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JP2011109069A - 導電性反射膜及びその製造方法 - Google Patents

導電性反射膜及びその製造方法 Download PDF

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JP2011109069A JP2010203891A JP2010203891A JP2011109069A JP 2011109069 A JP2011109069 A JP 2011109069A JP 2010203891 A JP2010203891 A JP 2010203891A JP 2010203891 A JP2010203891 A JP 2010203891A JP 2011109069 A JP2011109069 A JP 2011109069A
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Kazuhiko Yamazaki
和彦 山崎
Masahide Arai
将英 荒井
Toshiharu Hayashi
年治 林
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Abstract

【課題】真空プロセスを必要とせず、基材側からの反射率が高く、かつ太陽電池用電極としても使用可能なバルクと同程度の低い比抵抗を示す導電性反射膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】スーパーストレート型薄膜太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に形成される導電性反射膜が、金属ナノ粒子を含む組成物を透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、この塗膜を有する基材を焼成することにより、透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように反射膜が形成され、この生じた空気層の反射膜面積に対する総面積が5〜70%の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属ナノ粒子を含む組成物を湿式塗工法によって塗布し、焼成することにより形成される導電性反射膜において、基材側から測定したときの反射率が高く、かつバルクと同程度の低い比抵抗を示す導電性反射膜及びその製造方法に関するものである。
現在、環境保護の立場から、クリーンなエネルギーの研究開発が進められている。中でも太陽電池は、その資源である太陽光が無限であること、無公害であることなどから注目を集めている。従来、太陽電池による太陽光発電には、単結晶シリコンや多結晶シリコンのバルク状結晶を製造し、これをスライス加工して厚い板状の半導体として使用するバルク太陽電池が用いられてきた。しかし、バルク太陽電池に使用する上記シリコン結晶は、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要し、かつ、続く製造工程においても複雑な工程が必要となるため量産効率が上がり難く、低価格の太陽電池を提供することが困難であった。
一方、厚さが数マイクロメートル以下のアモルファスシリコンなどの半導体層を光電変換層として用いた、いわゆる薄膜半導体太陽電池(以下、薄膜太陽電池という。)は、ガラスやステンレススチールなどの安価な基板上に、光電変換層となる半導体層を必要なだけ形成すればよい。従って、この薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。
薄膜太陽電池は、その構造によってスーパーストレート型やサブストレート型があり、透光性基板側から光を入射させるスーパーストレート型太陽電池では、通常、基板−透明電極−光電変換層−裏面電極の順で形成された構造をとる。光電変換層がシリコン系材料で形成されたスーパーストレート型太陽電池では、例えば、透明電極、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、裏面電極の順で形成された構造をとることで発電効率を高めることが検討されている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献1に示される構造では、アモルファスシリコンや多結晶シリコンが光電変換層を構成する。
特に光電変換層がシリコン系の材料によって太陽電池が構成されている場合、上記材料による光電変換層の吸光係数が比較的小さいことから、光電変換層が数マイクロメートルオーダーの膜厚では、入射光の一部が光電変換層を透過してしまい、透過した光は発電に寄与しない。そこで、裏面電極を反射膜とするか、或いは裏面電極の上に反射膜を形成し、吸収しきれず光電変換層を透過した光を反射膜によって反射させ、再び光電変換層に戻すことで発電効率を向上させることが一般に行われている。
薄膜太陽電池におけるこれまでの開発では、電極や反射膜はスパッタ法等の真空成膜法によって形成されていた。しかし、一般に、大型の真空成膜装置の維持及び運転には多大なコストが必要であった。そのため、これらの形成方法を真空成膜法から湿式成膜法に代えることが検討され、湿式成膜法への変更によって、ランニングコストの大幅な改善が期待されている。
湿式成膜法で形成された導電性反射膜の例として、光電変換素子の裏面側に形成される反射膜を無電解めっき法を用いて形成することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に示される方法では、反射膜を無電解めっき法を用いて形成することにより、生産性の向上を図ることができると記載されている。具体的には、基板の表面側にめっきの保護膜となるレジスト膜を全面印刷により形成し、その後、基板の裏面側を不導体用前処理液にHFを2〜4質量%の割合で加えたものを用い、前処理を施し、無電解めっき液を用いて、約3μmの銅めっき膜からなる反射層を形成する。次に、基板を溶剤中において、超音波洗浄を行いレジスト膜を取除くことで光電変換素子が形成される。
しかしながら、上記特許文献1に示される無電解めっき法は、表面側にめっき保護膜を形成した後に、めっき処理する側をHF溶液で前処理した後に、無電解めっき液に浸すなどの工程を経るため、煩雑な工程に加えて、廃液の発生も予想される。
また、より簡便な方法として、金属超微粒子を有機系溶媒に分散させた溶液を塗布し、100〜250℃の低温で焼結する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。上記特許文献2に示される方法によって、高真空プロセスを用いずに、反射率、導電率共に高い大面積で均一な金属電極を形成することができる。
しかしながら、上記特許文献2に示されるような方法で得られた金属膜では、基材側の反射率は、反対側の面に当たる露出面側の反射率に比べて低下する傾向にある。それは、一般に金属超微粒子の分散液を塗布、焼成して金属膜を形成した場合、金属膜と膜を形成する基材との間に平均直径が100nm以下の気孔が生じるためである。金属膜と基材との間に気孔が生じると、気孔内部に入り込んだ光が気孔内で反射を繰り返すことで減衰してしまったり、基材側へ到達した反射光も、基材面に対する入射角が大きくなる場合には、低屈折率媒体(気孔の空気)/高屈折率媒体(基材)の界面で全反射される割合が増え、その割合に応じて光が減衰してしまうものと推測される。
特開平05−95127号公報(発明の詳細な説明の段落[0015]、[0020]及び[0021]) 特開平09−246577号公報(発明の詳細な説明の段落[0035])
柳田祥三ほか著、「薄膜太陽電池の開発最前線 〜高効率化・量産化・普及促進に向けて〜」、株式会社エヌ・ティー・エス、2005年3月、P.113図1(a)
金属ナノ粒子の分散液を塗布し、焼成することで反射膜を形成した際、ガラスなどの透光性基材側から反射率を評価すると、反対側の面に当たる露出面側から反射率を評価した場合と比較して、反射率が著しく低下する傾向が見られる。
