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JP2008510732A - 心臓組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和する方法 - Google Patents

心臓組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和する方法 Download PDF

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Abstract

冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するための処置方法には、冠動脈組織の中でのILK活性の上方調節または増大、冠動脈組織の中でのAkt活性の上方調節または増大、冠動脈組織の中での心筋細胞の死の下方調節または減少、ならびに、冠動脈組織の中での心筋細胞の休眠から選択される生理学的機能の少なくとも1つを誘導する工程が含まれる。被験体においてこのような生理学的機能を誘導することができる誘導物質が、そのような処置が必要な被験体に投与される。

Description

発明の背景
関連出願の相互参照
本出願は、2004年8月20日に提出された米国仮特許出願番号60/602,884、および2004年11月5日に提出された米国仮特許出願番号60/625,112の権利を主張する。
1.発明の属する技術分野
本発明は、心臓組織の損傷の処置、予防、阻害、または緩和の分野に関する。
2.背景技術の記載
心疾患は新生児および成人の主な死亡原因である。
冠動脈疾患は、心臓血管の急性閉塞を生じ、これによって従属する心筋の欠損が生じる。このような事象は、西洋諸国での主な死亡原因の1つである。心臓が十分な筋肉の再生ができないことが原因で、心筋梗塞を生き残った人は、通常、慢性の心不全を発症し、これは米国だけでも1000万件以上の症例にのぼっている。一般的に成人のほうが罹患しやすいが、小児の心疾患は、生まれてから1年間の間での非感染性の死亡原因の第1位であり、多くの場合には、心臓細胞の指定、移動、または生存における異常を伴う。
心筋や冠状血管、および組織の損傷には多くの原因があり、これには、心筋虚血、凝血、血管の閉塞、感染、発育障害または発育異常、および他のそのような心筋の事象が含まれるが、これらに限定はされない。心筋梗塞は心臓の血管疾患によって生じる。これは、心臓の一部に対する血液の供給が減少または停止した場合(一例としては、冠動脈の閉塞によって引き起こされる)に生じる。血液の供給の減少は、心筋細胞に対して損傷を引き起こし、さらには心筋細胞を死滅させてしまう場合もある。心臓への血液供給の減少は、多くの場合は、プラークによる心外膜血管の狭窄によって引き起こされる。これらのプラークは破裂して、出血、血栓の形成、フィブリンおよび血小板の蓄積、さらには、血管の収縮を引き起こす場合もある。
最近提出された証拠によって、心臓外のまたは心臓内の幹細胞の集団が正常な環境下で心筋細胞の集団の維持に関係している可能性があることが示唆されている。外因性の幹細胞の導入または補充によって心臓の修復を促進するための試みにはまだ見込みがあるが、通常は、これには自己またはドナーの前駆細胞の単離および導入を伴う。幹細胞の集団は、細胞死と細胞の再生との間でのデリケートな平衡状態を維持することができるが、これは、急性の冠動脈の閉塞後の心筋の修復には不十分である。単離された幹細胞の導入によって心筋機能を改善することができるが、この手法は意見が分かれるものであり、また自己幹細胞の単離、または免疫抑制を伴うドナー幹細胞の使用が必要である。多能性の胚性幹細胞を心筋系統に誘導するための努力はまだ成功していない。したがって、幹細胞の誘導と分化についての技術的なハードルによって、心臓の再生治療の広い臨床応用はこれまで阻まれてきた。
心臓組織の損傷を処置、予防、阻害または緩和するための改良された方法および組成物が、当該分野でなおも必要とされている。
発明の要旨
本発明の1つの態様にしたがうと、冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するための処置方法が提供される。この方法には、上記冠動脈組織の中でのILK活性の上方調節または増大、上記冠動脈組織の中でのAkt活性の上方調節または増大、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PIK)活性の上方調節または増大、上記冠動脈組織の中での心筋細胞の死の下方調節または減少、ならびに、上記冠動脈組織の中での心筋細胞の休眠から選択される生理学的機能の少なくとも1つを誘導する工程が含まれる。この態様には、そのような処置が必要な被験体に対して、上記被験体において少なくとも1つの上記生理学的機能を誘導することができる誘導物質を投与することが含まれる。
発明の詳細な説明
どのような特定の理論にも束縛されることはないが、本発明によって、心臓機能または心臓の発達に関係している調節経路を含む可能性がある1つ以上の生理学的機能を誘導することによって、冠動脈組織の損傷を予防、処置、阻害、または緩和することができることが提供される。
冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するために、本発明にしたがって誘導することができる生理学的機能として、以下が挙げられる:インテグリン結合キナーゼ(ILK)活性の上方調節または増大、プロテインキナーゼB(Akt)活性の上方調節または増大、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PIK)活性の上方調節または増大、心筋細胞の死の下方調節または減少、ならびに、心筋細胞の休眠。1つの実施形態にしたがうと、これらの生理学的機能の少なくとも1つが、処置が必要な被験体の上記生理学的機能の1つ以上を誘導することができる誘導物質を投与することによって誘導される。被験体は哺乳動物であり得、好ましくは、ヒトである。
ILK活性は、本発明にしたがうと、誘導物質の添加によって、10%、25%、50%、または100%よりも多く上方調節または増大させることができる。Akt活性は、本発明にしたがうと、10%、25%、50%、または100%よりも多く上方調節または増大させることができる。心筋細胞の死は、本発明にしたがって誘導物質を利用することによって、10%、25%、50%よりも多く、または100%まで下方調節または減少させることができる。心筋細胞の休眠は、本発明にしたがって誘導物質を利用することによって、10%、25%、50%よりも多く、または100%まで上方調節または増大させることができる。PIK活性は、本発明にしたがって誘導物質を添加することによって、10%、25%、50%、または100%よりも多く上方調節または増大させることができる。
1つの実施形態にしたがうと、誘導物質はサイモシンβ(TβまたはTB)である。サイモシンβは、インビトロで内皮細胞の移動および分化の間に上方調節されるタンパク質として、最初に同定された。サイモシンβは胸腺から最初に単離された、種々の組織の中で同定されている43アミノ酸の4.9kDaのユビキチン様ポリペプチドである。このタンパク質はいくつかの役割を担っており、これには、内皮細胞の分化および移動、T細胞の分化、アクチンの隔離、ならびに脈管形成における役割が含まれる。
