[go: up one dir, main page]

JP2010229041A - 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬 - Google Patents

哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬 Download PDF

Info

Publication number
JP2010229041A
JP2010229041A JP2009075280A JP2009075280A JP2010229041A JP 2010229041 A JP2010229041 A JP 2010229041A JP 2009075280 A JP2009075280 A JP 2009075280A JP 2009075280 A JP2009075280 A JP 2009075280A JP 2010229041 A JP2010229041 A JP 2010229041A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
halothane
drug
administration
liver
mice
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009075280A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Yokoi
毅 横井
Toshisuke Kobayashi
鋭祐 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanazawa University NUC
Original Assignee
Kanazawa University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanazawa University NUC filed Critical Kanazawa University NUC
Priority to JP2009075280A priority Critical patent/JP2010229041A/ja
Publication of JP2010229041A publication Critical patent/JP2010229041A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】ハロタンなどの各種薬物による肝障害誘導のメカニズムを明らかにする。
【解決手段】ハロタン誘導性肝障害の発症にはTh1とTh2のバランスの変動およびIL−17を介したMIP−2の誘導による好中球の肝臓への浸潤が関与しており、これらの変動はPGE1の投与によって抑制されることを明らかにした。
【選択図】図20

Description

本発明は、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬、インターロイキン17発現抑制剤、CXCケモカイン発現抑制剤、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法、およびアレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法に関する。
医薬品の開発における前臨床試験は実験動物を用いて候補化合物のヒトにおける有効性、安全性を予測することで、臨床試験の安全性の確保や上市できない可能性の高い化合物の開発を早期に中止するために不可欠なものとなっている。しかし新規候補化合物の90%以上は早期臨床試験における副作用のために開発中止になるといわれており(非特許文献1)、財務上の大きな負荷を製薬企業に与え、医薬品の開発により長い期間を要する原因となっている。
医薬品の副作用は服用した患者の転帰に関わる重大な健康上の問題である。副作用には様々なものがあり、全ての臓器が影響を受け得るが肝臓における副作用は医薬品の販売が中止となる主要な原因となっており、600以上の医薬品が肝障害と関連があるといわれている。しかし種差や個体差の問題がヒトにおける薬物誘導性肝障害の発症を予測することを困難にしており、また発症機序も断片的に明らかになっているにすぎない。薬物誘導性肝障害の病態は他の肝疾患とも類似性があり、肝毒性発症メカニズムに関して研究することは薬の安全性の確保に貢献するだけでなく、様々な肝疾患に対して新規の薬物治療戦略を提供し得ると考えられる(非特許文献2)。
肝臓は糖新生、胆汁の分泌など様々な働きを持つ臓器であるが、脂溶性の高い生体外異物を、より素早く排泄可能な水溶性の高い誘導体へと変換する異物代謝も肝臓が担っている重要な役割のひとつである。肝臓に流入する血液の約80%は消化管で吸収した栄養分を含む門脈血であり、肝臓は生体内において最も高濃度の異物に曝される臓器のひとつであるといえる。肝臓は高い薬物代謝酵素活性を有しており、チトクロムP450(CYP)は薬物を含む様々な生体外異物の代謝を担う主要な酵素として知られている(非特許文献2)。
薬物代謝酵素の主要な役割は本来その解毒作用にあるが、代謝物が高い反応性を獲得し、生体高分子と共有結合を形成することで副作用を発現する場合がある。代謝反応によって生じたこのような活性代謝物は非常に不安定で半減期が短いため、血漿からはほとんどの場合検出することができない。そのため製薬企業においては還元型グルタチオン等を用い、化合物の生体内における代謝的活性化によって生じる付加体形成についての試験が行われている。しかし肝臓において代謝的活性化を受けるが肝障害を起こさない化合物も数多く存在している。その原因のひとつとしても生体内に存在するグルタチオンによる抱合反応が重要であると考えられており、その最も典型的な例として常用量のアセトアミノフェンの投与が挙げられる。さらにアセトアミノフェンの位置異性体は肝障害を起こさないことが報告されており(非特許文献3)、活性代謝物と生体内高分子の共有結合が必ずしも肝障害を引き起こすとは限らず、このことはヒトにおける肝障害の予測をより困難にしている。
厚生労働省は現在、薬物誘導性肝障害を中毒性と特異体質性に分類しており、前者は薬物自体またはその代謝物が肝障害性を持ち、用量依存的な肝障害が全てのヒトに発生するものを指しており、これは実験動物においても再現可能である。一部の抗がん剤、アセトアミノフェンなどの医薬品のほか臨床では用いられないパラコート、四塩化炭素、キノコ毒などが中毒性肝障害の起因物質として知られている。一方、後者の特異体質性肝障害は実験動物において再現できず、また個体差が存在するため予測不可能であり、大部分の症例はこちらに分類される。これは現在さらに、代謝性特異体質によるものとアレルギー性特異体質によるものに分類されている。代謝性特異体質は薬物代謝関連酵素の遺伝的素因などの個人差に起因しており、発症の予測が困難な場合が多いが、代謝関連遺伝子異常などについて調査することで予測可能になりつつある。一方のアレルギー性特異体質による肝障害は薬物、またはその反応性中間代謝物がハプテンとなり、肝細胞の種々の構成成分と結合して免疫原性を獲得することによって生じるアレルギー反応に起因している。非常に多くの薬物がアレルギー性特異体質性肝障害に分類されるが、肝細胞内の物質が免疫原性を獲得して肝細胞障害が生じるメカニズムについては十分に解明されていない。
このようなアレルギー性特異体質による肝障害には各種サイトカインを介した肝組織内の炎症および免疫反応が関与しているといわれている(非特許文献4)。肝内にはT細胞やマクロファージなどの浸潤細胞、クッパー細胞や類洞内皮細胞などの肝非実質細胞および肝実質細胞が存在しており、サイトカインを介した細胞間のネットワークを形成している。T細胞は細胞表面に発現しているCD抗原によりさらに細かく分類されておりCD4+CD8−のT細胞はヘルパーT(Th)細胞と呼ばれている。Th precursor(Thp)はサイトカインの産生特性がそれぞれ異なる1型(Th1)および2型(Th2)へと分化することが知られており(非特許文献5)、様々な因子が分化に関与している(非特許文献6)。Th1細胞は主にIL−2とIFNγを分泌し、他のT細胞やマクロファージを活性化することで細胞性免疫を誘導するといわれている。一方Th2細胞は、Bリンパ球による抗体産生や好酸球の増殖、分化を促進するサイトカインであるIL−4、IL−5、IL−10、IL−13を分泌することで体液性免疫を誘導する(非特許文献6)。またIFNγはTh2細胞由来のIL−4の産生を、IL−4はTh1細胞によるサイトカインの産生を抑制している。このようにTh1細胞とTh2細胞は互いに制御し合うことで生体内におけるバランスを保っているが、性ホルモン、衛生環境、食事、医薬品などによりそのバランスが変動するといわれており、様々な疾患の発症との関連が示唆されている(非特許文献7)。Th2に対しTh1が過剰になることは関節リウマチ、多発性硬化症およびI型糖尿病の、Th1に対しTh2が過剰になることはアレルギー、喘息、湿疹、花粉症および蕁麻疹のリスクファクターになると考えられている(非特許文献7)。
図1は、従来想定されていたマウスにおけるTh細胞の分化およびサイトカイン分泌のメカニズムの概要を説明するための概念図である。前臨床試験において用いられるマウスやラットなどのげっ歯類には免疫学的なバックグラウンドの異なる様々な系統が存在することが知られている。最も一般的に動物実験に用いられるマウスであるC57BL/6マウスとBALB/cマウスとではリーシュマニア原虫に対する抵抗性に系統差が存在し、C57BL/6マウスは感染によってTh1反応を誘導し抵抗性を示すのに対し、BALB/cマウスはTh2反応が誘導されるため抵抗性を持たないことが古くから知られている(非特許文献8)。またBALB/cマウスとC57BL/6マウスとでは免疫性疾患の実験動物モデルの病態が異なることが、関節リウマチ(非特許文献9)、多発性硬化症(非特許文献10)、気管支喘息(非特許文献11)などについて報告されている。またC57BL/6マウスとBALB/cマウスとで誘導される肝障害の重篤さが異なる化合物としてアセトアミノフェン(非特許文献12)、四塩化炭素(非特許文献13)、LPS(非特許文献14)およびCon A(非特許文献15)などが報告されている。
一方、図2は、従来想定されていたハロタンの代謝経路の概要を説明するための概念図である。吸入型全身麻酔薬であるハロタンは個体特異的な肝障害を引き起こすことが知られており、軽度なものや無症候性のものも含めると20%以上の患者において血清中のトランスアミナーゼの上昇が起こること(非特許文献16)、およそ10,000人に1人の割合で劇症肝炎が起こることが知られている(非特許文献17)。このようなハロタンによる肝障害はモルモットや特殊な条件下の実験動物を除き再現することができず、ヒトとの間に大きな種差が存在している(非特許文献18)。生体内に取り込まれたハロタンは肝臓の第I相酵素によって代謝を受けることが知られており、主にCYPの2E1分子種が触媒するといわれている(非特許文献19)。CYP2E1によってハロタンが代謝を受けると反応性中間体であるトリフルオロアセチルラジカルを生じ、生体の高分子と共有結合し、トリフルオロアセチル化タンパク質を生成する(非特許文献20)。
ハロタンによって肝障害を生じた患者の血清からは抗TFA抗体、抗組織抗体、抗CYP2E1抗体が検出されること(非特許文献2)、曝露する回数を重ねるほど発症しやすいこと(非特許文献21)が知られている。ハロタンによってリジン残基を修飾されたタンパク質がクッパー細胞に取り込まれ(非特許文献22)、免疫細胞に抗原として提示されることでアレルギー反応による肝細胞の壊死が起こり肝障害が誘導されると考えられている。
ハロタンによる肝障害について行われた最近の研究によって、マウスの系統や雌雄の違いによって肝障害の程度が異なることが明らかとなっており(非特許文献23)、ヒトにおいても男性に比べ女性においてハロタンによる肝障害の発症例が多いことが報告されている(非特許文献24)。またトリフルオロアセチル化されたタンパク質はハロタンを曝露した様々な実験動物において検出されるが肝障害を起こす種は限られており、付加体の生成以降に存在する何らかのメカニズムの違いがこのような系統差の原因として重要であることが示唆されている(非特許文献25)。
Jenkins et al., 2008 Park et al., 2005a Tirmenstein and Nelson, 1989 Sobue et al., 2001 Mosmann et al., 1986 Agnello et al., 2003 Kidd P, 2003 Heinzel et al., 1989 Nandakumar and Holmdahl, 2006 Kigerl et al., 2006 Fukunaga et al., 2007 Masubuchi et al., 2008 Shi et al., 1997 Tanaka et al., 1996 Mizuhara et al., 1998 Spracklin et al., 1997 Moult and Sherlock, 1975 Uetrecht, 2007 Spracklin et al., 1997 Kenna et al., 1992 Hoet et al., 2002 Furst et al., 1997 You et al., 2006 Cousins et al., 1989 Feng et al., 2009
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に、上記文献記載の従来技術では、ハロタンなどの各種薬物による肝障害誘導のメカニズムは未だ明らかになっていない。そのため、そのメカニズムに基づいて医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法を組み立てることが困難であった。また、同様の理由により、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法を組み立てることも困難であった。
第二に、上記文献記載の従来技術では、ハロタンなどの各種薬物によって誘導される肝障害を抑制する方法が未だ確立されていない。そのため、ハロタンなどの各種薬物によって誘導される肝障害によって多くの患者の生命・健康が未だに脅かされている。また、同様の理由により、医療現場で有用なハロタンなどの各種薬物が、副作用を危惧するあまり医療現場で十分に活用されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ハロタンなどの各種薬物による肝障害誘導のメカニズムを明らかにすることを目的とする。また、本発明の別の目的は、そのメカニズムに基づいて医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法を組み立てることである。さらに、本発明の他の目的は、そのメカニズムに基づいてアレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法を組み立てることである。そして、本発明のもう一つの目的は、それらのスクリーニング方法を用いて、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬となり得る物質を見出すことである。
本発明によれば、プロスタグランジンEを含む、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬が提供される。
この組成によれば、後述する実施例で哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが実証されているプロスタグランジンEを含むため、薬全体としても哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制する効果が得られる。
また、本発明によれば、プロスタグランジンEを含む、インターロイキン17発現抑制剤が提供される。
この組成によれば、後述する実施例でインターロイキン17の発現を抑制することが実証されているプロスタグランジンEを含むため、剤全体としてもインターロイキン17の発現を抑制する効果が得られる。
また、本発明によれば、抗インターロイキン17抗体を含む、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬が提供される。
この組成によれば、後述する実施例で哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが実証されている抗インターロイキン17抗体を含むため、薬全体としても哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制する効果が得られる。
さらに、本発明によれば、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法であって、その候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、を含む、予測方法が提供される。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定することによって、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測を行うことができる。
また、本発明によれば、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法であって、その候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、を含む、スクリーニング方法が提供される。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定することによって、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測を行うことができる。
また、本発明によれば、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法であって、そのアレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、その候補化合物を、その哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、を含む、スクリーニング方法が提供される。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定することによって、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニングを行うことができる。
また、本発明によれば、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法であって、アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、を含む、スクリーニング方法が提供される。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定することによって、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニングを行うことができる。
本発明によれば、ハロタンなどの各種薬物による肝障害誘導のメカニズムを明らかにしたことによって、そのメカニズムに基づいて医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法を組み立てることができる。さらに、同様の理由により、そのメカニズムに基づいてアレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法を組み立てることができる。そして、同様の理由により、それらのスクリーニング方法を用いて、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬となり得る物質を見出すことに成功している。
図1は、従来想定されていたマウスにおけるTh細胞の分化およびサイトカイン分泌のメカニズムの概要を説明するための概念図である。 図2は、従来想定されていたハロタンの代謝経路の概要を説明するための概念図である。 図3は、本発明で明らかになった哺乳動物におけるTh細胞制御および炎症のメカニズムの概要を説明するための概念図である。 図4は、実施例1でBALB/cマウスに対しハロタンを100、300または600μmol/mouseで単回腹腔内投与し、24時間の血漿試料中のALTの平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 図5は、実施例1でBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスのハロタン投与群について3、6、12および24時間の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 図6は、実施例1で行ったBALB/cおよびC57BL/6マウスにおけるハロタン投与による肝障害の程度と好中球の肝臓への浸潤について検討するため、H&E染色および抗MPO抗体を用いた免疫染色による肝組織像の評価を行った結果を示す写真である。 図7は、実施例1でハロタンの投与後3、6、12および24時間のマウス血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質量の変動をELISAを用いて検討した。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスについて各時間において得られた血漿3匹分を等量ずつ混合し、検討に用いた結果を示したグラフである。 図8は、実施例1でハロタン投与後3、6、12および24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2、β−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 図9は、実施例1でハロタン投与後3、6、12および24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2、β−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するTNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 図10は、実施例2でC57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を1、3または5 μg/mLとして培養した際の、培養から24時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度を示したグラフである。 図11は、実施例2でC57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を5 μg/mLとして培養した際の、培養から24、48、72および96時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度を示したグラフである。 図12は、実施例2でBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を5 μg/mLとして培養した際の、培養から24時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例3でBALB/cマウスのハロタンおよびPGE1投与後の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例3でハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例3でハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するTNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例4でハロタンの投与後24時間のマウス血漿中のIL−17タンパク質量の変動をELISAを用いて検討した。血漿中IL−17濃度の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例4でBALB/cマウスのハロタンおよび抗IL−17抗体投与後の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を以下に示したグラフである。 実施例4でハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示したグラフである。 実施例4でハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した際に、各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するTNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比の平均値に標準偏差を付した結果を示したグラフである。 実施例1〜4の実験結果によって解明されたハロタンによって誘導される肝障害のメカニズムについて説明するための概念図である。
<発明の経緯>
本発明者らは、薬物によるアレルギー性肝障害の発症には他のいくつかの免疫性の疾患と同様に、Th1/Th2サイトカインが関与しており、Th1/Th2のバランスの個人差は肝障害のリスクファクターとなるという仮説を立て、それについて検証するために、アレルギー性肝障害を起こす典型的な薬物であるハロタンを肝障害の程度と免疫学的なバックグラウンドの異なる2種類の系統のマウスに投与し、Th1/Th2サイトカインの産生能の変動等について評価した。
さらに研究を進めていくうちに、近年脚光を浴びている新たなTh細胞サブセットであるTh17がハロタン誘導性肝障害に関与することを示唆する実験データが得られた。Th17細胞はTh1やTh2などのTh細胞サブセットと同様にThpより分化することが知られており、その分化にはIL−1β、IL−6、IL−23、TGFβ、stat−3およびRORγtシグナルが重要であると言われている(Usui,2007)。またTh17によって産生されるIL−17が組織の炎症を誘導することを示した数多くの報告がなされている(Komiyama et al., 2006; Park et al., 2005b)。そこでTh1およびTh2サイトカインの産生能の変動に加えて、ハロタン誘導性肝障害とIL−17の関与についての検討も併せて行った。
ここで、図3は、後述する実施例1〜4の実験結果によって解明された哺乳動物におけるTh細胞制御および炎症のメカニズムの概要を説明するための概念図である。また、図20は、後述する実施例1〜4の実験結果によって解明されたハロタンによって誘導される肝障害がプロスタグランジンE1および抗インターロイキン17抗体によって抑制されるメカニズムについて説明するための概念図である。この図に示すように、上述の検討の結果、本発明者らは、抗IL−17抗体によるIL−17の中和はMIP−2の発現を抑制し、肝障害を軽減することを明らかとした。さらに、本発明者らは、ハロタン誘導性肝障害の発症にはTh1とTh2のバランスの変動およびIL−17を介したMIP−2の誘導による好中球の肝臓への浸潤が関与しており、これらの変動はPGE1の投与によって抑制されることを明らかにし、本発明を完成した。
<用語の説明>
本明細書および特許請求の範囲において、各種用語の意味を以下のとおり定義する。
(1)薬物誘導性肝障害
「薬物誘導性肝障害」とは、薬剤が原因となる肝障害をいう。薬物誘導性肝障害は、大別して、アレルギー性機序により起こるアレルギー性肝障害と、肝毒性機序により起こる中毒性肝障害に大別される。前者はアレルギー性機序であり肝障害を予知することが困難であるが、後者は用量依存性であり、肝障害を予知することが容易である。
つまり、「アレルギー性肝障害」とは、薬剤の代謝産物が高分子化合物と結合することで抗原性を獲得し、それに対してアレルギー反応が起きることにより生じる肝障害をいう。一般的に、アレルギー性肝障害の場合、肝細胞の変性・壊死所見は、ウイルス性肝炎などでみられるものと類似する。このとき、肝細胞変性は風船化の形態をとり、壊死により好酸体を形成する。また、変性・壊死は同一の領域で観察される。好酸体は肝細胞索から類洞内に放出され、Kupffer細胞に貪食されて処理され、壊死物質を貪食したKupffer細胞は腫大する。さらに、Kupffer細胞の増生はみられるが、浸潤細胞は、リンパ球が主体で、好酸球や時に好中球の浸潤もみられる。なお、門脈域に好酸球浸潤が目立つ場合は、薬物性肝障害に特徴的な所見ととらえることができるものの、頻度はそれほど高くない。薬物性肝障害の場合、炎症細胞浸潤の程度は、ウイルス性肝炎と比較しても軽度である。肉芽腫は、アレルギー性肝障害の場合にみられ、薬物に対する肝網内系の免疫応答の結果として形成される。肉芽腫にはリンパ球、組織球、好中球、好酸球などが構成成分である炎症性肉芽腫と、リンパ球、活性化マクロファージが構成成分である類上皮性肉芽腫があり、ともに、多核巨細胞を伴うことがある。他の肉芽腫形成性の病変(サルコイドーシス、結核など)との鑑別が困難な場合もある。
(2)プロスタグランジンE
「プロスタグランジン」とは、単一の物質ではなく、プロスタン酸を基本骨格とし、これに二重結合や水酸基等が加わった数多くの不飽和脂肪酸の総称を意味する。プロスタグランジンを大別すると、プロスタグランジン類、トロンボキサン類、ロイコトリエン類となる。このなかで、発熱に関係しているのが、主としてプロスタグランジンE1およびプロスタグランジンE2である。プロスタン酸、プロスタグランジンE1およびプロスタグランジンE2の化学構造式を以下に示す。
なお、「プロスタグランジンE」と言う場合には、プロスタグランジンE1およびプロスタグランジンE2の両方を含むものとする。
(3)ハロタン
「ハロタン(Halothane)」とは、吸入麻酔薬の一種である。気化させやすく、導入も覚醒も速いが、副作用が強いため近年ではあまり使用されなくなっている。副作用として、心血管系の抑制作用があり、外科麻酔レベルで中程度の血圧低下を生じる。また、ハロタンの肝臓代謝が起こり、肝臓ミクロソーム酵素誘導が麻酔後にみられ、肝機能障害になることがある。さらに、心臓の刺激伝導系におけるカテコールアミンの感受性を増加させるため、不整脈発生時はカテコールアミンの併用は推奨されない。ハロタンの化学式を以下に示す。
(4)インターロイキン17
「インターロイキン17」は、1993年にマウスのT細胞ハイブリドーマからクローニングされ、CTLA−8と名付けられ、その後、1995年に、このタンパク質にNF−kBの活性化能やIL−6誘導能があることが示され、新しいサイトカインとしてIL−17と命名された蛋白質である。IL−17は分子量20−30kDのペプチドからなるホモダイマーの糖蛋白質であり、現在、IL−17(IL−17Aとも呼ぶ)以外に、相同性を持つ6個のファミリー分子(IL−17、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−25(IL−17E)、IL−17F)からなることが知られている。IL−17は主に活性化T細胞より産生され、繊維芽細胞や上皮細胞、血管内皮細胞、マクロファージなど種々の細胞に作用して、炎症性サイトカインやケモカイン、細胞接着因子など、種々の因子を誘導して炎症を誘導することが知られている。最近、IL−17を産生するT細胞が従来知られていたTh1細胞、あるいはTh2細胞と呼ばれるT細胞サブセットではなく、新たなTh17細胞と呼ばれるサブセットから産生されることがわかり、炎症や感染防御に於けるこの細胞集団の役割が大きな注目を集めている。
(5)CXCケモカイン
白血球やリンパ球など細胞を組織へ遊走させるのに必要な物質をケモカインと呼び、システイン配列の違いによりCC、CXC、C、CX3Cの4種類に分類される。「CXCケモカイン」とは、システイン残基の間に他のアミノ酸が1つ介在する構造を有するケモカインの総称である。CXCサブファミリーの既知のケモカインには、MIP−2、インターロイキン−8(IL−8)および成長調節タンパク質(GRO−アルファおよびベータ)が含まれる。一方、CCケモカインには、MIP−1などが含まれる。
(6)MIP−2
「MIP−2」は、最初はリポ多糖類(LPS)での刺激時にマウスマクロファージ細胞株RAW264.7により分泌された6kDaのヘパリン結合タンパク質として同定された。MIP−2は、ケモカインのC−X−C(またはCXC)サブファミリーのメンバーである。マウスMIP−2はヒト好中球に対して化学走化性であり、マウスの足の裏に注射した場合、局所的好中球浸潤を誘発する。ラットMIP−2はマウスMIP−2に対して86%のアミノ酸相同性を示し、ラット好中球に対して化学走化性であるが、ラット肺胞マクロファージ又はヒト末梢血好酸球又はリンパ球の遊走を刺激しない。また、ラットMIP−2はラット肺胞内皮細胞の増殖を刺激するが線維芽細胞の増殖は刺激しないことが実証されている。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、同様な内容については、繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
