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JP2011162907A - 捲縮糸および繊維構造体 - Google Patents

捲縮糸および繊維構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐熱性、柔軟性、伸縮性、吸放湿性を有し、さらに発色性、染色堅牢度といった染色特性にも優れたポリアミド56捲縮糸を提供する。さらには、耐摩耗性、力学特性、嵩高性にも優れた捲縮糸に関するものである。
【解決手段】硫酸相対粘度が2.0〜3.5、Mw/Mnが1.5〜3であるポリアミド56からなるフィラメントであって、以下の特性を有することを特徴とする捲縮糸。
5%伸長応力:0.2〜1.0cN/dtex
沸騰水収縮率:1〜15%
伸縮復元率:10〜55%
吸放湿性パラメーター△MR:3%以上
【選択図】なし

Description

本発明はポリアミド56からなるフィラメントであって、柔軟性、伸縮性、吸放湿性に優れ、かつ耐熱性にも優れた捲縮糸に関するものである。さらに詳しくは、耐摩耗性、力学特性、嵩高性、染色特性にも優れた捲縮糸に関するものである。
汎用の合成繊維において、ポリアミド繊維は強度に代表される高い力学特性に加え、耐摩耗性や柔軟性、耐熱性に優れることから、衣料用の他、タイヤコードやエアバッグ、ロープやネット等、あらゆる資材用途に好適に用いられている。
この中でも、衣料用においてはその高い柔軟性や肌との馴染みの良さ、ストレッチバック性が評価され、主にインナーやパンストに使われている。これらの用途では、欧米ではポリアミド66が、アジア地域ではポリアミド6が汎用的に使われており、いずれのポリアミドもそれぞれ一長一短がある。例えば、ポリアミド66は高融点に起因した高い耐熱性や、耐摩耗性、染色堅牢度に優れる等の利点があるが、一方で染着速度が遅いことに起因する均染性の低さや、繊維製造時にゲルや球晶を生成しやすく欠陥となりやすい、原料コストが高い等の欠点を有する。それに対し、ポリアミド6は比較的低コストで製造でき、ゲルや球晶も生成しにくいために工業生産において容易に製造することができ、繊維特性としても柔軟性や染着速度が速いといった特徴を有する。一方で、ポリアミド66と比較すると耐摩耗性や耐熱性が劣る、染色堅牢度が低いといった欠点を有している。また、いずれのポリアミドも吸湿性はそれほど高くないため、肌への馴染みを良くし、快適性を保つために吸湿性の高い材料をブレンドする方法(特許文献1)が工業的に採用されている。しかしながら、該方法を用いると繊維の耐熱性や耐摩耗性、染色堅牢度が低下する傾向にある。
ところで、最近は地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、非石油由来の繊維素材が切望されている。前記した汎用のポリアミド繊維は、石油を主原料としていることや、製造時に大量の水や熱エネルギーを用いており二酸化炭素排出量が多い。よって、環境負荷が大きい素材といえる。また、既にピークオイル論(非特許文献1)で指摘されている様に、石油資源の減少に伴い石油価格が高騰しており、石油資源の大量消費により生じる地球温暖化が大きな問題として採り上げられている。
そこで、非石油系由来のプラスチック(バイオマスプラ)にスポットライトが当てられ、欧米や日本、中国において研究開発が活発に行われている。例えば、天然資源として産生されているセルロースは、二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源から大量に取り出すことが可能であり、二酸化炭素の循環(カーボンニュートラル)により地球温暖化の抑制に寄与することが期待されている。バイオマスプラの代表的なものとしては、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルが挙げられるが、強度、耐熱性、耐摩耗性、耐加水分解性などの諸特性が汎用プラスチックに比較すると低く、汎用素材として用いるためにはこれら諸特性の大幅改善が必要になる。
そこで我々は、汎用素材として十分な力学特性や耐久性、その他の諸特性を満足するものとして、バイオマスベースのモノマーを用いて重合したバイオナイロンに注目して研究を進めている。バイオナイロンとしては、既にポリアミド11やポリアミド12、ポリアミド610が工業化されているものの、いずれのポリアミドも特性に偏りがあるため、衣料用、産業資材用途としては極一部の用途に用いられているに過ぎない。そこで我々は、新規なバイオナイロンとして、バイオマスベースのモノマーである1,5ペンタメチレンジアミンと、アジピン酸とを加熱重合して得られるポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)に着目した。ポリアミド56はまだ工業化された事がない新規な材料であるが、製造方法についてはいくつかの特許が公開されている(特許文献2、特許文献3)。
また、従来より加熱重合で製造されたポリアミド56(非特許文献2)が知られているが、加熱重合で得られたポリアミド56は、界面重合法で製造されたポリアミド56(非特許文献3、非特許文献4)と比較して融点が低く、耐熱性に劣るものしか報告されていない。一方で、界面重合法は工程が複雑であり、高コストな製造プロセスであることから工業的には向かない。そこで特許文献2の如く、リジン脱炭酸酵素を用いた酵素反応等で得られた高純度の1,5ペンタメチレンジアミンを用いることや、特許文献3の如く特定の重合方法を採用するなどの工夫により、加熱重合法によっても高融点でかつ実用的な重合度を有するポリアミド56を製造することに成功している。該ポリアミド56は、優れた溶融貯留安定性に加え、紡糸、延伸性も可能であることから、繊維材料としてのポテンシャルを有している。
繊維材料としては、例えば透明性に優れ、高強度であるポリアミド56からなるフィラメントが開示されている(特許文献4)。該特許文献には具体例として釣り糸等に好適なモノフィラメントが開示されているが、実施例では糸切れしない程度まで延伸倍率を下げることで、79μmの直径を有するモノフィラメントを得ている。すなわち、特許文献4の方法では衣料用を主体とする細い繊度(通常、直径5〜17μm)の繊維を安定して製造することができていない。
また、ポリアミド56からなる捲縮糸としてBCF(Bulked Continuous Filament)が開示されている(特許文献5、特許文献6)。例えば、該特許文献5の段落(0031)には、モノフィラメントの直径換算で20〜100μmの範囲のBCFが記載されていることから、特許文献4と同様、太繊維糸の記載しかない。さらにBCFヤーンは製法が挫屈捲縮であるため捲縮の堅牢度が低い。例えば特許文献6の実施例に記載の拘束荷重下捲縮保持率は最大でも52%であり、高荷重下でへたりやすい構造の捲縮糸であることがわかる。よって、スポーツ衣料の様に、数千〜数万の伸縮を繰り返しても形態変化が生じない用途ではBCFヤーンを用いることができない。
また、ポリアミド56からなる繊維であって、ゴム補強コードに用いるポリアミド56繊維が開示されている(特許文献7)。しかしながら、該特許文献の繊維は150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が12〜20%であり、極めて弾性率が高い繊維である。すなわち、曲げに対して硬い繊維であるため柔軟性が不足しており、そのままでは衣料用の繊維として用いることができないものである。
特開平7−150414号公報(特許請求の範囲) 特開2003−292612号公報(特許請求の範囲、[0045]) 特開2004−075932号公報(特許請求の範囲、[0034]) 特開2006−144163号公報(特許請求の範囲) 特開2007−84936号公報(特許請求の範囲、[0031]) 特開2009−179899号公報(特許請求の範囲) 特開2009−68132号公報(特許請求の範囲)
ASPO(The Assosiation for the Study of Peak Oil) J.Polym.Sci.2,306(1947) J.Polym.Sci.50,87(1961) Macromolecules,30,8540(1998)
本発明の課題は、柔軟性、伸縮性、吸放湿性に優れ、かつ耐熱性にも優れた捲縮糸を提供することである。さらに詳しくは、耐摩耗性、力学特性、嵩高性、染色特性にも優れた捲縮糸を提供することである。
本発明者らが柔軟性や伸縮性、吸放湿性に優れたポリアミド56捲縮糸を得るために鋭意検討した結果、硫酸相対粘度が特定の範囲にあり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が小さいポリアミド56フィラメントを形成することで、製糸工程におけるポリアミド56分子鎖の配向度や結晶化度が十分に高まり、細繊度でありながら毛羽が少なく、力学特性や、熱収縮特性に優れたポリアミド56フィラメントを製造することに成功した。該フィラメントは仮撚加工性に優れており、仮撚加工時の延伸倍率、加工撚数および張力、セット温度、延伸後のリラックス率を最適化することで、従来のポリアミドフィラメントでは達成できなかった、高い伸縮性と柔軟性を付与することができる。また、ポリアミド56の非晶分子鎖の配向度を適度に緩和させることによって、吸放湿性パラメーター△MR:3%以上を達成することに成功したのである。
すなわち本発明は、硫酸相対粘度が2.0〜3.5、Mw/Mnが1.5〜3であるポリアミド56からなるフィラメントであって、5%伸長応力:0.2〜1.0cN/dtex、沸騰水収縮率:1〜15%、伸縮復元率:10〜55%、吸放湿性パラメーター△MR:3%以上であることを特徴とするポリアミド56捲縮糸によって達成されるものである。
本発明の捲縮糸は、ポリアミド56からなり、好ましくは非石油系由来のモノマーを用いて合成されたポリアミド56からなる。すなわち、炭酸ガス排出量の少ない環境配慮型の素材である。また、柔軟性、伸縮性、吸放湿性に優れ、かつ耐熱性にも優れた捲縮糸であることから、主として衣料用途に好適に用いることができる。さらには強度や耐摩耗性にも優れることから、産業資材用途にも利用可能な捲縮糸および繊維構造体を提供することができる。
本発明で好ましく用いられる紡糸装置の概略図である。 本発明で好ましく用いられる仮撚加工機の概略図である。
本発明の捲縮糸は、繰り返し単位の90モル%以上がペンタメチレンアジパミド単位で構成されたポリアミド56を含有することが必要である。ここで、ペンタメチレンアジパミド単位とは、1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸とから構成される構造単位である。本発明の効果を損なわない範囲において、10モル%未満の他の共重合成分を含んでもよいが、ペンタメチレンアジパミド単位が高いほど分子鎖の規則性が高まり、製糸工程で配向結晶化し易くなるため、強度や耐摩耗性、耐熱性、伸縮性に優れた捲縮糸となるので好ましい。
