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JP2010023051A - 溶製軽金属部材およびその製造方法 - Google Patents

溶製軽金属部材およびその製造方法 Download PDF

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JP2010023051A JP2008184267A JP2008184267A JP2010023051A JP 2010023051 A JP2010023051 A JP 2010023051A JP 2008184267 A JP2008184267 A JP 2008184267A JP 2008184267 A JP2008184267 A JP 2008184267A JP 2010023051 A JP2010023051 A JP 2010023051A
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Hideaki Matsuoka
秀明 松岡
Takashi Maejima
貴士 前嶋
Hiroyuki Kawabata
博之 川畑
Hiroshi Kawahara
博 川原
Hiroaki Iwabori
弘昭 岩堀
Chikatoshi Maeda
千芳利 前田
Tokujiro Konishi
徳次郎 小西
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Abstract

【課題】低コストで生産可能な耐摩耗性に優れた第2種Al合金材を提供する。
【解決手段】本発明の溶製軽金属部材の製造方法は、ロール鋳造機(1)へAl合金等の軽金属溶湯(M)を供給し、回転する該鋳型部(11、12)で該軽金属溶湯を連続的に急冷凝固させつつ連続した板状素材(R)を鋳造する素材鋳造工程と、素材鋳造工程時の余熱によって少なくとも温間状態にある板状素材に塑性加工を加え所望形状に創成した素形材とする形状創成工程とを備えることを特徴とする。素材鋳造工程後の板状素材は急冷凝固により微細な組織を有すると共に、鋳造時の余熱によって少なくとも温間状態のまま形状創成工程で塑性加工される。このため本発明の製造方法によれば、わざわざ再加熱するまでもなく効率的で高品質な成形が可能となり、省エネルギー化と歩留りや生産効率の向上との両立を図れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶製により得られた板状素材を成形した溶製軽金属部材およびその製造方法に関する。
部材、装置さらには車両等の軽量化を図るために、従来の鉄系部材がAl系またはMg系の軽金属部材で代替されつつある。この傾向は、単なるケースやハウジングに留まらず、耐摩耗性や摺動性が要求される機能部材にまで及んでいる。例えば、自動車用部材でいえば、内燃機関(レシプロエンジン)のシリンダライナーが、従来の黒鉛鋳鉄製からAl合金製に替わりつつある。
もっとも、このような代替がなされるとしても、従来と同等以上の機能(強度、耐摩耗性等)が確保されるなければならない。これに関する提案が下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。
先ず、特許文献1では、黒鉛粒子と硬質粒子を分散させた粉末Al合金を成形、焼結させた焼結製Al合金部材を用いたシリンダライナーが提案されている。また、特許文献2では、Al−高Si系合金の粉末をシリンダライナー表面に溶射することが提案されている。
しかし、これらいずれの場合も、高コストなAl合金粉末を、さらに成形、焼結したり、溶射したりすることが必要となる。従って、このように粉末を用いたAl合金部材では、要求される機能は確保されるとしても、その製造コストを容易には削減し難い。一方、生産性のよい重力鋳造やダイカスト鋳造等では、化学組成をいくら調整したとしても、要求特性を十分に満たすAl合金部材を得ることは困難である。
また特許文献3〜5には、製造時のコストやエネルギー消費量の低減を図るために、連続鋳造圧延により製造した汎用Al合金材を軽金属部材に用いることが提案されている。しかしこのような軽金属部材では、材料単体としての特性はよくても、部材への成形性が劣ったり加工コストが高くなったりして、結局は生産コストを効果的に削減することはできない。
特許3234810号公報 特開2003−286501号公報 特開平8−165538号公報 特開2004−156117号公報 特開2006−249550号公報
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、軽金属からなる所望形状の素形材を低コスト、低エネルギー消費量で製造できる溶製軽金属部材の製造方法を提供することを目的とする。また、その方法により製造された各特性に優れる溶製軽金属部材を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、軽金属溶湯を急冷凝固して得た板状素材へその急冷凝固に引き続いて塑性加工を加え、所望形状の素形材へ形状創成することを思いつき、優れた特性の溶製軽金属部材を低コストで得ることに成功した。この成果を発展させることで、本発明者は以降に述べる種々の発明を完成させるに至った。
〈溶製軽金属部材の製造方法〉
(1)すなわち、本発明の溶製軽金属部材の製造方法は、環状の鋳型部を外周面側に有すると共に回転する冷却ロールを少なくとも一つ有するロール鋳造機へ、アルミニウム(Al)、Al合金、マグネシウム(Mg)またはMg合金のいずれかである軽金属からなる軽金属溶湯を供給し、該鋳型部で該軽金属溶湯を急冷凝固させつつ連続した板状素材を鋳造する素材鋳造工程と、
該素材鋳造工程時の余熱によって少なくとも温間状態にある板状素材に塑性加工を加え所望形状に創成した素形材とする形状創成工程とを備えることを特徴とする。
(2)本発明の溶製軽金属部材の製造方法によれば、板状素材を連続鋳造する素材鋳造工程と、その素材鋳造工程で得られた板状素材に塑性加工を与えて所望形状に創成し素形材とする形状創成工程とが短時間内に続いてなされる。
このため、板状素材を塑性変形させる形状創成工程に際して、板状素材をわざわざ再加熱するまでもなく、素材鋳造工程の余熱を形状創成工程で利用できる。このため省エネルギー化を図りつつも、温間状態または熱間状態のまま板状素材を塑性加工でき、割れ等を生じさせることなく成形等でき、所望形状の素形材を素早く低コストで得ることができる。
しかも本発明に係る板状素材は、冷却ロールを用いた鋳造法(ロールキャスト法)により急冷凝固して得られたものであるから、その金属組織は非常に微細となっている。このため、板状素材を形状創成して得られた素形材は、その軽金属の化学組成に応じた各種特性(例えば、強度、延性、靱性、耐熱性、耐摩耗性など)に優れる。
さらに、そのような機械的特性などに限らず、板状素材が急冷凝固したものであることは、その後の形状創成工程における成形性にも大きく貢献している。つまり、本発明者が鋭意研究したところ、その板状素材がそのように急冷凝固されたものであることによって、その板状素材へ強加工を加えた場合でも、板状素材は割れ等を生じず、歩留まりのよい形状創成工程がなされる。
このように本発明の溶製軽金属部材の製造方法によれば、素材鋳造工程と形状創成工程とが相乗的に作用し、単に省エネルギー化のみならず、板状素材の成形性向上や素形材の歩留り向上によって生産コストが低減され、しかも、得られた素形材も各特性に優れたものである。
〈溶製軽金属部材〉
本発明は溶製軽金属部材の製造方法としてのみならず、それにより得られた溶製軽金属部材としても把握できる。
〈その他〉
(1)特に断らない限り、本明細書でいう「x〜y」は、下限xおよび上限yを含む。また、本明細書に記載した上下限値は任意に組合わせて、「a〜b」のような範囲を構成し得る。
本発明でいう「不可避不純物」は、原料中に含まれる不純物、鋳造時、成形時等に混入する不純物などであって、コスト的または技術的な理由等により除去することが困難な元素である。
また「改質元素」は、本発明の必須元素(Al、Mg、Si若しくはCuまたはFe、Ti、Zr、Nb、Hf、Sc若しくはY)以外の元素であって、溶製軽金属部材の特性改善に有効な元素である。改善される特性の種類は問わないし、これら各元素の組合せは任意である。
また、上記元素の組成が重要であるため、改質元素の組成は特に限定されないが、一例を挙げると、P:0.001〜0.1%、B:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、V:0.01〜0.3%、Mn:0.01〜0.3%である。
(2)本発明の溶製軽金属部材でいう「溶製」は、単なる製造方法を示すのみならず、製法の表現を便宜的に用いることで、金属組織などの形態を間接的に特定している。これにより本発明の溶製軽金属部材は、少なくとも従来の金型鋳造や重力鋳造などの鋳造材、鍛造材、焼結材、溶射材などとは区別される。
(3)本発明でいう「急冷凝固」を一概に特定することは容易ではない。敢えて急冷凝固を特定するとするなら、ダイキャスト鋳造の冷却速度よりも大きな冷却速度をもつ場合、より具体的にいえば、冷却速度の下限が100℃/秒、150℃/秒、200℃/秒さらには250℃/秒である。上限を特定する必要はないが、現実的な観点から敢えていえば10000℃/秒程度となる。
また、急冷凝固の有無は、軽金属の化学組成に応じて定まる板状素材または素形材の金属組織から間接的に判定することも可能である。例えば、特定の化学組成範囲内にあることを前提として、初晶の平均粒径(例えば、初晶Si粒子の平均粒径)、DASの大きさ、晶出物や析出物の平均粒径や分散量などにより急冷凝固の有無や範囲は間接的に特定され得ると考える。
(4)本発明でいう板状素材の「板状」は、通常は厚さ(T)に対して横幅(W)が大きい場合(T<W)であるが、それには限られず、いわゆる棒状、棒状、管状、溝(樋)状などをも含む概念である。要するに、本発明の板状素材は、塑性加工が加えられて軽金属部材またはそれに近い素形材を構成し得るものである限り、その具体的な形状やサイズを問題としない。
また、それらの断面形状も角形(三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等)、丸形(円形、楕円形等)などの定形状に限らず、C形状、L形状、チャンネル形状などの異形状でもよい。この異形状には、不均等な厚い部分をもつ偏肉状(偏肉状素材)も含まれる。このような偏肉部位は、例えば、幅方向の一方側、両側、略中央側、厚さ方向の片側または両面側などである。
もっとも、板状素材の厚さの上限は8mmさらには6mmとし、その下限は0.5mmさらには1mmとすると、板状素材は大きな冷却速度で凝固し、良好な成形性を発現する。また、その板状素材からなる素形材または軽金属部材は、部品として十分な強度および剛性を有する。なお、板状素材の幅は2500mm以下であると、幅方向に均質な組織が得られる点で好ましい。
(5)本発明でいう板状素材の「素材」は、いわゆるロールキャストした鋳物のままでも良いし、それに多少の圧延などが加えられたものでもよい。つまり、板状素材の「素材」は、素材鋳造工程後の形状創成工程に供される「素材」という意味であり、ロールキャスト後の形態を大きく変えない限り、多少の加工が加えられたものも本発明でいう「板状素材」に含まれる。
(6)一方、本発明でいう「素形材」には、ロールキャスト後の鋳物に圧延等を加えてその板厚や金属組織を単に調整したに過ぎないものは含まれない。板状素材へ塑性加工を加えて最終的な軽金属部材の形状に近づけたものが素形材である。例えば、板状素材をいわゆるニアネットシェイプさらにはネットシェイプしたものである。これを形状創成工程でいう「塑性加工」という観点からみると、板状素材を単にロール圧延するだけのような加工は本発明でいう塑性加工に該当せず、形状創成工程でいう「塑性加工」とは、板状素材を軽金属部材の最終形状に近い所望形状に創成する加工ともいえる。
