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JP2009132375A - 制御装置 - Google Patents

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JP2009132375A JP2008278925A JP2008278925A JP2009132375A JP 2009132375 A JP2009132375 A JP 2009132375A JP 2008278925 A JP2008278925 A JP 2008278925A JP 2008278925 A JP2008278925 A JP 2008278925A JP 2009132375 A JP2009132375 A JP 2009132375A
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vehicle
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JP2008278925A
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Akira Mizuno
晃 水野
Munehisa Horiguchi
宗久 堀口
Takashi Naito
貴 内藤
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Equos Research Co Ltd
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Equos Research Co Ltd
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  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)

Abstract

【課題】車輪にスリップが生じた場合に、車輪に付与する制動力や駆動力を制御する制御システムの作動による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができる制御装置を提供すること。
【解決手段】制御装置100は、所定のスリップ状態にある車輪2が存在すると判断すると(S5:Yes)、その車輪2に対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御する(S6)。これにより、軟らかい特性を有する内側トレッド21の接地比率が増加するので、車輪2のグリップ力を高めることができ、車輪2に生じていたスリップの抑制を図ることができる。更に、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されれば、ABS制御やトラクション制御を回避できるので、これらの制御による振動、音、加速不足といった違和感や不快感を抑制できる。
【選択図】 図8

Description

本発明は、車輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる制御装置に関し、特に、車輪にスリップが生じた場合に、車輪に付与する制動力や駆動力を制御する制御システムの作動による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができる制御装置に関するものである。
従来、マイナス方向(ネガティブ)に大きなキャンバ角で車両に車輪を装着する場合に、タイヤの一方側のサイド部を他方側のサイド部より強く補強して剛性を大ならしめると共に、トレッドゴムを2分して、その一方側を他方側より硬度を低くする、或いはトレッド端部のトレッド厚みを厚くして、耐摩耗性、耐熱性及び高グリップ性を確保する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献2には、車輪のキャンバ角をアクチュエータの駆動力によってアクティブ制御するサスペンションシステムが開示されている。
特開平02−185802号公報 米国特許第6347802号明細書
ここで、特許文献1に記載されたタイヤのように硬度の異なる2つのトレッドを有するタイヤを備えた車輪のキャンバ角を、特許文献2に記載のサスペンションシステムによってアクティブ制御すると共に、車両の走行状態に応じてその車輪のキャンバ角を調整したい、という要望がある。これにより、車両の走行状態に応じて、硬度の硬いトレッドと硬度の軟らかいトレッドとの接地比率が変更でき、高グリップ性と低燃費との両立を図ることが期待できる。
しかしながら、低燃費を目的として硬度の高いトレッドの接地比率を高くした場合、車輪のグリップ性能が低くなるので、車輪がスリップしやすくなる。これにより、車輪がスリップする度に、アンチロックブレーキシステム(以下、「ABS(Antilock Brake System)」と称する。)、トラクション制御システム、横滑り防止システムといった、車輪に付与する制動力や駆動力を制御することにより車輪のスリップを抑制する制御システムが頻繁に作動してしまう。従って、ABS作動時の振動や音、トラクション制御システム作動時による加速不足などにより、搭乗者に対して違和感や不快感を与えてしまうといった問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車輪にスリップが生じた場合に、車輪に付与する制動力や駆動力を制御する制御システムの作動による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができる制御装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1に記載の制御装置は、車輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両であって、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドに対して前記車輪の幅方向に並設されると共に前記車両の内側又は外側に配置され且つ前記第1トレッドに比して高いグリップ特性に構成された第2トレッドとを少なくとも有する車両に用いられる制御装置であって、前記キャンバ角調整装置を制御するキャンバ制御手段と、前記車輪に所定のスリップ状態が生じているか否かを判断するスリップ発生判断手段と、そのスリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、そのスリップ状態を抑制するように車輪に付与する駆動力または制動力を制御するスリップ抑制制御手段とを備え、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、少なくとも前記スリップ発生手段により前記所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項2に記載の制御装置は、請求項1に記載の制御装置において、前記車輪に付与される制動力、駆動力または操舵角に基づいて、前記車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあるか否かを判断する車両状態判断手段を備え、前記キャンバ制御手段は、前記車両状態判断手段により前記車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあると判断される場合に、前記スリップ発生判断手段による判断にかかわらず、前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項3に記載の制御装置は、請求項1又は2に記載の制御装置において、前記スリップ抑制制御手段は、前記キャンバ制御手段により前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置が制御された後に前記スリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、車輪に付与する駆動力または制動力を制御する。
請求項4に記載の制御装置は、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置において、前記車輪に生じた前記所定のスリップ状態が解消されているか否かを判断するスリップ解消判断手段と、そのスリップ解消判断手段により前記所定のスリップ状態が解消されていると判断される場合に、予め設定された所定時間を計時する計時手段とを備え、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ解消判断手段により前記所定のスリップ状態が解消されていると判断され且つ前記計時手段により前記所定時間が計時された場合に、前記第2トレッドの接地比率が減少する側に前記車輪のキャンバ角が予め設定された初期値となるように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項5に記載の制御装置は、請求項1から4のいずれかに記載の制御装置において、記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、前記車両のヨーレートを実測するヨーレート実測手段と、前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両のヨーレートを推定するヨーレート推定手段とを備え、前記スリップ発生判断手段は、前記ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートが前記ヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも大きい場合に、前記車輪のうち前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項6に記載の制御装置は、請求項1から5のいずれかに記載の制御装置において、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、前記車両のヨーレートを実測するヨーレート実測手段と、前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両のヨーレートを推定するヨーレート推定手段とを備え、前記スリップ発生判断手段は、前記ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートが前記ヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも小さい場合に、前記車輪のうち前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項7に記載の制御装置は、請求項1から6のいずれかに記載の制御装置において、記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、前記車両の横方向の加速度を実測する横加速度実測手段と、前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両の横方向の加速度を推定する横加速度推定手段とを備え、前記スリップ発生判断手段は、前記横加速度推定手段により推定される横方向の加速度が前記横加速度実測手段により実測される横方向の加速度よりも大きい場合に、前記車輪のうち前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御する。
請求項1に記載の制御装置によれば、キャンバ制御手段によってキャンバ角調整装置が制御され、車輪のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整されると、車両の外側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地比率が増加する一方、車両の内側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地比率が減少する。
これに対し、車輪のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車両の外側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地比率が減少する一方、車両の内側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地比率が増加する。
このように、本発明の制御装置によれば、キャンバ制御手段によりキャンバ角調整装置を制御することで、第1トレッドと第2トレッドとの接地比率を変更できるので、接地比率の高いトレッドの特性による影響を大きくして、かかるトレッドの特性により得られる性能を車輪に発揮させることができるという効果がある。
ここで、本発明によれば、車輪は、第2トレッドを第1トレッドに比して軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)とする構成であるので、第2トレッドの接地比率を増加させれば、第2トレッドの軟らかい特性、即ち、弾性に富み、外力に対して変形し易い特性によって、高いグリップ性能を得ることできるという効果がある。
また、本発明の制御装置によれば、スリップ発生判断手段により車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、キャンバ制御手段は、車輪に付与する駆動力または制動力がスリップ抑制制御手段によって制御される前に、少なくともスリップ発生手段により所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪に対して第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるときには、まず、少なくともその所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪に対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。
これにより、第2トレッドの接地比率を増加させた車輪に対して、第2トレッドの軟らかい特性による影響を大きくし、第2トレッドの特性によって得られる性能、即ち高いグリップ性能を車輪に発揮させることができる。よって、この高いグリップ性能により、車輪に生じていたスリップの抑制を図ることができるという効果がある。
更に、少なくとも所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪に対して第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御した後に、その車輪に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御されることを回避できるので、スリップ抑制制御手段による制御回数を低減することができる。
一般的に、スリップ抑制制御手段による駆動力や制動力の制御は、加速不足、振動、音などによって、搭乗者に対して違和感や不快感を与える原因となっている。本発明の制御装置によれば、上述したように、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ抑制手段による制御回数を低減できるので、車輪に付与する制動力や駆動力を制御するスリップ抑制制御手段による違和感や不快感を抑制することができる。その結果、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ制御手段による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができるという効果がある。
請求項2に記載の制御装置によれば、請求項1に記載の制御装置の奏する効果に加え、車輪に付与される制動力、駆動力または操舵角に基づいて、車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあると車両状態判断手段によって判断される場合に、キャンバ制御手段は、スリップ発生判断手段による判断にかかわらず、第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあると推定される場合には、車輪が所定のスリップ状態にあるか否かにかかわらず、即座に車輪に対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。よって、急制動状態、急加速状態または急旋回状態といった、車輪に所定のスリップ状態が発生する可能性が極めて高い状況において、即座に且つ確実に車輪のグリップ性能を高めることができるという効果がある。
また、車輪の高いグリップ性能によって、車輪に所定のスリップ状態が生じることを抑制することができれば、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御されることを回避することができる。その結果、車輪に所定のスリップ状態が発生する可能性が極めて高い場合にも、車輪に付与する制動力や駆動力を制御するスリップ抑制制御手段による違和感や不快感を抑制しつつ、スリップの抑制を図ることができるという効果がある。
請求項3に記載の制御装置によれば、請求項1又は2に記載の制御装置の奏する効果に加え、キャンバ制御手段により第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置が制御された後にスリップ発生判断手段により車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、スリップ抑制制御手段によって、車輪に付与する駆動力または制動力が制御されるので、第2トレッドの接地比率を増加させて車輪のグリップ性能を高めたにもかかわらず、車輪に所定のスリップ状態が生じている場合には、車輪に付与する駆動力または制動力を制御することによって、そのスリップ状態の抑制を図ることができる。これにより、車両の安全性を高めることができるという効果がある。
請求項4に記載の制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、車輪に生じた所定のスリップ状態が解消されているとスリップ解消判断手段により判断される場合に、キャンバ制御手段は、第2トレッドの接地比率が減少する側に車輪のキャンバ角が予め設定された初期値となるようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、所定のスリップ状態が解消されたときには、第2トレッドの軟らかい特性による影響を小さくすることができる。これにより、車輪は転がり抵抗を小さくすることができるので、所定のスリップ状態が解消された場合には、燃費性能の向上を図ることができるという効果がある。
