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JP2012118177A - セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び液晶表示装置 Download PDF

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JP2012118177A
JP2012118177A JP2010266197A JP2010266197A JP2012118177A JP 2012118177 A JP2012118177 A JP 2012118177A JP 2010266197 A JP2010266197 A JP 2010266197A JP 2010266197 A JP2010266197 A JP 2010266197A JP 2012118177 A JP2012118177 A JP 2012118177A
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Shinichiro Suzuki
真一郎 鈴木
Rieko Ren
理英子 れん
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Konica Minolta Advanced Layers Inc
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Konica Minolta Advanced Layers Inc
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Abstract

【課題】本発明の目的は、バックライト側偏光板保護フィルムとして用いても、端部ムラの発生のないセルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び該セルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】セルロースアシレートを含有し、フィルム面内の複屈折率を測定したとき互いに直交する方向の複屈折率をnx、nyとしたときにnx>nyであり、かつ該nx、ny方向の寸法変動をそれぞれSx、SyとしたときSx>Syであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び該セルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置に関する。
近年、IPS方式やVA方式の液晶パネルにおいてパネル端部の表示ムラ故障が問題になっている。この端部の表示ムラ(以降簡単に端部ムラと呼称する)は偏光子の両側を保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムを貼合した偏光板を液晶セルの両側に張り付けた構成において、高温高湿度条件下で経時した時に、液晶表示画面を黒表示すると四隅で楕円形の光漏れによる表示ムラが観察されるものである。
図1は端部ムラを表した模式図である。
図中上段は、バックライト1上に、偏光子2、液晶セル側保護フィルム3、バックライト側保護フィルム4で構成されている偏光板を示した。液晶セル(不図示)は液晶セル側保護フィルム3に貼合されている。
端部ムラの原因は本発明者らの解析によれば主に偏光板のそりに起因するものである。即ち、液晶セルの両側の面には通常偏光板が粘着剤を介して貼合されているが、バックライト側の偏光板は温度や湿度が視認側表面の偏光板に対して高温、高湿になりやすいため、バックライト側の偏光板が経時によって高温、高湿に晒されると、特にバックライト側偏光板の保護フィルム端部が吸水し始めるが、その中心部は吸水し難いため、次第に端部からそり始めパネル面内で応力が発生する。
この時、この応力により中心部分はバックライト1とバックライト側保護フィルム4が接するようになるが、端部はバックライトと接しないというパネルの歪みが起こる。このような歪みが生じると中心部分と端部で保護フィルムの位相差が変化するため、これが楕円形の光漏れによる表示ムラの発生の原因となるものと考えられる。
上記端部ムラについては特許文献1、2に記載されており(サークルムラと呼称)、バックライト側偏光板とバックライト側光学部材の距離を調整する技術が開示されている。
しかしながら、液晶表示装置の薄型化に伴い、バックライト側偏光板とバックライトの距離はますます接近する傾向にあり、特に直下方式バックライトでは輝度を上げようとするとますます発熱量が増す為、偏光板が熱によりダメージを受けやすくなる傾向にあり、上記技術では端部ムラの解決について不十分である。
特開2007−187841号公報 特開2007−225922号公報
従って、本発明の目的は、バックライト側偏光板保護フィルムとして用いても、端部ムラの発生のないセルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び該セルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
1.セルロースアシレートを含有し、フィルム面内の複屈折率を測定したとき互いに直交する方向の複屈折率をnx、nyとしたときにnx>nyであり、かつ該nx、ny方向の寸法変動をそれぞれSx、SyとしたときSx>Syであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
2.前記セルロースアシレートがアシル置換度が2.80〜2.95の範囲にあるセルローストリアセテートであることを特徴とする前記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
3.下記一般式(1)で表され、かつ重量平均分子量300〜5000であるポリエステル系可塑剤を含むことを特徴とする前記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(1) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
4.前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを偏光子の少なくとも一方の面に用いた偏光板をIPS型液晶パネルに用いたことを特徴とする液晶表示装置。
5.前記セルロースアシレートフィルムを液晶セル側の偏光板のバックライト側に配置することを特徴とする前記4に記載の液晶表示装置。
6.前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、幅手方向の延伸処理時の温度を180〜210℃の範囲、かつ該延伸処理時の倍率を30〜55%の範囲でフィルムを延伸処理することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
