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JP2010251612A - 窒化物半導体発光素子の製造方法、発光装置、窒化物半導体発光層および窒化物半導体発光素子 - Google Patents

窒化物半導体発光素子の製造方法、発光装置、窒化物半導体発光層および窒化物半導体発光素子 Download PDF

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JP2010251612A
JP2010251612A JP2009101235A JP2009101235A JP2010251612A JP 2010251612 A JP2010251612 A JP 2010251612A JP 2009101235 A JP2009101235 A JP 2009101235A JP 2009101235 A JP2009101235 A JP 2009101235A JP 2010251612 A JP2010251612 A JP 2010251612A
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Yuzo Tsuda
有三 津田
Masataka Ota
征孝 太田
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Sharp Corp
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Sharp Corp
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Abstract

【課題】430nm以上の発光波長を有する窒化物半導体発光素子において、発光効率の向上、歩留まりの向上または発光素子の長寿命化を図る。
【解決手段】発光層は、1以上の井戸層、1以上の障壁層、および前記井戸層と前記障壁層との間に接して設けられた1以上の保護層を含み、430nm以上の発光波長を有するものであり、InとGaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および窒素を含むキャリアガスにより井戸層を形成する工程と、Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および窒素を含むキャリアガスにより保護層を形成する工程と、前記Gaを含むIII族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および窒素と水素を含むキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断する第1の成長中断工程と、前記Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および窒素と水素を含むキャリアガスにより障壁層を形成する工程、をこの順に含む。
【選択図】図9

Description

本発明は窒化物半導体発光素子の製造方法、発光装置、窒化物半導体発光層および窒化物半導体発光素子に関する。
InGaN材料等を利用した窒化物半導体発光素子の製造において、得られる発光素子の発光強度をより一層高めるための製造方法として、例えば特許文献1においては、量子井戸構造を有する活性層(発光層)の気相結晶成長中に所定の成長中断時間を設け、その成長中断中に適量の水素ガスを適切な導入タイミングで導入する製造方法を用いることにより、得られる発光素子の発光強度が高められることが開示されている。
また、特許文献2においては、井戸層を成長後、障壁層を成長させるために温度を昇温させた際に生じる井戸層中のInの分解を防止するために、活性層の井戸層と障壁層の間に障壁層よりもバンドギャップエネルギーの大きい中間層を形成することが開示されている。さらに、特許文献2の段落0041には、上記中間層の表面が上記昇温工程によって陥没または貫通した複数の領域を有する網目構造となることによって、素子の駆動電圧を低減することができることが開示されている。
特開2003−289156号公報 特開2001−168471号公報
しかしながら、特許文献1に開示された発光層の製造方法を利用しても、得られる発光素子の発光効率は十分なものでなく、また発光波長の揺らぎが大きいという問題を含んでいる。また、特許文献2に開示された発光層の形態を利用しても、得られる発光素子の発光効率は十分なものではなかった。
一般に、430nm以上の発光波長を有する窒化物半導体発光素子を得るためには、量子井戸構造を有する発光層中のInGaN井戸層のIn組成比が比較的高く設定される。なぜならば、In組成比の増大に伴ってInGaN井戸層のエネルギバンドギャップが減少し、それに伴って発光波長が増大するからである。
高いIn組成比を有するInGaN井戸層を結晶成長させるためには、気相成長工程においてInを含む原料ガスを多く供給する必要がある。このような状況では気相中に高濃度のInが含まれ、固相(井戸層)中に取り込むことができなかったInがその表面に偏析する傾向が高い。そして、In偏析領域は非発光領域となる傾向を有し、発光層の発光効率を著しく低下させる。
実際、本発明者らの実験結果によれば、発光波長430nm以上の発光素子において、In偏析が原因と思われる非発光領域が蛍光顕微鏡を用いて観測された。また、これらの非発光領域は、特に発光層の成長後からp型窒化物半導体層(ここで言うp型窒化物半導体層とは、1以上の層からなり、そのすべての層がp型の不純物を含んでいる必要はなく、一部の層にのみp型の不純物が含まれた複数からなる層も総称している)の成長完了までの間で発光層が900℃以上1200℃以下の温度に少なくとも3分以上曝される(結晶成長期間に限られず、単に昇温降温するだけの期間をも含む)場合において、顕著に現れる傾向があった。
すなわち、発光層の熱履歴によって、高いIn組成比を有する井戸層の劣化が進行し得るのである。この900℃以上1200℃以下の温度に少なくとも3分以上曝される工程が、すべて発光層の上にp型窒化物半導体層が積層される工程だと仮定し、且つ前記p型窒化物半導体層の一般的な成長速度を考慮すると、そのp型窒化物半導体層の厚さは0.35μm以上に該当する。具体的に、900℃以上1200℃以下の温度が必要なp型窒化物半導体層としては、例えばAlGaN層および/またはGaN層が挙げられる。つまり、発光素子の中でも特にレーザ素子において、非発光領域(あるいはIn偏析)が顕著に現れる傾向がある。
特に、特開2001−168471号公報(特許文献2)に記載されるような、井戸層の上の中間層が陥没または貫通した複数の領域を有する網目構造を有すると井戸層の表面が暴露されるため、In偏析やIn組成比の揺らぎを誘発させて井戸層の劣化を促進させてしまう。
そこで、本発明は、430nm以上の発光波長を有する窒化物半導体発光素子において、発光層(特に井戸層)の界面をできる限り平坦に保ちながら発光層中のIn偏析または過剰In濃度に起因する非発光領域の発生を抑制することによって、発光効率の向上、歩留まりの向上または発光素子の長寿命化を図ることを目的とする。
本発明は、n型窒化物半導体層、p型窒化物半導体層、および、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層との間に形成される発光層を含む窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
前記発光層は、窒化物半導体からなる1以上の井戸層、窒化物半導体からなる1以上の障壁層、および、前記井戸層と前記障壁層との間に接して設けられた窒化物半導体からなる1つ以上の保護層を含み、430nm以上の発光波長を有するものであり、
InとGaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素を含むキャリアガスを供給して前記井戸層を形成する井戸層形成工程と、
Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素を含むキャリアガスを供給して前記保護層を形成する保護層形成工程と、
前記Gaを含むIII族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、窒素と水素を含むキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第1の成長中断工程と、
前記Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素と水素を含むキャリアガスを供給して前記障壁層を形成する障壁層形成工程とをこの順に含むことを特徴とする、窒化物半導体発光素子の製造方法である。
上記保護層は、上記p型窒化物半導体層側で上記井戸層に接して設けられることが好ましい。
上記保護層は1つ以上の窒化物半導体層から構成されるものであり、少なくとも上記井戸層と直接に接する層はInを含まない窒化物半導体層であることが好ましい。
上記発光層の形成後において上記発光層が900℃以上1200℃以下の温度に3分以上曝されることが好ましい。
上記p型窒化物半導体層の厚さが0.35μm以上1μm以下であることが好ましい。
上記保護層の厚さが0.25nm以上1.2nm以下であることが好ましい。
上記井戸層の厚さが1nm以上3.2nm以下であることが好ましい。
上記障壁層の厚さが15nm以上35nm以下であることが好ましい。
上記保護層がGaN層および/またはAlGaN層を含むことが好ましい。
また、本発明は、上記井戸層がInGaN層またはAlInGaN層である、上記窒化物半導体発光素子の製造方法にも関する。
上記障壁層がInGaN層、GaN層、AlGaN層およびInAlGaN層からなる群から選ばれる少なくとも1つの層を含むことが好ましい。
上記保護層形成工程におけるアンモニアガスの流量が、上記井戸層形成工程におけるアンモニアガスの流量と同じかそれよりも多いことが好ましい。
上記保護層形成工程で用いられるキャリアガスは、窒素以外にさらに水素を含み、キャリアガス中の水素の割合が1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。
上記保護層形成工程におけるアンモニアガスの流量に対して、上記第1の成長中断工程におけるキャリアガス中の水素の割合が1モル%以上35モル%以下であることが好ましい。
上記障壁層形成工程で用いるキャリアガス中の水素の割合が1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。