<実施形態1:プロスタグランジンEによる薬物誘導性肝障害の抑制>
本実施形態に係る哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、プロスタグランジンEを含む。ここで、プロスタグランジンEは、図20にも示すように、インターロイキン17の発現を抑制することを介して、哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが後述する実施例で実証されている。したがって、本実施形態に係る哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、プロスタグランジンEを含むので、薬全体としても哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制する効果が得られることになる。
また、この現象を別の側面からみれば、本実施形態に係るインターロイキン17発現抑制剤は、プロスタグランジンEを含むことにもなる。すなわち、プロスタグランジンEは、図20にも示すように、インターロイキン17の発現を抑制することを介して、哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが後述する実施例で実証されている。したがって、本実施形態に係るインターロイキン17発現抑制剤は、プロスタグランジンEを含むので、剤全体としてもインターロイキン17の発現を抑制する効果が得られることになる。
1.プロスタグランジンE製剤の剤形
本実施形態におけるプロスタグランジンEは、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬として用いることができる。本実施形態におけるプロスタグランジンEは、製薬的に有用な組成物を調製するのに知られた方法に従って製剤され、これにより、本実施形態におけるプロスタグランジンEは製薬的に許容される担体媒体と混合される。
すなわち、本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、上記のプロスタグランジンEを含み、散剤、細粒剤、顆粒、錠剤、又はカプセル剤の形態で提供される製剤である。散剤、細粒剤、顆粒、錠剤、又はカプセル剤の形態で提供される製剤とすることにより、経口投与用の薬剤としての利便性がさらに向上する。好ましい態様の一つは、賦形剤を含む固体分散体もしくは製剤、特に経口投与用の製剤である。
本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、経口的又は非経口的に投与可能であり、経口投与の剤型としては、散剤、細粒剤、顆粒、錠剤、錠剤、カプセル剤が好適に用いられる。また、非経口投与の剤型としては坐剤等が好適に用いられる。さらに、本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬を製薬学的に許容可能な溶液中に予め分散させた液剤として使用することもでき、この場合は、経口投与用のシロップ剤や非経口投与用の注射剤(用時溶解して用いる注射用凍結乾燥剤を含む)として用いることができる。また、リポソーム剤として調製することも可能である。これらの剤型の調製には、常用される着色剤、甘味剤、着香剤や、希釈剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、軟化剤、懸濁化剤、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、安定化剤、pH調整剤、及び分散剤を用いることができる。また、これらの剤型は、用いられる状況に応じて、腸溶性コーティングなどの機能性コーティングをさらに施されていてもよい。これらの各種剤型は、常法に従い調製され、無菌的に調製されてもよい。
2.プロスタグランジンE製剤の送達経路
本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬を哺乳類とりわけヒトに適用する場合においては、所望の送達経路に適した任意の剤形を用い、例えば、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により送達することができるが、好ましくは経口投与である。
3.プロスタグランジンE製剤の投与量
本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬の医薬的有効量は、それぞれの化合物、送達の様式、治療される症状の重篤性、および他の成分に依存して変動し得る。いくつかに分割した用量を1日当たりに送達する(例えば、1日当たり分割用量を2〜4回)こともでき、単回用量を送達することもできる。また、送達は、毎日、毎週または毎月の何れを基本としてもよい。
適切な投与計画は、公知の技術知識、本明細書で提供される情報および処置される個々の被検体についての経験に基づいて決定することができる。通常、本実施形態における哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、危険または有害な副作用を起こすことなく効果的な結果を生じ得る濃度で投与されることが好ましい。
一例として、経口剤として使用される場合、有効成分の投与量は、患者の症状、年齢、体重等に応じて異なるが、体重60kgの成人に対しては、一日量として10〜500mgを2〜3回に分けて投与することができる。また、点眼剤、肺や鼻腔への吸入、炎症関節腔への注射を目的とした場合においても患者の症状に応じて異なるが、成人に対する一日量として1〜100μgを2〜3回に分けて投与することができる。
<実施形態2:抗インターロイキン17抗体による薬物誘導性肝障害の抑制>
本実施形態に係る哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、抗インターロイキン17抗体を含む。ここで、抗インターロイキン17抗体は、図20にも示すように、CXCケモカインであるMIP−2の発現を抑制することを介して、哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが後述する実施例で実証されている。したがって、本実施形態に係る哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬は、抗インターロイキン17抗体を含むので、薬全体としても哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制する効果が得られることになる。
また、この現象を別の側面からみれば、本実施形態に係るCXCケモカイン発現抑制剤は、抗インターロイキン17抗体を含むことにもなる。すなわち、抗インターロイキン17抗体は、図20にも示すように、CXCケモカインであるMIP−2の発現を抑制することを介して、哺乳動物の薬物誘導性肝障害を抑制することが後述する実施例で実証されている。したがって、本実施形態に係るCXCケモカイン発現抑制剤は、抗インターロイキン17抗体を含むので、剤全体としてもCXCケモカインであるMIP−2の発現を抑制する効果が得られることになる。
ここで、本実施形態における抗インターロイキン17抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性およびヘテロ結合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗インターロイキン17抗体は、ポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで産生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、インターロイキン17ポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗インターロイキン17抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein,Nature,256:495(1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。免疫化剤は、典型的にはインターロイキン17ポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBLs」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,(1986)pp.59−103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている[Kozbor,J. Immunol.,133:3001 (1984);Brodeur等,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63]。
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、インターロイキン17に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard,Anal. Biochem.,107:220(1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding,上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI−1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作製することができる。本実施形態のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に組込むことができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;Morrison等,上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該分野において知られている定法的技術を使用して達成できる。
3.ヒト及びヒト化抗体
本実施形態の抗インターロイキン17抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等,Nature,321:522−525(1986);Riechmann等,Nature,332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりWinter及び共同研究者[Jones等,Nature,321:522−525(1986);Riechmann等,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen等,Science,239:1534−1536(1988)]の方法に従って実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ[Hoogenboom及びWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks等,J.Mol.Biol.,222:581(1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole等,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R. Liss.p.77(1985);Boerner等,J. Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化してマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等,Bio/Technology 10,779−783(1992);Lonberg等,Nature 368 856−859(1994);Morrison,Nature 368,812−13 (1994);Fishwild等,Nature Biotechnology 14,845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern. Rev. Immunol. 13 65−93(1995)に記載されている。
また、抗体は上述した既知の選択及び/又は突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が調製された(一般的にマウス、ヒト化又はヒトの)出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20又は30倍の親和性を有する。
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。この場合、結合特異性の一方はインターロイキン17に対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づく[Milstein及びCuello,Nature,305:537−539(1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO93/08829、及びTraunecker等,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行われる。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
WO96/27011に記載された他のアプローチによれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」は、大きなアミノ酸側鎖が小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えられた第2の抗体分子の界面に作り出される。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等,Science,229:81(1985)は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab’断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab’−TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再転換し、他のFab’−TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab’断片を直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等,J. Exp. Med.,175:217−225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)2分子の製造を記述している。各Fab’断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab’部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)を結合してなる。従って、一つの断片のVH及びVLドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368(1994)を参照されたい。二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、ここに与えられたインターロイキン17ポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗インターロイキン17ポリペプチドアームは、特定のインターロイキン17ポリペプチド発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28、又はB7)等の白血球上のトリガー分子又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体は特定のインターロイキン17ポリペプチドを発現する細胞に細胞障害薬を局在化させるためにも使用されうる。これらの抗体はインターロイキン17−結合アーム及び細胞障害薬又は放射性キレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAと結合するアームを有する。対象の他の二重特異性抗体はインターロイキン17ポリペプチドに結合し、そしてさらに組織因子(TF)に結合する。
5.ヘテロ結合体抗体
ヘテロ結合抗体も本発明の範囲内に入る。ヘテロ結合抗体は2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO91/00360;WO92/200373;EP03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
6.抗体の製薬組成物
ここで同定されたインターロイキン17ポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
インターロイキン17ポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、取り込める抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するために使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marascoら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90,7889−7893(1993)参照。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン又は成長阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は上掲のRemington’s Pharmaceutical Science に開示されている。インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタメート、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ−(D)−3−ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸−グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
7.抗体医薬の剤形
本実施形態における抗インターロイキン17抗体は、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬として用いてもよい。本実施形態における抗インターロイキン17抗体は、製薬的に有用な組成物を調製するのに知られた方法に従って製剤され、これにより、本実施形態における抗インターロイキン17抗体は製薬的に許容される担体媒体と混合される。治療用製剤は、凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態で、任意的な製薬上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する活性成分とを混合することにより(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A. Ed.,[1980])、調製され保管される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物;EDTA等のキレート剤、マンニトール又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はPEG等の非イオン性界面活性剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。ここで、本実施形態の製薬組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内バッグ又はバイアル内に配される。投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
本実施形態の製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobiら編,Pergamon Press,New York 1989,pp.42−96のMordenti,J.及びChappell, W.「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
抗インターロイキン17抗体のインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。
抗インターロイキン17抗体の投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でインターロイキン17ポリペプチドの持続放出が望まれる場合、インターロイキン17ポリペプチドのマイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン−(rhIFN−)、インターロイキン−2、及びMN rgp120で成功裏に実施されている。Johnsonら,Nat. Med.,2:795−799(1996);Yasuda,Biomed. Ther.,27:1221−1223(1993);Horaら, Bio/Technology,8:755−758 (1990);Cleland,「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell及びNewman編,(Plenum Press:New York,1995),p.439−462;国際公開97/03692,国際公開96/40072,国際公開96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
これらのタンパク質の持続放出製剤は、ポリ−乳酸−コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座にクリアされる。さらに、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis,「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」:M. Chasin及びR. Langer(編),Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems(Marcel Dekker:New York,1990),pp.1−41。
<実施形態3:IL−17発現量により副作用の予測をする方法>
本実施形態に係る医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法は、候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、を含む、予測方法である。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定することによって、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測を行うことができる。
ここで、この予測方法で用いる哺乳動物としては、特に限定するものではなく、倫理的な観点からヒト個体を除く、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシなどの任意の哺乳動物を用いることができる。これらの中でも、特に好ましいのは、入手および取り扱いが容易であり、後述する実施例で示すように、この予測方法で実際に用いることができることが実証されているマウスである。また、マウスにも色々な系統があるが、特に好ましいのは、後述する実施例で示すように、ハロタンを投与することによってアレルギー性の肝障害を起こすことが実証されているBALB/cマウスである。
ここで、医薬品の候補化合物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、低分子化合物医薬の場合に一般的な投与形態であり実験が容易な投与形態でもある経口投与である。
また、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程においては、測定の仕方は特に限定するものではないが、例えば、インターロイキン17のmRNAの発現量、インターロイキン17の蛋白質の発現量などを公知の測定方法によって測定することができる。できるだけ測定の手間を省きたい場合には、より簡便な測定方法であるmRNAの発現量の測定を行えばよい。一方、できるだけ正確に測定したい場合には、インターロイキン17の蛋白質の発現量を測定すればよい。
<実施形態4:CXCケモカイン発現量により副作用の予測をする方法>
本実施形態に係る医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法は、候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、を含む、予測方法である。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定することによって、医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測を行うことができる。
ここで、この予測方法で用いる哺乳動物としては、特に限定するものではなく、倫理的な観点からヒト個体を除く、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシなどの任意の哺乳動物を用いることができる。これらの中でも、特に好ましいのは、入手および取り扱いが容易であり、後述する実施例で示すように、この予測方法で実際に用いることができることが実証されているマウスである。また、マウスにも色々な系統があるが、特に好ましいのは、後述する実施例で示すように、ハロタンを投与することによってアレルギー性の肝障害を起こすことが実証されているBALB/cマウスである。
ここで、医薬品の候補化合物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、低分子化合物医薬の場合に一般的な投与形態であり実験が容易な投与形態でもある経口投与である。
また、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程においては、測定の仕方は特に限定するものではないが、例えば、CXCケモカインのmRNAの発現量、CXCケモカインの蛋白質の発現量などを公知の測定方法によって測定することができる。できるだけ測定の手間を省きたい場合には、より簡便な測定方法であるmRNAの発現量の測定を行えばよい。一方、できるだけ正確に測定したい場合には、CXCケモカインの蛋白質の発現量を測定すればよい。
CXCケモカインのmRNAの発現量を測定するには、例えば、後述する実施例で用いられているReal−time RT−PCRによる測定を行うことができる。この場合、マウスの肝臓からtotal RNAを調製し、そのtotal RNAを用いてRT反応を行った上で、real−time RT−PCRを行えばよい。
<実施形態5:IL−17発現量により医薬候補をスクリーニングする方法>
本実施形態に係るアレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法は、アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、その候補化合物を、その哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、を含む、スクリーニング方法である。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定することによって、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニングを行うことができる。
ここで、この予測方法で用いる哺乳動物としては、特に限定するものではなく、倫理的な観点からヒト個体を除く、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシなどの任意の哺乳動物を用いることができる。これらの中でも、特に好ましいのは、入手および取り扱いが容易であり、後述する実施例で示すように、この予測方法で実際に用いることができることが実証されているマウスである。また、マウスにも色々な系統があるが、特に好ましいのは、後述する実施例で示すように、ハロタンを投与することによってアレルギー性の肝障害を起こすことが実証されているBALB/cマウスである。
ここで、アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際のアレルギー性薬物誘導性肝障害の発症の原因として予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際のアレルギー性薬物誘導性肝障害の発症の原因として予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、後述する実施例に示すように実験が容易な投与形態でもある腹腔内注射による投与である。
また、医薬品の候補化合物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、低分子化合物医薬の場合に一般的な投与形態であり実験が容易な投与形態でもある経口投与である。
また、哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程においては、測定の仕方は特に限定するものではないが、例えば、インターロイキン17のmRNAの発現量、インターロイキン17の蛋白質の発現量などを公知の測定方法によって測定することができる。できるだけ測定の手間を省きたい場合には、より簡便な測定方法であるmRNAの発現量の測定を行えばよい。一方、できるだけ正確に測定したい場合には、インターロイキン17の蛋白質の発現量を測定すればよい。
<実施形態6:CXCケモカイン発現量により医薬候補をスクリーニングする方法>
本実施形態に係るアレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法は、アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、その候補化合物を、その哺乳動物に投与する工程と、その哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、を含む、スクリーニング方法である。
この方法によれば、後述する実施例で哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現がアレルギー性の肝障害を誘導することが実証されているため、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定することによって、アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニングを行うことができる。
ここで、この予測方法で用いる哺乳動物としては、特に限定するものではなく、倫理的な観点からヒト個体を除く、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシなどの任意の哺乳動物を用いることができる。これらの中でも、特に好ましいのは、入手および取り扱いが容易であり、後述する実施例で示すように、この予測方法で実際に用いることができることが実証されているマウスである。また、マウスにも色々な系統があるが、特に好ましいのは、後述する実施例で示すように、ハロタンを投与することによってアレルギー性の肝障害を起こすことが実証されているBALB/cマウスである。
ここで、アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際のアレルギー性薬物誘導性肝障害の発症の原因として予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際のアレルギー性薬物誘導性肝障害の発症の原因として予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、後述する実施例に示すように実験が容易な投与形態でもある腹腔内注射による投与である。
また、医薬品の候補化合物を、哺乳動物に投与する工程においては、投与の仕方は特に限定するものではないが、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で投与することが好ましい。例えば、実際の治療において予想される投与形態・投与量などに対応した形で、経口、皮膚、皮内、気管支内、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、腹腔内、鼻内、経膣、経直腸、舌下、頭蓋内、硬膜内または気管内のような経路により投与することができるが、最も好ましくは、低分子化合物医薬の場合に一般的な投与形態であり実験が容易な投与形態でもある経口投与である。
