JP2012102302A - コークス炉の窯口構造 - Google Patents

Abstract

【課題】室炉式コークス炉の窯口構造として、操業によるコークス押出負荷や熱負荷の影響下でも、窯口金物に緩みや脱落が生じることを的確に防止できる窯口構造を提供する。
【解決手段】
コの字形状をしたプロテクションレッジ４３でヘッドプレート３４を挟み込み、少なくともプロテクションレッジ４３の一部がヘッドプレート３４より炉前面側（炉の手前側）に位置し、ヘッドプレート３４より炉前面側（炉の手前側）の位置でプロテクションレッジ４３が溶接またはリベットで固定されている。
【選択図】図５

Description

本発明は、コークス炉の炉体レンガを支持する窯口金物が、操業によるコークス押出負荷や熱負荷の影響下でも、緩みや脱落を生じることのない窯口構造に関するものである。

室炉式コークス炉（以下、単に「コークス炉」ともいう）の炉前面側の部分断面平面図を図１に示す。図１に示すように、室炉式コークス炉１は多数の燃焼室３１と炭化室３２とを交互に炉幅方向に配置し構成されている。そして、燃焼室３１と炭化室３２の炉体レンガ４０は各種の金物によって表面を覆われて支持されている。これらの金物は炉体金物１１と称されており、炭化室３２の窯口１０を形成するドアフレーム３５、燃焼室３１のレンガを押さえるプロテクションレッジ３７およびプロテクションプレート３８、ヘッドプレート３４、フラッシュプレート３３、フックボルト３６、さらに燃焼室３１や炭化室３２の上部のレンガ４０を押さえる上部ウォールプレート（図示せず）、同じく下部のレンガ４０を押さえる下部ウォールプレート（図示せず）などからなっている。上記の炉体金物１１の内、窯口１０の近傍に配置されている金物（ドアフレーム３５、プロテクションレッジ３７、プロテクションプレート３８、ヘッドプレート３４、フラッシュプレート３３、フックボルト３６等）は窯口金物１２と呼ばれている。通常の操業時においては、これらの炉体金物１１をバックステー２が支持し、これを炉頂部や炉下部に配置したテンションロッド（図示せず）で締め付けて炉体３を保持している。

ここで、図２に、室炉式コークス炉１の建設当時の健全な状態の窯口構造を示す。図２（ａ）が平面図であり、図２（ｂ）が側面図（図２（ａ）のＡ−Ａ矢視断面図）である。

ただし、室炉式コークス炉１では炭化室３２と燃焼室３１の部分の高さが８〜１０ｍ程度あり、また、この部分のレンガ４０は石炭の炭化に必要な１０００℃を超える高温を内部に保持するものであるから、炉体金物１１の温度も高温となるため、長期間の操業の間に炉体金物１１そのものの変形やバックステー２の変形が生じ、炉体金物１１（特に、窯口金物１２）が脱落し、炉体３の変形が進み、最終的には炉体レンガ４０が崩れるという不具合が生じる場合がある。そして、現有するコークス炉１の寿命は４０年を越えるものが多くなり、炉体３の変形、炉体レンガ４０の損耗、炉体金物１１の劣化が増加している。

しかし、コークス炉１の建設には膨大な費用を必要とするため、コークス炉１の寿命の延長を図ることで費用削減を達成することが指向されている。このため、変形したバックステー２の交換や、緩みや脱落が生じた炉体金物１１の補修や交換をすることにより炉体３の健全性を維持するようになってきた。

コークス炉１の炉体金物１１の緩みの多くは、部分的に破損して炭化室３２側に張り出してくるもので、さらに悪化すれば炉体金物１１が脱落するという問題が生ずる。このような場合、通常、炉体金物１１が脱落した部位にモルタルを詰めるような補修を行うが、一時的な対策に過ぎず、状況は徐々に悪化していく。

図３に、炉体３が変形し、プロテクションレッジ３７が脱落し、モルタル３９を詰めて補修を行った窯口構造を示す。図３（ａ）が平面図であり、図３（ｂ）が側面図（図３（ａ）のＡ−Ａ矢視断面図）である。図３では、すべての個所でプロテクションレッジ３７が脱落しており、その脱落部分にモルタル３９を詰めて補修しているが、多くの場合、部分的にプロテクションレッジ３７が脱落しており、プロテクションレッジ３７が残存した部分とモルタル３９で補修した部分が混在する。

