JP2009236709A - 表面プラズモンセンシング方法および表面プラズモンセンシング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面プラズモンセンサにおいて、複屈折率を有する誘電体プリズムを用いても表面プラズモンを有効に励起することができるようにする。
【解決手段】表面プラズモンセンサにおいて、誘電体プリズム6による複屈折の影響により生じる位相差を相殺できるように、あらかじめ励起光Liの偏光状態を上記の位相差と逆の位相差を持つ偏光状態にしてから、励起光Liを誘電体プリズム6に入射する。このとき、反射光Lsを第1の光検出器30aでモニタリングして、その検出信号に応じ自動偏光調整機構40で偏光調整素子Dを操作することによって励起光Liの偏光状態を自動的に調整できるようにする。
【選択図】図2A
【解決手段】表面プラズモンセンサにおいて、誘電体プリズム6による複屈折の影響により生じる位相差を相殺できるように、あらかじめ励起光Liの偏光状態を上記の位相差と逆の位相差を持つ偏光状態にしてから、励起光Liを誘電体プリズム6に入射する。このとき、反射光Lsを第1の光検出器30aでモニタリングして、その検出信号に応じ自動偏光調整機構40で偏光調整素子Dを操作することによって励起光Liの偏光状態を自動的に調整できるようにする。
【選択図】図2A
Description
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用した表面プラズモンセンシング方法および表面プラズモンセンシング装置に関するものである。
従来、タンパク質やDNA等を検出するバイオ測定において、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用したSPR法および表面プラズモン励起増強蛍光分光(SPFS)法が注目されている。
このSPR法は、金、銀等からなる金属膜が形成された誘電体プリズムへ全反射条件を満たすように励起光を入射させ、その反射光の角度スペクトルを求めて、スペクトル中に現れる吸収ピークから、金属膜に接している被検出物質の屈折率あるいはその変化等の物性を測定する手法である。これは、SPRが発現する入射角や、SPRが発現している入射角付近における反射光強度が、金属膜の表面上の付着物の厚さ、誘電率によって変化することを利用している。或いは、金属膜の表面上に被検出物質と結合あるいは吸着する物質を表面修飾しておき、被検出物質が金属膜表面付近に結合あるいは吸着した際に生じる入射角や反射率の変化を検出することにより、被検出物質の結合量(膜厚あるいは質量)を得ることもできる。さらに、SPR測定は、in situ測定が可能なため、生体分子間の反応・結合量の測定および速度論的解析がノンラベルかつリアルタイムで行うことが可能である(特許文献1・2)。
一方、SPFS法は、同様に金属膜が形成された誘電体プリズムへ励起光を入射し、屈折率の異なる界面で励起光が全反射する際に界面からしみ出す光、すなわちエバネッセント波と、試料中に含まれる被検出物質あるいはこの被検出物質に付けられている標識との吸収、発光等の光学的な相互作用を分析することにより、上記被検出物質の存在またはその量を検出する方法である。とりわけここ数年、蛍光法は、冷却CCDの発達など光検出器の高性能化と相まって、バイオ研究には欠かせない道具となっている。また、蛍光標識に用いる材料においても、特に可視領域では蛍光量子収率の高い蛍光色素、例えばFITC(蛍光 525nm、蛍光量子収率 0.6)やCy5(蛍光 680nm、蛍光量子収率 0.3)のような実用の目安となる0.2を超える蛍光色素が開発され広く用いられている(特許文献3)。
上記のようなSPRを利用する全反射光学測定では、表面プラズモンによる電場増強場の強度に寄与する因子が多く、S/N比を向上させることは難しい。これらの因子としては、例えば、センサチップの形状誤差およびセッティング誤差、センシング誤差および光学系誤差等の人為的要因による励起光の入射角度のずれや、サンプルの屈折率、センサチップの屈折率およびその表面の凹凸並びに金属膜の厚みおよびその密度等の物理的要因による表面プラズモンの発生条件のずれ等が挙げられる。また、測定環境における温度変化についても、上記のような条件のずれを後発的に生じさせる可能性があるため、充分に考慮する必要がある。
そこで、表面プラズモンの発生条件を最適化して電場増強場の強度を向上させる種々の検討がなされてきた(特許文献1〜3)。
特開2002−296177号公報
特開2006−275535号公報
特開2006−208069号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3の方法では、複屈折率を有する誘電体プリズム内を励起光が進行する際に励起光が偏光されることにより、電場増強場の強度が低減するという問題を解決することはできない。
通常SPRを励起する際には、誘電体プリズムと金属膜との界面に垂直な偏光状態を持った光、すなわちp偏光の励起光を誘電体プリズムに入射する。これは、励起光のうち表面プラズモンの励起に有効に寄与するのがp偏光であり、s偏光は寄与しないからである。複屈折率のない誘電体プリズムを使用すれば特に大きな問題はないが、例えば複屈折率を有する樹脂製の誘電体プリズムを用いた場合には問題となる。樹脂製の誘電体プリズムは、複屈折率のない誘電体プリズムに比べて安価であり、かつ成形が容易であるといった利点を有することから利用されることが多い。したがって、SPRを利用する全反射光学測定において、複屈折率を有する誘電体プリズムを用いても、その複屈折率に左右されず表面プラズモンを有効に励起することが可能な測定方法が望まれている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、SPRを利用する全反射光学測定において、複屈折率を有する誘電体プリズムを用いても表面プラズモンを有効に励起することが可能な表面プラズモンセンシング方法および表面プラズモンセンシング装置の提供を目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明者は、励起光をプリズムに入射する前に励起光の偏光状態を制御することに注目して、本発明に至った。
