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JP2012172211A - 低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法 - Google Patents

低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法 Download PDF

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JP2012172211A
JP2012172211A JP2011036472A JP2011036472A JP2012172211A JP 2012172211 A JP2012172211 A JP 2012172211A JP 2011036472 A JP2011036472 A JP 2011036472A JP 2011036472 A JP2011036472 A JP 2011036472A JP 2012172211 A JP2012172211 A JP 2012172211A
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Yasutoshi Hideshima
保利 秀嶋
Teruhiko Suetsugu
輝彦 末次
Hiroyasu Matsubayashi
弘泰 松林
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

【課題】低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性および冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性を簡便な手法にて大幅に改善する。
【解決手段】質量%で、C:0.030〜0.300%、Si:0.01〜2.00%、Mn:2.00〜3.50%、P:0.060%以下、S:0.005%以下、Ni:1.00〜5.00%、Cr:15.00〜19.00%、N:0.030〜0.300%、Cu:2.00〜3.50%、V:0.050〜0.300%、Mo:0〜2.0%、B:0〜0.010%、Ca:0〜0.010%、Al:0〜1.00%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼の熱延焼鈍鋼板に「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理を2回以上実施する。
【選択図】図1

Description

本発明は、Ni含有量を低減し、かつMnの多量含有を抑制したオーステナイト系ステンレス鋼の冷延焼鈍鋼板であって、特に曲げ加工部に曲げ戻しが加わるような厳しい成形加工に耐えうる、加工性の良好な鋼板の製造法に関する。
SUS304,SUS301に代表される加工硬化型の準安定オーステナイト系ステンレス鋼は、加工性、耐食性等の良好な特性を活かして種々の用途に広く使用されている。しかし、これらの鋼種は多量のNiを含有するため原料コストが高いという欠点がある。特に近年ではNi原料価格の乱高下の影響を受けて需給バランスが不安定になりやすいという問題も顕在化している。このようなことから昨今では従来にも増して、Ni含有量を低減した「Ni節減型」のオーステナイト系ステンレス鋼のニーズが高まっている。
Ni節減型のオーステナイト系ステンレス鋼としては、Ni含有量を低減する替わりに、オーステナイト形成元素としてMnを4%以上と多量に含有させた鋼種が知られている(特許文献1〜4)。しかし、このように多量のMnを含有させることは、製鋼工程でMn酸化物の微細粒子(Mnヒューム)の飛散を招き、環境保全の観点から特別な対策が必要となる。溶鋼を収容する容器の耐火物損耗も増大する。また、鋼中のMn含有量が高いことに起因して鋼板の表面品質が低下しやすく、焼鈍酸洗や光輝焼鈍などの鋼板製造工程において生産性を損なう場合がある。さらに、多量のMn含有は鋼板製品の耐食性を低下させる要因となりやすい。
Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、Mnを概ね4%未満に低減すると、鋳造時に多量のδフェライトが生成しやすくなる。δフェライトを多量に含むオーステナイト系ステンレス鋼の鋳造スラブは熱間加工性が悪く、SUS304,SUS301等と同様の一般的な条件で熱間圧延を行うと耳割れが発生し、操業上の大きな問題となる。したがって、この種の鋼においてMn含有量を低減することは必ずしも容易ではない。
特許文献5には、Mn含有量を3%まで低減可能にした熱間加工性の良いNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。この技術では成分間の限定式によりδフェライト生成量を抑制する手法を採用し、それによって熱間圧延での耳割れを回避している。しかし、Mn含有量を4%未満の領域まで低減しても、表面品質低下や耐食性低下の問題に対しては更なる改善が望まれる場合が多い。