別の実施形態にしたがうと、本発明では、冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するためにTβ以外の誘導物質が利用される。このような誘導物質としては、Tβイソ型、類似体、または誘導体を挙げることができ、これには、酸化型Tβ、Tβスルフォキシド、TβのN末端変異体、TβのC末端変異体、およびTβのアン
タゴニストが含まれる。
多くのTβイソ型が同定されており、これらは、Tβについての既知のアミノ酸配列に対して約70%、または約75%、または約80%、あるいはそれ以上の相同性を有している。このようなイソ型としては、例えば、Tβ ala、Tβ、Tβ10、Tβ11、Tβ12、Tβ13、Tβ14、およびTβ15が挙げられる。これらのイソ型は、Tβと同様に、アミノ酸配列LKKTETを共有しており、これらは、心臓組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和することに関与している可能性がある。
引用により本明細書中に組み入れられる国際出願番号PCT/US99/17282には、本発明にしたがって有用であり得るTβのイソ型、さらには、アミノ酸配列LKKTETおよびその保存的変異体が開示されている。これらは、本発明に利用することができる。引用により本明細書中に組み入れられる国際出願番号PCT/GB99/00833(WO99/49883)には、酸化型サイモシンβが開示されており、これは、本発明にしたがって利用することができる。
したがって、既知のTβイソ型のような誘導物質(例えば、上記に列挙されたもの)、さらには、まだ同定されていないTβイソ型が、本発明の方法に有用であるであろうことも具体的に予想される。
加えて、心臓組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和することにおいて有用である可能性がある他の誘導物質分子を、本発明の方法において同様に使用することができる。このような分子としては、例えば、ゲルゾリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、アドセベルチン(adsevertin)、プロポミオシン、フィンチリン(fincilin)、デパクチン、DnaseI、ビリン、フラグミン、セベリン(severin)、キャッピングタンパク質、β−アクチニンおよびアキュメンチン(acumentin)を挙げることができる。このような方法には被験体において実施されるものも含まれるので、本発明はさらに、本明細書中に示されるように、ゲルゾリン、ビタミンD結合タンパク質(DBP)、プロフィリン、コフィリン、デパクチン、DnaseI、ビリン、フラグミン、セベリン、キャッピングタンパク質、β−アクチニンおよびアキュメンチンを含む薬学的組成物を提供する。
したがって、1つの態様にしたがうと、本発明では、アミノ酸配列LKKTETまたはその保存的変異体(これには、アミノ酸配列KLKKTETおよび/またはLKKTETQ(まとめてLKKTETペプチドと呼ばれる場合もある)が含まれる)を含むか、または本質的にこれらから構成されるペプチドまたはペプチド断片のような誘導物質が利用される場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「保存的変異体」またはその文法上のバリエーションは、アミノ酸残基の別の生物学的に類似している残基による置き換えを意味する。保存的変異体の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニンのような疎水性アミノ酸の別のアミノ酸での置き換え、極性残基の別の残基での置き換え(例えば、アルギニンのリジンでの置き換え、グルタミン酸のアスパラギン酸での置き換え、またはグルタミンのアスパラギンでの置き換えなど)が挙げられる。
本発明はまた、1つ以上の他の本明細書中に記載される誘導物質の冠動脈組織の中での生産を刺激する誘導物質の利用にも適用することができる。このような物質は、「誘導開始物質」とも呼ばれる。したがって、1つの実施形態にしたがうと、被験体は、本明細書中に記載される誘導物質の被験体の中での生産を刺激する物質で処置される。したがって、本発明にしたがって利用される誘導物質は、冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、ま
たは緩和するために、少なくとも1つの上記生理学的機能を直接的に誘導する場合も、また間接的に誘導する場合もある。1つの実施形態にしたがうと、冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するために少なくとも1つの上記生理学的機能を間接的に誘導する誘導物質は、冠動脈組織の損傷を予防するために、冠動脈組織内でのTβのようなLKKTETペプチドの生産を刺激する場合がある。
いずれの特定の理論にも束縛されないが、サイモシンβ(Tβ)または他のLKKTETペプチドによって上方調節される場合があるホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PIK)およびインテグリン結合キナーゼ(ILK)およびAktによるシグナル伝達経路は、生存シグナルを媒介することができ、したがって、虚血性傷害後の心臓組織の損傷を予防することにおいて重要な役割を果たす場合がある。Aktがセリン−スレオニンキナーゼであり、これは、アポトーシスを阻害することができる多数の下流の経路に影響を与えることによって、細胞および組織の生存性においての役割を担うことができる。PIKおよびILKキナーゼはまた、種々の膜受容体、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン、および他の細胞性分子での刺激の後にAktを活性化することができる。したがって、本発明にしたがって利用される誘導物質は、Tβ以外のものである場合も、また、別のLKKTETペプチドである場合もある。このような誘導物質の例は、以下から選択することができるが、これらは限定するようには意図されない:膜受容体(増殖因子受容体およびエストロゲン(ER)受容体のHER(またはErb B)ファミリーを含む);インシュリン、またはインシュリンを伴うアルブミンが結合したパルミチン酸塩;フィブロネクチン;グルタチオン;マンニトール;p38−MAPKの阻害因子(例えば、SB−203580);エリスロポエチン;およびRhoファミリーのタンパク質(例えば、Ras、Cdc42、およびRac1)。Aktについてのいくつかの下流の標的としては、特に転写因子BADおよびフォークヘッドなどを挙げることができる。Tβによって誘導されたAktの活性化によっては、一例としては、BADのリン酸化によってアポトーシスを抑制することができ、これは、その後、ミトコンドリアのチトクロームcの放出とカスパーゼ−9の活性化を抑制することができる。Aktはまた、IKKも活性化させ、これは核因子−κB(NF−κB)の分解の阻害因子を介してNF−κBを活性化させることができる。NF−κBはその後、核に入り、抗アポトーシス性遺伝子の転写を誘導することができる。上記分子および他の薬剤および小分子のいくつかはまた、心臓組織の損傷を阻害するように、本明細書中に記載される誘導物質と相乗的に作用することができる。このような化合物の例は、以下から選択することができるが、これらは限定するようには意図されない:アルドースレダクターゼ阻害因子(ARI)、例えば、ゾポレスタットなど;ACE阻害因子−例えば、ラミプリルなど;ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害因子、例えば、CP−470、CP−711;M−アセチルシステイン(NAC);チロシンホスファターゼ阻害因子、例えば、オルトバナジン酸ナトリウム;レチノイド(rexinoides)(RXRアゴニストのインシュリン感受性活性)、すなわち、インシュリン感受性活性を有している核受容体リガンドのクラス、例えば、LG268;サリチル酸塩、およびc−Jun N末端キナーゼ(JNK)の薬理学的阻害因子など;クロザピンおよびオランザピン(特殊な抗精神病薬);ROSの阻害因子;ならびにBAXの阻害因子。
