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JP2009111102A - 集積型発光源およびその製造方法 - Google Patents

集積型発光源およびその製造方法 Download PDF

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JP2009111102A
JP2009111102A JP2007280982A JP2007280982A JP2009111102A JP 2009111102 A JP2009111102 A JP 2009111102A JP 2007280982 A JP2007280982 A JP 2007280982A JP 2007280982 A JP2007280982 A JP 2007280982A JP 2009111102 A JP2009111102 A JP 2009111102A
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Hideyoshi Horie
秀善 堀江
Hiroshi Mori
寛 森
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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    • H01L2224/10Bump connectors; Manufacturing methods related thereto
    • H01L2224/12Structure, shape, material or disposition of the bump connectors prior to the connecting process
    • H01L2224/14Structure, shape, material or disposition of the bump connectors prior to the connecting process of a plurality of bump connectors

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Abstract

【課題】光取り出し効率を向上させ、照明用としても適用可能な大面積の発光源を提供する。
【解決手段】集積型発光源は、メイン支持体100と、その上に配列された複数の発光素子10と、発光素子10に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料110とを有する。発光素子110は、透明な基板上に薄膜結晶層、第二導電型側電極、第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が基板側とされる。両電極は、空間的に重なりを有さず第1の光取り出し方向とは反対側に形成される。薄膜結晶層の側壁面は基板の端より後退している。絶縁層が、薄膜結晶層および両電極の所定の部位を覆っている。さらに、出射する光の均一性を向上させる光均一化層が、基板と第一導電型半導体層の間に設けられている。
【選択図】図7−1

Description

本発明は、集積型の化合物半導体発光装置をさらに集積した関する。なお、本明細書中において、発光ダイオードまたはLEDとの表現は、レーザダイオード、スーパールミネッセントダイオード等を含んだ発光素子一般を含む言葉として使用する。
可視領域に発光スペクトルを有するLEDは広く工業的に製造されており、広く表示用途に使用されている。最も一般的な形状は、1対のp側電極とn側電極を有する1つのLEDを、シリコーン系の封止材でその周囲を包みこみ、これを砲弾型と呼ばれる形状にしたものである。白色発光用としては、青色または紫外領域の光を発光するLEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDが実用化されている。しかし、このような形態の光源は、表示用途には適するものの、形状が小型であって1装置あたりの発光面積が小型であることから、照明用途などには適していない。
また、波長の異なる複数の半導体発光素子を、1つの支持体上に搭載し、これを近接させてマウントし、封止材でその周囲を包みこみ発光源とした例も知られている。赤、緑、青の発光波長の異なる半導体発光装置を1つの支持体に搭載して、白色化することができる。この形態においても、白色化は達成されても、1装置あたりの発光面積が小型であることから、照明用途などには適していない。
大面積化のために、多数の小型LEDを配列することも行われるが、ひとつひとつの発光装置のアセンブリコストがかさみ、また、発光強度の面内均一性が悪い問題がある。
大面積での均一な発光を目的として、あるいはディスプレイとしての利用を目的として、同一基板上に複数個のLEDを集積した発光装置が提案されている。たとえば特開2002−324915号公報(特許文献1)には、同一基板上に複数個の発光ユニットを並列させ、ここに蛍光体をバインダーとともに付着させ、発光装置を大型化する事が記載されている(特許文献1の段落[0085]参照)。また、国際特許公開WO2006/090804号公報(特許文献2)には、半導体発光装置に好適なシリコーン系の封止剤が記載され、その材料が、光取り出し膜として使用できることが記載されている(特許文献2の段落0397参照)。また、特開2003−115611号公報(特許文献2)には、面発光光源またはディスプレイとして利用する目的で、LEDを集積化した発光装置が開示されている。
特開2002−324915号公報 特開2003−115611号公報
しかし、従来のようにして複数のユニットを集積した発光装置であっても、1枚の基板以上の大きさに発光面積を広げることはできない。現在、GaN系材料のエピタキシャル成長に主に使用されるサファイア基板は、2−3インチ程度の大きさであって、たとえば家庭用主照明の大きさから言っても不足している。一方、半導体発光装置においては発光効率の向上が常に求められている。しかしながら、特許文献1および2のどちらにも、集積型半導体発光装置を光の取り出しの観点から改良する試みは記載されていない。
本発明は、集積型の発光装置をさらに集積した、例えば照明用としても適用可能な大面積の発光源を提供することを目的とする。
本発明は以下の事項に関する。
[1] メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(A)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
(A):
発光波長に対して透明な基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層と、任意の構成として前記基板と光均一化層との間にバッファ層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
[2] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
のいずれかの形状を有し;
前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆している上記[1]に記載の集積型発光源。
[3] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
前記絶縁膜が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない上記[1]に記載の集積型発光源。
[4] 前記発光素子は、
前記光均一化層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に設けられている層である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の集積型発光源。
[5] メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(B)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
(B):
バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記バッファ層と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有し;
さらに、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体
を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
[6] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有する上記[5]に記載の集積型発光源。
[7] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁膜が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部をも被覆していながら、端部段差面上には形成されていない上記[5]に記載の集積型発光源。
[8] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
前記(i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆している上記[5]に記載の集積型発光源。
[9] メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(C)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
(C):
発光波長に対して透明な基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
[10] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
のいずれかの形状を有し;
前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆している上記[9]に記載の集積型発光源。
[11] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
前記絶縁膜が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない上記[9]に記載の集積型発光源。
[12] メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(D)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
(D):
バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有すること
を特徴とする化合物半導体発光素子。
[13] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有する上記[12]に記載の集積型発光源。
[14] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁膜が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない上記[12]に記載の集積型発光源。
[15] 前記発光素子は、
前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆している上記[12]に記載の集積型発光源。
[16] 前記光取り出し材料は、次の付着の形態、即ち
(i)前記発光素子の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
(ii)前記発光素子の全体を覆っている形態;
(iii)前記発光素子同士の間を充填している形態;
(iv)複数の発光素子を覆っている形態;および
(v)すべての発光素子を覆っている形態;
の少なくとも1つの形態を満たすように前記発光素子に付着している上記[1]〜[15]のいずれかに記載の集積型発光源。
[17] 前記光取り出し材料は、珪素含有化合物を含有することを特徴とする上記[1]〜[16]のいずれかに記載の集積型発光源。
[18] 前記珪素含有化合物が、縮合型シリコーン系材料であることを特徴とする上記[17]に記載の集積型発光源。
[19] 前記縮合型シリコーン系材料が、次の条件(1)〜(3):
(1)ケイ素含有率が20重量%以上である;
(2)固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する;
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク
(3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である;
のうちの少なくとも1つを満足することを特徴とする上記[18]に記載の集積型発光源。
[20] 上記[1]において(A)で規定される発光素子、上記[5]において(B)で規定される発光素子、上記[9]において(C)で規定される発光素子、および上記[12]において(D)で規定される発光素子からなる群より選ばれる複数個の発光素子を作製する工程と、
前記複数個の発光素子をメイン支持体上に配列する工程と、
前記メイン支持体上に配列された前記複数個の発光素子に、前記発光素子の発光波長に対して透明な材料からなる光取り出し材料を密着して付着させる工程と、
を有する集積型発光源の製造方法。
[21] 前記光取り出し材料を付着させる工程は、
(i)前記発光素子の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
(ii)前記発光素子の全体を覆っている形態;
(iii)前記発光素子同士の間を充填している形態;
(iv)複数の発光素子を覆っている形態;および
(v)すべての発光素子を覆っている形態;
の少なくとも1つの形態を満たすように前記光取り出し材料を前記発光素子に付着させることを含む上記[20]に記載の集積型発光源の製造方法。
[22] 前記光取り出し材料を付着させる工程は、
液状のシリコーン系材料を前記発光素子に付着させることと、
付着させたシリコーン系材料を硬化させることと、
を含む上記[20]または[21]に記載の集積型発光源の製造方法。
本発明によれば、発光素子は大面積の面光源的発光に適した構造を有しており、照明用としての使用に適した大面積の発光源を提供することができる。さらに、発光素子に光取り出し材料を付着させることにより、光取り出し効率を向上させることができ、照明用としてより適した発光源を提供することができる。光取り出し材料を付着の形態によっては、さらに発光装置内の面光源としての均一性を向上させることができる。
本明細書において、「積層」または「重なる」の表現は、もの同士が直接接触している状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方を他方に投影した際に空間的に重なる状態をも指す場合がある。また、「〜の上(〜の下)」の表現も、もの同士が直接接触して一方が他方の上(下)に配置されている状態に加え、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、互いに接触していなくても、一方が他方の上(下)に配置されている状態にも使用する場合がある。さらに、「〜の後(前、先)」との表現は、ある事象が別の事象の直後(前)に発生する場合にも、ある事象が別の事象との間に第三の事象を挟んだ後(前)発生する場合にも、どちらにも使用する。また、「接する」の表現は、「物と物が直接的に接触している場合」に加えて、本発明の趣旨に適合する限りにおいて、「物と物が直接的には接触していなくても、第三の部材を介して間接的に接している場合」、「物と物が直接的に接触している部分と、第三の部材を介して間接的に接している部分が混在している場合」などを指す場合もある。
さらに、本発明において、「薄膜結晶成長」とは、いわゆる、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、プラズマアシストMBE、PLD(Pulsed Laser Deposition)、PED(Pulsed Electron Deposition)、VPE(Vapor Phase Epitaxy)、LPE(Liquid Phase Epitaxy)法等の結晶成長装置内における薄膜層、アモルファス層、微結晶、多結晶、単結晶、あるいはそれらの積層構造の形成に加えて、その後の薄膜層の熱処理、プラズマ処理等によるキャリアの活性化処理等も含めて薄膜結晶成長と記載する。また、本発明において、「薄膜結晶層」とは、「薄膜結晶成長」によって形成された膜をいう。
また、本発明において、発光素子(化合物半導体発光素子)は、あらゆる方向へ光を取り出すことができ、後述する光取り出し材料や絶縁層の構造を適宜変更することで、配光分布も任意に調整することができる。本発明では、発光素子における方向を説明するのに、「第1の光取り出し方向」という用語を用いることがあるが、この用語は、配光分布とは無関係に、単に種々の光取り出し方向のうち1つの方向という意味で、方向を特定することのみに用いる。具体的には、「第1の光取り出し方向」は、発光素子の第一導電型側電極および第二導電型側電極が設けられた側と反対側を意味する。
また、本発明の「集積型発光源」は、複数の発光素子を集積したものであるが、単に「発光源」と記載する場合もある。また、「メイン支持体」は、発光源を構成する発光素子の全部を支持するために用いられる。
<<1. 本発明の全体の構造>>
本発明の集積型発光源は、メイン支持体と、メイン支持体上に配列された複数の発光素子と、発光素子に密着して付着している光取り出し材料とを有している。発光素子は、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層(以下、単に薄膜結晶層ということもある)と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有している。また、第二導電型側電極および第一導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さず、かつ、第1の光取り出し方向とは反対側に形成されている。発光素子は、第二導電型側電極および第一導電型側電極を利用して、メイン支持体上にフリップチップ実装される。
メイン支持体上に配列する発光素子の数は特に限定されず、提供される1つのメイン支持体のサイズに応じて適宜個数を設定可能である。例えば、発光素子の数は2個でもよく、また、500個を超える発光素子を配列してもかまわない。集積型発光源における好ましい発光素子の数は25〜10000個であり、また発光素子を2次元的に配列することも好ましい。さらに、メイン支持体を3次元的に構成し、ここに発光素子を搭載して立体的な光源とすることも好ましい。
集積型発光源の中において、各発光素子は互いに近接して配列されることが好ましい。この近接の度合いは、フリップチップボンド可能なボンディング装置の機械精度等によって決定され、隣接する発光素子同士は、100μm以下の間隔、より好ましくは25μm以下の間隔、最も好ましくは10μm以下の間隔で配列される。しかし、現実的には、発光素子のスクライブやブレーキング時に各発光素子のエッジに凹凸が発生する場合があり、また、ボンディング装置の機械精度等の都合もあり、発光素子を極端に近接させることは現実的ではない。よって、現実的には、隣接する発光素子同士は、1μm以上の間隔、より好ましくは2μm以上の間隔、最も好ましくは5μm以上の間隔で配列される。発光素子同士の絶縁性が保たれている場合には、発光素子同士が接触してもよい。
本発明に使用される発光素子は、後述するような構成を有する発光素子である。また、発光装置は、必要により、バッファ層、光均一化層、絶縁層、配線、その他必要な構成要素を有することができる。
また、本発明の集積型発光源に使用されるメイン支持体は、多数の発光素子を支持可能なものであれば特に制限はないが、メイン支持体上に配線、電極等を形成するときは、少なくとも表面が絶縁性の材料で形成された基体が好ましい。具体的には、AlN、SiC、ダイヤモンド、BN、CuW、Al、Si、ガラス等が挙げられる。発光素子が、絶縁性の成長基板、サブマウントまたは支持体に搭載された状態でメイン支持体に載せられ、メイン支持体に絶縁性が求められない場合には、金属材料で形成された基体を支持体としてもよい。金属材料で形成されるメイン支持体としては、Al、Cu等の単体金属などは放熱性の観点から好ましく、また、ステンレス等の複合材や、CuやFeをNiメッキしたような複合材なども好ましい。
本発明の集積型発光源では、光取り出し材料が発光装置に直接接して付着している。
光取り出し材料は、主として、集積型光源から空気に向けて出射される光の取り出し効率を高める目的で使用される。また、付着の態様によっては、1つの集積型発光源に含まれる1つの発光素子から出射される光を、他の発光素子と光学的に結合するための目的でも使用される。さらに、光取り出し材料は、密着性に優れていることから、通常は放熱効率を高め、発光素子の温度上昇を低下させる効果も有している。
光取り出し材料の付着の態様の例として、
(i)発光素子の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
(ii)発光素子の全体を覆っている形態;
(iii)発光素子同士の間を充填している形態;
(iv)複数の発光素子を連続して覆っている形態;および
(v)すべての発光素子を連続して覆っている形態;
を挙げることができる。特に、(ii)〜(v)の場合には、発光素子に存在する空隙も充填および/または発光ユニットの側面を被覆することが好ましい。本発明では、これら(i)〜(v)の少なくとも1つの形態を満たすように、光取り出し材料を発光素子に付着させることが好ましい。
これら(i)〜(v)の形態について、図面を参照して説明する。
図7−1および図7−2に(i)の形態の例を示す。メイン支持体100の上に、複数(図では3個)の発光素子10が集積されている。発光素子10として、この図では後述するタイプAの発光素子を示す。光取り出し材料110が、発光素子の第1の光取り出し方向側の面(タイプAの発光素子では薄膜結晶層成長用の基板面)に付着している。(i)の形態では、光取り出し材料110は、図7−1に示すように、島状およびストライプ状等の不連続の形状で付着されていてもよいし、図7−2に示すように、第1の光取り出し方向側の面を連続して覆っていてもよい。このように、光取り出し材料110が、発光素子10間で連続していない場合には、主として光取り出しの点で効果が見られる。
図8−1に、(ii)の形態の例を示す。この形態においては、発光素子10の全体を覆って光取り出し材料110が付着しているが、発光素子10間では連続していない。この形態でも、光取り出し材料110が発光素子10間で連続していないため、個別の発光素子10の光特性の改良を目的としている。この形態では、光取り出し材料110が第1の光取り出し方向側の面に付着していることにより、上記(i)の効果が得られることに加え、発光素子10の側面を覆い、発光素子10に存在する空隙90を充填することにより、薄膜結晶層の側面からの光取り出しも可能になる。薄膜結晶層の側面からの光取り出しは、発光効率の向上に寄与することに加え、薄膜結晶層内に滞る光を取り出すことによる熱の蓄積防止、およびメイン支持体100(別の支持体がある場合はそれも含む)等との熱結合による放熱効率の向上を図ることができる。尚、図8−2に示すように、光取り出し材料を、第1の光取り出し方向側の面に付着させない場合でも、空隙90部分を充填するようにすると光の均一性の効果が得られる(他の形態においても同じ。)
図9に、(iii)の形態の例を示す。この形態においては、光取り出し材料110が、発光素子10の側面に密着し、隣接する発光素子10の隙間を充填している。光取り出し材料110が発光素子10の側面に密着することにより、側面からの光取り出しの効率が向上すると共に、光取り出し材料が複数の発光素子10に接触して付着しているときは、複数の発光素子10間の光学的結合の効果も得られる。即ち、複数の発光素子10間が光取り出し材料110で充填されていることにより、1つの発光素子10から出射される光が、隣接する発光装置10との間の空間にも分布するため、発光素子10間の空間からも光が出射する。従って、集積型発光源から出射される光の強度分布の均一性が向上し、面光源としての応用がより有利になる。
図10に、(iv)または(v)の形態の例を示す。この形態においては、光取り出し材料110が、複数または全部の発光素子10を連続して覆っているため、発光素子10の第1の光取り出し方向側の面および側面に密着し、かつ発光素子10の間の空隙を充填している。そのため、第1の光取り出し方向側の面からの光取り出し、側面からの光取り出し、および発光素子10間の隙間からの発光および発光素子10間での光学的結合を達成することができる。従って、図10の形態、特にすべての発光素子10を覆うように光取り出し材料110が設けられていることが最も好ましい。
また、光取り出し材料は、いずれの形態においても、光取り出し効率の向上のために外側に凸の曲面となるように形成されることが好ましい。
以下に、本発明において使用される発光素子および光取り出し材料について説明する。
<<2. 発光素子>>
本発明の集積型発光源に組み込まれる複数個の発光素子は、好ましくは次のタイプAの発光素子、タイプBの発光素子、タイプCの発光素子およびタイプDの発光素子からなる群より選ばれる。
タイプA:
発光波長に対して透明な基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層と、任意の構成として前記基板と光均一化層との間にバッファ層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
タイプB:
バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記バッファ層と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方側向部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有し;
さらに、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体
を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
タイプC:
発光波長に対して透明な基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
タイプD:
バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有すること
を特徴とする化合物半導体発光素子。
上記タイプA、B、CおよびDの集積型発光装置を使用する利点は次の点にある。従来の集積型の発光装置は、2つのタイプがあり、1つめのタイプは、1対のpn接合部分を含む発光ユニットが、互いに電気的に分離されている装置(特許文献1に記載の装置、および特許文献2の請求項4、図10(b)に記載の装置等)であり、2つめのタイプは1対のpn接合部分を含む発光ユニットが、互いに電気的に結合されている装置である(特許文献2の請求項5、図10(a)等)。1つめのタイプでは、発光ユニット間の分離溝部分で発光強度が大きく低下するために、面光源全体での均一性に問題があり、また、発光ユニットの1つが劣化した場合に、その近傍のみが極端に発光強度が落ちてしまうという問題も同様にある。2つ目のタイプでは、n型半導体層が発光装置全体で共通となっているために、n側電極から最も近接するp側電極に電流が流れ込むだけでなく、1つのn側電極からあらゆるp側電極に電流が流れ込むことになり、発光装置全体としてみたときの電流注入効率は高くない。また、すべてのp側電極とすべてのn側電極が電気的に結合しているため、1箇所の劣化が、装置全体の劣化となってしまう問題がある。
これに対して、上記タイプA、B、CおよびDの集積型発光装置は、このような問題がなく、発光強度の均一性が高いため、本発明の集積型発光源に使用する集積型発光装置として特に適している。
以下にタイプA〜Dを順に説明する。
<<2−1. タイプA>>
タイプAの発光素子の特徴は次の事項で特定される。
1. 発光波長に対して透明な基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層と、任意の構成として前記基板と光均一化層との間にバッファ層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
2. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
のいずれかの形状を有し;
前記絶縁層が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆していることを特徴とする上記1記載の発光素子。
3. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
前記絶縁層が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない事を特徴とする上記1記載の発光素子。
4. 前記光均一化層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に設けられている層であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光素子。
5. 発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光均一化層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をnで表したとき、
sb<noc および n<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の発光素子。
6. 前記発光素子の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光均一化層の平均屈折率をnoc、前記光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)とし、前記光均一化層と前記基板の比屈折率差Δ(oc−sb)
Δ(oc−sb)≡((noc)−(nsb))/(2×(noc)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の発光素子。
7. 前記発光素子の発光波長をλ(nm)、前記光均一化層の発光波長における平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の発光波長における平均屈折率をn、前記光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光均一化層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)
Δ(oc−1)≡((noc)−(n))/(2×(noc)
と定義したとき、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光素子。
8. 前記光均一化層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光素子。
9. 前記光均一化層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の発光素子。
10. 前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光素子。
11. 前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光素子。
12. 前記L2wが100μm以上であることを特徴とする上記11記載の発光素子。
13. 薄膜結晶層の側壁面の後退によって露出した前記基板面のうち、前記絶縁層で覆われていない端面部の最も狭い部分の幅Lwsが15μm以上であることを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の発光素子。
14. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag、Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の発光素子。
15. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光素子。
16. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光素子。
17. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光素子。
18. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記17記載の発光素子。
19. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記18記載の発光素子。
20. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaOおよびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光素子。
21. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光素子。
22. 前記光均一化層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の発光素子。
23. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜22のいずれかに記載の発光素子。
24. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜23のいずれかに記載の発光素子。
25. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の発光素子。
26. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属層を有するサブマウントに接合されていることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の発光素子。
タイプAの発光素子によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率、さらに第1の光取り出し方向側の面での明るさの均一性が高いフリップチップマウント型の半導体発光素子を提供することができる。
タイプAの発光素子の構造では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
以下、タイプAの発光素子をさらに詳細に説明する。
図1-1Aおよび図1-2Aに、タイプAの形態の化合物半導体発光素子(以下、単に発光素子という)の代表的例を示す。図1-1B、図1-2Bは、説明のために、それぞれ図1-1Aおよび図1-2Aの一部を省略した図であり、図1-3A、図1-3Bは発光素子の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図である。以下、図1-1A〜図1-3Bを参照して説明する。
タイプAの形態の発光素子は、図1-1A、図1-2Aに示すように基板21上に、バッファ層22、光均一化層23、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。
第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層、活性層構造の一部、第一導電型クラッド層の一部が除去された構成となっており、除去された箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板に対して同じ側に配置されるように構成されている。第二導電型側電極27および第一導電型側電極28は、サブマウント40上の金属層41に、金属ハンダ42を介してそれぞれ接続されている。
本形態において、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27は、互いに空間的に重なりを有していない。これは、図1-1Aおよび図1-2Aに示すように、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を基板面に対して投影したときに、影が重ならないことを意味する。
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」等に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。同時に、本形態では、素子にダメージを与え性能に影響を及ぼしたり、歩留まりに影響を与えたりしないように、絶縁層が最適な位置に配置されている。
タイプAの形態の発光素子は、(I)発光素子10の端部の段差形状、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状、の2箇所で異なる形態を取り得る。(I)発光素子10の端部の段差形状については、製造工程において素子分離を行うために装置間分離溝13(図1−3A等参照)を形成する際のエッチング深さにより、大きく分けて(i)光均一化層23の途中まで、(ii)バッファ層22の途中まで(バッファ層が存在するとき、以下同じ。)、(iii)基板面まで(またはそれより深く)、の3つの選択がある。また、装置間分離溝13の壁面は、素子分離後に素子端より後退するので、本形態では装置間分離溝13の形成時に側壁面として現れた面を、素子分離後の素子については、「後退側壁面」という。また、素子分離により素子端に現れる側壁面を、「非後退側壁面」という。そして、発光素子の端部には、後退側壁面と非後退側壁面の間で段差面が形成されるので、これを「端部段差面」という。
装置間分離溝13の深さ(i)〜(iii)に対応して、(i)では、薄膜結晶層の後退側壁面に対して、光均一化層23の一部が共に後退側壁面を構成し、残り(第1の光取り出し方向側)の光均一化層23の側壁は、非後退側壁面となり、光均一化層23の端に端部段差面が存在する形状となる。同様に(ii)では、バッファ層22の端に端部段差面が存在する形状となる。(iii)では、光均一化層23およびバッファ層22のどちらの側壁も、後退側壁面を構成するので(装置間分離溝13の側壁面となるため)、基板21が露出した部分が端部段差面となる形状となる。
(i)に対応するのは、図1-1C、図1-2Cである。(ii)に対応する形状は、図1-1D、図1-2D、図1-2Eである。(iii)に対応するのは、図1-1A(図1-1B)、図1-2A(図1-2B)である。
(II)発光素子端部の絶縁層30の形状については、製造工程において、(i)装置間分離溝13の側壁に形成された絶縁層30を残したまま、溝底面上の中央を含む領域の絶縁層30のみを除去するか、(ii)溝底面に形成された絶縁層30のすべてに加えて、溝内の側壁の一部までを含めて絶縁層30を除去するか、の選択があり、その結果製造される発光素子10において、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、の2種類が存在する。(i)に対応するのは、図1-1A(図1-1B)、図1-1C、図1-1Dである。(ii)に対応するのは、図1-2A(図1-2B)、図1-2C、図1-2D、図1-2Eである。
タイプAの形態の発光素子10の形状を(II)発光素子端部の絶縁層30の形状により、(i):第1の態様、(ii):第2の態様として分けて説明する。
〔第1の態様〕
第1の態様に属する形態を、図1-1A〜図1-1Dに示す。まず、代表的な形態として図1-1Aを用いて説明する。薄膜結晶層のうち少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層の側壁面は基板21の端より後退している。この形状は、タイプAのすべての形態に表れている。これは、図1-3Aに示すように、製造工程において、薄膜結晶層を成膜後、各素子間を分離するために、後述する方法によって所定の深さまで薄膜結晶層を除去して装置間分離溝13を形成し、分離溝内で、素子を分離するためである。図1-1Aは、基板21に達するまで薄膜結晶層を除去した例を示し、タイプAの好ましい形態の1つである。タイプAでは、薄膜結晶層、特に電流注入、発光等の本質的な機能に関わる部分である第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、一般に使用されるスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際のプロセスを被歴せず、素子が分離されるので、性能に関わる薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。このため、特に大電流注入においてその耐性や信頼性等の性能が優れている。
そして、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面は、絶縁層30により覆われている。さらに、素子分割前には、図1-3Aに示すように、絶縁層30は装置間分離溝13の溝底面の全てを覆うのではなく、基板表面(即ち、溝底面)に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に基板21のみをスクライブ、ブレーキングすればよいので、薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。また、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、図1-1A、図1-1BのA部分に示すように、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面の全面を絶縁層30が覆うのではなく、基板21の端からLwsだけ離れた位置より内側の基板面を覆っている。スクライブ領域14の幅の中央から分割された場合、絶縁層30で覆われていない距離Lwsは、製造のゆらぎ等の範囲でスクライブ領域14の幅の略1/2に対応する。即ち、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子10は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子10の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
wsの大きさは、完成した発光素子10においては、0より大きければよいが、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。設計値としては、スクライブ領域14の幅を2Lwsとすると、2Lwsは、30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
また、装置間分離溝13が、光均一化層23の途中まで、またはバッファ層22の途中まで形成されることも好ましい形態である。その結果、完成した発光素子10では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、発光素子10の端(基板端)より内側に後退して後退側壁面を形成し、溝底面に基づく端部段差面55が発光素子10の端に存在する。尚、図1-1Aでは基板面自身が、段差面に対応する。
図1-1Cに、装置間分離溝が光均一化層23の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22と光均一化層23の一部が非後退側壁面として存在し、光均一化層23の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。バッファ層22の壁面はすべて露出している。一方、図1-1C中にA部分で示すように、光均一化層23の側壁のうち、非後退側壁面の部分は露出し、後退側壁面の部分は絶縁層30で被覆され、端部段差面55のうちで、端から離れた位置(図1-1BのLwsに対応する位置)から、内側を前記後退側壁面に連続して被覆している。これは、図1-1A(図1-1B)において、装置間分離溝を光均一化層23の途中でとめた形態に対応する。
図1-1Dに、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端まで、バッファ層22が存在し、バッファ層22には、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在しており、バッファ層22の側壁のうち非後退側壁面(素子端部分)と、発光素子端から内側に入った後退側壁面の部分(装置間分離溝の側壁)とを有する。図1-1D中にA部分で示すように、バッファ層22の側壁のうち、非後退側壁面は絶縁層30で覆われないで露出し、後退側壁面の部分は絶縁層30で被覆され、端部段差面55のうちで、端から離れた位置(図1-1BのLwsに対応する位置)から、内側を前記後退側壁面に連続して被覆している。これは、図1-1A(図1-1B)において、装置間分離溝をバッファ層22の途中でとめた形態に対応する。
これらの例のように、装置間分離溝が、光均一化層23とバッファ層22を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図1-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
〔第2の態様〕
第2の態様に属する形態を、図1-2A〜図1-2Eに示す。第2の態様は、層構成等は第1の態様と同じであり、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状が第1の態様と異なっている。
まず、図1-2Aに示すように、薄膜結晶層のうち少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層の側壁面は基板21の端より後退して後退側壁面を構成している。この形状は、タイプAのすべての形態に表れている。これは、図1-3Bに示すように、製造工程において、薄膜結晶層を成膜後、各素子間を分離するために、後述する方法によって、薄膜結晶層を除去して装置間分離溝13を形成し、分離溝内で、素子を分離しているからである。タイプAのその他の態様と同じように、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面のうち、少なくとも、第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)、活性層構造25、および第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の側壁面は、絶縁層30により覆われている。
第2の態様では、基板21表面の中で装置間分離溝底面に相当する部分にも、絶縁層30は存在しない。薄膜結晶層の後退側壁面で、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15は、バッファ層22の側壁面の少なくとも第1の光取り出し方向側に存在し、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。さらに、光均一化層23の側壁面の一部まで、または全部まで渡っていてもよい。また、基板21の一部までエッチングして装置間分離溝を形成した場合には、分離溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層22が被覆されている場合がある。
この場合、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15のバッファ層22は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。また、絶縁層非形成部分15が光均一化層23まで及んでいるときは、その部分まではドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出している部分が絶縁性の高い材料であればハンダの回り込みによる短絡等の虞がなく、信頼性の高い素子となる。
この構造は、図1-3Bに示すように、製造工程途中の素子分割前の形状に対応し、絶縁層30は、装置間分離溝13の溝内の基板表面と、基板面に近接する溝側壁面の絶縁層非形成部分15から除去されている。
