JP2011061171A - 変圧器設計システムおよび変圧器設計プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】あらかじめ設定した条件下において励磁突入電流の低減を実現した変圧器を設計する。
【解決手段】基本条件入力部と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を設定する初期値設定部と、前記仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、試行計算中に基本条件と仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、試行計算中に機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、最終的に選択された組に含まれる前記仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】基本条件入力部と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を設定する初期値設定部と、前記仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、試行計算中に基本条件と仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、試行計算中に機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、最終的に選択された組に含まれる前記仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、変圧器設計システムおよび変圧器設計プログラムに関する。
マンションなどの集合住宅や工場などでは大容量の電力が必要となることから、構内に電気工作物として変圧器を設置し、構外から供給された高電圧を低電圧に変圧して、局地的に電力をまかなう場合がある。このような変圧器は、整備または修繕のために必要に応じて停止され、また稼働される。
需要家に多く設置されている二巻線変圧器は、系統構成によっては投入時に生じる励磁突入電流に起因する過渡的な電圧降下、共振性の過電流現象などにより、近隣の他需要家に対して設備の停止、誤動作などの電力品質上の障害を引き起こす懸念がある。
一方、昨今は、需要家設備に電圧変動などに対して鋭敏な機器が多く含まれることになり、他の需要家変圧器の励磁突入電流などに起因して停止する現象が見られるようになった。またこのような過渡現象をきっかけとする高調波引き込みによる障害も顕在化するようになった。このため、これらの障害を引き起こさないように、さらに高品質な電力を供給することが期待されている。
励磁突入電流の大きさを決定する要因は、主として残留磁束、投入点(位相)、変圧器の磁気飽和特性である。残留磁束は最大で鉄心飽和磁束の約85%であり、変圧器開放時の電圧波形変化から設計することができる。なお残留磁束は、三相の場合、各相の和は0になる。投入点(位相)は、残留磁束が+の相の場合、電圧0点かつdV/dt>0の状態で電源投入すると、突入電流が大になる。磁気飽和特性は特に影響が大きく、中でもコイルの空心インダクタンスが小さく、定格磁束密度が大のときに、突入電流は大になる。
変圧器の投入時に生じる励磁突入電流は原理的に発生するものであって、完全に回避することはできない。しかし、全く回避はできないまでも、ある程度緩和するための方法としては、以下のようなものが提案されている。
第1の方法として、投入時の電圧位相を制御する方法がある(例えば非特許文献1)。非特許文献1では、遮断時の変圧器側電圧を用いて残留磁束を設計し、これに基づいて位相制御投入を行うことにより、励磁突入電流をランダム投入におけるピーク値の15%以下に抑制できたとしている。
第2の方法として、投入時に抵抗を介して系統と接続する開閉器を用いる方法がある(例えば非特許文献2)。非特許文献2には、投入抵抗を介した接点を先に投入し、変圧器の励磁突入電流を抑制した後、抵抗を介しない主接点を投入する構成が記載されている。
第3の方法として、やはり投入時に抵抗を介して系統と接続するのであるが、あらたな開閉装置を設けるのではなく、変圧器内蔵の負荷時タップ切換装置(LTC)によって抵抗の短絡を切り替える構成も提案されている(非特許文献3)。非特許文献3では、抵抗(抑制抵抗室)をLTCの切替開閉器室の隣に配置するため、従来の変圧器と寸法的に変わらないとしている。
「残留磁束を考慮した変圧器位相制御投入に関する基礎検討」,蔦田,平位,香山,伊藤,電学論B 123, 6, pp.765-771(2003))
「三菱(屋内用)高圧交流負荷開閉器(変圧器励磁突入電流抑制機能付)エネセーバ」 (2007.5)(パンフレット)
「励磁突入電流抑制変圧器の開発」,水野,小川,池垣,田中,越智,鈴木,平成6年電気学会電力・エネルギー部門大会論文集 598, pp.778-779 (1995)
上記のような技術を用いれば、需要家の設備にある変圧器の投入時に生じる励磁突入電流が近隣の他の需要家の設備に与える過電流、電圧低下、高調波といった影響を緩和することは可能である。
しかし、非特許文献1〜3のいずれにおいても、従来の変圧器にはなかった機器や装置を付加することが必要である。例えば非特許文献1では、電圧計や、位相制御投入を行う制御装置、および精密に位相制御を実行しうる高精度な開閉器が必要である。非特許文献2では、投入時のみに使用される抵抗と、投入時のみに抵抗を介して接続する開閉機構が必要である。非特許文献3においては、やはり投入時のみに使用される抵抗が必要であることに加えて、そもそも負荷時タップ切換装置を備えた変圧器は稀少である。これらのような機器の追加は必然的に装置コストの上昇を招くため、需要家に提案しても受け入れられにくいという問題がある。