すなわち、本発明による散乱光検出方法は、誘電体プリズムと、誘電体プリズムの一面の所定領域に設けられ、かつ被検出物質を含む試料が供給される金属膜とを用意し、
誘電体プリズムと金属膜との界面に対して、金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、誘電体プリズムを通して励起光を照射し、
この表面プラズモンを利用して被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング方法において、
上記界面に入射される際に励起光のp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズムに入射される前の励起光の偏光状態を調整することを特徴とするものである。
誘電体プリズムと金属膜との界面に対して、金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、誘電体プリズムを通して励起光を照射し、
この表面プラズモンを利用して被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング方法において、
上記界面に入射される際に励起光のp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズムに入射される前の励起光の偏光状態を調整することを特徴とするものである。
ここで、「p偏光」とは、励起光または反射光のうち誘電体プリズムと金属膜との界面に対してp偏光の状態にある成分光を意味するものとする。なお、本発明において同様に「s偏光」とは、励起光または反射光のうち誘電体プリズムと金属膜との界面に対してs偏光の状態にある成分光を意味するものとする。
さらに、本発明による表面プラズモンセンシング方法において、励起光の上記界面における反射光を光検出器によって検出し、反射光の強度が最小となるように、励起光を発する光源の前に配置された偏光調整素子を、自動偏光調整機構により自動的に操作して、偏光状態を調整することが好ましい。
なおこの場合には、反射光のs偏光を検出し、このs偏光の強度が最小となるように偏光状態を調整することが好ましく、或いは反射光のp偏光を検出し、このp偏光の強度が最大となるように偏光状態を調整することが好ましい。
一方、本発明による表面プラズモンセンシング装置は、誘電体プリズムと、
誘電体プリズムの一面の所定領域に設けられ、かつ被検出物質を含む試料が供給される金属膜と、
誘電体プリズムと金属膜との界面に対して、金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、誘電体プリズムを通して励起光を照射する光源とを有し、
表面プラズモンを利用して被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング装置において、
界面に入射される際に励起光のp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズムに入射される前の励起光の偏光状態を調整する偏光調整手段を有することを特徴とするものである。
誘電体プリズムの一面の所定領域に設けられ、かつ被検出物質を含む試料が供給される金属膜と、
誘電体プリズムと金属膜との界面に対して、金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、誘電体プリズムを通して励起光を照射する光源とを有し、
表面プラズモンを利用して被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング装置において、
界面に入射される際に励起光のp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズムに入射される前の励起光の偏光状態を調整する偏光調整手段を有することを特徴とするものである。
さらに、本発明による表面プラズモンセンシング装置において、偏光調整手段が、
励起光の上記界面における反射光を検出するように配置された光検出器と、
光源の前に配置された、偏光状態を調整する偏光調整素子と、
反射光の強度が最小となるように、偏光調整素子を自動的に操作する自動偏光調整機構とを有することが好ましい。
励起光の上記界面における反射光を検出するように配置された光検出器と、
光源の前に配置された、偏光状態を調整する偏光調整素子と、
反射光の強度が最小となるように、偏光調整素子を自動的に操作する自動偏光調整機構とを有することが好ましい。
なおこの場合には、反射光のs偏光を検出するように配置された偏光子と、このs偏光の強度が最小となるように、偏光状態を調整する手段を有することが好ましく、或いは反射光のp偏光を検出するように配置された偏光子と、このp偏光の強度が最大となるように、偏光状態を調整する手段を有することが好ましい。
本発明による散乱光検出方法によれば、SPRを利用する全反射光学測定において、誘電体プリズムと金属膜との界面に入射される際に励起光のp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズムに入射される前の励起光の偏光状態を調整しているため、複屈折率を有する誘電体プリズムを用いても表面プラズモンを有効に励起することができる。すなわち、安価な樹脂製の誘電体プリズム等を用いても測定が行えるようになるためコストを低減することが可能となる。さらに、効率よくかつ測定ごとに再現性よく励起光のエネルギーを表面プラズモンの励起に利用することができるため、測定効率を上げると共に検出の定量性を向上させることも可能となる。
以下、本発明における最良の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
