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JP2009296919A - セルロース系バイオマスの液化方法 - Google Patents

セルロース系バイオマスの液化方法 Download PDF

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JP2009296919A JP2008153765A JP2008153765A JP2009296919A JP 2009296919 A JP2009296919 A JP 2009296919A JP 2008153765 A JP2008153765 A JP 2008153765A JP 2008153765 A JP2008153765 A JP 2008153765A JP 2009296919 A JP2009296919 A JP 2009296919A
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衛華 銭
Masaaki Hosomi
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Abstract

【課題】
硫酸等の液体の強酸を使用することなく、簡易かつ容易にセルロース系バイオマスを極めて高い転化率にて単糖類及びそれ以外の液体化合物に液体する方法を提供すること。
【解決手段】
セルロース系バイオマス原料を、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する工程を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化方法であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロース系バイオマスの液化方法に関する。さらに詳しくは、固体酸によるセルロース系バイオマスの単独処理及び水熱分解によるセルロース系バイオマスの液化方法に関する。
再生可能で二酸化炭素を固定するバイオマス資源の導入が検討されている。バイオマス資源として有望なものとしては、森林樹木、サトウキビ等に代表されるセルロース系バイオマス及び都市ごみ等の廃棄物である。これらのバイオマスをエネルギーとして使用するためには、原料であるバイオマスを高効率でエネルギーに変換するプロセスの開発が重要である。バイオマスをエネルギーに変換する方法としては、燃焼方法、熱化学的変換方法、生物学的変換方法がある。上記熱化学的変換方法は、バイオマス資源のガス化、液化、熱分解等のプロセスがある。
例えば、液化プロセスの内で、重要なバイオエタノール製造は、その原料として、主にサトウキビやトウモロコシ等を使用しているため、食料と競合している。また、サトウキビやトウモロコシ等の供給量にも限界がある。このため、食料に供さない植物の茎や葉といった非可食性バイオマス資源(木質系及び草本系バイオマス)であるセルロース系バイオマスを原料としたエタノール製造が期待されている。セルロース系バイオマスを原料としたエタノール製造には、セルロース系バイオマスをその構成分子であるセルロース(cellulose)、ヘミセルロース(hemi cellulose)にそれぞれ加水分解し、単糖を作り出すことが必要である。しかしながら、セルロースやヘミセルロースは、分子結合が強固のため、バイオマスを加水分解して、グルコースやキシロース、マンノース等の単糖類を作り出すことが困難である。したがって、セルロース系バイオマスを原料とするエタノール製造においては、セルロースをどのように糖化するかがきわめて重要となる。
セルロースの糖化方法は、主として、濃硫酸法、希硫酸法及びセルラーゼ等の酵素を用いる酵素法に大別される。まず、濃硫酸法は、バイオマスを重量パーセント濃度70%ないし80%の濃硫酸溶液に接触させて、セルロースとヘミセルロースに分解する。そして、得られたセルロースとヘミセルロースを常圧、70℃前後の条件下で加水分解し、加水分解後に単糖と硫酸を分離して、硫酸を再利用する。
希硫酸法においては、バイオマスを数%の硫酸を使用して、温度150℃〜250℃、圧力1〜2MPaの条件下で加水分解を行い、加水分解後に単糖を得る。この方法においては、濃硫酸ではなく、希硫酸を使用しているため、硫酸を回収することなく、硫酸使用後にアルカリ溶液にて中和を行う。これらのセルロースの糖化方法は、セルロースとの反応性が高いこと及び強固な物質でも反応性が高く、分解速度も速いという利点を有する。
一方、酸糖化溶液中の糖濃度の向上させること、使用後の硫酸を濃縮回収し、使用後の硫酸を再利用するためのエネルギーを削減すること、バイオマスの前処理工程における装置のプロセス工学的改良等の課題を有している。つまり、従来の濃硫酸法、希硫酸法等の酸処理方法は、バイオマスとの反応性を十分に有するものであるが、バイオマスとの反応選択性が極めて低いという問題点を有する。しかも、バイオマスを硫酸で処理することから、耐酸性の反応器を必要とし、使用後の硫酸を中和し、回収する工程が必要となることから反応装置のコストが高いという問題点を有する。
一方、酵素処理法は、バイオマスに酵素を反応させることによって、糖化する方法である。この酵素処理方法においては、活性の高い酵素を使用することによって、比較的マイルドな反応条件で、選択的に分解反応が進行する。したがって、酵素糖化方法は、硫酸等の強酸を使用する上記酸処理方法と比較して、反応時における安全性が高いという利点を有する。しかしながら、上記酵素処理方法において一般的に使用されているセルロースの分解酵素である「セルラーゼ」は、非常に高価である。しかもバイオマスの結晶構造が非常に強固なものである場合には、糖化するために、多くの酵素のみならず、希酸処理やその
他前処理が必要となる。
つまり、酵素処理方法は、反応効率がきわめて低く、酵素反応による生物法によるため反応速度が酸処理方法に比較して、遅いという問題点がある。さらに、酵素処理方法において使用される酵素であるセルラーゼは、糖化反応に一度使用するとその回収がきわめて困難である。酵素セルラーゼを回収する場合には、上記酸処理方法における硫酸の回収と同様に、コストがかかり、酵素の探索工程も煩雑となる(例えば、非特許文献1)。