また、車輪に生じた所定のスリップ状態が解消されているとスリップ解消判断手段により判断された場合に計時手段によって予め設定された所定時間が計時され、計時手段による所定時間の計時がなされた後に、キャンバ制御手段によって、第2トレッドの接地比率が減少する側に車輪のキャンバ角が予め設定された初期値となるようにキャンバ角調整装置が制御されるので、所定のスリップ状態が解消されてからも、予め設定された所定時間の間は高いグリップ性能を維持することができる。これにより、その所定時間の間に車輪に生じるグリップ力によって、車輪のスリップ率を更に低下させることができる。よって、第2トレッドの接地比率を減少させた場合に、車輪のグリップ性能が低下することによって再び車輪に所定のスリップ状態が生じることを抑制できるという効果がある。
請求項5に記載の制御装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車両速度検出手段により検出される車両の速度と、旋回半径検出手段により検出される車両の旋回半径とに基づいて、車両のヨーレートがヨーレート推定手段によって推定される。また、ヨーレート実測手段によって車両のヨーレートが実測される。
ここで、車両の速度と車両の旋回半径とから推定されるヨーレートが、実測されたヨーレートよりも大きい場合、車両の前進方向の前側に位置する車輪(前輪)が外側にスリップして大回りする、アンダステア状態であると判断できる。本発明の制御装置によれば、スリップ発生判断手段によって、ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートがヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも大きい場合に、前輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるので、アンダステアの原因となる前輪のスリップを確実に判断することができる。
そして、スリップ発生判断手段により前輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、キャンバ制御手段は、スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前輪に対して第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、アンダステアが生じていると推定される場合に、まず、前輪に対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。
これにより、アンダステアの発生の原因となっている前輪に対して、高いグリップ性能を発揮させることができるので、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前輪に生じていたスリップの抑制を図ることができる。よって、スリップ抑制制御手段の作動を抑制しつつ、アンダステアの抑制を図ることができるという効果がある。
請求項6に記載の制御装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車両速度検出手段により検出される車両の速度と、旋回半径検出手段により検出される車両の旋回半径とに基づいて、車両のヨーレートがヨーレート推定手段によって推定される。また、ヨーレート実測手段によって車両のヨーレートが実測される。
ここで、車両の速度と車両の旋回半径とから推定されるヨーレートが、実測されたヨーレートよりも小さい場合、車両の前進方向の後側に位置する車輪(後輪)が外側にスリップして小回りする、オーバステア状態であると判断できる。本発明の制御装置によれば、スリップ発生判断手段によって、ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートがヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも小さい場合に、後輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるので、オーバステアの原因となる後輪のスリップを確実に判断することができる。
そして、スリップ発生判断手段により後輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、キャンバ制御手段は、スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、後輪に対して第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、オーバステアが生じていると推定される場合に、まず、後輪に対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。
これにより、オーバステアの発生の原因となっている後輪に対して、高いグリップ性能を発揮させることができるので、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、後輪に生じていたスリップの抑制を図ることができる。よって、スリップ抑制制御手段の作動を抑制しつつ、オーバステアの抑制を図ることができるという効果がある。
請求項7に記載の制御装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の制御装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車両速度検出手段により検出される車両の速度と、旋回半径検出手段により検出される車両の旋回半径とに基づいて、車両の横方向の加速度(横加速度)が横加速度推定手段によって推定される。また、横加速度実測手段によって車両の横方向の加速度(横加速度)が実測される。
ここで、車両の速度と車両の旋回半径とから推定される横加速度が、実測された横加速度よりも大きい場合、車両の旋回方向の外側に位置する車輪(外輪)が横側にスリップして横滑りする、横滑り状態であると判断できる。本発明の制御装置によれば、スリップ発生判断手段によって、横加速度推定手段により推定される横加速度が横加速度実測手段により実測される横加速度よりも大きい場合に、外輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるので、横滑りの原因となる外輪のスリップを確実に判断することができる。
そして、スリップ発生判断手段により外輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、キャンバ制御手段は、スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、外輪に対して第2トレッドの接地比率が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、横滑りが生じていると推定される場合に、まず、外輪に対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。
これにより、横滑りの発生の原因となっている外輪に対して、高いグリップ性能を発揮させることができるので、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、外輪に生じていたスリップの抑制を図ることができる。よって、スリップ抑制制御手段の作動を抑制しつつ、横滑りの抑制を図ることができるという効果がある。
なお、前輪および後輪を有する車輪と、前記車輪の内の後輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両であって、前記前輪が後輪に比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、前記後輪が前輪に比して転がり抵抗の小さい特性に構成される車両に用いられる制御装置であって、前記キャンバ角調整装置を制御するキャンバ制御手段と、前記車輪に所定のスリップ状態が生じているか否かを判断するスリップ発生判断手段と、そのスリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、そのスリップ状態を抑制するように車輪に付与する駆動力または制動力を制御するスリップ抑制制御手段とを備え、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車輪の内の後輪に対して少なくともマイナス方向へキャンバ角が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする制御装置によれば、キャンバ制御手段によりキャンバ角調整装置を制御して、後輪のキャンバ角を調整することができるので、後輪に横力(キャンバスラスト)を発揮させることができると共に車体ロール時の路面に対する後輪の接地面を適正化することができるので、グリップ性能の向上を図ることできるという効果がある。
ここで、本発明の制御装置が用いられる車両は、前輪が後輪に比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、後輪が前輪に比して転がり抵抗の小さい特性に構成されるので、通常走行時には、後輪の低転がり抵抗特性により、燃費性能の向上を図ることができる。一方、制動時には、前輪が支配的となるところ、その前輪が高グリップ特性に構成されていることで、制動性能を効果的に向上させることができる。
この場合、旋回時には、後輪のグリップ力が前輪のグリップ力に対して不足するため、オーバステア傾向となるが、本発明によれば、上述したように、キャンバ制御手段により後輪にマイナス方向への所定のキャンバ角を付与して、後輪のグリップ性能の向上を図ることができるので、前輪と後輪とのグリップ力をバランスさせることができ、その分、旋回性能の向上を図ることができる。
更に、後輪のキャンバ角をキャンバ制御手段により制御することで、車輪に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御されることを回避できるので、スリップ抑制制御手段による制御回数を低減することができる。
一般的に、スリップ抑制制御手段による駆動力や制動力の制御は、加速不足、振動、音などによって、搭乗者に対して違和感や不快感を与える原因となっている。本発明の制御装置によれば、上述したように、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ抑制手段による制御回数を低減できるので、車輪に付与する制動力や駆動力を制御するスリップ抑制制御手段による違和感や不快感を抑制することができる。その結果、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ制御手段による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における制御装置100が搭載される車両1の上面視を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架すると共に各車輪2のキャンバ角を独立に調整する懸架装置4と、ステアリング63の操作に伴って各車輪2の内の一部(本実施の形態では左右の前輪2FL,2FR)を操舵するステアリング装置5とを主に備えている。
また、車輪2に付与する制動力や駆動力を制御して、車輪2のスリップを抑制するABS制御装置82やトラクション制御装置83(図7参照)を備えていると共に、車輪2に所定のスリップ状態が生じた場合、ABS制御装置82やトラクション制御装置83の作動を可能な限り回避して、ABS制御装置82やトラクション制御装置83による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車体フレームBFは、車両1の骨格をなすと共に各種装置(車輪駆動装置3など)を搭載するためのものであり、懸架装置4に支持されている。
車輪2は、図1に示すように、車体フレームBFの前方側(矢印FWD側)に配置される左右の前輪2FL,2FRと、車体フレームBFの後方側(反矢印FWD側)に配置される左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備えている。また、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3から付与される回転駆動力により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動する従動輪として構成されている。なお、車輪2の詳細構成については、図4から6を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与して回転駆動するための装置であり、電動モータ3aにより構成されている(図7参照)。電動モータ3aは、図1に示すように、ディファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して、左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の踏み込み状態に応じた回転速度で回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、ディファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、いわゆるサスペンションとして機能する装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応して設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、上述したように、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2及び図3を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2及び図3は、懸架装置4の正面図であり、図3(a)は、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整された状態が図示され、図3(b)は、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示されている。なお、図2及び図3では、発明の理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示を省略し、図面を簡素化している。また、各懸架装置4の構成はそれぞれ共通であるので、ここでは右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2及び図3に図示し、その他の車輪2(左の前輪2FL、左右の後輪2RL,2RR)に対応する懸架装置4については、その図示と説明を省略する。
懸架装置4は、図2に示すように、ダブルウィッシュボーン式の機構により構成され、アクスルハブ41と、サスペンションアーム42と、FRアクチュエータ43FRとを主に備えている。
アクスルハブ41は、車輪2を回転可能に支持するものであり、図2に示すように、車両1の内側(図2右側)から車輪2を支持すると共に、サスペンションアーム42を介してFRアクチュエータ43FRに連結されている。サスペンションアーム42は、アクスルハブ41をFRアクチュエータ43FRに連結するものであり、第1〜第3アーム42a〜42cを備えている。
第1アーム42a及び第2アーム42bは、一端(図2左側)がアクスルハブ41の上部(図2上側)及び下部(図2下側)にそれぞれ軸支される一方、他端(図2右側)が第3アーム42cの上端(図2上側)及び下端(図2下側)にそれぞれ軸支されている。また、第1アーム42a及び第2アーム42bは、互いに対向して配置されると共に、第3アーム42cは、アクスルハブ41に対向して配置されている。これにより、アクスルハブ41とサスペンションアーム42(第1〜第3アーム42a〜42c)とにより、4節のリンク機構が構成される。
なお、サスペンションアーム42には、路面Gから車体フレームBFに伝わる衝撃を緩和するコイルばね及びそのコイルばねの振動を減衰させるショックアブソーバ(いずれも図示せず)が取り付けられている。
FRアクチュエータ43FRは、サスペンションアーム42と車体フレームBFとを連結すると共に車体フレームBFを支持するものであり、油圧シリンダにより構成されている。このFRアクチュエータ43FRは、図2に示すように、本体部(図2上側)が車体フレームBFに軸支される一方、ロッド部(図2下側)が第3アーム42cに軸支されている。
ここで、第2アーム42bは、キャンバ軸44を介してアクスルハブ41に軸支されており、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、アクスルハブ41とサスペンションアーム42とにより構成されるリンク機構(以下、単に「リンク機構」と称す。)が屈伸し、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動駆動される(図3参照)。
即ち、通常、車輪2は、路面Gとの間の摩擦により、路面Gに対して滑りを生じないため、リンク機構は、車輪2の接地面に最も近いキャンバ軸44を固定軸として屈伸する。その結果、キャンバ軸44を中心軸として車輪2が揺動駆動される。
また、キャンバ軸44は、アクスルハブ41が車輪2を車両1の内側から支持する構成であるので、車両1の正面視において、車輪2の中心線Mよりも車両1の内側(図2右側)に配置されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、図3に示すように、図2に示す状態からFRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として揺動駆動されることで、車輪2のキャンバ角が調整される。また、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されると、リンク機構が屈伸し、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として揺動駆動されることで、懸架装置4(FRアクチュエータ43FR)に支持された車体フレームBFが昇降する。即ち、FRアクチュエータ43FRが伸縮駆動されることで、車輪2のキャンバ角が調整されると同時に、車体フレームBFが昇降する。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車両1の正面視において、キャンバ軸44が車輪2の中心線Mよりも車両1の内側に配置される構成であるので、図3(a)に示すように、FRアクチュエータ43FRが収縮駆動されると、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として矢印A方向へ揺動駆動され、車輪2のキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)に調整される。同時に、車体フレームBFが上昇する(即ち、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが広がる)。
一方、図3(b)に示すように、FRアクチュエータ43FRが伸長駆動されると、車輪2がキャンバ軸44を中心軸として矢印B方向へ揺動駆動され、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整される。同時に、車体フレームBFが下降する(即ち、車体フレームBFと路面Gとの間隔Hが縮まる)。
