添付の図面を参照し、本発明にかかる脱臭剤の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す脱臭剤10Aの斜視図であり、図2は、脱臭剤10Aの製造工程の一例を示す図である。脱臭剤10Aは、硫酸第1鉄粉体11(鉄イオン含有材)とジルコニウム鉱石粉体12(β線発生材)とデンプン13(固化材)と植物繊維粉砕物14(香料保持材)との混合物(図示せず)から作られている。脱臭剤10Aは、混合物を造粒(成形)し、それを乾燥させた後、それに液体香料15(エッセンシャルオイル等)を滲入させることによって製造される。脱臭剤10Aは、略円柱状のペレット状に成形されている。脱臭剤10Aは、その長さL1が0.5mm以上かつ20.0mm以下の範囲にあり、その直径L2が0.5mm以上かつ10.0mm以下の範囲にある。脱臭剤10Aは、デンプン13が糊化しておらず、水に容易に溶けて分解する水解性を有する。
硫酸第1鉄粉体11は、2価の鉄イオンを多く含み、2価の鉄イオンの化学反応を利用することで、臭気を脱臭する作用を有する。なお、硫酸第1鉄粉体11に代えて、2価の鉄イオンを含む塩化鉄を使用することができ、また、硫酸第1鉄粉体11と塩化鉄とを所定の割合で混合した鉄イオン含有複合粉体を使用することもできる。塩化鉄は、硫酸第1鉄粉体11と同様に、2価の鉄イオンの化学反応を利用することで、臭気を脱臭する作用を有する。2価の鉄イオンは、それが酸化、還元するときに、アンモニアを硫安に変化させ、硫化水素を硫化鉄に変化させるとともに、メルカプタンを二酸化炭素に分解し、それら物質が原因となる臭気を脱臭する。
たとえば、アンモニア臭の場合は、アンモニア分子が硫酸第1鉄の表面に付着した後、アンモニア分子が2価の鉄イオンと化学的に反応し、諸体化合物に変化して安定することによりアンモニア臭が脱臭される。アンモニア分子の場合、鉄の対イオンである硫酸イオン、硝酸イオン、塩酸イオン等の陰イオンから塩化化合物が生成し、さらに、2価の鉄イオンがアミン錯塩を形成する。この化合物では鉄分子1に対してアンモニア分子6が取り込まれるから、アンモニア臭が効果的に除去される。硫酸第1鉄や塩化鉄が酸化し、2価の鉄イオンが3価のそれに変化すると、硫酸第1鉄の脱臭作用は失われる。
ジルコニウム鉱石粉体12は、それに微量に含まれる自然放射性物質からβ線が放出される。ジルコニウム鉱石粉体12では、β線を利用することで、硫酸第1鉄粉体11や塩化鉄粉体の酸化を阻止する。なお、ジルコニウム鉱石粉体12に代えて、陰イオンパウダーを使用することができ、また、ジルコニウム鉱石粉体12と陰イオンパウダーとを所定の割合で混合したβ線発生複合粉体を使用することもできる。陰イオンパウダーは、それに微量に含まれる自然放射性物質からβ線が放出される。陰イオンパウダーでは、β線を利用することで、硫酸第1鉄粉体11や塩化鉄粉体の酸化を阻止する。2価の鉄イオンは不安定な状態にあり、空気中において短期間に安定した3価の鉄イオンに変化するが、2価の鉄イオンにβ線が照射されると、3価への変化が阻止され、2価から3価への自然変化を防ぐことができる。硫酸第1鉄粉体11や塩化鉄粉体を利用することで、硫酸第1鉄粉体や塩化鉄粉体に含まれる鉄イオンの2価の状態を長期間維持することができる。
デンプン13は、固化媒質となり、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とをそれの中に固定する。脱臭剤10Aでは、デンプン13の形態維持機能を利用してペレット形態が維持される。脱臭剤10Aでは、デンプン13の中に硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と植物繊維粉砕物14とが略均一に分散している。なお、デンプン13に代えて、ポテトパルプ(乾燥デンプンかす)またはカルボキシメチルセルロースを使用することができ、また、デンプン13とカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。ポテトパルプとカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。ポテトパルプは、粉体であり、デンプン質を多く含む。
デンプン13には、原料デンプンや加工デンプンのうちの少なくとも一方を使用することができる。原料デンプンとしては、とーもろこし澱粉(コーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉のうちの少なくとも一つを使用することができる。加工デンプンには、澱粉誘導体、澱粉分解物、アルファ化澱粉のうちの少なくとも一つを使用することができる。澱粉誘導体としては、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋澱粉のうちの少なくとも一つを使用することができる。澱粉分解物としては、焙焼デキストリンおよびブリティッシュガム、酸素変性デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉のうちの少なくとも一つを使用することができる。
植物繊維粉砕物14は、その平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲にある。植物繊維粉砕物14の平均粒径が2.0mmを超過すると、流動性を示さない植物繊維粉砕物14の分散性が著しく低下し、植物繊維粉砕物14がデンプン13の中に均一に分散せず、脱臭剤10Aに植物繊維粉砕物14が集中する箇所が生じてしまい、その箇所において脱臭剤10Aが容易に崩壊する場合がある。なお、植物繊維粉砕物14としては、平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲に粉砕された紙粉砕物や平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲に粉砕された木くず粉砕物、平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲に粉砕されたパルプ粉砕物を使用することができる。また、紙粉砕物と木くず粉砕物とを所定の割合で混合した複合粉砕物、紙粉砕物とパルプ粉砕物とを所定の割合で混合した複合粉砕物、紙粉砕物と木くず粉砕物とパルプ粉砕物とを所定の割合で混合した複合粉砕物、木くず粉砕物とパルプ粉砕物とを所定の割合で混合した複合粉砕物を使用することもできる。
紙粉砕物や木くず粉砕物、パルプ粉砕物は、粉砕機を使用して紙(バージン紙)や木くず、パルプを粉砕して作ることができる。紙粉砕物は、紙を製造するときに発生する破紙や損紙を粉砕して作ることもできる。また、使用済みの紙カップや食品紙トレー、ミルクカートン等の食品用紙食器を粉砕して作ることもできる。紙には、バージン紙の他に、古紙を使用することもできる。古紙には、新聞古紙や雑誌古紙、印刷古紙、包装古紙、段ボール古紙、OA古紙等を使用することができる。紙や食品用紙食器には、蛍光物質や重金属、インク成分を含まないものが使用されている。紙や食品用紙食器が塩素や蛍光漂白剤を含む場合は、脱塩素処理や脱蛍光漂白剤処理を施して塩素と蛍光漂白剤とを排除する。パルプには、機械的パルプ、化学的機械パルプ、半化学的パルプ、化学的パルプのうちのいずれか1つ、または、それらを所定の割合で混合したパルプを使用することができる。パルプには、木材パルプを使用することが好ましいが、木材パルプにぼろパルプや茎かんパルプ、靭皮パルプのうちの少なくとも1つを混合したパルプを使用することもできる。紙粉砕物や木くず粉砕物、パルプ粉砕物の平均粒径は、ふるい分け法によって測定した値である。
液体香料には、天然香料と合成香料とのうちの少なくとも一方を使用することができる。液体香料としては、水溶性および油溶性のいずれであってもよい。それら香料には、モノテルペン炭化水素類、モノテルペンアルコール類、フェノール類、フェノールメチルエーテル類、セスキテルペン炭化水素類、セスキテルペンアルコール類、ケトン類、ラクトン類、カルボン酸類、ジテルペンアルコール類、アルデヒド類、エステル類、オキサイド(炭化物)類のうちのいずれか1つまたはそれらを所定の割合でブレンドした混合物を使用することができる。また、それら香料には、乳香やポプリオイル(ジャスミン、ベルガモット、ラベンダー、ローズ、ローズ・ド・メイ)を使用することもできる。
モノテルペン炭化水素類の主な芳香成分には、ピネン、リモネン、ミルセン、テルピネン、テルピノレン、δ−3−カレン、トリサイクレン、カンフェン、サビネン、オシメン、シメン、フエランドレン、パラシメン、ヒマカレン、カラレンがある。モノテルペンアルコール類の主な芳香成分には、シトロネロール、ゲラニオール、テルピネン−4−ol、ツヤノール−4、メントール、イソプレゴール、リナロール、テルピネオール、ネロール、ボルネオール、ネロリドールがある。フェノール類の主な芳香成分には、アネトール、カルバクロール、オイゲノール、チモール、パラクレゾール、カビコールがある。フェノールメチルエーテル類の主な芳香成分には、トランスアネトール、サフロール、チャビコール・メチルエーテル、パラクレゾール・メチルエーテル、イソオイゲノール・メチルエーテル、オイゲノール・メチルエーテルがある。
