JP2008273752A - 炭化硼素質焼結体および防護部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】靱性を高くすることができる炭化硼素質焼結体および防護部材を提供する。
【解決手段】炭化硼素を主成分とし、炭化珪素を含む炭化硼素質焼結体であって、前記炭化硼素からなる主結晶粒子1同士の2面間粒界の全数の20%以上に、炭化珪素が存在するもので、靱性が炭化硼素よりも高い炭化珪素が、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全数の20%以上に存在するため、炭化硼素からなる主結晶粒子1にクラックが発生したとしても、周囲の靱性が高い炭化珪素でクラックの進展が抑制され、炭化硼素質焼結体の靱性を大きくすることができる。
【選択図】図1
【解決手段】炭化硼素を主成分とし、炭化珪素を含む炭化硼素質焼結体であって、前記炭化硼素からなる主結晶粒子1同士の2面間粒界の全数の20%以上に、炭化珪素が存在するもので、靱性が炭化硼素よりも高い炭化珪素が、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全数の20%以上に存在するため、炭化硼素からなる主結晶粒子1にクラックが発生したとしても、周囲の靱性が高い炭化珪素でクラックの進展が抑制され、炭化硼素質焼結体の靱性を大きくすることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、炭化硼素質焼結体および防護部材に関し、特に、銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通を防止して人体、車両、船舶、航空機を保護するための防護具に用いられる防護部材に関する。
一般に、炭化硼素質焼結体は、軽量で、高い機械的特性を有する材料として知られている。この高い機械的特性を活用し、炭化硼素質焼結体は、例えば、銃弾や砲弾に対する防護部材として使用されている。最近の国際情勢より、防護部材の需要は増加の一途を辿っており、その防護部材も軽量化の要求とともに、銃弾や砲弾から大きな圧縮応力がかかるため、高硬度、高靱性が要求される。
このように、高硬度を有する炭化硼素質焼結体として、例えば、炭化硼素粉末、炭化珪素粉末とを含有する成形体をホットプレスして焼成した炭化硼素質焼結体が提案されている。
また、従来、炭化硼素粉末、金属硼素、炭化珪素、金属シリコン、炭素源からなる混合物を任意の形状に成形し、不活性雰囲気にて1900〜2250℃の温度で常圧焼成し、相対密度96%以上に緻密化した炭化硼素質焼結体が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの特許公報には、ホットプレスして焼成することも可能であることが記載されている。
特開2000−154062号公報
特開2001−122665号公報
上記常圧焼成して作製された炭化硼素質焼結体は簡単な製法で作製できるものの、相対密度が小さく、靱性が低いものであった。また、従来のホットプレスして作製された炭化硼素質焼結体も、緻密な焼結体が得られ、硬度が大きいものの、未だ靱性が低いものであった。これにより、炭化硼素質焼結体にクラックが進展しやすいという問題があった。
常圧焼成又はホットプレスして作製された従来の炭化硼素質焼結体の靱性が低い理由は明らかではないが、上記両方法では、助剤として炭化珪素、金属シリコンを粉末として炭化硼素に混合するため、十分に分散して混合することができず、またそもそも炭化珪素は炭化硼素に対する濡れ性が小さいため、炭化珪素が炭化硼素粒子の3重点に集合し、炭化硼素粒子の2面間粒界には存在せず、これにより靱性が未だ低いと考えている。
本発明は、靱性を高くすることができる炭化硼素質焼結体および防護部材を提供することを目的とする。
本発明の炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主成分とし、炭化珪素を含む炭化硼素質焼結体であって、前記炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全数の20%以上に前記炭化珪素が存在することを特徴とする。このような炭化硼素質焼結体では、炭化硼素自体靱性が低いものの、炭化硼素よりも靱性が高い炭化珪素が、炭化硼素からなる主結晶粒子の2面間粒界の全数の20%以上に存在するため、炭化硼素からなる主結晶粒子にクラックが発生したとしても、周囲の靱性が高い炭化珪素でクラックの進展が抑制され、炭化硼素質焼結体の靱性を大きくすることができる。
また、本発明の炭化硼素質焼結体は、前記炭化珪素の含有量が4質量%以下であることを特徴とする。このような炭化硼素質焼結体では、炭化珪素の含有量が全量中4質量%以下と少ないため、炭化硼素の軽量化及び高硬度という特性を強く反映させることができる。