図1に戻って説明する。ステアリング装置5は、ラックアンドピニオン式の機構により構成され、ステアリングシャフト51と、フックジョイント52と、ステアリングギヤ53と、タイロッド54と、ナックル55とを主に備えている。
このステアリング装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作は、まず、ステアリングシャフト51を介してフックジョイント52に伝達されると共に、フックジョイント52により角度を変えられつつ、ステアリングギヤ53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動して、ナックル55を押し引きすることで、車輪2(左右の前輪2FL,2FR)の操舵角が調整される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の制御が行われる。また、ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作に伴って、車輪2がステアリング装置5により操舵される。
制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62の踏み込み状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を制御することで、各車輪2を回転駆動する。或いは、後述するスリップ制御処理(図8参照)において、車輪2に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、後述するリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR、図7参照)を制御して、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角となるように調整する。なお、制御装置100の詳細構成については、図7を参照して後述する。
次いで、図4から図6を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図4は、車両1の上面視を模式的に示した模式図であり、図5及び図6は、車両1の正面視を模式的に示した模式図である。なお、図5では、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に調整された状態が図示され、図6では、車輪2のキャンバ角が0度に調整された状態が図示されている。
車輪2は、図4に示すように、内側トレッド21及び外側トレッド22の2種類のトレッドを備え、各車輪2において、内側トレッド21が車両1の内側に配置され、外側トレッド22が車両1の外側に配置されている。また、車輪2は、内側トレッド21と外側トレッド22とが互いに異なる特性に構成され、内側トレッド21が外側トレッド22に比して軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)に構成されている。なお、本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図4左右方向寸法)が同一に構成されている。
上述したように構成される車輪2によれば、図5に示すように、リンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR、図7参照)が制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブ)に調整されると、車両1の内側へ向けて、車輪2にキャンバスラストFnが発生する。
また、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向に調整されることで、車両1の内側に配置される内側トレッド21の接地面積(接地比率)が増加する一方、車両1の外側に配置される外側トレッド22の接地面積(接地比率)が減少する。これにより、内側トレッド21と外側トレッド22との接地比率を変更できるので、接地比率の高いトレッド、即ち、内側トレッド21の特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性により得られる性能を車輪2に発揮させることができる。
ここで、本実施の形態では、上述したように、車輪2は、内側トレッド21を外側トレッド22に比して軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)とする構成であるので、内側トレッド21は外側トレッド22に比して高いグリップ性能が得られる。従って、車輪2に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角となるように調整すれば、内側トレッド21の高いグリップ性能を発揮させて、車輪2に生じたスリップのより一層の抑制を図ることができる。
なお、ここで、「所定のキャンバ角」とは、車輪2のキャンバ角が内側トレッド21の接地比率を所定比率以上とする予め設定された角度のことである。
これに対し、図6に示すように、リンク駆動装置43が制御され、車輪2のキャンバ角が0度に調整されると、内側トレッド21と外側トレッド22との接地比率がほぼ等しくなる。これにより、内側トレッド21の接地比率を低くできるので、内側トレッド21の軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)による高いグリップ性能によって、車輪2の転がり抵抗が大きくなることを回避することができる。その結果、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪2のキャンバ角が0度に調整されることで、車輪2にキャンバスラストが発生せず、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
なお、本実施の形態において、車輪2のキャンバ角は、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると0度に調整される。また、車輪2に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合にマイナス方向(ネガティブ)に付与された車輪2のキャンバ角は、その所定のスリップ状態が解消されたと判断される場合にと0度に戻される。これにより、車両1の燃費性能の向上を図ることができる。
次いで、図7を参照して、制御装置100の詳細構成について説明する。図7は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。制御装置100は、図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)71、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)72及びRAM(Random Access Memory)73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3、リンク駆動装置43、車輪速センサ装置81、アクセルペダルセンサ装置61a、ブレーキペダルセンサ装置62a、ステアリングセンサ装置63a、アンチロックブレーキシステム制御装置82(以下、「ABS制御装置82」と称する。)、トラクション制御装置83、及びその他の入出力装置84が接続されている。
CPU71は、バスライン74によって接続された各部を制御する演算装置であり、計時回路71aが設けられている。計時回路71aは、現在の時間を刻む内部時計を有する既知の回路で、CPU71から計時の指示があった場合に指示された時間を計時し、計時完了を割り込みによってCPU71に通知する。
EEPROM72は、CPU71によって実行される制御プログラム(例えば、図8から図12に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を書き換え可能に記憶すると共に、電源遮断後も内容を保持可能な不揮発性のメモリである。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。このRAM73には、ABS制御中フラグ73a及びトラクション制御中フラグ73bが格納されている。
ABS制御中フラグ73aは、ABS制御装置82によってABS制御が行われているか否かを示すフラグである。このABS制御フラグ73aは、後述するスリップ制御処理(図8参照)において、ABS制御装置82に対してABS制御の開始が指示された場合に、ABS制御を行っていることを示す「1」が設定される。また、後述するスリップ解除検出処理(図10参照)において、ABS制御装置82に対してABS制御の終了が指示された場合に、ABS制御を行っていないことを示す「0」が設定される。
トラクション制御中フラグ73bは、トラクション制御装置83によってトラクション制御が行われているか否かを示すフラグである。このトラクション制御中フラグ73bは、後述するスリップ制御処理(図8参照)において、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の開始が指示された場合に、トラクション制御を行っていることを示す「1」が設定される。また、後述するスリップ解除検出処理(図10参照)において、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の終了が指示された場合に、トラクション制御を行っていないことを示す「0」が設定される。
CPU71は、ABS制御中フラグ73aの内容に基づいて、ABS制御装置82においてABS制御が行われているか否かを判断することができる。また、CPU71は、トラクション制御中フラグ73bの内容に基づいて、トラクション制御装置83においてトラクション制御が行われているか否かを判断することができる。
そして、CPU71は、後述するスリップ制御処理(図8参照)を実行中に、ABS制御中フラグ73aおよびトラクション制御中フラグ73bの内容からABS制御装置82においてABS制御が行われておらず且つトラクション制御装置83においてトラクション制御が行われていないと判断される場合に、車両1が急加速状態または急制動状態であると推定されれば、又は、所定のスリップ状態にある車輪2が存在すると推定されれば、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御し、高いグリップ性能を発揮させることができる。
更に、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御してもなお、車輪2のいずれかに所定のスリップ状態が生じていると推定される場合には、ABS制御装置82またはトラクション制御装置83に対して、ABS制御の開始またはトラクション制御の開始を指示することができる。
一方、CPU71は、後述するスリップ解除検出処理(図10参照)を実行中に、ABS制御中フラグ73aの内容からABS制御装置82においてABS制御が行われていると判断される場合に、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、ABS制御装置82に対してABS制御の終了を指示すると共に、所定時間経過後(本実施の形態では、3秒経過後)に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
また、トラクション制御中フラグ73bの内容からトラクション制御装置83においてトラクション制御が行われていると判断される場合に、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の終了を指示すると共に、所定時間経過後(本実施の形態では、3秒経過後)に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
なお、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンされたとき(即ち、制御装置100の電源がオンされたとき)には、車両1はABS制御もトランクション制御も行わないので、ABS制御中フラグ73a及びトラクション制御中フラグ73bには、ともに初期値として「0」が設定される。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
リンク駆動装置43は、リンク機構(図2及び図3参照)を屈伸させるための装置であり、リンク機構に屈伸のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRと、それら各アクチュエータ43FL〜43RRをCPU71からの命令に基づいて制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RRは、上述したように、油圧シリンダにより構成され、各油圧シリンダ(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)にオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ(図示せず)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、リンク駆動装置43の制御回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダの駆動方向(伸長または収縮)が切り替えられる。
リンク駆動装置43の制御回路は、各油圧シリンダの伸縮量を伸縮センサ(図示せず)により監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダは、伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、制御回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2のキャンバ角を得ることができる。
車輪速センサ81は、各車輪2FL〜2RRの回転速度(車輪速)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左の前輪2FLの車輪速を検出するFL車輪速センサ81FL、右の前輪2FRの車輪速を検出するFR車輪速センサ81FR、左の後輪2RLにおける車輪速を検出するRL車輪速センサ81RL、右の後輪2RRにおける車輪速を検出するRR車輪速センサ81RRと、それらの各車輪速センサ81FL〜81RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。なお、本実施の形態では、これら各車輪速センサ81FL〜81RRが、車輪2と共に回転するセンターロータ(図示せず)の磁界変動を、ホール素子(図示せず)によって検出する電磁的センサとして構成されている。
CPU71は、車輪速センサ装置81から入力された各車輪速センサ81FL〜81RRの検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)から車両1の推定車体速度(車速)を算出し、その推定車輪速度と各車輪2FL〜2RRの車輪速とから、各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出することができる。そして、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率を比較し、他の車輪と比較してスリップ率が異常に大きい車輪が存在する場合、その車輪において所定のスリップ状態が生じていると判断することができる。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の踏み込み状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63の回転角を回転方向に対応付けて検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果により、各ペダル61,62の踏み込み量およびステアリング63の回転角を得ると共に、その検出結果を時間微分することで、各ペダル61,62の踏み込み速度およびステアリング63の回転速度を得ることができる。
これにより、CPU71は、各ペダル61,62の踏み込み速度が所定の速度より大きい場合に、車両1が急加速状態または急制動状態であると判断できる。また、ステアリング63の回転速度が所定の回転速度よりも大きい場合に、車両1が急旋回状態であると判断できる。
ABS制御装置82は、制動時において、各車輪2のスリップ率が所定の範囲を超えないように車輪2に付与する制動力を制御(ABS制御)して、車輪2のスリップ率が100%(ロック)となることを抑制する既知の装置である。
また、トラクション制御装置83は、駆動時(発進や加速時)において、駆動輪(左右の前輪2FL,2FR)のスリップ率が所定の範囲を超えないように、車輪駆動装置3(電気モータ3a)から駆動輪(左右の前輪2FL,2RR)に付与される回転駆動力を制御(トラクション制御)して、駆動輪(左右の前輪2FL,2RR)がスリップすることを抑制する既知の装置である。
本実施の形態では、上述したように、スリップ制御処理(図8参照)において、車両1が急制動状態または急加速状態にあると判断され、または、所定のスリップ状態が生じている車輪2が存在していると判断されて、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御した後も、車輪2のいずれかに所定のスリップ状態が生じていると推定される場合に、ABS制御装置82によるABS制御またはトラクション制御装置83によるトラクション制御が開始されるようになっている。
図7に示す他の入出力装置84としては、例えば、車両1(車体フレームBF)の路面に対する姿勢(傾斜など)を非接触で計測する光学センサなどが例示される。
次いで、図8を参照して、スリップ制御処理について説明する。図8は、スリップ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両1が急制動状態または急加速状態にあると判断される場合、または、車輪2のいずれかに所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、車輪2のスリップの抑制を図る処理である。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
ここで、図8に示すスリップ制御処理の説明に際しては、図9を適宜参照する。図9は、スリップ率λと制動力Fとの関係を模式的に示す模式図であり、一点鎖線L21は、マイナス方向へ所定のキャンバ角が車輪2に付与され図5に示す状態におけるグラフに、破線L22は、車輪2のキャンバ角が0°に調整された図6に示す状態におけるグラフに、それぞれ対応する。