セスキテルペン炭化水素類の主な芳香成分には、αガイエン、カジネン、カマズレン、βカリオフィレン、ビサボレン、セリネン、βセスキフェランドレン、クルゼノン、セイチュレン、デハイドロアズリン、ゲルマクレンD、コバエン、セドレン、ファネッセン、ジンジベレン、ツヨブセン、リンデステレン、αパチュレン、ブルネッセンがある。セスキテルペンアルコール類の主な芳香成分には、セドロール、カジノール、サンタロール、グロブロール、ピリディフロロール、ネロリドール、パチュロール、レドール、キャトロール、エレモール、スパスレロールがある。
ケトン類の主な芳香成分には、カンファー、アセトフェノン、ジャスモン、ノートカトン、ビノカンフォン、ベルベノン、ピペリトン、メントン、フェンコン、カルボン、プレゴン、アトラントン、ピノカルボン、メチルイソブチルがある。ラクトン類の主な芳香成分には、クマリン、フロクマリン、ジャスミンラクトン、ジャスモン、ベルガプテンがある。カルボン酸類の主な芳香成分には、安息香酸、ケイ皮酸がある。ジテルペンアルコール類の主な芳香成分には、スクラレオール、フィトール、イソフィトールがある。
アルデヒド類の主な芳香成分には、シトラール、シトロネラール、ミルテナール、アセトアルデヒド、ペリルアルデヒド、ピペロナール、ワニリン、デカナール、ノナナール、ヘキサナール、ヘプタナールがある。エステル類の主な芳香成分には、酢酸テルピニル、酢酸リナリル、酢酸ネリル、酢酸オイゲノール、酢酸ゲラニル、アンゼリカ酸イソブチル、酢酸ボルニル、酢酸ミルテニル、安息香酸コンフィニル、安息香酸シンナミル、安息香酸メチル、安息香酸ベンジル、蟻酸ゲラニル、蟻酸シトロネリル、アンゼリカ酸メチル、酢酸ベンジルがある。オキサイド(炭化物)類の主な芳香成分には、カリオフィレンオキサイド、ビサボロールオキサイド、1,8シネオール、リナロールオキサイド、ローズオキサイドがある。
図2に基づいて、この脱臭剤10Aの製造手順の一例を説明すると、以下のとおりである。脱臭剤10Aの製造は、紙または木くずを粉砕して植物繊維粉砕物14を作る粉砕工程と(図示せず)、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14とを混練して所定量の水分を含有する混合物を作る混練工程16と、その混合物をペレット状に成形して複数のペレット状の脱臭剤10Aを作る造粒工程17と、脱臭剤10Aを乾燥させる乾燥工程18と、脱臭剤10Aに液体香料15(エッセンシャルオイル)を滲み込ませる香料滲入工程19とから構成される。粉砕工程には、粉砕機が設置されている。粉砕工程では、粉砕機に紙と木くずとのうちの少なくとも一方が投入され、それらが粉砕機によって粉砕され、植物繊維粉砕物14が作られる。粉砕機には、ボールミル、媒体攪拌ミル、ローラミル等を使用することができる。
混練工程16には、リボンミキサー20(第1混練機)と、ミキサー20の下方(下流側)に位置する攪拌ホッパー21(第2混練機)とが設置されている。リボンミキサー20は、設備塔22の上に載せられている。リボンミキサー20は、混練槽23と軸24と攪拌リボン25とを有する。混練槽23の底部には、攪拌ホッパー21につながるダクト26が連結されている。軸24は、電動機の駆動によって時計回り方向と反時計回り方向とへ回転する。攪拌リボン25は、軸24を取り囲むように略螺旋状に延びている。混練槽23には、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14とが投入されるとともに、図示はしていないが、水とpH調整剤(リンゴ酸)とが注入される。リボンミキサー20では、攪拌リボン25が軸24の回転によって時計回り方向と反時計回り方向とへ回転する。リボンミキサー20は、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14とを攪拌しつつ、水やpH調整剤とともにそれらを混練し、所定量の水分を含有する混合物を作る。混練工程16では、混練機として、リボンミキサー20に代えてパドルミキサーやスクリュミキサーを使用することもできる。
攪拌ホッパー21は、設備塔22の下方に配置されている。攪拌ホッパー21は、混練槽27と軸28と攪拌翼29とを有する。軸28は、電動機の駆動によって時計回り方向と反時計回り方向とへ回転する。攪拌翼29は、少なくとも上下2段になって並び、軸28の周り方向外方に位置して軸28の周り方向へ真円を画くように延びている。混練槽27には、リボンミキサー20によって混練された混合物がダクト26を通って流入する。攪拌ホッパー21では、攪拌翼29が軸28の回転によって時計回り方向と反時計回り方向とへ回転する。攪拌ホッパー21は、混合物を攪拌する。攪拌ホッパー21で再混練された混合物は、ホッパー21からベルトコンベアー30へ移動し、造粒工程17へ搬送される。混練工程17では、混練機として、攪拌ホッパー21に代えてポニミキサー、真空逆流ミキサー、ナウタミキサー、ハイスラッジャ、アイリッヒミキサー、ヘンシェルミキサー、パワーミキサー、コンビミックス、シュギーミキサーを使用することもできる。
造粒工程17には、半乾式/低水分造粒機31と造粒機31に定量の混合物を投入する定量投入機32とが設置されている。造粒機31には、図示はしていないが、円錐型ローラとダイスとカッターとが装着されている。定量投入機32のホッパー33には、ベルトコンベアー27から混合物が投入される。定量投入機32は、混合物を計量しつつ、所定量の混合物を造粒機31に投入する。造粒機31に投入された混合物は、円錐型ローラによってダイスに押し込まれ、ダイスにより円柱状に造粒された後、カッターによって所定の長さにカットされ、複数のペレット状の脱臭剤10Aに加工される。なお、造粒機31における造粒温度は、40℃以下に調節されている。
デンプン13は、その嵩比重が0.13g/cm3以上かつ0.17g/cm3以下の範囲にある。デンプン13の嵩比重が0.13g/cm3未満では、デンプン13の固化作用が弱く、脱臭剤10Aの形態保持性が低下し、脱臭剤10Aがペレット形態を維持することができない場合がある。デンプン13の嵩比重が0.17g/cm3を超過すると、デンプン13の比重が硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、植物繊維粉砕物14のそれと大きく異なり、デンプン13の中に硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、植物繊維粉砕物14を均一に分散させることができない。脱臭剤10Aは、デンプン13の嵩比重が前記範囲にあるから、脱臭剤10Aがペレット形態を維持することができ、さらに、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と植物繊維粉砕物14とをデンプン13の中に均一に分散させることができる。
混合物の総重量に対する水の混合割合(攪拌槽20に注入される水の割合)は、20重量%以上かつ30重量%以下の範囲にある。水の混合割合が20重量%未満では、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14とを十分に混練することができず、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と植物繊維粉砕物14とをデンプン13の中に均一に分散させることができない。また、造粒機31による混練で混合物の粘性が著しく増加し、ほとんど流動性を示さない混合物が作られるから、造粒工程17において混合物が脆く崩れてペレット状の脱臭剤10Aを作ることができない場合がある。水の混合割合が30重量%を超過すると、造粒機31による混練で混合物に適度な粘性を付与することができず、混合物の粘性が著しく低下し、造粒工程17においてペレット状の脱臭剤10A自体を作ることができない場合がある。脱臭剤10Aの製造では、混合物の総重量に対する水の混合割合が前記範囲にあるから、造粒工程17において適度な粘性と適度な流動性とを有する混合物を作ることができ、かつ、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と植物繊維粉砕物14とがデンプン13の中に略均一に混ざり合った脱臭剤10Aを作ることができる。
混合物の全重量に対する硫酸第1鉄粉体11の重量比は、10.0重量%以上かつ15.0重量%以下の範囲にある。硫酸第1鉄粉体11の重量比が10.0重量%未満では、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンの脱臭作用を十分に利用することができず、脱臭剤10Aにおける脱臭効果が低下する。混合物の全重量に対するジルコニウム鉱石粉体12の重量比は、5.0重量%以上かつ10.0重量%以下の範囲にある。ジルコニウム鉱石粉体12の重量比が5.0重量%未満では、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線を十分に利用することができず、ジルコニウム鉱石粉体12を利用して硫酸第1鉄粉体11の酸化を防止することができない。
