JP2009504974A - リーン型遠心圧縮機翼形ディフューザ - Google Patents

Abstract

各羽根がゼロよりも大きいリーン角８５を有し、ハブ食い違い角７０が各羽根に対するシュラウド食い違い角８０と同一であることができ、又はこのシュラウド食い違い角８０とは異なることができる、遠心圧縮機用の低剛率の羽根付き翼形ディフューザ２。リーン角８５は５°から６０°までの範囲内であることが好ましく、ハブ食い違い角７０及びシュラウド食い違い角８０は１３°から３０°までであることが好ましい。このディフューザは空気分離プラントで用いられる遠心圧縮機において使用され得る。

Description

本発明は、一般に、遠心圧縮機に関し、より詳細には酸素、窒素、及びアルゴンなどの雰囲気ガスを生成するために空気の極低温精留のような極低温精留システムで使用するための遠心圧縮機に関する。

遠心圧縮機は、固定ハウジング内に配置された回転可能なシャフトに取り付けられたホイール又は羽根車を使用する。ホイールは入口から出口までガス流路を画定する。低剛率の翼形ディフューザは、産業用の遠心圧縮機段において高効率でコンパクトな動圧回収装置としての使用に成功している。通常、この種のディフューザは羽根車出口に極めて接近したところで円周方向に分布した２次元の翼形羽根又は翼形ベーンの翼列を有する。このタイプのディフューザの主要な特徴は、流れを閉塞する恐れなく動作範囲を増大させ得る幾何学的なスロート（のど部）がないことである。このタイプのディフューザの幾何学的形状はベーンのないディフューザの幾何学的形状の近くで大きな流れ区域を有し、一方、チャンネル型ディフューザの幾何学的形状の近くで圧力回収レベルを達成する。しかし最近、プロセス産業における競争性の増大によって、遠心圧縮機の動作範囲は、現在の２次元ディフューザ形状構成のもつ現存する動作範囲を超えて増大するよう試されている。

本発明の１つの態様には、

羽根車を有する遠心圧縮機用の複数のディフューザ翼を備える翼形ディフューザであって、ディフューザ翼前縁とディフューザ翼後縁との間の距離と、任意の２つの連続する羽根の間の距離の比率が１よりも小さく、各羽根に対するディフューザ翼リーン角が０°よりも大きく、ハブ食い違い角が各羽根に対するシュラウド食い違い角と同一である、ディフューザがある。

本発明の他の態様には、

羽根車を有する遠心圧縮機用の複数のディフューザ翼を備える翼形ディフューザであって、ディフューザ翼前縁とディフューザ翼後縁との間の距離と、任意の２つの連続する羽根の間の距離の比率が１よりも小さく、各羽根に対するディフューザ翼リーン角が０°よりも大きく、ハブ食い違い角が各羽根に対するシュラウド食い違い角とは異なる、ディフューザがある。

本明細書において使用するように、用語「リーン角」とは、羽根の重積方向がハブ面又はシュラウド面に直角の方向に対してなす角度を意味する。

本明細書において使用するように、用語「食い違い角」とは、翼前縁及び翼後縁を連結する線が半径方向に対してなす角度を意味する。

本明細書において使用するように、用語「ハブ食い違い角」とは、羽根が羽根車のハブと接する食い違い角を意味する。

本明細書において使用するように、用語「シュラウド食い違い角」とは、羽根がシュラウドに隣接する平面における食い違い角を意味する。

図面の中の符号は、共通の要素については同一である。

一般に、本発明は、各羽根がゼロよりも大きいリーン角を有する遠心圧縮機用の低剛率の翼形ディフューザの改良を含む。ディフューザは、ハブ食い違い角が各羽根に対するシュラウド食い違い角とは異なる可変食い違い型（捻れディフューザとも呼ばれる）であることができ、又は、ハブ食い違い角が各羽根に対するシュラウド食い違い角と同一である単なるリーン・タイプであることができる。

図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。図１はディフューザ２を備える遠心圧縮機の羽根車１を示し、このディフューザ２は図２に示すような可変食い違いディフューザ、又は図３に示すような単なるリーン・ディフューザであることができ、ディフューザ翼のリーン及び捻れのより詳細な図が図４に示される。５枚の図面において羽根車の外径は同一であり、１０はディフューザ翼正圧面であり、２０はディフューザ翼負圧面であり、３０はディフューザ翼のハブであり、４０はディフューザ翼のシュラウドであり、５０はディフューザ翼の前縁であり、６０はディフューザ翼の後縁であり、７０はハブにおけるディフューザ翼の食い違い角であり、８０はシュラウドにおけるディフューザ翼の食い違い角であり、８５はディフューザ翼のリーン角である。ディフューザ翼は角８５がゼロに等しくない場合、リーンを有すると言われる。ディフューザはハブ食い違い角８０がシュラウド食い違い角７０に等しくない場合、可変の食い違いを有すると言われる。ディフューザ翼の剛率は、ディフューザ翼前縁とディフューザ翼後縁との間の距離と、任意の２つの連続する羽根の間の距離との間の比率として定義される。低剛率の翼形ディフューザとは１よりも小さい剛率を有するディフューザである。

