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JP2011190257A - 組織線維化疾患の予防または治療剤 - Google Patents

組織線維化疾患の予防または治療剤 Download PDF

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JP2011190257A JP2011036274A JP2011036274A JP2011190257A JP 2011190257 A JP2011190257 A JP 2011190257A JP 2011036274 A JP2011036274 A JP 2011036274A JP 2011036274 A JP2011036274 A JP 2011036274A JP 2011190257 A JP2011190257 A JP 2011190257A
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Kazumi Ogata
一美 緒方
Takayuki Noguchi
隆之 野口
Isao Yokoi
功 横井
Hideo Iwasaka
日出男 岩坂
Naohiko Takahashi
尚彦 高橋
Satoshi Hagiwara
聡 萩原
Yasuyuki Tejima
泰之 手嶋
Chihiro Shingu
千尋 新宮
Shigekiyo Matsumoto
重清 松本
Kiyohiro Kudo
享祐 工藤
Teru Hasegawa
輝 長谷川
Junya Kusaka
淳也 日下
Hironori Koga
寛教 古賀
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Abstract

【課題】組織の線維症に対する治療または予防剤を提供する
【解決手段】組織線維化疾患の予防または治療剤の有効成分として、次の一般式(1)で示される金属キレート化合物またはその薬学的に許容される塩を用いる:
Figure 2011190257

(式中、RはOH基、O−低級アルキル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミノ酸残基、またはペプチド残基を示し、Mは薬学的に許容される金属を示す)。
【選択図】なし

Description

本発明は、肺線維症、腎線維症、腎硬化症、肝線維症(NASHを含む)または肝硬変など、組織が病的に線維化することによって生じる組織線維化疾患の予防または治療剤(抗線維化剤)に関する。
生体を構成する組織は、疾患に伴い、しばしば線維化という現象を引き起こす。線維化とは、組織で起こった炎症等の結果、本来不必要な、過度のコラーゲン等の線維性蛋白質の沈着や、線維芽細胞の浸潤増殖を伴う組織の硬直化である。
組織の線維化はあらゆる組織で起こりうるものであり、その発生部位や引き金となる刺激は異なっても、結果として起こる現象は同一である。実質細胞の脱落や組織の機能低下が生じた場合、生体は本来の組織の機能とは関係のない線維芽細胞を遊走させその補充を行うことがあるが、線維芽細胞はその組織の機能回復には貢献できず、物理的な形態の維持を担うのみであり、それによる線維芽細胞の蓄積や線維芽細胞が作り出すコラーゲン等の細胞間マトリックスの蓄積は組織の硬直化を生じさせる。こうした硬直化が線維化であり、その線維化した組織は正常に機能することが難しくなり、しばしば線維症と呼ばれる病態となる。一度線維化した組織は元に戻ることはなく、病態はさらに進行し重篤な障害を引き起こすこともある。
こうした組織線維化は、例えば肺、膀胱、腎臓、心臓または肝臓などの多くの組織で生じる。
例えば肺の線維化疾患の1つとして、抗癌剤であるブレオマイシンの投与の副作用として生じる肺線維症が知られている。これは、ブレオマイシンにより発生したラジカルが肺組織を傷害し、その傷害を補うために線維芽細胞の浸潤増殖が起こり、コラーゲン蛋白質が沈着し、肺機能を障害したものと考えられている。また、肺線維症の原因となる肺組織の傷害は、肺高血圧症における血液の圧負荷や喘息における慢性的な炎症反応によっても起こりうる。こうした肺の線維化の結果、肺の換気能は低下し、更なる病態の悪化をもたらす。これまで肺線維症を抑える治療法が多々検討されているが、未だ満足な治療法は見出されていない。
膀胱もまた尿道を通じて外界と接する組織であり、感染を始めとする様々な刺激にさらされており、そうした刺激により惹起された炎症反応により膀胱の線維化が導かれる場合が知られている。膀胱線維症では蓄尿や排尿が困難となり、頻尿や排尿困難を主訴とする膀胱炎に至る。即ち、尿路結核や間質性膀胱炎、放射線性膀胱炎等の膀胱炎において膀胱の線維化が生じる(非特許文献1)。特に間質性膀胱炎はキマーゼの亢進を伴う線維化が問題となる疾患であることが明らかになってきている(非特許文献2)。しかし、膀胱組織の線維化による間質性膀胱炎に対する治療は確立しておらず対症療法的な治療を繰り返すことになり、最終的に膀胱摘出手術に至る例が少なくない。腎臓においても様々な要因により線維症が発症する。腎臓疾患は、免疫複合体の沈着が原因であるIgA腎症、糖尿病の結果生じる糖尿病性腎症、腎盂に生じる腎盂腎炎等、その原因や発症場所により様々な病名で呼ばれるが、いずれも病態形成の過程で組織の線維化に伴った機能低下が観察される。また、腎臓移植後の慢性拒絶反応の結果、線維化が起こり再び腎機能不全に陥ることがあることも知られている。こうした腎臓における機能不全を防ぐ効果的な治療は現在存在しない。
心臓は、アドリアマイシン等の抗癌剤治療、または感染や圧負荷等の刺激を受け場合、心筋の脱落や心機能の低下を起こし、代償性に線維芽細胞を遊走させ、線維症を発症することがある。そして過度に進行した場合、心臓は硬直化しポンプとしての機能が低下し線維化を原因とする慢性心不全へと進行する。この治療として、ACE阻害薬やβ遮断薬が使用されているが、線維化の抑制や改善に対する満足な治療とはなっていない。
肝臓については、ウイルスや腫瘍、アルコール刺激により線維化し、それが進展すると硬変化(肝硬変)することが知られている。最近では、脂肪化や線維化など、肝組織所見がアルコール性肝障害に似た所見を呈する非アルコール性脂肪肝炎(non alcoholic steatohepatitis: NASH)が、生活習慣病の重症化症例として、注目されている。線維化により肝臓は急速に機能低下に陥る。ウイルスや腫瘍が原因の場合、抗ウイルス剤や抗癌剤による治療が行われ、アルコール等の摂取食物が原因の場合は食事療法等がとられるが、肝臓の線維化に対する積極的な治療法は知られていない。
以上説明するように、組織線維化は生体内のあらゆる臓器で発生し、それは組織の機能低下に密接に関わっている。
生体内部の組織の線維化は、エコー等の検査、または組織の一部を採取し線維化に関わる物質を検出することにより確認される。一例を挙げると、ハイドロキシプロリンの定量方法が挙げられるが、手技的に煩雑でありサンプル量も必要である。その他、組織標本を作成し、病理的に解析する方法も行なわれている。また近年、遺伝子操作技術の発展により、線維化に関わる蛋白質(例えばコラーゲン3)の特異的メッセンジャーRNA(mRNA)の発現量を指標とすることで組織線維化を測定できることが報告されている(非特許文献3)。
ところで、6,8−ジメルカプトオクタン酸はミトコンドリア中に存在する補酵素、α−リポ酸の還元体であり、酸化型のグルタチオンやビタミンCを還元型に再生させる作用がある。しかし、6,8−ジメルカプトオクタン酸は空気中では非常に不安定で酸化されてαリポ酸に戻ることが知られている。
かかるαリポ酸の誘導体としては、αリポ酸にグリシン、メチオニン、グルタミン酸、バリンなどがそれぞれ結合したαリポイルアミノ酸(特許文献1)、αリポイルアミノエチルスルホン酸のイミダゾール塩(特許文献2)、リポイルエステル(非特許文献4)、及びジヒドロリポ酸およびジヒドロリポアミドの金属誘導体(非特許文献5及び6)が知られている。
これらのαリポ酸またはその誘導体は、その還元体を金属でキレート化させることで安定化することができ、かかる金属キレート化合物(6,8−ジメルカプトオクタン酸金属キレート化合物またはその誘導体)には、チロシナーゼ阻害作用、エラスターゼ阻害作用、メラニン産生抑制作用、頭皮脱毛治癒作用があることが知られている(特許文献3〜5等参照)。しかし、かかる金属キレート化合物に組織線維化疾患に対して予防または治療効果があることについては知られていない。
特公昭42-1286号公報(対応米国特許No.3,238,224) 特開2000-169371号公報 国際公開公報WO 02/076935 A1 国際公開公報WO 04/024139 A1 特開2008-174453号公報
