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JP2008079537A - うつ病診断方法 - Google Patents

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一仁 六反
Tetsuo Omori
哲郎 大森
Masayuki Ota
雅之 太田
Toshiro Saito
俊郎 斎藤
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Abstract

【課題】被検者のうつ病の罹患の有無を、簡便に、しかも客観的かつ高精度に評価するための新規な方法を提供すること。
【解決手段】被験者の全血由来RNAを用いたうつ病の診断方法であって、マイクロアレイ解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正し、補正後の対数発現比を用いて前記被検者のうつ病の罹患の有無を判定することを特徴とするうつ病の診断方法。
【選択図】図7

Description

本発明は、うつ病の診断方法に関する。より詳しくは、白血球に多く発現している転写産物のプローブを予め規定し、規定されたプローブを用いてデータ補正を行うことにより、該被検者の全血由来RNAを用いてうつ病の罹患の有無を判定することを特徴とするうつ病の診断方法に関する。
うつ病は生涯罹患率が10%前後の頻度の高い疾患であり、その頻度は現代社会のストレスに促進されて今後さらに増加することが予想される。この疾患は、罹患者の精神と身体に著しい苦悩をもたらし、その社会生活に甚大な支障をきたすばかりか、自殺に結びつくことも少なくない重大な疾患である。年間3万人以上にものぼる自殺者の大半はうつ病に罹患していたと推定されている。また、怠学、失職、引きこもりなどの社会的問題やアルコール関連障害などの医学的問題にも深く関連している。この疾患を的確に診断し、すみやかに治療する体制を確立することは、国民生活の向上に必須であり、社会全体の急務である。
うつ病の診断は、しかし決して簡単ではない。うつ病の主症状は、抑うつ気分、意欲低下、興味と喜びの喪失、集中力と注意力の減退、自己評価と自信の低下、罪責感と無価値感、将来への悲観、自殺念慮、睡眠障害、食欲不振などである。これらの症状には特有の特徴があり、誰もが経験する気分の落ち込みとは異なっており、身体疾患罹患時の疲弊感に伴う精神活動低下とも異なっている。うつ病の症状を把握するためには、詳しく病歴を聴取し、心理行動面に表れる症状がいつからどのように出現し、社会生活や家庭生活の上でどのような支障が生じているのかを聞きとり、受診時の患者の態度や会話内容などから、諸症状を確認することが主体となる。家族歴、既往歴、身体的健康状態、生育歴、生活史、性格傾向、病前社会適応状況、きっかけとなった出来事の有無、などは重要な参考事項となる。これらを的確に把握するためには、十分に熟練した精神科専門医による一時間ほどの面接が必要となる。さらに一般的身体状態及び神経学的状態に大きな異常のないことを確認し、必要に応じて脳波や脳画像検査によって脳器質性疾患を除外して診断に至る。得られた所見を、世界保健機構(WHO)やアメリカ精神医学会による診断基準と照合し、診断を確定することが一般的である。
従来のうつ病の診断方法の大きな問題点は、診断に熟練した技能を要することである。うつ病に関する十分な知識と経験が必要であることはいうまでもないが、うつ病には該当しなくともうつ状態を呈する心理的、精神的及び身体的状態は数多い。それらとの鑑別診断も必須となる。したがって、診断には十分な研修を積んだ精神科専門医師があたらねばならない。しかし、生涯罹患率が10%前後というありふれた病気であるうつ病は、プライマリーケア医師を受診することが多い。精神科的な診察に習熟していない一般医師にとって、客観的検査所見のないうつ病の診断は必ずしも容易ではない。また、うつ病は薬物療法をはじめとする身体(脳)に対する治療が必要である医学的疾患であり、臨床心理士などの臨床心理学の専門家や保健婦などの精神保健活動従事者が、単独で診断することは困難である。
うつ病の診断に習熟を要するのは、簡便かつ客観的な症状評価方法が存在しないことが大きな要因となっている。自己記入式の質問紙によるスクリーニング方法もあるが、あくまで主観的に記入されるため、性格要因、環境要因あるいは身体状態不良による気分の落ち込みと本来のうつ病を区別することはできない。医師の用いる症状評価尺度が重症度の判定にしばしば使用されるが、これも各項目の評価には適切な問診が必要であって、診察に代わる物ではない。
