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JP2008541685A - 到達時間同期ループ - Google Patents

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JP2008541685A
JP2008541685A JP2008510326A JP2008510326A JP2008541685A JP 2008541685 A JP2008541685 A JP 2008541685A JP 2008510326 A JP2008510326 A JP 2008510326A JP 2008510326 A JP2008510326 A JP 2008510326A JP 2008541685 A JP2008541685 A JP 2008541685A
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リン,ウェン,ティー.
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キーストーン セミコンダクター,インコーポレイテッド
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Abstract

本発明は、基準信号源から安定な信号を生成する回路、システム、および方法を提供する。これら新たな発明は、少ない位相雑音の安定信号を供給する現在の技術よりも優れている。この新規な発明は、従来のフィードバック制御理論を用いることなくフィードバック制御ループを解析する新たな手法おについても提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、以下の4つの米国仮特許出願に関し、優先権を主張するものである。
1.ダブリュー.ティー.リン(W.T.Lin)によって2005年5月6日に出願された、タイトルが「最適な不感帯動作特性を有する位相同期ループ(Phase Locked Loop Having Optimal Dead Zone Operating Characteristics)である米国出願60/678,841
2.ダブリュー.ティー.リン(W.T.Lin)によって2005年11月14日に出願された、タイトルが「到達時間検出器を用いたデータクロック復帰システム(Data Clock Recovery System Using Arriva−Time Detector)である米国出願60/736,476
3.ダブリュー.ティー.リン(W.T.Lin)によって2006年1月4日に出願された、タイトルが「ダブルエンド型チャージポンプ出力を持つ到達時間検出器(Arrival−time detector with double−ended charge pump output)である米国出願60/756040
4.ダブリュー.ティー.リン(W.T.Lin)によって2006年1月10日に出願された、タイトルが「ダブルエンド型チャージポンプ出力を持つ到達時間検出器(Arrival−time detector with double−ended charge pump output)である米国出願60/757645
本出願は、さらに、2005年7月28日にウェン.ティー.リン(Wen T. Lin)によって出願されたPCT特許出願、PCT/US2005/026842である「信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステム、方法、および回路(A system, method and circuit to detect a phas, a frequency and an arriva−time difference between two signals)に関係しており、その全内容および要旨は、これによって参照して全体的に併合されている。
技術分野
本発明は、デジタル信号処理の分野に関し、より詳しくは、本発明は、基準信号源から安定な信号を生成するための方法、装置、およびシステムに関する。
背景技術
位相同期ループ(PLL)技術は、80年前に最初に発明されたことから、基準信号源から安定な信号を生成するための主要技術となっている。このPLLは、今日では、殆どすべての電気製品において使用されている。このように、その人気および長い年月にわたって使用されてきたにもかかわらず、PLLは、今日でも、いまだに使用が難しい技術である。現在のPLL技術において最も周知の問題は、位相オフセットなしにPLLによって2つの信号が同期されるときに発生する、不感帯(dead−zone)のジッタ(jittering)の問題である。現在のPLL理論は、何故かかる問題が生じるのかについて簡単に説明することができない。結局のところ、この問題については、過去40年の間に提案された次善策としての多くの手法が存在するだけであり、今日に至るまで、真の解決法はなかった。最も困ることは、これらの次善策としての多くの手法が長い間使用されてきたため、それらが、もはや標準的な手法となってしまい、万人に受け入れられており、誰も、さらなる疑問を挟まなくなってしまっていることである。これらの次善策としての多くの手法の不利益な点が多い。まず、PLLの動作速度が著しく遅くならねばならない。第2に、これらの手法は、VCO(電圧制御発振器)のために、より大きい位相ノイズを生じさせることとなる。第3に、最も重要なものとして、不感帯のジッタのおそれが、いまだに存在し、VCOは、予期できない時点で、過剰にジッタを発生しうる。この不感帯のジッタの問題は、2005年7月28日に出願されたPCT出願 PCT/US2005/026842において提案された到達時間同期ループ技術を用いることにより、完全に解決されることとなった。この到達時間の概念は、何故に不感帯のジッタが発生するのかを完全に説明することができ、この問題に対する真の解法を提供することができる。
到達時間同期ループにおいて使用される複数の到達時間検出器の当初設計は、前記出願PCT/US2005/026842に示されており、それは、チャージポンプ出力ドライバ用に一定のバイアス電圧を提供するためのオペアンプを要求するシングルエンド型のチャージポンプ出力ドライバを用いて動作されていた。到達時間検出器におけるシングルエンド型のチャージポンプ出力ドライバは、非常に小さい決定不定状態をもって判定出力を提供する。これは、素晴らしい設計ではあるが、実装が難しく、より多くのハードウェアを要求するものであった。平衡ダブルエンド型チャージポンプ出力は、通常、使用が容易であり、その平衡特性に起因して、ICの配列のミスマッチに、より寛大である。到達時間検出器における平衡ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバは、大きい決定不定状態をもって出力を提供するけれども、その判定出力は、常に、正確で精密である。この平衡ダブルエンド型のチャージポンプ出力ドライバ付きの到達時間検出器は、このような価値があり、シングルエンド型のチャージポンプ出力ドライバ付きの到達時間検出器よりも好評となりうる。
発明の開示
本開示の第1部分の緒論において、到達時間の概念を使用して、一般的なアナログPLLの動作が説明されるとともに、一般的なフィードバック制御理論を使うことなくフィードバック制御ループを解析するための技術および方法が提供される。この新たな概念および技術は、位相検出器としてのPFDを用いる一般的なPLLに適用され、不感帯のジッタ問題の原因が十分に説明される。この不感帯のジッタ問題に対する新たな解決法が提供される。本開示の第2論においては、到達時間同期ループの獲得挙動が、この新たな概念、技術、および方法を用いることによって調べられる。到達時間同期ループの動作を説明するために、この到達時間という概念を用いることによって、一般的なフィードバック理論を用いた場合と全く同様の結果を提供するのみならず、一般的なフィードバック理論を用いることによっては容易に想到できない到達時間同期ループの動作についての詳細および洞察についても提供することができることが明らかとなる。
シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた到達時間検出器の新たな2つの設計が、開示において説明される。第1の設計においては、前記出力ドライバとしてシンク・チャージポンプ(sinking charge pump)のみが設けられた到達時間検出器が、VCOからの主フィードバック信号から負値の出力のみを生成する。第2の設計においては、前記出力ドライバとしてソース・チャージポンプ(sourcing charge pump)のみが設けられた到達時間検出器が、前記主フィードバック信号から正値の出力のみを生成する。これらシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた2つの到達時間検出器が結合されることによって、一つのダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いる到達時間検出器となる。
本開示において、ダブルエンド型のチャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の新たな3つの設計が説明される。ダブルエンド型チャージポンプ出力付きの到達時間検出器の第1の設計においては、前記2つの入力信号の到達時間の差がどんなに短いかにかかわらず、チャージポンプが常に完全にターンオンされるように、(複数の)チャージポンプを制御するための(複数の)イネーブル信号の持続時間は、2つの入力信号間の実際の到達時間差よりも常に長くなっている。
第2の設計においては、前記チャージポンプを制御するための前記イネーブル信号の持続時間は、前記2つの入力信号間の実際の到達時間差と同じになっている。この結果、(複数の)チャージポンプ出力ドライバは、不感帯および線形状態を示し、この結果、前記2つの入力信号間の到達時間差分が前記チャージポンプの不感時間(dead time)を超えるのに十分な長さになるまでは、複数のチャージポンプからの出力が決してターンオンされることがないとともに、前記2つの入力信号間の到達時間差分が、不感時間と前記チャージポンプのスルー時間(slew time)との合計よりも長くなるまでは、完全にはターンオンされない。
第3の設計においては、前記チャージポンプを制御するための前記イネーブル信号の持続時間は、前記2つの入力信号間の実際の到達時間差よりも僅かに長くなっているが、前記2つの入力信号の間の到達時間差分が0であるときに前記チャージポンプ出力ドライバを完全にターンオンするのに十分なほどには長くなっていない。この結果、不感帯は防止される。しかしながら、前記2つの入力信号の間の差が、チャージポンプのスルー時間を全体として越えるのに十分な長さになるまでは、前記チャージポンプの出力が完全にはターンオンしないように、前記チャージポンプ出力ドライバは、判定閾値の辺りにおいて線形状態を示す。
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付図面を参照して、詳細に記述される。
図面の簡単な説明
図1は、基本的な位相同期ループ(従来技術)の構成要素である。
図2は、位相検出器としての混合器である。
図3は、前記位相検出器としての混合器からのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。
図4は、到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループにおける利得の理論的な伝達特性である。
図5は、到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループにおける利得の実際の伝達特性である。
図6は、基本的なダブルエンド型チャージポンプ付きデジタル位相周波数検出器(従来技術)である。
図7は、前記基本的なダブルエンド型チャージポンプ付き位相周波数検出器のタイミングチャートである。
図8は、図6に示されるような位相周波数検出器を到達時間検出器として用いた到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。
図9は、図6に示されるような位相周波数検出器を到達時間検出器として用いた到達時間同期ループの利得の伝達特性である。
図10は、好ましい実施形態である基本的な線形の到達時間同期ループの構成要素である。
図11は、完全な到達時間検出器付きの到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。
図12は、不感帯を伴うシングルエンド型チャージポンプ出力を用いた典型的なデジタル到達時間検出器の概略図である。
図13は、不感帯および線形状態を伴わないシングルエンド型チャージポンプ出力を用いた典型的なデジタル到達時間検出器の概略図である。
図14は、不感帯および線形状態を伴わない、シングルエンド型チャージポンプ出力付きの前記完全な到達時間検出器の概略図である。
図15は、図14に示されるような、不感帯および線形状態を伴わない、シングルエンド型チャージポンプ出力付きの完全な到達時間検出器の伝達特性である。
図16は、第1の補助実施形態としての、シンク・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の概略図である。
図17は、シンク・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の伝達特性である。
図18は、第2の補助実施形態としての、ソース・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の概略図である。
図19は、図18に示される前記ソース・チャージポンプ出力のみを有する到達時間検出器の伝達特性である。
図20は、第3の補助実施形態としての、不感帯および線形状態を伴わないダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた完全な到達時間検出器の概略図である。
図21は、図20に示されるダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた完全な到達時間検出器の伝達特性である。
図22は、第4の補助実施形態としての、不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の概略図である。
図23は、図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の伝達特性である。
図24は、図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器からVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。
図25は、図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の利得の伝達特性である。
図26は、第5の補助実施形態としての、線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器の概略図である。
図27は、パルス幅低減器の概略図である。
図28は、図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器の伝達特性である。
図29は、図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器からVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。
図30は、図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力付きのデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループの利得の伝達特性である。
図31は、待ち遅延時間および伝搬遅延時間がない理想的な到達時間同期ループの獲得挙動である。
図32は、完全なデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の実際の伝達特性である。
図33は、完全なデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループの実際の伝達特性である。
図34は、周波数検出器を備える典型的な到達時間同期ループの構成要素である。
図35は、ループフィルタの応答時間である。
図36は、サイクル−スリップ段階のビート信号の最終時期の間の固有周波数の周期の1/4よりも短いループ遅延時間を備える到達時間同期ループの獲得挙動である。
図37は、前記サイクル−スリップ段階のビート信号の最終時期の間の固有周波数の周期の1/4よりも長いループ遅延時間を備える到達時間同期ループの獲得挙動である。
図38は、フィードバック制御ループ(従来技術)の構成要素である。
図39は、第6の補助実施形態としての、前記出力ドライバとしてシンク・チャージポンプのみを用いる到達時間検出器である。
図40は、第7の補助実施形態としての、前記出力ドライバとしてソース・チャージポンプのみを用いる到達時間検出器である。
図41は、差動フィードバック制御ループである。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、基準信号源から安定な信号を生成する線形到達時間制御回路を実行するためのシステムおよび方法に関する。線形到達時間同期ループは、従来の位相同期ループ(PLL)105に由来するものである。
従来のPLL105は、図1に示されるように、電圧制御発振器(VCO)108より生成された局所信号112を入力基準信号110に合成するための線形フィードバック制御ループである。基本的なPLL105は、3つの構成要素、すなわち、位相検出器101、ループフィルタ106、およびVCO108から構成されて、前記基準信号110の周波数および位相と等しい周波数および位相を有する局所信号112を生成する。位相検出器101は、VCOからの局所信号112と基準信号110との間の位相差に比例する大きさをもつ誤差出力(エラー出力)114を生成するための線形装置である。前記誤差出力信号114は、ループフィルタ106によってフィルタに掛けられた後、VCO108の周波数を修正するための最終誤差修正出力電圧115となる。フィードバック制御ループは、前記誤差出力信号114が0となってVCOからの前記信号112の位相および周波数の双方が基準信号110の位相および周波数に同期されるまで、VCO108の周波数を修正し続ける。
