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JP2008075183A - 高強度高靭性金属及びその製造方法 - Google Patents

高強度高靭性金属及びその製造方法 Download PDF

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JP2008075183A
JP2008075183A JP2007292807A JP2007292807A JP2008075183A JP 2008075183 A JP2008075183 A JP 2008075183A JP 2007292807 A JP2007292807 A JP 2007292807A JP 2007292807 A JP2007292807 A JP 2007292807A JP 2008075183 A JP2008075183 A JP 2008075183A
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倫昭 山崎
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Abstract

【課題】マグネシウム合金の拡大した用途に対して強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の高強度高靭性金属は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金からなり、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、hcp構造マグネシウム相とラメラ状に存在し、前記ラメラ状に存在するラメラ組織の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高強度高靭性金属及びその製造方法に関し、より詳細には特定の希土類元素を特定割合で含有することにより高強度高靭性を達成した高強度高靭性金属及びその製造方法に関する。
マグネシウム合金は、そのリサイクル性とあいまって、携帯電話やノート型パソコンの筐体あるいは自動車用部品として急速に普及し始めている。
これらの用途に使用するためにはマグネシウム合金に高強度と高靭性が要求される。高強度高靭性金属の製造のために従来から材料面及び製法面から種々検討されている。
製法面では、ナノ結晶化の促進のために、急冷凝固粉末冶金(RS−P/M)法が開発され、鋳造材の約2倍の400MPa程度の強度のマグネシウム合金が得られるようになった。
マグネシウム合金として、Mg−Al系、Mg−Al−Zn系、Mg−Th−Zn系、Mg−Th−Zn−Zr系、Mg−Zn−Zr系、Mg−Zn−Zr−RE(希土類元素)系等の成分系の合金が知られている。これらの組成を有するマグネシウム合金を鋳造法で製造しても十分な強度が得られない。前記組成を有するマグネシウム合金を前記RS−P/M法で製造すると鋳造法で製造する場合より高強度にはなるが依然として強度が不十分であったり、強度が十分でも靭性(延性)が不十分で、高強度及び高靭性を要求される用途には使用し難いという欠点があった。
これらの高強度及び高靭性を有するマグネシウム合金として、Mg−Zn−RE(希土類元素)系合金が提案されている(例えば特許文献1、2及び3)。
特許3238516号公報(図1) 特許2807374号公報 特開2002−256370号公報(特許請求の範囲、実施例)
しかしながら、従来のMg−Zn−RE系合金では、例えばアモルファス状の合金材料を熱処理し、微細結晶化して高強度のマグネシウム合金を得ている。そして前記アモルファス状の合金材料を得るためには相当量の亜鉛と希土類元素が必要であるという先入観があり、亜鉛と希土類元素を比較的多量に含有するマグネシウム合金が使用されている。
特許文献1及び2では高強度及び高靭性が得られたと記載されているが、実際に強度及び靭性ともに実用に供するレベルに達している合金は殆ど無い。更に現在ではマグネシウム合金の用途が拡大して、従来の強度及び靭性では不十分で、より以上の強度及び靭性を有するマグネシウム合金が要請されている。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、マグネシウム合金の拡大した用途に対して強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る高強度高靭性金属は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金からなり、
前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、2H構造を有するMgとラメラ状に存在することを特徴とする。
本発明に係る高強度高靭性金属は、マグネシウム合金に塑性加工を行った後の塑性加工物は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、
前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、2H構造を有するMgとラメラ状に存在することを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記ラメラ状に存在するラメラ組織の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることが好ましい。尚、ラメラ組織とは、長周期積層構造相と2H構造を有するMg相とが交互に積層された組織である。
本発明に係る高強度高靭性金属は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金からなり、
前記長周期積層構造相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とする。
尚、本明細書においてマグネシウム合金とは、マグネシウムを主成分とする合金を意味する。
本発明に係る高強度高靭性金属は、マグネシウム合金に塑性加工を行った後の塑性加工物は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記塑性加工前のマグネシウム合金は、湾曲又は屈曲のない長周期積層構造の結晶組織を有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記長周期積層構造相の湾曲又は屈曲している領域がランダム粒界を含むことが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記hcp構造マグネシウム相の転位密度に比べて長周期積層構造相の転位密度が少なくとも1桁小さいことが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びY以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦3.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦y≦4.8
(5)0.2≦b+y≦5.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.2≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びY以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦3.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦y≦4.9
(5)0.1≦b+y≦5.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.1≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びGd以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びGd以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦3.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.5≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Gd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZnGd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦3.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.25≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にDy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超1.5原子%以下含有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にYを合計で0原子%超1.0原子%以下含有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で3原子%未満含有することが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金は、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を鋳造時の原料の一部に用いて形成され、前記マグネシウム合金中の希土類元素の合計含有量が6.0原子%以下であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有することも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金はMgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記マグネシウム合金の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることが好ましい。
本発明に係る高強度高靭性金属は、一般式で、Mg(100−x−y)Zn(1<x<5、0.3<y<6;x、yはいずれも原子%)の組成を有し、平均結晶粒径が1μm以下の結晶組織を有する高強度高靭性金属であって、
前記Mg(100−x−y)Znは、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を出発原料の一部に用いて形成され、液体から急速に凝固された粉末、薄帯又は細線を、せん断が付加されるように固化することで形成されたことを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記希土類合金は、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上含有するとともにY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLu以外の希土類元素を合計で50原子%未満含有することが好ましい。
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、2H構造を有するMgとラメラ状に存在するマグネシウム合金を準備する工程と、
前記マグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記ラメラ状に存在するラメラ組織を保持した塑性加工物を作る工程と、
を具備することを特徴とする。
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金を準備する工程と、
前記マグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
を具備することを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びY以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
尚、前記Y、Dy、Ho及びErそれぞれは、マグネシウム合金鋳造物に長周期積層構造相の結晶組織を形成する希土類元素である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦3.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦y≦4.8
(5)0.2≦b+y≦5.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.2≦b+c+d≦6.0
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、2H構造を有するMgとラメラ状に存在するマグネシウム合金を準備する工程と、
前記マグネシウム合金を切削することによってチップ形状の切削物を作る工程と、
前記切削物に塑性加工による固化を行うことにより、前記ラメラ状に存在するラメラ組織を保持した塑性加工物を作る工程と、
を具備することを特徴とする。
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金を準備する工程と、
前記マグネシウム合金を切削することによってチップ形状の切削物を作る工程と、
前記切削物に塑性加工による固化を行うことにより、前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
を具備することを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn及びY以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Dy、Ho及びEr以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦3.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦y≦4.9
(5)0.1≦b+y≦5.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.1≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Gd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Gd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.2≦a≦3.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.5≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記チップ形状の切削物を作る工程との間又は前記チップ形状の切削物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Gd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記チップ形状の切削物を作る工程との間又は前記チップ形状の切削物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することも可能である。尚、前記マグネシウム合金におけるZn、Gd、Tb、Tm及びLu以外の残部はMgであることが好ましい。
(1)0.1≦a≦3.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)2a−3≦b
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.25≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金は、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で3原子%未満含有することが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.1≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.1≦b+c+d≦6.0
