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JP2011099744A - 耐指紋性評価方法および耐指紋性被膜 - Google Patents

耐指紋性評価方法および耐指紋性被膜 Download PDF

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JP2011099744A
JP2011099744A JP2009254074A JP2009254074A JP2011099744A JP 2011099744 A JP2011099744 A JP 2011099744A JP 2009254074 A JP2009254074 A JP 2009254074A JP 2009254074 A JP2009254074 A JP 2009254074A JP 2011099744 A JP2011099744 A JP 2011099744A
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fingerprint
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meth
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Application number
JP2009254074A
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Kazuyuki Suga
和幸 菅
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Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

【課題】 汎用的な手法によって測定することができる、客観性および再現性の高い耐指紋性評価方法を提供すること。
【解決手段】 光沢計を用いて、被塗物上に形成された被膜の75〜20度鏡面光沢度を測定し初期光沢度とする、初期光沢度測定工程、
この被膜上に耐指紋評価液を付着させる、耐指紋評価液付着工程、
この耐指紋評価液が付着した部分の上記鏡面光沢度を測定する、拭き取り前光沢度測定工程、
付着した耐指紋評価液を拭き取る、耐指紋評価液拭き取り工程、
耐指紋評価液拭き取り後の上記鏡面光沢度を測定する、拭き取り後光沢度測定工程、および
得られた測定値を下記式で処理し、付着性評価率および拭き取り後評価率を求める、算出工程、
付着性評価率(%)=(拭き取り前光沢度)/(初期光沢度)×100
拭き取り後評価率(%)=(拭き取り後光沢度)/(初期光沢度)×100
を包含する、被膜の耐指紋性評価方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐指紋性被膜の評価方法、およびこの耐指紋性評価方法においても優れた耐指紋性を示す耐指紋性被膜、に関する。
プラスチック製品、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS、MS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、トリアセチルセルロースなどの酢酸セルロース等の樹脂から形成される製品は、その良好な軽量性、易加工性、耐衝撃性などにより、容器、インストルメントパネル、包装材、各種ハウジング材、光デイスク基板、プラスチックレンズ、液晶デイスプレイやプラズマデイスプレイなどの表示機器の基材等に広く用いられている。
しかしながら、これらプラスチック製品は表面硬度が低いため傷つきやすく、その樹脂が持つ本来の透明性あるいは外観が著しく損なわれ易いという欠点がある。そのため、ハードコート層を塗装して、製品表面の耐摩耗性を向上させる試みが行われている。そして近年においては、これらのハードコート層はさらに、指紋跡が付着し難いという耐指紋付着性、および付着した指紋跡を容易に拭き取ることができる、あるいは指紋跡が判別できない、という指紋拭き取り性(本明細書においてこれらをまとめて「耐指紋性」という。)が優れることも求められつつある。耐指紋性が劣ることによって製品の外観が劣ることとなったり、表示機器基材の本来の性能が発揮できなくなるといった不具合があるためである。
上記のように耐指紋性の向上が求められるにつれ、耐指紋性の評価の客観性および再現性の向上もまた重要となる。例えば、特許第3886519号明細書(特許文献1)には、擬似指紋液を用いた光情報媒体の防汚性および指紋付着性を評価する方法が記載されている。そして特許文献1においては、ヘイズ値、水接触角の変化率、ジッタ測定などにより防汚性および指紋付着性評価が行われている。しかしながらこれらの評価は何れも、製品を実際に使用する場合における官能評価との相関性が高くないという問題がある。そのため特許文献1においても、5人の被験者の目視による官能試験による評価が併用されていると考えられる。
特開2008−064685号公報(特許文献2)には、スラブ型の光導波路分光分析法を用いた汚染性評価方法が記載されている。この評価方法は、再現性が高く微妙な汚れの差異の検出が可能であると記載されている。しかしながらスラブ型光導波路分光分析法は、基本的には透明な導波路上でしか分光解析できず、不透明な基材の測定には不向きであるという欠点がある。また、このスラブ型光導波路分光分析法は、タンパク質の配向状態または分子構造の解析といった高度な解析が可能な機器であるため、高価であり汎用性に欠けるといった不具合もある。
特許第3886519号明細書 特開2008−064685号公報
上記の通り、耐指紋性評価の客観性および再現性は、重要視されつつあるにも関わらず、客観性および再現性を備えた耐指紋性評価の汎用的な手法は提案されていないのが現状である。これらの現状を踏まえ、本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、汎用的な手法によって測定することができる、客観性および再現性の高い耐指紋性評価方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、このような耐指紋性評価が非常に高い耐指紋性被膜を提供することを目的とする。
本発明は、
光沢計を用いて、被塗物上に形成された被膜の75〜20度鏡面光沢度を測定し初期光沢度とする、初期光沢度測定工程、
この被膜上に耐指紋評価液を付着させる、耐指紋評価液付着工程、
この耐指紋評価液が付着した部分のこの鏡面光沢度を測定する、拭き取り前光沢度測定工程、
付着した耐指紋評価液を拭き取る、耐指紋評価液拭き取り工程、
耐指紋評価液拭き取り後のこの鏡面光沢度を測定する、拭き取り後光沢度測定工程、および
得られた測定値を下記式で処理し、付着性評価率および拭き取り後評価率を求める、算出工程、
付着性評価率(%)=(拭き取り前光沢度)/(初期光沢度)×100
拭き取り後評価率(%)=(拭き取り後光沢度)/(初期光沢度)×100
を包含する、被膜の耐指紋性評価方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記耐指紋評価液拭き取り工程における拭き取り処理が、荷重5〜50g/cmで、払拭材を1〜40回往復させて、耐指紋評価液を拭き取る処理であるのがより好ましい。
また、上記耐指紋評価液付着工程における付着処理は、
下端面部の直径13mm以上であるゴム栓のこの下端面を、織布または不織布で被覆し、この被覆部に耐指紋評価液を含浸し、
耐指紋評価液が含浸したゴム栓の下端面部を、荷重50〜300g/cmで上記被膜上に押しあてて、被膜上に耐指紋評価液を付着させる、
手順であるのがより好ましい。
また、上記耐指紋評価液が、高級脂肪酸、テルペン類およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種であるのがより好ましい。
また、上記耐指紋性評価方法において60度鏡面光沢度を測定した場合における付着性評価率および拭き取り後評価率が、いずれも85%以上である、耐指紋性被膜であって、
この被膜が、下記成分:
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、
光重合性多官能化合物(B)、および
光重合開始剤(C)、
を含み、
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、下記式(1):
Figure 2011099744
[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有し、および
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下である、
耐指紋性光硬化性組成物によって形成された被膜である、耐指紋性被膜であるのが、より好ましい。
また、他の好ましい態様として、上記耐指紋性評価方法において60度鏡面光沢度を測定した場合における付着性評価率および拭き取り後評価率が、いずれも85%以上である、耐指紋性被膜であって、
この被膜が、下記成分:
(イ)分子内に活性メチレン基または活性メチン基(a)と飽和シクロアルキル基(b)とを有するアクリル樹脂、若しくは活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂との混合物、
(ロ)分子内に2個以上の光硬化性官能基を有する多官能重合性化合物、
(ハ)光重合開始剤、および
(ニ)マイケル反応触媒、
を含む耐指紋性硬化性組成物によって形成された被膜である、耐指紋性被膜である態様が挙げられる。
本発明の耐指紋性評価方法は、数値化を伴った、客観的でありかつ定量的な評価方法である。従来の目視による耐指紋評価は官能評価であるため、評価者の判断能力に依存してしまい、評価者の間でばらつきが生じ、客観性に欠けるという不具合があった。本発明の評価方法は、光沢計という一般的な機器を用いて、数値化という定量性を伴って行うことができるという利点がある。本発明の評価方法はさらに、客観性および再現性が共に高いという利点もある。
さらに本発明の方法は、ヘイズ値を測定する従来方法においては良好と評価された複数の被膜間においても、それらの被膜の優劣を評価することができ、より高度な評価が可能であるという利点がある。本発明の方法はさらに、ヘイズ値の測定では評価が不可能であった、不透明な被塗物上に設けられた被膜の耐指紋性評価も可能であるという利点がある。
そして上記耐指紋性評価方法を用いて評価を行ったところ、特定成分を有する組成物から得られる被膜が、優れた耐指紋性を有することが見いだされた。本発明は、このような耐指紋性評価が非常に高い耐指紋性被膜も提供する。
耐指紋性評価方法
本発明の耐指紋性評価方法は、下記工程:
光沢計を用いて、被塗物上に形成された被膜の75〜20度鏡面光沢度を測定し初期光沢度とする、初期光沢度測定工程、
この被膜上に耐指紋評価液を付着させる、耐指紋評価液付着工程、
この耐指紋評価液が付着した部分の上記鏡面光沢度を測定する、拭き取り前光沢度測定工程、
付着した耐指紋評価液を拭き取る、耐指紋評価液拭き取り工程、
耐指紋評価液拭き取り後の上記鏡面光沢度を測定する、拭き取り後光沢度測定工程、
得られた測定値を、下記に示す数式で処理し、付着性評価率および拭き取り後評価率を求める、算出工程、
を包含する方法である。
上記の通り、本発明の評価方法においては、光沢度の変化を用いて耐指紋性評価を行う点に特徴がある。従来の耐指紋性評価は、ヘイズ値の測定および目視評価が一般的であった(例えば特開2004−359834号公報、第0079段落などを参照)。しかしながらヘイズ値を測定する従来方法における評価結果は、評価者の目視による評価結果との相関性が悪いという事情があった。このことは、特開2004−359834号公報においても、指紋付着の確認においてヘイズ値を測定した後、拭き取り後は評価者による目視評価を用いている点からも理解される。一方で、評価者の目視による評価は官能評価であるため、評価者の判断能力に依存してしまい、評価者の間でばらつきが生じ、客観性に欠けるという不具合がある。このことはさらに再現性にも欠けることとなる。
本発明の評価方法は、これまで主として目視による官能評価がなされていた耐指紋性評価を、光沢計という一般的な機器を用いて、数値化という定量性を伴って行うことができるという利点がある。本発明の評価方法はさらに、客観性および再現性が共に高いという利点もある。さらに本発明の方法は、ヘイズ値を測定する従来方法においては良好と評価された複数の被膜間においても、それらの被膜の優劣を評価することができ、より高度な評価が可能であるという利点がある。本発明の方法はさらに、ヘイズ値の測定では評価が不可能であった、不透明な被塗物上に設けられた被膜の耐指紋性評価も可能であるという利点がある。
初期光沢度測定工程