泌尿器科学(栗田孝編、p.177(1995年)、南山堂) T. Yamada et al., Int. J. Urol., 7, 292 (2000) S.N. Iyer et al., J. Pharmacol. Exp. Therap., 289, 211 (1991) Biochem. J.,(1990)271, 45-49 Inorganica Chimica Acta, 192 (1992) 237-242 J. Org. Chem., 1985, 50, 2522-2524
前記するように組織線維化疾患に対する効果的な予防または治療剤は未だ開発されておらず、線維化により機能低下した組織への対症療法的な処置が行われているのみである。よって、組織の線維化を対象とした予防剤または治療剤が望まれている。
そこで本発明の目的は、組織線維化疾患に対する新たな予防または治療剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ブレオマイシンで肺線維症を誘発させた肺線維症モデル動物を用いて鋭意研究を重ねていたところ、下記一般式で示される金属キレート化合物(1):
Figure 2011190257
(式中、RはOH基、O−低級アルキル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミノ酸残基、またはペプチド残基を示し、Mは薬学上許容される金属を示す。)、
特に、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジンナトリウム・亜鉛キレート化合物に組織の線維化を有意に抑制する作用があることを見出し、当該金属キレート化合物(1)が組織線維化疾患の予防または治療剤の有効成分として有用であることを確信した。
本願発明は係る知見に基づいて完成したものであって、下記の実施態様を包含するものである。
組織線維化疾患の予防または治療剤
(I)次の一般式(1)で示される金属キレート化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する組織線維化症に対する予防または治療剤:
Figure 2011190257
(式中、RはOH基、0−低級アルキル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミノ酸残基、またはペプチド残基を示し、Mは薬学的に許容される金属を示す)。
(II)金属キレート化合物(1)が、6,8−ジメルカプトオクタン酸低級アルキルエステルの金属キレート化合物、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミンの金属キレート化合物、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸の金属キレート化合物、およびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ジペプチドの金属キレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種の金属キレート化合物である、(I)に記載する予防または治療剤。
(III)N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミンの金属キレート化合物が、6,8−ジメルカプトオクタン酸アミド金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノエタノール金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)イソプロピルアミン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)5−O−メチルセロトニン金属キレートおよびN−(5,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノピリジン金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(II)に記載する予防または治療剤。
(IV)一般式(1)で示される金属キレート化合物が、Rとして、アミノ酸残基(窒素原子で結合したアミノ酸残基)、またはペプチド残基(窒素原子で結合したペプチド酸残基)を有するものである、(I)に記載する予防または治療剤。
(V)N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸の金属キレート化合物が、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−α−アミノ酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−ω−アミノ酸金属キレート、およびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)特殊アミノ酸金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(II)に記載する予防または治療剤。
(VI)N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−α−アミノ酸の金属キレートが、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グリシン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アラニン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スレオニン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)セリン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパラギン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グルタミン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)フェニルアラニン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)メチオニン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ノルロイシン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)システイン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ハイドロキシプロリン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−5−ハイドロキシトリプトファン金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ペニシラミン金属キレートおよびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)リジン金属キレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、(V)に記載する予防または治療剤。
(VII)N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−ω−アミノ酸金属キレートおよびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)特殊アミノ酸金属キレート化合物が、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−3−アミノプロピオン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−4−アミノ酪酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−6−アミノヘキサン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−4−トランスアミノメチル−1−シクロヘキサンカルボン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノエタンスルホン酸金属キレート、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スルファニル酸金属キレートおよびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アントラニル酸金属キレートからなる群から選ばれるものである、(V)に記載する予防または治療剤。