一方、Mn含有量を3%以下の領域まで低減したNi節減型のオーステナイト系ステンレス鋼も、従来から主として成形加工性向上を目的に種々提案されている(特許文献6〜13)。Mn含有量をこの程度にまで低減すると、製鋼工程での環境保全、耐火物寿命の問題や、材料の表面品質、耐食性に関する問題は概ね解消される。しかしながら、Mnを低減することに起因する熱間加工性の低下に関しては抜本的な改善策が明らかにされていない。熱間圧延での耳割れを軽減するためには一般的な汎用鋼種とは違った製造条件を適用する必要があるなど、製造上の制約も大きく、Niを低減したことによるコストメリットが生産性の低下によって十分に活かされない場合もある。
そのような現状において、本出願人はNiおよびMnをともに低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼について、熱間圧延での耳割れを抑止する製造技術を開発し、特許文献14に開示した。その技術は、鋳造スラブをオーステナイト単相温度域に加熱保持することにより、スラブエッジ付近に存在するδフェライト相の量および粒径を適切にコントロールするというものである。また、鋳造時の平均冷却速度を高めてδフェライト生成量を低減することが熱延耳割れの抑制に有効であることを開示した。
特開2006−111932号公報 特開2007−197806号公報 特開平11−241145号公報 特開平7−70700号公報 特開2007−63632号公報 特公昭60−33186号公報 特開2006−22369号公報 特開2009−41072号公報 特開2009−221553号公報 特開2009−221554号公報 特開2010−189719号公報 特開2010−196103号公報 特開2009−30128号公報 特開2010−121162号公報
近年、鋼板素材を加工して作製される機械部品等は、製造コスト低減のためにできるだけ1つの素材から一体成形により製造されることが多くなってきた。そのため、鋼板素材には、複雑形状への加工に耐えるべく、従来にも増して優れた加工性が要求される傾向にある。オーステナイト系ステンレス鋼は一般的に良好な曲げ加工性を呈するが、一度曲げ加工を受けた部分は加工硬化が大きく、その曲げ部分あるいはその近傍で逆方向に曲げられたときに割れが生じやすいという欠点がある。この欠点はNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼において特に問題となりやすい。それにもかかわらず、部品コスト低減手段の一つとして、Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼へのリプレース(材料変更)には大きな期待が寄せられている。中でもMn含有量を4%より大幅に低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼は環境保全や製品の耐食性・表面性状などにおいて問題が少ないことから、今後のニーズ増大が予想される。
一方、Mn含有量を4%より大幅に低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性に関しては、鋳造時の平均冷却速度を高める手法やスラブ加熱を入念に行う手法を採用する上記特許文献14の技術により、一応の解決を見た。しかし、鋳造時の平均冷却速度を高めることは、連続鋳造においてはライン速度を低下させることに繋がり、生産性の低下を招く要因となる。連続鋳造のライン速度低下を避けたい場合は、熱間圧延前に鋳造スラブの加熱をより入念に行う必要が生じ、この場合も生産性は低下する。
本発明はこのような現状に鑑み、Mn含有量を4%より大幅に低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼(以下「低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼」という)において、SUS304,SUS301等の汎用鋼種と比べて生産性が大きく低下することのない簡便な手法にて耳割れの問題を生じることなく良好な熱延鋼板が製造でき、かつ曲げ加工後に逆方向への曲げ変形を伴う場合の加工性(以下「曲げ戻し加工性」という)を顕著に改善できる技術を提供することを目的とする。
発明者らは、低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼の熱間加工性を向上させる手法として、化学組成および製造条件に関する検討を詳細に行ってきた。その結果、Vを含有させること、および鋳造時の冷却速度が小さくなりすぎないようにすることが熱間加工性の向上に極めて有効であることを見出した。また、曲げ戻し加工性については、Vを含有させた当該鋼種の熱延焼鈍鋼板に特定条件の冷延・焼鈍を2回以上施す製造工程によって顕著に改善されることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
上記目的は、質量%で、C:0.030〜0.300%、Si:0.01〜2.00%、Mn:2.00〜3.50%、P:0.060%以下、S:0.005%以下、Ni:1.00〜5.00%、Cr:15.00〜19.00%、N:0.030〜0.300%、Cu:2.00〜3.50%、V:0.050〜0.300%、Mo:0〜2.0%、B:0〜0.010%、Ca:0〜0.010%、Al:0〜1.00%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼の熱延焼鈍鋼板から、冷延焼鈍鋼板を製造するに際し、