本発明の方法は、被塗物上に形成された被膜の耐指紋性を評価する方法である。まず、光沢計を用いて、被塗物上に形成された被膜の光沢度を測定する。ここで測定する光沢度は、75〜20度鏡面光沢の範囲の任意の角度で測定することができる。具体的には、75度鏡面光沢(入射角75度における測定)、60度鏡面光沢(入射角60度における測定)、45度鏡面光沢(入射角45度における測定)、20度鏡面光沢(入射角20度における測定)、などが挙げられる。これらの鏡面光沢の測定方法は、JIS Z8741(1997)に準拠して測定することができる。なお鏡面光沢度とは、被膜の鏡面反射光の強さの度合いを測定して数値で表したものである。こうして測定された被膜の光沢度を「初期光沢度」とする。
耐指紋評価液付着工程
次いで、被塗物上に形成された被膜の上に、耐指紋評価液を付着させる。ここで用いられる耐指紋評価液として、耐指紋評価において一般的に用いられるものを特に制限なく用いることができる。一般に、耐指紋評価液として、人間の汗や皮脂を構成する液体および/またはそれに近い性状を有する液体が用いられる。
耐指紋評価液の具体例として、例えば、下記成分を少なくとも1種含む液状物が挙げられる:
・高級脂肪酸、例えば炭素数10〜24の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数12〜22の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、さらに好ましくはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸など、
・上記高級脂肪酸の誘導体、例えば高級脂肪酸のエステル誘導体(例えばジグリセリド、トリグリセリドなど)、
・テルペン類、例えばモノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、セスタテルペン(C25)、トリテルペン(C30)、テトラテルペン(C40)、およびこれらの誘導体(例えばテルペノイドなど)。
上記成分を含む耐指紋評価液は、上記成分1種をまたは2種以上の混合物をそのまま用いてもよく、あるいは上記成分を少なくとも1種含む、水溶液、アルコール溶液またはパラフィン溶液であってもよい。
被塗物の被膜上に耐指紋評価液を付着させる方法は、耐指紋評価液を被膜上に滴下する方法、または特定形状を有する付着材を用いて、耐指紋評価液を被膜上に付着させる方法など、任意の方法を用いることができる。
被塗物の被膜上に耐指紋評価液を付着させる好ましい方法として、例えば、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ウレタンゴムなどのエラストマーからなるゴム栓などの付着材を用いて、耐指紋評価液を被膜上に付着させる方法が挙げられる。なお本明細書において、ゴム栓が有する2種の円面(円形状の端面)のうち、小さい方の円面を「下端面」という。付着材として、下端面部の直径が13mm以上であるものを用いるのが、操作性の面などからより好ましい。
付着材の一例として、エラストマーからなるゴム栓であって、例えばJIS K2246(1994)に準拠した指紋除去性試験において用いられる、人工指紋液プリント用のゴム栓(No.10のゴム栓の下端面(直径約26mm)を、JIS R6251 またはJIS R6252 に規定するAA240の研磨材でこすって粗面化したもの)などが挙げられる。
付着材の他の一例として、例えば、ゴム栓の小さい方の円面(下端面)の直径が13〜25mmのゴム栓(規格No.1〜9)、より好ましくはゴム栓の小さい方の円面(下端面)の直径が16〜25mm(規格No.4〜9)のものが挙げられる。このような付着材を用いることによって、現実の指紋に近い大きさで耐指紋評価液を付着させることができるという利点がある。さらに、これらのゴム栓の下端面を、織布または不織布で被覆することによって、研磨材でこすって粗面化するという処理を行うことなく、ゴム栓を付着材としてより簡便に用いることができ、より好ましい。織布として、例えば一般的に用いられる綿ガーゼ(例えば、日本薬局方規定、タイプ1のガーゼ)などが挙げられる。また不織布として、一般的に用いられている天然繊維または化学繊維の不織布、例えばベンコット(旭化成せんい(株)社製)、キムワイプ(日本製紙クレシア(株)社製)、クラフレックス(クラレクラフレックス(株)社製)などが挙げられる。
次いで、上記のような付着材に、耐指紋評価液を付着させる。例えば粗面化されたゴム栓を付着材として用いる場合は、必要に応じて織布または不織布を入れたシャーレまたはその類似物に、耐指紋評価液を満たし、そこへ付着材を一定荷重で押しあてて、耐指紋評価液を付着材に付着させる。また、例えば下端面を織布または不織布で被覆されたゴム栓を付着材として用いる場合は、上記のように耐指紋評価液を付着させることもでき、または下端面の織布または不織布上に耐指紋評価液を直接滴下して、付着させてもよい。
このように耐指紋評価液が付着した付着材を、被塗物上の被膜に、一定荷重で押しあてて、被膜上に耐指紋評価液を付着させる。ここでの荷重は、実際の使用における指紋付着状況を考慮して、例えば50〜300g/cmであるのが好ましい。
上記のように耐指紋評価液を被膜上に付着させることによって、被膜表面上に、定量的にかつ現実の指紋付着を極めて良好に模した状態で、人工的な指紋を付着させることができる。これにより、耐指紋性能を再現性よく定量化することが可能となる。
拭き取り前光沢度測定工程
次いで、こうして耐指紋評価液が付着した部分の鏡面光沢度を、光沢計を用いて測定する。ここでの鏡面光沢度測定は、上記初期光沢度測定工程において用いた入射角と同じ入射角を用いて測定する。こうして測定された鏡面光沢度を「拭き取り前光沢度」とする。
なお、下記の算出工程において記載するように、この拭き取り前光沢度を初期光沢度で割ることによって、付着性評価率(%)が得られる。この「付着性評価率」は、被膜の指紋跡の目立ち難さの程度を示す数値となる。例えば60度鏡面光沢度を測定する場合において、この付着性評価率が90%以上である場合は、指紋跡が付着し難い、あるいは指紋跡が残存していることが判別し難い被膜であり、耐指紋性に優れているということができる。
耐指紋評価液拭き取り工程
次いで、上記耐指紋評価液付着工程において被膜上に付着させた耐指紋評価液を拭き取り、被膜上から耐指紋評価液を取り除く。この拭き取り処理は、一般的に用いられる払拭材を用いることができる。払拭材の具体例として、限定されるものではないが、例えば紙製ウェス(キムワイプ(日本製紙クレシア(株)社製)、一般的なティッシュなど)、織布(ガーゼなど)、天然繊維または化学繊維の不織布(ベンコット(旭化成せんい(株)社製)、クラフレックス(クラレクラフレックス(株)社製))などが挙げられる。
被膜上の耐指紋評価液を、払拭材を用いて、一定の荷重および角度条件で拭き取る。この拭き取りは人力で行ってもよく、あるいは耐摩耗試験機などを用いて機械的に行ってもよい。拭き取りを人力で行う方法として、例えば、拭き取り荷重を一定にするため、一定の荷重下で払拭材を移動させる方法が挙げられる。耐摩耗試験機などを用いる方法として、例えば、一般的な耐摩耗試験機の圧子部位にウェスなどの払拭材を固定し、この圧子部位を被膜上で往復運動させることによって、耐指紋評価液を拭き取る方法が挙げられる。何れの拭き取り方法においても、荷重5〜50g/cmほどであるのが、現実の拭き取り操作に近い範囲であり、好ましい。
拭き取り後光沢度測定工程
こうして耐指紋評価液を拭き取った後、耐指紋評価液を付着させた部分の鏡面光沢度を、光沢計を用いて測定する。ここでの鏡面光沢度測定は、上記初期光沢度測定工程において用いた入射角と同じ入射角を用いて測定する。こうして測定された鏡面光沢度を「拭き取り後光沢度」とする。
得られた拭き取り後光沢度を用いて、下記の算出工程において記載するように、この拭き取り後光沢度を初期光沢度で割ることによって、拭き取り後評価率(%)が得られる。
なお、必要に応じて、上記耐指紋評価液拭き取り工程において任意回数の拭き取り処理を行った時点において拭き取り後光沢度を測定することを繰り返すことができる。これにより耐指紋性の評価項目を細分化することができる。例えば、払拭材を用いた拭き取り操作を例えば1〜5往復行った時点で拭き取り後光沢度を測定し、拭き取り後評価率を求めることによって、指紋跡の目立ち難さを評価することができる。初期の指紋跡の拭き取り工程では、指紋や耐指紋液が拭き取り面に薄く広がっていく。耐指紋液が塗膜上に均一に延び広がることにより、拭き取り後評価率が低下しない塗膜は、指紋跡の目立ち難い塗膜であると判断できる。また、払拭材を用いた拭き取り操作を例えば15〜40往復行った時点で拭き取り後光沢度を測定し、拭き取り後評価率を求めることによって、拭き取り処理後の耐指紋性を評価することができる。15〜40往復拭き取っても、拭き取り後評価率が低い塗膜は指紋跡が残っていることになり、指紋や耐指紋液が指紋の拭き取り性の悪い塗膜であると判断できる。このように耐指紋性の評価項目を細分化することによって、これまでは色々な要素をまとめて官能評価を行ってきた耐指紋性評価を、より客観的に、さらに再現性高く評価することが可能となる。
算出工程
上記より得られた鏡面光沢度測定値を下記式で処理することによって、付着性評価率および拭き取り後評価率が得られる。
付着性評価率(%)=(拭き取り前光沢度)/(初期光沢度)×100
拭き取り後評価率(%)=(拭き取り後光沢度)/(初期光沢度)×100
これら評価率の数値は、鏡面光沢度を測定する際の入射角によって変動する。本発明の方法においては、入射角が75〜20度(75〜20度鏡面光沢度)の範囲で測定するのが好ましく、入射角が60〜45度(60〜45度鏡面光沢度)の範囲で測定するのがより好ましい。上記範囲外である、例えば85度またはそれを超える鏡面光沢度においては、指紋跡の存在による光沢度の差が生じ難い傾向にある。また例えば20度鏡面光沢度においては、光沢度の差が大きく生じる傾向にあるものの、それに比例して誤差が生じ易い傾向にある。
こうして得られる付着性評価率は、数値が高いほど、耐指紋性に優れていると評価される。また拭き取り後評価率は、数値が高いほど、耐指紋性に優れていると評価される。例えば60度鏡面光沢度を測定する場合において、付着性評価率および拭き取り後評価率がいずれも85%以上であれば耐指紋性が良好であり、いずれも90%以上であれば耐指紋性が特に優れていると評価することができる。
耐指紋性被膜
上記の評価方法を用いて耐指紋性が良好な被膜の形成を実現するために、本発明者らが種々検討を行ったところ、以下に詳述する2種類の組成物から得られる被膜が優れた耐指紋性を有することが明らかになった。
耐指紋性光硬化性組成物
優れた耐指紋性を有する被膜が得られる組成物の一例として、
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、
光重合性多官能化合物(B)、および
光重合開始剤(C)、
を含み、
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、下記式(1):
Figure 2011099744
[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有し、および
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下である、
耐指紋性光硬化性組成物、が挙げられる。
この耐指紋性光硬化性組成物はさらに、ポリエーテル樹脂またはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)を含んでもよい。以下、この耐指紋性光硬化性組成物を構成する各成分について詳述する。
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)
上記耐指紋性光硬化性組成物に含まれるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、
(i)分子の両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有すること、
(ii)下記式(1):
Figure 2011099744
[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有すること、および
(iii)水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であること、
を条件とする、ウレタン(メタ)アクリレートである。
成分(A)が、上記式(1)で示される、ウレタン結合を介したポリエーテル構造を有することによって、優れた耐指紋性が得られることとなる。また成分(A)が、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有することによって、良好な耐擦傷性が得られることとなる。
なお成分(A)のウレタン(メタ)アクリレートは、分枝構造を有していてもよい。そしてこの場合において「両末端」とは、分子鎖が最長となる状態における両方の末端を意味する。そしてこのような分枝構造を有する場合は、分枝鎖の末端においても少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有してもよい。