本発明の目的は、真空プロセスを必要とせず、基材側からの反射率が高く、かつ太陽電池用電極としても使用可能なバルクと同程度の低い比抵抗を示す導電性反射膜及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、真空蒸着法やスパッタ法などの真空プロセスを可能な限り排除し、湿式塗工法を使用することでより安価にスーパーストレート型太陽電池用の導電性反射膜を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、スーパーストレート型薄膜太陽電池において、塗布プロセスで得られる導電性反射膜の性質を鋭意検討した結果、金属ナノ粒子分散液を基材上に塗布し、ある一定以上の特定の昇温速度で加熱焼成することで塗膜中の粒子の一部が浮き上がり、透明導電膜との界面の一部にある一定の総面積を有する空気層が形成されること、そしてこの空気層は従来の塗布プロセスで界面に多量に出現していた平均直径100nm以下の気孔とは異なり、この空気層によって増反射効果が生じ、従来の反射膜に比べて反射率が増大すること、その結果、この反射膜を太陽電池に搭載することで、高い変換効率が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の第1の観点は、スーパーストレート型薄膜太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に形成される導電性反射膜において、金属ナノ粒子を含む組成物を透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、この塗膜を有する基材を焼成することにより、透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように反射膜が形成され、生じた空気層の反射膜面積に対する総面積が5〜70%の範囲内であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に空気層の高さが5〜200nmの範囲であって、空気層の幅が10〜300nmの範囲であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、更に反射膜中にポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体及び水溶性セルロースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質を含むことを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点に基づく発明であって、更に反射膜中に含まれる金属元素中の銀の割合が75質量%以上であることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点に基づく発明であって、更に反射膜の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内であることを特徴とする。
本発明の第6の観点は、第1ないし第5の観点に基づく発明であって、更に反射膜中に含まれる金属ナノ粒子について、粒径10〜50nmの範囲の粒子が、数平均で70%以上であることを特徴とする。
本発明の第7の観点は、第1ないし第6の観点に基づく発明であって、更に金属ナノ粒子を含む組成物の湿式塗工法による塗布が、焼成後の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内となるように塗布するものであり、塗膜を有する基材の焼成が昇温速度100〜300℃/分、130〜400℃の温度で10〜60分間保持して行われることを特徴とする。
本発明の第8の観点は、第1ないし第7の観点に基づく発明であって、更に湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法又はダイコーティング法のいずれかであることを特徴とする。
本発明の第9の観点は、第1ないし第8の観点に基づく発明であって、更に金属ナノ粒子を含む組成物が金属元素中の銀の割合が75質量%以上である金属ナノ粒子が分散媒に分散することにより調製され、金属ナノ粒子は炭素骨格が炭素数1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾され、金属ナノ粒子が一次粒径10〜50nmの範囲の金属ナノ粒子を数平均で70%以上含有することを特徴とする。
本発明の第10の観点は、第1ないし第9の観点に基づく発明であって、更に基材が、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス又は高分子材料からなる透光性基板のいずれか、或いはガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料及びシリコンからなる群より選ばれた2種類以上の透光性積層体であることを特徴とする。
本発明の第11の観点は、第1ないし第10の観点に基づく発明であって、更に金属ナノ粒子を含む組成物が、有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加物を更に含むことを特徴とする。
本発明の第12の観点は、第11の観点に基づく発明であって、更に有機高分子が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体及び水溶性セルロースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質であることを特徴とする。
本発明の第13の観点は、第11の観点に基づく発明であって、更に金属酸化物が、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化物或いは複合酸化物であることを特徴とする。
本発明の第14の観点は、第11の観点に基づく発明であって、更に金属水酸化物が、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む水酸化物であることを特徴とする。
本発明の第15の観点は、第11の観点に基づく発明であって、更に有機金属化合物が、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン及び錫からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む金属石鹸、金属錯体或いは金属アルコキシドであることを特徴とする。
本発明の第16の観点は、第1ないし第15の観点に基づく発明であって、更に分散媒として1質量%以上の水と2質量%以上のアルコール類とを含有することを特徴とする。
本発明の第17の観点は、金属ナノ粒子を含む組成物をスーパーストレート型薄膜太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、塗膜を有する基材を100〜300℃/分で昇温し、130〜400℃の温度で10〜60分間保持して焼成することにより、透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように膜を形成して、生じた空気層の反射膜面積に対する総面積を5〜70%の範囲内とすることを特徴とする導電性反射膜の製造方法である。
本発明の第18の観点は、第17の観点に基づく発明であって、更に金属ナノ粒子を含む組成物が金属元素中の銀の割合が75質量%以上である金属ナノ粒子が分散媒に分散することにより調製され、金属ナノ粒子は炭素骨格が炭素数1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾され、金属ナノ粒子が一次粒径10〜50nmの範囲の金属ナノ粒子を数平均で70%以上含有し、組成物を透明導電膜上に湿式塗工法によって焼成後の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内となるように塗布することを特徴とする。
本発明の第19の観点は、スーパーストレート型太陽電池の光電変換層上に透明導電膜が形成され、この透明導電膜上に第1ないし第18の観点に基づく導電性反射膜、もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜が形成されたことを特徴とするスーパーストレート型太陽電池用の複合膜である。
本発明の第20の観点は、第1ないし第19の観点に基づく導電性反射膜、もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜を用いた積層体である。
本発明の第21の観点は、第1ないし第20の観点に基づく導電性反射膜、積層体もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜、積層体を電極として用いた太陽電池である。
本発明の第22の観点は、第1ないし第21の観点に基づく導電性反射膜を電極として用いた太陽電池である。
以上述べたように、本発明によれば、スーパーストレート型太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に形成される導電性反射膜が、金属ナノ粒子を含む組成物を透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、この塗膜を有する基材を焼成することにより、透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように形成され、生じた空気層の反射膜面積に対する総面積が5〜70%の範囲内である。透明導電膜と導電性反射膜との界面における反射では、反射率は高いものの光の減衰が大きく、導電性反射膜による反射光成分だけでは十分な反射率を得ることができず、また、平均直径100nm以下の気孔が出現した場合は、気孔内部に入り込んだ光が気孔内で反射を繰り返すことで減衰してしまったり、基材側へ到達した反射光も、基材面に対する入射角が大きくなる場合には、低屈折率媒体(気孔の空気)/高屈折率媒体(基材)の界面で全反射される割合が増え、その割合に応じて光が減衰してしまうため、これも十分な反射率を得ることができなかったが、本発明で生じさせた一定以上の大きさの空気層によって形成される透明導電膜と空気層との界面における反射では光の減衰が少ないため、結果として、反射光成分の割合が増える増反射効果が生じ、十分な反射率が得られる。