(VIII)N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ジペプチドの金属キレート化合物が、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパラチイルグリシン金属キレートおよびN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スレオニルグリシン金属キレート化合物からなる群から選ばれるものである、(II)に記載する予防または治療剤。
(IX)金属が亜鉛である(I)乃至(VIII)のいずれかに記載する予防または治療剤。
(X)組織線維化を予防または治療する対象臓器が、肺、膀胱、腎臓、心臓または肝臓である、(I)乃至(IX)のいずれかに記載する予防または治療剤。
(XI)組織線維化疾患が、肺線維症、腎線維症、心内膜線維症、肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変、硬化性腹膜炎、前立腺肥大症、慢性腎炎、強皮症、子宮平滑筋腫、後腹膜線維症、膀胱線維症、骨髄線維症およびケロイドからなる群から選択されるいずれかである(I)乃至(X)に記載するいずれかの予防または治療剤。
本発明により、一般式(1)で表される金属キレート化合物またはその薬理学上許容される塩を有効成分とする組織の線維症に対する治療または予防剤、例えば肺、膀胱、腎臓、心臓、肝臓等の各種組織の線維症に対する治療または予防剤を提供することができる。
ブレオマイシンにより人為的に誘発させた肺線維化組織に対するDHLHZnの影響を示した光学顕微鏡画像である(実験例1)。具体的には、A.正常肺組織(HE染色)(コントロール群)、B.ブレオマイシン処理した肺組織(HE染色)(DHLHZn非投与群)、及びC.ブレオマイシン処理した後にDHLHZnを投与した肺組織(HE染色)(DHLHZn投与群)の画像を示す。 ブレオマイシンにより強制的に誘導した肺線維化組織に対するDHLHZnの影響を示した光学顕微鏡画像である(実験例1)。具体的には、A.正常肺組織(アザン染色)(コントロール群)、B.ブレオマイシン処理した肺組織(アザン染色)(DHLHZn非投与群)、及びC.ブレオマイシン処理した後にDHLHZnを投与した肺組織(アザン染色)(DHLHZn投与群)の画像を示す。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスの線維化した肝臓組織に対するDHLHZnの影響を示した光学顕微鏡画像である(実験例2)。具体的には、左上図:コントロール群(高脂肪食摂取群)、左下図:DHLHZn経口投与群、及び右上図:DHLHZn皮下投与群の肝臓組織をHE染色した画像を示す。また、併せて、NASH activity scoreを示す。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスの肝臓の線維化組織に対するDHLHZnの影響を示した光学顕微鏡画像である(実験例2)。具体的には、左上図:コントロール群(高脂肪食摂取群)(×100倍)、左下図:コントロール群(高脂肪食摂取群)(×400倍)、中央上図: DHLHZn皮下投与群(×100倍)、右上図:DHLHZn経口投与群(×100倍)、及び右下図:ノーマル群(普通食摂取群)(×100倍)の肝臓組織をAzan染色した画像を示す。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウス(左から、コントロール群、DHLHZn皮下投与群、DHLHZn経口投与群、ノーマル群)の肝臓組織中のSREBP-1c及びTNF-αのmRNA量を対比した結果を示す(実験例2)。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウス(左から、コントロール群、DHLHZn皮下投与群、DHLHZn経口投与群、ノーマル群)の肝臓組織中の8-OHdG量を対比した結果を示す(実験例2)。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウス(左から、コントロール群、DHLHZn皮下投与群、ノーマル群)の肝臓組織中のUCP-2の発現量を対比した結果を示す(実験例2)。
本発明の組織線維化の予防または治療剤(以下、これらを「本発明の抗線維化剤」と総称する)は、次の一般式(1)で示される金属キレート化合物またはその薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする:
Figure 2011190257
(式中、RはOH基、O−低級アルキル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミノ酸残基、またはペプチド残基を示し、Mは薬学的に許容される金属を示す)。
ここで上記式中、Mで示す「薬学的に許容される金属」とは、生体毒性がなく2つのチオール基と配位結合またはキレート結合し得るものであればよく、例えば亜鉛、コバルトまたはセレン等の2価の金属、鉄等の2価または3価の金属、ゲルマニウムやセレン等の4価の金属などの薬学的に許容される金属を挙げることができる。好ましくは2価の金属であり、より好ましくは亜鉛である。
上記式中、RがO−低級アルキル基である場合の金属キレート化合物(1)を、本発明では「6,8−ジメルカプトオクタン酸低級アルキルエステルの金属キレート化合物」と総称する。この場合の「低級アルキル基」としては、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基およびエチル基である。
上記式中、Rがアミノ基またはN−置換アミノ基である場合の金属キレート化合物(1)を「N−(6,8−ジメルカプトオクノイル)アミンの金属キレート化合物」と総称する。この場合の「N−置換アミノ基」としては、第一級アミノ基の1または2の水素原子または第二級アミノ基の1の水素原子が、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基;炭素数1〜5の脂肪族アルコール残基;またはピリジン環、ピリミジン環もしくはインドール環などの窒素原子を含むヘテロ環で置換された基を挙げることができる。なお、ここで脂肪族炭化水素基、脂肪族アルコール残基、及び窒素原子を含むヘテロ環は、それぞれ置換基を有するものであってもよく、かかる置換基としては水酸基;ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、ヨウ素元素等);炭素数1〜6のO−低級アルキル基;炭素数1〜6のアルキル基;並びに修飾されていてもよいピリジン環、ピリミジン環もしくはインドール環などの窒素原子を含むヘテロ環基等を、特に制限なく挙げることができる。
炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状の低級アルキル基、炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の低級アルケニル基、及び炭素数2〜5の直鎖状または分岐状の低級アルキニル基を挙げることができる。好ましくは低級アルキル基である。かかる低級アルキル基としては、前述するように、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基およびエチル基である。
また炭素数2〜5の低級アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、ブテニル基およびペンテニル基などを、炭素数2〜5の低級アルキニル基としてはエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられる。
炭素数1〜5の脂肪族アルコール残基としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、およびイソブタノール等の低級アルコールが挙げられる。
RがN−置換アミノ基である本発明の金属キレート化合物(1)として、具体的には、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノエタノール金属キレート(R=−NHの1つの水素原子がエタノール残基で置換された基)、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)イソプロピルアミン金属キレート(R=−NHの1つの水素原子がイソプロピル基で置換された基)、N−(5,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノピリジン金属キレート化合物(R=−NHの1つの水素原子が2−ピリジル基で置換された基)、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)5−O−メチルセロトニン金属キレート(R=5−O−メチルセロトニンの側鎖のNH基の水素原子の一つが置換された基)などを挙げることができる。