客観的な指標を目指して、これまでにもいくつかの検査方法が試みられている。うつ病では、脳内のモノアミン系の機能的変調があり、その変調は心身相関作用を通して、神経内分泌系、神経免疫系、自律神経系に少なからぬ影響を及ぼしていることが知られている。特に、神経内分泌的な異常のひとつである軽度の副腎皮質ホルモン分泌亢進をデキサメサゾン抑制試験によって的確に把握してうつ病の診断に応用する試みは、1980年代以降に精力的に研究されたが、試験薬服用という煩雑さ及び感度や特異性の限界から臨床応用には至らなかった。研究段階では、その他の神経内分泌系、神経免疫系、自律神経系、日内リズムや睡眠構築の異常なども報告されている。最近では、脳血流や脳内モノアミン受容体の変化なども指摘されているが、いずれも感度や再現性に問題が残る。いずれに着目するにしても、限られた因子を測定する方法ではうつ病という複雑な精神疾患を評価することそのものが困難であるとも言える。また、従来の検査は、施行と評価には膨大な時間と労力が必要であり、簡便性という観点をも考慮すると、日常診療への応用はとうてい望むことが出来ないのが現状である。
一方、うつ病の病因としては、これまで、カテコラミン仮説、インドールアミン仮説、GABA仮説、グルタミン仮説、ドーパミン仮説、神経新生仮説、などが提唱されてきた。これらの仮説に対しては多くの矛盾点が指摘され、現在に至っても結論は得られていない。分子遺伝学的手法による連鎖研究や関連研究、ならびに連鎖解析による染色体の感受性領域の検索もなされているが、うつ病のように、複数の遺伝子の相互作用により素因(生物学的特性)が形成され、さらに、ストレスのような環境因子によって発症する疾患では、病原遺伝子を解析することは極めて困難である。これまでの遺伝子解析から、うつ病に関連する機能的候補遺伝子として、セロトニントランスポーター、セロトニン1A/2C受容体、ドーパミンD2/D3受容体、ドーパミントランスポーター、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素、モノアミン酸化酵素、ATPaseなどの遺伝子が報告されている。例えば、Na,K-ATPaseと精神疾患については、うつ病(例えば、非特許文献1参照)や気分変調症(例えば、非特許文献2参照)との関連が指摘されている。また、うつ病治療薬carbamazepineによる症状の改善と赤血球のNa,K-ATPase活性の上昇が相関することも報告されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、一方ではこれらに対しては否定的な追試もなされている。
また、ヒトを対象とした臨床研究の現場において大きな問題としてサンプリング手法が挙げられる。本発明者らが解析対象としているヒト全血(末梢血)は非侵襲的かつ入手が簡便なサンプルとして、健康診断や医療現場において古くから用いられてきている。DNAチップをはじめとする遺伝子発現解析の分野においても、実験動物を対象とした研究では各種臓器から抽出されたRNAを計測対象とすることが多いが、ヒトを対象とした研究においては全血から抽出されたRNAを計測対象とすることがしばしばある。ときには抗体ビーズ法、遠心分離法、フィルタリング法などによって白血球を分離しそれから抽出したRNAを計測対象とする場合もあるが、白血球分離過程が煩雑である上に白血球に刺激が加わることにより遺伝子の発現量に変化が生じる危険性がある。一方では全血由来RNAのもつ問題点も指摘されている。全血由来RNAには網状赤血球由来のグロビンRNAが大量に含まれていて、これが遺伝子発現解析においては計測精度を低下させる要因である指摘がされている(非特許文献4参照)。
Depress Anxiety 1997;5:p53-65 J. Basic Clin Physiol Pharmacol 2000;11(4):p375-394 Neuropsychobiology 1999;40(3):p134-139 Physiol. Genomics 2004;19:p247-254
全血サンプルに対するDNAチップを用いた遺伝子発現解析結果において、図1に示すような形状のM-Aプロットがしばしば認められる。M-Aプロットは、DNAチップの遺伝子発現解析結果を示すのにしばしば用いられるプロットで、横軸はCy5とCy3の相乗平均をLog変換した値、縦軸はCy5とCy3の比をLog変換した値である。例えば肝臓由来RNAや腎臓由来RNA等の、全血由来RNA以外のサンプルに対する遺伝子発現解析結果においては、図1のような形状のM-Aプロットは観察されない。