このような観点から木質系バイオマスからエタノールを製造する方法として、加水分解及び酵素処理を行う糖化方法が開示されている(特許文献1及び特許文献2)。しかしながら上記方法においては、バイオマスの加水分解反応に強酸である硫酸やアルカリ水溶液を使用しているため、上記の通り、依然として硫酸の回収や中和工程が必要であるという問題点がある。
上記木質系バイオマスからエタノールを製造する方法においては、酸又は塩基処理の後に酵素処理が必須の工程となっており、処理工程が煩雑となる。また、前述したように、酵素が高価な上にその回収にもコストがかかるという問題点がある。
なお、本件特許出願人は、本件発明に関連する文献公知発明が記載された刊行物として、以下の技術文献を開示する。
特開2008−43328号公報 特開2006−87350号公報 「濃硫酸法バイオマスエタノール製造プロセス」種田大輔 2006年、(セルロースコミニュケーション、第13巻、第2号、第49頁〜第52頁、2006年)、Cellulose Communication. Vol.13 No2, p49〜p52 (2006) 「アルミナ粒子を担体とする固定化セルラーゼの調製とその特性」上牧 修 化学工学論文集、第22巻、第4号 p801〜p806 (1996)
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、硫酸等の液体の強酸や強塩基を使用することなく、簡易かつ容易にセルロース系バイオマスを極めて高い転化率にて液化する方法を提供することにある。また、本発明の課題は、液化反応後に生成するグルコース、キシロース等の単糖類及び液体化合物との分離が容易であるセルロース系バイオマスを液化する方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、セルロース系バイオマスを固体酸により前処理をし、その後、適切な温度で水熱分解をすることにより、セルロース系バイオマスを高転化率にてグルコースやキシロース等の単糖類及びその他の液体化合物に液化することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の技術的事項から構成される。すなわち、
(1)セルロース系バイオマス原料を、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する工程を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化方法。
(2)少なくともセルロース系バイオマス原料を、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する第1の工程と、
前記第1の工程において生成する単糖類を含む溶液と未反応のセルロース系バイオマス原料を分離し、前記未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解する第2の工程と、を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化方法。
(3)前記第1の工程は、
前記水熱分解する温度を50℃〜300℃に設定し、
単糖類キシロースを含む液化物を生成する工程と、
その後、水熱分解する温度を50℃〜300℃に設定し、単糖類グルコースを含む液化物を生成する工程と
を含んでなることを特徴とする(2)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(4)前記担体表面の官能基は、電子対を受け取る性質を有することを特徴とする(2)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(5)前記表面担体の官能基は、酸性基であることを特徴とする(2)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(6)前記表面担体の酸量は、0.5(ミリモル/グラム)〜5.0(ミリモル/グラム)であることを特徴とする(2)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(7)前記担体は、熱可塑性樹脂及び /又は無機固体であることを特徴とする(2)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(8)前記無機固体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト及び活性炭から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする(7)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(9)前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレンであることを特徴とする(7)に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
(10)セルロース系バイオマスを粉砕する処理手段と、
前記処理手段によって、粉砕されたセルロース系バイオマスをセルロース系バイオマス原料とする調製手段と、前記セルロース系バイオマス原料を、官能基を有する担体に供給するセルロース系バイオマス原料供給手段を備えた第1の処理部と、
前記第1の処理部において、生成する単糖類を含む溶液と未反応のセルロース系バイオマス原料を分離する手段と、前記未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解する第2の処理部と
を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化装置に関する技術である。