1つの実施形態においては、本発明により、損傷した部位を有効量の本明細書中に記載される誘導物質と接触させることによる、被験体の冠動脈損傷を処置、予防、阻害、または緩和するための方法が提供される。接触は直接である場合も、また全身的である場合もある。損傷部位の接触の例としては、その部位の本明細書中に記載される誘導物質を含む組成物との接触、または本明細書中に記載される誘導物質の浸透を増強するか、あるいは、処置される領域への本明細書中に記載される誘導物質の放出を遅延させるかまたは遅くする少なくとも1つの物質との組み合わせでの接触が挙げられる。
投与としては、例えば、本明細書中に記載されている誘導物質を含む組成物の、心筋組織のような心臓組織への直接の注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、または皮下注射、あるいは、吸入による投与、経皮投与、または経口投与を挙げることができる。
本明細書中に記載される誘導物質は、損傷を処置する、損傷を予防する、損傷を阻害する、または損傷を緩和する量で任意の適切な冠動脈組織に投与され得る。例えば、本明細書中に記載される誘導物質は、約0.001〜1,000,000マイクログラムの範囲、より好ましくは、約0.1〜5,000マイクログラムの範囲の量、最も好ましくは、約1〜30マイクログラムの範囲の投与量で投与することができる。
本発明にしたがった誘導物質は、単回投与として、何日間も、何週間も、または何ヶ月間もなどにわたって1日に1回、または隔日などで、投与日1日について単回投与または複数回投与、例えば、投与日1日について2回、3回、4回、もしくはそれ以上の回数として投与することができる。
Tβは、多数の組織および細胞型に局在化させられており、したがって、Tβ、LKKTETペプチド、および/または本明細書中に記載される別の誘導物質の生産を刺激する物質を、心臓組織および/または心臓細胞の中でTβの生産、LKKTETペプチドの生産、および別の誘導物質の生産を行わせるために組成物に添加することができ、また、組成物に含めることもできる。このような物質としては、増殖因子のファミリーのメンバー、例えば、インシュリン様増殖因子(IGF−1)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、サイモシンα1(Tα1)、および血管内皮増殖因子(VEGF)を挙げることができる。
さらに、心臓組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和することを助ける他の物質が、本明細書中に記載される誘導物質とともに組成物に加えられる場合がある。このような物質としては、血管形成剤、増殖因子、細胞の分化を誘導する物質を挙げることができる。例えば、限定されないが、本明細書中に記載される誘導物質は、有効量の以下の物質の任意の1つ以上と組み合わせて加えることができる:VEGF、KGF、FGF、PDGF、TGFβ、IGF−1、IGF−2、IL−1、プロサイモシンα、およびサイモシンα1。
本発明にはまた、薬学的に許容される担体(例えば、注射用水)の中に治療有効量の本明細書中に記載される誘導物質を含む薬学的組成物も含まれる。
心臓組織の損傷を処置または予防する実際の投与量、処方、または組成は、被験体の大きさ、健康状態を含む多くの要因に依存し得る。しかし、当業者であれば、使用に適切な投与量を決定するために、上記のPCT/US99/17282、およびその中で引用されている参考文献に開示されているような臨床投与量を決定するための方法および技術を記載している教示を使用することができる。
適切な製剤には、本明細書中に記載されている誘導物質が、約0.001〜10重量%の範囲、より好ましくは、約0.01〜0.1重量%の範囲、もっとも好ましくは、約0.05重量%の濃度で含まれる。
本明細書中に記載される治療用手法には、本明細書中に記載されている誘導物質を含む試薬または組成物の投与または送達の種々の経路が含まれる。これには、任意の従来の被験体への投与技術が含まれる。本明細書中に記載される誘導物質、および/または本発明と共に利用される他の化合物を使用するかあるいはそれらを含む方法および組成物は、薬
学的に許容される非毒性の賦形剤または担体との混合によって薬学的組成物に製剤化することができる。
本発明には、本明細書中に記載される誘導物質(例えば、LKKTETペプチド、またはその機能的な断片)と相互作用する抗体の使用が含まれる場合がある。様々なエピトープ特異性を有しているプールされたモノクローナル抗体を含むか、または本質的にプールされたモノクローナルから構成される抗体、さらには、別のモノクローナル抗体調製物が提供される場合もある。モノクローナル抗体は、PCT/US99/17282(前出)に開示されているように、当業者に周知の方法によってタンパク質の断片を含む抗原から作成される。用語抗体は、本明細書中で使用される場合は、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体を含むように意図される。
なお別の実施形態においては、本発明により、本明細書中に記載される誘導物質(例えば、Tβ、Tβイソ型、またはLKKTETペプチド)の遺伝子発現を誘導する、有効量の誘導開始物質を投与することによって被験体を処置する方法が提供される。用語「有効量」は、本明細書中に記載される誘導物質の遺伝子発現を効率よく誘導し、それによって効果的な処置を生じる物質の量を意味する。本明細書中に記載される誘導物質の遺伝子発現を誘導する物質は、ポリヌクレオチドである場合がある。ポリヌクレオチドは、アンチセンス、三重らせん物質(triplex agent)、またはリボザイムであり得る。例えば、Tβ、Tβイソ型、あるいは、LKKTETペプチドの構造遺伝子の領域またはプロモーター領域に対するアンチセンスを利用することができる。
別の実施形態においては、本発明により、本明細書中に記載される誘導物質のペプチド活性を誘導する化合物を利用するための方法が提供される。本明細書中に記載される誘導物質の活性に影響を与える化合物(例えば、アンタゴニストおよびアゴニスト)としては、ペプチド、ペプチド模倣物、ポリペプチド、化合物、亜鉛のような鉱物、および生物学的物質を挙げることができる。
本発明はさらに、上記のように、冠動脈組織の損傷を予防することができる化合物をスクリーニングする方法に関する。この方法には、冠動脈組織を候補化合物と接触させる工程;および上記冠動脈組織の中での少なくとも1つの上記生理学的機能のレベルを測定する工程が含まれる。ここでは、上記候補化合物が存在しない条件での冠動脈組織の中での少なくとも1つの上記生理学的機能のレベルと比較した少なくとも1つの上記生理学的機能の上記レベルの増大が、上記化合物が上記冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和できることを示す。
本発明はまた、上記のように、少なくとも1つの上記生理学的機能を誘導することができる化合物をスクリーニングする方法にも関係する。この方法には、冠動脈組織を候補化合物と接触させる工程;および上記組織の中でのTβ活性を測定する工程が含まれる。ここでは、上記候補化合物を含まない条件下での冠動脈組織の中でのTβ活性のレベルと比較した上記冠動脈組織の中でのTβ活性の増大が、上記化合物が少なくとも1つの上記生理学的機能を誘導できることを示す。