混合物の全重量に対するデンプン13の重量比は、25.0〜35.0重量%の範囲にある。デンプン13の重量比が25.0重量%未満では、混合物を十分に固化させることができず、脱臭剤10Bがそのペレット形態を維持することが困難になる。混合物の全重量に対する植物繊維粉砕物14の重量比は、50.0〜55.0重量%の範囲にある。植物繊維粉砕物14の重量比が50.0重量%未満では、植物繊維粉砕物14の量が少なく、脱臭剤10Aがエッセンシャルオイル15を十分に保持することができず、オイルの芳香作用を長期間維持することができない。植物繊維粉砕物14の重量比が55.0重量%を超過すると、脱臭剤10Aに含まれるデンプン13の量が少なくなり、脱臭剤10Aを固化させることができず、脱臭剤10Aがそのペレット形態を維持することが困難になる。
乾燥工程18には、造粒工程17で作られたペレット状の脱臭剤10Aを乾燥させる乾燥機34が設置されている。造粒機31と乾燥機34との間には、ベルトコンベアー35が配置されている。乾燥機34は、進入口36および排出口37を有するユニット38と、ユニット38の内部に設置されたベルトコンベアー39と、空気を加熱して温風を作る加熱器(図示せず)と、加熱器によって作られた温風を送風する送風機(図示せず)と、温風をユニット38の外側に排出する排風機(図示せず)とから形成されている。ベルトコンベアー39は、ユニット38の進入口36と排出口37との間に延びている。ベルトコンベアー39には、多数の微細な貫通孔が形成されている。加熱器および送風機は、コンベアー39の間に設置されている。排風機は、ユニット38の上部に設置されている。
造粒工程17で作られたペレット状の脱臭剤10Aは、ベルトコンベアー35によって乾燥機34に搬送される。コンベアー35によってユニット38の進入口36に運ばれた脱臭剤10Aは、進入口36からユニット38内部のベルトコンベアー39に移り、コンベアー39上を移動して進入口36から排出口37に向かう。ベルトコンベアー39は、脱臭剤10Aをユニット38の進入口36から排出口34に向かって所定の速度でゆっくりと搬送する。加熱器によって作られた温風は、送風機によってベルトコンベアー39の下方からユニット38の上方へ向かって送風される。温風は、コンベアー39の貫通孔を通り抜け、ユニット38の内部を循環しつつ、排風機によってユニット38の外側に排出される。
脱臭剤10Aは、ベルトコンベアー39の貫通孔を通る温風やユニット38の内部を循環する温風によって加熱され、ユニット38の進入口36から排出口37に向かう間に、それに含まれる水分の一部が気化する。ここで、脱臭剤10Aの進入口36から排出口37までの移動時間やユニット38の内部温度は、脱臭剤10Aに含まれる水分を減少させることができ、かつ、脱臭剤10Aを形成するデンプン13が糊化しない時間かつ温度に保持されている。
具体的には、状脱臭剤10Aの進入口36から排出口37までの移動時間が5分以上かつ20分以下であって、ユニット38の内部温度が45℃以上かつ65℃以下の範囲に保持されている。移動時間が5分未満であってユニット38の内部温度が45℃未満では、脱臭剤10Aに含まれる水分が気化せず、水分を減らすことができない。移動時間が20分を超過するとともにユニット38の内部温度が65℃を超過すると、脱臭剤10Aが必要以上に加熱され、脱臭剤10Aに含まれる水分が大きく減少してしまう。また、デンプン13が糊化し、固化したデンプン13によって脱臭剤10Aが極端に硬化し、脱臭剤10Aにおける脱臭作用が失われる場合がある。脱臭剤10Aの製造では、脱臭剤10Aの進入口36から排出口37までの移動時間やユニット38の内部温度が前記範囲にあるから、脱臭剤10Aを形成するデンプン13の糊化を防ぎつつ、脱臭剤10Aに含まれる水分を適度に減らすことができる。
乾燥工程16では、脱臭剤10Aに含まれる水分の一部が気化し、造粒工程15よりも脱臭剤10Aが乾燥するが、脱臭剤10Aに含まれる水分の全てが気化するわけではなく、脱臭剤10Aが完全に乾燥することはない。乾燥工程18を経た脱臭剤10Aは、それに含まれるデンプン13が糊化しておらず、その表面のみが乾燥し、その内部に所定量の水分を含有する。
香料滲入工程19には、乾燥工程18で乾燥させたペレット状の脱臭剤10Aに液体香料15を吹き付ける香料吹き付け機40が設置されている。乾燥機37と香料吹き付け機40の間には、ベルトコンベアー41が配置されている。香料吹き付け機40は、進入口42および排出口43を有するユニット44と、ユニット44の内部に設置されたベルトコンベアー45と、コンベアー45上に液体香料を噴霧する噴霧器(図示せず)とから形成されている。ベルトコンベアー45は、ユニット44の進入口42と排出口43との間に延びている。
乾燥工程18を経た脱臭剤10Aは、ベルトコンベアー41によって香料吹き付け機40に搬送される。コンベアー41によってユニット44の進入口42に運ばれた脱臭剤10Aは、進入口42からユニット44内部のベルトコンベアー45に移り、コンベアー45上を移動して進入口42から排出口43に向かう。ベルトコンベアー45は、脱臭剤10Aをユニット44の進入口42から排出口43に向かって所定の速度でゆっくりと搬送する。噴霧器は、ベルトコンベアー41に向かって液体香料15を吹き付ける。香料滲入工程19では、ベルトコンベアー45上を移動する脱臭剤10Aに噴霧器から液体香料15が吹き付けられ、香料15が脱臭剤10Aに滲入する。脱臭剤10Aに滲入した香料15は、植物繊維粉砕物14に滲み込み、脱臭剤10Aに保持される。香料滲入工程19を経た脱臭剤10Aは、ユニット44の排出口43から排出される。なお、ユニット44の内部に液体香料15を注入したプールが設置され、ベルトコンベアー45上を移動する脱臭剤10Aがプールに浸かることで、香料15を脱臭剤10Aに滲入させることもできる。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Aは、その含水率が7.0%以上かつ15.0%以下の範囲、好ましくは、8.0%以上かつ10.0%以下の範囲にある。脱臭剤10Aの含水率が7.0%未満では、脱臭剤10Aが必要以上に硬化して脆弱となり、ペレット形態を維持することができない場合がある。脱臭剤10Aの含水率が15.0%を超過すると、水分によって硫酸第1鉄粉体11の酸化が促進され、硫酸第1鉄粉体11が短期間に酸化してしまう場合がある。脱臭剤10Aは、その含水率が前記範囲にあるから、その形態保持性がよく、ペレット形態を維持することができる。また、硫酸第1鉄粉体11の酸化が促進されることはなく、硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止することができる。前記含水率は、乾燥減量法に極めて類似した加熱乾燥・質量測定方式の赤外線水分計を使用して測定した値である。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Aは、その嵩比重が0.3g/cm3以上かつ0.7g/cm3以下の範囲、好ましくは、0.4g/cm3以上かつ0.5g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Aは、その嵩比重が前記範囲にあるから、軽量であり、複数個の脱臭剤10Aを一纏めにして容易に持ち運ぶことができ、複数個の脱臭剤10Aを一纏めにして設置したとしても、その設置荷重を無視することができる。嵩比重とは、成形された脱臭剤10Aの寸法からその体積を計算し、脱臭剤10Aの質量を除して求めた比重である。嵩比重は、電子ハカリと計量カップとを使用して測定した値である。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Aは、そのpHが4以上かつ7以下の範囲にある。脱臭剤10AのpHが7を超過すると、それがアルカリ域に属し、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し易く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われ、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を長期間利用することができない。脱臭剤10Aは、そのpHが前記範囲にあるから、それが酸性域に属し、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはなく、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を長期間利用することができる。脱臭剤10AのpHは、pH計を使用して測定した値である。
