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JP2011106053A - 繊維用糊剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 製織後の後加工工程において精練性に優れ、ウォータージェットルーム製織の場合には、落糊の発生が抑制することができる繊維用糊剤と、この繊維用糊剤をサイジングして得られる糊付糸と、この繊維用糊剤を用いて行われる織物の製造方法とを提供することである。
【解決手段】 本発明の繊維用糊剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体の中和物と、水とを必須成分として含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は繊維用糊剤およびその応用に関する。さらに詳しくは、本発明は、ウォータージェットルーム製織の際に特に好ましく使用される経糸用糊剤およびその応用に関する。
繊維の製織に使用される糊剤には、接着力、耐水性、耐摩耗性、精練性等の種々の性能が要求されている。特に、製織後の精練染色工程における精練性の向上が重要になっている。
また、フィラメント糸を用いて製織する場合、その生産能率の向上をはかるために、特許文献1に示すようにウォータージェットルーム製織が行われている。
ウォータージェットルーム製織では、一般的には、経糸に耐水性のアクリル系糊剤を付着させ、緯糸は原糸を糊剤処理なしでそのまま用いる。しかしながら、ウォータージェットルーム製織では、脱落した糊剤が筬につまり、織物に経筋が発生するトラブルが起こりやすい。また、製織後の精練染色工程における精練性も満足できるものではなく、精練性について一層の向上が要求されている。
最近では、ウォータージェットルーム製織における高速化がかなり進んでいる。そのため、経糸と筬および綜絖との擦過等により、経糸が受ける損傷がより大きくなって、落糊(糊皮膜の脱落)がさらに増大、経糸が損傷し、織物品位の低下が発生しやすくなっており、改善が望まれている。
特開2000−45145号公報
本発明の目的は、製織後の後加工工程において精練性に優れ、ウォータージェットルーム製織の場合には、落糊の発生が抑制することができる繊維用糊剤と、この繊維用糊剤をサイジングして得られる糊付糸と、この繊維用糊剤を用いて行われる織物の製造方法とを提供することである。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤という特定の重合性成分から得られる共重合体の中和物を含む繊維用糊剤であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の繊維用糊剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体の中和物と、水とを必須成分として含む。
前記重合性成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体および/またはスチレン系単量体をさらに含むと好ましい。また前記重合性成分に占める前記反応性界面活性剤の重量割合が0.1〜10重量%であると好ましい。
上記繊維用糊剤が、(メタ)アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル系単量体およびメタクリル酸アルキルエステル系単量体を必須とし、スチレン系単量体を含有することがある重合性成分を共重合して得られる共重合体の中和物や、ワックスをさらに含むと好ましい。
上記繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHが7〜10の範囲にあると好ましい。
本発明の糊付糸は、上記繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなる糊付糸である。前記糸条がポリアミドまたはポリエステルから構成されるフィラメント糸であると好ましい。
本発明の織物の製造方法は、上記糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む方法である。前記製織機がウォータージェットルームであると好ましい。
本発明の繊維用糊剤を用いた場合は、製織後の後加工工程において精練性に優れる。また、ウォータージェットルーム製織を行った場合には、落糊の発生が抑制することができる。
本発明の糊付糸を用いた場合は、製織後の後加工工程において精練性に優れる。また、本発明の糊付糸をウォータージェットルーム製織で得た場合には、製織時の落糊の発生が抑制される。
本発明の織物の製造方法では、後加工工程において精練性に優れる織物が得られる。また、織物の製造方法をウォータージェットルーム製織で得た場合には、製織時の落糊の発生が抑制される。
[繊維用糊剤]
本発明の繊維用糊剤は、共重合体の中和物(以下では、糊成分Aということもある。)と水とを必須成分として含む。糊成分Aは、繊維用糊剤を繊維に適用した際に接着性および抱合性を付与する成分、いわゆる糊成分として作用する。
このような糊成分と水とを含む液を、以下では糊成分液ということとする。糊成分液は一般には粘度が高い。pHメーターを用いて、糊成分液のpHをそのまま測定する場合、測定後のpHメーター洗浄等に支障があることがあるので、糊成分液に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHを20℃で測定した値を、糊成分液のpHと定義することにする。同様に、繊維用糊剤のpHは、繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHを20℃で測定した値を意味することにする。重量濃度を1%に調整する方法については、特に限定はないが、糊成分液や繊維用糊剤に対して、蒸留水やイオン交換水を添加したりする方法や、加熱および/または乾燥を行って、水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いたりする方法等が挙げられる。
ここで、固形分とは、糊成分液や繊維用糊剤から水や親水性溶剤等の揮発性成分を除いた不揮発性の成分を意味することとする。固形分の重量は、実施例に示すとおり、糊成分液や繊維用糊剤を加熱および/または乾燥した後に残る成分の重量である。以下の説明において、糊成分の重量は、糊成分の製造後に得られる反応混合物の固形分の重量を意味する。
糊成分液や繊維用糊剤の粘度についても、上記で詳しく説明したpHと同様に、糊成分液や繊維用糊剤のそれぞれに含まれる固形分の重量濃度を20%に調整した水溶液の粘度を20℃で測定した値を意味することにする。重量濃度を20%に調整する方法も上記と同様である。
以下、本発明の繊維用糊剤について、これに含まれる糊成分Aの製造方法を説明しながら詳しく説明する。
共重合体は、たとえば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有し、必要に応じてその他の単量体を含有することがある重合性成分(以下では、この重合性成分を重合性成分Aということがある。)を水存在下で乳化共重合する共重合工程によって製造される。さらに、共重合後に共重合体を含む水分散体にアルカリ性物質を添加して中和する中和工程を経て本発明の繊維用糊剤に含まれる糊成分Aを製造できる。得られた糊成分Aは、通常、水と共存しているので、糊成分Aと水とを含む混合物は本発明の繊維用糊剤である。
共重合工程で用いる重合性成分Aは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有し、その他の単量体を含有していてもよい。本願において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味するものとする。したがって、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリルアミド系単量体とは、アクリルアミド系単量体および/またはメタクリルアミド系単量体を意味する。