「表面プラズモンセンシング方法および装置」
<第1の実施形態>
複屈折率を有する誘電体プリズム6を用いて、SPRを利用する全反射光学測定を行う場合を考える(図1A・B)。座標系を光軸に沿ってp偏光方向、s偏光方向(紙面垂直方向)のそれぞれがy軸、x軸になるようにとる。
<第1の実施形態>
複屈折率を有する誘電体プリズム6を用いて、SPRを利用する全反射光学測定を行う場合を考える(図1A・B)。座標系を光軸に沿ってp偏光方向、s偏光方向(紙面垂直方向)のそれぞれがy軸、x軸になるようにとる。
図1Aに示すように、p偏光のみを持つ直線偏光状態Pで誘電体プリズム6に入射した励起光Liは、誘電体プリズム6が有する複屈折率によって偏光状態が変わる。より具体的には、励起光Liが誘電体プリズム6に入射してから誘電体プリズム6と金属膜20との界面20aに至るまでに、p偏光およびs偏光の間に位相差δが生じて、例えば右回り楕円偏光状態C1に変化する。
このとき、励起光Liのうちp偏光成分は表面プラズモン励起に寄与できるが、偏光状態の回転により生じたs偏光成分は表面プラズモンを励起することができない。すなわち、表面プラズモンを励起することができる励起光量が実質的に減少するという問題が生じることになる。
この問題を解決するために本発明による表面プラズモンセンシング方法および装置では、あらかじめ励起光Liの偏光状態を上記の位相差と逆の位相差を持つ左回り楕円偏光状態C2にしてから、励起光Liを誘電体プリズム6に入射する。例えば、誘電体プリズム6による複屈折の影響により、上記のように誘電体プリズム6内で位相差δの右回り楕円偏光状態C1となってしまう場合には、誘電体プリズムに入射される前に、あらかじめ励起光Liの偏光状態を位相差−δの左回り楕円偏光状態C2になるように調整する。このように誘電体プリズム6内で生じる位相差δをあらかじめ与えておいた位相差−δによって相殺することで、励起光Liの上記界面20aに到達した際の偏光状態をp偏光のみを持つ直線偏光状態Pとする(図1B)ことにより、励起光のエネルギーを表面プラズモンの励起に有効に利用することが可能となる。
上記のような偏光状態の調整方法を踏まえて、以下第1の実施形態について図面を用いて説明する。
図2Aは、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法を用いて、試料1の物性を測定する場合に用いる表面プラズモンセンシング装置の概略部分断面図である。
図示の通り、この表面プラズモンセンシング装置は、励起光Liを発する光源8と、誘電体プリズム基板6と、誘電体プリズム基板6上に形成された金属膜20と、励起光Liの偏光状態を調整することができるように配置された偏光調整素子Dと、誘電体プリズム基板6と金属膜20との界面20aによる励起光Liの反射光Lsを検出するように配置された第1の光検出器30aと、第1の光検出器30aの前に配置された反射光Lsの特定偏光成分のみを抽出する偏光子Hと、第1の光検出器30aからの検出信号に応じ偏光調整素子Dを操作する自動偏光調整機構40とを備えてなるものである。なお、光源8は、界面20aで全反射条件を満たすような位置に配置されている。また、図中には金属膜20上に供給された試料1も同時に示している。
励起光Liは、例えばレーザ光源等から得られる単波長光でも白色光源等から得られるブロード光でもよく、特に制限はないが、測定条件により適宜選択される。
光源8は、例えばレーザ光源等でもよく、特に制限はないが、検出条件に応じて適宜選択することができる。また必要に応じて、光源8は、励起光Liを界面20aで全反射条件を満たすように誘電体プリズム基板6を通して入射させるために、励起光Liを導光するためのミラーやレンズ等の導光系等を適宜組み合わせることが好ましい。
誘電体プリズム基板6は、例えば樹脂やガラス等の透明材料から形成されたものである。樹脂製基板を用いた場合には、基板が安価であるという利点があり、ガラス製基板を用いた場合には、不純物や表面凹凸による散乱(この散乱は検出信号に対するノイズとなる)が小さいという利点があるため、用途および検出条件に合わせ適宜選択することが好ましい。誘電体プリズム基板6を樹脂から形成する場合には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンを含む非晶性ポリオレフィン(APO)等を用いることができる。
金属膜20は、その薄膜材料として、特に制限はなく検出条件に応じて適宜選択することができるが、表面プラズモンの発生条件等の観点から、Au、Ag、Pt等を用いることが望ましい。また、金属膜20の堆積方法は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、めっき法、金属コロイドを用いた塗布法やスプレー法などの各種の薄膜作製方法によって形成することができ、これらの方法は使用する材料に応じて適宜選択することができる。一方その膜厚も、特に制限はなく検出条件に応じて適宜選択することができるが、表面プラズモンの発生条件等の観点から、20nm〜60nm の範囲にあることが望ましい。
偏光調整素子Dは、例えばλ/2板D1およびλ/4板D2からなるものであり、λ/2板D1によって偏光軸の傾きを調整し、λ/4板D2によって偏光状態の広がり具合を調整する。なお、偏光調整素子Dは、これらに制限されるものではなく、ポッケルスセル等を用いてもよい。
第1の光検出器30aは、試料1中に含まれる蛍光標識が発する微弱な蛍光を定量的に検出するもので、例えば富士フイルム株式会社製 LAS-1000 plus(商品名)を好適に用いることができる。しかしながら、これに限らず検出条件に応じて適宜選択することができ、CCD、PD(フォトダイオード)、光電子増倍管、c−MOS等を用いることができる。また、第1の光検出器30aは、検出条件に応じてフィルタや分光器等の分光手段と組み合わせて用いることができる。
偏光子Hは、散乱光Lsの特定偏光成分を抽出することができれば、特に制限されず偏光プリズムおよび偏光板等を用いることできる。