過去においては、位相検出器101からの前記誤差出力信号114は、入力される前記2つの信号の位相差分から生じると考えられており、位相検出器101の利得は、V(ボルト)/rad(ラジアン)の単位を持つと考えられていた。誤差出力信号(V:ボルト)=位相差分(rad)*位相検出利得(V(ボルト)/rad)であることから、入力される前記信号の位相差分に比例する大きさの誤差出力信号114を生成する位相検出器101にV(ボルト)/radの単位をもつ利得を持たせることは、完全に筋が通っているように思われる。しかしながら、PCT/US2005/026842に極めて詳細に説明されているように、位相検出器は、実際には、特殊な到達時間検出器であり、信号の到達時間は、単に位相のみで決定されるのではなく、信号の振幅、周波数および位相によって決定される。
所定の時間間隔で受信側に到着する定常的な入力信号が時間的に変動して予期せぬ時間に前記受信側に到達した場合、当該信号の受信側が、入力信号が時間的に変動させるように信号伝送過程において何が変化したかについて確認する方法が実際のところ存在しない。入力信号の位相の変化が、前記信号を時間的に変動させるかもしれないが、周波数の変化および振幅の変化がそうさせるかもしれない。信号の受信側で確信できることは、信号の到達時間が変化したということだけである。位相検出器101の概念は、まさに誤解を招く恐れのあるものである。位相検出器101の振る舞いは、むしろ到達時間の概念を用いて解析されるべきであり、位相検出器の利得は、単純にV(ボルト)の単位をもつべきであり、位相検出器101からの誤差出力信号114の振幅は、2つの入力信号の間の到達時間の差によって決定されるべきである。
この位相検出器101を定義する問題は、ずっと以前に開始された。初めの間は、アナログPLLにおいて使用される最も普通の位相検出器は、2つの入力信号の乗算値である出力電圧を生成する、周波数混合器のような乗算器であった。乗算演算の結果は、2つの入力信号の前記振幅、周波数、および位相の関数であり、単位としてV(ボルト)をもつ電圧であった。たとえば、図2に示されるような位相検出器101として周波数混合器を用いてアナログPLLを構成することは極めて一般的でありる。位相検出器への2つの入力信号が、Vref*SIN(ωt+θ) 270およびVVCO*COS(ωt+θ) 272であり、前記混合器の利得が、K 274であると仮定すると、前記混合器の出力は、1/2*K*Vref*VVCO*[SIN((ω+ω)t+θ+θ)+SIN((ω+ω)t+θ−θ)]となる。最初のサイン(SIN)項は、ループ・フィルタでフィルタリングされるので、第2のサイン(SIN)項のみが、VCOに至る信号となる。したがって、前記混合器の出力のうちでVCOへの最終誤差修正出力電圧115は、以下のように簡略化される。
Figure 2008541685
最後の項であるSIN((ω+ω)t+θ−θ)が定数で無次元であり、K、位相検出器の出力と、位相検出器101の利得として定義される1/2*K*Vref*VVCOとの双方は、V(ボルト)の単位をもつ。一般的な解析では、前記ループが同期状態にあるときには、前周波数ωおよびωは等しいと仮定されており、式1は、さらに簡略化される。
Figure 2008541685
そして、前記ループが同期されているときには位相差分が非常に小さく、式2は、
Figure 2008541685
と簡略化される。
上記式3は、多くの簡略化過程の結果であり、θ−θが位相差分でありラジアンの単位を有する以上、Kdが、いまだにV(ボルト)の単位を有するためには、位相検出器の前記利得は、当初はV(ボルト)で規定されていたにもかかわらず、まさにV(ボルト)/radの単位を持たねばならない。このように、「位相検出器」の概念を無理やりに適合させねばならないために、位相検出器の利得は、実際には信号の位相と直接的な関係がないという事実にかかわらず、V(ボルト)/rad(ラジアン)の単位を持たざるを得ない。
式1は、周波数混合器の乗算動作を正確に記述しており、当該周波数混合器からPLLのVCOへの最終誤差修正電圧115を特徴づけている。式1は、前記混合器が、位相検出器であるのではなく、まさに到達時間検出器であり、アナログPLLが実際にアナログ到達時間同期ループであるように、前記混合器からVCOへの最終誤差修正電圧115が、2つの入力信号の振幅、周波数、および位相の関数であることを示している。我々は、図3のように式1をプロットすることができ、それは、到達時間検出器としての前記混合器の特性を示している。図を単純化するために、図3においては、2つの入力信号が、位相オフセットを有していないことを仮定している。アナログPLlが80年前に最初に開発されたとき、それは、無線通信において主として使用された。この応用においては、自動利得制御(Automatic Gain Control:AGC)回路および自動周波数制御(Automatic Frequency Control:AFC)回路が、信号の振幅および周波数を調整するために共に使用されていた。信号の振幅および周波数の双方が調整されるときだけ、アナログPLLは、位相において同期する機会を有していた。AGCおよびAFCの双方とも狭帯域幅のフィードバック制御ループであるので、それらは、高周波の振幅雑音および周波数雑音がアナログPLL回路に到達することを防止することができなかった。そして、高周波の振幅雑音および周波数雑音がアナログPLLに到達すると、アナログPLLの混合器は、雑音源を識別することができないので、それらの雑音は全て位相雑音となります。振幅および周波数の雑音のすべては、混合器にとって位相雑音と同じに見られる。これが、式1どおりのことである。
図3に示されるように、到達時間検出器としての混合器は、ビート信号(うなり信号)の複数の周波数によって決定される異なる複数の到達時間差における多くの安定した動作点を有している。ゼロの到達時間差164における所望の動作点は、ビート信号の周波数が小さいとき達成できるのみであるから、到達時間検出器として混合器を用いているアナログ到達時間同期ループは、最大でも前記ビート信号の±1/4周期に相当する非常に小さい到達時間獲得範囲を有することになる。後述するように、実際の到達時間獲得範囲は、これより若干下回る。たとえば、1メガヘルツの基準信号とVCOからの信号との間のビート信号の周波数が1キロヘルツである場合、混合器の到達時間獲得範囲は、±0.25m秒を若干下回る。これらの2つの信号は、確実に前記到達時間獲得範囲内である1マイクロ秒よりも互いに離れて前記混合器に到達することは絶対にないので、混合器は、VCOが1メガヘルツの基準信号を容易に獲得することを助けることができる。しかしながら、前記ビート信号の周波数が、250キロヘルツであるならば、到達時間差の前記獲得範囲は、±1μ秒を下回り、この結果、2つの信号が、1マイクロ秒離れることができ、前記回路は、1メガヘルツの基準信号を獲得することができないので、混合器にとって問題となる。
驚くべきことに、到達時間の概念は、アナログ到達時間同期ループの獲得範囲の計算を非常に簡単化する。到達時間の概念は、比較的新しく、統計的情報の分野において70年後半になって一般的になった。到達時間の概念は、最初のPLLが発達した40年後に生まれたものであり、この新たな概念が、我々が従来のPLLにおいて直面してきた多くの不可能な問題を解決するのに役に立つことができることは驚くべきものではない。ここで、我々が、到達時間の概念を用いてフィードバック制御ループをさらに解析する前に、我々は、最初にシステムの利得を明確に定義する必要がある。
システムの利得は、入力の微分係数に対する出力の微分係数として定義される。フィードバック制御ループの利得を調べるためには、我々は、一定の量ずつ入力刺激を変化させて、この制御された入力の変化によって出力に生じる変化を測定して、この出力の変化を入力の変化で除算したものを利得として計算する必要がある。到達時間同期ループ100、すなわちPLL105のようなフィードバック制御回路システムのためには、VCOへの最終誤差修正電圧115が、我々が調査する必要がある前記出力であり、到達時間検出器104、すなわち位相検出器101への2つの入力信号の間の到達時間の差分が、前記制御された入力刺激である。VCOへの最終誤差修正電圧115は、特定の入力刺激を受けてVCOがどのように応答するかを決定し、このVCOへの最終誤差修正電圧115の振る舞いは、全体のフィードバック制御ループの同様の振る舞いを反映する。
基準信号110とVCOからの信号112との間の到達時間の前記差分の信号は、この開示におけるフィードバック制御ループシステムの解析のための前記入力刺激として使用される。この差分の信号をフィードバック制御ループシステムへの入力信号として用いる新たな方法は、伝統的なフィードバック制御理論に完全に反するものである。伝統的なフィードバック制御理論においては、基準信号110とVCOからの信号との間の到達時間の差分は、出力信号の一つとして考慮されており、基準信号110が、フィードバック制御ループシステムへの唯一の入力信号であるとする。しかし実際は、前記差分の信号がフィードバックループの一部である一方、前記基準信号110は、フィードバックループの一部ではないので、基準信号110は、フィードバック制御ループへの入力信号ではないものとすべきである。前記差分の信号こそが、フィードバック制御ループシステムへの唯一の入力信号であるものとすべきである。前記基準入力110は、フィードバック制御ループシステムの一つのノードに入力される分岐(branch)にすぎず、それは、フィードバックループの一部ではない。
前記フィードバック制御ループの利得についての基本的なルールの一つは、我々がフィードバック制御ループシステムを記述するために正論理(正ロジック)のみを用いるならば、利得は、すべての時間において負ではないとしなければならないことである。負値の利得は、前記出力が誤った方向に向かい、ループが成功的に決して収束しないことを意味する。伝統的なPLL105を一例にとれば、VCOからの信号112が、基準信号110に遅れを取る場合、この2つの入力信号の間の到達時間の差分は増加し、VCOへの最終誤差修正電圧115もこれに倣う。VCOからの信号112の周波数は、到達時間の差分を減らすべく高められる。PLL105のフィードバック機構は、前記VCO信号が遅れないようにし、VCOからの信号112は、いつも前記基準信号と同期することになる。Pll105の利得が負となるならば、VCOからの信号112が遅れる場合に、VCOへの最終誤差修正電圧115が増加する代わりに、減少することになる。したがって、VCOからの信号112の周波数も、さらに低くなることになり、VCOからの信号112は、基準信号110に決して追いつくことができない。したがって、負ではない利得のルールは、フィードバック制御ループが正しく機能するために基本的に必要な要求である。
フィードバック制御ループの利得についての第2のルールは、当該ループの利得は、当該ループの応答性の良さを決定するものであり、当該ループの利得は、獲得(capturing)能力を提供するための最低必要条件よりも高くならなくてはいけないということである。適切な利得がない場合、フィードバック制御ループは、前記複数の信号を獲得するための強みを容易く有するものではない。伝統的なPLL105を再び一例にとるとともに。PLL105が既に同期状態であると仮定するなる場合、VCO信号が遅れをとっているとともに、VCOへの最終誤差修正電圧115が、VCOからの信号112の周波数を増大していくように、基準信号110が高周波数側へと周波数を高め始める場合、VCOからの信号112の周波数を高める変化率が、基準信号を促進する当該変化率よりも遅い場合には、PLLは、基準信号110の動きに追従することがいまだにできないことになる。固定の基準信号を伴う多くのシステムにとっては、利得は、PLL105が初期の獲得期間中に素早く基準信号を獲得して同期するために必要とされている。PLLの利得は、いかに早くVCOからの信号112の周波数が掃引されるかを決定することができ、また、ループによる獲得挙動についても決定する。我々が、VCOの感度に対する利得の調整をするとき、この結果は、VCOの調整のスルーレート(slew rate)である。PLL105の最低限の利得は、VCO周波数の最低限のスルーレートを決定し、その最低限のスルーレートは、VCOの鋭敏性を決定し、結局のところ、入力される基準信号に対してどれほどループが鋭敏性および強力であるかについて決定する。
差分検出器の利得は、しかしながら、これとは異なるように定義される。所定の差分入力における差分検出器の利得は、当該差分検出器の出力のためのバイアス点に対する差分検出器の出力として定義されるべきものである。典型的には、差分検出器の出力は、特定のDCレベルのままに留まる、理想的には、差分入力が0であるときの、各電源レール(rails)の電圧の間の途中で留まる。このDCレベルは、差分検出器の利得を計算するための基準バイアス点として用いられ、そのために差分検出器の利得は、差分入力が0点の周囲で変動するときには、正にも負にもなることができる。誤差出力信号114は、使用される出力ドライバのタイプに依存して電圧または電流という異なる二つの種類で生成することができるけれども、VCOへの最終誤差修正電圧115は常に電圧であるから、我々は、いかなる種類の出力ドライバが使用されるか否かにかかわらず、誤差出力信号114として電圧のみを使用することができる。電圧出力ドライバおよび電流出力ドライバは、互いに置き換え可能であるから、当該ドライバの双方に対応するための電圧の使用は、差分検出器の性能に何らの影響も与えない。
到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループのために、理論的には、図3に示されるVCOへの最終誤差修正電圧115を到達時間差分に関して微分した結果と、図4における到達時間検出器として混合器を使用した前記アナログ到達時間同期ループの利得のプロットとを考慮することによって、前記アナログ到達時間同期ループを調べることができる。図から、混合器は、利得が正であるときに到達時間差分が特定の範囲にある場合においてのみ動作することができることがわかるが、これは当然のことである。到達時間検出器としての混合器は、基準信号110を獲得するためにGminである最低限の利得を供給可能な±T 518である制限された到達時間獲得範囲を有するとともに、±1/4*1/(FREF−FVCO) 506である到達時間保持範囲を有する。到達時間検出器として混合器を有するアナログ到達時間同期ループの前記保持範囲は、既に同期状態にあるアナログ到達時間ループの複数の入力における複数の信号において前記同期状態を失うことなく存在可能な最小限の到達時間差分である。アナログ到達時間同期ループが既に同期状態にあり、アナログ到達時間同期ループは、当該ループの利得がいまだに正値である限り、同期状態を維持することができることから、アナログ到達時間検出器の前記保持範囲は、つねに前記獲得範囲よりも長くなる。
混合器が、到達時間検出器として用いられるとき、2つの異なる周波数を有する2つの入力信号の間の最大の到達時間差分は、より速い信号の周期と常に等しくなる。一の信号が、他の信号よりも速い場合、その速い信号は、遅い信号が再び到達する前に、幾つかの複数周期を経ている。これら速い信号からの追加的な周期は、VCO108へ到達する前にループフィルタ106によって簡単に除去されてしまうので、VCOへの最終誤差修正電圧115に対して何らの影響も与えない。結果として、到達時間検出器として用いられる混合器のためには、異なる周波数を有する2つの入力信号間の到達時間差分が、速い信号における一周期よりも長くなることができない。この点を考慮に入れて、全面的に異なる観点から図4を見ることにする。我々は、図5のように、到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループの実際の伝達特性をプロットすることができる。
図5において、我々は、基準信号110が速い信号であると仮定して、到達時間差分を±(1/FREF) 520に制限するとともに、到達時間検出器として混合器を用いるアナログ到達時間同期ループの利得を、±1/(FREF) 520の到達時間差分の区間での図4における元々の理論的な伝達特性のものと同様とする。我々は、±1/(FREF) 520の区間という到達時間差分の小範囲について興味があるだけである。なぜならば、これが、到達時間検出器としての混合器が働く到達時間差分の範囲であるからである。混合器は、他の多くの到達時間差分のポイントにおいてもループを同期することができるが、これらのポイントは、望ましくない動作点であるので、これらを単純に無視することができる。この結果、到達時間検出器として混合器を用いるアナログ到達時間同期ループの周波数の獲得範囲は、以下から計算することができる。
Figure 2008541685
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ここで、Gmin 516は、必要とされる最小限度のループ利得であり、Gmin*KVCOが、ループが制御することができる最低限のスルーレート(slew rate)である。最低限度の利得 516は何を要求するか。それは、複数の入力信号の周波数がどのくらい速く変化できるかに依存している。たとえば、システムの電源が入ったとき、VCOが一の周波数で発振し始めて、次いで、VCOの周波数は、幾つかの周波数を通じて掃引され、この処理は、VCOの前記周波数が他の周波数に安定化されるまで、何回か行うことができる。この過程では、VCOの周波数は、速い速度で掃引される。もしも到達時間同期ループが、前記初期の電源投入時のVCOの掃引条件と同様の速さで掃引できない場合には、到達時間同期ループは、VCO信号を追跡して同期することができる望みはない。到達時間同期ループ100が適切に働くためには、ループがVCO108へ供する最低限の掃引速度が、到達時間検出器の複数の入力信号において生じることが可能な信号の最大スルーレート(slew rate)を上回らねばならない。
ビート信号の周波数は、到達時間同期ループが同期状態となる前の獲得期間の間、変動することが可能であるので、我々は、より高い周波数を持つ入力信号が固定された幅を持つ対象である一方、ビート信号は、幅において伸縮することができるアコーディオンの如きものであると想像することができる。混合器の利得が常に0を超えるべく、前記速い周波数の周期が、前記速いビート信号内に入る場合に、到達時間検出器としての混合器は、働くことができる。図5に示されるように、曲線A 524に示されるビート信号の周波数は、単純に混合器にとって高すぎるので、負値の利得が生じてしまい、混合器は、複数信号を獲得して同期させることができないようになってしまう。曲線B 526では、ビート信号の周波数は、最小限度の利得要求に対応しており、曲線C 528におけるビート信号の周波数は、とても低くて、到達時間同期ループは、基準信号を獲得するために十分すぎる利得を有する。