また、本発明の捲縮糸からなる繊維構造体は、ヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)と比較して繰り返し単位の分子量が低い、すなわちポリマー単位重量あたりのアミド結合の数が多いことから、汎用的に使われるコーティング剤との馴染みが極めてよい。そのためバインダーとして用いるコーティング剤の厚みを薄くすることが可能になり、コーティング系でよく指摘される粗硬感のある風合いになりにくいという利点がある。よって、ペンタメチレンアジパミド単位は高い方が好ましく、95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがさらに好ましく、99モル%以上であることより好ましい。
本発明の捲縮糸は、分子量の指標である硫酸相対粘度が2.0〜3.5であることが必要である。分子量を示す硫酸相対粘度は、2.0以上にすることで紡糸時の分子配向性が良好になり、汎用的な衣料素材に適用可能な強度や耐摩耗性を示す。さらには、紡糸速度を4000m/分以上の高速紡糸とすることによって、延伸操作を行わずとも配向結晶化が格段に進み、後の仮撚加工工程での糸切れや毛羽の発生が少ない、操業性に優れたフィラメントを得ることができるのである。また硫酸相対粘度を3.5以下にすることによって、紡糸速度7000m/分を越える高速での安定操業が可能になり、強度や糸長さ方向の太さ斑、分子配向斑の極めて小さいフィラメントを得ることができる。また、硫酸相対粘度が高い程、強度や耐摩耗性に優れる傾向にあるが、紡糸操業性や糸の均質性、染色性を考慮すると、硫酸相対粘度は2.4〜3.1が好ましく、2.6〜2.9がさらに好ましい。
さらに、本発明の捲縮糸は分子量分布が狭いことが極めて重要である。分子量分布は簡易的には重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比である分散度(Mw/Mn)によって表すことができる。この値が小さいほど、分子量分布が狭いことを指す。この分子量分布は重合時に使用するモノマーの純度、特定の不純物の有無、重合時の仕込量、重合温度や時間等、厳密な重合を行うことで達成することが可能になる。重合方法の詳細については後述する。また、紡糸工程においても分子量分布は拡大する方向に変動することから、紡糸条件の適正化も必要となる。
本発明の捲縮糸は、分散度(Mw/Mn)が1.5〜3であることが必要である。分散度(Mw/Mn)は低い方が強度に優れ、かつ糸長手方向の線経斑が小さく繊維内部構造(結晶、非晶の量や配向の程度)の斑が小さくなり、極めて均質性の高い捲縮糸となる。このような均質性の高い繊維が得られる理由として、分散度が小さい、すなわち分子鎖長の分布を小さくすることで、それぞれの分子鎖における相互作用を及ぼしあう分子鎖の本数や相互作用力(物理的絡み合い力、水素結合力、ファンデルワールス力など)の斑が小さくなり、製糸工程においてそれぞれの分子鎖に均等に張力が掛かるため、非晶相の分子鎖が均一に配向されて結晶生成も安定するためと考えられる。特にポリアミド56は比較的非晶相がルーズになりやすく、かつアミド結合の単位重量当たりの数が多いために吸湿して水の影響を受けやすいため、製糸工程で均一に分子鎖を配向させることが難しい。そのため分散度の低い分子量分布であることが、捲縮糸の品質向上に極めて重要なパラメーターとなる。Mw/Mnは2.7以下が好ましく、2.4以下がさらに好ましい。より好ましくは2.2以下である。また、我々の検討では1.5が製造上の限界に近いレベルである。
本発明の捲縮糸は5%伸長応力が0.2〜1.0cN/dexであることが必要である。5%伸長応力は繊維の曲げ剛性と相関関係にあり、この値が小さいほど繊維が容易に曲がることを示す。すなわち、柔軟性に優れた布帛になる。また、該伸長応力が低いことにより、製品製造工程および製品における毛羽の発生が抑制され、極めて耐久性に優れた製品となる。5%伸長応力が1.0cN/dtex以下で柔軟で曲げ回復性、耐久性に優れた布帛を得ることができ、0.8cN/dtex以下が好ましく、0.5cN/dtex以下がより好ましい。該伸長応力は、0.2cN/dtex近傍が製造上の限界に近いレベルである。
また、本発明の捲縮糸は沸騰水収縮率が1〜15%であることが必要である。沸騰水収縮率は布帛設計において極めて重要なパラメーターであり、この値を15%以下にすることで、柔軟で表面平滑性に優れた布帛を得ることが容易になる。また、該収縮率が低いと染色工程において捲縮糸が沸水処理を受けても非晶相の構造変化が起こりにくく、染液が均一に繊維中に吸尽されて均染性が高まるため好ましい。より好ましくは1〜12%、さらに好ましくは1〜10%、特に好ましくは1〜8%である。
本発明の捲縮糸は、後述する測定方法に基づく伸縮復元率(CR)が10〜55%であることが必要である。CRが10%以上の捲縮糸にすることで、繊維構造体にしたときに伸縮性や嵩高性、柔軟性、保温性の高い製品にすることができる。一方、CRが55%を越えると、繊維構造体にしたときに布帛にふかつき感が出て表面品位が低下する傾向にある。したがって、高品位の布帛表面としつつ、加工糸としての伸縮性や嵩高性を付与するためには、CRは15〜50%が好ましく、20〜45%がより好ましい。
また、衣服内においては体外表面から放出される汗等により、外気よりも湿度が高くなる傾向にある。衣服内はある一定の温湿度に保たれる、すなわちエアコンディショニング機能を与えることで高い快適性を示す。近年においては吸湿性の高い素材や表面平滑性の高い素材、ストレッチ性に優れた素材を複数組み合わせることで快適性素材を提供する傾向にあるが、こういった複合素材は製造が複雑でコストアップに繋がるばかりか、多素材化による多くの欠点も抱え込むことになる。それに対し、本素材は単一素材で複数の機能を付与することが可能になる。すなわち、エアコンディショニング機能の1指標である吸放湿性パラメーター△MRが3%以上と綿並の高い吸放湿性を示すとともに、従来のナイロン糸以上の伸縮性と柔軟性、高い耐久性を具備するものである。該吸放湿パラメーター△MRは非晶部の分子構造を制御することによってもある程度コントロール可能であり、本発明においては△MRは3.5%以上が好ましく、4.0%以上がより好ましい。
また、本発明の捲縮糸は後述する10%伸長回復率が80%以上であることが好ましい。伸長回復率は、捲縮糸の捲縮がほぼ伸びきる様に0.18cN/dtexの荷重をかけた状態で糸を固定(原長)し、この状態から10%伸長・回復させたときの回復率を示すものであり、この値が高いほど捲縮がへたりにくく、捲縮の堅牢度が高い糸であるといえる。10%伸長回復率は82%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の捲縮糸はアミノ末端基濃度が25〜80eq/tonであることが好ましい。アミノ末端基濃度が25eq/ton以上であれば染色時に良好な染着性を示し、80eq/ton以下で良好な溶融耐熱性、及び製品で黄変しにくいといった特性を有する。特にポリアミド56は吸湿性が高く水の影響を受けやすい事から、アミノ末端基濃度は汎用のポリアミド6やポリアミド66よりもシビアに管理する必要がある。より好ましいアミノ末端基濃度は30〜70eq/ton、さらに好ましくは35〜60eq/tonである。染着性が良好になるのは、ペンタメチレンアジパミド単位が染料とアミノ末端基との結合を促進し易い分子構造単位であるためと考えられる。すなわち、ペンタメチレンアジパミド単位は、ポリアミド66等に含まれるヘキサメチレンアジパミド単位よりも繰り返し単位の分子量が小さく、親水性が高いアミド結合を単位重量当たりに多く含む構造単位であるため、捲縮糸がマクロに染液を吸尽および/または担持し易くなり、染料とアミノ末端基との結合が促進されるものである。さらにミクロな分子構造の視点で見た場合、ペンタメチレンアジパミド単位と、ヘキサメチレンアジパミド単位では前者の方がジアミンの炭素数が少ない。よって、ペンタメチレンアジパミド単位がアミノ末端を構成する場合、アミノ末端基とアミド結合はより近い位置関係となり、染色液がアミノ末端基に運搬され易く、染料とアミノ末端基の反応効率が高まるものと推定される。
以上のように、ポリアミド56捲縮糸の染色特性はアミノ末端基の濃度だけでなく、分子鎖の繰り返し単位の親水性や規則性、捲縮糸内部の分子鎖の結晶、非晶構造など、高分子の一次構造から高次構造までの様々な構造単位に影響を受けるものであり、捲縮糸がペンタメチレンアジパミド単位を多く含み、かつアミノ末端基濃度や後述するカルボキシル末端基濃度とのバランス、配向結晶化構造の制御により相乗効果的に発現するものである。アミノ末端基濃度とカルボキシル末端基濃度は、以下の関係を満たすことで繊維の耐熱性が向上するとともに、良好な染着性と染色堅牢度を示すため好ましい。
0.5≦[NH]/[COOH]≦2.0
[NH]:捲縮糸のアミノ末端基濃度(eq/ton)
[COOH]:捲縮糸のカルボキシル末端基濃度(eq/ton)
より好ましいアミノ末端基濃度とカルボキシル末端基濃度のバランス([NH]/[COOH])は、0.7〜1.6、さらに好ましくは0.9〜1.2である。最も好ましいのは0.95〜1.05である。アミノ末端基とカルボキシル末端基は分子運動性の高い部位であると考えられ、末端基の分子運動は非晶相に存在する分子鎖骨格の運動性に影響を与える。そしてポリアミド56の場合、ジアミン単位とジカルボン酸単位の炭素数が異なる特徴から、各末端基の運動性が異なるものと考えられる。アミド結合は隣接する分子鎖との水素結合を形成して拘束され、運動性が低下し易く、アミド結合からの炭素数が多いほど、運動の自由度が高い末端基といえる。よって、ポリアミド56の場合、カルボキシル末端基の方がアミノ末端基よりも運動性が高いものと考えられる。染色堅牢度に優れる捲縮糸とするためには、非晶相の分子運動が適度に拘束されていることが重要であり、そのため両末端基の濃度を特定の範囲にすることが好ましい。
本発明の捲縮糸は、主に衣料用をターゲットとしており、総繊度が10〜550dtexであることが好ましい。総繊度が550dtex以下であることにより、厚地織物でも柔軟性の高い織物となる。また一方で、総繊度が10dtex以上であることで極薄地であっても実用耐久性のある織物が得られる。より好ましくは20〜440dtex、さらに好ましくは30〜330dtexである。
また、本発明の捲縮糸は単繊維繊度が0.01〜5dtexであることが好ましい。単繊維繊度が5dtex以下であることで、単繊維の曲げ剛性が下がるため捲縮糸としても曲げ剛性を低減せしめ、織物の柔軟性が高まるため好ましい。また単繊維繊度が低いほど繊維の比表面積が大きくなるため、織組織を構成する捲縮糸同士の拘束力が高まり、外力(引張力、摩擦力、衝撃力など)によって目ズレしにくい織物となる。一方で、単繊維繊度が太いほど伸縮性に優れることから、単繊維繊度は布帛の柔軟性と伸縮性のバランスから、より好ましくは0.1〜4dtex、さらに好ましくは0.5〜3dtexである。なお、本発明の捲縮糸のフィラメント数は、上記の総繊度、単繊維繊度となる範囲で目的、用途に応じて選択すればよいが、3〜2000の範囲であることが好ましい。
