プラントの制御装置及び火力発電プラントの制御装置の両者に共通した構成となるプラントの制御装置において、前記制御装置を構成するモデル修正部は、モデル構築データベースに保存された情報を用いてモデル構築用データに含まれる、数値解析によるデータ(解析モデルデータ)のモデル出力値情報を修正する解析データ修正機能と、冗長なモデル構築データを削除するデータ削除機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
また、モデル構築データベースに保存される情報には、計測情報によるデータか、数値解析によるデータかを示す識別子、モデル入力空間における入力条件,出力条件及びその作成時刻のうち、少なくとも1つの情報が含まれることが望ましい。
また、解析データ修正機能は、最新の計測データと解析モデルデータとの距離を基準に、モデル出力値を修正する解析モデルデータ候補を、閾値を基準に選択する機能と、N近傍を基準に選択する機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
また、解析データ修正機能は、最新の計測データに対するモデル出力値を計算する機能と、その推定値と実際の計測データ値の誤差が閾値以下の場合に、選択した解析モデルデータのモデル出力値情報を、その誤差を基準に修正する機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
また、データ削除機能は、最新の計測データとモデル構築データとの距離を基準に、その距離が閾値以下のモデル構築データを選択する機能と、その選択データが計測データの場合は、データ作成後の経過時間が閾値時間以上となるデータのみを更に選択する機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
前記制御装置は画像表示装置と接続され、モデル構築データベースに保存された情報を画像表示装置に表示する機能と、モデル修正部で用いるモデル修正条件を、画像表示装置を介して設定する機能と、モデル修正部によるモデル構築データの修正結果を画像表示装置に表示する機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
モデル修正の条件設定を、画像表示装置を介して入力する機能を備えることにより、プラントの運転員は、プラントの制御ニーズに応じて適切なモデル修正条件を設定できる。更に、モデル修正による推定誤差の推移を画像表示装置に表示する機能を備えることにより、プラントの運転員は、所望のモデル推定精度をモデル修正により獲得できたかを確認し、獲得できない場合には再度モデル修正を実行することができる。
また、制御装置を火力発電プラントに適用する場合、火力発電プラントから取得する計測信号を用いて、火力発電プラントに与える制御信号を導出する制御信号生成部を備えた構成の火力発電プラントの制御装置となる。
これらの計測信号は、火力発電プラントから排出されるガスに含まれる窒素酸化物,一酸化炭素、及び硫化水素の夫々の濃度のうち少なくとも1つを表す信号を含む。また制御信号は、空気ダンパの開度,空気流量,燃料流量,排ガス再循環流量のうち少なくとも1つを決定する信号を含む。
前記制御装置は、火力発電プラントに制御信号を与えた時の、計測信号の値を推定する統計モデルと、前記統計モデルの構築に用いる、火力発電プラントの空気ダンパの開度,空気流量,燃料流量,排ガス再循環流量のうち少なくとも1つの情報を含むデータを保存するモデル構築データベースと、前記統計モデルを用いて、前記計測信号に相当するモデル出力が目標値を達成するように、前記制御信号に相当するモデル入力の生成方法を学習する操作方法学習部と、前記操作方法学習部における学習の制約条件及び学習結果に関する情報を保存する学習情報データベースと、前記モデル構築データベースに保存される情報に含まれる、モデル構築データを修正するモデル修正部とを備える。
また、前記制御装置は画像表示装置と接続され、モデル構築データベースに保存された情報を画像表示装置に表示する機能と、モデル修正部で用いるモデル修正条件を、画像表示装置を介して設定する機能と、モデル修正部によるモデル構築データの修正結果を画像表示装置に表示する機能のうち、少なくとも1つを備えることが望ましい。
制御装置を火力発電プラントの制御に適用した実施例では、火力発電プラントにおけるモデル入力に該当するバーナ、及びアフタエアポートの空気量に関する設定情報を、画像表示装置を介して入力する。
まず、第1実施例であるプラントの制御装置について図面を参照して説明する。
図1は、第1実施例によるプラントの制御装置のシステム構成図である。図1に示すように、制御対象のプラント100は、制御装置200によって制御される。
プラント100を制御する制御装置200は保守ツール910と接続されているので、プラント100の運転員は、保守ツール910に接続された外部入力装置900と画像表示装置920(例えばCRTディスプレイ)とを介して、制御装置200を制御することができる。
制御装置200には、演算装置として、計測信号変換部300,数値解析部400,統計モデル500,モデル修正部600,制御信号生成部700、及び操作方法学習部800がそれぞれ備えられた構成となっている。
また制御装置200には、データベース(DB)として、計測信号データベース210,モデル構築データベース220,学習情報データベース230,制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が設けられている。
また制御装置200には、外部とのインターフェースとして、外部入力インターフェース201、及び外部出力インターフェース202が設けられている。
そしてこの制御装置200では、外部入力インターフェース201を介して、プラント100から該プラントの各種状態量を計測した計測信号1を制御装置200の計測信号データベース210に取り込んでおり、また、制御装置200の制御信号生成部700から外部出力インターフェース202を介して、制御対象のプラント100に対して該プラントを制御する制御信号15を、例えば供給する空気流量を制御する制御信号16として出力するように構成されている。
この制御装置200では、外部入力インターフェース201を介して前記プラント100から取り込んだプラント100の状態量を計測した計測信号2は、計測信号データベース210に保存される。
また、制御装置200に設けた制御信号生成部700にて生成される制御信号15は、制御装置200に設けた制御信号データベース250に保存されると共に、外部出力インターフェース202から前記プラント100に対する制御信号16として出力される。