伝統的なアナログPLL105は、多くの短所を有する。まず第1に、前記線形位相検出器101が、アナログデバイスであるので、IC(集積回路)の内部に実装することが困難であることであり、第2に、線形位相検出器は、図4に示されるように、到達時間差分ゼロ以外の他の異なる到達時間差分である多くの安定な動作点においても動作可能であるので、この結果、アナログPLLシステム105は、誤った周波数においても容易く同期されてしまうことであり、第3に、線形位相検出器101は、図5に示されるように非常に限定された獲得範囲を持つことである。これらの問題を克服するために、一般に位相−周波数検出器(phase−frequency detector:PFD)として知られているデジタル位相検出器が発明された。このPFD132は、2つのフリップフロップとAND論理ゲートを有するデジタルデバイスである。
PFD132は、IC(集積回路)内に簡単に搭載することができ、ただ一つの安定な動作点を有する。この結果、今日では、最も人気のある位相検出器となっている。図6に示されるようなダブルエンド型のチャージポンプを駆動する典型的なPFD132は、今日では、全ての電子システムにおいてしようされている最も著名な回路の一つである。通常では、PFD132は、ソース・チャージポンプ127をイネーブルするためのアップ出力信号123と、シンク・チャージポンプ129をイネーブルするためのダウン出力信号125とを生成して、ループフィルタ106がVCO108用の最終誤差修正電圧115を出力するための誤差出力信号114を生成するために用いられる。ダブルエンド型チャージポンプを駆動するPFD132におけるタイミングチャートが図7に示されている。
VCOからの信号112が最初に到達する場合には、前記ダウン出力信号125が最初にアクティブ(活性)となることによって、VCO108の周波数を低めるべく最終誤差修正電圧115を低減するためにループフィルタ106を放電することになり、当該放電は、基準信号110が最終的に到達した直後に停止することになる。一方、基準信号110が最初に到達する場合には、前記アップ出力信号123がアクティブとなることによって、VCO108の周波数を高めるべく最終誤差修正電圧115を増加させるためにループフィルタ106を充電することになり、当該充電は、VCOからの信号112が最終的に到達した直後に停止することになる。この結果、VCOへの最終誤差修正出力の量は、全体として前記2つの入力信号の間の到達時間の差分に依存する。2つの入力信号の間の到達時間の差分が大きくなればなるほど、VCO108の周波数が大きく修正されることとなるので、ダブルエンド型チャージポンプ出力を有するPFD132は、まさに到達時間検出器である。
ダブルエンド型チャージポンプ出力を駆動するPFD132は、複数のデジタルデバイスから構成されているけれども、VCOへのアナログの最終誤差修正出力信号を生成するとともにVCOへの最終誤差修正出力信号の振幅は、2つの入力信号間の到達時間の差分に対して線形に生成されることから、そのループの内部における振る舞いは線形である。2つの入力信号が同時に到達した場合には、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFDは出力を行わないこととなり、VCOへの最終誤差修正出力電圧115は、理想的にはVcc/2にバイアスされることとなる。到達時間差分が増加または減少し始める場合には、図8に示されるように、最終誤差修正出力電圧115が電源レール(rails)に到達するまで最終誤差修正出力電圧115も増加または減少する。
VCOに出力される最終誤差修正出力電圧115の極性および振幅が、位相ではなく2つの入力信号の間の到達時間差分によって決定されるので、このようなダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132は、位相検出器に代わる到達時間検出器といえる。
残念なことに、PFD132によって駆動されるダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバからの出力は、図7におけるPFDのタイミングチャートに示されるようなグリッチ(glitch)が混在してしまうことを回避できない。これは、PFD132は、アップ123およびダウン125という2つの出力信号を生成するけれども、その時々で、それらの出力信号のうちのどちらか一方のみが到達時間差分の情報を伝えるからである。たとえば、基準信号110が、VCOからの信号112よりも先行している場合には、アップ出力123のみが2つの入力信号の間の到達時間差分の情報を含んでおり、VCOからの信号112が先行している場合には、ダウン出力125のみが2つの入力信号の間の到達時間差分の情報を含んでいる。結果的には、我々は、どちらの信号が先行しているかにかかわらず所望の到達時間差分のみを含む誤差出力信号114を生成するためには、出力チャージポンプ127、129に依存する。
チャージポンプ127、129は、到達時間決定用の決定回路の一部であり、残念なことに、どちらの信号が先行しているかにかかわらずフリップフロップのリセット期間の際には、アップ出力123およびダウン出力125の両方ともが同時にアクティブとなってしまう。理想的には、ソース・チャージポンプ127とシンク・チャージポンプ129の両方が、フリップフロップの前記リセット期間の間に同じ時間量の間、同じ電流量の排出(ポンプアウト)または吸い込み(シンク)することによって、フリップフロップのリセット期間の際にループフィルタ106へ排出される正味の出力電荷量が0となる。しかしながら実際には、それらのチャージポンプは、互いに異なる電流で排出または吸い込みをしており、2つのチャージポンプおよび遅延パスを全ての時刻において常に完全に整合させることは不可能である。この結果、複数のチャージポンプは、2つの入力信号が同時に到達する場合には、到達時間差分が0の点において若干の出力を生成してしまう。この0到達時間点での電流の量は変化するものであり、前記複数のチャージポンプの雑音に依存する。不連続なグリッチは、このようにダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ付きのPFD132を用いた到達時間検出器の出力において、図8に示されるような到達時間差分のゼロ点において生成される。この不連続なグリッチは、ダブルエンド型チャージポンプが、前記決定回路の一部であって、2つのチャージポンプを全ての時刻において常に完全に均衡させることが不可能であることに起因して生じる。この不連続なグリッチ問題を解決するために、我々は、そうなるべき方法で複数のチャージポンプを単純な出力ドライバとするように、当該複数のダブルエンド型チャージポンプを決定回路から切り離す必要がある。
不連続なグリッチは、到達時間同期ループにとって特異なグリッチとなるので、不連続なグリッチは、それがどんなに小さいものであっても、信号の両方が同時に到達した場合に、到達時間検出器としてダブルエンド型チャージポンプ付きPFD132を用いた到達時間同期ループにおける問題を引き起こすことになる。ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバは、無から出力を提供することになるため、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFDを用いた到達時間同期ループの利得は、到達時間差分が0となる点164において無限大となってしまう。ダブルエンド型チャージポンプ出力付きPFDを用いた到達時間同期ループの利得は、図8に示されるようなVCOへの最終誤差修正電圧115を到達時間差分に関して微分することによって図9に示されるようにプロットされる。VCOへの最終誤差修正電圧115の不連続なグリッチは、到達時間同期ループにとって特異な(singularity)グリッチとなり、この特異なグリッチは、周波数スペクトラム全体において、ループフィルタ106によっては完全に除去しきれないエネルギーを含むので、図8に示されるような、到達時間差分が0の点における伝達特性の不連続なグリッチは、VCO108にジッタ(jitter)を生じさせる。
到達時間差分が0の点164における不連続なグリッチの効果は、PFDにおけるフリップフロップの遅延不整合またはループフィルタ116の漏れ電流によって引き起こされるエラーとは非常に異なっている。遅延不整合は、到達時間検出器の伝達特性を水平方向にシフトさせるだけであるとともに、ループフィルタの漏れ電流は、縦方向に伝達特性をシフトさせるだけであって、何らの不連続性を生じさせることはない。結論として、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132は、特異点の存在を伴う特殊なデジタル到達時間検出器であるといえる。
我々は、グリッチを生じさせないようにすることができないから、到達時間同期ループ用のデジタル到達時間検出器としてダブルエンド型チャージポンプ付きのPFD132を単純に使用することはできない。PFD132は、単に、どの信号が先行しているについて、あるいはどの信号が遅延しているかについて我々に知らせるためのデバイスであって、それ以上でもそれ以下でもない。上述したように、基準信号110のほうが先行している場合には、アップ出力123のみが到達時間差分情報を含んでおりダウン出力125はVCOからの遅れている信号112のタイミング情報のみを含んでいる一方、VCOからの信号112の方が先行している場合には、ダウン出力125のみが到達時間差分情報を含んでおりアップ出力123は遅れている基準信号110のタイミング情報のみを含んでいる。どの信号が先行しているか、およびどの信号が遅延しているかについて曖昧さや準安定の問題を有することなく我々に知らせることだけが、PFD132ができることである。
デジタル到達時間検出器を用いた到達時間同期ループの新規な設計
基準信号110の周波数および位相と等しい周波数および位相を備える安定なVCO出力信号112を生成するための基本的な線形到達時間同期ループシステム100のブロック図が、好ましい実施形態として図10に示されている。この基本的な線形到達時間同期ループシステム100は、到達時間検出器104、ループフィルタ106、およびVCO108という3つの機能ブロックを含んでいる。到達時間検出器104は、基準信号110の到達時間と、VCOからの信号112の到達時間とを比較する。次いで、到達時間検出器104は、VCO108の周波数を修正するために誤差出力信号114を送出する。誤差出力信号114は、最初にループフィルタ116によってフィルタリングされて、次いで、VCO108への最終誤差修正電圧115となる。もし基準信号110がVCOからの信号112よりも先行しているならば、VCOの周波数を高めるために、正値の誤差出力信号114が送出される。もし基準信号110がVCOからの信号112よりも遅延しているならば、VCO108の周波数を低めるために、負値の誤差出力信号114が送出される。結果として、前記基本的な線形到達時間同期ループ100は、典型的なPLL105のように、基準信号110の周波数および位相と等しい周波数および位相を持つ安定な出力信号112を生成する。
理論的に、前記線形到達時間同期ループ100用の到達時間検出器104を作るためには2つの方法がある。1つの方法は、どちらの入力信号が先に到達するかによって決定された極性を有するとともに、2つの入力信号の間の到達時間差分にしたがって線形的に生成される振幅を有する誤差出力信号114を生成する線形デバイスを使用することである。残念なことに、このような線形デバイスは、まだ発明されていない。他の方法は、複数のデジタルデバイスを使用することである。我々は、どちらの信号が先に到達するかについて知らせるべく到達時間差分の極性出力を生成するためのデジタルデバイスを使用することができ、我々は、2つの入力信号の間の到達時間差分にしたがって線形的に生成される出力信号の幅を持ったデジタル誤差出力信号を生成することができる。そして、我々は、前記デジタル誤差出力信号を積分することができ、その積分の終了時点となる出力電圧が2つの入力信号の間の到達時間差分によって形成されるようになる。一つの結論として、我々は、到達時間差分の極性を決定するための一のデジタルデバイスと、2つの入力信号の間の到達時間差分によって決定されるパルス幅をもつパルスを生成するための他のデジタルデバイスとを必要とする。これら2つのデジタルデバイスと積分器を用いて、我々は、VCOを制御するための2つの入力信号の間の到達時間差分から正確かつ精密に最終線形誤差修正出力電圧115を生成することができる。
今日使用されている全ての位相検出器または位相−周波数検出器は、いくつかの改良によって、上述した2つのデジタルデバイスの機能を満たす能力がある。しかしながら、前に説明した2つの例として、今までのところ、それらの中に、エラーなしでVCOへの最終誤差修正出力電圧115を生成することができるものは一つもない。アナログ位相検出器は、多くの望ましくない複数の安定動作点を異なる複数の到達時間差分において有し、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きの現在のPFD132は、誤ったグリッチを生成する。この結果、望ましくないグリッチを生成することなく、ただ一つの安定動作点を有する真の到達時間検出器104は、まだ発明されていなかったし、現在までのところ、そのような到達時間同期ループ100は開発されていなかった。
図11に示されるように、理想的な到達時間検出器104は、到達時間同期ループ100のループ利得169が正値の定数となるように、VCOを制御するための最終誤差修正出力信号115を生成するべきである。ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132は、もしも不連続なグリッチが除去されるならば、ほとんど理想的な到達時間検出器といえる。ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132の不連続なグリッチの問題は、一般に、「不感帯ジッタ問題(dead zone jittering problem)」として知られている。このダブルエンド型チャージポンプ出力付きの現在のPFD132における「不感帯ジッタ問題」を解決するための解決法を提供するという多くの発明が存在するが、それらの中に、この問題を真に解決できるものは一つもない。多くの解決法は、単純にフリップフロップのリセット信号に更なる遅延を加えるものであり、この結果、グリッチ規模が大きくなって、PFD132が更に大きい位相オフセットを持って動作するようになり、PFD132が到達時間差分の0点から更に離隔されて動作されるようになるのでジッタ問題も目立たなくなるというものである。しかし、これでは、基本的なグリッチ問題は改善されていない。米国特許6157218で提案された解決策は、PFDにおける両方のチャージポンプが同時にオンされるのを防止することにより不感帯ジッタ問題が生じない設計を示している。それは正しい方向における優れた設計であったが、この設計は、フリップフロップをオフすることができる前に長いフィードバック遅延があるため、両方の入力信号が同時に到達する場合にアップ出力123およびダウン出力125が同時にオンされるのを防止することには失敗している。この解決法も、実際には大部分の他の方法と同様であり、不感帯ジッタ問題を効果的に解決したように見える理由は、到達時間差分の0点から離隔してPFD132を動作させるためにフリップフロップに長いリセット遅延を与えるとうい事実による。不感帯ジッタ問題を効果的に取り扱うことができる唯一の独特な設計は、ジッタ問題を避けるために、チャージポンプ出力ドライバのスルー時間(slew time)よりも広い、大きな不感帯を有するPFDの設計を提供するローム社によるものである。BU2374FVのデータシートにあるように、到達時間差分がチャージポンプ出力ドライバのスルー時間(sulew time)よりも小さい場合にチャージポンプが動作を停止するようにするために大きな不感帯が用いられる。この結果、PFDからの出力は、H状態、L状態、およびオフ状態という3つの安定出力状態のみを有することになる。それは、グリッチが発生することを効果的に防ぐことができるけれども、しかしながら、彼等の設計において、PFDは、多くの時間において非アクティブであり、PLLは、精密に位相差分を修正することができなくなり、位相雑音が高くなってしまう。彼等のPFDは、多くの時間において単純に無効とされるだけであり、VCOの周波数は、修正される前に、大きな不確実な窓の中で不確定な状態が許容されている。
グリッチ問題の真の解決策は、ついに、2005年7月28日にウェン.ティー.リン(Wen T. Lin)によって出願されたPCT/US2005/026842「2つの信号間の位相、周波数、および到達時間の差分を検出するシステム、方法、および回路」において明らかとされた。この特許は、図12、図13、図14において示したように、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ付きの正確な到達時間検出器を構成するために説明された多くの方法を開示している。
後述する開示のため到達時間検出器104の違いをはっきりさせるべく、我々は、到達時間検出器104を3つの範疇、すなわちアナログ到達時間検出器、誤りのあるデジタル到達時間検出器、およびデジタル到達時間検出器に分類する。混合器は、アナログ到達時間検出器の範疇に所属し、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132は、誤りのあるデジタル到達時間検出器の範疇に所属する。位相検出器または位相周波数検出器の現在の全ての設計は、到達時間検出器の前記第1または第2のどちらかの種類に属する。正確、エラーのない上記の新型到達時間検出器のすべては、デジタル到達時間検出器116の範疇に属する。