上記式中、Rがアミノ酸残基である場合の金属キレート化合物(1)を、本発明では「6,8−ジメルカプトオクタン酸アミノ酸の金属キレート化合物」と総称する。この場合の「アミノ酸」としては、同一分子内にカルボキシル基とアミノ基を有する、α−アミノ酸;β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸、及びε−アミノ酸(β−〜ε−アミノ酸を総称して「ω−アミノ酸」という);アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、アントラニル酸、アントラニル酸エチル、及び同一分子内にスルホン酸基とアミノ基を有するアミノエタンスルホン酸(タウリン)やp−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)[アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸〜スルファニル酸までのα−アミノ酸にもω−アミノ酸にも該当しないアミノ酸を総称して「特殊アミノ酸」という]を挙げることができる。
α−アミノ酸としては、カルボキシル基(又はスルホン酸基)が結合した炭素(α−炭素)にアミノ基も結合した化合物をいい、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びペニシラミン等を挙げることができる。好ましくはグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、システイン、リジン、ヒスチジン、及びペニシラミンであり、より好ましくはヒスチジンである。なお、これらのα−アミノ酸は、置換基として水酸基を有するものであってもよい。水酸基を有するα−アミノ酸としては、制限されないが、例えば4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシトリプトファン、及び5−ヒドロキシトリプトファンペニシラミン等を挙げることができる。
ω−アミノ酸とは、カルボキシル基(又はスルホン酸基)の結合した炭素と反対側の炭素鎖末端の炭素にアミノ基が結合した化合物をいい、β−アミノ酸、γ−アミノ酸及びδ−アミノ酸が含まれる。かかるω−アミノ酸に属するアミノ酸としては、例えば、4−アミノ酪酸(γ−アミノ−n−酪酸(GABA))、カルニチン、5−アミノレブリン酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3−アミノプロピオン酸、5−アミノレブリン酸、5−アミノ吉草酸、トランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸等が挙げられる。なお、例えばリシンの如き、同一分子内に複数のアミノ基を有するアミノ酸については、式(I)においてα−炭素にアミノ基が結合する場合はα−アミノ酸に、ε−炭素に結合したアミノ基が結合する場合はω−アミノ酸に分類される。
特殊アミノ酸とは、その構造上、α−アミノ酸にもω−アミノ酸にも分類されないアミノ酸をいい、例えば、アントラニル酸や4−アミノベンゼン−1−スルホンサン等を挙げることができる。
制限されないものの、これらのアミノ酸のうち、好ましくはヒスチジン、グルタミン酸、メチオニン、ペニシラミン、リシン、フェニルアラニン等のα−アミノ酸;γ−アミノ−n−酪酸、アミノエタンスルホン酸、6−アミノヘキサン酸等のω−アミノ酸;及びアントラニル酸等の特殊アミノ酸であり、より好ましくはヒスチジンである。
上記式中、Rがペプチド残基である場合の金属キレート化合物(1)を、本発明では「6,8−ジメルカプトオクタン酸ペプチドの金属キレート化合物」と総称する。この場合の「ペプチド」としては、好ましくは同種または異種の2個のアミノ酸(前記と同義)が、互いに一方のカルボキシル基と他方のアミノ酸のアミノ基とが酸アミド結合したジペプチドを挙げることができる。かかるジペプチドとして、具体的にはアスパラチイルグリシンやスレオニイルグリシンなどを挙げることができる。
本発明における金属キレート化合物(1)は、立体異性体の混合物または純粋若しくは実質的に純粋な状態の各立体異性体を包含する。例えば、炭素原子のいずれかに不斉中心を有する金属キレート化合物(1)は、エナンチオマー若しくはジアステレオマー又はこれらの混合物として存在しえる。
本発明の金属キレート化合物(1)の薬理学的に許容できる塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、およびカルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩等の無機塩;並びにモノエタノールアミンなどのアミン類との塩などの有機塩を挙げることができる。なお、これら以外の塩であっても薬理学的に許容できる塩であればいずれのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることができる。また、本発明が対象とする金属キレート化合物(1)には、その水和物も含まれる。
本発明の抗線維化剤の有効成分として使用する金属キレート化合物(1)の合成法を、Mで示される金属が亜鉛である場合を例に挙げて次に説明する。
Figure 2011190257
具体的には、α−リポ酸またはα−リポ酸アミドを亜鉛と塩酸(または酢酸)で還元することで、上記式においてRが水酸基である、6,8−ジメルカプトオクタン酸亜鉛キレート化合物またはそのアミド化合物を合成することができる。また、6,8−ジメルカプトオクタン酸低級アルキルエステル亜鉛キレートは、α−リポ酸の低級アルキルエステルを、上記と同様にして還元することで得ることができる。
さらに、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミン、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アミノ酸またはN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ペプチドは、たとえばα−リポ酸をクロロホルムまたはアセトニトリルに溶かし、トリエチルアミン存在下、クロル炭酸エチルを用いて混合酸無水物法によりアミン、アミノ酸またはペプチドを各々、カップリングさせ、N−α−リポイルアミン、N−α−リポイルアミノ酸またはN−α−リポイルペプチドを得る。これらを亜鉛と酢酸(または塩酸)で還元することで、各々、目的の化合物を得ることができる。
さらに、Rとしてアミノ酸残基またはペプチド残基を有する金属キレート化合物(1)を、例えばアルカリ塩(アルカリ金属塩、アルカリ金属土類塩)に導く場合は、その遊離酸を水に溶解または懸濁して置き、これを水酸化アルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなど)で中和して溶かした後、濃縮し、アルコールを加えて析出する結晶を濾取すれば高収率で本発明が対象とする金属キレート化合物(1)の塩を得ることができる。
α−リポ酸またはα−リポ酸誘導体の還元体、すなわち、6,8−ジメルカプトオクタン酸またはその誘導体は空気中で非常に不安定であるが、金属、例えば亜鉛等の金属でこれをキレート化させると六員環となり結晶性の良い安定な化合物となる。
本発明の金属キレート化合物(1)、特にN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジン亜鉛キレート化合物のラットでの急性毒性LD50は、経口投与で2000mg/kg以上であり、毒性がない分類に属する安全性の高い化合物である。
本願発明が対象とする組織線維化疾患とは、薬物等の化学的刺激、過度の圧負荷、炎症反応等のストレスにより組織実質細胞の脱落や組織の機能低下が起こり、それを補う過程で生じた過剰な線維芽細胞の遊走増殖、並びにその後の細胞間マトリックス蛋白質の合成沈着による組織の機能障害を伴った硬直化を意味し、誘発刺激の別や発症部位は特に限定されない。
かかる組織線維化疾患としては、具体的には、肺、膀胱、腎臓、心臓、肝臓等の内臓組織の線維症が挙げられる。本発明が対象とする組織線維化疾患には、抗腫瘍剤、抗生物質、抗菌剤、抗不整脈剤、消炎剤、抗リウマチ剤、インターフェロンまたは小柴胡湯などの薬剤の投与により引き起こされる組織線維化疾患、並びに慢性腎炎、間質性心筋炎および間質性膀胱炎などの疾患に伴う組織線維化疾患も含まれる。具体的には、ブレオマイシン投与の副作用で生じる肺の線維症や、間質性肺炎の際またはその後に生じる肺線維症;間質性膀胱炎の際に生じる膀胱の線維症や膀胱頚部硬化症;遺伝子異常等によって生じる腎線維症、および腎不全(腎硬化症);心筋梗塞後のリモデリングによって生じる心内膜線維症;肝細胞の損傷によって生じる肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、それに伴う門脈圧亢進症及び肝硬変;過剰な組織修復によって生じるケロイド、その他、硬化性腹膜炎、前立腺肥大症、強皮症、子宮平滑筋腫、後腹膜線維症、及び骨髄線維症等を例示することができる。