熱延焼鈍鋼板に、「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理を2回以上施すことにより達成される。
ここで、Mo,B,Ca,Alは任意添加元素であり、含有量が0%(通常の製鋼における分析限界未満)であっても構わない。Sは通常の製鋼において不可避的に混入する不純物元素である。本明細書では、熱間圧延後にまだ熱処理を受けていない、いわゆる「熱延まま」の鋼板を「熱延板」と呼び、熱延板を焼鈍することによって得られた鋼板を「熱延焼鈍鋼板」と呼ぶ。
上記の熱延焼鈍鋼板を得る手法として、
溶鋼をスラブ鋳造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジにおける凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が25℃/min以上となるように鋳造する工程、
得られた鋳造スラブを加熱炉にて1150〜1250℃で1.5h以上加熱する工程、
上記加熱後のスラブを熱間圧延して熱延板を得る工程、
熱延板に焼鈍(熱延板焼鈍)を施して熱延焼鈍鋼板とする工程、
を有する製造条件が採用できる。これにより、耳割れの発生が効果的に防止されたで熱延焼鈍鋼板を得ることができる。上記の熱延板焼鈍として、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域に加熱する条件を採用することがより好ましい。
なお、熱延板焼鈍および上記冷延焼鈍処理における焼鈍の温度は、いずれも材料の到達温度を意味する。
本発明に従う冷延焼鈍鋼板の製造工程を例示すると以下のようなものが挙げられる。ここでは熱履歴または板厚減少を伴う工程以外(例えば焼鈍後に行われる酸洗など)は記載を省略してある
(i)鋳造→熱間圧延→熱延板焼鈍→冷間圧延1→焼鈍1→冷間圧延2→焼鈍2
(ii)鋳造→熱間圧延→熱延板焼鈍→冷間圧延1→焼鈍1→冷間圧延2→焼鈍2→冷間圧延3→焼鈍3
(i)の例では、冷間圧延1と冷間圧延2の間にいわゆる「中間焼鈍」に相当する焼鈍1が挿入されており、焼鈍2が「仕上焼鈍」に相当する。この場合、「冷間圧延1→焼鈍1」および「冷間圧延2→焼鈍2」の各工程部分が、いずれも「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理に該当する必要がある。
(ii)の例では、冷間圧延1と冷間圧延2の間および冷間圧延2と冷間圧延3の間にそれぞれ「中間焼鈍」に相当する焼鈍1および焼鈍2が挿入されており、焼鈍3が「仕上焼鈍」に相当する。この場合、「冷間圧延1→焼鈍1」、「冷間圧延2→焼鈍2」および「冷間圧延3→焼鈍3」の各工程部分うちの少なくとも2つが、「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理に該当する必要がある。もちろん上記3つの工程部分が全て前記「冷延焼鈍工程」に該当しても構わない。
本発明に従えば、低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、曲げ加工後に逆方向への曲げ変形を受けた際の「曲げ戻し加工性」を顕著に改善することが可能となった。また、当該鋼種で問題となりやすい熱間圧延での耳割れの発生を、生産性の大幅な低下を伴わない簡便な手法によって効果的に抑制することが可能となった。さらに、低Mn化により、従来のMn含有量の高いNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼と比べ、環境保全対策の負荷が軽減し、鋼板品質も改善される。したがって本発明に従うNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼板は、従来の汎用鋼種からの代替により、複雑形状に加工される部品のコスト低減に大きく寄与するものである。
熱延耳割れの発生に及ぼすV含有量と鋳造時の平均冷却速度の影響を示すグラフ。
以下、化学組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
〔熱間加工性〕
発明者らは、Mn含有量を4%より大幅に低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼について、熱間加工性の改善に有利な化学組成および製造条件について詳細に検討してきた。その結果、Vを含有させることが極めて有効であることを見出した。この場合、鋳造時の平均冷却速度が小さくなりすぎないように管理することで、効果的に熱延耳割れの発生を抑止することができるのである。以下に、Mn含有量を3%以下の領域にまで低減したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼について、熱間圧延での耳割れ発生に及ぼすVの含有量の影響および鋳造時の冷却速度の影響を調査した実験を紹介する。ここでは、V以外の元素の含有量を表1のように一定とした鋼についての結果を例示する。
《熱間加工性の実験例》