このような炉体３の異常の発生に対し、特許文献１には、バックステー２の交換時に緩んでいた炉体金物１１を固定する技術が開示されている。

特開２００２−３８５１号公報

従来、緩みや脱落が生じた炉体金物１１の補修や交換を行う際には、バックステー２を外す必要があり、このような補修・交換作業を行うと、炉体全体の締め付け力が低下し、さらに炉体温度の低下を招き、補修・交換作業そのものによる炉体劣化のリスクが伴うという新たな問題が生ずる。また、バックステー２を外す作業は特許文献１に示されているように、非常に大掛かりなものとなり、そのための費用および修理に要する日数の増大という問題がある。また、図３に示したように、炉体全体が変形しているため、新しいバックステー２が上手く取り付けられないといった問題もある。

本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、室炉式コークス炉の窯口構造として、操業によるコークス押出負荷や熱負荷の影響下でも、窯口金物に緩みや脱落が生じることを的確に防止できる窯口構造を提供することを目的とするものである。

本発明者らは、窯口金物のうち、特にプロテクションレッジに注目し、そのプロテクションレッジが緩んだり脱落したりすることを防止するために鋭意検討を重ねた。その結果、プロテクションレッジの一部をヘッドプレートより炉前面側（炉の手前側）に位置させ、そのプロテクションレッジをヘッドプレートより炉前面側（炉の手前側）の位置で固定することが有効であることを見出した。

本発明は、上記の知見に基づいてなされており、以下のような特徴を備えている。

［１］燃焼室と炭化室とを交互に炉幅方向に配置して構成され、炭化室の窯口にドアフレームと、燃焼室のレンガを押さえるプロテクションレッジおよびヘッドプレートと、フラッシュプレートとを有する室炉式コークス炉において、プロテクションレッジでヘッドプレートを挟み込み、少なくとも前記プロテクションレッジの一部が前記ヘッドプレートより炉前面側に位置し、前記ヘッドプレートより炉前面側の位置で前記プロテクションレッジが固定されていることを特徴とするコークス炉の窯口構造。

［２］前記プロテクションレッジは、凹凸部を有し、その凹凸部で他の金物と噛み合わされていることを特徴とする前記［１］に記載のコークス炉の窯口構造。

［３］前記他の金物は、ヘッドプレートとドアフレームの間隔を調整するライナーであることを特徴とする前記［２］に記載のコークス炉の窯口構造。

［４］前記プロテクションレッジは、高さ方向に凸部を持つプロテクションレッジ部品と高さ方向に凹部を持つプロテクションレッジ部品とが噛み合わされて、高さ方向に２個以上のプロテクションレッジ部品が連ねられて構成されていることを特徴とする前記［１］〜［３］のいずれかに記載のコークス炉の窯口構造。

本発明においては、プロテクションレッジの少なくとも一部がヘッドプレートより炉前面側（炉の手前側）に位置し、炉前面側（炉の手前側）からプロテクションレッジを固定するようにしたので、プロテクションレッジの緩みや脱落が防止でき、補修頻度や補修作業が低減し、炉体の保護が達成できるという利点がある。

コークス炉の部分断面平面図。 正常な窯口構造を示す平面図および側面図。 炉体変形と炉体金物脱落が生じた窯口構造を示す平面図および側面図。 ドアフレームを交換した窯口構造を示す平面図および側面図。 本発明の実施形態１における窯口構造を示す平面図および側面図。 本発明の実施形態２における窯口構造を示す平面図、側面図および斜視図。 本発明の実施形態３における窯口構造を示す平面図、側面図および斜視図。

本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

［実施形態１］
前述したように、図２は建設当時の健全な状態の窯口構造を示すものである。この窯口構造では、一定期間の使用を経過するとプロテクションレッジ３７が炭化室３２側に変形したり落下したりするような状態となり、窯口の補修が必要な状態になる。

そして、前述したように、図３は炉体３の変形と全てのプロテクションレッジ３７の脱落が生じた状態の窯口構造を示すものである。この状態ではドアフレーム３５が変形して、炉蓋が嵌らなくなる問題が発生し、しばしばドアフレーム３５の交換が実施されている。

図４に、ドアフレーム３５を交換した場合の窯口構造を示す。図４（ａ）が平面図であり、図４（ｂ）が側面図（図４（ａ）のＡ−Ａ矢視断面図）である。新品ドアフレーム３５の設置のため、ドアフレーム３５と炉体３の変形部との隙間にはヤーンロープ４１などの詰め物が入る他、ヘッドプレート３４とドアフレーム３５の間隔を調整するために、適切な厚みを持った鉄系部材のライナー４２が取り付けられる場合もある。

本発明者らは、脱落したプロテクションレッジ３７の部分にモルタル３９を詰めるだけでは強度部材にならず、炉体３の変形が更に進んでしまうことと、単純にプロテクションレッジ３７と同等の部材を入れ込むだけでは、すぐにその同等部材が脱落してしまうことを確認した。