そこで、変圧器の磁気飽和特性を調整することによって、励磁突入電流の大きさを抑制することが考えられる。磁気飽和特性は鉄心や巻線の形状などによって決定され、追加の機器や装置、精密な制御などを必要としない。このため装置コストの上昇を招くことがなく、また可動部分の故障も生じないことから、理想的な解決手段であるということができる。
ただし、高圧系統の需要家に多く設置されている容量2000kVA以下の変圧器は、省エネルギー仕様のJIS規格C4304(油入変圧器,2005改正)、C4306(モールド変圧器,2005改正)に準拠している。したがって、励磁突入電流の影響対策とこれら規格における損失レベルとを両立しうる変圧器が望まれるが、その設計方法は現状において見だせていない。
さらに、特に既存の変圧器との置き換えを考える場合、変圧器の機器定数を既存のものと一致させる必要がある。既設の変圧器の機器定数は、変圧器に取り付けられた銘板の記載から得られる値(銘板値)である。銘板の提示およびその記載内容については規格が定められており(JIS C 4304など)、定格容量、定格周波数、定格電圧など一定の情報を得ることができる。すなわち、単に励磁突入電流を抑えた変圧器を製造すればよいわけではなく、任意の条件に応じて最適な鉄心や巻線の形状などを決定することのできる設計方法が求められている。
そこで本発明は、あらかじめ設定した条件下において励磁突入電流の低減を実現し、さらにはエネルギー消費効率の向上を両立しうる変圧器を設計することが可能な変圧器設計システムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、変圧器の機器定数を設計するシステムであって、定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む基本条件が入力される基本条件入力部と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を設定する初期値設定部と、仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に基本条件と仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、最終的に選択された組に含まれる仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部とを備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、あらかじめ設定した基本条件の下において励磁突入電流の低減を実現し、さらにはエネルギー消費効率の向上を両立しうる変圧器を設計することができる。
探索部が用いる目的関数には、負荷損または無負荷損に基づく項を含んでいてもよい。これによりエネルギー消費効率の向上も両立することができる。
解析部は最大電圧低下率の解析を行い、探索部が用いる目的関数には、最大電圧低下率に基づく項を含んでいてもよい。これにより、その変圧器を設置した需要家のみならず、近隣の他の需要家の設備に与える過電流、電圧低下、高調波といった影響を確実に緩和することができる。
解析部は、オイラー法を用いて解析してもよい。このように簡略な計算方法を用いても計算精度の低下はほとんどなく、かつ極めて高速に計算することができるため、全体的な処理負荷を飛躍的に軽減することができる。
仮パラメータは、基準磁気装荷と、電流密度と、鉄心と低圧巻線との間隔と、低圧側巻線厚さと、定格磁束密度と、巻線高さあたりのアンペアターン値である電気比装荷と、高圧・低圧巻線間の間隔と、高圧側巻線厚さとから選択される1以上の設計値を含んでいてもよい。これらの設計値を求めることにより、機器定数の算出に利用することができる。
初期値設定部は、乱数を用いて仮パラメータの初期値を設定してもよい。これにより、本システムの利用者が仮パラメータの初期値を入力する必要がなくなり、入力項目を削減することができるため、容易に取り扱うことが可能となると共に、初期値の選択に迷うことがなくなることから利便性を向上させることができる。
探索部が算出した仮パラメータの組のうち目的関数に対して最も適応度の高い組に含まれる仮パラメータと基本条件の値を用いて短絡インピーダンスを求め、これと基本条件に含まれる短絡インピーダンスの値と比較する対比部を備え、対比部は、比較結果が所定の誤差範囲を超えていた場合には、探索部の算出結果を破棄して再計算してもよい。これにより、適応度の低い仮パラメータの組が結果として出力されてしまうことを防止し、設計精度を向上させることができる。
初期値設定部と探索部は、初期値の設定と仮パラメータの算出を複数回繰り返し、探索部が複数回算出した仮パラメータの組のうち目的関数に対して最も適応度の高い組をそれぞれ記憶する候補組記憶部と、候補組記憶部に記憶された複数の仮パラメータの組のうち最も適応度の高い組を選択する組選択部とを備えていてもよい。メタヒューリスティクスは収束計算ではないため、必ずしも最適解に到達しない。そこで、上記のように複数回算出して最も適応度の高い仮パラメータの組を選択することにより、限りなく最適な値を得ることができる。
