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JP2009256513A - メタクリル系シラップとその製造方法、及びメタクリル樹脂板の製造方法 - Google Patents

メタクリル系シラップとその製造方法、及びメタクリル樹脂板の製造方法 Download PDF

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JP2009256513A
JP2009256513A JP2008109181A JP2008109181A JP2009256513A JP 2009256513 A JP2009256513 A JP 2009256513A JP 2008109181 A JP2008109181 A JP 2008109181A JP 2008109181 A JP2008109181 A JP 2008109181A JP 2009256513 A JP2009256513 A JP 2009256513A
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methacrylic
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Naoki Nishida
直毅 西田
Hajime Okutsu
肇 奥津
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

【課題】シラップ中の重合体の質量平均分子量を、分子量調節剤を使用することなく低分子量化し、かつ、重合体の濃度を高くすることで、シラップ注入時、脱泡時の作業性、また、メタクリル樹脂板重合時の生産性を両立するシラップの製造方法を提供する。
【解決手段】メチルメタクリレート単独またはメチルメタクリレートとこれと共重合し得る少なくとも1種の不飽和ビニル化合物とを含有するメチルメタクリレート系単量体混合物を原料単量体とするメタクリル系シラップの製造方法であって、反応容器内に入れた原料単量体の温度を60〜130℃とした後、原料単量体100質量部に対して10時間半減期温度が120℃以下であるラジカル重合開始剤を0.01〜1.0質量部添加し、重合のピーク温度を140〜170℃とすることによって、重合体含有率が20〜55質量%、前記重合体の質量平均分子量が4万〜9万、20℃における前記シラップの粘度が30Pa.s以下のメタクリル系シラップを製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタクリル樹脂板の生産性を向上させるためのシラップ、及び、その製造方法に関する。
メチルメタクリレート、またはメチルメタクリレートを主成分とする単量体混合物の部分重合体からなるシラップは注型用シラップと呼ばれ、種々の型に注入し重合させて成形品を得るのに使用されている。この時、作業性の点から、また、シラップ中に溶存している気体の減圧下での脱泡、除去のし易さの点から、シラップは低粘度であることが好ましい。
一方、鋳型等にシラップを注入して、シラップを重合させて、メタクリル樹脂板を得る際の重合速度に関して、重合速度を増加させるには、重合開始剤を増量する方法と、シラップ中の単量体混合物の一部重合体の濃度を増加させる方法がある。ところが、重合開始剤を増量する方法では、シラップの重合速度が速くなり、重合時間が短くなるというメリットはあるが、重合が速すぎて、シラップの温度が急上昇し、得られるメタクリル樹脂板内で発泡が起こってしまうことがあり好ましい方法ではない。よって、メタクリル樹脂板の重合速度を増加させるには、シラップ中の重合体の濃度を増加させることがもっとも望ましい方法である。しかしながら、シラップ中の重合体の濃度を増加させることは、シラップの粘度を上昇させることになるため、シラップ中の該重合体の質量平均分子量を低くする必要がある。
これまで、メタクリル系シラップを製造する際には、多くの場合、大気圧下で製造されてきたが、メチルメタクリレートの大気圧下での沸点(103℃程度)までしか、シラップ温度を上昇させることができず、その温度では、添加した重合開始剤のラジカル発生速度とメチルメタクリレートの生長反応速度のバランスが悪く、単量体混合物の一部重合体の濃度と質量平均分子量の双方を所望の範囲に制御することができなかった。すなわち、シラップの粘度を低粘度にしようとすると、シラップ中の該重合体の濃度を低くしなければならず、該重合体の濃度を低くしたくない場合は、分子量調節剤を使用して、該重合体の質量平均分子量を低めに調節しなければならなかった。