(7)その形状創成工程の「温間状態」とは、常温を超えて再結晶温度未満に加熱された状態をいう。ちなみに「熱間状態」とは、再結晶温度以上融点未満に加熱された状態をいう。
これらは軽金属の化学組成や塑性加工の程度により異なるため、それらの具体的な温度範囲を特定することは困難である。敢えていえば、Al合金製の板状素材における温間状態とは、例えば、150〜300℃さらには200〜280℃である。また、Al合金製の板状素材における熱間状態とは、例えば、350〜500℃さらには400〜480℃である。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る溶製軽金属部材のみならず、その製造方法にも適宜適用できる。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
そして溶製軽金属部材またはその製造方法に係る本発明は、上述した構成に加えて、次に列挙する構成中から任意に選択した一つまたは二つ以上がさらに付加され得る。その際、カテゴリーを越えて重畳的または任意的に抽出した構成を付加可能である。例えば、溶製軽金属部材の組成に関する構成であれば、その物自体にも、その製造方法にも関連することはいうまでもない。また、一見「方法」に関する構成のように見えても、プロダクトバイプロセスとして理解すれば「物」に関する構成ともなり得る。
《製造方法》
〈素材鋳造工程(ロールキャスト)〉
(1)素材鋳造工程は、Al、Al合金、MgまたはMg合金のいずれかである軽金属溶をロール鋳造機へ供給しロール鋳造機の冷却ロールで急冷凝固させて板状素材を製造する工程である。本発明でいうロール鋳造機は、冷却ロールが少なくとも一つ有ればよい。
このためロール鋳造機は、例えば、冷却ロールと冷却ベルト、冷却ロールと加圧(成形)ロール、または冷却ロールと冷却ロール(双ロール)などを組合せた鋳造機であってもよい。
ロール鋳造機は、従来から鋼板などを連続鋳造する場合に使用されてきたが、本発明では単なる板材等を製造するためではなく、より複雑な形状をした溶製軽金属部材を効率よく製造するための一工程としてロール鋳造機を利用している。
軽金属溶湯を安定して急冷凝固させ高品質の板状素材を効率的に生産する上で、そのロール鋳造機は少なくとも一対の冷却ロールが対峙して配設された双ロール鋳造機であると好ましい。以降では便宜上、この双ロール鋳造機を主に取り上げて説明する。
双ロール鋳造機は、通常、外周面側に設けられた環状の鋳型部で対峙させた一対の冷却ロール(これを適宜「双ロール」という。)と、この双ロールへ供給する溶湯を一時的に溜めると共に双ロールへの供給量を調整し得る溶湯溜まりと、一対の冷却ロールの間隔を調整する調整機構と、各冷却ロールを駆動する駆動装置と、冷却ロールを冷却する冷却装置とからなる。
一方の冷却ロールの環状の鋳型部の断面形状は、形状創成工程に供する板状素材の形状に応じて定まる。例えば、板状素材が板厚の略一定な平板状素材であれば、その鋳型部は平坦な環状帯であれば足る。この場合、対峙した他方の冷却ロールの鋳型部も同形状にすれば足る。もっとも、板状素材が平板状素材の場合であれば、各冷却ロールの鋳型部は、外周中央部を薄く彫込んだ断面略コ字状(凹状)であってもよい。また、対峙した双ロールの一方の冷却ロールの鋳型部のみを凹状とし、他方の冷却ロールの鋳型部を平坦な環状帯としてもよい。
また、少なくとも一つの冷却ロールの鋳型部が、冷却ロールの幅方向の断面形状が凹状の環状溝であっても、その幅方向の凹み具合を変化させることで、幅方向の断面形状が不均等な偏肉状の板状素材(偏肉状素材)を得ることもできる。
このように、ロール鋳造機により板状素材を連続鋳造する場合、冷却ロールの鋳型部の形状は種々変更可能であり、これにより溶製軽金属部材の形状に応じて、様々な形状の板状素材を連続的に得ることが可能となる。また、その場合、対峙した冷却ロールの両方の鋳型部が必ずしも対称的な形状である必要はなく、板状素材の急冷凝固やその安定した成形性を確保できる範囲で種々変更可能である。
冷却ロールの直径、幅等は板状素材の所望サイズに応じて決定され、ロール隙間も板状素材の所望厚さに応じて決定される。冷却ロールの配置は、各冷却ロールの回転軸が略水平に配置される場合のみならず、溶湯溜まりの形態および配置を工夫して各冷却ロールの回転軸が略鉛直に配置される場合でもよい。水平配置した場合、重力の影響を抑制できる分、溶湯溜まりから冷却ロールへ溶湯を供給する速度を調整し易い。
なお、溶湯溜まりへの溶湯の補給は、溶湯補給ノズル等を介して、補給量を調整しつつ適宜行えばよい。冷却ロールの駆動装置は、設定した回転方向や回転速度で、各冷却ロールを駆動し得る。通常、各冷却ロールは同期回転する。
冷却ロールの冷却装置は、軽金属溶湯を急冷凝固させるために、冷却ロールの内周面側から水冷等して、冷却ロールの鋳型部を常時冷却するのが好ましい。この水冷は、例えば、冷却ロールの内周面に冷却水の噴流を当て行える。これにより大きな抜熱が可能となり、鋳型部を安定して冷却できる。
もっとも、冷却ロールの鋳型部に接触した軽金属溶湯から瞬時に大きく抜熱して、軽金属溶湯を急冷凝固させるには、冷却ロールの冷却方法のみならず、その冷却ロールの鋳型部自体が大きな熱伝導率をもつことも重要である。そこで冷却ロールの少なくとも鋳型部の最表面近傍が高熱伝導材からなり、その熱伝導率が50W/m・k以上、100W/m・k以上さらには200W/m・k以上であると好ましい。そのような高熱伝導材として、例えば、CuまたはCu合金がある。例えば、純Cu製であれば、その熱伝導率は350〜400W/m・k程度となる。ちなみに、この高熱伝導材として、純Cu以外に、96%<Cu<99.3%の高銅合金、黄銅、青銅、Cu−Be系銅合金などの各種銅合金を用いることができる。その他の高熱伝導材として、炭素鋼やクロム鋼などの一般鋼材、熱伝導率を改善したダイカスト金型用鋼等も現実的である。なお、軽金属溶湯の温度はその化学組成により異なるものの、高々850℃程度であるので、熱伝導性が高ければ融点が比較的低い金属でも利用可能である。
(2)ロール鋳造機による板状素材の鋳造は次のようにして行われる。
先ず、溶湯が冷却ロールの外周面に接する点(凝固開始点)から凝固が開始する。この凝固開始点からロール間隔が最小になる点(ロールキス点)に至るまで、軽金属溶湯が凝固して形成された円筒面状の凝固殻が冷却ロールの外周表面に形成されて成長する。そして、対峙する冷却ロールの表面に形成された凝固殻が、ロールキス点で圧着されてロール間隔に応じた所定厚さの板状素材が得られる。
このようなロール鋳造機を用いて得られた板状素材は、ロール鋳造機を出た段階で熱間圧延されるから、割れ等を生じることなく欠陥のほとんどないものとなっている。
(3)ロール鋳造機の運転条件は、所望するAl合金部材の形状、仕様に応じて適宜調整すればよい。例えば、ロール周速:1〜60m/min程度、ロール間隔(板厚):1〜10mm程度にすれば好ましい。このような条件で銅製の冷却ロールを運転した場合、板状素材の冷却速度は、板厚平均で102〜104 ℃/秒程度になる。勿論、実際の冷却速度は、板状素材に対する冷却ロールの大きさ、冷却ロールの冷却方法等によって異なり、一概に特定することは難しい。
(4)素材鋳造工程中または素材鋳造工程後(または直後)に、冷却ロールで急冷凝固され、この冷却ロールから剥離した後の板状素材を、冷却媒体により所定温度まで冷却する冷却工程を備えると好適である。
これにより板状素材の板厚が大きい場合でも、ロール鋳造機を出た後の板状素材を確実に急冷凝固させることができる。これにより、板厚に拘らず、内部まで微細な凝固組織をもつ品質的に安定した板状素材が得られる。ここでいう「所定温度まで冷却する」とは、板状素材を室温などの常温以下までは完全に冷却させずに、次の形状創成工程に備えて少なくとも温間状態に板状素材を保つことを意味する。冷却媒体には、水や油などの冷却液、不活性ガスやエアなどの冷却気体である。板状素材の冷却媒体への接触方法には、冷却液浴槽への浸漬、シャワー状またはミスト状の噴霧などがある。
〈形状創成工程〉
(1)形状創成工程は、ロール鋳造に続けて、板状素材を成形(塑性加工)して所望形状に創成した素形材を得る工程である。この工程は冷間状態でも可能ではあるが、本発明ではロール鋳造時の予熱を利用した温間加工または熱間加工がなされる。これにより従来の冷間加工であれば、割れ等が生じる場合でも、本発明の形状創成工程によれば、割れ等を生じることなく、歩留まりよく、Al合金部材などの軽金属部材を生産し得る。具体例を挙げると、硬質なSi粒子が多数分散した板状素材を強加工した場合でも、割れ等を生じることがなく、高い歩留まりにより生産性を向上し得ると共に比較的低い成形荷重で所望形状に成形し得る。このため設備能力の省力化を図れ、溶製軽金属部材の生産コストの低減も図れる。
この塑性加工の際に割れ等の不具合を生じないのは、前述したように、板状素材の加工温度だけではなく、そもそも板状素材が急冷凝固したものであり金属組織が微細であることが大きく寄与している。従って、本発明により高品質の軽金属部材が効率よく生産可能となったのは、素材鋳造工程と形状創成工程が相乗的に作用しているところが大きい。
ちなみに、素材鋳造工程後の板状素材の温度は、当然に固相線以下の温度であるが、それでも100〜500℃程度好ましくは200〜400℃程度にもなる。この素材鋳造工程時の余熱を有効利用する観点から、形状創成工程はできるだけ素材鋳造工程の直後に行うのが好ましい。ただし、素材鋳造工程後の形状創成工程が長くなるほど板状素材の温度が低下し得るから、形状創成工程中に補助的に加熱したり、または再加熱して板状素材を温間状態または熱間状態にする加熱工程を備えてもよい。
ちなみに、温間加工または熱間加工をする場合について説明しているが、本発明に係る板状素材は組織が全体的に微細であるため、冷間成形性も相当に高いことが本発明者により確認されている。
(2)塑性加工
形状創成工程でなされる板状素材の塑性加工は、板状素材に所望形状を付与して素形材とするものである限りその種類は問わない。単なる圧延等は、板状素材の板厚等を変更する程度に過ぎず、素形材とする塑性加工ではないため、本発明でいう塑性加工には含まれない。
本発明でいう塑性加工の一例をあげると、ロールフォーミング加工、プレス加工、打抜加工、バーリング加工、ヘミング加工などがある。塑性加工は、それらのいずれか一種以上であれば足り、複数種が組み合わされたものであってもよい。
ここで「ロールフォーミング加工」とは、雄型と雌型の一対のロール間を長い帯板を通すことにより変形させてフレーム構造やパイプ状構造を作る加工法をいう。
「プレス加工」とは、プレス機の凸凹を有する金型(プレス型)間に板状素材を載置して、その金型間に成形荷重を付与することにより、板状素材を所望の形状に塑性変形(せん断、曲げ、絞り等)させる加工をいう。
「打抜加工」とは、板状素材に金型を当てて所望形状に打ち抜く加工である。
「バーリング加工」とは、板状素材に穴をあけると同時に絞り加工を行い、その穴の周りにフランジ形状を形成する加工である。
「ヘミング加工(カーリング加工)」とは、ワーク端部を折り曲げる加工である。
このような塑性加工の他、板状素材を折ったり曲げたりして立体的な形状に加工する曲げ加工、板状素材に回転運動を与えてヘラやローラーで所望形状を創成するスピニング加工、板状素材の伸びを利用して板厚変化を抑制しつつ模様や文字などの比較的浅い凹凸形状を創成するエンボス加工などの塑性加工でも良い。また、ロールフォーミングにより作られたフレーム状構造物(素形材)またはパイプ状構造物(素形材)を曲げ加工することも可能である。