探索部はメタヒューリスティクスとして遺伝的アルゴリズムを用いて、仮パラメータを遺伝子とし、仮パラメータの組を染色体として、染色体に含まれる遺伝子の値を変化させながら目的関数に対して適応度の高い染色体を選択してもよい。本発明においては、メタヒューリスティクスの具体的手法としては、遺伝的アルゴリズムの他に、シミュレイテッドアニーリング(焼きなまし法)、タブーサーチ、PSO(Particle Swarm Optimization:粒子群最適化)など既知の様々な手法を用いることができる。その中でも遺伝的アルゴリズムは常に局所的に良好な解を複数保持しながら解の改良を図る多点探索であることから、大域的に最良の解を探索しうるため、最も好ましい方法である。また多くの分野でその有効性が検証されており、解の良さを目的関数などで一意に決定できる問題であれば、ほぼ全てに適用可能な、汎用性に富むアルゴリズムである。さらに遺伝的アルゴリズムはプログラミングが容易であることから、メタヒューリスティクスとして遺伝的アルゴリズムを用いることにより、汎用のコンピュータを用いて本発明にかかる変圧器設計システムを容易に実現することができる。
また本発明の他の代表的な構成は、変圧器設計プログラムであって、コンピュータを、
定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む基本条件を利用者に入力させる基本条件入力部と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を乱数を用いてランダムに設定する初期値設定部と、仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に基本条件と仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、最終的に選択された組に含まれる仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部として動作させることを特徴とする。上記構成のプログラムをコンピュータに実行させることにより、そのコンピュータを本発明にかかる変圧器設計システムとして構成することができる。
定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む基本条件を利用者に入力させる基本条件入力部と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を乱数を用いてランダムに設定する初期値設定部と、仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に基本条件と仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、メタヒューリスティクスの試行計算中に機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、最終的に選択された組に含まれる仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部として動作させることを特徴とする。上記構成のプログラムをコンピュータに実行させることにより、そのコンピュータを本発明にかかる変圧器設計システムとして構成することができる。
本発明によれば、あらかじめ設定した条件下において励磁突入電流の低減を実現し、さらにはエネルギー消費効率の向上を両立しうる変圧器を設計することが可能な変圧器設計システムを提供することができる。
本発明にかかる変圧器設計システムおよび変圧器設計プログラムの実施形態について説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。本実施形態においては、メタヒューリスティクスの具体的手法として、遺伝的アルゴリズムを例に用いて説明する。
図1は実施形態にかかる変圧器設計システム(以下、単に「システム100」という。)の構成を説明するブロック図である。システム100の概略構成としては、入力部110と、変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を設定する初期値設定部120と、仮パラメータの組である染色体を遺伝的アルゴリズムを用いて選択する探索部130と、基本条件の条件値と仮パラメータとから機器定数などを算出する演算部132と、機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部134と、最終的に選択された染色体に基づく機器定数を出力する出力部150とを備えている。演算部132と解析部134は、遺伝的アルゴリズムの試行計算中に演算または解析を行う。またシステム100は、短絡インピーダンスの値を比較する対比部140と、遺伝的アルゴリズムの演算を行う毎に最も適応度の高い染色体を記憶する候補組記憶部142と、候補組記憶部142に記憶された複数の染色体のうち最も適応度の高い染色体を選択する組選択部144とを備えている。それぞれの構成と動作については後述する。
システム100は、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現することができる。プログラムはコンピュータに組み込みで提供したり、記録媒体に固定して配布したり、またはネットワークからダウンロード可能なようにサーバーに保存したり、コンパイルして利用可能なようにソースファイルで提供したりすることができる。
プログラムとコンピュータが協働した場合、具体的には、入力部110はキーボードやマウスなどの入力装置と、入力画面との組み合わせによって実現できる。各種記憶部はハードディスクやCDROMなどの記憶装置、および一時的な記憶であればRAMを用いて実現できる。探索部130、演算部132、解析部134、対比部140、候補組記憶部142、組選択部144などはCPUによって動作するプログラムルーチンとして実現できる。入力部110や初期値設定部120は、利用者に対するインターフェース(入力画面など)として実現できる。出力部150は、モニタなどの画面表示のほか、プリンタによる紙などへの固定、記録媒体や他のコンピュータ装置へのファイルデータとしてデータを出力することができる。