基板21と接している部分に絶縁層30が形成されていないので、製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に基板21のみをスクライブ、ブレーキングすればよいので、薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。また、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、図1-2Aおよび図1-2BのA部分に示すように、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面を絶縁層30が覆っていない。この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子10は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子10の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
また、第2の態様においても、装置間分離溝13が、光均一化層23の途中まで、またはバッファ層22の途中まで形成されることも好ましい形態である。その結果、完成した発光素子10では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、装置の端(基板端)より内側に後退し、溝底面に基づく端部段差面が発光素子10の端に存在する。
図1-2Cに、装置間分離溝が光均一化層23の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22と光均一化層23の一部が非後退側壁面として存在し、光均一化層23の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。バッファ層22の壁面はすべて露出している。そして、光均一化層23の端部段差面55も絶縁層30で被覆されておらず、また、後退側壁面には、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。これは、図1-2A(図1-2B)において、装置間分離溝を光均一化層23の途中でとめた形態に対応する。
図1-2D、図1-2Eに、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22の一部が非後退側壁面として存在し、バッファ層22の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。非後退側壁面(素子端の側壁部分)および端部段差面55は、絶縁層30で被覆されておらず、また、後退側壁面(装置間分離溝の側壁)では、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。これは、図1-2A(図1-2B)において、装置間分離溝をバッファ層22の途中でとめた形態に対応する。絶縁層非形成部分15は、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。さらに、図1-2Eのように、光均一化層23の側壁面の一部まで、または全部まで渡っていてもよい。
これらの例のように、装置間分離溝13が、光均一化層23とバッファ層22を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子10の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図1-2Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
第1の態様および第2の態様に共通して、タイプAでは絶縁層30は、図1-1B、図1-2BのB部分に示すように、第一導電型側電極28の基板側(第1の光取り出し方向側)の一部に接している。即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)との間の一部に、絶縁層30が介在している。その結果、第一導電型側電極28の面積が、第一電流注入領域36の面積より大きい。図1-1B、図1-2Bに示すように、第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
さらに絶縁層30は、図1-1B、図1-2BのC部分に示すように、第二導電型側電極27のサブマウント側(第1の光取り出し方向の反対側)の一部を覆っている。即ち、第二導電型側電極27の電極露出部分37の面積が、第二導電型側電極27の面積より小さく、第二電流注入領域35の面積は、第二導電型側電極27の面積と等しい。図1-1B、図1-2Bに示すように、第二導電型側電極27の周辺から絶縁層30で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
また、第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)、第二導電型半導体層(この実施形態では第二導電型クラッド層26)のサブマウント側(第1の光取り出し方向の反対側)の表面の露出部分も短絡防止のために、通常は図に示すように絶縁層30で被覆される。
絶縁層30と各電極27、28とのこのような位置関係により、プロセスダメージの少ない工程により製造することが可能である。
タイプAの発光素子10では、以上のように、プロセスダメージ、フリップチップマウントを実施した際の放熱性、絶縁性等が総合的に考慮された絶縁層30の配置となっている。
さらに、タイプAの発光素子10は、第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)より第1の光取り出し方向側に、光均一化層23を有している。光均一化層23は、詳細は後述するが、適度な光閉じ込め効果を有し、活性層構造25で発光した光は、局在することなく光均一化層全体に分布する。そのため、基板21の第1の光取り出し方向側の面50aから見たとき、第一導電型側電極28の取り出しのために活性構造層25がない非発光部に対応する領域にも光が分布し、また活性構造層25での発光にムラがあっても、均一化するように光が分布する。さらに、光均一化層23の周囲は絶縁層30で被覆されているため、絶縁層30の発光波長に対する反射率を高めることで、光均一化層23内での光閉じ込め効果が上がり、面内均一性がさらに向上する。
以下に、タイプAの発光素子10を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
基板は、光学的に発光素子の発光波長に対しておおよそ透明であれば、材料等は特に限定されない。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が無いか、あるいは、吸収が存在しても、基板での吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。
基板は、電気的には絶縁性基板であることが好ましい。これは、フリップチップマウントをした際に、たとえハンダ材などが基板周辺に付着しても、発光素子への電流注入には影響を与えないからである。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaO、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。
タイプAの発光素子で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板を基板としてInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
基板は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して化合物半導体発光素子を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層との関係で、意図的に凹凸をつけた基板に加工しておき、これによって、薄膜結晶層と基板との界面で発生する貫通転移を発光素子の活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
タイプAの発光素子においては、後述する光均一化層に光を閉じ込めて、同時に層内に分布するように導波するために、基板は、化合物半導体発光素子の発光波長における屈折率(nsb)が、光均一化層の平均的屈折率(noc)よりも相対的に小さいことが望ましい。
基板の厚みとしては、1実施形態においては、素子作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、発光素子の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。これを用いて薄膜結晶層を成長した後に、各々の素子に分離しやすくするために、適宜、研磨工程によってプロセス途中で薄くし、最終的に装置としては100μm厚程度以下となっていることが望ましい。また、通常30μm以上の厚みである。
異なる実施形態では、基板の厚さは、従来とは異なり厚いものでもよく、350μm程度、さらには400μm、または500μm程度の厚みがあってもよい。
また、後述する光均一化層に光を閉じ込めて導波するために、導波路に対する相対的に低屈折率層となるように基板を選んだ場合には、基板の物理厚みは、発光素子の発光波長をλ(nm)、基板の平均的屈折率をnsbとした際に、4λ/nsbよりも厚いことが望ましい。
さらに、基板の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されていることが望ましい。基板−空気界面の屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで、光均一化層側から(バッファ層が存在するときはバッファ層から)基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることが好ましい。たとえば基板がサファイアである場合には、低反射コーティング膜としてMgF等を用いることが望ましい。発光波長における基板の屈折率nに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nに近いことが望ましいので、サファイアの屈折率の平方根に対して、MgFの屈折率が近いからである。
タイプAの発光素子においては、基板の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面または粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。また、素子の発光波長をλ(nm)とすると、その粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が、
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
<バッファ層>
バッファ層は、基板上に薄膜結晶成長する上で、転移の抑制、基板結晶の不完全性の緩和、基板結晶と所望の薄膜結晶成長層との各種の相互不整合の軽減など、主に薄膜結晶成長のための目的のために形成される。
バッファ層は、薄膜結晶成長で成膜され、本発明で望ましい形態であるInAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、AlN系材料、GaN系材料などを異種基板上に薄膜結晶成長する際には、必ずしも基板との格子定数のマッチングが確保されないので、バッファ層は特に重要である。たとえば、薄膜結晶成長層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長する際には、600℃近傍の低温成長AlN層をバッファ層に用いたり、あるいは500℃近傍で形成した低温成長GaN層を用いたりすることも出来る。また、800℃から1000℃程度の高温で成長したAlN、GaN、AlGaN、InAlGaN、InAlBGaNなども使用可能である。これらの層は一般に薄く5〜40nm程度である。
バッファ層は必ずしも単一の層である必要はなく、低温で成長したGaNバッファ層の上に、結晶性をより改善するために、ドーピングを施さない1000℃程度の温度で成長したGaN層を数μm程度有するようにしてもかまわない。実際には、このような厚膜バッファ層を有することが普通であって、その厚みは0.5〜7μm程度である。バッファ層は、Si等でドーピングされていてもよいし、バッファ層内にドーピング層とアンドープ層を積層して形成することも可能である。
典型的な実施形態としては、基板に接して350℃〜650℃未満程度の低温で薄膜結晶成長させた低温バッファ層と、650℃〜1100℃程度の高温で薄膜結晶成長させた高温バッファ層の2層構造のものが挙げられる。また、基板がGaNであるときには、バッファ層のすべてを900℃以上の高温にて形成したGaNとすることができる。
また、バッファ層の形成に関しては、いわゆるマイクロチャネルエピタキシーの一種である横方向成長技術(ELO)も使用可能であり、これによってサファイア等の基板とInAlGaN系材料の間で発生する貫通転移の密度を大幅に低減することも可能である。さらに基板の表面に凹凸の加工を施したような加工基板を使用する際にも、横方向成長をさせる際に転位の一部を消滅させることが可能であって、このような基板とバッファ層の組み合わせをタイプAの発光素子に適応する事は好ましい。さらに、この際には基板上に形成された凹凸によって光取り出し効率が向上する効果もあって、好ましい。
タイプAの発光素子においては、バッファ層は後述する光均一化層と一体となって、第1の光取り出し方向側の面での光強度の均一性を上げるために光閉じ込めを実現するようにしてもかまわない。また、バッファ層の一部または全部が光均一化層を兼ねていてもよい。
また、バッファ層は装置間分離溝の露出部分になる場合もあるが、露出部分はアンドープ部分であることが好ましい。これにより、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができる。
<光均一化層>
タイプAの発光素子の光均一化層は、活性層構造で発光した光を、一旦、層内に閉じ込めて分布させることで光の一部をリークしながらもゆるやかに導波し、また場合によっては光を散乱、多重反射、薄膜干渉を引き起こすなどの効果を発現し、発光素子の第1の光取り出し方向側の面での均一性を向上するための層である。
光均一化層23は、化合物半導体層で形成されることが好ましく、図1-1A、図1-2Aおよびその他の図面に示すように、バッファ層が存在し、そしてバッファ層と第一導電型半導体層(第一導電型クラッド層)の間に存在することが望ましい。また、成膜方法は特に制限はないが、発光素子を簡便に作製するために、他の薄膜結晶層と同時に、薄膜結晶成長技術を用いて作製することが望ましい。
タイプAの発光素子において、光均一化層は、少なくとも層内に光の閉じ込めが生じるように、即ち光の分布密度が高くなるようにその屈折率が選ばれる。従って、光均一化層の平均屈折率(noc)は、第一導電型クラッド層の平均屈折率より大きく、また基板がある態様では基板の平均屈折率(nsb)より大きい。特に光均一化層と活性層構造の間に存在する第一導電型半導体層の平均屈折率(n)より大きくすることが好ましい。またバッファ層の平均屈折率(nbf)以上であり、特にバッファ層の平均屈折率より大きいことが好ましい。また、光均一化層を構成する材料は、量子井戸層から発せられる光に対して透明であることが特に好ましい。InAlGaN系等のIII―V族窒化物に基づく発光素子である場合には、活性層構造から発せられる光が吸収されない程度にInやAlを含有することも望ましく、特に屈折率を高める観点ではInを含むことが好ましい。
また、光均一化層は、単層である必要はなく、複数の層で構成されてもよい。複数の層で構成されるとき、例えば、AlGaN、InGaN、InAlGaN、AlNおよびGaN等の層が複数存在してもよいし、超格子構造であってもよい。また、量子ドットのような構造を内在してもよく、素子の発光波長程度の大きさを有するような場合には、これによって、光の散乱を誘発させたりするも可能である。さらに光均一化層を薄膜結晶成長し、一度結晶成長を中断し、適宜その表面に凹凸をつける等の加工を施し、さらに薄膜結晶成長を実施して適宜光の散乱、多重反射、薄膜干渉等を引き起こすようにすることも可能である。
ここで、各層の平均屈折率(nav)は、その層を構成するn種類の材料それぞれの屈折率(nx)に対して、その材料の物理的な厚み(tx)との積をとり、これを全体の厚みで除した値であり、
nav=(n1×t1+n2×t2+・・・+nn×tn)/(t1+t2+・・・+tn)で計算される。
光均一化層の例としては、たとえば、活性層構造がInGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaN、バッファ層がアンドープGaN、基板がサファイアであった場合には、光均一化層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がサファイアであった場合には、光均一化層として単層のアンドープGaNが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
また、活性層構造がInGa1−aNの組成の量子井戸層を有し、その発光波長が460nm、第一導電型クラッド層がn−GaNとn−AlGaN層からなり、バッファ層がアンドープGaNとSiドープGaNの積層構造、基板がSiドープGaNであった場合には、光均一化層として厚膜のアンドープGaN中に発光波長に透明な組成のInGa1−bNを所望の厚みで所望の数有する多層構造などが使用可能である。なお、一般に、半導体材料の、その材料に透明な波長における屈折率はキャリア濃度が高いほど小さくなる傾向がある。
これらのような構造において、さらに光均一化層としては、InGa1−bNおよびInAlGa1−c−dN等の材料を含む場合も望ましく、その組成b、c、dと厚み等を適宜選択することにより、波長460nmで透明で、かつ第一導電型半導体層に含まれることがあるn−GaN、バッファ層に含まれることのあるアンドープGaN、基板として含まれることのあるサファイア、GaN等よりも屈折率を大きくできるので、光均一化層として使用可能であり、それらを単層で、またはそれらとアンドープGaN層とから選ばれる複数の積層構造として使用してもよい。
また、光均一化層が化合物半導体発光素子の発光波長を吸収しないようにIn組成、InGaN層の厚みを設定したInGaN層とGaN層からなる超格子・量子井戸構造を有することも好ましい。
また、光均一化層は、量子井戸層から発せられた光の一部を受けて層内に光を伝播するマルチモード光導波路として機能するように、その厚みが選ばれることも重要である。
光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)で表し、発光素子の発光波長をλ(nm)、光均一化層の平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の平均屈折率をn、基板の平均屈折率をnsbで表したとき、光均一化層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)
Δ(oc−1)≡((noc)−(n))/(2×(noc)
と定義する。また、光均一化層と基板の比屈折率差Δ(oc−sb)
Δ(oc−sb)≡((noc)−(nsb))/(2×(noc)
と定義する。そして、光均一化層を第一導電型半導体層の平均屈折率ではさまれた対称スラブ導波路とみなすと、その導波路がマルチモードとなる条件は規格化周波数がπ/2以上であればよいから
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されることが望ましい。また、同時に、仮に光均一化層が基板の平均屈折率ではさまれた対称スラブ導波路とみなした際に、その導波路がマルチモードとなる条件は、規格化周波数がπ/2以上であればよいから
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
も満たすようにtocが選択されることが望ましい。
具体的には、たとえば波長460nmにおいて光均一化層の平均屈折率が2.50であって、基板の平均屈折率が1.70であったとすると、光均一化層の厚みとしては、約0.13μm以上であれば、上式を満たすこととなる。また、たとえば波長460nmにおいて光均一化層の平均屈折率が2.50であって、第一導電型半導体層の平均屈折率が2.499であったとすると、光均一化層の厚みとしては、約3.3μm以上であれば、上式を満たすこととなる。このように、光均一化層の厚みは、基板を有する場合には基板の平均屈折率、光均一化層の平均屈折率、第一導電型半導体層の平均屈折率によって適宜選択が可能であるが、総じていえば、1〜7μmが好ましく、さらに3〜5μmがよりこのましい。
このようにして、光の閉じ込めとゆるやかなリークが実現し、構造によっては、同時に光を散乱、多重反射、薄膜干渉を引き起こすなどの効果も発現するマルチモード導波路を実現することによって、発光素子は第1の光取り出し方向側の面において均一な発光を実現しやすくなる。
なお、光均一化層に極端に光を閉じ込めると、発光素子は、発光の均一性は向上するものの、光取り出しがしにくくなることから、光均一化層の厚み、材料、構造、構成、屈折率等を適宜選択し、ある程度リーキーでありながら導波が生じるようにすることが好ましい。特にその厚みに関しては、光均一化層の厚みを極端に厚くしてしまい、導波路の光閉じ込めを過剰にすることも望ましくなく、例えば、その上限は30μm以下であることが望ましく、10μm以下であることがより望ましく、5μm以下であることが最も望ましい。
タイプAの発光素子の光均一化層は、導電性であっても絶縁性であってもどちらでもよいが、ハンダ等による短絡をより確実に防止するという点では、絶縁性が好ましい。例えば層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が0.5(Ω・cm)以上であることが好ましい。さらに好ましくは、1.0(Ω・cm)以上であり、さらに好ましくは1.5(Ω・cm)以上、最も好ましくは5(Ω・cm)以上である。比抵抗が高いためには、光均一化層はアンドープであることが望ましい。また、光均一化層が複数の層からなる場合などにおいては、一部ドーピングされている層があっても、これがアンドープ層の間にあれば問題はない。この場合、第一導電型半導体層(例えば第一導電型クラッド層)に隣接する層が上記の比抵抗を有していればよい。また、一般的に半導体においては、その材料に対して透明な波長領域では、同一の材料であっても、アンドープ層の屈折率が意図的にドーピングされ多数のキャリアを有する層よりも屈折率が高くなるので、光学的な特性から考えても、また、電気的特性から考えても、アンドープ層は好ましい。特に、光均一化層が装置端の露出部分となる場合には、露出部分はアンドープ部分であることが好ましい。これにより、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができる。
タイプAの発光素子においては、光均一化層は、光を分布・遍在させるのに対し、前述のバッファ層は基板上に結晶成長するときに各種の不整合の軽減を図るものであるので、その機能は異なる。しかし、同一の層が2つの機能を同時に有することがある。また、光均一化層またはバッファ層が複数の層で構成されているとき、一部の層が2つの機能を有する場合もある。さらに組成が同一でも成長方法・条件が異なる場合には、一方の機能しか有さない場合もある。
また、タイプAの発光素子では、露出した光均一化層の側面は、絶縁層で覆われている。これにより、発光素子をサブマウント等にフリップチップマウントした際に、薄膜結晶層の側壁などでのハンダによる短絡等の発生を防止できる。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプAの発光素子の代表的実施形態では、図1-1Aに示すように光均一化層23に接して、第一導電型クラッド層24が存在する。第一導電型クラッド層24は、後述する活性層構造25に対して、後述する第二導電型クラッド層26と共に機能して、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造25からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第一導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように素子の機能向上のため、または製造上の理由により、第一導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第一導電型半導体層の全体を第一導電型クラッド層と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第一導電型クラッド層の一部と見ることもできる。
一般的に第一導電型クラッド層は、後述する活性層構造の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、後述する活性層構造の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成されることが望ましい。さらに、第一導電型クラッド層は、活性層構造内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第一導電型クラッド層材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板、バッファ層、活性層構造等に鑑みて、適宜選択することができる。
例えば、基板としてC+面サファイアを使用し、バッファ層として低温成長したGaNと高温成長したGaNの積層構造を使用する場合には、第一導電型クラッド層としてGaN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、InAlBGaN系材料、もしくはその多層構造を用いることができる。
第一導電型クラッド層のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm−3以上が好ましく、5×1017cm−3以上がより好ましく、1×1018cm−3以上が最も好ましい。上限としては5×1019cm−3以下が好ましく、1×1019cm−3以下がより好ましく、7×1018cm−3以下が最も好ましい。また、ここでは、第一導電型がn型の場合、ドーパントとしては、Siが最も望ましい。
第一導電型クラッド層の構造は、図1-1Aの一例では単一の層からなる第一導電型クラッド層を示すが、第一導電型クラッド層は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料、InAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、AlN系材料を使用することも可能である。また第一導電型クラッド層の全体を異種材料の積層構造として超格子構造とすることもできる。さらに、第一導電型クラッド層内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
第一導電型クラッド層の第一導電型側電極と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗を低減することも可能である。
第一導電型クラッド層の一部はエッチングされており、かつ、第一導電型クラッド層の露出した側壁、エッチングされた部分などは、後述する第一導電型側電極との接触を実現する第一電流注入領域を除いて、すべて絶縁層で覆われている構造が望ましい。
第一導電型クラッド層に加えて、第一導電型半導体層として、必要によりさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極との接続部にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
<活性層構造>
第一導電型クラッド層24の上には、活性層構造25が形成されている。活性層構造とは、前述の第一導電型クラッド層と、後述する第二導電型クラッド層から注入される、電子と正孔(あるいは正孔と電子)が再結合して発光する層である量子井戸層を含み、かつ、量子井戸層に隣接して配置される、あるいは、量子井戸層とクラッド層間に配置されるバリア層をも含む構造を指す。ここで、本発明のひとつの目的である高出力化、高効率化を実現するためには、活性層構造中の量子井戸層の層数をW、バリア層の層数をBとすると、B=W+1を満たすことが望ましい。すなわち、クラッド層と活性層構造の全体の層の関係は、「第一導電型クラッド層、活性層構造、第二導電型クラッド層」と形成され、活性層構造は、「バリア層、量子井戸層、バリア層」、あるいは、「バリア層、量子井戸層、バリア層、量子井戸層、バリア層」のように形成されることが、高出力化のために望ましい。図1-4に、5層の量子井戸層と、6層のバリア層が積層された構造を模式的に示す。
ここで、量子井戸層においては量子サイズ効果を発現させて、発光効率を高めるために、その層厚はド・ブロイ波長と同程度に薄い層である。このため、高出力化を実現するためには、単層の量子井戸層のみではなく、複数の量子井戸層を設けてこれを分離して活性層構造とすることが望ましい。この際に各量子井戸層間の結合を制御しつつ分離する層がバリア層である。また、バリア層は、クラッド層と量子井戸層の分離のためにも存在することが望ましい。たとえば、クラッド層がAlGaNからなり、量子井戸層がInGaNからなる場合には、この間にGaNからなるバリア層が存在する形態が望ましい。これは結晶成長の最適温度が異なる場合の変更も容易にできるので、薄膜結晶成長の観点からも望ましい。また、クラッド層が、最もバンドギャップの広いInAlGaNからなり、量子井戸層が最もバンドギャップの狭いInAlGaNからなる場合は、バリア層にその中間のバンドギャップを有するInAlGaNを用いることも可能である。さらに、一般にクラッド層と量子井戸層との間のバンドギャップの差は、バリア層と量子井戸層の間のバンドギャップの差よりも大きく、量子井戸層へのキャリアの注入効率を考えても、量子井戸層はクラッド層に直接隣接しないことが望ましい。
量子井戸層は意図的なドーピングは実施しないほうが望ましい。一方、バリア層には、ドーピングを施して、系全体の抵抗を下げるなどのことを実施するのが望ましい。特に、バリア層にはn型のドーパント、特にSiをドーピングするのが望ましい。これは、p型のドーパントであるMgはデバイス内では拡散しやすく、高出力動作時においては、Mgの拡散を抑制することが重要となる。このために、Siは有効であって、バリア層にはSiがドーピングされていることが望ましい。但し量子井戸層とバリア層との界面においては、ド−ピングを実施しないほうが望ましい。
1つの素子の活性層構造側壁は、図1-1Aに示される通り、絶縁層30で覆われていることが望ましい。このようにすると、作製された素子をフリップチップボンドする際には、活性層構造の側壁におけるハンダ等による短絡が発生しない利点がある。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
第二導電型クラッド層26は、前述の活性層構造25に対して、前述の第一導電型クラッド層24と共に、キャリアを効率よく注入し、かつ、活性層構造からのオーバーフローも抑制し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。また、あわせて活性層構造近傍への光の閉じ込めにも寄与し、量子井戸層における発光を高効率で実現するための機能を有している。第二導電型半導体層は、上記のクラッド機能を有する層に加えて、コンタクト層のように装置の機能向上のため、または製造上の理由により、第二導電型にドープされた層を含むものである。広義には、第二導電型半導体層の全体を第二導電型クラッド層と考えてもよく、その場合にはコンタクト層等は、第二導電型クラッド層の一部と見ることもできる。
一般的に第二導電型クラッド層は、前述の活性層構造の平均的屈折率より小さな屈折率を有する材料で、かつ、前述の活性層構造の平均的なバンドギャップよりも大きな材料で構成されることが望ましい。さらに、第二導電型クラッド層は、活性層構造内の特にバリア層との関係において、いわゆるタイプI型のバンドラインナップとなる材料で構成されるのが一般的である。このような指針の元で、第二導電型クラッド層材料としては、所望の発光波長を実現するために準備される基板、バッファ層、活性層構造等に鑑みて、適宜選択することができる。例えば、基板としてC+面サファイアを使用し、バッファ層としてGaNを使用する場合には、第二導電型クラッド層としてGaN系材料、AlN系材料、AlGaN系材料、AlGaInN系材料、AlGaBInN系材料等を用いることができる。また、上記材料の積層構造であってもかまわない。また、第一導電型クラッド層と第二導電型クラッド層は同じ材料で構成することも可能である。
第二導電型クラッド層のキャリア濃度としては、下限としては1×1017cm−3以上が好ましく、4×1017cm−3以上がより好ましく、5×1017cm−3以上がさらに好ましく7×1017cm−3以上が最も好ましい。上限としては7×1018cm−3以下が好ましく、3×1018cm−3以下がより好ましく、2×1018cm−3以下が最も好ましい。また、ここでは、第二導電型がp型の場合ドーパントとしては、Mgが最も望ましい。
第二導電型クラッド層の構造は、図1-1Aの一例では単一の層で形成された例を示しているが、第二導電型クラッド層は、2層以上の層からなるものであってもよい。この場合には、たとえばGaN系材料とAlGaN系材料を使用することも可能である。また第二導電型クラッド層の全体を異種材料の積層構造からなる超格子構造とすることもできる。さらに、第二導電型クラッド層内において、前述のキャリア濃度を変化させることも可能である。
一般に、GaN系材料においてはn型ドーパントがSiであって、かつ、p型ドーパントがMgである場合には、p型GaN、p型AlGaN、p型AlInGaNの結晶性は、n型GaN、n型AlGaN、n型AlInGaNにはそれぞれ及ばない。このため、素子作製においては、結晶性の劣るp型クラッド層を活性層構造の結晶成長後に実施することが望ましく、この観点で、第一導電型がn型で、第二導電型がp型である場合が望ましい。
また、結晶性の劣るp型クラッド層(これは、望ましい形態をとった場合の第二導電型クラッド層に相当する)の厚みは、ある程度薄いほうが望ましい。これは、フリップチップボンディングを実施するタイプAの発光素子においては、基板側が第1の光の取り出し方向となるため、後述する第二導電型側電極側からの光の取り出しを考慮する必要がなく、大面積の厚膜電極を形成することが可能である。このため、フェイスアップマウントを実施する際のように、第二導電型側クラッド層における横方向への電流拡散を期待する必要がなく、第二導電型側クラッド層は、ある程度薄くすることが素子構造からも有利である。但し、極端に薄い場合には、キャリアの注入効率が低下してしまうため、最適値が存在する。第二導電型側クラッド層の厚みは、適宜選択可能であるが、0.05μmから0.3μmが望ましく、0.1μmから0.2μmが最も望ましい。
第二導電型クラッド層の第二導電型側電極と接触している部分においては、そのキャリア濃度を意図的に高くして、当該電極との接触抵抗を低減することも可能である。
第二導電型クラッド層の露出した側壁は、後述する第二導電型側電極との接触を実現した第二電流注入領域を除いて、すべて絶縁層で覆われている構造であることが望ましい。
さらに、第二導電型クラッド層に加えて、第二導電型半導体層として、必要によりさらに異なる層が存在してもよい。例えば、電極と接する部分にキャリアの注入を容易にするためのコンタクト層が含まれていてもよい。また、各層を、組成または形成条件等の異なる複数の層に分けて構成してもよい。
尚、本発明の要旨に反しない限り、薄膜結晶層として、必要により上述のカテゴリに入らない層を形成してもよい。
<第二導電型側電極>
第二導電型側電極は、第二導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントをした際には、良好な発光波長帯域における反射ミラーとなり、また、フリップチップマウントした際に、ハンダ材などによるサブマウントなどとの良好な接着を実現するものである。本目的のためには、適宜材料選択が可能であり、第二導電型側電極は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
また、第二導電型がp型で第二導電型側クラッド層の第二導電型側電極側がGaNである場合には、第二導電型側電極を構成する材料として、Ni、Pt、Pd、Mo、Auのいずれか、またはそれらの2種以上の元素を含む材料が好ましい。この電極は、多層構造であってもよく、少なくとも1層は上記元素を含む材料で形成され、好ましくは各層が上記元素を含み構成成分(種類および/または比率)が異なる材料で構成される。電極構成材料は、好ましくは単体金属または合金である。
特に好ましい実施形態では、第二導電型側電極のp側クラッド層側の第一層目はNiであり、第二導電型側電極のp側クラッド層側と反対側の表面はAuである。これは、Niの仕事関数の絶対値が大きく、p型材料にとって都合がよく、また、Auは、後述するプロセスダメージに対する耐性、マウントの都合などを考えると最表面の材料として好ましい。
第二導電型側電極は、第二導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第二導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<第一導電型側電極>
第一導電型側電極は第一導電型の窒化物化合物半導体と良好なオーム性接触を実現し、かつ、フリップチップマウントをした際には、良好な発光波長帯域における反射ミラーとなり、また、フリップチップマウントした際に、ハンダ材等によるサブマウントなどとの良好な接着を実現するものであって、本目的のためには、適宜材料選択が可能である。第一導電型側電極は単一の層であっても、複数の層からなる場合でもかまわない。一般には、電極に要請される複数の目的を達するために、複数の層構成をとるのが普通である。
第一導電型がn型であるとすると、n側電極は、Ti、Al、Ag、Moのいずれか、またはそれらの2種以上の元素を含む材料が好ましい。この電極は、多層構造であってもよく、少なくとも1層は上記元素を含む材料で形成され、好ましくは各層が上記元素を含み構成成分(種類および/または比率)が異なる材料で構成される。電極構成材料は、好ましくは単体金属または合金である。これらは、これらの金属の仕事関数の絶対値が小さいためである。また、n側電極の第1の光取り出し方向の反対側には、Alが露出するのが普通である。
タイプAの発光素子においては、第一導電型側電極は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極と第二導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことが望ましい。これは、発光素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウントなどとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極と第一導電型側電極との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。
ここで、第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅は15μm以上であることが望ましい。これはフォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によって形成することが好ましい第一導電型側電極の形成プロセスにおけるマージンが必要であるからである。
第一導電型側電極は、第一導電型のキャリアを注入可能であれば、薄膜結晶層のどの層と接してもよく、例えば第一導電型側コンタクト層が設けられるときは、それに接するように形成される。
<絶縁層>
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。構造および形状については前述したとおりである。
絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、材料は適宜選択することができる。例えば、単層の酸化物、窒化物、フッ化物等が好ましく、具体的には、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrF、MgF等から選ばれることが好ましい。これらは、長期に渡って安定に絶縁性を確保できる。
一方、絶縁層30を絶縁物の多層膜とすることも可能である。これは、誘電体多層膜となるので、絶縁層内の誘電体の屈折率を適宜調整することによって、発光素子内で発生した光に対して光学的機能を発現させられるからである。
また、その材料の安定性、屈折率の範囲から考えて、誘電体膜中に、フッ化物が含まれることは望ましく、かつ、具体的にはAlF、BaF、CaF、SrF、MgFのいずれかが含まれることが望ましい。
<サブマウント>
サブマウント40は、金属層を有し、フリップチップマウントをした素子への電流注入と放熱の機能を併せ持つものである。サブマウントの母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BN、CuWのいずれかであることが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できて望ましい。またAl、Si、ガラス等も安価であってサブマウントの母材として利用範囲が広く好ましい。尚、サブマウントの母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆う事が望ましい。金属の母材としては、発光素子の発光波長における反射率の高い材料が望ましく、Al、Ag等が望ましい。また、誘電体等で覆う際には、各種CVD法で形成したSiN、SiO等が望ましい。
発光素子は各種ハンダ材、ペースト材によってサブマウント上の金属層に接合される。素子の高出力動作と高効率な発光のために放熱性を十分に確保するためには、特に金属ハンダによって接合されることが望ましい。金属ハンダとしては、In、InAg、PbSn、SnAg、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。これらハンダは安定であって、使用温度環境等に照らして適宜選択可能である。
また、タイプAの発光素子の複数個を1つのサブマウントに搭載することも可能であり、サブマウント上の金属配線を自在に変化させることで、1つのサブマウント上の各発光素子を並列接続にも、直列接続にもすることも、あるいはこれらを混在させることも可能である。
〔タイプAの発光素子の製造方法〕
次に、タイプAの発光素子の製造方法について説明する。代表的形態の製造方法について、説明する。
<製造方法の実施形態1>
製造方法の実施形態1では、図1-1Aに示す発光素子を主として、さらに図1-1Cおよび図1-1Dに示す発光素子の製造方法を説明する。図1-5に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光均一化層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法、VPE法、LPE法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、本発明において図1-1A、図1-1B、図1-3Aに示された形状を実現するためには、図1-5に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、タイプAの発光素子において第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からもタイプAの発光素子の製造では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図1-6に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNのような窒化物やSiO等の酸化物をエッチングマスクとしてCl等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に、SrF、AlF、MgF、BaF、CaFおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl、SiCl、BCl、SiCl等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図1-7に示すように、装置間分離溝13を、第二エッチング工程により形成する。タイプAの発光素子では、装置間分離溝は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要であり、本実施形態では、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、装置を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同じ)の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図1-1Cおよび図1-1Dを参照。)。この場合、溝底面が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。尚、溝底面は、素子分離の際にスクライブ等の処理を受けるため、素子分離後の端部段差面は、面としての平面性および層方向との平行性については高くない場合が多い。また、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。
第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光均一化層23およびバッファ層22の少なくとも一部、場合によっては全部をエッチングすることが必要なことから、3〜7μmとなることがあり、場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiN等の窒化物マスク、SiO等の酸化物マスク等は、Cl系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiN膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で10μmのGaN系材料をエッチングする最には、2μmを越えるSiNマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において装置間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF、CaF、SrF、BaF、AlFが好ましく、この中でもSrFが最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、SrF等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiN、SiOなどと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl、BCl、SiCl、CClおよびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrFマスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiN、SiOなどとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiN、SiO等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図1-16に示すように、SiN、SiO等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図1-7に示すように、装置間分離溝13が形成される。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程は、どちらの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチング工程を実施することも好ましい。図1-16に示すように、まずSiN、SiO等の酸に強い材料(好ましくはSiN)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二エッチングマスク52を形成する。そして、第二エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これらは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
尚、タイプAの説明で定義する「後退側壁面」は、第二エッチング工程、即ち、装置間分離溝形成のときに側壁として現れる側壁面であり、第一エッチングのみで現れる壁面ではない。
