過中に希釈して、全タンパク質濃度をおよそ450μg/mlに調整した。その結果生じた無菌製剤を、一価精製バルクと称した。
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数ステップのDNA分解の存在下における、MDCK細胞でのインフルエンザウイルス生産
1.ウイルス増殖
MDCK接着細胞を、36.5℃で、20リットルの撹拌バイオリアクター規模の灌流培養法によりマイクロキャリア上で増殖させた。増殖段階の後、適切な細胞密度(7×10細胞/ml超)に到達したら、インフルエンザウイルス(1×10−5の感染多重度)を灌流法で細胞に接種し、温度を33℃に切替えた。Benzonase(商標)(Merck社製)を、下記条件のうちの1つに従って添加した。
(i)接種後3日目及び4日目に灌流中1.5単位/mlの終濃度(JP125−Jiangsu B型株、NCP127−New Caledonia A型株、DFC1AFA002−New Caledonia A菌株、DFC2AFA001−New York A型株、及びDFC3APA002−Jiangsu B型株)、
(ii)接種後1、2、3、及び4日目にバイオリアクター中1単位/mlの終濃度(B005−New York A型株)、
(iii)回収物貯留中で3単位/mlの終濃度を得るため、灌流の4日目(JP128−Jiangsu B型株)。
ウイルスを、接種後3、4、及び5日目に条件(i)及び(ii)で、又は2、3、4、及び5日目に条件(iii)で、灌流により細胞培養培地を収集することによって回収した。灌流回収物を貯留し、次の処理まで4℃で保管した。
条件(iv)では、接種後3、4、及び5日目の灌流回収物を貯留した後、Benzonase(商標)(Merck社製)を、10単位/mlの終濃度でウイルス回収物(NCP124−New Caledonia A型株)に添加した。その結果生じた混合物を、室温で1時間インキュベートした。
2.ウイルス単離
清澄化の前に0.02%の終濃度でTween80をNCP127ウイルス回収物に添加したこと以外は実施例1のようにステップa)及びb)に従って、異なるウイルス回収物を清澄化し、限外ろ過にかけた。
c)濃縮液を全て限外ろ過システムから取り出し、水浴で37℃まで暖めた。DNA分解は、100単位/ml(NCP124)、200単位/ml(JP125及びDFC3APA002)、又は135単位/ml(NCP127、JP128、DFC1AFA002、及びDFC2AFA001)の終濃度で、Benzonase(商標)(Merck社製)を濃縮液に添加することにより実施し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。
残りの単離は、下記の改変を有するステップd)〜j)に従って実施例1に記述されているように実施した。
− β−プロピオラクトン(BPL)処理ステップを、ステップd)の前(NCP124、NCP127、DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002)、又は直後(JP125及びJP128)のいずれかで実施し、その間にBPLを、0.05%の終濃度(NCP124、DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002)又は0.1%の終濃度(JP125)で添加し、2〜8℃の範囲の温度(JP125及びNCP124)又は室温(DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002)で終夜インキュベートした。
− NCP124試料は、第2のBenzonase分解前、すなわち清澄化ステップa)の直後、かつ限外ろ過ステップb)の前に、第1のBPL処理ステップも有しており、BPLは0.05%の終濃度で添加し、2〜8℃の範囲の温度で終夜インキュベートした。
− NCP124試料に由来する全ウイルスを、ステップe)で、トリトンX−100 1.5%+ラウリル硫酸ナトリウム 1%の混合物の存在下で分割した。
− ステップe)の分割超遠心分離の後、試料DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002をろ過し、0.3%のトリトンX−100で補完し、ステップf)でさらに処理する前に室温で72時間保管しておいた。
残留DNAのサイズ及び量を測定するための方法
1.MDCK細胞に由来するDNAのDNA試料処理
ウイルス回収物又は精製バルク(30ml)を、表示されているように、0.1%SDSの存在下において100μg/mlプロテイナーゼKを用いて55℃でまず終夜処理し、その後標準的なフェノール/クロロホルム抽出を行った。その後、その結果生じた溶液を、Centriplus遠心ろ過デバイス(Millipore社製、YM−30 4422)を使用して濃縮した。次に、試料を5%RNase(Roche社製)を用いて90分間37℃で処理し、その後Microcon遠心ろ過デバイス(Millipore社製、YM−50 42416)を使用して、第2の濃縮ステップを行った。最終容積を2つの画分に分割し、第1の画分は、アガロースゲル及びサザンブロット分析によるDNA視覚化を目的とし、第2の画分は、Q−PCR定量化を目的とした。
2.EB66(登録商標)細胞に由来するDNAのDNA試料処理
精製バルク(4ml)を、0.1%SDSの存在下で200μg/mlプロテイナーゼKを用いて55℃で2時間処理した。その後、DNAを、製造業者の説明書に従ってExtraction Nuclisens Magneticキット(BioMerieux社製)で抽出する。
3.MDCK細胞及びEB66(登録商標)細胞に由来するDNAに適用可能なアガロースゲル
DNA試料を、臭化エチジウムを含有する1.25%アガロースゲルに負荷し、DNAを紫外線で視覚化した。画像を撮影した。
4.MDCK細胞由来のDNAを増幅するために特異的に設計されたQ−PCR
a)設計:それぞれ63塩基対(bp)及び314bpの2つの高度反復イヌ配列を特異的に増幅及び定量化するように設計された定量PCR(Q−PCR)ベースの手法を開発した。これら2つの配列は、それぞれ短鎖散在反復DNA配列(SINE)及び長鎖散在反復DNA配列(LINE)である。LINE及びSINE配列を増幅するために使用されたプライマー及びプローブは、表1に列挙されている。
Figure 2012507272
SINE Q−PCRは、蛍光性の副溝結合(MGB)プローブを使用するTaqManに基づくPCRであり、LINE Q−PCRは、Sybergreenに基づくPCRである。これらの2つのPCRは、それぞれ63bp及び314bpの増幅産物を産生することが予測される。
Q−PCRによる定量曲線を確立するための適切な陽性対照を生成するために、MDCK細胞のゲノムDNAを、製造業者の推奨に従ってQiagen社製ゲノム抽出キット(カタログ番号13362)により抽出及び精製した。その後、抽出したDNAは、制限酵素EcoRI/XhoIで同時消化するか、又はPst1で消化するかのいずれかであった。その後、その結果生じたDNA断片を、製造業者の推奨に従ってThreshold(商標)アッセイ(Molecular Devices Corporation社製)(第4節を参照)により定量化した。これら陽性対照を下述のように使用して、残留MDCK DNAの定量化用であり、PCR阻害を検出するように設計された検証実験および実験用でもある標準曲線を確立した。
その後、最終容積が50μlに達するように、試料をTaqGold DNAポリメラーゼキット混合物(Applied biosystems社製)に添加した。PCR反応を、ABI7900型サーモサイクラーで実施し、50℃で2分間の第1のステップ、その後95℃で10分間の変性ステップで開始し、次いで94℃で15秒間の第1のステップ、その後に60℃で1分間の第2のステップを含む40サイクルを行った。
b)Q−PCR阻害の検出:PCR阻害がQ−PCR実験中に起こらないことを評価するために、各Q−PCRを重複して実施した。これら2つの反応のうちの1つでは、既知量の消化MDCK DNAを混ぜ、Q−PCR阻害を評価するために使用した。阻害を計算し、SINE及びLINE Q−PCR定量化データを補正するための値として使用した。