本発明によれば、セルロース系バイオマスを簡易かつ容易に、高転化率にて単糖類及びその他液体化合物に転化することができる。また、本発明によれば、各種セルロース系バイマスを高い転化率にて単糖類及びその他液体化合物に液化することができ、しかも生成物である単糖類と固体酸等との分離が容易であり、かつ反応液等の回収も容易なセルロース系バイオマスの液化方法が提供される。特に本発明においては、酵素処理をすることなく、固体酸及び/又は固体塩基触媒のみの処理によりバイオマスを単糖類及びその他液状化合物に転化することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のセルロース系バイオマスの液化方法は、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する行程を含むことを特徴とするものである。また、本発明のセルロース系バイオマスの液化方法は、セルロース系バイオマス原料を担体表面の官能基と反応させ、ることにより、水熱分解し、単糖類とする第1の工程と、前記第1の工程において分解されなかった未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解することにより、単糖類及びその他の液体化合物とする第2の工程を有することを特徴とするものである。
上記第1の工程において、セルロース系バイオマスとは、植物壁を構成する多糖類のセルロースを含むバイオマスであり、一般的には、木や草あるいは農産物の残渣をいう。その他には、建築廃材、間伐材、麦わらやバガス(サトウキビの搾り貸カス)、とうもろこしの茎や葉っぱが含まれる。上記セルロース系バイオマスは、主としてセルロース、ヘミセルロース及びリグニンから構成されている。セルロースは、代表的な単糖であるグルコースが脱水縮合した多糖類であり、ヘミセルロースはグルコース、キシロース、マンノース等が脱水縮合した複合多糖類である。なお、リグニンは、フェノール性化合物で分解しにくいため、バイオマス原料として利用することは困難であるとされている。
本発明においては、上記セルロース系バイオマスに必要な処理をして、セルロース系バイオマス原料とする。ここで必要処理とは、第1の工程において、担体表面の官能基を反応させるための処理であり、具体的には、セルロース系バイオマスを洗浄し、乾燥、さらに、加水分解反応を促進させるための粉砕等が含まれる。たとえば、天然のセルロース系バイオマスを水洗し、その後、絶乾燥法等により乾燥し、市販のミル粉砕装置を使用して、所定の大きさに粉砕する。このように必要な処理を行った後、上記セルロース系バイオマスは、所定の大きさを有するセルロース系バイオマス原料となる。バイオマス原料のバイオマスの粒径は、2mm以下で、20メッシュないし10メッシュが好ましい。20メッシュ未満であると、消費エネルギーが大きくなり、前処理コストが高くなり好ましくない。一方、2mmを超えると、十分な水熱分解反応が起きないため好ましくない。次に、洗浄、乾燥、粉砕されたセルロース系バイオマスを水溶液とし、本発明のセルロース系バイオマス原料とする。
次に、第1の工程においては、上記セルロース系バイオマス原料を担体表面の官能基と反応させて、水熱分解を行う。上記担体として使用できる物質としては、官能基を固定化担持することができかつ、酸性又は塩基性を有する物質であれば特に制限されるものではない。また、担体自身がその表面構造に所定の官能基を有するものであってもよい。例えば、熱可塑性樹脂であるポリスチレン担体の表面に酸が固定された陽イオン交換樹脂や、その表面構造に酸性基又は水酸基等を有するシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、活性炭などを例示することができ、さらには、これらに二種類以上の組み合わせからなる混合物を例示することができる。陽イオン交換樹脂の種類や、シリカ、アルミナ担体の焼成処理温度を調整することによって、適宜にその表面に存在する酸性基や塩基性基を調整してその酸性や塩基性を変化させることができる。このように本発明においては、担体表面に官能基を有する担体を固体触媒という。
担体表面の官能基としては、上記セルロース系バイオマス原料と反応し、単糖類等の液状化合物とすることができるものであれば、特に制限されるものではなく、上記セルロース系バイオマスの種類部位に応じて、適宜に選択できるものである。例えば、強酸性のスルホン酸基や水素イオン等のブレンステッド酸や電子対を受け取ることができる性質を有するルイス酸を持つ官能基を例示することができる。
一方、セルロース系バイオマス原料を構成するバイオマスが、例えば、赤松廃材等の木質系バイオマスである場合には、赤松廃材の表面を構成するリグニン成分を溶解させるために水酸基を有する担体を使用することもできる。例えば、官能基として、水酸基を有する担体である酸化マグネシウムや水酸化マグネシウム等の化合物や電子対を与える性質を有するルイス塩基を持つ官能基を採択することができる。このように本発明の第1の工程においては、上記セルロース系バイマス原料と担体表面の官能基とを水熱分解反応させることによって、セルロース系バイオマスを単糖類とすることができる。水熱分解反応は、通常のエステルの加水分解反応により進行し、セルロース系バイオマス原料は、グルコール、フルクトース、キシロース、マンノース等の単糖類及びその他の液体化合物となる。
第2の工程は、前記第1の工程で、水熱分解反応により単糖類やその他の液体化合物に転化しなかった未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解により単糖類やその他の液体化合物とする工程である。このように本発明においては、担体表面の官能基との反応による水熱分解の少なくとも2段階の工程を有することによって、セルロース系バイオマスを完全に分解し、単糖類及びその他の液体化合物とするものである。
