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JP2012164677A - イオンガン、及び成膜装置 - Google Patents

イオンガン、及び成膜装置 Download PDF

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JP2012164677A
JP2012164677A JP2012099937A JP2012099937A JP2012164677A JP 2012164677 A JP2012164677 A JP 2012164677A JP 2012099937 A JP2012099937 A JP 2012099937A JP 2012099937 A JP2012099937 A JP 2012099937A JP 2012164677 A JP2012164677 A JP 2012164677A
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Toru Satake
徹 佐竹
Shinji Satakoku
真治 佐田谷
Yasuhiro Hara
原  泰博
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Abstract

【課題】より高圧の真空領域での使用を可能とし、用途の拡大が図られた、イオンガン、及び成膜装置を提供する。
【解決手段】スリット状の開口部11が形成された陰極2と、開口部11の幅方向に磁場を発生させる磁石3と、磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように陰極2の裏面から離間配置された陽極5とを備え、陰極2の表面の開口部11からイオンビームが引き出されるイオンガン1である。磁石3は、SmCo合金を主成分として構成され、開口部11は、陰極2の裏面から内部に向かって垂直に延びる隙間が略一定の垂直部と、垂直部に連続し、陰極2の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部とから構成され、垂直部の隙間が、0.7mm以上2.5mm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、イオンガン、及び成膜装置に関するものである。
近年、イオン源(イオンガン)から引き出されたイオンビームを用いたプロセスが多用されており、種々の装置に対してイオンガン搭載のニーズが高まっている。一般的なイオンガンは、プラズマ生成後、引き出し電極によってイオンビームを引き出す手法が採用されていた。この手法は、イオン電流及びイオンエネルギの制御に優れており、例えば半導体のイオン注入に代表されるような精密なプロセスに採用することができる。しかしながら、構造上、プラズマ生成室や引き出し電極等が必要になるため、装置構成が複雑で高コストとなり、上記のイオン注入装置のような高付加価値のプロセス等の限定的な使用に留まっていた。
また、近年、イオンガンが成膜装置にも用いられている。成膜装置では、制御性よりも生産性が考慮され、大面積化、高スループット化が望まれている。そこで、磁場を有する隙間が形成された隙間を持つ陰極と、それに略垂直方向に電界がかかるように配置した陽極とを備え、これら電極間に電圧を印加し、マグネトロンタイプの放電を生じさせることでイオンビームを引き出すイオンガンが知られている(例えば、特許文献1参照)。このイオンガンは、リニアイオン源と呼ばれるもので、上記イオン注入に用いられるイオンガンに対し、引き出し電極の省略や、放電及びイオン加速を1台の電源で実行できるといった利点を有し、低コスト、高信頼性なものである。
特表2003−506826号公報
また、スパッタ成膜用途として、上記のリニアイオンガンを採用したいとの要望がある。スパッタ成膜用途では、反応性を高めプロセスの高速化を図るため、0.5Pa以上4Pa以下、より好ましくは0.5Pa以上2Pa以下の圧力雰囲気で、印加電圧が1KV以上の条件下でリニアイオンガンを使用する必要がある。
