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JP2009108342A - 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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JP2009108342A JP2007279043A JP2007279043A JP2009108342A JP 2009108342 A JP2009108342 A JP 2009108342A JP 2007279043 A JP2007279043 A JP 2007279043A JP 2007279043 A JP2007279043 A JP 2007279043A JP 2009108342 A JP2009108342 A JP 2009108342A
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Abstract

【課題】 成形加工・塗装焼付向けのAl合金板として、曲げ異方性、伸び異方性が小さく、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、耐リジング性が優れ、良好な焼付け硬化性、高いプレス成形性を付与可能で、室温経時変化も小さいものを提供する。
【解決手段】 Al−Mg−Si系又はAl−Mg−Si−Cu系合金を素材とし、キューブ方位密度をD1、ND回転キューブ方位密度をD2、ゴス方位密度をD3、Cu、S、Bs方位密度の合計をD4とし、D1>60、D2>5、D2/D3>1.2、D4>5を満たし、0、90°耳率が3%以上、結晶粒径ASTMNo.4.5以上のAl合金板。製法として、均質化処理後、冷却を、150℃以上450℃未満の温度域まで100℃/h以上で急冷し、続いてその温度域で0.5時間以上滞留させる条件で行ない、さらに熱延を、開始温度460℃以下、板厚200mm〜20mmの段階で1パス当りの圧延率が40%以上のパス1回以上で施し、焼鈍せずに30%以上の冷間圧延を施し、溶体化処理を施す。
【選択図】 なし

Description

この発明は、自動車ボディシート、ボディパネルの如く各種自動車、船舶、航空機等の部材・部品、あるいは建築材料、構造材料、そのほか各種機械器具、家電製品やその部品等の素材として、成形加工および塗装焼付を施して使用されるAl−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系のアルミニウム合金板およびその製造方法に関するものであり、曲げ異方性、強度異方性が小さく、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、特に中間焼鈍を行なわなくても耐リジング性が優れ、さらには用途に応じて良好な焼付け硬化性および高いプレス成形性を付与することができ、また室温経時変化も小さい成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
従来自動車のボディシートとしては、主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。ところで自動車のボディシートはプレス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れていること、アウターパネルとインナーパネルとを接合して一体化させるためなどにヘム曲げ加工を施して使用することが多いところから、成形性のうちでもヘム加工性が優れていることが要求される。また、成形加工時におけるリューダースマークやリジングマーク、肌荒れが発生しないことも要求される。さらに、塗装焼付を施して使用するのが通常であることから、成形性と強度のバランスにおいて、強度を重視する場合には、塗装焼付後に高強度が得られること、逆に成形性を重視する場合には、塗装焼付後の強度を若干犠牲にしても高いプレス成形性が得られることが要求される。そしてまたアルミニウム合金圧延板は鋼板に比べてコストが高いことから、低コストの製造技術が強く求められている。
従来このような自動車用ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金のほか、時効性を有するAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金が主として使用されている。これらの時効性Al−Mg−Si系合金、時効性Al−Mg−Si−Cu系合金は、塗装焼付前の成形加工時においては比較的強度が低くて成形性が優れている一方、塗装焼付時の加熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点を有するほか、リューダースマークが発生しにくい等の長所を有する。
なお、ヘム曲げ性などの曲げ加工性向上に関する従来技術としては、Mg−Si系化合物の粒径と数などを制御する特許文献1の技術、また結晶粒界の方位差が15°以下の結晶粒界の割合を規制する特許文献2の技術等がある。
特開2002−356730号公報 特開2003−171726号公報
前述のような自動車用ボディシート向けの時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板についての従来の製造方法により得られた板では、最近の自動車用ボディシートに要求される特性を充分に満足させることは困難であった。
すなわち、最近ではコストの一層の低減や材質の一層の向上等のために、自動車用ボディシートについては、従来よりも高性能でありながら低コストで製造する技術の開発が強く要求されている。しかしながら低コストを図りながらも、強度ならびに成形性(特にプレス成形性、ヘム曲げ性)、焼付硬化性(時効硬化性、すなわちBH性)、リジングマーク発生の抑制、常温経時変化の抑制性能、耐食性などの種々の要求性能を満足させる点については、従来の一般的な製造方法によって得られたAl−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板では未だ不充分であった。
ここで、低コスト化の方策としては製造工程の一部を省くことが最も簡単であるが、従来の製造プロセスの一部を単純に省略しただけでは、低コスト化は図られても、上記の諸性能のうちのいくつかの性能の低下が懸念されることは当然である。
またここで、成形加工、特にヘム曲げ加工は、曲げ内径が1mm以下の180°曲げという過酷な曲げ加工であるため、良好なヘム曲げ性とプレス成形性とを両立させることが困難であるという問題があり、特に低コストの製造プロセスでリジングマークや肌荒れの発生を抑制することは極めて困難であった。
さらに従来の製造方法では、熱間圧延後から溶体化処理までの間に焼鈍工程を取り入れることが殆どであり、このこともコスト低減の障害となっていた。
また塗装焼付については、省エネルギおよび生産性の向上、さらには高温に曝されることが好ましくない樹脂等の材料との併用などの点から、最近では、従来よりも焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向が強まっている。しかしながら従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板の場合、低温・短時間の塗装焼付処理では、塗装焼付時の硬化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が得難くなる問題があった。
ここで、従来の一般的な製法により得られた時効性Al−Mg−Si系、Al−Mg−Si−Cu系合金板では、高いプレス成形性を得ようとすれば、曲げ加工性(特にヘム曲げ性)が低下し、また、単純な工程省略で低コストプロセスを図ろうとすれば、リジングマークや肌荒れの抑制に極めて困難となる問題が生じる。