スリップ率λとは、車両1の車速Vcに対する車輪2の車輪速(周速度)Vtの比率であり、Vc>Vtとなる制動時には、λ=(Vc−Vt)/Vcで定義される。よって、車輪2が路面に対して滑る(スリップする)ことなく回転している場合には、車両1の車速Vcと車輪2の車輪速Vtとが同速度であるので、λ=0となる。一方、車輪2が完全にロック(回転が停止)した場合には、車輪2の車輪速Vtが0であるので、λ=1となる。本実施の形態では、図9に示すように、スリップ率λがλ1となった場合に制動力Fが最大値Fmaxとなる。
なお、スリップ率λは、上述したように、車輪速センサ装置81の検出結果に基づいて算出される。即ち、車輪速センサ装置81の検出結果から車両1の車速Vc及び車輪2(各車輪2FL〜2RR)の車輪速Vtを算出し、それら各算出値からスリップ率を車輪2FL〜2RR毎にそれぞれ独立に算出する。
CPU71は、スリップ制御処理に関し、まず、RAM73に格納されたABS制御中フラグ73aの内容が「0」で、且つ、トラクション制御中フラグ73bの内容が「0」であるか否かを判断する(S1)。その結果、ABS制御中フラグ73a及びトラクション制御中フラグ73bのいずれかの内容が「1」であると判断される場合(S1:No)、既にスリップを抑制するための制御(ABS制御またはトラクション制御)がなされていると判断できるので、このスリップ制御処理を終了する。
一方、S1の処理の結果、ABS制御中フラグ73aの内容が「0」で、且つ、トラクション制御中フラグ73bの内容が「0」であると判断される場合(S1:Yes)、ABS制御およびトラクション制御がなされていないと判断できるので、次いで、アクセルペダルセンサ装置61aおよびブレーキペダルセンサ装置62aから、それぞれの検出結果(アクセルペダル61の踏み込み量およびブレーキペダル62の踏み込み量)を読み込み、読み込んだ各ペダル61,62の踏み込み量を時間微分して各ペダル61,62の踏み込み速度を算出する(S2)。
そして、算出した各ペダル61,62の踏み込み速度から、車両1が急加速状態または急減速状態にあるか否かを判断する(S3)。その結果、車両1が急加速状態および急減速状態にないと判断される場合には(S3:No)、次いで、各車輪2FL〜2RRのスリップ状態を判断するために、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)を読み込み、読み込んだ各車輪2FL〜2RRの車輪速から各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出する(S4)。
そして、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ1以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ1を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S5)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ1に達していない(λ<λ1)と判断される場合(S5:No)、車両1が急加速状態でも急制動状態でもなく、且つ、各車輪2FL〜2RRにおいて所定のスリップ状態が生じていないため、スリップの抑制を図るための制御を行う必要がなく、よって、このスリップ制御処理を終了する。
また、S5の処理の結果、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ1以上となった)車輪2が存在する、即ち、λ≧λ1を満たす車輪2が存在すると判断される場合には(S5:Yes)、そのスリップしている(λ≧λ1を満たす)車輪2に対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御して(S6)、S8の処理へ移行する。
これにより、所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪2に対して内側トレッド21の接地比率を増加させることができるので、内側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性によって得られる性能、即ち高いグリップ性能を車輪2に発揮させることができる。よって、車輪2のグリップ力を高めることができるので、車輪2に生じていたスリップの抑制を図ることができる。
即ち、S5の処理において、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ1以上)と判断された車輪2は、キャンバ角が0度に調整されているので(図6参照)、図9に示す破線L22上の位置P5で示す状態にある。この状態(位置P5)から、S6の処理により、車輪2にマイナス方向へのキャンバ角が付与され、内側トレッド21の接地比率が増加されると、その接地比率の増加に伴って、スリップ率λが減少して、車輪2の状態が図9に示す二点鎖線Lmに沿って位置P6へ向けて遷移する。そして、キャンバ角が所定のキャンバ角(図5参照)に達すると、車輪2の状態が一点鎖線L21上の位置P6に達する。その結果、車輪2のグリップ力(制動力F)を高めて、車輪2に生じていたスリップの抑制を図ることができる。
このように、本実施の形態では、車輪2のスリップ率λがλ1となるまでは、その車輪2のキャンバ角を0度(即ち、転がり抵抗が小さい状態)に維持し、スリップ率λがλ1以上となって初めて、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(高グリップ側)へ調整する構成であるので、低転がり状態での走行を極力確保して、燃費性能の向上を図りつつ、スリップの抑制を図ることができる。
一方、S3の処理の結果、車両1が急加速状態または急制動状態にあると判断される場合には(S3:Yes)、すべての車輪2FL〜2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御して(S7)、S8の処理へ移行する。
これにより、車両1が急制動状態または急加速状態にあると判断される場合には、所定のスリップ状態にある車輪2が存在するか否かにかかわらず、即座にすべての車輪2FL〜2RRに対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。よって、急制動状態または急加速状態といった車輪2に所定のスリップ状態が発生する可能性が極めて高い状況において、即座に且つ確実に車輪2のグリップ性能を高めることができる。
次いで、すべて又はいずれかの車輪2FL〜2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角を付与した後に、更に各車輪2FL〜2RRのスリップ状態を判断するために、S8の処理では、S4の処理と同様に、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)を読み込んで、各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出する(S8)。
そして、S5の処理と同様に、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ1以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ1を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S9)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ1に達していない(λ<λ1)と判断される場合(S9:No)、マイナス方向(ネガティブ)に付与した所定のキャンバ角によって車輪2に十分なグリップ力が付与され、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(または解消)されていると判断できるので、計時回路71aに3秒間の計時を指示して(S10)、このスリップ制御処理を終了する。
これにより、所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪2または全ての車輪2に対して内側トレッド21の接地比率が増加するようにリンク駆動装置43を制御した後に、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(又は解消)されていると判断されれば、ABS制御装置82やトラクション制御装置83によってABS制御やトラクション制御が行われることを回避できるので、ABS制御やトラクション制御を行う回数を低減することができる。
よって、ABS制御による振動や音、トラクション制御による加速不足によって、搭乗者が違和感や不快感を感じることを抑制することができるので、車輪2にスリップが生じた場合に、ABS制御やトラクション制御による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができる。
また、S10の処理の結果、計時回路71aに3秒間の計時が指示されるので、後述するキャンバ解除処理(図12参照)において、計時回路71aによって3秒間の計時がなされた後に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角を0度に調整することができる。
一方、S9の処理の結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在すると判断される場合には(S9:Yes)、S6又はS7の処理によりマイナス方向へ所定のキャンバ角を付与して内側トレッド21の接地比率を増加させることで(図5参照)、車輪2の状態を図9に示す一点鎖線L21上の位置P6に遷移させたにも関わらず、かかる車輪2のスリップ率λがλ1を越えた、即ち、車輪2の状態が図9に示す一点鎖線L21に沿って遷移して位置P9を越えたということである。
よって、この場合には(S9:Yes)、ABS制御またはトラクション制御によりスリップの抑制を図る必要があるので、ブレーキペダルセンサ装置62aの出力結果(ブレーキペダル62の踏み込み量)から、車両1が制動時か否かを判断する(S11)。その結果、車両1が制動時であると判断される場合には(S11:Yes)、ABS制御装置82に対してABS制御の開始を指示する(S12)。そして、RAM73に設けられたABS制御中フラグ73aを「1」に設定して(S13)、このスリップ制御処理を終了する。
また、車両1が制動時でないと判断される場合には(S11:No)、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の開始を指示する(S14)。そして、RAM73に設けられたトラクション制御中フラグ73bを「1」に設定して(S15)、このスリップ制御処理を終了する。
これにより、S6又はS7の処理により、内側トレッド21の接地比率を増加させて車輪2のグリップ性能を高めたにもかかわらず、所定のスリップ状態にある車輪2が存在する場合には、車輪2に付与する制動力または駆動力を制御するABS制御またはトラクション制御を行うことによって、そのスリップの抑制を図ることができる。よって、車両1の安全性を高めることができる。
また、S13の処理の結果、ABS制御中フラグ73aが「1」に設定されるので、後述するスリップ解除検出処理(図10参照)において、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、ABS制御装置82に対してABS制御の終了を指示すると共に、3秒経過後に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
また、S15の処理の結果、トラクション制御中フラグ73bが「1」に設定されるので、後述するスリップ解除検出処理(図10参照)において、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の終了を指示すると共に、3秒経過後に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
次いで、図10を参照して、スリップ解除検出処理について説明する。図10は、スリップ解除検出処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したスリップ制御処理においてABS制御またはトラクション制御が開始された場合に、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されたか否かを判断し、スリップ状態が解消されていればABS制御またはトラクション制御を終了させる処理である。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
ここで、図10に示すスリップ解除検出処理の説明に際しては、図11を適宜参照する。図11は、スリップ率λと発生力Cとの関係を模式的に示す模式図であり、実線LLは、車両1の進行方向に発生する車輪2の縦力を示すグラフに、破線LWは、車両1の進行方向と直交する方向に発生する車輪2の横力を示すグラフに、それぞれ対応する。なお、λ1は、車輪2の縦力が最大となるスリップ率であり、λ3は、λ1よりも所定値だけ小さい値(λ3<λ1)である。
CPU71は、スリップ解除検出処理に関し、まず、ABS制御中フラグ73aの内容が「1」であるか否かを判断する(S21)。その結果、ABS制御中フラグ73aの内容が「1」であると判断される場合(S21:Yes)、ABS制御装置82においてABS制御が行われていると判断できるので、ABS制御によって車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されているか否かを判断するために、次いで、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)を読み込み、読み込んだ各車輪2FL〜2RRの車輪速から各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出する(S22)。
そして、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ3以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ3を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S23)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ3に達していない(λ<λ3)と判断される場合(S23:No)、ABS制御により車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていると判断できるので、ABS制御装置82に対してABS制御の終了を指示する(S24)。これにより、ABS制御装置82によるABS制御が終了される。
次いで、ABS制御中フラグ73aを「0」に設定する(S25)。これにより、CPU71は、ABS制御が行われていないことを判断することができるとともに、上述したスリップ制御処理(図8参照)において、再び車両1が急加速状態または急制動状態にあるか否か、および、所定のスリップ状態が生じている車輪2が存在するか否かを監視することができる。
これに対し、S23の処理の結果、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ3以上となった)車輪2が存在する、即ち、λ≧λ3を満たす車輪2が存在すると判断される場合には(S23:Yes)、S24以降の処理をスキップして、このスリップ解除検出処理を終了する。これにより、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されるまで、ABS制御装置82によるABS制御が継続して行われるので、車両の安全性を確保することができる。
一方、S21の処理の結果、ABS制御中フラグ73aの内容が「1」でない、即ち「0」であると判断される場合には(S21:No)、ABS制御装置82によるABS制御が行われていないと判断できるので、次いで、トラクション制御中フラグ73bの内容が「1」であるか否かを判断する(S26)。
その結果、トラクション制御中フラグ73bの内容が「1」でない、即ち「0」であると判断される場合(S26:No)、トラクション制御装置83によるトラクション制御も行われていないと判断できるので、このスリップ解除検出処理を終了する。
これに対し、S26の処理の結果、トラクション制御中フラグ73bの内容が「1」であると判断される場合(S26:Yes)、トラクション制御装置83においてトラクション制御が行われていると判断できるので、トラクション制御によって車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されているか否かを判断するために、S22の処理と同様に、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)を読み込んで、各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出する(S27)。
そして、S23の処理と同様に、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ3以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ3を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S28)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在すると判断される場合には(S28:Yes)、S29以降の処理をスキップして、このスリップ解除検出処理を終了する。これにより、車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されるまで、トラクション制御装置82によるトラクション制御が継続して行われるので、車両の安全性を確保することができる。
一方、S28の処理の結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ3に達していない(λ<λ3)と判断される場合(S28:No)、トラクション制御により車輪2に生じていた所定のスリップ状態が解消されていると判断できるので、トラクション制御装置83に対してトラクション制御の終了を指示する(S29)。これにより、トラクション制御装置83によるトラクション制御が終了される。
次いで、トラクション制御中フラグ73bを「0」に設定する(S30)。これにより、CPU71は、トラクション制御が行われていないことを判断することができるとともに、上述したスリップ制御処理(図8参照)において、再び車両1が急加速状態または急制動状態にあるか否か、および、所定のスリップ状態が生じている車輪2が存在するか否かを監視することができる。
そして、S25およびS30の処理の後、計時回路71aに3秒間の計時を指示して(S31)、このスリップ解除検出処理を終了する。これにより、後述するキャンバ解除処理(図12参照)において、計時回路71aによって3秒間の計時がなされた後に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角を0度に調整することができる。