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Al、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有するマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程は、300℃以上550℃以下で10分以上24時間未満の熱処理条件で前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程であることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程は、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を鋳造時の原料の一部に用いて作られ、前記マグネシウム合金鋳造物中の希土類元素の合計含有量が6.0原子%以下であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行う前のマグネシウム合金の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行った後のマグネシウム合金におけるhcp構造マグネシウム相の転移密度は長周期積層構造相の転位密度に比べて1桁以上大きいことが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金に塑性加工を行う際の温度条件は250℃以上であることが好ましい。温度条件が250℃未満であると塑性加工が困難なためである。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW加工のうちの少なくとも一つを行うものであることも可能である。
尚、Mm(ミッシュメタル)とは、Ce及びLaを主成分とする複数の希土類元素の混合物又は合金であり、鉱石から有用な希土類元素であるSmやNdなどを精錬除去した後の残渣であり、その組成は精錬前の鉱石の組成に依存する。
また、本発明に係る高強度高靭性金属においては、前記マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有することも可能である。これにより、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記長周期積層構造を持つ結晶粒の体積分率は5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属においては、前記長周期積層構造の結晶組織の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属においては、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有することも可能である。尚、前記析出物の合計体積分率は0%超40%以下であることが好ましい。また、前記塑性加工物はhcp−Mgを有する。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工及び鍛造のうちの少なくとも一つを行うものであることも可能である。
また、前述したYb、Sm、Nd及びGdそれぞれは、それらとMgとZnの3元合金では、前記マグネシウム合金鋳造物に長周期積層構造の結晶組織を形成しない希土類元素であってマグネシウムに固溶限があるものである。
また、前述したLa、Ce、Pr、Eu及びMmそれぞれは、それらとMgとZnの3元合金では、前記マグネシウム合金鋳造物に長周期積層構造の結晶組織を形成しない希土類元素であってマグネシウムに固溶限が殆ど無いものである。
上記の本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法によれば、マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行うことにより、塑性加工後の塑性加工物の硬さ及び降伏強度を塑性加工前の鋳造物に比べて向上させることができる。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法においては、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程の間に、前記マグネシウム合金鋳造物に均質化熱処理を施す工程を追加しても良い。この際の熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、処理時間が1分〜1500分であることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法においては、前記塑性加工物を作る工程の後に、前記塑性加工物に熱処理を施す工程を追加しても良い。この際の熱処理条件は、温度が150℃〜450℃、処理時間が1分〜1500分であることが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工及び鍛造のうちの少なくとも一つを行うものであることも可能である。つまり、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工及び鍛造のうち単独でも組み合わせでも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記塑性加工を行って塑性加工物を作る工程は、前記マグネシウム合金鋳造物を押出しにより固化した塑性加工物を作る工程であり、押出し温度が250℃以上500℃以下、押出しによる断面減少率が5%以上であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行って塑性加工物を作る工程は、前記マグネシウム合金鋳造物を圧延により固化した塑性加工物を作る工程であり、圧延温度が250℃以上500℃以下、圧下率が5%以上であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行って塑性加工物を作る工程は、前記マグネシウム合金鋳造物をECAEにより固化した塑性加工物を作る工程であり、前記ECAEを行う際の温度が250℃以上500℃以下、ECAEのパス回数が1パス以上であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行って塑性加工物を作る工程は、前記マグネシウム合金鋳造物を引抜加工により固化した引抜加工物を作る工程であり、前記引抜加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工を行って塑性加工物を作る工程は、前記マグネシウム合金鋳造物を鍛造により固化した鍛造物を作る工程であり、前記鍛造を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記鍛造の加工率が5%以上であることも可能である。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法においては、前記塑性加工物を作る工程の後に、前記塑性加工物に熱処理を行う工程をさらに具備することも可能である。これにより、熱処理後の塑性加工物の硬さ及び降伏強度を熱処理前に比べてさらに向上させることができる。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記塑性加工物に熱処理を行う際の熱処理温度は150℃以上450℃以下であり、熱処理時間は1分以上1500分以下であることが好ましい。
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記マグネシウム合金鋳造物は、Al、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有することも可能である。
本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法は、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を出発原料の一部として用い、一般式で、Mg(100−x−y)Zn(1<x<5、0.3<y<6;x、yはいずれも原子%)の組成を有する液体を形成し、
前記液体を急冷して凝固させることにより粉末、薄帯又は細線を形成し、
前記粉末、薄帯又は細線にせん断が付加されるように固化することを特徴とする。
また、本発明に係る高強度高靭性金属の製造方法において、前記希土類合金は、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上含有するとともにY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLu以外の希土類元素を合計で50原子%未満含有することが好ましい。
また、本発明に係る高強度高靭性金属において、前記長周期積層構造相が濃度変調を有することも可能である。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
以上説明したように本発明によれば、マグネシウム合金の拡大した用途に対して強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明者は、基本に立ち返り、2元マグネシウム合金から始めて合金の強度及び靭性を検討し、更にその検討を多元マグネシウム合金まで拡大した。その結果、強度及び靭性とも高いレベルで有するマグネシウム合金はMg−Zn−RE(希土類元素)系であり、希土類元素がY、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素であるマグネシウム合金であり、更に従来技術とは異なり亜鉛の含有量が5.0原子%以下で希土類元素の含有量が5.0原子%以下という低含有量において従来にない高強度及び高靭性が得られることを見出した。
長周期積層構造相を有する金属を塑性加工することによって長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることができる。それにより高強度・高延性・高靭性の金属が得られることを見出した。
長周期積層構造相が形成される鋳造合金は、塑性加工後あるいは塑性加工後に熱処理を施すことによって、高強度・高延性・高靭性のマグネシウム合金が得られることが分かった。また、長周期積層構造が形成されて、塑性加工後あるいは塑性加工熱処理後に高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
また、鋳造した直後の状態では長周期積層構造相が形成されていない合金であっても、その合金に熱処理を施すことによって長周期積層構造相が形成されることを見出した。この合金を塑性加工又は塑性加工後に熱処理することによって高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
また、長周期積層構造が形成される鋳造合金を切削することによってチップ形状の鋳造物を作り、この鋳造物に塑性加工を行い、あるいは塑性加工後に熱処理を施すことによって、チップ形状に切削する工程を行わない場合に比べて、より高強度・高延性・高靭性のマグネシウム合金が得られることが分かった。また、長周期積層構造が形成されて、チップ形状に切削し、塑性加工後あるいは塑性加工熱処理後に高強度・高延性・高靭性が得られる合金組成を見出した。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるマグネシウム合金は、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む3元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるMg−Zn−Y合金の組成範囲は図8に示すA−B−C−D−Eの線で囲む範囲である。すなわち、亜鉛の含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とすると、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすものとなる。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
亜鉛の含有量が5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。またYの含有量が合計で5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また亜鉛の含有量が0.5原子%未満、又はYの含有量が1.0原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、亜鉛の含有量の下限を0.5原子%とし、Yの含有量の下限を1.0原子%とする。
強度及び靭性の増大は亜鉛が0.5〜1.5原子%において顕著になる。亜鉛含有量が0.5原子%付近において希土類元素含有量が少なくなると強度が低下する傾向があるが、その範囲の場合でも従来よりも高強度及び高靭性を示す。従って、本実施の形態のマグネシウム合金における亜鉛の含有量の範囲は最も広くて0.5原子%以上5.0原子%以下である。
また、前記マグネシウム合金におけるYの含有量とZnの含有量の比は、1:1又はそれに近い比であることが特に好ましい。このような含有量の比にすることより高強度高靭性を特に向上させることができる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、亜鉛の含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とすると、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすものとなる。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金においては、さらに、Y、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有しても良く、yは下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
(4)0≦y≦4.8
(5)0.2≦b+y≦5.0
亜鉛の含有量が5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また亜鉛の含有量が0.2原子%未満、又は希土類元素の含有量が合計で0.2原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、亜鉛の含有量の下限を0.2原子%とし、希土類元素の合計含有量の下限を0.2原子%とする。
強度及び靭性の増大は亜鉛が0.2〜1.5原子%において顕著になる。亜鉛含有量が0.2原子%付近において希土類元素含有量が少なくなると強度が低下する傾向があるが、その範囲の場合でも従来よりも高強度及び高靭性を示す。従って、本実施の形態のマグネシウム合金における亜鉛の含有量の範囲は最も広くて0.2原子%以上5.0原子%以下である。
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有する亜鉛と希土類元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(3)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(3')を満たすものである。
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.2≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
また、前記マグネシウム合金におけるDyの含有量とZnの含有量の比は、2:1又はそれに近い比であることが特に好ましい。また、前記マグネシウム合金におけるErの含有量とZnの含有量の比は、2:1又はそれに近い比であることが特に好ましい。このような含有量の比にすることより高強度高靭性を特に向上させることができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2によるマグネシウム合金は、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む4元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の合計含有量をc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)1.0≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、Yの含有量を5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量が0.5原子%以上とする理由、Yの含有量を1.0原子%以上とする理由は、実施の形態1と同様である。また、第4元素の含有量の上限を3.0原子%とした理由は、第4元素の固溶限が低いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、亜鉛の含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、1又は2以上の第4元素の合計含有量をc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量が0.2原子%以上とする理由、希土類元素の含有量が合計で0.2原子%以上とする理由は、実施の形態1と同様である。また、第4元素の含有量の上限を3.0原子%とした理由は、第4元素の固溶限が低いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(5)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(5')を満たすものである。