また前記各特許文献のうち、特許文献1では、均質化処理とその後の冷却速度などの規制によって、化合物分散状態、特にMg−Si系化合物の粒径と数を調整することにより曲げ加工性などを改善することが提案されているが、この特許文献1の方法では、化合物分散状態を上述のように調整することができたとしても、最近の曲げ性に対する厳しい要求を充分に満足させることは困難であった。またこの特許文献1に記載されているような化合物の分散状態の調整だけでは、良好なヘム曲げ性とプレス成形性とを両立させるには不充分であった。また、表面品質への配慮、特にリジングマーク、肌荒れの抑制には不充分であった。
一方特許文献2では、結晶粒間の方位差が15°以下である結晶粒界の割合を規制することにより曲げ加工性などを改善することが提案されており、確かにこの提案の方法では、曲げ加工性についてはある程度の改善効果が図られるが、本発明者らが実験・検討を重ねた結果、この方法の場合も、圧延板のあらゆる方向の曲げ性がすべて改善されるわけではないことが判明した。例えば、圧延方向に対し平行な方向、あるいは圧延方向に対し直交する方向の曲げ性の改善が図られても、圧延方向に対し45°をなす方向の曲げ性は改善されず、いわゆる曲げ異方性が生じるという問題があることが判明した。また、圧延方向に対して45°方向の伸びが高くても、圧延方向と平行な方向もしくは直角な方向の伸びが低くなったりして、伸びの異方性も顕著になる場合があり、そのためプレス成形性の低下も懸念されている。
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、適切な強度を有するとともに、曲げ異方性、強度異方性が小さく、プレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、特に中間焼鈍を行なわない低コスト製造プロセスでも耐リジング性が優れ、かつ用途に応じて、良好な焼付け硬化性および高いプレス成形性を付与することができ、また室温経時変化も小さい成形加工用アルミニウム合金板、およびそのような板を量産的規模で確実かつ安定して低コストで製造し得る方法を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決するべく本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金の最終板の組織として、特定の方位、特にキューブ方位(立方体方位)の結晶方位密度を適切に高めると同時に、キューブ方位密度のみならず、ND回転キューブ、ゴスおよび圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bsの結晶方位密度をも、相互の関係のもとに適切なレベルに制御することによって、異方性を原因に生じるプレス加工性、ヘム加工性の劣化を防止することができ、また良好な焼付硬化性、耐室温経時変化性を得ることができるばかりでなく、耐リジングマーク、耐肌荒れの性能をも向上させ得ることを見出した。そしてまたこのような優れた性能を有する成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して低コストで製造し得るプロセス条件を見出し、この発明をなすに至ったのである。
具体的には、請求項1の発明の成形加工用アルミニウム合金板は、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をD1、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をD2とし、圧延方向を軸にキューブ方位から45°回転した方位(以下「ゴス方位」と記す)の密度をD3とし、さらに圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bs方位密度の合計をD4として、次の(1)〜(4)式(各方位密度のD1、D2、D3、D4の数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数を表す)
D1>60 ・・・(1)
D2>5 ・・・(2)
D2/D3>1.2 ・・・(3)
D4>5 ・・・(4)
を満たし、さらに0、90°耳率が3%以上、結晶粒径がASTMでNo.4.5以上であることを特徴とするものである。
また請求項2の発明の成形加工用アルミニウム合金板は、Mg0.2〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTi0.005〜0.3%を単独でもしくはB500ppm以下とともに含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、V0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.0%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をD1、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をD2とし、圧延方向を軸にキューブ方位から45°回転した方位(以下「ゴス方位」と記す)の密度をD3とし、さらに圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bs方位密度の合計をD4として、次の(1)〜(4)式(各方位密度のD1、D2、D3、D4の数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数を表す)
D1>60 ・・・(1)
D2>5 ・・・(2)
D2/D3>1.2 ・・・(3)
D4>5 ・・・(4)
を満たし、さらに0、90°耳率が3%以上、結晶粒径がASTMでNo.4.5以上であることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて第1冷却ポイントから、その第1冷却ポイントよりも低くかつ150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第2冷却ポイント」と呼ぶ)までを、冷却速度100℃未満/hの冷却速度で徐冷することによって、150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満、50℃以上の温度域まで冷却し、引き続いて150℃未満、50℃以上の温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とするものである。
また請求項4の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて150℃以上450℃未満の範囲内の温度で維持することによって、その温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満、50℃以上の温度域まで冷却し、引き続いて150℃未満、50℃以上の温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とするものである。
さらに請求項5の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて第1冷却ポイントから、その第1冷却ポイントよりも低くかつ150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第2冷却ポイント」と呼ぶ)までを、冷却速度100℃未満/hの冷却速度で徐冷することによって、150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置することを特徴とするものである。
そしてまた請求項6の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて150℃以上450℃未満の範囲内の温度で維持することによって、その温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置することを特徴とするものである。