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。以下の実施例は限定とは解釈されない。
合成のTβおよびTβに対する抗体は、RegeneRx Biopharmaceuticals,Inc.(3 Bethesda Metro Center,Suite 700,Bethesda,MD 20814)によって提供され、これらを、
心臓内皮細胞から間葉細胞への転換に対するそれらの効果を決定するためにコラーゲンゲルアッセイにおいて試験した。心臓弁および他の心臓組織の発達が、上皮間充織転換によって形成されること、そして、この工程における障害が、重篤な心血管奇形および発育および生涯を通じての損傷を引き起こすことがあることは十分に立証されている。生理学的濃度では、Tβは、コラーゲンゲルアッセイにおいて、内皮細胞から間葉細胞への転換を顕著に増強させた。さらに、Tβに対する抗体はこの転換を阻害し、そして遮断した。房室心内膜の侵襲性間充組織への転換は、正常な心臓組織の形成および維持、さらには、心臓弁の形成の1つの局面である。
心臓の発達に関係している調節経路は、心臓の修復を助ける心筋細胞の再プログラミングにおいて有用性を有している場合がある。心臓の形態形成の間に発現される遺伝子の研究において、43個のアミノ酸のペプチドであるサイモシンβが発達中の心臓の中で発現されていることが明らかになった。サイモシンβは多数の機能を有しており、G−アクチンモノマーの隔離に関係していることが最もよく知られており、そして続いて、細胞の運動性、器官形成、および他の細胞の生物学的事象に不可欠であるアクチン−細胞骨格の構成に影響を与える。最近行われたドメインの分析は、βサイモシンがアクチンに対するそれらのカルボキシ末端親和性に基づいてアクチンのアセンブリに影響を及ぼすことができることを示している。細胞の運動性に加えて、サイモシンβは、核アクチンによって調節されるRho依存性の遺伝子発現またはクロマチン再モデリング事象に影響を及ぼすことによって、転写事象に影響を与えている可能性がある。
ここでは、サイモシンβが心筋細胞および内皮細胞の移動を刺激することができ、そして心筋細胞の生存性を促進することができることを示す。LIMドメインタンパク質PINCHおよびインテグリン結合キナーゼ(ILK)(これらはいずれも、細胞の移動および生存性に不可欠である)は、生存性キナーゼ(survival kinase)Akt/PKBのリン酸化を生じるサイモシンβと複合体を形成した。Aktのリン酸化の阻害によって、心臓細胞に対するサイモシンβの効果は反転した。冠動脈結紮後のサイモシンβでの成体マウスの処置によっては、心臓の中のAktのリン酸化の増加が生じ、24時間以内の初期の筋細胞の生存性が増強され、そして心臓機能が改善された。これらの結果は、心臓形成の間に発現させられる内因性タンパク質が、急性の冠動脈の事象の場合には心筋を防御するように移動させられ得ることを示している。
結果
サイモシンβの発生過程での発現
発達中の脳内でのサイモシンβの発現は、心臓血管系で発現されていると以前に報告されているが、さらなる詳細は明らかではない。胎生期(E)10.5日目のマウスの胚のインサイチュハイブリダイゼーションにおいては、全量のRNAによって、左心室、右心室の外部湾曲部、および心臓の流出路の中でのサイモシンβの発現が明らかになった。インサイチュハイブリダイゼーションの放射能は、サイモシンβ転写物が心内膜クッションとして知られている心臓弁前駆物質の領域に多く存在していることを示した。この領域の細胞は、間充織転換を受けて、内皮から移動して心筋および内皮に分離する細胞外マトリックスの隆起に侵入する内皮細胞に由来する。心内膜細胞に加えて、心筋細胞のサブセットは移動してクッション領域に多く存在し、そしてこの工程は、心室の中隔作成および再モデリングに不可欠である。免疫組織化学を使用することにより、クッションの中のサイモシンβを発現する細胞はまた、心筋アクチンを発現することが明らかになり、このことは、サイモシンβが、心内膜クッションに侵入する移動性の心筋細胞の中に存在することを示唆している。最後に、サイモシンβ転写物およびタンパク質はまた、心室中隔、および緻密層として知られている心筋のあまり分化していない増殖性の高い領域でもE9.5〜E11.5で発現されており、これは細胞の成熟に伴い小柱領域に移動す
る。心臓の前面部から移動する流出路の心筋もまた、サイモシンβタンパク質を高いレベルで発現していた。
分泌されたサイモシンβは心臓細胞の移動および生存性を刺激する
サイモシンβは、細胞質ゾルおよび核で見られ、細胞内で機能を担っているが、mycタグがついたサイモシンβでトランスフェクトされたCos1細胞の馴化培地には、ウェスタンブロットによって検出できるほどのサイモシンβが含まれており、これは、サイモシンβの分泌、および創傷部の液体の中での存在についての以前の報告と一致している。胎児心移植片に対して細胞外から添加されたファージ粒子の表面上でサイモシンβが発現されると、抗ファージ抗体が細胞表面を覆うことが明らかになった。抗ファージ抗体は、最終的には、細胞質ゾルおよび核において細胞内で検出されたが、対照ファージは検出できなかった。同様の観察を、ビオチニル化したサイモシンβを使用して行った。これらのデータは、分泌されたサイモシンβは細胞内に吸収されることを示しているが、細胞侵入の機構は未だ決定されていない。
心臓細胞の移動に対する分泌されたサイモシンβの効果を試験するために、三次元コラーゲンゲル上での細胞の移動および転換事象をアッセイするために設計された胎児心移植システムを利用した。このアッセイでは、隣接している胎児の心筋細胞および弁を形成する領域に由来する心内膜の移植片を、心内膜をコラーゲンに隣接させて、コラーゲンゲル上に置いた。心筋細胞からのシグナルによって心内膜細胞の移動が誘導されたが、心筋細胞は通常は、有意な数ではコラーゲンゲル上に移動しなかった。対照的に、サイモシンβを初代移植片に添加すると、多数の自発的に激しく拍動する心筋アクチンポジティブ細胞が移植片から移動したことが観察された。TUNELアッセイまたはホスホ−ヒストンH免疫染色にそれぞれ基づく細胞死と増殖速度においては、対照細胞と比較したこれらの細胞において、有意な差は観察されなかった。
出生後の心筋細胞の応答を試験するために、初代ラットの新生児の心筋細胞をラミニンをコーティングしたガラスの上で培養し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)またはサイモシンβで細胞を処理した。胎児の心筋細胞と同様に、サイモシンβで処理した新生児の心筋細胞の移動距離は、対照と比較して有意に増大した(p<0.05)ことが明らかになった。心筋細胞の移動に対するサイモシンβの効果に加えて、胎児心移植片アッセイにおける内皮細胞の移動についても同様の効果が観察された。E11.5移植片のサイモシンβへの暴露によっては、PBSと比較して、移動性内皮細胞の数の増加が生じた(p<0.01)。
新生児の心筋細胞の初代培養物は、通常、およそ1週間から2週間生存し、いくつかの細胞は、本発明者らの研究室においてラミニンでコーティングしたスライド上で増殖させた場合には、2週間まで拍動していた。驚くべきことに、新生児の心筋細胞は、サイモシンβに対して暴露すると有意に長い間生存し、定期的に接触させた心筋細胞は28日まで視認された。加えて、拍動の速度は、サイモシンβで処理した新生児の心筋細胞においては一貫して速かった(1分間に50回の拍動に対して95回、p<0.02)。このことは、細胞−細胞間情報伝達またはより勢いのある心筋細胞のいずれかの変化を示している。