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.2≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(4')0≦c≦3.0
(5')0.2≦b+c≦6.0
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3によるマグネシウム合金は、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む4元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。尚、Mm(ミッシュメタル)とは、Ce及びLaを主成分とする複数の希土類元素の混合物又は合金であり、鉱石から有用な希土類元素であるSmやNdなどを精錬除去した後の残渣であり、その組成は精錬前の鉱石の組成に依存するものである。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦2.0
(5)1.0≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量が0.5原子%以上とする理由、希土類元素の含有量が合計で1.0原子%以上とする理由は、実施の形態1と同様である。また、第4元素の含有量の上限を2.0原子%とした主な理由は、第4元素の固溶限が殆ど無いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0≦c≦2.0
(5)0.2≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量が0.2原子%以上とする理由、希土類元素の含有量が合計で0.2原子%以上とする理由は、実施の形態1と同様である。また、第4元素の含有量の上限を2.0原子%とした主な理由は、第4元素の固溶限が殆ど無いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(5)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(5')を満たすものである。
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.2≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(4')0≦c≦2.0
(5')0.2≦b+c≦6.0
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4によるマグネシウム合金は、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む5元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第5元素は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とし、1又は2以上の第5元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、c及びdは下記式(1)〜(6)を満たすものとなる。
(1)0.5≦a≦5.0
(2)1.0≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)1.0≦b+c+d≦6.0
Zn、Y、第4元素及び第5元素の合計含有量を6.0原子%以下とする理由は、6%を超えると重くなり、原料コストが高くなり、さらに靭性が低下するからである。Znの含有量を0.5原子%以上、Y、第4元素及び第5元素の合計含有量を1.0原子%以上とする理由は、より低濃度とすると強度が不十分となるからである。また、第4元素、第5元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の合計含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とし、1又は2以上の第5元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、c及びdは下記式(1)〜(6)を満たすものとなる。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.2≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.2≦b+c+d≦6.0
希土類元素、第4元素及び第5元素の合計含有量を6.0原子%以下とする理由は、6%を超えると重くなり、原料コストが高くなり、さらに靭性が低下するからである。希土類元素、第4元素及び第5元素の合計含有量を0.2原子%以上とする理由は、0.2原子%未満とすると強度が不十分となるからである。また、第4元素、第5元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(6)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(6')を満たすものである。
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.2≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(4')0≦c≦3.0
(5')0≦d≦2.0
(6')0.2≦b+c+d≦6.0
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5によるマグネシウム合金としては、実施の形態1〜4の組成にMeを加えたマグネシウム合金が挙げられる。但し、MeはAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。このMeの含有量は0原子%超2.5原子%以下とする。Meを添加すると、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
実施の形態1〜5のいずれかの組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に均質化熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、処理時間が1分〜1500分(又は24時間)とすることが好ましい。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW加工などを用いる。
押出しによる塑性加工を行う場合は、押出し温度を250℃以上500℃以下とし、押出しによる断面減少率を5%以上とすることが好ましい。
ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90°ずつ回転させる方法である。具体的には、断面形状がL字状の成形孔を形成した成形用ダイの前記成形孔に、成形用材料であるマグネシウム合金鋳造物を強制的に進入させて、特にL状成形孔の90°に曲げられた部分で前記マグネシウム合金鋳造物に応力を加えて強度及び靭性が優れた成形体を得る方法である。ECAEのパス回数としては1〜8パスが好ましい。より好ましくは3〜5パスである。ECAEの加工時の温度は250℃以上500℃以下が好ましい。
圧延による塑性加工を行う場合は、圧延温度を250℃以上500℃以下とし、圧下率を5%以上とすることが好ましい。
引抜加工による塑性加工を行う場合は、引抜加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記引抜加工の断面減少率が5%以上であることが好ましい。
鍛造による塑性加工を行う場合は、鍛造加工を行う際の温度が250℃以上500℃以下、前記鍛造加工の加工率が5%以上であることが好ましい。
上記のようにマグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った塑性加工物は、常温において長周期積層構造の結晶組織を有し、この長周期積層構造を持つ結晶粒の体積分率は5%以上(より好ましくは10%以上)となり、マグネシウム合金の結晶粒径は100nm以上500μm以下である。前記長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。前記析出物の合計体積分率は0%超40%以下であることが好ましい。また、前記塑性加工物はhcp−Mgを有する。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
前記マグネシウム合金鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物に熱処理を施しても良い。この熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、熱処理時間が1分〜1500分(又は24時間)とすることが好ましい。この熱処理を行った後の塑性加工物については、熱処理を行う前の塑性加工物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。また、熱処理後の塑性加工物にも熱処理前と同様に、常温において長周期積層構造の結晶組織を有し、この長周期積層構造を持つ結晶粒の体積分率は5%以上(より好ましくは10%以上)となり、マグネシウム合金の結晶粒径は100nm以上500μm以下である。前記長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。前記析出物の合計体積分率は0%超40%以下であることが好ましい。また、前記塑性加工物はhcp−Mgを有する。
上記実施の形態1〜6によれば、マグネシウム合金の拡大した用途、例えば強度及び靭性共に高性能が要求されるハイテク用合金としての用途に対して、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供することができる。
また、実施の形態1〜4の組成に0原子%超2.5原子%以下のZrを添加したマグネシウム合金を溶解して鋳造した場合、このマグネシウム合金鋳造物にはMgZnREのような化合物の析出が抑制され、長周期積層構造相の形成が促進され、結晶組織が微細化される。従って、このマグネシウム合金鋳造物は押出しなどの塑性加工が容易になり、塑性加工を行った塑性加工物はZrを添加しないマグネシウム合金の塑性加工物に比べて多量の長周期積層構造相を有すると共に微細化された結晶組織を有することになる。このように多量の長周期積層構造相を有することにより、強度及び靭性を向上させることができる。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7によるマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用するものであり、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む3元又は4元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるMg−Zn−Y合金の組成範囲は図9に示すA−B−C−D−Eの線で囲む範囲である。すなわち、亜鉛の含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とすると、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすものとなる。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
亜鉛の含有量が5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また、Yの含有量が5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また亜鉛の含有量が0.25原子%未満、又はYの含有量が0.5原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、亜鉛の含有量の下限を0.25原子%とし、希土類元素の合計含有量の下限を0.5原子%とする。このように亜鉛の含有量及びYの含有量それぞれの下限を実施の形態1に比べて1/2と低くできるのは、チップ形状鋳造物に適用するからである。
強度及び靭性の増大は亜鉛が0.5〜1.5原子%において顕著になる。亜鉛含有量が0.5原子%付近において希土類元素含有量が少なくなると強度が低下する傾向があるが、その範囲の場合でも従来よりも高強度及び高靭性を示す。従って、本実施の形態のマグネシウム合金における亜鉛の含有量の範囲は最も広くて0.25原子%以上5.0原子%以下である。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、亜鉛の含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とすると、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすものとなる。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金においては、Y、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有しても良く、yは下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
(4)0≦y≦4.9
(5)0.1≦b+y≦5.0
亜鉛の含有量が5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。また1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以上であると、特に靭性(又は延性)が低下する傾向があるからである。
また亜鉛の含有量が0.1原子%未満、又は希土類元素の含有量が合計で0.1原子%未満であると強度及び靭性の少なくともいずれかが不十分になる。従って、亜鉛の含有量の下限を0.1原子%とし、希土類元素の合計含有量の下限を0.1原子%とする。このように亜鉛の含有量及び希土類元素の合計含有量それぞれの下限を実施の形態1に比べて1/2と低くできるのは、チップ形状鋳造物に適用するからである。
強度及び靭性の増大は亜鉛が0.5〜1.5原子%において顕著になる。亜鉛含有量が0.5原子%付近において希土類元素含有量が少なくなると強度が低下する傾向があるが、その範囲の場合でも従来よりも高強度及び高靭性を示す。従って、本実施の形態のマグネシウム合金における亜鉛の含有量の範囲は最も広くて0.1原子%以上5.0原子%以下である。
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金では、前述した範囲の含有量を有する亜鉛と希土類元素以外の成分がマグネシウムとなるが、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(3)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(3')を満たすものである。
(1')0.1≦a≦3.0