第1の工程において使用される固体酸触媒は、前記固体酸触媒を1種類もしくは必要に応じて2種類以上を使用すればよい。これらの固体酸触媒は、カラムに充填して使用することもでき、また上記セルロース系バイオマ原料と直接接触させて使用することもできる。第1の工程において、固体酸触媒とセルロース系バイオマス原料を反応させる温度としては、上記固体酸触媒の耐久温度となる使用担体の融点に応じて適宜設定することができ、30℃ないし400℃、好ましくは、70℃ないし250℃である。具体的には反応温度は、担体の融点がその上限の限界温度となる。例えば、ポリスチレンを担体とする場合には、反応温度を70℃から150℃に設定することができる。また、シリカを担体とする場合には、反応温度を70℃から300℃に設定することができる。アルミナを担体とする場合には、反応温度を70℃から300℃に設定することができる。
また、第1の工程において、セルロース系バイオマス原料と固体酸触媒との反応温度を上記範囲にて適宜設定することに、必要な単糖類のみを製造することができる。たとえば、セルロース系バイオマス原料に含まれるキシロース(C5)のみを製造したい場合には、上記第1工程における反応温度を70℃から180℃に設定することができる。また、セルロース系バイオマス原料に含まれるグルコース(C6)のみを製造したい場合には、上記第1工程における反応温度を70℃から250℃に設定することができる。このように、本発明においては、第1の工程における反応温度を適宜設定して、単糖類及び液化化合物等の液体全体に占める各種単糖類の割合を決定することができる。たとえば、液体全体に占めるキシロース(C5)の割合を大きくしようとする場合には、第1の工程の設定温度を120℃ないし150℃とし、後述する第2の工程の水熱分解の温度を150℃ないし180℃とすればよい。
また、第1工程において、その反応時間は、1分ないし24時間であることが好ましい。好ましくは、反応時間10分ないし12時間である。処理時間が1分未満であると、十分な水熱分解反応が進行せず、24時間を超えると却って、生成した単糖類の分解がさらに進行して、また操作時間が長くなるので、エネルギー効率の観点から好ましくない。別の観点からは、本発明においては水熱分解温度と分解時間を設定したプログラムを作製し、そのプログラムに基づいて液化反応を行い、所望の濃度を有する単糖類及び液体化合物からなる液体を製造することができるものである。
第2の工程は、第1の工程でセルロース系バイオマス資源からキシロース等の単糖類を製造した後、反応系に残った未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解によって、グルコース等の単糖類やその以外の液体化合物とする工程である。このように本発明においては、第1の工程と第2の工程を組み合わせることにより、第1の工程でセルロース系バイオマス原料を単糖類とし、第2の工程で第1の工程で未反応の原料を単糖類やその以外の液体化合物とし、それぞれの工程によりセルロース系バイオマス原料をほぼ完全に液体化合物とすることができる。
第2の工程においては、第1の工程と同様に水熱分解時間と水熱分解温度を調整し、単糖類以外の液体化合物を製造することができる。水熱分解温度は、120℃ないし180℃であることが好ましい。水熱分解時間は、0.5時間ないし24時間であることが好ましい。
なお、本件発明において第2の工程において、生成する液体の化合物は、単糖類以外の低分子量化合物で、たとえば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、レブリン酸、グルコン酸等、またはエタノール、キシリトール、ソルビトール等が液体クロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー―質量計(GC―MASS:島津GC-17A―QP5050)の詳細な定性分析等によって明らかになった。
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
<強酸性イオン交換樹脂>
本発明において使用されるセルロース系バイオマスを水熱分解するための固体酸触媒の一例として、以下の陽イオン交換樹脂を採用した。例えば、アンバーリスト15Dry (ローム・アンド・ハース株式会社製)、アンバーリスト31Wet (ローム・アンド・ハース株式会社製)、アンバーリスト15Wet (ローム・アンド・ハース株式会社製)、ダイヤイオンPK228(三菱化学株式会社製)である。
<スルホン酸―カーボン固体酸:CSA−1>
本発明において使用されるセルロース系バイオマスを水熱分解するための固体酸触媒であるスルホン酸−カーボン系固体酸触媒を以下のように調製した。まず、フラスコ内に、特級ナフタレン(キシダ化学工業)20g、重量パーセント濃度96%以上の濃硫酸(東京化成工業)200mlを窒素雰囲気下において、250℃加熱、15時間加熱処理した。次に、過剰の濃硫酸を250℃、5時間真空蒸留により、硫酸とダークブラウン色のタールを取り除き、フラスコ内に黒色の固体を得た。次に、得られた上記黒色固体を細かく砕き、粉末状にする。そして、沸騰水で硫酸根イオンが検出されなくなるまで繰り返し洗浄する。その後、得られた固体を乾燥し、ナフタレンを出発原料とするスルホン酸-カーボン系固体酸CSA-1を調製した。
<スルホン酸-メソポラスシリカ固体酸触媒:MPS−1>
本発明において使用されるスルホン酸-メソポラスシリカ固体酸触媒MPS-1を以下のように調製した。まず、4.0gの樹脂(P123)に1.9Mの塩酸129gを加え、撹拌・溶解させ、テトラエチルシリルケート(TEOS)を32.8mmol加え、3.0時間撹拌した。次に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を8.2mmol加えて30分間程度撹拌した。そして過酸化水素を73.8mmol加え、40℃の条件下で20時間撹拌し、白色の沈殿が生じた。この沈殿物を100℃、24時間、静置エージングを行い、結晶を成長させた。ろ過後、沈殿物を一晩空気中乾燥させた。このろ過物を、ソックスレーを用いてエタノールで抽出を行い、界面活性剤の除去を行った。最後に、エタノールと水で、このろ過物を洗浄して、60℃の真空条件下で乾燥させてスルホン酸基を導入したMPS-1固体酸触媒を調製した。