またコンピュータはデスクトップ型やノートブック型を問わず、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話などの携帯端末を含むことができる。さらに、特にコンピュータが携帯端末である場合には、インターフェースのみを当該端末にて動作させ、演算処理を遠隔地のサーバーにて実行させる、いわゆるサーバ・クライアント方式としてもよい。
図2および図3はシステム100の動作を説明するフローチャートである。以下において、本システムの詳細な構成と動作を、図1のブロック図と図2および図3のフローチャートを参照しながら説明する。
入力部110は、利用者によって条件値の値が入力される条件値入力部112と、設定値入力部114とを備えている。条件値入力部112は、対象となる変圧器の基本条件として、定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む条件値が利用者(オペレータ)によって入力される。基本条件としては、変圧器の銘板に記載される内容(銘板値)を用いることができる。特に既設の変圧器の銘板から読み取った値を用いることにより、既存の変圧器との置き換えが可能な変圧器を設計することができる。
また条件値入力部112には、系統インピーダンス、投入位相、残留磁束値などの状態パラメータも入力可能となっている。これらの状態パラメータは、解析部134において励磁突入電流を解析する際に必要な境界条件を設定するために利用することができる。
設定値入力部114は、遺伝的アルゴリズムの設定値(最大試行回数tmax、最大世代数gmax)を利用者によって入力される。
利用者はまず、条件値入力部112から基本条件を入力する(S102)。本実施形態では基本条件として、定格容量Pn、高圧側定格電圧Vn1、低圧側定格電圧Vn2、短絡インピーダンス%Zsn、周波数f、結線方式(単相、三相など)を用いる。基本情報は、上記したように、既設の変圧器の銘板値を用いてもよい。
次に利用者は、設定値入力部114から遺伝的アルゴリズムの設定値(最大試行回数tmax、最大世代数gmax)を入力する(S104)。世代数gとは、遺伝的アルゴリズムにおいて交叉を繰り返す回数である。試行回数tとは、適応度の高い染色体を求める回数である。それぞれの設定値の役割については後述する。探索部130は、まず試行回数tを1に設定する(S106)。
次に初期値設定部120が仮パラメータの初期値を設定する(S108)。探索部130は仮パラメータを遺伝子とし、仮パラメータの組(遺伝子の配列)を染色体とし、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、遺伝的アルゴリズムを適用する。図4は染色体と初期値設定を説明する図である。初期値設定部120が初期値を設定すると(S108)、探索部130はいくつかの値を演算する。具体的には、図4に示すように、基本条件の条件値と仮パラメータから定格最大磁束φn、巻線巻数Tk、アンペアターンAT、巻線高さh、電線の断面積qk、およびこれらから導かれる巻線厚さdkを演算する。
仮パラメータは、機器定数の算出に必要であるが基本条件には含まれない(銘板には記載されていない)設計値の群である。本実施形態において仮パラメータには、定格磁束密度Bcと、電流密度ΔIと、基準磁気装荷φ0と、電気比装荷atと、低圧側巻線の全体の厚さである低圧側巻線厚さd2と、高圧側巻線の全体の厚さである高圧側巻線厚さd1と、低圧側巻線と高圧側巻線の間隔d0と、鉄心と低圧側巻線の間隔r’とを含んでいる。
特に仮パラメータに低圧側巻線の全体の厚さである低圧側巻線厚さd2と、高圧側巻線の全体の厚さである高圧側巻線厚さd1とを含むことにより、仮パラメータの個数を飛躍的に削減することができると共に、専門的知識を不要とすることができる。すなわち変圧器の設計手法によれば、低圧側と高圧側の両方について、巻線(導体)の縦と横の寸法、導体を縦横に重ね合わせる本数、絶縁体の縦と横の厚さなどの巻線の情報が必要である。これらの値を初期設定し、かつ試行錯誤の際に変更するとなれば、利用者にとって労力が多大であり、かつ適切な値を設定するために専門知識を必要とする。しかし、上記のように、変圧器の設計手順として必要な値をそのまま仮パラメータとするのではなく、機器定数を求めるために必要な最終的な変数を仮パラメータとすることにより、変圧器の設計手順に詳しい者でなくても容易に取り扱うことが可能となる。
初期値設定部120は乱数発生部120aおよび制限範囲記憶部120bを備えており、乱数を用いて仮パラメータの初期値を生成する。制限範囲記憶部120bには仮パラメータごとに取り得る値の範囲があらかじめ記憶されており、乱数発生部120aは制限範囲記憶部120bに定められた範囲で値を生成する。このように初期値設定部120が初期値を生成することにより、利用者が仮パラメータの初期を入力する必要がなくなり、入力項目を削減することができるため、容易に取り扱うことが可能となると共に、初期値の選択に迷うことがなくなることから利便性を向上させることができる。