さらにまた請求項7の発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法は、請求項5もしくは請求項6に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、前記溶体化処理を480℃以上の温度で行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置したのち、さらに180〜280℃の範囲内の温度で復元処理を行なうことを特徴とするものである。
この発明による成形加工用アルミニウム合金板は、強度異方性によるプレス成形性の低下、曲げ異方性によるヘム加工性の低下が少なく、またプレス成形性と曲げ加工性のバランスが良好で、しかも中間焼鈍工程がなくてもリジングマークや肌荒れの発生が抑制でき、さらには用途に応じて良好な塗装焼付硬化性、さらなる高いプレス成形性を付与することができ、また室温での経時変化も少なく、したがってプレス加工やヘム加工を施して塗装焼付け後に使用される自動車用ボディシート等に最適である。またこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法によれば、上述のように優れた性能を有する成形加工用アルミニウム合金板を、量産的規模で確実かつ安定して低コストで製造することができる。
この発明の成形加工用アルミニウム合金板は、基本的にはAl−Mg−Si系合金もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金であれば良く、その具体的な成分組成は特に制約されるものではないが、通常は請求項2で規定するような成分組成の合金、すなわちMg0.2〜1.5%、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTi0.005〜0.3%を単独でもしくはB500ppm以下とともに含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、V0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.0%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とすることが好ましい。
このような請求項2で規定する素材合金の成分組成の限定理由について説明する。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して強度向上に寄与する。Mg量が0.2%未満では塗装焼付時に析出硬化によって強度向上に寄与するG.P.ゾーンの生成量が少なくなるため、充分な強度向上が得られず、一方1.5%を越えれば、粗大なMg−Si系の金属間化合物が生成され、キューブ方位密度を高めるために不利となり、プレス成形性、特に曲げ加工性が低下するから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲内とした。なお最終板のプレス成形性、特に曲げ加工性をより良好にするためには、Mg量は0.3〜0.9%の範囲内が好ましい。
Si:
Siもこの発明の系の合金で基本となる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形されて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるため、再結晶組織の微細化にも寄与する。Si量が0.3%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.0%を越えれば粗大なSi粒子や粗大なMg−Si系の金属間化合物が生じてキューブ方位密度を高めるために不利となり、プレス成形性、特に曲げ加工性の低下を招く。したがってSi量は0.3〜2.0%の範囲内とした。なおプレス成形性と曲げ加工
性とのより良好なバランスを得るためには、Si量は0.5〜1.3%の範囲内が好ましい。
Mn、Cr、Zr、V、Fe、Zn:
これらの元素は、強度向上や結晶粒微細化、あるいは時効性(焼付硬化性)の向上や表面処理性の向上に有効であり、いずれか1種または2種以上を添加する。これらのうちMn、Cr、Zr、Vは強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果がある元素であるが、Mnの含有量が0.03%未満、もしくはCrの含有量が0.01%未満、またはZrの含有量が0.01%未満では、上記の効果が充分に得られず、一方Mnの含有量が0.6%を越えるか、あるいはCr、Zr、Vの含有量がそれぞれ0.4%を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、多数の金属間化合物が生成されて成形性、特にヘム曲げ性に悪影響を及ぼすおそれがあり、したがってMnは0.03〜0.6%の範囲内、Cr、Zr、Vはそれぞれ0.01〜0.4%の範囲内とした。またFeも強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方1.0%を越えれば、多数の金属間化合物が生成されて、プレス成形性、曲げ加工性が低下するおそれがあり、したがってFe量は0.03〜1.0%の範囲内とした。なお、曲げ加工性の低下を最小限に抑えたい場合、Fe量は0.03〜0.5%の範囲で好ましい。またZnは時効性向上を通じて強度向上に寄与するとともに表面処理性の向上に有効な元素であるが、Znの添加量が0.03%未満では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越えれば成形性が低下するから、Zn量は0.03〜2.5%の範囲内とした。
Ti、B:
Tiの添加は、鋳塊組織の微細化を通じて最終板の肌荒れ防止、耐リジング性向上に効果があることから、この発明でも鋳塊組織の微細化のためにTiを添加するが、その含有量が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方0.3%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりでなく、粗大な晶出物が生じるおそれがあるから、Ti量は0.005〜0.3%の範囲内とした。なおTi添加量は、通常は0.005以上〜0.05%未満の範囲内が好ましい。またTiは単独で添加しても良いが、Tiとともに微量のBを添加することによって、鋳塊組織の微細化と安定化の効果が一層顕著となる。そこでこの発明の場合も、Tiとともに500ppm以下のBを添加することは許容される。
Cu:
Cuは強度向上および成形性向上のために添加されることがある元素であるが、その量が1.5%を越えれば耐食性(耐粒界腐食性、耐糸錆性)が劣化するから、Cuの含有量は1.5%以下に規制することとした。なお、より耐食性の改善を図りたい場合はCu量は1.0%以下が好ましく、さらに特に耐食性を重視する場合は、Cu量は0.05%以下に規制することが望ましい。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
なお上記のMn、Cr、Zr、V、Fe、Znの含有量範囲は、それぞれ積極的に添加する場合の範囲として示したものであり、いずれも下限値より少ない量を不純物として含有する場合を排除するものではない。特に0.03%未満のFeは、通常のアルミ地金を用いれば不可避的に含有されるのが通常である。
また時効性Al−Mg−Si系合金、時効性Al−Mg−Si−Cu系合金においては、高温時効促進元素あるいは室温時効抑制元素であるAg、In、Cd、Be、あるいはSnを微量添加することがあるが、この発明の場合も微量添加であればこれらの元素の添加も許容され、それぞれ0.3%以下であれば特に所期の目的を損なうことはない。
さらに、鋳塊組織の微細化にはScの添加も効果があるとされており、この発明の場合も微量のScを添加しても良く、Sc0.01〜0.2%の範囲内であれば特に支障はない。