<スルホン酸-メソポラスシリカ固体酸触媒:MPS−2>
本発明において使用されるスルホン酸-メソポラスシリカ固体酸触媒(MPS−2)を以下のように調製した。まず、4.0g樹脂(P123)に1.9Mの塩酸129gを加え、撹拌・溶解させ、テトラエチルシリルケート(TEOS)を7.69g、加え、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を0.81g加えて、40℃、20時間撹拌した。次に100℃、24時間、静置でエージングを行い、結晶を成長させた。ろ過後、沈殿物を一晩空気中乾燥させた。このろ過物を、ソックスレーを用いてエタノールで抽出を行い、界面活性剤の除去を行った。抽出後の固体を30wt%の過酸化水素水を用い、室温アルゴンガス雰囲気下で酸化処理を実施した。次にエタノールと水でそれぞれ洗浄し、1.0wt%になるように1.0Mの硫酸溶液を加え1.0時間浸漬した。最後に再度エタノールと水でそれぞれ洗浄し、60℃の真空条件下で乾燥させてスルホン酸基を導入したスルホン酸-メソポラスシリカ固体酸触媒(MPS-2)を調製した。
<スルホン酸-ハイブリットメソポラスシリカ固体酸触媒:HMPS−1/SOH―HMM>
本発明において使用されるスルホン酸-ハイブリットメソポラスシリカ固体酸触媒(HMPS−1)を以下のように調製した。まず、7.93g塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム(ODTMA)を3Mの水酸化ナトリウム(35.48g)とイオン交換水(224ml)を混合した溶液に加え、撹拌・溶解させ、11.0g 1,2-ビストリエトキシシリルエタン(BTEE)と2.07g 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を加えて、室温で、20時間撹拌した。次に100℃、24時間、静置でエージングを行い、結晶を成長させた。ろ過後、沈殿物を一晩空気中乾燥させた。このろ過物を36%の塩酸(3.0g)を含むエタノール溶液(200ml)70℃で、12時間撹拌・還流し、界面活性剤の除去を行った。この固体(1.0g)表面のチオール基を酸化するために室温で24時間65wt%濃硝酸(10g)を用いて酸化処理を行った。ろ過後の粉末を大量の熱水で洗浄し、真空下で乾燥、スルホン酸基を導入したスルホン酸-ハイブリットメソポラスシリカ固体酸触媒(HMPS-1)を調製した。
(実施例1)
セルロース系バイオマスとして、アシパルプ(東京都府中市晴見町の休耕田から採取・脱リグニン処理済、組成:ホールセルロース91.4%、ヘミセルロース0.5%、酸不溶リグニン7.1%、酸可溶リグニン1.0%)を採択しこれを原料とし、固体酸水熱分解によるバイオマスの単糖化を行った。固体酸水熱分解は、以下のようにして行った。まず、上記アシパルプを市販ミル粉砕装置:ワンダーブレンダー(WB−1・大阪化学株式会社)にて粉砕し、その後、絶乾法により乾燥させた。上記粉砕、乾燥後のアシパルプをその粒径約14メッシュアンダー程度として調製した。上記、粉砕及び乾燥させたアシパルプ1.0gを蒸留水50mlに溶解させて、アシパルプを含有する水溶液を作製した。
固体酸として、上記強酸性イオン交換樹脂であるアンバーリスト15Dry(ローム・アンド・ハース株式会社製)を採択し、加水分解反応を行った。なお、アンバーリスト15Dry(ローム・アンド・ハース株式会社製)の物性は、酸量:4.48[ミリモル/グラム]、粒径:約18メッシュ以下である。反応装置として、25φステンレス製チューブにスエジロッグ製のキャップをつけた、密閉可能なチューブ型反応管にアシパルプ粒子を含有する水溶液50mlを入れ、上記固体酸触媒と水を入れた。その後、120℃、24時間、水熱分解反応を行い、第1の工程のみでバイオマスの糖化及び液化を完了させた。
本実施例において、上記第1の工程のみの反応により、バイオマスであるアシパルプを水熱分解して得られた反応物は0.2μmのメンブレンフィルタ(アドバンテックス社製、品名TO20A047A)で濾過し、残渣と水可溶部とに分離した。最初に投入した原料の重量と固体水熱分解後に回収された残渣の重量から、バイオマスの液化率(Total Conversion)として算出した。水可溶部に生成した単糖類であるグルコース(C6)及びキシロース(C5)を以下のように液体クロマトグラフィーによる定性・定量分析を行なった。単糖類グルコース(C6)への転化率及び単糖類キシロース(C5)への転化率を糖収率として示す。さらに、上記単糖類グルコース(C6)への転化率及び単糖類キシロース(C5)の合計を全単糖収率(Saccharo-yield[%])として算出した。
上記定性・定量分析に使用される測定機器として、東ソー株式会社製高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Amide80カラム(東ソー(株)、屈折率RI検出器)及び島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(HPLC、カラム:TSKgel OApak-A (東ソー(株)、電導率検出器)を使用した。それぞれ分析条件はキャリアー液流量:1.0ml/分、カラム温度:80℃、キャリアー:80/20体積%、アセトニトリル/水、及びキャリアー液流量:0.7ml/分、カラム温度:40℃、キャリアー:0.75mM硫酸であった。以下、図1に、固体酸水熱分解温度と、バイオマス(アシパルプ)から単糖類グルコース(C6)への転化率(■)及び単糖類キシロース(C5)への転化率(●)、そして上記単糖類グルコース(C6)への転化率及び単糖類キシロース(C5)の合計した全単糖収率(Saccharo-yield)(▲)、さらに、最初に投入した原料の重量と固体水熱分解後に回収された残渣の重量から算出したバイオマスの全液化率(Total Conversion[%])(◆)を示す。
(実施例2及び実施例3)