また、本発明の捲縮糸は強度が4cN/dtexであることが好ましい。強度が4cN/dtex以上であれば実用上問題のない織編物にすることが可能になる。より好ましい強度は5cN/dtex以上、さらに好ましくは6cN/dtex以上である。強度は高いほど好ましいが、極限的に高倍率で延伸しても12cN/dtexが限界である。また、織物の耐久性、特に製品使用時の毛羽の発生は、残留伸度が高い方が抑制できるため、好ましい残留伸度は20〜70%であり、より好ましい残留伸度は30〜60%、さらに好ましい残留伸度は40〜50%である。
本発明の捲縮糸は耐熱性の指標となる融点が高いことが好ましい。融点は240℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。また繊維の溶融に要する熱量の指標である融解熱量も高いことが好ましく、50J/g以上であることが好ましく、60J/g以上であることがより好ましい。融点および融解熱量が高いことで、例えば高温に晒される作業現場においても優れた耐熱性を示し、溶融、穿孔を抑制することができる。なお、前記の融点とは、後述するDSCでの結晶融解のピーク温度を指す。
本発明の捲縮糸は糸斑が小さいほど、製経工程、製織工程での経糸張力、緯糸張力の変動を抑えることができ、最終製品としても染め斑の無い高品位な製品に仕上げることができる。このため糸斑の指標であるU%(Normalモード)は0.1〜3%が好ましく、0,1〜2%がより好ましく、0.1〜1%が特に好ましい。
本発明の捲縮糸は必要に応じて交絡処理が施されてもよく、CF値(Coherence Factor)は3〜200の範囲で選択できる。
本発明の捲縮糸は単繊維の横断面形状が、丸型、Y型、多葉型、多角形型、扁平型、中空型、田型などの多種多様の断面形状を取ることができるが、より強度が高く、通気度の低い織物が安定して得られる点で、丸型または扁平型が好ましく、丸型が最も好ましい。またそれぞれの単繊維の断面形状は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
本発明の捲縮糸は長繊維であってもよいし、適度な長さに切断された短繊維であってもよい。本発明の捲縮糸とは、一般的に知られている仮撚加工糸を指し、単繊維の屈曲やスパイラル構造によって嵩高性と伸縮性を有する繊維である。
本発明の捲縮糸は、本発明の目的効果を損なわない範囲で、芯鞘複合糸(単芯、多芯、芯成分部分露出)、バイメタル複合糸などの単繊維内複合糸であったり、他のポリマーとアロイ化したアロイ繊維であったりしてもよいが、より強度が高い捲縮糸となる点で、ポリアミド56単独成分を含有する捲縮糸であることが好ましい。以下に複合、アロイ化することができる他のポリマーを例示する。
例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸など)、ポリアミド(ポリアミド6等のポリアミドmであり繰返単位の炭素数mが4〜12のもの、ポリアミド66等のポリアミドmnであり繰返単位の炭素数mが4〜12、炭素数nが4〜12のものなど)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールなどを挙げることができ、ホモポリマーや共重合ポリマー(下記に共重合成分として例示した成分を含む上記ポリマー)など適宜選択できる。
また、本発明の捲縮糸は他の繊維と混繊、混紡、混撚等を施して使用することもでき、例えば他の繊維としては、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維や、ポリアミド(ポリアミド6等のポリアミドmであり繰返単位の炭素数mが4〜12のもの、ポリアミド66等のポリアミドmnであり繰返単位の炭素数mが4〜12、炭素数nが4〜12のものなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等)、ポリアクリロニトル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのホモポリマーや共重合ポリマー(下記に共重合成分として例示した成分を含む上記ポリマー)を含有する合成繊維が採用できる。
また本発明の捲縮糸は、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、チアゾール系化合物や、フェニルホスホン酸などのリン系化合物、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系化合物、およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物、等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、光沢改善剤(酸化チタン、炭酸カルシウム等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を少量含んでもよい。
また本発明のポリアミド56は、1,5−ペンタメチレンジアミンや、アジピン酸以外に、本発明の目的を損なわない範囲で他の化合物が共重合されたものであってもよく、例えば下記の成分から誘導される構造単位を含んでいてもよい。
例えば脂肪族カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸など)、脂環式ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、など)から誘導される構造単位を含むことができる。
またエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどにから誘導される構造単位を含むことができる。
ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物から誘導される構造単位を含むことができる。
また、1つの化合物に水酸基とカルボン酸とを有するヒドロキシカルボン酸も挙げられ、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族のヒドロキシカルボン酸から誘導される構造単位を含むことができる。
また6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムから誘導される構造単位を含むことができる。
本発明の捲縮糸は、総繊度、単繊維繊度が小さいながら、優れた力学特性、耐熱性、耐摩耗性と嵩高性、柔軟性、伸縮性を有するため、多種多様な繊維構造体として用いることができる。例えば布帛(織物、編物、不織布、パイル布帛など)や、紐状物(ロープ、テープ、組紐など)とすることができ、特に衣料用途に幅広く用いられる。例えば、アウトドアウェア、スポーツウェア、ゴルフウェア、アスレチックウェア、ブルゾン、シャツ、ユニホーム、パンツなどの強度や耐摩耗性が要求される外衣やインナーウェア、カップ、パッド等の内衣、さらにはパンスト、タイツ、靴下等のレッグ用途である。また、掛布団や敷布団、肌掛け布団、こたつ布団、座布団、ベビー布団、毛布等の布団類や枕、クッション等の側地やカバー、マットレスやベッドパッド、病院用、医療用、ホテル用およびベビー用のシーツ、さらには寝袋、揺りかごおよびベビーカー等のカバー等の人肌に触れる寝装資材用途にも好ましく用いることができる。該繊維構造体はポリアミド56捲縮糸以外の繊維を含んでいてもよいが、本発明のポリアミド56捲縮糸の優れた特性を活かすためには、50重量%以上が本発明のポリアミド56捲縮糸を含んでなることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
本発明の捲縮糸は上述の特性に加え、適度な沸収を有し、沸水処理後においては高強度かつ低弾性率であるため、いずれかの段階でフィラメントを熱収縮させることで、高密度でありながら柔軟性に富んだ繊維構造体とすることができる。かかる特徴を活かし、例えば本発明の捲縮糸を製経、製織して織物とした後、精錬やファイナルセットなどの熱処理によって熱収縮させることで、柔軟性、嵩高性、伸縮性、力学特性、耐熱性、耐久性に優れた高密度織物を得ることができる。
本発明の捲縮糸は、その製造工程において第1にモノマー合成工程、第2に重合工程、第3に製糸工程(紡糸工程、延伸工程)、第4に捲縮加工工程に分類され、それぞれの工程で特定の製造方法を採用することが好ましい。本発明の捲縮糸の構成要件であるアミノ末端基濃度25〜80eq/tonを達成するには、特に重合工程での製造方法が重要である。以下にモノマー合成工程から順に、好ましい態様について説明する。
ここで、モノマー合成工程において、1,5−ペンタメチレンジアミンは、グルコースやリジンなどのバイオマス由来の化合物から、酵素反応や、酵母反応、発酵反応などによって合成されることが好ましい。上記の方法によれば、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンやピペリジンといった化合物の含有量が少なく、高純度の1,5−ペンタメチレンジアミンを調整できるため、溶融貯留安定性の高いポリアミド56樹脂となるため、溶融紡糸工程での分子量低下が抑制され、Mw/Mnの変化が小さいため好ましい。また、バイオマス由来の材料であるから、環境適応性にも優れるというメリットもある。具体的には、特開2002−223771号公報、特開2004−000114号公報、特開2004−208646号公報、特開2004−290091号公報や、特開2004−298034号公報、特開2002−223770号公報、特開2004−222569号公報、等に開示された1,5−ペンタメチレンジアミン、あるいは1,5−ペンタンジアミン・塩酸塩、1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を用いて重合されたポリアミド56であることが好ましく、より純度の高い原料を得やすいことから、1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩を用いて重合されることが好ましい。また、アジピン酸や他のジアミン成分、ジカルボン酸成分については従来公知の方法で製造されたものを用いればよい。
なお、本発明の捲縮糸及びそれを含有する繊維構造体がバイオマス由来の化合物から合成されたものか否かを判定する方法として、C14(放射性炭素)年代測定の原理に基づいたASTM D6866がある。具体的には、試料(ポリマー)を乾燥して水分を除去した後、秤量し、該試料を燃焼させて発生したCOを化学操作を経て吸着剤に吸着させ、液体シンチレーションカウンターにて測定する方法、燃焼させて発生したCOをカーボングラファイトにした後、加速器質量分析計で測定する方法、燃焼させて発生したCOからベンゼンを合成し、液体シンチレーションカウンターにて測定する方法、等によって試料中のバイオマス比率の濃度を特定することができる。