本発明の炭化硼素質焼結体は、炭化硼素粉末を含有する成形体をSi雰囲気下で、常圧焼成してなるものである。このような炭化硼素質焼結体では、理由は明確ではないが、本発明者によれば、焼成中にSiが成形体中、さらには炭化硼素粉末の隙間に十分に分散した状態で浸入し、かつ継続してSiが供給された状態で焼成されるため、炭化硼素からなる主結晶粒子の3重点のみならず、主結晶粒子同士の2面間粒界にも、炭化珪素が存在する組織になると考えている。
本発明の防護部材は、上記炭化硼素質焼結体からなることを特徴とする。このような防護部材では靱性が高い炭化硼素質焼結体から形成されているため、大きな圧縮応力に耐えることができ、割れを抑制することができる。
本発明の炭化硼素質焼結体では、炭化硼素よりも靱性が高い炭化珪素が、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全数の20%以上に存在するため、炭化硼素からなる主結晶粒子にクラックが発生したとしても、周囲の靱性が高い炭化珪素でクラックの進展が抑制され、炭化硼素質焼結体の靱性を大きくすることができる。このような炭化硼素質焼結体を防護部材に用いることにより、防護部材の割れを抑制することができる。
以下、本発明に係る炭化硼素質焼結体について説明する。本発明に係る炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主成分とし、炭化珪素を含む炭化硼素質焼結体であって、図1、2に示すように、炭化硼素からなる主結晶粒子1同士の2面間粒界3に、炭化珪素が存在するとともに、主結晶粒子1の3重点7にも炭化珪素が存在している。尚、図1は、500倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図2は、図1の模式図である。
また、炭化硼素質焼結体に炭化珪素が存在するかは、CuKα線を用いたX線回折法で同定でき、含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法を用いたSi成分の定量により測定することができる。
ここで、主結晶粒子1同士の2面間粒界3とは、2つの主結晶粒子1で挟まれた空間であって、その間隔が5μm以下のものをいい、主結晶粒子1の3重点7とは、3つ以上の主結晶粒子1で囲まれた空間をいう。
また、主結晶粒子1の3重点7及び主結晶粒子1同士の2面間粒界3には、炭化珪素が存在している。3重点7及び2面間粒界3に炭化珪素が存在するか否かは、例えば、本発明の炭化硼素質焼結体断面の表面または研磨面を、X線マイクロアナライザーによるSiとカーボンの元素マッピングおよび二次電子像の観察により確認できる。
そして、本発明の炭化硼素質焼結体では、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全個数の20%以上に、炭化珪素が存在している。このような炭化硼素質焼結体では、炭化珪素が存在する2面間粒界が全2面間粒界の20%以上と多いため、炭化硼素質焼結体の靱性を大きくすることができる。炭化珪素が存在している2面間粒界の割合は、焼結体断面写真について、一定長さの線分を引き、この線分を横切る2面間粒界の個数と、炭化珪素が存在している2面間粒界の個数の比率を求めることにより、炭化珪素が存在している2面間粒界の割合を求めることができる。炭化珪素が存在している2面間粒界の割合は、全2面間粒界の30%以上とされていることが望ましい。
本発明の炭化硼素質焼結体では、軽量化と高硬度な特性を確保するという点から、炭化珪素が4質量%以下とされている。特に高硬度という理由から、炭化珪素含有量は2〜3質量%とされている。尚、本発明では、金属Siは存在していない。この点で、多孔質の炭化硼素成形体に溶融Siを含浸させて焼結させた(反応焼結させた)炭化硼素質焼結体とは全く相違する。さらに、上記したように、炭化珪素含有量が4質量%以下と少ない点からも、反応焼結させた炭化硼素質焼結体とは全く相違する。
本発明の炭化硼素質焼結体では少量の気孔を含有しており、相対密度98%以上であることが望ましい。焼結体の密度は、JIS R 2205に準拠してアルキメデス法により求めることができる。相対密度は、焼結体の密度を理論密度で割ることにより求めることができる。
また、炭化硼素からなる主結晶粒子1の平均粒径は25μm以上とされている。これにより、小径粒子が少なくなるため、チッピングを抑制することができる。特に、硬度を向上するという観点から、主結晶粒子1の平均粒径は30μm以上であることが望ましく、相対密度は99%以上であることが望ましい。主結晶粒子1の平均粒径については、インターセプト法により求めることができる。