脱臭剤10Aは、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が2価の鉄イオンを含む硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止し、硫酸第1鉄粉体11の2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはないから、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を確実かつ長期間利用することができ、脱臭剤10Aの脱臭効果を持続させることができる。この脱臭剤10Aは、2価の鉄イオンが酸化、還元するときに作用する化学反応を利用し、アンモニアを硫安に変化させ、硫化水素を硫化鉄に変化させるとともに、メルカプタンを二酸化炭素に分解し、それらが原因となる臭気を脱臭することができる。
脱臭剤10Aは、固化材となるデンプン13が硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と植物繊維粉砕物14とをデンプン13の中に固定するから、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が硫酸第1鉄粉体11に確実に照射され、鉄イオンの2価の状態を長期間維持することができ、アンモニアや硫化水素、メルカプタンが原因となる臭気を確実に脱臭することができる。脱臭剤10Aは、液体香料15が植物繊維粉砕物14に保持され、それに香料15が滲み込んでいるから、香料15の芳香を利用した芳香剤としても使用することができる。なお、鉄イオンの化学反応によって脱臭される臭気はアンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気であるから、香料15の芳香成分が鉄イオンによって脱臭されることはなく、香料15の芳香作用を長期間維持させることができる。脱臭剤10Aは、アンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気を脱臭しつつ、香料15の芳香成分を周囲に漂わすことができる。脱臭剤10Aは、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14との混合物を造粒(成形)かつ乾燥した後、混合物に液体香料15を噴霧することで作られるから、複数の工程や長い時間を要せずに製造することができる。
図3は、脱臭剤10Bの製造工程の他の一例を示す図である。図3の製造工程によって作られた脱臭剤10Bの外観は図1の脱臭剤10Aと同一であるから、図1を援用することで、この製造工程によって作られた脱臭剤10Bの斜視図の図示は省略する。図3の製造工程によって作られた脱臭剤10Bは、硫酸第1鉄粉体11(鉄イオン含有材)とジルコニウム鉱石粉体12(β線発生材)とデンプン13(固化材)と無機材料粉体46(香料保持材)との混合物(図示せず)から作られている。脱臭剤10Bは、混合物を造粒(成形)し、それを乾燥させた後、それに液体香料15(エッセンシャルオイル等)を滲入させることによって製造される。脱臭剤10Bは、図1のそれと同様に、略円柱状のペレット状に成形されている。脱臭剤10Bの長さおよび直径は、図1の脱臭剤10Aのそれらと同一である。脱臭剤10Bは、デンプン13が糊化しておらず、水に容易に溶けて分解する水解性を有する。
硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、デンプン13は、図1の脱臭剤10Aに使用されたそれらと同一である。なお、硫酸第1鉄粉体11に代えて塩化鉄を使用することもでき、硫酸第1鉄粉体11と塩化鉄とを所定の割合で混合した鉄イオン含有複合粉体を使用することもできる。また、ジルコニウム鉱石粉体12に代えて陰イオンパウダーを使用することもでき、ジルコニウム鉱石粉体12と陰イオンパウダーとを所定の割合で混合したβ線発生複合粉体を使用することもできる。さらに、デンプン13に代えてポテトパルプまたはカルボキシメチルセルロースを使用することができ、デンプン13とカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。ポテトパルプとカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。エッセンシャルオイル15は、図1の脱臭剤10Aに使用されたそれと同一である。無機材料粉体46には、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、マイカ、クレー、珪藻土、ゼオライト粉体、シリカ粉体のうちの少なくとも1つを使用することができる。
図3に基づいて、脱臭剤10Bの製造手順の一例を説明すると、以下のとおりである。脱臭剤10Bの製造は、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と無機材料粉体46とを混練して所定量の水分を含有する混合物を作る混練工程16と、その混合物をペレット状に成形して複数のペレット状の脱臭剤10Bを作る造粒工程17と、脱臭剤10Bを乾燥させる乾燥工程18と、脱臭剤10Bに液体香料15を滲み込ませる香料滲入工程19とから構成される。
混練工程16では、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と無機材料粉体46とが混練槽23に投入されるとともに、図示はしていないが、水とpH調整剤(リンゴ酸)とが混練槽23に注入される。リボンミキサー20は、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と無機材料粉体46とを攪拌しつつ、水やpH調整剤とともにそれらを混練し、所定量の水分を含有する混合物を作る。混合物は、リボンミキサー20から攪拌ホッパー21に流入し、攪拌ホッパー21において攪拌される。攪拌ホッパー21で再混練された混合物は、ホッパー21からベルトコンベアー30へ移動し、造粒工程17へ搬送される。
造粒工程17では、ベルトコンベアー30から定量投入機32のホッパー33に混合物が投入される。定量投入機32は、混合物を計量しつつ、所定量の混合物を半乾式/低水分造粒機31に投入する。造粒機31に投入された混合物は、円錐型ローラによってダイスに押し込まれ、ダイスにより円柱状に造粒された後、カッターによって所定の長さにカットされ、複数のペレット状の脱臭剤10Bに加工される。造粒機31における造粒温度は、40℃以下に調節されている。デンプン13の嵩比重は、図1の脱臭剤10Aに含まれるデンプン13のそれと同一であり、0.13g/cm3以上かつ0.17g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Bは、デンプン13の嵩比重が前記範囲にあるから、脱臭剤10Bがペレット形態を維持することができ、さらに、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と無機材料粉体46とをデンプン13の中に均一に分散させることができる。
混合物の総重量に対する水の混合割合は、図2の製造工程におけるそれと同一であり、20重量%以上かつ30重量%の範囲にある。脱臭剤10Bの製造では、混合物の総重量に対する水の混合割合が前記範囲にあるから、造粒工程17において適度な粘性と適度な流動性とを有する混合物を作ることができ、かつ、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と無機材料粉体46とがデンプン13の中に略均一に混ざり合った脱臭剤10Bを作ることができる。混合物の全重量に対する硫酸第1鉄粉体11の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれる硫酸第1鉄粉体11のそれと同一であり、10.0重量%以上かつ15.0重量%以下の範囲にある。混合物の全重量に対するジルコニウム鉱石粉体12の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれるジルコニウム鉱石粉体12のそれと同一であり、5.0重量%以上かつ10.0重量%以下の範囲にある。
混合物の全重量に対するデンプン13の重量比は、25.0重量%以上かつ35.0重量%以下の範囲ある。デンプン13の重量比が25.0重量%未満では、混合物を十分に固化させることができず、脱臭剤10Bがそのペレット形態を維持することが困難になる。混合物の全重量に対する無機材料粉体46の重量比は、50.0〜55.0重量%の範囲にある。無機材料粉体46の重量比が50.0重量%未満では、無機材料粉体46の量が少なく、脱臭剤10Bがエッセンシャルオイル15を十分に保持することができず、オイルの芳香作用を長期間維持することができない。無機材料粉体46の重量比が55.0重量%を超過すると、脱臭剤10Bに含まれるデンプン13の量が少なくなり、脱臭剤10Bを固化させることができず、脱臭剤10Bがそのペレット形態を維持することが困難になる。
乾燥工程18では、ペレット状の脱臭剤10Bがベルトコンベアー35によって造粒機31から乾燥機34に搬送される。乾燥機34のユニット38の進入口36に運ばれた脱臭剤10Bは、進入口36からユニット38内部のベルトコンベアー39に移り、コンベアー39上を移動して進入口36から排出口37に向かう。脱臭剤10Bは、ベルトコンベアー39の貫通孔を通る温風やユニット38の内部を循環する温風によって加熱され、ユニット38の進入口36から排出口37に向かう間に、それに含まれる水分の一部が気化する。