自動偏光調整機構40は、第1の光検出器30aからの検出信号に応じて、界面20aに入射される際に励起光Liのp偏光の強度が最大となるように、誘電体プリズム基板6に入射される前の励起光Liの偏光状態を調整するため偏光調整素子Dを操作するものである。自動偏光調整機構40は、パーソナルコンピューター(PC)等を含む。
そして、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法は、界面20aで全反射条件を満たすように励起光Liを入射して、金属膜20内に表面プラズモンを励起させるように界面20aでの反射角を変えながら、偏光子Hを通して反射光Lsを第1の光検出器30aでモニタリングし、その反射光Lsの角度スペクトルを求めて、スペクトル中に現れる吸収ピーク(暗線)から、金属膜20に接している試料1の屈折率あるいはその変化等の物性を測定する。このとき、第1の光検出器30aは、反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40はこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整する。なお暗線測定時は、偏光子を取り除くか反射光Lsのp偏光成分のみが透過するように調整する。
上記の方法では、励起光Liが金属膜20に反射され反射光Lsが誘電体プリズム基板6内を伝搬するときにも、誘電体プリズム基板6による複屈折の影響を受けるが、これは励起光Liの照射点を調整して、反射光Lsが反射して誘電体プリズム基板6内を伝搬する距離を極力短くすることによって回避できる。本実施形態では、励起光Liの照射点を誘電体プリズム基板6の端に近づけることにより、反射光Lsが誘電体プリズム基板6内を伝搬する距離を短くしている。
以下、本実施形態における作用を示す。
図2Bは、横軸が誘電体プリズム基板6による複屈折の位相差量、縦軸が入射光に対する反射光Lsのs偏光の相対強度である。
誘電体プリズム基板6による複屈折の影響がない場合、つまり励起光Liが誘電体プリズム6に入射してから界面20aに至るまでに生じる位相差が0である場合には、反射光Lsにはs偏光が含まれないので、検出光のジョーンズベクトルのx成分の大きさは0になる。一方、位相差がδである場合には、複屈折によりs偏光成分が現れるので、検出光のジョーンズベクトルのx成分の大きさは[(1−cosδ)/2]1/2となる。
図2Bより、界面20aにおいて励起光Liがp偏光のみを持つ直線偏光状態Pであるためには、第1の光検出器30aで検出される反射光Lsのs偏光の強度が0となればよい。したがって、本発明による表面プラズモンセンシング方法においては、第1の光検出器30aにより反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40よりこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整している。
これにより、界面20aに入射される際に励起光Liのp偏光の強度が最大となるため、複屈折率を有する誘電体プリズム6を用いても表面プラズモンを有効に励起することができる。すなわち、安価な樹脂製の誘電体プリズム等を用いても測定を行えるようになるためコストを低減することが可能となる。さらに、効率よくかつ測定ごとに再現性よく励起光Liのエネルギーを表面プラズモンの励起に利用することができるため、測定効率を上げると共に検出の定量性を向上させることも可能となる。
<第2の実施形態>
図3は、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法を用いて、被検出物質としての抗原2を含む試料1から、抗原2を検出する場合に用いる表面プラズモンセンシング装置の概略部分断面図である。本実施形態は、第1の実施形態において金属膜20上に試料保持部7と、不撓性膜21と、不撓性膜21上に固定された抗原2に特異的に結合する1次抗体3と、蛍光標識5から発せられる蛍光を検出する第2の光検出器30bを有する点において異なる。したがって、第1の実施形態と同様の要素の説明は特に必要のない限り省略する。
図3は、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法を用いて、被検出物質としての抗原2を含む試料1から、抗原2を検出する場合に用いる表面プラズモンセンシング装置の概略部分断面図である。本実施形態は、第1の実施形態において金属膜20上に試料保持部7と、不撓性膜21と、不撓性膜21上に固定された抗原2に特異的に結合する1次抗体3と、蛍光標識5から発せられる蛍光を検出する第2の光検出器30bを有する点において異なる。したがって、第1の実施形態と同様の要素の説明は特に必要のない限り省略する。
図示の通り、この表面プラズモンセンシング装置は、所定波長の励起光Liを発する光源8と、この励起光Liを一面から透過させるように配された、励起光Liを透過させる材料からなる誘電体プリズム基板6と、この誘電体プリズム基板6上に成膜された金属膜20と、金属膜20上に形成された不撓性膜21と、不撓性膜21上に固定されかつ抗原2に特異的に結合する1次抗体3と、不撓性膜21に試料1が接するように試料1を保持する試料保持部7と、励起光Liの偏光状態を調整することができる偏光調整素子Dと、誘電体プリズム基板6と金属膜20との界面20aでの反射光Lsを検出する第1の光検出器30aと、蛍光標識5が発する蛍光を検出可能な位置に配された第2の光検出器30bと、第1の光検出器30aの前に配置された反射光Lsの特定偏光成分のみを抽出する偏光子Hと、第1の光検出器30aからの検出信号に応じ偏光調整素子Dを操作する自動偏光調整機構40とを備えてなるものである。そして、図中には、試料1中に含まれる蛍光標識5と、これに施され特異的結合性を付与する2次抗体4も同時に示している。