次いで、図12を参照して、キャンバ解除処理について説明する。図12は、キャンバ解除処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したスリップ制御処理(図8参照)およびスリップ解除検出処理(図10参照)において計時回路71aに指示された、3秒間の計時の完了を通知する割り込みを検出した場合に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角を0度に調整する処理である。この処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
CPU71は、キャンバ解除処理に関し、まず、計時回路71aから計時完了の割り込みがあるか否かを判断する(S41)。その結果、計時完了の割り込みがないと判断される場合には(S41:No)、計時回路71aにおいて3秒間の計時が完了していないと判断できるので、その後の処理をスキップしてこのキャンバ解除処理を終了する。
一方、S41の処理の結果、計時完了の割り込みがあると判断される場合(S41:Yes)、計時回路71aにおいて3秒間の計時が完了していると判断できるので、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角が0度となるように、リンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御して(S42)、このキャンバ解除処理を終了する。
これにより、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角が0度に調整されるので、上述したように、車輪2の内側トレッド21の接地比率を低くでき、車輪2の転がり抵抗が大きくなることを回避することができる。よって、燃費の悪化を抑制して、燃費性能の向上を図ることができる。また、車輪2のキャンバ角が0度に調整されることで、車輪2にキャンバスラストが発生せず、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
また、上述したスリップ制御処理(図8参照)またはスリップ解除検出処理(図10参照)において車輪2に生じた所定のスリップ状態が解消されていると判断された場合に、計時手段71aによって3秒間計時され、その3秒間の計時完了後に、車輪2のキャンバ角が0度に調整されるので、所定のスリップ状態が解消されてからも、3秒間は高いグリップ性能を維持することができる。
これにより、その3秒間で、車輪2に生じるグリップ力によって車輪2のスリップ率を更に低下させることができる。よって、車輪2のキャンバ角を0度に調整して内側トレッド21の接地比率を減少させた場合に、車輪2のグリップ性能が低下することにより再び車輪2に所定のスリップ状態が生じることを抑制できる。
次いで、図13から図16を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車輪2のスリップを抑制するABS制御装置82やトラクション制御装置83(図7参照)を備えていると共に、車輪2に所定のスリップ状態が生じた場合、ABS制御装置82やトラクション制御装置83の作動を可能な限り回避して、ABS制御装置82やトラクション制御装置83による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができる制御装置100について説明した。これに対し、第2実施の形態では、車輪2の横方向(車両1の左右方向)のスリップを抑制す横滑り防止制御装置87(図13参照)を備えていると共に、車輪2において横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じた場合、横滑り防止制御装置87の作動を可能な限り回避して、横滑り防止制御装置87による違和感や不快感を抑制しつつ、その横方向(車両1の左右方向)のスリップの抑制を図ることができる制御装置200について説明する。
なお、本実施の形態において、上記第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、本実施の形態では、第1実施の形態における車両1を制御装置200によって制御するものとして説明する。
図13は、第2実施の形態における制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。この第2実施の形態における制御装置200において、上記第1実施の形態における制御装置100(図7参照)と相違する点は、RAM273がRAM73に代えて設けられている点、入出力ポート75には加速度センサ装置85、回転角速度センサ装置86および横滑り防止制御装置87がABS制御装置82およびトラクション制御装置83に代えて接続されている点である。
また、EEPROM72には、図14から図16に図示されるフローチャートのプログラムが、図8および図10に図示されるフローチャートのプログラムに代えて記憶されている。
なお、図12に図示されるフローチャート(キャンバ解除処理)のプログラムは、本実施の形態における制御装置200においてもEEPROM72に記憶され、制御装置200の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。そして、このキャンバ解除処理によって、第2実施形態における後述のスリップ制御処理(図14および図15参照)およびスリップ解除検出処理(図15参照)において計時回路71aに指示された、3秒間の計時の完了を通知する割り込みを検出した場合に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角が0度に調整される。
RAM273は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。このRAM273には、横滑り防止制御中フラグ273aが格納されている。
横滑り防止制御中フラグ273aは、横滑り防止制御装置87によって横滑り防止制御が行われているか否かを示すフラグであり、後述するスリップ制御処理(図14および図15参照)において、横滑り防止制御装置87に対して横滑り防止制御の開始が指示された場合に、横滑り防止制御を行っていることを示す「1」が設定され、後述するスリップ解除検出処理(図16参照)において、横滑り防止制御装置87に対して横滑り防止制御の終了が指示された場合に、横滑り防止制御を行っていないことを示す「0」が設定される。
CPU71は、横滑り防止制御中フラグ273aの内容に基づいて、横滑り防止制御装置87において横滑り防止制御が行われているか否かを判断することができる。そして、CPU71は、後述するスリップ制御処理(図14または図15参照)を実行中に、横滑り防止制御中フラグ273aの内容から横滑り防止制御装置87において横滑り防止制御が行われていないと判断される場合に、車両1が急旋回状態にあれば、又は、車輪2のいずれかにおいて横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていれば、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御し、高いグリップ性能を発揮させることができる。
更に、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御してもなお、車輪2のいずれかにおいて横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると推定される場合には、横滑り防止制御装置87に対して、横滑り防止制御の開始を指示することができる。
一方、CPU71は、後述するスリップ解除検出処理(図16参照)を実行中に、横滑り防止制御装置87において横滑り防止制御が行われていると判断される場合に、車輪2に生じていた横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消されていれば、横滑り防止制御装置87に対して横滑り防止制御の終了を指示すると共に、所定時間経過後(本実施の形態では、3秒経過後)に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
なお、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンされたとき(即ち、制御装置100の電源がオンされたとき)には、車両1は横滑り防止制御を行わないので、横滑り防止制御中フラグ273aには、初期値として「0」が設定される。
加速度センサ装置85は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後および左右方向加速度センサ85a,85bと、それら各加速度センサ85a,85bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後方向加速度センサ85aは車体フレームBF(図1参照)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ85bは車体フレームBFの左右方向(図1左右方向)の加速度(横加速度)を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ85a,85bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。また、前後方向加速度センサ85aにより検出される車体フレームBFの前後方向の加速度は、車両1が加速状態である場合に正の値で検出され、車両1が減速状態である場合に負の値で検出される。
CPU71は、後述するスリップ制御処理(図14および図15参照)およびスリップ解除検出処理(図16)を実行中に、左右方向加速度センサ81bの検出結果(横加速度の実測値)と、別に算出された横加速度の推定値とを比較し、横加速度の推定値が実測値よりも大きい場合に、車両1の旋回方向の外側に位置する車輪2(外輪)が横側にスリップして横滑りする横滑り状態であると判断することができる。
なお、CPU71は、横加速度の推定値Aを次のようにして求めることができる。まず、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)から車両1の推定車体速度(車速)Vを算出する。また、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の回転角)から車輪2の操舵角を算出して、その車輪2の操舵角から車両1の旋回半径Rを算出する。そして、車両1の推定車体速度(車速)Vと旋回半径Rとから、次の式(1)によって横加速度の推定値Aを算出できる。
A=V^2/R ・・・(1)
回転角速度センサ装置86は、車両1の回転角速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の中心を通り車両1の前後方向に沿う軸、左右方向に沿う軸および高さ方向に沿う軸の3つの軸を中心軸としてそれぞれ回転する車体フレームBFの回転角速度(ピッチレート、ロールレート、ヨーレート)を回転方向に対応付けて検出するジャイロセンサ86aと、そのジャイロセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、ジャイロセンサ86aがサニャック効果の原理を利用して動作する光ファイバジャイロにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを用いることは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式のジャイロセンサや圧電式のジャイロセンサ等が例示される。
CPU71は、後述するスリップ制御処理(図14および図15参照)およびスリップ解除検出処理(図16)を実行中に、ジャイロセンサ86aの検出結果(回転角速度)から読み込んだヨーレートの実測値と、別に算出されたヨーレートの推定値とを比較し、ヨーレートの推定値が実測値よりも大きい場合に、車両1の前進方向の前側(図1の矢印FWD側)に位置する車輪2(左右の前輪2FL,2FR)が外側にスリップして大回りするアンダステア状態であると判断することができる。
また、ヨーレートの推定値が実測値よりも小さい場合に、車両1の前進方向の後側(図1の反矢印FWD側)に位置する車輪2(左右の後輪2RL,2RR)が外側にスリップして小回りするオーバステア状態であると判断することができる。
なお、CPU71は、ヨーレートの推定値ωを、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)から算出された上述の車両1の推定車体速度(車速)Vと、ステアリングセンサ装置63の検出結果(ステアリング63の回転角)に基づいて算出された上述の旋回半径Rとから、次の式(2)によって算出できる。
ω=V/R ・・・(2)
横滑り防止制御装置87は、旋回時において、車輪2が横方向(車両1の左右方向)にスリップし、車両1がアンダステア状態、オーバステア状態、若しくは横滑り状態となることを抑制するために、車輪2に付与する駆動力および制動力を制御(横滑り防止制御)する既知の装置である。
本実施の形態では、上述したように、後述するスリップ制御処理(図14および図15参照)において、車両1が急旋回状態にあると判断され、または、車輪2のいずれかにおいて横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると判断されて、車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43を制御した後も、車輪2のいずれかにおいて横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると推定される場合に、横滑り防止制御装置87による横滑り防止制御が開始されるようになっている。
次いで、図14および図15を参照して、第2実施の形態におけるスリップ制御処理について説明する。図14および図15は、このスリップ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両1が急旋回状態にあると判断される場合、または、車輪2のいずれかにおいて横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、車輪2のスリップの抑制を図るための処理である。この処理は、制御装置200の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
なお、図14には、スリップ制御処理におけるS51からS62の処理について図示し、図15には、スリップ制御処理におけるS63からS69までの処理について図示している。
まず、図14を参照して、CPU71は、スリップ制御処理に関し、まず、RAM273に格納された横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「0」であるか否かを判断する(S51)。その結果、横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「0」でない、即ち「1」であると判断される場合(S51:No)、既に横方向(車両1の左右方向)のスリップを抑制するための制御(横滑り防止制御)がなされていると判断できるので、このスリップ制御処理を終了する(図15参照)。
一方、S51の処理の結果、横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「0」であると判断される場合(S51:Yes)、横滑り防止制御がなされていないと判断できるので、次いで、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の回転角)を読み込み、読み込んだステアリング63の回転角を時間微分してステアリング63の回転速度を算出する(S52)。
そして、算出したステアリング63の回転速度から、車両1が急旋回状態にあるか否かを判断する(S53)。その結果、車両1が急旋回状態にないと判断される場合には(S53:No)、次いで、各車輪2FL〜2RRにおいて横方向(車両1の左右方向)のスリップ状態を判断するために、回転角速度センサ装置86(ジャイロセンサ86a)の検出結果(ヨーレートの実測値)と、加速度センサ装置85(左右方向加速度センサ85b)の検出結果(横加速度の実測値)と、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の回転角)と、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)とをそれぞれ読み込む(S54)。
次に、読み込んだ各車輪2FL〜2RRの車輪速から車両1の推定車体速度(車速)Vを算出すると共に、ステアリング63の回転角に基づいて車両1の旋回半径Rを算出して、上述した式(1)および式(2)によって、横加速度(A)とヨーレート(ω)とを推定する(S55)。
そして、S55の処理で推定したヨーレートの推定値が、S54の処理で読み込んだヨーレートの実測値よりも大きいか否かを判断する(S56)。なお、本実施の形態では、各センサ装置の検出誤差およびCPU71による演算誤差を考慮し、ヨーレートの推定値と実測値との差が5%以内の場合は、推定値と実測値とが等しいものとして、S56の処理においてNoの分岐を進むようにしている。後述するS58、S65、及び図16に図示したスリップ解除検出処理のS74の処理においても、ヨーレートの推定値と実測値との差が5%以内の場合には、推定値と実測値が等しいものとして取り扱う。
S56の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも大きいと判断される場合には(S56:Yes)、左右の前輪2FL,2FRに所定のスリップ状態(横方向(車両1の左右方向)のスリップ)が発生して、車両1がアンダステア状態にあると判断し、左右の前輪2FL,2FRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL,FRアクチュエータ43FL,43FR)を制御する(S57)。そして、S60の処理へ移行する。
これにより、アンダステアの原因となっている左右の前輪2FL,2FRに対して、内側トレッド21の接地比率を増加させることができるので、内側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性によって得られる高いグリップ性能を前輪2FL,2RRに発揮させることができる。よって、前輪2FL,2FRのグリップ力を高めることができるので、前輪2FL,2FRに生じていた横方向(車両1の左右方向)のスリップの抑制を図ることができ、従って、アンダステアの抑制を図ることができる。