c)DNA回収率の決定:DNA断片回収の効率に及ぼす抽出/濃縮手順(第1節のDNA試料処理を参照)の効果を、種々の長さの4つの外部DNA増幅産物:(i)ライノウイルス5’NC配列に由来する659bpの増幅産物、(ii)パラインフルエンザ1型ウイルスのM遺伝子に由来するヒト305bp増幅産物、(iii)アデノウイルスBCのヘキソン遺伝子に由来する138bpの増幅産物、及び(iv)ヒトポリオーマウイルスゲノムのgp2遺伝子に由来する87bpの増幅産物を試料に混ぜることにより評価した。これら外部DNA増幅産物(各100ng)を、30mlの精製バルクに添加した。Q−PCRでイヌLINE及びSINE配列を特異的に増幅するのと並行して、4つの異なる外部DNAを標的とするQ−PCRを実施して、混ぜた4つの断片のDNA回収率を決定した。回収率を計算し、SINE及びLINE Q−PCR定量化データを補正するための値として使用した。
d)Q−PCR検証:両Q−PCRの効率、再現性、感度、及び特異性を決定した。EcoRI/XhoIで同時消化されたか又はPstIで消化されたMDCK DNAの連続10倍希釈(0.01pg〜10pgの範囲)を、これら実験で使用した。希釈物は、2人の専門家により調製されており、各希釈は重複して試験されているので、両Q−PCRの効率、再現性、及び感度の決定が可能だった。特異性は、両Q−PCRから生じる増幅産物をアガロースゲルに負荷して、予測サイズの固有バンドが観察できることを確認することにより決定した。
結果 − 結論
結果は、図1Aに示されているように、優れた線形性を実証し、そこからSINE及びLINE Q−PCRの効率が、それぞれ100%及び85%であると計算された。SINE及びLINE Q−PCRの再現性を反映するR値は、それぞれ0.999及び0.9989であると計算され、両試験の感度が10fgのDNAであること、つまり試験される試料内の10fg未満の量のDNAは検出されないことが決定された。
Q−PCR中に生成される蛍光シグナルが標的SINE及びLINE配列の増幅に特異的だったことを実証するため、Q−PCR産物をアガロースゲルに負荷し、予測される63bp(SINE Q−PCR)及び314bp(LINE Q−PCR)断片の存在を実証した。結果は、図1Bに示されており、両Q−PCRの予測分子量の固有バンドの明白な視覚化を可能にした。
本発明で開発されたQ−PCRは、抽出/濃縮手順から生じた試料内の非常に少量の残留DNAを検出するように設計されているので、この手順がDNA回収率に影響を及ぼす場合があるかどうかを調査することは非常に重要である。実施された上述のような混合実験全てから、138bp、305bp、及び659bpの断片はおよそ50%の回収率(異なる実験から得られた回収率に基づいて計算された平均)で検出されたが、87bpの断片は25%未満の回収率で検出されたことが計算により求められた。
5.EB66(登録商標)細胞由来のDNAを増幅するために特異的に設計されたQ−PCR
共通のプローブ(P123)、共通の順方向プライマー(TMF123)、及び3つの異なる逆方向プライマー(TMR100、TMR200、及びTMR300)を使用することにより、99塩基対(bp)、185塩基対(bp)、及び280塩基対(bp)のアヒル配列を特異的に増幅し定量化するように設計された定量PCR(Q−PCR)ベースの手法(図1Cを参照)を開発した。これら3つの配列は、アヒルゲノムの長鎖散在反復DNA配列(LINE)内に位置する。これら3つの配列を増幅するために使用されるプライマー及びプローブは、表2に列挙されている。
Figure 2012507272
Q−PCRでは、特定のPCR産物がPCRサイクル中で蓄積していくにつれて、その検出が可能になるように蛍光発光性プローブが使用される。蛍光発光性プローブは、共有結合で結合された5’−リポーター色素及び3’−消光体色素を有するオリゴヌクレオチドで構成される。PCR反応中に、Taq DNAポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性は、蛍光発光性プローブを切断する。5’蛍光リポーター色素が放出され、PCR産物の蓄積は、蛍光を測定することにより検出することができる。配列生成の上昇は、リアルタイムでモニターされ、データは、Applied Biosystems社製(ABI)7900HTサーモサイクラーのソフトウェアによりPCRの全体にわたって収集される。残留宿主細胞DNAの絶対量は、既知量のEB66(登録商標)ゲノムDNAから生成された標準曲線を使用して計算することができる。この目的のために、10個のEB66(登録商標)細胞に由来するゲノムDNAを、製造業者の説明書に従って、ゲノム−チップG500(Qiagen社製)を使用して、血液及び細胞培養DNA maxiキット(Qiagen社製)で抽出し、DNAを滅菌水中に溶出した。その後、DNAを制限酵素Pst1/Ssp1で同時消化した。消化した後、DNAを古典的フェノール/クロロホルムで処理し、その後エタノール沈澱ステップを行って精製した。その後、DNAを水中に溶出し、Threshold(商標)アッセイで定量化した(第5節を参照)。標準曲線は、1ngから開始して10fgまで連続10倍希釈した消化EB66(登録商標)ゲノムDNAでQ−PCR反応を実施することにより確立した。
3つのQ−PCR反応の再現性及び感度を確立するために、同時消化され定量化されたEB66(登録商標)ゲノムDNAの希釈物を、上述のように調製した。99bp、185bp、及び280bpの3つの配列を増幅するためのQ−PCRを、独立して各希釈毎に重複して実施した。PCR反応を、ABI7900型サーモサイクラーで実施し、50℃で2分間の第1のステップ、その後95℃で10分間の変性ステップで開始し、次いで94℃で15秒間の第1のステップ、その後に60℃で1分間の第2のステップを含む40サイクルを行った。各Q−PCR反応について得られた結果は、表3に示されている。
Figure 2012507272
結果 − 結論
3つのQ−PCRは、同じ線形性及び同じ感度を示す。再現性を反映するR値は、99bp、185bp、及び280bp配列について、それぞれ0.9994、0.9993、及び0.9989であると計算され、3つの試験の感度が10fgのDNAであること、つまり試験される試料内の10fg未満の量のDNAは検出されないことが決定された。
PCR阻害がQ−PCR実験中に起こらないことを評価するために、各Q−PCRを重複して実施した。これら2つの反応のうちの1つには、既知量の消化EB66(登録商標)DNAを混ぜ、Q−PCR阻害を評価するために使用した。もし何らかの阻害が存在すればそれを計算し、Q−PCR定量化データを補正するための値として使用した。DNA断片回収の効率に及ぼす、抽出/濃縮手順(第2節DNA試料の処理を参照)の影響を、抽出/濃縮の前に、試験される精製バルクに既知量の種々の長さの外部DNA増幅産物を混ぜることにより評価した。その後、混合されたバルクからDNAを抽出し、濃縮した。Q−PCRで99bp、185bp、及び280bpの配列を特異的に増幅することと並行して、様々な外部DNA増幅産物を標的とするQ−PCRを実施して、混合された断片のDNA回収率を決定した。回収率を計算し、99bp、185bp、及び280bpについて得られたQ−PCR定量化データを補正するための値として使用した。
6.MDCK細胞に由来するDNAを分析するためのサザンブロット/PhosphoImager
濃縮DNAをアガロースゲルに負荷し、断片を毛細管移動によりナイロン膜に移動させた。移動した残留DNA断片を検出するためのプローブを調製するために、抽出されたMDCK DNAを、製造業者の推奨に従って制限酵素Sau3Aで消化した。その結果生じた断片を、ランダムプライム標識キット(Roche社製)を使用して、α−[32P]dCTPで標識した。膜を50℃で終夜ハイブリダイズし、その後洗浄し、乾燥し、X線フィルムを感光させるために使用した。PhosphoImager半定量化の場合、Threshold(商標)アッセイにより測定された連続希釈した既知量のSau3消化MDCK DNAもサザンブロット分析にかけた。ハイブリダイズした膜で感光された放射線感受性スクリーンを、ImageQuant TL分析ソフトウェア(Amersham社製)を備えたPhosphoImager(Storm860型、Amersham Biosciences社製)を使用して分析した。