本発明によれば、バックライト側偏光板保護フィルムとして用いても、端部ムラの発生のないセルロースアシレートフィルム、該セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び該セルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置を提供することができる。
端部ムラの模式図である。
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを含有し、フィルム面内の複屈折率を測定したとき互いに直交する方向の複屈折率をnx、nyとしたときにnx>nyであり、かつ該nx、ny方向の寸法変動をそれぞれSx、SyとしたときSx>Syであることを特徴とする。
本発明は、IPSモード液晶表示装置、VAモード液晶表示装置に用いられる偏光板の保護フィルムであって、上記nx(遅相軸ともいう)方向と寸法変動の大きい方向Sxが同じ方向を向いているセルロースアシレートフィルムは高温高倍率で延伸されているため、幅手方向にも長手方向にも安定した応力分布、光学分布を持っており、なおかつ面積の大きなフィルム中でも各部位の温度や湿度による寸法変動、位相差変動が小さく、これを保護フィルムとして用いると、上記高温高湿度条件下で経時した時の液晶パネルにそりが生じた場合でも、良好な応力分布・光学分布により中心部分と端部で保護フィルムの位相差が変化しないことを見出し本発明を成すに至った次第である。
従来のセルロースアシレートフィルムは、通常幅手方向に延伸処理をすることによって幅手方向にnx(遅相軸)が発現するが、寸法変動の大きい方向は延伸方向とは逆の方向である長手方向になり、Sx<Syとなる。従って通常nx>nyであり、かつSx<Syとなるフィルムでは、パネルのそりによって中心部と端部で位相差が異なり端部ムラが観察される。
本発明者は鋭意検討した結果、セルロースアシレートのアシル置換度が2.80〜2.95の範囲にある特定のセルロースアシレートを用い、更に好ましくは上記一般式(1)で表される、封止剤として酢酸、安息香酸、p−トロイル酸、トロイル酸から選ばれる少なくとも1種を使用し、主鎖としてフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、1,2−プロパンジオールの少なくとも1種から選ばれる主鎖を有し、重量平均分子量300〜5000であるポリエステル系可塑剤を含有させ、幅手方向の延伸処理時の温度を180〜210℃の範囲、かつ該延伸処理時の倍率を30〜55%の範囲でフィルムを延伸処理することによって、nx>nyであり、かつSx>Syであるセルロースアシレートフィルムによって、端部ムラの発生のないセルロースアシレートフィルムを実現できることを見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
<セルロースアシレート>
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いるセルロースアシレートは、炭素数2〜22程度のカルボン酸エステルであり、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味している。水酸基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐してもよく、また環を形成してもよい。更に別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、前記炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2〜6のアシル基の中で選択することが好ましい。
中でも本発明において特に好ましく用いられるセルロースアシレートはセルロースアセテートであることが好ましく、アシル置換度(アセチル基置換度)が2.80〜2.95の範囲にあるセルローストリアセテートであることが好ましい。
また、前記セルロースアシレートは、混合酸由来のアシル基を用いることもでき、好ましくは炭素数が2と3、或いは炭素数が2と4のアシル基を用いることができる。本発明では、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることもできる。
本発明に係るセルロースアシレートとしては、下記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
式(1) 2.80≦X+Y≦2.95
式(2) 0≦Y≦1.5
式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基またはブチリル基の置換度である。上記2式を満足するものは、本発明の目的に叶う優れた物理特性、光学特性を示すフィルムを得ることができる。
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
前記アシル基の置換度が2.80未満では、セルロース樹脂の骨格を構成するピラノース環の水酸基に対して未反応部分が多くなり、該水酸基が多く残存することが位相差の発現に関わり、延伸処理をすることでnx>nyであり、かつSx>Syであるセルロースアシレートが得られない。また位相差の湿度変化や偏光板保護フィルムとして偏光子を保護する能力が低下してしまうことがあり好ましくない。
前記アシル基の置換度が2.95を越えると、本発明のような高延伸倍率での延伸処理が困難となり破断等を引き起こし易く、生産性が大幅に低下する上に、ヘーズが上がる傾向にあり透明性を確保できず、パネルの視認性が確保できない。
本発明に係るセルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースアシレートフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースアシレートを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースアシレート(好ましくはセルローストリアセテート又はセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
セルロースアシレートの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
高速液体クロマトグラフィーにより下記条件で測定する。
溶媒:アセトン
カラム:MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度:0.2(質量/容量)%
流量:1.0ml/分
試料注入量:300μl
標準試料:標準ポリスチレン
温度:23℃