一方、S56の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも大きくないと判断される場合には(S56:No)、次いで、S55の処理で推定したヨーレートの推定値が、S54の処理で読み込んだヨーレートの実測値よりも小さいか否かを判断する(S58)。その結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも小さいと判断される場合には(S58:Yes)、左右の後輪2RL,2RRに所定のスリップ状態(横方向(車両1の左右方向)のスリップ)が発生して、車両1がオーバステア状態にあると判断し、左右の後輪2RL,2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(RL,RRアクチュエータ43RL,43RR)を制御する(S59)。そして、S60の処理へ移行する。
これにより、オーバステアの原因となっている左右の後輪2RL,2RRに対して、内側トレッド21の接地比率を増加させることができるので、内側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性によって得られる高いグリップ性能を後輪2RL,2RRに発揮させることができる。よって、後輪2RL,2RRのグリップ力を高めることができるので、後輪2RL,2RRに生じていた横方向(車両1の左右方向)のスリップの抑制を図ることができ、従って、オーバステアの抑制を図ることができる。
一方、S58の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも小さくないと判断される場合には(S58:No)、車両1がアンダステア状態にもオーバステア状態にもないと判断できるので、各車輪2FL〜2RRのキャンバ角を調整せずにS60の処理へ移行する。
次いで、S60の処理では、S55の処理で推定した横加速度の推定値が、S54の処理で読み込んだ横加速度の実測値よりも大きいか否かを判断する(S60)。なお、本実施の形態では、各センサ装置の検出誤差およびCPU71による演算誤差を考慮し、横加速度の推定値と実測値との差が5%以内の場合は、推定値と実測値とが等しいものとして、S60の処理においてNoの分岐を進むようにしている。また、後述するS66および図16に図示したスリップ解除検出処理のS75の処理においても、横加速度の推定値と実測値との差が5%以内の場合には、推定値と実測値が等しいものとして取り扱う。
S60の処理の結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きいと判断される場合には(S60:Yes)、車両1の旋回方向の外側に位置する車輪2(外輪)に所定のスリップ状態(横方向(車両1の左右方向)のスリップ)が発生して、車両1が横滑り状態にあると判断し、車輪2(外輪)に対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御する(S61)。そして、図3に図示したS63の処理へ移行する。
これにより、横滑りの原因となっている車輪2(外輪)に対して、内側トレッド21の接地比率を増加させることができるので、内側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性によって得られる高いグリップ性能を車輪2(外輪)に発揮させることができる。よって、車輪2(外輪)のグリップ力を高めることができるので、車輪2(外輪)に生じていた横方向(車両1の左右方向)のスリップの抑制を図ることができ、従って、横滑りの抑制を図ることができる。
これに対し、S60の処理の結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きくないと判断される場合には(S60:No)、車両1が横滑り状態にないと判断できるので、各車輪2FL〜2RRのキャンバ角を調整せずに、図3に図示したS63の処理へ移行する。
一方、S53の処理の結果、車両1が急旋回状態にあると判断される場合には(S53:Yes)、すべての車輪2FL〜2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御して(S62)、図3に図示したS63の処理へ移行する。
これにより、車両1が急旋回状態にあると判断される場合には、横方向(車両1の左右方向)に対して所定のスリップ状態にある車輪2が存在するか否かにかかわらず、即座にすべての車輪2FL〜2RRに対して第2トレッドの接地比率を増加させることができる。よって、急旋回状態といった車輪2において横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が発生する可能性が極めて高い状況で、即座に且つ確実に車輪2のグリップ性能を高めることができる。
次いで、図15を参照して、すべて又はいずれかの車輪2FL〜2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角を付与した後に、更に各車輪2FL〜2RRにおける横方向(車両1の左右方向)のスリップ状態を判断するために、S63の処理では、S54の処理(図14参照)と同様に、各センサ装置から、ヨーレートの実測値、横加速度の実測値、ステアリング63の回転角、各車輪2FL〜2RRの車輪速をそれぞれ読み込む(S63)。
そして、S55の処理(図14参照)と同様に、車両1の推定車体速度(車速)Vと車両1の旋回半径Rを算出して、上述した式(1)および式(2)によって、横加速度(A)とヨーレート(ω)とを推定する(S64)。
そして、S64の処理で推定したヨーレートの推定値が、S63の処理で読み込んだヨーレートの実測値と等しい(推定値と実測値との差が5%以内)か否かを判断する(S65)。その結果、ヨーレートの推定値が実測値と等しいと判断される場合には(S65:Yes)、次いで、S64の処理で推定した横加速度の推定値が、S63の処理で読み込んだ横加速度の実測値よりも大きいか否かを判断する(S66)。
その結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きくないと判断される場合には(S66:No)、マイナス方向(ネガティブ)に付与された所定のキャンバ角によって得られた車輪2の十分なグリップ力によって、車輪2FL〜2RRにおける横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が抑制(または解消)され、車両1におけるアンダステア、オーバステア、及び横滑りが抑制されたと判断できるので、次いで、計時回路71aに3秒間の計時を指示して(S69)、このスリップ制御処理を終了する。
これにより、横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪2または全ての車輪2に対して、内側トレッド21の接地比率が増加するようにリンク駆動装置43を制御した後に、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(又は解消)されていると判断されれば、横滑り防止制御装置87によって横滑り防止制御が行われることを回避できるので、結果として横滑り防止制御を行う回数を低減することができる。
よって、横滑り防止制御による振動、音、加速不足などによって、搭乗者が違和感や不快感を感じることを抑制することができるので、車輪2に横方向(車両1の左右方向)のスリップが生じた場合に、横滑り防止制御による違和感や不快感を抑制しつつ、横方向(車両1の左右方向)のスリップを抑制しつつ、車両1におけるアンダステア、オーバステア、及び横滑りの抑制を図ることができる。
また、S69の処理の結果、計時回路71aに3秒間の計時が指示されるので、図12に図示したキャンバ解除処理において、計時回路71aによって3秒間の計時がなされた後に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角を0度に調整することができる。
一方、S65の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値と等しくないと判断される場合(S65:No)、及び、S66の処理の結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きいと判断される場合(S66:Yes)には、いずれか又はすべての車輪2対してマイナス方向に所定のキャンバ角となるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を調整したにもかかわらず、いずれかの車輪2において横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じ、車両1がアンダステア状態、オーバステア状態、または横滑り状態にあると判断できるので、横滑り防止制御装置87に対して、横滑り防止制御の開始を指示する(S67)。
これにより、内側トレッド21の接地比率を増加させて車輪2のグリップ性能を高めたにもかかわらず、横方向(車両1の左右方向)において所定のスリップ状態にある車輪2が存在する場合には、車輪2に付与する制動力または駆動力を制御する横滑り防止制御を行うことによって、そのスリップ状態の抑制を図ることができる。これにより、車両1の安全性を高めることができる。
S67の処理の後、RAM273に設けられた横滑り防止制御中フラグ273aを「1」に設定して(S68)、このスリップ制御処理を終了する。これにより、後述するスリップ解除検出処理(図16参照)において、車輪2に生じていた横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消されていれば、横滑り防止制御装置87に対して横滑り防止制御の終了を指示すると共に、3秒経過後に車輪2のキャンバ角を0度に調整するために、計時回路71aに対して3秒の計時を指示することができる。
次いで、図16を参照して、第2実施の形態におけるスリップ解除検出処理について説明する。図16は、このスリップ解除検出処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したスリップ制御処理において横滑り防止制御を開始した場合に、車輪2に生じていた横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消されたか否かを判断し、スリップ状態が解消されていれば横滑り防止制御を終了させる処理である。この処理は、制御装置200の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
CPU71は、スリップ解除検出処理に関し、まず、横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「1」であるか否かを判断する(S71)。その結果、横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「1」でない、即ち「0」であると判断される場合(S71:No)、横滑り防止制御装置87による横滑り防止制御が行われていないと判断でき、従って、車輪2に横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が発生していないと推定できるので、このスリップ解除検出処理を終了する。
一方、S71の処理の結果、横滑り防止制御中フラグ273aの内容が「1」であると判断される場合(S71:Yes)、横滑り防止制御装置87において横滑り防止制御が行われていると判断できる。そこで、横滑り防止制御によって車輪2に生じていた横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消されているか否かを判断するために、次いで、各車輪2FL〜2RRにおいて横方向(車両1の左右方向)のスリップ状態を判断するために、回転角速度センサ装置86(ジャイロセンサ86a)の検出結果(ヨーレートの実測値)と、加速度センサ装置85(左右方向加速度センサ85b)の検出結果(横加速度の実測値)と、ステアリングセンサ装置63aの検出結果(ステアリング63の回転角)と、車輪速センサ装置81(FL〜RR車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)とをそれぞれ読み込む(S72)。
次に、読み込んだ各車輪2FL〜2RRの車輪速から車両1の推定車体速度(車速)Vを算出すると共に、ステアリング63の回転角に基づいて車両1の旋回半径Rを算出して、上述した式(1)および式(2)によって、横加速度(A)とヨーレート(ω)とを推定する(S73)。
そして、S73の処理で推定したヨーレートの推定値が、S72の処理で読み込んだヨーレートの実測値と等しい(推定値と実測値との差が5%以内)か否かを判断する(S74)。その結果、ヨーレートの推定値が実測値と等しいと判断される場合には(S74:Yes)、次いで、S73の処理で推定した横加速度の推定値が、S72の処理で読み込んだ横加速度の実測値よりも大きいか否かを判断する(S75)。
その結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きくないと判断される場合には(S75:No)、横滑り防止制御により車輪2FL〜2RRにおける横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消され、車両1におけるアンダステア、オーバステア、及び横滑りが抑制されたと判断できるので、次いで、横滑り防止制御装置87に対して横滑り防止制御の終了を指示する(S76)。これにより、横滑り防止制御装置87による横滑り防止制御が終了される。
そして、横滑り防止制御中フラグ273aを「0」に設定する(S77)。これにより、CPU71は、横滑り防止制御が行われていないことを判断することができるとともに、上述したスリップ制御処理(図14および図15参照)において、再び車両1が急旋回状態にあるか否か、および、車輪2において横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じているか否かを監視することができる。
更に、計時回路71aに3秒間の計時を指示して(S78)、このスリップ解除検出処理を終了する。これにより、図12に図示したキャンバ解除処理において、計時回路71aによって3秒間の計時がなされた後に、すべての車輪2FL〜2RRのキャンバ角を0度に調整することができる。
これに対し、S74の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値と等しくないと判断される場合(S74:No)、及び、S75の処理の結果、横加速度の推定値が実測値よりも大きいと判断される場合には(S75:Yes)、いずれかの車輪2において横方向(車両1の左右方向)に所定のスリップ状態が生じており、引き続き車両1がアンダステア状態、オーバステア状態、または横滑り状態にあると判断できるので、以降の処理をスキップして、このスリップ解除検出処理を終了する。
これにより、車輪2における横方向(車両1の左右方向)の所定のスリップ状態が解消されるまで、横滑り防止制御装置87による横滑り防止制御が継続して行われるので、車両の安全性を確保することができる。
次いで、図17及び図18を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車輪2のキャンバ角をマイナス方向へ調整するタイミングを可能な限り遅らせて、燃費性能の向上を図るように構成される場合を説明したが、第3実施の形態では、車輪2に予めマイナス方向へのキャンバ角を付与することで、安全性の向上を図るように構成されている。なお、本実施の形態において、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、本実施の形態では、第1実施の形態における車両1を制御装置200によって制御するものとして説明する。
図17は、第3実施の形態におけるスリップ制御処理を示すフローチャートであり、第1実施の形態の場合と同様に、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
ここで、図17に示す第3実施の形態におけるスリップ制御処理の説明に際しては、図18を適宜参照する。図18は、スリップ率λと制動力Fとの関係を模式的に示す模式図である。なお、図18において、λ2は、一点鎖線L21と破線L22とが分岐する分岐点におけるスリップ率である。
第3実施の形態では、上述した第1実施の形態の場合と同様に、まず、S1からS4の処理を実行し、各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出した後(S4)、次いで、これら算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ2以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ2を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S305)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ2に達していない(λ<λ2)と判断される場合(S305:No)、車両1が急加速状態でも急制動状態でもなく、且つ、各車輪2FL〜2RRにおいて所定のスリップ状態が生じていないため、スリップの抑制を図るための制御を行う必要がなく、よって、このスリップ制御処理を終了する。
一方、S305の処理の結果、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ2以上となった)車輪2が存在する、即ち、λ≧λ2を満たす車輪2が存在すると判断される場合には(S305:Yes)、そのスリップしている(λ≧λ2を満たす)車輪2に対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御して(S6)、S8の処理へ移行する。
これにより、所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪2に対して内側トレッド21の接地比率を増加させることができるので、内側トレッド21の軟らかい特性による影響を大きくして、内側トレッド21の特性によって得られる性能、即ち高いグリップ性能を車輪2に発揮させることができる。よって、車輪2のグリップ力を高めることができるので、車輪2に生じていたスリップの抑制を図ることができる。
即ち、S305の処理において、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ2以上)と判断された車輪2は、キャンバ角が0度に調整されているので(図6参照)、このキャンバ角を、スリップ率λがλ2の時点で予めマイナス方向へ所定のキャンバ角へ調整しておくことで(図5参照)、その後、スリップ率λが増加される場合には、車輪2の状態を図18に示す一点鎖線L21上で遷移させることができる。その結果、車輪2のグリップ力(制動力F)を高めて、車輪2に生じるスリップの抑制を図ることができる。
このように、本実施の形態では、スリップ率λがλ2に達した時点で予め車輪2のキャンバ角をマイナス方向(高グリップ側)へ調整しておく、即ち、見込み制御的に、車輪2にマイナス方向のキャンバ角を付与しておくことができるので、その後、スリップ率λが急激に増加した場合であっても、破線L22上から一点鎖線L21上へ車輪2の状態を遷移させる必要がないので、応答遅れを生じさせることなく、内側トレッド21の高グリップ性能を利用して、スリップの抑制を図ることができる。