また、本発明の導電性反射膜は、組成物中に含まれる金属ナノ粒子を構成する金属そのものが有する比抵抗に近い比抵抗が得られる。即ち、太陽電池用電極として使用可能なバルクと同程度の低い比抵抗を示す。
また、本発明の導電性反射膜は、スパッタなどの真空プロセスで成膜した膜に比べ、膜の反射率や密着性、比抵抗の長期安定性に優れる。
更に、真空蒸着法やスパッタ法などの真空プロセスを可能な限り排除し、湿式塗工法を使用することにより安価に導電性反射膜、複合膜を製造することができる。
本発明のスーパーストレート型太陽電池用の導電性反射膜、複合膜の断面を模式的に表した図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明の導電性反射膜を形成するための導電性反射膜用組成物は、金属ナノ粒子が分散媒に分散することにより調製された組成物である。上記金属ナノ粒子は、金属元素中の銀の割合が75質量%以上、好ましくは80質量%以上である。金属元素中の銀の割合を75質量%以上の範囲としたのは、75質量%未満ではこの組成物を用いて形成された導電性反射膜の反射率が低下してしまうからである。また金属ナノ粒子は炭素骨格が炭素数1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾される。金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を1〜3の範囲としたのは、炭素数が4以上であると焼成時の熱により保護剤が脱離或いは分解(分離・燃焼)し難く、上記導電性反射膜内に有機残渣が多く残り、変質又は劣化して導電性反射膜の導電性及び反射率が低下してしまうからである。
金属ナノ粒子は一次粒径10〜50nmの範囲内の金属ナノ粒子を数平均で70%以上、好ましくは75%以上含有することが好適である。一次粒径10〜50nmの範囲内の金属ナノ粒子の含有量を、数平均で全ての金属ナノ粒子100%に対して70%以上の範囲としたのは、70質量%未満では金属ナノ粒子の比表面積が増大して有機物の占める割合が大きくなり、焼成時の熱により脱離或いは分解(分離・燃焼)し易い有機分子であっても、この有機分子の占める割合が多いため、導電性反射膜内に有機残渣が多く残り、この残渣が変質又は劣化して導電性反射膜の導電性及び反射率が低下したり、或いは金属ナノ粒子の粒度分布が広くなり導電性反射膜の密度が低下し易くなって、導電性反射膜の導電性及び反射率が低下してしまうからである。更に上記金属ナノ粒子の一次粒径を10〜50nmの範囲内としたのは、統計的手法より一次粒径が10〜50nmの範囲内にある金属ナノ粒子が経時安定性(経年安定性)と相関しているからである。なお、本発明で金属ナノ粒子の一次粒径及び数平均の測定方法は、以下の手法により求めるものである。先ず、得られた金属ナノ粒子をTEM(Transmission Electron Microscope、透過型電子顕微鏡)により約50万倍程度の倍率で撮影する。次いで、得られた画像から金属ナノ粒子200個について一次粒径を測定し、この測定結果をもとに粒径分布を作成する。次に、作成した粒径分布から、一次粒径10〜50nmの範囲内の金属ナノ粒子が全金属ナノ粒子で占める個数割合を求める。
この金属ナノ粒子を含む導電性反射膜用組成物中に有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加物を更に含むことが好ましい。添加物として組成物中に含まれる有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物又はシリコーンオイルにより、基材との化学的な結合又はアンカー効果の増大、或いは焼成工程における金属ナノ粒子と基材との濡れ性の改善により、導電性を損なうことなく、基材との密着性を向上させることができる。
また、この組成物を用いて導電性反射膜を形成すると、金属ナノ粒子間の焼結による粒成長を調整することができる。この組成物を用いた導電性反射膜の形成では、成膜時に真空プロセスを必要としないため、プロセスの制約が小さく、また製造設備のランニングコストを大幅に低減することができる。
添加物の含有量は金属ナノ粒子を構成する銀ナノ粒子の質量の0.1〜20%、好ましくは0.2〜10%である。添加物の含有量が0.1%未満では透明導電膜との界面に出現する気孔の密度が高くなるおそれがある。添加物の含有量が20%を越えると形成した導電性反射膜の導電性に悪影響を及ぼし、体積抵抗率が2×10-5Ω・cmを越える不具合を生じる。
添加物として使用する有機高分子としては、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone;以下、PVPという。)、PVPの共重合体及び水溶性セルロースからなる群より選ばれた1種又は2種以上が使用される。具体的には、PVPの共重合体としては、PVP−メタクリレート共重合体、PVP−スチレン共重合体、PVP−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また水溶性セルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
添加物として使用する金属酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化物或いは複合酸化物が好適である。複合酸化物とは具体的には酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化アンチモン−酸化錫系複合酸化物(Antimony Tin Oxide:ATO)、酸化インジウム−酸化亜鉛系複合酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)等である。
添加物として使用する金属水酸化物としては、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む水酸化物が好適である。
添加物として使用する有機金属化合物としては、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン及び錫からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む金属石鹸、金属錯体或いは金属アルコキシドが好適である。例えば、金属石鹸は、酢酸クロム、ギ酸マンガン、クエン酸鉄、ギ酸コバルト、酢酸ニッケル、クエン酸銀、酢酸銅、クエン酸銅、酢酸錫、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酢酸モリブデン等が挙げられる。また金属錯体はアセチルアセトン亜鉛錯体、アセチルアセトンクロム錯体、アセチルアセトンニッケル錯体等が挙げられる。また金属アルコキシドはチタニウムイソプロポキシド、メチルシリケート、イソアナトプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
添加物として使用するシリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル並びに変性シリコーンオイルの双方を用いることができる。変性シリコーンオイルは更にポリシロキサンの側鎖の一部に有機基を導入したもの(側鎖型)、ポリシロキサンの両末端に有機基を導入したもの(両末端型)、ポリシロキサンの両末端のうちのどちらか一方に有機基を導入したもの(片末端型)並びにポリシロキサンの側鎖の一部と両末端に有機基を導入したもの(側鎖両末端型)を用いることができる。変性シリコーンオイルには反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとがあるが、その双方の種類ともに本発明の添加物として使用することができる。なお、反応性シリコーンオイルとは、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、並びに異種官能基変性(エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基)を示し、非反応性シリコーンオイルとは、ポリエーテル変性、メチルスチリル基変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フッ素変性、並びに親水特殊変性を示す。