7.MDCK細胞及びEB66(登録商標)細胞に由来するDNAの分析に適用可能なThreshold(商標)アッセイ
Molecular Devices社製のThreshold(商標)系は、ピコグラムレベルの全DNAの定量化アッセイであり、生物学的医薬品中のDNA混入レベルをモニターするために使用されている(Briggs, J. and Panfili,P.R.,1991, Anal. Chem. 63(9):850-859)。典型的なアッセイには、ビオチン化一本鎖DNA結合タンパク質、ウレアーゼ結合抗一本鎖DNA抗体、及びDNA間の反応複合体の非配列特異的形成が関与する。アッセイ成分は全て、製造業者から入手可能な完全Total DNAアッセイキットに含まれており、反応は製造業者の推奨に従って実施される。手短かに言えば、沸騰によりDNAを変性させた後、試験される試料を液相中で、2つのDNA結合タンパク質+ストレプトアビジンの結合体を含有する単一の試薬と混合する。モノクローナル抗DNA抗体は、ウレアーゼに直接結合し、大腸菌一本鎖結合タンパク質はビオチンに結合する。両結合タンパク質は、一本鎖DNAに対して高い親和性を有し、配列特異性は弱い。ストレプトアビジンは、ビオチン化膜上に形成された複合体を特異的に捕捉するために使用され、ウレアーゼは、酵素性シグナル生成のために使用される。液相インキュベーション中に、DNA、ストレプトアビジン、及びウレアーゼを含有する複合体が形成される。その後、これら複合体を、ろ過によりビオチン化膜上に捕捉する。膜を洗浄した後で膜上に保持されているウレアーゼの量は、試料中のDNAの量と定量的に関連している。シグナル検出は、Threshold読取器中で、捕捉された複合体を含有する膜を尿素溶液と接触させることにより行う。
感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られたインフルエンザウイルス回収物中に存在する残留MDCK細胞DNAプロファイルの比較 − ウイルス増殖段階中にエンドヌクレアーゼを用いて実施された1つのDNA分解ステップ対DNA分解ステップなし
ウイルス増殖段階中に1つのDNA分解ステップを実施する効果を評価するために、実施例1(DNA分解ステップを行わない;JP115及びNCP117)及び実施例2(1つのDNA分解ステップ;JP125)により得られた回収物を、直接アガロースゲルに負荷するか、又は実施例3において指定されているようにDNA試料をQ−PCR分析用に調製するかのいずれかを行った。
DNAプロファイルを、実施例3の第3節及び第4節に指定されているように、(i)アガロースゲル及び(ii)Q−PCRにより分析した。
アガロースゲルの画像は図3に示されている。
Q−PCRにより得られたデータは、表4に列挙されている。
Figure 2012507272
結果 − 結論
図3に示されているアガロースゲルには、Benzonase(商標)ステップが実施されていないレーン、つまりJP115試料(図3に示されているゲルのレーン2を参照)及びNCP117試料(図2に示されているゲルのレーン5を参照)のおよそ20000bpサイズに、主要な強いDNAバンドがあり、高いDNA含有量を示している。
1つのBenzonase(商標)処理ステップが、ウイルス増殖段階中に実施された例の場合、つまりJP125試料(レーン8)及びNCP127試料(レーン11)において、200〜560bpのスミア又はかすかなバンドがあり、はるかに低いDNA含有量及びサイズであることをゲルが示している。
Q−PCRにより得られた結果は、Benzonase(商標)で処理しなかった細胞培養(JP115)から生じたウイルス回収物とは対照的に、Benzonase(商標)で処理した細胞培養(JP125)から生じたウイルス回収物において著しいDNA含有量の低減を示しており、Benzonase(商標)の添加は、63bp長のDNAの場合は2.5倍(JP125)、314bp長のDNAの場合は6倍(JP125)の低減をもたらしている。そのようなDNA減少倍数値を示す本発明による方法は、ウイルス単離段階に移行する前に、63bp長のDNA及び314bp長のDNAをそれぞれ60%及び80%超低減することを可能にする。並行して、SRDアッセイ(実施例9を参照)による同じウイルス回収物内に存在するHA量を測定する場合、DNA量を45μgのHAに対して正規化することが可能であり、このHA量は、各株のHAを15μg含有する三価ワクチンの予測通常HA量である(表4の最後の行)。
したがって、ウイルス増殖段階中のBenzonase(商標)ステップは、(i)DNAサイズに肯定的な効果を及ぼし、20000bpより大きいDNAバンド強度の強い低減が観察され、(ii)DNA含有量を著しく低減し、使用されるプローブ次第であるが2.5倍〜6倍の範囲の低減を示し、(iii)混入DNAに関してウイルス純度を増加させ、および(iv)DNAの混入レベル及びサイズの低減によりワクチンの安全性を増加させる。
エンドヌクレアーゼを用いて実施された2つのDNA分解ステップ後と1つのDNA分解ステップ後の、残留MDCK細胞DNAプロファイルの比較
2つのDNA分解ステップ、つまりウイルス増殖段階中のDNA分解及びウイルス単離段階中のDNA分解を実施する効果を評価するために、実施例1及び2に記述されているウイルス単離プロセスのステップc)で生じるDNA分解の前後で、実施例3において指定されているようにしてDNA試料を調製した。これは、DNA濃度をQ−PCR分析により決定することができ、ひいてはDNA log低減の計算を可能にするためである。
DNAプロファイルを、実施例3の第4節に詳述される方法でQ−PCRにより分析した。結果は表5に示されている。
Figure 2012507272
結果 − 結論
JP115実験の場合、限外ろ過濃縮液のBenzonase(商標)処理は、63bp長断片に関しては2logのDNA Log低減、314bp長断片に関しては1logの低減を誘導した。
Benzonase(商標)をウイルス増殖段階中にさらに添加したJP125実験の場合、両プローブ、63bp及び314bpのDNA log低減は、2〜3logの範囲である。したがって、第1のDNA分解がウイルス増殖段階中に既に実施されていた場合、限外ろ過濃縮液のBenzonase(商標)処理は、より高いDNA log低減を誘導した。log低減は、314bpプローブに関してより重要であることも留意されるべきである。
したがって、ウイルス増殖段階中のDNA分解ステップは、限外ろ過後のDNA分解ステップ中ではるかにより効果的なDNA分解を可能にする。
細胞培養産生インフルエンザウイルスの精製バルク中の残留MDCK細胞DNAの量の比較 − 複数のDNA分解ステップ対1つのDNA分解ステップ
宿主細胞DNA除去に及ぼす、複数のDNA分解ステップ実施の効果を評価するために、DNA含有量を、試料JP115及びJP125のウイルス単離プロセスの終わりで、つまり対応する精製バルク中で測定した。表6に示されているように、DNA含有量を古典的Threshold(商標)アッセイにより、実施例3の第7節で指定されているように分析した。
Figure 2012507272
結果 − 結論
ng/45μgHAで表されているDNA量を得るために、精製バルク中のHA含有量を、SRDアッセイ(実施例9を参照)により並行して決定し、得られたDNA値を、各株のHAを15μg含有する三価ワクチンの予測通常用量である45μgHAに対して正規化した。
このように、JP115の精製バルクで測定された最終DNA量は0.7ngであり、JP125の精製バルクは0.21ng未満の全DNAを示した。これらの値は、当局により指定されている10ng/用量の制限より著しく低い。さらに、これらの値は、複数のDNA分解ステップ、つまりエンドヌクレアーゼによる2つのステップ及びDNAアルキル化剤による1つのステップを実施することにより(JP125)、エンドヌクレアーゼを用いて実施された1つの分解ステップのみの実施と比較して(JP115)、精製バルク中の全DNAの3.3倍の減少を得ることが可能になることを示す。
DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002の実験は、JP125と同様に、2つのエンドヌクレアーゼステップ及び1つのDNAアルキル化剤ステップの組合せに基づく複数のDNA分解ステップの追加的な実験である。精製バルク中の最終DNA量の測定は、JP115と比較して、0.2〜0.40ng/45μgHAの範囲の同様に低い量を示した。
細胞培養産生インフルエンザウイルスの精製バルク中の残留MDCK細胞DNAのサイズ分布の比較 − 複数のDNA分解ステップ対1つのDNA分解ステップ
細胞培養産生インフルエンザウイルスの精製バルク中に依然として存在する残留宿主細胞DNAのサイズに関するより多くの情報を得るために、実施例3の第1節に記述されているように、試料JP115、JP125、NCP124、DFC1AFA002、DFC2AFA001、及びDFC3APA002に由来する30mlの精製バルクから、DNA試料を調製した。それら残留宿主細胞DNAプロファイルを、下記の方法により、表示されている方法で分析した。
DNAサイズを、実施例3の第6節に記述されているように、サザンブロット分析及びPhosphoImager半定量化により分析した。
代替的な独立アッセイとして、それぞれ63bp長及び314bp長の残留断片を定量化するために、実施例3の第4節で指定されているように、SINE及びLINEプライマーを用いて同じDNA試料でも、Q−PCRを行った。実施例3の第4節のb)及び第4節のc)に示されているような、得られた値を、回収及び阻害実験のデータに照らして補正した。
サザンブロット画像は、図4に示されている。サザンブロット/PhosphoImager半定量化及びQ−PCR分析の結果は、表7に示されている。
Figure 2012507272
結果 − 結論
本プロセスにおいてウイルス単離段階中で1つのBenzonase(商標)ステップのみを実施する場合、JP115試料では、高い量の残留DNA(図4Aに示されているスキャンのレーン6を参照)が検出され、300bpを超える多数の断片があることを、図4のサザンブロット画像から視覚的に推定することができる。
しかしながら、2つのBenzonase(商標)ステップ及び1つBPLステップを組合せた場合、残留宿主細胞DNAのレベル及び断片のサイズは、JP125試料に見ることができるように、非常に低い(図4Aに示されているスキャンのレーン8を参照)。100〜200bp長の範囲の断片が、ほんのわずかに検出可能だった。
この低いDNA含有量は、試料NCP124(図4Bに示されているスキャンのレーン5を参照)等の、2つのBenzonase(商標)ステップ及び1つのBPLステップを含む他の試料でも観察されている。
PhosphoImagerによる半定量化は、100〜300塩基対の範囲の残留DNA断片の量が、0.003〜0.027ng/用量の範囲だったことを示した(表7、最初の列)。DNA用量は、精製バルク中でのSRDアッセイ(実施例9を参照)によりHA含有量を並行して決定することにより得た。その後、1用量当たりのDNA値を、各株のHAを15μg含有する三価ワクチンの予測通常用量である45μgのHAに対して正規化した。得られた値は、Threshold(商標)アッセイにより既に測定されたように、当局により指定されている制限値(10ng/用量)よりはるかに低かった。300塩基対より上の残留宿主細胞DNA断片の定量化は、DNA断片サイズのこの集団が、検出可能でないか(DFC1AFA002)、又は0.001〜0.006ng/用量の範囲であるかのいずれかであったため、このDNA断片サイズの集団が希少だったことを示した(表7、2番目の列)。これらの結果は、本プロセスの効率が、残留宿主細胞DNAサイズを、主により低い300〜200塩基対の断片サイズに低減することを実証する。1つのDNA分解ステップのみを実施した試料JP115を、2つのDNA分解ステップを実施した試料JP125と比較した場合、300bpより大きな断片又は100〜300bpの範囲の断片のいずれを考慮しても、2つのステップを実施した場合に、はるかに低いDNA量が観察される。実際、300bpより大きなDNA断片の場合は180倍の低減、つまり0.18ng(JP115)対0.001ng未満(JP125)が観察され、100〜300bpの範囲のDNA断片の場合は30倍の低減、つまり0.33ng(JP115)対0.011ng(JP125)が観察された。
63塩基対及び314塩基対、つまりそれぞれSINE及びLINE配列の残留DNA断片を標的とするQ−PCR分析は、63塩基対断片が、0.003〜0.065ng/用量の範囲のレベルで検出されたことを示した(表7、3番目の列)。314塩基対断片は、ほとんどの場合、Q−PCR試験の検出限界未満であった。検出限界は、最初にPCRチューブに存在する必要があった量である10fgであった(表7、最後の4番目の列)。本実験の状況では、そのような最低値は、0.001ng/45μgDNAの最低値に相当する。サザンブロット実験で観察されたように、JP115(1つのDNA分解ステップ)をJP125(2つのDNA分解ステップ)と比較した場合、60bp長の断片又は300bp長の断片のいずれを考慮しても、2つのステップが実施された場合に、より大きいDNA量の低減が観察された。実際、300bp長のDNA断片の場合は340倍の低減(0.34対0.001)が観察され、60bp長のDNA断片の場合は80倍の低減(0.56対0.007)が観察された。これらの結果は、サザンブロット実験で観察されたように、DNAサイズも大きく低減することを示す。実際、これら低い値は、PhosphoImager半定量化で得られた値により確認されている。
したがって、精製バルク中の残留DNAを特徴付けることにより、本生産プロセスが、本プロセスに由来する全DNAを非常に低レベルに(残留DNAの量は、pg/用量の範囲にある)容易に低減するだけでなく、このDNAを小さなサイズ断片(300bp未満)に分解することが実証され、これによりワクチンの安全性がさらに保証される。
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップ後のDNA除去
試料JP125及びNCP124のウイルス単離プロセス中に、Threshold(商標)アッセイにより、表8に示されるような様々なステップにおいて、実施例3の第6節で指定されている方法で、DNA含有量を分析した。第1のステップからのDNA量をその次のステップからのDNA量で除算して得られる除去倍率を計算して、混入DNAの除去における各ステップの効率を評価した。混入DNAを除去するプロセス全体の全体的効率を評価するため、総除去倍率も計算した。
Figure 2012507272
結果 − 結論
幾つかのプロセスステップがDNA除去に寄与するが、Benzonase(商標)ステップ及び超遠心分離ステップの寄与は明らかに重要である。濃縮液をBenzonase(商標)分解にかけた後で、DNA量の劇的な減少が観察されたため(JP125試料)、Benzonase(商標)が、DNA分解をもたらすという結論をこの実験から間接的に導くことができる。分解後及びDNA量の測定前では、更なる精製ステップは実施されず、Threshold(商標)アッセイは、長さが800塩基対を超えるDNA断片の最適な検出を保証するに過ぎないため、観察された減少はDNA分解を反映する(Briggs and Panfili, 1991, Anal. Chem. 63(9): 850-859)。長さが800塩基対未満であるDNA断片は、サイズによっては、このアッセイでは効果的に検出されない場合がある。
58500及び41000の総除去倍数を有する本発明による方法は、感染細胞の細胞培養上清を収集することにより得られたウイルス回収物に最初に存在していた量と比較して、残留宿主細胞DNAを99.99%を超えて低減することを可能にする。
