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JP2011004743A - 関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する方法 - Google Patents

関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する方法 Download PDF

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元彦 谷野
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亮 的場
Seiji Nakamura
誠二 中村
Masabumi Shimoda
正文 下田
Kenichi Matsubara
謙一 松原
Tsutomu Takeuchi
勤 竹内
Toshiji Okayama
利次 岡山
Takuro Tamura
卓郎 田村
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Abstract

【課題】血液サンプルにおける遺伝子発現プロファイルを解析することにより、インフリキシマブ投与の有効性の有無を遺伝子レベルで効果的且つ有効に判別する方法を提供する。
【解決手段】関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を、複数の指標から選択される1若しくはそれ以上の指標を用いて判別する方法であって、関節リウマチ患者の血液中の特定の群から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定した発現量を、予め用意された遺伝子発現プロファイルを用いて解析する工程と、前記解析した結果に基づき、前記関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する工程と、を有することを特徴とする、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を、複数の指標から選択される1若しくはそれ以上の指標を用いて判別する方法に関する。具体的には、本発明は、関節リウマチ患者から採血し、精製した血液から遺伝子発現量を測定・標準化し、その発現量から作成された遺伝子発現プロファイルに基づいて、関節リウマチ患者における生物製剤インフリキシマブ薬効の有無を判別する方法に関する。
自己免疫疾患である関節リウマチに対しては、現在までに様々な薬剤が研究開発されてきている。特に、マクロファージやリンパ球から分泌されるサイトカインの一種である腫瘍壊死因子(TNF)の一種であるTNFαが炎症カスケードの上流に位置して細胞性免疫の発現や自己免疫疾患の進展に大きく関与することが解明されつつあり、このTNFαを選択的に阻害することにより治療効果を発揮する生物学的製剤が開発されている。
その生物学的製剤の1つであるインフリキシマブは、ヒトの免疫グロブリンとマウスの免疫グロブリンとのキメラ生物によるモノクローナル抗体医薬であり、免疫反応で中心的な役割を果たすTNFα受容体を直接分子標的とする新しい生物学的製剤である。このため、高薬価の医薬である一方で、複雑な免疫機序の中で作用するため、患者のもつ遺伝的な特性や生活環境因子により、薬効が全く現れなかったり、一度効果を示すものの投与後一定期間後に薬効を失って再度病状を再発したりする二次無効と呼ばれる現象が臨床的に報告されている。
このインフリキシマブの臨床現場における使用に関して、インフリキシマブは関節リウマチに対する医薬の中でも比較的に高価な薬剤であるため、現在までは、他の薬剤が効かないケースにおいて臨床医師の判断で用いられ、積極的に処方されることは少なかった。また、その有効性については、通常の血液検査を行うことにより、白血球数や血清の生化学的特性値などを計測し、その計測結果に基づき、臨床医師が経過観察して判定するに留まっていた(非特許文献1〜3を参照)。また、インフリキシマブ等のTNF阻害剤は、宿主免疫能力を減弱させるため、種々の感染症特に結核症を増加させる副作用が知られている。
一方、DNAチップ技術が開発され、医療にも導入されたことにより、病理生検組織や血液サンプルに対して、対象における分子レベルの遺伝子発現プロファイルを網羅的に得ることができるようになっている。そのため、キーとなる複数遺伝子の発現ネットワークを総体的に観察することが可能となり、病態の進行や薬剤の有効性について、遺伝子発現に代表される分子レベルで診断するための基礎技術が蓄積されてきている(非特許文献4、特許文献1及び2を参照)。
そして、薬剤を対象とした分子レベルでの診断としては、インフリキシマブの分子レベルでの薬効の予測に関して、非特許文献5〜8や米国特許仮出願61/269,642の報告例がある。
特開2007−135465号公報 特開2007−135466号公報
竹内勤「リウマチ薬物治療の現状および問題点」日薬理誌 Folia Pharmacol. Jpn. 2007, 129, 182-185. 松原浩之、金物壽久「関節リウマチにおける生物学的製剤の使用経験」中部整災誌 Vol. 48; No. 2: (2005). 297-298. 来田大平、三宅洋之、水野雅士「インフリキシマブ使用についての小経験」中部整災誌 Vol. 48; No. 2: (2005). 299-300. Golub TR, Slonim DK, Tamayo P, Huard C, Gaasenbeek M, Mesirov JP, Coller H, Loh ML, Downing JR, Caligiuri MA, Bloomfield CD, Lander ES. "Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring." Science. 1999 Oct 15; 286 (5439):531-537. Tanino M, Matoba R, Nakamura S, Kameda H, Amano K, Okayama T, Nagasawa H, Suzuki K, Matsubara K, Takeuchi T. "Prediction of efficacy of anti-TNF biologic agent, infliximab, for rheumatoid arthritis patients using a comprehensive transcriptome analysis of white blood cells." Biochem Biophys Res Commun.2009 Sep 18 ; 387(2):261-5. 谷野元彦、天野宏一、竹内勤「インフリキシマブ投与前の全血RNAの遺伝子発現パターンからの投与後の効果予測」分子リウマチ治療 Vol.2 no.4 p34-37 2009. 先端医学社 亀田秀人、谷野元彦、竹内勤「どの生物学的製剤が有効かを使用前に予測できないか?」分子リウマチ治療 Vol.2 no.2 p23-25 2009.先端医学社 谷野元彦、竹内勤「RNAチェックによる寛解をめざした関節リウマチの個別化医療」遺伝子医学MOOK10 p315-320 2008.株式会社メディカルドゥ
