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JP2009296889A - 造血幹細胞の培養方法 - Google Patents

造血幹細胞の培養方法 Download PDF

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JP2009296889A
JP2009296889A JP2008151193A JP2008151193A JP2009296889A JP 2009296889 A JP2009296889 A JP 2009296889A JP 2008151193 A JP2008151193 A JP 2008151193A JP 2008151193 A JP2008151193 A JP 2008151193A JP 2009296889 A JP2009296889 A JP 2009296889A
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JP2008151193A
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Shin Kawamata
伸 川真田
Fumiko Nagahashi
文子 永橋
Lucia Barerin Chavez Ana
ルチア バレリン チャベス アナ
Nozomi Takada
のぞみ 高田
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Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe
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Abstract

【課題】造血幹細胞を容易に増幅でき、又は/及びGLVを回避でき、より安全な移植を可能とする造血幹細胞の培養方法を提供
【解決手段】純度95%以上のCD34陽性細胞を、X−VIVO10(BioWhittaker、Gaitherburg MD)培地をベース培地として、hFlt3/4Ligand(Perotech社製、London UK)、hSCF(Peprotech社製)、hTPO
(Peprotech社製)、さらにトレハロース(Trehalose)(Sigma Japan社製、Tokyo Japan)を添加した分化培地で培養した。培養の結果、トレハロース 5ng/mlにおけるCFU−GEMMの計数値は、中畑プロトコルにおけるCFU−GEMMの計数値に対して、約17%上まわることが確認された。
【選択図】図3

Description

本発明は、造血幹細胞を培養する方法に関し、特にトレハロースを用いて造血幹細胞を増幅培養するものに関する。また、本発明は臍帯血由来のフィーダー細胞を用いた造血幹細胞の増幅培養に関する。
生体内を流れる成熟血液細胞は、短期間の寿命(ヒトでは赤血球で約120日、血小板で約7日)しかなく、成熟血液細胞は造血前駆細胞から毎日分化増殖し、末梢血の成熟血液細胞の恒常性を保っている。造血幹細胞は、すべての血液細胞に分化する能力を持ち、その分化の多能性を維持しながら自己複製することが可能な細胞と想定されている。そして、この造血幹細胞が生体内に維持され続けることで、個体の生涯を通じて血液細胞が供給されるものと考えられる。
造血細胞を増殖させる因子としては、SCF(stem cell factor)、flt-3/flk-2リガンドや、インターロイキン、コロニー刺激因子などが知られている。これらのサイトカイン等を用いて造血幹細胞を培養すると、造血幹細胞は多分化能を失い、幹細胞としての性質が消失する。分化を抑制することで幹細胞、あるいは造血前駆細胞を未分化な状態に保ち、造血幹細胞、あるいは造血前駆細胞を増殖あるいは維持することが可能なのではないかと考えられる。
造血幹細胞を未分化なまま体外増幅培養する方法としては、京都大学の中畑が開発したいわゆる中畑プロトコール(培養培地に、所定量のSCF、TPO、FL、IL−6、sIL−6Rを含む)が高い増幅効果が認められることが報告されている。[非特許文献1記載]
現在、急性白血病をはじめとする腫瘍性血液疾患や、重症免疫不全、アデノシンデアミナーゼ欠損症、再生不良性貧血等の難治性血液疾患に対し、骨髄移植治療が施されている。骨髄移植治療では、一生涯にわたり各種血球細胞を産生する造血幹細胞を提供者(ドナー)から取得し、取得した造血幹細胞を受容者(レシピエント)の骨髄に定着させる。この骨髄移植治療では、大量の骨髄細胞をドナーから取得する必要があるため、ドナーの心身への負担が大きいという問題がある。また、骨髄移植治療においては、ドナー由来のT細胞の混入による急性移植片対宿主病(GVHD)の発症や、自己移植の際のがん細胞の混入による再発という問題もある。
このような状況の中、最近になって、臍帯血が骨髄と同程度の造血幹細胞を含むことが明らかにされ、移植治療に有用であることが明らかにされた。臍帯血を用いた造血幹細胞の移植治療では、骨髄や末梢血と比べて重症のGVHDの発生率が低いという利点がある。しかし、臍帯血を用いた造血幹細胞の移植治療には、臍帯から取得できる臍帯血の採取量が少ないという問題がある。このため、1個体に由来する臍帯血では体重40kg程度までのレシピエントに移植可能とされている。
また、末梢血にも造血幹細胞が含まれていることが明らかになっている。そこで、少量の造血細胞を未分化なまま効率よく増幅させることができれば、上記の問題点が解決される。
例えば臍帯血については、取得した臍帯血に含まれる造血幹細胞を効率的に増幅培養する以下のような試みが行われている。
このような造血幹細胞の増幅培養方法の一つに、胎盤組織および臍帯組織由来のストローマ細胞を、造血幹細胞を含むヒトCD34陽性細胞の増幅培養に応用する造血幹細胞の培養方法(以下、組織由来増幅培養方法とする。)がある。組織由来増幅培養方法は、以下のように行われる。