図12、図13および図14に示されるシングルエンド型チャージポンプ出力付きの全ての新型デジタル到達時間検出器の設計においては、5つの回路モジュール、すなわちPFD132、相補(complementary)PFD134、極性決定回路142、イネーブル信号選択回路156、およびシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146を含む。シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、どの時刻においても、電流を排出(ポンプアウト)するか、電流を吸い込み(シンク)をするかのどちらか一方のみを行うことができ、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ1246が正確に設計されるならば、ダブルエンド型チャージポンプ出力付きのPFD132に生じたのと同様のグリッチを生じさせることは決してない。
図12に示される設計においては、一つのORゲート140が極性決定回路142として使用されており、信号の到着前では、当該極性決定回路142の最終極性出力144が初期設定によりハイ(H)となる。VCOからの信号112が早くに到達した場合には、最終極性出力信号144は、ロー(L)となり、基準信号110が最終的に到達したときにハイ(H)に戻ることになる。基準信号110が早くに到達した場合には、最終極性出力信号144は、すべての時刻においてハイ(H)を維持する。したがって、最終極性出力144は、常に正確である。最終極性出力信号144の持続時間は、常に、少なくとも2つの入力信号間の到達時間差分と同じになる。シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146をイネーブルするための最終イネーブル信号147の時間周期は、常に2つの入力信号の間の到達時間差分と等しいので、もし最終極性出力信号144と最終イネーブル信号147のタイミングが正確に合わされるならば、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、常にエラーを含まない出力を生成することになる。したがって、図12の設計は、正確なデジタル到達時間検出器103である。このデジタル到達時間検出器103は、2つの入力信号の間の到達時間差分と全く等しい時間の間、常に、ループフィルタからの電流を排出または吸い込むことができるので、2つの入力信号の間の到達時間差分にしたがって線形的なVCO用の正確な最終誤差修正電圧115を生成することができる。
OR論理ゲート140は、AND論理ゲートに置き換えることもできる。OR論理ゲート140を用いると、VCO F/F 119の初期状態がハイ(H)であるので、最終極性出力144の初期状態はハイ(H)となる。OR論理ゲート140に代えてAND論理ゲート141が使用される場合、最終極性出力144の初期状態はロー(L)に置き換わるが、最終極性出力144の結果は、同様に維持されることになる。
複数のデジタル到達時間検出器116のすべてが、伝統的なPFD132において発生する誤りのあるグリッチを避けるために、複数のPFD132が必要とされている。これは、フリップフロップへのクロック入力が先行している信号である場合に所望の到達時間差分情報を有する有効な信号のみを生成することができるためである。この結果、チャージポンプ出力ドライバは、単純にチャージポンプ出力ドライバとして用いられて、チャージポンプ出力ドライバが到達時間誤差出力の生成に含まれることにならず、グリッチ問題を完全に解決するように、我々は、2つの入力信号のそれぞれのために2つの到達時間差分信号を生成するための2つのPFDを必要とする。2つのPFDからの2つの出力であることを明確にするために、我々は、複数のPFDのうちの一つを相補(complementary)PFD134とする必要がある。
図12の設計において、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、時間間隔が、2つの入力信号の間の到達時間差分と全く同一となるように、イネーブル信号選択回路156である排他的NORゲート370によって、イネーブルされる。両方の入力信号は、同時に到達することができるので、2つの入力信号の間の最小限度の到達時間差分はゼロであり、もし入力信号のうちの一つが欠落する場合には、2つの入力信号の間の最大限度の到達時間差分は、無限大である。デジタル信号がロー(L)からハイ(H)へ上がり、またはハイ(H)からロー(L)へ下がるのには時間が価格ので、論理デバイスの入力におけるデジタル信号は、論理デバイスの入力閾値を超えて、論理デバイスに動作を生じさせるための時間が必要である。入力信号の双方、110および112が同時に到達した場合には、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146への最終イネーブル信号147の時間周期は、ゼロである最小の幅を持つことになり、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、決してターンオンしないこととなる。シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、最終イネーブル信号147がシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の入力閾値を越えて上昇するために必要な時間である不感時間(dead time)よりも、2つの入力信号の間の到達時間の差が長くなるまでは、ターンオンを開始しない。この結果、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、2つの入力信号110および112の到達時間差分が、不感時間552よりも長くなるまでは非アクティブであり、図23に示される不感帯は不可避となる。図23は、不感帯および線形状態を持つダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の出力特性を示すものであり、この図は、不感帯および線形状態を持つシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の出力特性を示すためにも使用することができる。
最終イネーブル信号147の時間周期が不感時間552よりも長くなって、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146がターンオンされ始めるとき、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、出力電流がシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の容量限界に達するまで、すなわち、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146のスルー時間(slew time)550に達するまで、どんどんと電流を排出(ポンプアウト)するか、電流を吸い込み(シンク)することになる。2つの入力信号の入力信号の間の到達時間差分が、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146のスルー時間550と不感時間552との合計よりも短いが、不感時間552よりもは長い場合には、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の出力電流は、最終イネーブル信号146にしたがって線形的に生成されることとなる。最終イネーブル信号147の時間周期が、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146のスルー時間550と不感時間552との合計よりも短いが、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバの不感時間552よりもは長い場合には、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の出力は、線形状態にあると称される。
不感帯にあるデジタル到達時間検出器103は、VCOからの信号112の周波数を修正するための誤差出力を生成することができなくなるため、不感帯は、デジタル到達時間検出器103にとって望ましくない状態といえる。また、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の出力が一定とならないので、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の線形状態も、望ましくない状態といえる。これら不感帯および線形状態を防ぐために、最終イネーブル信号147が常にゼロよりも長い最小限度の時間周期を有するように、最終イネーブル信号147時間周期を長くする必要がある。また、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の不感時間552を超えるとともに、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146のスルー時間550と不感時間552との合計よりも長くつづくようすべく、最終イネーブル信号147が追加時間(extra time)を常に有するようにし、この結果、2つの入力信号の間の到達時間の差分がどんなに小さいかにかかわらず、常にチャージポンプ出力が十分にターンオンされ、長くなった到達時間差分信号が、PFD132の出力に直ちに利用できるようになる。
図7に示されるように、リセット信号の伝搬遅延によって、基準信号110の方が早く到達する場合には、PFD132の基準フリップフロップ122からのアップ出力123は、到達時間差分よりも長い時間周期をもつこととなり、VCOの信号112が先行している場合には、PFD132のVCOフリップフロップ124からのダウン出力125は、到達時間差分よりも長い時間周期をもつこととなる。我々は、基準信号110が先行しているときにはPFD132からのアップ出力123を、VCOからの信号112が先行しているときには他のPFD132からのダウン出力125を、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146用の最終イネーブル信号147として択一的に選択するのならば、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146のおける不感帯および線形状態の双方ともを除去することができる。基準フリップフロップ122からのアップ出力123とVCOフリップフロップからのダウン出力125とにおける信号の時間周期を、シングルエンド型ポンプ出力ドライバ146のスルー時間550と不感時間552との合計よりも一般的に長くするように論理ゲート一段の伝搬遅延の4倍だけ、到達時間差分よりも常に長くするようにして、不感帯および線形状態が互いに除去されることとなる。
図13に示される設計は、不感帯および線形状態を有しないデジタル到達時間検出器133を提供する。このデジタル到達時間検出器133は、2つの入力信号の間の到達時間差分よりも僅かに長い期間の間、ループフィルタからの電流を排出(ポンプアウト)または吸い込み(シンク)することになり、このために到達時間差分がどんなに短いかにかかわらず、いつでも2つの入力信号の間の到達時間差分にしたがって線形的にVCO用の最終誤差修正電圧115を生成する。
また、我々は、最終イネーブル信号1247がアクティブである場合、最終極性出力信号144が、必ず、最終イネーブル信号144と少なくとも同じ幅を持つようにすべく、全期間にわたって同じ極性信号144を維持する必要がある。このようにするために、我々は、最終極性出力信号144が最終イネーブル信号147と同じ期間まで持続するように、最終極性出力に同期すべく、AND論理ゲート136とOR論理ゲート138とを用いる必要がある。
図13において、基準信号110がVCOからの信号112よりも先行している場合、AND論理ゲート136の決定出力は、極性決定回路142の最終極性出力144をハイ(H)とし、VCOからの信号112が基準信号110よりも先行している場合には、OR論理ゲート138の決定出力は、両方のフリップフロップがリセットされるときである到達時間比較時期の終了まで、最終極性出力144をロー(L)とする。この結果、最終極性出力144は、どちらの信号が最初に到達したかを示し、それは、すく数のPFD132のアップ出力123およびダウン出力125ならびに最終イネーブル信号147と長さが同じ程度に持続する。
図12および図13に示される設計の両方とも、デジタル到達時間検出器116のために必要な最小限度の要素のみを含んでいる。これらの設計は、基本的な到達時間検出機能を提供するが、高価である。図13の設計は、大きな極性の決定不定状態である±(論理ゲート一段あたりの伝搬遅延)の窓(ウィンドウ)を有し、図12の設計では、最終イネーブル信号147の伝搬遅延と最終極性出力信号144とが、2つの入力信号の間の到達時間差分と全く同じ幅を持つので、互いに厳密なマッチング(一致)が要求される。これら2つの経路の間のタイミングの不整合は、デジタル到達時間検出器103の利得の線形性を著しく歪めることになる。より小さい決定不定状態とし、極度のマッチングの要求をうけないデジタル到達時間検出器137の最適な設計が図14に示されている。この設計においては、OR論理ゲート140が極性決定モジュール142に加えられているとともに、スイッチが、イネーブル信号選択回路156のために加えられている。図14の設計における決定不定状態は、±1/2(論理ゲート一段あたりの伝搬遅延)にすぎず、最終極性信号144と最終イネーブル信号147の双方は、2つの入力信号の間の到達時間差分よりも、広がった幅を持つので、最終イネーブル信号147と最終極性信号144の間のタイミングのおける一致要求が、さらに緩和されている。
図14に示される設計は、このようにシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた最も好ましいデジタル到達時間検出器116である。この設計において、デジタルと到達時間検出器137の最終極性出力144は、一つのAND論理ゲート136と一つのOR論理ゲート138で作られた極性選択回路142によって決定される。これら2つの論理ゲートからの出力は、OR論理ゲート140によって結合されて、最終極性出力144となる。AND論理ゲート136およびOR論理ゲート138は、2つのゲート間のフィードバック構成を用いて極性決定をなす。
基準信号110が先行している場合には、基準F/F 122の出力としてのアップ出力信号が、極性決定回路142のAND論理ゲート136およびOR論理ゲート138の双方をハイ(H)状態へと切り替えることになる。VCOからの信号112が先行している場合には、VCO F/F119かの出力としてのダウン出力信号が、極性決定回路OR論理ゲート138およびAND論理ゲート136の双方をロー(L)状態へと切り替えることとなる。
AND論理ゲート136の出力からOR論理ゲート138の入力へ至るフィードバック構成は、基準信号110が最初に到達した場合には、最終極性出力144をハイ(H)状態に確定することができる。このフィードバック信号は、遅れて到達したVCOからの信号112を遮断して、OR論理ゲート138、AND論理ゲート136、およびOR論理ゲート140の出力が、先行している基準信号110によってハイ(H)状態に既になった後に、それらの出力が切り替えられることを防止する。
OR論理ゲート138の出力からAND論理ゲート136の入力へと至るフィードバック構成は、VCOの信号112が最初に到達した場合には、最終極性出力144をロー(L)状態に確定することができる。このフィードバック信号は、遅れて到達した基準信号110を遮断して、OR論理ゲート138、140、およびAND論理ゲート136の出力が、先行しているVCOからの信号112によってロー(L)状態に既になった後に、それらの出力が切り替えられることを防止する。前記フィードバック信号がOR論理ゲート138の入力からAND論理ゲート136の入力へと進行するために、論理ゲート一段の伝搬遅延時間に正確に等しい時間がかかるので、2つの入力信号の間の到達時間差分が論理ゲート一段の伝搬遅延時間よりも小さい場合には、フィードバック信号は、遅れて到達した基準信号110を遮断して、ハイ(H)状態にあるAND論理ゲート136の出力が切り替えられるのを防ぐ準備ができない場合がある。このことは、VCOからの信号112が最初に到達し、OR論理ゲート140の出力における最終極性出力144が既にロー(L)状態となって、遅れて到達した基準信号110が、まだ最終極性出力144をハイ(H)状態に切り替えることができる場合に、問題となる。このことは、基準信号110が最初に到達し、最終極性出力144が既にハイ(状態)になっている場合には問題Tならない。なぜならば、たとえ遅れて到達したVCOからの信号112がOR論理ゲート138の出力をロー(L)状態にしても、ORゲートの性質のために、OR論理ゲート140の出力をロー(L)状態とすることができないからである。
この結果、到達時間差分が論理ゲート一段の伝搬遅延時間よりも短い場合に、VCOからの信号112が最終極性出力144をロー(L)状態に切り替えた後であっても、遅れて到達した基準信号110は、いまだに最終極性出力144をハイ(H)状態に切り替えることができることになるが、この誤ったハイ(H)状態は、前記フィードバック構成のおかげで、非常に短時間である。論理ゲート一段の伝搬遅延時間の後に、AND論理ゲート136の出力が最終的にロー(L)状態となるとすぐに、OR論理ゲート140の出力もその直後に正しいロー(L)状態に切り替わることになる。誤ったハイ(H)状態は、AND論理ゲート136からフィードバック構成を通過して、OR論理ゲート138を再び誤ったハイ(H)状態へと切り替えることができるので、最終極性出力144は、極性信号の全体の帰還にわたってハイ(H)状態とロー(L)状態との間で交互に変わることになる。