また、プロテクションレッジ３７の脱落を防止するために、プロテクションレッジ３７をヘッドプレート３４に固定することが考えられるが、燃焼室３１の奥側にあるプロテクションレッジ３７とヘッドプレート３４の間で何らかの固定処理をすることは非常に困難であることも承知している。

そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、ドアフレーム３５の交換時に炉前面側（炉の手前側）からプロテクションレッジ３７を固定し、プロテクションレッジ３７の脱落を防止することが可能であることを見出した。

上記の知見に基づく、本発明の実施形態１における窯口構造を図５に示す。図５（ａ）が平面図であり、図５（ｂ）が側面図（図５（ａ）のＡ−Ａ矢視断面図）である。

図５に示すように、この実施形態１においては、ドアフレーム３５と炉体３の変形部との隙間にヤーンロープ４１が入るとともに、ヘッドプレート３４とドアフレーム３５の間隔を調整する鉄系部材のライナー４２が取り付けられている。そして、コの字形状をしたプロテクションレッジ４３でヘッドプレート３４を挟み込み、少なくともプロテクションレッジ４３の一部がヘッドプレート３４より炉前面側（炉の手前側）に位置し、ヘッドプレート３４より炉前面側（炉の手前側）の位置でプロテクションレッジ４３が溶接またはリベットでヘッドプレート３４もしくはライナー４２に固定されている。

ちなみに、ヘッドプレート３４は燃焼室３１の幅方向左右にわたって設けられている部材であり、ヘッドプレート３４あるいはそのヘッドプレート３４に固定されているライナー４２は、直接バックステー２で固定されているので、最も炭化室３２方向に張り出しにくい部材である。したがって、そのようなヘッドプレート３４もしくはライナー４２にプロテクションレッジ４３を固定することによって、プロテクションレッジ３７の張り出し／脱落を的確に防止することができる。

なお、図５では、ライナー４２の間に１個ずつプロテクションレッジ４３が取り付けられているが、ライナー４２の間に複数個のプロテクションレッジ４３が取り付けられていても良いし、部分的にプロテクションレッジ４３が取り付けられていない箇所があっても構わない。

また、当初のプロテクションレッジ３７が残存している箇所では、そのまま当初のプロテクションレッジ３７を採用しても構わない。

また、劣化が進むと、プロテクションレッジ３７だけでなく、プロテクションプレート３８も脱落している場合がある。この場合はプロテクションプレート３８の部分もカバーする寸法でプロテクションレッジ４３を取り付けても良い。

すなわち、プロテクションレッジ４３は、ヘッドプレート３４の炉前面側にプロテクションレッジ４３の一部があり、溶接やリベット留などで固定できる形状であれば、コの字の形状でなくても構わない。

このようにして、この実施形態１においては、プロテクションレッジ４３の少なくとも一部がヘッドプレート３４より炉前面側（炉の手前側）に位置し、炉前面側（炉の手前側）からプロテクションレッジ４３を固定することができるので、プロテクションレッジ４３の緩みや脱落が防止でき、補修頻度や補修作業が低減し、炉体３の保護が達成できるという利点がある。

［実施形態２］
本発明の実施形態２における窯口構造を図６に示す。図６（ａ）が平面図、図６（ｂ）が側面図（図６（ａ）のＢ−Ｂ矢視断面図）、図６（ｃ）が部分斜視図である。

この実施形態２における窯口構造は、上記の実施形態１における窯口構造と基本的には同様であるが、図６（ｃ）に示すように、プロテクションレッジ４４が、炉幅方向の凹部４４ａと、高さ方向の凹部４４ｂを有しており、凹部４４ａでヘッドプレート３４を挟み込むとともに、凹部４４ｂでライナー４２と噛み合わされている。

これによって、この実施形態２においては、プロテクションレッジ４４が他の金物（ここでは、ライナー４２）と噛み合うことで、プロテクションレッジ４４の脱落が一層防止でき、補修頻度や補修作業がさらに低減し、炉体３の保護が達成できるという利点がある。

［実施形態３］
本発明の実施形態３における窯口構造を図７に示す。図７（ａ）が平面図、図７（ｂ）が側面図（図７（ａ）のＢ−Ｂ矢視断面図）、図７（ｃ）が部分斜視図である。

この実施形態３における窯口構造は、上記の実施形態１における窯口構造と基本的には同様であるが、図７（ｂ）に示すように、高さ方向に複数個（ここでは、３個）のプロテクションレッジ部品４６が連ねられてプロテクションレッジ４５が構成されている。このプロテクションレッジ部品４６は、図７（ｃ）に示すように、炉幅方向の凹部４６ａと、高さ方向の凸部４６ｂと、高さ方向の凹部４６ｃを有しており、凹部４６ａでヘッドプレート３４を挟み込むとともに、凹部４６ｃを他のプロテクションレッジ部品４６の凸部４６ｂと噛み合わせている。なお、最下方のプロテクションレッジ部品４６は、凹部４６ｃをライナー４２に設けた凸部４２ａと噛み合わせている。