ところで、このような塑性加工を施す素材形状が基本的に板状であるから、創成できる形状には相応の制限がある。しかし、前述したように、本発明でいう板状素材は、単なる平板材のみではない。つまり、冷却ロールの外周面側にある鋳型部の形状を種々変更することで、様々な形状の板状素材ひいては素形材をも効率的に生産できる。
このような異形材(板状素材)を塑性加工して素形材にすることで、実用されている様々な溶製軽金属部材を本発明により現実に製造することが可能となる。なお、角状、樋状または偏肉状などの形状は、素材鋳造工程で板状素材の形状として付与されてもよいが、平板状の板状素材に対して形状創成工程で素形材の形状として付与されても良い。
もっとも、本発明のような溶製軽金属部材に、ダイキャスト鋳造品や重力鋳造品のような複雑な形状が求められることは少ない。そこで以下では、ロールフォーミング加工によって平板状の板状素材を簡易な円筒状に成形する場合を代表例に取り上げて説明する。
この場合、板状素材がロール鋳造機から送り出される送出方向に円筒の軸が沿うよう(縦向き)にしてもよいし、円筒の軸がロール鋳造機の送出方向に対して垂直となるよう(横向き)にしてもよい。ただ、連続的に効率よく円筒状のAl合金部材を製造するのであれば、前者のように、ロール鋳造機の送出方向に円筒状の軸が沿うように成形するのが好ましい。
成形速度は特に拘らないが、素材鋳造工程の速度に対応または同期した速度であると、溶製軽金属部材を連続的にスムーズに製造できて好ましい。
特に、このような円筒状または半円筒状等の簡単な形状部材は、回転、摺動等する部位に使用される耐摩耗性部材の場合に多い。従って、そのような部材の製造には、塑性加工をロールフォーミング加工とした本発明の製造方法が好適である。
〈付加的工程〉
(1)截断工程
現実的に製造される板状素材は順次鋳造され搬送される連続した素材である。このため、本発明の必須工程ではないとしても、形状創成工程にそれぞれの素形材を分離する分離工程や板状素材を切断する切断工程が含まれない限り、適当な箇所で形状創成工程前または形状創成工程後の板状素材を截断する工程が必要となる。
そこで本発明では、形状創成工程後に溶製Al合金部材を個別に切り離す截断工程を備えると好適である。
形状創成工程前に截断工程を行えば、適当な大きさまたは長さに分離された板状素材が順次得られる。形状創成工程後に截断工程を行えば、適当な形状が創成された素形材が順次得られる。
この截断工程は、例えば、回転刃等からなるカッタやレーザ等を用いて行うことができる。連続する成形体の流れを阻害せずに切断し、また、切断面を比較的綺麗にするには、レーザを用いると好ましい。
(2)接合工程
形状創成工程後の素形材の端部を密着させたり接着させたりすることが必要となる場合もある。そこで本発明の必須工程ではないが、素形材から閉じた筒状部材(軽金属部材)を製造するような場合、本発明は素形材の端部を接合する接合工程を備えると好適である。具体的には、例えば、形状創成工程が板状素材を略管状に成形する工程であり、略管状に成形された素形材の端部を接合して筒状の溶製軽金属部材を得る接合工程を備えると好適である。軽金属部材を効率よく製造するため、接合工程は前記截断工程前に設けられると好ましい。
接合工程は、突合せ部の溶接(アーク、レーザ、TIG、MIGなど)、摩擦攪拌(FSW)接合、固相接合などにより行える。この場合も、素材鋳造工程や形状創成工程の速度に対応した速度で接合工程が行われると、溶製軽金属部材を連続的にスムーズに製造できて好ましい。
(3)熱処理工程
熱処理工程は、溶製軽金属部材を加熱、保持、冷却して、溶製軽金属部材の金属組織を改質する工程である。この改質の種類は問わないが、素形材または溶製軽金属部材の強化、加工歪みの除去、均質化等があり得る。軽金属がAl合金やMg合金であれば、熱処理工程は、例えば、均質化熱処理、溶体化処理、時効処理(ピーク時効処理(T6処理/JIS)、過時効処理(T7処理/JIS)等)である。
具体的な熱処理条件は、軽金属部材に付与したい特性や軽金属の組成等により異なる。一例を挙げれば、均質化処理は、含有する元素が拡散可能な温度、例えば、400〜560℃の温度で10分〜24時間の加熱を行うと好ましい。均質化処理は、加熱後、炉冷または空冷される。これに対して溶体化処理は、そのような加熱をした後に、水冷、湯冷または油冷等により急冷される。
時効処理は、例えば、溶体化処理等よりも低温(例えば、300℃以下)で1〜10時間の加熱を行った後冷却される。これにより、溶体化処理後の内部歪みが除去されたり、化合物粒子が析出することにより高強度化が図られる。
なお、軽金属が後述の第2種Al合金(耐摩耗性Al合金)である場合、熱処理により、マトリックス中に固溶しているSiをマトリックス中から微細に析出させることも可能である。なお、本明細書でいう「初晶Si粒子」はこの析出したSi粒子をも含む概念である。
《軽金属》
本発明でいう軽金属は、Al、Al合金、MgまたはMg合金のいずれかである。本発明では、それらの具体的な化学組成を問題とはしない。従って、汎用されている多種多様な軽金属を本発明の製造方法で用いることもできるし、特定の特性を改善した改良材または新規の開発材を用いることもできる。以降では、特性の改善、取扱性等が比較的容易で実用性の高い軽金属として代表的なAl合金を取り上げて説明すると共に、本発明者が本発明の製造方法に適した軽金属として開発した新規なAl合金についても併せて説明する。
〈汎用Al合金〉
溶製軽金属部材に要求される特性に応じて、本発明の製造方法に好適な化学組成の汎用Al合金を用いるとよい。例えばJIS規格でいうと、AC4C、AC4CH等の鋳造材、2000系合金(Al−Cu系合金)、5000系合金(Al−Mg系)、6000系合金(Al−Mg−Si系合金)、7000系合金(Al−Zn−Mg系合金)、Al−Li−Cu系合金等の高強度材、この他、Al−Fe系合金等の汎用Al合金を本発明の溶製軽金属部材およびその製造方法に用いることができる。
〈第1種Al合金〉
(1)このような汎用Al合金以外に、本発明の溶製軽金属部材およびその製造方法に適した材料を本発明者は新たに開発した。この新規なAl合金(これを本明細書では「第1種Al合金」という。)を用いれば、上述したような優れた効果が得られると共に、その溶製軽金属部材は強度、耐食性、耐軟化性等にも優れたものとなり得る。
具体的にいえば、この第1種Al合金は、全体を100%としたときに、第1成分元素であるFe:0.8〜5%と、第2成分元素であるTi:0.15〜1%とを含有すると共に、Zr、Nb、Hf、ScおよびYからなり各々の含有量が0.05〜2%である第3成分元素群より選ばれた1種以上の第3成分元素が合計量(X)でTiよりも多くFeよりも少なく(Fe%>X%>Ti%)、残部がAlと不可避的不純物および/または改質元素とからなる。
この第1種Al合金は、Siを含有していなくても優れた鋳造性を示すと共に、NiやMnを含有していなくても優れた耐熱性を示す。
そしてこの第1種Al合金を用いた場合に、本発明の素材鋳造工程が、組成から決定される液相線温度よりも20℃以上高い温度で軽金属を溶解させ軽金属溶湯を得る溶解工程と、鋳型部で該軽金属溶湯を組成から決定される固相線温度より少なくとも10℃低い温度まで150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満の冷却速度で急冷凝固させる凝固工程とを備えると好適である。
これにより、強度や耐軟化性に優れた溶製軽金属部材が得られる。例えば、第1種Al合金からなる溶製軽金属部材は、その化学組成から決定される固相線温度の1/2以上という高温環境下に曝された場合でも、その後の室温硬さがほとんど低下しない。このため、第1種Al合金からなる板状素材、素形材または軽金属部材(以下、まとめて「第1種Al合金材」という。)を例えば200℃以上の高温に再加熱して時効硬化等させると、その強度がより向上し得る。それ故、形状創成工程後に第1種Al合金材に対して、さらに熱間加工や熱処理等を施しても、第1種Al合金材の強度を低下させることなく、むしろその強度を向上させることが可能になる。
この理由は次のように考えられる。
第1種Al合金のように、先ずAl合金にFeが添加されると、金属組織的には観ると、Al基地からなるα相と、Al−Fe系化合物とAl基地との共晶組織からなり該α相を取り囲むように形成された層状相とが形成される。さらに、第2成分元素Ti、および第3成分元素が特定量添加されると、これら第2成分元素および第3成分元素をAlに固溶させることができ、過飽和固溶体からなるAl基地が形成される。そのため、熱エネルギーやひずみエネルギーが加わったときに、AlとTi(第2成分元素)と第3成分元素とからなる安定な化合物(金属間化合物)相がAl基地中に析出される。それ故、耐軟化性が向上すると共に加工や加熱等を行った後の強度を向上させることができたと思われる。
(2)付加的構成
第1種Al合金材に関する上記の見解を踏まえて、さらに次のような工程等を本発明の構成へ付加できる。
(i) 第1種Al合金材に対して温度200℃以上で熱間圧延加工を行うことにより、第1種Al合金材の厚みを30%以上圧下させる熱間圧延工程を有すると好適である。
(ii)第1種Al合金材に対して冷間圧延加工を行うことにより、第1種Al合金材の厚みを30%以上圧下させた後、第1種Al合金の融点の1/2以上かつ550℃以下の温度で加熱する冷間圧延−加熱工程を有すると好適である。
(iii) 第1種Al合金材を温度400℃以上で0.5時間〜3時間加熱する熱処理工程を有すると好適である。
(iv)第1種Al合金材は、Al基地からなるα相と、該α相を取り囲むように形成され、かつAl基地とAl−Fe系化合物との共晶組織からなる層状相とを有する金属組織を有し、Al基地はAlの過飽和固溶体からなり、該過飽和固溶体には第2成分元素および第3成分元素が固溶しており、第1種Al合金材の任意断面において、Alと第2成分元素と第3成分元素との金属間化合物からなる粒径5μm以上の晶出物の占める面積率は5%未満になっていると好適である。
(v) 第1種Al合金材は、Al基地からなるα相と、該α相を取り囲むように形成され、かつAl基地とAl−Fe系化合物との共晶組織からなる層状相とを有する金属組織を有し、Al基地は、Alおよび/またはAlに第2成分元素および第3成分元素が固溶したAlの過飽和固溶体からなり、Al基地には、Alと第2成分元素と第3成分元素との金属間化合物からなる粒径2〜500nmの析出物が分散されていると好適である。
(3)具体的形態
第1種Al合金に関して好適な具体的形態を挙げて説明する。
(i) 第1成分元素であるFeは0.8〜5%が好ましい。
Feが過少では、十分な強度が得られず、高温環境下における強度、耐熱性が低下したりし得る。一方、Feが過多では、冷却速度に対応して特性が大きく変化し易くなり、一定の特性を備えた鋳造材を安定的に生産することが困難になる。具体的には、例えば圧延を行った場合に、第1種Al合金材に割れが生じ易くなる。また、鋳造時に粗大な晶出物が形成されやすくなり、加工性や成形性が低下し得る。Feの含有量は2〜4%さらには3〜4%であると好ましい。
(ii)第2成分元素であるTiは0.15〜1%が好ましい。
Tiを第3成分元素と共に添加した場合、合金組織を微細化することができる。また、溶解状態から凝固する際に過飽和に固溶したものが熱間圧延されたり、冷間圧延後に熱処理がされた場合、Al母相中にTiが析出して強度をさらに向上させる。
Tiが過少では、十分な耐熱性、耐軟化性が得られなくなる。一方、Tiが過多では、鋳造時に粗大なAl−Ti系晶出物が形成され易くなり、加工性や成形性が低下し得る。Tiの含有量は0.3〜0.9%さらには0.7〜0.8%であると好ましい。