基準信号110が先行している場合、最終極性出力144は、ハイ(H)となるが、VCOからの信号112が先行しているときには、VCOからの信号112が基準信号110よりも少なくとも論理ゲート162一段の伝搬遅延時間だけ先行している場合にのみ確実に、最終極性出力144がロー(L)となる。極性選択回路の決定は、基準信号110の方を支持する。この結果、判定閾値161は、到達時間差分のゼロ点に固定されるわけではなく、むしろ、すべての伝搬経路が図15に示されるようにとても一致すると仮定すれば、論理ゲート160の一段の伝搬遅延時間の半分の量だけ、負値の側へ僅かに移動する。上述したように、VCOからの信号112の方が先行しているとともに、到達時間差分が論理ゲート162一段の伝搬遅延時間内に収まっている場合には、最終極性出力144は、極性信号の全ての期間の間、ハイ(H)とロー(L)との間で揺動(バウンシング)することができる。この極性決定信号の揺動のデューティサイクル(duty cycle)は、到達時間差分が判定閾値161からどれくらい遠くにあるかによって決定される。たとえば、VCOからの信号が基準信号110よりも論理ゲート162一段の伝搬遅延時間だけ先行している場合には、最終極性出力144は常にロー(L)のまま維持される。VCOが減速し始めて、到達時間差分が判定閾値161に近づいてくる場合には、揺動する極性決定は、初期の段階ではその時間のほとんどロー(L)となり、到達時間差分が判定閾値161に近づいてくる場合に、しばしばハイ(H)となる。到達時間差分が判定閾値161に達した場合には、揺動する極性決定は、50%のデューティサイクルを持つことになる。これは、極性決定回路142が、何をすればよいかわからないということであり、完全に理屈にあっている。VCOからの信号112が減速し続けて、到達時間差分が判定閾値161から離れていき続ける場合には、揺動する極性決定は、到達時間差分が正になって常にハイ(H)であり続けるようになるまで、しばしばハイ(H)に留まることになる。極性決定が揺動するとき、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の出力も揺動することとなる。この結果、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバの吸い込みまたは排出される正味の電流は、判定閾値161の前後であっても正確に到達時間差分にしたがって線形に生成され、極性選択の決定は、曖昧さなしに常に正確で精密となる。このデジタル到達時間検出器137の設計は、このように判定閾値161が到達時間差分のゼロ点に定めらていないことを除いて、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた完璧なデジタル到達時間検出器116である。
デジタル到達時間検出器137の極性決定回路142が基準信号110の方を支持するという理由は、OR論理ゲート140を原因として生じるといえる。もしもOR論理ゲートがAND論理ゲート141に置き換えられる場合には、極性決定回路142の出力は初期設定によってロー(L)のまま維持されて、基準信号110が先に到達した場合にのみハイ(H)に切り替わることになる。極性決定回路142は、その場合、VCOからの信号の方を支持することとなり、判定閾値116は、論理ゲート160一段の伝搬遅延時間の半分の量だけ右側へ僅かに移動することになる。
もしも我々が、図16に示されるようなシンク・チャージポンプ129を動作するためのイネーブル信号として、図14に示されるようなデジタル到達時間検出器137からの最終極性出力144を使用する場合には、我々、第1の補助的な実施形態として、VCOからの信号112用の新型デジタル到達時間検出器139を有することになる。出力ドライバとしてシンク・チャージポンプのみを備える新型デジタル到達時間検出器139は、シングルエンド型チャージポンプドライバ146を制御するために一つのイネーブル信号を必要とする。なぜならば、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の極性は、既に負に固定されているからである。OR論理ゲート140の出力が初期設定によりハイ(H)となるので、VCOからの信号112が、進んだ信号となるまで、シンク・チャージポンプ129はオフのままとなる。シンク・チャージポンプ出力ドライバのみを備えるデジタル到達時間検出器139は、VCOからの信号112の方が基準信号110より先行しているときには、このように正確なデジタル到達時間検出器であり、このシンク・チャージポンプ出力ドライバのみを備えるデジタル到達時間検出器139の伝達特性は、図17のように示すことができる。
同様に、完全なデジタル到達時間検出器137におけるOR論理ゲート140をAND論理ゲート141に置き換えるとともに、図18に示されるようなソース・チャージポンプ127を駆動するイネーブル信号として、このデジタル到達時間検出器137からの最終極性出力144を用いる場合には、我々は、第2の補助的な実施形態として、基準信号110用のシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバを伴う新型デジタル到達時間検出器145を有することになる。出力ドライバとしてソース・チャージポンプ127のみを備える新型デジタル到達時間検出器145は、シングルエンド型チャージポンプドライバ146を制御するために一つのイネーブル信号を必要とする。なぜならば、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146の極性は、既に正に固定されているからである。AND論理ゲート141の出力が初期設定によりロー(L)となるので、基準信号110が、進んだ信号となるまで、ソース・チャージポンプ127はオフのままとなる。ソース・チャージポンプ出力ドライバのみを備えるデジタル到達時間検出器145は、基準信号110の方がVCOからの信号112より先行しているときには、このように正確なデジタル到達時間検出器145であり、このソース・チャージポンプ出力ドライバのみを備えるデジタル到達時間検出器の伝達特性は、図19のように示すことができる。
デジタル到達時間検出器139、145の極性決定は、排他的であるとともに、デジタル到達時間検出器139、145の2つの設計は、多くの共通する部材を共有しているので、我々は、これらを互いに併せることによって、第3の補助的な実施形態として図20に示されるような出力ドライバ172としてダブルエンド型チャージポンプを備える完全なデジタル到達時間検出器を生成することができる。通常のシングルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146は、2つの異なる入力信号、すなわち、最終イネーブル信号147と最終極性信号144とを要求するが、ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149は、2つのイネーブル信号144のみを要求する。ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149は、その均衡(バランス)ゆえに、シングルエンド型チャージポンプ出力ドライバよりも通常よく使用される。
この図17から分かるように、VCOからの信号112が、先行している信号となるまで、シンク・チャージポンプ129は、初期設定状態のままであり、完全にオフである。VCOからの信号112が基準信号110よりも論理ゲート162一段の伝搬遅延時間だけ進むようになるまで、シンク・チャージポンプ129は完全にはオンにならない。シンク・チャージポンプ129が完全にオンになるとともに到達時間差分が論理ゲート162一段の伝搬遅延時間よりも短くなる前には、シンク・チャージポンプ129はオンとオフの間で揺動(バウンシング)することになる。この揺動のデューティサイクルは、到達時間差分ゼロ164における判定閾値161から到達時間差分がどのくらい遠くにあるかに依存する。揺動決定期間の間、到達時間差分が論理ゲート162一段の伝搬遅延時間を超えるまで、到達時間差分が到達時間差分のゼロ点164の判定閾値から離れるように移動するにつれて、シンク・チャージポンプ129は、さらに多くの電流を引き込むことになる。この時点の後で、シンク・チャージポンプ129が完全にオンとなって、出力電流の量が一定のまま維持される。この結果、デジタル到達時間検出器139の誤差出力信号114の極性は常に正確であり、2つの入力信号の間の到達時間差分がゼロに接近するときに、VCOへの最終誤差修正出力電圧115はゼロまで段階的に低減される。
図19からわかるように、基準信号110が、先行している信号になるまで、ソース・チャージポンプ127は初期設定状態を維持して、完全にオフである。VCOからの信号112よりも論理ゲート162一段の伝搬遅延時間だけ基準信号110が進むようになるまで、ソース・チャージポンプ127は完全にはオンとならない。ソース・チャージポンプ127が完全にオンとなり、かつ到達時間差分が論理ゲート162一段の伝搬遅延時間よりも短くなる前においては、ソース・チャージポンプ127はオンとオフの間で揺動することとなる。揺動する決定のデューティサイクルは、到達時間差分が到達時間差分ゼロ点164の判定閾値161からどのくらい遠くにあるかに依存する。揺動決定期間の間、到達時間差分が論理ゲート162一段の伝搬遅延時間を超えるまで、到達時間差分が到達時間差分のゼロ点164の判定閾値161から離れるように移動するにつれて、ソース・チャージポンプ127はさらに多くの電流を排出することになる。この時点の後で、ソース・チャージポンプ127は完全にオンとなって、出力電流の量が一定のまま維持される。この結果、デジタル到達時間検出器145からの誤差出力信号114の極性は常に正確であり、2つの入力信号の間の到達時間差分がゼロに接近するときに、VCOへの最終誤差修正出力電圧115はゼロまで段階的に低減される。
AND論理ゲート141の出力とOR論理ゲート140の出力とは排他的であるので、ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149の2つの出力チャージポンプ127および129は、決して同時にはターンされることはなく、不連続なグリッチは、まったく生じないこととなる。この設計は、このようにダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを有する従来のPFD132の不連続なグリッチ問題を完全に解決する。
ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149を有する完全なデジタル到達時間検出器172の判定閾値161は、図21に示すようにオフセットなく正確に到達時間差分のゼロ点164に設置される。これは、判定閾値161が正確に到達時間差分のゼロ点164にあるように、VCOからの信号112の方が先行している場合にはAND論理ゲート141が完全にオフを維持するとともに、基準信号110の方が先行している場合にはOR論理ゲート140が感染にオフを維持することになることが原因である。揺動する決定は、シンク・チャージポンプ129にループフィルタからの電流を吸い込ませるか否かの原因となり、ソース・チャージポンプ127に電流を排出させるか否かの原因となるだけであり、これによって、決定出力の極性は常に正しく、しかしながら、修正量は、2つの入力信号の間の到達時間差分が±(論理ゲート一段の伝搬遅延時間)162の範囲内にあるときに、変化することができ、全体として到達時間差分がどのくらい判定閾値161から間隔をおいて配置されるかに依存することとなる。
完全なデジタル到達時間検出器172の複数の極性信号(ここでは、ダブルエンド型チャージポンプのための複数のイネーブル信号144)の時間間隔は、論理ゲート一段の伝搬遅延時間の4倍だけ到達時間差分よりも常に長いので、シンク・チャージポンプ129およびソース・チャージポンプ127の双方とも、到達時間差分がどのくらい短いかにかかわらず、常に完全にターンオンすることになる。この結果、チャージポンプ出力ドライバの不感帯および線形状態の両方ともが避けられるとともに、ダブルエンド型チャージポンプ172付きのデジタル到達時間検出器は、決定オフセットを持たない理想的な完全なデジタル到達時間検出器116となる。ダブルエンド型チャージポンプ172を伴うデジタル到達時間検出器におけるVCOへの最終誤差修正出力115の出力伝達特性は、このように図11に示されるような理想的な伝達特性と同じになる。
ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ146を用いた複数のデジタル到達時間検出器すべてのために、4つの回路モジュールだけが必要とされる。これらは、PFD132と、相補PFD134と、極性決定およびイネーブル回路142と、ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149とを含む。極性決定モジュール142は、ここではダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149用のイネーブルモジュールとしても機能している。
図20の設計において、我々は、複数のチャージポンプ出力における不感帯および線形状態を妨げるべく複数のイネーブル信号144を長くするように極性出力信号を同期するためにAND論理ゲート136およびOR論理ゲート138を使用した。もし仮に、不感帯および線形状態が重大でない場合には、我々は、AND論理ゲート136およびOR論理ゲート138を省略して、第4の補助的な実施形態として図22に示されるような不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力を用いたデジタル到達時間検出器135を作ることができる。デジタル到達時間検出器135の伝達特性は、到達時間差分のゼロ点164における判定閾値161の前後で出力される不感帯および線形状態を呈する図23に示される。不感帯および線形状態は、残念なことに、図24に示されるようなVCOへの最終誤差修正電圧115の伝達特性を歪ませることになり、到達時間同期ループの利得は、もはや定数ではなくなり、不感帯に起因して、到達時間差分のゼロ点164の周辺では利得がゼロとなる。デジタル到達時間検出器135を用いている到着時間同期ループ100の利得は、図25のように示すとができる。図25から分かるように、デジタル到達時間検出器を用いている到達時間同期ループ100のループ利得は、不感帯および線形状態に起因する3つの異なるレベルを有する。デジタル到達時間検出器135を用いている到達時間同期ループ100は、利得の損失に起因して、性能が劣るようになり、2つの入力信号を獲得して同期させるのに、より長い時間がかかるようになる。しかしながら、それにもかかわらず、ループが同期されるときにデジタル到達時間検出器135からVCO108へ送られる誤差出力信号114が最小となるので、到達時間差分のゼロ点164の周りの利得の損失は、VCO108の位相雑音を軽減することができる。
ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149が線形状態で作動されることを許容しつつ、不感帯については完全に除去した妥協の設計が、第5の補助的な実施形態として図26に示される。
この設計においては、イネーブル信号144の幅が不感帯を妨げるために十分なほどには長いが、完全にダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバ149をターンオンするために十分なほどには長くないようにするために、図27に示されるようなパルス幅低減部回路153が、それぞれのイネーブル信号144のために用いられている。
このデジタル到達時間検出器159を使用している到達時間同期ループは、2つの入力信号をかなり素早く獲得し同期させることができ、ループが同期状態にあるときにはデジタル到達時間検出器159の利得がより小さくなるので、VCO108は、ループが同期状態にあるときには、デジタル到達時間検出器159によりそれほど支障をきたすことはない。この結果、デジタル到達時間検出器159は、デジタル到達時間検出器135と172の設計の間の妥協した性能を提供する。デジタル到達時間検出器159の伝達特性は図28に示されるとおりであり、到達時間検出器159からVCOへの最終誤差修正電圧115の特性は図29に示されるとおりである。デジタル到達時間検出器159を用いている到達時間同期ループ100のループ利得は、2つの異なる利得レベルをもつ図30に示される。
デジタル到達時間検出器116は、チャージポンプ出力ドライバ146または149がイネーブルされるときにハイ(H)またはロー(L)となる誤差出力信号114を生成することから、それ自体でデジタルデバイスであるが、そのループ内での動作は線形的である。これは、チャージポンプ出力ドライバ146または149が、2つの入力信号の間の到達時間差分に等しい時間の間、または不感帯および線形状態を防ぐためにチャージポンプ出力ドライバ146または149の閾値を超えるようにすべく前記到達時間差分に僅かな付加遅延時間を加えたものに等しい時間の間にだけイネーブルされるからである。2つの入力信号の間の到達時間差分が大きくなればなるほど、チャージポンプ出力ドライバ146または149は、より長い期間にわたって最終誤差修正電圧115を高めるか低める動作をすることになる。この結果、VCOへの最終誤差修正電圧115は、入力での到達時間差分にしたがって線形的に生成されることとなる。この意味において、そのデジタル到達時間検出器116自体がデジタルの場合であっても、デジタル到達時間検出器116の挙動は線形であるといえる。
不感帯ジッタ問題は、ジタル到達時間検出器116によって完全に解決される。なぜならば、到達時間差分のゼロ点において、複数のチャージポンプは、完全にオフにされるか、またはオンとオフの間において50%のデューティサイクルで揺動することになり、到達時間差分のゼロ点における正味の出力電流は常にゼロとなるからである。
対照的に、ダブルエンド型チャージポンプ出力を備える従来のPFD132の複数のチャージポンプの双方は、到達時間差分のゼロ点において常にオンであって、出力において、不連続なジッタを生じさせるらかの誤差電流が常に存在する。
到達時間同期ループにおける獲得挙動
到達時間検出器104は、VCOから生成される局所信号112の位相および周波数を、それらが基準信号110の位相および周波数と同期するに至るまで、修正することができる。同期の過程、すなわち、いわゆる獲得過程(acquisition process)は、非常に複雑な過程である。何らかの待ち遅延時間(latency delay time)および伝搬遅延時間を有しない理想的、理想的な到達時間検出器104を用いる到達時間同期ループ100の獲得挙動が図31に示される。到達時間同期ループ100における獲得過程は、図31に示されるような三次元的なプロットによってのみ記述することができる。なぜならば、実際には、同時に進行する2つの獲得過程、すなわち、一方における信号の周波数の獲得と他方における到達時間の獲得が存在するからである。