上記式(1)で示される構造を有する、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、例えば、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)とポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)との反応物が挙げられる。
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリカプロラクトン、および、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有する、ポリエーテルポリオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコールをポリエーテル変性した、ポリエーテル骨格を含む多価アルコール;上記ポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸などの多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオールをカプロラクトン変性したカプロラクトン変性ポリオール;などが挙げられる。
ポリイソシアネート(b)としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系などのポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの三量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート、またはこれらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物などを挙げることができる。
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)は、(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであってもよく、(メタ)アクリレート基を2またはそれ以上有する多官能モノマーであってもよい。単官能モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。多官能モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)、ポリイソシアネート(b)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)を反応させることによって調製することができる。この調製において、例えばポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)、ポリイソシアネート(b)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)を一度に反応させてもよく、あるいは、例えばポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)を反応させてもよい。
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)とポリイソシアネート(b)との反応は、ポリオール化合物(a)の水酸基1当量に対して、ポリイソシアネート(b)のイソシアネート基1.1〜2.5当量を反応させるのが好ましく、1.3〜2.0当量を反応させるのが特に好ましい。反応温度は、70〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間程度が好ましい。このポリオール化合物(a)とポリイソシアネート(b)との反応においては、ブチルチンジラウレートのような金属系触媒または1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒などを用いて、反応を促進させるのがより好ましい。
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)、ポリイソシアネート(b)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)を一度に反応させる場合においては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)の量は、ポリイソシアネート(b)1当量に対して1.0〜1.5当量を用いるのが好ましく、1.0〜1.3当量用いるのがより好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間であるのが好ましい。
また、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)とポリイソシアネート(b)とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)を反応させる場合においては、ポリオール化合物(a)およびポリイソシアネート(b)の反応物のイソシアネート基1当量に対して、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)の水酸基0.95〜1.5当量を反応させるのが好ましく、1.0〜1.1当量を反応させるのが特に好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間であるのが好ましい。
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、重量平均分子量が3000〜50000であるのがより好ましい。ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量平均分子量が3000より小さい時は、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)の分子量が低下してウレタン基含有率が相対的に高くなるために製造時の粘度上昇による生産性低下の恐れがある。一方、50000を超えると、得られる耐指紋性光硬化性組成物の粘度が高まることによる耐指紋性光硬化性組成物の生産性の低下や、アクリレート基含有率が相対的に低下するために最終的に得られる被膜の機械的強度の低下の恐れがあり好ましくない。なおここでいう平均分子量は、重量平均分子量であり、ポリスチレンを標準として用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から算出することができる。
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であるものが用いられる。成分(A)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であることによって、良好な耐指紋性が得られることとなる。
水トレランスとは親水性の度合を評価するものであり、その値が高いほど親水性が高いことを意味する。上記水トレランスの測定方法は、23℃の条件下で、100mlビーカー内に上記ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)0.5gをテトラヒドロフラン10mlに混合して分散させ、この混合物にビュレットを用い、イオン交換水を徐々に加え、この混合物が白濁を生じるまでに要するイオン交換水の量(ml)を測定する。このイオン交換水の量(ml)を水トレランスと定義する。
溶解性パラメータ(solubility parameter、SP値と略記することもある。)とは、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、数値が小さいほど極性が低いことを示す。なお成分(A)が2種以上の混合物である場合のSP値は、各成分の溶解性パラメータの加重平均値をSP値とする。
SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
成分(A)のSP値δは次式によって与えられる。
Figure 2011099744
Figure 2011099744
Figure 2011099744
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
成分(A)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であることによって、良好な耐指紋性が得られることとなる理由は、理論に拘束されるものではないが以下のように考えられる。成分(A)はウレタン基を有しているため、分子内に局部的に極性が高い部分構造を持つ。一方、成分(A)は、水トレランスが6.0ml以下であることによって、分子全体としては、極性が低い化合物であるということとなる。ここで、指紋跡を構成する脂質成分は長鎖脂肪酸であるとされており、長鎖脂肪酸はアルキル基による極性が低い部分と極性が高いカルボキシル基から構成される。耐指紋性を向上させるには指紋跡を構成する脂質成分へのなじみ性を高くしてやればよいと考えられ、このことから上記のように分子内に局部的に極性が高い部位(ウレタン基)と分子全体として極性が低い性質を有する成分(A)を用いることで、良好な耐指紋性を付与できたものと考えられる。溶解性パラメータについても同様である。溶解性パラメータが12以下であることによって、極性の高いウレタン基を有する成分(A)は、分子全体としては極性の低い化合物であるということとなる。そしてこれにより、指紋跡を構成する脂質成分へのなじみ性が高くなり、耐指紋性が向上することとなると考えられる。なお、水トレランスが6.0ml以下であることと溶解性パラメータを12以下とすることはいずれも分子全体として極性が低い性質を示すものである。一方で、上記理論によって全て解明できるものではなく、水トレランスが6.0ml以下であること、溶解性パラメータが12以下であること、ならびにウレタン基をもつことによる局部的に極性が高い構造を有するという性質を、全て兼ね備えた成分(A)を用いることによって、耐指紋性の向上が達成されることとなる。
なお、成分(A)のより好ましい例として、例えば下記式で示されるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
Figure 2011099744
[式中、Rは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(a)の両末端の水酸基を除いた残基であり、Rはポリイソシアネート(b)の両末端のイソシアネート基を除いた残基であり、RおよびRは、同一であっても異なってよい、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(c)の水酸基を除いた残基であり、およびnは1〜60の整数である。]
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、重量平均分子量が3000〜50000であるのがより好ましい。また上記nは1〜60の整数であるのがより好ましく、1〜30の整数であるのがより好ましい。
光重合性多官能化合物(B)
上記耐指紋性光硬化性組成物はポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含有することを特徴としている。そしてこの耐指紋性光硬化性組成物においては、被膜形成成分としてさらに光重合性多官能化合物(B)が含まれる。光重合性多官能化合物(B)が含まれることによって、耐指紋性光硬化性組成物の光硬化性が向上し、また得られる被膜の機械的強度(耐擦傷性など)が高まることとなる。光重合性多官能化合物(B)は、一分子中に2以上の光重合性基を有する化合物である。光重合性多官能化合物(B)として、分子中に2個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物を用いることができる。光重合性多官能化合物(B)として、3個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物が好ましい。なお光重合性多官能化合物(B)として、2個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば、モノマーであってもオリゴマーであってもよい。
モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの低分子量ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキシド変成体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジまたはトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタまたはヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールポリ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキサイド変成体;イソシアヌル酸アルキレンオキシド変成体のジまたはトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら分子中に2個の(メタ)アクリレート基を有する化合物と分子中に3個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物の混合割合を調整して適用することで、得られる被膜の物性を調整することが可能である。光重合性多官能化合物(B)中において、分子中に3個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物の占める含有率は50〜100%が好ましく、70〜100%がより好ましい。分子中に3個以上の(メタ)アクリレート基を有する光重合性多官能化合物(B)に占める含有率が50%未満の場合、最終的に得られるフィルムの耐スチールウール性に代表される傷つき防止性、耐溶剤性、ペン摺動性が低下する恐れがあり好ましくない。
オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートなどのオリゴマーが挙げられる。なお、光重合性多官能化合物(B)として用いることができるこれらのオリゴマーは、重量平均分子量が300〜5,000であることが好ましく、500〜3,000であることがより好ましい。5,000より大きいと高粘度になり、取り扱いが困難となる恐れがある。
これらの光重合性多官能化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
光重合性多官能化合物(B)として、一分子中に3またはそれ以上の光重合性基(即ち、(メタ)アクリレート基)を有するモノマーを少なくとも一部に用いるのが好ましい。このようなモノマーを用いることによって、得られる被膜の機械的強度をより高めることができる。好ましい光重合性多官能化合物(B)として、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
光重合開始剤(C)
上記耐指紋性光硬化性組成物は、光重合開始剤(C)を含むのが好ましい。光重合開始剤(C)が存在することによって、紫外線などの活性エネルギー線照射に対する耐指紋性光硬化性組成物の重合性が向上することとなる。光重合開始剤(C)の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。さらには、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノンなどの水素引き抜き型開始剤を用いることもできる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
上記光重合開始剤(C)のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)
上記耐指紋性光硬化性組成物は、必要に応じて、ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)を含んでもよい。耐指紋性光硬化性組成物に、ポリエーテル樹脂またはポリエーテル(メタ)アクリレートである成分(D)が含まれることによって、耐指紋性能が向上するという利点がある。特に、成分(D)が含まれることによって、より脂質とのなじみ性が改善され、指紋拭取り性がさらに向上するといった特異的な性能が達成されることとなる。
成分(D)としてのポリエーテルとして、炭素数3以上であるアルキレンオキシドを含むポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルモノオールまたはポリエーテルポリオールなどが挙げられる。「炭素数3以上であるアルキレンオキシド」として、例えば、−O−CH−CH(CH)−で示されるイソプロピレンオキシドを含むプロピレンオキシド、−O−(CH−で示されるテトラメチレンオキシド、−O−CH−CH(CHCl)−で示される3−クロロプロピレンオキシド、など、炭素数3〜4のアルキレンオキシドなどが挙げられる。この「炭素数3以上であるアルキレンオキシド(d−1)」はプロピレンオキシドであるのがより好ましく、イソプロピレンオキシドであるのがさらに好ましい。ポリエーテルのアルキル基部分の炭素数が3に満たないアルキレンオキシド(d−2)も使用することができるが、耐指紋性能は「炭素数3以上であるアルキレンオキシド」が主として付与するので、炭素数3以上のアルキレンオキシドは成分(D)の少なくとも一部を構成することが好ましい。
ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)は、分子量が400以上であるのが好ましく、700以上であるのがより好ましい。なおここでいう分子量は、JIS K 1557により算出した水酸基価の測定結果から算出することができる。
ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)として、市販されているポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレートを用いてもよい。好ましく用いることができるポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレートとして、例えば、キシダ化学(株)社製ポリプロピレンシリーズおよび新中村化学(株)社製ポリエーテルジアクリレートシリーズなどが挙げられる。
上記耐指紋性光硬化性組成物においては、各成分(A)、(B)および(D)の量は、
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)0.5〜40質量%、
光重合性多官能化合物(B)30〜99.5質量%、
ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)0〜30質量%、
であるのが好ましい。
より詳しくは、成分(D)が含まれない場合は、
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)0.5〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%
光重合性多官能化合物(B)30〜99.5質量%、より好ましくは65〜98質量%、
であるのがより好ましい。なお上記成分(A)および(B)の総質量が100質量%となることを条件とする。
また、成分(D)が含まれる場合は、
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)0.5〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%、
光重合性多官能化合物(B)30〜97質量%、より好ましくは45〜95質量%、
ポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、
であるのがより好ましい。なお上記成分(A)、(B)および(D)の総質量が100質量%となることを条件とする。さらに配合される成分(D)が炭素数3以上であるアルキレンオキシド(d−1)と炭素数3未満のアルキレンオキシド(d−2)を併せ持つ場合、当該成分(D)に含まれる(d−1)と(d−2)の合計のうち、25質量%以上は(d−1)であることが好ましい。(d−1)の構成比率が上記の好ましい下限を下回ると、得られる被膜の耐指紋性が低下する場合があり、好ましくない。またこの場合、成分(D)に含まれる(d−1)の上記比率の上限は100質量%である。
また配合される成分(D)が、(d−1)由来のポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D−1)と(d−2)由来のポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D−2)の混合物である場合、(D−1)と(D−2)の合計のうち、10質量%以上は(D−1)であることが好ましい。(D−1)の配合比率が上記の好ましい下限を下回ると、得られる被膜の耐指紋性が低下する場合があり、好ましくない。またこの場合、成分(D)に含まれる(D−1)の上記比率の上限は100質量%である。
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の量が上記範囲より少ない場合は、得られる耐指紋性被膜の耐指紋性の低下や耐屈曲性またはカール性などが劣ることとなるおそれがある。またポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の量が上記範囲を超える場合は、耐スチールウール性または耐溶剤性などが低下するおそれがある。光重合性多官能化合物(B)の量が30質量%より少ない場合は、耐擦傷性、表面の膜硬度などの物理的強度が劣ることとなるおそれがある。
また光重合開始剤(C)は、成分(A)、(B)および(D)の総質量100質量部に対して0.1〜20質量部含むのが好ましい。光重合開始剤(C)の量が上記範囲を外れる場合は、光硬化性が不十分となり、物理的強度が劣ることとなるおそれがある。
他の成分
上記耐指紋性光硬化性組成物は、必要に応じて、エチレン性不飽和基を1個有する化合物を配合することもできる。このような化合物を含めることによって、得られるコーティング液の粘度、得られる被膜の密着性、硬度、および柔軟性を調整することができる。エチレン性不飽和基を1個有する化合物としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状構造を有する(メタ)アクリレート化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノールのアルコキシオキシド付加物の(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレーとなどのグリコールのモノ(メタ)アクリレート;N−ビニルピドリロン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物などが挙げられる。
上記耐指紋性光硬化性組成物は、必要に応じて無機粒子または有機粒子などの充填剤を含んでもよい。無機粒子または有機粒子を含むことによって、被膜の耐擦傷性および表面の膜硬度をさらに向上させたり、防眩性を付与することができる。これらの無機粒子または無機粒子は、平均粒径5nm〜数μm程のものであるのがより好ましい。用いることができる無機粒子として、例えば、金属または金属の酸化物の微粒子を挙げることができる。金属としては、例えば、Si、Ti、Al、Zn、Zr、In、Sn、Sbなどが挙げられる。具体的な無機粒子として、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。さらに、これらの無機粒子は、粒子表面をUV硬化可能な官能基、例えばアクリレート基で変性処理してあることがより好ましい。また、用いることができる有機粒子として、例えば、アクリル、ポリエステルなどの有機粒子が挙げられる。
なお、無機粒子または有機粒子を用いる場合は、耐指紋性光硬化性組成物の固形分質量に対して0.1〜50質量%ほど用いるのが好ましい。無機粒子または有機粒子の含有量が50質量%を超える場合は、得られる被膜の膜強度が弱くなるおそれがある。
上記耐指紋性光硬化性組成物はさらに、必要に応じて、希釈溶媒としての有機溶媒を含んでもよい。このような有機溶媒として、例えば、用いられる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
上記耐指紋性光硬化性組成物はさらに、必要に応じて、光重合開始助剤、帯電防止剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料などの通常用いられる添加剤を含んでもよい。例えば、好ましく用いることができる光重合開始助剤として、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
耐指紋性光硬化性組成物の調製および被膜調製
上記耐指紋性光硬化性組成物は、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、光重合性多官能化合物(B)および光重合開始剤(C)、そして必要に応じたポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)を含有する。そして上記耐指紋性光硬化性組成物を用いることによって、単層であっても耐指紋性に非常に優れ、かつ耐擦傷性、表面の膜硬度および耐指紋性耐久性にも優れた被膜を、形成することができる。