(2')0.1≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8によるマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用するものであり、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む4元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量が0.25原子%以上とする理由、Yの含有量が0.5原子%以上とする理由は、実施の形態7と同様である。また、第4元素の含有量の上限を3.0原子%とした理由は、第4元素の固溶限が低いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、亜鉛の含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(3)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(3')を満たすものである。
(1')0.1≦a≦3.0
(2')0.1≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9によるマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用するものであり、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む4元又は5元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦2.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
亜鉛の含有量を5原子%以下とする理由、1又は2以上の希土類元素の含有量が合計で5原子%以下とする理由、亜鉛の含有量を0.25原子%以上とする理由、Yの含有量を0.5原子%以上とする理由は、実施の形態7と同様である。また、第4元素の含有量の上限を2.0原子%とした理由は、第4元素の固溶限が殆ど無いからである。また、第4元素を含有させる理由は、結晶粒を微細化させる効果があること、金属間化合物を析出させる効果があることによる。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とすると、a、b及びcは下記式(1)〜(5)を満たすものとなる。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0≦c≦2.0
(5)0.1≦b+c≦6.0
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(3)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(3')を満たすものである。
(1')0.1≦a≦3.0
(2')0.1≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10によるマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用するものであり、基本的にMg、Zn及び希土類元素を含む5元以上の合金であり、希土類元素は、Y、Dy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第4元素は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される1又は2以上の元素であり、第5元素は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される1又は2以上の元素である。
本実施の形態によるマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、Yの含有量をb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とし、1又は2以上の第5元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、c及びdは下記式(1)〜(6)を満たすものとなる。
(1)0.25≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a≦b
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.5≦b+c+d≦6.0
Zn、Y、第4元素及び第5元素の合計含有量を6.0原子%未満とする理由、Zn、Y、第4元素及び第5元素の合計含有量を1.0原子%超とする理由は、実施の形態4と同様である。
また、希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲は、Znの含有量をa原子%とし、1又は2以上の希土類元素の含有量を合計でb原子%とし、1又は2以上の第4元素の含有量を合計でc原子%とし、1又は2以上の第5元素の含有量を合計でd原子%とすると、a、b、c及びdは下記式(1)〜(4)を満たすものとなる。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.1≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(4)0.1≦b+c+d≦6.0
本実施の形態のMg−Zn−RE系マグネシウム合金においても、合金特性に影響を与えない程度の不純物を含有しても良い。
また、前記希土類元素がDy、Ho及びErからなる群から選択される1又は2以上の元素である場合のマグネシウム合金の組成範囲を前記式(1)〜(3)を満たすものとしているが、より好ましい組成範囲としては下記式(1')〜(3')を満たすものである。
(1')0.1≦a≦3.0
(2')0.1≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
(実施の形態11)
本発明の実施の形態11によるマグネシウム合金としては、実施の形態7〜10の組成にMeを加えたマグネシウム合金が挙げられる。但し、MeはAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。このMeの含有量は0原子%超2.5原子%以下とする。Meを添加すると、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
(実施の形態12)
本発明の実施の形態12によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
実施の形態7〜11のいずれかの組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に均質化熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、処理時間が1分〜1500分(又は24時間)とすることが好ましい。
次いで、このマグネシウム合金鋳造物を切削することによって複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物を作製する。
次いで、チップ形状鋳造物を圧縮又は塑性加工法的手段を用いて予備成形し、均質化熱処理を施しても良い。この際の熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、処理時間が1分〜1500分(又は24時間)とすることが好ましい。また、前記予備成形した成形物に、150℃〜450℃の温度で1分〜1500分(又は24時間)の熱処理を施しても良い。
チップ形状の鋳造物は例えばチクソーモールドの原料に一般的に用いられている。
尚、チップ形状鋳造物とセラミック粒子とを混合したものを圧縮又は塑性加工法的手段を用いて予備成形し、均質化熱処理を施しても良い。また、チップ形状鋳造物を予備成形する前に、付加的に強歪加工を施しても良い。
次に、前記チップ形状鋳造物に塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、実施の形態6の場合と同様に種々の方法を用いることができる。
このように塑性加工を行った塑性加工物は、常温において長周期積層構造の結晶組織を有する。この長周期積層構造相の少なくとも一部は湾曲又は屈曲している。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
前記チップ形状鋳造物に塑性加工を行った後の塑性加工物に熱処理を施しても良い。この熱処理条件は、温度が400℃〜550℃、熱処理時間が1分〜1500分(又は24時間)とすることが好ましい。この熱処理を行った後の塑性加工物については、熱処理を行う前の塑性加工物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。また、熱処理後の塑性加工物にも熱処理前と同様に、常温において長周期積層構造の結晶組織を有する。この長周期積層構造相の少なくとも一部が湾曲又は屈曲している。
上記実施の形態12では、鋳造物を切削することによってチップ形状鋳造物を作製することにより、組織が微細化するので、実施の形態6に比べてよりより高強度・高延性・高靭性の塑性加工物などを作製することが可能となる。また、本実施の形態によるマグネシウム合金は実施の形態1〜6によるマグネシウム合金に比べて亜鉛及び希土類元素がより低濃度であっても高強度及び高靭性の特性を得ることができる。
上記実施の形態7〜12によれば、マグネシウム合金の拡大した用途、例えば強度及び靭性共に高性能が要求されるハイテク用合金としての用途に対して、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供することができる。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態13)
本発明の実施の形態13によるマグネシウム合金は、Mg、Zn及びGd又はTb又はTm又はLuを含む3元以上の合金である。このマグネシウム合金はZnをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgから成り、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすような組成範囲を有する。この組成範囲は図24に示すA−B−C−D−Eの線で囲む範囲である。また、aとbは下記式(1')〜(3')を満たすような組成範囲を有することがより好ましい。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.5≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
尚、Gdのさらに好ましい上限含有量は、経済性及び比重の増加を考慮すると、3原子%未満である。
また、前記マグネシウム合金におけるGdの含有量とZnの含有量の比は、2:1又はそれに近い比であることが特に好ましい。このような含有量の比にすることより高強度高靭性を特に向上させることができる。
また、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
また、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.5≦b+c+d≦6.0
また、前記マグネシウム合金にDy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超1.5原子%以下含有することも可能である。また、前記マグネシウム合金にYを合計で0原子%超1.0原子%以下含有することも可能である。これらの希土類元素を含有させることにより、長周期積層構造相の形成を促進させることができる。
また、前記マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有することも可能である。これらの元素を含有することにより、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
上記の組成からなるマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。このマグネシウム合金鋳造物には長周期積層構造相が形成されていない。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は、温度が300℃以上550℃以下、処理時間が10分以上24時間未満とすることが好ましい。この熱処理によってマグネシウム合金に長周期積層構造相が形成される。
次に、前記マグネシウム合金鋳造物に300℃以上450℃以下の温度で塑性加工を行う。この塑性加工の方法としては、例えば押出し、ECAE(equal-channel-angular-extrusion)加工法、圧延、引抜及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW(摩擦攪拌溶接)などの塑性変形を伴う加工を用いる。
上記のように塑性加工を行った塑性加工物は、常温において少なくとも一部が湾曲又は屈曲した長周期積層構造相の結晶組織を有し、マグネシウム合金の結晶粒径は100nm以上500μm以下である。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。また、前記塑性加工物はhcp−Mgを有する。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態14)
本発明の実施の形態14によるマグネシウム合金は、鋳造物を切削することによって作られた複数の数mm角以下のチップ形状鋳造物に適用するものであり、Mg、Zn及びGd又はTb又はTm又はLuを含む3元以上の合金である。このマグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgから成り、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすような組成範囲を有する。この組成範囲は図25に示すA−B−C−D−Eの線で囲む範囲である。また、aとbは下記式(1')〜(3')を満たすような組成範囲を有することがより好ましい。
(1)0.1≦a≦5.0
(2)0.25≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(1')0.1≦a≦3.0
(2')0.25≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
尚、Gdのさらに好ましい上限含有量は、経済性及び比重の増加を考慮すると、3原子%未満である。
また、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.25≦b+c≦6.0
また、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことも可能である。これらの元素を含有することにより、結晶粒を微細化させる効果、金属間化合物を析出させる効果が得られる。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.1≦b+c+d≦6.0
また、前記マグネシウム合金にDy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超1.5原子%以下含有することも可能である。また、前記マグネシウム合金にYを合計で0原子%超1.0原子%以下含有することも可能である。これらの希土類元素を含有させることにより、長周期積層構造相の形成を促進させることができる。
また、前記マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有することも可能である。これらの元素を含有することにより、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
上記のマグネシウム合金を溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作り、インゴットから所定形状に切り出す。この工程は実施の形態13と同様である。
次いで、マグネシウム合金鋳造物に熱処理を施す。この際の熱処理条件は実施の形態13と同様である。尚、この熱処理工程は、チップ形状の切削物を作った後に行っても良い。
上記マグネシウム合金鋳造物を切削することによってチップ形状の切削物を作る。この工程は実施の形態7と同様である。
次に、前記切削物に300℃以上450℃以下の温度で塑性加工による固化成形を行うことにより、長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る。尚、この切削物を固化成形する前に、ボールミルや繰り返し加工処理を加えても良い。また、固化成形後に、さらに塑性加工やブラスト加工を加えても良いし、180℃以上450℃以下の温度で10分以上24時間未満の時間で熱処理を施しても良い。また、前記マグネシウム合金鋳造物をセラミック粒子や繊維などと複合化しても良いし、前記切削物をセラミック粒子や繊維などと混合しても良い。