表1に示す成分組成をベースとし、Vの含有量を種々変化させた鋼を溶製した。各チャージとも270kgの溶鋼を銅製の鋳型に鋳造し、厚さ120mmのスラブとした。鋳造の際、鋳型に取り付けた数本の熱電対による測温データに基づいて鋳型を冷却する循環水の水量を調整することにより、スラブ厚さ中央部のスラブエッジ(スラブ側面)における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度を30℃/min以下の範囲で種々変化させた。得られた鋳造スラブから厚さ60mm×幅80mm×長さ120mmの熱間圧延用鋼片を採取した。その際、元のスラブのスラブエッジが熱間圧延用鋼片の片側の側面(幅方向端部の表面)に該当するようにした。このスラブエッジに由来する面を「評価面」と呼ぶ。
熱間圧延用鋼片を加熱炉に装入して1200℃で2h加熱したのち抽出し、リバース式の熱間圧延機による大気中での熱間圧延実験に供し、熱延板を得た。熱間圧延のパススケジュールは表2に示すとおりである。各パスでのディレイは約7sec、圧延速度は約30m/minとした。
Figure 2012172211
Figure 2012172211
得られた熱延板(トータル圧延率94.2%)について評価面に由来するエッジにおける耳割れ深さを測定した。この熱間圧延実験において最大耳割れ深さが1mm以下となれば、良好な熱間加工性を有すると評価される。評価は以下のとおりとし、○評価を合格と判定した。
○:最大耳割れ深さ:0mm(耳割れ無し)〜1mm(熱間加工性;良好)。
×:最大耳割れ深さ:1mm超え(熱間加工性;不良)。
これらの結果を図1に示す。
図1からわかるように、Vを0.05%以上含有させた場合に、スラブ厚さ中央部のスラブエッジにおける凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度を25℃/min以上に管理することによって良好な熱間加工性を実現することができる。図1は、V以外の元素の含有量を表1に示すように一定とした場合の結果を整理したものであるが、発明者らは本発明で規定する成分組成範囲において、上記と同様の熱間加工性改善効果が得られることを確認している。
発明者らの調査によれば、低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼の熱間圧延での耳割れは、オーステナイト素地とδフェライト相の界面を起点として発生し、またオーステナイト素地とδフェライトの界面が亀裂の伝播経路となっている。熱間圧延での耳割れ感受性が低くなる条件として、δフェライト量が少ないこと、δフェライト相が微細であること、オーステナイト相とδフェライト相の界面ができるだけ不連続となっていることが挙げられる。
V含有により当該鋼種の熱間加工性が顕著に向上するメカニズムについてはまだ十分に解明されていないが、以下のようなことが考えられる。Vを適正範囲で含有させると、初晶δおよびデンドライトが微細化し、鋳造スラブ中に存在するδフェライト相は従来より微細化したものとなる。そのため熱間圧延前のスラブ加熱によるδフェライト相の減少効果(δ→γ変態の促進効果)が高まり、それが熱間圧延での耳割れ抑止に効いているものと推察される。このことは、Vを含有させていない鋼においては鋳造時の冷却速度を50℃/min以上に大きくするか、あるいは鋳造スラブの加熱を通常よりも入念に行わなければ熱延耳割れのトラブルを回避することが難しかったのに対し(特許文献14参照)、本発明に従えば鋳造時の冷却速度を25℃/minまで遅くし、鋳造スラブの加熱を一般的条件で行った場合でも熱延耳割れのトラブルは回避される、という事実からから肯定される。
〔曲げ戻し加工性〕
低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼の冷延焼鈍鋼板で問題となりやすい曲げ戻し加工性を改善すべく、発明者らは種々研究を重ねてきた。その結果、Vを上記のように含有させた熱延焼鈍鋼板に、「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理を2回以上施す工程を採用することにより、曲げ戻し加工性が顕著に改善されることを知見した。以下に、Vを含有する低Mn化Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼について、冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性に及ぼす製造条件の影響を調べた実験例を紹介する。
《曲げ戻し加工性の実験例》
低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼として、表3に示す鋼種Bを溶製した。270kgの溶鋼を銅製の鋳型に鋳造し、厚さ120mmのスラブとした。鋳造の際、鋳型に取り付けた数本の熱電対を用いて、スラブ厚さ中央部のスラブエッジ(スラブ側面)における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が27℃/minとなるように、鋳型を冷却する循環水の水量を調整した。
Figure 2012172211