(1)ヒト胎盤からの造血ストローマ細胞の分離回収
臍帯血採取後の胎盤から臍帯と羊膜を除去した後、母体側からハサミで組織を採取し、血液を可及的に取り除く。このようにして1個の胎盤より200g〜300gの胎盤の組織切片を採取する。そして、これら組織切片を、培養皿に張り付け、所定の条件で10日〜14日培養した後、回収する。
(2)ヒト臍帯血からのCD34陽性細胞の採取及び調製
採取したヒト臍帯血から単核細胞を回収する。回収した臍帯血単核細胞からCD34陽性細胞を分画する。
(3)臍帯血CD34陽性細胞と胎盤由来造血ストローマ細胞との共培養
回収した組織切片と分画して得られた臍帯血由来のCD34陽性細胞とを、所定のサイトカインの存在下、所定条件で、10日間、共培養する。なお、共培養の際に用いる組織切片は、ヒト胎盤由来の造血ストローマ細胞として機能する。
このような組織由来増幅培養方法により、ヒトCD34陽性幹細胞を簡便にしかも安全に増幅することが可能となる。よって、少量の臍帯血であっても、任意の成人患者に移植できる上に、数回にわたる継続投与が可能となる。
また、臍帯血を一度採取しておけば必要なときに必要な量だけ造血幹細胞を供給することが可能となる。
さらに、骨髄移植においても大量の骨髄細胞を必要としない。よって、骨髄の採取に伴うドナーの心身への負担を低減することができる。
さらに、出産に伴って世界中で廃棄されている臍帯血を有効に活用することができる。現在、廃棄されている臍帯血を保有することによって、幅の広い移植抗原を有する造血幹細胞を保有することが可能となり、結果的に、移植抗原の適合する移植が可能となる。よって、重症のGVHDが発症するリスクを低減することが可能となる。
さらに、臍帯血由来の造血幹細胞を増幅する際に、同一の胎盤から単離したヒト白血球抗原(Human
Leukocyte Antigen、HLA)が適合したストローマ細胞を用いれば、造血幹細胞の増幅後もストローマ細胞を分離する必要がなく、極めて容易に増幅した細胞を採取することができ、増幅させた細胞を、直接、輸注することができる。[特許文献1記載]
さらに、現在、移植臍帯血幹細胞数不足を補う解決策として数種の臍帯血を同時に移植する複数臍帯血移が試みられており、所定の大学を中心に40例以上の複数(double)臍帯血移植が行われている。複数臍帯血移植では、白血病再発率が低いという利点がある。
特開平2004−222502号公報 Ueda et al., "Expansion of human NOD/SCID-repopulating cells by stem cell factor,Flk2/Flt3 ligand, thrombopoientin, IL-6 and soluble IL-6 receptor", The Journal of ClinicalInvestigation, April 2000, volume 105, Number 7, p1013-1021
造血幹細胞の増幅方法は数多く知られているが、その多くは分化を伴い、未分化なまま増幅させることができる方法であっても、多種の増殖因子等の生体成分を必要とし、非常に高価なものであった。
また、前述の臍帯血の増殖方法の1つである組織由来増幅培養方法には、次のような改善すべき点がある。
1.組織由来増幅培養方法では、胎盤から組織切片を取得し、造血幹細胞に対するストローマ細胞として、造血幹細胞と共培養している。一方、造血幹細胞は、臍帯から取得している。つまり、造血幹細胞を取得する臍帯とは異なる組織である胎盤を必ず必要とする。このため、取得した胎盤を保存しなければならないという改善すべき点がある。
また、胎盤自体を保存せずに胎盤から取得したストローマ細胞を保存するとしても、当該ストローマ細胞をセル・ライン化(株化)しなければならないという問題がある。セルライン化に際しては新たに遺伝子を導入等する必要があることから、遺伝子の選択や導入する遺伝子が幹細胞の増幅能や造血能等に与える影響を考えなければならないという新たな問題が発生する。
さらに、胎盤若しくは当該胎盤から取得したストローマ細胞を保存せずに、臍帯血の造血幹細胞を増幅させる必要が生じた時、つまり造血幹細胞の移植が必用となった時に取得できた胎盤を用いる場合には、造血幹細胞に対して同種異系のストローマ細胞と共培養し、得られた造血幹細胞を移植することとなる。よって、ストローマ細胞の生成の際に取り除けなかった病原菌や知られていないアレルゲンをも移植してしまう可能性があるという安全性の問題がある。
さらに、造血幹細胞を同種異系のストローマ細胞と共培養する場合、共培養結果得られた造血幹細胞とストローマ細胞との混合細胞から、ストローマ細胞を取り除かなければならない。このため、臍帯血由来の造血幹細胞の増幅の際に、同一の胎盤から単離したヒト白血球抗原(Human
Leukocyte Antigen, HLA)が適合したストローマ細胞を用いる方法が考えられるが、造血幹細胞の増幅の際、つまり、造血幹細胞の移植の際に、HLAが適合するストローマ細胞を生成できる胎盤を必ず得られるかという問題がある。
さらに、同種異系のストローマ細胞を生成する胎盤が得られない場合に、異種のストローマ細胞を生成する組織を用いるとなれば、前述の安全性の問題がさらにクローズ・アップされることになる。
さらに、胎盤は、子宮(母親)由来の組織と胎児由来組織が混在することで、胎児に栄養を補給している。 胎盤由来の間葉系細胞から作られたストローマ細胞で、他家由来の骨髄細胞を培養する場合はもちろんのこと、胎児由来の臍帯血を培養する場合でも、非自己組織(母親由来組織)に対するリンパ球活性化・免疫拒絶反応が引き起こされ、幹細胞の増幅以外に免疫担当細胞の増加と活性化が想定される。それゆえ胎盤由来のストローマ細胞で増幅された造血細胞を、骨髄移植に使用する場合、GVL(移植細胞による免疫拒絶反応)を起こす可能性があり、移植細胞の十分な生着が見込まれない可能性がある。