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップ後のHA収率
試料NCP124及びJP125のウイルス単離プロセスの主なステップにおいて、表9に示されているように、下述のようなSRD法によりHA収率を計算した。得られた値は全て、前のステップで得られた値と比較されている。
Figure 2012507272
HA含有量を測定するために使用されたSRD法
ガラス板(12.4×10cm)を、NIBSCにより推奨されている濃度の抗インフルエンザHA血清を含有するアガロースゲルでコーティングする。ゲルをセットした後、72個の試料ウエル(直径3mm)をアガロースに打抜き、10μlの適切な希釈された参照及び試料をウエルに負荷する。プレートを、室温(20〜25℃)の加湿チャンバー内で24時間インキュベートする。その後、プレートを、NaCl溶液に終夜浸漬し、蒸留水で短期間洗浄する。その後ゲルを圧迫して乾燥する。完全に乾燥したら、プレートをクーマシーブリリアントブルー溶液で10分間染色し、明らかにはっきりとした染色帯域が目に見えるようになるまで、メタノール及び酢酸の混合物で2回脱染する。プレートを乾燥した後、抗原ウエルを取り囲む染色帯域の直径を、直角に交わる2つの方向で測定する。あるいは、表面を測定する機器を使用することもできる。表面に対する抗原希釈物の用量反応曲線を構築し、結果は、標準傾斜比アッセイ法(standard slope-ratio assay method)に従って計算される(Finney, D.J. (1952) Statistical Methods in Biological Assay. London: Griffin, Quoted in: Wood, JM, et al (1977). J. Biol. Standard. 5, 237-247)。
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップを含むウイルス単離プロセス中のHA純度変化
試料NCP124及びJP125のウイルス単離プロセスの主なステップにおいて、全タンパク質に対してSRD法により検出可能な特定の量のHAを表すSRD/タンパク質比率を、表10に示されているように計算した。全タンパク質の濃度は、古典的ローリー法により測定する。
結果は表10に示されている。
ウイルス単離プロセス中の精製変化を表すために、「精製倍率」も計算した。結果は表11に示されている。
Figure 2012507272
Figure 2012507272
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された複数のDNA分解ステップに供された、MDCKで生産されたインフルエンザウイルス抗原の免疫原性
試料NCP124の免疫原性を、(i)インフルエンザ抗原と全く接触していない血清反応陰性小児の免疫学的状態を再現することを目的とした未感作マウスモデル中、及び(ii)以前にインフルエンザ抗原と遭遇している血清反応陽性高齢ヒトの免疫学的状態をより緊密に再現することを目的とした初回刺激を受けたマウスモデル中で評価した。
免疫原性を、赤血球凝集阻害力価及びin vitro中和力価を分析することにより評価した。全ての実験で、免疫原性を、卵由来の不活化全インフルエンザウイルスの免疫原性と比較した。
11.1 赤血球凝集阻害(HI)試験
このHI試験の原理は、特定の抗インフルエンザ抗体が、インフルエンザウイルス赤血球凝集素複合体(HA)によりニワトリ赤血球(RBC)の血球凝集を阻害する能力に基づく。血清(50μl)を、200μlのRDE(受容体破壊酵素)を用いて16時間37℃で処理する。150μlの2.5%クエン酸Naで反応を停止させ、血清を56℃で30分間不活化する。1:10稀釈液を、100μlのPBSを添加することにより調製する。その後、25μlのPBSで25μlの血清(1:10)を希釈することにより、2倍の連続希釈物を96ウエルプレート(V形底)に調製する。25μlの基準抗原を、25μl当たり4血球凝集単位の濃度で各ウエルに添加する。抗原及び抗血清希釈物を、マイクロタイタープレート振とう機を使用して混合し、室温で60分間インキュベートする。その後、50μlのニワトリ赤血球(RBC)(0.5%)を添加し、RBCを室温で1時間沈殿させる。HI力価は、ウイルス誘導性赤血球凝集を完全に阻害する最後の血清希釈物の逆数に相当する。
11.2 In vitro中和アッセイ
加熱不活性化血清の連続2倍希釈物(50μl)を、96ウエルプレート中で50μlの各基準抗原と共に、室温で1時間30分間インキュベートした。その後、100μlのMDCK細胞(2.4×10細胞/ml)をウエルに添加し、35℃で7日間インキュベートした。インキュベーション後、ウイルス誘導性細胞変性効果を、顕微鏡で視覚的に各ウエル毎に得点化した。中和力価は、細胞変性効果を完全に阻害する血清の最高希釈物の逆数として表した。
11.3 未感作マウスモデル
0日目に、細胞由来のインフルエンザウイルス抗原(試料NCP24;1.5μgのHA含有量)又は卵由来のインフルエンザウイルス抗原(1.5μgのHA含有量)で、マウスを筋肉内経路により免疫した。28日目に、同一の第2の免疫をマウスに与えた。
HI抗体反応(第11.1節の方法により決定された)を、第1の免疫の28日後及び第2の免疫の14日後に収集された血清試料で測定した。試料を、A/New Caledonia/20/99 H1N1株の血球凝集を阻害するそれらの能力について試験した。結果は、図5Aに示されている。
細胞培養に基づくインフルエンザウイルス抗原と卵由来のインフルエンザウイルス抗原との間で統計学的な違いは観察されず、同様の反応が得られた。
中和抗体反応(第11.2節の方法により決定された)を、第1の免疫の28日後及び第2の免疫の14日後に収集された血清試料で測定した。試料を、A/New Caledonia/20/99 H1N1株に対するそれらの中和活性について試験した。結果は、図5Bに示されている。
卵由来のインフルエンザウイルス抗原と比較して、より高い中和力価が、細胞培養に基づくインフルエンザウイルス抗原で観察された。
したがって、Benzonase(商標)及びBPLの添加は、細胞由来のインフルエンザウイルス抗原の免疫原性に否定的な影響を及ぼさず、この実験では、より高い中和応答抗体を導いた。
11.4 初回刺激を受けたマウスモデル
0日目に、5μgの不活化全インフルエンザウイルス(A/New Caleddonia/20/99 H1N1)で、マウスを鼻腔内経路により初回刺激した。 28日目に、細胞由来のインフルエンザウイルス抗原(試料NCP24;1.5μgのHA含有量)又は卵由来のインフルエンザウイルス抗原(1.5μgのHA含有量)で、マウスを鼻腔内経路によりワクチン接種した。
HI抗体反応(第11.1節の方法により決定された)を、初回刺激の28日後及びワクチン接種の14日後に収集された血清試料で測定した。試料を、A/New Caledonia/20/99 H1N1株の血球凝集を阻害するそれらの能力について試験した。結果は、図6Aに示されている。
細胞培養に基づくインフルエンザウイルス抗原と比較して、より高いHA抗体反応が、卵由来のインフルエンザウイルス抗原で観察された。
中和抗体反応(第11.2節による方法で決定された)を、ワクチン接種の14日後に収集された血清試料で測定し、A/New Caledonia/20/99 H1N1株に対するそれらの中和活性を試験した。結果は、図6Bに示されている。
全卵ウイルスによる初回刺激後では、同じような中和力価が、細胞培養に基づくインフルエンザウイルス抗原及び卵由来のインフルエンザウイルス抗原で観察された。
分割スクロース勾配超遠心分離後の界面活性剤保管ステップの実施
MDCK細胞でのウイルス増殖、並びにウイルス回収及びウイルス単離は、主に、以下のように改変して実施例2に記述されているように実施した。
− ウイルス単離段階のステップc)で、Benzonase(商標)を135単位/mlの終濃度で濃縮液に添加した。
− ウイルス単離段階のステップe)で、第2のスクロース勾配超遠心分離を、1.5%トリトンX−100(NCP111)又は1%トリトンX−100+0.5%SLS(NYP121)の存在下で実施した。