(メタ)アクリル酸は、繊維用糊剤として要求される基本物性である水溶性、接着性および抱合性を付与する成分である。
(メタ)アクリル酸中に占めるメタクリル酸の重量割合は、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは50〜95重量%、特に好ましくは70〜90重量%である。メタクリル酸の重量割合が少なすぎる場合、重合性成分A中に含まれることがある他の疎水性モノマーとの相溶性が低下し、乳化重合に影響を及ぼすことがある。また、メタクリル酸の重量割合が多すぎる場合は、重合性成分A中の(メタ)アクリルアミド系単量体等の親水性モノマーとの相溶性が低下し、繊維用糊剤の水溶性が低くなることがある。
(メタ)アクリルアミド系単量体は、繊維用糊剤に親水性、接着性および抱合性を付与し、製織後の後加工工程において精練性を高める成分である。
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、たとえば、アクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジ置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの(メタ)アクリルアミド系単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、アクリルアミドおよびメタクリルアミドは、親水性が高いため好ましい。
反応性界面活性剤は分子内に二重結合を有し、重合性を有した界面活性剤である。反応性界面活性剤は、製織後の後加工工程においても乳化剤として糊抜けを促進させ、精練性を補助的に高める成分であると考えられる。また、反応性界面活性剤は重合性成分Aを共重合する際に乳化剤としても作用し、共重合反応性が高い(メタ)アクリルアミド系単量体と(メタ)アクリル酸やその他の単量体との共重合を円滑に行い、分子構造が均一な共重合体が得られるという利点もある。
反応性界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよいが、反応性界面活性剤がアニオン界面活性剤であると、共重合して得られる共重合体に吸着してマイナスの荷電を与え、共重合体からなる粒子間に反撥力を発生させ、粒子同士の合一を防ぎ、共重合時の反応混合物の分散系の安定化のみならず、ひいては繊維用糊剤の分散系をも安定化させるため好ましい。
また、イオン性の繊維用糊剤中にアニオン界面活性剤が存在すれば相溶性が高まり、製織後の後加工工程において、精練浴中で繊維用糊剤の乳化性を高めることから、好ましい。
反応性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン−プロペニルアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンフェニルエーテル(第一工業製薬製アクアロンRN―10,RN―20,RN―30,RN―50)、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬製アクアロンHS−10,HS−20,BC−05,BC−10,BC−20)、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩(花王製ラテムルS−180A)、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩(三洋化成製エレミノールJS−2)、α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(旭電化工業製アデカリアソープSE−10N)、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩(日本乳化剤製Antox MS−60)等が挙げられる。これらの反応性界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩や、スルホコハク酸ジエステルアンモニウム塩は、重合性成分A中に含まれることがある他の疎水性モノマーとの相溶性が良く、繊維用糊剤の分散系を安定化させるため好ましい。
その他の単量体は、重合性成分Aにおいて必須ではないが、繊維用糊剤に一層の接着性および抱合性を付与したり、繊維用糊剤が乾燥して形成される皮膜の硬度を調整したりする目的で用いられることがある。
その他の単量体は、疎水性モノマーと親水性モノマーとに大別される。
疎水性モノマーとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル系単量体;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体等が挙げられる。
また、親水性モノマーとしては、たとえば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体等が挙げられる。
これらのその他の単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。その他の単量体のうちでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体やスチレン系単量体等の疎水性モノマーがよい。疎水性モノマーのうちでも、アクリル酸アルキルエステル系単量体やスチレン系単量体が好ましい。アクリル酸アルキルエステル系単量体は、そのホモポリマーのガラス転移点(Tg)が低く、接着性および抱合性が高いため好ましい。アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。また、スチレン系単量体は、繊維用糊剤をポリエステル繊維に用いた場合にポリエステル骨格との相溶性が良く、接着性および抱合性が高いため好ましい。スチレン系単量体としては、好ましくはスチレン等が挙げられる。
重合性成分Aにおいて、必須成分である(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤と、必要に応じて含まれるその他の単量体との重量割合については、特に限定はない。
重合性成分Aに占める(メタ)アクリル酸の重量割合は、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%、特に好ましくは5〜12重量%である。(メタ)アクリル酸が1重量%未満であると、糊成分Aの水溶性が低く、後の中和工程で中和しても水溶液とならないことがある。一方、(メタ)アクリル酸が20重量%超であると、共重合体のガラス転移点(Tg)が高く、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
重合性成分Aに占める(メタ)アクリルアミド系単量体の重量割合は、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは8〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。(メタ)アクリルアミド系単量体が5重量%未満であると、糊成分Aの水溶性が低く、製織後の後加工工程において精練性が劣ることがある。一方、(メタ)アクリルアミド系単量体が50重量%超であると、糊成分Aの水溶性が高すぎて、ウォータージェットルーム製織を行った場合に、繊維用糊剤が乾燥して形成される皮膜が吸湿し軟化しやすく、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