しかしながら、インフリキシマブ投与による薬効の失効に関しては、体内におけるインフリキシマブの作用機序が複雑であるため、分子レベルや遺伝子発現プロファイルレベルでの有効性の診断方法が存在しないのが現状である。
特に、インフリキシマブを患者に投与する前に、患者血液における遺伝子発現プロファイルを調べることで、予め、当該患者におけるインフリキシマブ薬効の有無を予想することができれば、インフリキシマブが無効である患者に対して薬価の高い薬剤を選択するデメリットを回避することができる。また、同時に、臨床医師が別の治療手段、例えばインフリキシマブの投与量の増減や他の薬剤への切り替えを検討することにより、より個々の患者に適した治療方針を選択することができるようになる。
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、血液サンプルにおける遺伝子発現プロファイルを解析することにより、インフリキシマブ投与の有効性の有無を遺伝子レベルで効果的且つ有効に判別する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、インフリキシマブ投与による薬効の有無を客観的に判別するために、検体として容易に得られ、且つ生体内におけるインフリキシマブの作用機序を、遺伝子発現ネットワークという分子レベルでの変化を介して総合的に表すと考えられる血液に着目した。そして、本発明者らは、インフリキシマブを投与した場合及びしない場合、並びにインフリキシマブが有効であるサンプル及び無効であるサンプルにおける血液中で発現する遺伝子群の統計学的手法を用いた解析の中で、数万に上る遺伝子のmRNAの発現を網羅的に解析し、患者におけるインフリキシマブ薬効の有無に関連して発現量が変化する遺伝子に関する新たな知見を得、さらに鋭意研究・実験を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、インフリキシマブが有効である患者に特異的に変化する血液中の遺伝子である後述の表1〜3に列記される遺伝子群が、関節リウマチ患者におけるインフリキマブ投与の有効性の有無を判別するために用いることが可能であることを見出した。
具体的には、本発明の第一の主要な観点によれば、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を、複数の指標から選択される1若しくはそれ以上の指標を用いて判別する方法であって、関節リウマチ患者の血液中の表1、表2、又は表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定した発現量を、予め用意された遺伝子発現プロファイルを用いて解析する工程と、前記解析した結果に基づき、前記関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する工程と、を有することを特徴とする、方法が提供される。
このような構成によれば、関節リウマチ患者の精製血液から特定の遺伝子発現プロファイルを解析することにより、インフリキシマブ投与前又は後において、投与の可否を決定する材料として薬効の有無を判別でき、重要な臨床診断情報を提供することが可能となる。また、これを通じて、関節リウマチ患者が、より有効的な医療を受けることができるという作用効果も期待できる。
また、本発明の一実施形態によれば、このような方法において、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合における、前記複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである。
本発明の他の一実施形態によれば、上述のように、複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測する場合、前記指標として血清CRP濃度を選択することができ、この場合、前記測定する工程は、表1から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定するものであり、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合の血清CRP濃度によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものであっても良い。
この場合、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合における血清CRP濃度が0.3mg/dl以下であると予測した場合に薬効あり、0.3mg/dlより大きいと予測した場合に薬効なしと判別するものであることが好ましい。
また、本発明の別の一実施形態によれば、上述のように、複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測する場合、前記指標としてACR値を選択することができ、この場合、前記測定する工程は、表2から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定するものであり、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合のACR値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものであっても良い。
この場合、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるACR値がACR20、ACR50、又はACR70であると予測した場合に薬効あり、ACR0であると予測した場合に薬効なしと判別するものであることが好ましい。
さらに、本発明の他の一実施形態によれば、上述のように、複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測する場合、前記指標としてDAS28値を選択することができ、この場合、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合のDAS28値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものであっても良い。
この場合、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値が4.1以下であると予測した場合に薬効あり、4.1より大きいと予測した場合に薬効なしと判別するものであることが好ましい。