制御装置200に設けた計測信号変換部300では、計測信号データベース210に保存された計測信号データ3をモデル構築データ4に変換する。このモデル構築データ4は、モデル構築データベース220に保存される。ここで、計測信号データ3に由来するモデル構築データを計測モデルデータと呼ぶことにする。また、計測信号データ3に含まれる直前の制御結果として得られた運転条件は、制御装置200に設けた制御信号生成部700に入力される。
制御装置200に設けた数値解析部400では、プラント100を模擬する物理モデルを用いて、プラント100の特性を予測する。数値解析部400で実行して得られた数値解析データ5は、モデル構築データベース220に保存される。ここで、数値解析データ5に由来するモデル構築データを解析モデルデータと呼ぶことにする。
制御装置200に設けたモデル修正部600は、モデル構築データベース220から取り込んだモデル構築データ7に含まれるモデル出力値情報を更新する機能と、不要なモデル構築データを削除する機能を有し、更新後のモデル構築データ8をモデル構築データベース220に保存する。
制御装置200に設けた操作方法学習部800では、学習データ12を生成し、学習情報データベース230に保存する。
制御装置200に設けた統計モデル500は、プラント100の制御特性を模擬する機能を持つ。すなわち、制御信号16をプラント100に与え、その制御結果に対する計測信号1を得るのと同等の機能を模擬演算する。この模擬演算のために、統計モデル500は、操作方法学習部800より受けたモデル入力9と、モデル構築データベース220に保存されたモデル構築データ6とを使用する。
このモデル入力9は、制御信号16に相当する。モデル入力9とモデル構築データ6とから、前記統計モデル500では、ニューラルネットワークに代表される統計的手法によりプラント100の制御による特性変化を模擬演算して、モデル出力10を得る。
統計モデル500で得られたモデル出力10は、プラント100の計測信号1の予測値となる。尚、モデル入力9,モデル出力10は共に、その数は1種類に限定されず、夫々複数種類用意することができる。
制御装置200に設けた制御信号生成部700では、学習情報データベース230より出力された学習情報データ13、及び制御ロジックデータベース250に保存された制御ロジックデータ14を用いて、計測信号1が望ましい値となるように制御信号15を生成する。
この制御ロジックデータベース250には、制御ロジックデータ14を算出する制御回路、及び制御パラメータが保存される。この制御ロジックデータ14を算出する制御回路には、従来技術として公知のPI(比例・積分)制御を用いることができる。
操作方法学習部800は、学習情報データベース230に保存された学習の制約条件及び学習のパラメータ設定条件等を含む学習情報データ11を用いて、モデル入力9の操作方法を学習する。学習結果である学習データ12は、学習情報データベース230に保存される。
このように、制御装置200の動作において、モデル構築データベース220に保存されるモデル構築データ7に含まれる情報をモデル修正部600において修正するメカニズムを具備することにより、統計モデル特性と実機プラント特性との誤差が大きい場合にも、計測モデルデータを基に解析モデルデータを適切に修正するため、統計モデル500におけるプラント特性の推定精度を短期間で向上させることができる。
また、運用開始後に蓄積される計測モデルデータに対して、データ作成時から一定期間経過したものを削除する機能を具備するため、モデルデータの蓄積による統計モデル計算時間の増加を回避できる。
尚、制御装置200に設置した統計モデル500,モデル修正部600、及び操作方法学習部800の詳細な機能については、後述する。
また、操作方法学習部800から学習情報データベース230に保存される学習データ12には、操作前後のモデル入力、及びその操作の結果得られるモデル出力に関する情報が含まれている。
学習情報データベース230では、現在の運転条件に対応する学習データ12が選択され、学習情報データ13として制御信号生成部700に入力される。
プラント100の運転員は、キーボード901とマウス902で構成される外部入力装置900,制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910、及び画像表示装置920を用いることにより、制御装置200に備えられている種々のデータベースに保存された情報にアクセスすることができる。
また、これらの装置を用いることにより、制御装置200の数値解析部400,統計モデル500,モデル修正部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値,学習の制約条件、及び得られた学習結果の確認に必要な設定情報を入力することができる。
保守ツール910は、外部入力インターフェース911,データ送受信処理部912、及び外部出力インターフェース913で構成され、データ送受信処理部912を介して制御装置200とデータを送受信できる。
外部入力装置900で生成した保守ツール入力信号91は、外部入力インターフェース911を介して保守ツール910に取り込まれる。保守ツール910のデータ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200から入出力データ情報90を取得する。
また、データ送受信処理部912では、保守ツール入力信号92の情報に従って、制御装置200の数値解析部400,統計モデル500,モデル修正部600、及び操作方法学習部800で用いるパラメータ設定値,学習の制約条件、及び得られた学習結果の視認に必要な設定情報を含む入出力データ情報90を出力する。
データ送受信処理部912では、入出力データ情報90を処理した結果得られる保守ツール出力信号93を、外部出力インターフェース913に送信する。外部出力インターフェース913から送信された保守ツール出力信号94は、画像表示装置920に表示される。
尚、上記の制御装置200では、計測信号データベース210,モデル構築データベース220,学習情報データベース230,制御ロジックデータベース240、及び制御信号データベース250が制御装置200の内部に配置されるが、これらの全て、あるいは一部を制御装置200の外部に配置することもできる。
また、数値解析部400が制御装置200の内部に配置されるが、これを制御装置200の外部に配置することもできる。
例えば、数値解析部400、及びモデル構築データベース220を制御装置200の外部に配置し、数値解析データ5をインターネット経由で制御装置200に送信するようにしてもよい。
図2は、図1に示した第1実施例であるプラントの制御装置における制御の手順を示すフローチャート図である。