(iii)第3成分元素は、Zr、Nb、Hf、ScおよびYからなる第3成分元素群から選ばれる1種以上の元素を、個々の含有量が0.05〜2%含有する。
第3成分元素は、第1成分元素Feおよび第2成分元素Tiと共に添加することにより、耐軟化性を向上させる効果を発揮する。すなわち、Al合金に第1成分元素Feを添加した場合、上述のごとくAl−Fe系化合物とAl基地とによって層状相を形成するようになる。さらに第2成分元素Ti、および第3成分元素を特定量添加すると、熱エネルギーやひずみエネルギーが加わったときにAlとTiと第3成分元素とからなる安定な化合物(金属間化合物)相がAl母相内に析出するため、強度特性や耐軟化性を向上させることができる。そのため、熱間圧延、あるいは冷間圧延後に加熱を行った場合に強度を向上させることができる。また、圧延加工を施さずに熱処理だけを行った場合にも同様に強度の向上効果を得ることができる。
第3成分元素群の個々の含有量が%過少では、第3成分元素添加による上述の効果が充分に得られない。一方、少なくとも1種の第3成分元素が過多では、冷却速度を充分に高くしないと大きな晶出物が生じやすくなり、加工性や成形性が劣化する。第3成分元素群の個々の含有量は0.2〜1.2%さらには0.5〜1.2%であると好ましい。
また、第3成分元素の合計含有量X%は、Al合金における第1成分元素Feの含有量をFe%、および第2成分元素Tiの含有量をTi%としたとき、Fe>X>Tiを満足する。
X≧Feの場合は、第1種Al合金材の強度が低下したり、耐軟化性が低下したりし得る。X≦Tiの場合は、耐軟化性が劣化し得る。Fe≦Tiの場合には、第1種Al合金材の強度が低下したり、耐軟化性が低下したりし得る。
第3成分元素群のうち少なくともZrは0.2〜1.2%含有されると好ましい。この場合、優れた強度特性および成形性が維持され、耐軟化性がより向上され得る。Zrの含有量が過少では、Zr添加による上述の効果が充分に得られない。一方、Zrが過多では、溶解工程においてAl合金を溶解させるときの溶解温度が非常に高くなり得る。そのため、溶解時に特別な装置が必要となり、製造コストが増大し得る。
(iv)前記溶解工程において、第4成分元素としてMgは0.05〜2%含有されると好ましい。この場合、成形性を損ねることなく第1種Al合金材の強度がより向上し得る。Mgが過少では、Mgによる強度向上が充分に得られない。一方、Mgが過多では、第1種Al合金材の加工性が悪くなり、例えば圧延時に圧延割れが発生し、成形性が低下し得る。Mgの含有量は0.2%〜1.5%さらには0.3%〜0.8%であると好ましい。
(v)溶解工程では、Cu、Cr、およびCoからなる第5成分元素群から選ばれる1種以上の第5成分元素を0.05〜1%含有すると好ましい。
第5成分元素群のうちCuを含有する場合には、第1種Al合金材の加工性をほとんど損ねることなく、強度を向上させることができる。また、第5成分元素群のうちCrおよび/またはCoを含有する場合には、Al−(Fe,Cr)化合物および/又はAl−(Fe,Co)化合物が形成され、Al−Fe化合物単体が分散するよりも、伸び、加工性、および成形性を向上させることができる。その結果、加工性や成形性等をほとんど損ねることなく、第1種Al合金材の強度を向上させることができる。
第5成分元素が過少では、該第5成分元素の添加による上述の効果が充分に得られない。一方、第5成分元素群のうちCuが過多では、加工性および成形性が悪くなる。また、この場合には、耐食性が劣化し得る。また、第5成分元素群のうちCrおよび/またはCoが過多では、成形性が悪くなる。より好ましくは、第5成分元素の含有量は、0.1%〜0.7%がよく、さらに好ましくは0.1%〜0.5%がよい。
なお、第5成分元素を2種類以上含有する場合には、その合計量を0.05〜1%という前記範囲にすることが好ましい。
(vi)溶解工程で、さらに第6成分元素としてVおよび/またはMoを0.05%超え0.5%未満含有するとが好ましい。この場合、第1種Al合金材の加工性および成形性をほとんど損ねることなく、強度を向上させることができる。
第6成分元素が過少では、その効果が充分に得られず、過多では溶解温度が著しく上昇してしまう。また、粗大な晶出物が形成されやすくなり、加工性および成形性が悪くなる。第6成分元素の含有量は0.1〜0.4%さらには0.1〜0.3%であるとより好ましい。第6成分元素を2種類含有する場合は、その合計量を0.05%〜0.5%にすると好ましい。
(vii)第4成分元素と第5成分元素と第6成分元素との合計量を3%以下にすると好ましい。それらの合計量が過多では、第1種Al合金材の加工性が悪くなり、例えば圧延時に圧延割れが発生し得る。またこの場合には、素材鋳造工程において晶出物が生じやすくなり、成形性が劣化し得る。
また、溶解工程においては、第1種Al合金溶湯を、その組成から決定される液相線温度から20℃以上高い温度(液相線温度+20℃以上)で溶解させて得る。溶解温度が過少では、十分な湯流れ性を得ることができず、鋳造後の第1種Al合金材の内部に巣が形成され、健全な第1種Al合金材を得ることができない。
(viii)次に、素材鋳造工程で、第1種Al合金の組成から決定される固相線温度より少なくとも10℃低い温度すなわち少なくとも固相線温度−10℃に達するまで、上記溶湯を冷却速度150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満で冷却しつつ板状に鋳造して第1種Al合金の板状素材を得ると好ましい。
素材鋳造工程における冷却速度が過少では、凝固過程で粗大な晶出物が形成されるため、成形性が悪くなったり、強度特性および耐軟化性が低下したりし得る。また、10000℃/秒を越える冷却速度を実現するためには、特別な装置が必要となるため、製造コストが増大し得る。また、10000℃/秒を越える冷却速度を達成する場合には、鋳造後の第1種Al合金の板状素材の板厚を相当薄くする必要がある。
上記の範囲内の冷却速度であれば、第1種Al合金の板状素材の断面内にアモルファス相は実質的に形成されず、例えば結晶化温度の前後で生じる特性変化がほとんど生じない熱的安定性の高い板状素材を得ることができる。
また、素材鋳造工程において、冷却速度による冷却を固相線温度−10℃に達するまで行わなかった場合には、連続鋳造時に上流の溶湯の熱によって下流の鋳造材が局部的に再溶融し、粗大な晶出物が形成される。そのため、得られるAl合金鋳造材の金属組織が不均一になり得る。
なお、冷却速度(150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満)による冷却は、少なくとも固相線温度−10℃に達するまで行えばよく、当該温度に達した以降は150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満という冷却速度からはずれる温度で冷却してもよい。
冷却速度(150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満)による冷却は、固相線温度−100℃に達するまで行うと好ましい。
(ix)素材鋳造工程では、溶湯を厚さ0.3〜10mmの板状に連続鋳造すると好ましい。
板厚が過小では、ロール間への注湯やギャップ制御などが困難になり、第1種Al合金材の生産が困難になる。一方、板厚が過大では、150℃/秒以上という冷却速度を確保することが困難になる。また、冷却速度にばらつきが生じ易く、均一な特性の第1種Al合金の板状素材を得ることが困難になる。
(x)本発明の場合、熱間圧延工程は必須ではない。もっとも、熱間圧延工程を行う場合は、素材鋳造工程後の板状素材に対して熱間圧延工程を行うと好ましい。これにより、別途加熱するまでもなく、工数や製造時間を少なくすることができ、製造コストの低減を図ることができる。この熱間圧延工程中の板状素材の温度は200〜500℃が好ましい。この温度が過小では割れ等を生じるおそれがあり、過大では層状相中のAl−Fe系化合物が粗大化し、強度が低下し得る。またこの場合、熱間圧延工程中、圧延ロールに対するダメージが大きくなり、ロール寿命の低下を招く。
なお、第1種Al合金の場合、「固相線温度より少なくとも10℃低い温度」が500℃以下になることはない。したがって、上記鋳造工程において500℃まで冷却しても、上述の「固相線温度より少なくとも10℃低い温度」までの冷却は充分確保される。また熱間圧延後に、例えば450℃×1hのような高温焼鈍を行っても、もはや耐軟化性はほとんど変化しない。
〈第2種Al合金〉
(1)本発明者は、上述したような汎用Al合金や第1種Al合金以外にも、溶製軽金属部材に適した新規なAl合金(これを本明細書では「第2種Al合金」という。)を開発した。この第2種Al合金を用いれば、従来の焼結材や溶射材よりも遙かに低コストで耐摩耗性に優れた溶製軽金属部材を得ることができる。
具体的にいえば、この第2種Al合金は、前記軽金属は、全体を100%(以下単に「%」という。)としたときに、ケイ素(Si):17〜43%と、銅(Cu):0.2〜7%と、マグネシウム(Mg):0.05〜4%と、残部がAlと不可避不純物および/または改質元素とからなる。
そしてこの第2種Al合金からなる板状素材、素形材または軽金属部材(以下、まとめて「第2種Al合金材」という。)は、円相当径でいう平均粒径が5〜50μmの初晶Si粒子と、分散した該初晶Si粒子を保持するマトリックスとからなる金属組織を少なくとも表層部に有し、優れた耐摩耗性を発現し得る。
なお、円相当径とは、金属組織を顕微鏡観察した際に求まる初晶Si粒子の占める面積を円相当の面積に換算したときの直径である。具体的には、顕微鏡写真を画像処理等して容易に求めることができる。初晶Si粒子とマトリックスとは顕微鏡写真上で明瞭にコントラストが違うから、二値化処理したのち、各種画像計測処理を行う。また、平均粒径とは、一定視野内(具体的には約2700μm x 約2000μmの視野を5視野以上)の円相当径の平均である。
この第2種Al合金材が低コストであるにも拘らず、優れた耐摩耗性を発現する理由は必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。
第2種Al合金材は、溶製材といっても、一般的な鋳型部に溶湯を注湯する重力鋳造やダイカスト鋳造とは異なる。すなわち、ロール鋳造機により鋳造された板状素材を、成形してなる。このため、成形前の板状素材の段階から、少なくともその表層部には、第2種Al合金溶湯が急冷凝固した微細な金属組織が形成される。しかも本発明では、このようにロール鋳造機を用いて微細な金属組織が形成されることを踏まえつつも、さらに、Al合金溶湯の組成を調整することで、その金属組織が単に微細なだけではなく、初晶Si粒子が強固なマトリックス中に微細に晶出、分散した耐摩耗性に優れた金属組織を得ることに成功している。こうして、第2種Al合金材は、低コストな溶製でありながらも、優れた耐摩耗性を発揮するに至った。
しかも本発明では、ロール鋳造機による板状素材の鋳造後に、連続して、第2種Al合金からなる板状素材を成形している。このため、改めて板状素材を加熱等しなくても、鋳造時の予熱を利用して少なくとも温間成形が可能である。このため、硬質な初晶Si粒子が多数分散し、本来は成形が困難な板状素材であっても、低コストで割れ等を生じさせることなく成形することが可能である。
そして、別の場所で製造された素材(板材や鋳物)を搬送し、それを順次成形する従来の製造方法に比べて、本発明の場合は、素材鋳造工程とその素材の形状創成工程を同一場所で、同時期に、連続的に行えるため、従来必要であった搬送、段取り、予備加熱等に係る時間やコストを大幅に削減できる。
このように第2種Al合金材は、低コストで耐摩耗性に優れるのみならず、素材製造から製品に至るまでの工程を効率化することで、全体的に観ても、低コストで大量生産可能なものである。