一方、導電性反射膜用組成物を構成する金属ナノ粒子のうち、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム及びマンガンからなる群より選ばれた1種の粒子又は2種以上の混合組成又は合金組成からなる金属ナノ粒子を更に含有することが好ましい。この銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子は全ての金属ナノ粒子100質量%に対して0.02質量%以上かつ25質量%未満とすることが好ましく、0.03質量%〜20質量%とすることが更に好ましい。銀ナノ粒子以外の粒子の含有量を全ての金属ナノ粒子100質量%に対して0.02質量%以上かつ25質量%未満の範囲としたのは、0.02質量%未満では特に大きな問題はないけれども、0.02質量%以上かつ25質量%未満の範囲内においては、耐候性試験(温度100℃かつ湿度50%の恒温恒湿槽に1000時間保持する試験)後の導電性反射膜の導電性及び反射率が耐候性試験前と比べて悪化しないという特徴があり、25質量%以上では焼成直後の導電性反射膜の導電性及び反射率が低下し、しかも耐候性試験後の導電性反射膜が耐候性試験前の導電性反射膜より導電性及び反射率が低下してしまうからである。
また導電性反射膜用組成物中の銀ナノ粒子を含む金属ナノ粒子の含有量は、金属ナノ粒子及び分散媒からなる組成物100質量%に対して2.5〜95.0質量%含有することが好ましく、3.5〜90質量%含有することが更に好ましい。銀ナノ粒子を含む金属ナノ粒子の含有量を金属ナノ粒子及び分散媒からなる組成物100質量%に対して2.5〜95.0質量%の範囲としたのは、2.5質量%未満では特に焼成後の導電性反射膜の特性には影響はないけれども、必要な厚さの導電性反射膜を得ることが難しく、95.0質量%を越えると組成物の湿式塗工時にインク或いはペーストとしての必要な流動性を失ってしまうからである。
また導電性反射膜用組成物を構成する分散媒は、全ての分散媒100質量%に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上の水と、2質量%以上、好ましくは3質量%以上の水と相溶する溶剤、例えば、アルコール類とを含有することが好適である。例えば、分散媒が水及びアルコール類のみからなる場合、水を2質量%含有するときはアルコール類を98質量%含有し、アルコール類を2質量%含有するときは水を98質量%含有する。更に分散媒、即ち金属ナノ粒子表面に化学修飾している保護分子は、水酸基(−OH)又はカルボニル基(−C=O)のいずれか一方又は双方を含有する。水の含有量を全ての分散媒100質量%に対して1質量%以上の範囲が好適であるとしたのは、1質量%未満では、組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また焼成後の導電性反射膜の導電性と反射率が低下してしまい、水と相溶する溶剤の含有量を全ての分散媒100質量%に対して2質量%以上の範囲が好適であるとしたのは、2質量%未満では、上記と同様に組成物を湿式塗工法により塗工して得られた膜を低温で焼結し難く、また焼成後の導電性反射膜の導電性と反射率が低下してしまうからである。なお、水酸基(−OH)が銀ナノ粒子等の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤に含有されると、組成物の分散安定性に優れ、塗膜の低温焼結にも効果的な作用があり、カルボニル基(−C=O)が銀ナノ粒子等の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤に含有されると、上記と同様に組成物の分散安定性に優れ、塗膜の低温焼結にも効果的な作用がある。分散媒に用いる水と相溶する溶剤としては、アルコール類が好ましく、このうち、上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、イソボニルヘキサノール及びエリトリトールからなる群より選ばれた1種又は2種以上を用いることが特に好ましい。
本発明の導電性反射膜を形成するための金属ナノ粒子を含む組成物を製造する方法は以下の通りである。
(a) 銀ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を3とする場合
先ず硝酸銀を脱イオン水等の水に溶解して金属塩水溶液を調製する。一方、クエン酸ナトリウムを脱イオン水等の水に溶解させて得られた濃度10〜40%のクエン酸ナトリウム水溶液に、窒素ガス等の不活性ガスの気流中で粒状又は粉状の硫酸第一鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第一鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製する。次に上記不活性ガス気流中で上記還元剤水溶液を撹拌しながら、この還元剤水溶液に上記金属塩水溶液を滴下して混合する。ここで、金属塩水溶液の添加量は還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整することで、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が30〜60℃に保持されるようにすることが好ましい。また上記両水溶液の混合比は、還元剤として加えられる第1鉄イオンの当量が、金属イオンの当量の3倍となるように調整する。即ち、(金属塩水溶液中の金属イオンのモル数)×(金属イオンの価数)=3×(還元剤水溶液中の第1鉄イオンのモル数)となるように調整する。金属塩水溶液の滴下が終了した後、混合液の撹拌を更に10〜300分間続けて金属コロイドからなる分散液を調製する。この分散液を室温で放置し、沈降した金属ナノ粒子の凝集物をデカンテーションや遠心分離法等により分離した後、この分離物に脱イオン水等の水を加えて分散体とし、限外ろ過により脱塩処理し、更に引き続いてアルコール類で置換洗浄して、金属(銀)の含有量を2.5〜50質量%にする。その後、遠心分離機を用いこの遠心分離機の遠心力を調整して粗粒子を分離することにより、銀ナノ粒子が一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で70%以上含有するように調製する、即ち数平均で全ての銀ナノ粒子100%に対する一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子の占める割合が70%以上になるように調整する。これにより銀ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数が3である分散体が得られる。
続いて、得られた分散体を分散体100質量%に対する最終的な金属含有量(銀含有量)が2.5〜95質量%の範囲内となるように調整する。また、分散媒をアルコール類含有水溶液とする場合には、溶媒の水及びアルコール類をそれぞれ1%以上及び2%以上にそれぞれ調整することが好ましい。また、組成物中に添加物を更に含ませる場合には、分散体に有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加物を所望の割合で添加することにより行われる。添加物の含有量は、得られる組成物100質量%に対して0.1〜20質量%の範囲内となるように調整する。これにより炭素骨格の炭素数が3である有機分子主鎖の保護剤で化学修飾された銀ナノ粒子が分散媒に分散した組成物が得られる。
(b) 銀ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を2とする場合
還元剤水溶液を調製するときに用いたクエン酸ナトリウムをりんご酸ナトリウムに替えること以外は上記(a)と同様にして分散体を調製する。これにより銀ナノ粒子を化学修飾する有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数が2である分散体が得られる。
(c) 銀ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を1とする場合
還元剤水溶液を調製するときに用いたクエン酸ナトリウムをグリコール酸ナトリウムに替えること以外は上記(a)と同様にして分散体を調製する。これにより銀ナノ粒子を化学修飾する有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数が1である分散体が得られる。
(d) 銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を3とする場合
銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を構成する金属としては、金、白金、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、銅、錫、インジウム、亜鉛、鉄、クロム及びマンガンが挙げられる。金属塩水溶液を調製するときに用いた硝酸銀を、塩化金酸、塩化白金酸、硝酸パラジウム、三塩化ルテニウム、塩化ニッケル、硝酸第一銅、二塩化錫、硝酸インジウム、塩化亜鉛、硫酸鉄、硫酸クロム又は硫酸マンガンに替えること以外は上記(a)と同様にして分散体を調製する。これにより銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数が3である分散体が得られる。
なお、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数を1や2とする場合、金属塩水溶液を調製するときに用いた硝酸銀を、上記種類の金属塩に替えること以外は上記(b)や上記(c)と同様にして分散体を調製する。これにより、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を化学修飾する保護剤の有機分子主鎖の炭素骨格の炭素数が1や2である分散体が得られる。