シラップ中の重合体の濃度を低下させることなく、分子量調節剤を使用して、シラップを低粘度にする方法が提案されている(特許文献1)。ところが、このような方法では、残存分子量調節剤により、鋳型等でシラップを重合して得られたメタクリル樹脂板の質量平均分子量が高くならず、該樹脂板の物性のさらなる改良が求められている。また、分子量調節剤を使用せずに低粘度シラップを得る方法も提案されている(特許文献2)が、得られたメタクリル樹脂板中に低分子量体を多量に含有している場合があり、物性面でさらに改良が求められている。
特開昭50−35278号公報 特開2002−371104号公報
本発明は、シラップ中の重合体の質量平均分子量を、分子量調節剤を使用することなく低分子量化し、かつ、単量体混合物の一部重合体の濃度を高くすることで、シラップ注入時、脱泡時の作業性、また、メタクリル樹脂板重合時の生産性を両立するシラップ、及びその製造方法を提供する。
本発明の第1の要旨は、メチルメタクリレート単独またはメチルメタクリレートとこれと共重合し得る少なくとも1種の不飽和ビニル化合物とを含有するメチルメタクリレート系単量体混合物を原料単量体とするメタクリル系シラップの製造方法であって、反応容器内に入れた原料単量体の温度を60〜130℃とした後、原料単量体100質量部に対して10時間半減期温度が120℃以下であるラジカル重合開始剤を0.01〜1.0質量部添加し、重合のピーク温度を140〜170℃とすることによって、重合体含有率が20〜55質量%、前記重合体の質量平均分子量が4万〜9万、20℃における前記シラップの粘度が30Pa.s以下のメタクリル系シラップを製造する方法に関するものである。
また、本発明の第2の要旨は、シラップ製造中の反応容器内圧を少なくとも0.01MPa(ゲージ圧)以上とする上記のメタクリル系シラップの製造方法に関するものである。
また、本発明の第3の要旨は、
以下の工程を有するメタクリル樹脂板の製造方法に関するものである。
(1)上記の方法により得られたシラップを鋳型に注入する第1工程
(2)前記シラップを重合する第2工程
(3)鋳型を冷却する第3工程
(4)得られた樹脂板を鋳型から剥離する第4工程
また、本発明の第4の要旨は、前記第2工程で、シラップ100質量部に対して10時間半減期温度が45〜100℃であるラジカル重合開始剤を0.05〜1.0質量部添加し、60〜90℃に加熱して重合し、ピーク温度発現以降さらに110〜140℃で3分間以上加熱する上記メタクリル樹脂板の製造方法に関するものである。
また、本発明の第5の要旨は、上記鋳型が、相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた空間からなり、その一端より上記メタクリル系シラップを供給し、加温ゾーン内でベルトの走行と共にメタクリル系シラップを重合させ、その他端より板状重合物を取り出す上記メタクリル樹脂板の製造方法に関するものである。
本発明によれば、脱泡時や、シラップ注入時の作業性を損なうことなく、メタクリル樹脂板製造時の作業性を改善するシラップ、及びその製造方法を提供することができる。また、そのシラップを使用して得られたメタクリル樹脂板は、シラップ中の重合体含有量が高いため、生産性が良好である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において用いられる原料単量体は、メチルメタクリレート単独またはメチルメタクリレートとこれと共重合し得る少なくとも1種の不飽和ビニル化合物とを含有するメチルメタクリレート系単量体混合物(以下、「メチルメタクリレート単独またはメチルメタクリレートとこれと共重合し得る少なくとも1種の不飽和ビニル化合物とを含有するメチルメタクリレート系単量体混合物」を単に「原料単量体」という。)である。原料単量体が混合物の場合、メチルメタクリレートを80質量%以上含有することが好ましい。
メチルメタクリレートと共重合し得る不飽和ビニル化合物としては、例えば、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメチルメタクリレートを除くメタクリル酸エステル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、及び、スチレン、α−メチルスチレン等を挙げることができる。