水熱分解反応の温度をそれぞれ150℃(実施例2)及び180℃(実施例3)に変化させた以外は、実施例1と同様にセルロース系バイオマスの単糖化及び液化を行った。以下、同様にして図1に、固体酸水熱分解時間とバイオマスから単糖類グルコース(C6)への転化率(■)及び単糖類キシロース(C5)への転化率(●)を糖収率(%)として示す(実線)。また、全単糖収率(Saccharo-yield)(▲)、及びバイオマスの全液化率(Total Conversion[%])(◆)を示す(実線)。
(比較例1ないし比較例3)
固体酸を使用しない以外は、それぞれ実施例1ないし実施例3と同様にしてバイオマス(アシパルプ)の単糖化及び液化を行った。結果を図2に示す。
この結果、固体酸アンバーリスト15Dry(ローム・アンド・ハース株式会社製)を添加した実験では反応温度が高くなるにつれて生成した全糖収率は減少した。しかし、その内訳を見てみると、120℃の反応では単糖類キシロース(C5)糖の収率が最も高くなっていた、そして、150℃、180℃ではほとんど検出されない程度まで減少していた。一方で単糖類グルコース(C6)糖は150℃をピークに180℃で減少した。この現象は各転化率こそ触媒存在下と比べて収率は低いが無触媒のブランク実験にも同様の傾向が当てはまった。つまり、単糖類キシロース(C5)糖と単糖類グルコース(C6)糖の分解の挙動が異なることが示唆され、単糖類キシロース(C5)の方が分解しやすいと考えられる。180℃、24時間の反応ではバイオマス全液化率が上昇しているにも関わらず、単糖類として生成される量は少なかった。これは、水熱分解温度が150℃以上という厳しい条件では単糖類以外の液体物質、例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、レブリン酸、グルコン酸等に転化してしまったことが考えられる。
(実施例4ないし実施例6)
水熱分解反応の温度を150℃に設定し、水熱分解時間をそれぞれ3時間(実施例4)、12時間(実施例5)及び24時間(実施例6)とした以外は、実施例1と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を図3に示す。図1と同様に、固体酸水熱分解時間とバイオマスから単糖類グルコース(C6)への転化率(■)及び単糖類キシロース(C5)への転化率(●)を示す。さらに、上記単糖類グルコース(C6)への転化率(■)及び単糖類キシロース(C5)の合計した全単糖収率(Saccharo-yield[%])(▲)、バイオマスの全液化率(Total Conversion[%])(◆)を示す。
上記実施例より、150℃、触媒存在下の反応でも反応温度の影響と同様、始めは単糖類キシロース(C5)の収率が高く、時間とともに減少する結果になった。反対に単糖類グルコース(C6)が時間により増加していった。
(実施例7ないし実施例11)
固体触媒として、固体酸触媒MPS−1を使用し、かつ水熱分解反応の温度を170℃に設定し、水熱分解時間をそれぞれ1時間(実施例7)、3時間(実施例8)、6時間(実施例9)、12時間(実施例10)及び24時間(実施例11)とした以外は、実施例1と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を図4に示す。
この結果、合計糖収率のピークは12時間までシフトした。そして、単糖類キシロース(C5)の転化率減少も急激になった。
(実施例12ないし実施例18)
水熱分解温度を180℃に設定し、かつ水熱分解時間をそれぞれ30分(実施例12)、1時間(実施例13)、3時間(実施例14)、4時間(実施例15)、6時間(実施例16)、12時間(実施例17)及び24時間(実施例18)とした以外は、実施例7と同様にしてアシパルプの糖化及び液化を行った。
この結果、転化率のピークは3時間までシフトした。そして、単糖類キシロース(C5)の転化率減少も同時に急激になった。
(比較例4ないし比較例6)
固体酸を使用しない以外は、実施例13、実施例15、実施例17と同様にアシパルプの糖化及び液化を行った。なお、水熱分解時間を、それぞれ1時間(比較例4)、3時間(比較例5)及び6時間(比較例6)とした。
さらに、実施例12ないし実施例18及び比較例4ないし比較例6のデータをまとめた結果を図5に示す。図5より、固体酸触媒を加えることによりバイオマスの単糖収率が増加することがわかった。また、原料の全液化率も酸触媒により大きく上昇している。これらのことより水熱分解反応において固体酸触媒添加の効果が見られることが明らかになった。
水熱分解温度を170℃に設定した実施例7ないし実施例11と、水熱分解温度を180℃に設定した実施例12ないし実施例18データを元に、メソポーラス・シリカ固体酸触媒MPS−1を使用しての上記各温度における反応時間と全単糖収率、全液化率の結果をまとめた。結果を図6及び図7に示す。
(実施例19ないし実施例21)
固体触媒として、CSA−1を使用し、かつ水熱分解温度をそれぞれ120℃、150℃及び180℃に設定し、水熱分解時間をそれぞれ24時間(実施例19ないし実施例20)及び3時間(実施例21)とした以外は、実施例1と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を図8に示す。
上記実施例から明らかなように、水熱分解温度の上昇により、糖収率、全転化率は、ともに増加することが理解される。水熱分解温度が、180℃の場合では、反応時間が他と比べて短時間であったが単糖類の生成は、最も促進されていた。これらの結果から、単糖類キシロース(C5)への転化反応を優先する場合は、その水熱分解温度を170℃ないし180℃に設定し、分解時間を1時間未満とすることが好ましい。一方、単糖類グルコース(C6)への転化を優先の場合は、180℃で、3時間、又は170℃で、12時間と設定することが好ましいことが判明した。
(実施例22ないし実施例27)
固体触媒として、CSA−1、MPS−1、MPS−2、HMS−1、アンバーリスト15Dry、アンバーリスト31Wetをそれぞれ使用し、かつ水熱分解温度を150℃に設定し、水熱分解時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を図9に示す。