上記のように塑性加工を行った固化成形物は、常温において少なくとも一部が湾曲又は屈曲した長周期積層構造相の結晶組織を有し、マグネシウム合金の結晶粒径は100nm以上500μm以下である。また、前記塑性加工物は、Mgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していても良い。また、前記塑性加工物はhcp−Mgを有する。前記塑性加工を行った後の塑性加工物については、塑性加工を行う前の鋳造物に比べてビッカース硬度及び降伏強度がともに上昇する。
上記実施の形態13、14によれば、マグネシウム合金の拡大した用途、例えば強度及び靭性共に高性能が要求されるハイテク用合金としての用途に対して、強度及び靭性ともに実用に供するレベルにある高強度高靭性金属及びその製造方法を提供することができる。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
(実施の形態15)
本発明の実施の形態15によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法におけるマグネシウム合金鋳造物を作る工程以外については、実施の形態6と同様であるので、説明を省略する。
以下、本実施の形態によるマグネシウム合金鋳造物を作る工程について説明する。
まず、希土類元素を含有する鉱石を製錬及び精錬することによって得られ、複数種類の希土類元素が含有された希土類合金を準備する。この希土類合金としては、イオン吸着鉱、ゼノタイムなどの長周期積層構造相を形成する希土類元素を多く含むものを用いても良い。
前記イオン吸着鉱は、Yが64.1重量%程度含有されている。また、前記ゼノタイムは、Yが55.0〜60.8重量%程度含有されている。
尚、天然鉱石から目的の金属成分を取り出す過程を製錬といい、これで得られた粗金属の純度を高め、あるいは成分調整をすることを精錬という。また、高純度の希土類元素は公知の手法である製錬及び精錬の過程を経ることにより取り出されるが、前記希土類合金は、最終的に取り出される高純度の個々の希土類元素となる前の段階の希土類金属であり、最終的に取り出される高純度の希土類元素より低コストで得られる希土類合金を意味する。低コストで得られる理由は、分離プロセスを減らせるからであり、また市場性が高く高価な希土を分離した後の残部を用いることで安価に入手できるからである。前記希土類合金は、例えば、Nd、Ce、軽希土類元素などの元素を抽出した後の残部であっても良い。
また、前記希土類合金は、長周期積層構造相を形成する希土類元素であるY、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上、好ましくは66原子%以上含有し、残部が他の希土類元素(長周期積層構造相を形成しない希土類元素、即ちY、Dy、Ho、Er、Gd、Tb、Tm及びLu以外の希土類元素)及び不可避的不純物からなることが好ましい。
次に、実施の形態1〜5のいずれかの組成の希土類元素を含有するマグネシウム合金となるように、前記希土類合金とマグネシウムと亜鉛を出発原料とし、溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。尚、前記希土類合金としては、複数種類の希土類合金を混合したものを用いても良い。
鋳造時の冷却速度は1000K/秒以下であり、より好ましくは100K/秒以下である。このマグネシウム合金鋳造物としては、インゴットから所定形状に切り出したものを用いる。
尚、Gd、Tb、Tm及びLuは熱処理することによって長周期積層構造相を形成する希土類元素であり、Y、Dy、Ho及びErは熱処理しなくても長周期積層構造相を形成する希土類元素である。
上記実施の形態15においても実施の形態6と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、出発原料の一部としての希土類合金を上述したような方法で準備するため、希土類元素の材料費を低く抑えることができる。
(実施の形態16)
本発明の実施の形態16によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法におけるマグネシウム合金鋳造物を作る工程以外については、実施の形態12と同様であり、またマグネシウム合金鋳造物を作る工程については実施の形態15と同様である。
上記実施の形態16においても実施の形態12と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、実施の形態15と同様に希土類元素の材料費を低く抑えることができる。
(実施の形態17)
本発明の実施の形態17によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法におけるマグネシウム合金鋳造物を作る工程以外については、実施の形態13と同様であるので、説明を省略する。
以下、本実施の形態によるマグネシウム合金鋳造物を作る工程について説明する。
まず、希土類元素を含有する鉱石を製錬及び精錬することによって得られ、複数種類の希土類元素が含有された希土類合金を準備する。
尚、実施の形態15の場合と同様に、前記希土類合金は、最終的に取り出される高純度の個々の希土類元素となる前の段階の希土類金属であり、最終的に取り出される高純度の希土類元素より低コストで得られる希土類合金を意味する。低コストで得られる理由は、分離プロセスを減らせるからであり、また市場性が高く高価な希土を分離した後の残部を用いることで安価に入手できるからである。前記希土類合金は、例えば、Nd、Ce、軽希土類元素などの元素を抽出した後の残部を用いても良い。
また、前記希土類合金は、長周期積層構造相を形成する希土類元素であるGd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上、好ましくは66原子%以上含有し、残部が他の希土類元素(長周期積層構造相を形成しない希土類元素、即ちY、Dy、Ho、Er、Gd、Tb、Tm及びLu以外の希土類元素)及び不可避的不純物からなることが好ましい。
次に、実施の形態13の組成の希土類元素を含有するマグネシウム合金となるように、前記希土類合金とマグネシウムと亜鉛を出発原料とし、溶解して鋳造し、マグネシウム合金鋳造物を作る。尚、前記希土類合金としては、複数の前記中間生成物を混合したものを用いても良い。
上記実施の形態17においても実施の形態13と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、出発原料の一部としての希土類合金を上述したような方法で準備するため、希土類元素の材料費を低く抑えることができる。
(実施の形態18)
本発明の実施の形態18によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
本実施の形態によるマグネシウム合金の製造方法におけるマグネシウム合金鋳造物を作る工程以外については、実施の形態14と同様であり、またマグネシウム合金鋳造物を作る工程については実施の形態17と同様である。
上記実施の形態18においても実施の形態14と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、実施の形態17と同様に希土類元素の材料費を低く抑えることができる。
(実施の形態19)
本発明の実施の形態19によるマグネシウム合金の製造方法について説明する。
急速凝固粉末の作製とその固化成形には、クローズドP/Mプロセッシング・システムを使用する。作製に使用するシステムを図29及び図30に示す。図29は、ガス・アトマイズ法による急速凝固粉末の作製と、作製された粉末から、ビレットを押出成形してビレットを作製する工程を示している。図30は、作製したビレットを押出成形するまでを示している。図29及び図30を用いて、急速凝固粉末の作製と固化成形について、詳しく説明する。
図29において、高圧ガス・アトマイザ100を用いて目的とする成分比のマグネシウム合金の粉末を作製する。これは、まず、溶解室110中のるつぼ116中で、目的の成分比を有する合金を誘導コイル114により溶解する。この際に用いる合金の材料を準備する方法は、実施の形態15における溶解前の材料を準備する方法と同様に、希土類元素を含有する鉱石を製錬及び精錬することによって得られ、複数種類の希土類元素が含有された希土類合金を用いる。但し、本実施の形態でのマグネシウム合金は、一般式で、Mg(100−x−y)Zn(1<x<5、0.3<y<6;x、yはいずれも原子%)のような組成を有する。
前記の溶解した合金を、ストッパ112を上げて噴出させ、それにノズル132から高圧の不活性ガス(例えば、ヘリウムガスやアルゴンガス)を吹きつけて噴霧することで、合金の粉末を作製する。ノズル等はヒータ131で加熱されている。また、アトマイズ室130は、酸素分析器162や真空ゲージ164で監視されている。
作製した合金粉末は、サイクロン分級機140を介して、真空グローブ・ボックス200中のホッパ220中に収集される。以後の処理は、この真空グローブ・ボックス200の中で行われる。次に、真空グローブ・ボックス200中で徐々に細かいふるい230にかけることにより、目的とする細かさの粉末を得る。本発明では、粒径32μm以下の粉末を得ている。尚、粉末に代えて薄帯又は細線を得ることも可能である。
この合金の粉末から、ビレットを作製するために、まず、予備圧縮を真空ホットプレス機240を用いて行う。この場合の真空ホットプレス機は、30トンのプレスを行うことができるものを用いた。
まず、合金粉末をホットプレス機240を用いて銅の缶254に充填し、上からキャップ252をかぶせる。キャップ252と缶254とを、回転盤258で回転しながら、溶接機256で溶接してビレット260を作製する。このビレット260の漏れチェックのため、バルブ262を介して真空ポンプに接続することで、ビレット260の漏れをチェックする。漏れが無かった場合、バルブ262を閉じて、バルブ262を付けたまま容器ごと、真空グローブ・ボックス200のエントランス・ボックス280から合金のビレット260を取り出す。
取り出したビレット260は、図30に示すように、加熱炉に入れて予備加熱を行いながら、真空ポンプに接続してガス抜きを行う(図30(a)参照)。次にビレット260のキャップを圧搾してから、スポット溶接機340でスポット溶接して、ビレット260と外部との接続を遮断する(図30(b)参照)。そして、容器ごと、合金のビレットを押出プレス機400にかけて、最終形状に成形する(図30(c)参照)。押出プレス機は、メイン・プレス(メイン・ステム450側)は100トン、バック・プレス(バック・ステム470側)は20トンの性能を有し、ヒータ410でコンテナ420を加熱することで、押出温度を設定することができる。
本実施の形態の急速凝固粉末は、上述のように、高圧Heガスアトマイズ法により作製する。そして、作製した粒径32μm以下の粉末を銅製の缶に充填し、それを真空封入することでビレットを作製し、押出温度623〜723K、押出し比10:1の押出成形により固化成形を行った。この押出成形により、粉末に圧力とせん断が加わり、緻密化と粉末間の結合が達成される。なお、圧延法や鍛造法による成形でもせん断が生じる。
上記実施の形態19によれば、高強度高靭性のマグネシウム合金を提供することができる。このマグネシウム合金は、平均結晶粒径が1μm以下の微細な結晶組織を有する。
また、本実施の形態では、実施の形態15と同様に希土類元素の材料費を低く抑えることができる。
(実施例)
以下、実施例について説明する。
実施例1では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Yの3元系マグネシウム合金を用いる。
実施例2では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Dyの3元系マグネシウム合金を用いる。
実施例3では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Hoの3元系マグネシウム合金を用いる。
実施例4では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Erの3元系マグネシウム合金を用いる。
実施例5では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1原子%Y−1.5原子%Dyの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例6では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1原子%Y−1.5原子%Gdの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例7では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1原子%Y−1.5原子%Erの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例5及び7それぞれのマグネシウム合金は、長周期積層構造を形成する希土類元素を複合的に添加したものである。また、実施例6マグネシウム合金は、長周期積層構造を形成する希土類元素と長周期積層構造を形成しない希土類元素とを複合的に添加したものである。
実施例8では、97.5原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Y−0.5原子%Laの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例9では、97.5原子%Mg−0.5原子%Zn−1.5原子%Y−0.5原子%Ybの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例8及び9それぞれのマグネシウム合金は、長周期積層構造を形成する希土類元素と長周期積層構造を形成しない希土類元素とを複合的に添加したものである。
実施例10では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1.5原子%Y−1原子%Dyの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例11では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1.5原子%Y−1原子%Gdの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例12では、96.5原子%Mg−1原子%Zn−1.5原子%Y−1原子%Erの4元系マグネシウム合金を用いる。
実施例13では、96原子%Mg−1原子%Zn−3原子%Yの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例1では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Laの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例2では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Ybの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例3では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Ceの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例4では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Prの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例5では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Ndの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例6では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Smの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例7では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Euの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例8では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Tmの3元系マグネシウム合金を用いる。