そして探索部130は、世代数gを1に設定してから(S110)、遺伝的アルゴリズムに基づいて、交叉と突然変異を行う(S112)。図5は遺伝的アルゴリズムの交叉と突然変異を説明する図である。初期値設定部120は、所定数(i=1〜J)の複数の個体を設定し、iが(1,2),(3,4),…(J−1,J)の組をそれぞれ親として交叉を行い、iが(J+1,J+2),(J+3,J+4)…(2J−1,2J)となる子を生成する。このとき、各遺伝子(仮パラメータ)の配列順および交叉の点数、交叉点の位置などは、適宜定めることができる。突然変異は、i=J+1〜2Jで生成した個体の遺伝子情報をそれぞれの制約範囲内でランダムに増減させる。図5に示す突然変異(Mutation)は一例であって、変異量や制限範囲などは仮パラメータ毎に適宜設定することができる。
J個の個体を交叉および突然変異させてJ個の子を生成すると、合計2Jの個体が存在することになる。交叉および突然変異を1世代行うたびに、2J個の個体に含まれる仮パラメータ(遺伝子)の値を用いて、それぞれについて次に述べるS116〜S126を行う。
図6は鉄心形状関係値の算出を説明する図である。鉄心形状に関係する値には、定格最大磁束φn、巻線巻数Tk(k=1:高圧側、2:低圧側)、アンペアターンAT、鉄心の断面積Qf、鉄心断面の半径rsなどがある。これらの値は図6に示すような式によって、条件値と仮パラメータの値を用いて求めることができる(S114)。
図7は巻線形状関係値の算出を説明する図である。巻線形状に関係する値には、巻線高さh、電線の断面積qk、1ターン分の平均長さlcoilk、巻線全長Lcolikなどがある。これらの値は図7に示すような式によって、基本条件の条件値と仮パラメータ、および前に算出したデータを用いて求めることができる(S116)。
図8は鉄心窓関係値の算出を説明する図である。鉄心窓に関係する値には、鉄心窓内の巻線断面積Qc、鉄心窓の断面積Sab、鉄心窓の寸法(高さa、幅b)、および付随する値として銅の占有率fcがある。これらの値は図8に示すような式によって、基本条件の条件値と仮パラメータ、および前に算出したデータを用いて求めることができる(S118)。ここで銅の占有率fcとは、鉄心内の導線の占有する面積の比率であるが、未知の値であるから模索する必要がある。そこで、鉄心の窓内に高圧側巻線と低圧側巻線が収まるという条件下で、最大値となるような占有率fcを検討する。そこでb/2−Dc≧d0/2(ただしDc=r’+d2+d0+d1)を満足する条件下において最大の占有率fcが得られるまで(S120)、取り得る妥当な範囲内(本実施形態では0.1〜0.5)で占有率fcを変化させる(S122)。
図9は変圧器機器定数の算出を説明する図である。変圧器の機器定数には、巻線抵抗値rk(高圧側r1、低圧側r2)、漏れインダクタンスLc(高圧側換算)、短絡インピーダンス%Zsがある。これらの値も図9に示すような式によって、基本条件の条件値と仮パラメータ、および前に算出したデータを用いて求めることができる(S124)。
続いて演算部132は、変圧器の磁気飽和特性を算出する。図10は変圧器の磁気飽和特性の算出を説明する図である。磁気飽和特性には、鉄損抵抗Rm1、励磁インダクタンスLm1、空心インダクタンスLairkがある。これらの値は図10に示すような式によって、条件値と選択された染色体の仮パラメータに基づいた値を用いて求めることができる。なお鉄損(無負荷損Wf)は、鉄心に一般的に用いられる鉄材(普通材)の公表値(文献値)を好適に用いることができる。同様にして、瞬時値解析用に、各種の磁気飽和特性(巻線電圧、巻線の巻数、定格磁束密度、飽和磁束密度、定格磁束、飽和磁束など)を求める。
次に、目的関数を用いて染色体の値を評価する。そのために、解析部134が励磁突入電流と最大電圧低下率の瞬時値を解析する。瞬時値は多数回の計算を行うことから、簡易な解析を行う。まず解析部134は、条件値入力部112から入力された系統インピーダンス、投入位相、残留磁束などの条件値を参照する(S126)。
図11はモデル系統と目的関数を説明する図である。図11(a)に示すように、本実施形態では1電源、1回線配電線、開閉器1台、変圧器1台からなる系統であるとする。変圧器の例としては、二巻線変圧器で、結線方式はY−Y、Y−Δ、Δ−Δ、Δ−Yの四種類、低圧側が無負荷(開放)であるとする。解析部134はこのモデルにおいて、励磁突入電流(変圧器投入点の高圧側の三相電流)と、最大電圧低下率(変圧器投入点の三相線間電圧を定格電圧で除したもの)を解析する(S128)。
図11(b)は、瞬時値の解析の基礎式を示している。解析部134は図に示すような解析の基礎式からdi/dtを求める。このとき基礎式にオイラー法を適用して、微分を数値的に求める。なお、オイラー法の他にも修正オイラー法、ルンゲ・クッタ法などを用いることもできる。ただし、中でもオイラー法は精度と計算負荷のバランスが本発明の実施に適している。このように簡略な計算方法を用いても計算精度の低下はほとんどなく、かつ極めて高速に計算することができるため、全体的な処理負荷を飛躍的に軽減することができる。
そして探索部130は、全ての個体について図11(c)に示す目的関数f(t,g,i)(tは試行回数、gは世代数、iは序数)を適用して評価値を算出する(S130)。本実施形態では目的関数の値を「乖離度」として解釈し、目的関数fが小さいほど良好な解であるとする。目的関数fは、少なくとも基本条件に含まれる短絡インピーダンスと基本条件および仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項と、最大電圧低下率に基づく項と、負荷損または無負荷損に基づく項を含んでいる。ここで、目的関数fにおいては、すべての項が、小さい方が良好な値である。すなわち、目的関数の値が小さいときにいずれの項が支配的であるかを考慮する必要がなく、総合的に評価することが可能である。