上記第1の成長中断工程と上記障壁層形成工程との間において、上記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、窒素のみからなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断する第2の成長中断工程をさらに含むことが好ましい。
上記第1の成長中断工程と上記障壁層形成工程との間において、上記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、水素と窒素からなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第3の成長中断工程をさらに含むことが好ましい。
上記第2の成長中断工程と上記障壁層形成工程との間において、上記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガスとともに、水素と窒素からなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第3の成長中断工程をさらに含むことが好ましい。
また、本発明は、上記窒化物半導体発光素子の製造方法を用いて製造された窒化物半導体発光素子を備えた発光装置にも関する。
さらに、本発明は、基板の表面に形成された窒化物半導体発光層であって、1以上の井戸層、1以上の障壁層、および、上記井戸層と上記障壁層との間に接して設けられた1以上の保護層を含み、上記井戸層の基板側の主面と上記障壁層とが接する界面は実質的に平坦であって、上記井戸層の他方の主面は上記保護層に覆われており、上記井戸層の他方の主面と上記保護層とが接する界面の断面形状は波形状であることを特徴とする、窒化物半導体発光層にも関する。
上記保護層は1つ以上の窒化物半導体層から構成されるものであり、少なくとも上記井戸層と直接に接する層はInを含まない窒化物半導体層であることが好ましい。
また、本発明は、上記窒化物半導体発光層を含む窒化物半導体発光素子にも関する。
本発明によれば、430nm以上の発光波長を有する窒化物半導体発光素子において、井戸層の界面の平坦性をできるだけ保ちながら非発光領域の発生を抑制することができ、それによって発光効率の向上(非発光斑点の抑制)とレーザ素子の長寿命化(界面の平坦性向上に伴う内部損失の低減)を得ることができる。
また、その発光効率の向上は、その発光素子を利用する種々の装置の消費電力低減に寄与し得る。
実施形態1の窒化物半導体発光素子の積層構造を示す模式的断面図である。 実施形態1の井戸層形成工程の一例を示す模式的断面図である。 実施形態1の保護層形成工程の一例を示す模式的断面図である。 実施形態1の第1の成長中断工程の一例を示す模式的断面図である。 実施形態1の障壁層形成工程の一例を示す模式的断面図である。 実施形態1の第2の成長中断工程の一例を示す模式的断面図である。 実施形態1の第3の成長中断工程の一例を示す模式的断面図である。 実施例1の窒化物半導体発光素子を図解する模式的断面図である。 本発明の製造方法によって形成された窒化物半導体発光層の一例を示す模式的断面図である。 従来の製造方法によって形成された保護層を有さない窒化物半導体発光層の一例を示す模式的断面図である。
以下において、本願発明の種々の実施形態が、図面を参照しつつ説明される。なお、本願の図面において、長さ、幅、厚さなどは図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。特に厚さは、相対的に適宜に拡大されて示されている。また、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わしている。
<実施形態1>
図1の模式的断面図において、本発明の実施形態1において作製される窒化物半導体発光素子10の積層構造が図解されている。図1に示すように、本実施形態の窒化物半導体発光素子10は、基板11、n型窒化物半導体層12、発光層13およびp型窒化物半導体層14から構成される。
本実施形態に用いる基板11としては、サファイア、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、Si、SiC(炭化ケイ素)、もしくはZrB2(二ホウ化ジルコニウム)等の基材そのもの、または、その基材上に結晶成長させた窒化物半導体層を用いることができる。また、基板11の主面方位としては、六方晶系の基板では(0001)面、無極性面の(11−20)面もしくは(1−100)面、または半極性面の(1−102)面もしくは(11−22)面等を用いることができ、立方晶系の基板では(001)面または(111)面等を用いることができる。
n型窒化物半導体層12は1つ以上の窒化物半導体層から構成され、各窒化物半導体層を構成する材料としては、例えば、Si等のn型の不純物を含むGaN、AlGaN、InAlGaNまたはInGaNを用いることができる。ただし、n型窒化物半導体層12を構成する全ての層がn型の不純物を含んでいる必要はなく、n型窒化物半導体層12の一部にアンドープ層を含んでいてもよい。窒化物半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を製造する場合は、n型窒化物半導体層12を構成する窒化物半導体層のうち、発光層13と直接接する層はSi等のn型の不純物を含まないアンドープ層であることが好ましい。これは、ドーパントによる光吸収を防止するためである。
発光層13は、窒化物半導体からなる1以上の井戸層、窒化物半導体からなる1以上の障壁層、および、井戸層と障壁層との間に接して設けられた1以上の保護層から構成されている。ここで、保護層は、p型窒化物半導体層側で井戸層に接して設けられることが好ましい。そして、上記発光層13は単一または多重の量子井戸構造を有し得る。多重量子井戸構造においては、障壁層から始まって井戸層と障壁層の積層を繰り返して障壁層で終了してもよいし、井戸層から始まって障壁層と井戸層の積層を繰り返して井戸層で終了してもよい。発光層13に関しては、後でさらに詳細に説明される。
本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は、430nm以上の発光波長を有する発光層13を含む発光素子に対して好適に用いられる。これは、430nm未満の発光波長を有する発光層13ではIn濃度が低くてIn偏析があまり問題にならないからである。さらに、発光層13の発光波長が580nm以下であることがより好ましい。発光波長が580nmを超えるためには高いInの濃度を必要とし、その場合には発光層13の結晶の質が著しく低下して実用的でなくなる。
p型窒化物半導体層14は1以上の窒化物半導体層から構成され、各窒化物半導体層を構成する材料としては、Mg等のp型の不純物を含むGaN、AlGaN、InAlGaNまたはInGaNを用いることができる。ただし、p型窒化物半導体層14を構成する全ての層がp型の不純物を含んでいる必要はなく、p型窒化物半導体層14の一部にアンドープ層を含んでいてもよい。窒化物半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を製造する場合は、p型窒化物半導体層14を構成する窒化物半導体層のうち、発光層13と直接接する層はMg等のp型の不純物を含まないアンドープ層である方が好ましい。
(窒化物半導体発光素子の製造)
次に、図1に示すような窒化物半導体発光素子10の製造方法の一例について説明する。まず、基板11がMOCVD(有機金属気相堆積)装置内に設置され、n型窒化物半導体層12を結晶成長させるに適した温度に保持される。そして、窒素ガスと水素ガスとを含むキャリアガスを用いて、III族元素を含む原料ガス、Siを含むドーピングガスおよびアンモニアガスをMOCVD装置内に導入し、基板11上に1以上のn型窒化物半導体層12を結晶成長させる。
ここで、1以上のn型窒化物半導体層12の一部がGaNまたはAlGaNからなる場合には、その結晶成長のための基板温度は900℃以上1200℃以下であることが好ましく、1000℃以上1100℃以下であることがより好ましい。また、1以上のn型窒化物半導体層12の一部がInAlGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上1000℃以下であることが好ましい。さらに、1以上のn型窒化物半導体層12の一部がInGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上900℃以下であることが好ましい。すなわち、それぞれ適した基板温度の範囲内でn型窒化物半導体層12を結晶成長させた場合には、それらのn型窒化物半導体層12の結晶性が良好になるので好ましい。
なお、III族元素を含む原料ガスとしては、例えばTMG((CH33Ga:トリメチルガリウム)、TEG((C253Ga:トリエチルガリウム)、TMA((CH33Al:トリメチルアルミニウム)、TEA((C253Al:トリエチルアルミニウム)、TMI((CH33In:トリメチルインジウム)、TEI((C253In:トリエチルインジウム)等を利用することができる。また、Siを含むドーピングガスとしては、例えばSiH4(シラン)ガス等を用いることができる。また、アンモニアガスの代わりに、モノメチルヒドラジンまたはジメチルヒドラジンを用いることもできる。
1以上のn型窒化物半導体層12上に発光層13を結晶成長させるに適した基板温度は、発光層13(発光層は、井戸層と障壁層および保護層からなる)の一部がInGaNからなる場合には600℃以上900℃以下であることが好ましい。発光層13の一部がGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上1080℃以下であることが好ましく、750℃以上1000℃以下であることがより好ましい。発光層13の一部がInAlGaNまたはAlGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上1000℃以下であることが好ましい。これらの基板温度範囲内で発光層13を結晶成長させた場合には、その発光層13が良好な発光特性を有し得る。なお、発光層13の形成において用いられるIII族元素を含む原料ガスおよびアンモニアガスとしては、n型窒化物半導体層12の場合と同様の種類のガスを用いることができる。また、発光層13にSiを添加する場合には、Siを含むドーピングガスをMOCVD装置内に導入すればよい。