得られた鋳造スラブを上述の「熱間加工性の実験例」の条件に従って熱間圧延することにより板厚3.5mmの熱延板とした。その際、耳割れは生じなかった。得られた熱延板を1100℃×均熱1minの条件で焼鈍し(熱延板焼鈍)、熱延焼鈍鋼板とした。その後、以下のa〜cのいずれかの製造手順にて板厚0.8mmの冷延焼鈍鋼板を作製した。各焼鈍後には酸洗を施した。なお、使用した各鋼について、1100℃の温度はオーステナイト単相温度域にあることが確認されている。
・製造手順a;→冷間圧延1(77%)→焼鈍1
・製造手順b;→冷間圧延1(49%)→焼鈍1→冷間圧延2(56%)→焼鈍2
・製造手順c;→冷間圧延1(37%)→焼鈍1→冷間圧延2(39%)→焼鈍2→冷間圧延3(41%)→焼鈍3
ここで、冷間圧延の数値(%)は冷間圧延率を意味する。製造手順aでは焼鈍1が仕上焼鈍に相当する。同様に製造手順bおよびcではそれぞれ焼鈍2および3が仕上焼鈍に相当する。上記において熱延板焼鈍までの工程は記載を省略してある。
焼鈍条件としては以下の3通りを採用した。製造手順b,cでは各焼鈍工程(熱延板焼鈍を除く)での焼鈍条件は共通とした。
・焼鈍条件P;加熱温度1000℃、材温が1000℃に到達後すぐに炉外で放冷
・焼鈍条件Q;加熱温度1050℃、材温が1050℃に到達後すぐに炉外で放冷
・焼鈍条件R;加熱温度1100℃、材温が1100℃に到達後すぐに炉外で放冷
以上のようにして、製造手順3通り×焼鈍条件3通り=合計9通りの製造条件にて板厚0.8mmの冷延焼鈍鋼板を得た。各冷延焼鈍鋼板から幅25mm、長さ50mmの短冊状試験片をその幅方向が圧延方向に一致するように採取し、90°V曲げ試験に供した。曲げ稜線が圧延方向となるように試験片をセットし、先端Rが0.1mmの金型を用いて20kNの荷重を付与することにより90°V曲げ加工を施した。次いで、平型の治具で曲げ部をほぼ平坦に戻した後、試験片の表裏を反転させて上記の金型にセットし、最初の曲げと逆側に上記と同様の方法で曲げ加工を施した。加工後の試験片について2回目の曲げ外周部をマイクロスコープにて倍率150倍で観察し、割れによる開口の有無を調べた。試験数n=3で試験を行い、3個とも割れが観測されなかったものを○(曲げ戻し加工性;良好)、3個のうち1個の試験片で割れが観測されたものを△(曲げ戻し加工性;やや不良)、3個のうち2個以上で割れが観測されたものを×(曲げ戻し加工性;不良)と評価し、○評価を合格とした。結果を表4に示す。
Figure 2012172211
表4に示されるように、Vを含有する低Mn化Ni節減型オーステナイト系ステンレス鋼において、冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域の焼鈍とを組み合わせた「冷延焼鈍処理」を2回以上実施する手法で冷延焼鈍鋼板を製造することによって、当該冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性を改善することができる。
この曲げ戻し加工性改善効果のメカニズムについては現時点では必ずしも明確でないが、以下のようなことが考えられる。Vを含有させることにより鋳造スラブ表面の凝固組織が微細化し、それに伴ってδフェライト相も微細に分布するようになる。このため熱延前に行われる鋳造スラブの加熱によってスラブ表層部のδフェライト相は大部分が消失する。そのδフェライト消失効果は熱延耳割れの抑制をもたらす。しかし、そのまま通常の冷延焼鈍工程によって焼鈍材を製造した場合には、曲げ戻し加工性を安定して改善することができない。その原因として、旧δフェライト領域におけるCr等の成分偏析が考えられる。δフェライト相中にはCr等の元素が偏析(濃化)するため、δフェライト相の消失後もオーステナイト結晶中の旧δフェライト領域にはCr等の偏析が残存する。このような結晶中の偏析は単なる長時間加熱(ソーキング)や熱間圧延によっても均質化させることが難しく、冷延焼鈍鋼板のオーステナイト相中にはCr等の偏析が残存しやすい。冷延焼鈍鋼板の表面付近に残存するこの種の偏析は、曲げ加工時に加工誘起マルテンサイト相への変態挙動に局所的な差を生じさせる要因となる。その加工部分に更なる変形(曲げ戻し変形)を加えると、局所的な組織の相違に起因する成形性の差によって割れが発生しやすくなる。本発明に従って冷間圧延+焼鈍の適切な組み合わせによる「冷延焼鈍処理」を複数回実施した場合には、成分元素の均一化が十分に進行することにより冷延焼鈍鋼板中のCr等の偏析が解消され、その結果、曲げ戻し加工性が顕著に改善されるものと推察される。
〔化学組成〕
CおよびNは、オーステナイト生成元素であり、これらの元素の含有量が少なすぎるとδフェライト相の生成量が増大し、熱間加工性が低下する。また、TRIP効果による十分な延性を確保するためにもこれらの元素は重要である。本発明では、C,Nともそれぞれ0.030%以上の含有量を必要とする。Cは0.05%以上、Nも0.05%以上の含有量とすることがより効果的である。一方、C,Nの含有量が多くなりすぎると鋼が過度に硬質化して加工性を阻害する要因となる。種々検討の結果、Cは0.300%以下の範囲とすることが望ましく、0.150%以下の範囲に管理してもよい。Nも0.300%以下の範囲とすることが望ましく、0.150%以下の範囲に管理してもよい。