金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子とともに、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を含有させる場合には、例えば、上記(a)の方法で製造した銀ナノ粒子を含む分散体を第1分散体とし、上記(d)の方法で製造した銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を含む分散体を第2分散体とすると、75質量%以上の第1分散体と25質量%未満の第2分散体とを第1及び第2分散体の合計含有量が100質量%となるように混合する。なお、第1分散体は、上記(a)の方法で製造した銀ナノ粒子を含む分散体に留まらず、上記(b)の方法で製造した銀ナノ粒子を含む分散体や上記(c)の方法で製造した銀ナノ粒子を含む分散体を使用しても良い。
本発明の製造方法では、図1に示すように、先ず、基材11上に透明導電膜12を介して積層されたスーパーストレート型太陽電池の光電変換層13上に、更に透明導電膜14が形成され、そして、上記導電性反射膜用組成物を透明導電膜14上に湿式塗工法によって塗布し、焼成後の厚さが0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmの厚さとなるように導電性反射塗膜を形成する。
上記基材11は、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス又は高分子材料からなる透光性基板のいずれか、或いはガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料及びシリコンからなる群より選ばれた2種類以上の透光性積層体を使用することができる。また透明導電膜のいずれか1種を少なくとも含む基材や、透明導電膜を表面に成膜した基材を用いてもよい。透明導電膜としては、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系が挙げられる。酸化インジウム系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zic Oxide)が挙げられる。酸化錫系としては、ネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。酸化亜鉛系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。基材は太陽電池素子又は透明電極付き太陽電池素子のいずれかであることが好ましい。透明電極としては、ITO、ATO、ネサ、IZO、AZO等などが挙げられる。更に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような誘電体薄膜が基材表面に形成されていてもよい。高分子基板としては、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の有機ポリマーにより形成された基板が挙げられる。上記分散体は太陽電池素子の光電変換半導体層の表面や、透明電極付き太陽電池素子の透明電極の表面に塗布される。
光電変換層13上には、透明導電膜14が形成される。透明導電膜14は特に限定されるものではないが、スパッタ法、真空蒸着法、熱CVD法、湿式塗工法などの従来から知られている方法で形成してよい。また、この透明導電膜14を湿式塗工法により形成する場合には、先ず透明導電膜用組成物を作製する。この透明導電膜用組成物は、導電性酸化物微粒子を含み、この導電性酸化物微粒子が分散媒に分散した組成物である。透明導電膜用組成物に含まれる導電性酸化物微粒子としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物)、ATO(Antimony Tin Oxide:酸化アンチモン−酸化錫系複合酸化物)の酸化錫粉末やAl、Co、Fe、In、Sn、Ga及びTiからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属を含有する酸化亜鉛粉末などが好ましい。このうち、ITO、ATO、AZO(Aluminum Zinc Oxide:アルミドープ酸化亜鉛)、IZO(Indium Zinc Oxide:酸化インジウム−酸化亜鉛系複合酸化物)、TZO(Tin Zinc Oxide:錫含有酸化亜鉛系複合酸化物)が特に好ましい。また、透明導電膜用組成物に含まれる固形分中に占める導電性酸化物微粒子の含有割合は、50〜90質量%の範囲内であることが好ましい。導電性酸化物微粒子の含有割合を上記範囲内としたのは、下限値未満では導電性が低下するため好ましくなく、上限値を越えると密着性が低下するため好ましくないからである。このうち、70〜90質量%の範囲内であることが特に好ましい。また、導電性酸化物微粒子の平均粒径は、分散媒中で安定性を保つため、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、このうち、20〜60nmの範囲内であることが特に好ましい。
透明導電膜用組成物は、加熱により硬化するポリマー型バインダ又はノンポリマー型バインダのいずれか一方又は双方を含む組成物である。ポリマー型バインダとしては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース及びシロキサンポリマなどが挙げられる。またポリマー型バインダには、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン又は錫の金属石鹸、金属錯体或いは金属アルコキシドの加水分解体が含まれることが好ましい。この金属アルコキシドの加水分解体にはゾルゲルを含む。ノンポリマー型バインダとしては、金属石鹸、金属錯体、金属アルコキシド、ハロシラン類、2−アルコキシエタノール、β−ジケトン及びアルキルアセテートなどが挙げられる。また金属石鹸、金属錯体又は金属アルコキシドに含まれる金属は、アルミニウム、シリコン、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム又はアンチモンである。これらポリマー型バインダ、ノンポリマー型バインダが、加熱により硬化することで、低温での低いヘイズ率及び体積抵抗率の透明導電膜14の形成を可能とする。これらバインダの含有割合は、透明導電膜用組成物中の固形分に占める割合として5〜50質量%の範囲内が好ましく、10〜30質量%の範囲内が特に好ましい。
透明導電膜用組成物は、使用する他の成分に応じてカップリング剤を加えるのが好ましい。それは導電性微粒子とバインダの結合性及びこの透明導電膜用組成物により形成される透明導電膜14と、光電変換層13或いは導電性反射膜16との密着性向上のためである。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミカップリング剤及びチタンカップリング剤などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。またアルミカップリング剤としては、次の式(1)で示されるアセトアルコキシ基を含有するアルミカップリング剤が挙げられる。更にチタンカップリング剤としては、次の式(2)〜(4)で示されるジアルキルパイロホスファイト基を有するチタンカップリング剤や、次の式(5)で示されるジアルキルホスファイト基を有するチタンカップリング剤が挙げられる。
Figure 2011109069
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上記透明導電膜用組成物を用いて透明導電膜14を形成するには、先ず透明導電膜用組成物を光電変換層13上に湿式塗工法により塗布して焼成後の厚さが0.03〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μmの範囲内となるように成膜する。ここで、透明導電膜14の厚さを0.03〜0.5μmの範囲に限定したのは、0.03μm未満又は0.5μmを越えると増反射効果が十分に得られないからである。次にこの積層体を大気中若しくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で120〜400℃の温度に5〜60分間保持して焼成することにより透明導電膜14が形成される。
上記湿式塗工法は、スプレーコーティング法、ディスペンサコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法又はダイコーティング法のいずれかであることが特に好ましいが、これに限られるものではなく、あらゆる方法を利用できる。