図2では、第1実施例のプラントの制御装置200に設置された操作方法学習部800による操作方法の学習、制御信号生成部700による制御信号16の生成、制御装置200によるプラント100の操作、及びモデル修正部600によるモデル構築データ修正時の動作を表すフローチャートを示している。
図2に示したフローチャートは、ステップ1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2000、を組み合わせて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
制御装置200の動作開始後、まず最初に、モデル構築条件・学習条件を設定するステップ1000では、モデル構築時の実行条件,学習時の最大学習回数,最大操作回数,制約条件等、種々のパラメータ値を設定する。
次に、プラント特性モデルを構築するステップ1100では、制御装置200の統計モデル500を動作させ、モデル構築DB220に保存されるモデル構築データ6を用いてプラント特性モデルを構築する。
次に、操作方法を学習するステップ1200では、制御装置200の統計モデル500の出力するモデル出力10が望ましい値となるようなモデル出力9の操作方法を、操作方法学習部800を動作させて学習する。学習手段としては、強化学習理論等の公知の方式を用いることができる。
次に、学習結果を学習情報データベースに保存するステップ1300では、操作方法の学習結果12を学習情報データベース230に保存する。
次に、制御信号を生成するステップ1400では、制御信号生成部700を動作させ、制御ロジックDB240に保存されている制御ロジックデータ14及び学習情報DB230に保存されている学習結果13を用いて制御信号15を生成する。
次に、プラントを操作するステップ1500では、生成された制御信号15が外部出力インターフェース202を通じて制御信号16として出力され、プラント100が望ましい状態となるように操作が実行される。
次に、計測データをDBに保存するステップ1600では、プラント100の操作後に制御装置200に入力・保存された計測信号データ3が計測信号変換部300においてモデル構築データ4(計測モデルデータ)に変換され、モデル構築DB220に保存される。
次に、モデルデータ修正条件を設定するステップ1700では、モデル修正時の実行条件に関する種々のパラメータ値を設定する。
次に、モデルデータを修正するステップ1800では、モデルデータ修正部600を動作させ、モデル構築データ7に含まれるモデル出力値情報を更新し、且つ、不要なデータを削除する。尚、モデル修正部600の詳細な機能及び動作については、後述する。
次の、モデルデータ修正結果の妥当性を判断するステップ1900は分岐である。モデルデータ修正結果に対し、判定基準を満足する場合はステップ2000に進み、満足しない場合はステップ1700に戻る。ここで判定手段として、内部パラメータによる自動判定と、画像表示装置920に表示されるモデルデータ修正結果をプラントの運転員が確認し、妥当性を判断する手動判定の2種類が考えられるが、そのどちらを用いてもよい。
そして最後の、制御のON/OFFを判断するステップ2000は分岐である。外部入力装置900を通じて制御のON/OFFに関する入力が実行され、ONの場合はステップ1100に戻り、OFFの場合は一連の制御装置200におけるプラント100の制御の動作を終了させるステップに進む。
以上の動作によって、制御装置200によるプラント100の制御では、プラント100の運転員が設定したモデル調整条件、及び学習条件に基づき、望ましいモデル出力が得られるモデル入力の操作方法を自律的に学習し、その学習結果に基づき生成した制御信号でプラント100を操作することで、プラント100を望ましい運転状態とすることができる。更には、プラント100を操作した結果得られる計測モデルデータを用いてモデル構築用データを修正することで、統計モデルの精度を短期間で向上させ、モデル構築時間を短縮できる。
次に、前記制御装置200におけるモデル修正部600の動作について、図3を用いて詳細に説明する。図3は、モデル修正部600の詳細な構成図であり、図1に示した制御装置200において、モデル修正部600、及びモデル構築データベース220を含む部分を詳細に示したものである。
前記モデル調整部600は、解析データ修正機能601、及びデータ削除機能602で構成される。解析データ修正機能601は、モデル構築データベース220に保存されたモデル構築データ7を用いて、各モデル構築データに含まれるモデル出力値情報を更新し、更新後のモデル構築データ8をモデル構築データベース220へ保存する。
データ削除機能602は、前記モデル構築データ7に含まれるデータ作成時刻、並びにデータ入力値情報を用いて、不要なモデル構築データを削除する。以上の動作は図2のフローチャートにおける、モデルデータを修正するステップ1800に相当する。
図4に、前記モデル構築データベース220に保存されるデータの態様の一例を示す。図4に示されたモデル構築データベース220に保存されたデータおいて、データID221は各モデル構築データの識別番号である。図中のiはデータの添え字である。データ種類識別子222は各モデル構築データの種類が計測モデルデータか解析モデルデータかを識別する。例えば、本識別子Si=0の場合は計測モデルデータとし、1の場合は解析モデルデータとすることでデータの種類を識別する。モデル入力条件223はそのデータのモデル入力空間における座標情報であり、モデル出力条件224は、そのデータの入力条件におけるプラント特性値を意味する。
モデル入力はプラント特性の影響因子として予め設定されるものであり、前記統計モデル500は、図4に示されたモデル構築データを連続的に補間することにより、入力空間上の任意の条件(モデル入力9)に対するプラント特性値(モデル出力10)を推定する。
作成時刻225は、各モデル構築データが作成された時刻を表すものである。プラント運転開始後のある時刻において、現在時刻と該時刻情報を比較することにより、データ作成後の経過時間を取得することができる。
以下では、前記制御装置200に設けたモデル修正部600における解析データ修正機能601、及びデータ削除機能602によるモデル修正のアルゴリズムについて、そのフローチャート(図5,図6,図8)、及び概念図(図7)を参照しながら説明する。
図5は、前記モデル修正部600のアルゴリズム動作を示すフローチャートであり、図2のフローチャートにおけるモデルデータを修正するステップ1800に相当する。
図5に示したフローチャートは、ステップ1810及び1820を組み合せて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
モデル修正のアルゴリズム開始後、解析データを修正するステップ1810では、解析データ修正機能601を動作させて、各モデル構築データに含まれるモデル出力値情報を更新する。この動作の詳細については、図6及び図7を用いて後に説明する。