第二エッチング工程の後には、図1-8に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図1-9Aに示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で絶縁層が除去されたスクライブ領域14を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極の周辺部分が絶縁層によって覆われているように実施する。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極の一部が絶縁層に覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L2w)は前述のとおり15μm以上であることが望ましい。さらに望ましくは100μm以上である。絶縁層によって第二導電型側電極の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。
絶縁層の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層がSiN単層である場合には、SF等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層がSiOとTiOからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
スクライブ領域14の幅としては、すでに説明したように、所定のLwsが得られるように設定することができる。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、およびスクライブ領域14の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。尚、装置間分離溝が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成される場合にも、上記のプロセスで絶縁層を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。
次に、図1-10に示すように、第一導電型側電極28を形成する。本形態においては、第一導電型側電極は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極と第二導電型側電極は、空間的に重なりを有さないことが特徴である。これは、当該素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウントなどとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極と第一導電型側電極との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L1w)は、前述の範囲になるように設定される。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、Al、AgおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第一導電型側電極は、この例では、第一導電型クラッド層にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
本発明の製造方法では、第一導電型側電極が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい実施形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、もしn側電極が第二導電型側電極のように絶縁層の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、本形態においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図1-10の構造が形成された後には、各化合物半導体発光素子を1つ1つ分離するために、装置間分離溝を使用して、基板対してダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
また、装置間分離溝は、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されている場合もあるが、この場合にも、装置間分離溝を使用して、基板に対してのダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
本形態では、素子間分離工程の際に、装置間分離溝に性能に影響を与える薄膜結晶層がないので、薄膜結晶層へのプロセスダメージの導入がない。また、スクライブ領域に絶縁層も存在しないので、スクライブ時に、絶縁層の剥離等が生じる可能性もない。
傷入れ(スクライブ)が終了した後には、化合物半導体発光素子はブレーキング工程において、1装置ずつに分割され、好ましくはハンダ材料等によってサブマウントに搭載される。
以上のようにして、図1-1Aに示した発光素子が完成する。同様に、図1-1Cおよび図1-1Dに示した発光素子も製造することができる。
この製造方法では、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極の形成、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程)、絶縁層の形成、絶縁層の除去(第二導電型側電極露出部分の形成、第一電流注入領域の形成、スクライブ領域の形成)、第一導電型側電極の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極にもダメージのない発光素子を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、この発光素子は、第二導電型側電極、絶縁層、第一導電型側電極がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極は、第二導電型クラッド層(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層を介在しないで接しており、第二導電型側電極の上部周辺には絶縁層で覆われた部分があり、第一導電型側電極と第一導電型側クラッド層(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層が介在している部分が存在している。
<製造方法の実施形態2>
製造方法の実施形態2では、図1-2Aに示す発光素子を主として、さらに図1-2C、図1-2Dおよび図1-2Eに示す発光素子の製造方法を説明する。実施形態2では、実施形態1において絶縁層30の形成工程までは同一である(図1-5〜図1-8)。その後、実施形態1では、基板面(溝底面)の装置間分離溝の中央部を含む領域のみを除去したが、実施形態2では、図1-9Bに示すように、装置間分離溝13内で基板21上(即ち、溝底面)の絶縁層30をすべて除去し、また、溝内の側壁に形成された絶縁層の基板側(即ち、溝底面側)の絶縁層を除去し絶縁層非形成部分15とする。形成方法として、次のようなプロセスが可能である。まず、装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層がウエットエッチャントで除去され、図1-9Bに示したように基板側の側壁に絶縁層が存在しない形状が得られる。
絶縁層が除去されて露出する側壁は、バッファ層の側壁の少なくとも基板側の部分であり、実施形態によっては、バッファ層22の側壁の全部を露出させてもよく、また光均一化層23の側壁の少なくとも一部まで露出させてもよい。光均一化層23の側壁の一部まで露出させた場合は、図1-2Aにおいて、バッファ層の側壁が露出し、図1-2A中の絶縁層比形成部分が、光均一化層23の側壁まで達する。絶縁層が存在しない露出した側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、サブマウントとの接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。このような絶縁層の除去形状は、特に発光素子の製造工程中に、基板を除去する際には、これに付随して絶縁層の剥離など意図しない不具合が発生しないため、望ましい形状である。また、基板の一部までエッチングして装置間分離溝を形成した場合には、溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層が絶縁層で被覆されている場合がある。
実施形態1と同様に、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
その後は、実施形態1と同様のプロセスにより図1-2Aに示す発光素子を完成することができる。
製造方法の実施形態2において、実施形態1と同様に、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図1-2C、図1-2Dおよび図1-2E。)。この場合、溝底面が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。また、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。そして、絶縁層30を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。その他は実施形態2と同様にして、図1-2C、図1-2Dおよび図1-2Eに示した発光素子も製造することができる。図1-2Dと図1-2Eの形状の違いは、サイドエッチングの時間等を調整して制御する。
実施形態2のプロセス(およびその変形プロセス)で製造された発光素子も、側壁を覆う絶縁層が、発光素子の端まで達していない形状ができている装置であり、絶縁層の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図1-1Aの形態の発光素子と同じく信頼性の高い装置となる。
<<2−2.タイプB>>
タイプBの発光素子の特徴は次の事項で特定される。
1. バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記バッファ層と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有し;
さらに、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体
を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
2. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする上記1記載の発光素子。
3. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁層が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部をも被覆していながら、端部段差面上には形成されていないことを特徴とする上記1記載の発光素子。
4. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
前記(i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁層が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆していることを特徴とする上記1記載の発光素子。
5. 前記バッファ層のうち、側壁面が前記絶縁層で被覆されていない部分を構成する層は、アンドープ型であることを特徴とする上記4記載の発光素子。
6. 前記光均一化層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に設けられている層であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の発光素子。
7. 前記光均一化層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をn、前記バッファ層の平均屈折率をnbfで表したとき、
<noc および nbf≦noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光素子。
8. 前記発光素子の発光波長をλ(nm)、前記光均一化層の発光波長における平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の発光波長における平均屈折率をn、前記光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光均一化層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)
Δ(oc−1)≡((noc)−(n))/(2×(noc)
と定義したとき、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光素子。
9. さらに、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ 2×π
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記8記載の発光素子。
10. 前記光均一化層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光素子。
11. 前記光均一化層が複数の層の積層構造であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光素子。
12. 前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の発光素子。
13. 前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上であることを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の発光素子。
14. 前記L2wが100μm以上であることを特徴とする上記13記載の発光素子。
15. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag、Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光素子。
16. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光素子。
17. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の発光素子。
18. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載の発光素子。
19. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記18記載の発光素子。
20. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記19記載の発光素子。
21. 前記薄膜結晶層が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaOおよびMgOからなる群より選ばれる基板上に成膜されて形成されたことを特徴とする上記1〜20のいずれかに記載の発光素子。
22. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の発光素子。
23. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜22のいずれかに記載の発光素子。
24. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜23のいずれかに記載の発光素子。
25. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属層を有する支持体に接合されていることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の発光素子。
26. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記支持体の金属層との接合が、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによってなされていることを特徴とする上記25記載の発光素子。
27. 前記支持体の母材がAlN、Al、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記25または26記載の発光素子。
28. 前記支持体の装置間の分離部分に、金属層が形成されていないことを特徴とする上記25〜27のいずれかに記載の発光素子。
29. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記2記載の発光素子。
30. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記3記載の発光素子。
31. 前記バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記2記載の発光素子。
32. 前記光均一化層からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記バッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記3記載の発光素子。
タイプBの発光素子によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率、さらに第1の光取り出し方向側の面での明るさの均一性が高いフリップチップマウント型の半導体発光素子を提供することができる。
タイプBの発光素子の構造では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
以下、タイプBの発光素子をさらに詳細に説明する。
図2-1A、図2-2A、図2-3Aに、タイプBの化合物半導体発光素子(以下、単に発光素子という)の代表的例を示す。図2-1Bおよび図2-3Bは、説明のために、図2-1Aおよび図2-3Aの一部を省略した図である。図2-4A、図2-4Bは発光素子の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図である。以下、図2-1A〜図2-4Bを参照して説明する。
タイプBの発光素子は、図2-1A、図2-2Aおよび図2-3Aに示すように基板21上に、バッファ層22、光均一化層23、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。
第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層26、活性層構造25の一部、第一導電型クラッド層24の一部が除去された構成となっており、除去された箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、バッファ層22に対して同じ側に配置されるように構成されている。第二導電型側電極27および第一導電型側電極28は、支持体40上の金属層41に、金属ハンダ42を介してそれぞれ接続されている。
タイプBの発光素子において、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27は、互いに空間的に重なりを有していない。これは、図2-1A、図2-2Aおよび図2-3Aに示すように、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を第1の光取り出し方向側の面50bに対して投影したときに、影が重ならないことを意味する。
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」等に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。同時に、タイプBの発光素子10では、素子にダメージを与え性能に影響を及ぼしたり、歩留まりに影響を与えたりしないように、絶縁層が最適な位置に配置されている。
タイプBの発光素子10は、(I)発光素子10の端部の段差形状、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状、の2箇所で異なる形態を取り得る。(I)発光素子10の端部の段差形状については、製造工程において素子分離を行うために装置間分離溝13(図2−4A等参照)を形成する際のエッチング深さにより、大きく分けて(i)光均一化層23の途中まで、(ii)バッファ層22の途中まで、(iii)薄膜結晶層成長用の基板面まで(またはそれより深く)、の3つの選択がある。また、装置間分離溝13の壁面は、素子分離後に素子端より後退するので、タイプBでは装置間分離溝13の形成時に側壁面として現れた面を、素子分離後の素子については、「後退側壁面」という。また、素子分離により素子端に現れる側壁面を、「非後退側壁面」という。そして、発光素子10の端部には、後退側壁面と非後退側壁面の間で段差面が形成されるので、これを「端部段差面」という。
装置間分離溝13の深さ(i)〜(iii)に対応して、(i)では、薄膜結晶層の後退側壁面に対して、光均一化層23の一部が共に後退側壁面を構成し、残り(第1の光取り出し方向側)の光均一化層23の側壁は、非後退側壁面となり、光均一化層23の端に端部段差面が存在する形状となる。同様に(ii)では、バッファ層22の端に端部段差面が存在する形状となる。(iii)では、光均一化層23およびバッファ層22のどちらの側壁も、後退側壁面を構成するので(装置間分離溝13の側壁面となるため)、素子完成後に基板が存在しないタイプBの発光素子においては端部段差面は存在しない。尚、(iii)の場合でも、装置間分離溝13の壁面面は、装置間分離溝13を形成しないで分離したときの素子端面に比べて後退していることになるので、タイプBでは統一して「後退側壁面」という。
(i)に対応するのは、図2-2A、図2-3A(図2-3B)である。(ii)に対応する形状は、図2-2B、図2-2C、図2-3Cである。(iii)に対応するのは、図2-1A(図2-1B)である。
(II)発光素子端部の絶縁層30の形状については、製造工程において、(i)装置間分離溝13の側壁に形成された絶縁層30を残したまま、溝底面上の中央を含む領域の絶縁層30のみを除去するか、(ii)溝底面に形成された絶縁層30のすべてに加えて、溝内の側壁の一部までを含めて絶縁層30を除去するか、の選択があり、その結果製造される発光素子10において、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、の2種類が存在する。(i)に対応するのは、図2-3A(図2-3B)、図2-3Cである。(ii)に対応するのは、図2-1A(図2-1B)、図2-2A(図2-2B)、図2-2Cである。
尚、タイプAの発光素子においては、製造工程中に薄膜結晶層成長用の基板を除去するため、基板除去の際に絶縁層30が基板に付いている形態は好ましくない。従って、上記の組み合わせて、(I)発光素子10の端部の段差形状が、(iii)光均一化層23およびバッファ層22のどちらにも段差がない形状であり、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状について、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、となる組み合わせは、タイプBには含まれない形態である。
タイプBの発光素子の形状を(II)発光素子端部の絶縁層30の形状により、第1の態様:(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、第2の態様:(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状の順に分けて説明する。
但し、タイプBの発光素子に共通して、第1の光取り出し方向のバッファ層22の端までは絶縁層30が達していない。
〔第1の態様〕
第1の態様に属する形態を、図2-1A〜図2-2Cに示す。まず、代表的な形態として図2-1Aを用いて説明する。タイプBの発光素子は、図2-1Aに示すように、第1の光取り出し方向に基板を有していない。絶縁層30は、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面のうち、少なくとも、第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)、活性層構造25、および第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の側壁面を被覆している。また、バッファ層22の側壁面の少なくとも第1の光取り出し方向側に、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が存在し、これは場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。さらに、光均一化層23の側壁面の一部まで、または全部まで渡っていてもよい。このように、タイプBの発光素子では、バッファ層22の第1の光取り出し方向側の素子端には絶縁層30が存在することはない。この点は、他の実施形態でバッファ層22または光均一化層23に端部段差面がある場合においても同じである。
また、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15のバッファ層22は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。また、絶縁層非形成部分15が光均一化層23まで及んでいるときは、その部分まではドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出している部分が絶縁性の高い材料であればハンダの回り込みによる短絡等の虞がなく、信頼性の高い素子となる。
この構造は、製造工程途中の素子分割前は、図2-4Aに示される形状を経由する。製造工程途中において、絶縁層30は、装置間分離溝13の溝内の基板面(溝底面)と、基板面(溝底面)に近接する溝側壁面の絶縁層非形成部分15から除去されている。タイプBの発光素子では、製造工程中で、基板21が剥がされる。このとき、絶縁層30が基板21に接していないため、基板剥離の際に、絶縁層30の剥がれが生じない。従って、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、図2-1AのA部分に示すように、バッファ層22の壁面の第1の光取り出し方向側に絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が存在する。つまり、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子10は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子10の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
さらに絶縁層30は、図2-1BのB部分に示すように、第一導電型側電極28の基板側(第1の光取り出し方向側)の一部に接している。即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)との間の一部に、絶縁層30が介在している。その結果、第一導電型側電極28の面積が、第一電流注入領域36の面積より大きい。図2-1Bに示すように、第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
さらに絶縁層30は、図2-1BのC部分に示すように、第二導電型側電極27の支持体40側(第1の光取り出し方向の反対側)の一部を覆っている。即ち、第二導電型側電極27の電極露出部分37の面積が、第二導電型側電極27の面積より小さく、第二電流注入領域35の面積は、第二導電型側電極27の面積と等しい。図2-3Bに示すように、第二導電型側電極27の周辺から絶縁層30で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
また、第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)、第二導電型半導体層(この実施形態では第二導電型クラッド層26)の支持体40側(第1の光取り出し方向の反対側)の表面の露出部分も短絡防止のために、通常は図に示すように絶縁層30で被覆される。
絶縁層30と各電極27、28とのこのような位置関係により、プロセスダメージの少ない工程により製造することが可能である。
さらに、タイプBの発光素子は、第一導電型半導体層(この形態では第一導電型クラッド層24)より第1の光取り出し方向側に、光均一化層23を有している。光均一化層23は、詳細は後述するが、適度な光閉じ込め効果を有し、活性層構造25で発光した光は、局在することなく光均一化層全体に分布する。そのため、第1の光取り出し方向側の面50bから見たとき、第一導電型側電極28の取り出しのために活性構造層25がない非発光部に対応する領域にも光が分布し、また活性構造層での発光にムラがあっても、均一化するように光が分布する。さらに、光均一化層23の周囲は絶縁層30で被覆されているため、絶縁層30の発光波長に対する反射率を高めることで、光均一化層23内での光閉じ込め効果が上がり、面内均一性がさらに向上する。
〔第1の態様その2〕
第1の態様に属するその他の形態を、図2-2A〜図2-2Cを用いて説明する。図2-1Aの形態では、と異なる点は、図2-1Aの発光素子では、(I)発光素子10の端部の段差形状が、(iii)光均一化層23およびバッファ層22のどちらにも段差がない形状であるのに対して、図2-2A〜図2-2Cで示す発光素子では、(i)光均一化層23の端に装置間分離溝に基づく端部段差面55を有する形状、または(ii)バッファ層22の端に装置間分離溝に基づく端部段差面55を有する形状である点である。
この形状は、装置間分離溝が、光均一化層23の途中まで、またはバッファ層22の途中まで形成されて製造され、その結果、完成した発光素子10では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、発光素子10の端より内側に後退して後退側壁面を構成し、素子端壁面(非後退側壁面)との間で端部段差面55が存在している。
図2-2Aに、装置間分離溝が光均一化層23の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端まで、バッファ層22と光均一化層23の一部が非後退側壁面として存在し、光均一化層23の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。バッファ層22の壁面はすべて露出している。そして、光均一化層23の端部段差面55も絶縁層30で被覆されておらず、また、後退側壁面には、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。
図2-2Bに、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22の一部が非後退側壁面として存在し、バッファ層22の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。非後退側壁面(素子端の側壁部分)は、絶縁層30で被覆されておらず、また、端部段差面55も絶縁層30で被覆されておらず、さらに、後退側壁面(装置間分離溝の側壁)では、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。この例では、絶縁層非形成部分15が、バッファ層22にのみ存在し、光均一化層23は絶縁層30により被覆されている。図2-2Cも、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例である。この図で示すように、絶縁層非形成部分15が、バッファ層22から光均一化層23まで延びており、バッファ層22の側壁はすべて露出している。
これらの例のように、装置間分離溝13が、光均一化層13とバッファ層22を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子10の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図2-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
〔第2の態様〕
第2の態様では、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状が、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状となっている。図2-3Aの発光素子は、素子分割前には図2-4Bに示すように、装置間分離溝13は光均一化層23の途中まで形成され、絶縁層30は装置間分離溝13の溝底面の全てを覆うのではなく、溝底面に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。従って、製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に、バッファ層22および光均一化層23をブレーキングすればよく、薄膜結晶層のうちデバイス性能に関わる層、即ち、第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層に直接的にダメージを与えることがない。また、溝底面の絶縁層30のないスクライブ領域14から分割するので、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることがない。
その結果得られる分離された後の発光素子では、図2-3A、図2-3BのA部分に示すように、光均一化層23に形成された端部段差面(溝底面)55の全面を絶縁層30が覆うのではなく、素子端からLwsだけ離れた位置より内側の基板面を覆っている。スクライブ領域14の幅の中央から分割された場合、絶縁層30で覆われていない距離Lwsは、製造のゆらぎ等の範囲でスクライブ領域14の幅の略1/2に対応する。即ち、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
wsは、完成した発光素子においては、0より大きければよいが、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。設計値としては、スクライブ領域14の幅を2Lwsとすると、2Lwsは、30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
図2-3Cに示す発光素子は、装置間分離溝が、図2-4Cに示すようにバッファ層22の途中まで形成され、さらに溝底面に形成された絶縁層30が、溝中央領域を含むスクライブ領域14において除去されて製造される形態である。
第2の態様の発光素子においても、露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図2-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。また、第2の態様のその他の部分の形状については、第1の態様と同様である。
以下に、発光素子を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
タイプBの発光素子では、完成した発光素子に基板が残らない。基板はその上に半導体層を成長させることが可能なものが選ばれ、また最終的に除去できるものが用いられる。基板は、透明である必要はないが、製造工程で、基板を後述するレーザディボンディングにより剥離するときには、その特定の波長のレーザ光を透過することが好ましい。また、電気的には絶縁性基板である事が好ましい。これは、製造工程で、同様にレーザディボンディング法によって基板を剥離する際に、導電性基板ではその自由電子による吸収等によって、このような基板剥離方法を採用しにくくなるからである。
前述のタイプAで説明した基板材料は、すべてタイプBの発光素子でも使用できる。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaO、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。基板を除去する際にケミカルエッチングを前提とする場合には、塩酸等で容易に除去可能なZnOが好ましい。
また、タイプAで説明したように、オフ基板も使用可能である点、基板にあらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい点、また、基板に意図的に凹凸をつけてもよい点等も同様である。
基板の厚みとしては、1つの実施形態においては、装置作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、半導体結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。基板を用いて必要な半導体層を成長した後に、基板は、例えば研磨、エッチング、またはレーザディボンディング等により除去される。特にレーザディボンディング等の光学的な手法によって剥離される際には、薄膜結晶成長時には両面研磨基板を用いることが望ましい。これは、薄膜結晶成長されていない面から照射されるレーザ等を、片面研磨基板を用いてしまうと、粗面から入射することになり、レーザディボンディング時に不要に大きなレーザ出力が必要となるためである。
<バッファ層>
バッファ層に関して、タイプAで説明した事項は、すべてタイプBの発光素子にも当てはまる。タイプBの発光素子では基板が残らないため、好ましい事項をさらに説明する。
完成した発光素子においては、すでに説明したように、バッファ層の側壁面の少なくとも第1の光取り出し方向(バッファ層成膜の際の基板側)の近傍は、絶縁層で被覆されていない。
さらに、後述する光均一化層に光を閉じ込めて導波するために、発光素子の発光波長におけるバッファ層の屈折率は、光均一化層の平均屈折率以下であり、好ましくは光均一化層の平均屈折率未満である。バッファの物理厚みは、発光素子の発光波長をλ(nm)、バッファの平均屈折率をnbfで表したとき、4λ/nbfよりも厚いことが望ましい。
また、基板を製造工程中に除去するので、バッファ層が第1の光取り出し方向側の面になる。前述のとおり基板の剥離の1つ方法として、基板に対して透明で、バッファ層に対して吸収のある光を用いて、バッファ層の一部を光学的に分解して、基板を剥離する方法が挙げられる。そのような方法を採用する場合には、その方法に適合した材料が選択される。たとえば、基板がサファイアで、バッファ層がGaNである場合には、248nmの発振波長を有するエキシマレーザを薄膜結晶成長がされていない基板側から光を照射し、バッファ層のGaNを金属Gaと窒素に分解して、その結果、基板を剥離するレーザディボンディングを実施することも可能である。
タイプBの発光素子では、第1の光取り出し方向に基板が存在しないので、バッファ層の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されることが望ましい。バッファ層−空気界面での屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで、後述する光均一化層からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすようにバッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることは望ましい。たとえばバッファ層がGaNである場合には、低反射コーティング膜としてAl等を用いることが望ましい。これは素子の発光波長におけるバッファ層の屈折率nbfに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nbfに近いことが望ましいので、GaNの屈折率の平方根に対して、Alの屈折率が近いからである。
バッファ層の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面あるいは粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。ここで、素子の発光波長をλ(nm)とすると、バッファ層の粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
この形態では、バッファ層の少なくとも一部は、装置端で露出する。従って、少なくとも露出部分をアンドープ部分とすることが、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができるので好ましい。
<光均一化層>
タイプBの発光素子における光均一化層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプBの発光素子における第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<活性層構造>
タイプBの発光素子における活性層構造は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプBの発光素子における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプBの発光素子における第二導電型側電極は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプBの発光素子における第一導電型側電極は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプBの発光素子における絶縁層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<支持体>
タイプBの発光素子では、完成後の素子に基板が存在しないために、支持体に要求される機能は、タイプAで説明したサブマウントと多少異なる点がある。
支持体40は、基板剥離の際の薄膜結晶層の支持体としての役割を果たせることが必須であるが、さらに、本支持体は、素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つことも非常に望ましい。この観点で、支持体の母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できる点で好ましい。またAl、Si、ガラス等も安価であって支持体として利用範囲が広く好ましい。また、後述する基板除去時にレーザ照射によって薄膜結晶層の一部を金属Gaと窒素に分解した際には、金属Gaを除去する際にウェットエッチングを実施する事が望ましいが、この際も、支持体はエッチングされない材質であることが望ましい。尚、支持体の母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆う事が望ましい。金属の母材としては、発光素子の発光波長における反射率の高い材料が望ましく、Al、Ag等が望ましい。また、誘電体等で覆う際には、各種CVD法で形成したSiN、SiO等が望ましい。
支持体は、さらに素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つとの観点では、母材の上に、電流導入用の電極配線を有することが望ましく、また、この電極配線上で素子を搭載する部分には、適宜素子と支持体の接合用の接着層を有することが望ましい。ここで、接着層は、Agを含んだペースト、金属バンプ等を使用することも可能ではあるが、金属ハンダで構成されていることが、放熱性の観点で非常に望ましい。金属ハンダはAgを含んだペースト材、金属バンプなどと比較して圧倒的に放熱性に優れたフリップチップマウントが実現可能である。ここで、金属ハンダとしては、In、InAg、InSn、SnAg、PbSn、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。特に、AuSn、AuSi、AuGe等の高融点ハンダがより望ましい。これは、発光素子を超高出力動作させるために大電流を注入すると、素子近傍の温度が200℃程度に上昇するためであって、ハンダ材の融点として駆動時の素子温度よりも高い融点を有する金属ハンダがより好ましい。また、場合によっては、フリップチップマウント時の素子の段差を打ち消すために、バンプを用い、さらに、金属ハンダ材でその周りを埋めながら接合する事も望ましい。
また、通常、後述するように支持体を分割して素子分離を行うため、完成した発光素子では、支持体40の周辺には、金属配線が存在しない分離領域が存在することが好ましい。図2-5に示すように、金属配線が存在しない領域の幅をLWSPT2(図2-5では、左側をLWSPT2(left)、右側をLWSPT2(right)で表している。)とすると、LWSPT2は、完成した素子においては、0より大きければよいが、以下のとおり分離工程においていかなる手法を用いるかによって好ましい範囲は異なる。
スクライビングによって分離する際には、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。したがって分離領域47としては2LWSPT2を30μm以上とする事が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSPT2は、通常は、300μm以下、好ましくは、200μm以下である。
また、ダイシングによって分離する際には、LWSPT2は、通常は100μm以上、好ましくは500μm以上である。したがって分離領域47としては2LWSPT2を1000μm以上とする事が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSPT2は、通常は、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。
尚、支持体を分割しない実施形態も可能であり、例えば複数個の発光素子を1つの支持体に搭載することもできる。支持体上の金属配線を自在に変化させることで、1つの支持体上の各発光素子を並列接続にも、直列接続にも、またはこれらを混在させることも可能である。
〔タイプBの発光素子の製造方法〕
次に、タイプBの発光素子の製造方法について説明する。
<第1の態様の発光素子の製造方法>
製造方法の1例では、図2-7に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、光均一化層23、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図2-1A〜図2-2Cに示された形状を実現するためには、図2-7に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい実施形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、本発明では薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、本発明においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からも、薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、タイプBにおいては、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図2-8に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNのような窒化物やSiO等の酸化物をエッチングマスクとしてCl等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に、SrF、AlF、MgF、BaF、CaFおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl、SiCl、BCl、SiCl等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図2-9に示すように、装置間分離溝13を、第二エッチング工程により形成する。タイプBでは、装置間分離溝13は、少なくとも第一導電型クラッド層24を分断して形成されていることが必要であり、この実施形態では、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、素子を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同じ)の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝が、基板に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層の側壁に絶縁層を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図2-2A〜図2-2Cを参照。)。この場合、溝底面が、光均一化層とバッファ層を合わせた層の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。尚、溝底面は、素子分離の際にスクライブ等の処理を受けるため、素子分離後の端部段差面は、面としての平面性および層方向との平行性については高くない場合が多い。また、絶縁層で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。