また、前記指標としてDAS28値を用いる場合には、前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値が3.2以下であり、且つ当該関節リウマチ患者の現状のDAS28値から前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値を差し引いた値が1.2より大きいと予測した場合に薬効あり、それ以外であると予測した場合に薬効なしと判別するものであっても良い。
また、本発明のさらに他の一実施形態によれば、上述のように、複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測する場合、前記判別する工程は、前記関節リウマチ患者へのインフリキシマブ投与14週間後における指標値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである。
また、本発明の別の一実施形態によれば、このような方法において、前記関節リウマチ患者の血液は、当該関節リウマチ患者にインフリキシマブが投与される前に採取されるものであっても良く、若しくは当該関節リウマチ患者にインフリキシマブが投与された後に採取されるものであっても良い。
また、本発明の第二の主要な観点によれば、上述のような方法において用いられるアレイであって、表1、表2、又は表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子をコードする少なくとも一部の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブが、固体支持体上の各々異なる位置に固定してなることを特徴とするアレイが提供される。
なお、上記した以外の本発明の特徴及び顕著な作用・効果は、次の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る高判別遺伝子群を得るためのフローチャートである。 図2は、本発明の一実施形態に係る、学習セットにおけるWeighted Vote法によるインフリキシマブ投与前の予測遺伝子毎のPrediction Strength(PS)値を示す表である。 図3は、本発明の一実施形態に係る、学習セットにおいて決定されたインフリキシマブ投与前の予測高判別遺伝子群とそれによる予測精度評価を示す表である。 図4は、本発明の一実施形態において、学習セットにおいて決定されたインフリキシマブ投与前の予測高判別遺伝子群を用いた、検証セットにおけるWeighted Vote法による予測遺伝子毎のPS値を示す表である。 図5は、本発明の一実施形態に係る、検証セットにおける判別結果を示す表である。 図6は、本発明の一実施形態において、CRP、ACR、又はDAS28を用いた検証結果を示す表である。
以下に、本願発明に係る一実施形態および実施例を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する方法は、上述したように、関節リウマチ患者の血液中の表1、表2、又は表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、前記測定した発現量を、予め用意された遺伝子発現プロファイルを用いて解析する工程と、前記解析した結果に基づき、前記関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する工程と、を有することを特徴とするものである。
Figure 2011004743
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ここで、本発明の一実施形態において、上記各遺伝子は、インフリキシマブ薬効の有無に関連して発現量が変化するものであり、後述する実施例に記載するように、インフリキシマブ投与前のサンプル群を学習セットとして用いた遺伝子発現プロファイルの網羅的解析の結果得られる遺伝子群である。また、この解析においては、関節リウマチ患者における薬効の有効・無効を判別するために複数の指標を用いている。
なお、本願明細書において「遺伝子」とは、ある対象物の状態又は作用の評価の指標となるものであって、ここではある遺伝子の発現量と相関するときの遺伝子関連物質をいう。例えば、遺伝子それ自体、転写物であるmRNA、翻訳物であるペプチド、遺伝子発現の最終産物であるタンパク質などが含まれる。また、遺伝子の「発現量」とは、特に言及しない限り当該遺伝子の発現量を標準化したものを意味するものであり、当該遺伝子の転写レベル(転写物などの場合)または翻訳レベルにおける発現量(ポリペプチド、タンパク質などの場合)をも包含して意味するものである。
また、本実施形態において、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する方法において使用されるアレイは、表1〜表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子をコードする少なくとも一部の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブが、固体支持体上の各々異なる位置に固定してなるものである。
なお、上記アレイは、必要であればPCR用のプレートで代用することができ、この場合、前記プローブは、プレート上のウェルの各々異なる位置に配置している構成になっている。
関節リウマチ患者に対して、特定の薬剤が治療的に有効であるか無効であるかを判別するために用いることのできる指標としては、第一に、炎症反応の指標となる血清CRP(C−reactive protein)濃度が挙げられる。血清CRP値の正常値は0.3mg/dlである。本実施形態においては、遺伝子発現プロファイルの解析によって血清CRP値が0.3mg/dl以下であると予測される場合に薬効あり、同0.3mg/dlより大きいと予測される場合に薬効なしと判別しているが、この判別基準値は、実験条件に応じて適宜変更可能であり、この数値に限定されるものではない。例えば、遺伝子発現プロファイルの解析によって血清CRP値が0.5mg/dl以下であると予測される場合に薬効あり、同0.5mg/dlより大きいと予測される場合に薬効なし、血清CRP値が0.4mg/dl以下であると予測される場合に薬効あり、同0.4mg/dlより大きいと予測される場合に薬効なし、血清CRP値が0.2mg/dl以下であると予測される場合に薬効あり、同0.2mg/dlより大きいと予測される場合に薬効なし、若しくは血清CRP値が0.1mg/dl以下であると予測される場合に薬効あり、同0.1mg/dlより大きいと予測される場合に薬効なし、と判別することも可能である。