これによって、この実施形態３においては、プロテクションレッジ部品４６が複数個（ここでは、３個）噛み合うことでプロテクションレッジ４５が構成されているので、プロテクションレッジ４５の脱落が一層防止でき、補修頻度や補修作業がさらに低減し、炉体３の保護が達成できるという利点がある。

ちなみに、プロテクションレッジ部品４６を複数個組み合わしてプロテクションレッジ４５を構成しているのは、次のような理由である。すなわち、プロテクションレッジ単体の高さ方向寸法が大きいと、炉体３が変形（湾曲）している場合は嵌め込むことが難しくなる。一方、炉体３の変形防止効果の点からは、プロテクションレッジができるだけ高さ方向全体にわたって嵌め込まれていることが望ましい。そこで、高さ方向寸法を短くしたプロテクションレッジ部品４６を複数個組み合わせてプロテクションレッジ４５を構成することで、嵌め込みの容易性（施工性）と炉体３の変形防止効果を両立できるようにしている。

本発明の実施例１を述べる。

この実施例１においては、表１に示す仕様のコークス炉を用いてコークスの製造を２ヶ月間行い、窯口構造の変形（窯口構造の変化・緩み、窯口金物の脱落）の状態を経時的に観察した。また、窯口構造の変形に伴うコークス押出負荷の変化も観察して、押出負荷からも窯口構造の変形を間接的に評価した。

その際に、図４に示した従来の窯口構造の場合を従来例とし、図５に示した本発明の実施形態１における窯口構造の場合を本発明例１、図６に示した本発明の実施形態２における窯口構造の場合を本発明例２、図７に示した本発明の実施形態３における窯口構造の場合を本発明例３とした。

なお、窯口構造の変形の状態については、それぞれの窯口構造を新規に設置した初期のプロテクションレッジの炭化室側への張出量をゼロとして、２ヶ月間の操業後のプロテクションレッジの炭化室側への張出量をレーザー変位計で測定した。従来例における張出量を１とした場合の本発明例１〜３における張出量の相対値を表２に示す。また、コークス押出負荷については、２ヶ月間の操業後の押出機にかかる電流値を測定し、従来例における押出負荷（電流値）を１とした場合の本発明例１〜３における押出負荷（電流値）の相対値を表２に示す。

表２に示すように、従来例に比べて、本発明例１〜３ではプロテクションレッジの炭化室側への張出量は小さく、そのためコークス押出負荷も小さくなっている。また、本発明例１に比べて、本発明例２、３の方が張出量とコークス押出負荷が小さく、一層効果が大きいことが認められる。

１ 室炉式コークス炉
２ バックステー
３ 炉体
１０ 窯口
１１ 炉体金物
１２ 窯口金物
３１ 燃焼室
３２ 炭化室
３３ フラッシュプレート
３４ ヘッドプレート
３５ ドアフレーム
３６ フックボルト
３７ プロテクションレッジ
３８ プロテクションプレート
３９ モルタル
４０ レンガ
４１ ヤーンロープ
４２ ライナー
４２ａ 凸部
４３ プロテクションレッジ
４４ プロテクションレッジ
４４ａ 凹部
４４ｂ 凹部
４５ プロテクションレッジ
４６ プロテクションレッジ部品
４６ａ 凹部
４６ｂ 凸部
４６ｃ 凹部

Claims (4)

1. 燃焼室と炭化室とを交互に炉幅方向に配置して構成され、炭化室の窯口にドアフレームと、燃焼室のレンガを押さえるプロテクションレッジおよびヘッドプレートと、フラッシュプレートとを有する室炉式コークス炉において、プロテクションレッジでヘッドプレートを挟み込み、少なくとも前記プロテクションレッジの一部が前記ヘッドプレートより炉前面側に位置し、前記ヘッドプレートより炉前面側の位置で前記プロテクションレッジが固定されていることを特徴とするコークス炉の窯口構造。
2. 前記プロテクションレッジは、凹凸部を有し、その凹凸部で他の金物と噛み合わされていることを特徴とする請求項１に記載のコークス炉の窯口構造。
3. 前記他の金物は、ヘッドプレートとドアフレームの間隔を調整するライナーであることを特徴とする請求項２に記載のコークス炉の窯口構造。
4. 前記プロテクションレッジは、高さ方向に凸部を持つプロテクションレッジ部品と高さ方向に凹部を持つプロテクションレッジ部品とが噛み合わされて、高さ方向に２個以上のプロテクションレッジ部品が連ねられて構成されていることを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載のコークス炉の窯口構造。

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