発光層13の形成後には、窒素ガスと水素ガスとを含むキャリアガスを用いて、III族元素を含む原料ガス、Mgを含むドーピングガスおよびアンモニアガスをMOCVD装置内に導入し、発光層13上に結晶を成長させてp型窒化物半導体層14を形成する。ここで、p型窒化物半導体層14を形成するのに適した基板温度は以下の通りである。p型窒化物半導体層14の一部の層がGaNまたはAlGaNからなる場合には、900℃以上1200℃以下であることが好ましく、1000℃以上1100℃以下であることがより好ましい。また、p型窒化物半導体層14の一部の層がInAlGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上1000℃以下であることが好ましい。さらに、p型窒化物半導体層14の一部の層がInGaNからなる場合には、基板温度は700℃以上900℃以下であることが好ましい。すなわち、それぞれ適した基板温度の範囲内でp型窒化物半導体層14を結晶成長させた場合には、それらのp型窒化物半導体層14の結晶性が良好になる。
ここで、Mgを含むドーピングガスとしては、例えばCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)または(EtCp)2Mg(ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム)等を利用することができる。なお、(EtCp)2Mgは常温常圧下で液体なので、その条件下で固体であるCp2Mgに比べて、MOCVD装置内への導入量を変化させたときの応答性が良好であって、その蒸気圧を一定に保つことが容易である。この場合、Mgを含むドーピングガスの導入量が生産ロット毎に変動することを容易に抑制することが可能になる。なお、p型窒化物半導体層14の形成において用いられるIII族元素を含む原料ガスおよびアンモニアガスとしては、n型窒化物半導体層12および発光層13の場合と同様の種類のガスを用いることができる。
発光層13の成長後からp型窒化物半導体層14の成長完了までの間で、p型窒化物半導体層14を構成する各層が積層される各々の工程全てにおいて、発光層13が900℃以上1200℃以下の温度に少なくとも3分以上曝されるとすると、一般的なp型窒化物半導体層14の成長速度を考慮して、その厚さは、0.35μm以上となる。
さらに具体的に述べれば、900℃以上1200℃以下の温度が必要なp型窒化物半導体層は、主にAlGaN層および/またはGaN層から構成される層である。例えば、レーザ素子の場合、p型窒化物半導体層14を構成する一部の層として高品質なGaN光ガイド層、AlGaNクラッド層、GaNコンタクト層等を必要とし、これらの層は900℃以上1200℃以下の温度で形成されることが望ましい。
p型窒化物半導体層14の厚さは1μm以下であることが好ましい。p型窒化物半導体層14の厚さが1μmを超えれば、発光層が高い温度で長時間にわたって熱に曝されることになるので、発光層の熱劣化による非発光領域の増大が懸念される。
(発光層の形成)
以下に、本実施形態の窒化物半導体発光素子の製造方法のうち、発光層の形成方法をより詳細に説明する。本実施形態における発光層の形成方法は、InGaN井戸層を形成する井戸層形成工程、GaN保護層を形成する保護層形成工程、第1の成長中断工程、および、窒化物半導体からなる障壁層を形成する障壁層形成工程を含んでいる。図2〜図5の模式的断面図は、本実施形態における発光層13の形成方法の各工程を図解している。
本発明の窒化物半導体発光層は、1以上の井戸層、1以上の障壁層、および、井戸層と障壁層との間に接して設けられた1以上の保護層を含み、井戸層の基板側の主面と障壁層とが接する界面は実質的に平坦であって、井戸層の他方の主面は保護層に覆われており、井戸層の他方の主面と保護層とが接する界面の断面形状は波形状であることを特徴とするものである。かかる波形状において、波の周期が全て150nm以上であり、波の高低差が全て井戸層の平均的な最大厚さの平均値の30%以下であることが好ましい。一方の界面が完全に平坦でないことによって、高電流注入時における発光ダイオードの出力低下を防止することができる。ただし、前記の範囲を超えてしまうと、注入したキャリアがその界面で散乱され、発光素子内部の損失が増大してしまうため好ましくない。
本発明においては、井戸層、障壁層または保護層の少なくともいずれかの層にSiを添加することもできる。窒化物半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を製造する場合は、井戸層、障壁層および保護層のすべての層がアンドープであることが好ましい。
(井戸層形成工程)
図2に示すように、井戸層形成工程において、n型窒化物半導体層12上に井戸層13aが積層される。
本実施形態において、発光層13中には、このような井戸層13aが1つ以上形成される。発光波長が450nm前後の発光層13を得る場合には、2層または3層の井戸層13aを形成することが好ましく、発光波長が470nm前後の発光層13を得る場合には、3層〜5層の井戸層13aを形成することが好ましい。また、発光波長が500nm以上の発光層13を得る場合には、5層以上10層以下の井戸層13aを形成することが好ましい。このことによって、レーザ発振が可能となる。
井戸層13aの厚さは、非発光領域を効果的に抑制する観点から、1nm以上3.2nm以下であることが好ましい。井戸層13aが厚くなるにつれて、その井戸層の表面に過剰なInが蓄積しやすくなるため、井戸層13aの厚さが3.2nmを超えると、非発光の原因となる過剰なInを後の第1の成長中断工程で除去することが難しくなる傾向がある。
本発明において、井戸層13aはInGaN層またはAlInGaN層であることが好ましい。窒化物半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を製造する場合には、井戸層13aはInGaN層であることが好ましい。また、n型窒化物半導体層12を構成する1つ以上の層のうち、井戸層13a(InGaN層)と接する層はアンドープInGaN層からなることが好ましく、そのアンドープInGaN層におけるIII族元素中のIn組成比は2モル%以上10モル%以下であり、該アンドープInGaN層を含む井戸層13aの厚さは25nm以上150nm以下であることが好ましい。これは、430nm以上の発光波長を得る上で安定した井戸層を形成するための条件である。
n型窒化物半導体層12上にInGaN井戸層13aを形成する際には、基板温度がInGaN井戸層13aを結晶成長させるに適した温度に保持され、InとGaを含むIII族元素原料101、アンモニアガス102および窒素を含むキャリアガス103をMOCVD装置内に導入する(図2参照)。
ここで、InGaN井戸層13aを結晶成長させるのに適した温度は、600℃以上850℃以下である。InGaN井戸層13aの成長温度が前述のn型InGaN層12に適した成長温度よりも低く設定されるのは、430nm以上の発光波長を有するInGaN井戸層13aを形成するためには高いIn組成比(III族元素中の少なくとも7モル%以上)が必要だからである。
高いIn組成比を得るためには、比較的低い結晶成長温度に加えて、Inを含むIII族元素原料の供給量を多くする必要がある。従来の製造方法を用いて、このような条件下で成長させられたInGaN井戸層13aにおいては、取り込むことができなかった過剰なInがその表面上に多く残存する傾向にあり、In偏析による非発光領域が増大する結果となりやすい。そして、この非発光領域が発光素子の特性を悪化させている。
井戸層13aがInGaNからなる場合、窒素を含むキャリアガス103としては、窒素のみからなるキャリアガスが好ましい。本発明者らの実験によれば、InGaNからなる井戸層の形成に窒素と水素を含むキャリアガスを用いた場合、得られる井戸層の非発光領域の抑制効果(In偏析の抑制効果)が多少認められたものの、発光波長の短縮化の効果が顕著に大きく、430nm以上の発光波長を得られない場合があった。
一方、井戸層13aがAlInGaN層からなる場合、窒素を含むキャリアガス103としては、窒素と水素の混合ガスが好ましい。AlInGaN層からなる井戸層の形成に窒素と水素を含むキャリアガスを用いた場合、得られる井戸層の発光波長の短波長化はInGaN層からなる井戸層の場合よりも小さかった。むしろ、AlInGaN層からなる井戸層の場合は水素を入れて成長することによって発光強度が増大するといった特徴が認められた。これらの発光強度の増大と非発光領域の多少の抑制効果の観点から、井戸層13aはAlInGaN層からなることが好ましく、該AlInGaN層中のAlの含有量は全組成に対して1〜20モル%が好適である。ただし、井戸層がAlInGaN層であり、且つ、水素と窒素を含むキャリアガス103を用いて成長されたとしても、それだけで、上記非発光領域は完全に消滅させることは難しい。
なお、Inを含むIII族元素原料としてはTMIまたはTEIを用いることができ、Gaを含むIII族元素原料としてはTMGまたはTEGを用いることができ、Alを含むIII族元素原料としてはTMAまたはTEAを用いることができる。
井戸層形成工程において、アンモニアガス102の単位時間当たりの流量は、1.5L/分以上10L/分以下であることが好ましい。
井戸層形成工程において、窒素を含むキャリアガス103の単位時間当たりの流量は、8L/分以上30L/分以下が好ましい。キャリアガス103中にさらに水素含む場合、キャリアガス103中の水素の割合は、0.5モル%以上15モル%以下が好ましい。ここで、キャリアガス103中の水素の割合とは、キャリアガス103中の水素の流量をキャリアガス103の全流量で除した値の100倍で計算されるモル百分率を意味する。
(保護層形成工程)
図3は、本実施形態における井戸層形成工程の後の保護層形成工程を示している。本実施形態の保護層形成工程は、Gaを含みIII族元素原料111、アンモニアガス112、および、窒素を含むキャリアガス113を供給して、GaN保護層13bが形成される工程である。
この保護層形成工程を実施せずに、後述の第1の成長中断工程を実施しても、発光素子の特性を悪化させている主要因である非発光領域は殆ど消滅する。しかしながら、本発明者らの実験結果によれば、井戸層形成工程と第1の成長中断工程との間の保護層形成工程を省略した場合、第1の成長中断工程の実施後、井戸層の最表面、すなわち井戸層と障壁層との間の界面には、短周期の凹凸形状が存在することが分かった。この原因は、第1の成長中断工程で供給されるキャリアガス中の水素は、井戸層13aの表面に残った過剰なInを除去して非発光領域を消滅させる強い効果を生じるが、同時に井戸層13aの表面をエッチングする不所望の効果を生じてしまうためであると考えられる。
この界面の平坦性の欠如は、例えば半導体レーザにおいて、内部量子効率の低下および共振器長内での内部損失の増大を招き、半導体レーザの発振寿命に悪影響を及ぼす。したがって、よりよい半導体レーザの寿命特性を得るためには、界面の平坦性の向上が望ましい。