遠心圧縮機の羽根車を去る流れは、シュラウド負圧面の近くの羽根車出口のところで低速の後流領域を発生する。この低速領域は、子午面流線の湾曲及び羽根から羽根までの流線の湾曲、並びに接線方向のコリオリ力によって押し進められる２次流れに起因する。この速度プロフィールによりシュラウドの近くの流れ角がより急峻になり、それによりディフューザ・シュラウド翼上に流れの入射角を生じさせるばかりでなくシュラウド壁上の境界層の安定性も低下させる。本発明は、ディフューザ翼の空気力学的な重積を用いて圧縮機段全体の動作範囲及び効率を低下させるこれらの流れ現象を軽減するものである。

ディフューザ翼がハブからシュラウドまで可変の角度で食い違わせられる、本発明の低剛率翼形の可変食い違い（捻れ）ディフューザの態様では、可変食い違い角ディフューザ翼は、流路全体に跨る流れ方向とよりよく位置合わせするように設計される。そのうえ、可変の食い違い角でディフューザ翼を重積すると、ディフューザの翼幅方向に翼リーンを自動的に生じさせることになる。本発明の単なるリーン型ディフューザの態様では、ディフューザ翼はディフューザ翼の食い違いを変化することなくコア・ディフューザ流れに対してある角度（リーン角）で重積される。この簡単な幾何学的形状の単なるリーン・ディフューザは低減された製造コストで、より複雑な幾何学的形状の可変食い違いディフューザと同様の広範な動作範囲を有する。したがってこの態様の本発明は可変食い違いディフューザを超える改良をもたらし、羽根を重積する際に単なるリーンを用いることによって重積する。図５は、質量流量及び圧力について３つの羽根車ディフューザ構成の動作マップの比較を示す。本発明の可変食い違いディフューザ及び単なるリーン・ディフューザ（曲線Ａ）は、サージ流れ側及びチョーク流れ側の両方において従来の２次元低剛率の翼形ディフューザ（曲線Ｂ）よりも広い動作範囲を示している。本発明の可変食い違いディフューザ及び単なるリーン型ディフューザの構成は、チョーク側並びにサージ側において従来のディフューザを超える同範囲まで圧縮機段の動作範囲を増加させる。

羽根圧力荷重に関する翼リーンの効果は非常に強力であり得る。翼リーンは、子午面流線の移動（すなわち、パッセージ・リアクション（ｐａｓｓａｇｅ ｒｅａｃｔｉｏｎ））及び半径方向の羽根圧力荷重分布に対して効果を有する。一般に、圧力は負圧面から正圧面の方へ増加する。リーン型羽根の場合、翼幅方向における傾斜する羽根の幾何学的形状は、シュラウド壁とハブ壁、すなわち翼幅方向に直角な圧力勾配を生じる。この圧力勾配は子午面流線を移動すること、及びハブからシュラウドまでの従来の２次元翼列の羽根の荷重分布を変更することの両方に効果を有する。この、羽根の圧力荷重の再分布及び子午面流線の移動は、高運動量の流体を再方向付けしてシュラウド壁の近くの低運動量の流れ領域を付勢するように利用されることができ、シュラウド壁上の境界層の安定性を改善し、２次流れを抑制し、したがってストール及び剥離を遅らせる。

本発明の３次元可変食い違い低剛率翼形ディフューザ及び単なるリーン型低剛率翼形ディフューザは、従来の２次元ディフューザより空気力学的に優れている。そのうえ、単なるリーン型ディフューザは、低減された製造コストの利点を備える圧縮機段の動作範囲を拡張することで可変食い違い（捻れ）ディフューザと同じ効果を有する。可変食い違い３次元ディフューザの幾何学的形状は、ディフューザ入口角を変化し、並びにディフューザ翼の翼幅方向にリーンを生じさせる効果を有する。入口角が変化すると、ディフューザ翼を入ってくる流れとよりよく位置合わせし、作り出されたリーンが翼幅方向に羽根の圧力荷重を再分布し、並びにディフューザ・シュラウドに向かって子午面流線を移動する。ディフューザ翼の単なるリーンは、翼幅方向に羽根の圧力荷重を再分布し並びにディフューザ・シュラウドに向かって子午面流線を移動する効果を有し、その低運動量の流れを付勢し、シュラウド壁を越えてその剥離を防止する。ディフューザ翼リーンによる羽根荷重の再分布及び子午面流線の移動の総体効果とは圧縮機の動作範囲及び効率の増加である。翼リーンは入ってくる流れとディフューザ翼の再位置合わせに関してその性能及び範囲を改善する際により大きく寄与する。こうして、単なるリーン型ディフューザ翼及び可変食い違いディフューザ翼は同様な動作範囲を有する。したがって、単なる翼リーンは、可変食い違いディフューザ翼の重積であるより複雑な幾何学的形状ではなくて、圧縮機の動作範囲及び効率を増大する手段として使用され得る。