しかしながら、従来のリニアイオンガンでは、0.3Pa以上の圧力では、低インピーダンス放電となりイオンビームが発散してしまう。このような発散モード下においては、リニアイオンガンの用途が、プラズマCVD等に限られてしまうため、リニアイオンガンをスパッタ成膜用途として用いることができないといった問題があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、より高圧条件下での使用を可能とすることで、用途の拡大が図られた、イオンガン、及び成膜装置を提供することを目的としている。
本発明のイオンガンは、スリット状の開口部が形成された陰極と、前記開口部の幅方向に磁場を発生させる磁石と、前記磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように前記陰極の裏面から離間配置された陽極と、を備え、前記陰極の表面の前記開口部からイオンビームが引き出されるイオンガンにおいて、前記磁石は、SmCo合金を主成分として構成され、前記開口部は、前記陰極の裏面から内部に向かって垂直に延びる隙間が略一定の垂直部と、該垂直部に連続し、前記陰極の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部と、から構成され、前記垂直部の隙間が、0.7mm以上2.5mm以下であることを特徴とする。
本発明のイオンガンによれば、後述する実験結果に示されるように、開口部に強い磁場を形成することができ、0.5Pa以上といった高い圧力条件下においても、高インピーダンス放電を維持することができる。したがって、0.5Pa以上の圧力条件が必要とされるスパッタ成膜用途にも用いることができ、用途が拡大されたものとなる。
また、本発明のイオンガンは、スリット状の開口部が形成された陰極と、前記開口部の幅方向に磁場を発生させる磁石と、前記磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように前記陰極の裏面から離間配置された陽極と、を備え、前記陰極の表面の前記開口部からイオンビームが引き出されるイオンガンにおいて、前記磁石は、SmCo合金を主成分として構成され、前記開口部は、前記陰極の裏面から内部に向かって垂直に延びる隙間が略一定の垂直部と、該垂直部に連続し、前記陰極の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部と、から構成され、前記垂直部の高さをhとし、前記垂直部の隙間をaとしたとき、h/aが、0.6以上2.1以下を満たすことを特徴とする。
本発明のイオンガンによれば、後述する実験結果に示されるように、開口部に強い磁場を形成することができ、0.5Pa以上といった高い圧力条件下においても、高インピーダンス放電を維持することができる。したがって、0.5Pa以上の圧力条件が必要とされるスパッタ成膜用途にも用いることができ、用途が拡大されたものとなる。
上記イオンガンにおいては、前記磁石は、SmCo合金に代えて、NdFe合金を主成分として構成されていてもよい。
この構成によれば、SmCo合金を主成分とするものに比べ、NdFe合金を主成分とするものは、1.2〜1.4倍の磁力が得られるので、開口部により強い磁場を形成することができ、より高い圧力条件の下で使用することができる。
また、上記イオンガンにおいては、前記傾斜部の内面は、前記陰極の表面に対して、45°〜60°の傾斜角度を有するのが好ましい。
この構成によれば、傾斜部をなす内壁面が近づくことで、傾斜部間に形成される磁場強度が高まることで、結果的に開口部内に形成される強い磁場が強まり、より高い圧力下での使用が可能なものとなる。
本発明の成膜装置は、上記のイオンガンを備えたことを特徴とする。
本発明の成膜装置によれば、より高い圧力条件下で使用できるイオンガンを備えているので、成膜装置自体を適用できる範囲(用途)を飛躍的に拡大できる。
本発明によれば、開口部に強い磁場が形成されるので、0.5Pa以上の圧力条件が必要とされるスパッタ成膜用途においても、高インピーダンス放電を維持することができ、従来に比べ、用途が拡大されたものとなる。
イオンガンの一実施形態における概略構成図である。 図1に断面が示されているイオンガンの概略斜視図である。 開口部の周辺拡大図である。 イオンビーム透過率と垂直部の隙間との関係を示した図である。 磁場強度と垂直部の隙間aとの関係を示した図である。 イオンガンにおける使用可能上限圧力を示す図である。 インラインスパッタ成膜装置の概略構成を示す図である。