本発明に用いられるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)や綿花リンターなどが使用できる。セルロースの種類や複数の原料セルロースの使用により、セルロースアシレートのMwを制御できる。例えば、広葉樹加水分解クラフトパルプを用いてエステル化すると、セルロースアシレートのMwが大きくなり、針葉樹サルファイトパルプを用いると、Mwが小さくなり易い。そのため、セルロースは単独で又は二種以上組み合わせてもよく、例えば、針葉樹パルプと、綿花リンター又は広葉樹パルプとを併用してもよい。セルロースとしては、通常、パルプ(特に針葉樹パルプ)を用いる場合が多い。なお、セルロースのα−セルロース含有量(質量%)は、通常、94〜99(例えば、95〜99)、好ましくは96〜98.5(例えば、97.3〜98)程度であってもよい。
本発明に係るセルロースアシレートは、セルロース原料のアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて反応が行われる。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
本発明で用いられるセルロースアシレートは、グルコース単位の6位のアシル基の平均置換度が0.5〜0.9であることが好ましい。
セルロースアシレートを構成するグルコース単位の6位には、2位及び3位と異なり、反応性の高い一級ヒドロキシル基が存在し、この一級ヒドロキシル基は、硫酸を触媒とするセルロースアシレートの製造過程で硫酸エステルを優先的に形成する。そのため、セルロースのエステル化反応において、触媒硫酸量を増加させることにより、通常のセルロースアシレートに比べて、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることができる。更に、必要に応じて、セルロースをトリチル化すると、グルコース単位の6位のヒドロキシル基を選択的に保護できるため、トリチル化により6位のヒドロキシル基を保護し、エステル化した後、トリチル基(保護基)を脱離することにより、グルコース単位の6位よりも2位及び3位の平均置換度を高めることができる。具体的には、特開2005−281645号記載の方法で製造されたセルロースアシレートも好ましく用いることができる。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースアシレートの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、且つ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
セルロースアシレートの製造法の一例を以下に示すと、セルロース原料として綿化リンター100質量部を解砕し、40質量部の酢酸を添加し、36℃で20分間前処理活性化をした。その後、硫酸8質量部、無水酢酸260質量部、酢酸350質量部を添加し、36℃で120分間エステル化を行った。24%酢酸マグネシウム水溶液11質量部で中和した後、63℃で35分間ケン化熟成し、アセチルセルロースを得た。これを10倍の酢酸水溶液(酢酸:水=1:1(質量比))を用いて、室温で160分間攪拌した後、濾過、乾燥させてアセチル置換度2.85の精製アセチルセルロースを得た。このアセチルセルロースはMnが92000、Mwが156000、Mw/Mnは1.7であった。同様にセルロースアシレートのエステル化条件(温度、時間、攪拌)、加水分解条件を調整することによって置換度、Mw/Mn比の異なるセルロースアシレートを合成することができる。
尚、合成されたセルロースアシレートは、精製して低分子量成分を除去したり、未酢化または低酢化度の成分を濾過で取り除くことも好ましく行われる。
また、混酸セルロースアシレートの場合には、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることができる。
また、セルロースアシレートは、セルロースアシレート中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
本発明のセルロースアシレートは、カルシウム含有量が10〜50ppmであるが、好ましくは15〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースアシレートをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することができる。
次に本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられる添加剤について説明する。
(可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を得る上で、下記一般式(1)で表され、かつ重量平均分子量300〜5000であるポリエステル系可塑剤を用いることが好ましい。
一般式(1) B−(G−A)n−G−B
式中、Bはモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。
一般式(1)中、Bで示されるモノカルボン酸残基とGで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られる。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤のモノカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。特に、酢酸、安息香酸、p−トロイル酸、トロイル酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に用いることのできるポリエステル系可塑剤の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースアシレートとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記芳香族末端エステルの炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
芳香族末端エステルの炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等がある。
本発明で使用されるポリエステル系可塑剤は、数平均分子量が、好ましくは300〜5000、より好ましくは400〜2000の範囲が好適である。
本発明のポリエステル系可塑剤の分子量は、前述のGPCによる測定方法、末端基定量法(水酸基価)を使用して測定することができる。
また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
以下、本発明に用いることのできる芳香族末端エステル系可塑剤の合成例を示す。
〈サンプルNo.1(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器にアジピン酸410部、安息香酸610部、ジプロピレングリコール737部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.40部を一括して仕込み窒素気流中で攪拌下、還流凝縮器を付して過剰の1価アルコールを還流させながら、酸価が2以下になるまで130〜250℃で加熱を続け生成する水を連続的に除去した。次いで200〜230℃で1.33×10Pa〜最終的に4×10Pa以下の減圧下、留出分を除去し、この後濾過して次の性状を有する芳香族末端エステル系可塑剤を得た。