Siは、製鋼での脱酸に有効であるとともに、固溶強化に寄与する元素である。通常は0.01%以上含有され、0.30%以上とすることがより効果的である。しかし、多量にSiを含有させるとδフェライト相の多量生成を招く要因となる。また、鋼を硬質化させ曲げ戻し加工性を損なう要因ともなる。検討の結果、Si含有量は2.00%以下に制限される。1.00%以下のSi含有量に管理してもよい。
Mnは、Niより安価なオーステナイト生成元素であり、Ni節減型のオーステナイト系ステンレス鋼においてNiの代替元素として添加される。本発明においてその機能を十分に活用するためには2.00%以上のMn含有が必要である。ただし、Mn含有量が多くなると、製鋼工程での環境保全対策の負荷が増大する。また、得られる鋼板の表面性状が低下しやすくなるので、それを解決するための対策をとると生産性の低下を招くことがある。MnSなどの介在物が増大して加工性低下や耐食性低下を引き起こす要因ともなる。Mnの多量含有によるそれらの欠点を克服するため、本発明ではMn含有量を3.50%以下に制限する。3.00%以下とすることがより効果的であり、3.00%未満に管理してもよい。
Sは、不純物として混入するが、その含有量が多くなると加工性その他の材料特性や製造性に悪影響を及ぼすようになる。検討の結果、S含有量は0.005%以下に制限される。S含有量は低いほど好ましいが、過剰な低S化は製鋼の負荷を増大させる。Sは0.0005%以上の範囲で残存させることが製造コスト的には望ましい。
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼に必須の元素であるが、本発明ではコスト低減の観点からNi含有量を極力抑える成分設計を行っており、Ni含有量の上限は5.00%に制限される。5.00%未満、あるいは4.00%以下、あるいはさらに3.00%以下のNi含有量に管理してもよい。ただし、C,N,Mnを上述の範囲に規定する場合、スラブ加熱温度域(例えば1150〜1250℃)でオーステナイト単相となるように成分調整する必要から、Ni含有量は1.00%以上を確保する必要がある。1.00%を超える量に管理してもよい。
Cuは、オーステナイト生成元素であることから、Cu含有量の増加に伴って他のオーステナイト生成元素含有量の設定自由度が拡大し、Niを抑制した成分設計が容易になる。また、Cuは圧縮変形での加工誘起マルテンサイト相の生成を抑制する作用を有することから、Cuの含有によって、曲げ戻し加工においては特に最初に曲げ加工を受けた際の曲げ内側における過剰な加工誘起マルテンサイト相の生成が抑制され、その後の曲げ戻し変形時における割れ発生が効果的に防止される。これらの効果を十分に得るため、本発明ではCuを2.00%以上含有させる。2.50%以上とすることがより好ましい。ただし、多量のCu含有は低融点合金相の生成を招き、熱間加工性を阻害する要因となる。このためCu含有量は3.50%以下に制限される。3.00%以下に管理してもよい。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保する上で必須の元素である。本発明では、SUS304,SUS301などの汎用オーステナイト系ステンレス鋼の代替用途に適用できる耐食性を確保すべく、Cr含有量が15.00%以上の鋼を対象とする。ただし、Crはフェライト生成元素であり、過度のCr含有はδフェライト相の多量生成を招くので好ましくない。オーステナイト生成元素であるC,N,Mn,Ni,Cuの前述した含有量範囲とのバランスについて種々検討した結果、Cr含有量は19.00%以下の範囲とする。
Vは、本発明において極めて重要な元素である。前述したように、Vには鋳造組織を微細化する作用があるものと考えられ、それがδフェライト相の微細化をもたらし、熱間加工性および冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性の改善に寄与しているものと推察される。このようなVの作用を十分に得るために、本発明では0.050%以上のV含有量を確保する。0.080%以上とすることがより好ましい。ただし過剰のV含有は製造コストの上昇および鋼の硬質化を招く。種々検討の結果、V含有量は0.300%以下に制限される。0.200%以下に管理してもよい。
Pは、鋳造時に初晶δフェライト相およびデンドライトを微細化する作用を有する。そのためにはP含有量は例えば0.010%以上であることがより効果的であり、0.020以上とすることが一層効果的である。ただし、Pは鋼の靱性を低下させる要因ともなるので0.060%以下の含有量とする必要がある。0.050%以下に管理してもよい。
Moは、耐食性向上作用などを呈するので、必要に応じて添加することができる。0.2%以上のMo含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のMo含有は熱間加工性低下を招く要因となるので、Moを添加する場合は2.0%以下の範囲で行う。