本発明における保護層形成工程の目的は、井戸層形成工程で形成された井戸層の最表面が、後述の第1の成長中断工程におけるキャリアガス中の水素によって受けるダメージ(エッチングによる平坦性の欠如)を抑制することにある。井戸層形成工程と第1の成長中断工程との間に窒化物半導体からなる保護層13bを設けることによって、井戸層13aの表面が直接、後述の第1の成長中断工程におけるキャリアガス中の水素に曝される虞がないため、井戸層13aの表面の平坦性が改善され得る。
井戸層13aの表面が保護層13bで覆われているにもかかわらず、井戸層13aの表面に残った過剰なInが第1の成長中断工程で除去できる理由は、定かではないが、おそらく、過剰なInがサーファクタントとして機能し、保護層の最表面に過剰なInが這い上がって来るためではないかと推測している。そのため、非発光領域の抑制と井戸層表面の平坦性の向上を両立するためには、保護層13bの厚さは0.25nm以上1.2nm以下が好ましい。この厚さの範囲は、窒化物半導体(GaNあるいはAlGaN)の約1monolayer(単分子層)以上4monolayer(4分子層)以下に該当する。保護層の厚さが0.25nm未満になると、窒化物半導体の1monolayerに満たないため、保護層として十分に機能しないために好ましくない。他方、保護層の層厚が1.2nmよりも厚くなると、後述の第1の成長中断工程を実施しても非発光領域を消滅させることが困難になるため好ましくない。
保護層形成工程で保護層13bが形成される温度は、井戸層形成工程で井戸層13aが形成される温度に近いことが好ましく、同じ温度であることがより好ましい。このことによって、井戸層13aが形成された後、直ちに保護層13bを形成することができるので、井戸層の最表面が熱によってダメージを受けてその平坦性が損なわれることを防止することができる。
保護層13bは1つ以上の窒化物半導体層から構成されるものであり、少なくとも上記井戸層13aと直接に接する層はInを含まない窒化物半導体層であることが好ましい。このようなInを含まない窒化物半導体層としては、GaN層、AlGaN層などが好適に用いられる。したがって、保護層13bの井戸層と接する面は、単一のGaN層、単一のAlGaN層、または、GaN層およびAlGaN層からなる複数の層などから構成されることが好ましい。AlGaN層は、GaN層は水素によってエッチングされにくいため、このような構成の保護層13bを用いることにより、第1の成長中断工程で供給されるキャリアガス中の水素によって保護層13b自体がエッチングされてその表面の平坦性が損なわれたり、保護層13bがエッチングされて井戸層13aが露出してしまうことを防止することができる。また、井戸層13aの表面に残った過剰なInの一部を保護層に吸収させることができる。
保護層13bを構成する1つ以上の層のうち、Inを含まない窒化物半導体層を形成する際には、Gaを含みInを含まないIII族元素原料111が用いられる。ここで、Gaを含みInを含まないIII族元素原料とは、III族元素としてGaを含みInを含まない原料であり、例えば、III族元素としてGaおよび/またはAlのみを含む原料が挙げられるが、これに限定されるものではない。具体的には、保護層13bを構成するAlGaN層は、III族元素原料111としてGaとAlを含む原料を供給することによって形成される。なお、Gaを含むIII族元素原料としてはTMGまたはTEGを用いることができ、Alを含むIII族元素原料としてはTMAまたはTEAを用いることができる。
上記保護層形成工程におけるアンモニアガス112の流量は、上記井戸層形成工程におけるアンモニアガスの流量と同じかそれよりも多いことが好ましく、より好ましくは、上記井戸層形成工程におけるアンモニアガス102の流量の1.1倍以上3倍以下である。これは、アンモニアガス112は水素ほどではないが、過剰なInを除去する効果をも生じ得るためで、保護層13bを成長しながら過剰なInを除去して非発光領域を減少させることができるためである。
本実施形態において、保護層形成工程で用いられるキャリアガス113は、窒素のみからなるガス、もしくは、窒素と水素からなる混合ガスを用いることができる。キャリアガス113が窒素のみからなるガスである場合は、保護層13b自体がエッチングされることがないので、井戸層13aを保護する機能を十分に有し、井戸層13aの平坦性の向上において望ましい。他方、キャリアガス113が窒素と水素からなる混合ガスである場合は、保護層13b自体がエッチングされ易く、井戸層13aの平坦性の向上が多少劣るものの、井戸層13aの表面に残った過剰なInを、保護層13bを成長させながら除去できるという利点を有する。後者の場合は、保護層13bを構成する窒化物半導体層として、GaN層よりもAlGaN層を用いることが好適である。
キャリアガス113中の水素の割合は、1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。水素の割合がこの範囲にあることによって、井戸層13aの表面に残った過剰なInを除去することができる。水素の割合が20モル%を超えれば、井戸層13aの表面や保護層13bをエッチングする効果が強くなり過ぎるので好ましくない。ここで、キャリアガス113中の水素の割合とは、キャリアガス113中の水素流量を(キャリアガス113中の水素流量+窒素流量)で除した値の100倍で計算されるモル百分率を意味する。
また、上記保護層形成工程におけるアンモニアガス112の流量に対するキャリアガス113中の水素の流量の割合は、1モル%以上35モル%以下が好ましい。ここで、アンモニアガス112の流量に対するキャリアガス113中の水素の流量の割合とは、キャリアガス中の水素の流量をアンモニアガスの流量で除した値の100倍で計算されるモル百分率を意味する。このアンモニアガス112は、キャリアガス113中の水素ほどではないが、過剰なInを除去する効果をも生じ得る。このことは、アンモニアガス112の供給量を増やすことによって、エッチング効果の強い水素の流量を抑制し得ることを意味している。
(第1の成長中断工程)
図4は、保護層形成工程で保護層13bを形成した後の第1の成長中断工程を示している。本実施形態において、第1の成長中断工程は、III族元素原料111の供給を停止し、アンモニアガス122とともに、窒素と水素からなるキャリアガス123を供給しながら所定の時間(以下、「第1の時間」と略すことがある)、結晶成長を中断させる工程である。この第1の成長中断工程によって、高いIn組成比を有する井戸層に特有の非発光領域(過剰なIn)を除去して発光効率の向上を図ることができる。
上述のように、井戸層13aの表面が保護層13bで覆われた状態で井戸層13aの表面に残った過剰なInを除去するために、保護層は非常に薄い層で形成されている。そのため、キャリアガス123中の水素の過剰なエッチング作用から保護層13bが完全にエッチングされてしまわないように、第1の成長中断工程中にアンモニアガス122を付加的に供給している。このアンモニアガス122は、キャリアガス123中の水素ほどではないが、過剰なInを除去する効果をも生じ得る。このことは、アンモニアガス122の供給量を増やすことによって、エッチング効果の強い水素の流量を抑制し得ることを意味している。アンモニアガス122の流量に対するキャリアガス123中の水素の流量の割合は、1モル%以上35モル%以下に収まるようにするのが好ましい。ここで、アンモニアガス122の流量に対するキャリアガス123中の水素の流量の割合とは、キャリアガス中の水素流量をアンモニアガス流量で除した値の100倍で計算されるモル百分率を意味する。
第1の成長中断工程におけるアンモニアガス122の流量は、上記井戸層形成工程におけるアンモニアガス102の流量と同じかそれよりも多いことが好ましく、1.1倍以上3倍以下であることがより好ましい。これは、過剰なInを除去し得なかった井戸層形成工程におけるアンモニアガス102の流量に比べて、第1の成長中断工程におけるアンモニアガス122の流量が多いことによって、過剰なInを除去する効果が増大するとともに、エッチング効果の強い水素の流量を抑制することができるためである。その結果、井戸層と保護層との界面、あるいは、保護層と障壁層との界面における層変化の急峻性を向上させることができる。なお、急峻性とは、異種半導体接合が原子レベルでどの程度実現されているかという概念であり、ヘテロ界面において単原子層オーダーで異種の半導体層に変わっていれば、充分に急峻な界面が形成されており急峻性が優れていると言える。
また、第1の成長中断工程で用いられるキャリアガス123中の水素の割合は、1モル%以上20モル%以下であることが好ましい。水素の割合がこの範囲にあることによって、過剰なInを除去することができる。水素の割合が20モル%を超えれば、保護層13bをエッチングする効果が強くなり過ぎるので好ましくない。ここで、第1の成長中断工程で用いられるキャリアガス123中の水素の割合とは、キャリアガス123中の水素流量を(キャリアガス123中の水素流量+窒素流量)で除した値の100倍で計算されたモル百分率を意味する。
第1の成長中断工程が実施される所定の時間(第1の時間)は、3秒以上180秒以下が好適である。この時間が3秒よりも短ければ過剰なInを除去する効果が乏しく、180秒よりも長ければエッチングによる保護層へのダメージが大きくなり、井戸層表面の平坦性が悪くなるので好ましくない。
ここで、第1の成長中断工程における温度は、保護層13bが形成される温度に近いことが好ましく、同じ温度であることがより好ましい。これは、最適な上記第1の時間(3秒以上180秒以下)内に基板温度を変えて安定させることが非常に難しいこと等の理由による。基板温度の変化は、過剰なInを除去する効果に直接的に影響するので、再現性の確保を困難にさせる。
(障壁層形成工程)
図5は、第1の成長中断工程後の障壁層形成工程を示している。障壁層形成工程は、Gaを含むIII族元素原料131、アンモニアガス132、および、窒素と水素からなるキャリアガス133を供給して窒化物半導体からなる障壁層13cを形成する工程である。
障壁層13cとしては、単一のInGaN層、単一のGaN層、単一のAlGaN層、単一のInAlGaN層、または、これらの単一の層が複数積層された多重層を用いることができる。障壁層13cを構成する窒化物半導体層のうち、保護層13bと直接に接する層(多重層のみならず、単層であってもよい)は、Inを含まない窒化物半導体層(例えば、GaN層、AlGaN層)であることがより好ましい。これは、第1の成長中断工程で除去しきれずに僅かに残ったInを吸収する効果が大きいためである。障壁層13cを構成する窒化物半導体層のうち、保護層13bと直接に接する層のバンドギャップエネルギーは、障壁層13cと接する側の保護層13bのバンドギャップエネルギーと同じかそれ以上であることがより好ましく、このような半導体層として、具体的にはGaN層、AlGaN層などが挙げられる。このことによって、井戸層へのキャリアの閉じ込め効果が向上し、半導体レーザにおける寿命特性が向上する。