粘度(25℃、mPa・s);43400
酸価 ;0.2
〈サンプルNo.2(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、フタル酸410部、安息香酸610部、エチレングリコール341部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);31000
酸価 ;0.1
〈サンプルNo.3(芳香族末端エステルサンプル)〉
反応容器に、テレフタル酸410部、p−トロイル酸610部、1,2−プロパンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有する芳香族末端エステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);38000
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.4(エステルサンプル)〉
反応容器に、アジピン酸410部、酢酸610部、1,2−エタンジオール418部、及び触媒としてテトライソプロピルチタネート0.35部を用いる以外はサンプルNo.1と全く同様にして次の性状を有するエステルを得た。
粘度(25℃、mPa・s);37000
酸価 ;0.05
〈サンプルNo.5〜9〉
サンプルNo.1と同様に表1の原材料を用いて合成を行った。
Figure 2012118177
上記化合物は、光学フィルム中に1〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、本発明の優れた効果を呈すると共に、原反保管中におけるブリードアウトなどもなく好ましい。
(その他の可塑剤)
用いることのできる可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、非リン酸エステル系可塑剤が好ましく用いられる。リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。非リン酸エステル系可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコール系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来、好ましくは多価アルコール系可塑剤、及び多価カルボン酸エステル系可塑剤を使用することが好ましい。多価アルコールエステルは2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
多価アルコールは次の一般式(2)で表される。
R1−(OH)n (2)
式中、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を挙げることが出来る。中でも、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると、透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を用いるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に、安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。又、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を示す。
多価アルコールエステルの含有量は、セルロースエステルフィルム中に1〜15質量%含有することが好ましく、特に3〜10質量%含有することが好ましい。
以下、多価アルコールエステルの具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2012118177
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(紫外線吸収剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースアシレートフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースアシレートフィルムに対して0.5〜10質量%が好ましく、0.6〜4質量%が更に好ましい。
(微粒子)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、微粒子を含有することが滑り性、保管安定性の観点で好ましい。
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜400nmが好ましく、更に好ましいのは10〜300nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されていてもよく、平均粒径100〜400nmの粒子であれば凝集せずに一次粒子として含まれていることも好ましい。セルロースアシレートフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.01〜1質量%であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースアシレートフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースアシレートフィルムのヘーズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0であることが好ましい。
(染料)
本発明のセルロースアシレートフィルムには、色味調整のため染料を添加することもできる。例えば、フィルムの黄色味を抑えるために青色染料を添加してもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。
アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の任意の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としてはアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。特に特開2001−154017号記載の青色染料、特にアントラキノン系染料を含有することが好ましい。
各種添加剤は製膜前のセルロースアシレート含有溶液であるドープにバッチ添加してもよいし、添加剤溶解液を別途用意してインライン添加してもよい。特に微粒子は濾過材への負荷を減らすために、一部または全量をインライン添加することが好ましい。