次に本発明の捲縮糸に用いられるポリアミド56樹脂の重合方法について説明する。ポリアミドの重合方法としては、加熱重合法や界面重合法が知られているが、加熱重合法によって製造することが好ましい。界面重合法等の方法では工程が複雑となり、工業的な製造プロセスを実現することは極めて困難である。本発明の加熱重合法とは、原料となるジアミンとアジピン酸とを含む水溶液を加熱して脱水縮合せしめることで、ポリアミド56樹脂を得る重合方法である。
そして本発明の加熱重合法の好ましい例として、原料調整工程(原料を含む水溶液を調整して重合缶内に投入する)、濃縮工程(重合系内を微加圧状態に維持しながら加熱し、水溶液中の水を揮発させて原料を濃縮する)、昇圧工程(重合系内を密閉系とし、原料を含む水溶液を加熱して水蒸気を発生させることで、制圧工程での所望圧力へ昇圧する)と、制圧工程(重合系内を一定の加圧状態に維持しながら加熱し、プレポリマーを生成させる)と、放圧工程(放圧して常圧に戻す、重合系内の温度をプレポリマーの融点以上に上昇させる)と、減圧工程(生成ポリマーの融点以上に加熱し、減圧下に保持して重縮合を進行させる)と、吐出工程(不活性ガスを重合缶内に注入して生成ポリマーを吐出させる)を含む。
本発明者らが検討を進めた結果、従来公知の加熱重合法ではアミノ末端基濃度の高いポリアミド56樹脂を得ることは難しいことがわかった。この原因の一つとして、ポリアミド56樹脂の原料である1,5−ペンタメチレンジアミン(沸点:180℃)が、従来のポリアミド66の原料である1,6−ヘキサメチレンジアミン(沸点200℃)と比べて沸点が低く、加熱重合の温度で揮発し易いため、これにより重合後期において重合缶内のアミノ末端基とカルボキシル末端基のモルバランスが崩れ易く、アミノ末端基の高いポリアミド56樹脂を得るのが難しい。
そこで重合開始時にアジピン酸に対して、1,5−ペンタメチレンジアミンを過剰に仕込んで加熱重合で揮発する1,5−ペンタメチレンジアミンを補うことや、加熱重合の到達温度、重合時間等を特定の範囲として、加熱重合における1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発を抑えることを検討したが、これらの処方のみではアミノ末端基濃度を調整する事は困難であることがわかった。
そこで1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発を抑制する方法について鋭意検討した結果、揮発の原因は1,5−ペンタメチレンジアミンが低沸点である他、1,5−ペンタメチレンジアミンの親水性が高いため、水の蒸発とともに1,5−ペンタメチレンジアミンも揮発しやすいことがわかった。そのため、重合反応が殆ど進行していない重合初期段階から水溶液を高温にすると、水の蒸発と共に1,5−ペンタメチレンジアミンが揮発しやすくなることがわかった。具体的には、重合初期段階から液温が150℃を超える状態になると、1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発が促進する傾向にある。
そこで、原料調整工程における水溶液の濃度を55〜85重量%に調整し、濃縮工程における水溶液の温度を100〜150℃とし、水溶液の濃度を80〜95重量%まで濃縮した後、昇圧工程に移行させ、ポリアミド56樹脂を製造することで、重合工程における1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発を抑えることが可能となり、アミノ末端基濃度を制御することが可能となった。
原料調整工程における水溶液の濃度を55重量%以上にすることで、後の濃縮工程で蒸発する水が少なくなり、1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発量を低減できるため好ましい。ここで水溶液の濃度とは、原料モノマーの総重量を水溶液の重量で除して100倍した値である。一方で85重量%以下にすることで、水溶液が流れる配管の温度を適度な範囲に抑えることができ、配管の耐熱性、エネルギー消費の観点から好ましい。より好ましい水溶液の濃度は60〜82重量%、さらに好ましくは65〜80重量%である。
なお、ポリアミド66の原料である1,6−ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなる塩は、水への溶解度があまり高くないため、高濃度にすると塩が再結晶化して析出することが知られている。そのため、水溶液中の塩の濃度は50重量%程度に調整する必要があった。さらには、50重量%以下であっても水溶液の温度が低いと再結晶化し易いため、配管ラインを積極性に加熱・保温するなどの対策が必要であった。このため原料調整工程において塩の水溶液濃度を高めることは技術的に困難である。それに対し、ポリアミド56の原料である1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸との塩は、水に対する溶解度が極めて高い塩であるため、ポリアミド66樹脂の原料である1,6−ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の50重量%水溶液は、液温が40℃を下ると再結晶化が開始するのに対し、1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩の50重量%水溶液は、液温5℃でも再結晶化は起こらず、均一な溶解状態が保たれることがわかった。そのため、予め高濃度な原料水溶液を調整することができ、1,5−ペンタメチレンジアミンを殆ど揮発させずに高濃度化できることを見出したのである。
次に、原料調整工程での水溶液温度が10〜50℃の範囲であると、1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸との塩の水への溶解度が高まり、かつ配管ラインの保温に要するエネルギー消費量が抑えられるため好ましい。より好ましくは20〜40℃である。

本発明の好ましい加熱重合法は、原料調整工程後に水溶液を濃縮する工程(濃縮工程)を経るが、該濃縮工程において水溶液の濃度を80〜95重量%に濃縮してから、昇圧工程へ供することが肝要である。水溶液の濃度を80重量%以上とすることで、重合工程における1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発量が抑えられるため好ましい。一方で水溶液の濃度が95重量%以下にすることで、制圧工程においてプレポリマーが生成され易くなるため好ましい。よって、濃縮工程終了時の水溶液の濃度は83〜93重量%であることがより好ましく、85〜90重量%であることがさらに好ましい。このとき水溶液の温度を150℃以下に保つことが好ましく、該温度範囲で濃縮することで、1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発を抑えながら、水を積極的に蒸発させることが可能となる。より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは100〜120℃である。また同様の理由により、重合缶内の圧力(ゲージ圧)を0.05〜0.5MPaに保持するように重合缶のバルブを調整することが好ましく、0.1〜0.4MPaに保つことがより好ましい。濃縮時間は水溶液の濃度が上記範囲になるように適宜選択すればよいが、概ね0.5〜時間であることが好ましい。
上述した好ましい加熱重合方法においては、重合缶に仕込む塩の水溶液濃度が高いため、揮発する水の絶対量が少なく、かつ濃縮工程において比較的低温、かつ微加圧で水溶液を濃縮しているため、重合工程で揮発する1,5−ペンタメチレンジアミンの量を大幅に低減することができる。これにより得られるポリアミド56樹脂中のアミノ末端基濃度、ならびにアミノ末端基とカルボキシル末端基の濃度比を制御することが可能となる。上記の要件を満たす加熱重合法において、原料調整工程で水溶液中に存在する1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸とのモル比は0.95〜1.05の範囲で調整せしめることが好ましく、さらに制圧工程、放圧工程、減圧工程における缶内の温度、圧力、処理時間を調整することでもポリマー中のアミノ末端基濃度を制御することができる。また、必要に応じて他のアミン化合物やカルボン酸化合物を末端封鎖剤として用いる方法や、共重合成分として末端基を調整する方法も採用できる。そして加熱重合が完了するまでのいずれかの段階で酸化防止剤や耐熱安定剤を添加することで、重合缶内での重合反応が進行し易くなり、アミノ末端基とカルボキシル末端基の濃度バランスがとれた耐熱性に優れるポリアミド56樹脂が得られる。
重合工程における上記以外の工程については、例えば特開2003−292612号公報、特開2004−075932号公報等に記載の公知の方法を採用することができるが、より具体的に好ましい製造方法を以下に説明する。
昇圧工程では重合系内を密閉系とし、水溶液を加熱して水蒸気を発生させ、後工程の制圧工程で所望圧力へ昇圧することが好ましい。昇圧に要する時間は0.1〜2時間の範囲が好ましい。これにより重合缶内の温度を均一に高められ、1,5−ペンタメチレンジアミンの環化反応も抑制でき好ましい。
制圧工程では重合系内を加熱して加圧状態を維持しながらプレポリマーを生成させることが好ましい。このときの缶内圧力(ゲージ圧)は1〜2MPaとすることで、1,5−ペンタメチレンジアミンの揮発が抑えられると共に、プレポリマーが形成され易くなるため好ましい。缶内圧力は外界と繋がるバルブの開閉度合いを調整する等の手法によって調整すればよい。また缶内温度は180〜280℃とすることが好ましく、200〜270℃とすることがより好ましい。
放圧工程では重合缶内を常圧に戻し、缶内温度をプレポリマーの融点以上にすることが好ましい。放圧に要する時間は0.1〜3時間の範囲に調整し、未反応で残存する1,5−ペンタメチレンジジアミンが揮発し難くすることが好ましい。より好ましくは0.2〜2時間であり、さらに好ましくは0.3〜1時間である。そして前記時間で重合缶内の温度をプレポリマーの融点以上まで上昇させることが好ましく、具体的には220〜270℃とすることが好ましい。より好ましくは230〜260℃である。
減圧工程では、重合缶内の温度を生成ポリマーの融点以上に加熱することで重縮合が進行する。一方で適度な温度に抑制することでポリマーの熱分解が抑えられるため、重合缶内の温度は240〜300℃とすることが好ましい。