脱臭剤10Bの進入口36から排出口37までの移動時間は、図2の乾燥機34の移動時間と同一であり、5分以上かつ20分以下である。ユニット38の内部温度は、図2の乾燥機34のそれと同一であり、45℃以上かつ65℃以下である。脱臭剤10Bの製造では、脱臭剤10Bの進入口36から排出口37までの移動時間やユニット38の内部温度が前記範囲にあるから、脱臭剤10Bを形成するデンプン13の糊化を防ぎつつ、脱臭剤10Bに含まれる水分を適度に減らすことができる。乾燥工程18を経た脱臭剤10Bは、それに含まれるデンプン13が糊化しておらず、その表面のみが乾燥し、その内部に所定量の水分を含有する。
香料滲入工程19では、乾燥工程18を経た脱臭剤10Bがベルトコンベアー41によって乾燥機34から香料吹き付け機40に搬送される。香料吹き付け機40のユニット44の進入口42に運ばれた脱臭剤10Bは、進入口42からユニット44内部のベルトコンベアー45に移り、コンベアー45上を移動して進入口42から排出口43に向かう。香料滲入工程19では、ベルトコンベアー39上を移動する脱臭剤10Bに噴霧器から液体香料15が吹き付けられ、香料15が脱臭剤10Bに滲入する。脱臭剤10Bに滲入した香料15は、無機材料粉体46に滲み込み、脱臭剤10Bに保持される。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Bは、図1の脱臭剤10Aと同様に、それに含まれるデンプン13の非糊化状態が維持され、その内部に所定量の水分が含まれる。脱臭剤10Bは、その含水率が7.0%以上かつ15.0%以下の範囲、好ましくは、8.0%以上かつ10.0%以下の範囲にある。脱臭剤10Bは、その含水率が前記範囲にあるから、その形態保持性がよく、ペレット形態を維持することができる。また、硫酸第1鉄粉体11の酸化が促進されることはなく、硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止することができる。含水率は、図1の脱臭剤10Aと同様に、赤外線水分計を使用して測定した値である。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Bは、その嵩比重が0.3g/cm3以上かつ0.7g/cm3以下の範囲、好ましくは、0.4g/cm3以上かつ0.5g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Bは、その嵩比重が前記範囲にあるから、軽量であり、複数個の脱臭剤10Bを一纏めにして容易に持ち運ぶことができ、複数個の脱臭剤10Bを一纏めにして設置したとしても、その設置荷重を無視することができる。嵩比重は、図1の脱臭剤10Aと同様に、電子ハカリと計量カップとを使用して測定した値である。
脱臭剤10Bは、そのpHが4以上かつ7以下の範囲にある。脱臭剤10Bは、そのpHが前記範囲にあるから、それが酸性域に属し、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはなく、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を長期間利用することができる。pHは、図1の脱臭剤10Aと同様に、pH計を使用して測定した値である。
脱臭剤10Bは、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が2価の鉄イオンを含む硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止し、硫酸第1鉄粉体11の2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはないから、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を確実かつ長期間利用することができ、脱臭剤10Bの脱臭効果を持続させることができる。この脱臭剤10Bは、2価の鉄イオンが酸化、還元するときに作用する化学反応を利用し、アンモニアを硫安に変化させ、硫化水素を硫化鉄に変化させるとともに、メルカプタンを二酸化炭素に分解し、それらが原因となる臭気を脱臭することができる。
脱臭剤10Bは、固化材となるデンプン13が硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と無機材料粉体46とをデンプン13の中に固定するから、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が硫酸第1鉄粉体11に確実に照射され、鉄イオンの2価の状態を長期間維持することができ、アンモニアや硫化水素、メルカプタンが原因となる臭気を確実に脱臭することができる。脱臭剤10Bは、液体香料15が無機材料粉体46に保持され、それに香料15が滲み込んでいるから、香料15の芳香を利用した芳香剤としても使用することができる。なお、鉄イオンの化学反応によって脱臭される臭気はアンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気であるから、香料15の芳香成分が鉄イオンによって脱臭されることはなく、香料15の芳香作用を長期間維持させることができる。脱臭剤10Bは、アンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気を脱臭しつつ、香料15の芳香成分を周囲に漂わすことができる。脱臭剤10Bは、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と無機材料粉体46との混合物を造粒(成形)かつ乾燥した後、混合物に液体香料15を噴霧することで作られるから、複数の工程や長い時間を要せずに製造することができる。
図4は、脱臭剤10Cの製造工程の他の一例を示す図である。図4の製造工程によって作られた脱臭剤10Cの外観は図1の脱臭剤10Aと同一であるから、図1を援用することで、この製造工程によって作られた脱臭剤10Cの斜視図の図示は省略する。図4の製造工程によって作られた脱臭剤10Cは、硫酸第1鉄粉体11(鉄イオン含有材)とジルコニウム鉱石粉体12(β線発生材)とデンプン13(固化材)と粉末香料47との混合物(図示せず)から作られている。脱臭剤10Cは、混合物を造粒(成形)した後、それを乾燥させることによって製造される。脱臭剤10Cは、図1のそれと同様に、略円柱状のペレット状に成形されている。脱臭剤10Cの長さおよび直径は、図1の脱臭剤10Aのそれらと同一である。脱臭剤10Cは、デンプン13が糊化しておらず、水に容易に溶けて分解する水解性を有する。
硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、デンプン13は、図1の脱臭剤10Aに使用されたそれらと同一である。なお、硫酸第1鉄粉体11に代えて塩化鉄を使用することもでき、硫酸第1鉄粉体11と塩化鉄とを所定の割合で混合した鉄イオン含有複合粉体を使用することもできる。また、ジルコニウム鉱石粉体12に代えて陰イオンパウダーを使用することもでき、ジルコニウム鉱石粉体12と陰イオンパウダーとを所定の割合で混合したβ線発生複合粉体を使用することもできる。さらに、デンプン13に代えてポテトパルプまたはカルボキシメチルセルロースを使用することができ、デンプン13とカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。ポテトパルプとカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。
粉末香料47には、ドライハーブ粉砕物、ヒノキ粉砕物、お茶の葉粉砕物、コーヒー豆粉砕物、お茶ガラ粉砕物、コーヒーガラ粉砕物等を使用することができる。なお、粉末香料47には、市販のそれを使用することもできる。粉末香料47は、その平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲にある。粉末香料14の平均粒径が2.0mmを超過すると、流動性を示さない粉末香料14の分散性が著しく低下し、粉末香料14がデンプン13の中に均一に分散せず、脱臭剤10Cに粉末香料14が集中する箇所が生じてしまい、その箇所において脱臭剤10Cが容易に崩壊する場合がある。粉末香料47は、粉砕機を使用してドライハーブ、ヒノキ、お茶の葉、コーヒー豆、お茶ガラ、コーヒーガラを粉砕して作ることができる。ドライハーブ粉砕物47の平均粒径は、ふるい分け法によって測定した値である。