サイモシンβはILKおよびAkt/プロテインキナーゼBを活性化させる
サイモシンβが細胞の移動および生存性の事象に影響を及ぼすことができると考えられる機構を研究するために、サイモシンβと相互作用するタンパク質を検索した。サイモシンβのアミノ末端をaffi−ゲルビーズと融合させ、それによってカルボキシ末端を露出させ、アクチンとの会合を阻害する、これまでは知られていなかった相互作用するタンパク質の同定を可能にした。E9.6〜12.5マウスの心臓のT7ファージcD
NAライブラリーを合成し、ファージ提示法によってスクリーニングし、そしてサイモシンβと相互作用するクローンを富化させ、ELISAによって確認した。LIMドメインタンパク質であるPINCHは、このスクリーニングにおいてはほぼ一貫して単離され、アクチンが存在しない条件下でサイモシンβと相互作用していた(ELISA)。PINCHおよびインテグリン結合キナーゼ(ILK)は互いに直接相互作用し、そして、限局性接着複合体として知られている、細胞−細胞外マトリックス相互作用に関係している大きな複合体の一部として、アクチン細胞骨格と間接的に相互作用する。PINCHおよびILKは、一つにはセリン−スレオニンキナーゼAkt/プロテインキナーゼB(生存および増殖のシグナル伝達経路の中心となるキナーゼである)のリン酸化を促進することによって、細胞の運動性および細胞の生存性に必要である。サイモシンβをコードするプラスミドを、培養細胞の中にPINCHまたはILKと共に、あるいはPINCHもILKも伴わずにトランスフェクトし、そしてサイモシンβがPINCHまたはILKとは無関係に共沈したことを明らかにした。さらに、PINCH、ILK、およびサイモシンβは、一貫して共有複合体として免疫沈降したが、ILKのサイモシンβとの相互作用は、PINCHとの相互作用よりも弱かった。サイモシンβとのPINCHの相互作用はPINCHの第4および第5番目のLIMドメインにマップされたが、ILKのアミノ末端アンキリンドメインがサイモシンβとの相互作用については十分であった。
ILKの限局性接着複合体への動員にはその活性化が重要であるので、ILKの局在化と発現に対するサイモシンβの効果をアッセイした。免疫細胞化学によるILKの検出は、合成のサイモシンβタンパク質(10ng/100μl)またはサイモシンβを発現するプラスミドでの胎児心移植片またはC12心筋細胞の処理の後に、細胞の縁の周辺で顕著に増加した。ウェスタン分析は、C12細胞の中でのILKタンパク質レベルの少量の増大を示しており、これは、免疫蛍光の増加はサイモシンβによる局在化の変更に一部原因があることを示唆している。C12細胞をサイモシンβで処理するとILKは機能的に活性化されたことが明らかになった。これは、Aktのセリン473に対するホスホ−特異的抗体を使用して、その既知の基質であるAktのリン酸化の増大によって明らかになったが、全Aktタンパク質は変化しなかった。細胞外投与したサイモシンβ、およびトランスフェクトしたサイモシンβについての同様の効果はペプチドのインターナライゼーションについてのこれまでの観察と一致しており、サイモシンβについて、シグナル伝達における細胞外での役割よりもむしろ細胞内での役割を示唆していた。サイモシンβはG−アクチンモノマーのプールを隔離するので、ILKの活性化に対する効果は、重合しているF−アクチンとモノマーであるG−アクチンとの間での平衡を調節することにおけるサイモシンβの役割に依存していることを試験した。F−アクチンの重合はCトランスフェラーゼを使用して阻害され、そしてまた、F−アクチンの形成は活性化されたRhoで促進された。しかし、いずれの介入によっても、サイモシンβでのCOS1またはC12細胞の処理後のILKの活性に対する影響は観察されなかった。
ILKの活性化がサイモシンβについて観察される効果に不可欠であるかどうかを決定するために、十分に記載されてきたILK阻害因子であるワートマニン(wartmannin)を使用した。これは、ILKの上流のキナーゼであるホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI−キナーゼ)を阻害する。サイモシンβ活性についてのアッセイとして心筋細胞の移動と拍動の頻度(beating frequency)を使用して、胎児心移植片を、ワートマニンを伴って、またはワートマニンを伴わずに、サイモシンβの存在下で上記のように培養した。ILKが媒介するサイモシンβの効果と一致して、心筋細胞の移動と拍動の頻度の有意な減少が、ILKで阻害した場合には観察された(p<0.05)。まとめると、これらの結果は、細胞内でのサイモシンβ−PINCH−ILKの生理学的に有意な相互作用をサポートしており、そしてこの複合体がアクチンの重合とは比較的無関係にサイモシンβについての観察された効果のいくつかを
媒介している可能性を示唆している。
サイモシンβは心筋梗塞後の細胞の生存性を高め、そして心臓機能を改善する
インビトロで培養した心筋細胞の生存性と移動、およびAktのリン酸化に対するサイモシンβの効果から、サイモシンβが心筋障害後のインビボでの心臓の修復を助けることができるかどうかを試験した。58匹の成体マウスにおいて、冠状動脈の結紮によって心筋梗塞を生じさせ、半分は、結紮の直後に全身的、心臓内、または全身と心臓内へのサイモシンβで処置し、他方の半分はPBSで処置した。心臓内への注射は、コラーゲンを用いて(対照)、またはサイモシンβと混合したコラーゲンを用いて行った。2週間後に生存していた45匹のマウスを全て、心臓収縮の複数回の測定によって、梗塞の2週間後および4週間後にランダムな盲検とした超音波検査法(ultrasonagraphy)によって心機能について調べた。梗塞の4週間後には、対照マウスの左心室は、23.2+/−1.2%(n=22、95%の信頼区間)の平均短縮率を有していた;対照的に、サイモシンβで処置したマウスは、37.2+/−1.8%(n=23.95%の信頼区間;p<0.0001)の平均短縮率を有していた。心室機能の第2の測定としての二次元心エコー検査の測定によっては、サイモシンβで処理したマウスの左心室から駆出された血液の平均的な画分(駆出率)は、冠動脈結紮後の対照マウスでの平均値28.2+/−2.5%(n=22、95%の信頼区間)と比較して、57.7+/−3.2%(n=23、95%の信頼区間、p<0.0001)であった。心臓の短縮率または駆出率における60%または100%を上回る改善は、それぞれ、サイモシンβに対する暴露に伴う有意な改善を示唆していたが、心機能は、擬似操作した動物と比較して低下したままであった(約60の短縮率;約75%の駆出率)。最後に、拡張終期径(EDD)および収縮末期径(ESD)は対照グループよりも顕著に高く、これは、サイモシンβでの処置によって梗塞後に心臓拡張の減少が生じ、これが機能の改善と一致していることを示している。著しくは、サイモシンβを腹腔内注射によって全身的に投与した場合の改善の程度、または心筋梗塞に局所的に投与した場合の改善の程度に有意な差はなかったことであり、これは、サイモシンβの有用な効果が、おそらくは、心臓以外の供給源ではなく心臓細胞に対する直接の効果を通じて生じたことを示唆している。対照の心臓注射を、心臓回復に寄与する注射に対する内因性の反応を生じることはおそらくない同じコラーゲン媒体を用いて行った。