次に、モデルデータを削除するステップ1820では、データ削除機能602を動作させて、不要なモデル構築データを削除する。この動作の詳細については、図8を用いて後に説明する。
次に、解析データ修正機能601の詳細な動作を説明する。図6に示したフローチャートは、ステップ1811,1812,1813,1814,1815,1816,1817、及び1819を組み合せて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
解析データ修正のアルゴリズム開始後、まず、計測データと解析データとの距離を計算するステップ1811では、モデル構築DB220に保存されている全ての解析モデルデータと、直前のプラント操作の結果得られた計測値を基に得られた計測モデルデータとの距離を計算する。ここで、距離情報は各データの入力条件に対するユークリッド距離で計算する。
次の、モデル出力値情報修正の対象となる解析データ選択方法を決定するステップ1812は分岐である。データ選択方法は、距離閾値を基準にデータを選択する方法と、計測モデルデータに対するN個の近傍データを選択する方法の2種類が用意されており、前者を選択する場合はステップ1813へ進み、後者を選択する場合はステップ1815へ進む。尚、この手法の選択は、画像表示装置920、及び外部入力装置900を用いて決定することができる。
ステップ1813は分岐であり、ステップ1811にて計算した、各解析モデルデータの計測モデルデータとの距離と、予め画像表示装置920、及び外部入力装置900を用いて決定した距離閾値パラメータとを比較し、距離が閾値以下の解析モデルデータが存在するかどうかを判定する。1個以上の解析モデルデータが前記条件を満たす場合は、ステップ1814に進み、前期条件を満たすデータが存在しない場合は、解析データ修正のアルゴリズムを終了させるステップに進む。
次の、距離が閾値以下の解析データを選択するステップ1814では、計測モデルデータとの距離が閾値以下の条件を満たす解析モデルデータを全て選択する。
また、前記ステップ1812にて2.近傍と選択した場合に進むステップ1815では、計測モデルデータとの距離が短い順にN個の近傍データを選択する。この、近傍数Nも、前記距離閾値と同様に画像表示装置920、及び外部入力装置900を用いて設定することができる。このように、解析モデルデータのデータ量を距離閾値又は近傍のデータ数で制限することによりデータ量を調節することができる。
次の、ステップ1816,1817及び1818では、前記ステップ1814または1815にて選択した解析モデルデータに対して、そのモデル出力値情報を修正する。以降では、各ステップのモデル出力値の修正アルゴリズムを、図7を用いて説明する。図7は説明の簡略化のため、モデル入力及び出力の次元数をそれぞれ1とした場合の、モデル構築データ及び統計モデル特性の態様を示したものである。即ち、図中のグラフ横軸に対するデータの座標がモデル入力条件、縦軸に対する座標がモデル出力値情報に対応する。図7において、(a)は閾値によるデータ選択の場合のアルゴリズムの動作メカニズムであり、図中のrは距離閾値を表す。(b)は近傍によるデータ選択の場合の動作メカニズムであり、近傍数N=3とした場合を表す。図7において、最新の計測モデルデータはdm、解析モデルデータはdic(iはデータの添え字)と表記する。即ち、(a)ではd1c,d2cが選択データであり、(b)ではd1c,d2c,d3cが選択データとなる。
ステップ1816では、計測モデルデータdmのモデル入力条件に対して、統計モデル500を用いてモデル推定値Zj(k)を計算する。ここで、jはモデル出力数の添え字、kはモデル出力値の修正回数であり、ステップ1816の初回実行時にk=0と初期化する。尚、図7ではモデル出力の次元数が1の場合の推定値のみを示しているが、実際にはあらかじめ設定したモデル出力数に応じて、すべての出力に対する推定値を計算する。図7より、計測モデルデータdmのモデル出力j成分のモデル出力値情報はZjmと表記する。尚、モデル推定値Zj(k)の計算時に用いるモデル構築データには、dmは含めない。
次の、推定誤差が閾値以下かどうかを判定するステップ1817は分岐である。Zjm−Zj(k)で計算される推定誤差の絶対値が予め設定した閾値以下であればステップ1819へ進み、そうでない場合は1818へ進む。尚、モデル出力数が2以上である場合は、すべての出力に対する推定誤差が閾値以下の場合のみ、ステップ1819へ進む。
次の、推定値を基に選択した解析データを修正するステップ1818では、前記ステップ1817で求めた推定誤差を手掛かりとして、選択データのモデル出力値情報を〔数1〕を用いて更新する。ここで、選択データのモデル出力値情報をyij(k)と表記する。
〔数1〕
yij(k+1)=yij(k)+α(Zjm−Zj(k))
〔数1〕では、選択データのモデル出力値情報を、推定誤差に修正率αを乗じた値で修正している。このように、計測データ点近傍の解析モデルデータ出力情報を、計測データ点の推定誤差を縮めるように修正することで、図7に示すように修正後のモデルデータを用いた統計モデル500の推定誤差は小さくなる効果が得られる。
上述の手続きに従って、選択した解析モデルデータ全てに対するモデル出力値情報を更新したのちに修正回数kを更新し、ステップ1816に進む。以降、ステップ1816〜1818の処理を、統計モデルの推定誤差が閾値以下の条件を満足するまで繰り返し実行する。
最後に、解析データを保存するステップ1819では、上述の手続きで修正した解析モデルデータを、モデル構築DB220に保存し、解析データ修正のアルゴリズムを終了させるステップに進む。
以上の説明からも明らかなように、解析モデル修正のアルゴリズムを新たな計測データが得られる都度に実行することにより、初期の統計モデル特性と実機プラント特性の誤差が大きい場合でも統計モデル500におけるプラント特性の推定精度を短期間で向上し、制御性能の悪化を回避することができる。
次に、データ削除機能602の詳細な動作を説明する。図8に示したフローチャートは、ステップ1821,1822,1823,1824及び1825を組み合せて実行する。以下では、夫々のステップについて説明する。
データ削除のアルゴリズム開始後、まず、計測データの最近傍データを選択するステップ1821では、最新の計測データと、これまでに採取した計測データを含むモデル構築データとの距離を計算し、その距離が最小となる(最近傍となる)データを選択する。
次の、選択した最近傍データの距離を判定するステップ1822は分岐である。距離が予め設定した閾値以下であればステップ1823へ進み、そうでなければ、データ削除のアルゴリズムを終了させるステップへ進む。ここで、閾値は充分小さい値とすることが望ましい。