比較例9では、97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%Luの3元系マグネシウム合金を用いる。
参考例としては、98原子%Mg−2原子%Yの2元系マグネシウム合金を用いる。
(鋳造材の組織観察)
まず、Arガス雰囲気中で高周波溶解によって実施例1〜13、比較例1〜9及び参考例それぞれの組成のインゴットを作製し、これらのインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。この切り出した鋳造材の組織観察をSEM、XRDによって行った。これらの結晶組織の写真を図1〜図7に示す。
図1には、実施例1及び比較例1、2それぞれの結晶組織の写真が示されている。図2には、実施例2〜4の結晶組織の写真が示されている。図3には、実施例5〜7の結晶組織の写真が示されている。図4には、実施例8、9の結晶組織の写真が示されている。図5には、実施例10〜12の結晶組織の写真が示されている。図6には、比較例3〜9の結晶組織の写真が示されている。図7には、参考例の結晶組織の写真が示されている。図10には、実施例13の結晶組織の写真が示されている。
図1〜図5に示すように、実施例1〜13のマグネシウム合金には長周期積層構造の結晶組織が形成されている。これに対し、図1、図6及び図7に示すように、比較例1〜9及び参考例それぞれのマグネシウム合金は長周期積層構造の結晶組織が形成されていない。
実施例1〜13及び比較例1〜9それぞれの結晶組織から以下のことが確認された。
Mg−Zn−RE3元系鋳造合金では、REがY、Dy、Ho、Erの場合に長周期積層構造が形成されるのに対し、REがLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ybの場合は長周期積層構造が形成されない。Gdは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Ybと少し挙動が異なっており、Gdの単独添加(Znは必須)では長周期積層構造は形成されないが、長周期積層構造を形成する元素であるY、Dy、Ho、Erとの複合添加では2.5原子%でも長周期積層構造が形成される(実施例6、11参照)。
また、Yb、Tb、Sm、Nd及びGdは、Mg−Zn−RE(RE=Y、Dy、Ho、Er)に添加する場合には、5.0原子%以下なら、長周期積層構造の形成を妨げない。また、La、Ce、Pr、Eu及びMmは、Mg−Zn−RE(RE=Y、Dy、Ho、Er)に添加する場合には、5.0原子%以下なら、長周期積層構造の形成を妨げない。
比較例1の鋳造材の結晶粒径は10〜30μm程度であり、比較例2の鋳造材の結晶粒径は30〜100μm程度であり、実施例1の鋳造材の結晶粒径は20〜60μmであり、いずれも粒界に多量の晶出物が観察された。また、比較例2の鋳造材の結晶組織では粒内に微細な析出物が存在していた。
(鋳造材のビッカース硬度試験)
実施例1、比較例1及び比較例2それぞれの鋳造材をビッカース硬度試験により評価した。比較例1の鋳造材のビッカース硬度は75Hvであり、比較例2の鋳造材のビッカース硬度は69Hvであり、実施例1の鋳造材のビッカース硬度は79Hvであった。
(ECAE加工)
上記の実施例1及び比較例1、2それぞれの鋳造材に400℃でECAE加工を施した。ECAE加工法は、試料に均一なひずみを導入するためにパス毎に試料長手方向を90度ずつ回転させる方法を用いて、パス回数を4回及び8回で行った。この際の加工速度は2mm/秒の一定である。
(ECAE加工材のビッカース硬度試験)
ECAE加工を施した試料をビッカース硬度試験により評価した。4回のECAE加工後の試料のビッカース硬度は、比較例1の試料が82Hv、比較例2の試料が76Hv、実施例1の試料が96Hvであり、ECAE加工前の鋳造材と比較して10〜20%の硬さの向上が見られた。8回のECAE加工をした試料では、4回のECAE加工をした試料とほとんど硬さに変化はなかった。
(ECAE加工材の結晶組織)
ECAE加工を施した試料の組織観察をSEM、XRDによって行った。比較例1、2の加工材では粒界に存在していた晶出物が数μmオーダーに分断され、微細に均一分散しているのに対し、実施例1の加工材では晶出物は微細に分断されることなく、マトリックスと整合性を保ったまま剪断を受けているのが確認された。8回のECAE加工をした試料では、4回のECAE加工をした試料とほとんど組織に変化はなかった。
(ECAE加工材の引張試験)
ECAE加工を施した試料を引張試験により評価した。引張試験は、押出し方向に対して平行に初期ひずみ速度5×10−4/秒の条件で行った。4回のECAE加工をした試料の引張特性については、比較例1、2の試料では200MPa以下の降伏応力と2〜3%の伸びしか示さないのに対し、実施例1の試料では260MPaの降伏応力と15%の伸びを示した。これは、鋳造材の特性が0.2%耐力100MPa、伸び4%であるのを遥かに凌駕する特性であった。
(ECAE加工材の熱処理)
4回のECAE加工を施した試料を225℃で等温保持し、保持時間と硬度変化の関係を調査した。実施例1の試料では、225℃の熱処理を施すことで硬さがさらに向上し、引張試験による降伏応力は300MPaまで向上できることがわかった。
また、実施例1の鋳造材を375℃までECAEの加工温度を下げると(即ち実施例1の鋳造材を400℃ではなく375℃で4回のECAE加工を施すと)、実施例1のECAE加工材の降伏応力は300MPaと12%の伸びを示した。そして、このECAE加工を施した試料に225℃の熱処理を施すことにより、引張試験による降伏応力は320MPaまで向上できることが確認された。
(実施例13の鋳造合金の押出し)
実施例13の鋳造合金は、長周期積層構造を持つ96原子%Mg−1原子%Zn−3原子%Yの3元系マグネシウム合金である。この鋳造合金を、温度が300℃、断面減少率が90%、押出し速度2.5mm/秒の条件で押出し加工した。この押出し後のマグネシウム合金は、室温において420MPaの引張降伏強度と2%の伸びを示した。
(実施例13〜34及び比較例11〜13の鋳造合金の押出し後の特性)
表1及び表2に示す組成を有するMg−Zn−Y合金の鋳造材を作製し、その鋳造材に表1及び表2に示す押出し温度及び押出し比で押出し加工を行った。この押出し加工後の押出し材を、表1及び表2に示す試験温度で引張試験により0.2%耐力(降伏強度)、引張強さ、伸びを測定した。また、押出し材の硬さ(ビッカース硬度)についても測定した。これらの測定結果を表1及び表2に示している。
表1及び表2は、ZnとYの添加量が異なる種々のMg−Zn−Y合金鋳造材を、表に示す押出し温度と押出し比で、押出し速度2.5mm/秒で押出し加工を行った後の室温における引張試験及び硬さ試験の結果を示している。
尚、表2に示す押出し比1は、ホットプレスを意味しており、1GPaの圧力を60秒間負荷したことを示しており、加工率は0である。
実施例29の組成を有するマグネシウム合金の鋳造材の結晶組織を図11に示す。
(実施例35〜40及び比較例14〜18の鋳造合金の押出し後の特性)
表3に示す組成を有する3元系のマグネシウム合金の鋳造材を作製し、その鋳造材に表3に示す押出し温度及び押出し比で押出し加工を行った。この押出し加工後の押出し材を、表3に示す試験温度で引張試験により0.2%耐力(降伏強度)、引張強さ、伸びを測定した。また、押出し材の硬さ(ビッカース硬度)についても測定した。これらの測定結果を表3に示している。
97原子%Mg−1原子%Zn−2原子%RE鋳造材を種々の押出し温度で、押出し比10、押出し速度2.5mm/秒で押出し加工を行った後の室温における引張試験及び硬さ試験の結果を示している。表中に(H.T)と表わしている合金は、押出し加工前に500℃で10時間の均質化熱処理を施したことを示している。
(実施例41〜46の鋳造合金の押出し後の特性)
表4に示す組成を有する4元系のマグネシウム合金の鋳造材を作製し、その鋳造材に表4に示す押出し温度及び押出し比で押出し加工を行った。この押出し加工後の押出し材を、表4に示す試験温度で引張試験により0.2%耐力(降伏強度)、引張強さ、伸びを測定した。これらの測定結果を表4に示している。
表4の実施例41,42は、Mg−Zn−Y−X系合金の鋳造材を、種々の押出し温度で、押出し比10、押出し速度2.5mm/秒で押出し加工を行った後の室温における引張試験及び硬さ試験の結果を示している。また、表4の実施例43〜46は、Mg−Zn−Y−X系合金の鋳造材に500℃の温度で10時間の熱処理を施した後、350℃の押出し温度で、押出し比10、押出し速度2.5mm/秒で押出し加工を行った後の室温における引張試験及び硬さ試験の結果を示している。
図31(A)は、実施例43のMg−2原子%Zn−2原子%Y−0.2原子%Zrの鋳造材の結晶組織を示す写真であり、図31(B)は、Mg−2原子%Zn−2原子%Yの鋳造材の結晶組織を示す写真である。
図31(A)、(B)に示すように、実施例43のZrを添加した鋳造材はMgZnREのような化合物の析出が抑制され、長周期積層構造相の形成が促進され、結晶組織が微細化されることが確認された。また、表4に示すように、Zrを添加したマグネシウム合金はZrを添加していないものに比べて延性を損なうことなく高い降伏強度が得られた。この理由は、長周期積層構造相の形成が促進されたためと考えられる。
(実施例47〜62の鋳造合金の押出し後の特性)
表5に示す組成を有するMg−Zn−Y合金のインゴットを高周波溶解炉を用いてArガス雰囲気中で溶製し、そのインゴットを切削することによってチップ形状の鋳造材を作る。次いで、チップ材を銅製の缶に充填した後で150℃で加熱真空脱ガスを行って封止した。その後、缶に充填されたチップ材を缶ごと、表5に示す押出し温度及び押出し比で押出し加工を行った。この押出し加工後の押出し材を、表5に示す試験温度で引張試験により0.2%耐力(降伏強度)、引張強さ、伸びを測定した。また、押出し材の硬さ(ビッカース硬度)についても測定した。これらの測定結果を表5に示している。
表5は、ZnとYの添加量が異なるMg−Zn−Y合金の鋳造材を切削することによって作製したチップ材を種々の押出し温度と押出し比で、押出し速度2.5mm/秒で押出し固化した試料の室温における引張試験及び硬さ試験の結果を示している。
(鋳造材及び鋳造後に熱処理した材料の組織観察)
まず、Arガス雰囲気中で高周波溶解によって実施例68(Mg96.5−Zn−Gd2.5)の組成のインゴットを作製し、このインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。この切り出した鋳造材の組織観察をSEMによって行った。また、この鋳造材を200℃、300℃、500℃それぞれの温度で熱処理した後に組織観察をSEM(走査型電子顕微鏡)によって行った。これらの結晶組織の写真を図12〜図15に示す。図12は、熱処理を行っていない鋳造材の結晶組織を示す写真である。図13は、鋳造材を200℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。図14は、鋳造材を300℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。図15は、鋳造材を500℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。
図12に示すように、熱処理前の鋳造材は長周期積層構造相が形成されていない。これに対し、図13〜図15に示すように、熱処理することによって長周期積層構造相が形成されることが確認された。
次に、Arガス雰囲気中で高周波溶解によって実施例73(Mg97.5−Zn0.5−Gd)、実施例66(Mg97−Zn−Gd)、実施例67(Mg96.75−Zn−Gd2.25)、実施例68(Mg96.5−Zn−Gd2.5)の組成のインゴットを作製し、このインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。これらの切り出した鋳造材を773Kの温度で熱処理した。これらの組織観察をSEMによって行った。これらの結晶組織の写真を図16〜図19に示す。
図16(a)は、実施例73の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、図16(b)は実施例73の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。図17(a)は、実施例66の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、図17(b)は実施例66の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。図18(a)は、実施例67の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、図18(b)は実施例67の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。図19(a)は、実施例68の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、図19(b)は実施例68の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。
これらの図に示すように、長周期積層構造相が形成されていない鋳造材を熱処理することにより、長周期積層構造相を形成することができることが確認された。
(鋳造材を熱処理した後の押出し材の組織観察)
鋳造材を500℃の温度で熱処理した後の前記実施例66、67、68、73の合金を350℃の温度、押出比10で押出し加工を施した。この押出し材の組織観察をSEMによって行った。これらの結晶組織の写真を図20〜23に示す。図20は、実施例66の結晶組織のSEM写真である。図21は、実施例67の結晶組織のSEM写真である。図22は、実施例68の結晶組織のSEM写真である。図23は、実施例73の結晶組織のSEM写真である。
図20〜23に示すように、押出し加工後のマグネシウム合金における長周期積層構造相は一部が湾曲又は屈曲していることが確認された。また、hcp構造マグネシウム相の転位密度に比べて前記長周期積層構造相の転位密度が少なくとも1桁小さいことが確認された。
また、図26に示すようにマグネシウム合金がMgGd化合物を有していることが確認された。
また、図27に示すように、マグネシウム合金中のhcp構造マグネシウム相が、塑性加工を施した従来のマグネシウム合金中のhcp構造マグネシウム相に比べて双晶が少ないか、又は無いことが確認された。従って、このようなマグネシウム合金の場合、変形時に双晶変形を起こし難いことが考えられる。
また、実施例のマグネシウム合金の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることが確認された。結晶粒径が100nm未満と小さい場合は長周期積層構造の湾曲が生じない。
(鋳造材を熱処理した後の押出し材の機械的特性)
Arガス雰囲気中で高周波溶解によって表6に示す実施例63〜76それぞれの組成のインゴットを作製し、このインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。この切り出した鋳造材を773K(500℃)の温度で10時間熱処理し、これを623Kの温度、押出比10で押出し加工を行った。これらの押出し材を室温で引張試験を行い、降伏強度、最大強度及び伸びを測定した。これらの測定結果は表6に示している。
また、実施例63、66、69、71、73及び75それぞれの押出し材を473Kの温度で引張試験を行い、降伏強度、最大強度及び伸びを測定した。これらの測定結果は表7に示している。
また、Arガス雰囲気中で高周波溶解によって表8に示す比較例19の組成のインゴットを作製し、このインゴットからφ10×60mmの形状に切り出す。この切り出した鋳造材を室温で引張試験を行い、降伏強度、最大強度及び伸びを測定した。これらの測定結果は表8に示している。
比較例19と実施例66は同じ組成のマグネシウム合金であるが、鋳造後に熱処理を行わずに押出し加工を行った比較例19では、降伏強度が288MPa、最大強度が323MPa、伸びが7.7%であるのに対し、鋳造後に熱処理を行った後に押出し加工を行った実施例66では、降伏強度が369MPa、最大強度が405MPa、伸びが9.4%であった。この結果から、熱処理することによって降伏強度が28%上昇し、最大強度が25%上昇し、伸びが22%上昇することが確認された。従って、熱処理によってマグネシウム合金に長周期積層構造相を形成し、押出し加工によって長周期積層構造相の一部を湾曲又は屈曲させることにより、高強度高靭性のマグネシウム合金を作製することができることを確認した。