この点自家組織である同一の臍帯血から作成されたストローマ細胞を造血幹細胞増幅に使うことは、上記のGLVを回避でき、より安全な移植が可能であると考えられる。
ここで、胎盤ではなく臍帯を用いて、臍帯の間葉系組織からストローマを作成することによりこの問題を避けることが出来る。しかし、臍帯を臍帯血と同時に、セットで採取し保存するのは、採取ボランティアの手間・細胞分離技術・経費・時間・保管スペースの面で現実的でない。例えば、臍帯血については、臍帯血100ml入りの輸血バッグから1.5mlの液体チッソ保存用チューブに保管し直す必要がある。さらに、臍帯については、臍帯30gをコラゲナーゼ処理した後、細胞を採取し、別の1.5mlの保存用チューブに保管し直す必要がある。
2.前述の複数臍帯血移植では、血小板が6万以上にならないケースが数多く報告されており、移植細胞の生着という点では課題が残っている。
また、中畑プロトコールによる増殖では、CD34陽性細胞の増幅効果が認められるが、主に、CFU−GやCFU−GMコロニー形成能を有するCD34陽性骨髄前駆細胞が増え、CFU−GEMMコロニー形成能を有する造血幹細胞の増幅に繋がっているかどうか不明である。
さらに、中畑プロトコールによる増殖では、骨髄移植で最も期待されるGVL(移植細胞による免疫拒絶反応)効果は不明であり、白血病再発率抑制も懸案の1つである。
そこで、本発明は、造血幹細胞を容易に増幅でき、又は/及びGLVを回避でき、より安全な移植を可能とする造血幹細胞の培養方法を提供することを目的とする。
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、造血幹細胞を、トレハロースの存在下で培養する。
これにより、造血幹細胞の多分化能力を維持したまま当該造血幹細胞を増幅することができる。また、トレハロースは人体への安全性が高いと考えられることから、造血幹細胞としてヒト造血幹細胞を用いる場合には、人体への安全性が高い造血幹細胞を培養することができる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、CD34陽性細胞又はCD133陽性細胞である造血幹細胞を用いて造血幹細胞を培養する。
これにより、CD34及びCD133をマーカーとする造血幹細胞を容易に得て、培養することができる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、造血幹細胞が、臍帯血、骨髄、又は末梢血に由来する。
これにより、臍帯血、骨髄、末梢血を用いて造血幹細胞を容易に培養することができる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、造血幹細胞がヒト由来である。
これにより、ヒト由来の造血幹細胞を容易に培養することができる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、増幅された造血幹細胞が、CFU−GEMMコロニー形成能を有する細胞を含む集団である。
これにより、顆粒球-赤血球-マクロファージ-巨核芽球に分化することができるヒト造血幹細胞を容易に培養することができる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、造血幹細胞として、造血幹細胞と同種同系から取得した血液由来のストローマ細胞の共存下で培養したものを用いる。
これにより、血液からストローマ細胞を取得するので、プライマリ・ストローマ細胞を容易に得ることができる。よって、プライマリ・ストローマ細胞を用いてヒト造血幹細胞を増幅することができるので、増幅したヒト造血幹細胞を用いた移植では、安全性が担保される。また、血液は容易に保存することができるので、ストローマ細胞のセル・ライン化(株化)といった問題が生じないことから、安全性が高いヒト造血幹細胞の移植が可能となる。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法では、造血幹細胞とストローマ細胞が、同種同系のヒト臍帯血に由来する。
これにより、例えば臍帯血からヒト造血細胞及びストローマ細胞を取得することとすれば、臍帯血以外の組織を必要としない。臍帯血の保存は、現在、既に臍帯血バンクとして行われていることから、結果的に、必要なときに保存された臍帯血を用いてヒト造血幹細胞を増幅することができる。
さらに、臍帯血からストローマ細胞を取得することとすれば、現在、移植に必要とされるヒト造血幹細胞が少ないために破棄されている臍帯血であっても、当該臍帯血から容易にヒト造血幹細胞を増幅することができる。これにより、現在破棄されている臍帯血を、臍帯血バンクにおけるコレクションとして利用することができる。よって、臍帯血バンクにおけるコレクションの数が多くなるので、
移植を必要とするレシピエントとHLAが適合する臍帯血が見つかる可能性を高めることができ、移植の成功率を向上させることができる。
本発明の発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ヒト造血幹細胞を、トレハロースの存在下で培養することにより、多分化能を有するヒト造血幹細胞を効率的に増幅することができることをみいだし、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明にかかるヒト造血幹細胞の培養方法は、ヒト造血幹細胞を、トレハロースの存在下で培養することを特徴とする方法である。