基準信号110とVCOからの信号112との間の初期の周波数差分がfo530であり、VCOからの信号112の方がより遅い信号であり、初期の周波数差分は、到達時間検出器104の捕捉範囲内であると仮定すると、VCOからの信号112は、すべての時間において常に遅れることとなるので、VCOからの信号112が基準信号110より最終的に早く到着するに至るまで、到達時間検出器104は常にVCOから信号112の周波数を高めつづけることとなる。したがって、2つの入力信号の間の周波数差分は、前記獲得が開始された後に、だんだんと小さくなっていくことになる。我々は、周波数差分が極性が変える前に2つの信号が同時に到達するようになる最終時点が、獲得過程の基準時間でもあるT532に等しい時刻であると仮定するとともに、T532において時刻が0であると仮定し、T532における周波数差分が、ループの固有周波数を定義するf532であると仮定する。我々は、すぐに、それがなぜループの固有周波数と呼ばれているかについて知ることになる。
2つの信号は、T532で同時に到達するので、T532の後の第1到達時間比較サイクルの間は、修正がされない。そして、周波数差分に起因して、2つの信号は、T532の後の第2到達時間比較サイクルの初期においては異なる時刻に到達するようになる。前記第2比較サイクルの初期においては、2つの信号は、以下の到達時間差分を有している。
Figure 2008541685
ここで、Tは、前記到達時間比較サイクルの期間であり、ωREFは基準寝具尾110の角周波数であり、ωはループの固有角周波数である。信号は2πラジアンのサイクルを移動するので、我々は第1到達時間比較サイクルの終了時における到達時間差分を計算するにあたってはfの代わりにωを使用する必要がある。
VCOからの信号の方が遅い信号であるので、前記到達時間比較サイクルの期間Tは、VCOからの信号の一周期(2π/ωvco)に等しくなる。到達時間検出器104のチャージポンプは、T532後の第2到達時間比較サイクルが開始されてΔT1に等しい期間にわたってターンオンされることになり、VCOの周波数は、ΔT1という継続時間にわたって修正されることになり、第2到達時間比較サイクルの開始においてΔT1である到達時間差分が生じた後に、周波数の修正は以下と等しくなる。
Figure 2008541685
ここで、Ioutはチャージポンプ出力電流の量(A:アンペア)であり、Cはループフィルタの容量(F:ファラッド)であり、KはVCOの感度(Hz/ボルト、すなわち、1/(秒・ボルト))である。この開示において使用されるVCO感度の単位は、従来のPLLの解析に使用されている単位であるラジアン/(秒・ボルト)とは異なる。我々がVCOの感度を測定する場合、我々はVCO調整電圧が1ボルト変化するときのVCO出力信号の周波数変化を測定することからして、Hz/ボルトを使用することによって、VCO感度の意味がより正しく理解されることになる。
Hz(1/秒)およびラジアン/秒は、常にすべての技術者を混乱させてきた。これら2つの単位は、特性について全く異なる。単位Hz(1/秒)は、1秒間に何サイクルが経過したかを示すものであり、それは静的な物理現象を記述するために用いられる。対照的に、rad/秒という単位は、一秒間に何ラジアン進行したかを示すものであり、それは、動作としての物理現象を記述するために用いられる。
したがって、第1周波数修正の後の第2到達時間比較サイクルの初期における周波数差分はf−Δfであり、第2到達時間比較サイクルの完了時における到達時間差分は、以下と等しくなる。
Figure 2008541685
この結果、T532後の第3到達時間比較サイクルの初期におけるVCOの周波数はΔT+ΔTの期間までに修正されることとなる。第3到達時間比較サイクルにおける修正時間は、第2到達時間比較サイクルにおける修正時間のほとんど2倍である。なぜならば、第2到達時間比較サイクルは、周波数差分を小量だけ減少させるものだからである。したがって、第3到達時間比較サイクルの初期における周波数修正は以下のようになる。
Figure 2008541685
したがって、第3到達時間比較サイクルの初期における周波数差分は、直ちにf−Δf−Δfとなる。このように、それぞれの新たな到達時間比較サイクルの初期における周波数差分は、しだいに小さくなるが、それぞれの新たな到達時間比較サイクルにおけるVCOの修正時間は、しだいに長くなることは明らかである。それぞれの新たな到達時間比較サイクルにおける到達時間差分およびVCO周波数修正の計算は、これら比較サイクルの数の増加にしたがって急速に複雑性を増していくことなる。この傾向は続くこととなり、t=T536となる瞬間に周波数差分は最終的にゼロに達し、VCO修正時間は、Tmax560で最大となる。この結果、VCOからの信号112の周波数は、それが既に基準信号と同じ周波数に達して周波数差分がゼロとなった場合であっても、修正され続けることとなる。到達時間の差がゼロではないので、VCOからの信号112の周波数が、いまだに修正されていく。
時間=0のときで、2つの入力信号は同時に到達したが、異なる周波数をもっていた。そして、時間=T536のときに、まさに初めてVCOからの信号112が、所望の同期周波数に達するが、ゼロでない到達時間差分をもっている。T532からT536への間に生じた周波数修正に起因して、時間=T536において到達時間差分はゼロではなくなっている。すなわち、t=T536において、周波数差分は除去されたが、到達時間差分は除去されていない。この結果、到達時間検出器104は、VCOからの信号112が基準信号110の周波数よりも速くなるように、VCOを同じ方向へと促進する。2つの入力信号の間の到達時間差分が、時間=T538において到達時間差分のゼロ点を交差するとき、到達時間検出器104は、VCOを促進する方向を変化させるだけである。
時間=T536での第1周波数同期点を過ぎて、VCOからの信号112の周波数は、より高くなるように押されつづけると、2つの信号間の周波数差分は、より増加することになるが、到達時間差分は、ますます減少していくこととなり、最終的に到達時間差分は、時間=T538においてゼロとなる。獲得過程が収束するようにするためには、この時間=T538のポイントにおいて、周波数差分f540は、初期周波数差分f534よりもは小さくなければならない。実際のところ、時間=T538において、我々は、初期周波数差分f540として新たな獲得サイクルを開始するして、f540が第2獲得サイクル用の新たな固有周波数となるように処理することができる。この全体の同期過程は、繰り返すことができ、毎回、2つの入力信号は再び同時に到達するとともに、その周波数差分は前回の到達時間同期点における周波数差分よりも小さくなることになり、さらに新たな獲得サイクルが開始されて、最終的には、2つの信号は、周波数および到達時間の双方において同期することとなる。もしもf540、すなわちT532後の第1同期サイクルの終了時における2つの信号の間の周波数差分が、T532後の第1同期サイクルの開始時における当該周波数差分よりも大きいならば、周波数差分は収束せず、VCOからの信号112は、基準信号110に決して同期されない。このように、獲得過程は、それぞれが少なくとも各獲得サイクルでの固有周波数の周期の半分の期間だけ続くような多くの小さな獲得サイクルに分割されることが可能であり、各獲得サイクルは、多くの獲得時間比較サイクルからなる。
一般に、到達時間同期ループ100の同期過程は、図31に示されるように、サイクル−スリップ段階542および獲得/同期段階544という2つの段階(フェーズ)に分割されることが可能である。我々は、この2つの段階の解析を始めるまえに、到達時間同期ループ100のスルー能力(slewing capability)およびその重要性について理解する必要がある。前に説明したように、到達時間同期ループ100が制御可能なVCOのスルーレート(slew rate)は、到達時間同期ループ100の利得にVCO感度を乗じたものと等しい。しして、この到達時間同期ループ100の利得Gは、以下のようにチャージポンプ出力電流Ioutおよびループフィルタ106の容量によって決定される。
Figure 2008541685
到達時間同期ループ100のVCOにおけるスルーレート546は、到達時間検出器104の複数の入力における複数の信号に発生する最速のスルーレートよりも早くなければならず、これは我々が到達時間同期ループ100を設計する際に満たす必要がある最も重要な仕様の一つである。複数のチャネルを頻繁かつ急速に切り替える必要がある携帯電話のような幾つかの応用においては、VCOの仕様として、スルーレートを非常に厳守せねばならない。
図11で示す完全なデジタル到達時間検出器137または172からVCOへの最終誤差修正電圧115の理想的な伝達特性は、一サイクル分の2つの入力信号を比較することによって得られた。残念なことに、このような伝達特性は、多くの応用例において起こっているものではない。多くの応用例では、各信号からの到達端部(arrival edges)が常にひっきりなしにやってくることになる。その結果、完全なデジタル到達時間検出器137または172からVCOへの最終誤差修正電圧115は、遅い入力信号の一周期によって限定されるのであり、たとえばVCOからの信号112が、より遅い信号(the slower signal)であると仮定すれば、VCOへの最終誤差修正電圧115の実際の伝達特性は図32に示されるようなものになる。
完全なデジタル到達時間検出器137または172は、作動可能な到達時間差分の範囲について何らの制限を有していないが、完全なデジタル到達時間検出器137または172への2つの入力信号の間の最大限度の到達時間差分は、上記のより遅い信号の一周期によって制限されることになる。このことは、最大限度の到達時間差分が、より速い信号(the faster signal)によって限定されるというアナログ到達時間検出器として混合器を使うものとは全く異なるといえる。したがって、完全なデジタル到達時間検出器137または172は、混合器に比べて、到達時間同期ループ100のための大きな利得を生成することができる。
我々が、図32に示されるような完全なデジタル到達時間検出器137または172からVCOへの最終誤差修正電圧の実際の伝達特性を到達時間差分に関して微分するならば、我々は、図33に示されるように、完全なデジタル到達時間検出器137または172を用いた到達時間同期ループ100の利得がわかる。予想できるように、完全なデジタル到達時間検出器137または172を用いた到達時間同期ループ100は、一定の正値の利得を有する。±1/(FVCO)548の到達時間差分全体を通じて一定の正値の利得を維持するためには、以下の式を満足する必要があることは一目瞭然である。
Figure 2008541685
この不等性方程式は、完全なデジタル到達時間検出器137または172を用いた到達時間同期ループ100における最大限度のループ利得を制限している。この不等式は、より遅い入力信号の一周期が、完全なデジタル到達時間検出器137または172の線形範囲の半分の極限よりも短くなければならないことを要求している。もしも、より遅い入力信号の一周期が、式11に示される極限よりも長いならば、そのときはループの利得は是ととなり、ループは決して基準信号110を獲得して同期することができなくなる。式11が我々に伝えることは、より遅い入力信号の一周期が式11で示す制限より長いときには、完全なデジタル到達時間検出器137または172の出力が飽和して、電源レールに留まることになり、到達時間同期ループは、信号を獲得して同期するための如何なる利得も提供しなくなるということである。したがって、完全なデジタル到達時間検出器137を用いる到達時間同期ループのループ利得は、上端(high end)および下側(low end)の双方で制限される。
ループ利得についての同様の制限は、図23および28に示されるような特性をもつ他のデジタル到達時間検出器116を用いた到達時間同期ループ100においても生じる。図31に示されるように、初期のVCO周波数が基準信号110の周波数よりもかなり低い場合であって、VCOからの信号112の周波数が到達時間検出器104によって引き上げられて、VCOからの信号112の周波数が基準信号110の周波数へ向かってΔf/Δtの割合(レート)で増加する場合を仮定する。2つの信号の周波数が非常に異なる場合には、獲得過程の初期において、獲得過程はサイクル−スリップ段階にある。サイクルスリップ段階542の間には、多くのビート信号が生じる。信号が周波数の異なる他の信号を通じて摺動(sliding)しているときにビート信号が生成され、2つの信号が互いに位相において交わる瞬間に、ビート信号が生成される。この2つの信号は、それらが位相において交わる瞬間では到達時間において実際に同期しているが、この2つの信号は急速に同期から外れる。VCOからの信号112の周波数が、基準信号110の周波数よりも非常に遅い場合には、基準信号110は、VCOからの信号112よりも早く到達時間検出器104に到達することになり、到達時間検出器104は、大抵は、ハイ(H)出力を送出してVCOからの信号112の周波数を高める。VCO108へ送られる誤差出力のパルス幅は、VCOからの信号112のVCOからの信号の周期の最大値からゼロまで変化し、誤差出力114のパルスは、ビート信号が発生する短時間に、実際に極性を変化することができる。サイクル−スリップ段階543の間でのビート信号によって生じる到達時間修正におけるピーク部570および谷部572の振幅は、一定ではない。到達時間修正におけるピーク部570の振幅は、より遅い信号の周期によって決定され、この周期は、サイクルスリップ段階542の間に常に短くなっていく。到達時間修正における谷部572の多くはゼロの近くであるが、それらも時々、瞬間に負側へと変動(スリップ)することができる。
このサイクルスリップ現象は、2つの周波数がその周波数を近接するようになるまでは、通常明確に観察されず、そのビート信号の周波数は低い。サイクル−スリップ段階の間ではいつでも大抵は全て正値の出力修正が送出されていることから、複数のサイクルスリップの間の各修正期間においては正味の周波数修正が通常されるので、サイクルスリップは、信号を獲得するための能力には影響を及ぼさない。サイクルスリップの間に2つの信号が一時的に同期する場合に瞬間的い生じる到達時間差分の極性の反転は、獲得過程を遅くするが、あまりに長く続かないので、その影響は、通常、僅かである。
サイクル−スリップ段階は、周波数差分が大きい場合に、同期過程の初期においてのみ発生する。サイクル−スリップは、周波数差分が極性を変えるときまで起こり続けることになる。一旦、周波数差分が、時間=T536で極性を変えると、同期プロセスは、獲得/同期段階544に入る。この段階では、サイクル-スリップは再び起こってはならず、周波数差分および到達時間差分の双方のそれぞれの極性が、常に、正と負との間で揺動(bounce)することとなり、ループが最終的に同期する際に、最終的に周波数差分および到達時間差分の双方がゼロへと低減されることとなる。
通常、獲得/同期段階544は、到達時間のサイクル−スリップ段階542よりも長く続き、獲得/同期段階544の間の到達時間同期ループ100の挙動は、どれだけ急速にループが複数の信号を獲得として同期することができるかについて決定する。
到達時間同期ループ100が無事にかつ素早く基準信号110を獲得してVCOを基準信号110に同期することができるか否かは、3つの要因、すなわち、ループの待ち遅延時間、ループの伝搬遅延時間、およびVCOのスルーレートによって決定される。ループの待ち遅延時間は、到達時間検出器104がどれくらい速く入力の変更状況に応答するかについて指し示す。ループの伝搬遅延時間は、ループが、到達時間検出器104からの誤差出力信号114の応答を到達時間検出器104の入力へどのくらい速く送出するかについて指し示す。到着時間同期ループ100がうまく基準信号110を獲得して同期するためには、VCO 108は、到達時間検出器104の複数の入力における複数の信号の周波数の動きを追跡するのに十分な速さのレートで動作可能でなければならない。上述したように、VCOのスルーレート546は、ループ利得にVCOの感度を乗じて決定されるものであり、ループ利得は、チャージポンプの電流出力をループフィルタの容量で除して決定されるものである。ループフィルタ108の容量は、それが到達時間比較におけ望まれていない雑音がVCOに到達することを防ぐのに十分に大きいのみならず、到達時間検出器104からの変更決定に応答するのに十分に小さいというように選択されねばならない。到達時間同期ループ100のための設計工程の目標は、簡単にいえば、ループフィルタ106用の容量の適切な値を見つけ出すことである。
待ち遅延時間と伝搬遅延時間の双方は、デバイスが入力を受けた後に出力を生成するのにかかる遅延時間である。待ち遅延時間と伝搬遅延時間の違いは、多くは用語上のものであって、完全にデバイス自体の特質に起因する。一般に、デバイスが、信号の特徴を変更することなく、単に入力信号を出力へと通過させる場合には、このデバイスによって生じた遅延時間は、伝搬遅延時間と呼ばれる。そうでなければ、それは待ち遅延時間と呼ばれる。たとえば、電線、フィルタ、単純な論理ゲートまたは増幅器の遅延時間は、伝搬遅延時間と呼ばれている。周波数分割器(分周器)の遅延時間は、出力信号の周波数が入力信号の周波数とは異なるので、待ち遅延時間(latency delay time)と呼ばれている。同様に、周波数混合器、A/Dコンバータ、または到達時間検出器の遅延時間も、すべて待ち遅延時間と呼ばれている。
待ち遅延時間および伝搬遅延時間によって、到達時間検出器104は、修正が到達時間検出器104からVCO108へ送出された少し経ってから、最後の修正からの応答を受けることになる。この結果、到達時間検出器の入力におけるVCOからの電流フィードバック情報が古くなり、これが古くなっているのに、到達時間検出器104が間違った決定をしてVCOを間違った方向へ促進する。待ち遅延時間と伝搬遅延時間によって、VCOの周波数が間違った方向へといくことを認めることになるので、これら2つの時間は可能な限り短くせねばならない。待ち遅延時間と伝搬遅延時間は、到達時間同期ループ100の利得の極性の変化を引き起して、到達時間同期ループ100が信号の獲得および同期することに失敗し、あるいは到達時間同期ループ100が単純に発振し得る。待ち遅延時間と伝搬遅延時間の合計は、手短に言えばループ遅延時間と称することができる。