スプレーコーティング法は分散体を圧縮エアにより霧状にして基材に塗布したり、或いは分散体自体を加圧し霧状にして基材に塗布する方法であり、ディスペンサコーティング法は例えば分散体を注射器に入れこの注射器のピストンを押すことにより注射器先端の微細ノズルから分散体を吐出させて基材に塗布する方法である。スピンコーティング法は分散体を回転している基材上に滴下し、この滴下した分散体をその遠心力により基材周縁に拡げる方法であり、ナイフコーティング法はナイフの先端と所定の隙間をあけた基材を水平方向に移動可能に設け、このナイフより上流側の基材上に分散体を供給して基材を下流側に向って水平移動させる方法である。スリットコーティング法は分散体を狭いスリットから流出させて基材上に塗布する方法であり、インクジェットコーティング法は市販のインクジェットプリンタのインクカートリッジに分散体を充填し、基材上にインクジェット印刷する方法である。スクリーン印刷法は、パターン指示材として紗を用い、その上に作られた版画像を通して分散体を基材に転移させる方法である。オフセット印刷法は、版に付けた分散体を直接基材に付着させず、版から一度ゴムシートに転写させ、ゴムシートから改めて基材に転移させる、インクの撥水性を利用した印刷方法である。ダイコーティング法は、ダイ内に供給された分散体をマニホールドで分配させてスリットより薄膜上に押し出し、走行する基材の表面を塗工する方法である。ダイコーティング法には、スロットコート方式やスライドコート方式、カーテンコート方式がある。
次に透明導電膜14の上に導電性反射膜16を形成する。具体的には、導電性反射塗膜を有する基材を大気中若しくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で100〜300℃/分、好ましくは150〜250℃/分の速度で昇温し、130〜400℃、好ましくは150〜200℃の温度に、10〜60分間、好ましくは15〜40分間保持して焼成する。この焼成において、上記範囲内の速度で昇温することによって、導電性反射塗膜中の一部の粒子が浮き上がり、透明導電膜14との界面の一部に空気層15を有するように導電性反射膜16を形成することができる。形成した導電性反射膜16と透明導電膜14とで複合膜17が構成される。なお、昇温速度が100℃/分未満では導電性反射塗膜中の粒子の浮き上がりが少なく、一定以上の大きさの空気層が形成し難い不具合を生じ、300℃/分を越えると導電性反射塗膜中の粒子の浮き上がりが多すぎて、透明導電膜と導電性反射膜との密着性が低下する不具合を生じる。
この空気層15は、従来の塗布プロセスで界面に多量に出現していた平均直径100nm以下の気孔とは異なり、一定以上の大きさの空気層によって形成される透明導電膜と空気層との界面では、反射による光の減衰が少ないため、結果として、反射光成分の割合が増える増反射効果が生じるため、従来の反射膜に比べて、反射率が増大する。
空気層15の高さは5〜200nm、好ましくは30〜100nmの範囲、空気層15の幅は10〜300nm、好ましくは100〜200nmの範囲である。ここでいう空気層15の幅とは、透明導電膜14との界面の空気層15の面積から最長の径と最短の径を測定し、この測定値から算出した平均値を指す。
また、反射膜面積に対する空気層15の総面積は5〜70%、好ましくは30〜50%の範囲内である。
ここで、空気層15の高さを5〜200nmの範囲に規定にしたのは、5nm未満では、反射率の増大効果が低減する不具合が生じ、200nmを越えると透明導電膜と導電性反射膜との密着性の低下が生じるからである。
また、空気層15の幅を10〜300nmの範囲に規定したのは、10nm未満では、反射率の増大効果が低減する不具合を生じ、300nmを越えると、透明導電膜と導電性反射膜との密着性の低下が生じるからである。
また、反射膜面積に対する空気層15の総面積を5〜70%の範囲内に規定したのは、5%未満では、透明導電膜14と空気層15との界面における反射割合が低すぎて反射光成分の割合が増えず、70%を越えると透明導電膜14と導電性反射膜16との接触面積が少なくなり過ぎて導電性反射膜16が剥離し易くなるからである。
なお、本発明で空気層の反射膜面積に対する総面積、空気層の高さ、空気層の幅及び反射膜の厚さの測定方法は、以下の手法により求めるものである。先ず、基材上の透明導電膜に密着した導電性反射膜に対し、収束イオンビーム(FIB)法で加工して断面を露出させる。次に、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで、金属膜/基材の界面の形状を観察する。そして、この界面像について、反射膜の厚さ、空気層の平均高さ、空気層の平均幅を求め、更に空気層の反射膜面積に対する総面積を評価する。ここで、評価した開口部の直径は断面図中の開口部長さを平均幅とみなすことにより行う。
ここで、湿式塗工法による塗布を、焼成後の厚さが0.05〜2.0μmの範囲となるようにしたのは、0.05μm未満では太陽電池に必要な電極の表面抵抗値が不十分となり、2.0μmを越えると特性上の不具合はないけれども、材料の使用量が必要以上に多くなって材料が無駄になるからである。
また、導電性反射塗膜を有する基材の焼成温度を130〜400℃の範囲としたのは、130℃未満では金属ナノ粒子同士の焼結が不十分になるとともに保護剤の焼成時の熱により脱離或いは分解(分離・燃焼)し難いため、焼成後の導電性反射膜内に有機残渣が多く残り、この残渣が変質又は劣化して導電性反射膜の導電性及び反射率が低下してしまい、400℃を越えると低温プロセスという生産上のメリットを生かせない、即ち製造コストが増大し生産性が低下してしまい、特にアモルファスシリコン、微結晶シリコン、或いはこれらを用いたハイブリッド型シリコン太陽電池における光電変換の光波長域に影響を及ぼしてしまうからである。
更に、導電性反射塗膜を有する基材の焼成時間を10〜60分間の範囲としたのは、10分間未満では金属ナノ粒子同士の焼結が不十分になるとともに保護剤の焼成時の熱により脱離或いは分解(分離・燃焼)し難いため、焼成後の導電性反射膜内に有機残渣が多く残り、この残渣が変質又は劣化して導電性反射膜の導電性及び反射率が低下してしまい、60分間を越えると特性には影響しないけれども、必要以上に製造コストが増大して生産性が低下してしまうからである。
添加物のうち、有機高分子であるPVP、PVPの共重合体、水溶性セルロースについては、大気中において、おおよそ200〜300℃で徐々に熱分解が始まることが知られているが、その分解速度は極めて遅い。しかし、400℃を越えると急速に分解が進行する。例えば、金属ナノ粒子膜を130℃で10分焼成した場合、これらの有機分子は焼成前の90%以上膜内に残留する。一方、金属ナノ粒子膜を400℃で10分焼成した場合、これらの有機分子は50%以上膜内に残留する。
このように、本発明の製造方法は、上記導電性反射膜用組成物を透明導電膜14上に湿式塗工によって塗布し、この導電性反射塗膜を有する基材を焼成する簡易な工程で透明導電膜14との界面に空気層15を有するように導電性反射膜16を形成することができる。成膜時に真空プロセスを必要としないため、プロセスの制約が小さく、また製造設備のランニングコストを大幅に低減することができる。
本発明の導電性反射膜16は、組成物中に含まれる金属ナノ粒子を構成する金属そのものが有する比抵抗に近い比抵抗が得られる。即ち、太陽電池用電極として使用可能なバルクと同程度の低い比抵抗を示す。
また、本発明の導電性反射膜16は、スパッタなどの真空プロセスで成膜した膜に比べ、膜の反射率や密着性、比抵抗などの長期安定性に優れる。その理由としては、大気中で成膜した本発明の導電性反射膜は、真空中で成膜した膜に比べ、水分の浸入や酸化などによる影響を受け難いことが挙げられる。
上記本発明の導電性反射膜16は、基材側からの反射率が高く、かつバルクと同程度の低い比抵抗を示すため、太陽電池の電極として用いることができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1〜37>
以下の表1に示す分類1〜8の成分、含有割合で透明導電膜用組成物を調製した。各実施例で使用した透明導電膜用組成物の表1における分類番号を表2〜4に示す。
分類1では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのIZO粉末15質量%、分散媒としてイソプロパノール72.77質量%、バインダとしてノンポリマー型バインダの2−n−ブトキシエタノールと3−イソプロピル−2,4ペンタンジオンの混合液10質量%、低抵抗剤として硝酸インジウムと酢酸鉛の混合物(質量比1:1)2.23質量%の割合で、合計量を60gとして100ccのガラス瓶中に入れ、直径0.3mmのジルコニアビーズ(ミクロハイカ、昭和シェル石油社製)100gを用いてペイントシェーカーで6時間分散することにより、透明導電膜用組成物を得た。
分類2では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのITO粉末7.5質量%、分散媒としてイソプロパノール、エタノール及びN,N−ジメチルホルムアミドの混合液(質量比4:2:1)を第1混合液とし、これを92.3質量%、バインダとしてノンポリマー型バインダの2,4−ペンタンジオン0.038質量%、カップリング剤として上記式(4)に示すチタンカップリング剤0.162質量%の割合で、分類1と同様の方法により、透明導電膜用組成物を得た。