なお、本明細書でいう「耐摩耗性」は、一般的な摩耗試験であるボールオンディスク、ピンオンディスク、リングオンディスクなどの測定により、客観的または相対的な比較が可能である。もっとも、このような試験を行わずとも、技術常識または一般的な当業者の経験から、金属組織を顕微鏡等で観察し、初晶Si粒子の平均粒径や分散状態(粒子数、均一性、粒形状、面積率等)またはマトリックスの凝固組織などを調べることでも評価できる。例えば、ある程度の初晶Si粒子が、微細に均一に晶出または析出しており、また、マトリックスも微細で強固であり、靱性等を低下させる余計な晶出物などが含まれていない場合、耐摩耗性に優れる金属組織と判断し得る。
(2)化学組成
本発明に係る第2種Al合金は、Si、Cu、MgおよびAlを基本元素とする。
(i)Si
Siは、耐摩耗性を発現させるSi粒子を晶出させる重要な元素である。特に第2種Al合金では、Al合金溶湯中のSi量を増加させ、全体的に過共晶組成とすることで、多数の微細な初晶Si粒子の晶出を容易にしている。
Si量が過少では、晶出する初晶Si粒子量が少なく十分な耐摩耗性が得られない。Si量が過多の場合、被耐摩耗材(相手材)への攻撃性が強くなり、また、加工性を悪化させるため望ましくない。さらに、Si量が過多になると溶解温度が高くなりすぎて、所望する微細な金属組織からなる板状素材を得ることが困難となる。
このような観点から第2種Al合金では、Al合金中のSi量を17〜43%とした。この上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、18%、19%、22%、24%、30%、35%、37%、38%、40%、41%、42%から任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
(ii)CuおよびMg
CuおよびMgは、初晶Si粒子を保持するマトリックスを強化する元素である。第2種Al合金材が安定した耐摩耗性を発揮する上で、初晶Si粒子の存在のみならず、その初晶Si粒子を保持するマトリックスの高強度化が重要となる。これにより、第2種Al合金材自体の機械的強度の向上も同時に図れる。このような元素が過少では強度の向上が望めず、過多では高強度になり過ぎて、鋳造後の板状素材を連続的に成形しづらくなる。
このような観点から第2種Al合金では、Al合金中のCu量を、0.2〜7%とした。この上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、0.3%、0.4%、0.6%、0.8%、1%、2%、3%、4%、5%、5.5%、6%、6.5%から任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
また、同様に第2種Al合金では、Al合金中のMg量を0.05〜4%とした。この上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、0.07%、0.1%、0.5%、0.8%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%から任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
(iii)P
Pは、高SiのAl合金溶湯から晶出する初晶Si粒子を微細に、また、球状化する上で有効な元素である。初晶Si粒子が微細で球状であるほど、耐摩耗性に優れた第2種Al合金材が得られる。
Pが過少では、そのような効果が得られず、過多の場合は微細球状化の向上が望めないし、原料コストが高くなる。
このような観点から第2種Al合金では、Al合金中のP量を質量比で20〜400ppmとすると好適である。この上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、30ppm、60ppm、100ppm、150ppm、200ppm、250ppm、300ppm、350ppmから任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
(3)金属組織
第2種Al合金材の金属組織は、マトリックス中にSi粒子が分散した複合組織となっている。
初晶Si粒子は、前記組成のAl合金溶湯を急冷凝固することで形成され、第2種Al合金材の耐摩耗性に大きな影響を与える。特に、その平均粒径が重要であり、平均粒径が過小でも過大でも、十分な耐摩耗性が得られない。初晶Si粒子の平均粒径は、Al合金溶湯の冷却速度等によって変化し得るが、平均粒径が円相当径で5〜50μmとなるようにすると、十分な耐摩耗性が得られる。この平均粒径の上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、7μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm、45μmから任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
また、金属組織を顕微鏡観察した際に、初晶Si粒子が金属組織中に占める割合である面積率が10〜40%であると好ましい。この面積率が過小または過大であると、十分な耐摩耗性または安定した摺動性が得られない。この上下限は、その数値範囲内で任意に選択され得る。特に、11%、15%、30%、35%、37%、40%から任意に選択した数値を上下限にすると好ましい。
なお、マトリックスは、前記の化学組成を有するAl合金から、晶出したSi粒子を除いた組成からなる。従ってマトリックスは、残余のSiとCuとMgとがAl中に固溶、晶出または析出したAl合金からなる。特に、前述したCuまたはMgがマトリックスの特性に影響を与え、耐摩耗性を発現させる初晶Si粒子の保持性、第2種Al合金材の摺動性を確保する上で重要である。
なお、本発明に係る板状素材の厚さは問わないが、その後の成形を考慮すると、通常は数mm〜十数mm程度である。板状素材の幅は、成形方法や溶製軽金属部材のサイズに応じて適宜、決定される。第2種Al合金からなる溶製軽金属部材の形状も問わないが、その形状の範囲は、鋳造した板状素材を連続的に成形できる範囲である。もっとも、板状素材の鋳造に続いて一次成形した後に、別途、二次成形等がなされてもよい。
《用途等》
(1)本発明の溶製軽金属部材は、形状や使用形態を問わないが、各種の優れた特性を発現することから、従来の鉄製部材に替えて本発明の溶製軽金属部材広く用いることで各種装置などの軽量化を図ることができる。例えば、自動車エンジンのシリンダライナーを、従来の黒鉛鋳鉄製から第2種Al合金からなる本発明の溶製軽金属部材製に替えれば、軽量化による燃費改善、走行性能の向上等が期待される。また、従来の焼結製部材など本発明の溶製軽金属部材に替えることで、コスト削減を図ることができる。
(2)塑性加工の類型別に本発明の溶製軽金属部材の用途等を観ると、例えば、次のようになる。
(i)ロールフォーミング加工
ロールフォーミング加工を経て製造される溶製軽金属部材として、自動車の車体用ピラー、バンパーリンフォースメント、内燃機関エンジンのスリーブ(ライナー)、サイドメンバー、サイドシル、クロスメンバー、ラダーフレーム、ドアビーム等がある。
この場合に用いる軽金属の種類は特に限定されず、例えば、前述したような汎用Al合金、第1種Al合金または第2種Al合金のいずれをも用いることもできる。特に本発明は、形状創成工程の塑性加工をロールフォーミング加工とするロールフォーミング工程であると好適である。
(ii)プレス加工
プレス加工を経て製造される溶製軽金属部材として、自動車のフード(トランク、ボンネットなど)、フロアパネル、センターピラー、サブフレーム等がある。この場合に用いる軽金属の種類も特に限定されないが、部材の強度、剛性、靱性(=衝撃吸収性)の観点から、特に第1種Al合金または汎用Al合金のいずれか用いると好適である。
(iii)打抜き加工、バーリング加工またはヘミング加工
打抜き加工、バーリング加工またはヘミング加工を経て製造される溶製軽金属部材として、各種のリンク部材、アーム部材等がある。この場合に用いる軽金属の種類も特に限定されないが、部材の強度、剛性、靱性(=衝撃吸収性)の観点から、特に第1種Al合金を用いると好適である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《製造装置》
〈基本形態〉
本発明に係る溶製軽金属部材の一例として、円筒状部材Lを図1に示す鋳造成形装置Aを用いて製造した。この円筒状部材は、例えば、自動車用エンジンのシリンダに圧入され、ピストンと摺接するシリンダライナーを想定したものである。
鋳造成形装置Aは、双ロールキャスター1(双ロール鋳造機)と、ロールフォーミング機2と、レーザー溶接機3と、カッタ4とからなる。
双ロールキャスター1は、溶湯溜まり10と、一対の冷却ロール11、12と、その冷却ロール11、12を冷却する冷却装置(図示せず)、冷却ロール11、12を回転させる駆動装置(図示せず)からなる。なお、冷却ロール11、12の各回転軸は水平に配置されているが、冷却ロール11と冷却ロール12とはそれぞれ鉛直方向に配置されている。そして溶湯溜まり10は、その冷却ロール11、12の隙間(ロールキス点)に向けてAl合金溶湯Mが供給されるように水平配置されている。なお、Al合金溶湯Mは、溶湯溜まり10の湯面が所定範囲に収まるように、図示しない溶湯補給ノズルから継続的に補給される。
冷却ロール11、12の外周面側は、いずれも平坦な環状帯からなる銅製の鋳型部となっている。この銅製の鋳型部は、冷却ロール11、12の内周面へ噴霧された冷却水により、その内周面側から常時冷却冷されている。
ロールフォーミング機2は、双ロールキャスター1を出てきた薄板材R(板状素材、平板状素材)をその送出方向を軸とする円筒状に成形すべく、複数の成形ローラ21が配置されてなる。各成形ローラ21は独立して回転または駆動され得る。薄板材Rの送り速度は、冷却ロール11、12の速度に応じて調整される。
レーザー溶接機3は、ロールフォーミング機2を出てきた略円管状の薄板材Rの端部に、レーザーを縦方向(送出方向)に照射して、その端部を溶融接合させる。なお、ロールフォーミング機2を抜けた段階で、その両端部は突き合わされた状態となっている。
カッタ4は、レーザー溶接機3により両端部を溶接されたパイプ材を、シリンダライナー等の所望される高さに応じて切断していく。このカッタ4には、高速回転させた刃を対象物に当てて切断する高速カッタを用いた。こうして円筒状部材Lが順次、連続的に得られる。
〈変形形態1〉
上述した鋳造成形装置Aのロールフォーミング機2をロールフォーミング機102に変更した鋳造成形装置Bを図2に示した。この鋳造成形装置Bにより、本発明に係る溶製軽金属部材の一例として角形状(溝形状)部材Fが製造される。なお、図1に示した各部材から変更のない各部材については、図1と図2で同じ符号を用いた。
具体的にいえば、鋳造成形装置Bのロールフォーミング機102は、双ロールキャスター1を出てきた薄板材R(板状素材)をその送出方向を軸とする角形状(チャンネル形状)に成形すべく、複数の成形ローラ121が配置されてなる。その他は鋳造成形装置Aの場合と同様である。
〈変形形態2〉
図1または図2では、冷却ロール11、12の外周面が平坦な環状帯であって、幅方向で板厚が一定な平板状の板状素材(平板状素材)が得られる双ロールキャスター1を示した。これに対して、冷却ロールの外周面形状(鋳型部形状)を変更した双ロールキャスター2の冷却ロール211、212を図3に示した。冷却ロール211は、外周面中央が断面円弧凸状の雄型となっており、冷却ロール212は外周面中央が断面円弧凹状の雌型となっている。これら冷却ロール211、212が嵌合的に配置されることで、それらが対峙する外周中央部には円弧状のキャビティCが形成される。この双ロールキャスター2を用いると、図4(a)に示す断面が半円状の連続した半円筒形状の樋状素材が得られる。