ステップd)の超遠心分離ローターを排出した後、HA含有画分を集めた。
試料NCP111に由来するその結果生じた貯留を、全タンパク質含有量についてアッセイし、PBS−トリトンX−100 0.5%−ビタミンEスクシナート 0.1mM pH7.4緩衝液で2回希釈し、無菌条件下、0.22μm膜で20ml/分でろ過し、250μg/mlの最終タンパク濃度に達するように同じ緩衝液でさらに希釈した。その後、トリトンX−100で希釈した貯留を、室温で72時間インキュベートしておいたか、又はしなかった。
対照は、250μg/mlに希釈した貯留を、トリトンX−100を添加せずに、2〜8℃の範囲の温度で72時間インキュベートすることにより製作した。
試料NYP121に由来するその結果生じた貯留を、全タンパク質含有量についてアッセイした。表13に示されているように、0〜0.5%の範囲の濃度のトリトンX−100で補完されたPBS−αトコフェリル水素スクシナート 0.1mM pH7.4緩衝液で、250μg/mlの最終タンパク濃度に達するように等量ずつ希釈し、0.22μmの膜でろ過した。その後、トリトンX−100で希釈した貯留を、室温で72時間インキュベートした。
試料NCP111及びNYP121の感染力に及ぼす、トリトンx−100の存在下におけるそのような保管の効果を、細胞の50%を感染可能なウイルスの量を表すTCID50/ml(組織培養感染量)を計算することにより分析した。
結果は表12及び13に示されている。
Figure 2012507272
結果
トリトンX−100を含有しない緩衝液で超遠心貯留を希釈した場合、4℃で72時間後に、残留ウイルスが検出された。1.90のTCID50/ml力価が観察されたからである。トリトンX−100を添加したが保管を実施しなかった場合、同様の観察がなされた。1.8のTCID50/ml力価が観察されたからである。0.5%トリトンX−100を含有する緩衝液中で室温でインキュベートした場合、観察されたTCID50/ml力価は、0.8未満、つまりアッセイの検出限界未満であり、残留ウイルス感染力が除去されたことが示された。
Figure 2012507272
結果
0.1%トリトンX−100を含有しない緩衝液又はトリトンX−100を含有する緩衝液で超遠心分離貯留を希釈した場合、室温で72時間後に、残留ウイルスが検出される。0.3%トリトンX−100を含有する緩衝液で稀釈した場合、0.8未満のTCID50/ml力価が観察された。0.5%トリトンX−100で、緩衝液毒性が観察され、この実験から1.8未満の力価を推定することができた。
結論
したがって、トリトン(NCP111)又はトリトン及びSLS混合物(NYP121)のいずれかを分割界面活性剤として含むスクロース勾配から収集された分割ウイルス貯留は、著しい残留感染力を有する。分割が生じた後、分割ウイルスを4℃で(NCP111)又は室温で(NYP121)最長72時間インキュベーションすることでは、低残留濃度の分割界面活性剤が存在するにもかかわらず、残留感染力を除去するのは可能ではない。この問題は、分割ステップ後に依然として存在する感染性ウイルスをさらに不活化するために、ウイルス調製物を界面活性剤の存在下で数日間保管することにより解決できる。
実際、分割ウイルス貯留の希釈緩衝液にトリトンX−100を添加することにより、残留感染力を低減することが可能であるが、感染力を検出不能なレベルに低減するためには、0.3%の最低濃度が必要とされる。
両性イオン性界面活性剤の存在下におけるゲルろ過クロマトグラフィーによるウイルスタンパク質からのMDCKタンパク質の分離
MDCK細胞でのウイルス増殖、並びにウイルス回収及びウイルス単離は、主に、以下のように改変して実施例2に記述されているように実施した。
− 限外ろ過ステップi)の後、0.1%の終濃度のエンピゲンを、限外ろ過システムから取り出した濃縮液に添加する。混合物を15分間撹拌し、その後PBS−0.1%SLS緩衝液で平衡化されたセファクリルS200カラム(GE Healthcare社製)に負荷する。分離は、室温で30cm/hの線流速で実施する。画分を収集し、抗HA及び抗MDCK抗体を使用してSDS−PAGE及びウエスタンブロットにより分析する。ウイルスタンパク質を含有する画分を貯溜し、主としてMDCKタンパク質を含有する他の画分を廃棄する。
タンパク質夾雑物の分析も、Threshold(商標)アッセイにより行い、濃縮水及び平衡緩衝液に添加された界面活性剤は、0.1%の終濃度のSLSだった。ゲルろ過のステップの前後の試料NCP124で得られた結果は、表12に示されている。
Figure 2012507272
結果及び結論
界面活性剤の存在下におけるゲルろ過ステップの実施を、残留MDCKタンパク質含有量をさらに減少させるために導入した。試料(濃縮液)に0.1%エンピゲンを添加すること、及び平衡緩衝液中にSLSが存在することにより、界面活性剤の完全な非存在下で実施された同じプロトコールと比較して、抗MDCK抗体を使用したウエスタンブロットにより明らかにされるように、夾雑物のより良好な分離が可能になる。0.1%エンピゲンを、0.1%デオキシコレート又は0.1%サルコシンと置き換えても、同じ分離効果が観察される。
界面活性剤の存在下でゲルろ過ステップを実施した後に残留MDCKタンパク質の減少が観察されることが、Threshold(商標)アッセイにより得られた結果によって確認され、ゲルろ過をしない場合と比較して、その量は50%を超えて低減される。
ウイルスを単離するためのスクロース勾配超遠心分離ステップ及びクロマトグラフィーステップの組合せ
MDCK細胞でのウイルス増殖、並びにウイルス回収及びウイルス単離は、主に、以下のように2つの組の改変をして実施例2に記述されているように実施した。
14.1
− 第2のスクロース勾配超遠心分離分割ステップe)を省く。
− ウイルスの分割をバッチで実施する。
− ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを実施する。
室温で、第1のスクロース勾配貯留を、0.5%の最終界面活性剤濃度に達するように、撹拌しながらPBS pH7.4−トリトンX−100で希釈する。混合を2分間実施し、その後15分間静置する。この作業を1回繰り返す。Acropak 500(Pall社製、カタログ番号12991)0.8+0.2μmフィルターモジュールを使用して、分割された物質を清澄化する。50mlのPBS pH7.4−トリトンX−100 0.5%で膜をすすぎ、タンパク質回収を最適化する。その後、ろ過された物質を、クロマトグラフィーステップの前に、1MのPO、pH7.0、NaCl 0.2Mで希釈する。40mlのヒドロキシアパタイトカラムXK16/20を50mMのPO、pH7.0、NaCl 100mM緩衝液で平衡化する。供給液を200cm/hの線速度で注入する。ウイルスタンパク質を、通過画分内に収集する。0.22μmろ過の後、ホルムアルデヒド不活性化を、実施例1のステップf)に従って実施し、残りのステップg)〜j)に従ってプロセスを継続する。
14.2
− 第1のスクロース勾配超遠心分離ステップd)を省く。
− ヒドロキシアパタイト又はセファクリルHR200クロマトグラフィーを実施する。
14.2.1
ステップe)の分割超遠心分離後に収集された勾配貯留を希釈し、0.22μmろ過し、実施例1のステップf)に従ってホルムアルデヒドで不活化する。実施例1のステップg)及びh)を実施した後、セファクリルHR200ゲル浸透クロマトグラフィーを実施した。0.1%サルコシルの添加後に、供給液を、PBS pH7.4−0.1%サルコシルで平衡された1750mlのXK50カラムに、30cm/hの線流速で負荷する。ウイルスタンパク質を含有する画分を貯溜し、30kDaの限外ろ過膜で濃縮し、0.22μmフィルターでろ過する。
14.2.2
あるいは、ステップe)の分割超遠心分離後の勾配貯留を、400mM NaPO pH7.0−0.1M NaClで希釈し、その後10mM NaPO pH7.0−0.1M NaClで平衡化された70mlのヒドロキシアパタイトXK16カラムに100cm/hの線速度で注入する。クロマトグラフィー物を0.22μmろ過して、プロセスを終了する。