また、上記耐指紋性光硬化性組成物は光硬化性である。そのため、被膜を形成する際に、加熱重合させる必要がないという利点を有する。光学表示装置の中には、例えば樹脂フィルムなど耐熱性が低い部材を含んでいるものも多く含まれる。上記耐指紋性光硬化性組成物は、そのような耐熱性が低い部材を含む光学表示装置そして樹脂フィルムに対しても、良好に被膜を形成することができるという利点を有する。
上記耐指紋性光硬化性組成物は、上記成分を混合することによって調製することができる。また、組成物の調製時に、必要に応じて、希釈に用いることができる有機溶媒を用いてもよい。なお、上記耐指紋性光硬化性組成物は、希釈して用いてもよく、また希釈することなく用いてもよい。
耐指紋性光硬化性組成物の調製方法としては、例えば、上記ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、光重合性多官能化合物(B)および光重合開始剤(C)、そして必要に応じたポリエーテルまたはポリエーテル(メタ)アクリレート(D)および添加剤、有機溶媒などを混合することによって、調製することができる。
なお上記耐指紋性光硬化性組成物は、シリコーン系添加剤およびフッ素系添加剤いずれも含まないのが好ましい。これらの添加剤は、得られる被膜の撥水性および撥油性を向上させ防汚性を向上させる作用がある一方、この撥水性および撥油性の向上により被膜に付着した油脂成分をはじいてしまい、かえって汚れが目立ってしまうおそれがあるからである。
上記耐指紋性光硬化性組成物を用いることにより、耐指紋性フィルムを容易に調製することができる。この耐指紋性フィルムは、透明基材と被膜とを有する。この被膜は、上記の耐指紋性光硬化性組成物から形成される層であり、この層の存在によって耐指紋性が発揮されることとなる。
耐指紋性フィルムの調製に用いられる透明基材としては、各種透明プラスチックフィルム、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムなどが使用できる。透明基材として、ポリエチレンテレフタレートを使用するのが好ましい。なお、透明基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
耐指紋性を有する被膜は、透明基材上に、上記の耐指紋性光硬化性組成物を塗装することにより形成される。耐指紋性光硬化性組成物の塗装方法は、耐指紋性光硬化性組成物および塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(この方法は米国特許2681294号明細書に記載される公知の方法である。)などにより塗装することができる。
透明基材上に塗装された耐指紋性光硬化性組成物は、次いで活性エネルギー線の照射に曝されることによって硬化し、これにより耐指紋性の被膜が形成される。なお本明細書において「光硬化性」という用語は広義の意味で用いられており、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線などの光線に加えて、X線、γ線などの電磁波、電子線、プロトン線、中性子線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化する性質を意味する。この中でも、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格などの面から、紫外線照射による硬化が有利である。紫外線硬化させる方法としては、200〜500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、100〜3000mJ/cmほど照射する方法などが挙げられる。
また、上記耐指紋性光硬化性組成物を、光学表示装置の表面上に塗装することによって、光学表示装置の表面上に被膜を形成することができる。上記耐指紋性光硬化性組成物を用いて被膜を設けることができる光学表示装置として、タッチパネルディスプレイ、液晶表示ディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、蛍光ディスプレイ、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。これらの光学表示装置の表面に用いられる各種透明プラスチックフィルム、透明プラスチック板およびガラスなどに、上記耐指紋性光硬化性組成物を塗布することによって、光学表示装置の表面上に被膜を形成することができる。
さらに上記耐指紋性光硬化性組成物を、金属メッキ加工または金属メッキ加工がなされたような塗装によって鏡面仕上げが施された物品の表面上に塗装することによって、これらの物品の表面上に耐指紋性の被膜を形成することができる。鏡面仕上げが施された物品として、例えば、携帯情報端末、家庭用電気製品、家具、室内調度品または化粧品のケースなどが挙げられる。これらの鏡面仕上げが施された物品の表面上に、耐指紋性の被膜を設けることによって、指紋跡の付着を防ぐことができる。
耐指紋性光硬化性組成物の塗装方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、スプレー法、ローラー法、はけ塗り法などが挙げられる。そして塗装する光学表示装置の種類に応じて、適した塗装方法を選択することができる。耐指紋性光硬化性組成物の塗装において、得られる被膜の厚さが0.1〜20μmとなるように塗装するのが好ましい。こうして塗装された耐指紋性光硬化性組成物は、上記と同様に活性エネルギー線の照射に曝されることによって硬化し、これにより耐指紋性の被膜が形成される。
上記耐指紋性光硬化性組成物を用いることによって、光学表示装置表面または鏡面仕上げが施された物品などに、優れた耐指紋性を有する被膜を、より簡便に設けることができる。そして上記耐指紋性光硬化性組成物により得られる被膜は、透明性にも優れており、光学表示装置表面または鏡面仕上げが施された物品の表面などにおける使用に非常に適している。上記耐指紋性光硬化性組成物により得られる被膜は、さらに、優れた耐擦傷性および表面の膜硬度を有する。この被膜は、単層であっても、優れた耐指紋性、そして高い耐擦傷性および表面の膜硬度を有している。さらに上記耐指紋性光硬化性組成物は光硬化性であるため、このような優れた性能を有する被膜を、光学表示装置表面または鏡面仕上げが施された物品の上に、より簡便に形成できるという利点がある。そのため上記耐指紋性光硬化性組成物を用いることによって、生産効率および製造コストに優れた被膜およびこの被膜を有する耐指紋性フィルムを形成することができる。さらにこの被膜は、耐指紋性を長期間維持させることができ、耐指紋性耐久性にも優れているという利点を有する。
耐指紋性硬化性組成物
優れた耐指紋性を有する被膜が得られる組成物の他の一例として、
(イ)分子内に活性メチレン基または活性メチン基(a)と飽和シクロアルキル基(b)とを有するアクリル樹脂、若しくは活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂との混合物、
(ロ)分子内に2個以上の光硬化性官能基を有する多官能重合性化合物、
(ハ)光重合開始剤、および
(ニ)マイケル反応触媒、
を含有する耐指紋性硬化性組成物、が挙げられる。以下、各成分について詳述する。
成分(イ)
上記耐指紋性硬化性組成物の成分(イ)は、分子内に活性メチレン基または活性メチン基(a)と飽和シクロアルキル基(b)とを有するアクリル樹脂、若しくは活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂との混合物である。成分(イ)のアクリル樹脂は、活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリルモノマー、飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリルモノマー、およびその他のアクリルモノマーを共重合することにより合成される。また、その他のアクリルモノマーとして、(メタ)アクリル酸などカルボキシル基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピルエステル(メタ)アクリレート、プラクセルFM−1(アクリル酸2−ヒドロキシエチルとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業(株)製などの水酸基含有モノマー、などの反応性基を有するアクリルモノマーを共重合させたのち、付加反応などにより重合性不飽和結合をアクリル樹脂中に導入することも可能である。重合性不飽和結合は飽和シクロアルキル基(b)のみを含むアクリル樹脂を用いる場合に、このアクリル樹脂には反応性基が無く硬化性が不足するので、重合性不飽和基を導入することにより硬化度を上げることができる。
活性メチレン基は、2個のカルボニル基によって挟まれ、そのカルボニル基によって電子過剰状態にありプロトンを放出してカルボアニオンを生成しやすい状態にあるメチレン基であり、活性メチン基は、3個のカルボニル基によって挟まれ、そのカルボニル基によって電子過剰状態にありプロトンを放出してカルボアニオンを生成しやすい状態にあるメチン基である。活性メチレン基または活性メチン基は、加熱時に不飽和二重結合とマイケル付加反応をする。
活性メチレン基を有するアクリルモノマーの具体例としては、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−(4−アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミド、2−(N−アセトアセチルアミノエチル)(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、活性メチン基を有するアクリルモノマーは、EP第0310011号公報に記載されているような、メタントリカルボン酸またはこれらの誘導体と、ヒドロキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドなど)との反応物が挙げられる。
飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリルモノマーは、飽和シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレートであって、好ましくは炭素数6〜18、良い好ましくは炭素数6〜12の飽和シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。具体例をいくつか例示すると、たとえば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメタノールモノ(メタ)アクリレート等をあげることができる。炭素数6未満の飽和シクロアルキル基では、親油性が十分ではないため好ましくない。また、炭素数が18を超えるシクロアルキル基では、多官能重合性化合物(ロ)との相溶性が低下し被膜が白濁するなど、外観の不具合が発生する。尚、上記組成物は、撥水基として通常使われるシリコン(主にポリジメチルシロキサン)やフッ素(主にパーフルオロアルキル基)を含まないのが望ましい。これらのモノマーは得られるコーティング層の撥水性および撥油性を向上させ防汚性を向上させる作用がある一方、この撥水性および撥油性の向上によりコーティング層に付着した油脂成分をはじいてしまい、かえって汚れが目立ってしまうおそれがあるからである。
アクリル樹脂(イ)は上記の活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリルモノマーおよび飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリルモノマー以外に、その他のアクリルモノマーを共重合してもよい。アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジルなどの官能基を有さないアクリルモノマー、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピルエステル、プラクセルFM−1(アクリル酸2−ヒドロキシエチルとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業(株)製)などの水酸基を有するアクリルモノマー、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するアクリルモノマー、アクリルアミド、およびN−メチロールアクリルアミドのようなその誘導体、アクリロニトリルなどがあり、非アクリル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどがあげられる。