本発明者らはこの現象に着目し、全血から赤血球及び白血球を分離し、これを用いた遺伝子発現解析を行い、全血を基準とした場合に赤血球に多く発現しているプローブ群、及び、白血球に多く発現しているプローブ群をそれぞれ抽出した。そして、全血由来RNAを用いた遺伝子発現解析結果のM-Aプロットにおいて、これらのプローブ群がどのような分布をしているか解析を行い(図2)、このM-Aプロット内に赤血球由来の分布と白血球由来の分布の2つの分布が存在していることを見出した。すなわち、比較解析しているCy5サンプル、Cy3サンプルともに赤血球由来RNAと白血球由来RNAが混在しており、その混在比が両サンプル間で異なれば異なるほどM-Aプロットの右端が割れ、また、計測結果である発現変動比そのものが混在比の影響を受けてしまうために、計測精度が低下していたと結論付けた。
本発明者らは、うつ病の罹患の有無を客観的に評価するために、ストレスに関連する因子の受容体の多くを発現する白血球に着目したが、先に述べたように全血サンプルを用いた遺伝子発現解析において解決すべき課題が明らかとなった。
この課題を解決するための手段の一つとして全血から特定の血球を分離する方法が挙げられるが、分離過程が煩雑である点、分離過程において血球に刺激が加わることによる遺伝子発現量変化の可能性がある等の欠点がある。そこで本発明者らは、血球分離の過程を経ることなく全血サンプルの遺伝子発現解析を行い、データ解析の過程において白血球に多く発現しているプローブについてデータ補正を行うことによって、赤血球由来RNAの影響を軽減し、この課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、被験者の全血由来RNAを用いたうつ病の診断方法であって、核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正し、補正後の対数発現比を用いて前記被検者のうつ病の罹患の有無を判定することを特徴とするうつ病の診断方法に関する。なお、核酸固相化試料を用いた遺伝子解析には、マイクロアレイ(アレイ)、チップ等、遺伝子を網羅的に解析可能なすべての核酸固相化試料を含む。
前記方法において、うつ病の罹患の有無は、補正後の対数発現比を平均化処理することによって算出した評価指標を用いて判定する。
1つの実施態様において、前記評価指標としては、表1に記載の遺伝子群の補正後の対数発現比を平均化処理することによって算出した評価指標を用いることができる。
別な実施態様において、前記評価指標としては、表1に記載の遺伝子群の補正後の対数発現比の絶対値の95パーセンタイルを用いることができる。この場合、例えば、前記対数発現比の絶対値の95パーセンタイルが1.15以上であればうつ病に罹患していると判定することができる。
本発明の診断方法で評価指標となる対数発現比(ばらつき)は、被験者の全血における、好中球の数及び活性の変化による現象である。このことは、被験者の全血における、好中球の数及び活性や、被験者の全血における、好中球、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、NK細胞を含む各白血球細胞の構成比を評価することにより、前記被験者のうつ病の罹患の有無を判定できることを示す。
本発明はまた、前記したうつ病の診断方法を用いて、抗うつ剤の薬効を評価する方法を提供する。例えば、被験者の抗うつ剤投与前後の全血を採取し、前記診断方法に従って対数発現比を補正し、得られた前記評価指標、あるいは評価指標から判定したうつ病の罹患の有無(程度)に基づいて、前記被験者における抗うつ剤の薬効を評価できる。
本発明はまた、前記したうつ病の診断方法を実施するためのシステムであって、被験者の全血由来RNAにおける遺伝子発現データを核酸固相化試料により取得する手段と、前記核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正する手段と、補正後の対数発現比を用いて前記被検者のうつ病の罹患の有無を判定する手段とを有することを特徴とするうつ病の診断システムを提供する。
さらに本発明は、被験者の全血由来RNAを用いた核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正することを特徴とする遺伝子発現データの補正方法を提供する。前記うつ病診断システムの概念図を図7に示す。
本発明によれば、うつ病の罹患の有無を、被検者のほんの数ccの全血から得たメッセンジャーRNAの遺伝子発現解析により、簡便に、しかも客観的かつ高精度に診断することができ、従来、困難であったうつ病の診断を容易に実施することができる。本発明の方法は、従来の限られた因子を測定する方法に比べ、数多くのRNA発現量から生体機能を多面的に把握することになるので、うつ病のような複雑な疾患の診断方法として原理的にも適切であり、効用大なるものである。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.患者及び健常者