「造血幹細胞」とは、全ての血球系細胞に分化可能な、自己再生能をもつ多能性幹細胞であって、具体的には、CFU−GEMMコロニー形成能を有する細胞を含む集団の意味に用いる。例えば、ヒト造血幹細胞には、細胞表面マーカーがCD34+、CD38−、CD90+、CD45RA−からなる長期造血幹細胞(LTHSC)、及びCD34−、CD38+、CD90−、CD45RA+からなる短期造血幹細胞(STHSC)が含まれる。
また、造血幹細胞は、ヒト由来のものに限定されず、マウス等の哺乳動物由来のものも含む概念である。さらに、造血幹細胞は、特定の組織由来に限定されず、例えば、骨髄由来、末梢血由来、臍帯血由来であってもよい。
「ヒト造血幹細胞」とは、あらゆる種類若しくは系統の血液成分に分化する多分化能力を有するとともに自己を複製する自己複製能力を有する細胞をいう。ヒト造血幹細胞は、例えば、ヒト骨髄、ヒト臍帯血、ヒト末梢血に存在する。
「トレハロースの存在下で培養する」とは、トレハロースの存在がヒト造血幹細胞の培養に影響が及ぶ状況で培養することをいう。
「トレハロースを含む培地」とは、培地にトレハロースが含まれていればよく、何らかの反応の有無、混合量、混合状態等を問うものではない。
「未分化」とは、ある段階の細胞から次の段階の細胞に分化することができる能力を有する幹細胞について、最初の段階からいずれの段階へも分化していないことをいう。
ここで、分化とは、細胞の表面に現れる表面抗原分子が変化して、次の成熟段階の細胞になることをいう。前記分化には、例えば、ヒト造血幹細胞(CD34陽性)からリンパ系幹細胞または骨髄系幹細胞または赤芽球になること等が含まれる。
ヒト造血幹細胞は、特定の抗原表現型を発現している細胞である。よって、臍帯血、または臍帯血から抽出した有核細胞から、特定の抗原表現型を発現している細胞を抽出することによって、結果的にヒト造血幹細胞を得ることができる。
特定の抗原表現型としては、例えば、CD34がある。したがって、ヒト造血幹細胞は、CD34陽性細胞といえる。
CD34陽性細胞は、例えば、臍帯血から分離抽出することによって得ることができる。具体的には、(1) 臍帯血から有核細胞を分離抽出する工程、(2) 抽出した有核細胞からマイクロビーズをコンジュゲート(conjugate)した抗CD34抗体を用いて CD34陽性細胞を分離抽出する工程からなる。マイクロビーズをコンジュゲート(conjugate)した抗CD34抗体としてCD34MACSビーズ(Miltenyi Biotec社製、ベルギッシュ・グラッドバッハ、ドイツ)を用い、マイクロビーズを用いてCD34陽性幹細胞を採取する装置として自動MACS装置(Miltenyi Biotec社製)及び自動MACSプログラムPOSSELD2を用いる。
なお、特定の抗原表現型としては、CD34の他に、他の造血幹細胞マーカーを使用することも、若しくはCD34に加えて複数併用することも可能である。他の造血幹細胞マーカーとしては、例えば、CD38、DR、CD45、CD90、CD117、CD123、CD133があり、好ましくはCD133である。
ヒト造血幹細胞が、いずれの幹細胞マーカーを発現しているかは、FACSを用いる方法等、公知の方法により測定することができる。
「CFU−GEMMコロニー形成能」とは、ヒト造血幹細胞の分化の過程において、CFU−GEMM(コロニー形成単位-顆粒球-赤血球-マクロファージ-巨核芽球)コロニーを形成することができる能力をいう。
また、多分化能力とは、ヒト造血幹細胞において、あらゆる細胞、系統、方向へ分化することができる能力をいい、特定の細胞、系統、方向へのみ分化することができる能力は含まない概念をいう。
「有核細胞」とは、核を有する細胞をいう。臍帯血から抽出できる有核細胞には、例えば、総ての系列に分化しうるヒト造血幹細胞、リンパ系幹細胞、T前駆細胞、B前駆細胞、T細胞、B細胞、骨髄系幹細胞、マスト細胞、好塩基球、好酸球、好中球、マクロファージ、巨核球、単球、好中球、または赤芽球などが含まれる。
臍帯血からの有核細胞の抽出は、例えば、HES40(ニプロ社製 #89−120−5)を用いることによって実現できる。
ストローマ細胞とは、基質細胞または間質細胞をいう。ストローマ細胞及びストローマ細胞を含むヒト造血細胞造血用の補助剤は、例えば、ヒト造血幹細胞と同種同系から取得した血液から生成することが可能である。
ヒト造血幹細胞と同種同系から取得した血液とは、ヒト造血幹細胞の由来元の個体と同一の個体から取得する血液をいい、好ましくは、ヒト臍帯血、ヒト骨髄由来血液、若しくはヒト末梢血であり、さらに好ましくはヒト臍帯血である。
ストローマ細胞及びストローマ細胞を含むヒト造血幹細胞造血用の補助剤の生成は、例えば(1) 臍帯血から、HES40(ニプロ社製 #89−120−5)を用いて有核細胞を分離抽出する工程、(2) 有核細胞を平皿で培養し、付着細胞を選択的に増殖させセミ・コンフルエントな状態まで育成させる工程、により行われる。
なお、ストローマ細胞を含むヒト造血幹細胞造血用の補助剤とは、ヒト造血幹細胞を造血するために用いられる材料であって、ストローマ細胞を含むものであればよい。
有核細胞のセミ・コンフルエントな状態での培養とは、所定の領域において、有核細胞若しくは有核細胞から分化した細胞若しくはそれらの細胞群の全部若しくは一部が、所定の領域内で固定され、かつ、固定された有核細胞若しくは有核細胞から分化した細胞若しくはそれらの細胞群が、平皿で増殖期の細胞分裂頻度を保ちながら増殖している状態をさす。具体的には、有核細胞を24ウェル細胞培養プレートに播種し、5%CO2濃度、37℃の湿潤雰囲気中で10日〜12日間培養することによって、24ウェル細胞培養プレートにおいてセミ・コンフルエントな状態となったストローマ細胞を得ることができる。
「ヒト造血幹細胞をストローマ細胞の共存下で培養する」とは、ストローマ細胞の存在がヒト造血幹細胞の培養に影響が及ぶ状況で培養することをいう。