次の、選択した最近傍データの種類を判定するステップ1823は分岐である。最近傍データが計測モデルデータである場合はステップ1824へ進み、解析モデルデータである場合はステップ1825へ進む。
次の、データ作成からの経過時間を判定するステップ1824は分岐である。図4の作成時刻225と、最新の計測データ採取時の現在時刻から、データ作成からの経過時間を計算する。そして、それが予め設定した時間閾値以上であれば、ステップ1825へ進み、そうでなければ、データ削除のアルゴリズムを終了させるステップへ進む。
最後の、データを削除するステップ1825では、選択した最新の計測データの最近傍データをモデル構築DB220から削除し、データ削除のアルゴリズムを終了させるステップへ進む。
上述のアルゴリズムでは、最新の計測データの最近傍のモデル構築データに対して、それが計測データに充分近い場合のみ、そのデータを最新の計測データで代替できるとみなし、DBから削除する。ただし、最近傍のデータが計測モデルデータである場合は、データに含まれる計測誤差の影響を考慮するため、データ生成から一定期間内は削除の対象から外す。以上の削除アルゴリズムを具備することにより、計測データの蓄積によるモデル構築データ数の増加、ひいては統計モデルの計算時間の増加を回避でき、実用時間内での制御ロジックの学習が可能となる。以上で、モデルデータ修正部600の詳細な動作の説明を終了する。
次に、第1実施例であるプラントの制御装置において、制御装置200とデータを送受信できる保守ツール910の外部出力インターフェース913から送信された保守ツール出力信号94を表示する画像表示装置920にて表示される画面について、図9,図10及び図11を用いて説明する。図9〜図11は、画像表示装置920に表示される画面の一具体例である。
図9は第1実施例であるプラントの制御装置において、モデル入出力を設定する際に画像表示装置に表示される画面例であり、第1実施例のプラントの制御装置における制御の手順を示す図2のフローチャートにおけるモデル構築条件・学習条件を設定するステップ1000のモデル構築条件設定画面の一例である。
この図9に示したモデル入出力設定の画面では、プラントの計測データ情報に基づく入出力項目から、任意の項目を選択して制御装置200における統計モデル500のモデル入出力を設定することができる。
図9に示す画面が前記画像表示装置920に表示された状態で、外部入力装置900のマウス902を操作して画面上の数値ボックスにフォーカスを移し、キーボード901を用いることで数値を入力できる。また、マウス902を操作して画面上のボタンをクリックすることで、ボタンを選択する(押す)ことができる。同様に、マウス902を操作して画面上のチェックボックスをクリックすることで、チェックを入れることができる。
図9に示した画面では、まず、モデル入力設定において、入力項目リスト3000に表示された入力項目に対し、任意の項目にマウス902のフォーカスを移し、ボタンを選択することにより選択バー3001を選択した入力項目に一致させることができる。そして、ボタン3002を選択することで、選択した入力項目をモデル入力項目リスト3003に追加できる。
さらに、数値ボックス3004、及び3005の夫々にフォーカスを移して数値を入力することで、追加したモデル入力項目に対して、その最小値及び最大値を設定できる。既に追加したモデル入力項目リストから項目を削除する場合は、削除したい項目をマウス902により選択し、ボタン3006を選択することでリストから削除できる。
図9に示した画面では、次に、モデル出力設定において、同様に出力項目リスト3007に表示された出力項目に対し、任意の項目にマウス902のフォーカスを移し、ボタンを選択することにより選択バー3008を選択した出力項目に一致させることができる。そして、ボタン3009を選択することで、選択した出力項目をモデル出力項目リスト3010に追加できる。
既に追加したモデル出力項目リストから項目を削除する場合は、削除したい項目をマウス902により選択し、ボタン3011を選択することでリストから削除できる。以上のモデル入出力設定の終了後、ボタン3012を選択すると、統計モデルを構築する図2のステップ1100に進む。
図10は第1実施例であるプラントの制御装置において、モデルデータ修正条件を設定する際に画像表示装置に表示される画面例であり、第1実施例のプラントの制御装置における制御の手順を示す図2のフローチャートにおける、モデルデータ修正条件を設定するステップ1700のモデルデータ修正条件設定画面の一例である。この図10に示したモデル修正条件設定画面では、チェックボックス3100及び3102、数値ボックス3101,3103,3014,3105,3106及び3107の夫々にフォーカスを移してチェックボックスを選択、または数値を入力することで、図6のフローチャートにおける近傍データ選択方法(閾値/近傍),閾値方式における閾値パラメータ,近傍方式における近傍数,推定誤差の閾値,〔数1〕におけるデータ修正率α、そして図8のフローチャートにおける近傍データ距離閾値,データ経過時間閾値を夫々決定することができる。
以上のモデルデータ修正条件設定の終了後、ボタン3108を選択することで、モデルデータ修正を開始することができる。
図11は第1実施例であるプラントの制御装置において、モデルデータ修正結果を確認する際に画像表示装置に表示される画面であり、第1実施例のプラントの制御装置における制御の手順を示す図2のフローチャートのステップ1900における、モデルデータ修正結果の判定時に用いる画面の一例である。
この図11に示したモデル調整結果表示の画面では、図6のステップ1816で計算したモデル推定誤差表示画面3200として、解析モデルデータ修正の反復回数kに対する推定誤差の推移がグラフ3201で表示される。
ここで、グラフの横軸は解析モデルデータ修正の反復回数kであり、縦軸は各反復回数における推定誤差となる。このモデル推定誤差表示画面3200には、図10のモデル修正条件設定画面において設定した、推定誤差閾値3203が表示される。また、タブ3202を選択することにより、設定した任意のモデル出力成分に関する推定誤差の推移を確認することができる。
プラントの運転員は、図11に示したモデル推定誤差表示画面3200に表示されるモデル修正結果を見ながら、モデルデータの修正が適切に実行されているかどうかを判断することができる。
前記モデル推定誤差表示画面3200において、モデル修正終盤における推定誤差3201が、推定誤差閾値3203を下回っている場合には、望ましいモデル修正結果が得られたとしてボタン3204を選択することでモデル修正を終了することができる。