(第一実施形態)
次に、本発明の第一実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明に係るイオンガンの一実施形態における概略構成断面図(図2中A−A´線矢視)であり、図2は図1に断面が示されているイオンガンの概略斜視図である。図1に示すように、イオンガン1は、スリット状の開口部11が形成された陰極2と、前記開口部11の幅方向に磁場を発生させる磁石3と、前記磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように前記陰極2の裏面から離間配置された陽極5とを備え、前記陰極2の表面の前記開口部11からイオンビームが引き出されるものである。
本実施形態のイオンガン1は、陽極5及び陰極2間にArやO等のガスを流し、高圧電源により電圧を印加することで、陰極2と陽極5との間にマグネトロンタイプの放電(プラズマ)を生じさせ、前記スリット状の開口部11からイオンビームが引き出される、いわゆるリニア(線状)イオンガンである。リニアイオンガン(イオンガン1)は、グリッド電極などの引き出し電極を不要とする簡便な構成からなるもので、1台の電源で放電とイオン加速を行うことができる。また、リニアイオンガン(イオンガン1)は、熱フィラメントを有しないので、酸素雰囲気でも長時間の運転が可能で、低コスト、信頼性が高いものとなっている。
前記開口部11は、図2に示すように長円形のトラック形状となっている。なお、イオンガン1の寸法は、全長400mm×幅100mm×高さ80mmであり、前記開口部11のコーナー部分は、平面視で曲率半径が25mmの曲線により構成される。
具体的には、イオンガン1は、図1に示したように、内部にSmCo(サマリウムコバルト)合金から構成される磁石3と陽極5とが設けられており、磁石3及び陽極5を囲むように鉄製のヨーク4が枠状に設けられている。そして、ヨーク4に囲まれた領域を覆うように、SS400、あるいはサビ難いSUS430等から構成される陰極2が設けられる。
本実施形態のイオンガン1は、磁石3を中央部に配置することで、磁石を外側に設ける構造に比べ、磁石の数を半分にした簡便な構造となっている。また、ヨーク4上に陰極2を配置することで、陰極2内を通る磁束により、図1に示すように開口部11の幅方向、すなわちインビームの引き出し方向に一致する電界方向と直交する方向に磁場が形成される。
また、イオンガン1には、陰極2に形成された開口部11の変形防止や、温度に依存しない安定駆動を実現するために、内部に冷却媒体(水)が流れる水冷用パイプPが複数設けられている。
(開口部)
前記開口部11は、本発明の特徴的な構成要素となっている。以下、陰極2に形成された開口部11の構造について説明する。図3は、開口部11の周辺拡大図である。以下の説明において、陰極2の裏面とはイオンガン1の内部側(陽極5側)に相当し、陰極2の表面とはイオンビームが引き出される側に相当する。
本実施形態では、図3に示すように、開口部11は、陰極2の裏面からイオンガンの内部に向かって垂直に延びる隙間が一定の垂直部11aと、該垂直部11aに連続し、陰極2の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部11bとから構成される。前記傾斜部11bを設けたことで、イオンガン1内部で発生したプラズマを外部に引き出しやすくし、イオンビーム量を増加させることができる。前記傾斜部11bにおける陰極上面に対する傾斜角度θは、例えば45°に設定されている。
近年、スパッタ成膜用途として、上述したような低コストで信頼性の高いリニアイオンガンを用いたいとの要望がある。ここで、スパッタ成膜用途とは、イオンビームをターゲットに照射して対向する基板に成膜するイオンビームスパッタや、スパッタ成膜時のアシスト(例えば、酸化源として使用)としてイオンガンを使用する場合を意味している。
上記のスパッタ成膜用途では反応性を高め、プロセスの高速化を図るため、高圧真空下でイオンガンを使用する必要がある。すなわち、スパッタ成膜用途では、成膜速度、生産性の点から、0.5〜4Pa、最も好ましい範囲としては0.5〜2Paの圧力雰囲気で、印加電圧が1KV以上の条件下でイオンガンを使用しなければならない。