また、哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程においては、測定の仕方は特に限定するものではないが、例えば、CXCケモカインのmRNAの発現量、CXCケモカインの蛋白質の発現量などを公知の測定方法によって測定することができる。できるだけ測定の手間を省きたい場合には、より簡便な測定方法であるmRNAの発現量の測定を行えばよい。一方、できるだけ正確に測定したい場合には、CXCケモカインの蛋白質の発現量を測定すればよい。
CXCケモカインのmRNAの発現量を測定するには、例えば、後述する実施例で用いられているReal−time RT−PCRによる測定を行うことができる。この場合、マウスの肝臓からtotal RNAを調製し、そのtotal RNAを用いてRT反応を行った上で、real−time RT−PCRを行えばよい。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記実施の形態ではマウスにハロタンをはじめとするアレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を腹腔内注射によって投与するとしたが、特に限定する趣旨ではなく、ハロタンによるアレルギー性薬物誘導性肝障害の原因として一般的な吸入投与としてもよい。このようにすれば、ハロタンなどの吸入麻酔薬によるアレルギー性薬物誘導性肝障害の誘導をより実態に沿った形で再現できるという利点が得られる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1:ハロタン誘導性急性肝障害モデルマウス作成および炎症・免疫関連遺伝子の発現変動解析>
全身麻酔薬ハロタンは個体特異的に肝障害を引き起こすことが知られており、ハロタンを使用した患者の約20%で血清トランスアミナーゼが増加すると言われている。古くからラットやモルモットなどの実験動物においてハロタンの急性肝障害の研究が行われてきたが、近年マウスを用いた肝障害モデルが開発され、BALB/cマウスとC57BL/6マウスの間には非常に大きな系統差が存在することが報告されている。そこでハロタンの毒性発現機序の解明に用いるために、本実施例ではこれら2種類の系統のマウスにハロタンを投与し、経時的に血中の肝障害マーカーを測定することで肝障害レベルの評価を行った。同時に肝臓における炎症・免疫に関与する転写因子およびサイトカイン類のmRNAの定量を行った。
(1−1−1)実験材料および実験試薬
ハロタンはSigma(St. Louis,MO)より購入した。オリーブ油、トランスアミナーゼCII−テストワコーキットは和光純薬工業(Osaka,Japan)より購入した。ReverTra Aceは東洋紡(Osaka,Japan)より、逆転写用dNTPsはグライナー・ジャパン (Tokyo,Japan)より購入した。RNAiso、ランダムヘキサマー、SYBR Premix Ex Taq(R) (Perfect Real Time)は宝酒造(Osaka,Japan)より購入した。プライマーは北海道システムサイエンス(Sapporo,Japan)に合成を依頼した。Reference DyeにはBrilliant SYBR Green QPCR master mix(Stratagene,La Jolla,CA)付属のものを使用した。Ready−SET−GO! Mouse Interleukin−4(IL−4)およびReady−SET−GO! Mouse Interferon gamma(IFN−g)はeBioscience,Inc(San Diego,CA)より購入した。イムノモジュール(ストリップ&フレーム) はNalge Nunc International K.K.(Tokyo,Japan)より購入した。その他の試薬類は市販品の特級、生化学用または高速液体クロマトグラフィー用のものを用いた。
また、以下に本章で使用した溶液等の組成を示した。
DEPC処理精製水
DEPCの最終濃度が0.1%になるように精製水に加え、37℃で2時間加温した。その後、121℃、40分間オートクレーブした。
(1−1−2)ハロタンによる肝障害マウスの作成
BALB/cCrSlcマウス(雌性、7週齢;日本SLC,Shizuoka,Japan)およびC57BL/6JJmsSlcマウス(雌性、7週齢;日本SLC)を馴化飼育した後、体重を測定し、群分けを行った。ハロタン投与群にはハロタン100、300または600μmol/mouseを単回腹腔内投与した。投与時間は3、6、12および24時間とし、下行大静脈より採血を行い(1−1−3)および(1−1−4)で使用した。ハロタンの投与量の検討の際には投与から24時間後に採血を行った。同時に肝臓を採取し、1.15%塩化カリウム溶液で洗浄後、(1−1−5)で使用した。
(1−1−3)血漿中ASTおよびALT値の測定
ヘパリナイズした器具を用いて採取したマウスの全血を1,500g、4℃で15分間遠心分離を行った後、上清をサンプルチューブに移し血漿とした。血漿中ASTおよびALT値は、トランスアミナーゼCII−テストワコーキットを用いて、マニュアルに修正を加え、以下の方法で定量した。血漿5μLにALT用基質酵素液を125μL加え混合し、37℃で5分間インキュベートした。その後、発色試薬を加えよく混合し、37℃で正確に20分間加温した。20分後に反応停止液を加え、混合した後、555nmでの吸光度を測定し、ASTおよびALT値を求めた。
(1−1−4)ELISAによる血漿中のIFNγおよびIL−4の定量
上述の(1−1−2)で採取したマウスの全血を1時間室温で放置し、1,500g、4℃で15分間遠心分離を行った後、上清をサンプルチューブに移し血漿とした。血漿中のIFNγ濃度およびIL−4濃度をReady−Set−Go!のマニュアルにしたがって以下の方法で測定した。96well plateにcoating bufferに溶かしたcapture antibodyを1wellあたり100 μL加え、4℃で18時間静置した。Wash buffer でwellを5回洗浄しwellの水分を除き、1x Assay Diluentを1wellあたり200μL加え、25℃で1時間静置した。Wash buffer でwellを1回洗浄しwellの水分を除き、血漿および1x Assay Diluentを用いて段階希釈を行ったrecombinant mouse IFNγまたはrecombinant mouse IL−4を1wellあたり100μL加え、25℃で2時間静置した。Wash buffer でwellを5回洗浄しwellの水分を除き、1x Assay Diluentに溶かしたdetection antibodyを1wellあたり100μL加え、25℃で1時間静置した。Wash buffer でwellを5回洗浄しwellの水分を除き、1x Assay Diluentに溶かしたAvidin − HRPを1 wellあたり100μL加え、25℃で30分間静置した。Wash buffer でwellを7回洗浄しwellの水分を除き、1x TMB solutionを1wellあたり100μL加え、25℃で15分間インキュベートし、1Mリン酸を1wellあたり50μL加え反応を停止させた。450nmの吸光度を測定することにより定量した。
(1−1−5)Total RNAの調製
RNAisoのマニュアルに修正を加え、以下の方法で肝臓からtotal RNAを調製した。約100mgの肝臓に、RNAiso 1mLを加えてホモジナイズ後、サンプルチューブに分注し、クロロホルム 0.2mLを加えて激しく15秒間攪拌した。室温で3分間放置した後、10,000g、4℃で15分間遠心分離した。上清を別のチューブに採取し、0.5mLのイソプロパノールを加えて室温にて8分間放置した後、10,000g、4℃で10分間遠心分離した。沈殿を70%エタノールで洗浄した。この沈殿を乾燥させた後、DEPC処理精製水に溶解させ、260nmにおける吸光度を測定することにより定量した。
(1−1−6)RT反応
上述の(1−1−5)より得られたtotal RNAを用い、以下の方法に従ってRT反応を行った。Total RNA 10μg、150ng/μLランダムヘキサマー1μLにDEPC処理精製水を加えて23μLとした。70℃水浴中で10分間反応後、氷冷した。5x 逆転写用バッファー8μLと2.5M dNTPs 8μL、ReverTra Aceを1μL加え、全量を40μLとした後、30℃で10分間、42℃で60分間反応させた。その後、98℃で10分間インキュベートし、RT酵素を失活させた後、PCRに供した。
(1−1−7)Real−time RT−PCR
T−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2および補正用のβ−actinのRNA含量の測定は、Mx3000P (Stratagene) を用いてreal−time RT−PCRにて行った。反応条件を以下に示した。上述の(1−1−6)で得られたcDNA試料2μL、10μM FP 0.8μL、10μM RP 0.8μL、SYBR Premix Ex Taq(R)バッファー10μL、5μM Reference Dye 0.3μLに滅菌精製水を加え、全量を20μLとした。使用したプライマーの配列を以下に示す。
T−bet,FP:5’−CAA GTG GGT GCA GTG TGG AAA G−3’(配列番号:1),RP:5’−TGG AGA GAC TGC AGG ACG ATC−3’(配列番号:2);
GATA−3,FP:5’−GGA GGA CTT CCC CAA GAG CA−3’(配列番号:3),RP: 5’− CAT GCT GGA AGG GTG GTG A−3’(配列番号:4);
IFNγ,FP:5’−GGC CAT CAG CAA CAT AAG C−3’(配列番号:5),RP:5’−TGG ACC ACT CGG ATG AGC TCA−3’(配列番号:6);
IL−10,FP:5’−TGA AGA CCC TCA GGA TGC GG−3’(配列番号:7),RP:5’−AGA GCT CTG TCT AGG TCC TGG−3’(配列番号:8);
TNFα,FP:5’−TGT CTC AGC CTC TTC TCA TTC C−3’(配列番号:9),RP:5’−TGA GGG TCT GGG CCA TAG AAC−3’(配列番号:10);
MIP−2,FP:5’−AAG TTT GCC TTG ACC CTG AAG−3’(配列番号:11),RP:5’−ATC AGG TAC GAT CCA GGC TTC−3’(配列番号:12);
β−actin,FP:5’−ACG GCC AGG TCA TCA CTA TTG G−3’(配列番号:13),RP:5’− CTA GGA GCC AGA GCA GTA ATC TC−3’(配列番号:14).
調製した反応液を専用のサンプルチューブに入れ、以下のプロトコールで反応を行った。T−bet、IFNγ、β−actinでは熱変性反応を95℃、60秒の後、解離反応を95℃、15秒、アニーリングと伸長反応を同時に68℃、20秒を1サイクルとし40サイクル行った。アニーリングと伸長反応の際に、蛍光をreal timeで検出した。IL−10では熱変性反応を95℃、30秒の後、解離反応を94℃、4秒、アニーリングと伸長反応を同時に66℃、20秒を1サイクルとし40サイクル行った。アニーリングと伸長反応の際に、蛍光をreal timeで検出した。TNFαでは熱変性反応を95℃、60秒の後、解離反応を95℃、15秒、アニーリングと伸長反応を同時に66℃、20秒を1サイクルとし40サイクル行った。アニーリングと伸長反応の際に、蛍光をreal timeで検出した。MIP−2では熱変性反応を95℃、60秒の後、解離反応を94℃、4秒、アニーリングと伸長反応を同時に64℃、20秒を1サイクルとし45サイクル行った。アニーリングと伸長反応の際に、蛍光をreal timeで検出した。GATA−3では熱変性反応を95℃、60秒の後、解離反応を94℃、15秒、アニーリングを62℃、15秒、伸長反応を72℃、30秒を1サイクルとし、40サイクル行った。伸長反応の際に、蛍光をreal timeで検出した。40サイクルの反応を終了後、60℃から95℃まで、0.2℃/sec温度を上昇させて融解曲線の測定を行った。融解曲線の測定により、産物が単一物であるかを推定することができる。反応終了後、2〜4%アガロースゲルで電気泳動を行い特異的に増幅されるバンドの再確認を行った。
(1−2)実験結果
(1−2−1)ハロタン投与マウスの血漿試料の生化学検査
BALB/cマウスに対しハロタンを100、300または600 μmol/mouseで単回腹腔内投与し、24時間の血漿試料中のALTの平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図4)。
ハロタン投与後24時間のBALB/cマウスにおいて、投与量100または600μmol/mouseでALTの活性は対照群と比べ、有意な増加が認められた。また300μmol/mouseにおいてALTは有意ではないが増加傾向にあった。以下、ハロタンの投与量を600μmol/mouseとして検討を行った。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスのハロタン投与群について3、6、12および24時間の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図5)。
BALB/cマウスにおいては、ハロタン投与後3、6、12および24時間でASTの活性は対照群と比べ、有意な増加が認められた。ASTは投与後3時間から増加し始め、24時間で最も高い値を示した。C57BL/6マウスにおいては、ハロタン投与後3、12および24時間でASTの活性は対照群と比べ、有意な増加が認められた。ASTは投与後3時間から増加し始め、6時間で最大となり、その後も24時間まで活性は維持された。BALB/cマウスにおいては、ハロタン投与後24時間でALTの活性は対照群と比べ、有意な増加が認められた。ALTは投与後3時間から増加し始め、24時間で最も高い値を示した。C57BL/6マウスにおいては、ハロタン投与後3、12および24時間でALTの活性は対照群と比べ、有意な増加が認められた。ALTは投与後3時間から増加し始め、12時間で最大となり、その後減少する傾向にあった。24時間においてALTは12時間に比べ減少したが対照群の活性値には至らなかった。
BALB/cおよびC57BL/6マウスにおけるハロタン投与による肝障害の程度と好中球の肝臓への浸潤について検討するため、H&E染色および抗MPO抗体を用いた免疫染色による肝組織像の評価を行った(図6)。その結果として、ハロタンを投与されたBALB/cマウスにおいて中心静脈周囲の肝細胞の脱落が認められた。これは薬物誘導性肝障害の一般的な所見である。また、ハロタンを投与されたBALB/cマウスにおいて多数のMPO陽性細胞の浸潤が認められ、ハロタンによる肝障害の誘導に好中球が寄与していることが示唆された。一方、対照群のBALB/cマウス、C57BL/6マウスおよびハロタンを投与されたC57BL/6マウスにおいては肝細胞の脱落やMPO陽性細胞の浸潤は認められなかった。
(1−2−2)ハロタン投与マウス血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質量の変動解析
ハロタンの投与後3、6、12および24時間のマウス血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質量の変動をELISAを用いて検討した。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスについて各時間において得られた血漿3匹分を等量ずつ混合し、検討に用いた(図7)。
BALB/cマウスにおいてハロタンの投与後24時間において血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質が検出された。しかし他のいずれの時間においても血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質は検出されなかった。一方、C57BL/6マウスにおいては、いずれの時間においても血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質は検出されなかった。
(1−2−3)ハロタン投与マウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの変動解析
ハロタン投与後3、6、12および24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した。各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2、β−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比(図8)、TNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比(図9)の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した。
BALB/cマウス肝においてT−bet/GATA−3比はハロタンの投与後3時間で対照群と比べ0.4倍、投与後12時間で対照群の0.4倍、投与後24時間で対照群の0.1倍となり、いずれも有意な減少が認められた。ハロタンの投与後6時間においては対照群と比べ減少傾向にあったが有意な差は認められなかった。C57BL/6マウス肝においてT−bet/GATA−3比はハロタンの投与後3時間で対照群と比べ0.5倍、投与後6時間で対照群の0.6倍、投与後24時間で対照群の1.5倍となり有意な変動が認められた。ハロタンの投与後12時間においては対照群と比べ変動は認められなかった。
BALB/cマウス肝においてIFNγ/IL−10比はハロタンの投与後3時間で対照群と比べ0.1倍となり、有意な減少が認められた。ハロタンの投与後6時間、12時間および24時間においては対照群と比べ減少傾向にあったが、有意な差は認められなかった。C57BL/6マウス肝においてIFNγ/IL−10比はハロタンの投与後3時間で対照群と比べ0.2倍、投与後6時間で対照群の0.2倍となり、有意な減少が認められた。ハロタンの投与後12時間と24時間においては対照群と比べ増加傾向にあったが、有意な差は認められなかった。
BALB/cマウス肝においてTNFα/β−actin比は対照群に比べ、ハロタンの投与後3時間で減少傾向にあったが6時間から増加し始め、12時間で最大となり、その後減少する傾向にあったが、いずれの時間においても有意な変動は認められなかった。C57BL/6マウス肝においてTNFα/β−actin比はハロタンの投与後12時間で対照群と比べ2.9倍となり、有意な増加が認められた。ハロタンの投与後24時間においても増加傾向にあったが有意な差は認められなかった。ハロタンの投与後3および6時間においてはTNFα/β−actin比の変動は認められなかった。
BALB/cマウス肝においてMIP−2/β−actin比はハロタンの投与後24時間で対照群と比べ約960倍となり、有意な増加が認められた。ハロタンの投与後3時間で対照群と比べ2.0倍、6時間で対照群と比べ3.7倍、12時間で対照群と比べ37.8倍となり、増加傾向にあったが有意な差は認められなかった。C57BL/6マウス肝においてMIP−2/β−actin比はハロタンの投与後12時間で対照群と比べ16.1倍、投与後24時間で対照群と比べ17.8倍となり、有意な増加が認められた。ハロタンの投与後3時間で対照群と比べ5.9倍、6時間で対照群と比べ1.8倍となり、増加傾向にあったが有意な差は認められなかった。
(1−3)結果の考察
ハロタンは吸入型全身麻酔薬として古くから用いられているがヒトにおいてまれな頻度であるが肝障害を引き起こすことが知られており、現在はより肝障害性の少ないセボフルランが主流となっている。しかし現在でも設備や様々な法的な問題からハロタンの使用が余儀なくされる状況が存在している(Splinter,2002)。In vitroにおいてハロタンはCYP2E1およびCYP2A6によって酸化的に(Madan and Parkinson,1996;Spracklin et al.,1997)、CYP3A4およびCYP2A6によって還元的に(Spracklin et al.,1996)代謝を受けると言われている。またヒトにおいてCYP2E1がハロタンの主要な代謝酵素であること(Kharasch et al.,1996)、ハロタンによって肝炎を発症した患者の45%は血漿から抗CYP2E1抗体が検出されること(Bourdi et al.,1996)が報告されており、ハロタンによる肝障害の発症にはCYP2E1による代謝的活性化が関与していると考えられる。多くの種においてハロタン誘導性肝障害は通常の条件では再現されないが、モルモットを用いた検討でハロタンがCYP2E1によってトリフルオロ酢酸に代謝され、血漿中のALTの増加と肝細胞のネクローシスが起こること、ハロタンの投与による肝臓のグルタチオンの減少と肝障害の増悪が関連することが報告されている(Lind and Gandolfi,1997)。
ハロタン誘導性肝障害のモデルマウスはこれまでハロタンの投与による呼吸抑制でマウスが死亡してしまうため、投与量に限界があり作成が困難であった。本章ではYouら(2006)の報告を参考にハロタンの投与方法を決定したが、この方法では多量のハロタンを投与してもハロタンが溶媒から徐々に放出されるため呼吸抑制によってマウスが死亡することなく、肝臓にハロタンを蓄積させることができる。本章においてハロタンの投与量を100、300または600μmol/mouseとし検討を行ったがALTの顕著な増加はYouら(2006)と同じ600μmol/mouseにおいてのみ認められたため、その後の検討は全て投与量を600μmol/mouseとして行った。またYouら(2006)は今回と同様の投与法において肝臓のトリフルオロアセチル化タンパク質の生成についてBALB/cマウスとC57BL/6マウスの間に系統差が存在しないことを報告している。
今回、BALB/cマウスにおいてハロタンの投与によって投与後3時間からASTが上昇し始め、24時間において最も増加しており、いずれの時間においても対照群との間に有意な増加が認められた。またハロタンの投与によって投与後3時間からALTが上昇し始め、24時間において対照群と比べて有意な差となった。Youら(2006)の報告では同様の投与方法でALTのピークは投与後24時間において1200IU/L程度を示し、その後減少していることから今回の投与によっても投与後24時間以降でALTが減少していくと考えられる。しかしYouら(2006)の行った検討で投与後12時間においてALTが700IU/L程度まで上昇していたのに対し、本章では投与後12時間におけるALTの上昇は非常に小さい値であった。実験条件が厳密に同様ではないためこのような違いが見られたと考えられるがBALB/cマウスにおけるハロタン誘導性肝障害動物モデルをある程度再現することができたと考えられる。C57BL/6マウスにおいて今回、投与後3時間からASTが上昇し始め、3、12および24時間において対照群と比べて有意な差となった。ハロタンの投与後6時間でASTは最大となったが3匹中1匹のマウスが比較的高いAST値を示したため平均値と標準偏差が増加し、このような結果になったと考えられる。ASTは肝臓以外にも心筋、骨格筋、腎臓および赤血球などにも含まれており、実験操作中の溶血によって値が上昇することがある。しかし今回同じマウスの血漿中のALTも比較的高い値を示していたため溶血による増加ではなくマウスの個体差によって、ASTおよびALTの増加が起こったと考えられる。C57BL/6マウスにおいて、投与後3時間からALTが上昇し始め、3、12および24時間において対照群と比べて有意な差となった。Youら(2006)の報告では同様の投与方法でALTのピークは投与後12時間に現れており、今回の結果と一致していた。
肝組織像の評価については、BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにおけるハロタン投与による肝障害の程度と好中球の肝臓への浸潤をH&E染色および抗MPO抗体を用いた免疫染色によって行った。その結果として、ハロタンを投与されたBALB/cマウスにおいて中心静脈周囲の肝細胞の脱落が認められた。これは薬物誘導性肝障害の一般的な所見であり、Youら(2006)による検討と同様の結果となった。またモルモットにおいてもハロタンによる肝障害時には中心静脈周囲の肝細胞の脱落が見られることが報告されている(Lind and Gandolfi,1997)。
H&E染色による肝障害の程度の評価に加えて、抗MPO抗体を用いた免疫染色によってMPO陽性細胞の肝臓への浸潤についての評価を行い、好中球の関与について検討した。ハロタンを投与されたBALB/cマウスの肝臓において多数のMPO陽性細胞の浸潤が認められており、マウスにおいて好中球とハロタン誘導性肝障害の関与を示唆した報告(You et al.,2006;Feng et al.,2009)を支持する結果となった。一方、対照群のBALB/cマウス、対照群のC57BL/6マウスおよびハロタンを投与されたC57BL/6マウスにおいては肝細胞の脱落やMPO陽性細胞の浸潤は認められなかった。
好中球の肝血管系への蓄積にはTNFα、IL−1、CXCケモカイン(IL−8、MIP−2、KC、CINC−1)、PAFなど様々な炎症調節因子が関与している。しかし類洞内への好中球の蓄積だけでは肝細胞を傷害するには不十分であり、好中球が血管外の肝実質細胞へ遊走されることが必要であると言われており、それには好中球のβ2インテグリンと内皮細胞および肝実質細胞のICAM−1との接着が必要であると言われている。肝細胞の傷害には肝実質細胞内の好中球に由来する過酸化水素や次亜塩素酸による酸化ストレスが寄与していると言われており、次亜塩素酸は好中球のもつMPOによって産生されている。虚血再灌流による肝障害、アルコール性肝炎、αナフチルイソチオシアネートによる肝障害およびアセトアミノフェンによる肝障害などが好中球の浸潤によって引き起こされる、または悪化することが報告されており(Ramaiah and Jaeschke,2007)、本検討におけるMPO陽性細胞の浸潤も肝細胞の傷害に寄与していると考えられる。しかしアセトアミノフェンは免疫担当細胞を含まない条件でマウス肝細胞を培養した場合においても、in vivoと同様のメカニズムで細胞を傷害することが報告されており(Bajt et al.,2004)、好中球などの非実質細胞が関与しない可能性が示唆されている。ハロタンについてもin vitroにおける詳細な検討が、好中球の関与を明らかにするために必要であると考えられる。
T−betは新たに発見されたTh1細胞に特異的な転写因子であり、Th1細胞への分化を促進し、Th2細胞への分化を抑制すると考えられている(Shier et al.,2000;Szabo et al.,2000)。逆にGATA−3はTh2細胞の発達において中心的な役割を果たす転写因子であり、Th1細胞への分化を抑制すると言われている (Zhang et al.,1997;Ouyang et al.,1998)。Th細胞に特異的なこれら2つの主要な転写因子がTh1サイトカイン、Th2サイトカインの発現を制御し、Th細胞の分化において重要な役割を果たしていると考えられている。T−betの発現はIFNγの発現と相関しており、またIFNγは転写因子stat−1を介してT−betの発現を誘導していることから、ポジティブフィードバックループが形成されていることが知られている(Agnello et al.,2003)。一方、IL−4は転写因子stat−6を介してGATA−3の発現を誘導しており、ポジティブフィードバックループの形成が報告されている(Agnello et al.,2003)。またIFNγはTh2サイトカインの、IL−4はTh1サイトカインの産生を抑制しており、Th1とTh2は互いに制御し合っていることが知られている(Rengarajan et al.,2000)。喘息患者の気道のT細胞ではT−betの発現量が低下すること、T−betノックアウトマウスがヒトにおける喘息に類似した気道の過敏症を発症すること(Finotto et al.,2002)およびGATA−3の発現が上昇することが報告されており (Nakamura et al.,1999)、Th2細胞の関与が示唆されている。またCon Aを投与することで誘導した肝障害モデルにおいては野生型のマウスに比べ、stat−1トランスジェニックマウスにおいて重症化し、stat−1、T−bet、IFNγのいずれかをノックアウトしたマウスにおいては軽減されることが報告されており、肝障害に対するTh1細胞の寄与が示唆されている(Siebler et al.,2003;Tagawa et al.,1997)。
Th1とTh2の分化において中心的な役割を果たす転写因子であるT−betとGATA−3のmRNAまたはタンパク質の発現量の変化を疾患モデル動物を用いて評価した種々の報告(Daniel et al.,2008;Kremer et al.,2006; Park et al.,2008)はT−betやGATA−3について評価することがTh1やTh2と様々な疾患との関連を明らかにする上で有用であることを示している。またT−betおよびGATA−3のmRNAの発現量の比は、それぞれを単独で評価した場合よりもTh1サイトカインとTh2サイトカインの実際の分泌量をより正しく反映することが報告されており(Chakir et al.,2003)、肝臓においてもT−bet/GATA−3のmRNA比の変動はTh1サイトカインとTh2サイトカインの実際の分泌のバランスを反映していると考えられる。しかし組織におけるサイトカインを測定したという報告は非常に少なく、それは抽出に適切な界面活性剤を正しい濃度で用いなければ抽出効率が悪く、さらに検出の際の抗体の反応性を変えてしまうことが原因であると言われている(Matalka et al.,2005)。さらに界面活性剤がサイトカインの測定値に与える影響は測定するサイトカインの種類によって異なっており(Rosengren et al.,2003)、肝組織中のサイトカインの測定は困難であると考え、本章では血漿中のIFNγおよびIL−4タンパク質の濃度を測定した。
IFNγおよびIL−4タンパク質の血漿中の濃度はハロタンの投与後24時間のBALB/cマウス以外は検出限界以下であり、これらのTh1およびTh2サイトカインの発現量の変動を評価することはできなかった。しかしハロタンによる肝障害が誘導されたマウスの血漿中のみから検出されており、ハロタンによる肝障害に対して、これらサイトカインが何らかの影響を与えていると考えられる。そこでTh1とTh2の応答性の変動の評価には肝臓のmRNAを用いることにした。
本実施例ではBALB/cマウスの肝臓のT−bet/GATA−3のmRNAの比がハロタンの投与後3、12および24時間で有意に減少しており、6時間においては有意ではないが減少する傾向があることを明らかにした。一方C57BL/6マウスの肝臓のmRNAにおいてT−bet/GATA−3比はハロタンの投与後3時間および6時間で有意に減少し、投与後24時間で有意に増加していた。
続いてハロタンの投与による肝臓のmRNAのT−bet/GATA−3比の変動が、Th1およびTh2サイトカインの発現を反映しているかどうかをTh1サイトカインであるIFNγおよびTh2サイトカインのIL−10のmRNAの発現の変動を測定することで評価した。本検討におけるBALB/cマウスの肝臓のIFNγ/IL−10のmRNAの比はハロタンの投与後3時間で有意に減少しており、ハロタンの投与後6、12および24時間においては減少する傾向があることを明らかにした。一方C57BL/6マウスの肝臓においてIFNγ/IL−10のmRNAの比はハロタンの投与後3および6時間で有意に減少し、投与後12および24時間においては増加する傾向にあることを明らかにした。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにおいてハロタン投与後のT−bet/GATA−3のmRNA比の変動はIFNγ/IL−10のmRNAの比の変動と類似しており、BALB/cマウスにおける比が投与後、常に減少していたことと、重篤な肝障害を発症することの間には何らかの関連があるのではないかと考えられる。
次に好中球の活性化やアポトーシスの誘導に関わるサイトカインであるTNFαについての評価を行った。本実施例におけるBALB/cマウスの肝臓のTNFα/β−actinのmRNAの比は対照群に比べ、有意な変動は認められなかったがハロタンの投与後12および24時間において増加傾向にあった。これはYouら(2006)の報告と類似した結果であったが増加の程度や有意差が見られた点などは本検討とは異なっていた。C57BL/6マウス肝においてTNFα/β−actin比はハロタンの投与後12時間で対照群と比べ2.9倍となり、有意な増加が認められた。ハロタンの投与後24時間においても増加傾向にあったが有意な差は認められなかった。ハロタンの投与後3および6時間においてはTNFα/β−actin比の変動は認められなかった。Youら(2006)の報告では12時間におけるTNFαは増加傾向にあったが有意差がつかない点が本検討と異なっていた。本検討においてはmRNAの定量をreal−time RT−PCRによって行い、補正には今回GAPDHよりもバラつきの少なかった(data not shown)β−actinを用いたがYouら(2006)はRT−PCRを行い、バンド強度を測定することでmRNAの定量を行っており、また補正にはGAPDHを用いている。このような実験条件の違いが本検討とYouら(2006)の報告の結果が違うことの一因として考えられる。