そして全ての個体について目的関数を適用して評価値を算出し(S130)、目的関数の値が小さい順に並べ替えを行う(S132)。世代数gが、設定した最大世代数gmaxに到達したか否かを判定し(S134)、到達していなければ世代数gをインクリメントして(S136)、交叉と突然変異とを繰り返す(S112)。最大世代数gmaxに到達していたら、交叉を終了する。
対比部140は、探索部130が算出した染色体のうち最も適応度の高い関数値f(t,gmax,1)(関数値f(t,gmax,1)は、最大世代数gmaxまで計算した上で目的関数fの値で並べ替えた結果、1番目にある染色体の関数値である)の染色体に基づいて算出した短絡インピーダンス%Zsと、条件値入力部112から入力された短絡インピーダンス%Zsnとを対比し、誤差範囲にあるか否かを判定する(S138)。対比部140における対比は短絡インピーダンスのみを用いており、第2項以降がない点において目的関数fと異なっている。このように客観的に条件値と算出値を比較することにより、客観的に染色体の適応度を評価することができる。
ここで誤差範囲とは、条件値の有効数字の桁数+1の桁数で0となる範囲と設定することが好ましい。例えば条件値が4.43%である場合には、比較結果(差分)が0.004未満となることを誤差範囲として、この範囲内に収まるまで計算を繰り返すことが好ましい。
対比部140の比較結果(条件値と算出値の差分)が所定の誤差範囲内にない場合には(S138のNO)、探索部130の算出結果を破棄してS108に戻り、仮パラメータの初期設定から再計算する。すなわち、上記のような遺伝的アルゴリズムを用いた場合、多くの世代を計算するほどに適応性の高い値を得ることはできるが、それでも要求される精度に到達できているか否かは知ることができない。そこで上記のように条件値と比較することにより、これにより、適応度の低い染色体が結果として出力されてしまうことを防止し、設計精度を担保することができる。
短絡インピーダンスが誤差範囲内にあった場合(S138のYES)は、そのときの目的関数の関数値f(t,gmax,1)が最小となる染色体に含まれる仮パラメータを、候補組記憶部142に記憶する(S140)。これで1つの試行が完了する。次に試行回数tが設定された最大試行回数tmaxに到達したか否かを判定し(S142)、到達していなければ試行回数tをインクリメントして(S144)、次の試行を実施するために仮パラメータの初期設定から再計算する(S108)。
試行回数tが最大試行回数tmaxに到達していたら、遺伝的アルゴリズムによる演算は完了である。この段階において候補組記憶部142には、各試行において関数値f(t,gmax,1)となった複数の染色体が記憶されている。そこで組選択部144は、tmax個の染色体のうち、関数値f(t,gmax,1)が最小となる染色体を選択する(S146)。上記したように、遺伝的アルゴリズムは収束計算ではないため、必ずしも最適解に到達しない。そこで、複数回試行して最も適応度の高い染色体を選択することにより、限りなく最適な値を得ることができる。
そして演算部132は、最終的に選択された染色体に含まれる仮パラメータ(遺伝子)の値を用いて、機器定数を出力する(S148)。なお、機器定数はS124において既に算出しているため、候補組記憶部142に染色体と関連づけて記憶させておくことが望ましい。
上記説明したように、本実施形態にかかる変圧器設計システムの構成によれば、基本条件と、上記のような仮パラメータに基づき、変圧器の設計手法を適用することにより、あらかじめ設定した条件下において励磁突入電流の低減を実現し、さらにはエネルギー消費効率の向上を両立しうる変圧器を設計することができる。また、基本条件として既設の変圧器の銘板から読み取った値を用いることにより、既存の変圧器との置き換えが可能な変圧器を設計することができる。そして特に、遺伝的アルゴリズムを用いて仮パラメータを求めることにより、各仮パラメータの最適値を広い範囲から実用時間内に決定することが可能となる。
[実施例]
上記実施形態に説明した変圧器設計システムについて、実際に数値を与えた場合の実施例について説明する。図12は実施例を説明する図である。
図12(a)は変圧器の条件値および設定値の例である。図に示すように、変圧器は定格容量1000kVAのものを例に用いた。なお機器定数を算出するにあたり、励磁突入電流による影響について、変圧器受電点での最大電圧低下分は10%未満を目標とした。また損失(無負荷損、負荷損)についてはJIS C 4304に準拠して、次式で示されるエネルギー消費効率基準値Pmを満足することを条件とした。
エネルギー消費効率基準値Pm=無負荷損Wf+(m/100)2×負荷損Wrc
ただしmは基準負荷率(%)であって、容量500kVA以下は40%、容量500kVA超過は50%である。
上記実施形態に説明した変圧器設計システムについて、実際に数値を与えた場合の実施例について説明する。図12は実施例を説明する図である。
図12(a)は変圧器の条件値および設定値の例である。図に示すように、変圧器は定格容量1000kVAのものを例に用いた。なお機器定数を算出するにあたり、励磁突入電流による影響について、変圧器受電点での最大電圧低下分は10%未満を目標とした。また損失(無負荷損、負荷損)についてはJIS C 4304に準拠して、次式で示されるエネルギー消費効率基準値Pmを満足することを条件とした。
エネルギー消費効率基準値Pm=無負荷損Wf+(m/100)2×負荷損Wrc
ただしmは基準負荷率(%)であって、容量500kVA以下は40%、容量500kVA超過は50%である。
図12(b)実施例のモデル系統の例である。図に示すように、系統のモデルは文献で電圧低下計算例に用いられているものを用いた(「系統連系規定」JEAG9701−2006、日本電気技術規格委員会)。文献では背後インピーダンスについて、配電用変電所より上位側を0.347mH、配電用変電所主変圧器を1.04mH、高圧配電線が銅の150mm2(0.122Ω/km、1.04mH/km)であったので、RB=0.122×距離(Ω)、LB=0.347+1.04+1.04×距離(mH)とすることができる。