添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープとの混合性をよくするため、少量のセルロースアシレートに溶解するのが好ましい。好ましいセルロースアシレートの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。
本発明においてインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等が好ましく用いられる。
(セルロースアシレートフィルムの製造方法)
次に、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法について説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは溶液流延法で製造されたフィルムであっても、溶融流延法で製造されたフィルムであっても、どちらも好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの溶液流延法による製造は、セルロースアシレート及び前記添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースアシレートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースアシレートの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースアシレートの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースアシレートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。回収溶剤中に、セルロースアシレートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースアシレートを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースアシレートフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの幅は好ましくは、1.6〜4mである為、必然的にキャスト幅も広幅となる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースアシレートフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
尚、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
また、セルロースアシレートフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
〔延伸工程〕
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、フィルム面内の複屈折率を測定したとき互いに直交する方向の複屈折率をnx、nyとしたときにnx>nyであり、かつ該nx、ny方向の寸法変動をそれぞれSx、SyとしたときSx>Syである特性を付与するには、特定のアシル置換度を有するセルロースアシレートを用い、更に幅手方向(TD方向)の延伸処理時の温度を180〜210℃の範囲、かつ該延伸処理時の倍率を30〜55%の範囲でフィルムを延伸処理することが好ましい。
幅手方向への延伸処理は、テンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
延伸処理する際のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度をTgとすると、Tgはフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって変化するが、通常は190℃以下、または170℃以下である。しかしながら、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、上記nx>ny、かつSx>Syの関係を満たすためには、高温での延伸処理を行う必要があり、180〜210℃の範囲、より好ましくは185〜200℃の範囲で延伸処理を行う。尚、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることができる。
更に、通常トリアセチルセルロースフィルム(所謂TACフィルム)では、20%以内、せいぜい10%以内の延伸を行うことが一般的であるが、本発明では該延伸処理時の倍率を30〜55%の範囲、より好ましくは40〜50%の範囲で行うことにより、上記nx>ny、かつSx>Syの関係を満たすセルロースアシレートフィルムが得られることを見出したものである。延伸処理は一回の延伸でも複数回にわたる延伸でもよい。
テンター内などの製膜工程でのフィルム搬送張力は温度にもよるが、120N/m〜200N/mが好ましく、140N/m〜200N/mがさらに好ましい。140N/m〜160N/mが最も好ましい。
延伸工程では、フィルムの幅手方向への延伸以外に、フィルムの長手方向(MD方向)に、逐次または同時に延伸することができる。MD方向への延伸処理は、0.5〜20%の範囲で行われ、例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用してMD方向に延伸する方法が挙げられる。
セルロースアシレートフィルムは延伸後、熱固定されることが好ましいが、熱固定はその最終TD方向延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定することが好ましい。この際、2つ以上に分割された領域で温度差が1〜100℃となる範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、TD方向及び/またはMD方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとした時、(T1−Tg)/tで求めた値である。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は90℃〜200℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃である。乾燥温度は段階的に高くしていくことが好ましい。