この樋状素材をさらにロールフォーミング機で所望形状に成形することで、種々の本発明に係る溶製軽金属部材が得られる。
〈変形形態3〉
さらに、その冷却ロール211、212を、外周面中央の断面形状が角状となる雄型および雌型とすることで、角状のキャビティCが形成され、図4(b)に示すような断面が角溝状の連続したチャンネル形状の樋状素材が得られる。
《試験片の製造》
〈第1種Al合金の検討〉
上述した鋳造成形装置Aを用いて溶製軽金属部材を製造するに際して、先ず、溶製軽金属部材の特性改善に有効なAl合金(第1種Al合金)の開発検討を次のようにして行った。
先ず、表1−1〜表1−4に示すように複数種類の組成を有するAl合金よりなる第1種Al合金材(板状素材または素形材)を作製し、その耐軟化性等を調べその優位性を明らかにした。その内で好適と思われる範囲内にある第1種Al合金材(実施例1〜48)について、その合金成分組成、比重、および冷却速度を表1−1および表1−2に示した。比較のために、それ以外の成分範囲からなるAl合金よりなるAl合金鋳造材(比較例1〜20および比較例28〜37)および好適な範囲から外れる冷却速度で作製した第1種Al合金材(比較例21〜27)も準備した。こられの合金の成分組成と比重を表1−3および表1−4に示した。なお、本例において、冷却速度は、鋳造工程において各組成のAl合金の溶湯が冷却されていく過程において、固相線温度±40℃の範囲を通過するときの速度をもって決定した。
本例では、図1−1に示すように各第1種Al合金材(実施例1〜48、比較例1〜20および比較例28〜37)を単ロール式の連続鋳造によって作製し、その後、耐軟化性評価のために各種後処理工程を行った。
すなわち、図1−1(a)〜(c)に示すように各第1種Al合金材を作製するに当たり、各合金組成から決定される液相線温度よりも20℃以上高い温度(溶解温度)で各Al合金を溶解させて溶湯を形成する溶解工程S1と、この溶湯を表1−1〜表1−4に示す各種冷却速度で少なくとも固相線温度より10℃低い温度まで冷却し、さらに室温まで冷却し、厚み1.2mmの板状に鋳造して第1種Al合金材(板状素材)を得る鋳造工程S2とを行った。
なお、鋳造工程S2で用いた単ロール式のロール鋳造機では、冷却ロールに銅製のロールを用いた。そして溶解工程および鋳造工程が本発明でいう素材鋳造工程に相当する。
また、鋳造工程S2後に得られた各第1種Al合金材(実施例1〜48、比較例1〜20、および比較例28〜37)に対して、後処理工程S3を行った。後処理工程S3としては、下記の熱間圧延工程S3a(実施例1〜36、実施例41〜48、比較例1〜20、および比較例28〜37)、冷間圧延−加熱工程S3b(実施例37、実施例39、および実施例40)、熱処理工程S3c(実施例38)のいずれかを行った。各Al合金鋳造材に対して行った後処理工程の種類を表1−1〜表1−4に示した。
熱間圧延工程S3aにおいては、図1−1(a)に示すように鋳造工程S2後のAl合金鋳造材を温度450℃に加熱し、熱間圧延加工によってその厚みを40%圧下して厚み0.72mmの第1種Al合金材を得た。その後室温まで放冷した。
冷間圧延−加熱工程S3bにおいては、図1−1(b)に示すように鋳造工程S2後の第1種Al合金材に冷間圧延加工を施してその厚みを40%圧下させて厚み0.72mmの第1種Al合金材を得た。その後、Al合金の融点の1/2以上の温度(本例においては450℃)で第1種Al合金材を1時間加熱した。その後室温まで放冷した。
熱処理工程S3cにおいては、図1−1(c)に示すように鋳造工程S2後のAl合金鋳造材を温度450℃で1時間加熱した。その後室温まで放冷した。
さらに、本例においては、図1−1(a)〜(c)に示すように前記の後処理工程S3後に、第1種Al合金材を300℃の温度に100時間保持(例えば、エンジンの走行環境相当の温度域に長時間曝露されたことを想定)し、その後室温まで放冷する加熱工程S4を行った。このようにして、鋳造後に、後処理工程S3、および加熱工程S4を行ったAl合金材(実施例1〜実施例48、比較例1〜20、および比較例28〜37)を得た。
また、本例においては、冷却速度の優位性を示すため、比較用として、表1−4に示す各組成のAl合金を冷却速度150℃/未満で鋳造して、鋳塊を作製し、該鋳塊を圧延することによって第1種Al合金材を作製した(比較例21〜比較例27)。
即ち、図1−2(a)に示すようにまず鋳塊を作製するに当たり、各合金の組成から決定される液相線温度よりも200℃高い温度(溶解温度)にて合金を溶解して溶湯を作製する溶解工程S5と、該溶湯を冷却速度100℃/秒で冷却することにより凝固させてAl合金鋳塊を得る凝固工程S6とを行った。これにより、厚み1.2mmの板状のAl合金鋳塊を得た。
鋳塊作製後、後処理工程S7として、熱間圧延工程S7a又は冷間圧延−加熱工程S7bを行った。具体的には、比較例21〜23および比較例25〜27については熱間圧延工程S7aを行い、比較例24については冷間圧延−加熱工程S7bを行った。
熱間圧延工程S7aにおいては、図1−2(a)に示すように前記凝固工程S6後のAl合金鋳塊を温度450℃に加熱し、熱間圧延加工によってその厚みを40%圧下して、厚み0.72mmの第1種Al合金材を得た。その後室温まで放冷した。
また、冷間圧延−加熱工程S7bにおいては、図1−2(b)に示すように前記凝固工程S6後のAl合金鋳塊に冷間圧延加工を施して、その厚みを40%圧下させて厚み0.72mmの第1種Al合金材を得た。その後、Al合金の融点の1/2以上の温度(本例においては450℃)で1時間加熱し、室温まで放冷した。
さらに、図1−2(a)および(b)に示すように前記の後処理工程S7後に、Al合金材を300℃の温度に100時間保持(例えば、エンジンの走行環境相当の温度域に長時間曝露されたことを想定)し、その後室温まで放冷する加熱工程S8を行った。
以上のようにして、溶解工程S5、凝固工程S6、後処理工程S7、および加熱工程S8を行った第1種Al合金材(比較例21〜比較例27)を得た。
そして、実施例1〜40および比較例1〜27において、後処理工程S3(S7)前のAl合金鋳造材の硬度HVR1、後処理工程S3(S7)後の第1種Al合金材の硬度HVR2、および後処理工程S3(S7)後に更に加熱工程S4(S8)を経たAl合金材の硬度HVR3をそれぞれ測定し、その変化によって耐軟化性の評価を行った。
なお、前記HVRn(n:No)は残留硬さと称され、一般には材料融点の1/2を越えるような高温域に曝されると、残留硬さは大きく低下するようになる。そのような観点から、高温域で長時間曝されても硬さ低下の少ない第1種Al合金材を検討した。
耐軟化性は、図1−3(a)に示すようにHVR1<HVR2<HVR3のパターン(パターン1)となるものを優(◎)とし、図1−3(b)に示すようにHVR1<HVR2、HVR1<HVR3、かつHVR2>HVR3のパターン(パターン2)となるものを良(○)とし、それ以外の、例えば、図1−3(c)に示すようにHVR1>HVR2>HVR3のパターン(パターン3)となるものを不良(×)として判定する。各実施例1〜48および比較例1〜37の耐軟化性の評価結果を表1−5〜表1−8に示した。
なお、図1−3(a)〜(c)は、横軸にHVR1、HVR2、HVR3の区別を、縦軸にビッカース硬さHVをとったものである。
表1−5および表1−6から知られるように、実施例1〜48の第1種Al合金材は、耐軟化性が前記パターン1又はパターン2の挙動を示しており、耐軟化性に優れていることがわかる。
一方、表1−7および表1−8の結果から知られるように、Al−遷移元素合金において、遷移元素種の組み合わせ又は鋳造時の冷却速度により、図1−3(a)(b)のパターン1、2を示す“上昇系(◎又は○)”と、図1−3(c)のパターン3の“下降系(×)”に分類されることがわかった。なお、表1−7に示すように下降系は汎用のAl合金において観察される現象である。
実施例1〜48の第1種Al合金材が上述のごとく優れた耐軟化性を示す理由を調べるために、これらの実施例うちの1種類の第1種Al合金材(実施例11)について、熱間圧延工程前後における合金組織の変化を走査型電子顕微鏡によって観察した。熱間圧延前の合金組織の顕微鏡写真を図1−4に示し、熱間圧延後の合金組織の顕微鏡写真を図1−5に示した。図1−4および図1−5より知られるように熱間圧延後には、Al基地からなるα相、およびAl−Fe系化合物とAl基地との共晶組織からなる層状相の金属組織内において、Al基地中にAlとTiと第3成分元素とからなる安定な化合物相(析出物)が析出していた。この安定な化合物相(析出物)によって、耐軟化性が向上し、上述のごとく加工や加熱等を行った後において、強度が向上したと考えられる。
なお、図1−5とは違う倍率で、圧延後の第1種Al合金材の合金組織を走査型電子顕微鏡により観察した結果(写真)を図1−7に示した。図1−7よりも知られるように実施例11の第1種Al合金材1は、Al基地からなるα相2と、該α相2を取り囲むように形成された層状相4とを有している。そして、熱間圧延後の第1種Al合金材1(実施例11)の合金組織においては、Al基地中に粒径約15nm以下の析出物3が生じていることがわかる。
また、熱間圧延工程前における実施例11の第1種Al合金材の合金組織の走査型電子顕微鏡(SEM)の別写真を図1−8および図1−9に示した。図1−8は、Al合金鋳造材(実施例11)の合金組織を倍率1000倍のSEMで観察した写真を示し、図1−9は、第1種Al合金材(実施例11)の合金組織を倍率5000倍のSEMで観察した写真を示した。なお、図1−9は、図1−8における晶出物が発生していた部分の拡大図である。
また、実施例11の比較用として、熱間圧延工程前における比較例22のAl
合金鋳造材の合金組織の走査型電子顕微鏡写真を図1−10および図1−11に示した。図1−10は、Al合金鋳造材(比較例22)の合金組織を倍率1000倍のSEMで観察した写真を示し、図1−11は、第1種Al合金材(比較例22)の合金組織を倍率5000倍のSEMで観察した写真を示した。なお、図1−11は、図1−10における晶出物が発生していた部分の拡大図である。
なお、走査型電子顕微鏡としては、株式会社日立製作所製のS−3600Nを用い、加速電圧15kVという条件で観察を行った。
図1−8および図1−9に示すように実施例11の第1種Al合金材の合金組織においては、α相中に粒径5μm以上の晶出物(Alと第2成分元素Tiと第3成分元素Xとの化合物(Alx(Ti,X)))はほとんどなく、晶出物の面積率は5%未満であった。
一方、図1−10および図1−11より知られるように比較例22の第1種Al合金材9の合金組織においては、α相92のAl基地中に粒径5μm以上の粗大な晶出物93(Alと第2成分元素Tiと第3成分元素Xとの化合物(Alx(Ti,X)))が比較的多く(面積率5%以上)分散していた。また、図1−9と図1−11とを比較して知られるように比較例22においては、実施例11に比べて、より大きな晶出物が発生していた。
また、第1種Al合金材(比較例22)の晶出物が観察された領域における成分分析を行った結果を示す(図1−12参照)。同図においては、第1種Al合金材(比較例22)の走査型電子顕微鏡写真における直線A−Aで示した領域における各成分(Al、Zr、Ti、Fe)の相対的な量をピークの大きさで示している。
また、図1−12において、Al、Ti、FeについてはKα線によるプロファイルを示し、ZrについてはLα線によるプロファイルを示した。図1−12より知られるように晶出物においては、第2成分元素Tiおよび第3成分元素Zrが多く存在しており、AlとTiとZrとの化合物を形成していることがわかる。なお、各成分量の分析には、エダックス・ジャパン株式会社製のエネルギー分散型X線分析装置を用いた。