また、湾曲又は屈曲した長周期積層構造相にはランダム粒界が含まれている。このランダム粒界によってマグネシウム合金が高強度化され、高温での粒界すべりが抑制されると考えられる。従って、表7に示すように高温で高強度が得られる。
また、hcp構造マグネシウム相に高密度の転位を含むことによりマグネシウム合金が高強度化され、長周期積層構造相の転位密度が低いことによりマグネシウム合金の延性の向上と高強度化が実現されると考えられる。
また、上記の結果は、マグネシウム合金に限らず、他の金属においても、長周期積層構造相を形成し、その金属を塑性加工することによって長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させることにより、その金属を高強度高靭性化させることができることを示唆している。
表6に示すように、実施例63〜74のMg−Zn−Gd合金では、比較例19を超える降伏強度、例えば290MPa以上を有すると共に、伸びが3%以上であった。また、表7に示す実施例では、473Kの温度での降伏強度が200MPa以上を有していた。従って、実施例63〜74は十分に実用に供するレベルにある機械的強度を備えているといえる。従って、以下の組成範囲であれば高強度高靭性マグネシウム合金を得ることができると考えられる。
高強度高靭性マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gdをb原子%含有し、残部がMgから成り、aとbは下記式(1)〜(3)を満たす。また、より好ましいマグネシウム合金は、下記式(1')〜(3')を満たす。
(1)0.2≦a≦5.0
(2)0.5≦b≦5.0
(3)0.5a−0.5≦b
(1')0.2≦a≦3.0
(2')0.5≦b≦5.0
(3')2a−3≦b
また、前記高強度高靭性マグネシウム合金にYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有させても良く、cは下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
(4)0≦c≦3.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
このような元素を含有させることにより、マグネシウム合金の結晶粒を微細化すること、金属間化合物の析出を促進させることができる。
また、前記高強度高靭性マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有させても良く、cは下記式(4)及び(5)を満たすことが好ましい。
(4)0≦c≦2.0
(5)0.5≦b+c≦6.0
このような元素を含有させることにより、マグネシウム合金の結晶粒を微細化すること、金属間化合物の析出を促進させることができる。
また、前記高強度高靭性マグネシウム合金にYb、Tb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有させ、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有させても良く、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことが好ましい。
(4)0≦c≦3.0
(5)0≦d≦2.0
(6)0.5≦b+c+d≦6.0
このような元素を含有させることにより、マグネシウム合金の結晶粒を微細化すること、金属間化合物の析出を促進させることができる。
また、前記高強度高靭性マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有させても良い。これにより、高強度高靭性を維持したまま、他の性質を改善することができる。例えば、耐食性や結晶粒微細化などに効果がある。
(鋳造材を熱処理した後の押出し材の組織観察)
Mg96.5−Zn−Gd2.5鋳造材(実施例68)を500℃の温度で熱処理した後に、前記鋳造材を350℃の温度、押出比10、押出速度2.5mm/秒で押出し加工を施した。この押出し材の組織観察をTEM(透過型電子顕微鏡)によって行った。この押出し材の結晶組織の写真を図27に示す。
図27に示すように、押出し加工後のマグネシウム合金においては、任意の角度で長周期積層構造相の一部が連続的に湾曲及び屈曲している組織が観察された。
(鋳造材を押出した後の組織観察)
Mg96−Zn−Y鋳造材(実施例21)を350℃の温度、押出比10、押出速度2.5mm/秒で押出し加工を施した。この押出し材の組織観察をSEMによって行った。この押出し材の結晶組織の写真を図28に示す。
図28に示すように、押出し加工後のマグネシウム合金においては、任意の角度で長周期積層構造相の一部が連続的に湾曲及び屈曲している組織が観察された。また、長周期積層構造相の少なくとも一部が、2H構造を有するMgと層状(ラメラ状)に存在することが観察された。ここでいう2H構造とは、六方最密構造(HCP)のことである。ここでいう長周期積層構造相とは、HCP構造における底面原子層並びが底面法線方向に長周期規則をもって繰り返される構造をいう。なお、本来のHCPマグネシウム金属は2周期(2H)構造をとる。
尚、本発明は上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
また、前記長周期積層構造相は濃度変調を有する。前記濃度変調とは、溶質元素濃度が原子層毎に周期的に変化する事をいう。
実施例1、比較例1及び比較例2それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 実施例2〜4それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 実施例5〜7それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 実施例8及び9それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 実施例10〜12それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 比較例3〜9それぞれの鋳造材の結晶組織を示す写真である。 参考例の鋳造材の結晶組織を示す写真である。 本発明の実施の形態1によるマグネシウム合金の組成範囲を示す図である。 本発明の実施の形態7によるマグネシウム合金の組成範囲を示す図である。 実施例13の鋳造材の結晶組織を示す写真である。 実施例29の鋳造材の結晶組織を示す写真である。 熱処理を行っていない鋳造材の結晶組織を示す写真である。 鋳造材を200℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。 鋳造材を300℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。 鋳造材を500℃の温度で熱処理した後に結晶組織を示す写真である。 (a)は、実施例73の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、(b)は、実施例73の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。 (a)は、実施例66の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、(b)は、実施例66の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。 (a)は、実施例67の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、(b)は、実施例67の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。 (a)は、実施例68の熱処理前のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真であり、(b)は、実施例68の熱処理後のマグネシウム合金の結晶組織を示す写真である。 実施例66の結晶組織のSEM写真である。 実施例67の結晶組織のSEM写真である。 実施例68の結晶組織のSEM写真である。 実施例73の結晶組織のSEM写真である。 本発明の実施の形態13によるマグネシウム合金の組成範囲を示す図である。 本発明の実施の形態14によるマグネシウム合金の組成範囲を示す図である。 Mg−Zn−Gd系鋳造押出し材のX線回折パターンを示す図である。 Mg96.5−Zn−Gd2.5鋳造材(実施例68)の熱処理後の押出し材の結晶組織を示す写真である。 Mg96−Zn−Y鋳造材(実施例21)の押出し材の結晶組織を示す写真である。 ガス・アトマイジング法による急速凝固粉末作製と押出ビレットの作製を行うシステムを示す図である。 ビレットを加熱押圧して、固化成形する過程を示す図である。 (A)は、実施例43のMg−2原子%Zn−2原子%Y−0.2原子%Zrの鋳造材の結晶組織を示す写真であり、(B)は、Mg−2原子%Zn−2原子%Yの鋳造材の結晶組織を示す写真である。

Claims (77)

  1. hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金からなり、
    前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、hcp構造マグネシウム相とラメラ状に存在し、
    前記ラメラ状に存在するラメラ組織の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とする高強度高靭性金属。
  2. マグネシウム合金に塑性加工を行った後の塑性加工物は、hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、
    前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、hcp構造マグネシウム相とラメラ状に存在し、
    前記ラメラ状に存在するラメラ組織の少なくとも一部が湾曲又は屈曲していることを特徴とする高強度高靭性金属。
  3. 請求項2において、前記塑性加工前のマグネシウム合金は、湾曲又は屈曲のない長周期積層構造の結晶組織を有することを特徴とする高強度高靭性金属。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、前記長周期積層構造相の湾曲又は屈曲している領域の一部がランダム粒界を含むことを特徴とする高強度高靭性金属。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項において、前記hcp構造マグネシウム相の転位密度に比べて前記長周期積層構造相の転位密度が少なくとも1桁小さいことを特徴とする高強度高靭性金属。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.5≦a≦5.0
    (2)1.0≦b≦5.0
    (3)0.5a≦b
  7. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.2≦a≦5.0
    (2)0.2≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  8. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.2≦a≦3.0
    (2)0.2≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  9. 請求項7又は8において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦y≦4.8
    (5)0.2≦b+y≦5.0
  10. 請求項6乃至9のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.2≦b+c≦6.0
  11. 請求項6乃至9のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.2≦b+c≦6.0
  12. 請求項6乃至9のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.2≦b+c+d≦6.0
  13. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.25≦a≦5.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)0.5a≦b
  14. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.1≦a≦5.0
    (2)0.1≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  15. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.1≦a≦3.0
    (2)0.1≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  16. 請求項14又は15において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦y≦4.9
    (5)0.1≦b+y≦5.0
  17. 請求項13乃至16のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  18. 請求項13乃至16のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  19. 請求項13乃至16のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.1≦b+c+d≦6.0
  20. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.2≦a≦5.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  21. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.2≦a≦3.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  22. 請求項20又は21において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.5≦b+c≦6.0
  23. 請求項20又は21において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.5≦b+c≦6.0
  24. 請求項20又は21において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.5≦b+c+d≦6.0
  25. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.1≦a≦5.0
    (2)0.25≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  26. 請求項1乃至5のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (1)0.1≦a≦3.0
    (2)0.25≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  27. 請求項25又は26において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.25≦b+c≦6.0
  28. 請求項25又は26において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.25≦b+c≦6.0
  29. 請求項25又は26において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.25≦b+c+d≦6.0
  30. 請求項20乃至29のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にDy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超1.5原子%以下含有する高強度高靭性金属。