本発明の抗線維化剤は、かかる組織線維化疾患の治療に加えて、予防、特に経皮経管冠動脈血管拡張術後の冠動脈再狭窄、間質性心筋炎、間質性膀胱炎などの疾患に伴う線維化の予防または進行抑制剤としても使用することができる。
本発明の金属キレート化合物(1)(以下、「本化合物」という)は、上記する組織線維化疾患の予防または治療剤(以下、「本医薬組成物」という)として、ヒトまたはその他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなど)に、経口的にあるいは非経口的〔静脈投与、皮下投与、経皮投与、経肺投与、経粘膜投与(点鼻など)、直腸投与など〕に投与して用いられる。本医薬組成物は、本化合物を、経口または非経口投与に通常用いられる薬学的に許容される担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、湿潤剤など)や添加剤などと混合し、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、バッカル剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、点眼剤、注射剤、点滴剤、点鼻剤、貼付剤、坐剤などの所望の形態に製剤化することにより調製することができる。
製剤化には通常用いられる薬学的に許容される担体、例えば、結合剤(例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン)、賦形剤(例えば、乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、増粘剤、分散剤等、またその他の添加剤として、再吸収促進剤、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤等を適宜使用してもよい。
抗線維化剤中における本化合物の含量は製剤の形態により種々異なるが、通常0.1〜100重量%、好ましくは1〜98重量%である。例えば注射剤の場合には、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の有効成分を含む注射液になるようにすることがよい。
本化合物を組織線維化疾患の予防または治療剤として使用する際の投与量は、使用する本化合物の種類、患者の体重や年齢、対象とする疾患の種類やその状態および投与方法などによっても異なるが、たとえば、本化合物の量に換算して、注射剤の場合は成人1日1回約1mg〜約500mg、錠剤等の経口投与剤の場合は、成人1日数回、1回量約1mg〜約1000mg程度、さらに軟膏やクリーム及び貼付剤等の外用剤の場合は、1回量約1mg〜約1000mg程度を投与するのがよい。
本化合物を含有する抗線維化剤(組織線維化疾患の予防または治療剤)には、本発明の目的に反しない限り、その他ステロイドまたは別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
次に、製造例、実験例および実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲に限定されない。
〔製造例1〕 6,8−ジメルカプトオクタン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物、および
6,8−ジメルカプトオクタン酸・亜鉛キレート モノエタノールアミン(アミノエタノール)塩
DL−α−リボ酸6.2gをメタノール70mLに溶かし、亜鉛未3.0gおよび1N−塩酸40mLを加えて50℃で1時間撹拌した。つぎに、末反応の亜鉛を濾別し、濾液を減圧下で濃縮させ、これに水を加えて析出した白色結晶を濾取する。これを水150mLに懸濁して置き、2N−水酸化ナトリウムで約pH9にして溶解し、不溶物を濾別した。濾液を濃縮し、これにエタノールを加えて析出する白色結晶を濾取した。これを、水/エタノールから再結晶させることで掲題の6,8−ジメルカプトオクタン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物6.0gを得た。mp.300℃以上、TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
また、上記において、水酸化ナトリウムの代わりにモノエタノールアミンを用い、その他は同様に処理して、掲題の6,8−ジメルカプトオクタン酸・亜鉛キレート モノエタノールアミン(アミノエタノール)塩8.5gを得た。 mp.137〜139℃。
〔製造例2〕 6,8−ジメルカプトオクタン酸エチル・亜鉛キレート化合物
DL−α−リボ酸エチル3.5gをテトラハイドロフラン60mLに溶かし、これに亜鉛末2.0gおよび70%酢酸水溶液40mLを加えて、50℃で2時間撹伴した。次いで、末反応の亜鉛を濾別し、濾液を濃縮し、これに水を加えて析出した白色結晶を濾取し、酢酸/水から再結晶させて掲題の金属キレート化合物3.6gを得た。mp.290℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例3〕 6,8−ジメルカプトオクタン酸アミド・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸アミド4.2gをテトラハイドロフラン70mLに溶かし、これに亜鉛末2.5gおよび50%酢酸水溶液30mLを加えて50℃で2時間撹拌した。次いで、溶媒を留去した後、析出した亜鉛混じりの結晶を濾取し、水およびエタノールで洗い、酢酸/水から再結晶させて、白色結晶の掲題の金属キレート化合物4.5gを得た。mp.257〜259℃、TLC,Rf=0.80(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例4〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グリシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−a−リポ酸4.2gおよびグリシン1.9gを用いて、N−α−リポイルグリシンナトリウム(mp.218〜220℃)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題の金属キレート化合物3.9gを得た。mp.297℃付近から分解。TLC,Rf=0.64(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
〔製造例5〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパラギン酸モノナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−アスパラギン酸2.9gを用いて、N−α−リポイルアスパラギン酸ナトリウム(mp.300℃以上)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題の金属キレート化合物4.2gを得た。mp.295℃付近から分解。TLC,Rf=0.53(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
〔製造例6) N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)メチオニンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−メチオニン3.5gを用いて、N−α−リポイルメチオニン(mp.108〜109℃)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物2.8gを得た。mp.260℃付近から分解、TLC,Rf=0.82(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例7〕 N−(6,8−ジメルカブトオクタノイル)システイン・亜キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−システイン2.6gを用いて、N−α−リポイルシステインナトリウム(mp.150℃付近から分解)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物4.1gを得た。mp.280℃付近から分解、TLC,Rf=0.71(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