他方、障壁層13cの保護層13bと反対側の面に位置する窒化物半導体層(多重層のみならず、単層であってもよい)は、GaN層もしくはInを含む窒化物半導体層(例えば、GaN層、InGaN層、AlInGaN層)であることが好ましい。これは、障壁層13cに続いて、さらに井戸層を積層するときに、井戸層の格子定数とできるだけ近い半導体層の上に井戸層を成長させた方が長波長化させやすいためである。
障壁層13cが多重層からなる場合の一例として、GaN層/AlGaN層/GaN層、GaN層/AlGaN層/InGaN層、GaN層/AlGaN層、AlGaN層/GaN層、AlGaN層/InGaN層、またはInGaN層/GaN層/InGaN層などが挙げられる(なお、障壁層13cを構成する各窒化物半導体層は保護層側から順に記載している)。上記InGaN層/GaN層/InGaN層からなる障壁層13cは、障壁層13cの一部に全くInを含まないGaN層が設けられることによって、第1の成長中断工程で除去しきれずに残った僅かなInを吸収させる働きを有する。
障壁層形成工程で用いられるGaを含むIII族元素原料131とは、III族元素としてGaを含む原料であり、例えば、III族元素としてGaのみを含む原料やGa以外にAlおよび/またはInを含む原料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、Gaを含むIII族元素原料としてはTMGまたはTEGを用いることができ、Alを含むIII族元素原料としてはTMAまたはTEAを用いることができ、Inを含むIII族元素原料としてはTMIまたはTEIを用いることができる。上記種々の障壁層13cは、Gaを含むIII族元素原料131として、Gaのみを含むIII族元素原料やGa以外にAlおよび/またはInを含むIII族元素原料を用いることにより形成することができる。なお、これらのIII族元素原料は上記井戸層形成工程または保護層形成工程で用いられるIII族元素原料と同種のものを用いることができる。
障壁層13cがInを全く含まないGaN層および/またはAlGaN層からなる場合、障壁層13cの厚さは6nm以上18nm以下であることが好適である。層の厚さが18nmよりも厚くなると、障壁層13c自体の結晶性が悪化し、その上にさらに形成される井戸層において非発光領域が増殖するために好ましくない。一方、層の厚さが6nmよりも小さくなると、上述のInを吸収する効果が小さいために好ましくない。
障壁層13cがInGaN層および/またはAlInGaN層からなる場合、その厚さは15nm以上35nm以下であることが好適である。この厚さの範囲内で障壁層13cを厚く成長させれば、Inを含む障壁層13cであっても、第1の成長中断工程で除去しきれずに残った僅かなInを、障壁層13cの成長過程において徐々に吸収することができる。このような効果が生じるのは、井戸層13aに比べて障壁層13cにおけるIn組成比が小さくてInが飽和状態ではないことと、そのような障壁層13cが上記厚さ範囲内で厚く形成されるからであると考えられる。
障壁層形成工程で障壁層13cが形成される温度は、保護層形成工程で保護層13bが形成される温度に近いことが好ましく、同じ温度であることがより好ましい。保護層13bが形成された温度(熱)よりも高い温度で障壁層13cが形成されると、保護層13bがエッチングされてその下の井戸層13aが露出してしまう虞があるためである。
本実施形態における障壁層形成工程では、キャリアガス133中に必ず水素が含まれている。これは、障壁層13cの成長過程においても水素を流し続けることによって、過剰なInを除去する効果を持続させるためである。
キャリアガス133中に水素を含むことは、障壁層13cがInGaN層を含む場合であっても例外ではない。一般には、InGaN層を形成する際のキャリアガスとしては窒素のみが使用される。この理由は、窒素のみからなるキャリアガス中に意図しない水素が微量に混入すればIn組成比が大きく変動して所望のInGaN層が形成できなくなるからである。しかし、本発明者らの実験結果によれば、III族元素中のIn組成比が約8モル%以下であれば、水素が含まれたキャリアガスを用いても所望のInGaN層が形成できることがわかった。しかも、このように水素を含むキャリアガス条件下で形成されるInGaN層は、水素を全く含まないキャリアガス条件下で形成されるそれと比較して、第1の成長中断工程から障壁層形成工程への切り替わりの際に生じる水素濃度の変化に対して、In組成比の変動が非常に小さいことがわかった。これは、本発明にかかる障壁層形成工程で形成される障壁層13cとしてInGaN層を利用できることを意味している。
上記キャリアガス133中の水素の割合は、1モル%以上20モル%以下がより好ましい。この範囲で水素が供給されることによって、過剰なInを除去する効果と結晶性の良好な障壁層の両立を図ることができる。ここで、キャリアガス133中の水素の割合とは、キャリアガス133中の水素流量を(キャリアガス133中の水素流量+窒素流量)で除した値の100倍で計算されるモル百分率の値である。
また、キャリアガス133中の水素の割合が、上記第1の成長中断工程におけるキャリアガス123中の水素の割合と同じであれば、Inを含む障壁層13c(例えばInGaN、AlInGaN)におけるIn組成比の揺らぎがより一層抑制されて、障壁準位がより安定化され得る。
MOCVD法を用いた結晶成長により障壁層13c等を形成する場合、各工程間(例えば、第1の成長中断工程と障壁層形成工程との間)のガス流量の変動が大きければ、後の工程における結晶成長が安定せずに所望の窒化物半導体層を形成することが困難になる恐れがある。特に、アンモニアガスは粘性抵抗が高くて流量変化に対する追随性が低いので、各工程間のアンモニアガス流量の変動が大きければ、反応ガス雰囲気の安定化が遅れる傾向がある。例えば、第1の成長中断工程におけるアンモニアガス122の流量が、障壁層形成工程におけるアンモニアガス132の流量に比べて多い場合には、障壁層13cを安定に形成することが難しくなる場合がある。この観点から、アンモニアガス132の流量は、上記第1の成長中断工程におけるアンモニアガス122の流量と同じであることが好ましい。そうすることによって、第1の成長中断工程から障壁層形成工程への切り替わりの際のガス流量変動が小さくなり、所望の障壁層13cを形成することができる。
なお、本実施形態1ではMOCVD装置を用いた結晶成長を例にして説明したが、例えばMOMBE(有機金属分子線エピタキシ)装置またはHVPE(ハイドライド気相エピタキシ)装置などを用いて結晶成長させてもよいことは言うまでもない。
<実施形態2>
図6の模式的断面図を参照して、本発明の実施形態2による窒化物半導体発光素子の製造方法が説明される。本実施形態2は、実施形態1に比べて、第1の成長中断工程と障壁層形成工程との間において、III族元素原料の供給を引き続き停止し、アンモニアガス142とともに、水素と窒素を含むキャリアガス143を供給して、所定の時間(以下、「第2の時間」と略すことがある」)、結晶成長を中断する第2の成長中断工程を付加的に含んでいることのみにおいて異なっている。したがって、ここでは本実施形態について主に第2の成長中断工程のみを説明する。
(第2の成長中断工程)
本実施形態2における第2の成長中断工程では、図4に示された第1の成長中断工程の後において、図6に示されているようにIII族元素原料の供給を引き続き停止し、アンモニアガス142とともに、窒素のみからなるキャリアガス143を供給しながら所定のの時間、結晶成長を中断する。この付加的な第2の成長中断工程の後において、実施形態1の場合と同様に窒化物半導体からなる障壁層13cを形成する障壁層形成工程(図5参照)を実施することによって、本実施形態2における窒化物半導体発光層を形成することができる。
第2の成長中断工程の目的は、第1の成長中断工程で受けた保護層13bの最表面のダメージを回復させることにある。第1の成長中断工程では、井戸層13aで生じた過剰なInを保護層13bを通して除去するために、保護層13bの表面が意図しないダメージを受けてその平坦性が損なわれ易い。特に、保護層13bを形成している窒素元素の欠如が顕著で、これは結晶欠陥の原因となる。そこで本実施形態では、第1の成長中断工程で供給されたキャリアガス123に含まれる水素を、窒素のみからなるキャリアガス143を用いて基板近傍の雰囲気からパージするとともに、窒素の供給源であるアンモニアガス142を供給することで保護層13bの最表面のダメージの回復を図っている。
この保護層13bの回復を高めるために第2の成長中断工程を実施する所定の時間(第2の時間)は、第1の成長中断工程を実施する所定の時間(第1の時間)よりも長いことが好ましく、第1の時間の1.2倍以上4倍以下であることがより好ましい。これは、第1の時間よりも第2の時間を長くすることによって、第1の成長中断工程で用いられるキャリアガス123に含まれた水素が基板近傍の雰囲気からより確実にパージされ得るとともに、Inの除去に要した第1の時間よりも長い時間をかけることによって保護層のダメージの回復が高まるためである。アンモニアガスは水素ほど強力ではないがエッチング効果を有しているため、4倍よりも長い時間で成長中断時間を設けることは好ましくない。
保護層の回復をさらに高めるために、第2の成長中断工程におけるキャリアガス143の流量に対するアンモニアガス142の流量の割合が30モル%以上120モル%以下であることが好ましい。このことによって、ダメージを受けた保護層の表面を保護または回復させる働きが増す。アンモニアガスは水素ほど強力ではないがエッチング効果を有しているため、120モル%を超える流量で第2の成長中断工程を実施することは好ましくない。ここで、第2の成長中断工程におけるキャリアガス143の流量に対するアンモニアガス142の流量の割合とは、アンモニアガス142の流量をキャリアガス143の流量で除した値の100倍で計算されるモル百分率の値を意味する。
さらに、第2の成長中断工程におけるアンモニアガス142とキャリアガス143の合計流量が、上記保護層形成工程におけるアンモニアガス122とキャリアガス123の合計流量に比べて大きいことが好ましく、このような場合、保護層形成工程で用いられるキャリアガス123に含まれた水素を基板近傍の雰囲気からパージする効果が大きくなる。より具体的には、成長中断工程におけるアンモニアガス142とキャリアガス143の合計流量が、保護層形成工程におけるアンモニアガス122とキャリアガス123の合計流量の1.2倍以上3倍以下であることが好適である。