BALB/cマウスの肝臓のMIP−2/β−actinのmRNAの比はハロタンの投与後、時間依存的に増加し24時間で顕著に増加することを明らかにした。一方C57BL/6マウスの肝臓のMIP−2/β−actinのmRNAの比はハロタンの投与後、有意に増加または増加傾向にあったが、いずれの時間においてもハロタンの投与後24時間のBALB/cマウス程の変動は認められなかった。MIP−2は好中球の遊走に関わるケモカインであり、好中球の浸潤に起因する気道や肝臓の炎症は抗MIP−2抗体の処置で軽減されることが報告されている(Muruve et al.,1999;Laan et al.,1999)。肝臓におけるMIP−2の発現にはクッパー細胞が関与すること(Hatano et al.,2008)およびハロタン誘導性肝障害モデル動物の肝臓のクッパー細胞からトリフルオロアセチル化タンパク質が検出されること(Furst et al.,1997)から、本検討におけるハロタンを投与されたBALB/cマウスの肝臓への好中球の浸潤はMIP−2による好中球の遊走に起因するのではないかと考えられる。
また本検討と同様の投与方法で炎症性サイトカインであるTNFα、IL−1β、IL−6や好中球の遊走に関わるケモカインであるKCのmRNAの発現量がC57BL/6マウスに比べ、BALB/cマウスの肝臓において有意に増加することが報告されており(You et al.,2006)、ハロタンによる肝障害の誘導には様々な因子が関与していることが示唆された。
さらにTh1サイトカインとして肝臓におけるIL−2のmRNAの発現量の変化をBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスについて評価し、ハロタンの投与後の発現量の変化に系統差があるか検討した。BALB/cマウスでは投与後3時間をピークにIL−2/β−actin比の誘導が見られ(data not shown)、12時間で対照群程度にまで減少しており、C57BL/6マウスにおいても同様の変化が見られたため系統差が少なくハロタンによる肝障害の発症との関連が低いと判断し、詳細な検討を行わなかった。またハロタンの投与後3時間においてT−bet/β−actinのmRNAの比(data not shown)および本章において示したT−bet/GATA−3のmRNAの比が減少しているにも関わらずIL−2/β−actinのmRNAの比は増加していたため詳細な検討は、より典型的なTh1サイトカインであり様々な研究がなされているIFNγについて行うことにした。またヒトにおけるIL−2はマウスほど厳密にTh1が産生するわけではなく、種差が存在することが知られており(Mosmann and Sad,1996)マウスからヒトへの外挿がより困難であると考えたことも検討を中止した要因の1つである。
Th2サイトカインとして典型的なIL−4およびIL−5についても肝臓のmRNAの検出を試みたが測定条件を確立することができず、本実施例ではIL−10について評価することで代用した。IL−5についてはT細胞が豊富に存在する脾臓から抽出したmRNAを用いた場合には測定条件を確立できたことから、肝臓における発現量の低さが検出を困難にした原因の1つであると考えられる。しかしIL−10についてもヒトとマウスの間に種差が存在することが知られており(Mosmann and Sad,1996)ヒトにおいて本章で見られたようなIFNγ/IL−10比の変動が起こるとは限らないため、ヒトにおいて評価する場合にはIL−4、IL−5またはIL−9等を測定するなど、マウスとの種差を考慮する必要がある。
本実施例における検討はハロタンの投与によって肝障害が誘導され、血漿AST、ALTおよび肝組織像から判断される肝障害の重篤さ、免疫・炎症に関連する様々な遺伝子の発現の変化に系統差があることを明らかにした。次に脾臓に由来するサイトカインがハロタンによる肝障害に関連するかどうか検討するために実施例2ではハロタン投与後の脾臓のサイトカインの産生能の変化について検討した。
<実施例2:ハロタン投与による脾臓におけるサイトカイン産生能の変動解析>
実施例1ではハロタン抵抗性モデルと感受性モデルの作成とハロタンの投与による炎症・免疫関連遺伝子の発現変動を解析した。本章ではハロタンの投与によって脾臓におけるサイトカインの産生能が変動し、その変動の系統差が肝障害に関連しているかについてハロタン投与マウスの初代培養脾臓細胞をマイトジェン存在下で培養し、産生するサイトカインの量をELISAで測定することによって検討した。
(2−1−1)実験材料および実験試薬
PBSタブレットは宝酒造より購入した。ペニシリン−ストレプトマイシン(PC/ST)はICN Biochemicals(Aurora,OH)より購入した。HEPESは同仁化学研究所(Kumamoto,Japan)より購入した。Con Aおよび2−メルカプトエタノールはSigmaより購入した。RPMI1640培地は日水製薬(Tokyo, Japan)より購入した。ウシ胎児血清(FBS)はInvitrogen(Melbourne,Australia)より購入した。セルストレーナーはBDファルコン(Franklin Lakes,NJ)より購入した。Ready−SET−GO! Mouse Interleukin−4(IL−4)およびReady−SET−GO! Mouse Interferon gamma(IFN−g)はeBioscience,Incより購入した。イムノモジュール(ストリップ&フレーム)はNalge Nunc International K.K.より購入した。その他の試薬類は市販品の特級、生化学用または高速液体クロマトグラフィー用のものを用いた。また、以下に本章で使用した溶液等の組成を示した。
PBS(PC/ST)
PBSタブレット2錠に精製水を加えオートクレーブ (121℃、20分間)し、PC/STを4mL加え、全量を200mLとした。
1.25M HEPES
29.78gのHEPESに精製水を加え、水酸化ナトリウムを加えpH 7.3にあわせ、全量を100mLとした。
100mM 2−メルカプトエタノール
10μLの2−メルカプトエタノールに精製水を加え、全量を1430μLとした。
ACTB
411.18mgのTris(hydroxymethyl)amiomethaneに精製水を加え、塩酸を加えpH 7.65にあわせ、1.5gの塩化アンモニウムを加え、全量を200mLとした。
RPMI1640培地
5.1gのRPMI1640培地、5mLの1.25mM HEPES、0.25mLの100mM 2−メルカプトエタノールに精製水を加えオートクレーブ(121℃、20分間)し、25mLのFBS、12.5mLの8%NaHCO、5mLの3%グルタミン、10mLのPC/STを加え、全量を500mLとした。
(2−1−2)マウス脾臓細胞の培養
BALB/cマウス(雌性、7週齢;日本SLC)およびC57BL/6マウス(雌性、7週齢;日本SLC)を馴化飼育した後、体重を測定し、群分けを行った。ハロタン投与群にはハロタン600μmol/mouseを単回腹腔内投与した。対照群にはオリーブ油のみを2mL/mouse投与した。投与から24時間後に脾臓を採取し、PBS(PC/ST)で洗浄後、RPMI1640培地に細胞を懸濁した。ACTB中に細胞を懸濁し、室温で5分間静置後、800g、4℃で5分間遠心分離を行うことで赤血球を除き、24well plateに各wellあたり1.0x 10個の細胞を蒔いた。Con Aを最終濃度が1、3または5μg/mLとなるように加え、5%CO存在下、37℃で培養した。24時間後に上清を回収し、サンプルチューブに移しELISAで測定を行うまで−80℃で保存した。
(2−1−3)ELISAによる上清中のIFNγおよびIL−4タンパク質量の変動解析
実施例1の(1−1−2)で得られた上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度を実施例1の(1−1−4)の方法に従って測定した。
(2−2)実験結果
(2−2−1)ハロタン投与BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスの初代培養脾臓細胞のIFNγおよびIL−4の産生能の変動の解析
C57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を1、3または5μg/mLとして培養した。培養から24時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度を以下に示した(図10)。
上清中のIFNγ濃度はCon Aの濃度に依存して増加した。しかし上清中のIL−4の濃度はCon Aの濃度が1および3μg/mLでは検出できず、5μg/mLにおいてのみ検出された。Con Aの濃度が1または3μg/mLではIFNγとIL−4の両方を同時に検出することができないため、以下の検討はCon Aの濃度を5μg/mLとして行った。次にC57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を5μg/mLとして培養した。培養から24、48、72および96時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度以下に示した(図11)。
IFNγ濃度は24、48および72時間のいずれの培養時間においても大きな変動は見られなかった。しかし96時間において検出されたIFNγ濃度はそれ以前の時間と比べ、減少傾向にあった。一方IL−4濃度は24時間で最も高い値を示し、培養時間を長くするにつれて減少する傾向にあり、96時間においては検出限界以下となった。本検討の目的はサイトカインの産生能の変化を評価することであり、IL−4が培養時間に依存して上清中から消失することは結果の解釈を複雑にすると考えられる。よって以下の検討では培養時間をIL−4の上清中からの消失が最も少ないと考えられる24時間に設定し行うことにした。
BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにオリーブ油またはハロタンを投与し、投与から24時間後に採取した脾臓細胞をCon Aの最終濃度を5μg/mLとして培養した。培養から24時間後に回収した上清中のIFNγ濃度およびIL−4濃度の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図12)。
ハロタン投与BALB/cマウスの初代培養脾臓細胞のIFNγの産生量は対照群に比べ0.6倍に変動しており、有意な差が認められた。一方ハロタン投与C57BL/6マウスの初代培養脾臓細胞のIFNγの産生量に変動は認められなかった。またIFNγの産生量はハロタンの投与に依らずC57BL/6マウスに比べ、BALB/cマウスにおいて高い値を示していた。
ハロタン投与BALB/cマウスの初代培養脾臓細胞のIL−4の産生量は対照群に比べ0.6倍に変動しており、有意な差が認められた。一方ハロタン投与C57BL/6マウスの初代培養脾臓細胞のIL−4の産生量は対照群に比べ0.9倍に変動しており、有意な差が認められた。また対照群におけるIL−4の産生量はC57BL/6マウスに比べ、BALB/cマウスにおいて高い値を示していたが、ハロタン投与群においてはBALB/cマウスとC57BL/6マウスにおけるIL−4の産生量は同程度であった。
(2−3)結果の考察
実施例1ではハロタンによる肝障害の程度とその際の様々な遺伝子の発現量の変動に系統差が存在することを明らかにした。そこで実施例2においては脾臓に由来するサイトカインとハロタン誘導性肝障害との関連について検討を行った。
脾臓は厚い被膜で覆われた組織であり、赤い組織の赤脾髄と白い斑状の組織である白脾髄によって構成されている。赤脾髄は赤血球に富んだ組織であるのに対し、白脾髄はT細胞およびB細胞の集積した組織であり、生体の免疫機能を担っている。
閉塞性黄疸の実験動物モデルマウスにおいて、脾臓に由来するサイトカインが肝障害の重篤さに関連していること(Hong et al.,2007)、ラット肝臓の虚血再灌流障害による肝臓組織の障害、血清のASTとALT、アポトーシス、MPO活性、TNFαの発現および好中球の浸潤は脾臓の摘出によって軽減されること(Jiang et al.,2007)、T細胞によるラクトシル化ウシ血清アルブミンに対する免疫反応を介したマウスにおける肝障害が脾臓の摘出によって軽減されること(Xu et al.,2006)が報告されており、またI章においてハロタンによる肝障害の発症時に炎症や免疫に関連した遺伝子の変動や好中球の浸潤が認められたことからハロタンによる肝障害の発症に対して脾臓が何らかの関与をしていると考えられた。
肝臓、脾臓およびリンパ節などの組織から得たリンパ球やマクロファージなどの免疫担当細胞をCon Aなどのマイトジェンの存在下で培養することで様々なサイトカインが上清中に放出されることが知られている(Yang and Cook,2003;Hallquist et al.,2000)。細胞をマイトジェン存在下で培養し、上清中のタンパク質を定量するこのような手法はリンパ球のサイトカイン産生能の変動を評価する場合などに一般的に用いられている。Th1によって産生されるIFNγはTh1細胞上のIFNγ受容体に結合することで転写因子stat−1およびT−betを介してTh1を活性化するポジティブフィードバックループの存在が知られており、最も典型的なTh1サイトカインとして研究がなされている。またIL−4はTh2によって産生され、Th2細胞上のIL−4受容体に結合することで転写因子stat−6およびGATA−3を介してTh2を活性化するポジティブフィードバックループが知られている(Agnello et al.,2003)。これら2つのサイトカインの産生能の変動を測定し、Th1とTh2の応答性を評価した数多くの研究がこれまでに報告されている(Kang et al.,1999;Mokuno et al.,1999)。
本実施例での検討においてもTh1サイトカインとして上清中のIFNγタンパク質量をTh2サイトカインとして上清中のIL−4タンパク質量を定量することで、ハロタンの投与の有無および系統間のTh1とTh2の応答性の違いについて評価を行った。
本実施例において、ハロタンの投与がBALB/cマウスの初代培養脾臓細胞におけるIFNγの産生能を有意に低下させることが明らかとなった。一方C57BL/6マウスにハロタンを投与した場合は初代培養脾臓細胞のIFNγの産生能に変動は認められなかった。またIFNγの産生量はハロタンの投与に依らずC57BL/6マウスに比べ、BALB/cマウスにおいて高い値を示しておりBALB/cマウスの脾臓細胞はC57BL/6マウスの脾臓細胞よりもCon A処置に対してIFNγを産生しやすいのではないかと考えられる。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにCon Aを投与し血清中のIFNγを測定するとBALB/cマウスにおいてC57BL/6マウスよりも高値を示すことが報告されている(Mizuhara et al.,1998)。しかしCon Aによって誘導される肝障害はC57BL/6マウスにおいてBALB/cマウスよりも重篤であり、C57BL/6マウスはBALB/cマウスに比べIFNγによるiNOSの発現の誘導が起こりやすいことがCon Aによる肝障害の系統差の原因であると言われている(Mizuhara et al.,1998)。従って本検討においてC57BL/6マウスに比べ、BALB/cマウスがIFNγをより多く産生したことが、BALB/cマウスの方がC57BL/6マウスに比べTh1反応を起こしやすいことを意味しているとは限らず、またハロタンの投与によってBALB/cマウスにおけるIFNγの発現量が減少していること、今回と同様の投与によってiNOSのmRNAの発現量にはBALB/cマウスとC57BL/6マウスとの間に有意差がないこと(You,2006)から脾臓に由来するIFNγはハロタンによる肝障害の誘導に関与しないと考えられる。
本実施例において、ハロタンの投与がBALB/cマウスの初代培養脾臓細胞におけるIL−4の産生能を有意に低下させることが明らかとなった。またC57BL/6マウスにおいてもハロタンの投与が初代培養脾臓細胞のIL−4の産生能を僅かではあるが有意に低下させた。I章においてBALB/cマウスに対するハロタンの投与によって肝臓のT−bet/GATA−3およびIFNγ/IL−10のmRNAの比が減少したことから本章において検討した脾臓のIL−4の産生能は増加すると考えていたが、予想に反した結果となった。しかしBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスにおけるIFNγとIL−4の産生量の比はハロタンの投与によって変化しておらず(data not shown)、ラットにおいてハロタンはT細胞のマイトジェンに対する応答性を低下させること(Hamra and Yaksh,1996)から、ハロタンの投与は脾臓におけるTh1サイトカインとTh2サイトカインのバランスに影響を与えないこと、Con Aに対する応答性が減少し、IFNγおよびIL−4の産生量が低下することが明らかとなった。
肝毒性化合物を処置したマウスの脾臓細胞を無処置のマウスの肝実質細胞を共培養すると肝実質細胞からALTが漏出するが、膜を隔てて培養することでALTの漏出が有意に減少することから、脾臓のT細胞が肝障害を誘導するにはT細胞と肝実質細胞の接着が必要であるといわれている(Xu et al.,2006)。本章における検討では脾臓のT細胞が肝臓へ遊走され、肝実質細胞に接着し肝障害の発症に寄与する可能性を否定することはできないが、脾臓細胞におけるIFNγとIL−4の産生能はハロタンの投与によって減少しており、肝障害の誘導には脾臓が分泌するこれらサイトカインは関連しないのではないかと考えられる。
本実施例における検討はハロタンによって誘導される肝障害の感受性の高いBALB/cマウスにおいて脾臓細胞のIFNγおよびIL−4の産生能が低下することを明らかにした。次にI章で変動の見られた遺伝子の発現の変動がハロタンによって誘導される肝障害に影響しているかどうか評価するために、実施例3ではサイトカインの産生をPGE1の投与によって変動させ、肝障害の程度と遺伝子の発現変動について解析した。
<実施例3:PGE1投与がハロタン誘導性肝障害に与える影響の検討>
PGE1は肝障害モデル動物における様々なサイトカインの発現に影響を与えることで障害を軽減することが知られている。またPGE1は好中球の遊走、免疫複合体の貪食およびリソソームの放出を抑制すると言われている。そこでハロタン誘導性肝障害モデルマウスにPGE1を投与することでTh1、Th2サイトカインの発現や好中球の浸潤が変化し、肝障害の程度に影響が現れるかについて検討した。
(3−1−1)実験材料および実験試薬
PGE1のアピスタンディン注射用500μgは日本ケミファ(Tokyo,Japan)より購入した。その他の試薬は上述の(1−1−1)に準じた。
(3−1−2)マウスへのPGE1およびハロタンの投与
上述の(1−1−2)の方法に従ってBALB/cマウス(雌性、6週齢;日本SLC)にハロタンを投与した。PGE1投与群にはハロタンの投与から6、9および12時間後に2.5mg/kg body weightを単回腹腔内投与した。対照群には生理食塩水を500μL/kg body weightで投与した。ハロタンの投与から24時間後に下行大静脈より採血を行い(3−1−3)で使用した。同時に肝臓を採取し、1.15%塩化カリウム溶液で洗浄後、(3−1−4)で使用した。
(3−1−3)血漿中ASTおよびALT値の測定
上述の(3−1−2)で得られた全血を用いて血漿中のASTおよびALT値を上述の(1−1−3)の方法に従って測定した。
(3−1−4)Total RNAの調製
上述の(1−1−2)で得られた肝臓からtotal RNAを上述の(1−1−5)の方法に従って調製した。
(3−1−5)RT反応
上述の(3−1−4)で得られたtotal RNAを用い、上述の(1−1−6)の方法に従ってRT反応を行った。
(3−1−6)Real−time RT−PCR
上述の(3−1−5)で得られたcDNA試料を用い、上述の(1−1−7)の方法に従ってmRNAの定量を行った。
(3−2)実験結果
(3−2−1)ハロタン投与マウスの血漿試料の生化学検査
BALB/cマウスのハロタンおよびPGE1投与後の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図13)。
BALB/cマウスはハロタン投与後24時間で高いAST値を示すが、ASTの上昇はハロタンの投与から9時間後にPGE1を投与することによって有意に減少した。またハロタンの投与から6および12時間後にPGE1を投与することによってASTは減少する傾向にあった。BALB/cマウスはハロタン投与後24時間で高いALT値を示すが、ALTの上昇はハロタンの投与から6、9および12時間後にPGE1を投与することによって有意に減少した。
(3−2−2)ハロタン投与マウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの変動解析
ハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した。各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比(図14)、TNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比(図15)の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した。
ハロタンの投与後24時間で対照群と比べて有意に減少していた肝臓のT−bet/GATA−3のmRNAの比は、ハロタンの投与から6、9および12時間後にPGE1を投与することで有意に増加した。ハロタンの投与後24時間で対照群と比べて減少していた肝臓のIFNγ/IL−10のmRNAの比はハロタンの投与から6および9時間後にPGE1を投与することで増加する傾向にあった。しかしハロタンの投与から12時間後にPGE1を投与した場合には有意な減少が認められた。ハロタンの投与後24時間で対照群と比べて増加傾向にあった肝臓のTNFα/β−actinのmRNAの比はハロタンの投与から6、9および12時間後にPGE1を投与することで減少する傾向にあった。ハロタンの投与後24時間で対照群と比べて有意に増加していた肝臓のMIP−2/β−actinのmRNAの比はハロタンの投与から6および9時間後にPGE1を投与することで有意に減少した。またハロタンの投与から12時間後にPGE1を投与することで減少する傾向にあった。
(3−3)結果の考察
本実施例において用いたPGE1製剤はPGE1をα−シクロデキストリンで包接し、安定化したものであり、血小板凝集抑制作用および末梢血管拡張作用を有することから様々な末梢循環障害の治療に用いられている。
プロスタグランジンの細胞に対する保護作用に関しては古くから研究がなされており(Robert et al.,1979)、PGE1は四塩化炭素の投与によって誘導した劇症肝炎を軽減すること (Akamatsu et al.,2001)、LPSによって誘導される肝障害を軽減し、血清中のIL−12の減少、IL−10の増加および肝臓のリンパ球のIL−4の産生能を増加させることが報告されている(Mokuno et al.,1999)。またPGE1はクッパー細胞の活性化を抑制すること(Kayano et al.,1995)、好中球の細胞への接着を抑制すること(Lindemann et al.,2003)、ヒト好中球におけるROSの産生を抑制すること(Talpain et al.,1995)が報告されており、様々なサイトカインや好中球などを介した炎症および免疫反応との関連について研究がなされている。さらにPGE1は血行の改善作用を有しており、肝臓の虚血再灌流障害に対し保護的に働くことが報告されている(Hossain et al.,2003)。
本実施例ではPGE1がハロタン誘導性肝障害にどのような影響を与えるかを検討した。PGE1の投与方法については臨床における用法と同様に点滴静注を採用した報告が多数存在するが、Mokunoら(1999)の報告を参考に投与方法はより簡便な腹腔内単回投与とし、投与量もこの報告を参考に決定した。
実施例1ではBALB/cマウスにおいてハロタン投与後24時間で血漿中のASTおよびALTが顕著に上昇することを示した。本実施例においてPGE1の投与がハロタンによる肝障害にどのように影響を与えるかを検討したところ、PGE1の投与によって血漿中のASTおよびALTが有意に減少することが明らかとなった。
また実施例1ではハロタンを投与されたBALB/cマウスにおいて中心静脈周囲の肝細胞の脱落および多数のMPO陽性細胞の浸潤が認められ、好中球の肝臓への浸潤の増加が見られることを示した。本実施例においてPGE1の投与の影響を検討したところ中心静脈周囲の肝細胞の脱落が認められたのに対し、MPO陽性細胞の浸潤は減少しており、PGE1の投与は好中球が肝臓へ浸潤するのを抑制することを明らかにした(data not shown)。また好中球の遊走に関連するケモカインであるMIP−2のmRNAの発現量がBALB/cマウスに対するハロタンの投与によって顕著に増加することを実施例1において示したが、本実施例においてPGE1の投与がMIP−2の誘導を有意に抑制することを明らかにした。実施例1においてTNFαがハロタンの投与によって増加する傾向にあることを示したが、本実施例においてPGE1の投与がTNFαの誘導を抑制する傾向にあることが明らかとなった。
さらに実施例1においてT−bet/GATA−3およびIFNγ/IL−10のmRNAの発現量の比がBALB/cマウスに対するハロタンの投与によって有意に低下することを示したが、本実施例においてPGE1の投与がこれらの比の減少を抑制することを明らかにした。しかしハロタンの投与から12時間後にPGE1を投与した場合にはIFNγ/IL−10のmRNAの発現量の比はハロタンのみを投与した群よりも有意に減少していた。6時間および9時間後に投与した場合とは異なった変化であったが、LPS誘導性肝障害時においてPGE1の投与が血清中のIL−10濃度を増加させることが報告されており (Mokuno et al.,1999)、IL−10が誘導されやすい条件なのかも知れない。実際、ハロタン投与の12時間後にPGE1を投与した場合には6時間および9時間後に投与した場合と比べ、肝臓におけるIL−10/b−actinのmRNAの比が4倍程度高い値を示していた(data not shown)。
Th1とTh2のバランスを変動させることで様々な疾患が軽減または増悪されるという事象については多くの研究がなされており(Daniel et al.,2008;Kremer et al.,2006)、肝障害についてもTh1とTh2のバランスの関与が報告されている(Masubuchi et al.,2008;Mokuno et al.,1999)。またTNFα、IL−1β、MIP−2、KC、CINC−1など様々なサイトカインやケモカインが好中球の肝臓への浸潤に関与することが報告されており(Ramaiah and Jaeschke,2007; Jaeschke and Hasegawa,2006)、実施例1および本実施例の結果からハロタンによる肝障害についてもTh1とTh2のバランスやMIP−2の変動との関連があることが示唆された。
本実施例においてはマウスにおけるハロタンの体内動態や代謝物の生成の系統差およびPGE1の投与による影響を評価していないが、ハロタンの投与後12時間におけるBALB/cマウスおよびC57BL/6マウスの肝臓中のトリフルオロアセチル化タンパク質の生成に系統差がないことがYouら(2006)によって報告されており、本実施例においてハロタンの投与後12時間の時点でPGE1を投与した場合にも肝障害の軽減および遺伝子の発現の変動が見られたことから、トリフルオロアセチル化タンパク質の生成以降の炎症および免疫反応の違いがハロタンによる肝障害の系統差の原因であると考えられる。
本実施例における検討はハロタンによる肝障害はPGE1の投与によって軽減されることを明らかにした。また本実施例において検討した炎症・免疫に関連する遺伝子がハロタンによる肝障害の発症に関与する可能性が示唆された。マウスにCon Aを投与するとTNFαが放出され、TNFαがMIP−2を誘導することで肝臓への好中球の浸潤が増加すると言われており(Nakamura et al.,2001)、本実施例においてもハロタンによる肝障害時にはTNFαおよびMIP−2が誘導され、PGE1によって障害を軽減した場合には誘導の抑制が認められた。ハロタンの投与によってT−bet/GATA−3比やIFNγ/IL−10比が減少し、Th1とTh2のバランスがTh2側へと傾いていることが示唆されるにも関わらず、Th1が産生すると言われている (Afzali et al.,2007)TNFαの発現量は本実施例においてハロタンの投与によって増加傾向にあった。このことからTNFαがTh1以外の細胞において誘導されている可能性およびMIP−2の誘導にはTNFα以外の因子が関与することが示唆された。そこで、実施例4では、Th1とは別のTNFαを産生するT細胞であり、MIP−2の誘導に関与しているTh17についてハロタンによる肝障害との関与を検討した。
<実施例4:IL−17がハロタン誘導性肝障害に与える影響の検討>
近年新たに発見されたTh1およびTh2とは異なるThサブセットであるTh17はIL−17を産生することで様々な炎症反応と関連することが報告されている。Th17はTh1やTh2と互いに抑制し合う関係にあると言われており、ハロタンの投与によるTh1サイトカインやTh2サイトカインの変動によって何らかの影響を受けているまたはTh17サイトカインがTh1やTh2を変動させている可能性がある。またTh17はTNFαを産生すること、IL−17はMIP−2を誘導することが報告されている。Th17とハロタン誘導性肝障害との関連を明らかにするために、本実施例ではTh17によって主に産生されるIL−17を抗IL−17モノクローナル抗体によって中和し、ハロタン誘導性肝障害に与える影響についての検討を行った。
(4−1−1)実験材料および実験試薬
Ready−SET−GO! Mouse Interleukin−17A(IL−17A)はeBioscience,Incより購入した。抗マウスIL−17モノクローナル抗体500 μgおよびラットIgG2aアイソタイプコントロールはR&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)より購入した。その他の試薬は上述の(1−1−1)に準じた。
(4−1−2)ELISAによる血漿中のIL−17タンパク質量の変動解析
上述の(1−1−2)および(3−1−2)で得られた全血から(1−1−3)の方法に従って血漿を調製し、Ready−SET−GO! Mouse Interleukin−17A(IL−17A)を用いて1−1−4の方法に従って血漿中のIL−17濃度の測定を行った。
(4−1−3)マウスへの抗IL−17抗体およびハロタンの投与
上述の(1−1−2)の方法に従ってBALB/cマウス(雌性、6週齢;日本SLC)にハロタンを投与した。抗IL−17抗体投与群およびIgG2a投与群にはハロタンの投与の9時間後に100μg/mouseを単回腹腔内投与した。ハロタンの投与から24時間後に下行大静脈より採血を行い上述の(4−1−4)で使用した。同時に肝臓を採取し、1.15%塩化カリウム溶液で洗浄後、上述の(4−1−5)で使用した。
(4−1−4)血漿中ASTおよびALT値の測定
上述の(4−1−3)で得られた血漿中のASTおよびALT値を上述の(1−1−3)の方法に従って測定した。
(4−1−5)Total RNAの調製
上述の(4−1−3)で得られた肝臓からtotal RNAを上述の(1−1−5)の方法に従って調製した。
(4−1−6)RT反応
上述の(4−1−5)で得られたtotal RNAを用い、上述の(1−1−6)の方法に従ってRT反応を行った。
(4−1−7)Real−time PCR
上述の(4−1−6)で得られたcDNA試料を用い、上述の(1−1−7)の方法に従ってmRNAの定量を行った。
(4−2)実験結果
(4−2−1)ELISAによる血漿中のIL−17の定量
ハロタンの投与後24時間のマウス血漿中のIL−17タンパク質量の変動をELISAを用いて検討した。血漿中IL−17濃度の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図16)。