変圧器の投入条件としては、残留磁束について、高圧側結線Yは(R,S,T)=(φr、−φr、0%)、高圧側結線Δは(RS、ST、TR)=(φr、−φr、0%)とした。投入点は、R相(RS相)電圧の0点(dv/dt>0)とした。
図12(c)は実施例と比較例の機器定数および損失の比較である。比較例としては、図12(a)に示す基本条件を満たす実機の機器定数を用いて算出した。図に示すように、高圧巻線抵抗r1が小さくなっており、電圧低下が抑えられるようになったことがわかる。また高圧側空心インダクタンスLair1が大きくなっており、励磁突入電流が抑えられるようになったことがわかる。またエネルギー消費効率Pmが向上しているが、これは高圧側巻線抵抗r1が小さくなった副次的効果と考えられる。
図13は実施例にかかる変圧器の励磁突入電流と電圧の波形を示す図である。上記のような実施例と比較例の変圧器について、励磁突入電流と電圧の瞬時値を解析した。解析には、EMTP(Electro Magnetic Transients Program:電力系統の回路現象解析シミュレーションプログラム)、特にATPDraw(日本ATPユーザグループ)を用いた。
図13(a)の波形図を比較したところ、励磁突入電流の最大波高値Ipeakは、比較例では−988Aであったが、実施例では−309Aであった。このことから、本発明を適用することによって励磁突入電流を約30%に低減した変圧器が設計できたことがわかる。
また図13(b)の波形図を比較したところ、最大電圧低下率ΔVmaxは、比較例では17.2%((6600V−5468V)/6600V)であったところ、実施例では4.4%((6600V−6312V)/6600V)であった。このことから、本発明を適用することによって最大電圧低下率を約26%に低減した変圧器が設計できたことがわかる。
上記説明した如く、本発明を適用することによって、基本条件と、上記のような仮パラメータに基づき、変圧器の設計手法を適用することにより、あらかじめ設定した条件下において励磁突入電流の低減を実現し、さらにはエネルギー消費効率の向上を両立しうる変圧器を設計することができる。また、基本条件として既設の変圧器の銘板から読み取った値を用いることにより、既存の変圧器との置き換えが可能な変圧器を設計することができる。これにより、追加の機器や装置を付加することなく、励磁突入電流や電圧低下を低減し、その変圧器を設置している需要家のみならず、近隣の他の需要家の設備に与える過電流、電圧低下、高調波といった影響を緩和することができる。
なお、上記実施形態においては、メタヒューリスティクスの具体的手法として、遺伝的アルゴリズムを例に用いて説明した。しかし他の手法として、シミュレイテッドアニーリング(焼きなまし法)、タブーサーチ、PSO(Particle Swarm Optimization:粒子群最適化)など既知の様々な手法を用いることができる。
簡単に紹介すると、シミュレイテッドアニーリング(焼きなまし法)は、現在状態(状態が仮パラメータの組に相当する)から次の状態候補への遷移確率を、現在状態のエネルギーe(目的関数の評価値)と次の状態のエネルギーe’と、グローバルなパラメータT(温度を模擬する)を用いた関数で求める。Tを徐々に小さくすることにより徐冷(アニーリング)を模擬するが、Tを小さくする速度を遅くすれば、まんべんなく探索して最適な値に近づくことができる。極小値が複数ある場合に最適な値を求めたい場合には有効であるが、有益な結果を得るためにはTを小さくする速度をある程度遅くする(評価回数を増やす)必要がある。
タブーサーチは、現在状態(状態が仮パラメータの組に相当する)の近傍を複数探索し、その中で最も成績(目的関数の評価値)がよい近傍状態に遷移する。このときタブーリストに状態遷移時の操作を記載することにより、状態遷移がループすることを防止する。そして最良状態と新しい状態の成績を比較・更新し、終了条件(遷移回数など)が満たされたときの最良状態を解とする。
PSOは、昆虫の大群や魚群に倣い、多次元空間内に多数の粒子群を設定し、それぞれに位置と速度をもたせる。すなわち、位置が仮パラメータの組に相当する。そして各粒子について目的関数を用いて評価し、粒子群の中で最もよい位置を全体に通知し、慣性定数や乱数などを含む関数(目的関数)を用いて各粒子の位置と速度を更新する。
ただし、上記のような様々な手法の中でも、遺伝的アルゴリズムは常に局所的に良好な解を複数保持しながら解の改良を図る多点探索であることから、大域的に最良の解を探索しうるため、最も好ましい方法である。さらに遺伝的アルゴリズムはプログラミングが容易であることから、メタヒューリスティクスとして遺伝的アルゴリズムを用いることにより、汎用のコンピュータを用いて本発明にかかる変圧器設計システムを容易に実現することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、変圧器設計システムおよび変圧器設計プログラムとして利用することができる。
100 …システム
110 …入力部
112 …条件値入力部
114 …設定値入力部
120 …初期値設定部
120a …乱数発生部
120b …制限範囲記憶部
130 …探索部
132 …演算部
134 …解析部
140 …対比部
142 …候補組記憶部
144 …組選択部
150 …出力部
110 …入力部
112 …条件値入力部
114 …設定値入力部
120 …初期値設定部
120a …乱数発生部