また、重合缶内の圧力を低くすることで重縮合で発生した水を系外へ除去でき、反応を進行させ易くなることから、重合缶内の圧力(ゲージ圧)は−5〜−50kPaの範囲で調整することが好ましい。
吐出工程においては、窒素等の不活性ガスを重合缶内に注入して重合缶内の圧力(ゲージ圧)を0.1〜2MPaに加圧し、ポリマーを吐出させればよい。吐出されたポリマーを水冷し、カットすることでペレット状のポリアミド56樹脂を得ることができる。
得られたポリアミド56樹脂は必要に応じて固相重合を施すことも可能であるが、加熱重合法のみで所望の重合度にする方がコスト、品質面で好ましい。固相重合する場合はペレット化されたポリアミド56樹脂を真空下、または窒素雰囲気下にて130〜220℃の温度範囲で1〜48時間処理することで、目標とする重合度の樹脂ペレットとすることができる。
次に、本発明の紡糸および捲縮加工方法について説明する。
上記の如く加熱重合法によって製造したポリアミド56樹脂を用い、特定の紡糸方法で高配向未延伸糸を得、次に捲縮加工を施すことで本発明の捲縮糸を得ることができる。前述したように、ポリアミド56樹脂はその分子構造から、多くのアミノ末端基を含んでも溶融紡糸でゲル化が生じにくく、良好な紡糸性を示す。ポリアミド56がポリアミド66よりも溶融耐熱性が高い、すなわち溶融時にゲル化しにくい理由は、アミノ末端基が結合するメチレン鎖の炭素数が短いことが原因と考えられる。つまりポリアミド66においてはアミノ末端基が炭素数6のメチレン鎖に結合しているため、アミノ末端碁近傍の分子鎖が還化し易く、熱分解により還化物が遊離してゲル化を誘発するのに対し、ポリアミド56はメチレン鎖の炭素数が5であるため、立体障害によって還化しにくいと推定している。
ポリアミド56樹脂は、未乾燥の状態では水分を多く含むために加水分解しやすく、そのままでは溶融紡糸に供することができない。そこで、何らかの熱媒、若しくは真空下で加熱乾燥を行い、水分率を100〜1500ppm程度まで下げる必要がある。ポリアミド56は空気下で乾燥を行うと黄身を帯びやすいので、好ましくは窒素、若しくは真空下またはその組み合わせにて乾燥を行う事が好ましい。乾燥温度は前記水分率になるように適宜変更すればよい。乾燥後の水分率は200〜1300ppmが好ましく、300〜1100ppmにすることがより好ましい。ここで水分率とは、カールフィッシャー電量滴定法水分計を用い、180℃にて測定した値である。
次に、乾燥したペレットを紡糸工程にて繊維化する。繊維化に供するポリアミド56は前記した方法にて製造した硫酸相対粘度が2.0〜3.5、Mw/Mnが1.5〜3.0のポリアミド56を用いる。該ポリアミド56を、例えば図1に示す紡糸装置(概略図)にて繊維化する。まず、ホッパー1に投入されたポリアミド56ペレットをエクストルーダー2で溶融して押し出し紡糸ブロック4内に内蔵されたギヤポンプブロック3に溶融ポリマーを移送する。さらに紡糸ブロック4に内蔵された紡糸パック5に送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金6から吐出して糸条8を得る。紡出された糸条8は冷却チムニー7によって一旦冷却・固化された後、給油装置9で油剤を付与され、交絡ノズル10で適度に交絡を与えられた後、ゴデットロール11及び12で引き取られ、巻取機13で巻き取られ、繊維パッケージ14を得る。なお、繊維から昇華した低融点物を取り除くため、口金直下に吸引装置を設けてもよい。溶融紡糸を行うに際しての紡糸温度は、口金での吐出を安定させ、曳糸性を高めるためにポリアミド56の融点よりも20〜60℃高い温度で行うことが好ましく、25〜55℃高い温度で行うことがより好ましい。また、紡糸でのモノマー、オリゴマー析出を抑制し、紡糸性を向上させるために、必要に応じて口金下に2〜20cmの加熱筒やポリマ酸化劣化あるいは口金孔汚れ防止用の空気、スチーム、窒素などの不活性ガス発生装置を設置してもよい。
紡糸油剤はストレートで糸条に付着させてもよいが、より均一に付着させるために水に1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%分散させて水エマルジョン油剤として繊維に付着させる。また、このときの糸条温度はポリアミド56のガラス転移点よりも低い温度であることが肝要である。この範囲内で紡糸油剤を付着させることで、給油装置との擦過抵抗を抑制できるため、曳糸性が飛躍的に向上する。紡糸油剤を付着させる位置での好ましい糸条温度は5〜40℃である。また、紡糸油剤は2段若しくは3段階で付着させてもよい。例えば、口金直下0.5〜2mの位置で一旦糸条を収束させるために濃度1〜20重量%の比較的低濃度の水エマルジョン油剤を付着させた後、交絡処理を行い、巻き取る前の任意の位置で濃度10〜50重量%の比較的中・高濃度の水エマルジョン油剤を付着させるのも好ましい。紡糸油剤には、後工程の捲縮付与(仮撚加工)での仮撚ヒーター汚れの防止や、施撚体との滑り防止(糸掛け性、仮撚ヒーター上での撚数向上)、マルチフィラメント内での繊維マイグレーションを向上させることが重要である。そのためには耐熱性が良好であり、繊維−施撚体間摩擦係数が高く、かつ繊維−繊維間摩擦係数が低い平滑剤を含有した油剤を用いることが好ましい。例えば、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有するアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを共重合した化合物およびそれらから誘導された化合物が好ましく用いられる。
アルコールとしては、炭素数1〜30の天然および合成の任意の一価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソアミルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、二価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコールなど)および三価以上のアルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールなど)が挙げられる。
炭素数2〜4のアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、1,2−プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−ブチレンオキサイド(以下BOと略記)、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)などが挙げられる。EOと他のアルキレンオキサイドとを共重合する場合、EOの比率は50〜80重量%であることが必要である。EO比率が50重量%未満では粘度が高くなりすぎ、80重量%を越えると耐熱性が乏しくなる。また、付加様式はランダム付加、ブロック付加のいずれでもよい。前記平滑剤の平均分子量は、平滑性および耐熱性の点で500〜20,000の範囲が好ましく、1,000〜10,000の範囲がより好ましい。これら平滑剤の含有量は、油剤全体に対し55重量%以上に調整し、その他の成分としてイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、糊特性向上剤、制電剤、pH低下防止剤、耐水剤を適宜添加すればよい。また、紡糸油剤は繊維全体に対して純油分(水を除く)として0.2〜2.0重量%付着されていることが好ましい。油剤の付着量を0.2重量%にすることで、上記特性が効果的に発揮される。一方、油剤の付着量が2.0重量%を越えると仮撚ヒーターやロール、施撚体の汚れがひどくなる。より好ましくは0.3〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.4〜1.0重量%である。
交絡ノズル10は図1に示すように紡糸線上に設置してもよいし、ゴデットロール間または巻取機前に設置してもよい。交絡度(CF値)を高くしたい場合は糸条張力の低いゴデットロール間や巻取機前に設置することが好ましく、CF値を低くしたい場合は紡糸線上に設置することが好ましい。
また、ゴデットロール11及び12の引取速度は、後工程である捲縮加工性の向上および繊維の力学特性、染色品位の向上のためにマルチフィラメントの伸度が25〜99%になるように設定することが肝要であり、そのためにはゴデットロール11の速度(紡糸速度に相当)が3000〜7000m/分であることが好ましい。より好ましくは3500〜6000m/分、さらに好ましくは4000〜5500m/分である。
また、本発明のポリアミド56繊維は極めて吸湿性が高く、紡糸工程においても吸湿に伴う配向結晶化が生じる。すなわち、紡糸線上で細化が完了してからも逐次結晶化が生じて寸法が変化する。そのため、繊維の構造を安定化させるためにはゴデットロール11とゴデットロール12の間で0.1〜20%ストレッチする、すなわちゴデットロール12の速度をゴデットロール11の速度よりも0.1〜20%速く設定して分子配向を高めることが好ましい。該ストレッチ率はより好ましくは0.5〜15%、さらに好ましくは2〜10%である。
また、本発明のポリアミド56繊維は、パッケージに巻かれた後、繊維内部歪が緩和(収縮)するためサドル(耳立ち)が発生しやすい。これはポリアミド56の分子構造に由来するものと考えられる。ポリアミド56繊維の結晶構造はまだ明確になっていないものの、前記したとおり、紡糸線上、およびパッケージング後に吸湿して配向結晶化が生じる。そのため、紡糸後、容易に緩和収縮してサドルを形成するのである。
サドルを解消するためには、溶融紡糸し、巻き取るまでの間に繊維内部歪みを取り除く必要があるが、その方法としては弛緩状態で巻き取ることが有効である。弛緩状態、すなわちゴデットロール12よりも巻取速度を遅くして巻き取る。そのときの巻取張力(最終ゴデットロール12と巻取機13との間の張力)は、ゴデットロール12での逆巻きを防止するため、0.05cN/dtex以上にすることが好ましく、繊維内部構造の歪みを解放するため0.3cN/dtex以下にすることが好ましい。より好ましい巻取張力は0.07〜0.25cN/dtex、さらに好ましくは0.09〜0.2cN/dtexである。
前記のごとくゴデットロール間ではストレッチをかけ、巻取時に弛緩させながら低張力で巻き取ることにより、繊維内部構造の歪みを解放し、遅延収縮量が小さく安定構造の繊維パッケージ14にすることができる。