BALB/cマウスはハロタン投与後24時間において対照群と比べ、血漿中のIL−17濃度の顕著な増加が認められた。一方C57BL/6マウスにおいてはハロタンの投与後24時間において対照群との間に有意な違いは認められなかった。BALB/cマウスにおけるハロタン投与後24時間の血漿中のIL−17濃度の上昇はハロタンの投与から6時間および9時間後にPGE1を投与することで有意に減少した。またハロタンの投与から12時間後にPGE1を投与した場合には有意ではないが血漿中のIL−17濃度は減少する傾向にあった。
(4−2−2)ハロタン投与マウスの血漿試料の生化学検査
BALB/cマウスのハロタンおよび抗IL−17抗体投与後の血漿試料中のASTおよびALTの平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した(図17)。
BALB/cマウスにおいてハロタン投与後24時間で顕著なAST値の増加が認められるが、ハロタンの投与から9時間後に抗IL−17抗体を投与することによってAST値は有意に減少した。一方IgG2aの投与ではAST値に有意な変化は見られなかった。またBALB/cマウスにおいてハロタン投与後24時間で顕著なALT値の増加が認められるが、ハロタンの投与から9時間後に抗IL−17抗体を投与することによってALT値は有意に減少した。一方IgG2aの投与ではALT値に有意な変化は見られなかった。
(4−2−3)ハロタン投与マウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの変動解析
ハロタン投与後24時間のマウス肝における炎症・免疫に関与する遺伝子のmRNAの発現変動を、real−time RT−PCRを用いて検討した。各サンプルについてT−bet、GATA−3、IFNγ、IL−10、TNFα、MIP−2およびβ−actinのmRNAの量を測定し、T−bet量にはGATA−3量を、IFNγ量にはIL−10量を、TNFαおよびMIP−2量にはβ−actin量を補正に用いて対照群に対するT−bet/GATA−3比、IFNγ/IL−10比(図18)、TNFα/β−actin比およびMIP−2/β−actin比(図19)の平均値に標準偏差を付した結果を以下に示した。
対照群に比べ、ハロタン投与群、IgG2a投与群において肝臓のT−bet/GATA−3のmRNAの比の有意な減少が認められた。また抗IL−17抗体投与群においても有意ではないがT−bet/GATA−3のmRNAの比の減少が認められた。しかしハロタン投与群とIgG2a投与群および抗IL−17抗体投与群との間にT−bet/GATA−3のmRNAの比の有意な差は見られなかった。
対照群に比べ、ハロタン投与群、IgG2a投与群および抗IL−17抗体投与群において肝臓のIFNγ/IL−10のmRNAの比の有意な減少が認められた。しかしハロタン投与群とIgG2a投与群および抗IL−17抗体投与群との間にIFNγ/IL−10のmRNAの比の有意な差は見られなかった。
対照群に比べ、ハロタン投与群およびIgG2a投与群においてTNFα/β−actinのmRNAの比は増加する傾向にあった。IgG2a投与群に比べ、抗IL−17抗体投与群においてTNFα/β−actinのmRNAの比の有意な減少が認められ、対照群と同程度となった。
対照群に比べ、ハロタン投与群においてMIP−2/β−actinのmRNAの比は増加する傾向にあった。抗IL−17抗体投与群においてMIP−2/β−actinのmRNAの比はハロタン投与群に比べ、減少する傾向にあったが、IgG2a投与群ではそのような減少傾向は認められなかった。
(4−3)結果の考察
IL−17にはIL−17AからIL−17Fまでの6つのファミリー分子が存在することが知られている(Moseley et al.,2003)。IL−17(IL−17A)についてはこれまで様々な研究がなされており、IL−17は感染性微生物から宿主を守る役割を果たすが(Kelly et al.,2005;Ye et al.,2001;Huang et al.,2004)、一方でIL−17の誘導はリウマチ性関節炎、結腸炎および多発性硬化症などの自己免疫性疾患との関連が示唆されている(Langrish et al.,2005;Kotake et al.,1999)。IL−17はKC(CXCL1)、MIP−2(CXCL2)およびLIX(CXCL5)などのケモカインを強く誘導すること(Prause et al.,2003; Ruddy et al.,2004;Shen et al.,2005;Witowski et al.,2000)および好中球の浸潤を促進させ様々な組織の炎症に関与することが報告されている(Caldwell et al.,2005;Miyamoto et al.,2003)。IL−17Fが様々な細胞から産生されるのに対し、IL−17Aの主な産生細胞はTh17であると言われている。
Th1およびTh2とは異なるサブセットとして近年発見されたTh17は自己免疫性疾患、アレルギー疾患および細胞外増殖性細菌に対する応答などにおいて中心的な役割を果たしていることが明らかとなっており(Ishigame et al.,2009)、またこれまでTh1病であると考えられてきたリウマチ性関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患および乾癬が実際はTh17に関連していることが報告されている(Weaver et al.,2007)。IFNγやIL−4はTh17がIL−17を産生するのを抑制しており(Park et al.,2005b)、IL−17もTh1およびTh2サイトカインを抑制することからTh1、Th2およびTh17は互いに制御し合う関係にあることが示唆されている(Schnyder−Candrian et al.,2006;Yi et al.,2008)。
本実施例に用いたC57BL/6マウスとBALB/cマウスとではTh1とTh2の応答性に系統差があり、微生物の感染に対する抵抗性が異なること古くから知られているが(Heinzel et al.,1989)、Th17の応答に関する系統差については明らかになっていない。しかしBALB/cマウスとC57BL/6マウスとではリウマチ性関節炎(Nandakumar and Holmdahl,2006)および多発性硬化症(Kigerl et al.,2006)などの免疫性疾患の実験動物モデルの病態が異なることが報告されており、Th17の性質に違いがある可能性は十分に考えられる。また両マウスにおいてTh1とTh2の性質が異なることが、間接的にTh17の制御に異なる影響を与えているかも知れない。
実施例3までにBALB/cマウスとC57BL/cマウスとではハロタン誘導性肝障害の発症に系統差があり、感受性を示すBALB/cマウスにおいて特にTh1とTh2の応答性がTh2にシフトしている可能性があることを示してきた。しかしTh2の応答が優位であるにも関わらず、Th1によって産生すると言われているTNFαの肝臓におけるmRNAの発現はハロタンを投与したBALB/cマウスにおいて誘導される傾向にあり、Th1以外の細胞によるTNFαの発現が誘導されていることが示唆された。TNFαがMIP−2の誘導に関与することが報告されており(Nakamura et al.,2001)、実施例1〜3においてTNFαの下流の因子については検討を行っていないが、ハロタンを投与することで見られたTNFαの誘導はBALB/cマウスとC57BL/6マウスにおいて同程度であり、MIP−2の顕著な誘導はTNFαのみでは説明することはできないと考えられた。そこで本実施例ではTNFαを発現し、IL−17を介してMIP−2を含む様々なケモカインの誘導に関与するTh17について検討を行った。
最初に肝臓にTh17が浸潤している可能性を考え、肝臓におけるIL−17およびIL−17FのmRNAの発現量の変化について検討を行ったがIL−17は測定条件を確立することができず、IL−17Fについてはハロタンの投与によって顕著な変化はみられなかった(data not shown)。RORγtはTh17のマスター遺伝子であると言われており (Ivanov et al.,2006)、Th17への分化において中心的な役割を果たしているが胸腺以外の組織には発現しておらず、肝臓においてもRORγtのmRNAの発現は確認されていない(He et al.,1998)。本実施例ではハロタンの投与によって肝障害を誘導した場合には肝臓においてIL−17のmRNAの発現を確認できることを期待したが、それに反した結果となり、様々な細胞によって産生されるIL−17Fの発現のみ確認された。IL−17FはIL−17ファミリーの中では最もIL−17と相同性が高いと言われているが、Th17関連疾患に対する寄与は低いと考えられており(Ishigame et al.,2009)、肝臓におけるIL−17およびIL−17FのmRNAに関する検討は保留とした。
次にELISAによる肝臓中および血漿中のIL−17タンパク質の検出を行い、BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスに対してハロタンを投与することによる変動を検討した。肝臓のライゼートを調製し、ELISAを行ったところ全てのサンプルにおいて定量限界である500pg/mLを超えてしまい、測定することができなかった(data not shown)。組織中のサイトカインをELISAによって測定することは難しく、報告が非常に限られているが、それは組織からの抽出に用いる界面活性剤の選択によって非常に影響を受けやすいためだと言われている(Matalka et al.,2005)。しかし本実施例においては抽出に界面活性剤は用いていないため、抽出効率は悪くなったことが予想されるが抗体の反応性に影響は与えていないと考えられる。肝臓においてIL−17タンパク質が非常に高濃度に存在している、または肝臓中にELISAによる測定に影響を与える物質があるのかも知れない。一方、血漿中のIL−17タンパク質については、BALB/cマウスにおいてハロタン投与後24時間で有意な増加が認められ、C57BL/6マウスにおいてはハロタンの投与による変動は認められなかった。血漿中のIL−17タンパク質はBALB/cマウスにおいてのみ変動が見られ、ハロタンによる肝障害の発症または増悪に寄与している可能性が示唆された。
IL−17がMIP−2を誘導することで肝臓に好中球が浸潤し、ハロタン誘導性肝障害が発症または増悪するという仮説を検証するために抗マウスIL−17モノクローナル抗体をBALB/cマウスに投与した。LPSによって誘導した肺の炎症や虚血再灌流による肝障害において、抗IL−17抗体はMIP−2などのケモカインの誘導や好中球の浸潤を抑制することが報告されている(Ferretti et al.,2003;Caldwell et al.,2005)。その他いくつかの報告を参考に抗IL−17抗体の投与方法を決定した (Miyamoto et al.,2003;Park et al.,2005b)。
本実施例においてハロタン誘導性肝障害を発症するBALB/cマウスに抗IL−17抗体を投与することによって血漿中のASTおよびALTが有意に減少することを明らかにした。一方、IgG2aの投与ではASTおよびALTの有意な減少は見られなかった。よってハロタン誘導性肝障害の軽減は抗IL−17抗体に特異的な事象であり、IL−17はハロタンによる肝障害の誘導に関与することが示された。本実施例においてハロタンの投与後に抗IL−17抗体を投与することで肝臓のT−bet/GATA−3のmRNAの比やIFNγ/IL−10のmRNAの比に有意な変化は認められなかった。実施例1において、これらの比がハロタンの投与後3時間から減少することが示されており、抗IL−17抗体を投与しても変動が見られないのは抗体の投与が遅かったためかも知れない。しかし血漿中のIL−17タンパク質はハロタンの投与後3、6および12時間では変動が見られなかったことから(data not shown)、Th1とTh2の変動はIL−17以外の経路によって誘導されたため、抗体による影響が現れなかったとも考えられる。一方、抗IL−17抗体の投与によって肝臓のTNFα/β−actinのmRNAの比はIgG2a投与に比べ有意に減少しており、ハロタンの投与によるTNFαの発現の変動はTh1ではなくTh17に由来することが示唆された。また肝臓のMIP−2/β−actinのmRNAの比も抗IL−17抗体の投与によって減少傾向にあり、IL−17によって誘導されたMIP−2がハロタンによる肝障害に関与することが示唆された。抗IL−17抗体を投与したマウスについて肝障害の程度とMIP−2のmRNAの発現量を個体ごとに評価すると、MIP−2のmRNAの誘導が強く抑制されたマウスほどASTおよびALTが低値を示しており(data not shown)、MIP−2が肝障害の発症または増悪に寄与するという仮説を支持していた。IL−17によって誘導される他のケモカインについてもMIP−2と同様に変動し、肝障害に寄与している可能性がある。今回、抗IL−17抗体の投与時間の詳細な検討を行っていないため、適切な時間に投与することでハロタンによる肝障害を、より軽減できると考えられる。
血漿中のIL−17タンパク質、肝臓中のTNFαおよびMIP−2のmRNAは、実施例1で見られたTh1とTh2の変動の後で誘導されており、ハロタンによるIL−17、TNFαおよびMIP−2の誘導はTh1とTh2の影響を受けている可能性が示唆された。また抗IL−17抗体を用いた検討によってハロタンによる肝障害の誘導に対してIL−17が寄与することが明らかとなった。IL−17を主に産生するTh17の系統差の存在は明らかとはされていないが、BALB/cマウスとC57BL/6マウスのハロタンに対する感受性の違いはTh17の応答性に系統差があることを示唆している。野生型のマウスにおいてはBALB/cマウスがハロタンによって肝障害を発症し、C57BL/6マウスが耐性を示すがC57BL/6マウスのIL−10をノックアウトすることで肝障害が発症するようになり、また遺伝子組み換えIL−10タンパク質を野生型のBALB/cマウスに投与すると肝障害が軽減されることが報告されている(Feng et al.,2009)。またIL−10はTh17サイトカインの産生を抑制すると言われており (Gu et al.,2008)、これらの報告は本実施例において明らかとなったハロタン誘導性肝障害に対するIL−17の関与を支持していると考えられる。
虚血再灌流による肝障害、アルコール性肝炎、αナフチルイソチオシアネートおよびアセトアミノフェンによる肝障害などが好中球の浸潤によって引き起こされる、または悪化することが報告されており(Ramaiah and Jaeschke,2007)、さらにラニチジン投与によってヒトで発症する個体特異的な肝障害の実験モデルラットにおいても好中球の浸潤が認められている(Luyendyk et al.,2003)。虚血再灌流による肝障害についてはIL−17が関与することを示唆した研究がなされており(Caldwell et al.,2005)、ヒトにおける個体特異的な肝障害とIL−17が関与する可能性が示唆される。また血清中のIL−17がヒトにおける急性肝障害の有用なマーカーとなり得ること(Yasumi et al.,2007)が報告されており、肝障害に対するIL−17の重要性を支持している。
しかしTh17の分化についてヒトとマウスとでは完全に異なっていると言われており(Acosta−Rodriguez et al.,2007)、この他にもTh17の性質については様々な種差の存在が報告されている(Romagnani,2008)。よって実験動物で得られた結果をヒトへ外挿する場合にはこのような種差に関して考慮しなければならないと考えられる。
ヒトおよびマウスにおいてハロタンによる肝障害時に様々な自己抗体が生成されるが、血清から自己抗体が検出されるのは肝障害の発症後であり、ハロタンによる肝障害は自己抗体の生成とは異なるメカニズムによって誘導されることが示唆されている(Njoku et al.,2005)。ハロタンによる肝障害の発症は複数回曝露の例が多いことから、自己抗体は肝障害の発症ではなく増悪に寄与しているのかも知れない。本研究ではハロタンによる急性肝障害動物モデルにおいてIL−17を介したメカニズムの存在を明らかにしており、肝障害の発症に対するTh17の寄与が考えられる。
IL−17の上流にはstat−3やRORγtなどの転写因子や核内受容体があり(Nishihara et al.,2007; Ivanov et al.,2006)、下流にはp38 MAPK、ERK、C/EBP、NF−κBおよびAP−1など様々な経路が存在しており、遺伝子の発現を調節している(Cortez et al.,2007)。またp38 MAPKとNF−κBはIL−10ノックアウトマウスにハロタンを投与することで活性化されることがわかっている(Feng et al.,2009)。p38 MAPKおよびNF−κB がMIP−2の誘導に関与することが報告されており(Hung et al.,2006;Galloway et al.,2008)、これらの経路のハロタンによる肝障害への寄与が考えられる。IL−17に関連する様々な因子について検討することで様々な肝障害のメカニズムが明らかになるのではないかと考えられる。
<実施例1〜4の総括>
薬物誘導性肝障害は医薬品の開発が中止となる主要な原因であり、多くの医薬品が肝障害に関連すると言われている。しかしアセトアミノフェンの過剰投与による肝障害のように古くから研究がなされているものを除き、そのメカニズムは断片的にしか明らかにされていない。また非臨床試験で用いられる実験動物とヒトとの間にある種差およびヒトにおける個体差が薬物誘導性肝障害の発症の予測を困難にしている。免疫担当細胞であるT細胞の機能の違いが様々な疾患の発症に関連していると考えられるが、薬物誘導性肝障害の種差や系統差については、一部の薬物についてのみ研究がなされているに過ぎない。
実施例1ではハロタンによる肝障害モデル動物の作成、肝組織像の評価および炎症や免疫に関連した遺伝子の発現変動について検討した。ハロタンに対し高い感受性を示すBALB/cマウスにおいて肝組織の障害、好中球の浸潤、Th1とTh2のバランスの変化およびMIP−2の発現の顕著な誘導が認められた。
実施例2ではハロタンによる肝障害に対する脾臓細胞の寄与を調べるために初代培養脾臓細胞のIFNγおよびIL−4の産生能の変化をマイトジェンに対する応答性を測定することで評価した。BALB/cマウスにおいて脾臓細胞のIFNγおよびIL−4の産生能はハロタンの投与によって減少することを示唆する結果となり、脾臓に由来するこれらサイトカインの肝障害に対する寄与は低いと考えられた。
実施例3ではPGE1をBALB/cマウスに投与することでTh1とTh2のバランスや好中球の浸潤が変化し、肝障害の程度に影響が現れるかについて検討した。PGE1の投与によって肝障害の軽減、好中球の浸潤の抑制、変動していたTh1とTh2のバランスの回復およびMIP−2の誘導の抑制が認められた。Th1とTh2のバランスおよび好中球の肝臓への浸潤については肝障害の発症に関わることが報告されている(Ramaiah and Jaeschke,2007;Mokuno et al.,1999;Masubuchi et al.,2008)。
実施例4ではハロタンによる肝障害に対するIL−17の影響について検討した。抗IL−17抗体によるIL−17の中和はMIP−2の発現を抑制し、肝障害を軽減することが明らかとなった。
図20は、実施例1〜4の実験結果によって解明されたハロタンによって誘導される肝障害のメカニズムについて説明するための概念図である。この図に示すように、実施例1〜4によってハロタン誘導性肝障害の発症にはTh1とTh2のバランスの変動およびIL−17を介したMIP−2の誘導による好中球の肝臓への浸潤が関与しており、これらの変動はPGE1の投与によって抑制されることを明らかにした。実施例1〜4は薬物誘導性肝障害のメカニズムの解明に寄与すると考えられる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
たとえば、上記実施例では、哺乳動物としてマウスを用いたが、特に限定する趣旨ではなく、哺乳動物であれば、ヒト、ラット、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどをはじめとする任意の種について、同様の実験を行えば、同様の結果を得ることができることは、生化学、医学、薬学などの技術分野の研究者であれば技術常識に基づいて容易に理解できることが明らかである。
<参考文献>
Acosta−Rodriguez EV, Napolitani G, Lanzavecchia A, and Sallusto F (2007) Interleukins 1βand 6 but not transforming growth factor−βare essential for the differentiation of interleukin 17−producing human T helper cells. Nat Immunol 8: 942−949.
Afzali B, Lombardi G, Lechler RI, and Lord GM (2007) The role of T helper 17 (Th17) and regulatory T cells (Treg) in human organ transplantation and autoimmune disease. Clin Exp Immunol 148: 32−46.
Agnello D, Lankford CS, Bream J, Morinobu A, Gadina M, O’Shea JJ, and Frucht DM (2003) Cytokines and transcription factors that regulate T helper cell differentiation: new players and new insights. J Clin Immunol 23: 147−161.
Akamatsu K, Yamasaki Y, Nishikawa M, Takakura Y, and Hashida M (2001) Synthesis and pharmacological activity of a novel water−soluble hepatocyte−specific polymeric prodrug of prostaglandin E1 using lactosylated poly(L−glutamic hydrazide) as a carrier. Biochem Pharmacol 62: 1531−1536.
Bajt ML, Knight TR, Lemasters JJ, and Jaeschke H (2004) Acetaminophen−induced oxidant stress and cell injury in cultured mouse hepatocytes: protection by N−acetyl cysteine. Toxicol Sci 80: 343−349.
Bourdi M, Chen W, Peter RM, Martin JL, Buters JT, Nelson SD, and Pohl LR (1996) Human cytochrome P450 2E1 is a major autoantigen associated with halothane hepatitis. Chem Res Toxicol 9: 1159−1166.
Caldwell CC, Okaya T, Martignoni A, Husted T, Schuster R, and Lentsch AB (2005) Divergent functions of CD4+ T lymphocytes in acute liver inflammation and injury after ischemia−reperfusion. Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 289: G969−976.
Chakir H, Wang H, Lefebvre DE, Webb J, and Scott FW (2003) T−bet/GATA−3 ratio as a measure of the Th1/Th2 cytokine profile in mixed cell populations: predominant role of GATA−3. J Immunol Methods 278: 157−169.
Cortez DM, Feldman MD, Mummidi S, Valente AJ, Steffensen B, Vincenti M, Barnes JL, and Chandrasekar B (2007) IL−17 stimulates MMP−1 expression in primary human cardiac fibroblasts via p38 MAPK− and ERK1/2−dependent C/EBP−β, NF−κB, and AP−1 activation. Am J Physiol Heart Circ Physiol 293: H3356−3365.
Cousins MJ, Plummer JL, and Hall PD (1989) Risk factors for halothane hepatitis. Aust N Z J Surg 59: 5−14.
Daniel C, Sartory NA, Zahn N, Radeke HH, and Stein JM (2008) Immune modulatory treatment of trinitrobenzene sulfonic acid colitis with calcitriol is associated with a change of a T helper (Th) 1/Th17 to a Th2 and regulatory T cell profile. J Pharmacol Exp Ther 324: 23−33.
Feng D, Wang Y, Xu Y, Luo Q, Lan B, and Xu L (2009) Interleukin 10 deficiency exacerbates halothane induced liver injury by increasing interleukin 8 expression and neutrophil infiltration. Biochem Pharmacol 77: 277−284.
Ferretti S, Bonneau O, Dubois GR, Jones CE, and Trifilieff A (2003) IL−17, produced by lymphocytes and neutrophils, is necessary for lipopolysaccharide−induced airway neutrophilia: IL−15 as a possible trigger. J Immunol 170: 2106−2112.
Finotto S, Neurath MF, Glickman JN, Qin S, Lehr HA, Green FH, Ackerman K, Haley K, Galle PR, Szabo SJ, Drazen JM, De Sanctis GT, and Glimcher LH (2002) Development of spontaneous airway changes consistent with human asthma in mice lacking T−bet. Science 295: 336−338.
Fukunaga J, Abe M, Murai A, Akitake Y, Hosokawa M, and Takahashi M (2007) Comparative study to elucidate the mechanism underlying the difference in airway hyperresponsiveness between two mouse strains. Int Immunopharmacol 7: 1852−1861.
Furst SM, Luedke D, and Gandolfi AJ (1997) Kupffer cells from halothane−exposed guinea pigs carry trifluoroacetylated protein adducts. Toxicology 120: 119−132.
Galloway E, Shin T, Huber N, Eismann T, Kuboki S, Schuster R, Blanchard J, Wong HR, and Lentsch AB (2008) Activation of hepatocytes by extracellular heat shock protein 72. Am J Physiol Cell Physiol 295: C514−520.
Gu Y, Yang J, Ouyang X, Liu W, Li H, Yang J, Bromberg J, Chen SH, Mayer L, Unkeless JC, and Xiong H (2008) Interleukin 10 suppresses Th17 cytokines secreted by macrophages and T cells. Eur J Immunol 38: 1807−1813.
Hallquist N, Hakki A, Wecker L, Friedman H, and Pross S (2000) Differential effects of nicotine and aging on splenocyte proliferation and the production of Th1− versus Th2−type cytokines. Proc Soc Exp Biol Med 224: 141−146.
Hamra JG and Yaksh TL (1996) Halothane inhibits T cell proliferation and interleukin−2 receptor expression in rats. Immunopharmacol Immunotoxicol 18: 323−336.
Hatano M, Sasaki S, Ohata S, Shiratsuchi Y, Yamazaki T, Nagata K, and Kobayashi Y (2008) Effects of Kupffer cell−depletion on Concanavalin A−induced hepatitis. Cell Immunol 251: 25−30.
He YW, Deftos ML, Ojala EW, and Bevan MJ (1998) RORγt, a novel isoform of an orphan receptor, negatively regulates Fas ligand expression and IL−2 production in T cells. Immunity 9: 797−806.
Heinzel FP, Sadick MD, Holaday BJ, Coffman RL, and Locksley RM (1989) Reciprocal expression of interferonγ or interleukin 4 during the resolution or progression of murine leishmaniasis. Evidence for expansion of distinct helper T cell subsets. J Exp Med 169: 59−72.
Hoet P, Buchet JP, Sempoux C, Haufroid V, Rahier J, and Lison D (2002) Potentiation of 2,2−dichloro−1,1,1−trifluoroethane (HCFC−123)−induced liver toxicity by ethanol in guinea−pigs. Arch Toxicol 76: 707−714.
Hong JY, F Sato E, Hiramoto K, Nishikawa M, and Inoue M (2007) Mechanism of Liver Injury during Obstructive Jaundice: Role of Nitric Oxide, Splenic Cytokines, and Intestinal Flora. J Clin Biochem Nutr 40: 184−193.
Hossain MA, Izuishi K, and Maeta H (2003) Effect of short−term administration of prostaglandin E1 on viability after ischemia/reperfusion injury with extended hepatectomy in cirrhotic rat liver. World J Surg 27: 1155−1160.
Huang W, Na L, Fidel PL, and Schwarzenberger P (2004) Requirement of interleukin−17A for systemic anti−Candida albicans host defense in mice. J Infect Dis 190: 624−631.