また、関節リウマチ患者に対して、特定の薬剤が治療的に有効であるか無効であるかを判別するために用いることのできる第二の指標としては、アメリカリウマチ学会が定めた関節リウマチの病理程度の分類基準であるACR改善基準が挙げられる。ACR改善基準はACRコアセットである7項目によって定められる。ACRコアセットは、(1)圧痛関節数、(2)腫脹関節数、(3)患者による疾患の評価、(4)患者による疾患活動性の全般的評価、(5)医師による疾患活動性の全般的評価、(6)患者による身体機能評価、(7)急性期反応物質、の7項目から成る。ACR改善基準は、例えば、治療前に対して治療後に(薬剤投与前に対して薬剤投与後に)、上記(1)(2)がともに20%以上改善し、かつ、上記(3)〜(7)の5項目のうち3項目以上が20%以上改善した場合に、「ACR基準20%の改善あり(ACR20)」と判定される。同様に、ACRが50%ならびに70%改善した場合、ACR50、ACR70という基準が用いられる。本実施形態においては、遺伝子発現プロファイルの解析によってACRがACR0であると予測される場合に薬効なし、ACR20、ACR50、ACR70であると予測される場合に薬効ありと判別することが好ましいが、この判別基準値は、実験条件に応じて適宜変更可能であり、これに限定されるものではない。例えば、遺伝子発現プロファイルの解析によってACRがACR0又はACR20であると予測される場合に薬効なし、ACR50、ACR70であると予測される場合に薬効ありと判別しても良い。なお、本願明細書において、単に「ACR」と表記した場合には、特に言及しない限り、「ACR改善基準」を指すものとする。
さらに、関節リウマチ患者に対して、特定の薬剤が治療的に有効であるか無効であるかを判別するために用いることのできる第三の指標としては、DAS28が挙げられる。DAS28は、EULAR(European League Against Rheumatism:ヨーロッパリウマチ連盟)が推奨する評価法であるDAS(disease activity score)を、日常の診療で使用し易いようにするため、評価する関節を28関節に絞り込んだものである。DAS28では、28関節について、(1)圧痛のある関節数、(2)腫れのある関節数、(3)血沈の1時間値、又はCRP(mg/dl)、(4)全般的な病状の評価値、から疾患の活動性を評価する。なお、血沈を用いる場合にはDAS28−ESR、CRP値を用いる場合にはDAS28−CRPという。本願実施例において、DAS28としては、DAS28−ESR及びDAS28−CRPのいずれをも用いることができるが、好ましくはDAS28−CRPである。本実施形態においては、DAS28−CRPの場合、遺伝子発現プロファイルの解析によってDAS28−CRPが4.1以下であると予測される場合に薬効あり、同4.1より大きいと予測される場合に薬効なしと判別しているが、この判別基準値は、実験条件に応じて適宜変更可能であり、この数値に限定されるものではない。例えば、遺伝子発現プロファイルの解析によってDAS28−CRPが2.7以下であると予測される場合に薬効あり、同2.7より大きいと予測される場合に薬効なしと判別してもよい。また、DAS28−ESRの場合、遺伝子発現プロファイルの解析によってDAS28−ESRが5.1以下であると予測される場合に薬効あり、同5.1より大きいと予測される場合に薬効なしと判別することができるが、この判別基準値は、実験条件に応じて適宜変更可能であり、この数値に限定されるものではない。例えば、DAS28−ESRが3.2以下であると予測される場合に薬効あり、同3.2より大きいと予測される場合に薬効なしと判別してもよい。
また、DAS28を用いて関節リウマチ患者において特定の薬剤が治療的に有効であるか無効であるかを判別する場合にはEULARの改善基準を用いることもでき、EULARの改善基準では、治療前に対する治療後の(薬剤投与前に対して薬剤投与後の)DAS28値の2つを組み合わせて、治療効果を反応良好、中等度反応、反応なしの3段階で評価している。具体的には、例えば、治療後DAS28値が3.2以下であり、且つ治療前DAS28値から治療後DAS28値を差し引いた値が1.2より大きい場合に薬効あり、それ以外の場合に薬効なしと判別することができる。また、治療後DAS28値が3.2以下であり、且つ治療前DAS28値から治療後DAS28値を差し引いた値が0.6より大きい場合、又は治療後DAS28値が5.1以下であり、且つ治療前DAS28値から治療後DAS28値を差し引いた値が0.6より大きい場合、又は治療後DAS28値が5.1より大きく、且つ治療前DAS28値から治療後DAS28値を差し引いた値が1.2より大きい場合に薬効あり、それ以外の場合に薬効なしと判別しても良い。
また、本実施形態においては、後述するように、関節リウマチ患者の遺伝子発現プロファイルの解析結果に基づいて、インフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値から決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものであるため、例えば、遺伝子発現プロファイルの解析結果、関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値が3.2以下であり、且つ当該関節リウマチ患者の現状のDAS28値から前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値を差し引いた値が1.2より大きいと予測した場合に薬効ありそれ以外の場合に薬効なしと判別することができる。この場合、「現状のDAS28値」とは、治療前(薬剤投与前)の患者のDAS28値を包括的に指し示すものであり、好ましくは、本発明に係る関節リウマチ患者の血液を採取する際のDAS28値である。
なお、関節リウマチ患者に対して、特定の薬剤が治療的に有効であるか無効であるかを判別するために用いることのできる指標は、上述の指標に限られるものではなく、臨床現場において許容される確実性を持って有効・無効を判別し得る限り、いかなる指標を用いても良い。
次に、本願発明に係る一実施形態に係る、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別するために用いられる遺伝子群の選抜手法を説明する。本実施形態において、関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別するために用いられる遺伝子群(判別遺伝子群)は、図1に示すような、本願発明の一実施形態に係る高判別遺伝子リストを得るためのフローチャートに従って得ることができる。概説すると、インフリキシマブ投与前の判別遺伝子決定解析用と検証用のサンプルを精製し、網羅的なDNAマイクロアレイによって遺伝子発現プロファイルを用意する。そして、判別遺伝子決定解析用の、インフリキシマブ薬効が有効か無効かの2群の臨床情報が既知であるサンプルを用いて、2群間で発現量に差がある遺伝子をマンホイットニーU検定の統計量の重要度や、判別についてのノイズに対するシグナルが高い順に判別遺伝子リストを作成する。この遺伝子リストの全体を含む部分セットに対して、例えば、多重交差検定法、特願2007−230142に開示する手法等によって過適合が存在しないことを確認し、その後、高判別遺伝子リストの決定と自己評価、さらに投与前及び投与後で検証用のプロファイルデータに対して精度評価を行い、インフリキシマブの有効性の有無の判別を分子レベルで行う最適遺伝子リストを得る。