また、ローラーベイルもしくはドライブロールがパッケージに接触している線長に対する荷重(パッケージに対する圧力に相当。以下、面圧と称する)は、6〜20kg/mの範囲にすることが好ましい。面圧を6kg/m以上にすることで、繊維パッケージに適度な硬度を与え、繊維パッケージ崩れやサドルを抑制することができる。また、面圧を20kg/m以下にすることで、繊維パッケージの潰れや、バルジを抑制することができる。より好ましい範囲は8〜16kg/mである。また、綾角は5〜10°の範囲にすることで、繊維パッケージ端面の糸落ちを抑制しつつ、高速解舒においても安定した解舒張力が得られるとともに、端面部への糸崩れを抑制できる。より好ましくは5.5〜8°であり、さらに好ましくは5.8〜7°である。また、リボンを抑制するために綾角を変化させることが重要である。その手段として、綾角をある範囲(中心値±1.5°以内)で揺動させたり、ワインド比(スピンドル回転数とトラバース周期の比)一定で巻くことが好ましい。また、リボン発生帯領域で急激に綾角を変化させる方法も好ましく用いられ、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。また、ポリアミド56は極めて曲げ剛性が低く、弾性体としての挙動が強いため、トラバース時における折り返しで、糸条を十分に追従させる工夫が必要となる。そのため、高速追従性の高い1軸〜3軸の羽根トラバース方式や、糸把持性の良好なマイクロカムトラバース、フリーレングスを短尺化できるスピンドルトラバースが好ましく用いられる。それぞれの特性を活かし、巻取速度3000〜4000m/分ではマイクロカムトラバース方式を、巻取速度が4000m/分を越える場合は1軸〜3軸の羽根トラバース方式を用いることがより好ましい。
巻取時の駆動方式は、ドライブローラーによる従動駆動が一般的であるが、スピンドル駆動方式や、さらに巻取機のローラーベイルを強制駆動する方法が好ましく用いられる。ローラーベイルを強制駆動する場合のパッケージ表面速度に対するローラーベイル速度は、常に0.05〜1%オーバーフィードする様に制御して弛緩巻取することにより、さらにパッケージフォームを良好にすることができる。
次に、捲縮加工工程を図2(概略図)をもって説明する。まず、チーズ14から糸条15を引き出し、糸道ガイド16〜18を介して供給ローラー19に供給する。その後糸条15は施撚体23により撚りを施されながら第1ヒーター20にて熱処理され、糸道ガイド21を通して冷却板22にて構造固定される。このとき、冷却板22〜施撚体23の間で測定した張力を加撚張力(T1)とし、施撚体23〜延伸ローラー24までの間で測定した張力を解撚張力(T2)とした。構造固定された糸条15は延伸ローラー24を介して第2ヒーター25へと供給され、その後デリベリローラー26を介して糸道ガイド27、28を経て捲縮糸パッケージ29として巻き取られる。なお、本発明においては延伸ローラー24〜デリベリローラー26間の工程が柔軟性に優れるポリアミド56捲縮糸を得るのに極めて重要な意味を持つ。また、図2の装置には必要に応じ各種ガイド、張力制御装置、流体処理装置、給油装置などを配置してもよい。
第1ヒーター20の温度は糸条接触式の場合、150〜230℃の範囲であることが好ましい。第1ヒーターの温度が150℃以上であると、得られる捲縮糸の捲縮を固定することができ、捲縮特性(CR)、収縮特性(SW)共に優れたものが得られる。また、ポリアミド56の融点は最高でも260℃近傍であることから、工程通過性の点から上限温度は230℃となる。よって、良好な工程通過性、力学特性及び捲縮品位から、第1ヒーター20の温度は160〜220℃がより好ましく、170〜210℃が更に好ましい。また、第1ヒーター20が非接触式である場合、擦過抵抗による糸切れを抑制でき、生産性が向上するためより好ましい。非接触ヒーターを用いた場合には、ヒーター温度は非接触ヒーター出口での糸温度が150〜230℃になるように適宜変更すればよい。
また、仮撚加工での供給ローラー19と延伸ローラー24の速度比、すなわち加工倍率は、1.0〜1.7倍であることが好ましい。加工倍率が1.0倍以上であれば、仮撚加工における加撚張力(T1)を高め、第1ヒーター20内での糸条に高い撚数を与えるため、捲縮特性(CR)に優れた捲縮糸となる。また、加工倍率を1.7倍以下にすることで、安定した仮撚加工を施すことが可能となり、毛羽の少ない品位に優れた捲縮糸を得ることができる。加工倍率はより好ましくは1.05〜1.6倍、更に好ましくは1.1〜1.5倍である。
また、本発明の捲縮糸において、高い柔軟性と伸縮特性、吸放湿性を与えるために前記した様に第2ヒーター25を設け、延伸ローラー24とデリベリローラー26の間で弛緩熱処理をすることが好ましい。ポリアミド56繊維は、汎用のポリアミド6やポリアミド66よりも弾性率が低く柔軟性に優れるが、さらに非晶部の構造を制御することで柔軟性と吸湿性を高くすることが可能になる。仮撚加工での非晶部の制御は、加工倍率、第1ヒーター温度、加工張力によってもある程度制御することが可能であるが、効果的には第2ヒーター25での熱処理温度と弛緩率によるものである。第2ヒーター25の温度は120〜200℃であることが好ましい。ヒーター温度を120℃以上にすることで、配向された非晶部の分子運動性を高め、効果的に分子配向の再構築を行うことができる。また、ヒーター温度を200℃以下にすることで、過度な分子運動性を抑制し、繊維の糸長手方向の分子配向斑を抑制することができる。また、第2ヒーター25の温度は第1ヒーター20の温度よりも低いことが好ましい。第2ヒーター25の温度は、より好ましくは140〜190℃、さらに好ましくは150〜180℃である。また、第1ヒーター20の温度よりも10℃以上低いことがより好ましく、20℃以上低いことがさらに好ましい。なお、第2ヒーター25が非接触ヒーターの場合は、ヒーター出口近傍の糸温度が120〜200℃であればよい。また、前記した延伸ローラー24とデリベリローラー26の間の弛緩率は、5〜25%の範囲であれば糸条の走行安定性を保持しつつ良好な捲縮糸とすることが可能であり、8〜20%であることがより好ましい。さらに好ましくは10〜18%である。
また、施撚体23の周速度(D)と、延伸ローラー24の速度(Y)の比(以下、D/Yと記載)は1.1〜2.4の範囲とすることが好ましい。D/Yを1.1以上にすることで加撚張力と解撚張力のバランスがよく、毛羽、糸切れの無い仮撚加工を行うことができる。また、D/Yを2.4以下にすることで施撚体23の表面摩耗が抑制され、長時間に及ぶ連続運転においても糸長手方向の捲縮斑がなく、糸の削れや、毛羽、糸切れのない仮撚加工が可能となる。D/Yはより好ましくは1.15〜2.2であり、さらに好ましくは1.2〜2.0である。
また、施撚体22としてベルトニップ型摩擦仮撚具を好ましく用いることもできる。ベルトの回転方向に水平なベルト回転軸と、糸条が走行する方向に水平な糸条走行軸とのなす角度を2倍した角度(交差角度と呼ぶ)は特に限定されるものではないが、90〜120°の範囲であれば糸条に効率的に撚りを加えることができ、更にはベルトそのものの摩耗も低く抑えることが可能となるため好ましい。さらに、表面材質は特に限定されるものではないが、クロロピレンラバーやニトリルブチレンラバーを好ましく使用することができる。このときニトリルブチレンラバーであれば耐久性やコスト、柔軟性の点からより好ましい。また、ベルトニップ型摩擦仮撚具の表面硬度は60〜80度であればポリアミド56の断面変形を低く抑え、糸条の削れを抑制することができ、ベルト本体の摩耗も改善されるためより好ましく、65〜75度の範囲であればさらに好ましい。
また、捲縮糸の巻取張力は0.02〜0.10cN/dtexになる様に巻き取ることで、巻取糸の遅延回復率を低下させ、巻き締まりによる繊維物性の内外層差を低減できる。さらに、サドルやバルジを抑え、良好な巻き姿の捲縮糸パッケージが得られる。
上記方法にて得られた捲縮糸は、高次工程での工程通過性、例えば織編用に供する場合には繊維と糸道ガイド、編み針等との擦過をできるだけ抑制するため、追油を行うことが好ましい。適用する油剤としては、繊維−金属間摩擦係数の低減効果の高い平滑剤を含有した油剤を用いることが好ましい。例えば脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エーテルエステル、シリコーン、鉱物油等が好ましい。また、これらの平滑剤は単一成分で用いてもよいが、集束性や制電性、耐熱性を考慮して複数の成分を混合して用いるとよい。より好ましい平滑剤としては、脂肪酸エステルや鉱物油が選択できる。脂肪酸エステルは、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオレート、イソプロピルミリステート、オクチルパルミテート、オレイルラウレート、オレイルオレート、イソトリデシルステアレート等の一価のアルコールと一価のカルボン酸のエステル、ジオクチルセバケート、ジオレイルアジペート等の一価のアルコールと多価のカルボン酸のエステル、エチレングリコールジオレート、トリメチロールプロパントリカプリレート、グリセリントリオレート等の多価のアルコールと一価のカルボン酸のエステル、ラウリル(EO)nオクタノエート等のアルキレンオキサイド付加エステル等が挙げられる。これら平滑剤の含有量は、油剤全体に対し50〜95重量%に調整し、その他の成分としてイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、集束剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透剤、表面張力低下剤、転相粘度低下剤、糊特性向上剤、制電剤、pH低下防止剤、耐水剤を適宜添加すればよい。
この様にして得られた捲縮糸は繊維構造体として使用でき、例えば捲縮糸を常法により織編物にし、最終製品として衣料用等に好適に使用することができる。
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.硫酸相対粘度(ηr)
試料(樹脂、繊維)0.25gを濃度98重量%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98重量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
B.Mw/Mn
試料(樹脂、繊維)を90℃の熱水で30分間洗浄した後、90℃で真空乾燥して水分率を1000ppmとし、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、PMMA換算で重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、Mw/Mnを求めた。測定条件は下記の通りである。
・GPC装置:Waters510
・カラム:Shodex GPC HFIP−806Mを2本連結して使用
・溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール
・温度:30℃
・流速:0.5ml/分
・試料濃度:2mg/4ml
・濾過:0.45μm−DISMIC 13HP(東洋濾紙)
・注入量:100μl
・検出器:示差屈折計RI(Waters 410)
・スタンダード:PMMA(濃度:サンプル0.25mg/溶媒1ml)
・ 測定時間:62分B.