このような炭化硼素質焼結体は、銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通を防止するので、人体、車両、船舶、航空機を保護するための防護具として好適に用いることができる。防護具以外にセラミック工具ダイス、切削工具、精密工具パーツ、摺動部材、ノズル、半導体製造装置や一般産機、熱伝変換材料、中性子吸収材などについても適用することができる。
本発明の炭化硼素質焼結体の組織について詳細に説明する。本発明の炭化硼素質焼結体では、グラファイトおよび炭化珪素を含んでおり、気孔を有している。気孔を有する点で、気孔を有しない、相対密度がほぼ100%のホットプレスで作製した炭化硼素質焼結体とは異なる。グラファイトは必ずしも含有する必要はないが、含有することにより相対密度を向上することができる。
主成分である炭化硼素は、軽量でありながら、高い硬度を有するものである。添加されるグラファイトおよび後述するように焼成工程で成形体に浸入したSi蒸気は、炭化硼素質焼結体の焼成工程において焼結助剤として作用し、焼成中にそれぞれが溶解して液相を生成し、さらに固相焼結の機構により炭化硼素の緻密化を促進する。また、炭化珪素は、主結晶粒子1の3重点7及び主結晶粒子1同士の2面間粒界3に析出する。その結果、高い靱性を有する炭化硼素質焼結体を得ることができる。
ここで、炭化硼素が主成分であることは、蛍光X線分析法による定量分析にて確認することができ、焼結体中に占める炭化硼素の含有量が50質量%以上であることによって確認することができる。
添加されるグラファイトは、その含有量が炭化硼素粉末100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
炭化硼素は化学式ではB4Cと表されるが、一般的に硼素原子と炭素原子のモル比B/Cが化学式の4.0より大きくなる性質がある。つまり、炭素が硼素に対して不足している状態となるため、常圧焼成を行っても緻密化が促進し難い。そこで、グラファイトを上記含有量とすることで、モル比B/Cを4.0に近づけることが可能となり、常圧焼成においても緻密化が促進される。
なお、炭化硼素質焼結体中の炭化珪素の含有量は、ICP発光分析法を用いて測定することができる。
次に本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法について説明する。
本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法として、炭化硼素粉末にグラファイトを添加、調合して原料を得る調合工程、前記原料を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程、前記成形体をSi含有雰囲気中で焼成する焼成工程とを具備するもので、各工程について以下、詳細に説明する。
第1に、炭化硼素にグラファイトを添加、調合して原料を得る調合工程について説明する。
例えば、平均粒径(D50)が0.5〜2μm以下である炭化硼素粉末を準備する。この炭化硼素粉末は、BとCのモル比(B/C比)が化学量論比4の粉末すなわちB4Cの組成からなる粒子で構成される粉末の他に、次のような粉末を用いることができる。すなわち、炭化硼素(B4C)は、BとCに対して広い固溶領域を有しているため、市販の炭化硼素粉末にはBとCのモル比(B/C比)が化学量論比4の粉末だけでなく、B/C比が3.5以上4未満、またはB/C比が4よりも大きく10以下の範囲の粉末、例えばB13C2等の混入した粉末や、フリーカーボン、硼酸(B(OH)3)、無水硼酸(B2O3)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)などが混入した粉末も存在しており、このような炭化硼素粉末であってもよい。炭化硼素粉末は、平均粒径0.5〜2μmの微細な粉末であることが望ましい。
この炭化硼素粉末に対して、グラファイト粉末を添加する。グラファイト粉末は炭化硼素粉末100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下を添加すればよい。
炭化硼素質焼結体に含まれるグラファイトは(002)面からの半値幅が狭く結晶性の高いグラファイトを用いるのが好ましく、このようなグラファイト粉末として、例えば高配向熱分解グラファイト(HOPG)粉末を用いればよい。
また、靱性向上のためには、元素周期律表第4族、5族、6族より選ばれる金属元素の硼化物や、元素周期律表第3属から選ばれる金属元素の酸化物のうち少なくともいずれか1種を添加してもよい。好ましくは硼化ジルコニウム(ZrB2)、硼化チタン(TiB2)、硼化クロム(CrB2)の硼化物や酸化イットリウム(Y2O3)の酸化物である。軽量化という観点からは、元素周期律表第3〜6族については添加しないことが望ましい。