また、熱間圧延前の第1種Al合金材(実施例11)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果(写真)を図1−13に示した。透過型電子顕微鏡としては株式会社日立製作所製のHF−2000を用い、観察は加速電圧200kVビーム径φ1nmという条件で行った。図1−13に示すように実施例11の第1種Al合金材1の金属組織は、Al基地からなるα相2と、該α相2を取り囲むように形成された層状相4とを有している。
次いで、層状相4における任意の位置(図1−13の点*1〜*4)について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行うことにより、層状相4に存在する成分元素を調べた。EDX分析は、エネルギー分散型X線分析装置としては、NORAN VOYAGERIII M3100を用い、検出器としては、Si/Li半導体検出器を用いた。測定は、エネルギー分解能137eV、取込時間30秒という条件で行った。その結果を図1−14〜17に示した。
図1−14〜図1−17は、それぞれ図1−13における*1〜*4の各点におけるEDXの分析結果を示した。
同様に、熱間圧延後の第1種Al合金材(実施例11)についても透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、任意の四点*1〜*4におけるEDX分析を行った。TEM写真を図1−18に示し、図1−18の各点*1〜*4におけるEDX分析の結果をそれぞれ図1−19〜図1−22に示した。
図1−13〜図1−17および図1−18〜図1−22より知られるように熱間圧延の前後に関わらず、層状相4には、AlおよびFeしか検出されておらず、第2成分元素Tiや第3成分元素Zrは存在していない(図1−13および図1−18参照)。よって、第2成分元素Tiや第3成分元素Zrはα相2のAl基地中に存在していることがわかる。
次に、本例では、実施例1〜実施例48および比較例1〜37に関して、室温での強度、加工性、成形性、および耐食性を次のようにして評価した。
<強度>
各第1種Al合金材から引張試験片を切り出し、JIS Z2241に規定の引張試験を行って引張強さを求めた。その結果を表1−5〜表1−8に示した。
また、引張試験によって測定した引張強さと冷却速度との関係を図1−6に示した。図1−6は、横軸に冷却速度(℃/秒)、縦軸に引張強さ(MPa)を示した片対数グラフである。そして図1−6においては、3種類のAl合金組成、即ちAl−2Fe−1Zr−0.8Ti(比較例21、実施例48、実施例9、実施例47、実施例46)、Al−4Fe−1Zr−0.8Ti(比較例22、実施例43、実施例11、実施例42、実施例41)、Al−4Fe−1Zr−0.8Ti−0.5Mg(実施例45、実施例44)の第1種Al合金材について、冷却速度と引張強さとの関係を示した。
<加工性>
加工性の判定は、圧延加工(熱間圧延又は冷間圧延)後における圧延割れの発生の有無を観察することによって行った。即ち、圧延加工後の各第1種Al合金材の表面を観察し、表面に圧延割れが観察された場合を不良(×)とし、圧延割れが観察されなかった場合を良好(○)として評価した。なお、耳割れ(連続鋳造材の両端に発生する割れ)のみが発生した連続鋳造材については、良好(○)として評価した。実工程ではスリッターで除去できるからである。その結果を表1−5〜表1−8に示した。なお、圧延を行っていない第1種Al合金材(実施例38)については、加工性の評価は行っていない。
<成形性>
成形性は、JIS H7701に規定の自動車Al合金板のヘミング加工限界評価試験を行い、曲げ部分における表面の割れの発生を立体顕微鏡で観察した。表面に割れが観察された場合を不良(×)とし、割れが観察されなかった場合を良好(○)として評価した。その結果を表1−5〜表1−8に示した。
<腐食性>
腐食性は、6061合金について腐食試験を行い、その結果との比較により評価した。
即ち、まず市販の6061合金(Al−1.1Mg−0.8Si−0.1Cu−0.1Cr−0.03Ti)から一定の寸法の試験片を切り出し、その重量W1を測定した。
次いで、濃度5wt%のNaCl水溶液を用いて、試験片に対して塩水噴霧試験を行った(JIS Z2371)。さらに、試験片の表面に生成した腐食生成物を除去した後、試験片の重量(W2)を測定した。そして、6061合金の試験片の重量変化率ΔWa(%)を、ΔWa=|W2−W1|×100/W1という式に基づいて算出した。
一方、実施例1〜48および比較例1〜37の第1種Al合金材についても、各Al合金鋳造材から一定寸法の試験片を作製し、上述の6061合金の場合と同様に塩水噴霧試験を行った。そして、試験前の重量W3および試験後の重量W4を測定し、各試験片の重量変化率ΔWb%を、ΔWb=|W4−W3|×100/W3という式に基づいて算出した。
腐食性の判定は、ΔWb<0.8ΔWaの場合を優(◎)、0.8Wa≦Wb≦1.2Waの場合を良(○)とした。また、ΔWb>1.2ΔWaの場合を不良(×)とした。その結果を表1−5〜表1−8に示した。
表1−5、表1−6および図1−6より知られるように実施例1〜実施例48は、引張強さ230MPa以上という充分な強度を示すと共に、耐軟化性、成形性、および耐腐食性にも優れたAl合金鋳造材であることがわかる。
実施例1〜実施例48の結果(表1−5および表1−6)からわかるように、ベースとなるAl−Fe合金に対し、第2成分元素Ti、および第3成分元素(Zr、Nb、Hf、Sc、Y)を添加することにより、成形性および耐食性を損なうことなく、高強度なAl合金となる。また、必要に応じて、第4成分元素Mg、第5成分元素(Cu、Cr、Co)、第6成分元素(V、Mo)を添加することで、さらにその特性を向上させることもできる。
また、実施例1〜実施例48は耐軟化性に優れ、後工程において熱エネルギーやひずみエネルギーを与えることにより、更に高強度化することも見出した。そして、使用環境(例えば、300℃に長時間曝される)において特性低下が極めて少ない。それ故、第1種Al合金は、例えば自動車部品において好適に利用することができる。
これに対し、表1−7および表1−8から知られるように本発明において規定する合金組成範囲を超えるAl合金を用いた場合(比較例1〜比較例20、比較例28〜比較例37)や、冷却速度が不十分な場合(比較例21〜27)には、合金鋳造材の特性が劣化していることがわかる。
また、本例においては、鋳造工程後に冷間圧延加工を行った第1種Al合金材および圧延加工を行っていない第1種Al合金材について、焼鈍(加熱)温度と残留硬さとの関係を調べた。具体的には、先ず、前記実施例11と同様の組成および条件(表1−1参照)でAl合金鋳造材を作製した。次いで、第1種Al合金材に対して室温条件下で冷間圧延を行い、第1種Al合金材の厚みを50%圧下させた。次いで、所定の温度で1時間加熱(焼鈍)し、加熱後の第1種Al合金材の残留硬さを調べた。そして、加熱(焼鈍)温度と残留硬さとの関係をグラフにプロットした。その結果を図1−23に示した。なお、残留硬さの測定は、ビッカース硬さ試験機を用いて荷重100gf、保持時間20秒間という条件で行った。
また、前記実施例11と同様の組成および条件(表1−1参照)で作製したAl合金鋳造材に対して、圧延を行わずに各温度で焼鈍だけを行った場合についても、加熱(焼鈍)温度と残留硬さとの関係をグラフにプロットした。その結果を図1−23に示した。
図1−23より知られるように圧延後に加熱した場合、圧延をせずに加熱した場合のいずれにおいても、加熱により残留硬さを向上させることができる。特に、400℃〜500℃で加熱した場合には、残留硬さをより充分に向上させることができ、圧延を行った場合には、400℃〜450℃で加熱した場合において、より一層残留硬さを向上できることがわかる。
〈第2種Al合金の検討〉
上述した鋳造成形装置Aを用いて、Al合金組成が異なる種々の試験片(円筒状部材L)を製造した。各試験片の組成は表2−1(試験片No.A1〜A31)および表2−2(試験片No.B1〜B9)に示した。また、比較のため、双ロール鋳造ではなく重力鋳造で製作した薄板材を用いて、同様に試験片を製造した。このときの各組成を表2−3(試験片No.C1〜C31)に示した。
ここで双ロール鋳造は、各表1−に示す組成のAl合金溶湯(溶湯温度800℃)を銅製の冷却ロールからなる双ロールキャスター1に注湯して行った。このときの冷却ロール11、12の回転速度は5m/minとして、両冷却ロール間隔は板厚が5mmとなるように調整した。また、重力鋳造は、表2−3に示す組成のAl合金溶湯(溶湯温度800℃)を、5mm厚の板状のキャビティをもつ金型へ注湯し自然冷却させて行った。
なお、本発明者が得られた板の断面組織を観察し、二次デンドライト間隔をDAS法により求めたところ、双ロール鋳造した場合の冷却速度は170℃/秒程度であり、重力鋳造の場合の冷却速度は7℃/秒程度であった。
〈測定〉
(1)前記の各試験片について光学顕微鏡で観察した金属組織写真を画像解析して初晶Si粒子の円相当径および面積率を求めた。画像解析した領域の大きさは、約2700μmx約2000μmとした。
(2)各試験片について、ビッカース硬さを測定した。このときの測定条件は、荷重は5kgf、保持時間30sであった。
〈金属組織の観察〉
Al−20%Si−4%Cu−1%Mg(−0.02%P)%のAl合金溶湯を双ロール鋳造または重力鋳造して板状素材を製造した。双ロール鋳造および重力鋳造の鋳造条件は前述した通りである。
これらの板状素材を光学顕微鏡で観察した組織写真を図2−1〜2−3に示した。参考までに、これら板状素材の初晶Si粒子の平均粒径とビッカース硬さとを前述した方法で求め、その結果を表2−4に併せて示した。
〈評価〉
(1)双ロール鋳造の場合(試験片No.A1〜A31、B1〜B9、D1およびD2)
(i)表2−1、表2−2および表2−4より、本発明でいう化学組成内のAl合金溶湯を双ロール鋳造した試験片は、いずれも初晶Si粒子の平均粒径が9〜36μm内にあり、初晶Si粒子が微細に分散していることがわかる。この平均粒径は、Si量の増加と共に増加する傾向にあるが、それでも表2−1では21〜36μmの範囲内にあり、また、表2−2では9〜16μmの範囲にあった。このことから、Si量が増加した場合でも、双ロール鋳造を行うことで、微細な初晶Si粒子が安定して晶出することが確認された。特に、表2−2から明らかなように、微量のPを含有させることで、非常に微細な初晶Si粒子が安定して分散することがわかった。このことは、図2−1および図2−2に示したように、Pの含有のみ相違する金属組織写真からも一目瞭然である。
さらに、マトリックス中に分散している初晶Si粒子は、その平均粒径が小さいだけではない。すなわち、その分散割合を示す面積率が全体の11〜33%もあり、いずれも10%以上と高いものであった。従って、微細なSi粒子の晶出が量的にも十分に確保されていることがわかる。なお、この面積率の割合は、全体のSi量を多くすることで増加させ得ることも明かとなった。
また、この試験片の硬さは101〜238Hvの範囲にあり、いずれも100Hv以上の十分な硬さを有していることがわかった。これにより、十分な耐摩耗性が発現されることがわかる。なお、このビッカース硬さは、全体的に観ると、初晶Si粒子の面積率が大きいほど(全体の含有Si量が大きいほど)、大きくなっている。さらに、同様な面積率であれば、CuまたはMgの含有量が増加するほど、ビッカース硬さが大きくなることがわかった。さらに、Si、CuおよびMgの全体的な組成が同じなら、初晶Si粒子の平均粒径が小さいほど、ビッカース硬さは大きくなる傾向を示した。