ストローマ細胞の存在がヒト造血幹細胞の培養に影響が及ぶとは、ヒト造血幹細胞の造血能力をストローマ細胞がサポートする状況という。例えば、臍帯血由来のヒト造血幹細胞やストローマ細胞、若しくはサイトカインやケモカイン等に存在する共通の接着分子が、ヒト造血幹細胞の自己再生能力をサポートし、増幅の仲立ちをし得る状況や、臍帯血由来のストローマ細胞が、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Venus Endothelial Cell:HUVEC)類似の性質を示し、臍帯血中のヒト造血幹細胞が臍帯中に存在するときの微環境をex vivoにおいても模倣し得る状況がある。
「凍結保存」とは、ヒト造血幹細胞の性質を変化させるものでなければ、いかなる方法も用いることができる。凍結保存の方法としては、例えば、保存しようとする細胞を培地と共に保存容器に納め、必要に応じて、グリセリン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、蔗糖、グルコース、ポリビニルピロリドン(PVP)などの凍結防御剤を加えて、プログラムフリーザーなどを用い緩速凍結を行い、その後液体窒素などの中に保存する方法を用いることができる。なお、培地(培養液)には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素などの無機物、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、サイトカイン、脂肪酸、糖または目的に応じてその他の化学成分もしくは血清のような生体成分を含めてもよい。
「ヒト臍帯血」とは、ヒトの臍帯から取得できる血液のことをいう。ヒト臍帯血は、例えば、兵庫臍帯血バンク等の臍帯血バンクから取得することができる。
「ヒト骨髄由来血液」とは、ヒトの骨髄中に存在する髄液に含まれる血液をいう。ヒトの骨髄は、一般的な、骨髄バンクから取得することができる。
「培養」とは、常法に従って、例えば、以下のように実施することができる。培養容器中で、必要に応じてナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、脂肪酸、糖または目的に応じてその他の化学成分もしくは血清のような生体成分を含有したα−MEM培地、RPMI−1640培地またはMEM基本培地などの培地中に、あるいは、X−VIVO10やX−VIVO15などの培地中に、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、
IL−18、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、G−CSF、GM−CSF、SCF、FL、EPO、TPOなどのサイトカイン の存在下、ストローマ細胞及びCD34陽性細胞を加えて、30℃〜40℃、好ましくは37℃で培養する。培養期間は、数時間レベルの短期間のものから、おおよそ1年間にわたって行うような長期間のものまでを挙げることができる。長期間の場合は、定期的な培地交換を行い、温度、湿度、二酸化炭素濃度等をモニタリングして培養維持することにより、CD34陽性細胞を含む造血幹細胞および前駆細胞を増幅可能である。なお、培養は、開放条件下で行うことも可能であるし、閉鎖(密閉)条件下で行うことも可能である。
培地(培養液)については、ストローマ細胞の維持・生存、及び、CD34陽性細胞を含む造血幹細胞の維持・生存・分化・成熟・自己複製を阻害するものでなければいかなる培地を用いてもよい。培養するにあたり、温度、浸透圧、光などの物理的環境条件、酸素、炭酸ガス、pH、酸化還元電位などの化学的環境条件としては、ストローマ細胞の維持・生存、及び、CD34陽性細胞の維持・生存・分化・成熟・自己複製を阻害するものでなければいかなる環境条件を選択してもよい。なお、物理的条件における温度については、具体的には、30℃〜40℃であり、好ましくは37℃である。
サイトカインとは、細胞から放出され、細胞間相互作用を媒介するタンパク質性因子で、免疫応答の制御作用、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増幅・分化の調節作用などを示す物質をいう。サイトカインには、具体的には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17,
IL−18インターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンβ(IFN−β)、インターフェロンγ(IFN−γ)、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、SCF(幹細胞因子)、FL(Flt‐3/4リガンド)、EPO(エリスロポエチン)、TPO(トロンボポエチン)等が含まれる。ヒト造血幹細胞を増幅する際に用いられるサイトカインとしては、例えば、hu−SCF、hu−Flt−3/4リガンド、hu−TPO等がある。
細胞培養に用いる培養容器には、CD34陽性細胞を含む造血幹細が維持・生存・分化・成熟・自己複製することを阻害するものでなければいかなる素材・形状のものを用いることができる。例えば、支持台の素材としては、ガラス、合成樹脂、天然樹脂または金属等がある。また、培養容器は、ストローマ細胞が維持・生存でき、CD34陽性細胞を含む造血幹細胞が維持・生存・分化・成熟・自己複製することを阻害するものでなければいかなる素材、形状のものを用いることができる。例えば、培養容器の素材としては、ガラス、不織布を含む合成樹脂や天然樹脂、または金属等がある。また、培養容器の形状としては、三角柱、立方体、直方体などの多角柱、三角錐、四角錐などの多角錘、ひょうたんのような任意の形状、球形、半球形、円形、楕円形、半円形等がある。
本発明にかかるヒト造血幹細胞の培養方法は、ヒト造血幹細胞を、前記ヒト造血細胞と同種同系から取得した血液由来のストローマ細胞の共存下で培養することを特徴とする方法である。