具体的にはまず、上述したような関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別するための指標によって「薬効あり」又は「薬効なし」のいずれかにサンプルを分類し、2群判別をすることにより、高い判別力を示す遺伝子リストの探索を行う。取得した遺伝子発現量データは、Quantile Normalization法等の統計学分野又は分子生物学の分野において通常用いられる標準化方法によってあらかじめ正規化をしておくことが好ましい。なお、本願明細書において、特別に言及しない限り、プロファイルという用語は、正規化処理を行った後のデータを指すものである。
また、本実施形態においては、判別遺伝子群を得るための、遺伝子を解析するために用いるサンプル(投与前後におけるサンプルを含む)を学習セット、得られた判別遺伝子群が実際に高判別能を有するか否かを検証するために用いるサンプル(投与前後におけるサンプルを含む)を検証セットとする。いずれのサンプルセットについても、インフリキシマブ投与前のサンプル及びインフリキシマブ投与一定期間後のサンプルを用意して、後述するフローチャートを実践することが好ましい。一定期間後としては、例えば、54週間後、22週間後、14週間後、6週間後等の任意の期間を選択することができる。例えば、上述の指標として血清CRP値を用いる場合には、被験者毎に、投与後のある一定期間(14週間後)に正常閾値(0.3mg/dl以下)に達するか否かによって、正常閾値に達している場合に薬効あり、達しない場合に薬効なしと分類することができる。
判別遺伝子群はインフリキシマブ投与前の遺伝子発現プロファイルデータから取得する。なお、以下に説明するフローチャートにおいて、判別のための指標として血清CRP濃度、ACR、又はDAS28値のいずれかを用いた際の遺伝子発現プロファイルであるということ以外は共通する処理である。また、以下の各ステップの説明において示されるS101〜S106は、図1におけるステップS101〜S106を示すものである。また、被験者の血液サンプルからのRNA採取には、PAX Gene Kit等の市販のRNA抽出用キットを用いることができる。
まず、プロファイルデータの全体を、上述のように「薬効あり」と「薬効なし」の被験者に分け、2群間で例えば、マンホイットニーのUテスト実施する(S101)。なお、ウィルコクソンの順位和検定等のノンパラメトリックな統計学的検定を用いることもできる。
次に、それぞれの部分データを遺伝子寄与の大きい度合い、すなわちマンホイットニーUテストの統計値の降順でソートする(S102)。なお、「薬効あり」は、上述したように、例えば、投与14週後に、血清CRP濃度が0.3mg/dl以下である場合、ACRではACR20、ACR50、ACR70である場合、DAS28値では4.1以下であり、「薬効なし」は、投与14週後に、血清CRP濃度が0.3mg/dlより大きい場合、ACRではACR0である場合、DAS28値では4.1より大きい場合とすることができる。
そして、ステップS103において、ソート後のリストについて、最初から順にn個をとり、このn個を累積遺伝子個数とする。この累積遺伝子個数nの部分データ用いて学習セット全てのサンプルの分類予測を実施し、正解か不正解かを判別する(S103)。判別器の構成には、好ましくは、Weighted Vote法(非特許文献4を参照)を用いることができるが、判別関数としてはこれに限られるものではなく、例えば、k nearest neighbor(k−NN)法、support vector machine(SVM)、Artificial Neural Network(ANN)、Fisher linear classifier、階層的クラスタリング、主成分分析(PCA)等を用いることもできる。
続いて、サンプル数および累積遺伝子数ごとに判定された正解か不正解かの数値を全ての部分データにまたがって集計し、精度一覧を評価し、累積遺伝子数ごとに以下の定義の判別率に対して、目的精度が得られるnを得る(S104)。
・specificity(spec.):(薬効なしの正解サンプル数)/(薬効なしの全サンプル数)
・sensitivity(sens.):(薬効ありの正解サンプル数)/(薬効ありの全サンプル数)
・accuracy(acc.):(薬効有無の正解サンプル数)/(全サンプル数)
・ppv.:(薬効ありの正解サンプル数)/(薬効ありの判定サンプル数)
・npv.:(薬効なしの正解サンプル数)/(薬効なしの判定サンプル数)
なお、以上の数値については、全てが独立変数ではないが、これら全ての指標が百分率で50%を超え、且つ100%になるべく近い値が得られることが有効な臨床診断としての指標となる。また、遺伝子数を増やすことで判別率の向上が期待できるが、半面、遺伝子数が過剰に増えることによって過適合が起きて、飽和後にはまた判別率が遺伝子数の増加とともに減少することが予測される。そのため、実データの結果において、判別率が極大のピークをもたらす遺伝子数を探索すれば、最適遺伝子リストとして最も合理的な遺伝子数を決定することができる。
ここで、上述の各ステップにより得た数値には、過適合の恐れが含まれるため、同一サンプル数、同一遺伝子数に関して妥当性を判定する必要がある。そのため、例えば、特願2007−230142に開示される方法を用いることで、臨床情報(この場合、薬効の有無の判別群のラベルデータ)をランダムにシャッフルし、ステップS101からステップS104に示したものと同様の工程を行い、同一規模のプロファイルにおいて、ランダムな分類基準に対して偽の適合予測が起きることに起因して、50%を大きく超えるaccuracyが達成されていないことを、少なくとも1回、好ましくは複数回にわたって確認実施しても良い(S105)。
続いて、ステップS106において、上述の各ステップにより得られた遺伝子数に対して、最適遺伝子リストを決定する。これには、各部分プロファイルから、ステップS102においてソートした際の遺伝子順位の情報を用いて、各遺伝子について、全部分プロファイルにまたがった平均順位を取得する。このコンセンサスとなる順位から、上記の遺伝子数の遺伝子を取得したものを最終的に最適遺伝子リストとする(S106)。
上述のステップによって得られた最適遺伝子リストは、再度検証にかける必要がある。この再検証においては、サンプルを多数回分割して、トレーニング用と検証用に分け、mccv(Montecarlo Cross Validation)による方法、及び、可能な場合には、上述の学習セットによる解析には含まれていない、多数の新規のサンプルを用意して、後述のプロスペクティブな検証を実施することが望ましい。