一方で、モデル修正結果が前記の条件のいずれかを満足しない場合は、ボタン3205を選択することで図10のモデル修正条件設定画面に戻り、モデル修正を再実行できる。
図10に記載したように、モデルデータ修正の枠と、データ削除の枠を別々に設けている。これは、図1などの統計モデルを有して学習する制御装置200が、統計モデルを構築するためのモデル構築データを減らすために、計測信号から変換したモデル構築データである計測モデルデータからのデータ削除か、プラントを模擬した物理モデルの数値解析で得られたモデル構築データである解析モデルデータからのデータ選択かを区別して表示して、モデル構築データの選択を受付けるモデル構築データの修正方法を行うことであり、これにより、種類の異なるモデル構築データを意識してデータ整理を行うことができる。たとえば、図4のようなデータベースからデータの種類を確認しなくてもよいのでデータ選択または削除の作業性が向上する。また、データ選択の上流処理として計測モデルデータと解析モデルデータを選択または削除するのは有効であるし、種類の異なるモデル構築データを意識してデータ整理を行うので種類の異なるデータに基づくモデル精度を意識したデータ整理が容易に行える。
また、モデル構築データの選択を受付ける際に、モデル構築データを検索するパラメータ入力を受け付ける場合に、計測モデルデータからのデータ選択か解析モデルデータからのデータ選択かを区別して表示することをパラメータ入力より前に行うと良い。検索する具体的なパラメータを入力させる前に、データの種類を区別して表示させるので、種類の異なるモデル構築データを意識してデータ整理を行うことができる。データを整理するために行う、データ選択や削除の検索条件としてのパラメータ入力や検索方法は上述した実施例に限らなくとも良い。
尚、計測モデルデータと解析モデルデータの区別した表示としては、図10のように詳細なパラメータを設定するための数値ボックスを、計測モデルデータと解析モデルデータのそれぞれを区別して囲った表示としても良いし、詳細なパラメータを設定するための表示はなしで、まず初めに計測モデルデータと解析モデルデータの選択を受け付けるようにしても良い。モデル構築データの選択として、計測モデルデータと解析モデルデータを選択した後に、図4のモデル構築データへアクセスした際には、データ種類識別子222でデータソートし選択された種類のデータのみを表示させても良い。図4のデータが種類に応じて別データベースになっている場合には、選択された種類のデータのデータベースへアクセスするようにして選択された種類のデータのみを表示させても良い。
このように、第1実施例のプラントの制御装置においては、図11に示したモデル修正結果表示画面に表示される情報に応じてモデル修正の終了の可否を決定できる機能を有することにより、所望の統計モデル性能が得られるまでモデル修正を繰り返すことが可能となる。その結果、解析モデルデータとプラントの実機特性の誤差が大きい場合でも、一定以上の推定精度を保証するロバストな統計モデルを構築できる。
また、モデル修正時に推定誤差が目標閾値を達成する前に収束するなどして、冗長な計算が繰り返されている場合、かかる画面の確認により迅速にモデル修正条件の再設定を実施できるため、モデル修正を効率的に実行できる。
上記した本実施例のプラントの制御装置では、前記モデル修正部により適切に調整されたモデル構築データを用いることにより、統計モデルの推定精度を向上させることができる。また、前記モデル修正部により冗長なデータを削除するため、データ蓄積による統計モデル計算時間の増加を回避し、制御周期以内でのモデル構築及び最適な制御ロジックの学習が可能となる。
以上で、第1実施例であるプラントの制御装置における画像表示装置920に表示される画面についての説明を終了する。
次に、制御装置200を、火力発電プラントに適用した第2実施例である火力発電プラントの制御装置について説明する。
尚、火力発電プラント以外のプラントを制御する際にも、制御装置200を使用できることは言うまでもない。
図12は、制御装置200が適用される火力発電プラント100aの構成を示す概略図である。先ず、火力発電プラント100aによる発電の仕組みについて簡単に説明する。
図12において、火力発電プラント100aを構成するボイラ101には、ミル110で石炭を細かく粉砕した燃料である微粉炭と、微粉炭搬送用の1次空気及び燃焼調整用の2次空気とを供給する複数のバーナ102が設けられており、このバーナ102を通じて供給した微粉炭を、ボイラ101の内部で燃焼させる。尚、微粉炭と1次空気は配管134から、2次空気は配管141から夫々バーナ102に導かれる。
また、ボイラ101には、2段燃焼用の空気をボイラ101に投入するアフタエアポート103が設けられている。2段燃焼用の空気は、配管142からアフタエアポート103に導かれる。
ボイラ101の内部で微粉炭を燃焼することによって発生した高温の燃焼ガスは、ボイラ101の内部の経路に沿って下流側に流下して、ボイラ101の内部に配置された熱交換器106で給水と熱交換して蒸気を発生させた後に、排ガスとなってボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104に流入し、このエアーヒーター104で熱交換してボイラ101に供給する空気を昇温する。
そして、このエアーヒーター104を通過した排ガスは、図示していない排ガス処理を施した後に、煙突から大気に放出される。
ボイラ101の熱交換器106を循環する給水は、給水ポンプ105を介して熱交換器106に供給され、熱交換器106においてボイラ101を流下する燃焼ガスによって過熱され、高温高圧の蒸気となる。尚、本実施例では熱交換器の数を1つとしているが、熱交換器を複数配置するようにしてもよい。
熱交換器106で発生した高温高圧の蒸気は、タービンガバナ107を介して蒸気タービン108に導かれ、蒸気の持つエネルギーによって蒸気タービン108を駆動して発電機109で発電する。
上記第2実施例の火力発電プラント100aには、火力発電プラントの運転状態を示す状態量を検出する様々な計測器が配置されている。
前記火力発電プラント100aは図1のプラント100に該当しているので、これらの計測器から取得された火力発電プラントの計測信号は、図1に示すようにプラント100から計測信号1として制御装置200の外部入力インターフェース201に送信される。
計測器としては、例えば図12の火力発電プラント100aに示すように、熱交換器106から蒸気タービン108に供給される高温高圧の蒸気の温度を計測する温度計測器151、蒸気の圧力を計測する圧力計測器152、発電機9で発電される電力量を計測する発電出力計測器153が図示されている。
蒸気タービン108の復水器(図示せず)によって蒸気を冷却して生じた給水は、給水ポンプ105によってボイラ101の熱交換器106に供給されるが、この給水の流量は流量計測器150によって計測されている。