「培養物」とは、所定の細胞を培養した結果、得られるものであればよい。例えば、CD34陽性細胞を所定のストローマ細胞の存在下において培養する方法であれば、培養物に当該ストローマ細胞が含まれていてもよい。また、サイトカイン存在下において培養する方法の場合も同様に、培養物に当該サイトカインが含まれていてもよい。
以下に、実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を具体的に説明のためのものであり、本発明を実施例に限定するものではない。
以下において、本発明を具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明を実施例の範囲に限定するものではない。
第一 培養実験の内容
(1)純度95%以上のCD34陽性細胞を用意した。
(2)(1)のCD34陽性細胞を、24ウェル細胞培養プレート(FALCOM社製、SanJose CA)を用いて培養する。培養に際して、24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、5×103個のCD34陽性細胞が含まれるように調整し、さらに、分化培地を0.5ml加えた。
分化培地としては、X−VIVO10(BioWhittaker、Gaitherburg MD)培地をベース培地として、hFlt3/4Ligand(Perotech社製、London UK)、hSCF(Peprotech社製)、hTPO
(Peprotech社製)、さらにトレハロース(Trehalose)(Sigma Japan社製、Tokyo Japan)を添加し、表1のように調整した分化培地1〜分化培地6を用いた。また、コントロールとしてトレハロースのみを加えなかった分化培地7(ベース・ファクター)、さらに、トレハロースを加えずhIL−6及びhsIL−6Rを加えた分化培地7(フル・ファクター)を用いた。なお、分化培地8(フル・ファクター)を用いた培養は、造血幹細胞の増幅効果が高いとして知られる、いわゆる中畑プロトコルに沿うものである。
(3)培養開始後3日目に分化培地を交換した。
(4)培養開始後6日目と8日目に培養容量を2倍にし、さらに、分化培地の交換を行った。
(5)(4)の後、さらに2日間、培養開始後10日目まで培養を継続した。
(6)培養開始後10日目に、造血幹細胞に対するマーカであるCD34陽性細胞とCD133陽性細胞の発現を測定した。測定方法及び測定結果については、後述する。
(7)培養開始後10日目の造血幹細胞も用いて、培養の結果として得られた細胞の分化能を評価するためのメチルセルロース・アッセイを用いた培養を行った。メチルセルロース・アッセイを用いた培養方法については後述する。
第二 CD34陽性細胞・CD133陽性細胞の発現測定
造血幹細胞に対するマーカーであるCD34陽性細胞とCD133陽性細胞の発現の確認は、培養後10日目に、FACS Arial(BD BioScience San Jose CA)を用いて、各分化培地において培養した細胞について、CD34陽性細胞及びCD133陽性細胞の発現を測定するFACS解析によって行った。
FACS解析の結果の一つを図1に示す。図1Aは、一つのウェル(対象ウェル)に含まれる細胞の総細胞数を示している。また、図1Bは、対象ウェルに含まれるCD34陽性細胞の細胞数を示している。図1A及び図1Bから明らかなように、分化培地8(フル・ファクター)を用いた造血幹細胞の培養は、細胞増幅効果が高い。
一方、FACS解析におけるCD34陽性細胞及びCD133陽性細胞の発現解析結果を図2A〜Hに示す。ここで、図2A〜Fは、それぞれ、分化培地1〜分化培地6に対するFACS解析を示し、図2Gは分化培地7(ベース・ファクター)に対するFACS解析を、図2Hは分化培地8(フル・ファクター)に対するFACS解析を、それぞれ、示す。図2A〜Hから明らかなように、図2A〜Fは図2Hと同様の分布を示しており、トレハロースを添加した分化培地を用いて造血幹細胞を培養する方法には、CD34陽性細胞の増幅効果があることが確認できる。
第三 ヒト造血幹細胞の分化能の評価
1.メチルセルロース・アッセイ
次に、培養されたヒト造血幹細胞の分化能を評価するために、培養のされたヒト造血幹細胞についてメチルセルロース・アッセイを施した。メチルセルロース・アッセイは、以下の手順で行った。
(1)培養10日目に、各分化培地から1.2×103個の細胞を抽出する。
(2)(1)で抽出した細胞を3cmディッシュ(FALCOM社製)上で培養した。培養にあたり、1.2mlのMETHOCULT(H4330、StemCell Technologies社製)を添加した。METHOCULT H4330には、hSCF(Peprotech社製)、hIL−6(Peprotech社製)、hIL−3(Peprotech社製)、hG−CSF(Peprotech社製)、hGM−CSF(Peprotech社製)を、培養開始時に、添加し、表2のように調整した。
(3)メチルセルロース・アッセイによる培養開始後14日目に、生成されるコロニーのタイプをOlympus DB−10(Tokyo,Japan)を用いてコロニータイプ毎に細胞数を計数した。
2.分化能の評価
メチルセルロース・アッセイによる培養によって形成されたコロニーの計数結果を図3に示す。図3Aは、計数の実数を、図3Bは図3Aを分化培地毎に棒グラフ化したものを示している。
図3A、Bから明らかなように、分化培地3(トレハロース 5ng/ml)におけるCFU−GEMMの計数値は、分化培地8(フル・ファクター:中畑プロトコル)におけるCFU−GEMMの計数値に対して、約17%上まわっている。CFU−GEMMは、コロニー形成単位−顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核芽球とよばれ、将来的に赤血球、血小板、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等、血液の根幹となる細胞へ分化していく能力を有している。従って、CFU−GEMMが多く形成されるということは、メチルセルロース・アッセイに用いたヒト造血幹細胞の多分化能を高いレベルで維持できることを意味している。