以下に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に、本実施例においては、インフリキシマブ投与前の解析用学習セット42サンプルと検証用56サンプルの血液サンプルからPAX Gene Kitを用いてRNAを精製し、Agilent社のDNAマイクロアレイで発現プロファイルを網羅的に取得しているが、サンプル採取には、分子生物学分野で通常用いられる手法を採用し得る。
(インフリキシマブ投与前予測データの基本検証)
図2は、インフリキシマブ投与前42サンプルのデータにおける、ステップS101〜ステップS104で得られた上位のWeighted Vote法によるPrediction Strength(PS)値であり、図3は、その判別率を示している。なお、各種判別率の定義については、spec.、sens.、acc.、ppv.、npv.は上述の通りであり、その他の定義は後述する。これによると、薬効あり・なしの指標として血清CRP濃度を用いた場合、9遺伝子で精度acc.(accuracy)のピークが達成されていることが分かる。また、図示しないが、ACR値を用いた場合には27遺伝子でピークに達する。これらの場合について、ステップS105の過適合のチェックでは、いずれも精度が55%を上回る場合はなく過適合の徴候は認められなかった。
(インフリキシマブ投与前予測データの最適遺伝子リスト)
図2及び図3に、上述の投与前42サンプルのデータのステップS101〜ステップS106で得られた、投与14週後の血清CRP濃度を薬効あり・なしの指標に用いた場合のインフリキシマブ投与前予測データの最適遺伝子リストを示した。
(インフリキシマブ投与前の最適遺伝子リストのプロスペクティブ検証)
図4に、上述の最適遺伝子リストを用いて、学習セットとは別の、全く未知のプロスペクティブなサンプルである検証セットから得たWeighted Vote法によるPS値を示す。また、図5には、その予測結果を示す。なお、判別関数としては、上述の判別器の構成において用いたWeighted Voteを同様に用いている。この際、判別器の構成に他の判別関数を用いた場合には、検証においても同一の判別関数を用いることが好ましい。
この結果、インフリキシマブ投与前予測データの最適遺伝子リストの予測精度は、全最適遺伝子リストを用いて62.5%と推定され、有効性が示される。
(ACR,DAS28を用いた最適遺伝子リストのプロスペクティブ検証)
図6は、ACRとDAS28を用いた場合の検証結果である。ここに示されるように、ACRとDAS28を用いた場合にも、それぞれの指標毎の最適遺伝子リストによって得られるインフリキシマブの有効・無効の判別の精度は、それぞれ、63.6%、75.0%であることがわかる。
(各図における符号とその説明)
以下に、各図における符号と、各符号についての計算式を説明する。
(図1)
図1における各符号は上記した各ステップの説明及び以下の通りである。
S101…RNA発現プロファイルの「薬効あり」「薬効なし」での有意差のある遺伝子をマンホイットニーのUテストで抽出
S102…発現プロファイルの有意差のある順でのソート
S103…学習セットサンプルの分類予測
S104…予測精度の累計と目的精度の達成遺伝子サイズの決定
S105…遺伝子サイズの過適合の可能性のチェック
S106…高判別遺伝子リストの決定
(図2)
201…累積遺伝子。本発明に係る一実施形態において、マンホイットニーのUテストで有意な順にソートし、Weighted Vote法での累積遺伝子としている。
202…患者毎のPrediction Strength(PS)値
なお、PS値は、以下の式で求められる。
Prediction Strength値=Σi(Weighted Vote値)/Σi|Weighted Vote値|
ここで、Weighted Vote値は、
・Weighted Vote値=(x_i−(ave_e_i+ave_n_i)/2)SNR
であり、SNRは、
・SNR=|ave_e_i−ave_n_i|/(sigma_e_i+sigma_n_i)
で定義される。この式において、各値は、i番目の遺伝子を現す添え字"_i"ごとに、以下の変数を用いて定められる。
・xは各サンプルの発現値
・ave_eは、薬効のあり群のプロファイル強度の平均値
・ave_nは、薬効のない群のプロファイル強度の平均値
・sigma_eは、薬効のあり群のプロファイル強度の標準偏差
・sigma_nは、薬効のない群のプロファイル強度の標準偏差
ここにおいて、負の値は「薬効あり」、正の値は「薬効なし」を示す。なお、正負は式の定義の問題であり、逆に定義することも可能である。例えば、図2における患者3では、間違った判定となるスコアを出していることがわかる。
(図3)
301…累積遺伝子。本発明に係る一実施形態において、マンホイットニーのUテストで有意な順にソートし、Weighted Vote法での累積遺伝子としている。
302…判定のフラグ。各フラグは以下の通りである。
・TP(True Positive):薬効ありと予測し、実際に薬効のあったサンプル数
・FP(False Positive):薬効ありと予測し、薬効のなかったサンプル数
・TN(True Negative):薬効なしと予測し、実際薬効のなかったサンプル数
・FN(False Negative):薬効なしと予測し、薬効のあったサンプル数
303…判定のフラグの集計結果
・spec.(specificity):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
・sens.(sensitivity):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの全サンプル数)百分率
・acc.(accuracy):(薬効有無の正解サンプル数)の対(全サンプル数)百分率
・ppv.(Positive Predictive Value):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの判定サンプル数)百分率
・npv.(Negative Predictive Value):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
(図4)
401…累積遺伝子。本発明に係る一実施形態において、マンホイットニーのUテストで有意な順にソートし、Weighted Vote法での累積遺伝子とした(学習セットで決定した順位)。
402…Prediction Strength(PS)値。なお、PS値は、以下の式で求められる。
Prediction Strength(PS)値=Σi(Weighted Vote値)/Σi|Weighted Vote値|
ここで、Weighted Vote値は、
・Weighted Vote値=(x_i−(ave_e_i+ave_n_i)/2)SNR
であり、SNRは、
・SNR=|ave_e_i−ave_n_i|/(sigma_e_i+sigma_n_i)