圧縮機段の範囲及び効率を増大すると、圧縮機は、要求又は他の要求事項によりプラント（極低温空気分離プラントなど）の全寿命にわたって変化する場合があるプロセス・サイクルの要求に適合することができる。これは、可変速度制御装置及び入口案内ベーンを取り付け、又は異なるプロセス・サイクルに適合するように圧縮機段を再設計するコストを低減する。そのうえ、圧縮機段の効率の改善は圧縮機の運転コストの改善を意味する。

本発明は任意の遠心圧縮機段に使用されることができる。ディフューザ翼リーンはハブからシュラウドまで不変であることができ、又は翼スパンに沿って変化する複合物であることができる（バウ・ディフューザ翼（ｂｏｗ ｄｉｆｆｕｓｅｒ ｂｌａｄｅ））。ディフューザ翼の食い違い角は、ハブからシュラウドまで線形的に変化することができ、翼スパンを横切って線形的に翼の捻れを分布し、或いは非線形な比率でハブ又はシュラウドの近くに翼の捻れを集中させることができる。リーン角の適用可能な範囲は５°から６０°までであり、捻れディフューザ部角度は５°と５０°との間にあり、ディフューザ前縁の直径範囲は１０．１６ｃｍ（４インチ）から１．３９７ｍ（５５インチ）までであり、ディフューザ翼の食い違い角は１３°と３０°との間にある。ディフューザ翼翼形の幾何学的形状はＮＡＣＡ翼形タイプ、又は任意の特別な幾何学的形状の翼形（例えば、超臨界翼型の幾何学的形状）であることができる。本発明は、任意の適切な作動圧力並びに任意の適切な羽根車チップ速度において、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、及び水素などのすべての適切なガスで使用され得る。これは、遠心圧縮機で典型的なすべての流量及び圧力範囲（すべての比速度）に当てはまる。ディフューザ翼は、羽根車出口の半径よりも大きい１０％ほどもの半径のところで羽根車の下流側に配置されることが最も好ましい。

一定の好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者には特許請求の範囲の精神及びその範囲内で他の実施例が存在することが認められるであろう。

本発明のディフューザを備える遠心圧縮機を表現した図である。 本発明の捻れディフューザの態様の１つの実施例の図である。 本発明の単なるリーン・ディフューザの態様の１つの実施例の図である。 リーン角、ハブ食い違い角、及びシュラウド食い違い角を示すディフューザ翼のより詳細な図である。 本発明の実施について得られた結果、及び従来の実施について得られた比較結果を示すグラフ表示の図である。

Claims (9)

1. 羽根車を有する遠心圧縮機用の複数のディフューザ翼を備える翼形ディフューザであって、ディフューザ翼前縁とディフューザ翼後縁との間の距離と、任意の２つの連続する羽根の間の距離の比率が１よりも小さく、各羽根に対する前記ディフューザ翼リーン角が０°よりも大きく、前記ハブ食い違い角が各羽根に対する前記シュラウド食い違い角と同一である、ディフューザ。
2. 前記リーン角が５°から６０°までの範囲内である、請求項１に記載のディフューザ。
3. 前記ハブ食い違い角及び前記シュラウド食い違い角が共に１３°から３０°までの範囲内である、請求項１に記載のディフューザ。
4. 極低温空気分離プラントで用いるための遠心圧縮機に使用される、請求項１に記載のディフューザ。
5. 羽根車を有する遠心圧縮機用の複数のディフューザ翼を備える翼形ディフューザであって、ディフューザ翼前縁とディフューザ翼後縁との間の距離と、任意の２つの連続する羽根の間の距離の比率が１よりも小さく、各羽根に対する前記ディフューザ翼リーン角が０°よりも大きく、前記ハブ食い違い角が各羽根に対する前記シュラウド食い違い角とは異なる、ディフューザ。
6. 前記リーン角が５°から６０°までの範囲内である、請求項５に記載のディフューザ。
7. 前記ハブ食い違い角及び前記シュラウド食い違い角が共に１３°から３０°までの範囲内である、請求項５に記載のディフューザ。
8. 各羽根が５°から５０°までの範囲内の捻れ角を有する、請求項５に記載のディフューザ。
9. 極低温空気分離プラントで用いるための遠心圧縮機に使用される、請求項５に記載のディフューザ。
   

Images