〔製造例8〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)フェニルアラニンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−フェニルアラニン3.5gを用いて、N−α−リポイルフェニルアラニン(mp.154〜156℃)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物3.9gを得た。mp.270℃付近から分解、TLC,Rf=0.82(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例9〕 N−(6,8−ジメルカブトオクタノイル)−4−アミノ酪酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよび4−アミノ酪酸2.3gを用いて、N−α−リポイル−4−アミノ酪酸(mp.235℃付近から分解)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物5.2gを得た。mp.297℃付近から分解。TLC,Rf=0.70(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
〔製造例10〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−6−アミノヘキサン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リボ酸4.2gおよび6−アミノヘキサン酸3.0gを用いて、N−α−リポイル−6−アミノヘキサン酸ナトリウム(mp.200〜202℃)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物2.0gを得た。mp.295℃付近から分解。TLC,Rf=0.84(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
〔製造例11〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アントラニル酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リボ酸4.2gおよびアントラニル酸2.9gを用いて、N−α−リポイルアントラニル酸ナトリウム(mp.300℃以上)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物2.1gを得た。mp.290℃付近から分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例12] N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸6.2gおよび2−アミノエタンスルホン酸4.5gを用いて、N−α−リポイルアミノエタンスルホン酸ナトリウム(mp.235〜237℃)を経て、これを製造例3と同様に処理して、白色結晶の掲題化合物4.5gを得た。mp.293℃付近から分解。TLC,Rf=0.51(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例13〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ハイドロキシプロリンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−4−ハイドロキシプロリン2.8gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物4.9gを得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.66(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例14〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−ヒスチジン3.4gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.8gを得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.39(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例15〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グルタミン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−グルタミン酸3.5gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.7gを得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.74(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例16〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スレオニンナトリウム亜鉛・キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−スレオニン2.6gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.5gを得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.73(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例17〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アラニンナトリウム亜鉛・キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−アラニン2.1gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.4gを得た。mp.290℃付近から分解。TLC,Rf=0.78(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例18〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)セリンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−セリン2.4gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.0gを得た。mp.285℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.64(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例19〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ノルロイシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−ノルロイシン3.0gから、製造例12と同様にして、N−α−リポイルノルロイシン(mp.120〜121℃)を得て、白色結晶の掲題化合物5.1gを得た。mp.295℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.90(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例20〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−5−ハイドロキシトリプトファンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−5−ハイドロキシトリプトファン5.0gから、製造例12と同様にして、灰白色結晶の掲題化合物6.5gを得た。mp.290℃付近から分解。TLC,Rf=0.81(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例21〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ペニシラミンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびD−ペニシラミン3.5gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物6.0gを得た。mp.280℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.80(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例22〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−3−アミノプロピオン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびβ−アラニン2.0gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.8gを得た。mp.295℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.83(n-ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例23〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−トランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物(別名、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−トラネキサム酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物)