Hung CC, Chang CT, Tian YC, Wu MS, Yu CC, Pan MJ, Vandewalle A, and Yang CW (2006) Leptospiral membrane proteins stimulate pro−inflammatory chemokines secretion by renal tubule epithelial cells through toll−like receptor 2 and p38 mitogen activated protein kinase. Nephrol Dial Transplant 21: 898−910.
Ishigame H, Kakuta S, Nagai T, Kadoki M, Nambu A, Komiyama Y, Fujikado N, Tanahashi Y, Akitsu A, Kotaki H, Sudo K, Nakae S, Sasakawa C, and Iwakura Y (2009) Differential roles of interleukin−17A and −17F in host defense against mucoepithelial bacterial infection and allergic responses. Immunity 30: 108−119.
Ivanov II, McKenzie BS, Zhou L, Tadokoro CE, Lepelley A, Lafaille JJ, Cua DJ, and Littman DR (2006) The orphan nuclear receptor RORγt directs the differentiation program of proinflammatory IL−17+ T helper cells. Cell 126: 1121−1133.
Jaeschke H and Hasegawa T (2006) Role of neutrophils in acute inflammatory liver injury. Liver Int 26: 912−919.
Jenkins RE, Kitteringham NR, Goldring CE, Dowdall SM, Hamlett J, Lane CS, Boerma JS, Vermeulen NP, and Park BK (2008) Glutathione−S−transferase pi as a model protein for the characterisation of chemically reactive metabolites. Proteomics 8: 301−315.
Jiang H, Meng F, Li W, Tong L, Qiao H, and Sun X (2007) Splenectomy ameliorates acute multiple organ damage induced by liver warm ischemia reperfusion in rats. Surgery 141: 32−40.
Kang BY, Song YJ, Kim KM, Choe YK, Hwang SY, and Kim TS (1999) Curcumin inhibits Th1 cytokine profile in CD4+ T cells by suppressing interleukin−12 production in macrophages. Br J Pharmacol 128: 380−384.
Kayano K, Sakaida I, Kubota M, Yasunaga M, and Okita K (1995) Functional differences between activated and normal rat liver macrophages: LPS uptake capacity by flow cytometric analysis in contrast with TNFα release. Liver 15: 253−259.
Kelly MN, Kolls JK, Happel K, Schwartzman JD, Schwarzenberger P, Combe C, Moretto M, and Khan IA (2005) Interleukin−17/interleukin−17 receptor−mediated signaling is important for generation of an optimal polymorphonuclear response against Toxoplasma gondii infection. Infect Immun 73: 617−621.
Kenna JG, Martin JL, and Pohl LR (1992) The topography of trifluoroacetylated protein antigens in liver microsomal fractions from halothane treated rats. Biochem Pharmacol 44: 621−629.
Kharasch ED, Hankins D, Mautz D, and Thummel KE (1996) Identification of the enzyme responsible for oxidative halothane metabolism: implications for prevention of halothane hepatitis. Lancet 347: 1367−1371.
Kidd P (2003) Th1/Th2 balance: the hypothesis, its limitations, and implications for health and disease. Altern Med Rev 8: 223−246.
Kigerl KA, McGaughy VM, and Popovich PG (2006) Comparative analysis of lesion development and intraspinal inflammation in four strains of mice following spinal contusion injury. J Comp Neurol 494: 578−594.
Komiyama Y, Nakae S, Matsuki T, Nambu A, Ishigame H, Kakuta S, Sudo K, and Iwakura Y (2006) IL−17 plays an important role in the development of experimental autoimmune encephalomyelitis. J Immunol 177: 566−73.
Kotake S, Udagawa N, Takahashi N, Matsuzaki K, Itoh K, Ishiyama S, Saito S, Inoue K, Kamatani N, Gillespie MT, Martin TJ, and Suda T (1999) IL−17 in synovial fluids from patients with rheumatoid arthritis is a potent stimulator of osteoclastogenesis. J Clin Invest 103: 1345−1352.
Kremer M, Hines IN, Milton RJ, and Wheeler MD (2006) Favored T Helper 1 Response in a Mouse Model of Hepatosteatosis Is Associated With Enhanced T Cell−Mediated Hepatitis. Hepatology 44: 216−227.
Laan M, Cui ZH, Hoshino H, Lotvall J, Sjostrand M, Gruenert DC, Skoogh BE, and Linden A (1999) Neutrophil recruitment by human IL−17 via C−X−C chemokine release in the airways. J Immunol 162: 2347−2352.
Langrish CL, Chen Y, Blumenschein WM, Mattson J, Basham B, Sedgwick JD, McClanahan T, Kastelein RA, and Cua DJ (2005) IL−23 drives a pathogenic T cell population that induces autoimmune inflammation. J Exp Med 201: 233−240.
Lind RC and Gandolfi AJ (1997) Late dimethyl sulfoxide administration provides a protective action against chemically induced injury in both the liver and the kidney. Toxicol Appl Pharmacol 142: 201−207.
Lindemann S, Gierer C, and Darius H (2003) Prostacyclin inhibits adhesion of polymorphonuclear leukocytes to human vascular endothelial cells due to adhesion molecule independent regulatory mechanisms. Basic Res Cardiol 98: 8−15.
Luyendyk JP, Maddox JF, Cosma GN, Ganey PE, Cockerell GL, and Roth RA (2003) Ranitidine treatment during a modest inflammatory response precipitates idiosyncrasy−like liver injury in rats. J Pharmacol Exp Ther 307: 9−16.
Madan A and Parkinson A (1996) CHARACTERIZATION OF THE NADPH−DEPEMDENT COVALENT BINDING OF [14C]HALOTHANE TO HUMAN LIVER MICROSOMES: A Role for Cytochrome P4502E1 at Low Substrate Concentrations. Drug Metab Dispos 24: 1307−1313.
Masubuchi Y, Sugiyama S, and Horie T (2008) Th1/Th2 cytokine balance as a determinant of acetaminophen−induced liver injury. Chem Biol Interact, in press
Matalka KZ, Tutunji MF, Abu−Baker M, and Abu Baker Y (2005) Measurement of protein cytokines in tissue extracts by enzyme−linked immunosorbent assays: application to lipopolysaccharide−induced differential milieu of cytokines. Neuro Endocrinol Lett 26: 231−236.
Miyamoto M, Prause O, Sjostrand M, Laan M, Lotvall J, and Linden A (2003) Endogenous IL−17 as a mediator of neutrophil recruitment caused by endotoxin exposure in mouse airways. J Immunol 170: 4665−4672.
Mizuhara H, Kuno M, Seki N, Yu WG, Yamaoka M, Yamashita M, Ogawa T, Kaneda K, Fujii T, Senoh H, and Fujiwara H (1998) Strain Difference in the Induction of T−Cell Activation−Associated, Interferon Gamma−Dependent Hepatic Injury in Mice. Hepatology 27: 513−519.
Mokuno Y, Takano M, Matsuguchi T, Nishimura H, Washizu J, Naiki Y, Nimura Y, and Yoshikai Y (1999) Prostaglandin E1 Protects Against Liver Injury Induced by Escherichia coli Infection via a Dominant Th2−Like Response of Liver T Cells in Mice. Hepatology 30: 1464−1472.
Moseley TA, Haudenschild DR, Rose L, and Reddi AH (2003) Interleukin−17 family and IL−17 receptors. Cytokine Growth Factor Rev 14: 155−174.
Mosmann TR and Sad S (1996) The expanding universe of T−cell subsets: Th1, Th2 and more. Immunol Today 17: 138−146.
Mosmann TR, Cherwinski H, Bond MW, Giedlin MA, and Coffman RL (1986) Two types of murine helper T cell clone. I. Definition according to profiles of lymphokine activities and secreted proteins. J Immunol 136: 2348−2357.
Moult PJ and Sherlock S (1975) Halothane−related hepatitis. A clinical study of twenty−six cases. Q J Med 44: 99−114.
Muruve DA, Barnes MJ, Stillman IE, and Libermann TA (1999) Adenoviral gene therapy leads to rapid induction of multiple chemokines and acute neutrophil−dependent hepatic injury in vivo. Hum Gene Ther 10: 965−976.
Nakamura K, Okada M, Yoneda M, Takamoto S, Nakade Y, Tamori K, Aso K, and Makino I (2001) Macrophage inflammatory protein−2 induced by TNF−alpha plays a pivotal role in concanavalin A−induced liver injury in mice. J Hepatol 35: 217−224.
Nakamura Y, Ghaffar O, Olivenstein R, Taha RA, Soussi−Gounni A, Zhang DH, Ray A, and Hamid Q (1999) Gene expression of the GATA−3 transcription factor is increased in atopic asthma. J Allergy Clin Immunol 103: 215−222.
Nandakumar KS and Holmdahl R (2006) Arthritis induced with cartilage−specific antibodies is IL−4−dependent. Eur J Immunol 36: 1608−1618.
Nishihara M, Ogura H, Ueda N, Tsuruoka M, Kitabayashi C, Tsuji F, Aono H, Ishihara K, Huseby E, Betz UA, Murakami M, and Hirano T (2007) IL−6−gp130−STAT3 in T cells directs the development of IL−17+ Th with a minimum effect on that of Treg in the steady state. Int Immunol 19: 695−702.
Njoku DB, Talor MV, Fairweather D, Frisancho−Kiss S, Odumade OA, and Rose NR (2005) A novel model of drug hapten−induced hepatitis with increased mast cells in the BALB/c mouse. Exp Mol Pathol 78: 87−100.
Ouyang W, Ranganath SH, Weindel K, Bhattacharya D, Murphy TL, Sha WC, and Murphy KM (1998) Inhibition of Th1 development mediated by GATA−3 through an IL−4−independent mechanism. Immunity 9: 745−755.
Park BK, Kitteringham NR, Maggs JL, Pirmohamed M, and Williams DP (2005a) The role of metabolic activation in drug−induced hepatotoxicity. Annu Rev Pharmacol Toxicol 45: 177−202.
Park H, Li Z, Yang XO, Chang SH, Nurieva R, Wang YH, Wang Y, Hood L, Zhu Z, Tian Q, and Dong C (2005b) A distinct lineage of CD4 T cells regulates tissue inflammation by producing interleukin 17. Nat Immunol 6: 1133−1141.
Park HJ, Lee CM, Jung ID, Lee JS, Jeong YI, Chang JH, Chun SH, Kim MJ, Choi IW, Ahn SC, Shin YK, Yeom SR, and Park YM (2008) Quercetin regulates Th1/Th2 balance in a murine model of asthma. Int Immunopharmacol, in press
Prause O, Laan M, Lotvall J, and Linden A (2003) Pharmacological modulation of interleukin−17−induced GCP−2−, GROα and interleukin−8 release in human bronchial epithelial cells. Eur J Pharmacol 462: 193−198.
Ramaiah SK and Jaeschke H (2007) Role of neutrophils in the pathogenesis of acute inflammatory liver injury. Toxicol Pathol 35: 757−766.
Rengarajan J, Szabo SJ, and Glimcher LH (2000) Transcriptional regulation of Th1/Th2 polarization. Immunol Today 21: 479−483.
Robert A, Nezamis JE, Lancaster C, and Hanchar AJ (1979) Cytoprotection by prostaglandins in rats. Prevention of gastric necrosis produced by alcohol, HCl, NaOH, hypertonic NaCl, and thermal injury. Gastroenterology 77: 433−443.
Romagnani S (2008) Human Th17 cells. Arthritis Res Ther 10: 206.
Rosengren S, Firestein GS, and Boyle DL (2003) Measurement of inflammatory biomarkers in synovial tissue extracts by enzyme−linked immunosorbent assay. Clin Diagn Lab Immunol 10: 1002−1010.
Ruddy MJ, Shen F, Smith JB, Sharma A, and Gaffen SL (2004) Interleukin−17 regulates expression of the CXC chemokine LIX/CXCL5 in osteoblasts: implications for inflammation and neutrophil recruitment. J Leukoc Biol 76: 135−144.
Schnyder−Candrian S, Togbe D, Couillin I, Mercier I, Brombacher F, Quesniaux V, Fossiez F, Ryffel B, and Schnyder B (2006) Interleukin−17 is a negative regulator of established allergic asthma. J Exp Med 203: 2715−2725.
Shen F, Ruddy MJ, Plamondon P, and Gaffen SL (2005) Cytokines link osteoblasts and inflammation: microarray analysis of interleukin−17− and TNFα−induced genes in bone cells. J Leukoc Biol 77: 388−399.
Shi Z, Wakil AE, and Rockey DC (1997) Strain−specific differences in mouse hepatic wound healing are mediated by divergent T helper cytokine responses. Proc Natl Acad Sci USA 94: 10663−10668.
Shier P, Hofstra CL, Ma XJ, Wu Y, Ngo K, and Fung−Leung WP (2000) Tbt−1, a new T−box transcription factor induced in activated Th1 and CD8+ T cells. Immunogenetics 51: 771−778.
Siebler J, Wirtz S, Klein S, Protschka M, Blessing M, Galle PR, and Neurath MF (2003) A Key Pathogenic Role for the STAT1/T−bet Signaling Pathway in T−Cell−Mediated Liver Inflammation. Hepatology 38: 1573−1580.
Sobue S, Nomura T, Ishikawa T, Ito S, Saso K, Ohara H, Joh T, Itoh M, and Kakumu S (2001) Th1/Th2 cytokine profiles and their relationship to clinical features in patients with chronic hepatitis C virus infection. J Gastroenterol 36: 544−551.
Splinter W (2002) Halothane: the end of an era? Anesth Analg 95: 1471.
Spracklin DK, Hankins DC, Fisher JM, Thummel KE, and Kharasch ED (1997) Cytochrome P450 2E1 is the principal catalyst of human oxidative halothane metabolism in vitro. J Pharmacol Exp Ther 281: 400−411.
Spracklin DK, Thummel KE, and Kharasch ED (1996) HUMAN REDUCTIVE HALOTHANE METABOLISM IN VITRO IS CATALYZED BY CYTOCHROME P450 2A6 AND 3A4. Drug Metab Dispos 24: 976−983.
Szabo SJ, Kim ST, Costa GL, Zhang X, Fathman CG, and Glimcher LH (2000) A novel transcription factor, T−bet, directs Th1 lineage commitment. Cell 100: 655−669.
Tagawa Y, Sekikawa K, and Iwakura Y (1997) Suppression of concanavalin A−induced hepatitis in IFNγ(−/−) mice, but not in TNFα(−/−) mice: role for IFNγ in activating apoptosis of hepatocytes. J Immunol 159: 1418−1428.
Talpain E, Armstrong RA, Coleman RA, and Vardey CJ (1995) Characterization of the PGE receptor subtype mediating inhibition of superoxide production in human neutrophils. Br J Pharmacol 114: 1459−1465.
Tanaka Y, Takahashi A, Watanabe K, Takayama K, Yahata T, Habu S, and Nishimura T (1996) A pivotal role of IL−12 in Th1−dependent mouse liver injury. Int Immunol 8: 569−576.
Tirmenstein MA and Nelson SD (1989) Subcellular binding and effects on calcium homeostasis produced by acetaminophen and a nonhepatotoxic regioisomer, 3−hydroxyacetanilide, in mouse liver. J Bio Chem 264: 9814?9819.
Uetrecht J (2007) Idiosyncratic drug reactions: current understanding. Annu Rev Pharmacol Toxicol 47: 513−539.
Usui T (2007) Transcription factors that regulate helper T cell differentiation. Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi 30: 419−427.
Weaver CT, Hatton RD, Mangan PR, and Harrington LE (2007) IL−17 family cytokines and the expanding diversity of effector T cell lineages. Annu Rev Immunol 25: 821−852.
Witowski J, Pawlaczyk K, Breborowicz A, Scheuren A, Kuzlan−Pawlaczyk M, Wisniewska J, Polubinska A, Friess H, Gahl GM, Frei U, and Jorres A (2000) IL−17 stimulates intraperitoneal neutrophil infiltration through the release of GRO alpha chemokine from mesothelial cells. J Immunol 165: 5814−5821.
Xu L, Zhao Y, Qin Y, and Xu Q (2006) A novel model of acute liver injury in mice induced by T cell−mediated immune response to lactosylated bovine serum albumin. Clin Exp Immunol 144: 125−133.
Yang M and Cook ME (2003) Dietary conjugated linoleic acid decreased cachexia, macrophage tumor necrosis factor α production, and modifies splenocyte cytokines production. Exp Biol Med (Maywood) 228: 51−58.
Yasumi Y, Takikawa Y, Endo R, and Suzuki K (2007) Interleukin−17 as a new marker of severity of acute hepatic injury. Hepatol Res 37: 248−254.
Ye P, Rodriguez FH, Kanaly S, Stocking KL, Schurr J, Schwarzenberger P, Oliver P, Huang W, Zhang P, Zhang J, Shellito JE, Bagby GJ, Nelson S, Charrier K, Peschon JJ, and Kolls JK (2001) Requirement of interleukin 17 receptor signaling for lung CXC chemokine and granulocyte colony−stimulating factor expression, neutrophil recruitment, and host defense. J Exp Med 194: 519−527
Yi T, Zhao D, Lin CL, Zhang C, Chen Y, Todorov I, LeBon T, Kandeel F, Forman S, and Zeng D (2008) Absence of donor Th17 leads to augmented Th1 differentiation and exacerbated acute graft−versus−host disease. Blood 112: 2101−2110.
You Q, Cheng L, Reilly TP, Wegmann D, and Ju C (2006) Role of Neutrophils in a Mouse Model of Halothane−Induced Liver Injury. Hepatology 44: 1421−1431.
Zhang DH, Cohn L, Ray P, Bottomly K, and Ray A (1997) Transcription factor GATA−3 is differentially expressed in murine Th1 and Th2 cells and controls Th2−specific expression of the interleukin−5 gene. J Biol Chem 272: 21597−21603.