C.アミノ末端基濃度
試料(樹脂、繊維)1gを50mLのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=80/20)に、30℃で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し、要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し、要した0.02N塩酸の量を求めた。そしてその差から試料1tonあたりのアミノ末端基量を求めた。
D.カルボキシル末端基濃度
試料(樹脂、繊維)0.5gを196±1℃のベンジルアルコール20mlに溶解し、この溶液を0.02Nの水酸化カリウム・エタノール溶液で中和滴定し、要した0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液の量を求めた。また、上記のベンジルアルコール20mlのみを0.02Nの水酸化カリウム・エタノール溶液で中和滴定し、要した0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液の量を求めた。そしてその差から試料1tonあたりのカルボキシル末端基量を求めた。
E.融点および融解熱量
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7型を用い、試料(樹脂、繊維)10mgを昇温速度16℃/分にて測定して得た示差熱量曲線において、吸熱側に極値を示すピークを融解ピークと判断し、極値を与える温度を融点(℃)とした。なお複数の極値が存在する場合は高温側の極値を融点とした。また融解ピークの面積から求められる熱容量の積算し(複数の融解ピークを有する場合には合算し)、融解熱量とした。
F.繊度
検尺機を用い、0.18cN/dtexの張力をかけながら全長100mのかせを作り、重量を測定して100倍することで総繊度を求めた。単繊維繊度は該繊度を構成フィラメント数で割って求めた。
G.強度、伸度、5%伸長応力
JIS L1013の化学繊維フィラメント糸試験方法(1995)に準じて測定した。なお、つかみ間隔は200mm、引張速度は200mm/分として荷重−伸長曲線を求めた。次に最大点を示す荷重値を繊度で除してそれを強度とし、最大点荷重時の伸びを初期試料長で除して伸度として、強度および伸度を求めた。なお、測定環境は、温度20℃、相対湿度65%で実施した。5%伸長応力は、伸度5%時の強力を繊度で除して求めた。測定は5回行い平均値を取った。
H.沸騰水収縮率
温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に繊維パッケージを24時間以上保管した後、該雰囲気中下にて検尺機を用いてカセを作成して原長L0を測定し、次いで沸騰した水にて無荷重で15分間処理し、該カセを1昼夜風乾後、L1を測定して次式にて求めた。
沸騰水収縮率(%)=[(L0−L1)/L0)]×100(%)
L0:試料をカセ取りし、初荷重0.09cN/dtex下で測定した原長
L1:L0を測定したカセを荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、 1昼夜風乾後、初荷重0.09cN/dtex下でのカセ長
I.伸縮復元率(CR値)
温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中に繊維パッケージを24時間以上保管した後、該雰囲気中下にて検尺機を用いて捲縮糸をカセ取りし、実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、24時間風乾した。このサンプルに0.088cN/dtex相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長L’0を測定した。次に、水中で0.088cN/dtex相当のカセを除き0.0018cN/dtex相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長L’1を測定した。そして下式により伸縮復元率(CR値)を計算した。
CR(%)=[(L’0−L’1)/L’0]×100(%)
J.吸放湿性パラメーター△MR
試料(捲縮糸)を筒編み機で約1g編み立て、該編地を絶乾させた時の重量と、20℃、相対湿度65%あるいは30℃、相対湿度90%の雰囲気下、恒温恒湿器(タバイ製エスペックPL−4SPH)にて24時間処理後の重量との重量変化から、次式で求めた。
吸湿率(%)=[(吸湿後の重量−絶乾時の重量)/絶乾時の重量]×100
上記で測定した20℃、相対湿度65%での吸湿率を「MR1」、30℃、相対湿度90%での吸湿率を「MR2」とし、吸放湿性パラメーターΔMR(%)はMR2からMR1を減じて求めた。ここで、吸放湿パラメーターΔMRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るためのドライビングフォースであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の30℃、相対湿度90%に代表される衣服内温度と、20℃、相対湿度65%に代表される外気温湿度との吸湿率差である。本発明で用いる吸放湿性パラメーターΔMRは、大きければ大きいほど吸湿性が高く、着用時の快適性が良好であることに対応する。
K.10%伸長回復率
試料をオリエンテック(株)社製TENSILON UCT−100を用い、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/分でつかみ間隔の10%まで伸長させ、直ちに同速度で除重し、記録したヒステリシスカーブから伸長回復率を求めた。
伸長回復率(%)=(β/α)×100
α:10%伸長時の伸び
β:応力が初荷重と等しくなった点までの回復伸び
L.U%
糸長手方向の太さ斑U%(Normal)は、(株)ツェルベガーウースター社製UT−4で測定した。測定条件は、糸速度200m/分、ツイスター回転数12000rpmで1分間測定して平均偏差率(U%)を求めた。
M.CF値
JIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)7.13の交絡度に示される条件で測定した。試験回数は50回とし、交絡長の平均値L(mm)から下式よりCF値(Coherence Factor)を求めた。
CF値=1000/L
N.耐光堅牢度
筒編地を作製し、炭酸ナトリウム、1%owf、サンデットCL−80、2%owf、浴比1:40にて80℃×30分精錬を施した。該筒編みを酸性染料0.5%owf、浴比1:30、pH=7にて95℃×40分間染色処理した後、水洗し、50℃で約6時間熱風乾燥して染色布を得た。次いでJIS L0842(2004)の紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法に準じ、耐光堅牢度の試験を行った。10時間照射を3級、20時間照射を4級、40時間照射を5級とし、ブルースケールの退色を基準として、グレースケールによりサンプルの退色を等級判定した。
O.洗濯堅牢度
P項にて作成した染色布を、JIS L0844(A−2)(2004)に記載の方法で処理した後、グレースケールにより洗濯前後の退色の程度を次の基準により等級判定した。
5級:全く退色が認められない。
4級:ほとんど退色しない。
3級:少し退色が認められる。
2級:退色が認められる。
1級:退色がひどい。
P.摩擦堅牢度
P項にて作成した染色布を、JIS L0849(2004)7.1の乾燥試験の測定に準じて摩擦堅牢度を測定した。試験は染色布を切り開いて長さ23cm、幅3cmの試験辺とし、摩擦堅牢度試験機II型(学振形、大栄科学精機株式会社製、型式RT−200)に取り付け、白綿布(かなきん3号)を摩擦子として摩擦子の荷重を1.96Nとし、試験片10cmの間を毎分10回、往復摩擦させる。そして100回往復摩擦を施した後の白綿布の汚染の程度をJIS L0805(2005)に規定の汚染用グレースケールで判定した。
Q.風合い
実施例、比較例で作成した染色布帛を、手のひらで握ったときの触感(柔軟性)、膨らみ感を◎(優れる)、○(良好)、△(従来品と同等)、×(劣る)の4段階で評価した。
[調整例1](リジン脱炭酸酵素の調整)
まずE.coli JM109株の培養を以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前培養を行った。次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法にて行った(参考;左右田健次、味園春雄、生化学実験講座、vol.11上、P.179〜191(1976))。
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。この粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用い、リジンから1,5−ペンタメチレンジアミンの生成を行った。
[調整例2](1,5−ペンタメチレンジアミンの調整)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液を、0.1N塩酸水溶液でpH5.5〜6.5に維持しながら、48℃で36時間反応させ、1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによって1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩を1,5−ペンタメチレンジアミンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(1.33kPa、60℃)することにより、1,5−ペンタメチレンジアミンを得た。
[調整例3](1,5−ペンタメチレンジアミン・アジピン酸塩の60重量%水溶液の調製)
製造例2で製造した1,5−ペンタメチレンジアミン510gを水827g中に溶解した水溶液を、41℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、アジピン酸(カーク製)を約5gずつ、中和点付近では約1gずつ添加していき、アジピン酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH8.32であった。中和点でのアジピン酸添加量は730gであった。pHが8.32になるように1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩の60重量%水溶液(2067g)を調整した。
実施例1
調整例3で得た1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩の60重量%水溶液に、1,5−ペンタメチレンジアミンおよび水を加え、水溶液中に存在する1,5−ペンタメチレンジアミンのモル数と、アジピン酸とのモル数の比を1.004、水溶液中の原料の濃度を60重量%に調整し、予め窒素置換された熱媒加熱式の重合缶に仕込んだ。次いで缶内を窒素パージしながらジャケットを加熱して水溶液を濃縮した。このとき缶内温度を120℃、缶内圧力(ゲージ圧)を0.2MPaに制圧しながら、水溶液中の原料の濃度が89重量%になるまで濃縮した。缶内の水溶液の濃度は留出水量から判断した。引き続き、重合釜を密閉して270℃まで上昇させ、缶内圧力が1.7MPaに到達するまで昇圧した。さらに缶内圧力を1.7MPaで制圧し、缶内温度が250℃となるように調整した。その後、285℃まで上げ、60分間かけて徐々に大気圧まで放圧した。缶内圧力を−12kPaまで減圧し、所定の攪拌動力となったところで重合反応を停止した。最後に重合缶内を窒素で微加圧し、ポリマーを吐出せしめ、吐出ガットを水冷した後にカットしてポリアミド56樹脂のチップを得た。該ポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.76、Mw/Mn:1.74、アミノ末端基濃度:52eq/ton、[NH]/[COOH]:1.08、 融点:254℃であった。
得られたポリアミド56樹脂を回転式の乾燥機にて缶内温度80℃、窒素雰囲気下で2時間乾燥を行い、次いで100℃まで昇温して5時間、真空乾燥を行った。得られたポリアミド56の水分率は約300ppmであった。次に、図1に示す紡糸装置を用い、紡糸温度280℃、冷却風速25m/分(冷却風温度:21℃)、紡糸油剤付着量0.6重量%(10%水エマルジョンとし、繊維に対し6重量%付着)、交絡圧0.3MPa、第1ゴデットロール周速度4400m/分、第2ゴデットロール周速度4500m/分、巻取張力0.18cN/dtexにて巻き取り、96デシテックス、60フィラメントの高配向未延伸糸パッケージを得た。使用した紡糸口金は、孔径0.20mm、孔深度0.80mm(L/D:4)、全面配列60孔、濾層フィルターは10μmカット不織布フィルターである。
該未延伸糸パッケージは繊維巻量6kgで、サドル、バルジ共に無く、強度:4.15cN/dtex、伸度:59%、U%(Normal)が0.3%、CF値5.5であった。さらに該未延伸糸を図2に示す仮撚加工装置を用い、接触式の第1ヒーター温度210℃、接触式の第2ヒーター温度180℃、加工倍率1.28倍(供給ローラー19と延伸ローラー24の間)、DY比1.60、弛緩率10%(延伸ローラー24とデリベリローラー26の間)、加工速度500m/分(延伸ローラー24の周速度)で仮撚加工を行い、84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は表1に示すとおり、硫酸相対粘度ηr:2.78、Mw/Mn:1.76、アミノ末端基濃度:51eq/ton、[NH]/[COOH]:1.04、 融点:254℃、融解熱量78J/g、5%伸長応力0.45cN/dtex、沸騰水収縮率3.8%、伸縮復元率(CR)33%、吸放湿パラメーター△MR4.1%、10%伸長回復率85%であった。該捲縮糸からなる布帛は、従来のポリアミド系繊維からなる布帛よりも柔軟性、伸縮性、吸放湿性に大変優れたものであった。また、染色性(発色性)も従来のポリアミド系繊維と同等であり、耐光堅牢度、摩擦堅牢度も優れたものであった。
比較例1
1,6−ヘキサメチレンジアミンのモル数とアジピン酸のモル数の比が1.004であり、水溶液中の原料の濃度が50重量%である水溶液を重合缶に仕込み、ジャケット温度280℃にて加熱を開始した。重合缶内の圧力(ゲージ圧)を1.47MPaに調整して缶内を270℃まで昇温し、次に缶内圧力を除々に放圧し、更に減圧した後に所定の攪拌動力に到達したところで重合反応を停止した。引き続き吐出したストランドを水冷し、カットしてポリアミド66樹脂を得た。