対象患者は、徳島大学医学部附属病院精神科神経科を平成14年11月から平成17年6月までの間に受診した未治療のうつ病患者のうち、本診断法開発のための研究に参加することについて文書により説明し同意を得たものとした。本研究は徳島大学医学部附属病院倫理委員会の承認を得ている。診断は、ICD-10(International Classification of Diseases 10th edition)のうつ病エピソードに合致するものとした。また、重篤な身体合併症を有するものや身体疾患治療薬を服用しているものは除外した。健常者は、各患者に対し、性、年齢の合致する健常者を選んだ。
治療前のサンプルを得た18名のうつ病患者は、男性5名、女性13名、年齢は23歳から68歳まで(平均39.1歳)であった。
2.遺伝子発現解析
患者から、PAXgene Blood RNA System(キアゲン社製)を用いて5 cc採血し、トータルRNAを抽出した。採血は、午前10時から午後1時までの空腹時とし、医師又は看護師が安静下に肘静脈より採血した。トータルRNAの収量は、5-15マイクログラムであった。
次に、抽出したトータルRNAを0.5マイクログラムずつ取り出し、T7プロモータ配列を付加したオリゴ(dT)24プライマーをアニールさせ、まず、First strand DNA合成を行った。次に、このFirst strand DNAを鋳型にして、T7プロモータ配列を有するSecond strand DNAを合成した。最後にSecond strand DNAを鋳型にして、T7 RNA polymeraseによるcRNA合成を行い、Cy5-CTP又はCy3-CTPを鎖中に取り込ませることで蛍光標識したcRNAを合成した。
比較解析を行う2種類のcRNAを等量混合した後、Whole Human Genome Microarray(Agilent社製)にかけてハイブリダイゼーションを60℃で18時間行った。洗浄後、スキャナー(Agilent社製Agilent Scanner)により各スポットの蛍光強度を測定し、Cy5サンプルとCy3サンプルの各遺伝子における発現量の比を求めた。解析サンプルの組み合わせは、患者−ユニバーサルコントロールの組み合わせが18組、健常者−ユニバーサルコントロールの組み合わせが18組、計36組とした。ユニバーサルコントロールは、前記18名の健常者とは異なる別の健常者20名のサンプルから作製した。
一方、ある健常者の協力の下、全血サンプル(PAXgene)、赤血球分離サンプル(濃度勾配分離法)、赤血球分離サンプル(フィルタリング法)、白血球分離サンプル(濃度勾配分離法)、白血球分離サンプル(フィルタリング法)の計5サンプルを調製し、それぞれからトータルRNAを抽出した。各血球分離サンプルをCy5で、全血サンプルをCy3で標識し、解析組み合わせは血球分離サンプル−全血の組み合わせとして、4解析実施した。
3.データ解析
3.1 白血球に多く発現しているプローブの規定
まず、血球分離サンプルの4解析を用いて、白血球に多く発現しているプローブの規定を行った。全4実験においてCy5及びCy3の信号強度が10以上得られていた21390プローブをデータ解析対象としてクラスタリングを実行した(図3)。クラスタリングのTreeを用いて白血球に多く発現しているプローブを選定し、8411プローブを規定した。
3.2 白血球に多く発現しているプローブによる全血データの補正
患者−ユニバーサル比較の18組、健常者−ユニバーサル比較の18組、計36組の発現データに対して、3.1で規定した8411プローブを用いてデータ補正(Global Normalization:全プローブについてのLog(Ratio)及びLog(Ratio)の中央値を算出し、補正後のLog(Ratio)の中央値が0になるように、各Log(Ratio)からLog(Ratio)の中央値を減算する補正方法)を行った。
3.3 補正後データの評価指標
規定した8411プローブを用いてGlobal Normalizationを行った36組の発現データについて、各実験のLog(Ratio)の分布に着目すると、患者−ユニバーサル比較の18組ではLog(Ratio)のばらつきが大きく、一方で健常者−ユニバーサル比較の18組ではLog(Ratio)のばらつきが小さくなることを見出し(図4)、これをうつ病の診断指標として用いることとした。Log(Ratio)のばらつきの程度を表す指標としてLog(Ratio)の95パーセンタイルを採用した。さらに、患者18名のLogRatioの平均値と健常者18名のLogRatioの平均値の差が大きいプローブをUp、Downそれぞれ10プローブずつ抽出した(表1)。表1に記載の20プローブはうつ病の評価指標を算出するために適したプローブセットであると考えられる。