120b …制限範囲記憶部
130 …探索部
132 …演算部
134 …解析部
140 …対比部
142 …候補組記憶部
144 …組選択部
150 …出力部
Claims (10)
- 変圧器の機器定数を設計するシステムであって、
定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む基本条件が入力される基本条件入力部と、
変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を設定する初期値設定部と、
前記仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも前記基本条件に含まれる短絡インピーダンスと前記基本条件および前記仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い前記仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、
メタヒューリスティクスの試行計算中に前記基本条件と前記仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、
メタヒューリスティクスの試行計算中に前記機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、
最終的に選択された組に含まれる前記仮パラメータを用いて算出した機器定数を出力する出力部とを備えたことを特徴とする変圧器設計システム。 - 前記探索部が用いる目的関数には、負荷損または無負荷損に基づく項を含むことを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。
- 前記解析部は最大電圧低下率の解析を行い、
前記探索部が用いる目的関数には、最大電圧低下率に基づく項を含むことを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。 - 前記解析部は、オイラー法を用いて解析することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の変圧器設計システム。
- 前記仮パラメータは、基準磁気装荷と、電流密度と、鉄心と低圧巻線との間隔と、低圧側巻線厚さと、定格磁束密度と、巻線高さあたりのアンペアターン値である電気比装荷と、高圧・低圧巻線間の間隔と、高圧側巻線厚さとから選択される1以上の設計値を含むことを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。
- 前記初期値設定部は、乱数を用いて前記仮パラメータの初期値を設定することを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。
- 前記探索部が算出した仮パラメータの組のうち前記目的関数に対して最も適応度の高い組に含まれる仮パラメータと前記基本条件の値を用いて短絡インピーダンスを求め、これと前記基本条件に含まれる短絡インピーダンスの値と比較する対比部を備え、
前記対比部は、比較結果が所定の誤差範囲を超えていた場合には、前記探索部の算出結果を破棄して再計算させることを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。 - 前記初期値設定部と前記探索部は、初期値の設定と前記仮パラメータの算出を複数回繰り返し、
前記探索部が複数回算出した仮パラメータの組のうち前記目的関数に対して最も適応度の高い組をそれぞれ記憶する候補組記憶部と、
前記候補組記憶部に記憶された複数の仮パラメータの組のうち最も適応度の高い組を選択する組選択部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。 - 前記探索部は前記メタヒューリスティクスとして遺伝的アルゴリズムを用いて、前記仮パラメータを遺伝子とし、前記仮パラメータの組を染色体として、染色体に含まれる遺伝子の値を変化させながら前記目的関数に対して適応度の高い染色体を選択することを特徴とする請求項1に記載の変圧器設計システム。
- コンピュータを、
定格容量と、高圧側定格電圧と、低圧側定格電圧と、周波数と、結線方式と、短絡インピーダンスとを含む基本条件を利用者に入力させる基本条件入力部と、
変圧器の設計値の群からなる仮パラメータの初期値を乱数を用いてランダムに設定する初期値設定部と、
前記仮パラメータの組を設定し、これに含まれる仮パラメータの値を変化させながら、少なくとも前記基本条件に含まれる短絡インピーダンスと前記基本条件および前記仮パラメータから求められる短絡インピーダンスとの差分に基づく項と、励磁突入電流の瞬時値に基づく項を含む目的関数を用いて、適応度の高い前記仮パラメータの組をメタヒューリスティクスを用いて選択する探索部と、
メタヒューリスティクスの試行計算中に前記基本条件と前記仮パラメータとから機器定数を算出する演算部と、
メタヒューリスティクスの試行計算中に前記機器定数から励磁突入電流の瞬時値を解析する解析部と、
最終的に選択された組に含まれる前記仮パラメータを用いて算出した前記機器定数を出力する出力部として動作させることを特徴とする変圧器設計プログラム。
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JP2014064388A (ja) * | 2012-09-21 | 2014-04-10 | Aichi Electric Co Ltd | 静止形高圧自動電圧調整器 |
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