第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、光均一化層23およびバッファ層22の少なくとも一部、場合によっては全部をエッチングすることが必要なことから、3〜7μmとなることがあり、場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiN等の窒化物マスク、SiO等の酸化物マスク等は、Cl系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiN膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で10μmのGaN系材料をエッチングする最には、2μmを越えるSiNマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において装置間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF、CaF、SrF、BaF、AlFが好ましく、この中でもSrFが最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、SrF等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiN、SiOなどと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl、BCl、SiCl、CClおよびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrFマスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiN、SiOなどとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiN、SiO等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図2-19に示すように、SiN、SiO等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図2-9に示すように、装置間分離溝13が形成される。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程は、どちらの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチング工程を実施することも好ましい。図2-19に示すように、まずSiN、SiO等の酸に強い材料(好ましくはSiN)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二エッチングマスク52を形成する。そして、第二エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これらは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
尚、タイプBの説明で定義する「後退側壁面」は、第二エッチング工程、即ち、装置間分離溝形成のときに側壁として現れる側壁面であり、第一エッチングのみで現れる壁面ではない。
第二エッチング工程の後には、図2-10に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図2-11に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層上で絶縁層が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で基板面と側壁から絶縁層が除去された絶縁層非形成部分15を形成する。
第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極27の周辺部分が絶縁層30によって覆われているように実施する。すなわち第二導電型側電極露出部分の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極27の一部が絶縁層30に覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L2w)は前述のとおり15μm以上であることが望ましい。さらに望ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。
絶縁層30の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層30がSiN単層である場合には、SF等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層30がSiOとTiOからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
尚、装置間分離溝内の基板近傍の側壁部分の絶縁層30を除去して、絶縁層非形成部分15を設けるには、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。まず、装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層30をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層30の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層30がウエットエッチャントで除去され、図2-11に示したように装置間分離溝近傍の絶縁層30が存在しない形状が得られる。このように絶縁層30を除去する場合においては、絶縁層30が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、支持体との接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。このような絶縁層30の除去形状は、特に発光素子の製造工程中に、基板21を除去する際には、これに付随して絶縁層30の剥離など意図しない不具合が発生しないため、望ましい形状である。
次に、図2-12に示すように、第一導電型側電極28を形成する。タイプBの発光素子においては、第一導電型側電極28は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極28と第二導電型側電極27は、空間的に重なりを有さないことが特徴である。これは、当該素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、支持体などとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L1w)は、前述の範囲になるように設定される。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、Al、AgおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第一導電型側電極28は、この例では、第一導電型クラッド層24にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
この製造方法では、第一導電型側電極28が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい実施形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、もしn側電極が第二導電型側電極27のように絶縁層30の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層30のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層30のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、タイプBの発光素子の製造においては、第一導電型側電極28の形成が絶縁層30の形成後かつ絶縁層30の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして図2-12の構造が形成された後には、基板21を除去するための前準備をする。通常、図2-12に示された構造を、ウエハー全体として、あるいはその一部を、先ず、図2−13に示すように支持体40に接合する。これは、薄膜結晶層全体としても高々15μm程度の厚みであるので、基板21を剥離してしまうと、機械的強度が不十分になりそれだけで自立してその後のプロセスを受けることが困難になるからである。支持体40の材料等については前述のとおりである。
図2-13に示すように、支持体40上の金属層41(電極配線等)に例えば金属ハンダ42で接続して搭載する。
このとき、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28は、お互いが空間的に重ならない配置となっており、かつ、第一導電型側電極28が第一電流注入領域よりも大きく、十分な面積も有しているため、意図しない短絡の防止と高い放熱性の確保が両立しており望ましい。また、他の薄膜結晶層の側壁も少なくともバッファ層の一部、特にアンドープ部分を除いて絶縁層30で保護されるため、ハンダの染み出し等があっても薄膜結晶層内、たとえば活性層構造側壁における短絡等も発生することがない。
次に、支持体40に素子を接合した後に、基板21を剥離する。基板21の剥離には、研磨、エッチング、レーザディボンディング等のあらゆる方法を用いる事が可能である。サファイア基板を研磨する場合には、ダイヤモンド等の研磨材を使用して基板21を除去することが可能である。また、ドライエッチングによって基板21を除去することも可能である。さらには、たとえばサファイア基板上にInAlGaN系材料によって薄膜結晶成長部分が形成されている場合には、サファイア基板側から、サファイア基板は透過し、たとえばバッファ層22に使用されるGaNには吸収される248nmのKrFエキシマレーザを用いて、バッファ層22の一部のGaNを金属Gaと窒素に分解し、基板21を剥離するレーザディボンディングを実施することも可能である。図2-14には、レーザディボンディングにより基板21が剥離した様子を模式的に示した。
またZnOおよびScAlMgO等を基板21として使用する場合には、HCl等のエッチャントを用いて基板21をウェットエッチングで除去することも可能である。
タイプBの発光素子では、基板21に絶縁層30が接している部分がないため、基板剥離を実施した際に副次的に絶縁層30の剥離等が発生することがない。
その後、図2-14に示すように、装置間分離溝が存在する箇所に対応する分離領域47において、支持体40と共に発光素子を分離して単体の発光素子を得る。ここで、支持体40の分離領域47には、金属配線が存在しないことが好ましい。ここに金属配線が存在すると装置間の分離が実施しにくいからである。
支持体40の分離領域部分の切断には、支持体40の母材によって、ダイシング、スクライビングとブレーキングなど適宜プロセスを選択可能である。また、装置間分離溝が、光均一化層23とバッファ層22を合わせた層の途中まで形成されている場合には、装置間分離溝を使用して、ダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる光均一化層23および/またはバッファ層22の一部のアブレーション等を実施する事で、薄膜結晶層部分における発光素子間の分離は容易に実現可能である。その後、支持体40はダイシングによって、各発光素子に分離することが可能である。場合によっては、発光素子間の分離は、薄膜結晶層と支持体40をダイシングによって同時に分離することも可能である。
以上のようにして、図2-1A〜図2-2Cに示した第1の態様の発光素子が完成する。
<第2の態様の発光素子の製造方法>
図2-3A〜図2-3Cに示す第2の態様の発光素子を製造するには、第1の態様の製造方法の説明中で、装置間分離溝の形成の際に、光均一化層23またはバッファ層22の途中でエッチングを止める。同様にして絶縁層30を形成し、絶縁層30をエッチングするときに、図2-4B、図2-4Cに示すように、装置間分離溝の中央を含む領域から絶縁層30を除去し、スクライブ領域を形成する。第1の態様では、溝底面上の絶縁層30すべてを除去したが、この態様では絶縁層30が溝底面にも残るようにして、意図的なサイドエッチングは行わない。スクライブ領域14の幅は、すでに説明したように所定のLwsが得られるように設定することができる。その後は、第1の態様と同様にして、図2-3A〜図2-3Cに示す発光素子が完成する。
第1の態様および第2の態様に共通して、この製造方法では、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極27の形成、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程)、絶縁層30の形成、絶縁層30の除去(第二導電型側電極露出部分の形成、第一電流注入領域の形成、スクライブ領域の形成)、第一導電型側電極28の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極28にもダメージのない発光素子を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光素子は、第二導電型側電極27、絶縁層30、第一導電型側電極28がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極27は、第二導電型クラッド層26(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層30を介在しないで接しており、第二導電型側電極27の上部周辺には絶縁層30で覆われた部分があり、第一導電型側電極28と第一導電型側クラッド層24(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層30が介在している部分が存在している。
<<2−3.タイプA、Bの発光素子の製造方法の特徴>>
前述したタイプAおよびタイプBの発光素子の製法は、以下の事項に特徴付けられる。
1. (a)基板上に、バッファ層および光均一化層をこの順に成膜する工程(a)と、
(b)少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を前記基板側からこの順に成膜する工程(b)と、
(c)前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程(c)と、
(d)前記第二導電型側電極が形成されていない箇所の一部をエッチングして、前記第一導電型半導体層の一部を露出させる第一エッチング工程(d)と、
(e)隣接する発光素子を分離する装置間分離溝を形成するために、前記第二導電型側電極が形成されていない箇所の一部を、表面から、(i)前記光均一化層の少なくとも一部を除去するまで、(ii)前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで、または(iii)少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成する第二エッチング工程(e)と、
(f)前記第二導電型側電極、前記第一エッチング工程によって露出した第一導電型半導体層および前記装置間分離溝内を含む全面に絶縁層を形成する工程(f)と、
(g)前記装置間分離溝内の少なくとも溝底面の溝中央を含む領域の絶縁層を除去する工程(g)と、
(h)前記第一導電型半導体層面上に形成された絶縁層の一部を除去し、第一電流注入領域となる開口を形成する工程(h)と、
(i)前記第二導電型側電極の表面に形成された絶縁層の一部を除去し、前記第二導電型側電極の一部を露出させる工程(i)と、
(j)前記工程(h)で開口された第一電流注入領域に接して第一導電型側電極を形成する工程(j)と
を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
2. 前記工程(g)において、前記装置間分離溝の側壁に形成された前記絶縁層を残したまま、前記溝底面上の溝中央を含む領域の絶縁層のみを除去することを特徴とする上記1記載の方法。
3. 前記工程(g)において、前記装置間分離溝内の前記溝底面に形成された絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝内の側壁の少なくとも前記溝底面側の部分に形成された絶縁層を除去することを特徴とする上記1記載の方法。
4. 前記絶縁層が除去されて露出する面を構成する層は、アンドープ型であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 前記工程(j)の後に、
前記装置間分離溝で、前記基板を素子分離する工程と、
前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、サブマウント上の金属層に接合する工程と
をさらに有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6. 前記工程(j)の後に、
前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、支持体上の金属層に接合して支持体に搭載する工程と、
前記基板を除去する工程と、
前記支持体を分割して素子分離する工程と
をさらに有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の方法。
7. 前記バッファ層および光均一化層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記第一導電型半導体層の形成に先立って行われることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8. 発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光均一化層の平均屈折率をnoc、前記第一導電型半導体層の平均屈折率をnで表したとき、
sb<noc および n<noc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9. 前記発光素子の発光波長をλ(nm)、発光波長における前記基板の平均屈折率をnsb、前記光均一化層の平均屈折率をnoc、前記光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)とし、前記光均一化層と前記基板の比屈折率差Δ(oc−sb)
Δ(oc−sb)≡((noc)−(nsb))/(2×(noc)
と定義したときに、
(√(2×Δ(oc−sb))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocが選択されていることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10. 前記発光素子の発光波長をλ(nm)、前記光均一化層の発光波長における平均屈折率をnoc、第一導電型半導体層の発光波長における平均屈折率をn、前記光均一化層の物理的厚みをtoc(nm)とし、光均一化層と第一導電型半導体層の比屈折率差Δ(oc−1)
Δ(oc−1)≡((noc)−(n))/(2×(noc)
と定義したとき、
(√(2×Δ(oc−1))×noc×π×toc)/λ ≧ π/2
を満たすようにtocを選択することを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の方法。
11. 前記光均一化層全体の比抵抗ρoc(Ω・cm)が、
0.5 ≦ρoc
の関係を満たすことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光素子。
12. 前記光均一化層を複数の層として積層することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の方法。
13. 前記工程(j)において、前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上となるように前記第一導電型側電極を形成することを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の方法。
14. 前記工程(i)において、前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上となるように前記第二導電型側電極の一部を露出させることを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の方法。
15. 前記L2wが30μm以上であることを特徴とする上記14記載の方法。
16. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag、Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の方法。
17. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の方法。
18. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載の方法。
19. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の方法。
20. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記19記載の方法。
21. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記20記載の方法。
22. 前記薄膜結晶層を、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaOおよびMgOからなる群より選ばれる基板上に成膜して形成することを特徴とする上記1〜21のいずれかに記載の方法。
23. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜22のいずれかに記載の方法。
24. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜23のいずれかに記載の方法。
25. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜24のいずれかに記載の方法。
26. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極を、ハンダによって金属層を有するサブマウントに接合することを特徴とする上記5記載の方法。
27. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極を、ハンダによって前記金属層を有する支持体に接合することを特徴とする上記6記載の方法。
28. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記サブマウントまたは支持体の金属層との接合を、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによって行うことを特徴とする上記26または27記載の方法。
29. 前記サブマウントまたは支持体の母材がAlN、Al、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記26〜28のいずれかに記載の方法。
30. 前記サブマウントまたは支持体の発光素子間の分離部分に、金属層が形成されていないことを特徴とする上記26〜29のいずれかに記載の方法。
31. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記5記載の方法。
32. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記6記載の方法。
33. 前記バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記5記載の方法。
34. 前記光均一化層からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記バッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記6記載の方法。
35. 前記基板がGaNであり、前記バッファ層のすべてを900℃以上の温度にてGaNで形成することを特徴とする上記1〜34のいずれかに記載の方法。
上記の製造方法によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率、さらに第1の光取り出し方向側の面での明るさの均一性が高いフリップチップマウント型の半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
また、上記の製造方法では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子を製造することができる。
上記の製造方法によれば、タイプAおよびタイプBにおいて開示される発光素子を製造することができる。この製造方法は、工程(a)〜工程(j)を有しており、その工程順を図3のフローチャートに示す。工程(a)、(b)および(c)は、この順に実施する。工程(d)および(e)は、工程(c)の次に実施されるが、工程(d)および(e)の順番はどちらが先でもよい。その後、工程(f)を実施した後、工程(g)、(h)および(i)はどの順番で行ってもよいし、同時に行ってもよい。
薄膜結晶成長に使用した基板を剥離する場合は、工程(j)の後に実施する。
各工程の具体的内容に関しては、すでにタイプAおよびタイプBにおいて説明した通りであり、上記の製造方法は、その内容のすべてを包含する。但し、タイプAにて開示される発光素子においては、バッファ層は任意の構成であるので、バッファ層がない構成の発光素子を作製するときは、バッファ層の成膜工程は省略される。
また、工程(e)の違いと、工程(g)の違いにより、素子端の形状、絶縁層の溝底面および側壁面での形状が異なる。
<<2−4.タイプC>>
タイプCの発光素子の特徴は次の事項で特定される。
1. 発光波長に対して透明な基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
2. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
のいずれかの形状を有し;
前記絶縁層が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆していることを特徴とする上記1記載の発光素子。
3. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
(ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
前記絶縁層が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない事を特徴とする上記1記載の発光素子。
4. 前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光素子。
5. 前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の発光素子。
6. 前記L2wが100μm以上であることを特徴とする上記5記載の発光素子。
7. 薄膜結晶層の側壁面の後退によって露出した前記基板面のうち、前記絶縁層で覆われていない端面部の最も狭い部分の幅Lwsが15μm以上であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光素子。
8. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag、Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の発光素子。
9. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の発光素子。
10. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光素子。
11. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光素子。
12. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記11記載の発光素子。
13. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記12記載の発光素子。
14. 前記基板が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaOおよびMgOからなる群より選ばれることを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の発光素子。
15. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光素子。
16. 前記バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光素子。
17. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の発光素子。
18. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載の発光素子。
19. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光素子。
20. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属層を有するサブマウントに接合されていることを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の発光素子。
タイプCの発光素子によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率なフリップチップマウント型の半導体発光素子を提供することができる。
タイプCの発光素子の構造では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
図4-1Aおよび図4-2Aに、タイプCの化合物半導体発光素子(以下、単に発光素子という)の代表的例を示す。図4-1B、図4-2Bは、説明のためにそれぞれ図4-1Aおよび図4-2Aの一部を省略した図であり、図4-3A、図4-3Bは発光素子の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図である。以下、図4-1A〜図4-3Bを参照して説明する。
タイプCの発光素子10は、図4-1A、図4-2Aに示すように基板21上に、バッファ層22、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。
第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層26、活性層構造25の一部、第一導電型クラッド層24の一部が除去された構成となっており、除去された箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、基板21に対して同じ側に配置されるように構成されている。第二導電型側電極27および第一導電型側電極28は、サブマウント40上の金属層41に、金属ハンダ42を介してをそれぞれ接続されている。
タイプCの発光素子10において、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27は、互いに空間的に重なりを有していない。これは、図4-1Aに示すように、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を基板面に対して投影したときに、影が重ならないことを意味する。
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」等に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。同時に、タイプCの発光素子では、素子にダメージを与え性能に影響を及ぼしたり、歩留まりに影響を与えたりしないように、絶縁層30が最適な位置に配置されている。
タイプCの発光素子10は、(I)発光素子10の端部の段差形状、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状、の2箇所で異なる形態を取り得る。(I)発光素子10の端部の段差形状については、製造工程において装置間分離溝13(図4−3A等参照)を形成する際のエッチング深さにより、大きく分けて(i)バッファ層22の途中まで、(ii)基板面まで(またはそれより深く)、の2つの選択がある。また、装置間分離溝13の壁面は、素子分離後に素子端より後退するので、タイプCの発光素子10では装置間分離溝13の形成時に側壁面として現れた面を、素子分離後の素子については、「後退側壁面」という。また、素子分離により素子端に現れる側壁面を、「非後退側壁面」という。そして、発光素子10の端部には、後退側壁面と非後退側壁面の間で段差面が形成されるので、これを「端部段差面」という。
装置間分離溝13の深さ(i)〜(ii)に対応して、(i)では、薄膜結晶層の後退側壁面に対して、バッファ層22の一部が共に後退側壁面を構成し、残り(第1の光取り出し方向側)のバッファ層22の側壁は、非後退側壁面となり、バッファ層22の端に端部段差面55が存在する形状となる。(ii)では、バッファ層22の側壁も、後退側壁面を構成するので(装置間分離溝13の側壁面となるため)、基板21が露出した部分が端部段差面55となる形状となる。
(i)に対応するのは、図4-1C、図4-2Cである。(ii)に対応するのは、図4-1A(図4-1B)、図4-2A(図4-2B)である。
(II)発光素子端部の絶縁層30の形状については、製造工程において、(i)装置間分離溝13の側壁に形成された絶縁層30を残したまま、溝底面上の中央を含む領域の絶縁層30のみを除去するか、(ii)溝底面に形成された絶縁層30のすべてに加えて、溝内の側壁の一部までを含めて絶縁層30を除去するか、の選択があり、その結果製造される発光素子10において、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、の2種類が存在する。(i)に対応するのは、図4-1A(図4-1B)、図4-1Cである。(ii)に対応するのは、図4-2A(図4-2B)、図4-2Cである。
タイプCの発光素子10の形状を(II)発光素子端部の絶縁層30の形状により、(i):第1の態様、(ii):第2の態様として分けて説明する。
〔第1の態様〕
第1の態様に属する形態を、図4-1A〜図4-1Cに示す。まず、代表的形態として図4-1Aを用いて説明する。薄膜結晶層のうち少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層の側壁面は基板21の端より後退している。この形状は、タイプCのすべての形態に表れている。これは、図4-3Aに示すように、製造工程において、薄膜結晶層を成膜後、各素子間を分離するために、後述する方法によって所定の深さまで薄膜結晶層を除去して装置間分離溝13を形成し、分離溝内で、素子を分離しているからである。図4-1Aは、基板21に達するまで薄膜結晶層を除去した例を示し、タイプCの好ましい形態の1つである。タイプCの発光素子10では、薄膜結晶層、特に電流注入、発光等の本質的な機能に関わる部分である第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、一般に使用されるスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際のプロセスを被歴せず、素子が分離されるので、性能に関わる薄膜結晶層に直接的にダメージを与えない。このため、特に大電流注入においてその耐性や信頼性等の性能が優れている。
そして、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面は、絶縁層30により覆われる。
さらに、素子分割前には、図4-3Aに示すように、絶縁層30は装置間分離溝13の溝底面の全てを覆うのではなく、基板表面(即ち、溝底面)に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に基板21のみをスクライブ、ブレーキングすればよいので、薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。また、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、図4-1A、図4-1BのA部分に示すように、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面の全面を絶縁層30が覆うのではなく、基板21の端からLwsだけ離れた位置より内側の基板面を覆っている。仮にスクライブ領域14の幅の中央から分割された場合、絶縁層30で覆われていない距離Lwsは、製造のゆらぎ等の範囲でスクライブ領域14の幅の略1/2に対応する。即ち、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子10は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子10の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
wsは、完成した素子においては、0より大きければよいが、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。設計値としては、スクライブ領域14の幅を2Lwsとすると、2Lwsは、30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
また、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されることも好ましい形態である。その結果、完成した発光素子10では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、装置の端(基板端)より内側に後退し、溝底面に基づく段差により基板面と平行な面(端部平行面)が発光素子10の端に存在する。尚、図4-1Aでは基板面自身が、基板面と平行な面に対応する。
図4-1Cに、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22の一部が非後退側壁面として存在し、バッファ層22の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。バッファ層22の側壁のうち、非後退側壁面の部分は露出し、後退側壁面の部分は絶縁層30で被覆され、端部段差面55のうちで、端から離れた位置(図4-1BのLwsに対応する位置)から、内側を前記後退側壁面に連続して被覆している。これは、図4-1A(図4-1B)において、装置間分離溝をバッファ層22の途中でとめた形態に対応する。
これらの例のように、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子10の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図4-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
〔第2の態様〕
第2の態様に属する形態を、図4-2A〜図4-2Cに示す。第2の態様は、層構成等は第1の態様と同じであり、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状において異なっている。
まず、図4-2Aに示すように、薄膜結晶層のうち少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層の側壁面は基板21の端より後退して後退側壁面を構成している。この形状は、タイプCのすべての形態に表れている。これは、図4-3Bに示すように、製造工程において、薄膜結晶層を成膜後、各素子間を分離するために、後述する方法によって、薄膜結晶層を除去して装置間分離溝13を形成し、分離溝内で、素子を分離しているからである。タイプCのその他の態様と同じように、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面のうち、少なくとも、第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)、活性層構造25、および第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の側壁面は、絶縁層30により覆われている。
第2の態様では、基板21表面(装置間分離溝底面)にも、絶縁層30は存在しない。薄膜結晶層の後退側壁面で、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15は、バッファ層22の側壁面の少なくとも第1の光取り出し方向側に存在し、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。また、基板21の一部までエッチングして装置間分離溝13を形成した場合には、溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層22が被覆されている場合がある。
この場合、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15のバッファ層22は、ドーピングされていないアンドープ層であることが好ましい。露出している部分が絶縁性の高い材料であればハンダの回り込みによる短絡等の虞がなく、信頼性の高い素子となる。
この構造は、図4-3Bに示すように、製造工程途中の素子分割前の形状に対応し、絶縁層30は、装置間分離溝13の溝内の基板表面と、基板面に近接する溝側壁面の絶縁層非形成部分15から除去されている。
基板21と接している部分に絶縁層30が形成されていないので、製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に基板21のみをスクライブ、ブレーキングすればよいので、薄膜結晶層に直接的にダメージを与えることがない。また、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子では、図4-2Aおよび図4-2BのA部分に示すように、薄膜結晶層の側壁面が後退して露出した基板面を絶縁層30が覆っていない。この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
また、第2の態様においても、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されることも好ましい形態である。その結果、完成した発光素子では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、素子の端(基板端)より内側に後退し、溝底面に基づく段差により基板面と平行な面(端部平行面)が発光素子の端に存在する。
図4-2Cに、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端までバッファ層22の一部が非後退側壁面として存在し、バッファ層22の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。非後退側壁面(素子端の側壁部分)および端部段差面は、絶縁層30で被覆されておらず、また、後退側壁面(装置間分離溝の側壁)では、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。絶縁層非形成部分15は、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。
この例のように、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子の端まで達していない形状ができている装置は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図4-2Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
第1の態様および第2の態様に共通して、タイプCの発光素子では、絶縁層30は、図4-1B、図4-2BのB部分に示すように、第一導電型側電極28の基板側(第1の光取り出し方向側)の一部に接している。即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(この形態では第一導電型クラッド層24)との間の一部に、絶縁層30が介在している。その結果、第一導電型側電極28の面積が、第一電流注入領域36の面積より大きい。図4-1B、図4-2Bに示すように、第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
さらに絶縁層30は、図4-1B、図4-2BのC部分に示すように、第二導電型側電極27のサブマウント側(第1の光取り出し方向の反対側)の一部を覆っている。即ち、第二導電型側電極27の電極露出部分37の面積が、第二導電型側電極27の面積より小さく、第二電流注入領域35の面積は、第二導電型側電極27の面積と等しい。図4-1B、図4-2Bに示すように、第二導電型側電極27の周辺から絶縁層30で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
また、第一導電型半導体層(この形態では第一導電型クラッド層24)、第二導電型半導体層(この形態では第二導電型クラッド層26)のサブマウント側(第1の光取り出し方向の反対側)の表面の露出部分も短絡防止のために、通常は図に示すように絶縁層30で被覆される。
絶縁層30と各電極27、28とのこのような位置関係により、プロセスダメージの少ない工程により製造することが可能である。
タイプCの発光素子では、以上のように、プロセスダメージ、フリップチップマウントを実施した際の放熱性、絶縁性等が総合的に考慮された絶縁層30の配置となっている。
以下に、発光素子を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
基板21は、光学的に素子の発光波長に対しておおよそ透明であれば、材料等は特に限定されない。ここでおおよそ透明とは、発光波長に対する吸収が無いか、あるいは、吸収が存在しても、その基板の吸収によって光出力が50%以上低減しないものである。
基板は、電気的には絶縁性基板であることが好ましい。これは、フリップチップマウントをした際に、たとえハンダ材などが基板周辺に付着しても、発光素子への電流注入には影響を与えないからである。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaO、およびMgOから選ばれることが望ましく、、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。
タイプCの発光素子で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板をInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
基板は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して化合物半導体発光素子を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層との関係で、意図的に凹凸をつけた基板に加工しておき、これによって、薄膜結晶層と基板との界面で発生する貫通転移を発光素子の活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
基板の厚みとしては、タイプCの発光素子の1形態においては、素子作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、発光素子の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。これを用いて薄膜結晶層を成長した後に、各々の素子に分離しやすくするために、適宜、研磨工程によってプロセス途中で薄くし、最終的に装置としては100μm厚程度以下となっていることが望ましい。また、通常30μm以上の厚みである。