重合性成分Aに占める反応性界面活性剤の重量割合は、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは1〜2重量%である。反応性界面活性剤が0.1重量%未満であると、共重合時の乳化性が劣るために、均一な共重合体を得ることはできず、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、反応性界面活性剤が10重量%超であると、製織を行った場合に、繊維用糊剤が乾燥して形成される皮膜が可塑化して、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
重合性成分Aがその他の単量体を含む場合、その重量割合は、100重量%から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤の重量割合の和を差し引いた残りである。
重合性成分Aが、必須である(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤と、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体およびスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種のその他の単量体と含む場合が好ましい。
また、重合性成分Aが、必須である(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤と、その他の単量体としてのアクリル酸アルキルエステル系単量体およびスチレン系単量体との合計5つの成分を少なくとも含む場合は、繊維用糊剤製造時の共重合性および製織後の後加工工程における精練性の両方が優れるためにさらに好ましい。また、上記5つの成分を少なくとも含む重合性成分Aから得られる繊維用糊剤をウォータージェットルーム製織に使用した場合には、落糊の発生を効果的に抑制することができる。
この場合、重合性成分Aに占めるアクリル酸アルキルエステル系単量体の重量割合は、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは40〜75重量%、特に好ましくは50〜70重量%である。アクリル酸アルキルエステル系単量体が20重量%未満であると、糊成分Aのガラス転移点(Tg)が高くなり接着性が劣る傾向が見られる。一方、アクリル酸アルキルエステル系単量体が80重量%超であると、糊成分Aのガラス転移点(Tg)が低くなり、皮膜が軟らかくなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
また、重合性成分Aに占めるスチレン系単量体の重量割合は、好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。スチレン系単量体が1重量%未満であると、繊維用糊剤をポリエステル繊維に用いた場合にポリエステルとの接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、スチレン系単量体が25重量%超であると、糊成分Aのガラス転移点(Tg)が高く、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
共重合工程では、重合性成分Aおよび水以外にも、親水性溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤等を用いて乳化共重合を行うと好ましい。
親水性溶剤は、重合性成分Aの相溶性を向上させ、得られる共重合体の分子量を抑制する目的で使用される。親水性溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類等を挙げることができる。親水性溶剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分Aに対して4〜18重量%、さらに好ましくは6〜15重量%、特に好ましくは8〜12重量%である。親水性溶剤の重量割合が4重量%未満であると、共重合時の乳化安定性が悪くなる傾向が見られ、さらに、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、親水性溶剤の重量割合が18重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
重合開始剤としては、水溶性重合開始剤等が好ましく、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド等のパーオキサイド類;2,2´−アゾビス−(2−アミジノプロパン二塩酸塩)等のアゾ化合物類等が挙げられる。重合開始剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分Aに対して0.1〜2重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%、特に好ましくは0.5〜1重量%である。重合開始剤の重量割合が0.1重量%未満であると、共重合体の分子量が上昇することで、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、重合開始剤の重量割合が2重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
連鎖移動剤は、共重合体の分子量を抑制するために用いられる。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のチオグリコール酸エステル類等が挙げられる。連鎖移動剤の重量割合は、好ましくは重合性成分Aに対して0.1〜0.8重量%、さらに好ましくは0.15〜0.6重量%、特に好ましくは0.2〜0.4重量%である。連鎖移動剤の重量割合が0.1重量%未満であると、共重合体の分子量が上昇し、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、重合開始剤の重量割合が0.8重量%超であると、共重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
共重合工程では、親水性溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤等を必要に応じて用いて、重合性成分Aを水中で乳化共重合を行うものであれば、事前の仕込み成分の準備や、その添加順序等について特に限定はない。共重合工程の操作方法としては、たとえば、重合性成分A、親水性溶剤、連鎖移動剤および水を含む混合物1と、重合開始剤および水を含む混合物2とをそれぞれ準備し、混合物1を混合物2に滴下して共重合工程を行う操作方法(1);重合性成分A、親水性溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤および水を仕込み、一括して共重合工程を行う操作方法(2);(メタ)アクリル酸、必要に応じて含まれるその他の単量体および連鎖移動剤を含む混合物1と、(メタ)アクリルアミド系単量体、反応性界面活性剤、親水性溶剤、重合開始剤および水を含む混合物2とをそれぞれ準備し、混合物1を混合物2に滴下して共重合工程を行う操作方法(3)等が挙げられる。これらの操作方法のうちでも、操作方法(1)であれば、(メタ)アクリルアミド系単量体の重合反応性が高いことを考慮して、他の重合性成分Aとの重合反応性のバランスが取り易く、目的とする均一な共重合体が容易に得られるために好ましい。
混合物1に占める重合性成分Aの重量割合は、好ましくは混合物1の20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%が好ましい。混合物1中の重合性成分Aが20重量%未満であると、滴下時において反応混合物中の重合性成分Aの濃度が低くなり、重合開始剤が失活して反応時間が長くなることがあるために好ましくない。一方、混合物1中の重合性成分Aが80重量%超であると、滴下時において反応混合物中の重合性成分Aの濃度が高くなるために反応性が高くなり、温度の急上昇がみられて共重合反応を制御しにくくなるので好ましくない。