Claims (21)

  1. プロスタグランジンEを含む、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  2. 前記プロスタグランジンEが、プロスタグランジンE1である、
    請求項1記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  3. 前記薬物誘導性の肝障害が、アレルギー性肝障害である、
    請求項1または2記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  4. 前記薬物誘導性肝障害が、好中球浸潤性肝障害である、
    請求項1または2記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  5. 前記肝障害が、ハロタンによって誘導される肝障害である、
    請求項1乃至4いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  6. 前記肝障害が、インターロイキン17によって誘導される肝障害である、
    請求項1乃至4いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  7. 前記肝障害が、CXCケモカインによって誘導される肝障害である、
    請求項1乃至4いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  8. 前記CXCケモカインが、MIP−2である、
    請求項7記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  9. プロスタグランジンEを含む、インターロイキン17発現抑制剤。
  10. 抗インターロイキン17抗体を含む、哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  11. 前記抗インターロイキン17抗体が、モノクローナル抗体である、
    請求項10記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  12. 前記肝障害が、アレルギー性肝障害である、
    請求項10または11記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  13. 前記肝障害が、好中球浸潤性肝障害である、
    請求項10または11記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  14. 前記肝障害が、ハロタンによって誘導される肝障害である、
    請求項10乃至13いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  15. 前記肝障害が、インターロイキン17によって誘導される肝障害である、
    請求項10乃至14いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  16. 前記肝障害が、CXCケモカインによって誘導される肝障害である、
    請求項10乃至14いずれかに記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  17. 前記CXCケモカインが、MIP−2である、
    請求項16記載の薬物誘導性肝障害の抑制薬。
  18. 医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法であって、
    前記候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、
    前記哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、
    を含む、予測方法。
  19. 医薬品の候補化合物のアレルギー性薬物誘導性肝障害の予測をする方法であって、
    前記候補化合物を、哺乳動物に投与する工程と、
    前記哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、
    を含む、予測方法。
  20. アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法であって、
    前記アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、
    前記候補化合物を、前記哺乳動物に投与する工程と、
    前記哺乳動物の体内におけるインターロイキン17の発現量を測定する工程と、
    を含む、スクリーニング方法。
  21. アレルギー性薬物誘導性肝障害の治療における医薬品の候補化合物のスクリーニング方法であって、
    前記アレルギー性薬物誘導性肝障害を誘導するアレルギー性薬物を、哺乳動物に投与する工程と、
    前記候補化合物を、前記哺乳動物に投与する工程と、
    前記哺乳動物の体内におけるCXCケモカインの発現量を測定する工程と、
    を含む、スクリーニング方法。
JP2009075280A 2009-03-25 2009-03-25 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬 Pending JP2010229041A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009075280A JP2010229041A (ja) 2009-03-25 2009-03-25 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009075280A JP2010229041A (ja) 2009-03-25 2009-03-25 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010229041A true JP2010229041A (ja) 2010-10-14