ドライハーブには、オリスルート、オレンジピール、カモマイル・ジャーマン、クローブ、月桂樹、エキナセア、スペアミント、タイム、ハイビスカス、矢車草、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンピール、ローズヒップ、ミニローズ・ピンク、ローズマリー、ヒソップ、ペパーミント、マージョラム、マロウ・ブルー、ローズ・バッズピンク、ローズ・ピンク、ローズ・レッド、タラゴン、ダンデリオン、サンダルウッド、シナモンスティック、ジュニパーベリー、トンカビーンズ、ペニーロイヤル、マリーゴールド、むぎわら菊、ユーカリのうちのいずれかから作られている。ドライハーブは、それらから作られたいずれか1つまたはそれらから作られた2種類以上を所定の割合でブレンドしたものを使用することができる。
図4に基づいて、脱臭剤10Cの製造手順を説明すると、以下のとおりである。脱臭剤10Cの製造は、粉末香料47を作る粉砕工程と(図示せず)、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と粉末香料47とを混練して所定量の水分を含有する混合物を作る混練工程16と、その混合物をペレット状に成形して複数のペレット状の脱臭剤10Cを作る造粒工程17と、脱臭剤10Cを乾燥させる乾燥工程18とから構成される。なお、粉末香料47として市販のそれを使用する場合は、粉砕工程を省略することができる。
粉砕工程では、粉砕機にドライハーブ、ヒノキ、お茶の葉、コーヒー豆、お茶ガラ、コーヒーガラのいずれかが投入され、それらが粉砕機によって粉砕され、粉末香料47が作られる。混練工程16では、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と粉末香料47とが混練槽23に投入されるとともに、図示はしていないが、水とpH調整剤(リンゴ酸)とが混練槽23に注入される。リボンミキサー20は、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と粉末香料47とを攪拌しつつ、水やpH調整剤とともにそれらを混練し、所定量の水分を含有する混合物を作る。混合物は、リボンミキサー20から攪拌ホッパー21に流入し、攪拌ホッパー21において攪拌される。攪拌ホッパー21で再混練された混合物は、ホッパー21からベルトコンベアー30へ移動し、造粒工程17へ搬送される。
造粒工程17では、ベルトコンベアー30から定量投入機32のホッパー33に混合物が投入される。定量投入機32は、混合物を計量しつつ、所定量の混合物を半乾式/低水分造粒機31に投入する。造粒機31に投入された混合物は、円錐型ローラによってダイスに押し込まれ、ダイスにより円柱状に造粒された後、カッターによって所定の長さにカットされ、複数のペレット状の脱臭剤10Cに加工される。造粒機31における造粒温度は、40℃以下に調節されている。デンプン13の嵩比重は、図1の脱臭剤10Aに含まれるデンプン13のそれと同一であり、0.13g/cm3以上かつ0.17g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Cは、デンプン13の嵩比重が前記範囲にあるから、脱臭剤10Cがペレット形態を維持することができ、さらに、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、粉末香料47をデンプン13の中に均一に分散させることができる。
混合物の総重量に対する水の混合割合は、図2の製造工程におけるそれと同一であり、20重量%以上かつ30重量%の範囲にある。脱臭剤10Cの製造では、混合物の総重量に対する水の混合割合が前記範囲にあるから、造粒工程15において適度な粘性と適度な流動性とを有する混合物を作ることができ、かつ、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、粉末香料47がデンプン13の中に略均一に混ざり合った脱臭剤10Cを作ることができる。混合物の全重量に対する硫酸第1鉄粉体11の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれる硫酸第1鉄粉体11のそれと同一であり、10.0重量%以上かつ15.0重量%以下の範囲にある。混合物の全重量に対するジルコニウム鉱石粉体12の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれるジルコニウム鉱石粉体12のそれと同一であり、5.0重量%以上かつ10.0重量%以下の範囲にある。
混合物の全重量に対するデンプン13の重量比は、25.0重量%以上かつ35.0重量%以下の範囲ある。デンプン13の重量比が25.0重量%未満では、混合物を十分に固化させることができず、脱臭剤10Bがそのペレット形態を維持することが困難になる。混合物の全重量に対する粉末香料47の重量比は、50.0〜55.0重量%の範囲にある。粉末香料47の重量比が50.0重量%未満では、脱臭剤10Cにおいて粉末香料47の芳香作用が十分に機能せず、芳香を周囲に漂わすことができない。粉末香料47の重量比が55.0重量%を超過すると、脱臭剤10Cに含まれるデンプン13の量が少なくなり、脱臭剤10Cを固化させることができず、脱臭剤10Cがそのペレット形態を維持することが困難になる。
乾燥工程18では、ペレット状の脱臭剤10Cがベルトコンベアー35によって造粒機31から乾燥機34に搬送される。乾燥機34のユニット38の進入口36に運ばれた脱臭剤10Cは、進入口36からユニット38内部のベルトコンベアー39に移り、コンベアー39上を移動して進入口36から排出口37に向かう。脱臭剤10Cは、ベルトコンベアー39の貫通孔を通る温風やユニット38の内部を循環する温風によって加熱され、ユニット38の進入口36から排出口37に向かう間に、それに含まれる水分の一部が気化する。
脱臭剤10Cの進入口36から排出口37までの移動時間は、図2の乾燥機34の移動時間と同一であり、5分以上かつ20分以下である。ユニット38の内部温度は、図2の乾燥機34のそれと同一であり、45℃以上かつ65℃以下である。脱臭剤10Cの製造では、脱臭剤10Cの進入口36から排出口37までの移動時間やユニット38の内部温度が前記範囲にあるから、脱臭剤10Cを形成するデンプン13の糊化を防ぎつつ、脱臭剤10Cに含まれる水分を適度に減らすことができる。乾燥工程18を経た脱臭剤10Cは、それに含まれるデンプン13が糊化しておらず、その表面のみが乾燥し、その内部に所定量の水分を含有する。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Cは、図1の脱臭剤10Aと同様に、それに含まれるデンプン13の非糊化状態が維持され、その内部に所定量の水分が含まれる。脱臭剤10Cは、その含水率が7.0%以上かつ15.0%以下の範囲、好ましくは、8.0%以上かつ10.0%以下の範囲にある。脱臭剤10Cは、その含水率が前記範囲にあるから、その形態保持性がよく、ペレット形態を維持することができる。また、硫酸第1鉄粉体11の酸化が促進されることはなく、硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止することができる。含水率は、図1の脱臭剤10Aと同様に、赤外線水分計を使用して測定した値である。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Cは、その嵩比重が0.3g/cm3以上かつ0.7g/cm3以下の範囲、好ましくは、0.4g/cm3以上かつ0.5g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Cは、その嵩比重が前記範囲にあるから、軽量であり、複数個の脱臭剤10Cを一纏めにして容易に持ち運ぶことができ、複数個の脱臭剤10Cを一纏めにして設置したとしても、その設置荷重を無視することができる。嵩比重は、図1の脱臭剤10Aと同様に、電子ハカリと計量カップとを使用して測定した値である。
脱臭剤10Cは、そのpHが4以上かつ7以下の範囲にある。脱臭剤10Cは、そのpHが前記範囲にあるから、それが酸性域に属し、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはなく、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を長期間利用することができる。pHは、図1の脱臭剤10Aと同様に、pH計を使用して測定した値である。
脱臭剤10Cは、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が2価の鉄イオンを含む硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止し、硫酸第1鉄粉体11の2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはないから、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を確実かつ長期間利用することができ、脱臭剤10Cの脱臭効果を持続させることができる。この脱臭剤10Cは、2価の鉄イオンが酸化、還元するときに作用する化学反応を利用し、アンモニアを硫安に変化させ、硫化水素を硫化鉄に変化させるとともに、メルカプタンを二酸化炭素に分解し、それらが原因となる臭気を脱臭することができる。