で定義される。この式において、各値は、i番目の遺伝子を現す添え字"_i"ごとに、以下の変数を用いて定められる。
・xは各サンプルの発現値
また、以下の変数は学習セットでのデータを用いる。
・ave_eは、薬効のあり群のプロファイル強度の平均値
・ave_nは、薬効のない群のプロファイル強度の平均値
・sigma_eは、薬効のあり群のプロファイル強度の標準偏差
・sigma_nは、薬効のない群のプロファイル強度の標準偏差
(図5)
501…累積遺伝子。本発明に係る一実施形態において、マンホイットニーのUテストで有意な順にソートし、Weighted Vote法での累積遺伝子としている。
502…判定のフラグ。各フラグは以下の通りである。
・TP(True Positive):薬効ありと予測し、実際に薬効のあったサンプル数
・FP(False Positive):薬効ありと予測し、薬効のなかったサンプル数
・TN(True Negative):薬効なしと予測し、実際薬効のなかったサンプル数
・FN(False Negative):薬効なしと予測し、薬効のあったサンプル数
503…判定のフラグの集計結果
・spec.(specificity):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
・sens.(sensitivity):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの全サンプル数)百分率
・acc.(accuracy):(薬効有無の正解サンプル数)の対(全サンプル数)百分率
・ppv.(Positive Predictive Value):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの判定サンプル数)百分率
・npv.(Negative Predictive Value):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
(図6)
601…臨床情報。インフリキシマブの効果を見積もる臨床指標である。図6においては、CRP、ACR、DAS28を示す。
602…臨床情報ごとの「薬効あり」「薬効なし」の閾値。なお、本実施形態において、「薬効あり」は、投与14週後に、血清CRP濃度が0.3mg/dl以下である場合、ACRではACR20、ACR50、ACR70である場合、DAS28値では4.1以下である場合であり、「薬効なし」は、投与14週後に、血清CRP濃度が0.3mg/dlより大きい場合、ACRではACR0である場合、DAS28値では4.1より大きい場合である。
603…判定のフラグ。各フラグは以下の通りである。
・TP(True Positive):薬効ありと予測し、実際に薬効のあったサンプル数
・FP(False Positive):薬効ありと予測し、薬効のなかったサンプル数
・TN(True Negative):薬効なしと予測し、実際薬効のなかったサンプル数
・FN(False Negative):薬効なしと予測し、薬効のあったサンプル数
603…判定のフラグの集計結果
・spec.(specificity):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
・sens.(sensitivity):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの全サンプル数)百分率
・acc.(accuracy):(薬効有無の正解サンプル数)の対(全サンプル数)百分率
・ppv.(Positive Predictive Value):(薬効ありの正解サンプル数)の対(薬効ありの判定サンプル数)百分率
・npv.(Negative Predictive Value):(薬効なしの正解サンプル数)の対(薬効なしの全サンプル数)百分率
(分子生物学的実験手法)
以下に、本願発明に係る一実施形態において使用した実験手法および物質並びにその定義を説明する。なお、本実施形態において、以下の実験手法を用いているが、これら以外の実験手法を用いても、同様の結果を得ることができる。
(遺伝子発現の定量)
また、本実施形態において、遺伝子発現量の測定(定量)は、例えば、DNAチップ、マイクロアレイ法、リアルタイムPCR、ノーザンブロット法、ドットブロット法、定量的RT−PCR(quantitative reverse transcription−polymerase chain reaction)法等の種々の分子生物学的手法によってmRNA量を測定することにより行うことができる。
定量的RT−PCR法に用いるプライマーとしては、遺伝子マーカーを特異的に検出することができるものであれば特に制限されるものではないが、12〜26塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましい。その塩基配列は、ヒトの各遺伝子の配列情報に基づいて決定する。そして、決定した配列を有するプライマーを、例えば、DNA合成機を用いて作製することができる。
一方、定量対象として遺伝子の翻訳物(ポリペプチド)又は最終産物(タンパク質)を用いる場合には、例えば、遺伝子に対して特異的なポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等を用いたウエスタンブロット法やELISA法などによって遺伝子の発現量の測定を行うことができるが、これらの方法に限定されるものではなく、RIA(radioimmunoassay、放射免疫測定法)、EIA(enzyme immunoassay、酵素免疫法)等、様々な手法を用いることができる。
なお、本願発明に係る一実施形態において、「遺伝子」とは、RNAやDNAなどの塩基配列によって示される遺伝情報をいうものである。ヒト、マウス、ラットなどの生物種間で保存されるオーソログ遺伝子なども含まれる。遺伝子は、タンパク質をコードするものだけでなく、RNAやDNAとして機能するものであってもよい。遺伝子は、その塩基配列にしたがうタンパク質をコードするのが一般的であるが、当該タンパク質と生物学的機能が同等であるタンパク質(たとえば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)や変異体や誘導体)をコードするものであってもよい。たとえば、遺伝情報による塩基配列によって示されるタンパク質とはわずかに塩基配列が異なるタンパク質であって、その塩基配列が遺伝子情報による塩基配列の相補配列とハイブリダイズするようなタンパク質をコードするような遺伝子であってもよい。
「RNA」とは、1本鎖RNAだけでなく、これに相補的な配列を有する1本鎖RNAやこれらから構成される2本差RNAを含む概念である。また、totalRNA、mRNA、rRNAを含む概念である。