さらに、焼結助剤として、グラファイト粉末や上記酸化物以外に焼結を促進させるために、炭化珪素粉末を添加してもよいが、その場合、添加した炭化珪素粉末は、炭化硼素粒子の3重点に集合し、炭化硼素粒子の2面間粒界には存在せず靱性を高める効果は得られない。
そして、準備した炭化硼素粉末、グラファイト粉末、さらにその他の焼結助剤を回転ミル、振動ミル、ビーズミル等のミルに投入し、水、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)のうち少なくともいずれか1種とともに湿式混合し、スラリーを作製する。粉砕用メディアは、表面にイミド樹脂を被覆したメディア、窒化硼素質、炭化珪素質、窒化珪素質、ジルコニア質、アルミナ質等の各種焼結体からなるメディアを使用することができるが、不純物として混入の影響の少ない材質である窒化硼素質焼結体からなるメディア、または表面にイミド樹脂を被覆したメディアが好ましい。また、得られるスラリーの粘度を下げる目的で粉砕前に分散剤を添加してもよい。
次いで、得られたスラリーを乾燥して乾燥粉体を作製する。この乾燥の前に、スラリーを目開きが#200よりも小さいメッシュに通して粗大な不純物やゴミを除去し、さらに磁力を用いた除鉄機で除鉄するなどの方法で、鉄およびその化合物を除去することが好ましい。また、スラリーにパラフィンワックスやポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、アクリル系樹脂などの有機バインダーをスラリー中の粉末100質量部に対して1〜10質量部添加、混合することが、後述する成形の際に、成形体のクラックや割れ等の発生を抑制できるので好ましい。スラリーの乾燥方法としては、スラリーを容器に入れて加熱、乾燥させてもよいし、スプレードライヤーで乾燥させても良く、または他の方法で乾燥させても何ら問題ない。
第2に、得られた原料粉末を含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程として、得られた乾燥粉体を周知の成形方法、例えば成形型を用いた粉末加圧成形法、静水圧を利用した等方加圧成形法を用いて、相対密度45%以上70%以下の所望の形状とする。
なお、成形体が有機バインダーを含む場合には、500℃以上900℃以下の温度で、窒素ガス雰囲気下にて有機バインダーを脱脂する。
第3に、前記得られた成形体を焼成する焼成工程として、得られた成形体を焼成炉を用いて焼成する。黒鉛性の抵抗発熱体により加熱する焼成炉を用い、図3に示すように、この焼成炉中に成形体15を載置する。好ましくは、成形体15全体を囲うことのできる黒鉛製の焼成用容器17中に載置する。これは、焼成炉内の雰囲気中等から成形体15に付着する可能性のある異物(例えば黒鉛製発熱体や炭素製断熱材から飛散する炭素片や、焼成炉中に組み込まれている他の無機材質製の断熱材の小片等)の付着を防止するためであり、さらには成形体15からの揮発成分の飛散を防止するためである。焼成用容器17の材質は黒鉛質のものが望ましく、炭化珪素質焼結体またはこれらの複合物からなり、さらには成形体15全体を焼成用容器17で囲うことが好ましい。
そして、本発明では、図3に示すように、焼成用容器17内にSi源19を配置することが重要である。また、焼成用容器17内に配置するSi源19は融点(1410〜1420℃)以上の温度で溶融するため、溶融した際に流出しない大きさの黒鉛製の容器21に入れ配置させるとよい。また、Si源19は成形体又は粉末のどちらであってもよく、Si粉末の粒度についても特に制限はない。また、配置するSi粉末の重量は、焼結体中の炭化珪素含有量が4質量%以下となるよう制御する必要があり、焼成用容器17の体積当たり1g/L以下が好ましい。
次いで、焼成用容器17内に載置した成形体15を焼成炉内に配置し、アルゴンガス中またはHeガス中のいずれか、もしくは真空中で2250〜2350℃のピーク温度で焼成することが望ましい。なお、2000℃以上で保持する場合には炭化硼素、添加物成分の分解が生じるので、アルゴンガスまたはHeガス中で保持することが望ましい。ここで、本発明では、1400℃からピーク温度までの昇温速度を15℃/分以下とすることが重要である。このように、1400℃からピーク温度までの昇温速度を15℃/分以下とすることにより、粒界にSi蒸気を十分に浸入させることができ、2面間粒界に炭化珪素が存在する割合を多くすることができる。