BおよびCaは、少量の添加で熱間加工性の向上に有利に作用するので、必要に応じてこれらの1種または2種を添加することができる。その作用を十分に得るためには、Bの場合は0.001%以上、Caの場合も0.001%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、これらの元素を過剰に添加すると逆に熱間加工性を阻害する要因となる。検討の結果、B,Caの1種以上を添加する場合は、いずれもそれぞれ0.010%以下の範囲で添加する必要がある。
Alは、脱酸剤として必要に応じて添加することができる。その場合、0.01%以上のAl含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のAl添加は熱間加工性を阻害する要因となるので、Alを添加する場合は1.00%以下の含有量範囲で行う。
〔熱延板の製造法〕
本発明に従えば、SUS304,SUS301などの汎用オーステナイト系ステンレス鋼と同様の工程にて熱延板を製造することができる。具体的には、成分調整された溶鋼を連続鋳造またはバッチ式で鋳造し、得られた鋳造スラブを加熱したのち抽出して、連続熱間圧延機またはリバース式熱間圧延機にて熱間圧延する手法が採用できる。
ただし、熱延に供するスラブにおいてδフェライト相ができるだけ少量かつ微細な状態となっていることが重要であるため、鋳造時にδフェライト相が過剰に成長しないように配慮する必要がある。具体的には、上述のとおりに成分調整された溶鋼をスラブ鋳造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジにおける凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が25℃/min以上となるように鋳造すればよい。本発明で対象とする鋼はPを含有しているので、鋳造スラブ中のδフェライト相は、従来の当該鋼種より微細化されたものとなる。このため、従来は後工程でのスラブ加熱処理における負荷増大を避けたい場合には鋳造時の上記平均冷却速度を50℃/min以上としなければならなかったが(特許文献14)、本発明に従えば25℃/minまで小さくすることができる。連続鋳造においては、鋳造時の冷却速度を小さくすることができるということは、モールド内を通過する時間をより短くすることができることを意味し、鋳造速度(ラインスピード)の向上に繋がる。すなわち生産性が向上する。
上記の手法で得られた鋳造スラブは、鋳造ままの状態においてδフェライト相が微細化されているので、熱間圧延前に行うスラブ加熱を特段に入念に行う必要はない。具体的には、1150〜1250℃かつオーステナイト単相温度域で1.5h以上加熱する条件を採用すればよい。その後、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼熱延鋼板の製造手法に準じて熱間圧延を行えば、耳割れによるトラブルを生じることなく、健全な熱延板を得ることができる。
〔熱延板焼鈍〕
得られた熱延板に対して行う熱延板焼鈍は、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域の温度に加熱する条件とすることが好ましい。加熱温度が低くなるとδフェライト相の消失効果が低減する。また、短時間で十分に再結晶化させる上でも不利となりやすい。一方、加熱温度がオーステナイト単相温度域を超えると、フェライト相の析出を招く。本発明で対象とする鋼種の場合、オーステナイト単相温度域の上限は通常1250℃よりも高温にあるが、熱延板焼鈍は1200℃以下の温度で行えば足りる。1150℃以下の範囲に管理してもよい。加熱時間は材料温度が上記温度範囲内の所定温度に到達した後、すぐに冷却する均熱0secとしてもよいが、通常、上記温度範囲内の所定温度域に30sec以上(例えば120sec以下)保持されるように加熱時間を調整することが望ましい。熱延板焼鈍後には、通常、酸洗が施される。
〔冷延焼鈍処理〕
本発明では、熱延板焼鈍を終えた熱延焼鈍鋼板に対して、特定条件下での「冷間圧延+焼鈍」の工程を2回以上実施することにより、冷延焼鈍鋼板を製造する。具体的には、前述のように「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理を2回以上実施する。これにより組織が均質化され、曲げ戻し加工性の良好な冷延焼鈍鋼板が得られる。その冷延焼鈍鋼板の板厚は例えば2〜0.5mm程度である。冷間圧延での圧延率が上記より小さい場合や、焼鈍温度が上記範囲より低い場合は、冷間圧延による加工歪を利用して焼鈍でCr等の偏析元素の拡散を促進させるという、均質化の作用が十分に発揮されない。焼鈍温度がオーステナイト単相域を超えるとフェライト相の析出を招くようになる。その場合、フェライト相中にはCr等の元素が濃化しやすくなる。また、この「冷延焼鈍工程」を1回しか実施しない場合は均質化の効果が不十分となる。
冷間圧延率の上限は設備能力により制限を受けるが、通常70%以下の範囲で設定すればよい。焼鈍温度の上限は、通常1150℃以下の範囲で設定すればよい。焼鈍時間は、あまり長時間とすると生産性が低下するので、通常、材料温度が上記所定の範囲に保持される時間を1min以下の範囲で設定すればよい。均熱0secとしても構わない。なお、各焼鈍後には通常、酸洗が行われる。