1KV以上の印加電圧を必要とする理由としては、印加電圧の半分がイオンのエネルギの最頻値であるためで、1KV未満の印加電圧だと、例えばイオンビームが照射されるターゲットや基板表面でのスパッタ率が低下し、生産性(成膜速度あるいは反応速度等)が低下してしまうからである。
ところで、従来のリニアイオンガンは、0.3Pa以上の圧力では、後述する理由から、低インピーダンス放電となり、電圧は数百ボルト程度、電流は数A程度となり、イオンビームが発散してしまう。
上記の理由としては、イオンガン内部の圧力が上昇すると放電電流が増加し、プラズマ温度の上昇に伴いプラズマ形成領域が拡大しようとする。このようにプラズマ領域が拡大すると、陰極と陽極との間がプラズマによって架橋(ブリッジ)されてしまう。すると、良導体であるプラズマによって陽極及び陰極間に大電流が流れてしまい、したがって上記の低インピーダンス放電モードに移行してしまうのである。
なお、デバイ長とは、正電場の作用と熱運動の作用とが釣り合う特性的な距離である。
プラズマ中に置かれた点電荷は、自分の作る電場で電子やイオンを引きつけ、あるいは反発することで、周囲に自分の電場を打ち消すような局所的な電荷分布を形成しようとする。しかしながら、電子やイオンは熱運動しているので、一様な分布になろうとする。この2つの作用の釣り合い(上記デバイ長により規定される)から電荷の空間分布が決まり、静電ポテンシャル場が形成される。
したがって、従来、リニアイオンガンの用途は、0.3Pa未満の圧力下で行われる、例えばプラズマCVD等の化学的蒸着法に限られていた。
本発明では、前記垂直部11aの隙間a(垂直部11aをなす開口部11の内壁面間の間隔)が、0.7mm以上2.5mm以下に設定されており、具体的に本実施形態では、前記隙間aを2.0mmに設定した。したがって、本実施形態に係るイオンガン1は、以下のように、従来のリニアイオンガンでは得られない格別の効果を得ることができる。
(実験例)
以下に、本発明のイオンガンの格別の効果を裏付ける実験結果について説明する。この実験では、垂直部11aの隙間と開口部11内に生じる磁場の強度、或いは前記隙間aとイオンガン1の最大使用可能圧力との関係を調べた。なお、前記イオンガン1における隙間aを0.5mm〜2.5mmの範囲で変化させ、それぞれの結果を測定した。
図4は、イオンガン1におけるイオンビーム透過率と垂直部の隙間aとの関係を示した図であり、同図中、縦軸はビーム透過率(%)、横軸は隙間a(mm)を示している。図4に示すように、垂直部の隙間aが製造限界の0.5mm程度では、イオンビーム透過率(透過ビーム電流/放電電流)が低く、放電電流の15%程度しかイオンビームとして引き出すことができない。一方、垂直部の隙間aが0.7mm程度になると、放電電流の60%以上をイオンビームとして引き出すことができる。また、垂直部の隙間aを2.5mmとすれば、放電電流の略100%近くをイオンビームとして引き出すことができる。
したがって、垂直部の隙間aを0.7mm以上に設定すれば、開口部11からイオンビームを効率的に引き出すことが可能となる。
また、垂直部11aの高さhは、イオンビームの引き出し効率(イオンビーム透過率)に影響を及ぼす。垂直部11aの高さhが増加すると、陽極電界を遮蔽する効果が大きくなり、開口部11内を通過するイオンに抵抗が生じてしまうからである。そこで、垂直部11aの高さhを抑え、イオンビームの引き出し効率を高めるのが好ましい。
具体的には、垂直部11aの高さhを1.5mm以下に設定するのが好ましく、本実施形態では前記高さhを1.5mmとした。前記高さhを1.5mm以下に設定することで、イオンが開口部11を通り抜ける確率を実用的な範囲(20%以上)とすることができる。また、前記高さhの下限値としては開口部11の強度に影響を与えない範囲において規定できる。
なお、イオンビーム透過率を、垂直部の隙間aと垂直部11aの高さhとの比で規定されるパラメータ(h/a)によって表現することも可能であり、イオンビーム透過率は前記パラメータ(h/a)の増加とともに急激に減少する。
具体的には、h/aを2.1以下(aが0.7以上)に設定すれば、実用上十分なイオンビーム透過率(60%以上)を得ることができる。なお、上記イオンガン1においては、h=1.5mm、a=2.0mmであるため、h/aが0.75となっている。