乳化共重合時の重合温度は75〜90℃が好ましい。混合物1の滴下時間としては60〜120分が好ましく、滴下後の熟成時間は60〜90分が好ましい。
次に、中和工程では、共重合体を含む水分散体にアルカリ性物質を添加して共重合体をその中和物に変換する。ここで得られる糊成分Aおよび水を含む組成物(糊成分液A)は本発明の繊維用糊剤である。
アルカリ性物質としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。これらのアルカリ性物質は水に溶解させた水溶液として滴下することが好ましく、たとえば、濃度10〜20重量%のアルカリ性物質の水溶液を調製し、10〜30分間かけて共重合体を含む水分散体に滴下するとよい。アルカリ性物質の滴下の終点は、たとえば、共重合体を含む水分散体が透明感のある状態に変化することで判断できる。
糊成分液AのpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは7.2〜9、さらに好ましくは7.5〜8.8、特に好ましくは7.8〜8.6である。糊成分液AのpHが7より低いと、糊成分Aの水溶性が低く、中和しても水溶液とならないことがある。一方、糊成分液AのpHが10よりと高いと、糊成分Aの粘度が高くなり、扱いが難しくなることが予測される。
糊成分液Aの粘度は、好ましくは60〜1000mPa・s、さらに好ましくは80〜800mPa・s、特に好ましくは100〜600mPa・sである。糊成分液Aの粘度が60mPa・sより低いと、サイジング時の糊成分Aの付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、糊成分液Aの粘度が1000mPa・sより大きいと、後述の糊成分B、その他の成分との相溶性が悪くなり好ましくない。
本発明の繊維用糊剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有する重合性成分Aを共重合して得られる共重合体の中和物(糊成分A)と、水とを必須成分として含む繊維用糊剤である。したがって、本発明の繊維用糊剤において、繊維用糊剤を繊維に適用した際に接着性および抱合性を付与する成分を意味する糊成分は、糊成分Aだけを含有する繊維用糊剤のみを意味するのではない。本発明の繊維用糊剤には、糊成分Aおよび水とともに、糊成分A以外の他の糊成分(以下では、他の糊成分を「糊成分B」ということがある。)をさらに含有するものも含まれる。
糊成分Bは、糊成分Aではない成分であれば特に限定はないが、たとえば、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、合成糊((メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系重合体、マレイン酸系重合体およびその塩等)等が挙げられる。
本発明の繊維用糊剤に含まれる糊成分が、糊成分Aとともに糊成分Bをさらに含む場合、糊成分Aおよび糊成分Bの重量比(糊成分A/糊成分B)については、特に限定はないが、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは30/70〜80/20、特に好ましくは50/50〜70/30である。上記重量比が10/90より小さいと、後加工工程において精練性が劣る傾向が見られる。一方、上記重量比が90/10より大きいと、繊維用糊剤が乾燥して形成される皮膜が吸湿し軟化しやすく、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。また、ウォータージェットルーム製織では、接着性や抱合性が十分でないことがある。糊成分Aは一般には吸湿性が高い性質を有する。上記重量比は、以下に示す固形分を測定する条件で糊成分をそれぞれ乾燥して、重量を測定し、それらに重量の比を計算して得られる。
本発明の繊維用糊剤は、糊成分以外にも、ワックス、界面活性剤、帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、抗菌剤等のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の中でも、経糸に柔軟性および平滑性を付与するワックスを含有することが好ましい。
ワックスとしては、たとえば、パラフィンワックス等の石油系ワックス;多価アルコール脂肪酸エステル、酸化ポリエチレン等の合成ワックス;カルナバワックス、キャンデリラワックス、ミツロウ、ライスワックス等の動植物系ワックス;鉱物系ワックス等が挙げられる。これらのワックスは、1種または2種以上を併用してもよい。ワックスは油溶性であるので、通常は、分散性を考慮して、非イオン界面活性剤やアニオン界面活性剤等の界面活性剤を用いて乳化した水系分散体として用いられる。
繊維用糊剤に含まれる固形分に占めるワックスの重量割合については、特に限定はないが、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは3〜10重量%となるように配合される。ワックスの重量割合が繊維用糊剤に含まれる固形分の1重量%未満であると、平滑性が劣る傾向が見られる。一方、重量割合が繊維用糊剤に含まれる固形分の30重量%超であると、ワックスの剥離効果により接着性や抱合性が阻害される傾向がある。
製織時の抱合性等の物性を考慮すると、繊維用糊剤には、界面活性剤を含有しない方が一般には好ましい。しかし、繊維用糊剤に含まれるワックスの安定性や、後加工工程における精練性の点では、界面活性剤(好ましくは非イオン界面活性剤)を含むほうが好ましい。繊維用糊剤において、界面活性剤はワックスとともに、ワックスの水系分散体として配合してもよく、ワックスとは別に配合してもよいが、前者が後者よりも好ましい。このような事情から、繊維用糊剤が界面活性剤を含む場合、その量は、製織および後加工における物性バランスを考慮して決定される。界面活性剤の重量割合は、好ましくはワックスの5〜30重量%、さらに好ましくは8〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
本発明の繊維用糊剤に含まれる糊成分が糊成分Aおよび糊成分Bの混合物であり、繊維用糊剤がその他の成分をさらに含有する場合、下記1)〜4)のいずれの方法で混合して繊維用糊剤を調製してもよい。
1)糊成分A、糊成分Bおよびその他の成分を同時または順次、混合する方法
2)予め調製した糊成分Aおよびその他の成分の混合物と、糊成分Bとを混合する方法
3)予め調製した糊成分Bおよびその他の成分の混合物と、糊成分Aとを混合する方法
4)予め調製した糊成分Aおよび一部のその他の成分の混合物と、予め調製した糊成分Bおよび残りのその他の成分の混合物とをそれぞれ混合する方法
これらの方法のうちでも、3)の方法が好ましい。すなわち、従来の繊維用糊剤に比べ、糊成分Aは水溶性が高く、疎水性の高い糊成分との安定性に影響を与えるために、サイジングを行う直前に混合物および糊成分Aを混合する方法が好ましい。
また、本発明の繊維用糊剤の糊成分が糊成分Aおよび糊成分Bを含む場合は、その分散安定性を考慮すると、繊維用糊剤を使用する前に長時間放置しない方がよく、両者を混合後、好ましくは48時間以内、さらに好ましくは24時間以内、特に好ましくは12時間以内に糸状にサイジング処理する等して使用することが望まれる。
本発明の繊維用糊剤は水を必須とする。繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度は、好ましくは繊維用糊剤全体の6〜14%、さらに好ましくは7〜13%、特に好ましくは8〜12%である。固形分の重量濃度が6%未満では、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、固形分の重量濃度が14%超では、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が多くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