表5に示す鋼を溶製し、前述の「熱間加工性の実験例」と同様の手法にてスラブエッジを評価面とする熱延実験を行った。ただし、ここでは鋳造時における凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度、熱間圧延前のスラブ加熱温度および加熱時間を表6中に示すように変動させた。得られた熱延鋼板(トータル圧延率94.5%)について評価面に由来するエッジにおける耳割れ深さを測定し、前述の評価方法にて熱間加工性を評価し、最大耳割れ深さが0〜1mmのもの(○評価)を合格と判定した。
次に、熱間加工性が良好であった熱延板について、1100℃×均熱1minの熱延板焼鈍を施した。得られた熱延焼鈍鋼板(板厚3.5mm)について、冷間圧延+焼鈍からなる冷延焼鈍処理を1回または2回実施することにより、最終板厚0.8mmの冷延焼鈍鋼板を得た。具体的には、前述の製造手順aまたはbを採用し、各焼鈍は前述の焼鈍条件Qに従った。得られた冷延焼鈍鋼板から採取した試験片を用いて、前述の「曲げ戻し加工性の実験例」と同様の手法にて曲げ戻し加工性を評価した。そして、曲げ戻し加工性が良好であったもの(○評価)を合格と判定した。
これらの結果を表6に示す。
Figure 2012172211
Figure 2012172211
表6からわかるように、本発明に従って各合金成分の含有量を適性化し、鋳造時の冷却およびスラブ加熱を適正条件で行った場合には、低Mn化したNi節減型オーステナイト系ステンレス鋼において耳割れトラブルの生じない良好な熱間加工性が実現された。また、本発明に従う上述の冷延焼鈍処理を2回実施する方法により製造した冷延焼鈍鋼板は、いずれも良好な曲げ戻し加工性を呈した。
ただし、本発明で規定する化学組成を有する鋼であっても、製造条件が不適切であると良好な熱間加工性や曲げ戻し加工性が得られない場合がある。例えば、比較例であるNo.3はスラブ加熱温度が低すぎ、No.5はスラブ加熱時間が短すぎたため、これらはいずれも鋳造スラブ中に存在するδフェライト相の減少が不十分となり、熱間加工性は十分に改善されなかった。No.4はスラブ加熱温度がオーステナイト(γ)単相域を超えて高すぎたことによりδフェライト相が析出し、熱間加工性が低下した。No.6,9は鋳造時の冷却速度が小さすぎたことにより鋳造スラブ中に存在するδフェライト相の微細化が不十分となり、熱間加工性は十分に改善されなかった。また、No.2,8は上述の冷延焼鈍処理を1回しか実施しなかったため、冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性が十分に改善されなかった。
比較例であるNo.18〜24は本発明の規定を満たさない化学組成を有する鋼を採用したものである。このうちNo.18はVを含有しないため1mmを超える熱延耳割れが発生した。No.19,21,22および23はそれぞれオーステナイト生成元素であるはC,Mn,NiおよびNの含有量が不足したことによりδフェライト相の生成量が多くなりすぎ、熱間加工性は改善されなかった。No.20はSi含有量が過剰であり、またNo.24はCu含有量が不足するため、これらはいずれも冷延焼鈍鋼板の曲げ戻し加工性が十分に改善されなかった。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.030〜0.300%、Si:0.01〜2.00%、Mn:2.00〜3.50%、P:0.060%以下、S:0.005%以下、Ni:1.00〜5.00%、Cr:15.00〜19.00%、N:0.030〜0.300%、Cu:2.00〜3.50%、V:0.050〜0.300%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼の熱延焼鈍鋼板から、冷延焼鈍鋼板を製造するに際し、
    熱延焼鈍鋼板に、「圧延率35%以上の冷間圧延と、1050℃以上かつオーステナイト単相温度域での焼鈍」からなる冷延焼鈍処理を2回以上施す、曲げ戻し加工性に優れた低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法。
  2. 前記鋼は、さらにMo:2.0%以下、B:0.010%以下、Ca:0.010%以下、Al:1.00%以下の1種以上を含有するものである請求項1に記載の低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法。
  3. 溶鋼をスラブ鋳造用モールドに注入して、スラブ厚さ中央部のスラブエッジにおける凝固開始温度から1250℃までの平均冷却速度が25℃/min以上となるように鋳造する工程、
    得られた鋳造スラブを加熱炉にて1150〜1250℃で1.5h以上加熱する工程、
    上記加熱後のスラブを熱間圧延して熱延板を得る工程、
    熱延板に焼鈍(熱延板焼鈍)を施して熱延焼鈍鋼板とする工程、
    を有する請求項1または2に記載の低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法。
  4. 前記の熱延板焼鈍は、熱延板を1050℃以上かつオーステナイト単相温度域に加熱することにより行うものである請求項3に記載の低Niオーステナイト系ステンレス鋼板の製造法。
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