また、開口部11に形成される磁場の強度が、垂直部の隙間aと反比例の関係にあることが分かった。図5は、磁場強度と垂直部の隙間aとの関係を示した図であり、同図中、縦軸は開口部に生じる磁場強度(KGauss)、横軸は開口部壁面の隙間(mm)を示している。
図5に示すように、垂直部の隙間aが小さくなるにつれて、磁場強度が高まることが確認できる。具体的には、隙間aが2.5mm以下の範囲であれば、2.0KGauss以上の磁場強度を得ることができる。また、上記イオンガン1は、垂直部の隙間aが2.0mmであることから2.5KGauss程度の磁場強度が得られた。ここで、比較として、従来のイオンガンを例に挙げると、従来のリニアイオンガンは、磁石材料としてフェライトが用いられており、垂直部の隙間が2mmの場合、開口部内に生じる磁場の強度が1.5KGauss程度であった。したがって、本実施形態のイオンガン1は、従来に比べ、開口部11内に生じる磁場強度が向上したものとなっている。
次に、垂直部の隙間aとイオンガンの使用可能上限圧力との関係について図6を参照して説明する。図6中、縦軸は最大使用可能圧力(Pa)を示し、横軸は、隙間a(mm)を示している。具体的な実験方法としては、イオンガンへのガス導入口を密閉し、実験用チャンバ内にArガスを10〜100sccm導入し、実験用チャンバに設けた排気用バルブの閉じ具合を調整することで、0.1〜10Paの範囲で実験用チャンバ内の圧力を調整し、印加電圧1〜3KVでイオンガンを駆動した際に、正常放電を維持できるか否かを測定した。上記実験により、図6に示すように、垂直部の隙間aが2.5mm以下の範囲であれば、0.5Pa以上の最大使用可能圧力となることが分かった。また、h/aを0.6以上(aが2.5mm以下)に設定すれば、上述したように十分なイオンビーム透過率とともに、しかも最大使用可能圧力が最大で3.5Pa程度となることが分かった。
上記最大使用圧力についての実験結果が得られた理由としては以下の事が考えられる。
上述したように、本発明のイオンガン1は、開口部11内に従来に比べ強い磁場を形成することができる。従来は、プラズマ領域の拡大を十分に抑制することができず、陰極と陽極との間が架橋(ブリッジ)されてしまい、低インピーダンス放電モードに移行してしまった。一方、本発明では、開口部内に形成される磁場が強くなることで、電子の回転半径(ラーマー半径)が小さくなり、陰極2及び陽極5の間に形成されるプラズマ領域が狭まる。よって、プラズマ領域の拡大が抑制されることで、従来の構成では生じてしまった架橋を防止することができ、高圧力雰囲気下においても高インピーダンス放電(グロー放電モード)を持続することができるのである。
したがって、本実施形態のイオンガン1は、0.7≦a≦2.5、0.6≦h/a≦2.1を満たしているので、上述したように、低インピーダンス放電を生じることなく、0.5Pa以上の高圧力条件の下において使用することができ、プラズマCVD(化学的蒸着法)以外の用途、具体的にはスパッタ成膜時に適用可能となり、使用範囲(用途)が拡大されたものとなる。
(変形例)
次に、イオンガンの変形例について説明する。上記実施形態のイオンガン1は、垂直部11aの高さhを1.5mmとしていたが、この場合の陰極2はイオンビーム透過率、及び生産性の観点から、上記隙間aを1.0mmに設定するのが好ましい。そこで、本変形例では、隙間aを固定(1.0mm)した状態において、開口部11における磁場強度をより向上させる場合について説明する。
具体的には、磁場を強める手段として、以下の3つの場合がある。
まず、第1の手段として、磁石3の材料を上記実施形態のSmCo合金からNdFe(ネオジウム鉄)合金に変更することが挙げられる。NdFe合金は、SmCo合金に比べ、1.2〜1.4倍の磁力が得られることから、開口部により強い磁場を形成することができる。したがって、上記実施形態に比べ、より高い圧力条件の下で使用可能なイオンガンとなる。
また、第2の手段として、陰極2の飽和を防止することが挙げられる。通常、陰極材料としては、上述したSS400や、SUS430等が用いられている。そこで、透過率の高い材料、例えば純鉄、パーマロイを用いて陰極を形成することで、上記実施形態に比べ、飽和点が約2倍高まり、より高い圧力条件の下で使用できるイオンガンとなる。