つまり、図3A、Bから、本実施例における分化培地3を用いてヒト造血幹細胞を培養することによって、多分化能を高いレベルで維持するヒト造血幹細胞を培養できることが確認された。
なお、トレハロースを添加した分化培地1〜分化培地6を用いたヒト造血幹細胞の培養において、分化培地3についてのみCFU−GEMMの計数値が高いことから、培養に用いたヒト造血幹細胞、トレハロース、及びその他の添加物の間に分子レベルの特異的な相互作用介した何らかのメカニズムが存在していると考えられる。
臍帯血由来有核細胞から抽出したCD34陽性細胞を用いて、ヒト造血幹細胞を培養した結果を以下に示す。
第一 培養実験の内容
1.臍帯血の取得
研究使用目的に対するインフォームド・コンセントが得られた臍帯血を、兵庫臍帯血バンクから取得した。なお、ヒト材料を用いる全ての実験手続については、実験を行う前に、財団法人先端医療振興財団の倫理委員会による審査及び承認を得た。
2.臍帯血からのストローマ細胞の生成
(1) 50ml〜100mlの臍帯血から、有核細胞を分離抽出する。有核細胞の分離抽出に際しては、HES40(ニプロ社製 #89−120−5)を使用した。HES40を臍帯血と、容量にして5対1の割合で混合した。混合の後、約1時間放置し赤血球を沈殿させた。有核細胞は上精中に存在しているので、有核細胞を含むHES40混合液(以下、HES40ソリューションとする。)を上清液として回収した。
(2) 分離抽出の結果得られたHES40ソリューションから、500μlのHES40ソリューションを、7分間、400G、10℃で遠心分離器にかけた。遠心分離の結果、上清のHES40を取り除き、有核細胞を得た。ウシ血清を10%容量添加した500μlの培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)を有核細胞に加えて再懸濁する。
(3) その後、有核細胞を、24ウェル細胞培養プレートに播種する。有核細胞を5%CO2濃度、37℃の湿潤雰囲気中で12日間培養し、セミ・コンフルエントなストローマ細胞を生成する。
3.臍帯血由来有核細胞からのCD34陽性細胞の抽出
(1) 上記2.(2)で得た有核細胞を7分間、400G,10℃で遠心しHES40ソリューションを除き、サリンへス液(杏林製薬社製 #873319)に1×109個/mlとなるように再懸濁した。
(2) 1×109個/mlに調整した有核細胞に対して1ml当たり、100μlのFcBlock(Miltenyi Biotec #277603)、200mlの牛血清、100μlのCD34マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製、#277603)を添加し、ローテータを用いて、10℃、30分間で攪拌させた。
(3) 有核細胞からCD34陽性細胞の抽出については、自動MACS装置(Miltenyi Biotec社製)、及び自動MACSプログラムPOSSELD2を用いて行った。
(4) 分離したCD34陽性細胞の純度を、FACSキャリブバー(BD Bioscience社製、サン・ホセ、US)を用いて測定し、純度95%以上であることを確認した。
(5)抽出したCD34陽性細胞を、再びセルバンカー液(日本全薬工業社製 #BCL−1)に1.5×106個/mlの濃度で再懸濁させ、―80℃、−150℃の冷凍庫または液体窒素下で冷凍保存した。
4.臍帯血由来CD34陽性細胞とストローマ細胞との共培養
(1) 冷凍保存したCD34陽性細胞を、37℃のウオーターバスに漬け解凍した。
(2) 解凍したCD34陽性細胞を5×103個/500μlのCD34陽性細胞となるように調整した。このときの培養溶液は、X−VIVO10培地(CAMBREX社製、#04−380Q、ボルチモア、US)である。
(3) セミ・コンフルエントなストローマ細胞を有する24ウェル細胞培養プレートを、DPBS(GIBCO社製 #14190)で3回洗浄し、24ウェル細胞培養プレートに付着したストローマ細胞のみ得た。
(4)500μlに調整したCD34陽性細胞を、上記(3)で得たストローマ細胞が付着した24ウェル細胞培養プレートに加えて共培養する。さらに50ng/mlのhu−SCF(Peprotech社製、ロンドン、UK)、20ng/mlのhu−Flt−3/4リガンド(Peprotech社製)、及び10ng/mlのhu−TPO(Peprotech社製)(以下、サイトカイン混合液とする。)を加えて、37℃、5%CO2濃度雰囲気下で培養した。
(5) 培地及びサイトカイン混合液を、共培養の間、3日に一度追加しながら、14日間、共培養した。
5.トレハロースを用いた培養
(1)上記4.(5)で培養した臍帯血由来有核細胞からCD34陽性細胞を抽出する。
(2)A:ストローマ細胞と共に培養したCD34陽性細胞の培養
(1)で抽出したCD34陽性細胞を、24ウェル細胞培養プレート(FALCOM社製、SanJose CA)を用いて培養する。培養に際して、24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、5×103個のCD34陽性細胞が含まれるように調整し、さらに、分化培地を0.5ml加えた。
分化培地としては、X−VIVO10(BioWhittaker,Gaitherburg MD)培地をベース培地として、hFlt3/4Ligand(Perotech社製、London UK)、hSCF(Peprotech社製)、hTPO