好ましい乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、5分〜60分が好ましく、10分〜30分がより好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが用いられる。特に膜厚は30〜65μmであることが好ましく、更に好ましくは57〜63μmである。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。生産性の観点から幅1.6〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.8〜3.6mである。4mを超えると搬送が困難となる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸または進相軸(遅相軸と直交する方向)がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。このθ1は配向角として定義でき、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADHもしくはKOBRA−WR(王子計測機器)を用いて行うことができる。θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与でき、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与できる。
〈物性、光学特性〉
本発明のセルロースアシレートフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m・24hが好ましく、更に20〜1000g/m・24hが好ましく、20〜850g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムのヘーズは1.0未満であることが好ましく0.1〜0.5であることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式で表されるリタデーション値Roが0〜20nm、Rthが0〜70nmであることが好ましい。
式(i) Ro=(nx−ny)×d
式(ii) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、Roはフィルム面内リタデーション値、Rthはフィルム厚み方向リタデーション値、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
上記屈折率は、例えばKOBRA−21ADHもしくはKOBRA−WR(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmで求めることができる。
更に、リタデーション値Roは0〜10nmの範囲であり、且つRthが0〜50nmの範囲にあることが、本発明の効果を高める上でより好ましい。
上記リタデーション値Ro、Rthを得るには、セルロースアシレートフィルムが本発明の構成をとり、更に延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。
(機能性層)
本発明のセルロースアシレートフィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、バックコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、防眩層、反射防止層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。
<偏光板、液晶表示装置>
本発明の偏光板、それを用いた液晶表示装置について説明する。
(偏光板)
本発明に用いられる偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムにより、偏光子の少なくとも一方の面を挟持してなる偏光板である。
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には該セルロースアシレートフィルムを用いても、また別の熱可塑性樹脂フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、セルロースアシレートフィルム等)が用いられてもよいが、セルロースアシレートフィルムを用いることが鹸化処理適性を有するため好ましい。セルロースアシレートフィルムとして、市販のセルロースアシレートフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UE、KC4UE、KC4HR−1、KC4KR−1、KC4UA、KC6UA以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
IPS型液晶表示装置の場合、本発明のセルロースアシレートフィルムをセルロースアシレートフィルムAとしたとき、偏光子を介して反対側に用いられるセルロースアシレートフィルムBは波長590nmで測定した面内リタデーションRoが0〜10nm、Rth=−10〜10nmの位相差を有しないセルロースアシレートフィルムであることが好ましい。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能及び耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用されるが、貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
(液晶表示装置)
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムはSTN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPSなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはIPS型液晶表示装置とVA型液晶表示装置、特に好ましくはIPS型液晶表示装置である。
IPS型液晶層は、初期状態で基板面と平行なホモジニアス配向で、かつ基板と平行な平面で液晶層のダイレクターは電圧無印加時で電極配線方向と平行または幾分角度を有し、電圧印加時で液晶層のダイレクターの向きが電極配線方向と垂直な方向に移行し、液晶層のダイレクター方向が電圧無印加時のダイレクター方向に比べて45°電極配線方向に傾斜したとき、当該電圧印加時の液晶層は、まるで1/2波長板のように偏光の方位角を90°回転させ、出射側偏光板の透過軸と偏光の方位角が一致して白表示となるものである。
一般に、液晶層の厚みは一定であるが、横電界駆動であるため、液晶層の厚みが一定でない場合であっても、その効果を最大限生かすことができる。従って本発明のように液晶パネルに反りが生じた場合でも、他の駆動方式の液晶に比較して当該液晶の働きは有効である。
本発明においては、液晶層の厚みの変化に対し影響が少ないことから、本発明における効果を大きく発揮できる液晶層の厚みは、2〜6μm、好ましくは3〜5.5μmである。
本発明のIPS型とは、フリンジ電場スイッチング(FFS:Fringe−Field Switching)型も本発明に含む。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶セルに対してバックライト側の偏光板保護フィルムに用いられることが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムとバックライトとの間には、光学部材として輝度向上フィルム、輝度上昇フィルム、光拡散シート、光拡散板、プリズムシート等の光学部材があってもよい。