このように焼成工程中に温度を上げていくと、Si源19からSiが気化し、この気化したSiが成形体15内に浸入して焼成される。そして、Si源19量、並びに焼成温度、一定温度における保持時間等によって、気化したSiの成形体15中への含浸量が異なり、焼結した時の炭化珪素量が変化することになる。本発明者によれば、焼成中にSiが気化して成形体15を構成する炭化硼素粉末の周囲に浸入し、Siが成形体15中に十分に分散された状態で焼成されることになり、さらにはSiが成形体15中に焼成工程中に継続して供給されることになり、焼結性が向上し、平均結晶粒径が25μm以上となり、しかもこのように大きく粒成長しても、助剤成分としてのSiが分散し、また継続して供給されるため、緻密化し、相対密度98%以上を達成できる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
炭化硼素粉末としてFeを0.2質量%含有するD50=0.65μm、D90=1.40μmの粉末(D90/D50=2.2)100質量部と、焼結助剤としてSiC粉末、グラファイトを表1に示す量だけ秤量し、窒化硼素質焼結体からなる粉砕用メディアと共に回転ミルに投入してアセトン中で12時間混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを目開き#200のナイロン製メッシュに通して粗大なゴミ等を除去後、120℃で乾燥後、目開き#40のナイロン製メッシュで整粒して、原料粉末を作製した。
得られた原料粉末を金型を用いた粉末加圧成形法を用いて、相対密度58%になるように成形し、直径6mm、高さ15mmの円柱状成形体を作製し、成形体に含まれる有機成分を600℃で窒素ガスをフローしながら脱脂した。
次に、黒鉛製の抵抗発熱体により加熱する焼成炉を用い、容積6リットルの黒鉛製の焼成用容器内に脱脂後の成形体を載置し、さらに、この成形体の近傍に、表1に示す量のSi粉末D50=5.0μmを黒鉛製の容器に入れて配置し、1400℃からピーク温度までの昇温速度を10℃/分として昇温し、2000℃未満まで真空雰囲気、2000℃以上を110kPaのアルゴンガス雰囲気とし、2270℃のピーク温度で焼成して、外径5mm、高さ12.5mmの円柱形状の試料をそれぞれ作製した。
得られた試料からサンプルを切り出して、断面をX線マイクロアナライザーによるSiとカーボンの元素マッピングおよび二次電子像の観察により観察した結果、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界及び3重点に、炭化珪素が存在していた。また、観察写真に長さ1mmの線分を引き、この線分を横切る2面間粒界の個数と、炭化珪素が存在している2面間粒界の個数の比率を求めることにより、炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界に炭化珪素が存在する割合(SiC存在割合)を求めた。さらに、X線回折法、ICP発光分析法によるサンプル中の炭化珪素の同定および定量、アルキメデス法による気孔率の測定、相対密度の算出、ならびにJIS R 1610に定められたビッカース硬さにより荷重9.807Nで測定を行い、JIS R 1607に従って靱性(K1c)を求め、表1の試料No.4に焼結体特性として記載した。その断面写真を図1に記載した。
さらに、添加するグラファイト量、焼成用容器内に載置するSi量、1400℃からピーク温度までの昇温速度を制御することにより、焼結体中の炭化珪素含有量を変化させ、その時の2面間粒界に炭化珪素が存在する割合を求めた。また、比較例の試料として、焼成用容器にSi成形体を載置せず、助剤としてグラファイトを4質量部添加して成形体を作製する以外は、上記と同様にして炭化硼素質焼結体を作製し、上記と同様に評価し、表1の試料No.2、6に記載した。
さらに、比較例の試料として、成形体を2200℃、25MPaでホットプレスして炭化硼素質焼結体を作製し、この焼結体についても、上記と同様に評価し、表1の試料No.7に記載した。
表1から、本発明の炭化硼素質焼結体では、ビッカース硬度が30GPa以上と大きく、2面間粒界に炭化珪素が存在する割合が20%以上であり、この場合には、靱性が2.8MPa・m1/2以上で、特に、2面間粒界に炭化珪素が存在する割合が30%以上の試料No.3、4、9では靱性が3.3MPa・m1/2以上と高いことがわかる。これに対して、2面間粒界に炭化珪素が存在しない、比較例の試料No.2、6、7では、靱性が2.6MPa・m1/2で、靱性が低いことがわかる。
1:主結晶粒子
3:2面間粒界
7:3重点
3:2面間粒界
7:3重点
Claims (3)
- 炭化硼素を主成分とし、炭化珪素を含む炭化硼素質焼結体であって、前記炭化硼素からなる主結晶粒子同士の2面間粒界の全数の20%以上に前記炭化珪素が存在することを特徴とする炭化硼素質焼結体。
- 前記炭化珪素の含有量が4質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の炭化硼素質焼結体。
- 請求項1又は2記載の炭化硼素質焼結体からなることを特徴とする防護部材。
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