繊維用糊剤のpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは7.2〜9、さらに好ましくは7.5〜8.8、特に好ましくは7.8〜8.6である。繊維用糊剤のpHが7より低いと、糊成分A等の糊成分の水溶性が低く、繊維用糊剤が水溶液とならないことがある。一方、繊維用糊剤のpHが10よりと高いと、糊成分A等の糊成分の粘度が全般に高くなり、扱いが難しくなる可能性がある。
繊維用糊剤の粘度は、好ましくは10〜800mPa・s、さらに好ましくは20〜600mPa・s、特に好ましくは30〜400mPa・s、である。繊維用糊剤の粘度が10mPa・sより低いと、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が少なくなり、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、繊維用糊剤の粘度が800mPa・sより大きいと、サイジング時の繊維用糊剤の付着量が多くなり、製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
本発明の繊維用糊剤をウォータージェットルーム製織に使用する場合は、繊維用糊剤の糊成分が糊成分Aおよび糊成分Bを含むと好ましい。その場合、糊成分Bが(メタ)アクリル酸系重合体や、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系重合体であると、接着性および抱合性に優れ、製織時の毛羽立ち、糸切れを防止するため好ましい。また、繊維用糊剤に含まれるその他の成分としては、経糸に柔軟性および平滑性を付与し、製織時の開口不良等の粘着問題に対応するためのワックス、糊付糸の剥離および摩擦帯電を防止するための帯電防止剤、糸条への繊維用糊剤の浸透を補助する目的の浸透剤、繊維用糊剤の起泡を抑えるための消泡剤、製織によって製造された生機の微生物汚染を防止するための抗菌剤等が使用される。
ウォータージェットルーム製織に使用する場合に、ここで使用される糊成分Bが(メタ)アクリル酸系重合体や、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル系重合体の中和物であると好ましい。糊成分Bは、たとえば、重合性成分Aではない重合性成分を用いる以外は上記で説明した糊成分Aの製造方法と同様の共重合工程および中和工程を経て製造できる。
糊成分Bの製造で用いる重合性成分は、(メタ)アクリル酸を必須とし、反応性界面活性剤を含有しない成分であれば、特に限定はないが、(メタ)アクリル酸を必須とし、反応性界面活性剤を含有せず、上記その他の単量体を含有する重合性成分(以下では、この重合性成分を重合性成分Bということがある。)であると好ましい。ここで、その他の単量体が、アクリル酸アルキルエステル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体およびスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種であると好ましく、アクリル酸アルキルエステル系単量体およびメタクリル酸アルキルエステル系単量体を必須とし、スチレン系単量体を併用することがあるとさらに好ましく、これらの3つの単量体を併用すると特に好ましい。
重合性成分Bに占める(メタ)アクリル酸の重量割合は、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。(メタ)アクリル酸が1重量%未満であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物の水溶性が低く、後の中和工程で中和しても水溶液とならないことがある。一方、(メタ)アクリル酸が40重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体のガラス転移点(Tg)が高く、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
重合性成分Bに占めるアクリル酸アルキルエステル系単量体の重量割合は、好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜60重量%である。アクリル酸アルキルエステル系単量体が5重量%未満であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物のガラス転移点(Tg)が高くなり接着性が劣る傾向が見られる。一方、アクリル酸アルキルエステル系単量体が80重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物のガラス転移点(Tg)が低くなり、皮膜が軟らかくなり、織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
重合性成分Bに占めるメタクリル酸アルキルエステル系単量体の重量割合は、好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜60重量%である。メタアクリル酸アルキルエステル系単量体が5重量%未満であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物のガラス転移点(Tg)が低くなり、皮膜が軟らかくなり、織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。一方、アクリル酸アルキルエステル系単量体が80重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物のガラス転移点(Tg)が高くなり接着性が劣る傾向が見られる。
また、重合性成分Bに占めるスチレン系単量体の重量割合は、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。スチレン系単量体は0重量%でも良いが、その量が少ない場合は、繊維用糊剤をポリエステル繊維に用いた場合にポリエステルとの接着性および抱合性が劣ることもある。一方、スチレン系単量体が20重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体の中和物のガラス転移点(Tg)が高く、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
共重合工程では、重合性成分Bおよび水以外にも、上記に示した親水性溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤等を糊成分Aの製造方法と同様に用いて共重合を行うと好ましい。重合性成分Bについては溶液共重合を行うとさらに好ましい。
溶液共重合を行う場合、用いる親水性溶剤の種類については、上記と同じである。親水性溶剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分Bに対して5〜35重量%、さらに好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。親水性溶剤の重量割合が5重量%未満であると、共重合時、疎水性モノマーの分散性が劣る傾向が見られ、さらに、(メタ)アクリル酸系重合体の分子量が上昇する事で、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、親水性溶剤の重量割合が35重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
溶液共重合を行う場合、用いる重合開始剤については、特に限定はないが、油溶性開始剤が好ましい。油溶性開始剤としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート等のパーオキサイド類;アゾビスシクロヘキサンカルボニル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物類等を挙げることができる。重合開始剤の重量割合については、上記と同じである。