バックライトは、直下方式とエッジ方式とに分けられ、直下方式は、バックライトを液晶表示装置の下面に置き、基板の前面を直接照光する方式であり、エッジ方式は、バックライトを基板の一側面又は両側面に置き、導光板及び反射板などに光を反射して、拡散させる方式である。
エッジ方式のバックライトは、複数本の平行に配列された冷陰極管の前面に、光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムを配置し、冷陰極管の側面及び背後を反射フィルムで覆ったものである。このようなバックライトでは、光源として冷陰極管を用いているので、バックライトの薄型化をある程度図れるが、その構成部品が多いために複雑であり、コストも高いという短所があり、更に線形光源を面光源に変えて用いなければならないので導光板が必ず必要であり、輝度むらがやや大きい。
一方、直下方式は、輝度むら改善、バックライト部材の削減による薄型化を目的としており、平板蛍光ランプを用いたバックライト、赤色(R)LED、緑色(G)LED、及び青色(B)LEDを有するカラー液晶表示装置用LEDバックライト、有機エレクトロルミネッセンス素子基板を用いた白色バックライト等、種々検討されている。
好ましい直下型バックライトは、赤色(R)LED、緑色(G)LED、および青色(B)LEDを有するカラー液晶表示装置用LEDバックライトであって、例えば、上記赤色(R)LEDのピーク波長が610nm以上であり、上記緑色(G)LEDのピーク波長が530±10nmの範囲内であり、上記青色(B)LEDのピーク波長が480nm以下であるものが好ましく用いられる。ピーク波長が上記範囲内の緑色(G)LEDの種類としては、例えば、DG1112H(スタンレー電気(株)製)、UG1112H(スタンレー電気(株)製)、E1L51−3G(豊田合成(株)製)、E1L49−3G(豊田合成(株)製)、NSPG500S(日亜化学工業(株)製)等が挙げられる。赤色(R)LEDとして用いられるLEDの種類としては、例えばFR1112H(スタンレー電気(株)製)、FR5366X(スタンレー電気(株)製)、NSTM515AS(日亜化学工業(株)製)、GL3ZR2D1COS(シャープ(株)製)、GM1JJ35200AE(シャープ(株)製)等が挙げられる。青色(B)LEDとして用いられるLEDの種類としては、DB1112H(スタンレー電気(株)製)、DB5306X(スタンレー電気(株)製)、E1L51−3B(豊田合成(株)製)、E1L4E−SB1A(豊田合成(株)製)、NSPB630S(日亜化学工業(株)製)、NSPB310A(日亜化学工業(株)製)等が挙げられる。
上述した3色のLEDを組み合わせてバックライトとすることが出来る。或いは白色LEDを用いることも出来る。
このほか、直下型バックライト(若しくは直下方式)としては、特開2001−281656に記載の直下型バックライトや、特開2001−305535記載のLED等の点状光源を使用した直下型バックライト、特開2002−311412記載の直下方式のバックライトなどがあげられるが特にこれらのみに限定されるわけではない。
特に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は大画面の液晶表示装置に使用した場合に優れた視認性と正面コントラスト性を付与することができる。
画面が17型以上、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置では、本発明の効果以外にも、色ムラや波打ちムラ等の歪みがないため、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
実施例で用いる可塑剤について下記に示す。
可塑剤A:フタル酸/アジピン酸/1,2−プロパンジオール/安息香酸を重合させて出来る下記式に代表されるポリエステル混合物。(重量平均分子量Mw;600〜700)
可塑剤B:テレフタル酸/1,2−プロパンジオール/p−トルイル酸を重合させて出来る下記式に代表されるポリエステル構造物。(重量平均分子量Mw;400〜500)
可塑剤C:エチレングリコール/アジピン酸/テレフタル酸/酢酸を重合させてできる下記式に代表されるポリエステル構造物。(重量平均分子量Mw;1000〜2000)
可塑剤A〜Cの構造を下記に示す。
Figure 2012118177
TPP:トリフェニルホスフェート
EPEG:エチルフタリルエチルグリコレート
<セルロースアシレートフィルム1の作製>
(二酸化珪素分散液)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
(セルロースアシレートのドープの作製)
TAC:トリアセチルセルロース(アセチル基置換度2.88、Mw=200000) 100質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
可塑剤A 5質量部
メチレンクロライド 432質量部
エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。これに二酸化珪素分散希釈液を4質量部、撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した。
(製膜・延伸・乾燥)
次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一にセルロースアシレートのドープを流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100質量%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルロースアシレートフィルムのウェブを35℃で搬送させ、スリットし、その後、テンターで幅手方向(TD方向:フィルムの搬送方向と直交する方向)に190℃の温度条件下、40%延伸し、160℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、スリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、セルロースアシレートフィルム1を得た。フィルムの残留溶剤量は0.1%未満であり、膜厚は60μm、幅2m、巻長さは6000mであった。
尚、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出される長手方向(MD方向:フィルムの搬送方向)の延伸倍率は5%であった。
<セルロースアシレートフィルム2〜28の作製>
セルロースアシレートのアセチル基置換度、可塑剤種、添加量、延伸条件(倍率、温度)を変えた以外はセルロースアシレートフィルム1と同様にして、表2に記載のセルロースアシレートフィルム2〜28を作製した。