なお、上記の純鉄、パーマロイ等は高価であるため、従来のSS400や、SUS430を使用するのが好ましい。そこで、第3の手段として、陰極の形状を変更することが挙げられる。具体的には、図1に示した傾斜面11bの傾斜角度θを45°以上、具体的には60°に規定することが挙げられる。この構成によれば、傾斜部11bをなす内壁面間の距離が近づき、傾斜部11b間に形成される磁場強度が高まることで、結果的に開口部11内に形成される磁場が強まり、より高い圧力下での使用が可能なイオンガンとなる。
上記実施形態では、垂直部の隙間aを1.0mmに設定した場合には、図5に示したように約3.5KGaussの磁場強度が得られ、図6に示すように最大使用可能圧力が3Pa程度であった。一方、第3の手段に係るイオンガンは、垂直部の隙間aを1.0mmに設定した場合において、約4KGaussの磁場強度が得られ、使用圧力限界値を4Paまで上昇させることができる。また、上記傾斜面11bの傾斜角度は、65°以上になると電極の消耗が加速するため、傾斜角度を45°以上60°以下に設定するのが好ましい。
(成膜装置、成膜方法)
次に、本発明の成膜装置、及び成膜方法の一実施形態について説明する。
図7は、上記イオンガン1を備えたインラインスパッタ成膜装置(成膜装置)の概略構成を示す図である。図7に示すように、インラインスパッタ成膜装置200は基板210を大気から真空中に導入するロードロックイン室201、基板210に異なる種類の金属やセラミックの膜をつける複数の成膜室202、203、204、及び基板を大気中に取り出すロードロックアウト室205から構成されている。なお、成膜室202と成膜室203とは連通部222によって連通しており、同様に成膜室203と成膜室204とは連通部223によって連通した状態となっている。
本実施例では、三層の異なる種類の成膜を行う場合について説明するが、目的に応じてさらに多い層(あるいは少ない層)を形成する場合は、その層数に対応する数の成膜室を設ければよい。それぞれの成膜室には、マグネトロンスパッタ装置211〜213が配置されており、各層に対応した金属またはセラミック等の材料からなるターゲット214〜216が取り付けられており、このターゲットを放電で生じた高エネルギのイオンによりたたいて、ターゲット物質をたたき出し(スパッタリング)、ガラス基板210の上に堆積させる。
また、ロードロックイン室201と成膜室202との間には、ゲートバルブB1が設けられており、これによってロードロックイン室201と成膜室202との雰囲気が分離可能となっている。また、ロードロックアウト室205と成膜室204との間にも、同様にゲートバルブB2が設けられている。これら各室には、図示しない真空ポンプなどが接続されており、これによって内部圧力を調整可能となっている。
通常、放電は13.56MHzの交流を陽極と陰極間にかけて、図示しない室内にArなどのガスを導入することで生じさせる。このとき、放電に必要な圧力は、10−2Pa〜数Paであり、より好ましくは10−1Pa〜数Paであり、更に好ましくは0.5Pa〜2Paである。圧力が高くなると放電によるプラズマ密度が増加し、その結果ターゲットをたたくイオンの数が増加することで、たたき出される物質の量が増加し、成膜速度が上がり生産性を向上できる。一方圧力が高すぎると平均自由工程が短くなり、そのためにたたき出されたターゲット物質と導入ガスとが散乱することで堆積速度が減少してしまう。
このため、圧力は成膜物質や堆積物に応じて最適な条件を選ぶ必要がある。導入ガスは1種類だけとは限らず、複数のガスを導入してもよい。例えば、酸化物をスパッタにより成膜する場合は堆積された膜中の酸素が減少する場合があるので、酸素を混ぜることがある。そこで、本実施形態では、酸化を促進するための酸化源として、成膜室204内にイオンガン217(上記イオンガン1)を設けている。
次に、上記成膜装置を使用した成膜方法について説明する。
はじめに、大気中から、ロードロックイン室201に処理基板としてのガラス基板210を取り込んだ後、該ロードロックイン室201から成膜室202内に所定時間の後、搬送される。そして、成膜室202内で、ガラス基板210上にターゲット214をスパッタし、金属電極、誘電体膜等を形成する。そして、成膜室203で更にバリア膜としてTaを10nm形成し、その上に成膜室204でMgOを400nm形成する場合を示す。