DL−α−リポ酸4.2gおよび4−トランスアミノメチルシクロヘキサンカルボン酸3.5gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.8gを得た。mp.297℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.81(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例24] N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スルファニル酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびスルファニル酸(4−アミノベンゼン−1−スルホン酸)3.8gから、製造例12と同様にして、白色結晶の掲題化合物5.4gを得た。mp.300℃以上、TLC,Rf=0.57(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例25〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)イソプロピルアミン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびトリエチルアミン2.4gをアセトニトリル50mLに溶かして撹件下−5℃に冷却し、これにクロル炭酸エチル2.4gを徐々に滴下した。滴下終了20分後、さらに、イソプロピルアミン1.5gをアセトニトリル30mLに溶かしたものを速やかに加えて30分間撹拌し、室温に戻してから更に1時間撹拌した。これを減圧下で溶媒を留去し、残渣に水を加えて冷却し、析出した淡黄色結晶を濾取した。これをテトラハイドロフラン(THF)60mLに溶かし、50%酢酸水溶液20mLおよび亜鉛末2.0gを加えて、50℃で2時間撹拌した後、未反応の亜鉛を濾別し、濾液を濃縮した。残渣に水を加えて析出した白色結晶を濾取し、THF/酢酸/水から再結晶させて掲題合物5.0gを得た。mp.271〜273℃、TLC,Rf=0.89(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例26〕 N−(6,8−ジメルカブトオクタノイル)−2−アミノエタノール・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびモノエタノールアミン1.5gを用いて白色結晶の掲題化合物4.2gを得た。mp.298℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.77(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例27] N−(5,8−ジメルカプトオクタノイル)5−O−メチルセロトニン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびO−メチルセロトニン4.0gを用いて、白色結晶の掲題化合物6.5gを得た。mp.210〜212℃、TLC,Rf=0.84(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例28〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノピリジン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リボ酸4.2gおよび2−アミノピリジン2.2gを用いて白色結晶の掲題化合物5.3gを得た。mp.243〜245℃、TLC,Rf=0.87(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例29〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アントラニル酸エチル・亜鉛キレート化合物
イソプロピルアミン1.5gに代えてアントラニル酸エチル3.6gを用いて、製造例25と同様にして、白色結晶(THF−酢酸−水から再結晶)の掲題化合物4.6gを得た。mp.290℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例30〕 N ε ー(6,8−ジメルカプトオクタノイル)リシン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2g、トリエチルアミン2.4gおよびクロル炭酸エチル2.4gをアセトニトリル50mL中、冷却下で混合酸無水物とし、これにL−リシン3.1g、硫酸銅(5水和物)5.5gおよび水酸化ナトリウム2.0gを水60mLに溶かしたものを加えて反応させた。析出したNε−(α−リポイル)リシンの銅塩を濾取し、水およびメタノールで洗った後、これを70%の酢酸水溶液にサスペンドして置き、硫化水素で銅を硫化銅として濾別した。濾液を濃縮し、残渣にメタノールを加えて析出した淡黄色の結晶3.5gを濾取した。mp.254〜255℃。
つぎに、これを60%酢酸水溶液に溶かし、亜鉛末2.0gを加えて、50℃で3時間撹伴し、亜鉛を濾別した後、濾液を濃縮し、これにメタノールを加えて析出した白色結晶の掲題化合物3.4gを得た。mp.295℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.47(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例31〕 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパラチイルグリシンジナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸2.1gおよびL−アスパラチイルグリシン2.1gを用いて、同様にして、N−(α−リポイル)アスパラチイルグリシンナトリウムを径由して、掲題化合物の白色結晶3.1gを得た。mp.270℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.54(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
〔製造例32〕 N−(ジメルカプトオクタノイル)スレオニルグリシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸2.1gおよびL−スレオニルグリシン2.1gを用いて、製造例25と同様にして、掲題化合物の淡黄白色結晶2.6gを得た。mp.260℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.60(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
以下の実験例1及び2では、線維化した組織(肺及び肝臓)に対する本発明の金属キレート化合物(1)の効果を調べた。なお、本発明の金属キレート化合物(1)として、製造例14で調製した下式のN−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−L−ヒスチジンナトリウム・亜鉛キレート化合物(以下、単に「DHLHZn」という)(分子量540.17)を用いた。なお、研究は大分大学医学部の動物研究の倫理委員会による承認を受け、すべてのプロトコルは国立衛生研究所(NIH)のガイドラインに沿って行った。
Figure 2011190257
実験例1
ブレオマイシン誘導肺線維症モデル動物を用いて、発明の金属キレート化合物(1)の肺線維症に対する効果を評価した。