不撓性膜21は、その薄膜材料として、例えばシリコン酸化膜やポリマー材料等を用いることができる。この場合、特に成膜条件や表面処理条件等の観点からポリマー材料が望ましい。例えばこの場合、スピンコート等の簡便な方法により作成することができる。また、本発明のように不撓性膜21が疎水性材料から形成されている場合には、試料液中に存在する金属イオンや溶存酸素のような消光の原因となる因子が不撓性膜21の内部にまで入り込むことが無く、これらの消光因子によって蛍光標識5の励起エネルギーが奪われることが防止される。
そして、不撓性膜21の膜厚は10nm〜100nmとする。ここで、上記膜厚の下限値および上限値をそれぞれ10nm、100nmと規定したのは以下の理由による。
金属の近傍に存在する蛍光材料は、金属へのエネルギー移動により消光を起こす。エネルギー移動の程度は、金属が半無限の厚さを持つ平面なら距離の3乗に反比例して、金属が無限に薄い平板なら距離の4乗に反比例して、また、金属が微粒子なら距離の6乗に反比例して小さくなる。そして、金属膜の場合は、金属と蛍光材料との間の距離は少なくとも 数nm以上、より好ましくは10nm以上確保しておくことが望ましい。これにより、本発明では不撓性膜21の膜厚の下限値を10nmとする。一方、蛍光材料は、エバネッセント波によって励起される。このエバネッセント波は、金属膜表面から高々励起光の波長程度であり、その電界強度は金属膜表面からの距離に応じて指数関数的に急激に減衰することが知られている。実際に、波長635nmの可視光について両者の関係を計算によって求めると、エバネッセント波が到達するのは波長(635nm)程度である。しかしながら、100nmを超えるとその電界強度が急激に減衰する。蛍光材料を励起する電界強度は大きいほど望ましいので、効果的な励起を行なうためには、金属膜表面と蛍光材料との距離を100nmより小さくすることが望ましい。これにより、本発明では不撓性膜21の膜厚の上限値を100nmとする。
試料保持部7は、試料1を検出部上(本実施形態において、より正確には不撓性膜21上)に接するように保持でき、試料1中に含まれる蛍光標識5から発せられる蛍光の検出を妨げないような形状や材料であれば特に制限されるものではない。蛍光を上方から検出する場合には、例えば図3中に示すような、光を透過させない側面と光をよく透過させる上端面からなる試料保持部7等を用いることができる。ここで、光を透過させない側面を用いているのは、意図しない外部からの光を遮断するためである。
第2の光検出器30bは、第1の光検出器30aと同様である。
1次抗体3は、特に制限なく、検出条件(特に被検出物質)に応じて適宜選択することができる。例えば、抗原2がCRP抗原(分子量11万 Da)の場合、この抗原と特異的に結合するモノクロナール抗体(2次抗体4と少なくともエピトープが異なる)等を用いることができ、例えば末端をカルボキシル基化したPEGを介して、アミンカップリング法により、ポリマー材料からなる場合の不撓性膜21に固定することができる。上記アミンカップリング法は一例として下記(1)〜(3)のステップからなるものである。なおこれは、30ul(マイクロ・リットル)のキュベット/セルを用いた場合の例である。
(1)リンカー部先端(末端)の−COOH基を活性化
0.1MのNHSと0.4MのEDCとを等体積混合した溶液を30ul加え、30分間室温静置する。
0.1MのNHSと0.4MのEDCとを等体積混合した溶液を30ul加え、30分間室温静置する。
NHS:N-hydrooxysuccinimide
EDC:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
(2)1次抗体の固定化
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1次抗体溶液(500ug/ml)を30ul加え、30〜60分間室温静置する。
EDC:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
(2)1次抗体の固定化
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1次抗体溶液(500ug/ml)を30ul加え、30〜60分間室温静置する。
(3)未反応の−COOH基をブロッキング
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を30ul加え、20分間室温静置する。さらにPBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄する。
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を30ul加え、20分間室温静置する。さらにPBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄する。
そして、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法は、不撓性膜21上に1次抗体3を固定し、抗原2を含む試料1を流して、この抗原2を1次抗体3に結合させ、その後蛍光標識5で標識されかつ抗原2と特異的に結合する2次抗体4を流し、1次抗体3に結合した抗原2に結合させて、いわゆるサンドイッチ方式により蛍光標識5を不撓性膜21に固定し、その後界面20aに対し全反射条件を満たすように励起光Liを入射して、エバネッセント波22を発生させると同時に表面プラズモンを励起し、不撓性膜21に固定された蛍光標識5による蛍光を第2の光検出器30bによって検出するものである。このとき、第1の光検出器30aは反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40はこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整する。
ここで、以上の例では、蛍光検出によって実際に存在が確認されるのは蛍光標識5であるが、この蛍光標識5は抗原2がなければ不撓性膜21上に固定されないものと考えて、この蛍光標識5の存在を確認することにより、間接的に抗原2の存在を確認している。