<偏光板101〜128の作製>
次いで、上記作製したセルロースアシレートフィルム1〜28、及びセルロースアシレートフィルムであるコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製)、またはフジタックNRT(フジフイルム(株)製)と、下記偏光子を用いて偏光板を作製した。
(偏光板101の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)し、長尺ロール状のフィルムを得た。
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺ロール状の偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って、長尺ロール状の偏光子と、セルロースアシレートフィルム1、及びセルロースアシレートフィルムであるコニカミノルタタックKC4UYを貼り合わせて偏光板101を作製した。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースアシレートフィルム1、及びコニカミノルタタックKC4UYを得た。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースアシレートフィルム1、及びコニカミノルタタックKC4UYの間に配置した。
工程4:工程3で積層したセルロースアシレートフィルム1/偏光子/コニカミノルタタックKC4UYを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製したセルロースアシレートフィルム1/偏光子/コニカミノルタタックKC4UYをロールtoロールで貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板101を作製した。
(偏光板102〜128の作製)
偏光板101の作製と同様にして、表2の組み合わせで偏光板102〜128を作製した。
<液晶表示装置201〜228の作製>
液晶テレビTH−32LX500(松下電器産業(株)社製)から、液晶パネルを取り出し、バックライト側に貼られてあった偏光板を剥し、ここに上記作製した偏光板を、セルロースアシレートフィルム1〜28がバックライト側になるように、また偏光子の吸収軸を剥がす前と同じ向きになるように貼合して液晶表示装置201〜228を作製した。
《評価》
(屈折率の測定)
自動複屈折計KOBURA・21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、フィルム試料の3次元複屈折率測定を行い、フィルム面内で屈折率の大きいnxの方向を決定した。
(寸法変動の測定)
セルロースアシレートフィルム1〜28を用いて下記手順にて寸法変動を測定した。
10×10cmのフィルムを切り出し、上記nx方向とそれと直交する方向の2方向の7cm離れた2点に印をつけて、23℃55%での上記2方向の寸法を測定した後、140℃45分間オーブン中に入れ、23℃55%で24時間調湿した後、再び印をつけた2点間の寸法を測定し、その変化率を見た。
得られた2方向の寸法変動を、フィルムの2方向の屈折率と比較し、屈折率の大小の方向nx、nyと寸法変動の大少の方向Sx、Syとの関係をみた。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、屈折率の大きい方向(nx)と寸法変動の大きい方向Sxが平行である。
(ヘーズ測定)
セルロースアシレートフィルム1〜28を用いて、NDH2000を用い、フィルムを3枚重ねて測定を行った。
(端部ムラの評価)
上記液晶テレビを50℃80%で72hr.調湿後、23℃55%で2hr.放置して、表面を観察した。
◎ :全く端部ムラがみられない
○ :端部ムラがみられない
○△:わずかに端部ムラがみられる
△ :端部ムラがみられる
× :端部ムラがはっきりと観察できる
Figure 2012118177
表2から、本発明のnx>nyであり、かつSx>Syであるセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板、IPS型液晶表示装置は、端部ムラの発生が改善され、かつヘーズが低いため視認性の良好なIPS型液晶表示装置が得られることが分かる。
また、VA型液晶表示装置に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を同様に組み込んだところ、本発明の効果を再現し視認性の良好な液晶表示装置が得られた。
1 バックライト
2 偏光子
3 液晶セル側保護フィルム
4 バックライト側保護フィルム

Claims (6)

  1. セルロースアシレートを含有し、フィルム面内の複屈折率を測定したとき互いに直交する方向の複屈折率をnx、nyとしたときにnx>nyであり、かつ該nx、ny方向の寸法変動をそれぞれSx、SyとしたときSx>Syであることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
  2. 前記セルロースアシレートがアシル置換度が2.80〜2.95の範囲にあるセルローストリアセテートであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 下記一般式(1)で表され、かつ重量平均分子量300〜5000であるポリエステル系可塑剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
    一般式(1) B−(G−A)n−G−B
    (式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを偏光子の少なくとも一方の面に用いた偏光板をIPS型液晶パネルに用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  5. 前記セルロースアシレートフィルムを液晶セル側の偏光板のバックライト側に配置することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、幅手方向の延伸処理時の温度を180〜210℃の範囲、かつ該延伸処理時の倍率を30〜55%の範囲でフィルムを延伸処理することを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US20150368429A1 (en) * 2013-01-25 2015-12-24 Dic Corporation Polyester modifier composition for cellulose ester resin, cellulose ester optical film, and polarizing plate protective film

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