また、上記の原料単量体を重合するのに使用されるラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は120℃以下である。10時間半減期温度が120℃を超えると十分な重合速度が得られず、生産性の点で不利となる。本発明に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。取り扱い性の観点から10時間半減期温度は20℃以上が好ましい。10時間半減期温度は、ラジカル重合開始剤メーカーの製品カタログ(日本油脂(株)製品カタログ「有機化酸化物」や、和光純薬(株)製品カタログ「Azo Polymerization Initiators」等)に記載の温度を使用することができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、反応容器に供給する原料単量体100質量部に対して、0.01〜1.0質量部の範囲で用いることができる。ラジカル重合開始剤の添加量が少なすぎると十分な重合体含有率のシラップを得ることができず、生産性を向上させることが難しい。また、ラジカル重合開始剤の添加量が多すぎると、ラジカル重合開始剤の分解速度が非常に速くなり、得られるシラップの重合体含有率、質量平均分子量が低くなり、生産性を向上させることが難しくなる。そのため、単量体の供給速度や目的とする重合体含有率によって、適宜決定して使用することが好ましい。
本発明のシラップ製造に当たり、まず、上記の原料単量体を反応容器内に供給するが、その際、攪拌機、及び加温手段を有するジャケット等を備えた密閉型耐圧反応容器に供給することが好ましい。必要に応じて任意の時間、窒素置換を行い、攪拌を行いながら加温する。また、必要に応じて、窒素等不活性ガスで、0.2MPa(ゲージ圧)程度に加圧しながら窒素置換しても良い。密閉型耐圧反応容器に関しては、内部冷却器もしくは、外部冷却器等の冷却設備を備えていても良い。
原料単量体の温度が60〜130℃になったら、前記10時間半減期温度が120℃以下であるラジカル重合開始剤を添加する。このラジカル重合開始剤は、メチルメタクリレートとの混合物とすることが好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する時の原料単量体の温度が60℃より低いと、4〜9万の質量平均分子量のシラップを得るために、ラジカル開始剤が必要とする分解速度を満足せず、結果、得られるシラップの重合体含有率、質量平均分子量が高くなり、粘度が大幅に上昇し、作業性が悪くなる。また、添加する時の原料単量体の温度が130℃より高いと、ラジカル重合開始剤の分解速度が非常に速く、得られるシラップの重合体含有率、質量平均分子量が低くなり、生産性を向上させることが難しくなる。ラジカル重合開始剤の添加は、圧送、定量ポンプによる添加等、公知の技術で実施することができる。
密閉型耐圧反応容器内に開始剤を添加後、重合反応により密閉型耐圧反応容器内の温度、圧力とも上昇するが、重合のピーク温度が140〜170℃の範囲に入るように、ラジカル重合開始剤添加量、ラジカル重合開始剤添加時の単量体温度を調整することが好ましい。また必要に応じてジャケット温度を適宜調整することができる。ピーク温度すなわち到達温度が低すぎると、4〜9万の質量平均分子量のシラップを得るためのラジカル重合開始剤の分解速度を満足せず、結果、得られるシラップの重合体含有率、質量平均分子量が高くなり、粘度が大幅に上昇し、移液時の作業性が悪くなる。また、到達温度が高すぎると、ラジカル重合開始剤の分解速度が非常に速くなり、得られるシラップの重合体含有率、質量平均分子量が低くなって、生産性を向上させることが難しくなる。
シラップの質量平均分子量調整の観点から、シラップ製造中の反応容器内圧は0.01MPa(ゲージ圧)以上、2MPa(ゲージ圧)以下とすることが好ましい。
重合時、重合温度(反応容器の内温)が140〜170℃の範囲にあれば、反応容器内圧は制御する必要がなく、なり行きでよい。
ラジカル開始剤添加後、式(1)で計算される残存ラジカル重合開始剤量が、0.2ppm以下となる時間を経過したら、可及的速やかに冷却を開始することが好ましい。
(残存ラジカル重合開始剤量)=(初期ラジカル重合開始剤濃度)
×exp(−k・dt)・・・ 式(1)
ここで
k:ラジカル重合開始剤分解速度定数[−]
であり、kは以下の式から求めることができる。
k=ln(2/t)
t:ラジカル重合開始剤の半減期
この時の冷却方法は、放圧して、外部冷却器を使用する方法等、特に指定しないが、冷却速度に関して、80℃までの冷却速度が10℃/minより速い速度で冷却することが好ましい。この冷却速度が遅すぎると、長い時間高温に晒されることで、残存する原料単量体が熱重合し、シラップの重合体含有率、質量平均分子量が高くなり、粘度が大幅に上昇し、作業性が悪くなる。