以下、本実施形態における作用を示す。
上記のように本実施形態においても、第1の光検出器30aにより反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40よりこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整しているため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、上記のようなエバネッセント波22の到達領域に関する特性により、意図せず試料中に残ってしまった不純物90からの散乱や浮遊蛍光標識5’からの発光等の影響を大幅に低減することができるため、S/N比のよい蛍光検出が可能となる。また、金属膜20を用いて表面プラズモン励起することにより、この表面プラズモンの電場増強効果によって蛍光の強度を増強させることができるため、よりS/N比のよい蛍光検出が可能となる。
<第3の実施形態>
図4は、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法を用いて、被検出物質としての抗原2を含む試料1から、抗原2を検出する場合に用いる表面プラズモンセンシング装置の概略部分断面図である。本実施形態は、第2の実施形態において、不撓性膜21が無く、かつ抗原2に特異的に結合する1次抗体3が金属膜20上に固定されている点と、蛍光標識として蛍光ビーズFBを用いている点において異なる。したがって、第2の実施形態と同様のその他の要素の説明は特に必要のない限り省略する。
図4は、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法を用いて、被検出物質としての抗原2を含む試料1から、抗原2を検出する場合に用いる表面プラズモンセンシング装置の概略部分断面図である。本実施形態は、第2の実施形態において、不撓性膜21が無く、かつ抗原2に特異的に結合する1次抗体3が金属膜20上に固定されている点と、蛍光標識として蛍光ビーズFBを用いている点において異なる。したがって、第2の実施形態と同様のその他の要素の説明は特に必要のない限り省略する。
図示の通り、この表面プラズモンセンシング装置は、所定波長の励起光Liを発する光源8と、この励起光Liを一面から透過させるように配された、励起光Liを透過させる材料からなる誘電体プリズム基板6と、この誘電体プリズム基板6上に成膜された金属膜20と、金属膜20上に固定されかつ抗原2に特異的に結合する1次抗体3と、金属膜20に試料1が接するように試料1を保持する試料保持部7と、励起光Liの偏光状態を調整することができる偏光調整素子Dと、誘電体プリズム基板6と金属膜20との界面20aでの反射光Lsを検出する第1の光検出器30aと、蛍光標識5が発する蛍光を検出可能な位置に配された第2の光検出器30bと、第1の光検出器30aの前に配置された反射光Lsの特定偏光成分のみを抽出する偏光子Hと、第1の光検出器30aからの検出信号に応じ偏光調整素子Dを操作する自動偏光調整機構40とを備えてなるものである。そして、図中には、試料1中に含まれる蛍光ビーズFBと、これに施され特異的結合性を付与する2次抗体4も同時に示している。
蛍光ビーズFBは、蛍光色素分子15と、蛍光色素分子15を内包すると共に蛍光色素分子15から生じる蛍光を透過する透光材料16とからなるものである。そして蛍光ビーズFBは、粒径が5300nm以下のものが好ましく、500nm以下のものがさらに好ましく、130〜500nmのものが特に好ましい。透光材料16としては、具体的には、ポリスチレンやSiO2などが挙げられるが、蛍光色素分子15を内包でき、かつ、この蛍光色素15からの蛍光を透過させて外部に放出できるものであれば特に制限されない。蛍光ビーズFBは蛍光色素分子15が透光材料16で覆われているものであるため、金属膜20上に金属消光防止のための膜を設けなくても、金属膜20と蛍光色素分子15との距離をある程度を離間させることができ、非常に簡便な方法で効果的に金属消光を防止すると共に、安定して蛍光信号を検出することができる。蛍光ビーズFBの透光材料16に含まれる蛍光色素分子15の数は1個でもよいが、複数であることがより好ましい。
なお、光源8と蛍光ビーズFBの好適な組合せの具体例としては以下の組合せが挙げられる。
例えば、波長655nmのLD光源(品番DL−3147−160F、DL−3357−165、StockerYale社製)に対して蛍光ビーズ(品番FC03F/8196、直径510nm、励起波長660nm、蛍光波長690nm、Bangs Laboratories社製)あるいは蛍光ビーズ(品番F8807、直径200nm、励起波長660nm、蛍光波長680nm、Molecular Probes社製)、もしくは波長635nmのLD光源(品番DL−3148−023、DL−3038−011、StockerYale社製)に対して、蛍光ビーズ(品番F8816、直径1000nm、励起波長625nm、蛍光波長645nm、Molecular Probes社製)の組合せがある。
例えば、波長655nmのLD光源(品番DL−3147−160F、DL−3357−165、StockerYale社製)に対して蛍光ビーズ(品番FC03F/8196、直径510nm、励起波長660nm、蛍光波長690nm、Bangs Laboratories社製)あるいは蛍光ビーズ(品番F8807、直径200nm、励起波長660nm、蛍光波長680nm、Molecular Probes社製)、もしくは波長635nmのLD光源(品番DL−3148−023、DL−3038−011、StockerYale社製)に対して、蛍光ビーズ(品番F8816、直径1000nm、励起波長625nm、蛍光波長645nm、Molecular Probes社製)の組合せがある。
蛍光ビーズFBへの2次抗体4修飾方法および標識用溶液の作製方法の一例を説明する。