分類3では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのATO粉末5質量%、分散媒として上記第1混合液を50.99質量%、バインダとしてノンポリマー型バインダの2−n−プロポキシエタノール44質量%、カップリング剤として上記式(4)に示すチタンカップリング剤0.01質量%の割合で、分類1と同様の方法により、透明導電膜用組成物を得た。
分類4では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのAZO粉末5質量%、分散媒として上記第1混合液を74.64質量%、バインダとして2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオンとイソプロピルアセテートの混合液(質量比1:1)20質量%、カップリング剤として上記式(3)に示すチタンカップリング剤0.36質量%の割合で、分類1と同様の方法により、透明導電膜用組成物を得た。
分類5では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのTZO粉末5質量%、分散媒として上記第1混合液を93.95質量%、バインダとして2−イソブトキシエタノールと2−ヘキシルオキシエタノールとn−プロピルアセテートの混合液(質量比4:1:1)0.8質量%、カップリング剤として上記式(5)に示すチタンカップリング剤0.25質量%の割合で、分類1と同様の方法により、透明導電膜用組成物を得た。
分類6では、先ず、平均粒径0.010μmのATO粉末を水に懸濁させてpHを7に調製し、ビーズミルで30分間処理した。水溶性セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースをATO粉末に対して質量比で0.01%になる量を懸濁液に添加して導電性水分酸液を得た。このようにして得られた導電性水分酸液を固形分濃度18.5%の濃度に調製し、この分散液100gと13.2質量%ゼラチン水溶液100gとを40℃で混合して、水系の透明導電膜用組成物を得た。
分類7では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのATO粉末5.3質量%、分散媒としてエタノールとブタノールの混合液(質量比98:2)を第2混合液とし、これを85質量%、バインダとしてSiO2結合剤1.7質量%、カップリング剤として上記式(3)に示すチタンカップリング剤8.0質量%の割合で混合することにより、透明導電膜用組成物を得た。なお、バインダとして用いたSiO2結合剤は500mlのガラス製の4ツ口フラスコを用い、テトラエトキシシランを140g、エチルアルコール240gを加え、攪拌しながら12N−HC11.0gを25gの純粋に溶解して一度に加え、その後80℃で6時間反応させることにより製造した。
分類8では、以下の表1に示すように、導電性酸化物粉末として平均粒径0.025μmのITO粉末8.0質量%、分散媒として上記第2混合液を88質量%、バインダとしてSiO2結合剤2.0質量%、カップリング剤として上記式(2)に示すチタンカップリング剤2.0質量%の割合で混合することにより、透明導電膜用組成物を得た。なお、バインダとして用いたSiO2結合剤は分類7と同じ方法により製造した。
Figure 2011109069
続いて、以下の手順により、導電性反射膜用組成物を調製した。
先ず、硝酸銀を脱イオン水に溶解して金属塩水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して濃度が26質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中で粒状の硫酸第1鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第1鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。
次いで、上記窒素ガス気流を35℃に保持した状態で、マグネチックスターラーの攪拌子を還元剤水溶液中に入れ、攪拌子を100rpmの回転速度で回転させて、上記還元剤水溶液を攪拌しながら、この還元剤水溶液に上記金属塩水溶液を滴下して混合した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整することで、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また上記還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、金属塩水溶液中の金属イオンの総原子価数に対する、還元剤水溶液のクエン酸イオンと第1鉄イオンのモル比がいずれも3倍モルとなるようにした。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、混合液の攪拌を更に15分間続けることにより、混合液内部に金属粒子を生じさせ、金属粒子が分散した金属粒子分散液を得た。金属粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の金属粒子の化学量論的生成量は5g/リットルであった。
得られた分散液は室温で放置することにより、分散液中の金属粒子を沈降させ、沈降した金属粒子の凝集物をデカンテーションにより分離した。分離した金属凝集物に脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、更にメタノールで置換洗浄することにより、金属(銀)の含有量を50質量%にした。その後、遠心分離機を用いこの遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを越える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で71%含有するように調整した。即ち、数平均で全ての銀ナノ粒子100%に対する一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子の占める割合が71%になるように調整した。得られた銀ナノ粒子は、炭素骨格が炭素数3の有機分子主鎖の保護剤が化学修飾されていた。
次に、得られた金属ナノ粒子10質量部を水、エタノール及びメタノールを含む混合溶液90質量部に添加混合することにより分散させ、更にこの分散液に次の表2〜表4に示す添加物を表2〜表4に示す割合となるように加えることで、導電性反射膜用組成物をそれぞれ得た。なお、導電性反射膜用組成物を構成する金属ナノ粒子は、75質量%以上の銀ナノ粒子を含有している。
なお、金属ナノ粒子として、銀ナノ粒子とともに、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を含有させる場合は、上記方法により得られた銀ナノ粒子の分散液を第1分散液とし、硝酸銀に代えて、次の表2〜表4に示す銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子を形成する種類の金属塩を用いた以外は、上記銀ナノ粒子の製造方法と同様にして、銀ナノ粒子以外の金属ナノ粒子の分散液を調製し、この金属ナノ粒子の分散液を第2分散液とし、添加物を加える前に、次の表2〜表4に示す割合となるように、第1分散液と第2分散液を混合することで、導電性反射膜用組成物を得た。
得られた透明導電膜用組成物を次の表2〜表4に示す基材上に焼成後の厚さが0.7〜1.3×102nmとなるように様々な成膜方法で塗布した後、温度25℃で5分間乾燥して透明導電性塗膜を形成し、次いで得られた導電性反射膜用組成物を、形成した透明導電塗膜上に焼成後の厚さが0.05〜2.0μmとなるように様々な成膜方法で塗布した後、温度25℃で5分間乾燥して導電性反射塗膜を形成した。次いで、次の表2〜表4に示す熱処理条件で焼成することにより、基材上に透明導電膜及び導電性反射膜から構成された複合膜を形成した。
なお、表2〜表4中、PVPとあるのは、Mwが360,000のポリビニルピロリドンを表し、PETとあるのは、ポリエチレンテレフタレートを表す。
<比較例1〜3>
透明導電膜を膜厚が0.5〜2×102nmとなるように真空蒸着法であるスパッタ法により形成した後、この透明導電膜上に実施例1と同一の導電性反射膜用組成物を用い、実施例1と同一の方法により導電性反射塗膜を形成し、次の表4に示す熱処理条件で焼成することにより、基材上に透明導電膜及び導電性反射膜から構成された複合膜を形成した。
Figure 2011109069
Figure 2011109069
Figure 2011109069
<比較試験1>
実施例1〜37及び比較例1〜3で得られた基材上に形成した透明導電膜及び導電性反射膜から構成された複合膜について、透明導電膜との界面に出現する気孔の分布、空気層及び導電性反射膜の裏面反射率を評価した。評価結果を次の表5及び表6にそれぞれ示す。