アクリル樹脂(イ)は、上記アクリルモノマーを共重合することにより得られる。共重合は、一般に、均一性を向上させるために溶媒を使用することが好ましい。かかる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、イソブタノール等アルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メトキシエタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等のカルボン酸エステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)、2−エトキシエチルアセタート等のエーテルエステル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒が使用される。また、水を、反応系の均一性が損なわれない範囲で加えてもよい。
アクリル樹脂(イ)を得るためのラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合に用いられる公知の開始剤を用いることができる。代表例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2'−アゾビスブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V65)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が特に好適に使用される。重合液中のモノマー類の総和濃度は通常10〜60質量%であり、重合開始剤は通常単量体混合物に対し、0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%の量で使用される。
好ましい重合温度は用いるラジカル重合開始剤により異なるが、重合温度は20〜150℃、重合時間は1〜72時間である。
アクリル樹脂(イ)において、活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリルモノマーは、アクリルモノマー全体の総質量に対して、10〜80質量%、好ましくは25〜70質量%の量で含有し、飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリルモノマーはアクリルモノマー全体の総質量に対して、2〜60質量%、好ましくは15〜60質量%の量で含有する。活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリルモノマーの量が、下限より少ないと、マイケル付加反応が十分でなく耐溶剤性が不足したり、耐摩耗性が不足する。耐溶剤性が不足した皮膜を備える物品を消費者に提供した場合、当該物品をアルコールなどの溶剤を含む清掃剤で清掃した場合に当該皮膜が溶解する可能性があり好ましくない。また、飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリルモノマーの量が下限より少ないと、耐指紋性が不足し、逆に、アクリルモノマーの量が上限より多いと、多官能重合性化合物(ロ)との相溶性が悪化し、被膜が白濁するなどの外観異常が起こる。
アクリル樹脂(イ)は、2種類の態様が可能である。第1は、活性メチレン基または活性メチン基(a)および飽和シクロアルキル基(b)の両方が1つのアクリル樹脂分子内に存在するアクリル樹脂を用いる場合であり、第2は活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂(イ)と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂(イ)を別々に合成して、両方のアクリル樹脂(イ+イ)を混合して用いる場合である。何れの場合でも耐指紋性効果を発揮することができる。
アクリル樹脂(イ)は、上記の何れの場合でも、好ましくは重量平均分子量5,000〜50,000、より好ましくは5,000〜15,000を有する。重量平均分子量は、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000未満であると、マイケル付加反応後の耐溶剤性が不十分になり、50,000を超えると、2液混合後の増粘が激しくなり、ポットライフが短くなる場合や、多官能重合性化合物(ロ)との相溶性が低下し被膜が白濁する。ポットライフが2液混合後の8時間を下回る場合、工場での操業時間内に当該塗料を消費するように工程を変更する必要が発生する場合があり、実用上好ましくない。ただし、活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂(イ)と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂(イ)を別々に合成して、両方のアクリル樹脂(イ+イ)を混合して用いる場合、飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂(イ)は、マイケル付加反応に関与しないため、分子量が上記範囲内でなくても構わず、重量平均分子量は200,000を下回るものであれば特に問題がない。
成分(イ)のアクリル樹脂は、上記耐指紋性硬化性組成物中に固形分質量で好ましくは10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%で存在する。10質量%より少ないと、マイケル付加反応が不十分になりマイケル付加反応後の耐溶剤性が不十分になり、50質量%より多いと、多官能性重合性化合物(ロ)の量が減少するため光硬化反応が不十分になり、耐摩耗性が不足する。
成分(ロ)
上記耐指紋性硬化性組成物の成分(ロ)は、分子内に2個以上の光硬化性官能基(即ち、エチレン性不飽和基)を有する多官能性重合性化合物である。多官能性重合性化合物は、具体的には多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル化合物(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタアクリレート、グリセロールアクロキシジメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタアクリレートなど)、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル化合物(例えば、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテートなど)、2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物(例えば、ジビニルベンゼンなど)、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体との付加物(例えば、グリシジルアクリレートやグリシジルメタアクリレートとアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸との反応物など)、(ポリ)ジイソシアネートとヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなど)を反応させて得られるウレタン化合物が挙げられる。
これらの多官能重合性化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
成分(ロ)の分子内に2個以上の光硬化性官能基を有する多官能性重合性化合物は、耐指紋性硬化性組成物中に固形分質量で好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%で存在する。50質量%より少ないと、光硬化反応が不十分になり、耐摩耗性が不足し、90質量%より多いと、活性メチレン基または活性メチン基を有するアクリル樹脂(イ)の量が減少するためにマイケル付加反応が不十分になり、マイケル付加反応後の耐溶剤性が不十分になる。
成分(イ)のアクリル樹脂と、成分(ロ)の多官能性重合性化合物との固形分配合比(成分(イ)/成分(ロ))は、好ましくは10/90〜50/50、より好ましくは20/80〜40/60である。配合比が上記範囲外であると、マイケル付加反応後の耐溶剤性が不十分になったり、光硬化反応が不十分になり耐摩耗性が不足する欠点を有する。
成分(ハ)
成分(ハ)の光重合開始剤は、成分(ロ)の多官能重合性化合物の硬化を促進するために配合される。
光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン 、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
光重合開始剤(ハ)は、成分(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)から成る耐指紋性硬化性組成物の固形分の総和の10質量%以下、好ましくは1〜5質量%の量で用いられる。1質量%より少ないと、光硬化性が不足する。10質量%を超える場合は、耐摩耗性や鉛筆硬度が低下する。
成分(ニ)
上記耐指紋性硬化性組成物の成分(ニ)は、マイケル反応触媒である。マイケル反応触媒(ニ)は、メチレン(メチン)に隣接する2個のカルボニル基等の電子吸引基が、よりメチレン(メチン)プロトンの酸性度を高め、カルボアニオン(エノレートアニオン)を生成させるために必要とされる化合物である。マイケル反応触媒(ニ)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキサイド、カリウムエトキサイドなどのアルカリ金属のアルコキシド;4級アンモニウムハライド、4級アンモニウムカーボネート、4級アンモニウムヒドロキサイド、4級アンモニウムテトラヒドロボレートなどのオニウム塩;テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンなどの3級アミン及びその有機酸との4級塩;グアニジン;アミジン;トリフェニルフォスフィンなどの3級ホスフィンなどが挙げられる。さらに、これらのマイケル反応触媒(ニ)の助触媒として、例えば特開平7−173262号により公知であるエポキシ化合物などを用いることもできる。
上記オニウム塩のカチオン部としては、具体的には、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、テトラデシルアンモニウムカチオン、テトラヘキサデシルアンモニウムカチオン、トリエチルヘキシルアンモニウムカチオン、2−ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウム(コリン)カチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、セチルトリメチルアンモニウムカチオン、2−クロロエチルトリメチルアンモニウムカチオン、メチルピリジニウムカチオン等の4級アンモニウムカチオン;テトラブチルホスホニウムカチオン等の4級ホスホニウムカチオン;トリメチルスルホニウムカチオン等の3級スルホニウムカチオン等を挙げることができる。様々な種類を工業的に入手することができる4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
また、オニウム塩のアニオン部としては、具体的には、フロライドアニオン、クロライドアニオン、ブロマイドアニオン、アイオダイドアニオン等のハライドアニオン;酢酸アニオン;安息香酸アニオン、サリチル酸アニオン、マレイン酸アニオン、フタル酸アニオン等のカルボキシレートアニオン;メタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン等のスルホネートアニオン;硫酸アニオン、メト硫酸アニオン等のサルフェートアニオン;硝酸アニオン等のナイトレートアニオン;リン酸アニオン、リン酸ジ−t−ブチルアニオン等のホスフェートアニオン等をそれぞれ挙げることができる。また、ヒドロキサイドアニオン、カーボネートアニオン、テトラヒドロボレートアニオン等も挙げることができる。硬化性の観点から、上記ハライドアニオンやカルボキシレートアニオンであることが好ましい。
オニウム塩として、具体的には、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフロライド、テトラブチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジエチルジブチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルブロマイド、テトラブチルアンモニウムアセテート、ジオクチルジメチルアンモニウムサリチレート、ベンジルラウリルジメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、トリメチルスルホニウムクロライド等を挙げることができる。
マイケル反応触媒(ニ)として、上記の化合物を単独で用いてもよく、また2種以上を組合せて用いてもよい。
マイケル反応触媒(ニ)は、成分(イ)、(ロ)、(ハ)及び(ニ)から成る耐指紋性硬化性組成物の固形分の総和の0.1〜10質量%、好ましくは1〜7質量%の量で用いられる。0.1質量%より少ないと、マイケル付加反応性が不足する。10質量%を超える場合は、耐摩耗性が低下する。
その他の成分