(Peprotech社製)、さらにトレハロース(Trehalose)(Sigma Japan社製、Tokyo Japan) を添加し、表1のように調整した分化培地11、分化培地12を用いた。また、コントロールとしてトレハロースのみを加えなかった分化培地13(ベース・ファクター)、さらに、トレハロースを加えずhIL-6及びhsIL-6Rを加えた分化培地14(フル・ファクター)を用いた。なお、分化培地14(フル・ファクター)を用いた培養は、造血幹細胞の増幅効果が高いとして知られる、いわゆる中畑プロトコルに沿うものである。
B:ストローマ細胞を用いずに培養したCD34陽性細胞の培養
上記3.(5)で冷凍保存したCD34陽性細胞を解凍する。解凍したCD34陽性細胞を、24ウェル細胞培養プレート(FALCOM社製、SanJose CA)を用いて培養する。培養に際して、24ウェル細胞培養プレートの各ウェルに、5×103個のCD34陽性細胞が含まれるように調整し、さらに、上記分化培地11〜分化培地14を、それぞれ0.5ml加えた。
(3)培養開始後3日目に分化培地を交換した。
(4)培養開始後6日目と8日目に培養容量を2倍にし、さらに、分化培地の交換を行った。
(5)(4)の後、さらに2日間、培養開始後10日目まで培養を継続した。
(6)培養開始後10日目に、造血幹細胞に対するマーカーであるCD34陽性細胞とCD133陽性細胞の発現を測定した。測定方法及び測定結果については、後述する。
(7)培養開始後10日目の造血幹細胞も用いて、培養の結果として得られた細胞の分化能を評価するためのメチルセルロース・アッセイを用いた培養を行った。メチルセルロース・アッセイを用いた培養方法については後述する。
第二 ヒト造血幹細胞の分化能の評価
1.メチルセルロース・アッセイ
次に、培養されたヒト造血幹細胞の分化能を評価するために、培養のされたヒト造血幹細胞についてメチルセルロース・アッセイを施した。メチルセルロース・アッセイの手順については、実施例1と同様である。
2.分化能の評価
メチルセルロース・アッセイによる培養によって形成されたコロニーの計数結果を図4に示す。図4はコロニー計数の実数を分化培地毎に棒グラフ化して示している。
図4において、左側4つはストローマ細胞と共に培養したCD34陽性細胞を培養した結果を、右側4つはストローマ細胞を用いずに培養したCD34陽性細胞を培養した結果を、それぞれ示している。
図4に示す左側4つの結果から明らかなように、分化培地11(トレハロース 5ng/ml)におけるCFU−GEMMの計数値は、分化培地14(フル・ファクター:中畑プロトコール)におけるCFU−GEMMの計数値に対して、約35%上まわっている。CFU−GEMMは、コロニー形成単位−顆粒球−赤血球−マクロファージ−巨核芽球とよばれ、将来的に赤血球、血小板、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等、あらゆる血液の根幹となる細胞へ分化していく能力を有している。従って、CFU−GEMMが多く形成されるということは、本実施例における培養方法を用いることによって、多分化能が高いヒト造血幹細胞を培養できることを意味している。
つまり、図4から、本実施例における分化培地11を用いてヒト造血幹細胞を培養することによって、多分化能が高いヒト造血幹細胞を培養できることが確認された。
また、図4に示す左側4つの結果と右側4つの結果との比較から、CD34陽性臍帯血由来造血幹細胞の培養で、自己臍帯血由来のストローマ細胞をフィーダー細胞(支持細胞
)として共培養することで、フィーダー細胞なしの培養系と比べて造血幹細胞の増幅を確認できた。さらに、自己臍帯血由来のストローマ細胞をフィーダー細胞として用いる培養系において分化培地11(トレハロース(5ng/ml)をSCF、TPO、Flt3/4Lに添加)を用いた場合、分化培地14(フル・ファクター(SCF、TPO、Flt3/4L、IL−6、sIL−6Rを添加)を上回る、造血幹細胞の増幅効果が確認できた。
本発明に係る造血幹細胞の培養方法は、例えば、自己由来の臍帯血から造血幹細胞を増幅培養することに用いることができる。
ヒト造血幹細胞の培養方法によって得られた培養物に関するFACS解析の結果を示した図である。 FACS解析におけるCD34陽性細胞及びCD133陽性細胞の発現解析結果を示す図である。 メチルセルロース・アッセイによる培養によって形成されたコロニーの計数結果を示す図である。 メチルセルロース・アッセイによる培養によって形成されたコロニーの計数結果を示す図である。

Claims (9)

  1. 造血幹細胞を、トレハロースの存在下で培養する造血幹細胞の培養方法。
  2. CD34陽性細胞又はCD133陽性細胞であるヒト造血幹細胞を用いて造血幹細胞を培養する請求項1記載の造血幹細胞の培養方法。
  3. 造血幹細胞が、臍帯血、骨髄、又は末梢血に由来する請求項1又は2記載の造血幹細胞の培養方法。
  4. 造血幹細胞がヒト由来である請求項1〜3のいずれかの項に記載の造血幹細胞の培養方法。
  5. 請求項1〜請求項4に係るいずれかの方法により増幅された造血幹細胞が、CFU−GEMMコロニー形成能を有する細胞を含む集団である請求項1〜請求項4に係るいずれかの造血幹細胞の培養方法。
  6. 造血幹細胞として、造血幹細胞と同種同系から取得した血液由来のストローマ細胞の共存下で培養したものを用いる請求項1〜請求項5に係るいずれかの造血幹細胞の培養方法。
  7. 造血幹細胞とストローマ細胞が、同種同系のヒト臍帯血に由来する請求項6記載の造血幹細胞の培養方法。
  8. 請求項1〜請求項7に係るいずれかの方法により得られる造血幹細胞培養物。
  9. トレハロースを含む造血幹細胞用の培地。
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