さらにこの発明の成形加工用アルミニウム合金板において、プレス成形性と曲げ加工性のバランスを最適にするためには、強度異方性、曲げ異方性を小さく抑制する必要があり、また、耐リジング性の向上にも、合金の成分組成を前述のように調整するばかりではなく、最終板であるアルミニウム合金板の集合組織、特に結晶方位密度を適切に制御することが極めて重要である。
ここで、この発明において最終板の結晶方位密度を規制しているのは、粒界の性質(小角か大角か)を制御するためだけではなく、アルミニウム合金の塑性変形に伴う結晶のすべり変形全体を制御することを主目的としている。そして特に曲げ加工中に交差すべりが生じやすいような結晶方位の集積度を高めることが極めて重要であり、そのようにすることによって、加工による転位密度の増加を抑えて、加工硬化を抑制することが可能となるのである。さらにその結果、ヘム加工の際において、加工硬化の抑制により割れ限界強度に達するまで材料の大歪変形が可能となる。ここで、すべり変形挙動を、比較的ランダム
な結晶方位を有する従来の材料、言い換えれば比較的交差すべりが生じ難い従来材料と大きく異ならしめるためには、結晶方位の集積が必要である。一方実際の材料では、種々の結晶方位が存在するが、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、種々の結晶方位のうちでも特にキューブ方位の方位密度、すなわちキューブ方位の理想方位である(001)<100>方位の方位密度を高めることによって、すべり変形挙動を、従来材料とは大きく異ならしめることができることを見出した。すなわち、キューブ方位密度を高めることによって、加工変形中における交差すべりが活発となり、加工硬化が抑制され、曲げ加工性が改善されるのである。
ここで、単純にキューブ方位密度を高めるだけでは、むしろ曲げ異方性、強度異方性、リジングマークの形成が顕著となって材料特性のバランスが低下するおそれや板外観を損なうおそれがある。そこで本発明者等がさらに実験・検討を重ねたところ、キューブ方位密度を単純に高めるのではなく、キューブ方位密度を適切に高めると同時に、ND回転キューブ方位密度、ND回転キューブ方位密度とゴス方位密度との比、およびβファイバーと称する成分に属するCu、S、Bsの方位密度を適切なレベルに制御することによって、曲げ加工性を損なうことなく、強度異方性と曲げ異方性から生じるプレス成形性と曲げ加工性の低下を防止し、両者のバランスを最も適切に向上させ得ることを見出した。また、これらの制御によって、リジングマークや肌荒れの発生も抑制され、成形後の板外観性も改善され、実用上、問題のないレベルに達することが判明した。
すなわち、 板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をD1、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をD2とし、圧延方向を軸にキューブ方位から45°回転した方位(以下「ゴス方位」と記す)の密度をD3とし、さらに圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bs方位密度の合計をD4として、次の(1)〜(4)式(各方位密度のD1、D2、D3、D4の数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数を表す)
D1>60 ・・・(1)
D2>5 ・・・(2)
D2/D3>1.2 ・・・(3)
D4>5 ・・・(4)
を満たすように結晶方位密度を制御することによって、上記の作用・効果を得ることが可能となったのである。
ここで、(1)、(2)式は、キューブ方位密度、ND回転キューブ方位密度D2を適切に高めることにより曲げ加工性の向上に効果がある。またゴス方位D3は、アルミニウム材料に出現することが多い方位であるが、このゴス方位は曲げ異方性を助長する方位であることが判明し、さらに実験・検討を進めたところ、(3)式で規定するように、ND回転キューブ方位密度D2とゴス方位密度D3との比D2/D3を1.2以上となるように規制することによって、曲げ異方性の抑制に効果があることが明らかとなった。なおこの比率D2/D3は、好ましくは2以上である。また(4)式は、圧延集合組織と称されるβファイバー成分の残存レベルについての規定であるが、この(4)式によってβファイバー成分の残存レベルを規制することによって、キューブ方位密度の過度の発達によるプレス成形性の低下を抑制し、プレス成形性と曲げ加工性のバランスを改善する効果があり、さらに(4)式による規制は、方位分散によるリジングマークや肌荒れの発生を抑制することにも有効である。そしてこれらの(1)式、(2)式、(3)式、および(4)式による総合的な規制によって、強度異方性、曲げ異方性を低減するために効果があり、さらにこのような方位分散によって、リジングマークや肌荒れの発生を抑制することにも有効である。
さらにこの発明による成形加工用アルミニウム合金板では、板全体にわたって0°耳、90°耳の耳率が3%以上であることも重要である。すなわち、前述のようにこの発明では、(1)式〜(4)式によって結晶方位密度を規定しているが、それ以外の結晶方位の方位密度もある程度は曲げ加工性に影響を与える。しかしながら実際上は、これらの方位以外のすべての結晶方位の方位密度を厳密に規定することは困難である。一方、板のカッピング試験で絞ったカップの耳率によれば、材料の結晶方位をマクロ的に評価することができる。そこでこの発明では、(1)式〜(4)式以外の結晶方位の方位密度の影響を、0°耳、90°耳で評価、規制することとした。具体的には、圧延方向を基準にカップの0°、90°耳率が3%未満では、たとえ前述の各式の条件が満足されていても、良好な曲げ加工性が得られないおそれがある。そこでこの発明では耳率に関して前述のように規制することとした。なお0°、90°耳率は、上限を規定していないが、曲げ異方性、強度異方性抑制の観点から通常は30%以下が望ましい。なお、特にプレス成形性と曲げ加工性のバランスを最適に保つためには、耳率は5〜28%の範囲内が好ましい。
さらに、曲げ加工性の向上、プレス成形時の外観欠陥である肌荒れを防止するためには、結晶粒度を細かくする必要がある。本発明者等が実験・検討を重ねた結果、結晶粒度をASTMナンバーで4.5以上にすれば、曲げ加工性の向上や肌荒れ(外観欠陥)を防止する効果があることを見出し、その条件をこの発明で規定したのである。なお、より一層外観を重視する場合には、ASTMナンバー6.0以上の範囲が好ましい。
次にこの発明の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
先ず前述のような成分組成の合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法等の通常の鋳造法によって鋳造する。
得られた鋳塊に対しては、均質化処理を行なって冷却する。ここで均質化処理は、鋳塊の添加元素の偏析を除去したり、鋳塊のセル・結晶粒の境界に存在する粗大な第2相粒子、晶出物などを母相に固溶させたりすることに効果があり、製品板性能のばらつきの低減、さらには熱間圧延工程、溶体化工程と有機的に結び付けて所要の結晶方位を得るにも重要な工程である。均質化処理の温度が480℃未満では、上述の効果が充分に得られず、一方590℃を越える高温では共晶融解のおそれがあるから、均質化処理は480〜590℃の範囲内の温度で行なうこととした。なお均質化処理の時間は、通常は1〜48時間の範囲内とすることが好ましい。1時間未満では均質化の効果が充分に得られず、一方48時間を越えればコスト増大を招くだけである。
また均質化処理後の冷却については、一般に高い焼付け硬化性を得るためには冷却過程で形成される析出物の粗大化を避けることが望ましいとされ、そこで既に前述の特許文献1、特許文献2においては、均質化処理後の冷却を、1段で大きな冷却速度で行なうことが提案されているが、本発明者等が鋭意実験、検討を重ねた結果、冷却速度の増大は確かに高い焼付け硬化性を得るために有効ではあるものの、この方法を、中間焼鈍を省略したこの発明のプロセスに適用した場合には、板厚方向に結晶粒度が不安定となって、結晶粒度のばらつきが著しく大きくなってしまう問題が生じることが判明した。このようなばらつきが生じれば、製品板の耐肌荒れ性に問題が生じ、安定的に自動車パネルの高い外観品質が確保できないおそれがある。