サイモシンβが心機能を改善させた様式を決定するために、サイモシンβで処置したまたはサイモシンβを用いないで処置した心臓の複数の連続する組織切片を試験した。3つのレベルでの切片の三重染色によって、傷跡の大きさが、サイモシンβで処置した全てのマウスにおいて小さくなったが、サイモシンβの全身投与または局所投与との間には差がないことが明らかになり、これは、上記の心エコー検査のデータと一致していた。マウスのサブセットの左心室による6つのレベルの切片を使用した傷跡の容積の定量により、サイモシンβで処置したマウスにおける傷跡の容積の有意な減少が明らかになった(p<0.05)。本発明者らは、PBSまたはサイモシンβで処置した心臓においては、冠動脈結紮の3日後、6日後、11日後、または14日後には、有意な心筋細胞の増殖または死亡は検出できなかった。しかし、結紮の24時間後には、本発明者らはサイモシンβで処置した心筋細胞中でのTUNELアッセイ(緑)によって細胞死の目を見張るほどの減少を見出し、これを、筋−アクチン抗体(赤)での二重標識によって確認した。TUNELポジティブ細胞(これは心筋細胞でもある)は、サイモシンβグループにおいては稀であったが、対照の心臓には豊富に存在していた。この観察と整合して、梗塞の3日後の左心室の短縮率は、対照の28.8+/−2.26%(n=4、95%の信頼区間)と比較して、心臓内サイモシンβでの処置では39.2+/−2.34%(n=4、95%の信頼区間)であった(p<0.02);駆出率はそれぞれ、64.2+/−6.69%、または44.7+/−8.4%(p<0.02)であり、これは、サイモシンβによる早期の防御を示唆している。最後に、処置した心臓と未処置の心臓との
間では、c−kit、Sca−1、またはAbcg2ポジティブ心筋細胞の数においてはどのような差も検出されず、サイモシンβで処置した動物の心筋細胞の細胞容積は成熟した心筋細胞と同様であった。これは、サイモシンβによって誘導される改善が、既知の幹細胞の心臓系統への動員によってはおそらくは影響を受けなかったことを示唆している。したがって、サイモシンβで処置したマウスの傷跡の容積の減少および機能の保存は、おそらくは、心筋細胞の生存性に対するサイモシンβの効果を通じた、梗塞後の心筋細胞の早期の保存が原因であろうと思われた。
サイモシンβは培養細胞中でILK活性とAktのリン酸化を上方調節させるので、これらのキナーゼに対するインビボでの効果を試験した。ウェスタンブロットにより、ILKタンパク質のレベルが、PBSで処置したマウスと比較して、冠動脈結紮後にサイモシンβで処置したマウスの心臓溶解物中で増大していたことが明らかになった。これと一致して、Akt−5473に対するホスホ−特異的抗体は、サイモシンβで処置したマウスにおいてリン酸化されたAkt−5473の量を増大させることが明らかになり、これは、先に記載したILKに対するサイモシンβの効果と一致する。全Aktタンパク質は増加しなかった。これらのインビボでの観察は、インビトロで明らかにされた細胞の移動および生存性に対するサイモシンβの効果と一致しており、そしてILKの活性化、およびそれに続くAktの刺激によって、サイモシンβによって誘導される心筋細胞の生存性の増強を一部説明することができることを示唆しているが、しかし、1つの機構がサイモシンβの細胞効果についての全てのレパートリに関与しているというわけではないようである。
考察
本明細書中に示した証拠は、心臓の形態形成の間の細胞の移動および生存性に関係しているタンパク質であるサイモシンβが、心筋梗塞後の心筋細胞の喪失を最小限にするために移動することができることを示唆している。PINCH、ILK、およびAktの役割から判断すると、このデータは、細胞の運動性、生存性、および心臓の修復に対するサイモシンβの効果においてこの複合体が担っている中心的な役割と一致する。冠動脈結紮後24時間以内の細胞死を防ぐサイモシンβの能力によって、おそらく、マウスにおいて観察された傷跡の容積の減少と、心室機能の改善が導かれる。ILKによるサイモシンβの活性化は、多くの細胞効果を有しているようであるが、Aktの活性化は、サイモシンβが細胞の生存性を促進する優勢な機構であり得る。これは、心臓の傷害後に投与されたマウスの骨髄由来幹細胞の中で過剰発現された場合の心臓の修復に対するAktについての提案されている効果と一致するが、これは、細胞非自律的な様式で起こるようである。
細胞死から心臓を防御することにおけるサイモシンβの初期の効果は、「休眠する」ことによって低酸素症(hypoxic insult)を生き残ることができる心筋細胞を思い起こさせる。心筋細胞の休眠の根底にある機構ははっきりしていないが、代謝およびエネルギー使用の変更によっても、細胞の生存性は促進されるようである。サイモシンβのような誘導物質は、心筋細胞の休眠と類似する様式で細胞特性を変化させる場合があり、これによっておそらく、内皮細胞の移動および新しい血管の形成のための時間が提供される。
ここでは、本発明者らは、G−アクチンを隔離するペプチドであるサイモシンβが、胎児心の中での心筋細胞および内皮細胞の移動を促進し、そして出生後の心筋細胞においてもこの特性を維持することを示した。培養物中での胎児の心筋細胞および出生後の心筋細胞の生存性もまた、サイモシンβによって増強された。サイモシンβがPINCHおよびインテグリン結合キナーゼ(ILK)とともに機能的な複合体を形成し、それによって、心筋細胞に対するサイモシンβの効果に不可欠である生存性キナーゼAkt/P
KBの活性化が生じることが明らかになった。マウスでの冠動脈結紮後のサイモシンβでの処置によっては、心臓においてILKとAkt活性の上方調節が生じ、初期の心筋細胞の生存性が増強され、そして心機能が改善された。これらの知見は、サイモシンβが心筋細胞の移動、生存性、および修復を促進し、そして急性の心筋障害の場合には新規の治療標的であることを示している。
方法
インサイチュハイブリダイゼーションのRNA
E9.5〜12.5のマウスの胎児の全量のRNAまたはRNAの一部のインサイチュハイブリダイゼーションを、近い関係にあるサイモシンβ10の転写物とは相同性を有していないマウスサイモシンβ cDNAの3’UTR領域から合成した、ジゴキシゲニン標識アンチセンスリボプローブまたはS標識アンチセンスリボプローブを用いて行った。
免疫組織化学
胎児の心臓組織または成体の心臓組織をパラフィンに包埋し、切片を免疫組織化学に使用した。胎児の心臓の切片を、サイモシンβ10を認識しない抗サイモシンβとともにインキュベートした。成体の心臓を、心臓の基部から先端に向かって、10の等しいレベルで切片とした。連続する切片を三重染色用の切片に、そして、サルコメアa−アクチニン、c−kit、Sca−1、Abcg2、およびBrdU抗体との反応、ならびにTUNELアッセイ(Intergen Company #S7111)に使用した。
コラーゲンゲル移動アッセイ
流出路を、E11.5の野生型マウスの胎児から細かく切り刻み、そして先に記載したようにコラーゲンマトリックスの上に置いた。10時間の接着後、移植片を、PBS中の30ng/300μlのサイモシンβ、PBSのみ、またはサイモシンβと100nMのワートマニンの中でインキュベートした。培養を、37℃、5%のCOで3〜9日間行い、PBS中の4%のパラホルムアルデヒド中で、RTで10分間固定した。細胞を、移動量と移動距離について、内皮細胞の移動についてはそれぞれの条件下で少なくとも3つの異なる移植片を、そして、心筋細胞の移動については8つの異なる移植片を使用してカウントした。
コラーゲンゲル移植片の免疫細胞化学