溶液共重合を行う場合、用いる連鎖移動剤の種類については、上記と同じである。連鎖移動剤の重量割合については特に限定はないが、好ましくは重合性成分Bに対して0.03〜0.4重量%、さらに好ましくは0.06〜0.3重量%、特に好ましくは0.08〜0.2重量%である。連鎖移動剤の重量割合が0.03重量%未満であると、(メタ)アクリル酸系重合体の分子量が上昇し、高粘度化物が生成し、後加工工程における精練において、劣る傾向が見られるために好ましくない。一方、重合開始剤の重量割合が0.4重量%超であると、(メタ)アクリル酸系重合体の分子量が低下し、繊維用糊剤の接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。
中和工程も、糊成分Aの製造方法と同様に行われる。このようにして製造された糊成分Bを含む糊成分液BのpHが、糊成分液AのpHと同様であると好ましい。
繊維用糊剤が糊成分Aおよび糊成分Bを含む場合、言うまでもないが、この繊維用糊剤をエアージェットルーム製織に使用することもできる。
[糊付糸]
本発明の糊付糸は、上記で説明した繊維用糊剤を糸条にサイジングして得られる。
糸条は、フィラメント糸、紡績糸(スパン糸)のいずれでもよい。糸条を構成する糸種には特に限定はなく、綿;レーヨン;アセテート;麻;羊毛;アクリル;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステル;ポリ−ε−カプラミドおよびポリヘキサメチレンジアミンアジパミド等の脂肪族ポリアミド(ナイロン);ポリメタフェニレンイソフタラミドおよびコポリパラフェニレン−3,4−オキシジフェニレンテレフタラミド等の芳香族ポリアミド(アラミド)等が挙げられる。糸条は、単独の糸種から構成されていてもよく、複数の糸種から構成された混繊糸、混紡糸やマルチフィラメント糸であってもよい。
糸条が、ポリエステルまたはポリアミドから構成されるフィラメント糸であると、繊維用糊剤との接着性および抱合性が良いために好ましい。
糸条の太さに制限はないが、好ましくは、フィラメント糸では10〜75デニール、紡績糸(スパン糸)では40〜60番手である。
サイジング方法については特に限定はないが、たとえば、ビームトゥービーム方式等を挙げることができる。ビームトゥービーム方式は、まず、クリールより糸条を引き出した整経ビームと、繊維用糊剤を入れた糊付ボックスとを準備する。次いで、糸条を整経ビームから引っ張り出し、糊付ボックス内を通過させて、糸条に繊維用糊剤を付着(糊付)させ、その後、ノンタッチホットエアー乾燥およびタッチシリンダー乾燥を施して得られた糊付糸を糊付ビームに巻く方式である(糊付け速度:50〜300m/min、ノンタッチホットエアー乾燥温度:80〜150℃、タッチシリンダー乾燥温度:50〜130℃)。
糊付糸における繊維用糊剤の付着量については、糸条の種類や太さ等によって相違するので特に限定はないが、一般的には、好ましくは2〜15重量%、さらに好ましくは
3〜13重量%、特に好ましくは4〜11重量%である。繊維用糊剤の付着量の測定条件等は以下に詳述する。
糸条がポリエステルフィラメント糸の場合、糊付糸における繊維用糊剤の付着量は、好ましくは2〜12重量%、さらに好ましくは4〜11重量%、特に好ましくは5〜9重量%である。付着量が2重量%未満では、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、付着量が12重量%超では、付着量が多すぎて製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
糸条がポリアミドフィラメント糸の場合、糊付糸における繊維用糊剤の付着量は、好ましくは付着量2〜12重量%、さらに好ましくは付着量4〜11重量%、特に好ましくは付着量6〜10重量%である。付着量が2重量%未満では、接着性および抱合性が劣る傾向が見られる。一方、付着量が12重量%超では、付着量が多すぎて製織機上で開口不良等の粘着問題を起こす可能性がある。
本発明の糊付糸を製織に使用する場合、経糸、緯糸のいずれにも使用することができるが、通常、経糸に使用すると好ましい。経糸は、上記に示すように、糸条に繊維用糊剤を付着、乾燥後の糊付糸を、糊付ビームに巻取ることによって得られる。
[織物の製造方法]
本発明の織物の製造方法は、上記糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む方法である。
経糸は、上記糊付糸を糊付ビームに巻取ることによって得られる。また、緯糸は、糸条に処理を施してもよいが、通常は特段の処理をすることなく、原糸をそのまま用いるのが一般的である。
製織機としては、たとえば、レピアルームやエアージェットルームのドライ製織機;ウォータージェットルーム等が挙げられる。製織機がウォータージェットルームであると、落糊の発生が抑制することができるために好ましい。
製織は、たとえば、上記で説明した糊付糸を一本ずつ綜絖と筬に引き通す経通し(ドローイング)を行って経糸を準備し、製織機にかける。次いで、経糸をたとえば互い違いに上下に運動させながら、緯糸として経糸間に挟み込むことによって、製織が行われ、織物が製造される。製織機がウォータージェット製織機であると、製織機の筬上に発生した落糊が、緯糸を飛ばす際に用いられるジェット水によって洗い流されるので、落糊を効果的に抑制できる。
上記製織において、たとえば、経糸を4,000〜20,000本準備し、緯糸としてポリエステルフィラメント糸やポリアミドフィラメント糸(いずれも10〜75デニール、5〜70フィラメント)を用いた場合、ポリエステルタフタやポリアミドタフタを織機回転数500〜800rpmで50mを一疋として100〜200疋製織できる(織り幅:70〜200cm)。
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に示す物性等の測定方法を以下に示す。
(1)固形分の重量濃度
一定量(通常1.0〜2.0g)の試料(重量:M1)について、赤外線水分計装置((株)Kett科学研究所、乾燥減量法、FD230)を用いて固形分の重量濃度を測定する。
固形分の重量濃度は、赤外線水分計装置を用いれば自動で計算されるが、その測定の原理は、上記M1と、試料を赤外線水分計装置で乾燥し恒量に達した重量(M2)とから、固形分の重量濃度を次式で計算するものである。M2は固形分の重量である。
固形分の重量濃度(%)=(M2/M1)×100
(2)pH
ガラス電極pH測定装置((株)堀場製作所製、navihF−51)を使用して、20℃で測定する。
(3)粘度
B型回転粘度計(BROOK FIELD社製)を使用して、ローターNo.62で30回転にて、20℃で測定する。
(4)繊維用糊剤の付着量
サイジング後の糊付糸(約2g)をサンプルとし、110℃で30分間乾燥後秤量(W1)し、100倍量の精練浴(炭酸ソーダ:2g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル:2g/L)中で、90℃で30分間浸漬させ、湯洗する。サンプルをさらに水洗後、1時間乾燥した後、サンプルを秤量(W2)し、次式より付着量を求めた。
付着量(%)=[(W1−W2)/W2]×100
(5−1)乾式抱合力(乾燥状態における接着性および抱合性の評価)
TM式抱合力試験機にて抱合力を測定する。20本の糊付糸を引き揃え、下記に示す糸張力をかけながら張り、左右が150°、中央が120°の角度で3列に配置したコーム間(コーム:20針×3列;コームの間隔:30mm;コームの往復運動距離:27mm)を往復運動(コームの運動速さ:150回/min)させ、糊付糸を摩擦する。20回摩擦して、糊付糸の割れ具合を目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