得られたポリアミド66樹脂を実施例1と同様にして乾燥し、水分率300ppmのポリアミドを得た。該ポリアミド66樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.72、Mw/Mn:1.83、アミノ末端基濃度:54eq/ton、[NH]/[COOH]:1.10、 融点:265℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。比較例1は実施例1と比較してやや淡染傾向であり、さらに柔軟性、吸放湿性が劣るものであった。
比較例2
120リットルのステンレス製オートクレーブにε−カプロラクタム水溶液(15%含水)を40kg仕込み、缶内を窒素置換した後密閉し、缶内温度が255℃になるまで加熱した。このとき、内圧(ゲージ圧)が1.5MPaを超えないよう缶内圧力を調整し、撹拌しながら重合反応を進行させた。缶内温度が250℃に到達後に缶内圧力を徐々に大気圧まで放圧し、所定の攪拌動力に到達した時点で重合反応を停止した。重合缶内を窒素で微加圧してポリマーを吐出させてストランドとし、水冷後にカットしてポリアミド6樹脂を得た。さらに得られたポリアミド6樹脂を98℃の熱水により煮沸して10時間処理を行い、残留モノマーを除去した。
得られたポリアミド6樹脂を実施例1と同様にして乾燥し、水分率300ppmのポリアミドを得た。該ポリアミド6樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.70、Mw/Mn:1.82、アミノ末端基濃度:52eq/ton、[NH]/[COOH]:1.06、 融点:225℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、仮撚加工時の第1ヒーター温度が190℃である以外は実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。比較例1は実施例1と比較して同等の発色性を示すものの、柔軟性、吸放湿性が劣るものであった。
Figure 2011162907
実施例2
ポリアミド56樹脂の重合工程において、攪拌動力の到達値を調整して重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。実施例2の硫酸相対粘度は2.15、Mw/Mn:1.78、アミノ末端基濃度:47eq/ton、[NH]/[COOH]:1.07、 融点:253℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。実施例2は実施例1よりも伸縮性、強度が劣るものであったが、それ以外の特性は良好であった。
実施例3
ポリアミド56樹脂の重合工程において、攪拌動力の到達値を調整して重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。実施例3の硫酸相対粘度は3.25、Mw/Mn:2.25、アミノ末端基濃度:44eq/ton、[NH]/[COOH]:1.17、 融点:254℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。実施例3は紡糸での糸切れがやや多かった。また、実施例1よりも柔軟性、伸縮性が劣るものであったが、従来のポリアミド系捲縮糸よりは優れた特性を示した。
比較例3
ポリアミド56樹脂の重合工程において、攪拌動力の到達値を調整して重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。比較例3の硫酸相対粘度は1.95、Mw/Mn:1.77、アミノ末端基濃度:48eq/ton、[NH]/[COOH]:1.07、 融点:253℃であった。該ポリアミド樹脂を用い紡糸を行ったところ、得られた未延伸糸の強度は2.35cN/dexと実施例1よりもかなり低いものであった。該未延伸糸を用いて仮撚加工を行い捲縮糸としたが、低強度、低捲縮性であり、従来のポリアミド系捲縮糸と比較しても劣るものであった。
比較例4
実施例1のポリアミド56樹脂を回転式の乾燥機にて缶内温度が140℃になるように昇温速度30℃/時間で昇温後、次いで缶内温度170℃になるように昇温速度10℃/時間で昇温した。また、缶内温度100℃到達後から減圧を開始し、缶内圧力0.1kPaまで減圧した。170℃到達後、約3時間固相重合を行い、その後徐々に窒素を流して常圧に戻し、缶内温度80℃までチップを冷却した後、抜き出した。得られたポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:3.6、Mw/Mn:2.45、アミノ末端基濃度:38eq/ton、[NH]/[COOH]:0.93、 融点:254℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして紡糸を行った結果、実施例3よりもさらに糸切れが多かった。また、実施例3よりも柔軟性、伸縮性が劣るものであった。
Figure 2011162907
実施例4
水溶液中に存在する1,5−ペンタメチレンジアミンのモル数と、アジピン酸とのモル数の比を1.002として水溶液中の原料の濃度を60重量%に調整し、更にポリアミド56樹脂の重合工程において、缶内温度を265℃まで昇温した後、缶内圧力を除々に放圧し、所定の攪拌動力に到達したところで重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。
得られたポリアミド56樹脂を実施例1と同様にして乾燥し、水分率300ppmのポリアミドを得た。該ポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.76、Mw/Mn:1.55、アミノ末端基濃度:51eq/ton、[NH]/[COOH]:1.04、 融点:254℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。実施例4は実施例1と同様に柔軟性、吸放湿性に優れた特性を示した。
実施例5
ポリアミド56樹脂の重合工程において、缶内温度を280℃まで昇温した後、缶内圧力を除々に放圧し、所定の攪拌動力に到達したところで重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。
得られたポリアミド56樹脂を実施例1と同様にして乾燥し、水分率300ppmのポリアミドを得た。該ポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.75、Mw/Mn:2.32、アミノ末端基濃度:52eq/ton、[NH]/[COOH]:1.15、 融点:254℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。実施例5は紡糸、仮撚加工での糸切れが実施例1よりも多いものであった。また、若干強度が低いものであったが、実用上の問題はないレベルであった。さらに柔軟性、吸放湿性等の布帛特性は実施例1とほぼ同等であった。
比較例5
ポリアミド56樹脂の重合工程において、缶内温度を290℃まで昇温した後、缶内圧力を除々に放圧し、所定の攪拌動力に到達したところで重合反応を停止した以外は実施例1と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。
得られたポリアミド56樹脂を実施例1と同様にして乾燥し、水分率300ppmのポリアミドを得た。該ポリアミド66樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.78、Mw/Mn:3.05、アミノ末端基濃度:48eq/ton、[NH]/[COOH]:0.72、 融点:254℃であった。該ポリアミド樹脂を用い、実施例1と同様にして84デシテックス、60フィラメントの捲縮糸を得た。評価結果を表1に示す。比較例5は紡糸での糸切れが散発して紡糸性が極めて悪く、得られた未延伸糸の糸斑U%(Normal)も3.3%と極めて悪いものであった。また、仮撚加工での加工張力が安定せず、得られた捲縮糸からなる布帛は粗硬感があり、品位が悪いものであった。
Figure 2011162907
実施例6
仮撚加工時の弛緩率を5%(延伸ローラー24とデリベリローラー26の間)とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。得られた捲縮糸は表1に示すとおりであり、5%伸長応力が1.0cN/dtex、沸騰水収縮率7.6%、伸縮復元率(CR)48%、吸放湿パラメーター△MR3.7%、10%伸長回復率88%であった。該捲縮糸からなる布帛は、実施例1よりもやや柔軟性に劣るものであったが、従来のポリアミド系繊維からなる布帛よりも優れた風合いを示すものであった。また、耐光堅牢度、摩擦堅牢度は実施例1と同等の優れたものであった。
比較例6
仮撚加工時の弛緩率0%(延伸ローラー24とデリベリローラー26の間)とし、さらに第2ヒーター温度を非加熱(約20℃)とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。得られた捲縮糸は表1に示すとおりであり、5%伸長応力1.4cN/dtex、伸縮復元率56%といずれの特性も実施例1対比で高く、粗硬感とふかつきがある風合いであった。
実施例7
仮撚加工時の弛緩率15%(延伸ローラー24とデリベリローラー26の間)、第2ヒーター温度160℃とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。実施例7の捲縮糸は5%伸長応力が0.25cN/dtex、融点:254℃、融解熱量75J/g、沸騰水収縮率2.2%、伸縮復元率(CR)25%、吸放湿パラメーター△MR4.4%、10%伸長回復率80%であった。該捲縮糸からなる布帛は、実施例1よりもさらに柔軟性に優れるとともに、吸放湿性に優れるために接触冷感があり、インナー用途に最適な特性を示した。
実施例8
仮撚加工時の弛緩率18%(延伸ローラー24とデリベリローラー26の間)とした以外は実施例7と同様にして捲縮糸を得た。実施例8の捲縮糸は柔軟性には優れるものの、10%伸長回復率が75%とストレッチバック性が低下傾向であった。
Figure 2011162907
実施例9
1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩の60重量%水溶液に、1,5−ペンタメチレンジアミンと水を加えて水溶液中に存在する1,5−ペンタメチレンジアミンのモル数と、アジピン酸のモル数との比を0.994に調整した以外は実施例1と同様にして重合および紡糸、仮撚加工を行った。該ポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.75、Mw/Mn:1.88、アミノ末端基濃度:27eq/ton、[NH]/[COOH]:0.30、 融点:254℃であった。実施例9の水準は、実施例1と比較してやや淡染傾向であった。また、吸放湿性パラメーター△MRが3.5とやや低めであり、染色堅牢度もやや劣る結果であったが、柔軟性等の風合いは優れたものであった。
実施例10
1,5−ペンタメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩の60重量%水溶液に、1,5−ペンタメチレンジアミンと水を加えて水溶液中に存在する1,5−ペンタメチレンジアミンのモル数と、アジピン酸のモル数との比を1.008に調整した以外は実施例1と同様にして重合および紡糸、仮撚加工を行った。該ポリアミド56樹脂の硫酸相対粘度ηr:2.76、Mw/Mn:1.78、アミノ末端基濃度:78eq/ton、[NH]/[COOH]:2.6、 融点:254℃であった。実施例10の水準は、実施例1と比較してやや濃染傾向で発色性に優れ、その他の特性も実施例1と同様に優れたものであった。
Figure 2011162907
1:ホッパー
2:エクストルーダー
3:ギヤポンプブロック
4:紡糸ブロック
5:紡糸パック
6:紡糸口金
7:冷却チムニー
8:糸条
9:給油装置
10:交絡ノズル
11:第1ゴデットロール
12:第2ゴデットロール
13:巻取機
14:繊維パッケージ(チーズ状パッケージ)
15:糸条
16〜18:糸道ガイド
19:供給ローラー
20:第1ヒーター
21:糸道ガイド
22:冷却板
23:施撚体
24:延伸ローラー
25:第2ヒーター
26:デリベリローラー
27、28:糸道ガイド
29:捲縮糸パッケージ

Claims (7)

  1. 硫酸相対粘度が2.0〜3.5、Mw/Mnが1.5〜3であるポリアミド56からなるフィラメントであって、以下の特性を有することを特徴とする捲縮糸。
    5%伸長応力:0.2〜1.0cN/dtex
    沸騰水収縮率:1〜15%
    伸縮復元率:10〜55%
    吸放湿性パラメーター△MR:3%以上
  2. 10%伸長回復率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載の捲縮糸。
  3. アミノ末端基濃度が25〜80eq/tonであることを特徴とする請求項1又は2記載の捲縮糸。
  4. アミノ末端基濃度とカルボキシル末端基濃度が以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の捲縮糸。
    0.5≦[NH]/[COOH]≦2.0
    [NH]:捲縮糸のアミノ末端基濃度(eq/ton)
    [COOH]:捲縮糸のカルボキシル末端基濃度(eq/ton)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド56がバイオ由来の化合物を用いて合成されたものであることを特徴とする捲縮糸。
  6. 請求項5に記載のバイオ由来の化合物がグルコースおよび/またはリジンであって、該化合物を酵素反応、酵母反応および発酵反応から選ばれる1つ以上の反応によって合成された1,5ペンタメチレンジアミンをジアミン成分として重合したポリアミド56を用いていることを特徴とする捲縮糸。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の捲縮糸を含有することを特徴とする繊維構造体。
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