そこでこの発明の製造方法では、高い焼付け硬化性と肌荒れの確実な抑制とを両立させるために、請求項3〜請求項6において規定しているように、均質化処理後の冷却過程として、特殊な態様の2段冷却を適用することとした。すなわち、請求項3、請求項5で規定するように、均質化処理後の冷却過程において、先ず第1段の冷却として、150℃以上450℃未満の温度域内のある温度(第1冷却ポイント)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、続いてその第1冷却ポイントよりも低くかつ150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(第2冷却ポイント)まで冷却速度100℃/h未満の冷却速度で徐冷し、これによって、150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させるか、あるいは請求項4、請求項6において規定しているように、前記同様に第1冷却ポイントまで急冷した後、続いて150℃以上450℃未満の温度範囲内で維持して、その150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させることとしており、このような2段の冷却過程の組合せにより、高い焼付け硬化性と肌荒れの抑制を両立させることが可能となった。
なおここで、請求4もしくは請求項6において規定している第1段目の冷却ポイントまでの100℃/h以上の冷却速度による急冷に引続いて、「150℃以上450℃未満の温度範囲内で維持して、その温度範囲内に0.5時間以上滞留させる」とは、その温度範囲内においてほぼ一定の温度に保持するケース、またその温度範囲内の異なる2段階以上の温度で保持するケース、あるいはその温度範囲内で徐冷するケース、さらにはその温度範囲内で再加熱して徐昇温させるケースなどのいずれのケースをも含むのであり、要は熱履歴の形式は問わず、その温度範囲内に0.5時間以上滞留されていれば良いものとする。但し、実際の生産現場におていは、経済性の点から徐冷が好ましい。
ここで、以上の説明では、第1冷却ポイントとして規定しかつその後の0.5時間以上滞留させるとした温度域を、150℃以上450℃未満としているが、より一層安定的に高い焼付け硬化性と肌荒れの抑制とを両立させるためには、その温度域は、200℃以上450℃未満が好ましい。またその温度域に滞留させる時間は、1.5時間以上が好ましく、さらには2時間以上がより好ましい。これらの好ましい条件を適用することによって、確実に高い焼付け硬化性を確保しながら、より一層安定的に結晶粒度ASTMナンバー4.5以上を達成することができる。
以上のように、均質化処理後、150℃以上450℃未満の第1冷却ポイントまで100℃/h以上の冷却速度で急冷した後に、第2段目の冷却過程として、150℃以上450℃未満の温度域内において100℃/h未満の冷却速度で徐冷するかまたはその温度域内で少なくとも0.5時間以上、好ましくは1.5時間以上、より好ましくは2時間以上滞留(徐冷や保持、あるいは加熱などの種々の温度履歴を含む)させることによって、単体Si、Mg−Si、Mg−Si−Cu系化合物のサイズと分布を適切に得ることが可能となるのである。
なお、第1冷却ポイントまでの冷却速度が100℃/h未満では、高温域で析出物が粗大化しやすく、単体Si、Mg−Si、Mg−Si−Cu系化合物のサイズと分布が不適切となって焼付硬化性と成形性の低下を招くおそれがあるから、第1段目の冷却は100℃/h以上とした。またそれに続いての第2段目の150℃以上450℃未満での温度域での滞留時間が0.5時間未満では、前述の効果が充分に得られないから、その滞留時間は0.5時間以上、好ましくは1.5時間以上、より好ましくは2時間以上とした。なおその滞留時間の上限は特に規制しないが、焼付け硬化性への影響と生産性などを考慮して通常48時間以内とすることが好ましい。
以上のようにして、鋳塊に対する均質化処理の後に2段階冷却法による冷却を行なった後には、熱間圧延を施すのが通常である。ここで、熱間圧延は、後述するように250℃以上450℃未満の温度域で開始させるが、均質化処理後の2段の冷却過程を経た鋳塊に対して、150℃未満に冷却することなく、熱間圧延の開始温度250℃以上450℃未満に合わせて直ちに熱間圧延を開始しても、あるいはまた一旦150℃未満に冷却して必要に応じて常温放置、面削などを施してから再度加熱して、250℃以上450℃未満とし、その温度で熱間圧延を開始しても良い。
ここで、一旦150℃未満に冷却して必要に応じて常温放置、面削などを施してから、再加熱する場合、昇温過程での150〜450℃未満温度域での滞留時間については、この発明の請求項3、4、5、6で規定する滞留時間に算入しないこととする。その理由は、150℃未満の温度域から加熱昇温させる場合、必然的に低温時効によって高密度な時効組織が形成されやすく、このように一旦先に低温域で高密度な時効組織が形成されてしまえば、たとえ、その後の150〜450℃温度域での滞留時間が0.5時間以上であっても、適切な単体Si、Mg−Si、Mg−Si−Cu系化合物のサイズと分布が得られなくなるおそれがあるからである。
なお、熱間圧延工程を必要としない薄板連続鋳造材においても、高い焼付け硬化と肌荒れの抑制を両立させるためには、この発明の方法と同様に、150℃以上450℃未満の温度域までの急冷とそれに続いてのその温度範囲内での徐冷、あるいは150℃以上450℃未満の温度域までの急冷とその温度範囲内での滞留が必要であり、その場合は、その後に一旦150℃未満に冷却して、必要に応じて常温放置などをしてから冷間圧延を実施すれば良い。
さらに均質化処理を行なって2段冷却した鋳塊に対してのプロセスについて詳細に説明する。
この発明の方法の場合、均質化処理・2段冷却後の鋳塊に対しては、次の(a)、(b)、(c)のいずれかのプロセスで処理して、最終板に仕上げる。
(a)請求項3、請求項4で規定するプロセス:熱間圧延−冷間圧延−溶体化処理−冷却(150℃未満、50℃以上)−安定化処理、
(b)請求項5、請求項6で規定するプロセス:熱間圧延−冷間圧延−溶体化処理―冷却(50℃未満)−常温放置
(c)請求項7で規定するプロセス:熱間圧延−冷間圧延−溶体化処理−冷却(50℃未満)−常温放置−復元処理
ここで、上記の(a)〜(c)のいずれのプロセスにおいても、熱間圧延は、次の(1)、(2)の条件を満たすように行なう必要がある。(1)熱間圧延開始温度を250℃以上、450℃未満の温度範囲とすること。(2)熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で、少なくとも1回は、1パスの圧延率が40%以上の高圧下のパスを実施すること。
上記の熱間圧延条件のうち、先ず(1)の条件、すなわち熱間圧延開始温度を450℃未満とすることは、熱間圧延中の材料の再結晶を抑制して、所要の結晶方位密度を得ると同時に、耐リジング性の改善を図るために不可欠な条件である。熱間圧延を450℃以上の高温で開始すれば、耐リジング性の改善が図られず、また所要の最終板強度が得られなくなるおそれがある。一方熱間圧延開始温度が250℃未満では、熱間圧延自体が困難となる。そこで熱間圧延開始温度は250℃以上、450℃未満とした。なおより好ましい熱間圧延開始温度は250〜400℃の範囲内である。
(2)の条件は、(1)の条件と合わせて熱間圧延中の材料の再結晶を抑制し、所要の結晶方位密度を得るために不可欠な条件である。すなわち(2)の条件は、ほぼ未再結晶状態の繊維状組織に対して1パスの圧下で大変形を加えることに意味があり、それによって目的とした結晶回転を達成することが可能となる。さらに、この発明で規定した均質化処理後の2段冷却により単体Si、Mg−Si、Mg−Si−Cu系化合物のサイズと分布を適切化することと併せて、熱間圧延時の加工組織と回復、再結晶挙動を制御し、これにより最終板にキューブ方位のみならず、キューブ方位と異なる方位の適切な集積も得られることとなる。すなわち請求項1、2に規定した方位密度と比率が得られ、このような方位分散により耐リジング性、肌荒れ、曲げ異方性、強度異方性の改善に有効となる。