上記耐指紋性硬化性組成物は、必要に応じて、上述したエチレン性不飽和基を1個有する化合物、無機充填剤、有機溶媒などを含んでもよい。
耐指紋性被膜の形成方法
上記耐指紋性硬化性組成物を用いて筐体表面に耐指紋性被膜(本明細書においてはハードコート層と言うこともある。)を形成することができる。その場合、透明フィルムに上述の硬化性樹脂組成物を塗布した後、加熱して複層透明フィルムを得て、その複層透明フィルムを筐体に貼り付けて複層透明フィルムを有する筐体を得、得られた複層透明フィルムを有する筐体に活性エネルギー線を照射することにより筐体表面に耐指紋性被膜が形成される。例えば、コンピューターや携帯電話などの筐体に貼り付ける場合は、100μm程度の膜厚では、下地が認識できる程度に透明であることが望ましく、さらに着色することも可能であるが、無色透明であることが特に好ましい。加熱プロセスと活性エネルギー線照射は順番を入れ替えても、または同時に行ってもよい。上記耐指紋性硬化性組成物を用いることによって、単層であっても耐指紋性に非常に優れ、かつ耐擦傷性、表面の膜硬度および耐指紋性にも優れた被膜(即ち、ハードコート層)を、形成することができる。
上記耐指紋性硬化性組成物は、上記成分を混合することによって調製することができる。また、組成物の調製時に、必要に応じて、希釈に用いることができる有機溶媒を用いてもよい。なお、上記耐指紋性硬化性組成物は、希釈して用いてもよく、また希釈することなく用いてもよい。
耐指紋性硬化性組成物の調製方法としては、例えば、上記成分(イ)〜(ニ)、そして必要に応じてその他の成分(例えば、添加剤)を混合することによって、調製することができる。
なお上記耐指紋性硬化性組成物は、シリコーン系添加剤およびフッ素系添加剤いずれも含まないのが好ましい。これらの添加剤は、得られるコーティング層の撥水性および撥油性を向上させ防汚性を向上させる作用がある一方、この撥水性および撥油性の向上によりコーティング層に付着した油脂成分をはじいてしまい、かえって汚れが目立ってしまうおそれがあるからである。
上記耐指紋性硬化性組成物を用いることにより、耐指紋性フィルムを容易に調製することができる。この耐指紋性フィルムは、透明基材とコーティング層とを有する。このコーティング層は、上記の耐指紋性硬化性組成物から形成される層であり、この層の存在によって耐指紋性が発揮されることとなる。このような透明基材とコーティング層を備えるフィルムを筐体に貼り付けることによって、複雑な三次元意匠を有している筐体へ容易に耐指紋性を付与できるようになる。
耐指紋性フィルムの調製に用いられる透明基材としては、各種透明プラスチックフィルム、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。透明基材として、ポリエチレンテレフタレートを使用するのが好ましい。なお、透明基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
耐指紋性を有するコーティング層は、透明基材上に、上記の耐指紋性硬化性組成物を塗布することにより形成される。耐指紋性硬化性組成物の塗布方法は、耐指紋性硬化性組成物および塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(この方法は米国特許2681294号明細書に記載される方法である。)などにより塗布することができる。耐指紋性硬化性組成物の塗装において、得られるコーティング層の厚さが0.1〜20μmとなるように塗装するのが好ましい。
透明基材上に塗装された耐指紋性光硬化性組成物は、一般的にまず加熱して熱硬化して複層透明フィルムを得て、次いでその複層透明フィルムを筐体に貼り付けた後、活性エネルギー線の照射することによって硬化し、これにより耐指紋性の被膜が形成される。最初の熱硬化時の加熱温度は、高温・短時間で行うのが生産性の観点から好ましいが、透明基材の軟化温度以下である必要があり、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、60〜150℃、好ましくは80〜120℃である。また、活性エネルギー線の照射は、200〜500nmの波長の光を用いて、積算光量で100〜5000mJ/cm照射するのが好ましい。積算光量が100mJ/cm以下では、光硬化反応が不十分になり耐摩耗性が不足する。また、積算光量が5000mJ/cm以上では、被膜表面の光劣化反応が起こり、耐指紋性が低下したり、被膜が黄変する。
また、耐指紋性光硬化性組成物を塗装する製品の例として、具体的には携帯電話、ノートパソコンなどの携帯端末製品が挙げられる。また、液晶表示装置、CRT(ブラウン管)表示装置、タッチパネルディスプレーなどの光学表示装置の表面に用いられる各種透明プラスチックフィルム、透明プラスチック板およびガラスなどに、上記耐指紋性硬化性組成物の熱硬化膜を有する複層透明フィルムを貼り付けることによって、光学表示装置の表面上にコーティング層を形成することができる。また、透明プラスチック板に上記耐指紋性硬化性組成物を塗布し、熱曲げ加工することによりヘルメットのシールドやスピードメータの前面保護板に加工することが可能になる。
上記耐指紋性硬化性組成物は、加熱プロセスでマイケル付加反応により、アクリル樹脂(イ)の活性メチレン基または活性メチン基(a)と分子内に2個以上の光硬化性官能基を有する多官能重合性化合物(ロ)の光硬化性基が反応して架橋する。光照射プロセスでは、成分(ロ)の光重合性基が反応して架橋する。この二つの反応により、硬度と耐摩耗性が得られ、アクリル樹脂(イ)中の飽和シクロアルキル基が耐指紋性および耐指紋付着性を付与する。この2種類の硬化方法は、何れの硬化方法が先で他の方法が後であってもよく、また同時であってもよい。一般的には、熱硬化によるマイケル付加反応を最初に行って、その後光硬化により全体硬化を行う。
上記耐指紋性硬化性組成物は、前述のように、2段階で硬化させることが可能である。従来技術のハードコート層の伸び率は著しく小さいため、熱可塑性樹脂基材表面に形成して、ハードコート層を備える熱可塑性基材を熱加工する場合に、熱可塑性樹脂基材の伸縮に追随できず、ハードコート層にクラック等が発生したり、ハードコート層が剥離する場合がある。これに対して、上記組成物は、前述の2段階で硬化すると、前硬化の段階では完全に硬化していない半硬化の状態であるので、半硬化のハードコート層は熱可塑性樹脂基材の熱加工時の伸縮に追従可能となる。また、本発明の硬化性組成物は、先に熱硬化反応を用いて半硬化膜の形成を行い、その硬化反応を調整すると、前硬化後著しく大きな伸び率を示す。即ち、最初の加熱プロセスによりマイケル付加反応で被膜を半硬化して取扱いを容易にし、この状態で被塗物(筐体)に貼り付けたり熱曲げ加工などの加工処理も同時に行い、更に活性エネルギー線照射して完全硬化して適当な硬度を持つ耐指紋性の高いハードコート層を形成する。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中「部」および「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
実施調製例および比較調製例 耐指紋性硬化性組成物の調製および評価用ハードコートフィルムの作製
耐指紋性に差のある硬化性組成物を作製し、得られた組成物を、PETフィルム上にバーコート塗布し、熱風乾燥機で溶媒を除去乾燥した。その後、高圧水銀灯(120W/cm)で紫外線を300mJ/cmの工ネルギーとなるように露光し、硬化させることにより、被膜を形成し、ハードコートフィルムを得た。組成物の詳細な内容は下記に示す。
実施調製例1 耐指紋性光硬化性組成物1の調製
製造例1
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A1)の調製
イソホロンジイソシアネート(IPDI)666質量部、ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール1000、平均分子量1000、キシダ化学(株)社製)2000質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(混合質量比60:40)900質量部を、反応容器に加え、さらに触媒としてジブチルスズジラウレートを1000ppm、重合禁止剤としてハイドロキノンを1000ppm、および溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK、固形分が40%となる量で用いた。)を加えて、空気を吹き込みながら80℃で3時間混合した。
こうして、両末端にアクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を得た。得られたポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレートのSP値および水トレランス値を測定したところ、SP値10.8および水トレランス値3.5であった。また重量平均分子量は7000であった。なお重量平均分子量はGPC測定によるポリスチレン換算値で表した。
耐指紋性光硬化性組成物1の調製
製造例1により得られたポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート20質量部、アロニックスM305(ペンタエリスリトールトリアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(混合質量比約60:40) 80質量部およびイルガキュア184D(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン) 3質量部を混合し、そしてMIBKを溶媒として不揮発分率が40質量%となるように調整し、耐指紋性光硬化性組成物1を得た。
耐指紋性ハードコートフィルム1の作製
得られた組成物を、PETフィルム(厚さ100μm)上にバーコーター(No.12)にて、乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコート塗装し、80℃で1分間加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、高圧水銀灯(120W/cm)で紫外線を300mJ/cmの工ネルギーとなるように露光し、硬化させることにより、被膜を形成し、耐指紋性ハードコートフィルム1を得た。
実施調製例2 耐指紋性硬化性組成物2の調製
製造例2
シクロヘキシルメタクリレート222.7g、アセトアセトキシエチルメタクリレート137.3gからなるモノマー混合物(1)を混合した。この混合液を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管及び滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で120℃に加温した酢酸n−ブチル273.6gに、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート18.0gを含む酢酸n−ブチル54.0g混合溶液(2)と同時に3時間かけて等速で滴下し、その後、120℃で30分間反応させた。その後、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1.8gを酢酸n−ブチル 28.8gの溶液を滴下し、その後2時間反応させた。数平均分子量3,000、重量平均分子量6,000のアクリル共重合体(樹脂(1))を得た。
耐指紋性硬化性組成物2の調製
製造例2により得られた活性メチレン基含有アクリル共重合体(樹脂(1))30質量部、アロニックスM−402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物、東亜合成(株)社製)70質量部および1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184D、チバ・ジャパン(株)社製)5質量部を混合し、そしてMEK(メチルエチルケトン)を溶媒として不揮発分率が40質量%となるように調整した後、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(サンアプロ(株)社製)1質量部を加え、耐指紋性硬化性組成物2を得た。
耐指紋性ハードコートフィルム2の作製
耐指紋性硬化性組成物2を、PETフィルム(厚さ125μm)上にバーコーター(No.12)にてバーコート塗布し、100℃で2分間加熱して溶媒を除去乾燥することで光硬化性フィルムを得た。そのときの膜厚は7μmであった。その後、高圧水銀灯(120W/cm)で紫外線を300mJ/cmの工ネルギーとなるように露光し、硬化させることにより、耐指紋性ハードコートフィルム2を得た。
比較調製例1 ハードコート組成物(比1)の調整