パラホルムアルデヒドで固定した移植片を浸透化溶液(Permeablize solution)(10mMのPIPES、pH6.8;50mMのNaCl;0.5%のTriton X−100;300mMのスクロース;3mMのMgCl)でRTで10分間透過処理し、PBSで5分間×2回、RTでリンスした。一連のブロッキングおよびリンス工程の後、検出抗体を使用し、移植片をリンスし、そして平衡化緩衝液(Equilibration buffer)(Anti−Fadeキット)と共に室温で10分間インキュベートした。移植片をガラス製の顕微鏡用スライドにすくって移し、カバーをかけ、そして蛍光顕微鏡で観察した。TUNELアッセイを、ApopTag Plus Fluorescein In Situ Apoptosis検出キット(Intergen Company #S7111)を推奨されるように使用して行った。
胎児のT7ファージディスプレイcDNAライブラリー
等量のmRNAを、E9.5〜12.5のマウスの胎児心から、Straight AのmRNA Isolation System(Novagen,Madison WI)を使用して単離し、そして精製した。cDNAをT7Selectlo−3 OrientExpress cDNA Random Primer Cloning System(Novagen,Madison WI)を使用することによって合成した。
ベクターT7Selectlo−3を、5〜15個のファージ10Bコートタンパク質分子のC末端でランダムプライムしたcDNAをディスプレイさせるために使用した。第2のコートタンパク質10Aの発現が誘導された。EcoRIおよびHindIIIでの消化の後、挿入断片をT7 selectlo−3ベクターに連結した(T7 select System Manual,Novagen)。ベクターをパッケージした。ライブラリーの複雑さは10であった。パッケージしたファージを対数期の0.5LのBLT5615大腸菌(E.coli)株の培養物の中で、37℃で4時間増幅させた。細胞の破片を遠心分離によって除去し、ファージを8%のポリエチレングリコールで沈殿させた。ファージを1MのNaCl/10mMのTris−HCl、pH8.0/1mMのEDTAを用いてペレットから抽出し、CsCl勾配超遠心分離によって精製した。精製したファージをPBSに対して透析し、10%のグリセロールの中で−80℃で保存した。
T7ファージのバイオパンニング
300μlのAffi−Gel 15(Bio−Rad Laboratories)を、製造業者のマニュアルにしたがって、おそらくはアミノ末端のリジン残基を介して12μgの合成のサイモシンβタンパク質(RegeneRx)と結合させた。PBS中の3%のBSAで1時間遮断し、ゲルをカラムに移し、そして10mlのPBSで洗浄した後、2mlの1%のSDS/PBS、および1mlのPBS/500μlのPBST中の0.05%のTween−20(PBST)×4.10pfuのT7ファージ胎児心ライブラリー(100×の複雑さ)をカラムにのせ、そして低いストリンジェンシーのバイオパンニングを行うために5分間インキュベートした。結合していないファージを50mlのPBSで洗浄した。結合したファージを2.0mlの1%SDSの中に溶出させた。10μlの溶出ファージを滴定し、ファージの残りを、速やかに0.5Lの対数期のBLT5615大腸菌培養物の中で溶解するまで増幅させた。細胞の破片を遠心分離によって除去し、溶解物を滴定し、そして10pfuのファージを次の回のバイオパンニングに使用した。4回のバイオパンニングを行い、それぞれ配列分析のために、2回目、3回目、および4回目の後、増幅前に30個のシングルコロニーをピックアップした。10個より多いアミノ酸を含むシングルコロニーを増幅させ、そしてELISAによる確認アッセイに使用した。
ELISAによる確認アッセイ
MaxiSorp Nunc−Immuno Plates(Nalgene Nunc International)を1μg/100μlの合成のサイモシンβペプチドで一晩コーティングし、その後、PBSで洗浄し、3%のBSAで遮断した。10pfuの増幅させたシングルファージコロニーを、個々のウェルに別々にPBSTの中に添加し、RTで1.5時間インキュベートした。T7野生型ファージをネガティブ対照として使用した。結合していないファージをPBSでの洗浄(4回)によって除去し、そして結合したファージを、200μlの1%SDS/PBSをウェルに添加することによって、RTで1時間かけて溶出させた。
共免疫沈降
Cosおよび10T1/2細胞をサイモシンβ、PINCH、および/またはILKでトランスフェクトし、溶解物を、先に記載したそれぞれに対する抗体で沈殿させた。ウェスタンブロットを、抗ILKポリクローナル抗体(Santa Cruz)、抗サイモシンβポリクローナル抗体、およびPINCHのタグ化バージョンに対する抗myc抗体または抗FLAG抗体を使用して行った。
動物と外科手術の手順
心筋梗塞は、先に記載したように、左冠動脈前下降枝の結紮によって、16週齢の58匹の雄C57BL/6Jマウス(25〜30g)の中に形成した。結紮したマウスのうち
の29匹には結紮の直後にサイモシンβでの処置を行い、残りの29匹にはPBSの注射を投与した。処置は、サイモシンβ(10μlのコラーゲン中に200ng)で、または、10μlのコラーゲンで、心臓内で行った;サイモシンβ(300μlのPBS中の150μg)を、または、3000のPBSを腹腔内に投与した;あるいは、心臓内注射と腹腔内注射の両方によって行った。腹腔内投与は、マウスを屠殺するまで3日おきに行った。用量はサイモシンβの生体分布についてのこれまでの研究に基づいた。心臓を取り出し、重さを量り、そして組織の切片化のために固定した。別のマウスは、結紮の0.5日後、1日後、3日後、6日後、および11日後に、実験のために同様のやり方で操作した。
心エコー分析による心機能の分析
心臓収縮機能を評価するための心エコー検査を、先に記載したM−モードの2次元測定を使用して行った。測定は、スキャンのレベルの一貫性のための参照の点として使用した乳頭筋と共に、ランダムな盲検形式で行った少なくとも2回の別々のスキャンによる6つの選択した心臓周期の平均を示した。拡張末期は、最大の左心室(LV)拡張末期径と定義し、そして収縮末期は、後壁の運動のピークと定義した。それぞれのグループの1つの異常値は統計分析から除外した。短縮率(FS)(収縮機能の代わり)を、以下のようにLV径から計算した:FS=EDD−ESD/EDD×100%。駆出率(EF)は、二次元画像から計算した。EDD、拡張終期径;ESD、収縮末期径。
傷跡の容積の計算
傷跡の容積は、先に記載したものと同様のOpenlab 3.03ソフトウェア(Improvision)を使用して、それぞれのマウスの心臓の6つの切片を使用して計算した。コラーゲンが沈着している領域の割合を、盲検形式でそれぞれの切片について測定し、そしてそれぞれのマウスについて平均を計算した。
統計分析
統計学的な計算は、95%の信頼区間を有している変数のスチューデントt検定を使用して行った。
サイモシンβは胎児心の中で心筋細胞および内皮細胞の移動を促進し、そして出生後の心筋細胞においてもこの特性は保たれる。培養物中での胎児の心筋細胞および出生後の心筋細胞の生存性もまた、サイモシンβによって増強させられる。サイモシンβはPINCHおよびインテグリン結合キナーゼ(ILK)とともに機能的な複合体を形成し、これによって、生存性キナーゼAkt(プロテインキナーゼBとしても知られている)の活性化が生じる。マウスでの冠動脈の結紮の後のサイモシンβでの処理によっては、心臓の中でILKおよびAkt活性の上方調節が生じ、初期の心筋細胞の生存性が増強され、そして心機能が改善される。これらの知見は、サイモシンβが、心筋細胞の移動、生存性、および修復を促進し、そして、これが調節する経路が、急性の心筋障害の場合の新しい治療標的であることを示している。