S8の処理では、第1実施の形態の場合と同様に、各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出する(S8)。そして、S305の処理と同様に、算出した各車輪2FL〜2RRのスリップ率をそれぞれ確認して、各車輪2FL〜2RRのうち、所定のスリップ状態にある(スリップ率λがλ2以上となった)車輪2が存在するか否か、即ち、λ≧λ2を満たす車輪2が存在するか否かを判断する(S309)。
その結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在しない、即ち、車輪2のスリップ率λがλ2に達していない(λ<λ2)と判断される場合(S309:No)、マイナス方向(ネガティブ)に付与した所定のキャンバ角によって車輪2に十分なグリップ力が付与され、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(または解消)されていると判断できるので、計時回路71aに3秒間の計時を指示して(S10)、このスリップ制御処理を終了する。
一方、S309の処理の結果、所定のスリップ状態にある車輪2が存在すると判断される場合には(S309:Yes)、スリップ率λがλ2に達した時点で予めマイナス方向へ所定のキャンバ角を車輪2に付与することで、車輪2の状態が図18に示す一点鎖線L21上を遷移するようにした(即ち、内側トレッド21の接地比率を高めて、グリップ力を確保した)にも関わらず、かかる車輪2のスリップ率λがλ1を越えた、即ち、車輪2の状態が図18に示す一点鎖線L21に沿って遷移して位置P309を越えたということである。
よって、この場合には(S309:Yes)、ABS制御またはトラクション制御によりスリップの抑制を図る必要があるので、S11の処理へ移行する。なお、S11以降の処理は第1実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
次いで、図19及び図20を参照して、第4実施の形態について説明する。第2実施の形態では、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRのキャンバ角が調整可能に構成されると共に車輪2が内側トレッド21及び外側トレッド22の2種類のトレッドを有して構成される車両1に対して、横滑り防止制御装置87の作動を可能な限り回避しつつ、横方向(車両1の左右方向)のスリップの抑制を図る場合を説明したが、第4実施の形態では、後輪402RL,402RRのみのキャンバ角が調整可能に構成されると共に前輪402FL,402FR及び後輪402RL,402RRがそれぞれ1種類のトレッド(前輪トレッド421、後輪トレッド422)から構成される車両401に対して、横滑り防止制御装置87の作動を可能な限り回避しつつ、横方向(車両401の左右方向)のスリップの抑制を図る。
なお、本実施の形態において、上記各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、本実施の形態では、図19に示す車両401を図11に示す制御装置200によって制御するものとして説明する。
図19は、第4実施の形態における車両401の上面視を模式的に示した模式図である。この車両401において、第1実施の形態における車両1と相違する点は、車両1では前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRの4輪がキャンバ角を調整可能に構成されたのに対し、車両401では後輪402RL,402RRの2輪のみがキャンバ角を調整可能とされる点、車両1では前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRが同じ特性の車輪として構成されたのに対し、車両401では前輪402FL,402FRと後輪402RL,402RRとが異なる特性を有する車輪として構成される点である。
図19に示すように、前輪402FL,402FRには、1種類のトレッド(前輪トレッド421)のみが設けられ、同様に、後輪402RL,402RRには、1種類のトレッド(後輪トレッド422)のみが設けられている。前輪トレッド421は、後輪トレッド422よりもグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成されると共に、後輪トレッド422は、前輪トレッド421よりも転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗特性)に構成されている。
これにより、通常走行時には、後輪2RL,2RRの後輪トレッド422が低転がり抵抗特性に構成されていることで、その分、燃費性能の向上を図ることができる。また、制動時には、前輪402FL,402FRが支配的となるところ、その前輪トレッド421が高グリップ特性に構成されていることで、制動性能を効果的に向上させることができる。一方、旋回時には、後述するように後輪402RL,402RRにマイナス方向への所定のキャンバ角が付与されることで、後輪402RL,402RRに横力(キャンバスラスト)を発揮させることができると共に車体ロール時の路面に対する後輪トレッド422の接地面の適正化を得ることができるので、前輪402FL,402FRと後輪402RL,402RRとのグリップ力をバランスさせることができ、その分、旋回性能の向上を図ることができる。
なお、本実施の形態において、後輪402RL,402RRのキャンバ角は、上記各実施の形態の場合と同様に、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンされると0度に調整される。これにより、車両401の燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図20を参照して、第4実施の形態におけるスリップ制御処理について説明する。図20は、第4実施の形態におけるスリップ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両401が急旋回状態にあると判断される場合、または、前後輪402FL〜402RRのいずれかにおいて横方向(車両401の左右方向)に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前後輪402FL〜402RRのスリップの抑制を図るための処理である。この処理は、制御装置200の電源が投入されている間、CPU71により繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される。
なお、本実施の形態では、第2実施の形態で説明した図14に対応する処理について図20に図示し、図15に対応する処理については第2実施の形態と同様であるのでその図示を省略する。
また、本実施の形態では、この車両401を第2実施の形態における制御装置200によって制御するものとして説明する。即ち、第4実施の形態では、第2実施の形態と同様に、入出力ポート75に加速度センサ装置85、回転角速度センサ装置86および横滑り防止制御装置87が接続されている。
図20に示すように、CPU71は、スリップ制御処理に関し、第2実施の形態の場合と同様に、S51からS56の各処理を実行し、S55の処理で推定したヨーレートの推定値が、S54の処理で読み込んだヨーレートの実測値よりも大きいか否かを判断する(S56)。
S56の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも大きいと判断される場合には(S56:Yes)、左右の前輪2FL,2FRに所定のスリップ状態(横方向(車両1の左右方向)のスリップ)が発生して、車両401がアンダステア状態にあると判断される。
この場合(S56:Yes)、アンダステアを抑制するためには前輪402FL,402FRのグリップを増加させることが必要であり、後輪402FL〜402RRのキャンバ角を調整することは無駄な動作となるため、キャンバ角を0度に維持しつつ、S60の処理へ移行する。これにより、後輪402RL,402RRにキャンバスラストが発生せず、その分、燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S56の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも大きくないと判断される場合には(S56:No)、次いで、S55の処理で推定したヨーレートの推定値が、S54の処理で読み込んだヨーレートの実測値よりも小さいか否かを判断する(S58)。その結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも小さいと判断される場合には(S58:Yes)、左右の後輪402RL,402RRに所定のスリップ状態(横方向(車両1の左右方向)のスリップ)が発生して、車両401がオーバステア状態にあると判断し、左右の後輪402RL,402RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(RL,RRアクチュエータ43RL,43RR)を制御する(S59)。そして、S60の処理へ移行する。
これにより、オーバステアの原因となっている左右の後輪402RL,402RRに対して、マイナス方向に所定のキャンバ角を付与して、接地面の適正化を得ると共に、キャンバスラストを発生させることができる。よって、後輪402RL,402RRのグリップ力を高めることができるので、後輪402RL,402RRに生じていた横方向(車両401の左右方向)のスリップの抑制を図ることができ、従って、オーバステアの抑制を図ることができる。
一方、S58の処理の結果、ヨーレートの推定値が実測値よりも小さくないと判断される場合には(S58:No)、車両401がアンダステア状態にもオーバステア状態にもないと判断できるので、各車輪402FL〜402RRのキャンバ角を調整せずにS60の処理へ移行する。
一方、S53の処理の結果、車両1が急旋回状態にあると判断される場合には(S53:Yes)、キャンバ角を調整可能な全ての車輪、即ち、後輪402RL,402RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(RL,RRアクチュエータ43RL,43RR)を制御して(S462)、S63の処理(図15参照)へ移行する。
これにより、車両401が急旋回状態にあると判断される場合には、横方向(車両1の左右方向)に対して所定のスリップ状態にある車輪402が存在するか否かにかかわらず、即座にキャンバ角を調整可能なすべての車輪(即ち、後輪402RL,402RR)に対して、マイナス方向に所定のキャンバ角を付与することで、接地面の適正化を得ると共に、キャンバスラストを発生させることができる。よって、急旋回状態といった車輪2において横方向(車両401の左右方向)に所定のスリップ状態が発生する可能性が極めて高い状況で、即座に且つ確実に車輪(後輪402RL,402RR)のグリップ性能を高めることができる。
なお、請求項1に記載のキャンバ制御手段としては、図8及び図17に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS6,S7の処理と、図12に示すフローチャート(キャンバ解除処理)におけるS42の処理と、図14および図15に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS57,S59,S61,S62の処理とが該当する。
スリップ発生判断手段としては、図8に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS5,S9の処理と、図14および図15に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS56,S58,S60,S65,S66の処理と、図18に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS305,S309の処理とが該当する。
請求項2に記載の車両状態判断手段としては、図8及び図17に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS3の処理と、図14および図15に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS53との処理が該当する。
請求項4に記載のスリップ解消判断手段としては、図8に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS9の処理と、図10に示すフローチャート(スリップ解除検出処理)におけるS23,S28の処理と、図14および図15に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS65,S66の処理と、図16に示すフローチャート(スリップ解除検出処理)におけるS74,S75の処理と、図17に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS309の処理とが該当する。
請求項5から7に記載の車両速度検出手段、旋回半径検出手段、ヨーレート推定手段および横加速度推定手段は、図14および図15に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS55の処理が該当する。
また、請求項8に記載のキャンバ制御手段としては、図20に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS59,S61,S462が該当する。スリップ発生判断手段としては、図20に示すフローチャート(スリップ制御処理)におけるS56,S58,S60の処理とが該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
上記各実施の形態では、車輪2において、内側トレッド21が外側トレッド22に比して軟らかい(ゴム硬度の低い)特性を持つ場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外側トレッド22が内側トレッド21に比して軟らかい(ゴム硬度の低い)特性を持つようにしてもよい。この場合、車両1が急加速状態、急制動状態または急旋回状態であると判断されるとき、もしくは、車輪2の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるときには、車輪2に対してプラス方向(ポジティブ)にキャンバ角を調整すれば、外側トレッド22の軟らかい(ゴム硬度の低い)特性によって得られる性能(高いグリップ性能)を発揮させることができる。
また、上記各実施の形態では、車輪2を内側トレッド21及び外側トレッド22の2種類のトレッドにより構成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内側トレッド21及び外側トレッド22に加え、内側トレッド21及び外側トレッド22の特性とは異なる特性に構成される第3トレッドを備えていても良い。この場合、第3トレッドを内側トレッド21に比して更に軟らかい特性とする構成であれば、かかる第3トレッドを内側トレッド21よりも車両1の内側に配置することで、車輪2の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるときに、その所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪2において、更に高いグリップ性能を発揮させることができる。
上記各実施の形態では、車両1が急加速状態、急制動状態または急旋回状態にある場合、または、車輪2の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じている場合に、すべて又はいずれかの車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御する場合について説明したが、この場合、すべて又はいずれかの車輪2に対してマイナス方向(ネガティブ)に調整可能な最大のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御してもよい。これにより、内側トレッド21の接地比率を可能な限り最大にすることができ、マイナス方向(ネガティブ)に調整可能な最大のキャンバ角が付与された車輪2は、可能な限り最も高いグリップ性能を得ることができる。また、その車輪2には、最大のキャンバスラストが発生するので、より一層のグリップ力の向上を図ることができるという効果がある。
上記各実施の形態では、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(または解消)されていると判断されると、各車輪2FL〜2RRのキャンバ角が0度となるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内側トレッド21の接地比率が減少する側に、予め設定された初期値となるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御してもよい。
例えば、マイナス方向(ネガティブ)に調整された各車輪2FL〜2RRのキャンバ角を所定の角度(初期値)まで減らすようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御してもよい。また、各車輪2FL〜2RRのキャンバ角がプラス方向(ポジティブ)のキャンバ角(初期値)となるようにリンク駆動装置43を制御してもよい。これらによっても、車輪2において所定のスリップ状態が抑制(または解消)されたときには、内側トレッド21の軟らかい特性(ゴム硬度の低い特性)の影響を小さくすることができる。よって、各車輪2FL〜2RRのキャンバ角が転がり抵抗を小さくすることができ、燃費性能の向上を図ることができる。
上記第1及び第3実施の形態では、所定のスリップ状態が生じた車輪2に対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、左右の前輪2FL,2RRのどちらか一方に所定のスリップ状態が生じた場合、左右の前輪2FL,2RRのいずれにもマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL,FRアクチュエータ43FL,43FR)を制御してもよい。
また、左右の後輪2RL,2RRのどちらか一方に所定のスリップ状態が生じた場合、左右の後輪2RL,2RRのいずれにもマイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(RL,RRアクチュエータ43RL,43RR)を制御してもよい。
更に、車輪2FL〜2RRのいずれかに所定のスリップ状態が生じた場合に、全ての車輪2FL〜2RRに対して、マイナス方向(ネガティブ)に所定のキャンバ角が付与されるようにリンク駆動装置43(FL〜RRアクチュエータ43FL〜43RR)を制御してもよい。これらにより、車輪2に生じるキャンバスラストが左の車輪2FL,2RLと右の車輪2FR,2RRとの間で釣り合うので、車両1の直進性を保つことができる。