到達時間同期ループ100の待ち遅延時間は、到達時間検出器104の待ち遅延時間と、より遅い到達時間比較信号の周期との合計に等しい。デジタル到達時間検出器116は、最初の信号が到達するときはいつでも、直ちに修正を送出することができるので、通常、デジタル到達時間検出器116の待ち遅延時間は非常に短い。通常、デジタル到達時間検出器116の待ち遅延時間は、フリップフロップと3つの論理ゲートの伝搬遅延時間の合計に等しい。アナログ到達時間検出器の待ち遅延時間は、さらに一層、短い。より遅い到達時間比較信号の周期は、どのくらいの時間で新たな信号が到達時間検出器104の入力に到達することができるかを決定する。したがって、通常、より遅い到達時間比較信号の周期は、特に、図34のように周波数分割器(分周器)107がループのフィードバック経路に使用されている場合には、到達時間同期ループ100の待ち遅延時間の主要な寄与要素となる。N周波数分割器(N分周器)107は、到達時間同期ループ111が、基準信号11の周波数のN倍に等しい周波数Foutを有するVCO出力信号を生成することを許容する。しかしながら、N周波数分割器107は、少なくともN周期分のVCOがN周波数分割器107を通過するまでは、VCOからの更新された到達時間情報を搬送しないので、N周波数分周器107は、VCO信号の周期のN倍に相当する待ち遅延時間と、周波数分周器107のもつ複数のフリップフロップによって生じる追加の伝搬遅延時間とを、ループ遅延時間に加えることとなる。
到達時間同期ループ100の伝搬遅延時間は、主にループフィルタ106の応答時間により決定される。ループフィルタ106は、誤差出力信号114用の積分機能についても提供しているので、ループフィルタ106の応答時間は、誤差出力信号114の持続時間(duration)に等しいといえる。したがって、ループの最大伝搬遅延時間も、より遅い到達時間比較信号の周期に等しくなる。この結果、ループの待ち遅延時間と伝搬遅延時間は、より遅い到達時間比較信号の周期により決定されるといえる。ループの伝搬遅延時間は、ループが同期された時点とループが同期されていない時点との差となる。ループが同期された場合、誤差出力信号114の継続期間は大部分はゼロに近いので、
ループの伝搬遅延時間は、非常に短い。ループが同期状態になり場合には、誤差出力信号114の継続時間は、より遅い到達時間比較信号の周期と同じ長さとなり得る。したがって、全体のループ遅延時間は、より遅い到達時間比較入力信号の周期と、より遅い到達時間比較入力信号の周期の2倍との間で変化し得る。
C182のキャパシタンスを持つループフィルタ106では、ループフィルタ106の時定数は、C*Vcc/(2*IOUT)に等しく、このVccは到達時間検出器140のチャージポンプ出力ドライバへの電源電圧であり、IOUTは、チャージポンプの電流出力である。ループフィルタ106の時定数は、ループフィルタを誤差出力信号114の積分器とするために複数の到達時間比較信号の周期よりも大きくすべきであり、さらに、ループフィルタ106の大きな時定数は到達時間検出器104からの望ましくないデジタル雑音を除去してデジタル雑音がVCO108への位相雑音となることを防止するkとにもなる。しかしながら、不幸なことに、ループフィルタ106の大きな時定数は、ループフィルタ106の応答時間を増加させて、ループ利得を減少させる。
ループの時定数へ影響を及ぼすことなくループフィルタ106の応答時間を高速化、すなわち低減する簡易な方法は、RC分路をループキャパシタ(ループコンデンサ)にC182に加えて、このRC分路の時定数をループフィルタ106の時定数の10倍程度に選定することである。ステップ入力応答に対するループキャパシタC182を有するループフィルタ106の応答時間、および、追加のRC分路を備えたループフィルタ106の応答時間が、図35に示されている。追加されたRC分路は、効果的にループフィルタ106の応答時間を減らすことができることは綺羅かであるが、不幸なことに、RC分路からの応答時間の正確な改良を計算するための式を導きだすことは実際のところ困難である。RC分路およびループフィルタ106を設計する最適な方法は、SPICEのようなシミュレーションプログラムを使用することである。RC分路を設計するためには、C183とC2186の合計が単純なRCループフィルタのキャパシタンスC182に概ね一致するようにすべきであって、ループフィルタ106の同じバンド幅を維持することが重要である。我々は、基本的に単純なRCループフィルタの全体キャパシタC182を2つの不等価なキャパシタに分割するとともに、小さい方のキャパシタに対して直列に抵抗を加える。この方法を行うことによって、ループフィルタ106のバンド幅はかなり同じままを維持するが、RC分路の抵抗R188は、ステップ入力信号の一部を通過させてループフィルタ106の応答を速めることができる。なお、ループフィルタ106のバンド幅があまりに大きく変更されるので、大きなキャパシタに抵抗を付加してはならない。応答時間の改良は分流器RC回路をループキャパシタに加えるだけでは不十分であるが、これはループフィルタ106の応答時間を早めるために最も容易なことである。ループフィルタ106が設計された後に、応答時間の改良が実際にバンド幅を犠牲にしてなされているのではないかについて確認するために、ループフィルタ106の周波数応答を試験することが非常に重要である。
常に、設計エンジニアは、ループフィルタ106のために可能な全ての設計について調査するとともに、単にRCローパスフィルタを用いるのに代えて、望ましくないデジタル信号を効果的に除去するのみならず、ループ利得を改良するための速いステップ応答を提供するガウシアン・ローパスフィルタのようなフィルタを選択することに、より多くの時間を費やすべきである。単純なRCローパスフィルタは使いやすいが、それはまた、到達時間同期ループ100用の理想的なローパスフィルタから大きく外れることになる。ガウシアン・ローパスフィルタは、単純なRCローパスフィルタと同じバンド幅を提供するものであっても、より小さいループキャパシタを使用して、ガウシアン・ローパスフィルタがより大ききループ利得を提供できるようにすることができる。
ダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを有するPFD132を用いた従来のPLLでは、チャージポンプ出力ドライバからループフィルタ106への出力は、常に一定で、固定されたパルス列である。これは、不感帯ジッタ問題を避けるために、PFD132への2つの入力信号が決して同時に到達しないようにするためである。したがって、短い正パルスと短い負パルスとかなる固定されたパルス列出力は常にPFD132によって生成される。そして、これらのパルスがVCOを変化させてVCOの位相雑音問題を生じさせないようにするために、前記パルスを除去することはループフィルタ106に依存する。パルス列における短い正パルスと短い負パルスは、単純に互いに相殺するので、正パルスと負パルスの時間継続期間の合計は、ループにおける延長の待ち遅延時間となる。
デジタル到達時間検出器116を用いている到達時間同期ループ100にとって、不感帯ジッタ問題がないことから、デジタル到達時間検出器116への2つの入力信号は、常に同時に到達する。この結果、デジタル到達時間検出器116からの出力は、ランダムな位相雑音信号により生成される。デジタル到達時間検出器116からの複数の出力信号のパルス幅は、全体としてシステムにおける位相ノイズに依存するとともに、チャージポンプ出力ドライバ用の最終イネーブル信号147および144に到達時間差分に付け加えられた延長時間に依存する。我々が最終イネーブル信号147および144に加えた延長時間は、不感帯および線形状態を克服するのに過不足のないものでなければならないことは一目瞭然である。チャージポンプ出力ドライバのための過剰なイネーブル時間は、VCOに更に多くの雑音をVCOに生じさせるだけである。固定された一定のパルス列に代わって、デジタル到達時間検出器116からの最小限度のパル幅はゼロであるので、デジタル到達時間検出器116は、VCOに更に少ない位相雑音を生じさせることも一目瞭然である。
ループ遅延時間に起因して、デジタル到達時間検出器の出力からの誤差出力信号114のタイミングとデジタル到達時間検出器の入力におけるVCOからの信号112のタイミングとは、ループ遅延時間と等しいオフセット時間間隔を持って離隔される。このオフセット時間間隔は、ルールが獲得過程でどのように挙動するかを決定するために最も重要な要素である。
サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の周波数も、到達時間同期ループ100の固有周波数と呼ばれる。その理由は、もし到達時間同期ループ100が、獲得/同期段階544の間に、サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号を適切に制動(damp)しない場合、すなわち、もし到達時間同期ループ100が、獲得/同期段階544の間にサイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の修正に失敗したという場合には、サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号は、ループの共振周波数として永遠に続くことになるからである。サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号は、実際に獲得過程全体の開始にあたる。サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号時期の間の到達時間同期ループ100の動作は、獲得/同期段階544における残りの獲得過程の全てにおける到達時間同期ループ100の性能を決定する。
現実の到達時間同期ループ100の獲得過程は、サイクル−スリップ段階542の最後のビート信号時期の間の最終ビート信号の1/4周期未満のいくらかのループ遅延時間を伴っており、図36に示さる。この図において、到達時間検出器の入力におけるVCOからの信号112は、ループ遅延時間に起因して到達時間検出器104の出力よりも遅れて、時間(T−T)において起こると仮定している。この結果、最終ビート信号時期の間のVCOへの正味の周波数修正は、図31に示されるようにループ遅延なき理想的な到達時間同期ループ100において生じる修正よりも少なくなる。ループ遅延時間がない場合には、T532で始まりT538で終わる最終ビート信号時期の間のVCのための全ての到達時間修正は、全て正値であり、T538における周波数差分f540が初期の周波数差分f534よりも小さくなる。ループ遅延時間の存在を伴う場合、到達時間検出器104がT532の時点とT538の時点との間、負値の到達時間修正を送出するために、VCOへの正味の周波数修正は、T532とT538との間の最終ビート信号時期において少なくなる。もしも、T532の時点とT538の時点との間においてVCOに送られる正味の負値の到達時間修正が、T532の時点とT574の時点との間にVCOに送られる正味の正値の周波数修正よりも少ない場合には、サイクル−スリップ段階の最終ビート信号時期の終期における周波数差分f540がf534よりも小さいままとなり、到達時間同期ループ100は、最終的に複数の信号を獲得おび同期することができるが、その過程は更に多くの時間を必要とする。T538での最終ビート信号の終期における周波数差分は既に負であるから、時点T532と時点T538との間の期間におけるVCOへのいかなる正値の周波数修正は、周波数差分f540を低めるのに役に立ち、ループが「獲得過程を減衰させる」のに役立つこととなる。
ループ遅延時間が増加しすぎて、図37に示されるように、T−Tがサイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の1/4周期よりも長い場合には、T532とT538間のサイクル−スリップ段階の最終ビート信号時期の間でのVCOへの正味の周波数修正は、負である。したがって、最終ビート信号の終期における周波数差分f534は、最初の周波数差分f534よりも大きくなり、周波数差分が収束しないので、ループは決して信号を獲得および同期しない。もし、獲得過程が成功するのであれば、ループ遅延時間はサイクル−スリップ段階542の最終ビート信号または固有周波数f534の1/4周期よりも短くなければならないことは明らかである。
もしもT−Tがサイクル−スリップ段階542n最終ビート信号の1/4周期と正確に一致するまでループ遅延時間が増加された場合、T532とT538間の最終ビート信号時期の間でのVCOへの正味の周波数修正はゼロとなり、最終ビート信号の終期における周波数差分f540は、最終ビート信号f534の初期周波数差分と正確に同じとなり、ループは同じレートで永遠に発振する。
サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の周波数は、以下の式で表現することができる。
Figure 2008541685
サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の振幅および周波数の両方は、到達時間同期ループ100の固有周波数f534に等しくなる。2つの入力信号の間の周波数差分が到達時間同期ループ100によって修正されるように、獲得過程のサイクル−スリップ段階542の間、2つの入力信号の間の周波数差分は段々と少なくなる。サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の周波数は、サイクル−スリップ段階542の間、VCO108の周波数がどのくらい速く修正されるかによって決定される。VCO修正の割合(レート)または速度は、以前にVCOのスルーレート(slew rate)とも呼ばれていたものであり、最終ビート信号の周波数を決定する。到達時間同期ループ100が、獲得/同期段階544の間、適切にサイクル−スリップ段階542の最終ビート信号を弱めない場合には、サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号が永遠に続くことができるので、ω/2π 534が、最終ビート信号の振幅および周波数であるように、サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の周期は、2π/ωに等しい。
基準信号110の周波数は一定であるので、ビート信号の周波数変化は、完全にVCOの周波数変化によって生じる。したがって、我々が、式12を時間に関して微分する場合、我々は、VCOのスルーレートとして以下の式を有することになる。
Figure 2008541685
そして、我々は、到達時間同期ループ100が、VCO用の最大限のスルーレートに対応するのに十分な出力を生成することができ、以下の式を満足すべきことを確認する必要がある。
Figure 2008541685
ここで、Ioutは到達時間検出器104からのチャージポンプ出力電流の量(A:アンペア)であり、Cはループフィルタの容量(F:ファラッド)であり、KVCOはVCOの同調感度(1/(秒・ボルト))である。式14において、我々は、従来のフィードバック制御理論と同じω の式を当該フィードバック制御理論を使うことなく導出した。従来のフィードバック制御理論では、式14の左辺にある2πが右辺へ移ってVCO感度に含まれており、VCO感度はラジアン/(秒・ボルト)で定義されていた。これは完全に間違っている。上記の式14に書かれているように、式14は読まれねばならない。右辺においては、これはループの利得にVCO感度を乗じて得られた乗算値であるVCOスルーレート546である。左辺においては、これはループの固有周波数に固有角周波数を乗じたものであり、どのくらい固有周波数が動くことができるかについて示している。
サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号期間の前半の間におけるVCOの周波数に対する周波数修正は、この期間の間にVCOに対して送出された到達時間修正の総量に等しい。したがって、我々は、VCOに送られた到達時間修正の総量Tcorrectionを以下のように計算することができる。
Figure 2008541685
Figure 2008541685
max560の式は、式6に示されるように到達時間差分がΔT=2*π*ω/(ωREF*ωVCO)であるとき、時間=T532の後の第2の到達時間比較サイクルの開始時におえる到達時間差分から導出することができる。到達時間差分ΔTは、TMAX*SIN(ωREF*2*π/ωVCO)に等しく、ωVCO>>ωであるので、Tmaxは、1/ωREFに近似的に等しい。
ここで、ωREFは基準信号110の角周波数であり、Tはループの伝搬遅延時間であり、Tはループの待ち遅延時間である。サイクル−スリップ段階の最終ビート信号の前半の半周期に生じた到達時間修正の総量は、以下と等しくなる。
Figure 2008541685
ループ遅延時間がゼロであるときにVCOへの最大限度の周波数修正が生じ、(T+T)*ωがπ/2より小さい場合には周波数修正はまだ正(positive)であることは明白であり、VCOを獲得して基準入力信号に同期させることができるためには、ループの固有周波数の周期はループ遅延時間の4倍よりも大きくなければならない。そして、サイクル−スリップ段階542の最終ビート信号の前半の半周期に生じた周波数修正の総量は、TcorrectionにVCOスルーレートを乗じることによって計算され、以下のとおりである。
Figure 2008541685
式18から、我々は、式18を固有周波数に関して微分するとともに、それをゼロとすることによって、ループにとって最適な固有周波数を見出すことができ、それは以下となる。
Figure 2008541685
式19は数値計算によってのみ解くことができ、その解は近似的に以下と等しい。
Figure 2008541685
したがって、最適な固有周波数は、5.835*(T+T)の周期を持つべきであり、固有周波数の周期は少なくともループ遅延時間(T+T)の4倍であるべきである。
フィードバック経路に周波数分割器を備える到達時間同期ループ111を設計する手順は、以下のように要約することができる。
1.VCOの最低限度の動作周波数を決定すること。
2.フィードバック経路の周波数分割器の最大分割数を決定すること。
3.到達時間比較信号の最も遅い周波数が、VCOの最低限度の動作周波数を前記周波数分割器の最大分割数で除した値に等しい。
4.最大のループ遅延時間は、前記最も遅い到達時間比較信号の周波数の2倍に等しい。
5.ループの固有周波数は、最大のループ遅延時間の4倍よりも長い周期を持たねばならない。部品の誤差を考慮するならば、我々はループの固有周波数を最大のループ遅延時間の5倍となるように選択することができる。
6.ループの固有周波数およびVCO感度ならびにチャージポンプ出力電流の能力から、我々は所望のループキャパシタンスを見つけることができる。
7.我々は、ループ利得を改良すべくループフィルタのキャパシタンスの大きさを減らすためにRC分路を加え、あるいはガウシアン・ローパスフィルタを用いることができる。どちらにしても、フィルタのバンド幅は変更しない。
8.我々はループ尾のVCOのスルーレートが入力信号のスルーレートよりも高く、式11に反していないことを確認する必要がある。