なお、成膜室202〜204内においては、ガラス基板210が所定速度で移動しつつ、各処理が行われる。
成膜室203にはTaターゲット212が設けられ、成膜室204にはMgOターゲット216が設けられている。MgO成膜では酸素が欠乏するので、成膜室204にAr+O(5%)を導入し、更に酸化を促進するための酸化源として、上述したイオンガン217を取り付けている。このイオンガン217には酸素ガスを10sccm流し、これにより酸素イオン、及び酸素ラジカルを作り出しガラス基板210上に化学量論的なMgOを堆積させることができた。なお、成膜室204内における成膜工程には、上記イオンガン1が用いた本発明の成膜方法が用いられている。
MgOが堆積されたガラス基板210は、成膜室204内の処理エリア(マグネトロンスパッタ装置213に対向する位置)から、ガラス基板210の大きさに設定された退避領域(スパッタ処理が行われない領域)を通って、ロードロックアウト室205内に搬送された後、外部に取り出される。
この膜は、プラズマディスプレイの誘電体の保護膜として好適に用いることができ、化学量論的な酸化数を達成することにより、光の透過率を略100%にすることができ、保護膜として緻密で長寿命なものを形成することができる。
本実施形態のインラインスパッタ成膜装置200、及び成膜方法にあっては、従来のラインイオンガンを用いた場合では不可能であった、スパッタ成膜用途(酸化源)にも対応することができる。また、イオンビームスパッタ等にも適用でき、装置あるいは成膜方法の適用範囲(用途)が拡大されたものとなる。
1…イオンガン、2…陰極、3…磁石、5…陽極、11…開口部、11a…垂直部、11b…傾斜部、200…インラインスパッタ成膜装置(成膜装置)

Claims (5)

  1. スリット状の開口部が形成された陰極と、前記開口部の幅方向に磁場を発生させる磁石と、前記磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように前記陰極の裏面から離間配置された陽極と、を備え、前記陰極の表面の前記開口部からイオンビームが引き出されるイオンガンにおいて、
    前記磁石は、SmCo合金を主成分として構成され、
    前記開口部は、前記陰極の裏面から内部に向かって垂直に延びる隙間が略一定の垂直部と、該垂直部に連続し、前記陰極の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部と、から構成され、
    前記垂直部の隙間が、0.7mm以上2.5mm以下であることを特徴とするイオンガン。
  2. スリット状の開口部が形成された陰極と、前記開口部の幅方向に磁場を発生させる磁石と、前記磁場に対し略垂直方向に電界を生じさせるように前記陰極の裏面から離間配置された陽極と、を備え、前記陰極の表面の前記開口部からイオンビームが引き出されるイオンガンにおいて、
    前記磁石は、SmCo合金を主成分として構成され、
    前記開口部は、前記陰極の裏面から内部に向かって垂直に延びる隙間が略一定の垂直部と、該垂直部に連続し、前記陰極の表面に向かって隙間が漸次拡がる傾斜部と、から構成され、
    前記垂直部の高さをhとし、前記垂直部の隙間をaとしたとき、
    h/aが、0.6以上2.1以下を満たすことを特徴とするイオンガン。
  3. 前記磁石は、SmCo合金に代えて、NdFe合金を主成分として構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオンガン。
  4. 前記傾斜部の内面は、前記陰極の表面に対して、45°〜60°の傾斜角度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオンガン。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオンガンを備えたことを特徴とする成膜装置。
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