また、ボイラ101から排出する燃焼ガスである排ガス中に含まれている成分(窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO)、及び硫化水素(H2S)など)の濃度に関する状態量の計測信号は、ボイラ101の下流側に設けた濃度計測器154によって計測される。
即ち、制御装置200を上記火力発電プラント100aに適用した第2実施例の火力発電プラントの制御装置において、計測器で計測される火力発電プラント100aの計測データ項目には、上記各計測器によって計測した火力発電プラント100aの状態量であるボイラ101に供給される燃料流量、ボイラ101に供給される空気流量、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水流量、ボイラ101の熱交換器106で発生して蒸気タービン108に供給される蒸気温度、ボイラ101の熱交換器106に供給される給水の給水圧力、ボイラ101から排出される排ガスのガス温度、前記排ガスのガス濃度、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
これらの計測データ項目は、図1で示した制御装置200における制御信号生成部700で演算して出力された制御信号15によって決定される計測データ項目である。
尚、一般的には図12に図示した以外にも多数の計測器が火力発電プラント100aに配置されるが、ここでは図示を省略する。
次に、ボイラ101の内部に投入される空気の経路、すなわちバーナ102からボイラ101の内部に投入される1次空気と2次空気の経路、及びアフタエアポート103からボイラ101の内部に投入される空気の経路について図13を用いて説明する。
図12に示したボイラ101において、1次空気は、ファン120から配管130に導かれ、途中でボイラ101の下流側に設置されたエアーヒーター104を通過する配管132と、エアーヒーター104を通過せずにバイパスする配管131とに分岐するが、エアーヒーター104の下流側に配設した配管133となって再び合流し、バーナ102の上流側に設置された微粉炭を製造するミル110に導かれる。
エアーヒーター104を通過する1次空気は、ボイラ101を流下する燃焼ガスと熱交換することによって加熱される。この加熱された1次空気と共に、エアーヒーター104をバイパスした1次空気は、ミル110において粉砕した微分炭をバーナ102に搬送する。
ファン121を用いて配管140から投入された空気は、エアーヒーター104で同様にして加熱された後に、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142とに分岐して、夫々、ボイラ101のバーナ102とアフタエアポート103とに導かれる。
第2実施例である火力発電プラントの制御装置においては、ファン121から送られてバーナ102とアフタエアポート103からボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、2次空気用の配管141とアフタエアポート用の配管142の上流側に操作端機器となるエアダンパ162及びエアダンパ163をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ162及びエアダンパ163の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される2次空気とアフタエアの流量をそれぞれ制御できるように構成している。
また、ファン120から送られてバーナ102から微粉炭と共にボイラ101の内部へ投入される空気流量を制御する例として、配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132に操作端機器となるエアダンパ160及びエアダンパ161をそれぞれ設け、制御装置200によってこれらのエアダンパ160及びエアダンパ161の開度を調節して、ボイラ101の内部に供給される空気の流量をそれぞれ制御できるように構成している。
前記制御装置200は、他の計測データ項目を制御することもできるので、操作端機器の設置場所を制御対象に応じて変えてもよい。
図13は、図12に示した火力発電プラント100aのボイラ101の下流側に設置したエアーヒーター104と関連する配管部の拡大図である。
図13に示したように、エアーヒーター104には空気を供給する配管130、及び配管140がそれぞれ設置されており、このうち、配管140はエアーヒーター104を貫通して配設され、配管130は途中から分岐した配管131と配管132によって構成されており、前記配管131はエアーヒーター104をバイパスして配設され、前記配管132はエアーヒーター104を貫通して配設されている。
そして配管132はエアーヒーター104を貫通した後に配管131と合流した配管133となってミル110に導かれ、このミル110から該配管133を通じて微粉炭と共に空気をボイラ101のバーナ102に導くように配設されている。
また、配管140はエアーヒーター104を貫通した後に配管141と配管142とに分岐し、このうち、配管141はボイラ101のバーナ102に、配管142はボイラ101のアフタエアポート103に、それぞれ空気を導くように配設されている。
また、前記配管133に合流する直前部分の配管131及び配管132には、流通する空気量を調節するエアダンパ160及びエアダンパ161がそれぞれ設置され、前記配管141及び配管142の上流部分には、流通する空気量を調節するエアダンパ162及びエアダンパ163がそれぞれ設置されている。
そして、これらのエアダンパ160〜163を操作することにより、配管131,132,141,142を空気が通過する面積を変更することができるので、配管131,132,141,142を通過してボイラ101の内部に供給される空気流量を個別に調整できる。
制御装置200の制御信号生成部700によって演算された制御信号15を外部出力インターフェース202を介して火力発電プラント100aに対する制御信号16として出力し、ボイラ101の配管131,132,141,142にそれぞれ設置したエアダンパ160,161,162,163などの操作端の機器を操作する。
尚、本実施例では、エアダンパ160,161,162,163などの機器のことを操作端と呼び、これを操作するのに必要な制御装置200で演算した制御信号15が該制御装置200から前記操作端に指令する出力信号を制御信号16と呼ぶ。