蛍光粒子(ビーズ)溶液(品番FC03F/8196、直径510nm、励起波長660nm、蛍光波長690nm、Bangs Laboratories社)に50mM MESバッファーおよび、5.0mg/mLの抗hCGモノクロナール抗体(Anti−hCG 5008 SP−5、Medix Biochemica社)溶液を加えて撹拌する。これにより蛍光ビーズFBへの抗体の修飾がなされる。
蛍光粒子(ビーズ)溶液(品番FC03F/8196、直径510nm、励起波長660nm、蛍光波長690nm、Bangs Laboratories社)に50mM MESバッファーおよび、5.0mg/mLの抗hCGモノクロナール抗体(Anti−hCG 5008 SP−5、Medix Biochemica社)溶液を加えて撹拌する。これにより蛍光ビーズFBへの抗体の修飾がなされる。
次に、400mg/mLのWSC(品番01−62−0011、和光純薬)水溶液を加え室温で攪拌する。
さらに、2mol/L Glycine水溶液を添加し撹拌した後、遠心分離にて、粒子を沈降させる。
最後に、上清を取り除き、PBS(pH7.4)を加え、超音波洗浄機により蛍光粒子を再分散させる。さらに遠心分離を行い、上清を除いた後、1%BSAのPBS(pH7.4)溶液500μL加え、蛍光粒子を再分散させて標識用溶液とする。
さらに、2mol/L Glycine水溶液を添加し撹拌した後、遠心分離にて、粒子を沈降させる。
最後に、上清を取り除き、PBS(pH7.4)を加え、超音波洗浄機により蛍光粒子を再分散させる。さらに遠心分離を行い、上清を除いた後、1%BSAのPBS(pH7.4)溶液500μL加え、蛍光粒子を再分散させて標識用溶液とする。
1次抗体3は、第2の実施形態と同様のものである。
そして、本実施形態による表面プラズモンセンシング方法は、金属膜20上に1次抗体3を固定し、抗原2を含む試料1を流して、この抗原2を1次抗体3に結合させ、その後蛍光ビーズFBで標識されかつ抗原2と特異的に結合する2次抗体4を流し、1次抗体3に結合した抗原2に結合させて、いわゆるサンドイッチ方式により蛍光ビーズFBを金属膜20に固定し、その後界面20aに対し全反射条件を満たすように励起光Liを入射して、エバネッセント波22を発生させると同時に表面プラズモンを励起し、金属膜20に固定された蛍光ビーズFBによる蛍光を第2の光検出器30bによって検出するものである。このとき、第1の光検出器30aは反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40はこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整する。
以下、本実施形態における作用を示す。
上記のように本実施形態においても、第1の光検出器30aにより反射光Lsのs偏光成分を偏光子Hで抽出しながら、その検出信号を自動偏光調整機構40にフィードバックして、自動偏光調整機構40よりこのs偏光の強度が最小となるように偏光調整素子Dを操作して励起光Liの偏光状態を調整しているため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態においても、エバネッセント波22を発生させると同時に表面プラズモンを励起しているため、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施形態の場合は、蛍光標識として複数の蛍光色素分子15が透光材料16で覆われている蛍光ビーズFBを用いることにより、第2の実施形態のように金属膜20上に金属消光を防止するための不撓性膜21を設けなくても、金属膜20と蛍光色素分子15との距離をある程度を離間させると共に、金属膜20から10〜100nmの距離の範囲に複数の蛍光色素分子15が存在する状態を容易に達成することができ、非常に簡便な方法で効果的に金属消光を防止すると共に、安定して蛍光信号を検出することができる。
<設計変更>
上記の第1および第2の実施例では、励起光がただ一つの角度を持つ平行光であるとして説明してきたが、励起光は図5のようなある角度幅Δθを持つファンビーム(集束光)Li’を用いてもよい。ファンビームLi’では、入射角が角度θ−Δθ/2〜θ+Δθ/2の範囲で入射することができる。ここでθはファンビームの中心入射角である。
上記の第1および第2の実施例では、励起光がただ一つの角度を持つ平行光であるとして説明してきたが、励起光は図5のようなある角度幅Δθを持つファンビーム(集束光)Li’を用いてもよい。ファンビームLi’では、入射角が角度θ−Δθ/2〜θ+Δθ/2の範囲で入射することができる。ここでθはファンビームの中心入射角である。
これにより、この範囲内に共鳴角があれば、表面プラズモンを励起することができるため、共鳴角の微妙な調整を簡略化することが可能となる。例えば第1の実施形態において、平行光では、金属膜20上に供給された試料1の屈折率が測定ごとに異なることによって、入射角が共鳴角とずれてしまうため入射角の調整がその測定ごとに必要となるが、ファンビームでは、試料1の屈折率が測定ごとに異なっても入射角に幅があるため入射角の調整をすることなく共鳴角と一致する励起光を照射することが可能になる。この場合には、ファンビームは入射角度による強度変化が少ないフラットな分布を持つものがより好ましい。
さらに、第1および第2の実施例では、偏光状態の調整指標として反射光Lsのs偏光の強度を用いたが、反射光Lsのp偏光の強度を偏光状態の調整指標としてもよい。これは、s偏光の強度が最小になっていればp偏光の強度が最大になっているためである。或いは、p偏光およびs偏光を含む反射光Lsの全強度を偏光状態の調整指標としてもよい。これは、反射光Lsの全強度が最小になれば、励起光Liのエネルギーは表面プラズモンの励起に最適化されて用いられたことになるためである。
しかしながら、偏光状態の調整指標としては、以下に示す理由により反射光Lsのs偏光の強度を用いることが好ましい。