またここで、板厚が200〜20mmの段階でいずれのパスも圧延率が40%未満では、上記の効果が得られなくなるから、その板厚段階で少なくとも1パスは圧延率40%以上とする必要がある。なおより好ましくは、上記の段階での少なくとも1パスの圧延率を50%以上とする。なおまた熱間圧延の終了温度については特に規定しないが、通常は150℃〜350℃の範囲であれば、この発明の効果を損なうことがない。
ここで、上述のような熱間圧延条件のうち、いずれか一つの条件でも外れれば、所要の結晶方位密度条件を満たす最終板が得難くなって、最終板の諸特性が低下するおそれがある。
上述のようにして熱間圧延を行なった後には、前記(a)、(b)、(c)のいずれのプロセスにおいても、中間焼鈍を施すことなく、圧延率30%以上の冷間圧延で所要の製品板厚とする。
この冷間圧延は板に歪みを蓄積させ、その後の溶体化処理で結晶粒を微細化させるために効果があるだけではなく、最終板の結晶方位の形成にも一定の影響を及ぼす。冷間圧延の圧延率30%未満では、この発明で規定する結晶粒度と結晶粒方位密度が得られないおそれがある。
冷間圧延後には、前記(a)〜(c)のいずれのプロセスにおいても、480℃以上の温度で溶体化処理を行う。この溶体化処理は、Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金において、Mg−Si系、Mg−Si−Cu系化合物、単体Si等をマトリックスに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼付後の強度向上を図るために重要な工程である。またこの工程は、Mg−Si系、Mg−Si−Cu系化合物、単体Si粒子等の固溶により第2相粒子の分布密度を低下させて、延性と曲げ性を向上させるためにも寄与し、さらには再結晶により最終的に所要の結晶方位を得て、良好な成形性(曲げ加工性、プレス成形性)を得るためにも重要な工程である。ここで、溶体化処理温度が480℃未満では上記の効果が充分に得られない。
なお特に溶体化効果を重視する場合は、溶体化処理温度は500℃以上とすることが好ましい。一方溶体化処理温度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれや再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は590℃以下とすることが望ましい。また溶体化処理の時間は特に規制しないが、通常は5分を越えれば溶体化効果が飽和し、経済性を損なうばかりではなく、結晶粒の粗大化のおそれもあるから、溶体化処理の時間は5分以内が望ましい。
溶体化処理後の冷却については、冷却中にMg−Si系、Mg−Si−Cu系化合物あるいは単体Siなどが粒界に多量に析出することを防止するため、通常100℃/min以上の冷却速度での冷却により、150℃以下の温度域まで冷却(焼入れ)する。焼き入れ温度域の下限は、プロセスによって異なり、(a)のプロセスでは、50℃以上とし、(b)、(c)のプロセスでは50℃未満とする。ここで、溶体化処理後の冷却速度が100℃/min未満では、プレス成形性、特に曲げ加工性が低下すると同時に、焼付硬化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなくなる。
上述のように溶体化処理後、焼付け硬化性(BH性)を重視する場合には、請求項3、請求項4で規定する前記(a)のプロセスに従って、安定化処理を施す。すなわち480℃以上の温度で溶体化処理して、100℃/min以上の冷却速度で50℃以上150℃未満の温度域内まで冷却(焼入れ)した後には、50℃未満の温度域(いわゆる室温)まで温度降下しないうちに、この温度範囲内(50〜150℃未満)で安定化処理を行なう。この安定化処理における50〜150℃未満の温度域での保持時間は特に限定しないが、通常は1時間以上保持することが望ましく、またその温度範囲内で1時間以上かけて冷却(徐冷)しても良い。
一方、焼付け硬化性よりも成形性、特にプレス成形性を重視する場合には、溶体化処理後に前述のような安定化処理を行なわない。これが請求項5、請求項6で規定する前記(b)のプロセスである。すなわちこの場合は、480℃以上での溶体化処理の後、100℃/min以上の冷却速度で50℃未満の温度域(通常は0℃以上)に冷却し、0〜50℃未満の温度域(室温)で放置する。
上述のように溶体化処理して50〜150℃未満の温度域、あるいは50℃未満の温度域に焼入れた後、それぞれの温度域で保持、徐冷、放置を行なう理由は次の通りである。
すなわち、溶体化処理後、特に100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の室温に冷却した場合には、室温クラスターが生成される。この室温クラスターは強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性に不利となるが、延性の低下が小さいため、プレス成形に有利である。一方、溶体化処理後に150℃以上の温度範囲に冷却してそのまま保持した場合には、G.P.ゾーンあるいは安定相が生成され、成形前の素材強度が高くなり過ぎて、ヘム加工性やプレス成形性が劣化する。また、耐室温経時変化性も劣化するおそれがある。したがってヘム加工性、プレス成形性と塗装焼付硬化性、および耐室温経時変化性のバランスの観点から、溶体化処理−焼入れ(プロセス(b))、溶体化処理−焼入れ−安定化処理(プロセス(a))が上記の条件を満たすことが必要であり、用途、要求特性に応じていずれのプロセスを適用するかを決定すれば良い。
さらに、前記(b)のプロセスとして示したように、480℃以上で溶体化処理して50℃未満の温度域に焼入れ、必要に応じて0〜50℃の温度域で放置した後には、180〜280℃で復元処理を行っても良く、これが請求項7で規定するプロセス(c)である。このようにプロセス(c)において復元処理を行なう理由は次の通りである。すなわち、50℃未満の室温に冷却して形成される室温クラスターは強度に寄与するG.P.ゾーンに移行しにくいため、塗装焼付硬化性に不利となるが、180〜280℃での短時間(通常は5分以内が好ましい)の熱処理で塗装焼付硬化性を回復させ、曲げ加工性を向上させる効果がある。従って塗装焼付硬化性、曲げ加工性を重視する場合はこのプロセス(c)を適用する。
以上のように、用途(要求特性)、生産設備に合わせてプロセス(a)、(b)、(c)のいずれかを選択することにより、最適な量産製造体制を構築することができる。
ここで、この発明の方法に係わる重要な測定法、表示法について以下に述べるが、その他は、実施例の方法に準ずる。
請求項1、2で規定している結晶方位密度の測定と計算方法は以下の通りである。
板表面から板厚1/10の位置のキューブ方位密度(C1/10)、1/4の位置のキューブ方位密度(C1/4)、1/2の位置のキューブ方位密度(C1/2)を求め、その合計をD1とした。ND回転キューブ方位密度D2についても、同様に板表面から板厚1/10の位置のND回転キューブ方位密度N1/10、1/4の位置のND回転キューブ方位密度N1/4、1/2の位置のND回転キューブ方位密度N1/2の合計とした。ゴス方位密度D3についても、同様に板表面から板厚1/10の位置のゴス方位密度G1/10、1/4の位置のゴス方位密度G1/4、1/2の位置のゴス方位密度G1/2の合計とした。さらにβファイバーに属するCu方位、S方位、Bs方位の各密度の合計D4についても、同様に板表面から板厚1/10の位置の各方位の密度Cu1/10、S1/10、Bs1/10、板表面から1/4の位置の各方位の密度Cu1/4、S1/4、B1/4、板表面から1/2の位置の各方位の密度Cu1/2、S1/2、B1/2の合計から求めた。すなわち、 D1=C1/10+C1/4+C1/2 D2=N1/10+N1/4+N1/2 D3=G1/10+G1/4+G1/2 D4=(Cu1/10+S1/10+Bs1/10)+(Cu1/4+S1/4+Bs1/4)+(Cu1/2+S1/2+Bs1/2)とした。