上記のような方法によりシラップの重合体含有率を20〜55質量%、質量平均分子量を4〜9万とすることができる。重合体含有率が20質量%未満であるとメタクリル樹脂板生産時に生産性が不利となり、55質量%を超えるとシラップの粘度が非常に高くなり、移液時の作業性に不利となり、また、メタクリル樹脂板を得た際、低分子量体を多く含有することになり、機械的強度等の物性面で不利となるからである。また、得られたシラップの質量平均分子量が4万未満であると、得られたメタクリル樹脂板の機械的強度等の物性面で不利となり、また、9万を超えると、シラップの粘度が非常に高くなるから、移液時の作業性に不利となる。以上のことから、作業性、生産性を考慮すると、得られたシラップの20℃における粘度が、30Pa・s以下であることが好ましい。またメタクリル樹脂板の物性面から、得られたシラップの20℃における粘度が、1Pa・s以上であることが好ましい。
本発明のシラップにおいては、必要に応じて、紫外線吸収剤、熱安定剤、離型剤、着色剤、可塑剤、滑剤等の添加剤を転化することも可能である。添加の方法は、重合後冷却したシラップに後添加しても良いし、重合前の原料単量体にあらかじめ添加しておいても良い。
メタクリル樹脂板を製造するに当たり、本発明では、公知の方法で実施することができるが、特に特開2002−120235号公報に記載の方法に沿って実施することが好ましい。
シラップを重合する際、ラジカル重合開始剤として、有機過酸化物系の重合開始剤を使用することが好ましい。有機過酸化物系の重合開始剤は、分解することによって、二酸化炭素を発生させるが、その二酸化炭素はメチルメタクリレートへの溶解性が高いため、得られた樹脂板に気泡として残りにくいという利点があるためである。有機過酸化物系重合開始剤としては、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル類、2、4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、O−メチルベンゾイルパーオキサイド等のジアシル類等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもできる。これらの中では、パーオキシエステル類が好ましい。
上記重合開始剤は、10時間半減期温度が45〜100℃の範囲にあるものが好ましい。10時間半減期温度が低すぎる重合開始剤は、常温でのシラップの重合性が高くなり、シラップの保管温度や移液温度に留意する必要がある。また、10時間半減期温度が高すぎる重合開始剤は、重合開始剤の分解速度が遅く、十分な重合速度が得られず、生産性が不利となる。
シラップ中の重合開始剤の含有率は、シラップ100質量部に対して0.05〜1.0質量部が好ましい。重合開始剤の含有率が低すぎると、重合速度が遅く、生産性が上がらずに不利となり、重合開始剤の含有率が高すぎると、重合速度が速くなり、メタクリル樹脂板が発泡してしまう可能性があるからである。
メタクリル樹脂板を製造する方法としては、シラップを鋳型に注入する第1工程、該シラップを重合する第2工程、鋳型を冷却する第3工程、得られた樹脂板を鋳型から剥離する第4工程からなる。
シラップを鋳型に注入する第1工程においては、シラップに気泡を巻き込まない方法であれば、特に限定されない。
鋳型に注入したシラップを重合する第2工程において、60〜90℃の温水浴、または温水シャワーの中でシラップを重合させることが好ましい。温水温度が低すぎると、重合速度が遅くなり生産性に不利となる一方、温水温度が高すぎると、温水の温度管理が困難となったり、温水シャワー中で重合させる場合に、温水を送るポンプに空気をかみこむこともある。また、前記第2工程を複数の工程に分けて、それぞれ異なる温度で重合しても良い。温水浴を使用する場合は、浴内を攪拌等することで、温水浴内に温度分布が生じないようにすることが好ましい。このような温水浴または、温水シャワー中で所定の時間、重合をさせ、ピーク温度発現後、残存する単量体をさらに重合させるために一定時間加熱する熱処理を行うことが好ましい。
前記第2工程において、熱処理を行う場合、110〜140℃で3分間以上保持することが好ましく、また、重合体転化率が97質量%以上になることが好ましい。熱処理温度が低すぎると、得られたメタクリル樹脂板中の残存単量体量を減少させることができず、また、熱処理温度が高すぎると、熱分解によってメタクリル樹脂板中の残存単量体量が増加する。保持時間については、上限は特になく、5分間以上であることがより好ましいが、生産性を低下させない程度に長くすることができる。また、重合体転化率が97%以上であると、残存単量体が少なくなり、得られるメタクリル樹脂板の熱的性質等の物性が良好となる。