ここで、結晶成長が中断される第2の時間における温度は、保護層形成工程で保護層が形成される温度または第1の成長中断工程での温度と同じであることが好ましい。これは、第2の時間における温度がこれらの温度よりも高くなると、保護層がエッチングされてその下の井戸層が露出してしまう虞があるためである。
<実施形態3>
図7の模式的断面図を参照して、本発明の実施形態3による窒化物半導体発光素子の製造方法が説明される。本実施形態3は、実施形態1に比べて、第1の成長中断工程と障壁層形成工程との間において、III族元素原料の供給を引き続き停止し、アンモニアガス152とともに、水素と窒素を含むキャリアガス153を供給して、所定の時間(以下、第3の時間と略すことがある)、結晶成長を中断する第3の成長中断工程を付加的に含んでいることのみにおいて異なっている。したがって、ここでは本実施形態について主に第3の成長中断工程のみを説明する。
(第3の成長中断工程)
本実施形態3における第3の成長中断工程では、図4に示された第1の成長中断工程の後において、図7に示されているようにIII族元素原料の供給を引き続き停止し、アンモニアガス152とともに、水素と窒素を含むキャリアガス153を供給しながら所定の時間(第3の時間)、結晶成長を中断する。この付加的な第3の成長中断工程の後において、実施形態1の場合と同様に窒化物半導体からなる障壁層13cを形成する障壁層形成工程(図5参照)を実施することによって、本実施形態3における窒化物半導体発光層を形成することができる。
第1の成長中断工程で用いられる適切なガス流量は障壁層形成工程で用いられるガス流量に比べて大きく異なる傾向にある。このような条件下で第1の成長中断工程から障壁層形成工程に移行すれば、ガス流量の変化が大きくなって、所望の障壁層を形成することが困難になる傾向になる。
本実施形態3における第3の成長中断工程は、第1の成長中断工程から障壁層形成工程に移行する際のガス流量の変化量を小さくし、ガス流量の安定化を図るための工程である。この第3の成長中断工程によって、所望の障壁層13cの形成が容易となり、保護層13b(如いては井戸層13a)と障壁層13cとの界面における層変化の急峻性を向上させることができる。
ガス流量をより安定化させるために、第3の成長中断工程におけるアンモニアガス152の流量は障壁層形成工程におけるアンモニアガス132の流量と同じであり、かつ、第3の成長中断工程におけるキャリアガス153の流量は障壁層形成工程におけるキャリアガス133の流量と同じであることが好ましい。このことによって、第1の成長中断工程から障壁層を形成する障壁層形成工程への移行の際のガス流量変動をより一層小さくすることができる。
さらに、第3の成長中断工程におけるキャリアガス153中の水素の割合が障壁層形成工程で用いられるキャリアガス133中の水素の割合と同じである場合、水素濃度の変動に伴う、障壁層13cの組成変動(障壁層13cのエネルギ準位の不安定)が小さいために、発光波長における揺らぎまたはずれによる素子歩留まりの低下を抑制することができる。これは、InGaN層あるいはAlInGaN層を含む障壁層13cにおいて特に効果的である。ここで、第3の成長中断工程におけるキャリアガス153中の水素の割合とは、キャリアガス153中の水素の流量をキャリアガス153の全流量で除した値の100倍で計算されるモル百分率の値を意味する。
なお、第3の成長中断工程を実施する所定の時間(第3の時間)は、1秒以上5秒以下であることが好適である。第3の時間が1秒未満であれば第3の成長中断工程の機能であるガス流量を安定化させる効果が小さ過ぎて好ましくなく、5秒を超えて中断時間を増大させると、キャリアガス153中に含まれる水素が保護層13bをエッチングする虞があるためである。
また、第3の成長中断工程における温度は、保護層形成工程で保護層13bが形成される温度または第1の成長中断工程での温度と同じであることが好ましい。これは、第3の時間における温度がこれらの温度よりも高くなると、保護層がエッチングされてその下の井戸層が露出してしまう虞があるためである。
<実施形態4>
本発明の実施形態4は、実施形態2に比べて、第2の成長中断工程と障壁層形成工程との間において、実施形態3の場合と同様の第3の成長中断工程を付加的に含んでいることのみにおいて異なっている。
本実施形態4における第3の成長中断工程では、図6に示された第2の成長中断工程の後において、図7に示されているようにIII族元素原料の供給を引き続き停止し、アンモニアガス152とともに、キャリアガス153を供給しながら、所定の時間、結晶成長を中断する。この付加的な第3の成長中断工程の後において、実施形態1の場合と同様に窒化物半導体からなる障壁層13cを形成する障壁層形成工程(図5参照)を実施することによって、本実施形態4における窒化物半導体発光層を形成することができる。
本実施形態4における第3の成長中断工程の効果は、実施形態3の場合と同じである。また、本実施形態4では、第2の成長中断工程をも含んでいるので、実施形態2の場合と同じ効果をも有することができる。
(窒化物半導体発光素子)
上述の実施形態1から4による製造方法で作製された窒化物半導体発光素子の積層断面構造の詳細を以下に説明する。
図9は、本発明の製造方法により得られる窒化物半導体発光素子の典型例を示す断面模式図である。図10は、本発明のような保護層を形成していない従来の窒化物半導体発光素子の断面模式図である。これらの図における窒化物半導体発光素子の積層構造は図1に対応しており、特に発光層13が厚さ方向に拡大されて詳細に示されている。この発光層13は、交互に繰返し積層された複数の井戸層13aと障壁層13cからなり、本発明の窒化物半導体発光素子を示す図9では井戸層13aと障壁層13cとの間に保護層13bを有しているが、従来の窒化物半導体発光素子を示す図10では保護層が形成されていない。
保護層形成工程を適用しなかった場合、第1の成長中断工程で供給されるキャリアガスの水素の量にも依存するが、図10に示すように障壁層13cとその上の井戸層13aとの界面は平坦(直線状)であるのに対し、井戸層13aとその上の障壁層13cとの界面は比較的短周期(周期wが短い)の波形状となる傾向にある。すなわち、井戸層13aは、厚さの大きな凸領域20と厚さの小さな凹領域21を含んでいる。これは、主に、井戸層13aを形成する井戸層形成工程と障壁層13cを形成する障壁層形成工程との間で実施される、第1の成長中断工程の水素ガスによって、井戸層13aにエッチングが生じたことが原因と考えられる。
井戸層13aとその上の障壁層13cとの界面における波形状は比較的規則的な形状をしており、MOCVD条件によっても異なるが、波形状の周期wは約20〜11nmであって、高低差hは凸領域部20の平均的な最大厚さの50%以下であった。
他方、本発明にかかる保護層形成工程を適用した場合、第1の成長中断工程で供給されるキャリアガスの水素の量にも依存するが、井戸層13aとその上に接して設けられた保護層13bとの界面または保護層13b自体が略平坦、または、上記図10の周期wと比べて比較的長周期の(周期wが長い)波形状となる。なお、障壁層13cとその上の井戸層13aとの界面は、図10と同様に平坦(直線状)である。井戸層13aは、厚さの大きな凸領域20と厚さの小さな凹領域21を含んでいるがその高低差hは、図10のそれと比べて小さい傾向にある。このことから、本発明にかかる保護層13bを設けることによって、第1の成長中断工程におけるキャリアガス中の水素によって、井戸層13aの表面に分布した過剰なInの除去と同時に生じる、意図しない井戸層13aのエッチングを防いだものと考えられる。
本発明にかかる図9の、井戸層13aと保護層13bとの界面における波形状は比較的規則的な形状をしており、MOCVD条件によっても異なるが、波形状の周期wは約150nm以上であってその上限値は無限大(平坦)である。また、高低差hは凸領域20の平均的な最大厚さの30%以下であった。
本発明の製造方法によって形成された井戸層13aのもう1つの特徴は、In組成比の揺らぎが非常に小さいということである。例えば、図9に示された井戸層13aの凸領域20と凹領域21におけるIn組成比をEDX(エネルギ分散型蛍光X線)分析したところ、それらの領域間におけるIn組成比の差は±1モル%以下であった。すなわち、井戸層13aの凸領域20と凹領域21とは、厚さにおいて異なっているだけであって、In組成比においてほとんど変化しない傾向にあった。このIn組成比が変化していない特徴は、窒化物半導体発光素子における波長の揺らぎを抑制し得るので好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図8の模式的断面図は、本発明の実施例1において作製される窒化物半導体発光素子の積層構造を示している。実施例1では、本発明の窒化物半導体発光素子として窒化物半導体レーザ素子を製造した。実施例1の化物半導体レーザ素子の製造方法は、前述の実施形態1による窒化物半導体発光素子の製造方法に対応している。
実施例1の窒化物半導体レーザ素子10は、基板(n型GaN基板)11の(0001)面上において、順次積層されたn型GaN層201、n型AlGaNクラッド層202、n型GaN光ガイド層203、アンドープInGaN光ガイド層204、発光層13、中間層205、p型AlGaNキャリアブロック層206、p型AlGaNクラッド層207、およびp型GaNコンタクト層208を含んでいる。ここで、n型GaN層201からアンドープInGaN光ガイド層204までの積層物がn型窒化物半導体層12に相当し、中間層205からp型GaNコンタクト層208までの積層物がp型窒化物半導体層14に相当する。
窒化物半導体レーザ素子10の製造では、まずMOCVD装置内においてn型GaN基板11を1050℃まで加熱してその温度に保持し、III族元素の原料であるTMG、アンモニアガス、および、Siを含むドーピングガス(SiH4)を導入し、n型GaN基板11上に厚さ0.5μmのn型GaN層201を形成した。このn型GaN層201は、研磨されたn型GaN基板11の表面モフォロジーを改善するとともに表面残留応力歪みを緩和させてエピタキシャル成長に適した表面を得るために形成された。
続いて、MOCVD装置内にIII族元素の原料であるTMAをも加えて、厚さ2.5μmでSi不純物濃度が5×1017個/cm3のn型AlGaNクラッド層202を形成した。このn型AlGaNクラッド層202において、III族元素中のAl組成比は5モル%であった。