結果
14.1
バッチで分割した後のヒドロキシアパタイトにより、31%のHA精製収率がもたらされ、Threshold(商標)による宿主細胞タンパク質夾雑物含有量は15%であり、SRD/タンパク質比率は29%である。Dna含有量は規格未満である(1.56ng/45μgHA)。30°Xで28日後の安定性データは、100%のHA回収率を示す。HA(SRDによるステップ収率100%)の損失も他のウイルスタンパク質(SDS−PAGE銀染色)の損失も、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの後で観察することができないが、少数の夾雑物が除去される。したがって、このプロセスは、2つの超遠心分離ステッププロセスより単純であるという長所を提供する。精製抗原の品質(残留宿主細胞タンパク質及びDNA)は、2つのスクロース勾配超遠心分離ステッププロセスで得られるものに匹敵する。しかしながら、精製HAの収率はおよそ2倍増加する。
14.2.1
分割超遠心分離ステップ後にセファクリルHR200ゲル浸透クロマトグラフィーを実施することにより、18%のHA精製収率がもたらされ、Threshold(商標)による宿主細胞タンパク質夾雑物含有量は4%であり、SRD/タンパク質比率は32%である。DNA含有量は規格未満である(1.87ng/45μgHA)。収率は2つのスクロース勾配超遠心分離ステッププロセスの収率に匹敵する。しかしながら、残留宿主細胞タンパク質夾雑物のレベルは著しく低減される。
14.2.2
分割スクロース勾配超遠心分離ステップ後にヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを実施することにより、25%のHA精製収率がもたらされ、Threshold(商標)による宿主細胞タンパク質夾雑物含有量は23%であり、SRD/タンパク質比率は22%である。この選択肢は、2つのスクロース勾配超遠心分離ステッププロセスより良好な収率を可能にする。しかしながら、純度(SRD/タンパク質比率及び宿主細胞タンパク質残留物)は、若干より低い。
結論
連続して実施された2つの超遠心分離ステップに基づく、実施例1及び2に記述されているプロセスの代わりに、クロマトグラフィーステップと組合せて1つの超遠心分離ステップのみを実施することが実現可能である。分割は、超遠心分離によるウイルス濃度及び単離後に、スクロース勾配又はバッチのいずれかで実施することができる。この選択肢は、単離プロセスにわたってより良好な抗原収率を可能にする。
エンドヌクレアーゼ及びDNAアルキル化剤を用いて実施された、複数のDNA分解ステップの存在下におけるEB66(登録商標)細胞でのインフルエンザウイルス生産
本発明による方法が別の細胞タイプで使用することができ、MDCK細胞で実施するのと少なくとも同じ効率でDNAを分解し除去することを実証するために、インフルエンザウイルスを、EB66(登録商標)(国際公開第2008/129058号パンフレット)で生産し、Benzonase(商標)を用いて実施される複数のDNA分解ステップとBPLの組合せに基づく実験を、部分的に実施例2に記述されている実験に基づいて実施した。
手短かに言えば、EB66(登録商標)細胞を、バッチ法で懸濁状態で増殖させた。それらにH5N1を感染させ、数日後に細胞培養培地を収集することによりウイルスを回収した。ウイルスを細胞に接種した後、Benzonase(商標)を細胞培養培地に添加した。ウイルス回収物を精澄化し、精澄化した回収物をBPLで処理した。BPLで処理した回収物を限外ろ過により濃縮した後、限外ろ過システムから取り出した濃縮液にBenzonase(商標)を添加した。その後ウイルスを、特に、2つの連続したスクロース勾配超遠心分離によりさらに精製した。第2のスクロース勾配超遠心分離のスクロース勾配は、ウイルスを分割するためにもトリトンX−100を含有していた。その後、残留宿主細胞DNAを、陰イオン交換膜でウイルス調製物をろ過することにより調製物から除去した。その結果生じたウイルス調製物を精製バルクと称した。
精製バルク中の残留EB66(登録商標)細胞DNAの特徴付け
精製バルク中の全DNA量の濃度を、実施例3の第7節に記述されているようにThreshold(商標)アッセイにより測定した。精製バルクに残っている残留宿主細胞DNAのサイズ分布を決定するために、99bp、185bp、及び280bpのDNA断片の濃度を、実施例3の第5節に記述されているように、それぞれのプライマーを用いた定量PCRにより分析した。並行して、精製バルク中のHA濃度を、SRDアッセイにより決定した(実施例9を参照)。その後、DNA値を、各株のHAを15μg含有する三価ワクチンの予測通常用量である45μgHAに対して正規化した。得られた結果は、表15及び表16に示されている。
Figure 2012507272
Figure 2012507272
結果 − 結論
本発明の方法による複数のDNA分解ステップをEB66(登録商標)細胞で実施することにより、非常に少量の残留宿主細胞DNAを含むウイルスの精製バルクが提供される。Threshold(商標)アッセイによりサイズに関わりなく測定され、45μgのHAに対して正規化された全DNA量は、36.9pgと低い。MDCK細胞に由来し0.2〜0.4ng/45μgHAの範囲の残留宿主細胞DNAを示す精製バルクに関連して実施例6で得られた結果と比較し、EB66(登録商標)細胞で得られた値は、少なくとも5倍、最大10倍少ない。
99bp、185bp、及び280bpのDNA配列を標的とするQ−PCR結果も非常に良好な結果をもたらした。280bpの断片に関しては、精製バルク中に3.1pgのDNA/45μgHAしか検出されず、185bp及び80bpの断片に関しては、精製バルク中に6.2pgのDNA/45μgHAしか検出されなかったからである。これらの結果は、MDCK細胞に由来する精製バルク中で観察されたDNA量と同じ範囲内にあり(実施例6)、ウイルスがMDCK細胞で生産される場合だけでなく、ウイルスがEB66(登録商標)細胞で生産される場合でも、本発明の方法が低量DNAの結果をもたらすことを示している。また、得られた結果は、保健当局による10ngDNA/ワクチン用量の規格よりはるかに低い。

Claims (51)

  1. 細胞培養により生産されるウイルス又はそのウイルス抗原に付随する宿主細胞核酸を分解するための方法であって、i)エンドヌクレアーゼ、及びii)DNAアルキル化剤から選択される化合物を用いる少なくとも2つの核酸分解ステップを含む方法。
  2. 細胞培養中でウイルス又はそのウイルス抗原を生産するための方法であって
    (a)細胞培養培地中で培養された細胞集団を準備するステップと、
    (b)細胞集団にウイルスを接種するステップと、
    (c)ウイルスの複製が可能になるように細胞集団を培養するステップと、
    (d)生産されたウイルスを収集して、それによりウイルス回収物を準備するステップと、
    (e)ウイルスを単離するステップと
    を含み、i)エンドヌクレアーゼ、及びii)DNAアルキル化剤から選択される化合物を用いる少なくとも2つの宿主細胞核酸分解ステップを含む方法。
  3. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、ステップ(d)の前に実施される、請求項2に記載の方法。
  4. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、エンドヌクレアーゼを用いて実施される、請求項3に記載の方法。
  5. 細胞にウイルスを接種した後で、エンドヌクレアーゼが培養下の細胞に添加される、請求項3に記載の方法。
  6. 細胞集団がバイオリアクターで培養される、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
  7. エンドヌクレアーゼがバイオリアクターに添加される、請求項6に記載の方法。