脱臭剤10Cは、固化材となるデンプン13が硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と粉末香料47とをデンプン13の中に固定するから、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が硫酸第1鉄粉体11に確実に照射され、鉄イオンの2価の状態を長期間維持することができ、アンモニアや硫化水素、メルカプタンが原因となる臭気を確実に脱臭することができる。脱臭剤10Cは、それに粉末香料47が含まれるから、香料の芳香を利用した芳香剤としても使用することができる。なお、鉄イオンの化学反応によって脱臭される臭気はアンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気であるから、香料の芳香成分が鉄イオンによって脱臭されることはなく、香料の芳香作用を長期間維持させることができる。脱臭剤10Cは、アンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気を脱臭しつつ、香料の芳香成分を周囲に漂わすことができる。この脱臭剤10Cは、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と粉末香料47との混合物を造粒(成形)した後、混合物を乾燥させることで作られるから、複数の工程や長い時間を要せずに製造することができる。
図5は、脱臭剤10Dの製造工程の他の一例を示す図である。図5の製造工程によって作られたペレット状脱臭剤10Dの外観は図1の脱臭剤10Aと同一であるから、図1を援用することで、この製造工程によって作られた脱臭剤10Dの斜視図の図示は省略する。図5の製造工程によって作られた脱臭剤10Dは、硫酸第1鉄粉体11(鉄イオン含有材)とジルコニウム鉱石粉体12(β線発生材)とデンプン13(固化材)と植物繊維粉砕物14(香料保持材)と粉末香料47との混合物(図示せず)から作られている。脱臭剤10Dは、混合物を造粒(成形)し、それを乾燥させた後、それに液体香料15(エッセンシャルオイル等)を滲入させることによって製造される。脱臭剤10Dは、図1のそれと同様に、略円柱状のペレット状に成形されている。脱臭剤10Dの長さおよび直径は、図1の脱臭剤10Aのそれらと同一である。脱臭剤10Dは、デンプン13が糊化しておらず、水に容易に溶けて分解する水解性を有する。
硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、デンプン13、植物繊維粉砕物14は、図1の脱臭剤10Aに使用されたそれらと同一であり、紙粉砕物や木くず粉砕物、パルプ粉砕物を使用することができる。粉末香料47は、図4の製造工程によって作られた脱臭剤10Cに使用されたそれと同一である。紙粉砕物や木くず粉砕物、パルプ粉砕物、粉末香料47は、平均粒径が0.01以上かつ2.0mm以下の範囲にある。平均粒径は、ふるい分け法によって測定した値である。
なお、硫酸第1鉄粉体11に代えて塩化鉄を使用することもでき、硫酸第1鉄粉体11と塩化鉄とを所定の割合で混合した鉄イオン含有複合粉体を使用することもできる。また、ジルコニウム鉱石粉体12に代えて陰イオンパウダーを使用することもでき、ジルコニウム鉱石粉体12と陰イオンパウダーとを所定の割合で混合したβ線発生複合粉体を使用することもできる。さらに、デンプン13に代えてポテトパルプまたはカルボキシメチルセルロースを使用することができ、デンプン13とカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。ポテトパルプとカルボキシメチルセルロースとを所定の割合で混合した複合物を使用することもできる。
図5に基づいて、この脱臭剤10Dの製造手順の一例を説明すると、以下のとおりである。脱臭剤10Dの製造は、紙または木くずを粉砕して植物繊維粉砕物14を作る第1粉砕工程と(図示せず)、粉末香料47を作る第2粉砕工程と(図示せず)と、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とポテトパルプ13と植物繊維粉砕物14と粉末香料47とを混練して所定量の水分を含有する混合物を作る混練工程16と、その混合物をペレット状に成形して複数のペレット状の脱臭剤10Dを作る造粒工程17と、脱臭剤10Dを乾燥させる乾燥工程18と、脱臭剤10Aに液体香料15(エッセンシャルオイル)を滲み込ませる香料滲入工程19とから構成される。粉砕工程には、粉砕機が設置されている。なお、粉末香料47として市販のそれを使用する場合は、第2粉砕工程を省略することができる。
第1粉砕工程では、粉砕機に紙と木くずとのうちの少なくとも一方が投入され、それらが粉砕機によって粉砕され、植物繊維粉砕物14が作られる。第2粉砕工程では、粉砕機にドライハーブ、ヒノキ、お茶の葉、コーヒー豆、お茶ガラ、コーヒーガラのいずれかが投入され、それらが粉砕機によって粉砕され、粉末香料47が作られる。混練工程14では、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、デンプン13、植物繊維粉砕物14、粉末香料47が混練槽23に投入されるとともに、図示はしていないが、水とpH調整剤(リンゴ酸)とが混練槽23に注入される。リボンミキサー20は、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、デンプン13、植物繊維粉砕物14、粉末香料47を攪拌しつつ、水やpH調整剤とともにそれらを混練し、所定量の水分を含有する混合物を作る。混合物は、リボンミキサー20から攪拌ホッパー21に流入し、攪拌ホッパー21において攪拌される。攪拌ホッパー21で再混練された混合物は、ホッパー21からベルトコンベアー30へ移動し、造粒工程17へ搬送される。
造粒工程17では、ベルトコンベアー30から定量投入機32のホッパー33に混合物が投入される。定量投入機32は、混合物を計量しつつ、所定量の混合物を半乾式/低水分造粒機31に投入する。造粒機31に投入された混合物は、円錐型ローラによってダイスに押し込まれ、ダイスにより円柱状に造粒された後、カッターによって所定の長さにカットされ、複数のペレット状脱臭剤10Dに加工される。造粒機31における造粒温度は、40℃以下に調節されている。デンプン13の嵩比重は、図1の脱臭剤10Aに含まれるデンプン13のそれと同一であり、0.13g/cm3以上かつ0.17g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Dは、デンプン13の嵩比重が前記範囲にあるから、脱臭剤10Dがその形態を維持することができ、さらに、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、植物繊維粉砕物14、粉末香料47をポテトパルプ13の中に均一に分散させることができる。
混合物の総重量に対する水の混合割合は、図2の製造工程におけるそれと同一であり、20重量%以上かつ30重量%の範囲にある。脱臭剤10Dの製造では、混合物の総重量に対する水の混合割合が前記範囲にあるから、造粒工程17において適度な粘性と適度な流動性とを有する混合物を作ることができ、かつ、硫酸第1鉄粉体11やジルコニウム鉱石粉体12、植物繊維粉砕物14、粉末香料47がデンプン13の中に略均一に混ざり合った脱臭剤10Dを作ることができる。混合物の全重量に対する硫酸第1鉄粉体11の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれる硫酸第1鉄粉体11のそれと同一であり、10.0重量%以上かつ15.0重量%以下の範囲にある。混合物の全重量に対するジルコニウム鉱石粉体12の重量比は、図1の脱臭剤10Aに含まれるジルコニウム鉱石粉体12のそれと同一であり、5.0重量%以上かつ10.0重量%以下の範囲にある。
混合物の全重量に対するデンプン13の重量比は、25.0重量%以上かつ35.0重量%以下の範囲ある。デンプン13の重量比が25.0重量%未満では、混合物を十分に固化させることができず、脱臭剤10Bがそのペレット形態を維持することが困難になる。混合物の全重量に対する植物繊維粉砕物14の重量比は、25.0〜27.5重量%の範囲にある。混合物の全重量に対する粉末香料47の重量比は、25.0〜27.5重量%の範囲にある。植物繊維粉砕物14の重量比が25.0重量%未満であって粉末香料47の重量比が25.0重量%未満では、植物繊維粉砕物14の量が少なく、脱臭剤10Aが液体香料15を十分に保持することができず、液体香料15の芳香作用を長期間維持することができない。また、脱臭剤10Cにおいて粉末香料47の芳香作用が十分に機能せず、芳香を周囲に漂わすことができない。植物繊維粉砕物14の重量比が55.0重量%を超過し、粉末香料47の重量比が55.0重量%を超過すると、脱臭剤10Dに含まれるデンプン13の量が少なくなり、脱臭剤10Dを固化させることができず、脱臭剤10Dがそのペレット形態を維持することが困難になる。