Claims (26)

  1. 冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和するための処置方法であって、前記冠動脈組織の中でのILK活性の上方調節または増大、前記冠動脈組織の中でのAkt活性の上方調節または増大、前記冠動脈組織の中でのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PIK)活性の上方調節または増大、前記冠動脈組織の中での心筋細胞の死の下方調節または減少、ならびに、前記冠動脈組織の中での心筋細胞の休眠から選択される生理学的機能の少なくとも1つを、前記処置が必要な被験体に対して、前記被験体において前記生理学的機能を誘導することができる誘導物質を投与することによって誘導する工程を含む、方法。
  2. 前記誘導物質がサイモシンβ(Tβ)である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記誘導物質がLKKTETペプチドである、請求項1に記載の方法。
  4. 前記誘導物質がTβ以外の物質である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記誘導物質がTβ以外の物質である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ポリペプチドに、アミノ酸配列LKKTET、アミノ酸配列KLKKTET、アミノ酸配列LKKTETQ、およびTβのN末端変異体、TβのC末端変異体、Tβのイソ型、酸化型Tβ、またはTβスルホキシドが含まれている、請求項5に記載の方法。
  7. 前記誘導物質が前記生理学的機能を直接的または間接的に誘導する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記誘導物質が前記生理学的機能を間接的に誘導し、そして前記誘導物質が前記冠動脈組織の中でLKKTETペプチドの生産を刺激する、請求項6に記載の方法。
  9. 前記誘導物質がLKKTETペプチド以外のものである、請求項7に記載の方法。
  10. 前記誘導物質が、膜受容体、HER成長因子受容体、Erb B成長因子受容体、エストロゲン(ER)受容体、インシュリン、インシュリンとの組み合わせにおけるアルブミンが結合したパルミチン酸塩、フィブロネクチン、グルタチオン、マンニトール、p38−MAPKの阻害因子、SB−203580、エリスロポエチン、Rhoファミリーのタンパク質、Ras、Cdc42、またはRac1の少なくとも1つから選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記被験体に、アルドースレダクターゼ阻害因子(ARI)、ゾポレスタット、ACE阻害因子、ラミプリル、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、阻害因子、CP−470、CP−711;M−アセチルシステイン(NAC)、チロシンホスファターゼ阻害因子、例えば、オルトバナジン酸ナトリウム、インシュリン感受性活性を有しているレチノイド核受容体リガンド、サリチル酸塩、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)の薬理学的阻害因子、クロザピン、オランザピン、ROSの阻害因子、またはBAXの阻害因子から選択される少なくとも1つの分子の有効量を前記被験体に投与する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記被験体に、アルドースレダクターゼ阻害因子(ARI)、ゾポレスタット、ACE阻害因子、ラミプリル、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、阻害因子、CP−470、CP
    −711;M−アセチルシステイン(NAC)、チロシンホスファターゼ阻害因子、例えば、オルトバナジン酸ナトリウム、インシュリン感受性活性を有しているレチノイド核受容体リガンド、サリチル酸塩、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)の薬理学的阻害因子、クロザピン、オランザピン、ROSの阻害因子、またはBAXの阻害因子から選択される分子の有効量を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  13. 前記生理学的機能に、前記冠動脈組織の中でのILK活性の上方調節または増大が含まれる、請求項1に記載の方法。
  14. 前記生理学的機能に、前記冠動脈組織の中でのAkt活性の上方調節または増大が含まれる、請求項1に記載の方法。
  15. 前記生理学的機能に、前記冠動脈組織の中でのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PIK)活性の上方調節または増大が含まれる、請求項1に記載の方法。
  16. 前記生理学的機能に、前記冠動脈組織の中での心筋細胞の死の下方調節または減少が含まれる、請求項1に記載の方法。
  17. 前記生理学的機能に、前記冠動脈組織の中での心筋細胞の休眠が含まれる、請求項1に記載の方法。
  18. 前記誘導物質が、約0.001〜1,000,000マイクログラムの範囲の投与量で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  19. 前記誘導物質が、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、吸入、経皮、または経口投与での前記冠動脈組織への直接の注入によって投与される、請求項1に記載の方法。
  20. 前記誘導物質が、約0.1〜5,000マイクログラムの範囲の投与量で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  21. 前記誘導物質が、約1〜30マイクログラムの範囲の投与量で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
  22. 前記誘導物質がTβである、請求項21に記載の方法。
  23. 前記LKKTETペプチドがTβである、請求項8に記載の方法。
  24. 請求項1に記載の方法に従って冠動脈組織の損傷を予防することができる化合物をスクリーニングする方法であって、冠動脈組織を候補化合物と接触させる工程;および前記冠動脈組織の中での前記生理学的機能の少なくとも1つのレベルを測定する工程が含まれ、前記候補化合物が存在しない条件での冠動脈組織の中での少なくとも1つの前記生理学的機能のレベルと比較した少なくとも1つの前記生理学的機能の前記レベルの増大が、前記化合物が前記冠動脈組織の損傷を処置、予防、阻害、または緩和することができることを示す、方法。
  25. 前記化合物がTβ以外のLKKTETペプチドである、請求項24に記載の方法。
  26. 請求項1に記載の方法にしたがって少なくとも1つの前記生理学的機能を誘導することができる化合物をスクリーニングする方法であって、冠動脈組織を候補化合物と接触させる工程;および前記組織の中でのTβ活性を測定する工程を含み、前記候補化合物を含
    まない条件下での冠動脈組織の中でのTβ活性のレベルと比較した前記冠動脈組織の接触の中でのTβ活性の増大が、前記化合物が少なくとも1つの前記生理学的機能を誘導することができることを示す、方法。
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