図9より、単糖類キシロース(C5)糖が最も転化された固体酸触媒は、HMS−1固体酸触媒であった。そして、単糖類グルコース(C6)の収率が高かったのはCSA−1固体酸触媒であった。この触媒での全単糖収率は約17%、原料の全液化率は約50%であった。
(実施例28ないし実施例31)
水熱分解温度を180℃に設定し、水熱分解時間を3時間とした以外は、実施例22ないし25と同様にして(実施例28(CSA−1)、実施例29(MPS−1)、実施例30(MPS−2)、実施例31(HMS−1)の固体触媒を
使用。)、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を図10に示す。
(比較例7)
固体酸を使用しない以外は、実施例28と同様にアシパルプの糖化及び液化を行った。
図10より、単糖類キシロース(C5)糖が最も転化された固体酸触媒は、150℃での結果と同様にHMS−1固体酸触媒であった。一方、単糖類グルコース(C6)の収率が高かったのは、MPS−1固体酸触媒であった。この触媒での全糖収率は約22%、原料の全液化率は約83%であった。また、固体酸を使用しない比較例7と比べると、糖収率にも全液化率にも触媒の効果が顕著であることがわかる。
以上の単一工程での実施例から、単糖類キシロース(C5)及び単糖類グルコース(C6)は、それぞれ単糖類とするのに最適な水熱分解温度、水熱分解時間を有していることが判明した。そこで、セルロース系バイオマスの糖化及び液化反応を2段(あるいは2工程)またはそれ以上の多段階(多工程)のステップに分けて、単糖類キシロース(C5)、単糖類グルコース(C6)、それ以外の液体化合物を選択的に製造することを検討した。
(実施例32)
<二段階工程固体酸水熱分解>
固体酸触媒として、MPS−1を使用し、チューブ型反応器の変わりに撹拌付小型オートクレーブを用いて、かつ単糖類キシロース(C5)を選択的に得るために第1工程として180℃で10分間の水熱分解を行い、単糖類キシロース(C5)を回収した後、第2工程として未反応のバイオマスを180℃にて3時間の水熱分解を行った以外は、実施例1と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を表1に示す。
Figure 2009296919
表1より、第1工程で生成した単糖がほとんど単糖類キシロース(C5)で、その単糖収率が11.1%で、第2工程で生成した単糖が主に単糖類グルコース(C6)で、その単糖収率が13.3%で、合計糖収率が24.4%で、アシパルプの最終液化率が77.2%であった。すなわち、水熱分解温度及び時間を適宜設定し、必要とする単糖類を得ることができる。
(実施例33)
<二段階工程ないし多段階工程固体酸水熱分解>
固体酸触媒として、CSA−1を使用した以外、実施例32と同様にアシパルプの糖化及び液化を行った。結果を表1に示す。表1より、同様な結果が得られ、第1工程で生成した単糖と、第2工程で生成した単糖を合計した単糖収率が26.1%であった。
第2工程で水熱分解後、更に150℃で合計16時間追加して、水熱分解を行った。これは溶液に溶解したが単糖にまで低分子化できなかったものを転化・分解することを目的として試みた。結果を表1に示す。150℃の運転を3時間追加することで単糖収率はかすかに増加したが、大きな変化は見られなかった。
(実施例34ないし実施例35)
表2の通りに設定した水熱分解温度とその反応時間の以外、実施例32と同様にして、アシパルプの糖化及び液化を行った。結果を表2に示す。
Figure 2009296919
表2を見ると、実施例34では、180℃、10分での第1工程での反応後溶液から単糖類を回収しなくても第3工程や第4工程での150℃の運転により、単糖類グルコース(C6)の回収効率の大きな改善は見られなかった。また、実施例35では、第1工程の水熱分解温度を180℃から170℃に下げ、さらに第2工程では180℃の運転時間も3時間から1時間まで短縮した反応条件をより温和にした水熱分解でも単糖類グルコース(C6)への転化は促進されず、単糖類グルコース(C6)と比べ温和な条件で生成する単糖類キシロース(C5)の濃度は第2工程では12.6%、第3工程では13.3%まで上昇した。
これらのことより、固体酸水熱分解反応により糖が生成される際には二糖類、多糖類が生成されるのでは無く、選択的にセルロース鎖の末端のβ―1,4グリコシド結合から反応が起こっていることが推測できる。
(実施例36)
<固体酸触媒の再利用>
実施例21で使用した固体酸触媒CSA−1を回収し、この触媒を使用し、実施例21と同様にしてアシパルプの糖化及び液化を行った。固体酸触媒の回収及び繰り返し使用が5回まで行った。各使用における生成した単糖類キシロース(C5)及び単糖類グルコース(C6)への転化率の合計を全単糖収率(Saccharo-yield[%])として算出した。結果を図11に示す。
図11に示すように、固体酸触媒CSA−1は繰り返し実験3回(run3)まで初期活性(単糖収率)を維持することがわかった。また、繰り返し実験4〜5回目の反応においては単糖類全体の収率は20〜28%程度、減少しているが、生成物の単糖類キシロース(C5)の生成量の増加が見られた。これは単糖類キシロース(C5)の方が穏やかな反応状態で進むという結果より、繰り返し使用実験に使用するにつれて触媒の酸量が減少していることが考えられる。活性の若干の低下が見られたが、固体酸触媒での数回の繰り返し使用可能が見出された。
(参考例1)
<固体酸触媒の酸量の測定>
本実施例で使用した各種固体酸触媒についてその酸量を測定した。単位質量あたりの水素イオンのモル数(Hmmol/g)を酸量とした。固体酸触媒の酸量は、以下の酸塩基滴定法により測定した。2M塩化ナトリウム溶液及び0.1M水酸化ナトリウム溶液を使用し、以下の手順にて行った。まず、2M塩化ナトリウム溶液20グラムに測定する上記各種固体酸触媒を0.1グラム加えた。次に上記固体酸触媒を混合した溶液を24時間室温にて攪拌した。最後に、0.1水酸化ナトリウム溶液を滴定により滴定曲線を作成し、その滴定量から固体酸触媒1.0gあたりの酸量(Hmmol/g)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2009296919