乾燥工程18では、ペレット状の脱臭剤10Dがベルトコンベアー35によって造粒機31から乾燥機34に搬送される。乾燥機34のユニット38の進入口36に運ばれた脱臭剤10Cは、進入口36からユニット38内部のベルトコンベアー39に移り、コンベアー39上を移動して進入口36から排出口37に向かう。脱臭剤10Dは、ベルトコンベアー39の貫通孔を通る温風やユニット38の内部を循環する温風によって加熱され、ユニット38の進入口36から排出口37に向かう間に、それに含まれる水分の一部が気化する。
脱臭剤10Dの進入口36から排出口37までの移動時間は、図2の乾燥機34の移動時間と同一であり、5分以上かつ20分以下である。ユニット38の内部温度は、図2の乾燥機34のそれと同一であり、45℃以上かつ65℃以下である。脱臭剤10Dの製造では、脱臭剤10Cの進入口36から排出口37までの移動時間やユニット38の内部温度が前記範囲にあるから、脱臭剤10Dを形成するデンプン13の糊化を防ぎつつ、脱臭剤10Dに含まれる水分を適度に減らすことができる。乾燥工程18を経た脱臭剤10Dは、それに含まれるデンプン13が糊化しておらず、その表面のみが乾燥し、その内部に所定量の水分を含有する。
香料滲入工程19では、乾燥工程18を経た脱臭剤10Dがベルトコンベアー41によって乾燥機34から香料吹き付け機40に搬送される。香料吹き付け機40のユニット44の進入口42に運ばれた脱臭剤10Dは、進入口42からユニット44内部のベルトコンベアー45に移り、コンベアー45上を移動して進入口42から排出口43に向かう。香料滲入工程19では、ベルトコンベアー39上を移動する脱臭剤10Dに噴霧器から液体香料15が吹き付けられ、香料15が脱臭剤10Dに滲入する。脱臭剤10Dに滲入した香料15は、無機材料粉体46に滲み込み、脱臭剤10Dに保持される。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Dは、図1の脱臭剤10Aと同様に、それに含まれるデンプン13の非糊化状態が維持され、その内部に所定量の水分が含まれる。脱臭剤10Dは、その含水率が7.0%以上かつ15.0%以下の範囲、好ましくは、8.0%以上かつ10.0%以下の範囲にある。脱臭剤10Dは、その含水率が前記範囲にあるから、その形態保持性がよく、ペレット形態を維持することができる。また、硫酸第1鉄粉体11の酸化が促進されることはなく、硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止することができる。含水率は、図1の脱臭剤10Aと同様に、赤外線水分計を使用して測定した値である。
それら工程16〜19によって製造された脱臭剤10Dは、その嵩比重が0.3g/cm3以上かつ0.7g/cm3以下の範囲、好ましくは、0.4g/cm3以上かつ0.5g/cm3以下の範囲にある。脱臭剤10Dは、その嵩比重が前記範囲にあるから、軽量であり、複数個の脱臭剤10Dを一纏めにして容易に持ち運ぶことができ、複数個の脱臭剤10Dを一纏めにして設置したとしても、その設置荷重を無視することができる。嵩比重は、図1の脱臭剤10Aと同様に、電子ハカリと計量カップとを使用して測定した値である。
脱臭剤10Dは、そのpHが4以上かつ7以下の範囲にある。脱臭剤10Dは、そのpHが前記範囲にあるから、それが酸性域に属し、硫酸第1鉄粉体11に含まれる2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはなく、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を長期間利用することができる。pHは、図1の脱臭剤10Aと同様に、pH計を使用して測定した値である。
脱臭剤10Dは、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が2価の鉄イオンを含む硫酸第1鉄粉体11の短期間の酸化を防止し、硫酸第1鉄粉体11の2価の鉄イオンが3価の鉄イオンに変化し難く、硫酸第1鉄粉体11から2価の鉄イオンが短期間に失われることはないから、2価の鉄イオンが有する脱臭作用を確実かつ長期間利用することができ、脱臭剤10Dの脱臭効果を持続させることができる。この脱臭剤10Dは、2価の鉄イオンが酸化、還元するときに作用する化学反応を利用し、アンモニアを硫安に変化させ、硫化水素を硫化鉄に変化させるとともに、メルカプタンを二酸化炭素に分解し、それらが原因となる臭気を脱臭することができる。
脱臭剤10Dは、固化材となるデンプン13が硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12と粉末香料47とをデンプン13の中に固定するから、ジルコニウム鉱石粉体12から発生するβ線が硫酸第1鉄粉体11に確実に照射され、鉄イオンの2価の状態を長期間維持することができ、アンモニアや硫化水素、メルカプタンが原因となる臭気を確実に脱臭することができる。
脱臭剤10Dは、液体香料15が植物繊維粉砕物14に保持され、それに液体香料15が滲み込み、さらに、それに粉末香料47が含まれるから、液体香料15や粉末香料47の芳香を利用した芳香剤としても使用することができる。なお、鉄イオンの化学反応によって脱臭される臭気はアンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気であるから、液体香料15や粉末香料47の芳香成分が鉄イオンによって脱臭されることはなく、液体香料15や粉末香料47の芳香作用を長期間維持させることができる。脱臭剤10Dは、アンモニア、硫化水素、メルカプタンを原因とする臭気を脱臭しつつ、液体香料15や粉末香料47の芳香成分を周囲に漂わすことができる。脱臭剤10Dは、硫酸第1鉄粉体11とジルコニウム鉱石粉体12とデンプン13と植物繊維粉砕物14と粉末香料47との混合物を造粒(成形)かつ乾燥した後、混合物に液体香料15を噴霧することで作られるから、複数の工程や長い時間を要せずに製造することができる。
図6は、脱臭剤10A〜10Dの使用の一例を示す図であり、図7は、アンモニア脱臭効果試験の結果を示す図である。図6では、袋41の一部を破断して示す。図7の縦軸には、アンモニア濃度が表示され、図7の横軸には、経過時間が表示されている。図7では、脱臭剤10A〜10Dによる脱臭効果を実線で示し、活性炭38のみによる脱臭効果を点線で示すとともに、空試験を一点鎖線で示す。それら脱臭剤10A〜10Dを使用するには、図6に示すように、複数個のそれを袋41に詰め、臭気が漂う箇所にその袋48を設置する。袋48は、通気不透液性の不織布から作られ、上端縁と下端縁とにおいて重なり合う不織布どうしが熱融着線49によって固着されている。
アンモニア脱臭効果試験を説明すると、以下のとおりである。脱臭剤10A〜10D(1g)を第1の袋に入れ、その袋にヒートシールを施した後、空気3Lを封入し、アンモニアガス濃度が500ppmになるようにアンモニアガスを袋に注入する。活性炭(1g)を第2の袋に入れ、その袋にヒートシールを施した後、空気3Lを封入し、アンモニアガス濃度が500ppmになるようにアンモニアガスを袋に注入する。さらに、何も入れない第3の袋にヒートシールを施した後、空気3Lを封入し、アンモニアガス濃度が500ppmになるようにアンモニアガスを袋に注入する。
それら第1から第3の袋を室温で置き、経過時間毎にそれら袋内のアンモニア濃度をガス検知管で測定した。第1の袋では、10分経過後の袋内のアンモニア濃度が300ppm、30分経過後の袋内のアンモニア濃度が120ppm、60分経過後の袋内のアンモニア濃度が40ppm、120分経過後の袋内のアンモニア濃度が10ppm、180分経過後の袋内のアンモニア濃度が略0ppmとなった。これに対し、第2の袋では、10分経過後の袋内のアンモニア濃度が390ppm、30分経過後の袋内のアンモニア濃度が290ppm、60分経過後の袋内のアンモニア濃度が200ppm、120分経過後の袋内のアンモニア濃度が150ppm、180分経過後の袋内のアンモニア濃度が130ppmであった。また、第3の袋では、10分経過後の袋内のアンモニア濃度が500ppm、30分経過後の袋内のアンモニア濃度が480ppm、60分経過後の袋内のアンモニア濃度が460ppm、120分経過後の袋内のアンモニア濃度が460ppm、180分経過後の袋内のアンモニア濃度が440ppmであった。
脱臭剤10A〜10Dを入れた第1の袋におけるアンモニア濃度は時間の経過とともに急速に減少し、180分で略0ppmになった。それに対し、活性炭を入れた第2の袋は、時間の経過とともにアンモニア濃度の低下はあったものの、脱臭剤に比較して、減少速度は遅く、180分経過してもアンモニアガスが残存した。また、第3の袋では、アンモニア濃度がほとんど低下せずにアンモニアガスが袋に残存した。
なお、それら脱臭剤10A〜10Dはペレット状に成形されているが、ペレット状のみならず、成型方法によって他の形態に成形することもできる。たとえば、脱臭剤を所定厚みを有するシート状や角柱状、円柱状に成形することもできる。また、脱臭剤10A〜10Dの製造において乾燥機31を使用しているが、乾燥機の他に、天日干しによって脱臭剤10A〜10Dを乾燥させることもできる。