Family

ID=43045197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009075280A Pending JP2010229041A (ja) 2009-03-25 2009-03-25 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010229041A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013066412A (ja) * 2011-09-21 2013-04-18 Nagase & Co Ltd 肝機能障害の抑制又は改善に有効な物質のスクリーニング方法及びそれに用いるプライマーセット
US12214019B2 (en) 2014-05-15 2025-02-04 Rani Therapeutics, Llc Pharmaceutical compositions and methods for fabrication of solid masses comprising polypeptides and/or proteins

Non-Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013037519; Biochemical Pharmacology,2001,Vol.62,No.11,p.1531-1536 *
JPN6013037522; Hepatology,1999,Vol.30,No.6,p.1464-1472 *
JPN6013037524; The Journal of Immunology,2003,Vol.170,No.4,p.2106-2112 *
JPN6013037527; Life Sciences,2005,Vol.78,No.2,p.134-139 *
JPN6013037530; 肝臓,2007,Vol.48,No.Suppl.1,p.A128 ○-94 *
JPN6013037534; 現代医療,1990,Vol.22,No.3,p.886-891 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013066412A (ja) * 2011-09-21 2013-04-18 Nagase & Co Ltd 肝機能障害の抑制又は改善に有効な物質のスクリーニング方法及びそれに用いるプライマーセット
US12214019B2 (en) 2014-05-15 2025-02-04 Rani Therapeutics, Llc Pharmaceutical compositions and methods for fabrication of solid masses comprising polypeptides and/or proteins

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2016334051B2 (en) Anti-TREM2 antibodies and methods of use thereof
ES2319866T3 (es) Anticuerpos de especificidad dual y metodos de fabricacion y uso.
CN1820026B (zh) 作为选择性IFN-γ途径抑制剂的人抗IFN-γ中和性抗体
US9304127B2 (en) Anti-adrenomedullin (ADM) antibody or anti-ADM antibody fragment for use in therapy
ES2347840T3 (es) Il-17rcx4 soluble y procedimiento de utilizacion en la inflamacion.
CN103864934A (zh) 抗il-22ra抗体和结合伴侣以及在炎症中的使用方法
CA2577631A1 (en) Methods and compositions for treating allergic inflammation
CN108602857A (zh) 重组IgG Fc多聚体
NZ624873A (en) Anti-adrenomedullin (adm) antibody or anti-adm antibody fragment or anti-adm non-ig scaffold for prevention or reduction of organ dysfunction or organ failure in a patient having a chronic or acute disease or acute condition
JP2009543579A (ja) 抗炎症反応のための標的としてのWSX−1/p28
CN102459340A (zh) 粒性白血细胞-巨噬细胞菌落-刺激因子(gm-csf)中和抗体
TW201831193A (zh) 轉形生長因子β(TGF-β)誘餌受體
KR20070095949A (ko) 자가면역 장애의 치료 방법
WO2021233885A1 (en) Mimotope peptides of the spike protein from the sars-cov-2 virus
EP3214442A1 (en) Treatment of gastrointestinal inflammation and psoriasis and asthmainflammation and psoriasis a
EA030319B1 (ru) Антитела, нейтрализующие rsv, mpv и pvm, и их применения
JP6080763B2 (ja) モエシンモジュレーターおよびその使用
WO2011133931A1 (en) Use of il-27 antagonists for treating inflammatory bowel disease
US20200317753A1 (en) Humanized Antibodies Against Enterovirus 71
CN105602908A (zh) 水貂γ-干扰素单克隆抗体及其在检测水貂γ-干扰素中的应用
CN115433285A (zh) 靶向冠状病毒的抗体及其应用
JP2010229041A (ja) 哺乳動物の薬物誘導性肝障害の抑制薬
ES2353117T3 (es) Antagonistas de il-17a e il-17f y métodos de uso de los mismos antagonistas de il-17a e il-17f y métodos de uso de los mismos.
MX2007004374A (es) Proteina quimerica.
BR112020025504A2 (pt) Anticorpo que induz a imunotolerância, linfócito induzido, e agente de terapia celular método terapêutico usando o linfócito induzido

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130730

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20130730

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20130730

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20130920

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20130926

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20131217