さらにタイプCの発光素子の異なる形態では、基板の厚さは、従来とは異なり厚いものでもよく、350μm程度、さらには400μm、または500μm程度の厚みがあってもよい。
さらに、基板の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されていることが望ましい。基板−空気界面の屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで、バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることが好ましい。たとえば基板がサファイアである場合には、低反射コーティング膜としてMgF等を用いることが望ましい。発光波長における基板の屈折率nに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nに近いことが望ましいので、サファイアの屈折率の平方根に対して、MgFの屈折率が近いからである。
基板の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面または粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。また、素子の発光波長をλ(nm)とすると、その粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が、
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
<バッファ層>
バッファ層22は、基板上に薄膜結晶成長する上で、転移の抑制、基板結晶の不完全性の緩和、基板結晶と所望の薄膜結晶層との各種の相互不整合の軽減など、主に薄膜結晶成長のための目的のために形成される。
バッファ層は、薄膜結晶成長で成膜され、タイプCの発光素子で望ましい形態であるInAlGaN系材料、InAlBGaN系材料、InGaN系材料、AlGaN系材料、GaN系材料などを異種基板上に薄膜結晶成長する際には、必ずしも基板との格子定数のマッチングが確保されないので、バッファ層は特に重要である。たとえば、薄膜結晶層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長する際には、600℃近傍の低温成長AlN層をバッファ層に用いたり、あるいは500℃近傍で形成した低温成長GaN層を用いたりすることも出来る。また、800℃から1000℃程度の高温で成長したAlN、GaN、AlGaN、InAlGaN、InAlBGaNなども使用可能である。これらの層は一般に薄く5〜40nm程度である。
バッファ層22は必ずしも単一の層である必要はなく、低温で成長したGaNバッファ層の上に、結晶性をより改善するために、ドーピングを施さない1000℃程度の温度で成長したGaN層を数μm程度有するようにしてもかまわない。実際には、このような厚膜バッファ層を有することが普通であって、その厚みは0.5〜7μm程度である。バッファ層は、Si等でドーピングされていてもよいし、バッファ層内にドーピング層とアンドープ層を積層して形成することも可能である。
典型的な形態としては、基板に接して350℃〜650℃未満程度の低温で薄膜結晶成長させた低温バッファ層と、650℃〜1100℃程度の高温で薄膜結晶成長させた高温バッファ層の2層構造のものが挙げられる。また、基板がGaNであるときには、バッファ層のすべてを900℃以上の高温にて形成したGaNとすることができる。
また、バッファ層の形成に関しては、いわゆるマイクロチャネルエピタキシーの一種である横方向成長技術(ELO)も使用可能であり、これによってサファイア等の基板とInAlGaN系材料の間で発生する貫通転移の密度を大幅に低減することも可能である。さらに基板の表面に凹凸の加工を施したような加工基板を使用する際にも、横方向成長をさせる際に転位の一部を消滅させることが可能であって、このような基板とバッファ層の組み合わせを本発明に適応する事は好ましい。さらに、この際には基板上に形成された凹凸によって光取り出し効率が向上する効果もあって、好ましい。
また、バッファ層は装置間分離溝の露出部分になる場合もあるが、露出部分はアンドープ部分であることが好ましい。これにより、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができる。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプCの発光素子では、光均一化層が存在しないので、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層は、バッファ層に接して存在する以外、タイプAで記載したものと同様の構成をを採用することができる。
<活性層構造>
タイプCの発光素子における活性層構造は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプCの発光素子における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプCの発光素子における第二導電型側電極は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプCの発光素子における第一導電型側電極は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプCの発光素子における絶縁層は、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<サブマウント>
タイプCの発光素子におけるサブマウントは、タイプAの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
〔タイプCの発光素子の製造方法〕
次に、タイプCの発光素子の製造方法について説明する。
<製造方法の実施形態1>
製造方法の実施形態1では、図4-1Aに示す発光素子を主として、さらに図4-1Cに示す発光素子の製造方法を説明する。図4-5に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法、VPE法、LPE法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図4-1A、図4-1B、図4-3Aに示された形状を実現するためには、図4-5に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層の形成工程を第二導電型側電極の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からも、薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、第二導電型側電極が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図4-6に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNのような窒化物やSiO等の酸化物をエッチングマスクとしてCl等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に、SrF、AlF、MgF、BaF、CaFおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl、SiCl、BCl、SiCl等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極27が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図4-7に示すように、装置間分離溝13を、第二エッチング工程により形成する。タイプCでは、装置間分離溝13は、少なくとも第一導電型クラッド層を分断して形成されていることが必要であり、本形態では、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、発光素子を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同じ)の一部までエッチングして装置間分離溝を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝13が基板21に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層24の側壁に絶縁層30を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図4-1Cを参照。)。この場合、溝底面が、バッファ層22の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面55になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。尚、溝底面は、素子分離の際にスクライブ等の処理を受けるため、素子分離後の端部段差面55は、面としての平面性および層方向との平行性については高くない場合が多い。また、絶縁層30で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。
第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、バッファ層22の少なくとも一部、場合によっては全部をエッチングすることが必要なことから、3〜7μmとなることがああり、場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiN等の窒化物マスク、SiO等の酸化物マスク等は、Cl系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiN膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で10μmのGaN系材料をエッチングする最には、2μmを越えるSiNマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において装置間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF、CaF、SrF、BaF、AlFが好ましく、この中でもSrFが最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、SrF等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiN、SiOなどと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl、BCl、SiCl、CClおよびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrFマスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiN、SiOなどとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiN、SiO等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図4-16に示すように、SiN、SiO等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図4-7に示すように、装置間分離溝13が形成される。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程は、どちらの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチング工程を実施することも好ましい。図4-16に示すように、まずSiN、SiO等の酸に強い材料(好ましくはSiN)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二エッチングマスク52を形成する。そして、第二エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これらは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
尚、タイプCの説明で定義する「後退側壁面」は、第二エッチング工程、即ち、装置間分離溝形成のときに側壁として現れる側壁面であり、第一エッチングのみで現れる壁面ではない。
第二エッチング工程の後には、図4-8に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層30は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図4-9Aに示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層30が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層24上で絶縁層30が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で絶縁層30が除去されたスクライブ領域14を形成する。第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極27の周辺部分が絶縁層30によって覆われているように実施する。すなわち第二導電型側電極露出部分37の表面積は第二電流注入領域の面積よりも小さい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極27の一部が絶縁層30に覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L2w)は前述のとおり15μm以上であることが望ましい。さらに望ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。
絶縁層30の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層30がSiN単層である場合には、SF等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層30がSiOとTiOからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
スクライブ領域14の幅としては、すでに説明したように、所定のLwsが得られるように設定することができる。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、およびスクライブ領域14の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。尚、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成される場合にも、上記のプロセスで絶縁層30を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。
次に、図4-10に示すように、第一導電型側電極28を形成する。タイプCにおいては、第一導電型側電極28は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極28と第二導電型側電極27は、空間的に重なりを有さないことが特徴である。これは、当該素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、サブマウントなどとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L1w)は、前述の範囲になるように設定される。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、Al、AgおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第一導電型側電極28は、この例では、第一導電型クラッド層24にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
タイプCの発光素子の製造方法では、第一導電型側電極29が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、もしn側電極が第二導電型側電極27のように絶縁層30の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層30のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層30のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、第一導電型側電極28の形成が絶縁層30の形成後かつ絶縁層30の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして、図4-10の構造が形成された後には、各化合物半導体発光素子を1つ1つ分離するために、装置間分離溝13を使用して、基板21に対してダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
また、装置間分離溝13は、バッファ層22の途中まで形成されている場合もあるが、この場合にも、装置間分離溝13を使用して、基板21に対してのダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによる基板材料の一部のアブレーションが実施される。
本形態では、素子間分離工程の際に、装置間分離溝13に性能に影響を与える薄膜結晶層がないので、薄膜結晶層へのプロセスダメージの導入がない。また、スクライブ領域14に絶縁層30も存在しないので、スクライブ時に、絶縁層30の剥離等が生じる可能性もない。
傷入れ(スクライブ)が終了した後には、化合物半導体発光素子はブレーキング工程において、1装置ずつに分割され、好ましくはハンダ材料等によってサブマウントに搭載される。
以上のようにして、図4-1Aに示した発光素子10が完成する。同様に、図4-1Cに示した発光素子も製造することができる。
この製造方法では、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極27の形成、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程)、絶縁層30の形成、絶縁層30の除去(第二導電型側電極露出部分の形成、第一電流注入領域の形成、スクライブ領域の形成)、第一導電型側電極28の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極28にもダメージのない発光素子を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、この発光素子は、第二導電型側電極27、絶縁層30、第一導電型側電極28がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極27は、第二導電型クラッド層26(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層30を介在しないで接しており、第二導電型側電極27の上部周辺には絶縁層30で覆われた部分があり、第一導電型側電極28と第一導電型側クラッド層24(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層30が介在している部分が存在している。
<製造方法の実施形態2>
製造方法の実施形態2では、図4-2Aに示す発光素子を主として、さらに図4-2Cに示す発光素子の製造方法を説明する。実施形態2では、実施形態1において絶縁層30の形成工程までは同一である(図4-5〜図4-8)。その後、実施形態1では、基板面(溝底面)の装置間分離溝の中央部を含む領域のみを除去したが、実施形態2では、図4-9Bに示すように、装置間分離溝13内で基板21上(即ち、溝底面)の絶縁層30をすべて除去し、また、溝内の側壁に形成された絶縁層30の基板21側(即ち、溝底面側)の部分を除去し絶縁層非形成部分15とする。形成方法として、次のようなプロセスが可能である。まず、装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層30をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝13内の基板面上の絶縁層30の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層30がウエットエッチャントで除去され、図4-9Bに示したように基板側の側壁に絶縁層30が存在しない形状が得られる。
絶縁層30が除去されて露出する側壁は、バッファ層22の側壁の少なくとも基板側の部分であり、実施形態によっては、バッファ層22の側壁の全部を露出させてもよい。絶縁層30が存在しない露出した側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、サブマウントとの接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。尚、基板21の一部までエッチングして装置間分離溝13を形成した場合には、分離溝の壁面のうち、基板部分のみが露出し、バッファ層22が絶縁層30で被覆されている場合がある。
実施形態1と同様に、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
その後は、実施形態1と同様のプロセスにより図4-2Aに示す発光素子を完成することができる。
製造方法の実施形態2において、実施形態1と同様に、装置間分離溝13が、基板21に達していない形態も好ましい形態である。例えば、装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層24の側壁に絶縁層30を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図4-2C)。この場合、溝底面が、バッファ層22の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面55になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。また、絶縁層30で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。そして、絶縁層30を堆積するときに、基板面でなく溝底面に堆積される点が異なるが、同一のプロセスを採用することができる。その他は実施形態2と同様にして、図4-2Cに示した発光素子も製造することができる。
実施形態2のプロセス(およびその変形プロセス)で製造された発光素子も、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子の端まで達していない形状ができている装置であり、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図4-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い装置となる。
<<2−5.タイプD>>
タイプDの発光装置の特徴は次の事項で特定される。
1. バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体を有し;
前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
(ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有すること
を特徴とする化合物半導体発光素子。
2. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする上記1記載の発光素子。
3. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁層が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていないことを特徴とする上記1記載の発光素子。
4. 前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
(i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
前記絶縁層が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆していることを特徴とする上記1記載の発光素子。
5. 前記バッファ層のうち、側壁面が前記絶縁層で被覆されていない部分を構成する層は、アンドープ型であることを特徴とする上記4記載の発光素子。
6. 前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の発光素子。
7. 前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の発光素子。
8. 前記L2wが100μm以上であることを特徴とする上記7記載の発光素子。
9. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag、Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の発光素子。
10. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の発光素子。
11. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の発光素子。
12. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の発光素子。
13. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記12記載の発光素子。
14. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記13記載の発光素子。
15. 前記薄膜結晶層が、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaO、およびMgOからなる群より選ばれる基板上に成膜されて形成されたことを特徴とする上記1〜14のいずれかに記載の発光素子。
16. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載の発光素子。
17. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の発光素子。
18. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載の発光素子。
19. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、ハンダによって金属層を有する支持体に接合されていることを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の発光素子。
20. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記支持体の金属層との接合が、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによってなされていることを特徴とする上記19記載の発光素子。
21. 前記支持体の母材がAlN、Al、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記19または20記載の発光素子。
22. 前記支持体の発光素子間の分離領域に、金属層が形成されていないことを特徴とする上記19〜21のいずれかに記載の発光素子。
23. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記2記載の発光素子。
24. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記3記載の発光素子。
25. 前記バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記2記載の発光素子。
26. 前記第一導電型半導体層からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記バッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記3記載の発光素子。
タイプDの発光素子によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率なフリップチップマウント型の半導体発光素子を提供することができる。
タイプDの発光素子の構造では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
図5-1A、図5-2、図5-3Aに、タイプDの化合物半導体発光素子(以下、単に発光素子という)の代表的例を示す。図5-1Bおよび図5-3Bは、説明のために、図5-1Aおよび図5-3Aの一部を省略した図5-である。図5-4A、図5-4Bは発光素子の構造を詳細に説明するために、作製途中の形状を示す図である。以下、図5-1A〜図5-4Bを参照して説明する。
タイプDの発光素子は、図5-1A、図5-2および図5-3Aに示すようにバッファ層22、第一導電型クラッド層24を含む第一導電型半導体層、第二導電型クラッド層26を含む第二導電型半導体層、および前記第一および第二導電型半導体層の間に挟まれた活性層構造25を有する化合物半導体薄膜結晶層、第二導電型側電極27、並びに第一導電型側電極28を有する。
第二導電型クラッド層26の表面の一部に、第二導電型側電極27が配置され、第二導電型クラッド層26と第二導電型側電極27の接触している部分が第二電流注入領域35となっている。また、第二導電型クラッド層26、活性層構造25の一部、第一導電型クラッド層24の一部が除去された構成となっており、除去された箇所に露出する第一導電型クラッド層24に接して、第一導電型側電極28が配置されることで、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28が、バッファ層22に対して同じ側に配置されるように構成されている。第二導電型側電極27および第一導電型側電極28は、支持体40上の金属層41に、金属ハンダ42を介してそれぞれ接続されている。
タイプDの発光素子10において、第一導電型側電極28および第二導電型側電極28は、互いに空間的に重なりを有していない。これは、図5-1A、図5-2および図5-3Aに示すように、第一導電型側電極28および第二導電型側電極27を基板面に対して投影したときに、影が重ならないことを意味する。
絶縁層30は、フリップチップマウントを実施した際に、マウント用のハンダ、導電性ペースト材等が「第二導電型側電極と第一導電型側電極の間」、「活性層構造などの薄膜結晶層の側壁」等に回りこんで、意図しない短絡が発生しないようにするためのものである。同時に、タイプDの発光素子10では、素子にダメージを与え性能に影響を及ぼしたり、歩留まりに影響を与えたりしないように、絶縁層30が最適な位置に配置されている。
タイプDの発光素子10は、(I)発光素子10の端部の段差形状、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状、の2箇所で異なる形態を取り得る。(I)発光素子10の端部の段差形状については、製造工程において素子分離を行うために装置間分離溝13(図5−4A等参照)を形成する際のエッチング深さにより、大きく分けて(i)バッファ層22の途中まで、(ii)基板面まで(またはそれより深く)、の2つの選択がある。また、装置間分離溝13の壁面は、素子分離後に素子端より後退するので、タイプDでは装置間分離溝13の形成時に側壁面として現れた面を、素子分離後の素子については、「後退側壁面」という。また、素子分離により素子端に現れる側壁面を、「非後退側壁面」という。そして、発光素子10の端部には、後退側壁面と非後退側壁面の間で段差面が形成されるので、これを「端部段差面」という。
装置間分離溝13の深さ(i)〜(ii)に対応して、(i)では、薄膜結晶層の後退側壁面に対して、バッファ層22の一部が共に後退側壁面を構成し、残り(第1の光取り出し方向側)のバッファ層22の側壁は、非後退側壁面となり、バッファ層22の端に端部段差面55が存在する形状となる。(ii)では、バッファ層22の側壁も後退側壁面を構成するので(装置間分離溝13の側壁面となるため)、素子完成後に基板21が存在しないタイプDの発光素子10においては端部段差面は存在しない。尚、(ii)の場合でも、装置間分離溝13の壁面は、装置間分離溝13を形成しないで分離したときの素子端面に比べて後退していることになるので、本発明では統一して「後退側壁面」という。
(i)に対応するのは、図5-2、図5-3A(図5-3B)である。(ii)図5-1A(図5-1B)である。
(II)発光素子端部の絶縁層30の形状については、製造工程において、(i)装置間分離溝13の側壁に形成された絶縁層30を残したまま、溝底面上の中央を含む領域の絶縁層30のみを除去するか、(ii)溝底面に形成された絶縁層30のすべてに加えて、溝内の側壁の一部までを含めて絶縁層30を除去するか、の選択があり、その結果製造される発光素子10において、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、の2種類が存在する。(i)に対応するのは、図5-3A(図5-3B)である。(ii)に対応するのは、図5-1A(図5-1B)、図5-2である。
尚、タイプDの発光素子10では、製造工程中に成長基板を除去するため、基板除去の際に絶縁層30が基板21に付いている形態は好ましくない。従って、上記の組み合わせて、(I)発光素子10の端部の段差形状が、(ii)バッファ層22に段差がない形状であり、(II)発光素子端部の絶縁層30の形状が、(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状、となる組み合わせは、タイプDの発光素子10には含まれない形態である。
タイプDの発光素子10の形状を(II)発光素子端部の絶縁層30の形状により、第1の態様:(ii)絶縁層30が溝底面から離れている形状、第2の態様:(i)絶縁層30が溝底面に付いている形状の順に分けて説明する。
但し、タイプDの発光素子10に共通して、第1の光取り出し方向のバッファ層22の端までは絶縁層30が達していない。
〔第1の態様〕
第1の態様に属する形態を、図5-1A〜図5-2に示す。まず、代表的な形態として図5-1Aを用いて説明する。タイプDの発光素子10は、図5-1Aに示すように、第1の光取り出し方向に基板を有していない。絶縁層30は、薄膜結晶層を除去した際に露出する側壁面のうち、少なくとも、第一導電型半導体層(図では第一導電型クラッド層24)、活性層構造25、および第二導電型半導体層(図では第二導電型クラッド層26)の側壁面を被覆している。また、バッファ層22の側壁面の少なくとも第1の光取り出し方向側に、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が存在し、これは場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。このように、タイプDの発光素子10では、バッファ層22の第1の光取り出し方向側の素子端には絶縁層30が存在することはない。この点は、他の実施形態でバッファ層に端部段差面がある場合においても同じである。
また、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15のバッファ層22は、ドーピングされていないアンドープ部分であることが好ましい。露出している部分が絶縁性の高い材料であればハンダの回り込みによる短絡等の虞がなく、信頼性の高い素子となる。
この構造は、製造工程途中の素子分割前は、図5-4Aに示される形状を経由する。製造工程途中において、絶縁層30は、装置間分離溝13の溝内の基板面(溝底面)と、基板面(溝底面)に近接する溝側壁面の絶縁層非形成部分15から除去されている。タイプDの発光素子10では、製造工程中で、基板21が剥がされる。このとき、絶縁層30が基板21に接していないため、基板21を剥離する際に、絶縁層30の剥がれが生じない。従って、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることもない。
その結果得られる分離された後の発光素子10では、図5-1AのA部分に示すように、バッファ層22の壁面の第1の光取り出し方向側に絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が存在する。つまり、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子10は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子10の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
さらに絶縁層30は、図5-1BのB部分に示すように、第一導電型側電極28の基板側(第1の光取り出し方向側)の一部に接している。即ち、第一導電型側電極28と第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)との間の一部に、絶縁層30が介在している。その結果、第一導電型側電極28の面積が、第一電流注入領域36の面積より大きい。図5-1Bに示すように、第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅をL1wとすると、L1wは7μm以上が好ましく、特に9μm以上が好ましい。また、L1wは、通常500μm以下であり、好ましくは100μm以下である。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
さらに絶縁層30は、図5-1BのC部分に示すように、第二導電型側電極27の支持体40側(第1の光取り出し方向の反対側)の一部を覆っている。即ち、第二導電型側電極27の電極露出部分37の面積が、第二導電型側電極27の面積より小さく、第二電流注入領域35の面積は、第二導電型側電極27の面積と等しい。図5-3に示すように、第二導電型側電極27の周辺から絶縁層30で覆われている幅の中で、最も狭い部分の幅をL2Wとすると、L2Wは15μm以上であることが好ましい。さらに好ましくは30μm以上、特に好ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。また、L2wは、通常2000μm以下であり、好ましくは750μm以下である。
また、第一導電型半導体層(この実施形態では第一導電型クラッド層24)、第二導電型半導体層(この実施形態では第二導電型クラッド層26)の支持体40側(第1の光取り出し方向の反対側)の表面の露出部分も短絡防止のために、通常は図に示すように絶縁層30で被覆される。
絶縁層30と各電極27、28とのこのような位置関係により、プロセスダメージの少ない工程により製造することが可能である。
〔第1の態様その2〕
第1の態様に属するその他の形態を、図5-2を用いて説明する。図5-1Aの形態では、と異なる点は、図5-1Aの発光素子10では、(I)発光素子10の端部の段差形状が、(ii)バッファ層22に段差がない形状であるのに対して、図5-2で示す発光素子10では、(i)バッファ層22の端に装置間分離溝に基づく端部段差面55を有する形状である点である。
この形状は、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成されて製造され、その結果、完成した八発光素子10では、少なくとも第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層は、発光素子10の端より内側に後退して後退側壁面を構成し、素子端壁面(非後退側壁面)との間で端部段差面55が存在している。
図5-2に、装置間分離溝がバッファ層22の途中まで形成されて製造された発光素子の1例を示す。A部分に示すように、発光素子端まで、バッファ層22の一部が非後退側壁面として存在し、バッファ層22の途中から壁面が素子端より後退し、第二導電型半導体層の側壁面と共に後退側壁面(装置間分離溝の側壁)を構成している。非後退側壁面と後退側壁面の間に、装置間分離溝の底面に基づく端部段差面55が存在している。非後退側壁面(素子端の側壁部分)は、絶縁層30で被覆されておらず、端部段差面55も絶縁層30で被覆されておらず、さらに、後退側壁面(装置間分離溝の側壁)では、絶縁層30で覆われていない絶縁層非形成部分15が、第1の光取り出し方向側に存在する。絶縁層非形成部分15は、場合によっては、バッファ層22の側壁面の全部に渡っていてもよい。
この例のように、装置間分離溝が、バッファ層22を合わせた層の途中まで形成されている場合にも、側壁を覆う絶縁層30が、発光素子10の端まで達していない形状ができている素子は、絶縁層30の剥がれがないことが保証され、また露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図5-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い素子となる。
〔第2の態様〕
第2の態様では、(II)発光素子端部の絶縁層の形状が、(i)絶縁層が溝底面に付いている形状となっている。図5-3Aの発光素子は、素子分割前には図5-4Bに示すように、装置間分離溝はバッファ層22の途中まで形成され、絶縁層30は装置間分離溝13の溝底面の全てを覆うのではなく、溝底面に絶縁層30が形成されていないスクライブ領域14が形成されている。従って、製造工程中のスクライブ、ブレーキング等の素子分離の際に、バッファ層22をブレーキングすればよく、薄膜結晶層のうちデバイス性能に関わる層、即ち、第一導電型半導体層、活性層構造25および第二導電型半導体層に直接的にダメージを与えることがない。また、溝底面の絶縁層30のないスクライブ領域14から分割するので、絶縁層30の剥がれが生じないので、確実な絶縁性を保てることに加え、絶縁層30の剥がれの際に生じる引っ張りによって、薄膜結晶層にダメージが入ることがない。
その結果得られる分離された後の発光素子では、図5-3A、図5-3BのA部分に示すように、バッファ層22に形成された端部段差面(溝底面)の全面を絶縁層30が覆うのではなく、素子端からLwsだけ離れた位置より内側の基板面を覆っている。スクライブ領域14の幅の中央から分割された場合、絶縁層30で覆われていない距離Lwsは、製造のゆらぎ等の範囲でスクライブ領域14の幅の略1/2に対応する。即ち、この形状ができていることにより、薄膜結晶層の側面に絶縁層30の剥がれがないことが保証される結果、この発光素子は、仮にハンダの回り込みがあっても、意図しない短絡が防止されていることに加え、薄膜結晶層にダメージが入っていないため、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子となっている。
wsは、完成した素子においては、0より大きければよいが、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。設計値としては、スクライブ領域14の幅を2Lwsとすると、2Lwsは、30μm以上が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSは、通常300μm以下、好ましくは200μm以下である。
第2の態様の発光素子においても、露出している層を絶縁性の高い材料で構成することにより、図5-1Aの形態の発光素子10と同じく信頼性の高い素子となる。また、第2の態様のその他の部分の形状については、第1の態様と同様である。
以下に、発光素子を構成する各部材と構造についてさらに詳細に説明する。
<基板>
タイプDの発光素子では、完成した発光素子に基板が残らない。基板はその上に半導体層を成長させることが可能なものが選ばれ、また最終的に除去できるものが用いられる。基板は、透明である必要はないが、製造工程で、基板を後述するレーザディボンディングにより剥離するときには、その特定の波長のレーザ光を透過することが好ましい。また、電気的には絶縁性基板である事が好ましい。これは、製造工程で、同様にレーザディボンディング法によって基板を剥離する際に、導電性基板ではその自由電子による吸収等によって、このような基板剥離方法を採用しにくくなるからである。
前述のタイプCで説明した基板材料は、すべてタイプDの発光素子の製造でも使用できる。具体的な材料としては、例えばInAlGaN系発光材料またはInAlBGaN系材料をその上に薄膜結晶成長させるためは、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaO、およびMgOから選ばれることが望ましく、特にサファイア、GaN、ZnO基板が好ましい。特にGaN基板を用いる際には、そのSiのドーピング濃度は、意図的にアンドープ基板を用いる場合には、1×1018cm−3のSi濃度以下が望ましく、さらに望ましくは8×1017cm−3以下であることが、電気抵抗の観点と結晶性の観点からが望ましい。また、基板を除去する際にケミカルエッチングを前提とする際には、塩酸等で容易に除去可能なZnOが望ましい。
タイプDの発光素子の製造で使用される基板は、いわゆる面指数によって完全に確定されるジャスト基板だけではなく、薄膜結晶成長の際の結晶性を制御する観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)であることもできる。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有するため、素子のモフォロジ改善にも効果があり、基板として広く使用される。たとえば、サファイアのc+面基板をInAlGaN系材料の結晶成長用基板として使用する際には、m+方向に0.2度程度傾いた面を使用することが好ましい。オフ基板としては、0.1〜0.2度程度の微傾斜を持つものが広く一般的に用いられるが、サファイア上に形成されたInAlGaN系材料においては、活性層構造内の発光ポイントである量子井戸層にかかる圧電効果による電界を打ち消すために、比較的大きなオフ角度をつけることも可能である。
基板は、MOCVDやMBE等の結晶成長技術を利用して化合物半導体発光素子を製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。また、後述するバッファ層との関係で、意図的に凹凸をつけた基板にしておき、これによって、薄膜結晶層と基板との界面で発生する貫通転移を発光素子あるいは、後述する発光ユニットの活性層近傍に導入しないようにすることも可能である。
基板の厚みとしては、タイプDの1形態においては、素子作成初期においては、通常250〜700μm程度のものであり、発光素子の結晶成長、素子作製プロセスにおける機械的強度が確保されるようにしておくのが普通である。基板を用いて必要な半導体層を成長した後に、基板は、例えば研磨、エッチング、またはレーザディボンディング等により除去される。特にレーザディボンディング等の光学的な手法によって剥離される際には、薄膜結晶成長時には両面研磨基板を用いることが望ましい。これは、薄膜結晶成長されていない面から照射されるレーザ等を、片面研磨基板を用いてしまうと、粗面から入射することになり、レーザディボンディング時に不要に大きなレーザ出力が必要となるためである。
<バッファ層>
バッファ層に関して、タイプCで説明した事項は、すべてタイプDにも当てはまる。タイプDの発光素子においては素子の完成後に基板が残らないため、好ましい事項をさらに説明する。
タイプDの発光素子においては、基板を製造工程中に除去するので、本態様の1実施形態においてはバッファ層の表面が第1の光取り出し方向側の面になる。後述するように基板の剥離の1つ方法として、基板に対して透明で、バッファ層に対して吸収のある光を用いて、バッファ層の一部を光学的に分解して、基板を剥離する方法が挙げられる。そのような方法を採用する場合には、その方法に適合した材料が選択される。たとえば、基板がサファイアで、バッファ層がGaNである場合には、248nmの波長を有するKrFエキシマレーザを薄膜結晶成長がされていない基板側から照射し、バッファ層のGaNを金属Gaと窒素に分解して、その結果、基板を剥離するレーザディボンディングを実施することも可能である。