フィードバック経路に周波数分割器がなく、かつ到達時間比較信号の周波数が高い場合には、前記最も遅い到達時間比較信号の周波数の2倍に加えて、フリップフロップおよび到達時間検出器の全ての待ち遅延時間と伝搬遅延時間とがステップ4の最大のループ遅延時間内に加えられるべきである。
結論として、到達時間同期ループの設計は、最も遅い到達時間比較信号の周波数の2倍に等しい最大ループ遅延時間を計算することによって開始され、次いで、最大ループ遅延時間の少なくとも4倍に等しいループの固有周波数の周期の計算を引き続きおこない、ループフィルタのキャパシタンスの決定が最後になされる。
フィードバック制御ループ
この開示において提案された到達時間同期ループの解析技術および方法は、一般的なフィードバック制御ループ902へも応用され得る。図38に示されるような典型的なフィードバック制御ループ902は、誤差検出器900、フォワードモジュール908、およびフィードバックモジュール904という3つのモジュールを含んでいる。我々は、典型的なフィードバック制御ループシステム902が、基準入力110とフィードバックモジュール904によって生成されたフィードバック信号906とを要求し、フィードバック制御ループシステムの目的が誤差検出器800の出力において誤差ゼロの出力114を維持することである、ということを教示されている。この結果、フィードバック制御ループ902についての従来の解析においては、基準入力110はフィードバック制御ループシステム902に対する入力であり、誤差検出器900の誤差出力信号114あるいはフォワードモジュール908の出力における最終誤差修正出力115がシステムの出力である。フィードバック制御システムの全ての教科書と全ての理論は、この前提に基づいて発達した。しかしながら、我々がこの開示から学んだように、フィードバック制御ループシステム902に対する入力は、基準入力110とフィードバック信号906との間の誤差信号でなければならず、フォワードモジュール908の出力における最終誤差修正出力115が、我々が研究すべき実際のフィードバック制御ループの出力である。
一旦、我々がフィードバック制御ループの出力における伝達特性を導出すると、我々は入力の微分と出力の微分とを対比して、ループ利得を容易に導出することができる。この方法によってのみ、我々はフィードバック制御ループがどのように動作するかを明確に知ることができる。このようなフィードバック制御ループの入力および出力の定義によってのみ、我々は、出力の微分を入力の部分で除算することによってフィードバック制御ループの利得を計算することができ、この利得の結果に本当に意味がある。そして、フィードバック制御ループの利得は、以下の2つの条件を満たさねばならない。1.我々が、ループの各部材の機能を記述するために正論理だけを使用する場合、フィードバック制御ループの利得は、如何なる状況下でも負ではないようにせねばならない。
2.フィードバック制御ループの利得は、獲得能力を提供するために特定の最低限度より高くなければならない。
同時に2つの独立変数を追跡する二次ループのために、我々がフィードバックモジュール904の伝達関数を持つループの利得を乗ずる場合、その乗算の結果は、ループの固有周波数とループの固有角周波数とを乗じた結果に等しいループのスルー能力(slewing ability)である。ループのスルー能力は、ループがどれくらい機敏であるかを示す。ループのスルー能力はループがどれくらい強力であるかを示す。
単一変数を追跡する一次ループのために、我々がフィードバックモジュール904の伝達関数を持つループの利得を乗ずる場合、その乗算の結果は、フィードバック信号908が密接に基準入力信号110を追従するかについて示すループの追跡能力である。
従来のフィードバック制御ループ理論では、ループの解析において使用される2種類のループ利得である開ループ利得および閉ループ利得がある。これら2つの用語は現実世界では、それほど重要な意味を持たないので、我々は、この開示の中でそれらを使用しなかった。その代わりに、我々は、フォワードモジュール908の最終誤差修正出力をフィードバック制御ループ902の出力として、基準入力110とフィードバック信号906との間の誤差信号をフィードバック制御ループ902の入力として、簡単に定義する。これら2つの定義によって、出力の微分対入力の微分に等しい、ループについて唯一の利得が存在する。我々が、フィードバックの伝達特性を有するループの離党を乗じるとき、上述したように、異なる種類のフィードバック制御ループが解析されるときは、その乗算の結果は異なる意味を持つことになる。
図41は、本発明の差動フィードバックループを示す。この差動フィードバックループにおいて、誤差検出器900は、差動モジュール901と利得モジュール903という2つの部分から構成さえている。差動モジュール901への入力は基準信号110とフィードバック信号906である。差動モジュールの出力は、差動入力信号113であり、これは利得モジュール903への入力信号である。システムの出力は最終誤差修正電圧115である。
基準入力信号110は、実際にはフィードバック制御ループの一部ではなく、一方で、差動入力信号113はそうである。フィードバック制御ループは、誤差検出器900から始まり、フォワードモジュール908を通過するとともに、フィードバックモジュール904を通過して、誤差検出器900に戻って、完全なループをなす。基準信号110は、誤差検出器900への分岐入力にすぎず、それはフィードバック制御ループの一部ではない。
他の実施例
シングルエンド型チャージポンプ出力を有する到達時間検出器の設計のための他の2つの実施例が図39および図40に示される。不感帯と線形状態とを伴う出力ドライバとして、シンク・チャージポンプのみを用いた到達時間検出器のための系統図が図39に示され、不感帯と線形状態とを伴うつソース・チャージポンプ出力ドライバのみを用いた到達時間検出器のための系統図が図40に示される。これら2つの設計は、図22に示されるように、不感帯と線形状態とを伴う平衡ダブルエンド型チャージポンプ出力を用いた到達時間検出器となるために結合されることが可能である。図39および図40に示される到達時間検出器の2つの設計は、シングルエンド型チャージポンプ出力を有する到達時間検出器を作るための最小限の可能な部材を使用している。
産業上の利用可能性
パーソナル・コンピュータ、ノート型パソコン、プリンタ、デジタルカメラ、および携帯電話などの民生用電子部品では、最小限度の周波数ジッタで安定なクロックについて大きな需要がある。これらの製品は、不感帯ジッタ問題がないことが設計により保証された安定信号源を生成することによって本発明から十分な恩恵を受けることができる。
基本的な位相同期ループ(従来技術)の構成要素である。 位相検出器としての混合器である。 前記位相検出器としての混合器からのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。 到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループにおける利得の理論的な伝達特性である。 到達時間検出器として混合器を用いたアナログ到達時間同期ループにおける利得の実際の伝達特性である。 基本的なダブルエンド型チャージポンプ付きデジタル位相周波数検出器(従来技術)である。 前記基本的なダブルエンド型チャージポンプ付き位相周波数検出器のタイミングチャートである。 図6に示されるような位相周波数検出器を到達時間検出器として用いた到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。 図6に示されるような位相周波数検出器を到達時間検出器として用いた到達時間同期ループの利得の伝達特性である。 好ましい実施形態である基本的な線形の到達時間同期ループの構成要素である。 完全な到達時間検出器付きの到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。 不感帯を伴うシングルエンド型チャージポンプ出力を用いた典型的なデジタル到達時間検出器の概略図である。 不感帯および線形状態を伴わない、シングルエンド型チャージポンプ出力を用いた典型的なデジタル到達時間検出器の概略図である。 不感帯および線形状態を伴わない、シングルエンド型チャージポンプ出力付きの前記完全な到達時間検出器の概略図である。 図14に示されるような、不感帯および線形状態を伴わない、シングルエンド型チャージポンプ出力付きの完全な到達時間検出器の伝達特性である。 第1の補助実施形態としての、シンク・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の概略図である。 シンク・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の伝達特性である。 第2の補助実施形態としての、ソース・チャージポンプ出力のみを有するデジタル到達時間検出器の概略図である。 図19は、図18に示される前記ソース・チャージポンプ出力のみを有する到達時間検出器の伝達特性である。 第3の補助実施形態としての、不感帯および線形状態を伴わないダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた完全な到達時間検出器の概略図である。 図20に示されるダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いた完全な到達時間検出器の伝達特性である。 第4の補助実施形態としての、不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の概略図である。 図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の伝達特性である。 図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器からVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。 図22に示される不感帯を有するダブルエンド型チャージポンプ出力ドライバを用いたデジタル到達時間検出器の利得の伝達特性である。 第5の補助実施形態としての、線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器の概略図である。 パルス幅低減器の概略図である。 図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器の伝達特性である。 図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力を用いるデジタル到達時間検出器からVCOへの最終誤差修正電圧の伝達特性である。 図26に示される線形状態を有するが不感帯を有しないダブルエンド型チャージポンプ出力付きのデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループの利得の伝達特性である。 待ち遅延時間および伝搬遅延時間がない理想的な到達時間同期ループの獲得挙動である。 完全なデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループのVCOへの最終誤差修正電圧の実際の伝達特性である。 完全なデジタル到達時間検出器を用いる到達時間同期ループの実際の伝達特性である。 周波数検出器を備える典型的な到達時間同期ループの構成要素である。 ループフィルタの応答時間である。 サイクル−スリップ段階のビート信号の最終時期の間の固有周波数の周期の1/4よりも短いループ遅延時間を備える到達時間同期ループの獲得挙動である。 前記サイクル−スリップ段階のビート信号の最終時期の間の固有周波数の周期の1/4よりも長いループ遅延時間を備える到達時間同期ループの獲得挙動である。 フィードバック制御ループ(従来技術)の構成要素である。 第6の補助実施形態としての、前記出力ドライバとしてシンク・チャージポンプのみを用いる到達時間検出器である。 第7の補助実施形態としての、前記出力ドライバとしてソース・チャージポンプのみを用いる到達時間検出器である。 差動フィードバック制御ループである。

Claims (20)

  1. 少なくとも2つの入力端子と1つの出力端子とを有する到達時間検出器と、
    出力端子と、前記到達時間検出器の出力端子に接続される入力端子とを有するループフィルタと、
    前記ループフィルタの出力端子に接続される入力端子と、前記到達時間検出器の入力端子のうちの一つに接続される出力端子とを有する電圧制御発振器と、を有する到達時間同期ループ
  2. さらに、前記到達時間検出器への基準信号入力と、
    前記到達時間検出器へ入力される前記電圧制御発振器の出力信号と、
    前記到達時間検出器からの誤差出力信号と、を有する、請求項1の到達時間同期ループ。
  3. 前記誤差出力信号は、前記基準信号の到達時間が前記電圧制御発振器の出力信号の到達時間よりも先行している場合に、正値の信号であり、当該正値の信号に応答して、前記電圧制御発振器の出力信号の周波数が高まる、請求項2の到達時間同期ループ。
  4. 前記誤差出力信号は、前記基準信号の到達時間が前記電圧制御発振器の出力信号の到達時間よりも遅延している場合に、負値の信号であり、当該負値の信号に応答して、前記電圧制御発振器の出力信号の周波数が低まる、請求項3の到達時間同期ループ。
  5. 前記正値の信号から生成された電圧制御発振器入力信号の大きさが、前記基準信号の到達時間が前記電圧制御発振器の出力信号の到達時間よりも先行する時間差分に比例する、請求項4の到達時間同期ループ。
  6. 前記負値の信号から生成された電圧制御発振器入力信号の大きさが、前記基準信号の到達時間が前記電圧制御発振器の出力信号の到達時間よりも遅延する時間差分に比例する、請求項5の到達時間同期ループ。
  7. 前記到達時間検出器は、標準の位相−周波数検出器、相補の位相−周波数検出器、極性選択回路、およびチャージポンプを有する、請求項6の到達時間同期ループ。
  8. 前記極性選択回路は、第1のANDゲート、第2のANDゲート、第1のORゲート、および第2のORゲートを有し、
    前記チャージポンプは、ソース・チャージポンプとシンク・チャージポンプとを有するダブルエンド型ポンプである、請求項7の到達時間同期ループ。
  9. 前記標準の位相−周波数検出器の出力端子は前記第1のANDゲートの入力端子に接続されており、
    前記相補の位相−周波数検出器の出力端子は前記第1のORゲートの入力端子に接続されており、
    前記第2のANDゲートの出力端子は前記ソース・チャージポンプのイネーブル端子に接続されており、
    前記第2のORゲートの出力端子は前記シンク・チャージポンプのイネーブル端子に接続されている、請求項8の到達時間同期ループ。
  10. 前記極性選択回路は、ANDゲートおよびORゲートを有し、
    前記チャージポンプは、ソース・チャージポンプとシンク・チャージポンプとを有するダブルエンド型ポンプである、請求項7の到達時間同期ループ。(これは図22)。
  11. 前記標準の位相−周波数検出器の出力端子は前記ANDゲートの入力端子に接続されており、
    前記相補の位相−周波数検出器の出力端子は前記ORゲートの入力端子に接続されており、
    前記ANDゲートの出力端子は前記ソース・チャージポンプのイネーブル端子に接続されており、
    前記ORゲートの出力端子は前記シンク・チャージポンプのイネーブル端子に接続されている、請求項10の到達時間同期ループ。
  12. 前記標準の位相−周波数検出器の出力端子は前記第1のANDゲートの入力端子に接続されており、
    前記相補の位相−周波数検出器の出力端子は前記第1のORゲートの入力端子に接続されており、
    前記第2のANDゲートの出力端子は第1の低減部を介してソース・チャージポンプのイネーブル端子に接続されており、
    前記第2のORゲートの出力端子は第2の低減部を介して前記シンク・チャージポンプのイネーブル端子に接続されている、請求項8の到達時間同期ループ。
  13. さらに、周波数分割器を有し、
    前記電圧制御発振器の出力端子は前記周波数分割器の入力端子に接続されており、
    前記周波数分割器の出力端子は前記到達時間検出器の入力端子に接続されている、請求項1の到達時間同期ループ。
  14. 前記周波数分割器はN周波数分割器である、請求項13の到達時間同期ループ。
  15. 前記極性選択回路は、ORゲートを有し、
    前記チャージポンプは、シンク・チャージポンプを有するシングルエンド型チャージポンプである、請求項7の到達時間同期ループ。
  16. 前記標準の位相−周波数検出器の出力端子は、前記ORゲートの第1入力端子に接続されており、
    前記相補の位相−周波数検出器の出力端子は、前記ORゲートの第2入力端子に接続されており、
    前記ORゲートの出力端子は、前記シンク・チャージポンプのイネーブル端子に接続されている、請求項15の到達時間同期ループ。
  17. 前記極性選択回路は、ANDゲートを有し、
    前記チャージポンプは、ソース・チャージポンプを有するシングルエンド型チャージポンプである、請求項7の到達時間同期ループ。
  18. 前記標準の位相−周波数検出器の出力端子は、前記ANDゲートの第1入力端子に接続されており、
    前記相補の位相−周波数検出器の出力端子は、前記ANDゲートの第2入力端子に接続されており、
    前記ANDゲートの出力端子は、前記ソース・チャージポンプのイネーブル端子に接続されている、請求項17の到達時間同期ループ。
  19. 固有周波数と、ループ遅延時間の総量とを有し、
    前記固有周波数は、サイクル−スリップ段階のビート信号を有し、
    前記ループ遅延時間の総量は、前記到達時間同期ループの待ち遅延時間の合計と、前記到達時間同期ループの伝搬遅延時間とを有し、
    前記固有周波数の一周期は、少なくとも前記ループ遅延時間の総量の4倍である、請求項1の到達時間同期ループ。
  20. 誤差検出器と、フォワード部と、フィードバック部と、を有するフィードバック制御ループであって、
    前記フィードバック制御ループへの入力は、基準信号と前記フィードバック部からの信号との間の差分を有し、
    前記フィードバック制御ループからの出力は、前記フォワード部からの出力を有し、
    前記フィードバック制御ループの利得は、前記入力に関する前記出力の微分を有する、フィードバック制御ループ。
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