  8. 培養培地が灌流により供給される、請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
  9. エンドヌクレアーゼが灌流培地に添加される、請求項8に記載の方法。
  10. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、ステップ(d)の後に得られるウイルス回収物にエンドヌクレアーゼを添加することにより実施される、請求項2に記載の方法。
  11. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、ウイルス単離ステップ中に実施される、請求項2〜10のいずれかに記載の方法。
  12. ウイルス単離ステップが、ウイルス回収物の清澄化、限外ろ過/ダイアフィルトレーション、超遠心分離、及びクロマトグラフィー、又はそれらの任意の組合せから選択される少なくとも1つのステップを含む、請求項2〜11のいずれかに記載の方法。
  13. ウイルス単離ステップが、ウイルス回収物清澄化ステップ、濃縮液を生成するための限外ろ過/ダイアフィルトレーションステップ、及び1つ又は2つの超遠心分離ステップの組合せを少なくとも含む、請求項12に記載の方法。
  14. 少なくとも1つの超遠心分離ステップが、スクロース勾配超遠心分離ステップである、請求項13に記載の方法。
  15. 単離ステップが、少なくとも1つのスクロース勾配超遠心分離ステップを含む、請求項12〜13のいずれかに記載の方法。
  16. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、エンドヌクレアーゼを用いて実施される、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
  17. エンドヌクレアーゼが、限外ろ過/ダイアフィルトレーションの後に得られる濃縮液に添加される、請求項16に記載の方法。
  18. 少なくとも1つの宿主細胞核酸分解ステップが、DNAアルキル化剤を用いて実施される、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
  19. DNAアルキル化剤が、清澄化されたウイルス回収物に添加される、請求項18に記載の方法。
  20. DNAアルキル化剤が、限外ろ過/ダイアフィルトレーションの後に得られる濃縮液に添加される、請求項18に記載の方法。
  21. スクロース勾配が分割剤をさらに含む、請求項15〜20のいずれかに記載の方法。
  22. 分割剤が、デオキシコレート又はラウリル硫酸ナトリウムと随意に混合されたトリトンX−100である、請求項21に記載の方法。
  23. バッチで実施されるウイルス分割ステップをさらに含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
  24. デオキシコレート又はラウリル硫酸ナトリウムと随意に混合されたトリトンX−100が、分割ステップで使用される、請求項23に記載の方法。
  25. DNAアルキル化剤を添加することをさらに含む、請求項2〜17のいずれかに記載の方法。
  26. DNAアルキル化剤が、ウイルス単離ステップ中に添加される、請求項25に記載の方法。
  27. アルキル化剤がβ−プロピオラクトンである、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
  28. 培養下の細胞が、哺乳動物細胞及びトリ細胞からなる群から選択される、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
  29. 細胞がMDCK細胞である、請求項28に記載の方法。
  30. 細胞が、アヒル胚性幹細胞に由来するトリ細胞である、請求項28に記載の方法。
  31. 細胞がEB66(登録商標)細胞である、請求項30に記載の方法。
  32. ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
  33. インフルエンザウイルスが、大流行株又は潜在的大流行株である、請求項32に記載の方法。
  34. ウイルスを1つ又は複数の不活性化剤で不活化することをさらに含む、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
  35. 不活性化剤がホルムアルデヒドである、請求項34に記載の方法。
  36. 請求項1〜35のいずれかに記載の方法により取得可能なウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物。
  37. 宿主細胞残留DNA含有量が、Threshold(商標)アッセイで測定して、10ng未満、又は5ng未満、又は1ng未満、又は100pg未満、又は10pg未満である、請求項36に記載の組成物。
  38. 宿主細胞残留DNAのサイズが、サザンブロットで測定して、500塩基対未満、又は300塩基対未満、又は200塩基対未満、又は100塩基対未満である、請求項36又は37に記載の組成物。
  39. Threshold(商標)アッセイで測定して、10ng未満、又は5ng未満、又は1ng未満、又は100pg未満、又は10pg未満の残留宿主細胞DNA含有量を有する細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物。
  40. サザンブロットで測定して、サイズが500塩基対未満、又は300塩基対未満、又は200塩基対未満、又は100塩基対未満である残留宿主細胞DNA含量を有する細胞培養産生ウイルス又はそのウイルス抗原を含む組成物。
  41. 定量PCRで測定して、長さが60塩基対であるDNA断片の含有量が、1ng未満、又は0.5ng未満、又は0.1ng未満、又は0.01ng未満である、請求項36〜40のいずれかに記載の組成物。
  42. 定量PCRで測定して、長さが300塩基対であるDNA断片の含有量が、1ng未満、又は0.5ng未満、又は0.1ng未満、又は0.01ng未満である、請求項36〜41のいずれかに記載の組成物。
  43. 長さが60塩基対であるDNA断片の含有量が、1ng未満、又は0.5ng未満、又は0.1ng未満、又は0.01ng未満であり、長さが300塩基対であるDNA断片の含有量が、1ng未満、又は0.5ng未満、又は0.1ng未満、又は0.01ng未満である、請求項36〜42のいずれかに記載の組成物。
  44. 好適な医薬担体と混合された請求項36〜43のいずれかに記載の組成物を含む免疫原性組成物。
  45. アジュバントをさらに含む、請求項44に記載の免疫原性組成物。
  46. 医薬品に使用するための請求項36〜45のいずれかに記載の組成物。
  47. ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項36〜45のいずれかに記載の組成物。
  48. インフルエンザ感染の治療又は予防に使用するための請求項47に記載の組成物。
  49. 細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法であって、
    (a)スクロース勾配が、ウイルスを分割するために界面活性剤を含む、スクロース勾配超遠心分離ステップ、及び
    (b)スクロース勾配から収集された分割ウイルスの貯留を、0.1%〜0.5%の非イオン性界面活性剤の存在下で1〜5日間インキュベートするステップ
    を少なくとも含む方法。
  50. 両性イオン性界面活性剤の存在下で実施される少なくとも1つのサイズ排除クロマトグラフィーステップを含む、細胞培養で生産されるウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法。
  51. 細胞培養で生産されたウイルス又はそのウイルス抗原を精製するための方法であって、
    (a)1つのスクロース勾配超遠心分離ステップ、及び
    (b)1つのクロマトグラフィーステップ
    を少なくとも含む方法。
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