タイプDの発光素子では、第1の光取り出し方向に基板が存在しないので、バッファ層の第1の光取り出し方向側の面に、いわゆる低反射コーティング層あるいは低反射光学膜が形成されることが望ましい。バッファ層−空気界面での屈折率差による反射を抑制し、高出力化、素子の高効率化を図ることができる。ここで、後述する第一導電型半導体層側からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすようにバッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることは望ましい。たとえばバッファ層がGaNである場合には、低反射コーティング膜としてAl等を用いることが望ましい。これは素子の発光波長におけるバッファ層の屈折率nbfに対して、低反射コーティング膜の屈折率が、√nbfに近いことが望ましいので、GaNの屈折率の平方根に対して、Alの屈折率が近いからである。
バッファ層の第1の光取り出し方向側の面が、平坦でない面あるいは粗面であることも好ましい。これにより量子井戸層内で発光した光を高効率で取り出すことが可能になり、素子の高出力化、高効率化の観点で望ましい。ここで、素子の発光波長をλ(nm)とすると、バッファ層の粗面の程度は、平均粗さRa(nm)が
λ/5(nm)<Ra(nm)<10×λ(nm)
を満たすことが望ましく、
λ/2(nm)<Ra(nm)<2×λ(nm)
を満たすことがより望ましい。
タイプDの発光素子では、バッファ層の少なくとも一部は、装置端で露出する。従って、少なくとも露出部分をアンドープ部分とすることが、装置組み立て時のハンダ等による絶縁不良を抑制することができるので好ましい。
<第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層>
タイプDの発光素子における第一導電型半導体層および第一導電型クラッド層は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<活性層構造>
タイプDの発光素子における活性層構造は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層>
タイプDの発光素子における第二導電型半導体層および第二導電型クラッド層は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第二導電型側電極>
タイプDの発光素子における第二導電型側電極は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<第一導電型側電極>
タイプDの発光素子における第一導電型側電極は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<絶縁層>
タイプDの発光素子における絶縁層は、タイプCの発光素子で用いたのと同様の構成を採用することができる。
<支持体>
支持体40は、基板剥離の際の薄膜結晶層の支持体としての役割を果たせることが必須であるが、さらに、本支持体は、素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つことも非常に望ましい。この観点で、支持体の母材は、金属、AlN、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることが望ましい。これら材料は、放熱性に優れ、高出力の発光素子に不可避である発熱の問題を効率よく抑制できる点で好ましい。またAl、Si、ガラス等も安価であって支持体として利用範囲が広く好ましい。また、後述する基板除去時にレーザ照射によって薄膜結晶層の一部を金属Gaと窒素に分解した際には、金属Gaを除去する際にウェットエッチングを実施する事が望ましいが、この際も、支持体はエッチングされない材質であることが望ましい。尚、支持体の母材を金属から選択する際には、その周りを耐エッチング性のある誘電体等で覆う事が望ましい。金属の母材としては、発光素子の発光波長における反射率の高い材料が望ましく、Al、Ag等が望ましい。また、誘電体等で覆う際には、各種CVD法で形成したSiN、SiO等が望ましい。
支持体は、さらに素子完成後の電流導入と放熱の機能をあわせ持つとの観点では、母材の上に、電流導入用の電極配線を有することが望ましく、また、この電極配線上で素子を搭載する部分には、適宜素子と支持体の接合用の接着層を有することが望ましい。ここで、接着層は、Agを含んだペースト、金属バンプ等を使用することも可能ではあるが、金属ハンダで構成されていることが、放熱性の観点で非常に望ましい。金属ハンダはAgを含んだペースト材、金属バンプなどと比較して圧倒的に放熱性に優れたフリップチップマウントが実現可能である。ここで、金属ハンダとしては、In、InAg、InSn、SnAg、PbSn、AuSn、AuGeおよびAuSi等を挙げることができる。特に、AuSn、AuSi、AuGe等の高融点ハンダがより望ましい。これは、発光素子を超高出力動作させるために大電流を注入すると、素子近傍の温度が200℃程度に上昇するためであって、ハンダ材の融点として駆動時の素子温度よりも高い融点を有する金属ハンダがより好ましい。また、場合によっては、フリップチップマウント時の素子の段差を打ち消すために、バンプを用い、さらに、金属ハンダ材でその周りを埋めながら接合する事も望ましい。
また、通常、後述するように支持体を分割して素子分離を行うため、完成した発光素子では、支持体40の周辺には、金属配線が存在しない分離領域が存在することが好ましい。図5-5に示すように、金属配線が存在しない領域の幅をLWSPT2(図5-5では、左側をLWSPT2(left)、右側をLWSPT2(right)で表している。)とすると、LWSPT2は、完成した素子においては、0より大きければよいが、以下のとおり分離工程においていかなる手法を用いるかによって好ましい範囲は異なる。
スクライビングによって分離する際には、通常は10μm以上、好ましくは15μm以上である。したがって分離領域47としては2LWSPT2を30μm以上とする事が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSPT2は、通常は、300μm以下、好ましくは、200μm以下である。
また、ダイシングによって分離する際には、LWSPT2は、通常は100μm以上、好ましくは500μm以上である。したがって分離領域47としては2LWSPT2を1000μm以上とする事が好ましい。また、大きすぎても無駄であるので、2LWSPT2は、通常は、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。
尚、支持体を分割しない実施形態も可能であり、例えば複数個の発光素子を1つの支持体に搭載することもできる。支持体上の金属配線を自在に変化させることで、1つの支持体上の各発光素子を並列接続にも、直列接続にも、あるいはこれらを混在させることも可能である。
〔タイプDの発光素子の製造方法〕
次に、タイプDの半導体発光素子の製造方法について説明する。
<第1の態様の発光素子の製造方法>
製造方法の1例では、図5-7に示すように、まず基板21を用意し、その表面にバッファ層22、第一導電型クラッド層24、活性層構造25および第二導電型クラッド層26を薄膜結晶成長により順次成膜する。これらの薄膜結晶層の形成には、MOCVD法が望ましく用いられる。しかし、MBE法、PLD法、PED法、VPE法、LPE法なども全部の薄膜結晶層、あるいは一部の薄膜結晶層を形成するために用いることが可能である。これらの層構成は、素子の目的等に合わせて適宜変更が可能である。また、薄膜結晶層の形成後には、各種の処理を実施してもかまわない。なお、本明細書では、薄膜結晶層の成長後の熱処理等も含めて、「薄膜結晶成長」と記載している。
薄膜結晶層成長の後、図5-1A〜図5-2に示された形状を実現するためには、図5-7に示すように、第二導電型側電極27を形成することが好ましい。即ち、予定されている第二電流注入領域35に対する第二導電型側電極27の形成が、絶縁層30の形成よりも、また、第一電流注入領域36の形成よりも、さらには、第一導電型側電極28の形成よりも、早く実施されることが望ましい。これは、望ましい実施形態として第二導電型がp型である場合において、表面に露出しているp型クラッド層の表面に対して各種プロセスを経た後にp側電極を形成すると、GaN系材料では比較的活性化率の劣るp−GaNクラッド層中の正孔濃度をプロセスダメージによって低下させてしまうからである。たとえばp−CVDによる絶縁層30の形成工程を第二導電型側電極27の形成より前に実施すれば、その表面にプラズマダメージが残存してしまう。このため、タイプDでは薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極27の形成が他のプロセス工程(たとえば後述する第一エッチング工程、第二エッチング工程、あるいは絶縁層形成工程、第二導電型側電極露出部分形成工程、第一電流注入領域形成工程や第一導電型側電極形成工程など)よりも先に実施されることが望ましい。
また、タイプDの発光素子の製造においては、第二導電型がp型である場合には、前述のとおり、第二導電型側電極27の表面がAuである場合が代表的な例として想定されるが、露出面がAuなどの比較的安定な金属である場合には、その後のプロセスを経ても、プロセスダメージを受ける可能性が低い。この観点からも、薄膜結晶成長の後には第二導電型側電極27の形成が他のプロセス工程よりも先に実施されることが望ましい。
なお、タイプDの発光素子では、第二導電型側電極27が形成される層が、第二導電型コンタクト層である場合にも同様に、第二導電型半導体層に対してのプロセスダメージを低減することができる。
第二導電型側電極27の形成には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、所望の形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第二導電型側電極27を形成した後、図5-8に示すように、第一導電型クラッド層24の一部を露出させる。この工程は、第二導電型クラッド層26、活性層構造25、さらには第一導電型クラッド層24の一部をエッチングにより除去することが好ましい(第一エッチング工程)。第一エッチング工程においては、後述する第一導電型側電極が第一導電型のキャリアを注入する半導体層を露出することが目的であるので、薄膜結晶層に他の層、たとえば、クラッド層が2層からなる場合や、あるいはコンタクト層がある場合には、その層を含んでエッチングしてもかまわない。
第一エッチング工程では、エッチング精度があまり要求されないので、SiNのような窒化物やSiO等の酸化物をエッチングマスクとしてCl等を用いたプラズマエッチング法による公知のドライエッチングを使用することができる。しかし、後述する第二エッチング工程で詳細に説明するような金属フッ化物マスクを用いたドライエッチングを実施することも望ましい。特に、SrF、AlF、MgF、BaF、CaFおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる金属フッ化物層を含むエッチングマスクを用いて、Cl、SiCl、BCl、SiCl等のガスを用いたプラズマ励起ドライエッチングによりエッチングを行うことが好ましい。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
ここで第二導電型側電極27はプラズマCVD等によって形成されるSiNマスクの形成履歴、あるいは第一エッチング工程後に実施される該SiNマスク除去工程を履歴するが、Auなどの安定な金属が表面に形成されている場合には、第二導電型側電極27が受けるプロセスダメージは少なくなる。
次に図5-9に示すように、装置間分離溝13を、第二エッチング工程により形成する。タイプDの発光素子では、装置間分離溝13は、少なくとも第一導電型クラッド層24を分断して形成されていることが必要であり、この実施形態では、装置間分離溝13が基板21に到達するように形成される。この場合には、素子を分離するために、スクライブ、ブレーキング等の工程において、薄膜結晶層が形成されている側からダイヤモンドスクライブを実施した際にも、サファイア基板上のGaN系材料の剥離を抑制することが可能である。またレーザスクライブを実施した場合にも、薄膜結晶層にダメージが入らない利点がある。さらに、サファイア基板(GaN等の他の基板でも同じ)の一部までエッチングして装置間分離溝13を形成することも同様に好ましい。
一方、装置間分離溝13が基板21に達していない形態も好ましい形態である。装置間分離溝13が、バッファ層22の途中まで形成されていれば、第一導電型クラッド層24の側壁に絶縁層30を形成することができて、ハンダ等の回りこみに対して絶縁性を保つことができる(発光素子完成後の形態は、図5-2を参照。)。この場合、溝底面が、バッファ層22を合わせた層の途中に形成され、これが発光素子の端において端部段差面55になる。溝底面は、エッチングで得られる程度の凹凸を含む面である。尚、溝底面は、素子分離の際にスクライブ等の処理を受けるため、素子分離後の端部段差面55は、面としての平面性および層方向との平行性については高くない場合が多い。また、絶縁層30で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。また、絶縁層30で被覆されずに側壁から露出する層は、高い絶縁性を有することが好ましい。
第二エッチング工程は、第一エッチング工程と比較して、さらに深くGaN系材料をエッチングすることが必要となる。一般に、第一エッチング工程によってエッチングされる層の総和は、0.5μm程度が普通であるが、第二エッチング工程においては、第一導電型クラッド層24のすべてと、バッファ層22の少なくとも一部、場合によっては全部をエッチングすることが必要なことから、3〜7μmとなることがあり、場合によっては、3〜10μmの範囲、さらには10μmを越えることもある。
一般に、金属マスク、SiN等の窒化物マスク、SiO等の酸化物マスク等は、Cl系プラズマに対するエッチング耐性を示すGaN系材料に対する選択比は5程度であって、膜厚の厚いGaN系材料をエッチングする必要のある第二エッチング工程を実施するには、比較的厚めのSiN膜が必要となってしまう。たとえば第二ドライエッチング工程で10μmのGaN系材料をエッチングする最には、2μmを越えるSiNマスクが必要となってしまう。しかし、この程度の厚みのSiNマスクになると、ドライエッチング実施中にSiNマスクもエッチングされてしまい、その縦方向の厚みのみではなく水平方向の形状も変ってしまい、所望のGaN系材料部分のみを選択的にエッチングすることができなくなってしまう。
そこで、第二エッチング工程において装置間分離溝を形成する際には、金属フッ化物層を含むマスクを用いたドライエッチングが好ましい。金属フッ化物層を構成する材料は、ドライエッチング耐性とウェットエッチング性のバランスを考慮すると、MgF、CaF、SrF、BaF、AlFが好ましく、この中でもSrFが最も好ましい。
金属フッ化物膜は、第一、第二エッチング工程で行うドライエッチングに対しては十分な耐性があり、一方でパターニングのためのエッチング(好ましくはウェットエッチング)に対しては、容易にエッチング可能でかつパターニング形状、特に側壁部分の直線性の良いものが求められる。金属フッ化物層の成膜温度を150℃以上にすることで、下地との密着性に優れ、緻密な膜が形成され、同時にエッチングによってパターニングした後に、マスク側壁の直線性にも優れている。成膜温度は、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上、最も好ましくは350℃以上である。特に350℃以上で成膜された金属フッ化物層は、あらゆる下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性に非常に優れ、開口部の幅の制御性も確保されるようになり、エッチングマスクとして最も好ましい。
このように、下地との密着性に優れ、かつ、緻密な膜となり、高いドライエッチング耐性を示しつつ、パターニング形状についても、側壁部分の直線性と開口部の幅の制御性に非常に優れたエッチングマスクとするためには、高温で成膜することが好ましいが、一方、成膜温度が高すぎると、金属フッ化物をパターニングする際に好ましく実施される塩酸等に対するウェットエッチングに対する耐性が必要以上になり、その除去が容易でなくなる。特に、SrF等のマスクは半導体層のドライエッチング時に塩素等のプラズマにさらされると、その後に実施するマスク層の除去時のエッチングレートが、塩素等のプラズマにさらされる前に比較して低下する傾向を有している。このため、金属フッ化物の過剰な高温での成膜はそのパターニングと最終除去の観点から好ましくない。
まず半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされる前の金属フッ化物にあっては、低温成膜した層ほど塩酸等のエッチャントに対するエッチングレートが大きくエッチングが速く進行し、成膜温度を高くするほどエッチングレートが低下し、エッチングの進行が遅くなる。成膜温度が300℃以上になると、成膜温度が250℃程度の膜よりエッチングレートの低下が目立ってくるが、350℃から450℃程度では、非常に都合の良いエッチング速度の範囲にある。しかし、成膜温度が480℃を超えるとエッチング速度の絶対値が必要以上に小さくなり、当該金属フッ化物のパターニングに過剰な時間を費やすこととなり、また、レジストマスク層等が剥離しない条件でのパターニングが困難になる事もある。さらに、半導体層のドライエッチング時のプラズマにさらされた後の金属フッ化物にあっては、除去時の塩酸等に対するウエットエッチングレートは低下する性質があり、過剰な高温成長は金属フッ化物の除去を困難にしてしまう。
このような観点から、金属フッ化物層の成膜温度は、好ましくは480℃以下であり、さらに好ましくは470℃以下、特に好ましくは460℃以下である。
このようなことに配慮してパターニングされたマスク(金属フッ化物層が表面層になるようにSiN、SiOなどと積層されていてよい)を用いて、ドライエッチングを行う。ドライエッチングのガス種としては、Cl、BCl、SiCl、CClおよびこれらの組み合わせから選ばれるものが望ましい。ドライエッチングの際に、SrFマスクのGaN系材料に対する選択比は100を越えるため、厚膜GaN系材料のエッチングが容易に、かつ、高精度に行うことができる。さらに、ドライエッチングの方法としては、高密度プラズマを生成可能なICP型のドライエッチングが最適である。
エッチング後に、不要となった金属フッ化物層のマスクを、塩酸等のエッチャントで除去する際に、金属フッ化物マスクの下に酸に弱い材料が存在する場合、例えば電極材料が酸に弱い場合には、金属フッ化物層が表面層になるようにしてSiN、SiOなどとの積層マスクとしてもよい。この場合、SiN、SiO等は、金属フッ化物マスク層の下部の全体に存在していてもよいし、または例えば図5-19に示すように、SiN、SiO等マスク51は、金属フッ化物マスク層52の下部の全体に存在していなくても、少なくとも酸に弱い材料上に形成されていればよい。
このような第二エッチング工程により、図5-9に示すように、装置間分離溝13が形成される。
なお、第一エッチング工程と第二エッチング工程は、どちらの工程を先に実施しても、後に実施してもかまわない。また、プロセスを簡略にするため、第一エッチング工程を先に実施し、その際のエッチングマスクを除去しないで、第二エッチング工程を実施することも好ましい。図5-19に示すように、まずSiN、SiO等の酸に強い材料(好ましくはSiN)により第一エッチングマスク51を形成し、第一導電型クラッド層24が現れるようにエッチングし、マスク51を除去しないで、金属フッ化物層による第二エッチングマスク52を形成する。そして、第二エッチング工程を実施した後、マスク52を酸により除去し、その後、マスク51を適宜除去することが好ましい。
形成される装置間分離溝間の最も狭い部分の幅を2LWSPT1とすると、LWSPT1はブレーキングによって素子分離を行う際には、20μm以上、例えば30μm以上であることが望ましい。また、ダイシング等によって実施する際には、LWSPT1は300μm以上であることが望ましい。また、大きすぎても無駄であるので、LWSPT1は通常は2000μm以下である。これらは、素子作製プロセスのマージンと、さらには、スクライブ領域の確保のために必要であるからである。
尚、タイプDの説明で定義する「後退側壁面」は、第二エッチング工程、即ち、装置間分離溝形成のときに側壁として現れる側壁面であり、第一エッチングのみで現れる壁面ではない。
第二エッチング工程の後には、図5-10に示すように、絶縁層30を形成する。絶縁層30は、電気的に絶縁が確保できる材料であれば、適宜選択することができ、詳細は前述のとおりである。成膜方法は、プラズマCVD法等の公知の方法を用いればよい。
次に、図5-11に示すように、絶縁層30の所定部分を除去し、第二導電型側電極27上で絶縁層30が除去された第二導電型側電極露出部分37、第一導電型クラッド層24上で絶縁層30が除去された第一電流注入領域36、装置間分離溝13内で基板面と側壁から絶縁層30が除去された絶縁層非形成部分15を形成する。
第二導電型側電極27上の絶縁層30の除去は、第二導電型側電極27の周辺部分が絶縁層30によって覆われているように実施する。すなわち第二導電型側電極露出部分37の表面積は第二電流注入領域36の面積よりも小さい。ここで、素子作製プロセス、特にフォトリソグラフィー工程のマージン、あるいは、ハンダ材による意図しない短絡等の発生を防止するためには、第二導電型側電極27の一部が絶縁層30に覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L2w)は前述のとおり15μm以上であることが望ましい。さらに望ましくは100μm以上である。絶縁層30によって第二導電型側電極27の面積の多くが覆われることによって、特に、金属ハンダ材によるたとえば第一導電型側電極28等の他の部分との意図しない短絡を低減することができる。
絶縁層30の除去は、選択された材質によってドライエッチング、ウェットエッチング等のエッチング手法が選択可能である。たとえば、絶縁層30がSiN単層である場合には、SF等のガスを用いたドライエッチングも、あるいはフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチングも可能である。また、絶縁層30がSiOとTiOからなる誘電体多層膜である場合には、Arイオンミリングによって所望の部分の多層膜を除去することも可能である。
また、第二導電型側電極露出部分37、第一電流注入領域36、および絶縁層非形成部分15の形成は、別々に行ってもよいが、通常は同時にエッチングで形成する。
尚、装置間分離溝内の基板近傍の側壁部分の絶縁層30を除去して、絶縁層非形成部分15を設けるには、たとえば、以下の様なプロセスで形成が可能である。まず、装置間分離溝13の面積とほぼ同等か少し小さめの開口を有するレジストマスクをフォトリソグラフィーによって形成し、次に、絶縁層30をエッチング可能なエッチャントを用いてウェットエッチングを実施すると、装置間分離溝内の基板面上の絶縁層30の除去が進む。その後、さらに長時間エッチングを継続するとサイドエッチングが起こり、溝側壁の基板側を覆っていた絶縁層30がウエットエッチャントで除去され、図5-11に示したように装置間分離溝近傍の絶縁層30が存在しない形状が得られる。このように絶縁層30を除去する場合においては、絶縁層30が存在しない薄膜結晶層の側壁は、アンドープ層の側壁であることが望ましい。これは、フリップチップマウントを実施する際に、万が一、支持体との接合用ハンダ等が側壁に付着しても、意図しない電気的短絡が発生しないためである。このような絶縁層30の除去形状は、特に発光素子の製造工程中に、基板21を除去する際には、これに付随して絶縁層30の剥離など意図しない不具合が発生しないため、望ましい形状である。
次に、図5-12に示すように、第一導電型側電極28を形成する。タイプDの発光素子においては、第一導電型側電極28は第一電流注入領域の大きさよりも大きな面積に形成され、かつ、第一導電型側電極28と第二導電型側電極27は、空間的に重なりを有さないことが特徴である。これは、当該素子をハンダなどでフリップチップマウントした際に、支持体などとの十分な密着性を確保するに十分な面積を確保しつつ、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28との間のハンダ材等による意図しない短絡を防止するのに十分な間隔を確保するために重要である。第一導電型側電極28が絶縁層30に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅(L1w)は、前述の範囲になるように設定される。通常、5μm以上があれば、フォトリソグラフィー工程とリフトオフ法によるプロセスマージンは確保できる。
電極材料としては、すでに説明したとおり、第一導電型がn型であるとすると、Ti、Al、AgおよびMoのいずれかから選択される材料、またはすべてを構成元素として含むことが望ましい。また、n側電極の第1の光取り出し方向とあい対する向きには、Alが露出するのが普通である。
電極材料の成膜には、スパッタ、真空蒸着、メッキ等種々の成膜技術を適応可能であり、電極形状とするためには、フォトリソグラフィー技術を用いたリフトオフ法や、メタルマスク等を用いた場所選択的な蒸着等を適宜使用可能である。
第一導電型側電極28は、この例では、第一導電型クラッド層24にその一部が接して形成されるが、第一導電型側コンタクト層が形成されるときはそれに接するように形成することができる。
この製造方法では、第一導電型側電極28が、積層構造形成の最終段階にて製造されることにより、プロセスダメージ低減の観点でも有利である。第一導電型がn型である場合には、n側電極は、好ましい実施形態では、Alがその電極材の表面に形成される。この場合に、もしn側電極が第二導電型側電極27のように絶縁層30の形成よりも前になされると、n側電極表面、すなわちAl金属は、絶縁層30のエッチングプロセスを履歴することになる。絶縁層30のエッチングには、前述のとおりフッ酸系のエッチャントを用いたウェットエッチング等が簡便であるが、Alはフッ酸を含めた各種エッチャントに対する耐性が低く、このようなプロセスを実効的に実施すると電極そのものにダメージが入ってしまう。また、ドライエッチングを実施してもAlは比較的反応性が高く酸化を含めたダメージが導入される可能性がある。従って、タイプDの発光素子の製造においては、第一導電型側電極の形成が絶縁層の形成後かつ絶縁層の予定されている不要部分の除去後に行われることは、電極に対するダメージの低減に効果がある。
このようにして図5-12の構造が形成された後には、基板21を除去するための前準備をする。通常、図5-12に示された構造を、ウエハー全体として、あるいはその一部を、先ず、支持体40に接合する。これは、薄膜結晶層全体としても高々15μm程度の厚みであるので、基板21を剥離してしまうと、機械的強度が不十分になりそれだけで自立してその後のプロセスを受けることが困難になるからである。支持体40の材料等については前述のとおりである。
図5-13に示すように、支持体40上の金属層41(電極配線等)に例えば金属ハンダ42で接続して搭載する。
このとき、タイプDの発光素子では、第二導電型側電極27と第一導電型側電極28は、お互いが空間的に重ならない配置となっており、かつ、第一導電型側電極28が第一電流注入領域よりも大きく、十分な面積も有しているため、意図しない短絡の防止と高い放熱性の確保が両立しており望ましい。また、他の薄膜結晶層の側壁もバッファ層22の一部、特にアンドープ部分を除いて絶縁層30で保護されるため、ハンダの染み出し等があっても薄膜結晶層内、たとえば活性層構造側壁における短絡等も発生することがない。
次に、支持体40に素子を接合した後に、基板21を剥離する。基板21の剥離には、研磨、エッチング、レーザディボンディング等のあらゆる方法を用いる事が可能である。サファイア基板を研磨する場合には、ダイヤモンド等の研磨材を使用して基板21を除去することが可能である。また、ドライエッチングによって基板21を除去することも可能である。さらには、たとえばサファイアかならる基板21上にInAlGaN系材料によって薄膜結晶成長部分が形成されている場合には、サファイア基板側から、サファイア基板は透過し、たとえばバッファ層22に使用されるGaNには吸収される248nmのKrFエキシマレーザを用いて、バッファ層22の一部のGaNを金属Gaと窒素に分解し、基板21を剥離するレーザディボンディングを実施することも可能である。図5-14には、レーザディボンディングにより基板21が剥離した様子を模式的に示した。
またZnOおよびScAlMgO等を基板21として使用する場合には、HCl等のエッチャントを用いて基板21をウェットエッチングで除去することも可能である。
タイプDの発光素子では、基板21に絶縁層30が接している部分がないため、基板21の剥離を実施した際に副次的に絶縁層30の剥離等が発生することがない。
その後、図5-14に示すように、装置間分離溝が存在する箇所に対応する分離領域47において、支持体40と共に発光素子を分離して単体の発光素子を得る。ここで、支持体40の分離領域47には、金属配線が存在しないことが好ましい。ここに金属配線が存在すると装置間の分離が実施しにくいからである。
支持体40の分離領域部分の切断には、母材によって、ダイシング、スクライビングとブレーキングなど適宜プロセスを選択可能である。また、装置間分離溝が、バッファ層22の途中まで形成されている場合には、装置間分離溝を使用して、ダイヤモンドスクライブによる傷いれ、レーザスクライブによるバッファ層の一部のアブレーション等を実施する事で、薄膜結晶成長層部分における発光素子間の分離は容易に実現可能である。その後、支持体40はダイシングによって、各発光素子に分離することが可能である。場合によっては、発光素子間の分離は、薄膜結晶成長層と支持体40をダイシングによって同時に分離することも可能である。
以上のようにして、図5-1A〜図5-2に示した態様の発光素子が完成する。
<第2の態様の発光素子の製造方法>
図5-3Aに示す第2の態様の発光素子を製造するには、第1の態様の製造方法の説明中で、装置間分離溝の形成の際に、バッファ層の途中でエッチングを止める。同様にして絶縁層30を形成し、絶縁層30をエッチングするときに、図5-4Bに示すように、装置間分離溝13の中央を含む領域から絶縁層30を除去し、スクライブ領域14を形成する。第1の態様では、溝底面上の絶縁層すべてを除去したが、この態様では溝底面にも絶縁層30が残るようにして、意図的なサイドエッチングは行わない。スクライブ領域14の幅は、すでに説明したように所定のLwsが得られるように設定することができる。その後は、第1の態様と同様にして、図5-3Aに示す発光素子が完成する。
第1の態様および第2の態様に共通して、この製造方法では、説明のとおり薄膜結晶層の形成、第二導電型側電極27の形成、エッチング工程(第一エッチング工程および第二エッチング工程)、絶縁層30の形成、絶縁層30の除去(第二導電型側電極露出部分の形成、第一電流注入領域の形成、スクライブ領域の形成)、第一導電型側電極28の形成は、この順に実施されることが望ましく、この工程順により、第二導電型側電極直下の薄膜結晶層のダメージがなく、また第一導電型側電極28にもダメージのない発光素子を得ることができる。そして、装置形状はプロセスフローを反映したものとなっている。即ち、発光素子は、第二導電型側電極27、絶縁層30、第一導電型側電極28がこの順番に積層された構造を内在している。つまり、第二導電型側電極27は、第二導電型クラッド層26(またはその他の第二導電型薄膜結晶層)に絶縁層30を介在しないで接しており、第二導電型側電極27の上部周辺には絶縁層30で覆われた部分があり、第一導電型側電極28と第一導電型側クラッド層24(またはその他の第一導電型薄膜結晶層)の間には、電極周囲部分に絶縁層30が介在している部分が存在している。
<<2−6.タイプC、Dの発光素子の製造方法の特徴>>
前述したタイプCおよびタイプDの発光素子の製法は、以下の事項に特徴付けられる。
1. (a)基板上に、バッファ層を成膜する工程(a)と、
(b)少なくとも、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する薄膜結晶層を前記基板側からこの順に成膜する工程(b)と、
(c)前記第二導電型半導体層の表面に第二導電型側電極を形成する工程(c)と、
(d)前記第二導電型側電極が形成されていない箇所の一部をエッチングして、前記第一導電型半導体層の一部を露出させる第一エッチング工程(d)と、
(e)隣接する発光素子を分離する装置間分離溝を形成するために、前記第二導電型側電極が形成されていない箇所の一部を、表面から、(i)前記バッファ層の少なくとも一部を除去するまで、または(ii)少なくとも前記基板に達するまでの深さでエッチングを行って前記装置間分離溝を形成する第二エッチング工程(e)と、
(f)前記第二導電型側電極、前記第一エッチング工程によって露出した第一導電型半導体層および前記装置間分離溝内を含む全面に絶縁層を形成する工程(f)と、
(g)前記装置間分離溝内の少なくとも溝底面の溝中央を含む領域の絶縁層を除去する工程(g)と、
(h)前記第一導電型半導体層面上に形成された絶縁層の一部を除去し、第一電流注入領域となる開口を形成する工程(h)と、
(i)前記第二導電型側電極の表面に形成された絶縁層の一部を除去し、前記第二導電型側電極の一部を露出させる工程(i)と、
(j)前記工程(h)で開口された第一電流注入領域に接して第一導電型側電極を形成する工程(j)と
を有することを特徴とする発光素子の製造方法。
2. 前記工程(g)において、前記装置間分離溝の側壁に形成された前記絶縁層を残したまま、前記溝底面の溝中央を含む領域の絶縁層のみを除去することを特徴とする上記1記載の方法。
3. 前記工程(g)において、前記装置間分離溝内の前記溝底面に形成された絶縁層のすべてと、前記装置間分離溝内の側壁の少なくとも前記溝底面側の部分に形成された絶縁層を除去することを特徴とする上記1記載の方法。
4. 前記絶縁層が除去されて露出する面を構成する層は、アンドープ型であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 前記工程(j)の後に、
前記装置間分離溝で、前記基板を素子分離する工程と、
前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、サブマウント上の金属層に接合する工程と
をさらに有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の方法。
6. 前記工程(j)の後に、
前記第一導電型側電極および第二導電型側電極を、支持体上の金属層に接合して支持体に搭載する工程と、
前記基板を除去する工程と、
前記支持体を分割して素子分離する工程と
をさらに有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の方法(但し、前記工程(e)において前記基板に達するまでエッチングを行い、且つ前記工程(g)において前記溝底面上の中央を含む領域の絶縁層のみを除去する場合を除く。)。
7. 前記バッファ層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記第一導電型半導体層の形成に先立って行われることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8. 前記工程(j)において、前記第一導電型側電極が絶縁層に接している部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L1wが5μm以上となるように前記第一導電型側電極を形成することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9. 前記工程(i)において、前記第二導電型側電極が前記絶縁層で覆われている部分の幅の中で、最も狭い部分の幅L2wが15μm以上となるように前記第二導電型側電極の一部を露出させることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の方法。
10. 前記L2wが30μm以上であることを特徴とする上記9記載の方法。
11. 前記第一導電型側電極が、Ti、Al、Ag,Moおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の方法。
12. 前記第二導電型側電極が、Ni、Pt、Pd、Mo、Auおよびそれらの2種以上の組み合わせからなる群より選ばれる元素を含む材料からなる層を含むことを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の方法。
13. 前記絶縁層が、SiO、AlO、TiO、TaO、HfO、ZrO、SiN、AlN、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれる材料の単層であることを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の方法。
14. 前記絶縁層が複数の層からなる誘電体多層膜であることを特徴とする上記1〜13のいずれかに記載の方法。
15. 前記絶縁層を構成する層の少なくとも1つが、フッ化物を含む材料からなることを特徴とする上記14記載の方法。
16. 前記フッ化物が、AlF、BaF、CaF、SrFおよびMgFからなる群より選ばれることを特徴とする上記15記載の方法。
17. 前記薄膜結晶層を、サファイア、SiC、GaN、LiGaO、ZnO、ScAlMgO、NdGaOおよびMgOからなる群より選ばれる基板上に成膜して形成することを特徴とする上記1〜16のいずれかに記載の方法。
18. 前記化合物半導体薄膜結晶層は、V族として窒素原子を含むIII−V族化合物半導体からなり、前記第一導電型クラッド層、前記活性層構造および第二導電型クラッド層中に、In、GaおよびAlからなる群より選ばれる元素が含まれることを特徴とする上記1〜17のいずれかに記載の方法。
19. 前記活性層構造が、量子井戸層とバリア層からなり、バリア層の数をB、量子井戸層の数をWで表したとき、BとWが、
B=W+1
を満たすことを特徴とする上記1〜18のいずれかに記載の方法。
20. 第一導電型がn型であり、第二導電型がp型であることを特徴とする上記1〜19のいずれかに記載の方法。
21. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極を、ハンダによって金属層を有するサブマウントに接合することを特徴とする上記5記載の方法。
22. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極を、ハンダによって前記金属層を有する支持体に接合することを特徴とする上記6記載の方法。
23. 前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極と、前記サブマウントまたは支持体の金属層との接合を、金属ハンダのみ、または金属ハンダと金属バンプによって行うことを特徴とする上記21または22記載の方法。
24. 前記サブマウントまたは支持体の母材がAlN、Al、Si、ガラス、SiC、ダイヤモンド、BNおよびCuWからなる群より選ばれることを特徴とする上記21〜23のいずれかに記載の方法。
25. 前記サブマウントまたは支持体の発光素子間の分離部分に、金属層が形成されていないことを特徴とする上記21〜24のいずれかに記載の方法。
26. 前記基板の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記5記載の方法。
27. 前記バッファ層の第1の光取り出し方向側の表面が平坦でないことを特徴とする上記6記載の方法。
28. 前記バッファ層から基板側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が基板で反射される反射率をR3、前記基板から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記基板の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記5記載の方法。
29. 前記第一導電型半導体層からバッファ層側に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光がバッファ層で反射される反射率をR3、前記バッファ層から第1の光取り出し方向側の空間に垂直入射する当該発光素子の発光波長の光が空間との界面で反射される反射率をR4で表したとき、
R4<R3
を満たすように前記バッファ層の第1の光取り出し方向側に低反射光学膜が設けられることを特徴とする上記6記載の方法。
30. 前記基板がGaNであり、前記バッファ層のすべてを900℃以上の温度にてGaNで形成することを特徴とする上記1〜29のいずれかに記載の方法。
上記の製造方法によれば、青色または紫外発光が可能な発光素子であって、高出力、高効率のフリップチップマウント型の半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
上記の製造方法では、製造プロセスにおける各工程でのプロセスダメージが排除されているために、発光素子の機能が損なわれることなく信頼性の高い素子を製造することができる。
上記の製造方法によれば、タイプCおよびタイプDにおいて開示される発光素子を製造することができる。この製造方法は、工程(a)〜工程(j)を有しており、その工程順を図6のフローチャートに示す。ここで開示される発明では、工程(a)、(b)および(c)は、この順に実施する。工程(d)および(e)は、工程(c)の次に実施されるが、工程(d)および(e)の順番はどちらが先でもよい。その後、工程(f)を実施した後、工程(g)、(h)および(i)はどの順番で行ってもよいが、同時に行うことが好ましい。その後、工程(j)を実施する。
薄膜結晶成長に使用した基板を剥離する場合、即ちタイプDで開示される発光素子を製造する場合は、工程(j)の後に実施する。
各工程の具体的内容に関しては、すでにタイプCおよびタイプDにおいて説明した通りであり、上記の製造方法は、その内容のすべてを包含する。但し、タイプCにて開示される発光素子においては、バッファ層は任意の構成であるので、バッファ層がない構成の発光素子を作製するときは、バッファ層の成膜工程は省略される。
また、工程(e)の違いと、工程(g)の違いにより、素子端の形状、絶縁層の溝底面および側壁面での形状が異なる。
<<2−7. 本発明の集積型発光源の形態>>
上記タイプA〜タイプDの発光素子は、種々の形態にて、本発明の集積型発光源に組み入れることができる。
タイプAの形態においては、図11に示すように、発光素子10に備えられているサブマウント40を、メイン支持体100上に搭載して、集積型発光源とすることができる。この集積型発光源では、メイン支持体100とは別に、発光素子に対応してサブマント40が存在する。光取り出し材料110の付着形態は、前述の(i)〜(v)のいずれも可能である。図11には、(v)の付着形態を示した。
あるいは、図11Aに示すように、外周部を壁状に取り囲む反射板を有するマウント部品105をメイン支持体として用いることもできる。この集積型発光源は、マウント部品105上の反射板で囲まれた部分に、サブマウント40付きの発光素子10が搭載され、さらに、反射板の内側の空間に光取り出し材料110が充填された構造を有している。図11Aでも光取り出し材料110の付着の形態として(v)の形態を示したが、前述の(i)〜(v)のいずれも可能である。
また、サブマウントが存在しない形態も可能である。即ち、メイン支持体100上に必要な金属配線を予め形成しておくことで、メイン支持体100にタイプAの説明中のサブマウント40を兼ねさせることできる。この例は、すでに図7−1、図7−2、図8−1、図8−2、図9および図10で示したとおり、メイン支持体100上の金属配線に、金属ハンダ等を介して直接、発光素子10を搭載する。さらに、図12に示すように、複数の発光素子10を1つのサブマウント40に搭載した素子の1つまたは複数個を、さらにメイン支持体100上に搭載して本発明の集積型発光源とすることもできる。発光素子10への光取り出し材料110の付着の形態の1例として、図12には(v)の付着形態を示したが、前述の(i)〜(v)のいずれも可能である。
なお、図示はしていないが、タイプCの発光素子(すなわち、例えば図4−1Aに示したような、光均一化層のない発光素子)を用いた場合も、メイン支持体上への複数の発光素子の配列形態、および発光素子への光取り出し材料の付着形態は、タイプAの発光素子を用いた場合と同様とすることができる。
また、タイプBの形態においても同様に、図13に示すように、発光素子10ごとに備えられている支持体40をメイン支持体100上に搭載したり、図14に示すように、複数の発光素子10を1つの支持体40に搭載した1つまたは複数の素子をメイン支持体100上に搭載したり、図15に示すように、複数の発光素子10を、金属ハンダ等を介してメイン支持体100上に直接搭載したりすることによって、集積型発光源とすることができる。タイプBの形態の発光素子10を、支持体40を使用せずに直接メイン支持体100に搭載する場合、基板21がついている状態の作製途中のデバイスを、支持体40ではなくメイン支持体100に接合し、その後、基板21を剥離することで製造することができる。タイプCの形態においても、光取り出し材料110の付着形態として、図12〜14では(v)の付着形態を示したが、前述の(i)〜(v)のいずれも可能である。
なお、図示はしていないが、タイプDの発光素子(すなわち、例えば図5−1Aに示したような、光均一化層のない発光素子)を用いた場合も、メイン支持体上への複数の発光素子の配列形態、および発光素子への光取り出し材料の付着形態は、タイプBの発光素子を用いた場合と同様とすることができる。
また、図11Aに示した構成は、マウント部品105をメイン支持体として用いた代表的な例を示すだけであって、上述した集積型発光源の全ての形態に適用することができる。
<<3. 光取り出し材料>>
本発明に使用される光取り出し材料は、透明性、適切な屈折率、および密着性を有する材料であれば特に限定されない。さらに好ましくは、耐熱性およびこれらの各特性の長期安定性を有する材料である。
<<3−1. 光取り出し材料の具体的材料>>
光取り出し材料としては、発光素子には液状で付着(塗布)され、その後、何らかの硬化処理を施すことにより硬化されて固体状になる硬化性材料を用いることができる。ここで、「液状」とは、一般的な意味で用いられる液体状だけでなくゲル状も含む。本出願において、「光取り出し材料」の用語は、一般に硬化後の材料を意味し、液状の材料は、「硬化前」等の用語により区別される。尚、「硬化」の用語は、液状から固体状に変化するすべて変化を含み、重合および/または架橋による硬化に加えて、溶融状態から冷却による固体化、および溶媒蒸発による乾燥等を含む。
硬化性材料は、発光素子から発せられた光の取り出し効率を高めるという光取り出し材料の役割を担保するものであれば、具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これら硬化性材料の中では、特に、発光素子からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱適応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
<<3−2. シリコーン系材料>>
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、下記の一般組成式(1)で表わされる化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q・・・式(1)
一般組成式(1)において、R1からR6は、有機官能基、水酸基及び水素原子よりなる群から選択されるものを表わす。なお、R1からR6は、同じであってもよく、異なってもよい。
また、一般組成式(1)において、M、D、T及びQは、0以上1未満の数を表わす。ただし、M+D+T+Q=1を満足する数である。
なお、シリコーン系材料を硬化性材料として用いる場合、その塗設に際しては、液状のシリコーン系材料を発光素子に付着させた後、熱や光によって硬化させればよい。
シリコーン系材料の種類:
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
付加型シリコーン系材料:
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られる、Si−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
縮合型シリコーン系材料:
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(2)及び/又は(3)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
m+n1 m-n (2)
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
(Ms+t1 s-t-1u2 (3)