表3によると、イオン交換樹脂である(15DRY及び31Wet)を除いて、
酸量は、CSA−1>MPS−1>MPS−2>HMPS−1の順となった。この順序は、実施例の固体酸種類の活性試験の結果と糖転化率の活性と順序と同じになった。つまり、固体酸触媒の酸量であるH+がバイオマスの膨潤、低分子化、糖転化を促進していることが裏付けられた。
本発明のセルロース系バイオマスの液化方法は、エネルギー開発分野、エタノール製造に代表される有機合成化学分野さらには環境技術分野の技術革新に大きく寄与することができる。
水熱分解温度と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率を示した図である。 水熱分解温度と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率を示した図である。 水熱分解時間と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率転化率、糖収率、及び全液化率を示した図である。 水熱分解時間と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率を示した図である。 水熱分解時間と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率を示した図である。 水熱分解時間と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、及び糖収率を示した図である。 各水熱分解温度における分解時間と単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、及び糖収率を示したグラフである。 各水熱分解温度における単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、及び糖収率を示したグラフである。 各種固体触媒による単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率の変化を示した図である。 各種固体触媒による単糖類グルコース(C6)及び単糖類キシロース(C5)の転化率、糖収率、及び全液化率の変化を示した図である。 各種固体触媒の再利用した場合の活性を示した図である。

Claims (10)

  1. セルロース系バイオマス原料を、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する工程を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化方法。
  2. 少なくともセルロース系バイオマス原料を、担体表面の官能基と反応させ、前記セルロース系バイオマス原料を水熱分解する第1の工程と、
    前記第1の工程において生成する単糖類を含む溶液と未反応のセルロース系バイオマス原料を分離し、
    前記未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解する第2の工程と、
    を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化方法。
  3. 前記第1の工程は、
    前記水熱分解する温度を50℃〜300℃に設定し、
    単糖類キシロースを含む液化物を生成する工程と、
    その後、水熱分解する温度を50℃〜300℃に設定し、単糖類グルコースを含む液化物を生成する工程と
    を含んでなることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  4. 前記担体表面の官能基は、電子対を受け取る性質を有することを特徴とする請求項2に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  5. 前記表面担体の官能基は、酸性基であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  6. 前記表面担体の酸量は、0.5(ミリモル/グラム)〜5.0(ミリモル/グラム)であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  7. 前記担体は、熱可塑性樹脂及び /又は無機固体であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  8. 前記無機固体は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト及び活性炭から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項7に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  9. 前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレンであることを特徴とする請求項7に記載のセルロース系バイオマスの液化方法。
  10. セルロース系バイオマスを粉砕する処理手段と、
    前記処理手段によって、粉砕されたセルロース系バイオマスをセルロース系バイオマス原料とする調製手段と、前記セルロース系バイオマス原料を、官能基を有する担体に供給するセルロース系バイオマス原料供給手段を備えた第1の処理部と、
    前記第1の処理部において、生成する単糖類を含む溶液と未反応のセルロース系バイオマス原料を分離する手段と、前記未反応のセルロース系バイオマス原料を水熱分解する第2の処理部と
    を含むことを特徴とするセルロース系バイオマスの液化装置。
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