  31. 請求項20乃至29のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYを合計で0原子%超1.0原子%以下含有する高強度高靭性金属。
  32. 請求項20乃至31のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で3原子%未満含有することを特徴とする高強度高靭性金属。
  33. 請求項6乃至32のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を鋳造時の原料の一部に用いて形成され、前記マグネシウム合金中の希土類元素の合計含有量が6.0原子%以下であることを特徴とする高強度高靭性金属。
  34. 請求項33において、前記希土類合金は、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上含有するとともにY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLu以外の希土類元素を合計で50原子%未満含有することを特徴とする高強度高靭性金属。
  35. 請求項6乃至34のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にAl、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有する高強度高靭性金属。
  36. 請求項6乃至35のいずれか一項において、前記マグネシウム合金はMgと希土類元素の化合物、MgとZnの化合物、Znと希土類元素の化合物及びMgとZnと希土類元素の化合物からなる析出物群から選択される少なくとも1種類の析出物を有していることを特徴とする高強度高靭性金属。
  37. 請求項6乃至36のいずれか一項において、前記マグネシウム合金の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることを特徴とする高強度高靭性金属。
  38. hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、hcp構造マグネシウム相とラメラ状に存在するマグネシウム合金を準備する工程と、
    前記マグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記ラメラ状に存在するラメラ組織を保持し、且つ前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
    を具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  39. hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金を準備する工程と、
    前記マグネシウム合金に塑性加工を行うことにより、前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
    を具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  40. 請求項38又は39において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.5≦a≦5.0
    (2)1.0≦b≦5.0
    (3)0.5a≦b
  41. 請求項38又は39において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.2≦a≦5.0
    (2)0.2≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  42. 請求項38又は39において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.2≦a≦3.0
    (2)0.2≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  43. 請求項41又は42において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦y≦4.8
    (5)0.2≦b+y≦5.0
  44. 請求項40乃至43のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.2≦b+c≦6.0
  45. 請求項40乃至43のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.2≦b+c≦6.0
  46. 請求項40乃至43のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.2≦b+c+d≦6.0
  47. hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備え、前記長周期積層構造相の少なくとも一部が、hcp構造マグネシウム相とラメラ状に存在するマグネシウム合金を準備する工程と、
    前記マグネシウム合金を切削することによってチップ形状の切削物を作る工程と、
    前記切削物に塑性加工による固化を行うことにより、前記ラメラ状に存在するラメラ組織を保持し、且つ前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
    を具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  48. hcp構造マグネシウム相及び長周期積層構造相を有する結晶組織を備えたマグネシウム合金を準備する工程と、
    前記マグネシウム合金を切削することによってチップ形状の切削物を作る工程と、
    前記切削物に塑性加工による固化を行うことにより、前記長周期積層構造相の少なくとも一部を湾曲又は屈曲させた塑性加工物を作る工程と、
    を具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  49. 請求項47又は48において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Yをb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.25≦a≦5.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)0.5a≦b
  50. 請求項47又は48において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.1≦a≦5.0
    (2)0.1≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  51. 請求項47又は48において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Dy、Ho及びErからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.1≦a≦3.0
    (2)0.1≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  52. 請求項50又は51において、前記マグネシウム合金にY、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でy原子%含有し、yは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦y≦4.9
    (5)0.1≦b+y≦5.0
  53. 請求項49乃至52のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  54. 請求項49乃至52のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  55. 請求項49乃至52のいずれか一項において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.1≦b+c+d≦6.0
  56. 請求項38又は39において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
    前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.2≦a≦5.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  57. 請求項38又は39において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
    前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.2≦a≦3.0
    (2)0.5≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  58. 請求項56又は57において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.5≦b+c≦6.0
  59. 請求項56又は57において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.5≦b+c≦6.0
  60. 請求項56又は57において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.5≦b+c+d≦6.0
  61. 請求項47又は48において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
    前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記チップ形状の切削物を作る工程との間又は前記チップ形状の切削物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.1≦a≦5.0
    (2)0.25≦b≦5.0
    (3)0.5a−0.5≦b
  62. 請求項47又は48において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Znをa原子%含有し、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でb原子%含有し、残部がMgからなり、aとbは下記式(1)〜(3)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であり、
    前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程と前記チップ形状の切削物を作る工程との間又は前記チップ形状の切削物を作る工程と前記塑性加工物を作る工程との間に、前記マグネシウム合金に熱処理を施す工程をさらに具備することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (1)0.1≦a≦3.0
    (2)0.25≦b≦5.0
    (3)2a−3≦b
  63. 請求項61又は62において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.25≦b+c≦6.0
  64. 請求項61又は62において、前記マグネシウム合金にLa、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.25≦b+c≦6.0
  65. 請求項61又は62において、前記マグネシウム合金にYb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.25≦b+c+d≦6.0
  66. 請求項56乃至65のいずれか一項において、前記マグネシウム合金は、Gd、Tb、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で3原子%未満含有することを特徴とする高強度高靭性金属。
  67. 請求項40乃至43、45、49乃至52、54、56、57、59、61、62、64のいずれか一項において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  68. 請求項40乃至44、49乃至53、56乃至58、61乃至63のいずれか一項において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、cは下記式(4)及び(5)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦2.0
    (5)0.1≦b+c≦6.0
  69. 請求項40乃至43、49乃至52、56、57、61、62のいずれか一項において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Yb、Sm及びNdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でc原子%含有し、La、Ce、Pr、Eu及びMmからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計でd原子%含有し、c及びdは下記式(4)〜(6)を満たすマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
    (4)0≦c≦3.0
    (5)0≦d≦2.0
    (6)0.1≦b+c+d≦6.0
  70. 請求項40乃至46、49乃至69のいずれか一項において、前記マグネシウム合金を準備する工程は、Al、Th、Ca、Si、Mn、Zr、Ti、Hf、Nb、Ag、Sr、Sc、B及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0原子%超2.5原子%以下含有するマグネシウム合金鋳造物を作る工程であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  71. 請求項40乃至46、49乃至70のいずれか一項において、前記マグネシウム合金鋳造物を作る工程は、希土類元素を含有する鉱石を精錬することによって得られ、複数の希土類元素が含有された希土類合金を鋳造時の原料の一部に用いて作られ、前記マグネシウム合金鋳造物中の希土類元素の合計含有量が6.0原子%以下であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  72. 請求項71において、前記希土類合金は、Y、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を合計で50原子%以上含有するとともにY、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びLu以外の希土類元素を合計で50原子%未満含有することを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  73. 請求項40乃至46、49乃至72のいずれか一項において、前記塑性加工を行う前のマグネシウム合金の結晶粒径が100nm以上500μm以下であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  74. 請求項40乃至46、49乃至73のいずれか一項において、前記塑性加工を行った後のマグネシウム合金におけるhcp構造マグネシウム相の転移密度は長周期積層構造相の転位密度に比べて1桁以上大きいことを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  75. 請求項40乃至46、49乃至74のいずれか一項において、前記マグネシウム合金に塑性加工を行う際の温度条件は250℃以上であることを特徴とする高強度高靭性金属の製造方法。
  76. 請求項40乃至46、49乃至75のいずれか一項において、前記塑性加工は、圧延、押出し、ECAE、引抜加工及び鍛造、これらの繰り返し加工、FSW加工のうちの少なくとも一つを行うものである高強度高靭性金属の製造方法。
  77. 請求項1乃至37のいずれか一項において、前記長周期積層構造相が濃度変調を有することを特徴とする高強度高靭性金属。
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