糸張力:一本当たり0.2〜0.6g/d
(ポリエステルフィラメント糸30デニール24フィラメントでは180g/20本(=9g/本)、50デニール24フィラメントでは200g/20本(=10g/本)、ポリアミドフィラメント糸70デニール52フィラメントでは300g/20本(=15g/本)で測定)
(5−2)湿式抱合力(湿潤状態における接着性および抱合性の評価)
上記乾式抱合力の測定において、往復運動によって摩擦される糊付糸の部分にイオン交換水を0.1g/sの速度で添加する以外は、乾式抱合力の測定と同様に湿式抱合力を評価する。
<乾式および湿式抱合力の評価基準>
5級:糸割れなし
4級:糸割れ少しあり
3級:糸割れあり
2級:糸割れ多数あり
1級:全体的に糸割れあり
(6−1)乾式落糊性(乾燥状態における落糊性の評価)
1000mの糊付糸1本を下記に示す糸張力をかけながら、左右が150°で、中央が120°の角度で屈曲したコームの間(コーム:20針×3列;コームの間隔:100mm)を50m/minの糊付糸送り速度で走らせ、糊付糸を摩擦する。脱落した落糊量、コームに付着した落糊を観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
糸張力:一本当たり0.2〜0.6g/d
(ポリエステルフィラメント糸30デニール24フィラメントでは6g、50デニール24フィラメントでは10g、ポリアミドフィラメント糸では70デニール52フィラメント15gで測定)
(6−2)湿式落糊性(湿潤状態における落糊性の評価)
上記乾式落糊性の測定において、摩擦される糊付糸の部分にイオン交換水を0.1g/sの速度で添加する以外は、乾式落糊性の測定と同様に湿式落糊性を評価する。
<乾式および湿式落糊性の評価基準>
5級:糊の脱落、コームに落糊付着なし
4級:糊の脱落、コームに落糊付着少しあり
3級:糊の脱落、コームに落糊付着あり
2級:糊の脱落、コームに落糊付着少し多い
1級:糊の脱落、コームに落糊付着多い
乾式抱合力および乾式落糊性はレピアルームやエアージェットルームを想定した評価であり、湿式抱合力および湿式落糊性はウォータージェットルームを想定した評価である。
(7)筬付着落糊性(実用製織性試験における落糊性の評価)
実機を用いた製織時の筬付着落糊性(筬に付着する脱落糊の程度)を目視で観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
<筬付着落糊性の評価基準>
5級:筬に落糊付着なし
4級:筬に落糊付着少しあり
3級:筬に落糊付着あり
2級:筬に落糊付着少し多い
1級:筬に落糊付着多い
(8)精練性
繊維用糊剤にイオン交換水を添加して、固形分の重量濃度を10%に調整した液に、ポリステルタフタおよびポリアミドタフタ(10cm×10cm四角)をそれぞれ浸漬し、ローラーで絞って乾燥する。乾燥して得られたタフタについて、下記に示す2種類の精練条件でそれぞれ30秒間精練を行い、水洗する。その後、ポリエステルタフタについてはローダミン染色液、ポリアミドタフタについてはボーケンシュタイン染色液に15分間浸漬し、再度水洗し、乾燥する。乾燥して得られた染色されたタフタを目視にて観察し、下記に示す評価基準(1〜5級)にしたがって色調を評価する。この評価基準では、5級が最も優れ、1級が最も劣る。
(精練条件1)
精練液:炭酸ソーダ0.5g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル0.5g/L
精練温度:85℃
浴比:100倍
(精練条件2)
精練液:苛性ソーダ2g/L,POE10モル付加ノニルフェノールエーテル1g/L
精練温度:90℃
浴比:100倍
<精練性の評価基準>
5級:呈色なし
4級:微妙に赤い
3級:少し赤い
2級:やや赤い
1級:赤い
〔実施例1−1〕(明細書における糊成分Aの製造)
(共重合工程)
重合性成分(表1に種類および量を示す)、連鎖移動剤としてのチオグリコール酸2−エチルヘキシル0.3g、イオン交換水65gおよび溶剤としてのi−プロパノール8gを撹拌混合し、混合物1を得た。温度計、撹拌機、コンデンサーおよび窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコ(容量1000mL)にイオン交換水150gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、78℃に昇温した。次に、4つ口フラスコの仕込物を撹拌しながら、混合物1を滴下し、さらに過硫酸アンモニウム0.5gを4つ口フラスコに加えて、82℃にて90分間かけて混合物1を4つ口フラスコに滴下した。滴下終了後、20分間共重合し、さらに、過硫酸アンモニウム0.2gを加え、後重合熟成を1時間行い、共重合体を含む反応混合物を得た。
(中和工程)
共重合後、濃度13.6%のアンモニア水15gを反応混合物に徐々に加えて共重合体を中和(pH7〜10)し、室温に冷却した。その後、糊成分液に含まれる固形分の重量濃度が20%になるように、イオン交換水を加えて調整して、共重合体の中和物からなる糊成分A1を含む糊成分液A1を得た。
糊成分液A1に含まれる固形分の重量濃度20%に調整した水溶液の粘度(糊成分液A1の粘度)は112mPa・sであった。また、糊成分液A1に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpH(糊成分液A1のpH)は、8.0であった。pH測定のための希釈には、粘度測定時と同様にイオン交換水を用いた。
〔実施例1−2〜1−3〕(明細書における糊成分Aの製造)
重合性成分を表1に示す種類および量に変更する以外は実施例1−1と同様にして共重合工程および中和工程をそれぞれ行い、イオン交換水を加えて、糊成分A2を含む糊成分液A2と、糊成分A3を含む糊成分液A3とをそれぞれ得た。それぞれの糊成分液に含まれる固形分の重量濃度は20%であった。
実施例1−1と同様にして測定した糊成分液A2〜A3の粘度およびpHをそれぞれ表1に示す。
〔比較例1−1〕(明細書における糊成分Bの製造)
表1に示した種類および量の重合性成分と、軟水30gとを上記実施例1で用いた4つ口フラスコに加えた。次いで、連鎖移動剤としてのチオグリコール酸2−エチルヘキシル0.1g、溶剤としてのi−プロパノール20gおよび過酸化ベンゾイル1gを4つ口フラスコにさらに加え、撹拌混合し、82℃にて5時間共重合を行い、共重合体を含む反応混合物を得た。
共重合後、濃度13.6%のアンモニア水15gを反応混合物に徐々に加え中和し、室温に冷却し、イオン交換水を加えて、糊成分B1を含む糊成分液B1を得た。糊成分液B1に含まれる固形分の重量濃度は20%であった。
実施例1−1と同様にして糊成分液B1について粘度およびpHを測定した。糊成分液B1の粘度は152mPa・sであり、糊成分液B1のpHは8.2であった。
〔比較例1−2〕(反応性界面活性剤を用いずに製造した明細書における糊成分Bの製造)
重合性成分を表1に示す種類および量に変更し、反応性界面活性剤を用いないこと以外は実施例1−1と同様にして共重合工程および中和工程を行い、イオン交換水を加えて、糊成分B2を含む糊成分液B2を得た。糊成分液B2に含まれる固形分の重量濃度は20%であった。実施例1−1と同様にして測定した糊成分液B2の粘度およびpHを表1に示す。
糊成分液A1〜A3は、糊成分Aと水とを含むので、いずれも繊維用糊剤の実施例である。また、糊成分液B1および糊成分液B2は、糊成分Aを含まないので、いずれも繊維用糊剤の比較例である。
繊維に付着させて用いる場合の物性を総合的に判断するために、以下の実施例および比較例では、ワックスをその水系分散体として配合した繊維用糊剤について諸物性を調べた。
Figure 2011106053
〔実施例2−1〕
実施例1−1で得た糊成分A1を含む糊成分液A1と、パラフィンワックスおよびエステルワックスを非イオン界面活性剤で乳化したワックスの水系分散体(サイジングワックスK−2、松本油脂製薬(株))とを混合し、それぞれの重量比率が、糊成分A1/ワックス/界面活性剤=96/3.5/0.5となる繊維用糊剤1を調製した。