(式(3)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させておいても良い。硬化触媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、例えば、金属キレート化合物などを好適に用いることができる。金属キレート化合物は、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、チタン及びタンタルからなる群より選ばれるいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特開2006−77234号公報、特開2006−291018号公報、特開2006−316264号公報、特開2006−336010号公報、特開2006−348284号公報、および国際公開2006/090804号パンフレットに記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や当該素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが多い。そこで、本発明に用いる硬化性材料としては密着性が高いシリコーン系材料を用いることが好ましく、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料を用いることがより好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
本発明で用いる硬化性材料としては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
〔特徴〈1〉(ケイ素含有率)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であり、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
ケイ素含有率の測定:
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
〔特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料において、前記(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に前記(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、前記(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなることがある。
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば、以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
[固体Si−NMRスペクトル測定]
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。
[装置条件]
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:シリコーンゴム
[データ処理例]
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
[波形分離解析法]
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
〔特徴〈3〉(シラノール含有率)〕
本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば、前記の[固体Si−NMRスペクトル測定]の項で説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
また、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
さらに、本発明で用いることのできる硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適切な触媒の存在下で加熱することにより、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
その他の成分:
硬化性材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
無機粒子:
硬化性材料には、光学的特性や作業性を向上させるため、また、以下の〔1〕〜〔5〕の何れかの効果を得ることを目的として、更に無機粒子を含有させても良い。なお、無機粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔1〕硬化性材料に無機粒子を光散乱剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層を散乱層とする。これにより、光源から伝送された光を散乱層において散乱させることができ、導光部材から外部に放射される光の指向角を広げることが可能となる。また、蛍光体と組み合わせて無機粒子を光散乱剤として含有させれば、蛍光体に当たる光量を増加させ、波長変換効率を向上させることが可能となる。
〔2〕硬化性材料に無機粒子を結合剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層においてクラックの発生を防止することができる。
〔3〕硬化性材料に無機粒子を粘度調整剤として含有させることにより、当該硬化性材料の粘度を高くすることができる。
〔4〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の収縮を低減することができる。
〔5〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の屈折率を調整して、光取り出し効率を向上させることができる。
ただし、硬化性材料に無機粒子を含有させる場合、その無機粒子の種類及び量によって得られる効果が異なる。
例えば、無機粒子が粒径約10nmの超微粒子状シリカ、ヒュームドシリカ(乾式シリカ。例えば、「日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#200」、「トクヤマ社製、商品名:レオロシール」等)の場合、硬化性材料のチクソトロピック性が増大するため、上記〔3〕の効果が大きい。
また、例えば、無機粒子が粒径約数μmの破砕シリカ若しくは真球状シリカの場合、チクソトロピック性の増加はほとんど無く、当該無機粒子を含む層の骨材としての働きが中心となるので、上記〔2〕及び〔4〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物(前記の無機系材料及び/又は有機系材料など)とは屈折率が異なる粒径約1μmの無機粒子を用いると、前記化合物と無機粒子との界面における光散乱が大きくなるので、上記〔1〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物より屈折率の大きな、中央粒径が通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常10nm以下、好ましくは5nm以下、具体的には発光波長以下の粒径をもつ無機粒子を用いると、当該無機粒子を含む層の透明性を保ったまま屈折率を向上させることができるので、上記〔5〕の効果が大きい。
従って、混合する無機粒子の種類は目的に応じて選択すれば良い。また、その種類は単一でも良く、複数種を組み合わせてもよい。また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていても良い。
無機粒子の種類:
使用する無機粒子の種類としては、例えば、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が挙げられるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。
無機粒子の形態は粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、当該無機粒子を含有させる層に含有されるその他の材料と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして硬化性材料に加えたりすることが好ましい。
無機粒子の中央粒径:
これらの無機粒子(一次粒子)の中央粒径は特に限定されないが、通常、蛍光体粒子の1/10以下程度である。具体的には、目的に応じて以下の中央粒径のものが用いられる。例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その中央粒径は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは20μm以下である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いるのであれば、その中央粒径は1μm〜10μmが好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いるのであれば、その中央粒子は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その中央粒径は1〜10nmが好適である。
無機粒子の混合方法:
無機粒子を混合する方法は特に制限されない。通常は、蛍光体と同様に遊星攪拌ミキサー等を用いて脱泡しつつ混合することが推奨される。例えばアエロジルのような凝集しやすい小粒子を混合する場合には、粒子混合後必要に応じビーズミルや三本ロールなどを用いて凝集粒子の解砕を行なってから蛍光体等の混合容易な大粒子成分を混合しても良い。
無機粒子の含有率:
硬化性材料中における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、当該無機粒子を含有する層における無機粒子の含有率は、その適用形態により選定することが好ましい。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その層内における含有率は0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その層内における含有率は1〜50重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チクソ剤)として用いる場合は、その層内における含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その層内における含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、流体状の硬化性材料における無機粒子の含有率は、各層における無機粒子の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が乾燥工程において重量変化しない場合は硬化性材料における無機粒子の含有率は形成される各層における無機粒子の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、当該硬化性材料が乾燥工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における無機粒子の含有率が、形成される各層における無機粒子の含有率と同様になるようにすればよい。
さらに、硬化性材料として前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を用いる場合には、当該加水分解・重縮合物はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの他の硬化性材料と比較して低粘度であり、かつ蛍光体や無機粒子とのなじみが良く、高濃度の無機粒子を分散しても十分に塗布性能を維持することが出来る利点を有する。また、必要に応じて重合度の調整やアエロジル等のチキソ材を含有させることにより高粘度にすることも可能であり、目的の無機粒子含有量に応じた粘度の調整幅が大きく、塗布対象物の種類や形状さらにはポッティング、スピンコート、印刷などの各種塗布方法に柔軟に対応できる塗布液を提供することが出来る。
<<3−3. その他>>
光取り出し材料には、必要に応じて各種の後処理を施しても良い。後処理の種類としては、表面処理、反射防止膜の作製、光取り出し効率向上のための微細凹凸面の作製等が挙げられる。
また、光取り出し材料は、熱膨張係数が、集積型発光源に用いられる材料と同程度に小さいことが好ましいが、好ましいシリコーン材料を用いた場合には、前述のようにエラストマーの性質を有することも好ましく、付着する装置部位等も考慮して適宜設定することができる。硬化物に分岐構造、架橋構造が多くなるほど、熱膨張係数が小さくなるが、一般に硬くなり、エラストマー性が低下する。従って、好ましいシリコーン材料では、2官能ケイ素のみを有するモノマーおよび/またはオリゴマーに加えて、3官能以上のケイ素を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを原料として使用することで、架橋密度を適宜調節することが好ましい。
また、光取り出し材料は、蛍光体を含有させることもできる。また複数の層とすることもできる。
<<4. 光取り出し材料を付着した集積型発光源の製造>>
本発明では、複数の発光素子をメイン支持体上に搭載した後に、光取り出し材料を発光素子に付着させて集積型発光源を作製することが好ましい。光取り出し材料を付着させる方法としては、液状材料(硬化前の光取り出し材料)の粘度を適宜調節して、所望の形状が得られるようにすることが好ましい。
発光素子への光取り出し材料の付着の形態としては、前述のように(i)〜(v)の形態がある。例えば(i)の付着の形態の場合、比較的粘度の高い材料をディスペンサ等により順次付着していくことで形成できる。付着の形態(ii)〜(v)、特に(iii)〜(v)の形態では、粘度が低く流動性の高い材料を使用してもよい。図16に示すように、流動性が非常に大きいときは、発光素子の周囲に液止め120を設けてもよい。また、図11Aに示すようなマウント部品105をメイン支持体として用いた場合は、マウント部品105の外周部の反射板を液止めとして利用することができる。あるいは、図17に示すように、ポッティング容器121中の液状材料113に、集積型発光源200を逆さまにして浸し、液状材料を硬化させ、その後ポッティング容器121をはずして、光取り出し材料を形成してもよい。
以上のようにして製造された集積型発光源は、複数の発光素子をメイン支持体上に配列した構成とすることで、照明用としての使用に適した大面積の発光源を提供することができる。しかも、発光素子に光取り出し材料が付着しているため、光取り出し効率が向上し、照明用としての使用により適したものとなる。さらに、発光素子への光取り出し材料の付着の形態によっては、光取り出しの均一性も向上する。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下の実施例において参照している図面は、構造を把握しやすくするために敢えて寸法を変えている部分があるが、実際の寸法は以下の文中に記載されるとおりである。
<<タイプAの発光素子の製造例>>
(製造例A−1)
図1-11に示した発光素子を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図1-5〜10を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaNと厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光均一化層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-5に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-6に対応する。
次いで、装置間分離溝13を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域のSrF膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrFマスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光均一化層23およびアンドープGaNバッファ層22の薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。装置間分離溝13の幅は、マスクの幅どおり、150μmで形成できた。
第二エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-7に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOとSiNをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-8に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上のp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のスクライブ領域14の形成を同時に実施するために、まず、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクで覆われていない部分の誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOとSiNからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。また、スクライブ領域の幅が100μm(分離後の素子中のLWSが50μm)になるように形成した。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-9Aに対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備のために、レジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(300nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-10に対応する。
次いで、サファイア基板の裏面側に、MgFからなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgFは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの化合物半導体発光素子を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、図1-11に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例A−2)
図1-15(図1-2Aに類似)に示した発光素子を以下の手順で作製した。
誘電体多層膜を絶縁層としてウエハー全面に形成するところまで(図1-8に概ね対応する)は、製造例A−1と同様の工程を繰り返した。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域36の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板21側に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクをで覆われていなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層22の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiNとSiOからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図1-9Bに対応する。
次いで、n側電極28を製造例A−1同様に形成した。次いで、サファイア基板の裏面側に、MgFからなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgFは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの発光素子を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、図1-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例A−3、4)
製造例A−1および2において、光均一化層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例A−1および2を繰り返した。即ち、製造例A−1で、光均一化層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例A−1、2と同様にして、それぞれ図1-11および図1-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例A−1〜4のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNマスクを除去したが、SiNマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよい。
さらに、製造例A−1(および製造例A−3)において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図1-1Dに示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。また、第二エッチング工程でのエッチングを、光均一化層の途中で止めることで、図1-1Cに示す発光素子を製作することができる。同様に、製造例A−2(および製造例A−4)において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、また、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつサイドエッチングの量により図1-2Dまたは図1-2Eに示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。また、第二エッチング工程でのエッチングを、光均一化層の途中で止めることで、図1-2Cに示す発光素子を製作することができる。
(製造例A−5)
図1-12に示した発光素子を以下の手順で作製した。厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして20nm厚みの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光均一化層23としてアンドープIn0.05Ga0.95N層が3nm厚とアンドープGaN層が12nm厚の各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層22aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nm厚に成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、装置間分離溝を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝の形成領域にあるSrF膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程を実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光均一化層23およびアンドープGaNバッファ層22までの薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いてICPエッチングした。第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。
第二エッチング工程により装置間分離溝を形成した後、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiN層をパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをSFガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、p−CVD法によって絶縁層30としてSiNを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上のp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層上のn側電流注入領域の形成、さらに装置間分離溝のスクライブ領域14とを同時に形成するために、まず、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSFガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクで覆われていない部分の絶縁層を除去した。ここでは、p側電極の周辺はSiN絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例A−6)
製造例A−5において、基板および薄膜結晶層の構成を次のように変更した以外は、製造例A−5と同様にして発光素子を作製した。
まず、厚みが330μmのc+面GaN基板21(Si濃度1×1017cm−3))を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いてバッファ層22として厚み2μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。
ついで光均一化層23としてアンドープIn0.05Ga0.95Nが3nmとアンドープGaNが12nmの各20層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN4μmを形成した。ここで、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で、これに隣接するアンドープGaN層は850℃、その他のGaN層は1035℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度7×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
この後は、製造例A−5と同様にして発光素子を完成した、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例A−5、6では、第二エッチング工程を行い、その後第一エッチング工程を実施したが、第一エッチング工程を先に実施し、その後第二エッチング工程を実施してもよい。その場合に、第一エッチング工程で使用したSiNマスクを除去することなく、第二エッチング工程を実施することも好ましい。また、絶縁層30のエッチングの際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを進めることにより、第2の態様の形状の発光素子を製造することもできる。
<<タイプBの発光素子の製造例>>
(製造例B−1)
図2-15に示した発光素子を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図2-7〜12を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に厚み1μmの第2のバッファ層22bとして厚み0.5μmのアンドープGaNと厚み0.5μmのSiドープ(Si濃度7×1017cm−3)のGaN層を1040℃で積層した。連続して光均一化層23として厚み3.5μmのアンドープGaN層を1035℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-7に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-8に対応する。
次いで、装置間分離溝13を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域のSrF膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrFマスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaN光均一化層23およびアンドープGaNバッファ層22の薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。装置間分離溝13の幅は、マスクの幅どおり、150μmで形成できた。
第二エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-9に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOとSiNをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-10に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板21側に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層22の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOとSiNからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-11に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備のために、レジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(300nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図2-12に対応する。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光素子が作りこまれたウエハー(基板21)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光素子が形成されたウエハー(基板21)を300℃に加熱してp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、KrFエキシマレーザ(波長248nm)から出射されたレーザ光を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光素子を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の分離領域部分とウエハー内の装置間分離溝を同時にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図2-15に示す化合物半導体発光素子を完成させた。
(製造例B−2)
製造例B−1において、光均一化層23を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例B−1および2を繰り返した。即ち、製造例B−1で、光均一化層23として厚み3.5μmのアンドープGaNを1035℃で形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例B−1と同様にして、図2-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例B−1および2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNマスクを除去したが、SiNマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよい。
さらに、製造例B−1および製造例B−2において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図2-2B、図2-2Cに示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。また、第二エッチング工程でのエッチングを、光均一化層の途中で止めることで、図2-2Aに示す発光素子を製作することができる。素子分離は、支持体内の素子分離領域部分を、装置間分離溝底部の光均一化層およびバッファ層と共にカットすればよい。
さらに、図2-3A〜図2-3Cに示す発光素子を製作するには、製造例B−1および製造例B−2において、第二エッチング工程でのエッチングを、光均一化層またはバッファ層の途中で止め、さらに、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めずに、例えばスクライブ領域の幅が100μm(分離後の素子中のLWSが50μm)になるように、溝底面に絶縁層を残しながらスクライブ領域を形成することで実施することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。
(製造例B−3)
図2-16に示した発光素子を以下の手順で作製した。厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして20nm厚みの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み1μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
光均一化層23としてアンドープIn0.05Ga0.95N層が3nm厚とアンドープGaN層が12nm厚の各10層の積層構造をその中心に含むアンドープGaN層2μm厚を形成した。ここで、アンドープGaN層は850℃、アンドープIn0.05Ga0.95N層は730℃で成長した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、装置間分離溝を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝の形成領域にあるSrF膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程を実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープInGaN/GaN光均一化層23およびアンドープGaNバッファ層22までの薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いてICPエッチングした。第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。
第二エッチング工程により装置間分離溝を形成した後、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiN層をパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをSFガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、p−CVD法によって絶縁層30としてSiNを125nm厚だけウエハー全面に形成した。
次いで、Pd−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板側部分に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクを形成しなかった絶縁層を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層の側壁の基板側部分の絶縁層も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiN絶縁層に150μm覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光素子が作りこまれたウエハー(基板21)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光素子が形成されたウエハー(基板21)を300℃に加熱してp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、KrFエキシマレーザ(波長248nm)から出射されたレーザ光を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光素子を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の分離領域部分とウエハー内の装置間分離溝を同時にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図2-16に示す化合物半導体発光素子を完成させた。
<<タイプCの発光素子の製造例>>
(製造例C−1)
図4-11に示した発光素子を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図4-5〜10を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み4μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-5に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-6に対応する。
次いで、装置間分離溝13を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域のSrF膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrFマスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、およびアンドープGaNバッファ層22の薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。装置間分離溝13の幅は、マスクの幅どおり、150μmで形成できた。
第二エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-7に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOとSiNをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-8に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上のp側電極露出部分と、n側コンタクト層24c上のn側電流注入領域(36)と、装置間分離溝内のスクライブ領域14とを同時に形成する絶縁層の除去のために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクで覆われていない部分の誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOとSiNからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。また、スクライブ領域の幅が100μm(分離後の素子中のLwsが50μm)になるように形成した。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-9Aに対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備のために、レジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(300nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-10に対応する。
次いで、サファイア基板の裏面側に、MgFからなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgFは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの発光素子を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、図4-11に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例C−2)
図4-15(図4-2Aに類似)に示した発光素子を以下の手順で作製した。
誘電体多層膜を絶縁層としてウエハー全面に形成するところまで(図4-8に概ね対応する)は、製造例C−1と同様の工程を繰り返した。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域36の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板21側に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクをで覆われていなかった誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層22の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiNとSiOからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図4-9Bに対応する。
次いで、n側電極28を製造例C−1同様に形成した。次いで、サファイア基板の裏面側に、MgFからなる低反射光学膜45を真空蒸着法によって形成した。この際には、MgFは素子の発光波長に対して低反射コーティングとなるように、光学膜厚の1/4を成膜した。
次いで、ウエハー上に形成された1つ1つの発光素子を分割するために、レーザスクライバーを用いて薄膜結晶成長側から装置間分離溝13内にスクライブラインを形成した。さらにこのスクライブラインにそってサファイア基板とMgF低反射光学膜のみをブレーキングし、1つ1つの発光素子を完成させた。この際に、薄膜結晶層へのダメージ導入はなく、また、誘電体膜の剥離等も発生しなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、図4-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例C−3、4)
製造例C−1および2において、バッファ層22を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例C−1および2と同様の工程を繰り返した。即ち、製造例C−1で、バッファ層22を形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例C−1、2と同様にして、それぞれ図4-11および図4-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例C−1〜4のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNマスクを除去したが、SiNマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよい。
さらに、製造例C−1(および製造例C−3)において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図4-1Cに示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。同様に、製造例C−2(および製造例C−4)において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図4-2Cに示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。
(製造例C−5)
図4-12に示した発光素子を以下の手順で作製した。厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして20nm厚みの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み2μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nm厚に成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nm厚に成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、装置間分離溝を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝の形成領域にあるSrF膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程を実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaNバッファ層22までの薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いてICPエッチングした。第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。
第二エッチング工程により装置間分離溝を形成した後、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiN層をパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをSFガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、p−CVD法によって絶縁層30としてSiNを125nm厚だけウエハー全面に形成した。次いで、Pd−Auからなるp側電極27の上のp側電極露出部分と、n側コンタクト層上のn側電流注入領域と、さらに装置間分離溝のスクライブ領域14とを同時に形成する絶縁層の除去のために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成し、次いでSFガスのRIEプラズマを用いてレジストマスクで覆われていない部分の絶縁層を除去した。ここでは、p側電極の周辺はSiN絶縁層に覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備としてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、この素子を金属ハンダ42を用いてサブマウント40の金属層41と接合し、発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
(製造例C−6)
製造例C−5において、基板および薄膜結晶層の構成を次のように変更した以外は、製造例C−5と同様にして発光素子を作製した。
まず、厚みが330μmのc+面GaN基板21(Si濃度1×1017cm−3)を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いてバッファ層22として厚み6μmのアンドープGaNを1040℃で形成した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度7×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nmに成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
この後は、製造例C−5と同様にして発光素子を完成した、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例C−5、6では、第二エッチング工程を行い、その後第一エッチング工程を実施したが、第一エッチング工程を先に実施し、その後第二エッチング工程を実施してもよい。その場合に、第一エッチング工程で使用したSiNマスクを除去することなく、第二エッチング工程を実施することも好ましい。また、絶縁層30のエッチングの際に、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、サイドエッチングを進めることにより、第2の態様の形状の発光素子を製造することもできる。
<<タイプDの発光素子の製造例>>
(製造例D−1)
図5-15に示した発光素子を以下の手順で作製した。関連する工程図として、図5-7〜12を参照する。
厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして厚み10nmの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み4μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で5層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.03μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極27をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてNi(20nm厚)/Au(500nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極を完成させた。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-7に対応する。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiNマスクをパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分はマスクを残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜を除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層24cを露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをバッファフッ酸を用いてすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによっても、p側電極はまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-8に対応する。
次いで、装置間分離溝13を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝を形成する領域のSrF膜を除去し、薄膜結晶層の装置間分離溝形成用マスク、すなわち、第二エッチング工程用SrFマスクを形成した。
次いで第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、およびアンドープGaNバッファ層22の薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いたICPエッチングした。この第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。装置間分離溝13の幅は、マスクの幅どおり、150μmで形成できた。
第二エッチング工程によって装置間分離溝13を形成後は、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-9に対応する。
次いで、ウエハー全面にp−CVD法によってSiOとSiNをこの順に形成し、誘電体多層膜とした。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-10に対応する。
次いで、Ni−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板21側に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクで覆われていない部分の誘電体多層膜(絶縁層)を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層の側壁の一部の誘電体多層膜(絶縁層)も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiOとSiNからなる絶縁層に150μm覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-11に対応する。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備のために、レジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(300nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きくなるように、絶縁層にその周辺が30μmほど接するようにし、かつ、p側電極27との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。尚、別の製造例では、10μmほど接するようにして製造し、この製造例と同等の性能の発光素子が得られた。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。ここまでの工程で完成した構造は、概ね図5-12に対応する。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光素子が作りこまれたウエハー(基板21)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光素子が形成されたウエハー(基板21)を300℃に加熱してp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際に、この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、KrFエキシマレーザ(波長248nm)から出射されたレーザ光を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光素子を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内の分離領域部分とウエハー内の装置間分離溝を同時にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図5-15に示す化合物半導体発光素子を完成させた。
(製造例D−2)
製造例D−1において、バッファ層22を成膜した後の薄膜結晶層の成膜を次のように行った以外は製造例D−1および2と同様の工程を繰り返した。即ち、製造例D−1で、バッファ層22を形成した後、さらに、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度5×1018cm−3)のGaN層を4μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度8×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度5.0×1018cm−3)のAl0.10Ga0.90N層を0.1μmの厚さで形成した。さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nmの厚さに成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として720℃で2nmの厚さに成膜したアンドープIn0.1Ga0.9N層とを、量子井戸層が全部で8層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.10Ga0.90Nを0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaNを0.07μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaNを0.03μmの厚さに形成した。その後は、製造例D−1と同様にして、図5-15に示す発光素子を完成させた。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
尚、製造例D−1および2のプロセスでは、第一エッチング工程後にSiNマスクを除去したが、SiNマスクを除去せずに、第二エッチング工程後に除去してもよい。
さらに、製造例D−1および製造例D−2において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止めることで、図5-2に示す発光素子を製作することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。素子分離は、支持体内の素子分離領域部分を、装置間分離溝底部のバッファ層と共にカットすればよい。
さらに、図5-3Aに示す発光素子を製作するには、製造例D−1および製造例D−2において、第二エッチング工程でのエッチングを、バッファ層の途中で止め、さらに、予定した形状に適したフォトリソグラフィによって、適切なエッチングマスク形状を準備し、かつ、絶縁層のサイドエッチングを進めずに、例えばスクライブ領域の幅が100μm(分離後の素子中のLWSが50μm)になるように、溝底面に絶縁層を残しながらスクライブ領域を形成することで実施することができる(但し、絶縁層は多層誘電体膜)。
(製造例D−3)
図5-16に示した発光素子を以下の手順で作製した。厚みが430μmのc+面サファイア基板21を用意し、この上に、まずMOCVD法を用いて、第1のバッファ層22aとして20nm厚みの低温成長したアンドープのGaN層を形成し、この後に第2のバッファ層22bとして厚み3μmのアンドープGaN層を1040℃で形成した。
次いで、第一導電型(n型)第二クラッド層24bとしてSiドープ(Si濃度1×1018cm−3)のGaN層を2μm厚に形成し、第一導電型(n型)コンタクト層24cとしてSiドープ(Si濃度2×1018cm−3)のGaN層を0.5μm厚に形成し、さらに第一導電型(n型)第一クラッド層24aとしてSiドープ(Si濃度1.5×1018cm−3)のAl0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さで形成した。
さらに活性層構造25として、バリア層として850℃で13nm厚に成膜したアンドープGaN層と、量子井戸層として715℃で2nm厚に成膜したアンドープIn0.13Ga0.87N層を、量子井戸層が全部で3層で両側がバリア層となるように交互に成膜した。
さらに成長温度を1025℃にして、第二導電型(p型)第一クラッド層26aとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)Al0.15Ga0.85N層を0.1μmの厚さに形成した。さらに連続して、第二導電型(p型)第二クラッド層26bとしてMgドープ(Mg濃度5×1019cm−3)GaN層を0.05μmの厚さに形成した。最後に第二導電型(p型)コンタクト層26cとしてMgドープ(Mg濃度1×1020cm−3)GaN層を0.02μmの厚さに形成した。
この後にMOCVD成長炉の中で徐々に温度を下げて、ウエハーを取り出し、薄膜結晶成長を終了した。
薄膜結晶成長が終了したウエハーに対してp側電極27を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてp側電極をリフトオフ法でパターニングする準備をしてレジストパターンを形成した。ここでp側電極としてPd(20nm厚)/Au(1000nm厚)を真空蒸着法によって形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してp側電極27を完成させた。尚、ここまでの工程では、p側電極直下のp側電流注入領域には、プラズマプロセス等のダメージが入るような工程はなかった。
次いで、装置間分離溝を形成する第二エッチング工程を実施するために、真空蒸着法を用いて、SrFマスクをウエハー全面に形成した。次いで、装置間分離溝の形成領域にあるSrF膜を除去し、薄膜結晶層の分離エッチングマスク、すなわち、第二エッチング工程を実施するためのエッチングマスクを形成した。
次いで、第二エッチング工程として、装置間分離溝に相当する部分の、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24a、n−GaNコンタクト層24c、n−GaN第二クラッド層24b、アンドープGaNバッファ層22までの薄膜結晶層すべてを、Clガスを用いてICPエッチングした。第二エッチング工程中には、SrFマスクはほとんどエッチングされなかった。
第二エッチング工程により装置間分離溝を形成した後、不要となったSrFマスクを除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたためまったく変質しなかった。
次いで、第一導電型側電極を形成する前準備として第一導電型コンタクト層を露出させる第一エッチング工程を実施するために、エッチング用マスクの形成を実施した。ここでは、p−CVD法を用いて0.4μm厚みのSiNを基板温度400℃で、ウエハー全面に成膜した。ここでp側電極表面にはAuが露出していたため、p−CVDによるSiN成膜プロセスによってもまったく変質しなかった。次に再度フォトリソグフィー工程を実施してSiN層をパターニングし、SiNエッチングマスクを作製した。この際には、SiN膜の不要部分のエッチングはRIE法を用いてSFプラズマを用いて実施し、後述する第一エッチング工程において薄膜結晶層のエッチングを行わない部分は残し、かつ予定されている薄膜結晶層のエッチング部分に相当する部分のSiN膜は除去した。
次いで第一エッチング工程として、p−GaNコンタクト層26c、p−GaN第二クラッド層26b、p−AlGaN第一クラッド層26a、InGaN量子井戸層とGaNバリア層からなる活性層構造25、n−AlGaN第一クラッド層24aを経てn−GaNコンタクト層24cの途中まで、Clガスを用いたICPプラズマエッチングを実施し、n型キャリアの注入部分となるn型コンタクト層を露出させた。
ICPプラズマエッチング終了後は、SiNマスクをSFガスを用いたRIE法によりすべて除去した。ここにおいてもp側電極表面にはAuが露出していたため、このプロセスによってもまったく変質しなかった。
次いで、p−CVD法によって絶縁層30としてSiNを125nm厚だけウエハー全面に形成した。
次いで、Pd−Auからなるp側電極27上へのp側電極露出部分の形成、n側コンタクト層24c上へのn側電流注入領域(36)の形成、装置間分離溝内のアンドープバッファ層の側壁の基板側部分に存在する絶縁層の除去を、同時に実施するために、フォトリソグラフィー技術を用いてレジストマスクを形成した。次いでフッ酸系のエッチャントでレジストマスクで覆われていない部分の絶縁層を除去した。さらに、フッ酸によるサイドエッチングの効果によって、アンドープバッファ層の側壁の基板側部分の絶縁層も除去した。ここでは、p側電極27の周辺はSiN絶縁層に150μm覆われているようにした。また、n側電流注入領域を除いて薄膜結晶層の側壁なども絶縁層に覆われているようにした。
この後に、不要となったレジストマスクは、アセトンで除去し、かつ、RIE法による酸素プラズマでアッシングし除去した。この際にも、p側電極表面にはAuが露出していたため、まったく変質しなかった。
次いで、n側電極28を形成するために、フォトリソグラフィー法を用いてn側電極をリフトオフ法でパターニングする準備としてレジストパターンを形成した。ここでn側電極としてTi(20nm厚)/Al(1500nm厚)を真空蒸着法でウエハー全面に形成し、アセトン中で不要部分をリフトオフ法によって除去した。次いで、その後熱処理を実施してn側電極を完成させた。n側電極は、その面積がn側電流注入領域よりも大きく、かつ、p側電極との重なりを有さないように形成し、金属ハンダによるフリップチップボンディングが容易で、かつ放熱性等にも配慮した。Al電極は、プラズマプロセス等により変質しやすく、かつ、フッ酸等によってもエッチングされるが、素子作製プロセスの最後にn側電極の形成を行ったことから、まったくダメージを受けなかった。
次いで、基板剥離を実施する前準備として、支持体40として、表面にTi/Pt/Auの積層構造の金属配線(金属層41)が形成されたAlN基板を用意した。この支持体に、発光素子が作りこまれたウエハー(基板21)全体を、AuSnハンダを用いて接合した。接合時には、支持体40と発光素子が形成されたウエハー(基板21)を300℃に加熱してp側電極とn側電極が、それぞれ設計された支持体上の金属配線にAuSnハンダで融着されるようにした。この際には、素子の意図しない短絡等は発生しなかった。
次に、基板剥離を実施するために、KrFエキシマレーザ(248nm)から出射されたレーザ光を、薄膜結晶成長を実施していない基板21面から照射し、基板を剥離した(レーザディボンディング)。この後に、GaNバッファ層の一部が窒素と金属Gaに分解されることで発生したGa金属をウェットエッチングによって除去した。
最後に、1つ1つの発光素子を分割するために、ダイシングソーを用いて、支持体内分離領域部分とウエハー内の装置間分離溝を同時にカットした。ここで、支持体内素子分離領域には、金属配線等が存在しなかったことから意図しない配線の剥離等は発生しなかった。このようにして、図5-16に示す化合物半導体発光素子を完成させた。
<<光取り出し材料の製造例>>
<製造例5−1>
WO2006/303328の実施例1−1に記載の合成方法により、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製の両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723(オリゴマー)698.3gと、フェニルトリメトキシシラン69.8gと、触媒として5重量%アルミニウムアセチルアセトン塩メタノール溶液153.4gと、水18.3gとを、撹拌翼及びコンデンサを取り付けた三つロコルベン中に計量し、室温にて大気圧下15分撹拝し、初期加水分解を行なった後に、約75℃にて4時間撹拌しつつ還流させた。
この後、内温が100℃になるまでメタノール及び低沸ケイ素成分を留去し、さらに100℃で4時間撹拌しつつ還流させた。反応液を室温まで冷却し、加水分解・重縮合液を調液した。この液の加水分解率はフェニルトリメトキシシランに対し192%である。なお原料XC96−723は200%加水分解品に相当する。
光取り出し材料の物性確認のため、このようにして得られた加水分解・重縮合液3gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、50℃で30分間保持して第1の乾燥を行い、次いで120℃で1時間、続いて150℃で3時間保持し第2の乾燥を行ったところ、厚さ約0.5mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これをサンプルとして用いて、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率の算出、硬度測定、紫外耐光性試験、耐熱性試験(透過率)、およびケイ素含有率の測定を行った。さらに、上記の加水分解・重縮合液を用いて、耐リフロー試験および屈折率の測定を行った。
これらの試験条件を以下に示す。
(固体Si−NRスペクトル測定)
前述したとおりである。
(シラノール含有率の算出)
前述したとおりである。
(硬度)
古里精機製作所製A型(デュロメータタイプA)ゴム硬度計を使用し、JIS K6253に準拠して硬度(ショアA)を測定した。
(耐紫外光性試験)
耐紫外光性試験は、上記サンプルに以下の条件で紫外光を照射し、照射前後のサンプルの様子を比較することによって行なった。
紫外光照射条件:松下電工製水銀キセノンランプUV照射装置Aicure(登録商標) SPOT TYPE ANUP5203(光ファイバ出光面における出力:28000W/m2)を波長385nm以下のUVカットフィルタと組み合わせて使用した。照射ファイバ先とUVカットフィルタとの間、およびUVカットフィルタとサンプルとの間に隙間が無い状態で紫外光を24時間照射した。照射面に照射された光の照度をウシオ電機社製436nm受光素子照度計UVD−436PD(感度波長域:360nm〜500nm)にて測定したところ、4500W/m2であった。
(耐熱性試験)
上記サンプルを、温度200℃とした通風乾燥機中で500時間保持し、保持前後の、波長400nmの光の透過率を比較した。
(ケイ素含有率)
前述したとおりである。
(耐リフロー試験)
耐リフロー試験は、以下の手順で行なった。
(1)上記の加水分解・重縮合液を、直径9mm、深さ1mmの、表面にAgメッキを施した銅製カップに滴下し、所定の硬化条件で硬化させて耐リフロー試験用のサンプルを10個作製した。
(2)縦長さ×横長さ×厚さ=25mm×70mm×1mmのアルミ板に放熱用シリコーングリスを薄く塗り、その上にサンプルを並べて温度85℃、湿度85%の雰囲気(以下、「吸湿環境」という)下で1時間吸湿させた。
(3)吸湿させたサンプルを吸湿環境下から取り出し、室温(20℃〜25℃)まで冷却した。冷却したサンプルを、260℃に設定したホッとプレート上にアルミ板ごと載置し、1分間保持した。この条件においてサンプルの温度は約50秒で260℃に達し、その後、この温度を10秒間保持した。
(4)加熱後のサンプルをアルミ板ごと、室温とされたステンレス製の冷却板の上に置き、室温まで冷却した。目視および顕微鏡観察により、銅製のカップからのサンプルの剥離の有無を観察した。わずかでも剥離が観察されたものは「剥離有」とする。
(5)全てのサンプルについて剥離の観察を行ない、剥離率を求めた。剥離率は、「剥離したサンプルの個数/全サンプル数」により算出する。
(屈折率の測定)
光取り出し材料の屈折率は、液浸法(固体対象)の他、Pulflich屈折計、Abbe屈折計、プリズムカプラー法、干渉法、最小偏角法などの公知の方法を用いて測定することができる。この製造例および以下に述べる製造例による光取り出し材料は、硬化前後で屈折率が変化しないため、光構えの液体状態においてAbbe屈折計(ナトリウムD線(589nm))により屈折率を測定した。
以下に、測定結果および試験結果を示す。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.30
硬度(ショアA):27
紫外線耐光試験(72時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):38
屈折率:1.42
<製造例5−2>
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を140g、フェニルトリメトキシシランを14g、および触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120度まで昇温し、120度全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の加水分解・重縮合液を得た。
光取り出し材料の物性確認のため、このようにして得られた上述の加水分解・重縮合液2gを、直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、防爆炉中、微風下、110℃で1時間保持し、次いで150℃で3時間保持したところ、厚さ約1mmの独立した円形透明エラストマー状膜が得られた。これを用いて、製造例5−1と同様の条件で、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率の算出、硬度測定、紫外耐光性試験、耐熱試験、およびケイ素含有率の測定を行った。さらに、上記の加水分解・重縮合液を用いて、製造例5−1と同様の条件で耐リフロー試験および屈折率の測定を行った。その結果は次のとおりである。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.10
硬度(ショアA):33
紫外線耐光試験(24時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):38
屈折率:1.42
<製造例5−3>
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を70g、両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を70g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120度まで昇温し、120度全還流下で2時間攪拌しつつ初期加水分解を行った。それ以降は、製造例5−2と同じ条件で重合反応および低沸ケイ素成分の留去を行い、無溶剤の加水分解・重縮合液を得た。
光取り出し材料の物性確認のため、製造例5−2と同じ条件で、得られた加水分解・重縮合液からエラストマー状膜を作製し、このエラストマー状膜および加水分解・重縮合膜を用いて、製造例5−1と同様に、各種物性の測定および試験を行なった。その結果は次のとおりである。
(a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク:2本以上。
(b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク:2本以上。
シラノール含有量(重量%):0.6
硬度(ショアA):20
紫外線耐光試験(24時間):変化無し
耐熱試験(200℃):変化無し
耐リフロー試験:剥離脱落なし(剥離率=0%)
ケイ素含有率(重量%):31
屈折率:1.47
<実施例1>
メイン支持体として用意した、平面サイズが10mm×10mm、厚さが0.3mmの、図11Aに示したような反射板付きマウント部品(絶縁性の基体に配線を形成したもの)の上に、製造例A−1で作製した発光素子をフリップチップボンドにより搭載した。発光素子は、平面サイズが1mm×1mmであり、マウント部品上には、9×9の2次元マトリックス状に、合計81個搭載した。隣接する発光素子同士の間隔は100μmとした。発光素子同士の電気的接続は、1列上に並ぶ9個を直列接続し、その列同士を並列に接続するように行なった。
この段階で得られた集積型発光源に180mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は28.9Vであった。集積型発光源からの発光の全放射束は1155mWであった。
さらに、ここまでの段階で得られた集積型発光源に対して、マウント部品上からマイクロピペットで79マイクロリットルの硬化前光取り出し材料を滴下し、発光素子を覆った。硬化前光取り出し材料としては、製造例5−1で得た加水分解・重縮合液を用いた。加水分解・重縮合液は、発光素子内および発光素子間の隙間を充填し、さらに第1の光取り出し方向側の面もぬれた状態で覆った。これを乾燥させることにより、加水分解・重縮合液が硬化し、クラックの無い透明なエラストマー上の光取り出し材料が発光素子に付着した、図11Aに示すような集積型発光源が得られた。
得られた集積型発光源に180mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は28.6Vであった。集積型発光源から発光の全放射束は1653mWとなり、光取り出し材料を発光素子に付着させる前と比較して全放射束が約43%向上した。このことから、発光素子に光取り出し材料を付着させることにより光取り出し効率が向上することがわかる。また、集積型発光源からの発光は均一であった。
<実施例2>
製造例5−3で得た加水分解・重縮合液を硬化前光取り出し材料として使用した以外は実施例1と同様にして集積型発光源を作製した。加水分解・重縮合液の乾燥により、加水分解・重縮合液が硬化し、クラックの無い透明なエラストマー上の光取り出し材料が発光素子に付着した集積型発光源が得られた。
得られた集積型発光源に180mAの電流を流し、集積型発光源を発光させた。この際の駆動電圧は28.4Vであった。集積型発光源からの発光の全放射束は1733mWとなり、実施例1において光取り出し材料を発光素子に付着させる前と比較すると全放射束が約50%向上した。このことから、屈折率の高い光取り出し材料を用いることにより、光取り出し効率がさらに向上することがわかる。また、集積型発光源からの発光は均一であった。
本発明で用いることのできるタイプAの第1の態様の発光素子の1例を示す図である。 図1−1Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプAの第1の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプAの第1の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプAの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 図1−2Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプAの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプAの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプAの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプAの第1の態様の発光素子の1例の完成前の構造を示す図である。 タイプAの第2の態様の発光素子の1例の完成前の構造を示す図である。 タイプAで開示される活性層構造を模式的に示す図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例(第1の態様)を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例(第2の態様)を説明する工程断面図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 製造例A−1、3で製造したタイプAの発光素子を示す図である。 製造例A−5、6で製造したタイプAの発光素子を示す図である。 製造例A−2、4で製造したタイプAの発光素子を示す図である。 タイプAの発光素子の製造方法の1実施形態を説明する工程断面図である。 本発明で用いることのできるタイプBの第1の態様の発光素子の例を示す図である。 図2−1Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプBの第1の態様の発光素子の例を示す図である。 図2−2Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプBの第1の態様の発光素子の例を示す図である。 タイプBの第2の態様の発光素子の例を示す図である。 タイプBの第2の態様の発光素子の位置関係を示すための図である。 タイプBの第2の態様の発光素子の例を示す図である。 タイプBの第1の態様の発光素子の完成前の構造の1例を示す図である。 タイプBの第2の態様の発光素子の完成前の構造の1例を示す図である。 タイプBの第2の態様の発光素子の完成前の構造の1例を示す図である。 タイプBの発光素子の一形態における、金属配線が存在しない領域の幅を説明するための図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 パートBで開示される製造方法の1例を説明する工程断面図である。 製造例B−1で製造したタイプBの発光素子を示す図である。 製造例B−3で製造したタイプBの発光素子を示す図である。 タイプBの発光素子の製造方法の1実施形態を説明する工程断面図である。 タイプAおよびタイプBの発光素子の製造方法の工程順を示すフローチャートである。 本発明で用いることのできるタイプCの第1の態様の発光素子の1例を示す図である。 図4−1Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプCの第1の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプCの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 図4−2Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプCの第2の態様の発光素子の1例を示す図である。 タイプCの第1の態様の発光素子の1例の完成前の構造を示す図である。 タイプCの第2の態様の発光素子の1例の完成前の構造を示す図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例(第1の態様)を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例(第2の態様)を説明する工程断面図である。 タイプCの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 製造例C−1、3で製造したタイプCの発光素子を示す図である。 製造例C−5、6で製造したタイプCの発光素子を示す図である。 製造例C−2、4で製造したタイプCの発光素子を示す図である。 タイプパCの発光素子の製造方法の1実施形態を説明する工程断面図である。 本発明で用いることのできるタイプDの第1の態様の発光素子の例を示す図である。 図5−1Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプDの第1の態様の発光素子の例を示す図である。 タイプDの第2の態様の発光素子の例を示す図である。 図5−3Aに示す発光素子を、その一部の構成を省略して示す図である。 タイプDの第1の態様の発光素子の完成前の構造の1例を示す図である。 タイプDの第2の態様の発光素子の完成前の構造の1例を示す図である。 タイプDの発光素子の一形態における、金属配線が存在しない領域の幅を説明するための図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1例を説明する工程断面図である。 製造例D−1で製造したタイプDの発光素子を示す図である。 製造例D−3で製造したタイプDの発光素子を示す図である。 タイプDの発光素子の製造方法の1実施形態を説明する工程断面図である。 タイプCおよびタイプDの発光素子の製造方法の工程順を示すフローチャートである。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源における、光取り出し材料の付着の1形態を示す図である。 集積型発光源の1例を示す図である。 集積型発光源の1例を示す図である。 集積型発光源の1例を示す図である。 集積型発光源の1例を示す図である。 集積型発光源の1例を示す図である。 集積型発光源の製造方法の1例を示す図である。 集積型発光源の製造方法の1例を示す図である。
符号の説明
10 発光素子
13 装置間分離溝
14 スクライブ領域
15 絶縁層非形成領域
21 基板
22 バッファ層
22a 第1のバッファ層
22b 第2のバッファ層
23 光均一化層
24 第一導電型クラッド層
24a 第一導電型第一クラッド層
24b 第一導電型第二クラッド層
24c 第一導電型(n型)コンタクト層
25 活性層構造
26 第二導電型クラッド層
26a 第二導電型第一クラッド層
26b 第二導電型第二クラッド層
26c 第二導電型(p型)コンタクト層
27 第二導電型側電極
28 第一導電型側電極
30 絶縁層
35 第二電流注入領域
36 第一電流注入領域
37 第二導電型側電極の露出面
40 サブマウント
41 金属層
42 金属ハンダ
45 低反射光学膜
50a 光取り出し面
50b 光取り出し面
51 第一エッチングマスク(SiN等)
52 第二エッチングマスク(金属フッ化物マスク)
55 端部段差面
90 空隙
110 光取り出し材料
105 マウント部品
120 液止め
121 ポッティング容器
200 集積型発光源

Claims (22)

  1. メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(A)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
    (A):
    発光波長に対して透明な基板上に、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
    前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
    前記基板と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層と、任意の構成として前記基板と光均一化層との間にバッファ層を有し;
    前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
    少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
  2. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
    のいずれかの形状を有し;
    前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆している請求項1に記載の集積型発光源。
  3. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記光均一化層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (ii)前記光均一化層および前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (iii)前記光均一化層およびバッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
    前記絶縁膜が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない請求項1に記載の集積型発光源。
  4. 前記発光素子は、
    前記光均一化層が、前記薄膜結晶層の一部として、前記基板と前記第一導電型クラッド層の間に設けられている層である請求項1〜3のいずれかに記載の集積型発光源。
  5. メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(B)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
    (B):
    バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
    前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
    前記バッファ層と前記第一導電型半導体層の間に、前記第1の光取り出し方向側の面から出射する光の均一性を向上させる光均一化層を有し;
    前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
    少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
    (ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有し;
    さらに、前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体
    を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
  6. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (ii)前記光均一化層およびバッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
    前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中からまたは前記光均一化層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有する請求項5に記載の集積型発光源。
  7. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
    前記絶縁膜が、前記光均一化層および前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部をも被覆していながら、端部段差面上には形成されていない請求項5に記載の集積型発光源。
  8. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    前記(i):前記光均一化層の一部、または前記光均一化層の全部と前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記光均一化層またはバッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
    前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆している請求項5に記載の集積型発光源。
  9. メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(C)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
    (C):
    発光波長に対して透明な基板上に、バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層を有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記基板側である化合物半導体発光素子であって、
    前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
    前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は前記基板の端より後退して後退側壁面を形成しており;
    少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、(b)少なくとも、発光素子端から離れた位置から後退側壁面を被覆する絶縁層を有することを特徴とする化合物半導体発光素子。
  10. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状、
    のいずれかの形状を有し;
    前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の後退側壁面と一致する面を被覆している請求項9に記載の集積型発光源。
  11. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記バッファ層の一部が共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状、または
    (ii)前記バッファ層が共にすべて後退して、前記基板が露出した部分が端部段差面を形成する形状のいずれかの形状を有し;
    前記絶縁膜が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない請求項9に記載の集積型発光源。
  12. メイン支持体と、前記メイン支持体上に配列された、次の(D)で規定される複数の発光素子と、前記発光装置に密着して付着している、発光波長において透明な材料からなる光取り出し材料とを有する集積型発光源。
    (D):
    バッファ層、第一導電型クラッド層を含む第一導電型半導体層、活性層構造、および第二導電型クラッド層を含む第二導電型半導体層をこの順序で有する化合物半導体薄膜結晶層と、第二導電型側電極と、並びに第一導電型側電極とを有し、第1の光取り出し方向が前記活性層構造から見てバッファ層側である化合物半導体発光素子であって、
    前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極は、互いに空間的に重なりを有さずかつ前記第1の光取り出し方向とは反対側に形成されており;
    前記第一導電型側電極および前記第二導電型側電極が接続され、前記発光素子を支持する支持体を有し;
    前記発光素子の端において、前記薄膜結晶層の側壁面のうち少なくとも前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層は、製造工程中に装置間分離溝の形成により後退した後退側壁面を構成しており、
    少なくとも、前記第一導電型半導体層、前記活性層構造および前記第二導電型半導体層の後退側壁面を覆う絶縁層であって、(a)前記第一導電型側電極の第1の光取り出し方向側の一部に接し、前記第二導電型側電極の第1の光取り出し方向と反対側の一部を覆い、かつ(b):前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であるときは、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層を有し、または
    (ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状のときは、前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有すること
    を特徴とする化合物半導体発光素子。
  13. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (ii)前記バッファ層が共に後退側壁面を構成して端部段差面が存在しない形状であり、
    前記バッファ層の少なくとも第1の光取り出し方向側部分には形成されずに、前記バッファ層の途中から前記後退側壁面を被覆する絶縁層を有する請求項12に記載の集積型発光源。
  14. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
    前記絶縁膜が、前記バッファ層の後退側壁面の少なくとも一部を被覆していながら、端部段差面上には形成されていない請求項12に記載の集積型発光源。
  15. 前記発光素子は、
    前記薄膜結晶層の後退側壁面に対して、
    (i)前記バッファ層の一部が、共に後退側壁面を構成しており、前記バッファ層の後退していない非後退側壁面との間で端部段差面を形成する形状であり、少なくとも、発光素子端から離れた位置から形成されている絶縁層であって、
    前記絶縁膜が、発光素子端から離れた位置から端部段差面上、および前記第一導電型半導体層の側壁後退面と一致する面を被覆している請求項12に記載の集積型発光源。
  16. 前記光取り出し材料は、次の付着の形態、即ち
    (i)前記発光素子の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
    (ii)前記発光素子の全体を覆っている形態;
    (iii)前記発光素子同士の間を充填している形態;
    (iv)複数の発光素子を覆っている形態;および
    (v)すべての発光素子を覆っている形態;
    の少なくとも1つの形態を満たすように前記発光素子に付着している請求項1〜15のいずれかに記載の集積型発光源。
  17. 前記光取り出し材料は、珪素含有化合物を含有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の集積型発光源。
  18. 前記珪素含有化合物が、縮合型シリコーン系材料であることを特徴とする請求項17に記載の集積型発光源。
  19. 前記縮合型シリコーン系材料が、次の条件(1)〜(3):
    (1)ケイ素含有率が20重量%以上である;
    (2)固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する;
    (a)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク
    (b)ピークトップの位置がシリコーンゴムを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク
    (3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である;
    のうちの少なくとも1つを満足することを特徴とする請求項18に記載の集積型発光源。
  20. 請求項1において(A)で規定される発光素子、請求項5において(B)で規定される発光素子、請求項9において(C)で規定される発光素子、および請求項12において(D)で規定される発光素子からなる群より選ばれる複数個の発光素子を作製する工程と、
    前記複数個の発光素子をメイン支持体上に配列する工程と、
    前記メイン支持体上に配列された前記複数個の発光素子に、前記発光素子の発光波長に対して透明な材料からなる光取り出し材料を密着して付着させる工程と、
    を有する集積型発光源の製造方法。
  21. 前記光取り出し材料を付着させる工程は、
    (i)前記発光素子の第1の光取り出し方向側の面に付着している形態;
    (ii)前記発光素子の全体を覆っている形態;
    (iii)前記発光素子同士の間を充填している形態;
    (iv)複数の発光素子を覆っている形態;および
    (v)すべての発光素子を覆っている形態;
    の少なくとも1つの形態を満たすように前記光取り出し材料を前記発光素子に付着させることを含む請求項20に記載の集積型発光源の製造方法。
  22. 前記光取り出し材料を付着させる工程は、
    液状のシリコーン系材料を前記発光素子に付着させることと、
    付着させたシリコーン系材料を硬化させることと、
    を含む請求項20または21に記載の集積型発光源の製造方法。
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