空気層の平均高さ、平均幅及び面積占有率の測定方法は、基材上の透明導電膜に密着した導電性反射膜に対し、収束イオンビーム(FIB)法で加工して試料断面を露出させ、この試料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、金属膜/基材の界面の形状を観察した。そして、この界面像について、開口部の平均高さ、平均幅を求め、更に面積占有率を評価した。ここで、評価した開口部の直径は断面図中の開口部長さを平均幅とみなすことにより行った。
また、導電性反射膜の裏面反射率の評価は、紫外可視分光光度計と積分球の組み合わせにより、波長500nm及び1100nmにおける導電性反射膜の拡散反射率を測定した。
Figure 2011109069
Figure 2011109069
表5及び表6から明らかなように、焼成において100℃/分未満の速度で昇温した比較例1〜3では、1100nmの反射率は85%以上と高かったが、500nmの反射率が80%未満と低く、波長によって反射率にばらつきが生じてしまう結果が確認された。
一方、焼成において100〜300℃/分の速度で昇温した実施例1〜37では、500nm及び1100nmの双方の波長の反射率は80%以上と高い反射率が得られていた。
本発明は、ガラスなどの透明基材を受光面とすることを特徴とするスーパーストレート型太陽電池に適した、受光面の反対側に設けられる電極を低コストで製造するための技術として極めて好適である。
また、本発明を用いることで、従来、真空成膜法で形成していた透明導電膜と導電性反射膜を、塗布、焼成プロセスに置き換えることが可能であり、製造コストの大幅な削減が期待できる。
11 基材
12 透明導電膜
13 光電変換層
14 透明導電膜
15 空気層
16 導電性反射膜
17 複合膜

Claims (22)

  1. スーパーストレート型薄膜太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に形成される導電性反射膜において、
    金属ナノ粒子を含む組成物を前記透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、前記塗膜を有する基材を焼成することにより、前記透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように反射膜が形成され、
    前記生じた空気層の反射膜面積に対する総面積が5〜70%の範囲内であることを特徴とする導電性反射膜。
  2. 空気層の高さが5〜200nmの範囲であって、前記空気層の幅が10〜300nmの範囲である請求項1記載の導電性反射膜。
  3. 反射膜中にポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体及び水溶性セルロースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質を含む請求項1又は2記載の導電性反射膜。
  4. 反射膜中に含まれる金属元素中の銀の割合が75質量%以上である請求項1ないし3いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  5. 反射膜の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内である請求項1ないし4いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  6. 反射膜中に含まれる金属ナノ粒子について、粒径10〜50nmの範囲の粒子が、数平均で70%以上である請求項1ないし5いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  7. 金属ナノ粒子を含む組成物の湿式塗工法による塗布が、焼成後の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内となるように塗布するものであり、塗膜を有する基材の焼成が昇温速度100〜300℃/分、130〜400℃の温度で10〜60分間保持して行われる請求項1ないし6いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  8. 湿式塗工法が、スプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法又はダイコーティング法のいずれかである請求項1ないし7いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  9. 金属ナノ粒子を含む組成物が金属元素中の銀の割合が75質量%以上である金属ナノ粒子が分散媒に分散することにより調製され、前記金属ナノ粒子は炭素骨格が炭素数1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾され、前記金属ナノ粒子が一次粒径10〜50nmの範囲の金属ナノ粒子を数平均で70%以上含有する請求項1ないし8いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  10. 基材が、ガラス、透明導電材料を含むセラミックス又は高分子材料からなる透光性基板のいずれか、或いは前記ガラス、透明導電材料を含むセラミックス、高分子材料及びシリコンからなる群より選ばれた2種類以上の透光性積層体である請求項1ないし9いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  11. 金属ナノ粒子を含む組成物が、有機高分子、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物及びシリコーンオイルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の添加物を更に含む請求項1ないし10いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  12. 有機高分子が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンの共重合体及び水溶性セルロースからなる群より選ばれた1種又は2種以上の物質である請求項11記載の導電性反射膜。
  13. 金属酸化物が、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む酸化物或いは複合酸化物である請求項11記載の導電性反射膜。
  14. 金属水酸化物が、アルミニウム、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン、錫、インジウム及びアンチモンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む水酸化物である請求項11記載の導電性反射膜。
  15. 有機金属化合物が、シリコン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銀、銅、亜鉛、モリブデン及び錫からなる群より選ばれた少なくとも1種を含む金属石鹸、金属錯体或いは金属アルコキシドである請求項11記載の導電性反射膜。
  16. 分散媒として1質量%以上の水と2質量%以上のアルコール類とを含有する請求項1ないし15いずれか1項に記載の導電性反射膜。
  17. 金属ナノ粒子を含む組成物をスーパーストレート型薄膜太陽電池の光電変換層上に成膜された透明導電膜上に湿式塗工法によって塗布し、前記塗膜を有する基材を100〜300℃/分で昇温し、130〜400℃の温度で10〜60分間保持して焼成することにより、前記透明導電膜との界面の一部に空気層を有するように膜を形成して、前記生じた空気層の反射膜面積に対する総面積を5〜70%の範囲内とすることを特徴とする導電性反射膜の製造方法。
  18. 金属ナノ粒子を含む組成物が金属元素中の銀の割合が75質量%以上である金属ナノ粒子が分散媒に分散することにより調製され、
    前記金属ナノ粒子は炭素骨格が炭素数1〜3の有機分子主鎖の保護剤で化学修飾され、
    前記金属ナノ粒子が一次粒径10〜50nmの範囲の金属ナノ粒子を数平均で70%以上含有し、
    前記組成物を透明導電膜上に湿式塗工法によって焼成後の厚さが0.05〜2.0μmの範囲内となるように塗布する請求項17記載の導電性反射膜の製造方法。
  19. スーパーストレート型太陽電池の光電変換層上に透明導電膜が形成され、前記透明導電膜上に請求項1ないし18いずれか1項に記載の導電性反射膜、もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜が形成されたことを特徴とするスーパーストレート型太陽電池用の複合膜。
  20. 請求項1ないし19いずれか1項に記載の導電性反射膜、もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜を用いた積層体。
  21. 請求項1ないし20いずれか1項に記載の導電性反射膜、積層体もしくは導電性反射膜の製造方法で製造した導電性反射膜、積層体を電極として用いた太陽電池。
  22. 請求項1ないし21いずれか1項に記載の導電性反射膜を電極として用いた太陽電池。
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