繊維用糊剤1に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpH(繊維用糊剤1のpH)を測定し、その結果を表2に示す。
繊維用糊剤1を調製してから12時間以内に、ポリエステルフィラメント糸(30デニール24フィラメント)、ポリエステルフィラメント糸(50デニール24フィラメント)およびポリアミドフィラメント糸70デニール52フィラメントのそれぞれの糸状に対して、下記に示すサイジング条件でサイジングマシーンを用いて繊維用糊剤1を付着させて糊付糸1を得た。なお、繊維用糊剤1の付着量は、ポリエステルフィラメント糸では5%、ポリアミドフィラメント糸では8%であった。
<サイジング条件>
ビームトゥービーム方式
糊付け速度:80m/min
ノンタッチホットエアー乾燥温度:130℃(ポリエステル糸)、110℃(ポリアミド糸)
タッチシリンダー乾燥温度:100℃
タッチシリンダー数:7本
得られた糊付糸1について、乾式および湿式における抱合力および落糊性を評価した。繊維用糊剤1の精練性はポリステルタフタおよびポリアミドタフタを用いて評価した。その結果を表2に示した。
〔実施例2−2〜2−6および比較例2−1〜2−3〕
実施例2−1において、使用する糊成分の種類や、糊成分とワックスと界面活性剤との重量比率等をそれぞれ表2に示すものに変更する以外は実施例2−1と同様にして、繊維用糊剤2〜9を調製し、実施例2−1と同様にして、そのpHを測定した。次いで、実施例2−1と同様にして、繊維用糊剤を調製してから12時間以内にサイジングをそれぞれ行い、糊付糸2〜9を得て、抱合力、落糊性および精練性を評価した。その結果を表2に示した。
ここで、実施例2−2(繊維用糊剤2)、実施例2−4(繊維用糊剤4)および実施例2−6(繊維用糊剤6)では、糊成分Aおよび糊成分Bの両方を糊成分とする繊維用糊剤である。これらの実施例では、糊成分として糊成分Aを含むので、いずれも実施例である。これらの実施例では、いずれも、糊成分液Bとワックスの水系分散体とを予め混合した混合物を調製し、次いで、この混合物と糊成分液Aとを混合して繊維用糊剤を調製した。
実施例2−3(繊維用糊剤3)および実施例2−5(繊維用糊剤5)では、糊成分Aのみを糊成分とする繊維用糊剤である。
比較例2−1(繊維用糊剤7)では、糊成分Bのみを糊成分とする繊維用糊剤である。比較例2−2(繊維用糊剤8)では、糊成分Bのみを糊成分とする繊維用糊剤である。比較例2−3(繊維用糊剤9)では、糊成分B(糊成分B1および糊成分B2の2種類からなる)のみを糊成分とする繊維用糊剤である。
表2の比較例2−3の重量比率の欄に「0/36+60/3.5/0.5」とあるが、ここで「36+60」は、糊成分Bの全体の重量比率が96であり、そのうち、糊成分B1が36で、糊成分B2が60であることを示している。
Figure 2011106053
表2から、精練性は、実施例である繊維用糊剤1〜6では優れるが、比較例である繊維用糊剤7〜9では劣っている。
乾式抱合力および乾式落糊性については、実施例である繊維用糊剤1〜6において満足できる。しかし、比較例である繊維用糊剤7では少し劣っている。
また、湿式抱合力については、実施例である繊維用糊剤1〜6において満足できる。湿式落糊性については、実施例である繊維用糊剤1〜6では、糊の脱落、コームに落糊付着ないので優れる。しかし、比較例である繊維用糊剤7では劣っている。
したがって、繊維用糊剤1〜6を用いてウォータージェットルーム製織を行った場合、落糊のない優れた結果も得られる。
〔実施例3−1〜3−2〕(実用製織性試験)
下記に示すサイジング条件でサイジング装置(津田駒工業(株)製サイザーKS−200)を用いて、実施例2−2の繊維用糊剤2を、50デニール24フィラメントポリエステル糸にサイジングして得られた糊付糸を経糸として準備した。また、50デニール36フィラメントポリエステル糸を緯糸として準備した。実施例3−1ではウォータージェットルーム(津田駒工業(株)製ウォータージェットルーム;織機回転数650rpm;経糸:8000本;織り幅:173cm)を用い、実施例3−2ではエアージェットルーム(津田駒工業(株)製エアージェットルーム;織機回転数600rpm;経糸:8000本;織り幅:173cm)を用いて、これらの経糸および緯糸をそれぞれ製織して、200疋のポリエステルタフタを製造した。
<サイジング条件>
ビームトゥービーム方式
糊付け速度:100m/min
ノンタッチホットエアー乾燥温度:130℃
タッチシリンダー乾燥温度:100℃
タッチシリンダー数:3本
次に、製織後のポリエステルタフタ10cm×10cm四角を準備し、上記精練性の測定方法の精練条件1で精練を行い、精練性を評価した。
また、製織機の稼働率(製織に要した全時間から、製織中にトラブル等の理由で製織機が停滞した時間を差し引いて、その時間を製織に要した全時間で割った値の%表示)を算出した。これらの結果を表3に示した。
〔比較例3−1〜3−2〕(実用製織性試験)
実施例3−1および実施例3−2で、実施例2−2の繊維用糊剤2を比較例2−2の繊維用糊剤7に変更する以外は、実施例3−1および実施例3−2とそれぞれ同様に、製織して、ポリエステルタフタを製造、評価した。その結果を表3に示した。
Figure 2011106053
表3から、ウォータージェットルーム製織およびエアージェットルーム製織のいずれにおいても、繊維用糊剤2は、繊維用糊剤7よりも精練性に優れていることが分かる。また、ウォータージェットルーム製織においては、繊維用糊剤2は、繊維用糊剤7よりも筬付着落糊性および稼働率の点でも優れていることが分かる。特に、製織機の稼働率が7%も向上することは顕著な効果である。

Claims (10)

  1. (メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド系単量体および反応性界面活性剤を含有する重合性成分を共重合して得られる共重合体の中和物と、水とを必須成分として含む、繊維用糊剤。
  2. 前記重合性成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体および/またはスチレン系単量体をさらに含む、請求項1に記載の繊維用糊剤。
  3. 前記重合性成分に占める前記反応性界面活性剤の重量割合が0.1〜10重量%である、請求項1または2に記載の繊維用糊剤。
  4. (メタ)アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル系単量体およびメタクリル酸アルキルエステル系単量体を必須とし、スチレン系単量体を含有することがある重合性成分を共重合して得られる共重合体の中和物をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  5. ワックスをさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  6. 前記繊維用糊剤に含まれる固形分の重量濃度を1%に調整した水溶液のpHが7〜10の範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維用糊剤。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の繊維用糊剤を糸条にサイジングしてなる、糊付糸。
  8. 前記糸条がポリアミドまたはポリエステルから構成されるフィラメント糸である、請求項7に記載の糊付糸。
  9. 請求項7または8に記載の糊付糸からなる経糸と、緯糸とを製織機を用いて製織する工程を含む、織物の製造方法。
  10. 前記製織機がウォータージェットルームである、請求項9に記載の織物の製造方法。
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