上記第1及び第3実施の形態では、車輪速センサ装置81(車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)から車両1の推定車体速度(車速)を算出し、その推定車輪速度と各車輪2FL〜2RRの車輪速とから各車輪2FL〜2RRのそれぞれのスリップ率を算出して、その各車輪2FL〜2RRのスリップ率を比較することにより所定のスリップ状態が生じている車輪2が存在するか否かを判断する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車輪速センサ装置81(車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)を基に各車輪2FL〜2RRの車輪速を比較し、他の車輪と比較して車輪速が異常に大きい車輪が存在する場合、その車輪において所定のスリップ状態が生じていると判断してもよい。これにより、制御を簡素化することでき、制御負荷の軽減を図ることができる。
上記第2及び第4実施の形態では、車輪速センサ装置81(車輪速センサ81FL〜81RR)の検出結果(各車輪2FL〜2RRの車輪速)より車両1,401の推定車体速度(車速)を算出してから、ヨーレートや横加速度の推定値を算出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、加速度センサ装置81(前後方向加速度センサ81a及び左右方向加速度センサ81b)の検出結果(加速度)を時間積分して2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ得て、かかる2方向の速度成分を合成することで車両1の推定車体速度(車速)を算出してから、ヨーレートや横加速度の推定値を算出してもよい。
上記第4実施の形態では、車両401を第2実施の形態における車両1と同様に構成し(即ち、FL,FRアクチュエータ43FL,43FRを備える)、これらFL,FRアクチュエータ43FL,43FRを非作動とする(固定する)ことで、後輪402RL,402RRのみのキャンバ角を調整する構成としたが、必ずしもこれに限られるものではなく、FL,FRアクチュエータ43FL,43FRを備えない(省略した)構成としても良い。これにより、部品点数を削減して、部品コストの削減と軽量化とを図ることができる。
上記第4実施の形態では、前輪402FL,402FRと後輪402RL,402RRとが異なる特性を有する車輪とするために、前輪トレッド421と後輪トレッド422とを異なるゴム特性とする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、トレッドのゴム特性を異ならせる手法に代えて、或いは、トレッドのゴム特性を異ならせる手法に加えて、他の手法を採用することは当然可能である。
他の手法としては、例えば、第1に、前輪402FL,402FRの空気圧を後輪402RL,402RRの空気圧よりも低圧とする手法、第2に、前輪402FL,402FRのトレッド幅を後輪402RL,402RRのトレッド幅よりも広くする手法、第3に、前輪402FL,402FRのトレッドパターンを後輪402RL,402RRのトレッドパターンよりも高グリップ特性のパターンとする手法(例えば、前輪402FL,402FRをラグタイプ又はブロックタイプとし、後輪402RL,402RRをリブタイプとする)、第4に、前輪402FL,402FRのトレッドの厚みを後輪402RL,402RRのトレッドの厚みよりも大きくする手法、第5に、これら第1から第4の手法および第4実施の形態における手法(ゴム特性を異ならせる手法)を組み合わせる、などの手法が例示される。
以下に、本発明の変形例を示す。グリップ力又は転がり抵抗の異なる複数のトレッドを有する車輪若しくはグリップ力又は転がり抵抗が異なる複数の車輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両に用いられる制御装置であって、前記キャンバ角調整装置を制御するキャンバ制御手段と、前記車輪に所定のスリップ状態が生じているか否かを判断するスリップ発生判断手段と、そのスリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、そのスリップ状態を抑制するように車輪に付与する駆動力または制動力を制御するスリップ抑制制御手段と、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、前記車両のヨーレートを実測するヨーレート実測手段と、前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両のヨーレートを推定するヨーレート推定手段とを備え、前記スリップ発生判断手段は、前記ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートが前記ヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも小さい場合に、前記車輪のうち前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に対して少なくともキャンバ角が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする制御装置1。
制御装置1において、前記車輪は、前輪および後輪を有し、前記前輪が後輪に比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、前記後輪が前輪に比して転がり抵抗の小さい特性に構成され、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に対して少なくともマイナス方向へキャンバ角が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする制御装置2。
前輪および後輪を有する車輪と、前記車輪の内の後輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両であって、前記前輪が後輪に比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、前記後輪が前輪に比して転がり抵抗の小さい特性に構成される車両に用いられる制御装置であって、前記キャンバ角調整装置を制御するキャンバ制御手段と、前記車輪に所定のスリップ状態が生じているか否かを判断するスリップ発生判断手段と、そのスリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、そのスリップ状態を抑制するように車輪に付与する駆動力または制動力を制御するスリップ抑制制御手段とを備え、前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車輪の内の後輪に対して少なくともマイナス方向へキャンバ角が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする制御装置3。
制御装置3によれば、キャンバ制御手段によりキャンバ角調整装置を制御して、後輪のキャンバ角を調整することができるので、後輪に横力(キャンバスラスト)を発揮させることができると共に車体ロール時の路面に対する後輪の接地面を適正化することができるので、グリップ性能の向上を図ることできるという効果がある。
ここで、本発明の制御装置が用いられる車両は、前輪が後輪に比してグリップ力の高い特性に構成されると共に、後輪が前輪に比して転がり抵抗の小さい特性に構成されるので、通常走行時には、後輪の低転がり抵抗特性により、燃費性能の向上を図ることができる。一方、制動時には、前輪が支配的となるところ、その前輪が高グリップ特性に構成されていることで、制動性能を効果的に向上させることができる。
この場合、旋回時には、後輪のグリップ力が前輪のグリップ力に対して不足するため、オーバステア傾向となるが、本発明によれば、上述したように、キャンバ制御手段により後輪にマイナス方向への所定のキャンバ角を付与して、後輪のグリップ性能の向上を図ることができるので、前輪と後輪とのグリップ力をバランスさせることができ、その分、旋回性能の向上を図ることができる。
また、本発明の制御装置によれば、スリップ発生判断手段により車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、キャンバ制御手段は、車輪に付与する駆動力または制動力がスリップ抑制制御手段によって制御される前に、後輪に対して少なくともマイナス方向へキャンバ角が増加するようにキャンバ角調整装置を制御する構成であるので、車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断されるときには、後輪にキャンバスラストを発揮させることで、スリップの抑制を図ることができるという効果がある。
更に、後輪のキャンバ角をキャンバ制御手段により制御することで、車輪に生じていた所定のスリップ状態が解消されていれば、スリップ抑制制御手段によって車輪に付与する駆動力または制動力が制御されることを回避できるので、スリップ抑制制御手段による制御回数を低減することができる。
一般的に、スリップ抑制制御手段による駆動力や制動力の制御は、加速不足、振動、音などによって、搭乗者に対して違和感や不快感を与える原因となっている。本発明の制御装置によれば、上述したように、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ抑制手段による制御回数を低減できるので、車輪に付与する制動力や駆動力を制御するスリップ抑制制御手段による違和感や不快感を抑制することができる。その結果、車輪にスリップが生じた場合に、スリップ制御手段による違和感や不快感を抑制しつつ、そのスリップの抑制を図ることができるという効果がある。
本発明の第1実施の形態における制御装置が搭載される車両の上面視を模式的に示した模式図である。 懸架装置の正面図である。 懸架装置の正面図である。 車両の上面視を模式的に示した模式図である。 車両の正面視を模式的に示した模式図である。 車両の正面視を模式的に示した模式図である。 制御装置の電気的構成を示したブロック図である。 スリップ制御処理を示すフローチャートである。 スリップ率と制動力との関係を模式的に示す模式図である。 スリップ解除検出処理を示すフローチャートである。 スリップ率と発生力との関係を模式的に示す模式図である。 キャンバ解除処理を示すフローチャートである。 第2実施の形態における制御装置の電気的構成を示したブロック図である。 スリップ制御処理を示すフローチャートである。 スリップ制御処理を示すフローチャートである。 スリップ解除検出処理を示すフローチャートである。 第3実施の形態におけるスリップ制御処理を示すフローチャートである。 スリップ率と制動力との関係を模式的に示す模式図である。 第4実施の形態における車両の上面視を模式的に示した模式図である。 第4実施の形態におけるスリップ制御処理を示すフローチャートである。
符号の説明
100,200 制御装置
1,401 車両
2 車輪
2FL,402FL 左の前輪(車輪)
2FR,402FR 右の前輪(車輪)
2RL,402RL 左の後輪(車輪)
2RR,402RR 右の後輪(車輪)
21 内側トレッド(第2トレッド)
22 外側トレッド(第1トレッド)
4 懸架装置(キャンバ角調整装置)
43FL〜43RR FL〜RRアクチュエータ(キャンバ角調整装置)
82 ABS制御装置(スリップ抑制制御手段)
83 トラクション制御装置(スリップ抑制制御手段)
84 横滑り防止制御装置(スリップ抑制制御手段)
85 加速度センサ装置(横加速度実測手段)
85a 左右方向加速度センサ(横加速度実測手段)
86 回転角速度センサ装置(ヨーレート実測手段)

Claims (7)

  1. 車輪と、その車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置とを備えた車両であって、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドに対して前記車輪の幅方向に並設されると共に前記車両の内側又は外側に配置され且つ前記第1トレッドに比して高いグリップ特性に構成された第2トレッドとを少なくとも有する車両に用いられる制御装置であって、
    前記キャンバ角調整装置を制御するキャンバ制御手段と、
    前記車輪に所定のスリップ状態が生じているか否かを判断するスリップ発生判断手段と、
    そのスリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、そのスリップ状態を抑制するように車輪に付与する駆動力または制動力を制御するスリップ抑制制御手段とを備え、
    前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車輪の少なくとも1輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、少なくとも前記スリップ発生手段により前記所定のスリップ状態が生じていると判断された車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする制御装置。
  2. 前記車輪に付与される制動力、駆動力または操舵角に基づいて、前記車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあるか否かを判断する車両状態判断手段を備え、
    前記キャンバ制御手段は、前記車両状態判断手段により前記車両が急制動状態、急加速状態または急旋回状態にあると判断される場合に、前記スリップ発生判断手段による判断にかかわらず、前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記スリップ抑制制御手段は、前記キャンバ制御手段により前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置が制御された後に前記スリップ発生判断手段により前記車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、車輪に付与する駆動力または制動力を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
  4. 前記車輪に生じた前記所定のスリップ状態が解消されているか否かを判断するスリップ解消判断手段と、
    そのスリップ解消判断手段により前記所定のスリップ状態が解消されていると判断される場合に、予め設定された所定時間を計時する計時手段とを備え、
    前記キャンバ制御手段は、前記スリップ解消判断手段により前記所定のスリップ状態が解消されていると判断され且つ前記計時手段により前記所定時間が計時された場合に、前記第2トレッドの接地比率が減少する側に前記車輪のキャンバ角が予め設定された初期値となるように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御装置。
  5. 前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
    前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、
    前記車両のヨーレートを実測するヨーレート実測手段と、
    前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両のヨーレートを推定するヨーレート推定手段とを備え、
    前記スリップ発生判断手段は、前記ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートが前記ヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも大きい場合に、前記車輪のうち前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、
    前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の前側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御装置。
  6. 前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
    前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、
    前記車両のヨーレートを実測するヨーレート実測手段と、
    前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両のヨーレートを推定するヨーレート推定手段とを備え、
    前記スリップ発生判断手段は、前記ヨーレート推定手段により推定されるヨーレートが前記ヨーレート実測手段により実測されるヨーレートよりも小さい場合に、前記車輪のうち前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、
    前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の前進方向の後側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制御装置。
  7. 前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、
    前記車両の旋回半径を検出する旋回半径検出手段と、
    前記車両の横方向の加速度を実測する横加速度実測手段と、
    前記車両速度検出手段により検出される前記車両の速度と、前記旋回半径検出手段により検出される前記車両の旋回半径とに基づいて、前記車両の横方向の加速度を推定する横加速度推定手段とを備え、
    前記スリップ発生判断手段は、前記横加速度推定手段により推定される横方向の加速度が前記横加速度実測手段により実測される横方向の加速度よりも大きい場合に、前記車輪のうち前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断し、
    前記キャンバ制御手段は、前記スリップ発生判断手段により前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に所定のスリップ状態が生じていると判断される場合に、前記スリップ抑制制御手段により車輪に付与する駆動力または制動力が制御される前に、前記車両の旋回方向の外側に位置する車輪に対して前記第2トレッドの接地比率が増加するように前記キャンバ角調整装置を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御装置。
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