続いて、第3工程で鋳型を冷却することにより、鋳型内の重合物が冷却される。冷却方法、冷却温度は特に限定されないが、110℃以下まで冷却することが好ましい。続く第4工程で、鋳型内の重合物を鋳型から剥離することにより、メタクリル樹脂板が得られる。
本発明に用いる鋳型としては、例えば、強化ガラス板、クロムメッキ板、ステンレス板等の板状体と軟質塩化ビニル性ガスケットで構成した鋳型や、相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた鋳型などが挙げられるが、特に、相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた鋳型を用いると生産性が高く好ましい。前記鋳型において、その一端よりメタクリル系シラップを供給し、加温ゾーン内でベルトの走行と共にメタクリル系シラップを重合させ、その他端より板状重合物を取り出すことによりメタクリル樹脂板を連続的に製造することができる。
また、本発明のメタクリル系樹脂板の厚さは、重合のし易さや取り扱い性の観点から0.5〜15mmであることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を説明する。評価方法は以下の方法で行った。
(1)質量平均分子量
得られたシラップ中の重合体、およびメタクリル樹脂板の質量平均分子量を以下の方法で求めた。
シラップ、あるいは粉砕したメタクリル樹脂板にテトラヒドロフラン(THF)を加えて、一晩静置して溶解させて、東ソー(株)製液体クロマトグラフィー:HLC−8020型を用いて測定した。分離カラムはTSK−GelGMHXL2本直列、溶媒はTHF、流量は1.0ml/min、検出器は示差屈折計、測定温度は40℃、注入量は0.1mlとした。標準ポリマーとしてポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量が既知(1240〜353万の範囲)の10種類)を使用した。
(2)残存単量体量
得られたメタクリル樹脂板の残存単量体量を以下の方法で求めた。
粉砕したメタクリル樹脂板にアセトンを加えて一晩静置して溶解させて、Hewlett Packard社製ガスクロマトグラフィー:HP−6890型を用いて測定した。分離カラムはHP−WAX(0.25mm径×30m長)、測定条件は40℃〜200℃まで昇温速度10℃/minで昇温。検出器はFID、内部標準物質はメチルイソブチルケトンとした。
(3)粘度
20℃におけるシラップの粘度を以下の方法で求めた。
20℃に調節したシラップを200mlトールビーカーに入れ、BrookField社製DV−I+型粘度計で測定した。
(4)重合体含有率
シラップ中の重合体含有率は、再沈精製法により求めた。手順としては、得られたシラップを約1g採取し、それを秤量して、アセトンに溶解させた。その後、スターラーで攪拌されているメタノール1L中へ、シラップを溶解させたアセトン溶液を1滴ずつ滴下させると、重合体が析出した。すべて滴下した後、予め重量を測定したガラスフィルター(目開き10μm)を使用して、ろ過して、ガラスフィルターごと1晩真空乾燥させた。乾燥後、重合体を含むガラスフィルターの重量を測定し、ろ過前のガラスフィルターの重量を引き、得られた重合体の重量を算出した。この重量を溶解前に秤量した重量で割ることで、シラップ中の重合体含有量を求めた。
(5)重合ピーク温度
a)シラップの製造時
反応容器内に熱伝対を取り付け、重合時の温度データを記録した。重合発熱により温度が急激に上昇して、ピークを示し、その後徐々に温度が低下するという現象が観察されるが、このピーク点を重合ピーク温度とした。
b)樹脂板の製造時
鋳型表面に熱電対を貼り付けて、重合時の温度データを記録した。上記シラップの製造の時と同様、重合発熱により温度が急激に上昇して、ピークを示し、その後徐々に温度が低下するという現象が観察され、このピーク点を重合ピーク温度とした。
(6)メタクリル樹脂板の生産性
重合ピーク温度出現時間が20分未満である場合、生産性良好と評価し、重合ピーク温度出現時間が20〜40分である場合、生産性可と評価した。なお、「重合ピーク温度出現時間」とは、シラップを重合する際、加熱を開始した時から重合ピーク温度が出現するまでの時間のことをいう。
生産性; ○ 良好、 △ 可