なおこれらの測定には、X線回折装置を用い、X線回折のシェルツ反射法により、{100}、{110}、{111}の不完全極点図を測定し、これらを元に三次元結晶方位解析(ODF)を行なって調べた。またこれらの解析においては、アルミニウム粉末から作られたランダム結晶方位を有する試料を測定して得たデータを{100}、{110}、{111}極点図の解析の際に使う規格化ファイルとし、これによりランダム方位を有する試料に対する倍数として各種方位密度を求めた。なおこの発明において、結晶方位密度は全て三次元結晶方位解析(ODF)に基づくものである。
ここで、キューブ(Cube)方位は{001}<100>を代表方位とし、ゴス(Goss)方位は{011}<100>を代表方位とし、Cu方位は{112}<111>を代表方位とし、S方位は{123}<634>を代表方位とし、Bs方位は{011}<211>を代表方位とした。なおND回転キューブ方位は種々存在するが、そのうちの最大の方位密度を代表方位とする。なおまた、通常は上記方位を中心に一定角度を持つ方位分散が存在するため、この発明では、上記方位廻りの15°の回転範囲内にある最大方位密度をとり、それぞれ上記方位密度の代表値とした。
結晶粒度:板の圧延面(板の表皮)においてEBSP(EBSD)法によってマッピングした画像をもとに切断法でASTMナンバーを算出した。ミスオリエンテーション5°以上の結晶境界線を結晶粒界とみなした。
以下にこの発明の実施例を比較例とともに記す。なお以下の実施例は、この発明の効果を説明するためのものであり、実施例記載のプロセスおよび条件がこの発明の技術的範囲を制限するものではない。
表1に示すこの発明成分組成範囲内の合金記号A1〜A5の合金について、それぞれ常法に従って溶製し、DC鋳造法によりスラブに鋳造した。得られた各スラブに対して540℃、5hの条件で均質化処理を施した。均質化処理後、2段冷却を行い、その後、熱間圧延工程に供し、さらに冷間圧延(最終冷間圧延)を施した。均質化処理後の2段冷却から熱間圧延、冷間圧延までの条件について表2〜表3の製造番号1〜8に示す。
ここで、均質化処理後の2段冷却については、次のように行なった。
すなわち、製造番号1では、第2冷却終了温度340℃から直ちに熱間圧延に供した。また製造番号2では、第2冷却終了温度300℃からさらに300℃×2時間300℃保持処理を行ない、続いて熱間圧延に供した。さらに製造番号3では、第2冷却終了温度305℃から15℃/hの昇温速度で320℃に昇温して、この温度で1時間保持処理を行なってから熱間圧延に供した。また製造番号4では、第2冷却終了温度150℃から一旦室温に空冷した後、再び300℃に昇温してから熱間圧延に供した。なおこの製造番号4における150℃以上450℃未満の温度域での総滞留時間(6.00時間)には、150℃未満からの再昇温時において150℃以上450℃未満の温度域を通過する時間を算入していない。一方製造番号5〜8では、それぞれ第1冷却終了温度から一旦室温に空冷した後、再び表3の熱間圧延開始温度まで昇温して熱間圧延に供した。なおこれらの製造番号5〜8のそれぞれにおける150℃以上450℃未満の温度域での総滞留時間としては、室温から熱間圧延開始温度までの再昇温時における150℃以上450℃未満の温度域を通過する時間を算入しないこととした。
なおここで、製造番号5、6、7、8は、いずれも第1冷却終了温度を150℃未満とし、また製造番号8は第1段冷却の速度を遅くし、いずれもこの発明で規定する範囲から外れたものである。
さらに、表3中に示しているように溶体化処理を行なった後、製造番号1、2、5、6の例では安定化処理を行ない、また製造番号3、7の例では安定化処理を行なわずに、溶体化処理後の冷却(焼入れ)のまま放置した後、復元処理を行なった。さらに製造番号4、8の例では、溶体化処理―冷却の後に、安定化処理を行なわずに。溶体化処理後の冷却(焼入れ)のまま常温に放置した。
以上のようにして得られたアルミニウム合金板(製品板)について、次のようにして結晶粒度、および集合組織(結晶方位密度)を調べた。
結晶粒度:板の圧延面においてEBSP(EBSD)法によってマッピングした画像をもとに切断法でASTMナンバーを算出した。ミスオリエンテーション5°以上の結晶境界線を結晶粒界と見なした。
集合組織(結晶方位密度):厚さ1mmの板について、NaOH水溶液で表面から板厚中央に向けて種々の深さまでエッチングしたものをそれぞれ測定サンプルとした。そして板表面から100μmの位置のキューブ方位密度(C1/10)、250μmの位置のキューブ方位密度(C1/4)、500μmの位置のキューブ方位密度(C1/2)を求め、その合計をD1とした。ND回転キューブ方位密度D2についても、同様に板表面から100μmの位置のND回転キューブ方位密度N1/10、250μmの位置のND回転キューブ方位密度N1/4、500μmの位置のND回転キューブ方位密度N1/2の合計とした。ゴス方位密度D3についても、同様に板表面から板厚1/10の位置のゴス方位密度G1/10、1/4の位置のゴス方位密度G1/4、1/2の位置のゴス方位密度G1/2の合計とした。さらにβファイバーに属するCu方位、S方位、Bs方位の各密度の合計D4についても、同様に板表面から100μmの位置の各方位の密度Cu1/10、S1/10、Bs1/10、板表面から250μmの位置の各方位の密度Cu1/4、S1/4、B1/4、板表面から500μmの位置の各方位の密度Cu1/2、S1/2、B1/2の合計から求めた。すなわち、
D1=C1/10+C1/4+C1/2
D2=N1/10+N1/4+N1/2
D3=G1/10+G1/4+G1/2
D4=(Cu1/10+S1/10+Bs1/10)+(Cu1/4+S1/4+Bs1/4)+(Cu1/2+S1/2+Bs1/2
とした。
なおND回転キューブ方位は種々存在するが、本実施例においては、ND回転キューブ方位の中に最大な方位密度を示す{001}<730>を代表方位とした。そのまわり15°範囲内の最大値を取り、表示した。
これらの各方位密度測定結果を表4に示す。
さらに前述のようにして得られた各板について、室温経時変化を考慮して室温(25℃)に3ヶ月放置した後、塗装焼付前の板について、引張試験による強度評価、カップ絞り試験による耳率、ポンチ張出し試験による張出高さ、リジングマーク評価、曲げ試験によるヘム加工性評価を行なった。さらにそれぞれ2%ストレッチ後、170℃×20分の塗装焼付(ベーク)処理を施し、引張試験を行なって、機械的強度として0.2%耐力値を測定した。具体的な各測定法、評価法は次の通りである。
耳率測定:板に潤滑油を塗布した後、ポンチ径φ32mm、ブランク径φ62mm、しわ押さえ100kgの条件でカップに絞り、そのカップの耳率を調べた。なおここで耳率の方向は、圧延方向を基準にした0°方向、90°方向で示す。
ヘム加工性の評価:材料の圧延方向に対して板面内0°、45°、90°三方向に曲げ試験片を採取し、10%ストレッチしてから、180°に密着曲げを行ない、目視により割れの発生の有無を観察した。ここで○印は割れ無しを、また×印は割れ有りを示す。
リジング・マークの発生評価:直径100mmの球頭ポンチで高さ30mmまで張出成形を行ない、表面に形成される圧延方向に沿う筋(凹凸)を目視で判定した。○印は筋なしあるいは筋が弱い状態を示し、×印は筋が強い状態を示す。ここで筋が強ければ、自動車用外板の外観として不適当となる。
肌荒れの発生評価:直径100mmの球頭ポンチで高さ30mmまで張出成形を行ない、表面の荒れを目視で判定した。○印は荒れなしの状態を示し、×印は荒れが強い状態を示す。ここで肌荒れが強ければ、自動車用外板の外観として不適当となる。
張出し試験:200mm×200mmの大きさの1mm板の両面にマスキングフィルムを貼り、さらに潤滑を高めるため、ジョンソンワックス(商品名)を塗った状態で張出し試験に供し、最大張出し高さを調べた。なおポンチとしては球頭ポンチ径100mmのものを使用した。