「DNAチップ」「DNAアレイ」とは、プローブDNAを基板上に配した構造を有し、ハイブリダイゼーションにより、複数の遺伝子の発現を測定するものである。光学的に発現量を計測するためのものだけでなく、電気的に発現量を出力するものも含む。「DNAチップ」としては、たとえば、アジレント社のWhole Human Genome (商標)やアフィメトリクス社のGeneChip(商標)を用いることができる。「DNAアレイ」としては、アマシャムバイオサイエンス社のCodeLink Expression Bioarray(商標)を用いることができる。なお、DNAアレイには、DNAマイクロアレイだけでなくDNAマクロアレイも含む。
「発現量」とは、遺伝子の発現量を直接的に測定した値だけでなく、所定の計算や統計学的手法によって変換された値も含む概念である。また、「遺伝子発現量」や「発現シグナル」、「遺伝子発現シグナル」、「発現シグナル値」、「遺伝子発現シグナル値」、「遺伝子発現データ」、「発現データ」等も個々の遺伝子の発現を反映する値を指すものとして同義である。
「遺伝子発現」とは遺伝子の発現量により表現される生体の遺伝子発現の態様を指し、1個の遺伝子の発現量により表される場合及び複数の遺伝子の発現量により表される場合のいずれもが含まれる。また、「発現」も生体の遺伝子発現の態様を指すものとして同義である。
その他、本発明は、さまざまに変形可能であることは言うまでもなく、上述した一実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。

Claims (13)

  1. 関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を、複数の指標から選択される1若しくはそれ以上の指標を用いて判別する方法であって、
    関節リウマチ患者の血液中の表1、表2、又は表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定する工程と、
    前記測定した発現量を、予め用意された遺伝子発現プロファイルを用いて解析する工程と、
    前記解析した結果に基づき、前記関節リウマチ患者におけるインフリキシマブ薬効の有効性を判別する工程と、
    を有することを特徴とする、方法。
  2. 請求項1記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合における、前記複数の指標から選択される少なくとも1の指標値よって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである
    ことを特徴とする、方法。
  3. 請求項2記載の方法において、
    前記測定する工程は、表1から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定するものであり、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合の血清CRP濃度によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである
    ことを特徴とする、方法。
  4. 請求項3記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合における血清CRP濃度が0.3mg/dl以下であると予測した場合に薬効あり、0.3mg/dlより大きいと予測した場合に薬効なしと判別するものである
    ことを特徴とする、方法。
  5. 請求項2記載の方法において、
    前記測定する工程は、表2から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定するものであり、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合のACR値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである
    ことを特徴とする、方法。
  6. 請求項5記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるACR値がACR20、ACR50、又はACR70であると予測した場合に薬効あり、ACR0であると予測した場合に薬効なしと判別するものである
    ことを特徴とする、方法。
  7. 請求項2記載の方法において、
    前記測定する工程は、表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子の発現量を測定するものであり、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合のDAS28値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである
    ことを特徴とする、方法。
  8. 請求項7記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値が4.1以下であると予測した場合に薬効あり、4.1より大きいと予測した場合に薬効なしと判別するものである
    ことを特徴とする、方法。
  9. 請求項7記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記解析した結果に基づいて、前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値が3.2以下であり、且つ当該関節リウマチ患者の現状のDAS28値から前記関節リウマチ患者にインフリキシマブを投与した場合におけるDAS28値を差し引いた値が1.2より大きいと予測した場合に薬効あり、それ以外であると予測した場合に薬効なしと判別するものである
    ことを特徴とする、方法。
  10. 請求項2記載の方法において、
    前記判別する工程は、前記関節リウマチ患者へのインフリキシマブ投与14週間後における指標値によって決定される薬効あり又は薬効なしを予測するものである
    ことを特徴とする、方法。
  11. 請求項1記載の方法において、
    前記関節リウマチ患者の血液は、当該関節リウマチ患者にインフリキシマブが投与される前に採取されるものである
    ことを特徴とする、方法。
  12. 請求項1記載の方法において、
    前記関節リウマチ疾患羅患者の血液は、当該関節リウマチ疾患羅患者にインフリキシマブが投与された後に採取されるものである
    ことを特徴とする、方法。
  13. 請求項1記載の方法に用いられるアレイであって、
    表1、表2、又は表3から選択される1若しくはそれ以上の遺伝子をコードする少なくとも一部の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするプローブが、固体支持体上の各々異なる位置に固定してなることを特徴とするアレイ。
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