図6は、反射光のp偏光およびs偏光それぞれの界面20a(図2A、図3および図4)に対する入射角とその反射率を示すグラフである。例えばp偏光の強度のみを偏光状態の調整指標として用いた場合があまり好ましくないのは、Q点のようなp偏光の暗線が現れる角度でp偏光の反射光量自体が少なくなり、強度の最大値および最小値を区別することが困難となってしまうためである。
一方、反射光Lsの全強度を偏光状態の調整指標として用いた場合があまり好ましくないのは、Q点のような角度では大きな問題はないが、R点のようなp偏光およびs偏光それぞれの反射率の差が小さい角度で強度の最大値および最小値を区別することが困難となってしまうためである。これは、p偏光およびs偏光の反射率がそれぞれ10%、95%であるQ点では、s偏光をp偏光へと変化させるとそのp偏光の大部分が表面プラズモンを励起するために吸収されるので、反射光Lsの全強度の減少幅が大きいが、p偏光およびs偏光の反射率がそれぞれ85%、95%であるR点では、s偏光をp偏光へと変化させてもそのp偏光の大部分がそのまま反射されるので、反射光Lsの全強度の減少幅が小さいためである。
また、第1および第2の実施例では、標識物質として蛍光体分子や蛍光ビーズ等の蛍光標識を用いているが、本発明ではこのようなものに限定されず、金属微粒子、量子ドットおよび量子ドットビーズ等の光と相互作用する材料であれば適宜使用することができる。
1 試料
2 抗原
3 1次抗体
4 2次抗体
5 蛍光標識
5’ 浮遊蛍光標識
6 誘電体プリズム基板
7 試料保持部
8 光源
15 蛍光色素分子
16 透光材料
20 金属膜
20a 反射界面
21 不撓性膜
22 エバネッセント波
30a・b 光検出器
40 自動偏光調整機構
90 試料中の不純物
P p偏光状態
C1 右回り楕円偏光状態
C2 左回り楕円偏光状態
D 偏光調整素子D
D1 λ/2板
D2 λ/4板
H 偏光子
Li 励起光
Li’ ファンビーム
Ls 反射光
FB 蛍光ビーズ
θ ファンビームの中心入射角
Δθ ファンビームの角度幅
2 抗原
3 1次抗体
4 2次抗体
5 蛍光標識
5’ 浮遊蛍光標識
6 誘電体プリズム基板
7 試料保持部
8 光源
15 蛍光色素分子
16 透光材料
20 金属膜
20a 反射界面
21 不撓性膜
22 エバネッセント波
30a・b 光検出器
40 自動偏光調整機構
90 試料中の不純物
P p偏光状態
C1 右回り楕円偏光状態
C2 左回り楕円偏光状態
D 偏光調整素子D
D1 λ/2板
D2 λ/4板
H 偏光子
Li 励起光
Li’ ファンビーム
Ls 反射光
FB 蛍光ビーズ
θ ファンビームの中心入射角
Δθ ファンビームの角度幅
Claims (8)
- 誘電体プリズムと、該誘電体プリズムの一面の所定領域に設けられ、かつ被検出物質を含む試料が供給される金属膜とを用意し、
前記誘電体プリズムと前記金属膜との界面に対して、該金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、該誘電体プリズムを通して励起光を照射し、
該表面プラズモンを利用して前記被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング方法において、
前記界面に入射される際に前記励起光のp偏光の強度が最大となるように、前記誘電体プリズムに入射される前の前記励起光の偏光状態を調整することを特徴とする表面プラズモンセンシング方法。 - 前記励起光の前記界面における反射光を光検出器によって検出し、該反射光の強度が最小となるように、前記励起光を発する光源の前に配置された偏光調整素子を、自動偏光調整機構により自動的に操作して、前記偏光状態を調整することを特徴とする請求項1に記載の表面プラズモンセンシング方法。
- 前記反射光のs偏光を検出し、該s偏光の強度が最小となるように前記偏光状態を調整することを特徴とする請求項2に記載の表面プラズモンセンシング方法。
- 前記反射光のp偏光を検出し、該p偏光の強度が最大となるように前記偏光状態を調整することを特徴とする請求項2に記載の表面プラズモンセンシング方法。
- 誘電体プリズムと、
該誘電体プリズムの一面の所定領域に設けられ、かつ被検出物質を含む試料が供給される金属膜と、
前記誘電体プリズムと前記金属膜との界面に対して、該金属膜に表面プラズモンを発生せしめるように、該誘電体プリズムを通して励起光を照射する光源とを有し、
該表面プラズモンを利用して前記被検出物質を検出する表面プラズモンセンシング装置において、
前記界面に入射される際に前記励起光のp偏光の強度が最大となるように、前記誘電体プリズムに入射される前の前記励起光の偏光状態を調整する偏光調整手段を有することを特徴とする表面プラズモンセンシング装置。 - 前記偏光調整手段が、
前記励起光の前記界面における反射光を検出するように配置された光検出器と、
前記光源の前に配置された、前記偏光状態を調整する偏光調整素子と、
前記反射光の強度が最小となるように、前記偏光調整素子を自動的に操作する自動偏光調整機構とを有することを特徴とする請求項5に記載の表面プラズモンセンシング装置。 - 前記反射光のs偏光を検出するように配置された偏光子と、
該s偏光の強度が最小となるように前記偏光状態を調整する手段を有することを特徴とする請求項6に記載の表面プラズモンセンシング装置。 - 前記反射光のp偏光を検出するように配置された偏光子と、
該p偏光の強度が最大となるように前記偏光状態を調整する手段を有することを特徴とする請求項6に記載の表面プラズモンセンシング装置。
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JP2008083658A JP2009236709A (ja) | 2008-03-27 | 2008-03-27 | 表面プラズモンセンシング方法および表面プラズモンセンシング装置 |
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-
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