Figure 2008079537
3.4 うつ病診断の感度及び特異度
36名の被験者それぞれについて、3.3で述べた診断指標を算出し、閾値を1.15に設定して診断指標と閾値の大小関係から、各被験者がうつ病患者であるか健常者であるかの判定を行った(図5)。判定結果をもとに感度及び特異度を算出すると、感度が94.4%(17/18)、特異度が83.3(15/18)%であった。
3.5 うつ病と白血球細胞の種類の関連性
次に、白血球分画からさらに単球、好中球、T細胞、B細胞を抗体磁気ビーズを用いて分離し、それぞれからトータルRNAを抽出し、2.に記載の方法で遺伝子発現解析を行った。このときのCy3サンプルは各血球細胞由来トータルRNAを混合して作成したユニバーサルコントロールを用意しこれを用いた。うつ患者18名のデータにおいて健常者18名に比べ発現量の多かった上位300プローブについて、各血球細胞における発現解析結果を評価したところ、好中球において発現が上昇、T細胞及びB細胞において発現が低下していた(図6)。このことから、うつ病患者の発現解析結果において認められたLog(Ratio)の分布のばらつきは、好中球の増加又は活性上昇、及び、T細胞とB細胞の減少又は活性低下による現象であり、うつ病の評価指標として採用したLog(Ratio)の分布のばらつきは、白血球の中の単球、好中球、T細胞、B細胞、NK細胞などの各種白血球の数及びその活性を総合的に評価していると考えられた。
本発明の方法は、臨床現場における、うつ病の客観的かつ簡便な診断方法として有用である。
図1は全血由来RNAに対する遺伝子発現解析結果のM-Aプロットを示す。 図2は全血由来RNAに対する遺伝子発現解析結果のM-Aプロットにおける、赤血球由来RNAの分布及び白血球由来RNAの分布を示す。 図3は血球分離サンプル4解析のクラスタリングを示す。 図4はデータ補正後の患者−ユニバーサル比較のM-Aプロット、及び健常者−ユニバーサル比較のM-Aプロットを示す。 図5は被験者36名分のうつ病診断指標(Log(Ratio)の95パーセンタイル)のグラフを示す。 図6は白血球全体、単球、好中球、T細胞、及びB細胞を用いた11解析のクラスタリングを示す。 図7はうつ病診断システムの概念図を示す。

Claims (8)

  1. 被験者の全血由来RNAを用いたうつ病の診断方法であって、核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正し、補正後の対数発現比を用いて前記被検者のうつ病の罹患の有無を判定することを特徴とするうつ病の診断方法。
  2. 前記補正後の対数発現比を平均化処理することによって算出した評価指標を用いて、うつ病の罹患の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のうつ病の診断方法。
  3. 表1に記載の遺伝子群の補正後の対数発現比を平均化処理することによって算出した評価指標を用いて、うつ病の罹患の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のうつ病の診断方法。
  4. 表1に記載の遺伝子群の補正後の対数発現比の絶対値の95パーセンタイルを評価指標として、うつ病の罹患の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のうつ病の診断方法。
  5. 前記対数発現比の絶対値の95パーセンタイルが1.15以上であればうつ病に罹患していると判定することを特徴とする、請求項4に記載のうつ病の診断方法。
  6. 請求項1〜5に記載のいずれかのうつ病の診断方法を用いて、抗うつ剤の薬効を評価する方法。
  7. 請求項1〜5に記載のいずれかのうつ病の診断方法を実施するためのシステムであって、被験者の全血由来RNAにおける遺伝子発現データを核酸固相化試料により取得する手段と、前記核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正する手段と、補正後の対数発現比を用いて前記被検者のうつ病の罹患の有無を判定する手段とを有することを特徴とするうつ病の診断システム。
  8. 被験者の全血由来RNAを用いた核酸固相化試料を用いた遺伝子解析において、赤血球分画に比べて白血球分画に多く発現している遺伝子を予め規定し、規定された遺伝子のみを対象として、コントロールサンプルに対する対数発現比の中央値を0に補正することを特徴とする遺伝子発現データの補正方法。
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