(7)メタクリル樹脂板内の発泡
目視で発泡の有無を確認した。
実施例1
メチルメタクリレート98質量部と、ブチルアクリレート2質量部からなるメチルメタクリレート系単量体を、2.0MPa耐圧密閉容器(容積3L)に入れ、該容器内を0.15MPaまで窒素加圧した後、窒素バブリングを5分間実施した。その後、容器を密閉し、攪拌しながら、ジャケットに110℃の蒸気を吹き込み、メチルメタクリレート系単量体の温度が100℃になったところで、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.35質量部を圧送により添加した。その後、重合発熱により、内温が166℃、内圧0.4MPa程度まで上昇した。開始剤投入から2分後、残存重合開始剤量が0.2ppm以下となるので、ジャケットに冷却水を流し込むことで冷却を開始した。このときの80℃までの冷却速度は13℃/minであった。その後、内温が40℃程度となったところで、シラップを取り出した。そのときのシラップの重合体含有率は30.6質量%、質量平均分子量5.4万、20℃における粘度は2.4Pa・sであった。
実施例2〜5
原料単量体、重合開始剤の種類、添加量並びに重合条件を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、シラップを得た。シラップ物性も合わせて表1に示す。
比較例1〜6
開始剤の種類、添加量並びに重合条件を表1のように変更して、シラップを得た。比較例1に関しては、分子量調節剤を使用することなく、大気圧でシラップを製造した。その結果、求める質量平均分子量、重合体含有率のシラップを得ることはできなかった。その他の比較例に関しても、重合体含有率が低いものや、粘度が高く、密閉型耐圧容器から取り出せなくなる条件も存在した。結果を表1に示す。
Figure 2009256513
続いて、メタクリル樹脂板製造時の実施例を以下に示す。製造したメタクリル樹脂板の厚さは全て5mmとした。
実施例6
実施例1で得られたシラップにtert−へキシルパーオキシピバレートを、0.2質量部添加し、真空中で脱揮した。ついでこのシラップを大きさ350mm×350mm、厚さ1.5mmのステンレス板2枚と、軟質塩化ビニル製ガスケットとからなる鋳型に注入して、73℃の温水シャワーで加熱し重合した。その後、120℃の熱処理を5分間実施し、冷却後、鋳型から剥離して、メタクリル樹脂板を得た。
実施例7、8
実施例7は実施例2で得られたシラップを、実施例8は実施例3で得られたシラップを使用したこと以外は実施例6と同様にしてメタクリル樹脂板を得た。結果を表2に示す。
実施例9〜11
各条件を表2のように変更したこと以外は実施例6と同様にしてメタクリル樹脂板を得た。結果も合わせて表2に示す。実施例11は、温水シャワーで加熱して重合する際、始めに86℃の温水で8分加熱し、その後、73℃の温水に切り替えた。
実施例12
実施例1で得られたシラップから、図1の装置を使用してメタクリル樹脂板を製造した。
本実施例において、図1の装置は、全長10mであり、2個のステンレス製エンドレスベルト1、1'は厚さ1.5mm、幅が2mであり、油圧により上下共3kg/mm2の張力を与えた。また、ガスケット7として、軟質塩化ビニル製のガスケットを設置した。
装置前半は、73℃の温水シャワー8、8'による加熱ゾーンを5m分有するものとし、この加熱ゾーン内には、上下ロール対4、4'が、ロール対の配列間隔Pが400mmとなるよう等間隔に合計12対配列した。これら上下ロール対4、4'の各ロールは、表面をゴムで被覆したステンレス製の中空構造の胴部と、その両側部のステンレス製の中実軸とからなり、上下ロール対4、4'の各ロールのステンレス胴部の外径は160mm、ゴム部を含めた最外径は180mm、幅は2200mm、ステンレス肉厚は4.5mm、最外径の公差が0.1mm以内のフラットロールであり、中実軸の外径は20mm、中実軸の幅は125mmとした。このフラットロールの自重たわみは0.06mmであった。
ここで、加熱ゾーン内の上下ロール対4、4'の配列間隔Pとロール胴部外径Dとの差P−Dは、400mm−180mm=220mmであった。
上下ロール対4、4'において、上側ロール4の軸は、支持棒の上下動により上下移動可能なフレームにベアリングを介して支持され、また下側ロール4'の軸は、土台に固定された側壁12にベアリングを介して支持されるものとした。