アロニックスM−402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物、東亜合成(株)社製) 100質量部、イルガキュア184D(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン) 5質量部およびTEGORAD−2200N (デグサ社製)0.1質量部を混合し、そしてMIBKを溶媒として不揮発分率が50質量%となるように調整し、光硬化性であるハードコート組成物(比1)を得た。
ハードコートフィルム(比1)の作製
得られた組成物を、PETフィルム(厚さ100μm)上にバーコーター(No.8)にて、乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコート塗装し、80℃で1分間加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、高圧水銀灯(120W/cm)で紫外線を300mJ/cmの工ネルギーとなるように露光し、硬化させることにより、被膜を形成し、ハードコートフィルム(比1)を得た。
比較調製例2 耐指紋性組成物(比2)の調整
シクロヘキシルメタクリレート 20質量部と、アロニックスM−402(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物、東亜合成(株)社製) 80質量部、イルガキュア184D(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン) 5質量部およびTEGORAD−2200N(デグサ社製) 0.02質量部を混合し、そしてMIBKを溶媒として不揮発分率が50質量%となるように調整し、耐指紋性光硬化性組成物(比2)を得た。
耐指紋性ハードコートフィルム(比2)の作製
得られた組成物を、PETフィルム(厚さ100μm)上にバーコーター(No.8)にて、乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコート塗装し、80℃で1分間加熱して溶媒を除去乾燥した。その後、高圧水銀灯(120W/cm)で紫外線を300mJ/cmの工ネルギーとなるように露光し、硬化させることにより、被膜を形成し、耐指紋性ハードコートフィルム(比2)を得た。
上記方法にて作製したハードコートフィルムサンプルの耐指紋性評価を下記に従い行った。
鏡面光沢度の測定
光沢計MALUTI GROSS 268(コニカミノルタセンシング(株)社製)を用いて、サンプルの入射角20度、60度、85度の鏡面光沢度を測定した。
また、入射角75度の鏡面光沢度は、VG2000(日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。
これらの測定器を用いて、得られたハードコートフィルムサンプルの光沢度を測定し、初期光沢度とした。
耐指紋評価液付着工程および拭き取り前光沢度測定工程
耐指紋評価液であるオレイン酸をしみ込ませた布地を用意した。シリコーンゴム栓No.4の下端面(直径16mm)を、不織布ウェス(旭化成工業社製ベンコットM−1)で被覆した。ウェスのシリコーンゴム栓端面付近を覆う部分を、オレイン酸をしみ込ませた布地(スタンプ台)に荷重300gの錘をのせて押し当ててオレイン酸を含浸させたのち、得られたサンプルの被膜上にシリコーンゴム栓を300gの錘をのせて押し当て、耐指紋評価液(オレイン酸)を付着させた。
次いで耐指紋評価液が付着した部分の鏡面光沢度を測定し、拭き取り前光沢度とした。
耐指紋評価液拭き取り工程および拭き取り後光沢度測定工程
各ハードコートフィルムについて、耐指紋評価液付着後、ウエス(旭化成工業社製ベンコットM−1)の上に直径45mm、荷重300gの錘をのせて耐指紋評価液を拭き取った。拭き取り回数が5回後、10回後、15回後、20回後のそれぞれの時点で鏡面光沢度(拭き取り後光沢度)を測定した。
鏡面光沢度を用いた耐指紋性評価
上記より測定された、初期光沢度、拭き取り前光沢度および拭き取り後光沢度を用いて、下記式より、付着性評価率(%)および拭き取り後評価率(%)を求めた。
付着性評価率(%)=(拭き取り前光沢度)/(初期光沢度)×100
拭き取り後評価率(%)=(拭き取り後光沢度)/(初期光沢度)×100
なお、下記表中、付着性評価率(%)は「拭き取り回数 0回」として記載しており、拭き取り後評価率(%)は「拭き取り回数 5回、10回、20回」として記載している。
得られた付着性評価率(%)および拭き取り後評価率(%)を用いて、下記基準に従い耐指紋性を評価した。付着性評価率(%)は、数値が高いほど、指紋跡が付き難く、耐指紋性が良好である、ということができる。また拭き取り後評価率(%)は、いずれも数値が高いほど、油脂成分の拭き取り性が良好であり、耐指紋性が良好である、ということができる。
20度鏡面光沢度での評価
拭き取り回数5〜20回の拭き取り率で最も低い値が
◎:拭き取り率が85%以上
○:拭き取り率が75%以上〜85%未満
△:拭き取り率が65%以上〜75%未満
×:拭き取り率が65%未満
60度〜85度鏡面光沢度での評価
拭き取り回数5〜20回の拭き取り率で最も低い値が
◎:拭き取り率が95%以上
○:拭き取り率が90%以上〜95%未満
△:拭き取り率が80%以上〜90%未満
×:拭き取り率が80%未満
比較評価例1 ヘイズ値を用いた耐指紋性評価1
得られたハードコートフィルムサンプルのヘイズ値を測定した。次いで、耐指紋評価液であるオレイン酸を、シリコーンゴム栓No.4を用いて、上記と同様にして付着させた。各サンプルについて、耐指紋評価液付着後、次いでウエス(旭化成工業社製ベンコットM−1)の上に直径45mm、荷重300gの錘をのせて耐指紋評価液を拭き取り、拭き取り回数が5回後、10回後、20回後のそれぞれの時点で、サンプルのヘイズを下記に従い測定した。耐指紋評価液付着前と、耐指紋評価液付着後または耐指紋評価液拭き取り後とのヘイズ値の差としてΔヘイズ値を求めた。得られたΔヘイズ値と評価結果を表に示す。このΔヘイズ値の値が小さいほど、油脂成分の拭き取り性が良好である、つまり耐指紋性が良好である、ということができる。
ヘイズ(曇価)および全光線透過率の測定
ヘイズメーター(スガ試験機社製)を用いて、サンプルの拡散透光率(Td(%))および上記全光線透過率(Tt(%))を測定し、ヘイズ値を算出した。
H=Td/Tt×100
H:ヘイズ(曇価)(%)
Td:拡散透光率(%)
Tt:全光線透過率(%)
耐指紋性の評価(ヘイズ値での評価)
拭き取り回数5〜20回におけるΔヘイズ値のうち、最も高い値を求め下記の基準によって耐指紋性を評価した。
◎:Δヘイズが0.5以下
○:Δヘイズが1.0以下〜0.5未満
△:Δヘイズが5.0以下〜1.0未満
×:Δヘイズが5.0以上
比較評価例2 ヘイズ値を用いた耐指紋性評価2
得られたサンプルの被膜上に、オレイン酸を1滴垂らした。次いでウェス(旭化成工業社製ベンコットM−1)を用いて1回、10回、20回および30回拭き取った。評価試験前および拭き取り後のヘイズ値を測定し、Δヘイズ値を求めた。得られたΔヘイズ値と評価結果を表に示す。このΔヘイズ値の値が小さいほど、油脂成分の拭き取り性が良好である、つまり耐指紋性が良好である、ということができる。
耐指紋性の評価(ヘイズ値での評価)
拭き取り回数1〜30回におけるΔヘイズ値のうち、最も高い値を求め下記の基準によって耐指紋性を評価した。
◎:Δヘイズが0.5以下
○:Δヘイズが1.0以下〜0.5未満
△:Δヘイズが5.0以下〜1.0未満
×:Δヘイズが5.0以上
参考評価:目視評価
被膜に指紋を付け、クリーンワイパーを用いて軽く10回拭き取り、拭き取り時の指紋および拭き取り跡の目立ちやすさや、指紋が拭き取れたかどうか目視評価にて下記の基準で評価した。
◎:拭き取り時に指紋が目立ちにくく、指紋の拭き取り跡が残らない
○:拭き取り時に指紋が少し目立つが、指紋の拭き取り跡が残らない。
△:拭き取り時に指紋が少し目立ち、僅かに拭き取り跡が残る。
×:拭き取り時に指紋が目立ち、拭き取れ跡が残り容易に拭き取れない。
上記評価結果を下記表にまとめる。但し下記表中の「実施評価例」における「85度鏡面光沢」は参考評価である。
Figure 2011099744
実施評価例および比較評価例に示されるとおり、入射角20〜75度での鏡面光沢度を用いた耐指紋性評価は、従来より行われている目視評価との相関性が高いことが確認された。
一方で、入射角85度での鏡面光沢度を用いた耐指紋性評価は、比較調製例2も良好な結果となっており、入射角20〜75度のものと比較して目視評価との相関性に欠けることがわかる。
Δヘイズを用いた比較評価例1、2はいずれも、実施調製例1、2と比較調製例2との明確な評価差が生じておらず、目視評価との相関性に欠けることがわかる。
また、実施調製例1、2の組成物を用いて得られたハードコートサンプルは、比較調製例1、2の組成物を用いて得られたハードコートサンプルと比較して、優れた耐指紋性を有することも確認できた。
本発明の耐指紋性評価方法は、今まで目視での官能評価に対して定量的な評価が可能となる。この評価方法は、従来のヘイズ値を測定する方法が光の透過性の差を評価するのに対し、光の反射の差を利用した評価方法であり、目視評価時の角度依存性も考慮にいれた評価方法である。本発明の耐指紋評価方法はまた、種々の被評価物に応用可能であり、特にヘイズ値による評価が不可能である、不透明な筐体の表面のハードコート層(耐指紋性被膜)の耐指紋性の評価にも用いることができるという利点がある。

Claims (6)

  1. 光沢計を用いて、被塗物上に形成された被膜の75〜20度鏡面光沢度を測定し初期光沢度とする、初期光沢度測定工程、
    該被膜上に耐指紋評価液を付着させる、耐指紋評価液付着工程、
    該耐指紋評価液が付着した部分の該鏡面光沢度を測定する、拭き取り前光沢度測定工程、
    付着した耐指紋評価液を拭き取る、耐指紋評価液拭き取り工程、
    耐指紋評価液拭き取り後の該鏡面光沢度を測定する、拭き取り後光沢度測定工程、および
    得られた測定値を下記式で処理し、付着性評価率および拭き取り後評価率を求める、算出工程、
    付着性評価率(%)=(拭き取り前光沢度)/(初期光沢度)×100
    拭き取り後評価率(%)=(拭き取り後光沢度)/(初期光沢度)×100
    を包含する、被膜の耐指紋性評価方法。
  2. 前記耐指紋評価液拭き取り工程における拭き取り処理が、荷重5〜50g/cmで、払拭材を1〜40回往復させて、耐指紋評価液を拭き取る処理である、請求項1記載の被膜の耐指紋性評価方法。
  3. 前記耐指紋評価液付着工程における付着処理は、
    下端面部の直径13mm以上であるゴム栓の該下端面を、織布または不織布で被覆し、該被覆部に耐指紋評価液を含浸し、
    耐指紋評価液が含浸したゴム栓の下端面部を、荷重50〜300g/cmで前記被膜上に押しあてて、被膜上に耐指紋評価液を付着させる、
    手順である、請求項1または2記載の被膜の耐指紋性評価方法。
  4. 前記耐指紋評価液が、高級脂肪酸、テルペン類およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3いずれかに記載の被膜の耐指紋性評価方法。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の耐指紋性評価方法において60度鏡面光沢度を測定した場合における付着性評価率および拭き取り後評価率が、いずれも85%以上である、耐指紋性被膜であって、
    該被膜が、下記成分:
    両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、
    光重合性多官能化合物(B)、および
    光重合開始剤(C)、
    を含み、
    該ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、下記式(1):
    Figure 2011099744
    [式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
    で示される構造を有し、および
    該ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下である、
    耐指紋性光硬化性組成物によって形成された被膜である、耐指紋性被膜。
  6. 請求項1〜4いずれかに記載の耐指紋性評価方法において60度鏡面光沢度を測定した場合における付着性評価率および拭き取り後評価率が、いずれも85%以上である、耐指紋性被膜であって、
    該被膜が、下記成分:
    (イ)分子内に活性メチレン基または活性メチン基(a)と飽和シクロアルキル基(b)とを有するアクリル樹脂、若しくは活性メチレン基または活性メチン基(a)を有するアクリル樹脂と飽和シクロアルキル基(b)を有するアクリル樹脂との混合物、
    (ロ)分子内に2個以上の光硬化性官能基を有する多官能重合性化合物、
    (ハ)光重合開始剤、および
    (ニ)マイケル反応触媒、
    を含む耐指紋性硬化性組成物によって形成された被膜である、耐指紋性被膜。
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