次に、MOCVD装置内へのTMAの導入を停止するとともにSiH4の導入量も変化させることにより、厚さ0.2μmでSi不純物濃度が3×1017個/cm3のn型GaN光ガイド層203を形成した。
その後、基板温度を800℃に低下させ、TMGとTMIを供給して、厚さ35nmのアンドープInGaN光ガイド層204を形成した。
InGaN光ガイド層204上には、後述の多重量子井戸構造を有する発光層13を形成した。さらに、発光層13上には、厚さ75nmの中間層205を形成した。この中間層205は、順に積層された厚さ35nmのアンドープIn0.03Ga0.97N層と厚さ40nmのアンドープGaN層からなっていた。
その後、基板温度を再び1050℃まで上昇させて、Mgが添加された厚さ20nmのAlGaNキャリアブロック層206、Mgが添加された厚さ0.6μmのp型AlGaNクラッド層207、およびMgが添加された厚さ0.1μmのp型GaNコンタクト層208を順次形成して、窒化物半導体レーザ素子10の結晶成長を終了した。ここで、キャリアブロック層206におけるIII族元素中のAl組成比は20モル%であり、p型AlGaNクラッド層207におけるIII族元素中のAl組成比は5モル%であった。なお、Mgを含む原料ガスとしては(EtCp)2Mgが用いられた。
以下において、本発明の重要な特徴をなす発光層13の形成方法についてさらに詳細に説明する。本実施例の発光層13は、厚さ3nmのアンドープIn0.13Ga0.87N井戸層(以下、単にInGaN井戸層と呼ぶ)、厚さ12nmのアンドープ障壁層、および、厚さ3nmのアンドープIn0.13Ga0.87N井戸層が順次積層されたものであり、InGaN井戸層と、アンドープ障壁との間にアンドープGaN保護層を有している。ここで、アンドープ障壁層は、厚さ5nmのGaN層、厚さ2nmのAl0.03GaN層、および、厚さ5nmのGaN層の3層が順次積層されてなる。
本実施例1において、InGaN井戸層を形成する井戸層形成工程では、800℃の温度において、InとGaを含むIII族元素原料(図2中の101参照)としてTMIとTMGを用い、3L/分のアンモニアガス(図2中の102参照)と9L/分の窒素からなるキャリアガス(図2中の103参照)を供給して、厚さ3nmのInGaN井戸層を形成した。
続いて、InGaN井戸層の上に保護層を形成する保護層形成工程では、井戸層形成工程と同じ800℃の温度おいて、Gaを含みInを含まないIII族元素原料(図3中の111参照)としてTMGを用い、3L/分のアンモニアガス(図3中の112参照)と9L/分の窒素からなるキャリアガス(図3中の113参照)を供給して、厚さ0.52nmのアンドープGaN保護層を形成した。
次に、第1の成長中断工程として、保護層形成工程と同じ800℃の温度おいて、TMGのIII族元素原料の供給を停止し、6L/分のアンモニアガス(図4中の122参照)とともに、8L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図4中の123参照)を供給しながら、結晶成長を20秒間(第1の時間)中断した。
さらに、本実施例1の障壁層形成工程では、同じ800℃の温度おいて、TMGまたはTMGとTMAのIII族元素原料(図5中の131参照)、6L/分のアンモニアガス(図5中の132参照)、および8L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図5中の133参照)を供給して、上述の3層構造を有する障壁層を形成した。
以上のような本実施例1によって得られた窒化物半導体レーザ素子おいては、高いIn組成比を有する井戸層において生じやすい非発光領域が全く存在せず、440nmの波長で発振させることができた。そして、発光層の各層の界面の平坦性の向上に伴い、レーザ発振寿命が従来と比べて2倍以上向上した。
本発明の実施例2による窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、上述の実施形態2による窒化物半導体発光素子の製造方法に対応している。すなわち、本実施例2は、実施例1に比べて、第1の成長中断工程と障壁層形成工程との間において第2の成長中断工程を加えたことのみにおいて異なっている。
本実施例2において、AlInGaN井戸層を形成する井戸層形成工程は、750℃の温度で、TMA、TMIとTMGのIII族元素原料(図2中の101参照)、3L/分のアンモニアガス(図2中の102参照)、および、8.5L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図2中の103参照)を供給して、厚さ1.5nmのアンドープAlInGaN井戸層を形成した。該AlInGaN井戸層において、井戸層の全組成に対するAlのモル比は約0.02である。
続いて、本実施例2の保護層形成工程では、同じ750℃の温度おいて、TMAとTMGのIII族元素原料(図3中の111参照)、3L/分のアンモニアガス(図3中の112参照)と6.5L/分の窒素と2.5L/分の水素からなるキャリアガス(図3中の113参照)を供給して、厚さ1nmのアンドープAl0.02Ga0.98N保護層を形成した。
本実施例2の第1の成長中断工程では、同じ750℃の温度おいて、TMAとTMGのIII族元素原料の供給を停止し、6L/分のアンモニアガス(図4中の122参照)とともに、8L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図4中の123参照)を供給しながら、結晶成長を15秒間(第1の時間)中断した。
本実施例2の第2の成長中断工程では、同じ750℃の温度おいて、第1の成長中断工程に引き続いてTMAとTMGの供給を停止したまま、6L/分のアンモニアガス(図6中の142参照)と、11L/分の窒素からなるキャリアガス(図6中の143参照)を供給し、結晶成長を30秒間(第2の時間)中断した。
本実施例2の障壁層形成工程では、同じ750℃の温度おいて、TMA、TMGとTMIのIII族元素原料(図5中の131参照)を用いて、3L/分のアンモニアガス(図5中の132参照)、および、8L/分の窒素と1.5L/分の水素からなるキャリアガス(図5中の133参照)を供給して、8nmのAl0.02Ga0.98N層/2nmのAl0.05Ga0.98N層/2nmのIn0.04Ga0.96N層からなる障壁層を形成した。発光層中の井戸層の数は3層であった。
以上のような本実施例2によって得られた窒化物半導体レーザ素子おいては、高いIn組成比を有する井戸層において生じやすい非発光領域が存在せず、465nmの波長で発振させることができた。そして、井戸層中で非発光領域がなくなったことにより、素子歩留まりと発光効率が大幅に向上した。また、発光層の各層の界面の平坦性の向上に伴い、レーザ発振寿命が従来と比べて2倍以上向上した。
本発明の実施例3による窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、前述の実施形態3による窒化物半導体発光素子の製造方法に対応している。すなわち、本実施例3は、実施例1に比べて、第1の成長中断工程と障壁層形成工程との間において第3の成長中断工程を加えたことのみにおいて異なっている。
本実施例3においてInGaN井戸層を形成する井戸層形成工程では、780℃の温度において、TMIとTMGのIII族元素原料(図2中の101参照)、3L/分のアンモニアガス(図2中の102参照)、および、9L/分の窒素からなるキャリアガス(図2中の103参照)を供給して、厚さ2.5nmのアンドープInGaN井戸層を形成した。
続いて、本実施例3の第1の成長中断工程では、同じ780℃の温度おいて、TMAとTMGのIII族元素原料(図3中の111参照)を用い、3L/分のアンモニアガス(図3中の112参照)と6.5L/分の窒素と2.5L/分の水素からなるキャリアガス(図3中の113参照)を供給して、0.5nmのアンドープGaN層/0.5nmのAl0.01Ga0.99N層からなる保護層を形成した。
本実施例3の第1の成長中断工程では、同じ780℃の温度おいて、TMAとTMGのIII族元素原料の供給を停止し、9L/分のアンモニアガス(図4中の122参照)とともに、8L/分の窒素と1L/分の水素からなるキャリアガス(図4中の123参照)を供給しながら、結晶成長を30秒間(第1の時間)中断した。
次に、第3の成長中断工程では、同じ780℃の温度おいて、第1の成長中断工程に引き続いてTMAとTMGの供給を停止したまま、3L/分のアンモニアガス(図7中の152参照)と、7.5L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図7中の153参照)を供給し、結晶成長を3秒間(第3の時間)中断した。
本実施例3の障壁層形成工程では、同じ780℃の温度おいて、TMA,TMIとTMGのIII族元素原料(図5中の131参照)と、3L/分のアンモニアガス(図5中の132参照)、および5.5L/分の窒素と2.5L/分の水素からなるキャリアガス(図5中の133参照)を供給して、厚み30nmのAl0.05In0.02Ga0.93N障壁層を形成した。発光層中の井戸層の数は2層である。
以上のような本実施例3によって得られた窒化物半導体レーザ素子おいては、高いIn組成比を有する井戸層において生じやすい非発光領域が存在せず、450nmの波長で発振させることができた。そして、井戸層中で非発光領域がなくなったことにより、素子歩留まりと発光効率が大幅に向上した。また、発光層の各層の界面の平坦性の向上に伴い、レーザ発振寿命が向上した。
本発明の実施例4による窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、前述の実施形態4による窒化物半導体発光素子の製造方法に対応している。すなわち、本実施例4は、実施例2に比べて、第2の成長中断工程と障壁層形成工程との間において第3の成長中断工程を加えたことのみにおいて異なっている。
本実施例4においてInGaN井戸層を形成する井戸層形成工程では、700℃の基板温度において、TMIとTMGのIII族元素原料(図2中の101参照)、3L/分のアンモニアガス(図2中の102参照)、および、9L/分の窒素のキャリアガス(図2中の103参照)を供給して、厚さ1nmのアンドープInGaN井戸層を形成した。
続いて、本実施例4の保護層形成工程では、同じ700℃の温度おいて、TMAとTMGのIII族元素原料(図3中の111参照)を用い、3L/分のアンモニアガス(図3中の112参照)と9L/分の窒素からなるキャリアガス(図3中の113参照)を供給して、0.78nmのアンドープGaN保護層を形成した。