(1)ブレオマイシン誘導肺線維症モデル動物の作成
Wistar系ラット(雄、250〜300g)30匹のうち、20匹に対して1匹当たり0.5mgのブレオマイシンを気道内投与して、人為的に肺線維症を誘発させ、肺線維症モデル動物を作成した。残りの10匹はコントロール群(正常動物)とした。なお、ラットはすべて、実験前後に食物と水に無制限に摂取できるようにした。
(2)被験化合物(DHLHZn)の投与
ブレオマイシンを投与したラット(20匹)を10匹ずつ2分し、DHLHZn投与群およびDHLHZn非投与群とした。DHLHZn投与群にはブレオマイシン投与日から14日間、生理的食塩水に懸濁した10mg/kgのDHLHZn(製造例14)を毎日二回皮下投与した。コントロール群及びDHLHZn非投与群にはDHLHZn投与群と同量の生理的食塩水を皮下投与した。
(3)病理解析
ブレオマイシン投与後14日目に各ラット(コントロール群、DHLHZn投与群、DHLHZn非投与群)より肺を摘出し、10%ホルマリン中性燐酸緩衝液で固定した。組織はパラフィン切片を作成し、またはヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)またはアザン染色(Azan染色)した後にデジタルカメラ(オリンパス社製DP11)にて撮影した。
(4)結果
HE染色の結果を図1に、アザン染色の結果を図2に示す。各図において、Aはコントロール群の肺組織の画像、BはDHLHZn非投与群の肺組織の画像、CはDHLHZn投与群の肺組織の画像をそれぞれ示す。
この図からわかるように、ブレオマイシン投与により14日後の肺には明らかな線維化像が観察されたが、本発明の金属キレート化合物(1)(DHLHZn)の投与によりこの線維化部分が有意に改善していることが観察された。このことは本発明の金属キレート化合物(1)が組織の線維化を抑えること、つまり組織線維化疾患を予防または改善する作用を有することを示している。
実験例2
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデル動物を用いて、発明の金属キレート化合物(1)の肝臓の線維化に対する効果を評価した。
(1)被験化合物(DHLHZn)の投与
NASHモデルマウス(20匹)を5匹ずつ、DHLHZn皮下投与群、DHLHZn経口投与群、コントロール群(高脂肪食摂取群)、及びノーマル群(普通食摂取群)の4群に分類した。DHLHZn皮下投与群には、4週間にわたり、高脂肪食(HFD-60)を自由に摂取させながら、生理食塩水に懸濁したDHLHZnを1日10mgずつ皮下投与した。DHLHZn経口投与群には、4週間にわたり、0.5%のDHLHZnを含む高脂肪食(HFD-60)を自由に摂取させた。コントロール群(高脂肪食摂取群)及びノーマル群(普通食摂取群)には、4週間にわたり、それぞれ高脂肪食(HFD-60)及び普通食を自由に摂取させた。
(2)病理解析
上記投与を4週間続けた後、各NASHモデルマウス(皮下投与群、経口投与群、コントロール群、及びノーマル群)より肝臓を摘出し、10%ホルマリン中性燐酸緩衝液で固定した。組織はパラフィン切片を作成し、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)またはアザン染色(Azan染色)した後に、デジタルカメラ(オリンパス社製DP11)にて撮影した。HE染色の結果を図3に、アザン染色の結果を図4に示す。HE染色の結果からNASHの重症度がNASH activity scoreとして、またAzan染色の結果から肝線維化の程度がわかる。HE染色の結果をもとに評価したNASH activity score(脂肪化、炎症、肥大・膨脹化)を図3に併せて示す。
この結果から、DHLHZnを皮下または経口投与したNASHモデルマウスは、いずれもNASH activity scoreのうち、特に脂肪化と肥大・膨脹化が改善しており(図3参照)、また肝線維化の抑制が認められた(図4参照)。このことから、本発明の金属キレート化合物(1)を皮下または経口投与することで、NASHの症状が低減し、また肝線維化が抑制すると考えられる。
(3)肝組織中のSREBP-1c及びTNF-αのmRNA解析
上記投与を4週間続けた後に各NASHモデルマウス(皮下投与群、経口投与群、コントロール群、及びノーマル群)から摘出した肝臓組織を用いて、SREBP-1c及びTNF-αのmRNAの量を測定した。結果をそれぞれ図5A及びBに示す。図5A及びBに示すように、DHLHZnを皮下または経口投与したNASHモデルマウスの肝臓組織におけるSREBP-1c及びTNF-αのmRNA量は、コントロール群と比べていずれも有意に低く、ノーマル群とほぼ同程度であった。SREBP-1cは脂肪合成に関与している重要な転写因子、またTNF-αは炎症性メディエータとして重要な因子である。本実験において、NASHモデルマウスでこれらが上昇すること、そして当該上昇が、DHLHZnの皮下投与及び経口投与によって抑制されることが認められた。なお、SREBP-1cが上昇することは、NASHモデルマウスとして特徴的な現象であり、脂質の負荷がかかり脂肪肝の状態であることを示している。また、TNF-αの活性化から炎症刺激が加わっていることが分かるが、DHLHZnはこれらをいずれもコントロールしていることが確認された。
(4)抗酸化作用
上記投与を4週間続けた後に各NASHモデルマウス(皮下投与群、経口投与群、コントロール群、及びノーマル群)から摘出した肝臓組織を用いて、ELISA法により肝組織中における8-OHdG量を測定した。結果を図6に示す。図6に示すように、DHLHZnを皮下または経口投与したNASHモデルマウスの肝臓組織における8-OHdG量は、コントロール群と比べていずれも有意に低かった。酸化ストレスは各種臓器疾患に関与しており、特に線維化に重要な役割を演じている。本実験において、NASHモデルマウスにおいて、酸化ストレスの指標である8−OHDGが増加すること、そして当該増加がDHLHZnの皮下投与及び経口投与により有意に抑制できたことが確認された。
(5)肝組織中のUCP-2発現
上記投与を4週間続けた後に各NASHモデルマウス(皮下投与群、経口投与群、コントロール群、及びノーマル群)から摘出した肝臓組織を用いて、ウエスタンブロッティング法により肝組織中のUCP-2発現量を測定した。結果を図7に示す。図7に示すように、DHLHZnを皮下投与したNASHモデルマウスの肝臓組織においてUCP-2の発現が亢進していることが確認された。UCP-2はミトコドリアの重要なタンパク質であり、このたんぱくを維持することでミトコンドリア機能が維持でき、細胞が死亡することを防ぐことができる。本実験により、DHLHZnには、UCP-2を介したミトコンドリア保護機能があることが確認された。
以上の結果から、本発明の金属キレート化合物(1)(DHLHZn)の投与により肺の組織線維化が有意に改善することが観察された。このことは本発明の金属キレート化合物(1)が組織の線維化を抑えること、つまり組織線維化疾患を予防または改善する作用を有することを示している。
実施例
〔製剤実施例1〕 内服錠
製造例14の化合物 30mg
乳糖 80mg
馬鈴薯澱粉 17mg
ボリエチレングリコール6000 3mg
以上の成分を1錠分の材料として常法により成型する。
〔製剤実施例2〕 注射剤
製造例14の化合物 1.09
マニトール 4.09
注射用蒸留水 残 部
全量 100mL
以上を常法により混合溶解させ注射剤とする。

Claims (5)

  1. 次の一般式(1)で示される金属キレート化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする組織線維化疾患の予防または治療剤:
    Figure 2011190257
    (式中、RはOH基、O−低級アルキル基、アミノ基、N−置換アミノ基、アミノ酸残基、またはペプチド残基を示し、Mは薬学的に許容される金属を示す)。
  2. 式(I)中、Rが、α−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、請求項1に記載する組織線維化疾患の予防または治療剤。
  3. 式(I)中、Rで示されるアミノ酸残基が、グリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リシン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載する組織線維化疾患の予防または治療剤。
  4. 金属が亜鉛である請求項1乃至3のいずれかに記載する組織線維化疾患の予防または治療剤。
  5. 組織線維化を予防または治療する対象臓器が、肺、膀胱、腎臓、心臓または肝臓である、請求項1乃至4のいずれかに記載する組織線維化疾患の予防または治療剤。
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