また、制御信号生成部700によって演算されて前記操作端に出力される制御信号16としては、ボイラ101に配管131,132,141,142を通じて供給される空気流量、ボイラ101に空気を供給する配管131,132,141,142にそれぞれ設置された空気の流量を調節する空気ダンパ160〜163の開度、ボイラ101のバーナ102に供給される微粉炭の燃料流量、及びボイラ101から排出される排ガスの一部をボイラ101に再循環させる排ガス再循環流量等が含まれる。
以降では、実施例1の制御装置を火力発電プラント100aに適用して、ボイラ101に設置したバーナ102に供給する空気量を調節し、配管131,132にそれぞれ設置されたエアダンパ160,161、及びボイラ101に設置したアフタエアポート103に供給する空気量を調節し、配管141,142にそれぞれ設置されたエアダンパ162,163を操作端として、ボイラ101から排出される排ガス中のCO,NOx、及びH2Sの濃度を被制御量とする場合について説明する。
尚、本実施例では、ボイラ101の操作端の操作量(エアダンパ160,161,162,163の開度)が制御装置200を構成する統計モデル500のモデル入力に、ボイラ101から排出される排ガスに含まれるNOx,CO及びH2S濃度が統計モデル500のモデル出力になり、モデル出力夫々の最小化が学習の目的となる。
図14は、第2実施例である火力発電プラントの制御装置において、火力発電プラント100aの制御装置200に用いた場合に、画像表示装置920に表示される画面の一例であり、第1実施例のプラントの制御装置においてモデル入出力を設定する際に表示される画面例を示した図9に対応する、画像表示装置に表示される制御装置200を構成する統計モデル500のモデル入出力設定の画面例である。
図14に示したモデル入出力設定の画面例では、ボイラ101の操作端であるバーナ102、及びアフタエアポート103の夫々に対して、その位置関係を把握しながら制御装置200における統計モデル500のモデル入出力が設定できるようになっている。
具体的には、モデル入力設定の画面において、ボイラ操作端表示画面3500に表示されたモデル入力項目リスト3502に表示される入力項目に対して選択バー3503によって選択された項目に関して、その設置位置を示すボイラ操作端表示画面3500に表示される缶前のボイラ図上のシンボルがポインタ3501によって示される。
また、この操作とは逆に、ボイラ操作端表示画面3500に表示される特定の操作端のシンボルに対して外部入力装置900のマウス902をクリックし、ポインタ3501のフォーカスを合せることにより、選択バー3503の表示位置を移動させる(入力項目を選択する)こともできる。そして、ボタン3504を選択することで、選択した入力項目をモデル入力項目リスト3503に追加できる。
尚、図14において、数値ボックス3506、並びにモデル入力設定の画面における出力項目の選択バー3509,画面3508,3511、ボタン3510,3512,3513、及びボタン3507の機能については、図9の画面の場合と同様である。
第2実施例の火力発電プラントの制御装置によってボイラ101に供給する空気を制御する空気量制御では、特定のバーナ及びアフタエアポートのエアダンパの調整方法に関して先験的な知見が存在し、多くの場合それに基づいた制御が実行される。
そこで、本実施例の制御装置200におけるモデル入力設定を、図14に示したような画面構成とすることにより、プラントの運転員は、ボイラ101の操作端の位置を確認しつつ、前記先験知識に基づく制御方法を考慮した上で制御装置200における統計モデル500のモデル入出力を適切に選定することができる。
また、図14に示した画面を用いて設定した操作端、及び最小・最大値をプラント設計情報と関連付けて理解することが可能となるため、モデル入力設定を効率化し、設定ミスの低減にも資することができる。
図15は、第2実施例である火力発電プラントの制御装置において、火力発電プラント100aの制御装置200に用いた場合に、画像表示装置920に表示される画面の一例であり、第1実施例のプラントの制御装置においてモデルデータ修正条件を設定する際に表示される画面例を示した図10に対応する、画像表示装置に表示される制御装置200を構成する、モデルデータ修正部500のモデルデータ修正条件設定の画面例である。
図15に示したモデルデータ修正条件設定の画面例では、モデルデータ修正条件である推定誤差閾値の設定画面において、モデル出力項目表示リスト3605と計測誤差影響を関連付けるチェックボックス3606が表示されている。火力発電プラントの計測データでは、例えばCO濃度のように、定常運転時でも計測値の時間的変動が大きいデータ項目が存在する。そのようなデータ項目がモデル出力として設定されている場合、採取される計測データの計測誤差が大きくなる可能性がある。その結果、データのばらつきが大きくなることにより、第1実施例で示したモデル修正アルゴリズムにおいて推定誤差閾値以下を満足するデータ修正が実行できず、アルゴリズムがループに陥る可能性がある。そこで、そのような計測誤差の大きい計測データ項目に対して、前記チェックボックス3606を介して計測誤差の影響を関連付けることにより、前記ステップ1817の推定誤差閾値判定時に、数値ボックス3604で設定した閾値に計測誤差を加算する。この結果、計測誤差の影響が大きい場合でもアルゴリズムがループに陥ることはなくなり、常に望ましいデータ修正結果が得られる。
尚、図15において、チェックボックス3600及び3602、数値ボックス3601,3603,3607,3608及び3609、ボタン3610及び3611の機能については、図10の画面の場合と同様である。
以上説明したように、プラントの制御装置200を火力発電プラントに適用すれば、環境規制や運用コストに対する要求を満たす操作方法を学習することにより、火力発電プラントから排出されるNOx,CO、及びH2S濃度の目標値を達成することができる。
本実施例によれば、統計モデルを構築する際に用いる解析モデルデータとプラント特性の誤差が大きい場合でも、採取される計測モデルデータ情報に基づき解析モデルデータのモデル出力値情報を修正することで統計モデルの精度を短期間で向上させることができる。また、計測モデルデータが冗長に蓄積される場合でも、データを適切に削除することで、統計モデル構築時間の増加を回避し、制御周期以内で学習を完了する火力発電プラントの制御装置を実現することができる。
上述した各実施例の制御装置は、メモリやCPUを備えたコンピュータなどで実施することができ、また装置の有する機能としての処理手段などはプログラムモジュールであり、モジュールを読み込んでコンピュータに実行させることで各機能を実施することができる。
また、プログラムモジュールを記録した記録媒体をコンピュータに読み込ませることにより各機能を実施可能である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。