これらの試験結果、評価結果を表5、表6に示す。
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製造番号1〜4の例は、いずれも合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内であって、かつ製造プロセス条件もこの発明で規定する範囲内であり、最終板の結晶方位密度条件等もすべてこの発明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場合は、結晶粒が微細で、肌荒れがなく、耐リジング性が良好で、成形性の指標である張出し高さが高く、曲げ異方性が小さく、ヘム加工性が優れた。このうち、製造番号1〜3の例では、焼付硬化性が高く、塗装焼付時に充分な焼付硬化性を示し、製造番号4は、焼付け硬化性は若干低いものの、張出し性が優れた。
これに対し製造番号5〜8の例は、いずれも合金の成分組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造プロセス条件のいずれかがこの発明の範囲外であって、結晶方位密度、結晶粒度条件等のいずれかがこの発明で規定する条件を満たさなかったものである。これらのうち、製造番号5の場合は結晶粒が粗く、肌荒れが発生した。張出し高さも劣った。また45°方向のヘム加工性が劣った。また製造番号6の場合は、結晶粒が粗く、肌荒れが発生した。張出高さ、45°方向のヘム加工性が劣った。さらに製造番号7の場合は、結晶粒が粗く、肌荒れが発生した。張出高さ、全方向のヘム加工性が劣った。そしてまた製造番号8の場合は、結晶粒度、肌荒れなどに問題がなく、ヘム加工性も良好であるが、耐リジング性、張出高さが劣っており、さらに強度全般も低く、また三方向の強度異方性も認められた。

Claims (7)

  1. Al−Mg−Si系もしくはAl−Mg−Si−Cu系合金からなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をD1、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をD2とし、圧延方向を軸にキューブ方位から45°回転した方位(以下「ゴス方位」と記す)の密度をD3とし、さらに圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bs方位密度の合計をD4として、次の(1)〜(4)式(各方位密度のD1、D2、D3、D4の数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数を表す)
    D1>60 ・・・(1)
    D2>5 ・・・(2)
    D2/D3>1.2 ・・・(3)
    D4>5 ・・・(4)
    を満たし、さらに0、90°耳率が3%以上、結晶粒径がASTMでNo.4.5以上であることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板。
  2. Mg0.2〜1.5%(mass%、以下同じ)、Si0.3〜2.0%を含有し、かつTi0.005〜0.3%を単独でもしくはB500ppm以下とともに含有し、さらにMn0.03〜0.6%、Cr0.01〜0.4%、Zr0.01〜0.4%、V0.01〜0.4%、Fe0.03〜1.0%、Zn0.03〜2.5%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、さらにCuが1.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金が素材とされ、板に存在する結晶粒のキューブ方位密度をD1、板面法線(以下「ND」と記す)を軸にキューブ方位から回転した方位(以下「ND回転キューブ方位」と記す)の密度をD2とし、圧延方向を軸にキューブ方位から45°回転した方位(以下「ゴス方位」と記す)の密度をD3とし、さらに圧延集合組織のβファイバーに属するCu、S、Bs方位密度の合計をD4として、次の(1)〜(4)式(各方位密度のD1、D2、D3、D4の数値はすべてランダム結晶方位密度に対する倍数を表す)
    D1>60 ・・・(1)
    D2>5 ・・・(2)
    D2/D3>1.2 ・・・(3)
    D4>5 ・・・(4)
    を満たし、さらに0、90°耳率が3%以上、結晶粒径がASTMでNo.4.5以上であることを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて第1冷却ポイントから、その第1冷却ポイントよりも低くかつ150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第2冷却ポイント」と呼ぶ)までを、冷却速度100℃未満/hの冷却速度で徐冷することによって、150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満、50℃以上の温度域まで冷却し、引き続いて150℃未満、50℃以上の温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  4. 請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて150℃以上450℃未満の範囲内の温度で維持することによって、その温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で150℃未満、50℃以上の温度域まで冷却し、引き続いて150℃未満、50℃以上の温度域内で1時間以上の安定化処理を行なうことを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて第1冷却ポイントから、その第1冷却ポイントよりも低くかつ150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第2冷却ポイント」と呼ぶ)までを、冷却速度100℃未満/hの冷却速度で徐冷することによって、150℃以上450℃未満の温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置することを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用アルミニウム合金板を製造するにあたり、前記成分組成のアルミニウム合金の鋳塊に480〜590℃の範囲内の温度で1時間以上の均質化処理を施し、その冷却過程において、先ず150℃以上450℃未満の温度範囲内のある温度(以後「第1冷却ポイント」と呼ぶ)まで100℃/h以上の冷却速度で急冷し、引続いて150℃以上450℃未満の範囲内の温度で維持することによって、その温度範囲内に少なくとも0.5時間以上滞留させ、次に250℃以上450℃未満の温度で熱間圧延を開始し、かつ熱間圧延過程中における板厚200mmから20mmまでの段階で1パス当りの圧延率が40%以上の高圧下の圧延パスを少なくとも1回施し、得られた熱間圧延板に対し、焼鈍を行なうことなく30%以上の圧延率で冷間圧延を施した後、480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置することを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 請求項5もしくは請求項6に記載の成形加工用アルミニウム合金板の製造方法において、
    前記溶体化処理を480℃以上の温度で行なってから、100℃/min以上の平均冷却速度で50℃未満の温度域まで冷却して放置したのち、さらに180〜280℃の範囲内の温度で復元処理を行なうことを特徴とする、成形加工用アルミニウム合金板の製造方法。
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