(ii)もっとも、表2−1に示した試験片No.A28〜A31のデータから次のことがわかる。
Si量が一般的な過共晶組成である15%(<17%)の場合でも、面積率は10%よりも小さく、かつ、ビッカース硬さも100Hvより小さくなった(試験片No.A28)。逆に、Si量が45%程度にまで高くなると、面積率およびビッカース硬さは共に高くなるが、初晶Si粒子がもはや微細分散しているとはいい難く、安定した耐摩耗性が望めない(試験片No.A29)。
また、Si量が適量であっても、CuおよびMgを全く含まない場合は、マトリックスの硬さまたは強度が不足し、全体的なビッカース硬さも不十分となった(試験片No.A30)。逆に、CuまたはMgの含有量が増加すると、初晶Si粒子の平均粒径、面積率およびビッカース硬さは共に良好になるものの、マトリックスが硬くなりすぎて成形中に割れを生じた。
(2)重力鋳造の場合(試験片No.C1〜C3、D3)
上述の双ロール鋳造した試験片に比較して、重力鋳造した試験片では、いずれも、初晶Si粒子の面積率、ビッカース硬さは良好なものの、初晶Si粒子の平均粒径がいずれも大きく、Si粒子の脱落、相手材への攻撃性等を考えると、優れた耐摩耗性を発揮し得ない。このことは、図2−3に示した金属組織を観れば明白である。
本実施例に係る円筒状の溶製軽金属部材を製造する鋳造成形装置を示す全体模式図である。 本実施例に係る角樋状の溶製軽金属部材を製造する鋳造成形装置を示す全体模式図である。 外周面形状(鋳型部形状)を変更した一対の冷却ロールを示す概形図である。 板状素材の変形例を示す図であり、同図(a)は半円筒形状の板状素材(樋状素材)を示す概形図であり、同図(b)はチャンネル形状の板状素材(樋状素材)を示す概形図である。 溶解工程、鋳造工程、後処理工程、および加熱工程と、硬度HVR1〜3の測定タイミングを示す説明図であって、同図(a)は後処理工程として熱間圧延工程を行った場合であり、同図(b)は後処理工程として冷間圧延−加熱工程を行った場合であり、同図(c)は後処理工程として熱処理工程を行った場合である。 実施例1における、溶解工程、凝固工程、後処理工程、および加熱工程と、硬度HVR1〜3の測定タイミングを示す説明図であって、同図(a)は後処理工程として熱間圧延工程を行った場合であり、同図(b)は後処理工程として冷間圧延−加熱工程を行った場合である。 硬度の挙動の各パターンを示す説明図であり、同図(a)はパターン1を示し、同図(b)はパターン2を示し、同図(c)はパターン3を示す。 熱間圧延前の合金組織(実施例11)を示す写真である。 熱間圧延後の合金組織(実施例11)を示す写真である。 各Al合金組成毎の冷却速度と引張強さとの関係を示す線図である。 熱間圧延後の合金組織(実施例11)のSEM写真であって、析出物が形成された状態を示す。 熱間圧延前の第1種Al合金材(実施例11)の合金組織のSEM写真(倍率1000倍)である。 熱間圧延前の第1種Al合金材(実施例11)の合金組織のSEM写真(倍率5000倍)である。 熱間圧延前の第1種Al合金材(比較例22)の合金組織のSEM写真(倍率1000倍)である。 熱間圧延前の第1種Al合金材(比較例22)の合金組織のSEM写真(倍率5000倍)である。 熱間圧延前の第1種Al合金材(比較例22)の晶出物の成分分析図である。 熱間圧延前の第1種Al合金材(実施例11)の合金組織のTEM写真である。 図1−13における*1点におけるEDXの分析図である。 図1−13における*2点におけるEDXの分析図である。 図1−13における*3点におけるEDXの分析図である。 図1−13における*4点におけるEDXの分析図である。 熱間圧延後の第1種Al合金材(実施例11)の合金組織のTEM写真である。 図1−18における*1点におけるEDXの分析図である。 図1−18における*2点におけるEDXの分析図である。 図1−18における*3点におけるEDXの分析図である。 図1−18における*4点におけるEDXの分析図である。 焼鈍温度と残留硬さとの関係である。 Al-25%Si-4%Cu-1%Mg%の溶湯を双ロール鋳造した板状素材の金属組織を示す顕微鏡写真である。 Al-25%Si-4%Cu-1%Mg−0.02%P%の溶湯を双ロール鋳造した板状素材の金属組織を示す顕微鏡写真である。 Al-25%Si-4%Cu-1%Mg%の溶湯を重力鋳造した板状素材の金属組織を示す顕微鏡写真である。
符号の説明
A 鋳造成形装置
M Al合金溶湯
R 薄板材(板状素材)
L 円筒状部材
1 双ロールキャスター(双ロール鋳造機)
11、12 冷却ロール
2 ロールフォーミング機
21 成形ローラ
3 レーザー溶接機
4 カッタ

Claims (24)

  1. 環状の鋳型部を外周面側に有すると共に回転する冷却ロールを少なくとも一つ有するロール鋳造機へ、アルミニウム(Al)、Al合金、マグネシウム(Mg)またはMg合金のいずれかである軽金属からなる軽金属溶湯を供給し、該鋳型部で該軽金属溶湯を急冷凝固させつつ連続した板状素材を鋳造する素材鋳造工程と、
    該素材鋳造工程時の余熱によって少なくとも温間状態にある板状素材に塑性加工を加え所望形状に創成した素形材とする形状創成工程とを備えることを特徴とする溶製軽金属部材の製造方法。
  2. 前記ロール鋳造機は、前記一対の冷却ロールをそれぞれの鋳型部で対峙させて配設した双ロール鋳造機である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  3. 前記鋳型部の少なくとも最表面は、熱伝導率が50W/m・k以上の高熱伝導材である請求項1または2に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  4. 前記高熱伝導材は、銅(Cu)またはCu合金からなる請求項3に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  5. 前記素材鋳造工程は、前記軽金属溶湯の前記鋳型部における冷却速度が150℃/秒以上である請求項1〜4に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  6. 前記鋳型部は、前記冷却ロールの内周面側から水冷されている請求項1〜5のいずれかに記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  7. 前記鋳型部は、平坦な環状帯からなり、
    前記板状素材は、板厚が略一定の平板状素材である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  8. 前記鋳型部は、前記冷却ロールの幅方向の断面形状が凹状の環状溝からなる請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  9. 前記板状素材は、樋状素材である請求項8に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  10. 前記板状素材は、幅方向の断面形状が不均等な偏肉状素材である請求項8に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  11. 前記形状創成工程で塑性加工される際の板状素材の温度は200℃以上である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  12. さらに、前記板状素材を加熱して少なくとも前記形状創成工程中の該板状素材を温間状態または熱間状態にする加熱工程を備える請求項1または11に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  13. 前記塑性加工は、ロールフォーミング加工、プレス加工、打抜加工、バーリング加工、ヘミング加工のいずれか一種以上である請求項1または12に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  14. さらに、前記素形材に熱処理を施す熱処理工程を備える請求項1または13に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  15. 前記軽金属は、汎用Al合金である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  16. 前記軽金属は、全体を100%としたときに、
    第1成分元素である鉄(Fe):0.8〜5%と、
    第2成分元素であるチタン(Ti):0.15〜1%とを含有すると共に、
    ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)からなり各々の含有量が0.05〜2%である第3成分元素群より選ばれた1種以上の第3成分元素が合計量(X)でTiよりも多くFeよりも少なく(Fe%>X%>Ti%)、
    残部がAlと不可避的不純物および/または改質元素とからなる第1種Al合金である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  17. 前記素材鋳造工程は、組成から決定される液相線温度よりも20℃以上高い温度で前記軽金属を溶解させ前記軽金属溶湯を得る溶解工程と、
    前記鋳型部で該軽金属溶湯を、組成から決定される固相線温度より少なくとも10℃低い温度まで150℃/秒以上かつ10000℃/秒未満の冷却速度で急冷凝固させる凝固工程を備える請求項1または16に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  18. 前記軽金属は、全体を100%としたときに、
    ケイ素(Si):17〜43%と、
    Cu:0.2〜7%と、
    マグネシウム(Mg):0.05〜4%と、
    残部がAlと不可避不純物および/または改質元素とからなる第2種Al合金である請求項1に記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  19. 前記形状創成工程は、前記塑性加工をロールフォーミング加工とするロールフォーミング工程である請求項1〜18のいずれかに記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  20. さらに、前記冷却ロールから剥離した後の前記板状素材を冷却媒体により所定温度まで冷却する冷却工程を備える請求項1〜19のいずれかに記載の溶製軽金属部材の製造方法。
  21. 請求項1〜20に記載のいずれかの方法により製造されたことを特徴とする溶製軽金属部材。
  22. 請求項16に記載の方法により製造され、
    前記板状素材は、Al基地からなるα相と、該Al基地とAl−Fe系化合物との共晶組織からなり該α相を取り囲む層状相とを有する金属組織を有し、
    前記Al基地は、Alに前記第2成分元素と前記第3成分元素が固溶したAlの過飽和固溶体および/またはAlからなり、
    Alと該第2成分元素および/または前記第3成分元素との金属間化合物からなる粒径5μm以上の晶出物の占める面積率が5%未満であることを特徴とする溶製軽金属部材。
  23. 前記Al基地中に分散している前記金属間化合物からなる析出物の粒径は2〜500nmである請求項22に記載の溶製軽金属部材。
  24. 請求項18に記載の方法により製造され、
    前記板状素材は、円相当径でいう平均粒径が5〜50μmの初晶Si粒子と、分散した該初晶Si粒子を保持するマトリックスとからなる金属組織を少なくとも表層部に有し、耐摩耗性に優れることを特徴とする溶製軽金属部材。
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