本実施例4の第1の成長中断工程では、同じ700℃の温度おいて、TMGのIII族元素原料の供給を停止し、6L/分のアンモニアガス(図4中の122参照)ともに、8L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図4中の123参照)を供給しながら、結晶成長を40秒間(第1の時間)中断した。
次に、第2の成長中断工程では、同じ700℃の温度おいて、第1の成長中断工程に引き続いてTMGの供給を停止したまま、6L/分のアンモニアガス(図5中の142参照)、および、11L/分の窒素からなるキャリアガス(図5中の143参照)を供給し、結晶成長をさらに80秒間(第2の時間)中断した。
次に、第3の成長中断工程では、同じ700℃の温度おいて、第2の成長中断工程に引き続いてTMGの供給を停止したまま、3L/分のアンモニアガス(図6中の152参照)とともに、7.5L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図6中の153参照)を供給し、結晶成長をさらに3秒間(第3の時間)中断した。
本実施例4の障壁層形成工程では、同じ700℃の温度おいて、TMIとTMGのIII族元素原料(図5中の131参照)、3L/分のアンモニアガス(図5中の132参照)、および7.5L/分の窒素と0.5L/分の水素からなるキャリアガス(図5中の133参照)を供給して、10nmのInGaN層/5nmのGaN層/10nmのInGaN層からなる障壁層を形成した。発光層中の井戸層の数は5層である。
以上のような本実施例4によって得られた窒化物半導体レーザ素子おいては、高いIn組成比を有する井戸層において生じやすい非発光領域が存在せず、490nmの波長で発振させることができた。そして、井戸層中で非発光領域がなくなったことにより、素子歩留まりと発光効率が大幅に向上した。また、発光層の各層の界面の平坦性の向上に伴い、レーザ発振寿命が向上した。
なお、以上において開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は、上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明よる窒化物半導体発光素子の製造方法は、窒化物半導体レーザ素子だけでなく、窒化物半導体発光ダイオード素子、窒化物半導体スーパールミネッセントダイオード素子などの様々な窒化物半導体発光素子の形成に適用することが可能である。これらの発光素子は、蛍光体と組み合わせた高輝度白色光源装置、高輝度の青色または緑色光源装置、RGB(赤緑青)光源を含む光ディスプレイ装置、RGB光源を含むレーザプロジェクタなどの種々の発光装置に適用することができる。
10 窒化物半導体発光素子、11 (n型GaN)基板、12 n型窒化物半導体層、13 発光層、13a 井戸層、13b 保護層、13c 障壁層、14 p型窒化物半導体層、20 凸領域、21 凹領域、101,111,131 III族元素原料、102,112,122,132,142,152 アンモニアガス、103,113,123,133,143,153 キャリアガス、201 n型GaN層、202 n型AlGaNクラッド層、203 n型GaN光ガイド層、204 アンドープInGaN光ガイド層、205 中間層、206 p型AlGaNキャリアブロック層、207 p型AlGaNクラッド層、208 p型GaNコンタクト層。

Claims (22)

  1. n型窒化物半導体層、p型窒化物半導体層、および、前記n型窒化物半導体層と前記p型窒化物半導体層との間に形成される発光層を含む窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
    前記発光層は、窒化物半導体からなる1以上の井戸層、窒化物半導体からなる1以上の障壁層、および、前記井戸層と前記障壁層との間に接して設けられる窒化物半導体からなる1つ以上の保護層を含み、430nm以上の発光波長を有するものであり、
    InとGaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素を含むキャリアガスを供給して前記井戸層を形成する井戸層形成工程と、
    Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素を含むキャリアガスを供給して前記保護層を形成する保護層形成工程と、
    前記Gaを含むIII族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、窒素と水素を含むキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第1の成長中断工程と、
    前記Gaを含むIII族元素原料、アンモニアガス、および、窒素と水素を含むキャリアガスを供給して前記障壁層を形成する障壁層形成工程とをこの順に含むことを特徴とする、窒化物半導体発光素子の製造方法。
  2. 前記保護層は、前記p型窒化物半導体層側で前記井戸層に接して設けられる、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  3. 前記保護層は1つ以上の窒化物半導体層から構成されるものであり、少なくとも前記井戸層と直接に接する層はInを含まない窒化物半導体層である、請求項1または2に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  4. 前記発光層の形成後において前記発光層が900℃以上1200℃以下の温度に3分以上曝される、請求項1〜3のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  5. 前記p型窒化物半導体層の厚さが0.35μm以上1μm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  6. 前記保護層の厚さが0.25nm以上1.2nm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  7. 前記井戸層の厚さが1nm以上3.2nm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  8. 前記障壁層の厚さが15nm以上35nm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  9. 前記保護層がGaN層および/またはAlGaN層を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  10. 前記井戸層がInGaN層またはAlInGaN層である、請求項1〜9のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  11. 前記障壁層がInGaN層、GaN層、AlGaN層およびInAlGaN層からなる群から選ばれる少なくとも1つの層を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  12. 前記保護層形成工程におけるアンモニアガスの流量が、前記井戸層形成工程におけるアンモニアガスの流量と同じかそれよりも多い、請求項1〜11のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  13. 前記保護層形成工程で用いられるキャリアガスは、窒素以外にさらに水素を含み、キャリアガス中の水素の割合が1モル%以上20モル%以下である、請求項1〜12のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  14. 前記保護層形成工程におけるアンモニアガスの流量に対して、前記第1の成長中断工程におけるキャリアガス中の水素の流量の割合が1モル%以上35モル%以下である、請求項1〜13のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  15. 前記障壁層形成工程で用いるキャリアガス中の水素の割合が1モル%以上20モル%以下である、請求項1〜14のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  16. 前記第1の成長中断工程と前記障壁層形成工程との間において、前記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、窒素のみからなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断する第2の成長中断工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  17. 前記第1の成長中断工程と前記障壁層形成工程との間において、前記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガス、および、水素と窒素からなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第3の成長中断工程をさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  18. 前記第2の成長中断工程と前記障壁層形成工程との間において、前記III族元素原料の供給を停止し、アンモニアガスとともに、水素と窒素からなるキャリアガスを供給して、所定の時間、結晶成長を中断させる第3の成長中断工程をさらに含む、請求項16に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載の窒化物半導体発光素子の製造方法を用いて製造された窒化物半導体発光素子を備えた発光装置。
  20. 基板の表面に形成された窒化物半導体発光層であって、
    1以上の井戸層、1以上の障壁層、および、前記井戸層と前記障壁層との間に接して設けられた1以上の保護層を含み、
    前記井戸層の基板側の主面と前記障壁層とが接する界面は実質的に平坦であって、前記井戸層の他方の主面は前記保護層に覆われており、前記井戸層の他方の主面と前記保護層とが接する界面の断面形状は波形状であることを特徴とする、窒化物半導体発光層。
  21. 前記保護層は1つ以上の窒化物半導体層から構成されるものであり、少なくとも前記井戸層と直接に接する層はInを含まない窒化物半導体層である、請求項20に記載の窒化物半導体発光層。
  22. 請求項20または21のいずれかに記載の窒化物半導体発光層を含む窒化物半導体発光素子。
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