さらに、加熱ゾーン内において原料供給側から6番目および7番目の上下ロール対4、4'においては、図1に示したように、上側ロール4の軸を支持するフレーム11と支持棒13の台座15との間にバネ14を取り付け、上側からの線荷重を調整できる機構とし、運転時は加熱ゾーン内における原料供給側から6番目および7番目の上下ロール対4、4'のどちらも、上側からの荷重がベルト単位幅当たり20kg/mとなるようにバネ14を調節した。
この温水シャワー8、8'による加熱ゾーンの後には、遠赤外線ヒータ9、9'による加熱処理を2m分有するものとした。
エンドレスベルト1、1'の走行速度は、30mm/minで運転した。また、重合ピーク温度を把握するため、原料供給側から熱電対を原料とともに入れ込み、熱電対付近のシラップの温度の経時変化を測定し、重合装置の位置とあわせてみた。その結果、重合ピーク温度の発現位置は、温水シャワー8、8'による加熱ゾーンの原料供給側から4.2m(シラップ供給位置から14分経過後)の位置であった。
この装置を用いて、流れ方向に10m分のメタクリル樹脂板を得た。得られたメタクリル樹脂板の厚さは均一で、発泡も見られず、生産性は極めて良好であった。
実施例13〜18
開始剤の種類および添加量、重合時の温水温度、熱処理温度、熱処理保持時間等を表2のように変更したこと以外は実施例12と同様にして、メタクリル樹脂板を得た。結果を表2に示す。
上記の通り、本発明のシラップを使用することで、重合ピーク温度が出現する時間を短縮し、かつ、発泡もないメタクリル樹脂板を得ることができた。
比較例7、8
比較例7、比較例8について、それぞれ比較例2、比較例6で得られたシラップを60℃で加温し、それぞれ重合体含有率が60質量%、40質量%となるようにメチルメタクリレートを揮発させて調整した。比較例15では、シラップの粘度が高すぎたため、鋳型へ注入することができなかった。また、比較例16では、メタクリル樹脂板を得たが、鋳型からの剥離時に板がもろく、割れてしまった。
Figure 2009256513
本発明で得られたシラップを使用することで、鋳型注入時の作業性、メタクリル樹脂板生産時の生産性を両立し、かつ、物性面でも良好なメタクリル樹脂板を得ることができる。
エンドレスベルト使用連続製板装置の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1,1′ エンドレスベルト
2,2′ 主プーリ
3、3′ 主プーリ
4、4′ 上下ロール対
5 定量ポンプ
6 ノズル
7 ガスケット
8,8′ 温水シャワーゾーン
9,9′ 遠赤外線ヒータゾーン
10 板状製品

Claims (5)

  1. メチルメタクリレート単独またはメチルメタクリレートとこれと共重合し得る少なくとも1種の不飽和ビニル化合物とを含有するメチルメタクリレート系単量体混合物を原料単量体とするメタクリル系シラップの製造方法であって、反応容器内に入れた原料単量体の温度を60〜130℃とした後、原料単量体100質量部に対して10時間半減期温度が120℃以下であるラジカル重合開始剤を0.01〜1.0質量部添加し、重合のピーク温度を140〜170℃とすることによって、重合体含有率が20〜55質量%、前記重合体の質量平均分子量が4万〜9万、20℃における前記シラップの粘度が30Pa.s以下のメタクリル系シラップを製造する方法。
  2. シラップ製造中の反応容器内圧を少なくとも0.01MPa(ゲージ圧)以上とする請求項1記載のメタクリル系シラップの製造方法。
  3. 以下の工程を有するメタクリル樹脂板の製造方法。
    (1)請求項1記載の方法により得られたシラップを鋳型に注入する第1工程
    (2)前記シラップを重合する第2工程
    (3)鋳型を冷却する第3工程
    (4)得られた樹脂板を鋳型から剥離する第4工程
  4. 第2工程で、シラップ100質量部に対して10時間半減期温度が45〜100℃であるラジカル重合開始剤を0.05〜1.0質量部添加し、前記シラップを60〜90℃に加熱して重合し、ピーク温度発現以降さらに110〜140℃で3分間以上加熱する請求項3記載のメタクリル樹脂板の製造方法。
  5. 前記鋳型が、相対するベルト面が同方向へ同一速度で走行するように配設された2個のエンドレスベルトの相対するベルト面と、それらの両側辺部にあるベルト面で挟まれた状態で走行する連続したガスケットとで囲まれた空間からなり、その一端よりメタクリル系シラップを供給し、加温ゾーン内でベルトの走行と共にメタクリル系シラップを重合させ、その他端より板状重合物を取り出す請求項3または4記載のメタクリル樹脂板の製造方法。
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