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JP2008062699A - 車両の制御装置 - Google Patents

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JP2008062699A
JP2008062699A JP2006240237A JP2006240237A JP2008062699A JP 2008062699 A JP2008062699 A JP 2008062699A JP 2006240237 A JP2006240237 A JP 2006240237A JP 2006240237 A JP2006240237 A JP 2006240237A JP 2008062699 A JP2008062699 A JP 2008062699A
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vehicle
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JP2006240237A
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English (en)
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Kentaro Horiuchi
健太郎 堀内
Hideki Sakai
英樹 酒井
Etsuo Katsuyama
悦生 勝山
Mikiyuki Oki
幹志 大木
Takahiro Furuhira
貴大 古平
Yoji Kunihiro
洋司 国弘
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Toyota Motor Corp
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】電源の負荷状態が車両の挙動に与える影響を軽減する。
【解決手段】ECU100は、前輪の横力Ffに対する後輪の横力Frの比率が車両10をヨー振動させる可能性がある比率となった場合に、前輪に対し、ヨー振動を収束させる方向に前輪を操舵する収束操舵トルクTcが付与されるようにEPS200を制御する。一方、EPS200の電源となるバッテリ24が高負荷状態である場合、車両10が制動期間中であれば、ECU100は、収束操舵トルクTcが付与されたのと同様の効果が得られるように各車輪に対する制動力の配分を決定し、ブレーキアクチュエータ23を制御する。この結果、制動力の配分に応じて各車輪に対応するキングピン軸周りのモーメントが変化し、特定の方向への旋回が促される、或いは特定の方向への旋回が阻害される。
【選択図】図10

Description

本発明は、例えば操舵時に車両の挙動を制御する車両の制御装置の技術分野に関する。
この種の技術分野において、車両の挙動制御のために路面の摩擦係数を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された路面摩擦係数検出制御装置(以下「従来の技術」と称する)によれば、車輪に与えられた駆動力の大きさから車両に発生するヨーモーメントを求め、係るヨーモーメントを打ち消すように前輪若しくは後輪の操舵角を補正することにより、路面摩擦係数検出時におけるヨーイングの発生を予測的に抑制でき、車両の走行安定性の低下を抑制することが可能になるとされている。
このような操舵角の制御には、例えばEPS(Electronic controlled Power Steering:電子制御式パワーステアリング装置)等、電源から供給される電力を利用して操舵力をアシストする手段も使用可能である。
尚、車両のヨーモーメントを制動力配分により制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、操舵輪の操舵により車両にヨーモーメントが付与される状況において左右輪の制動力差によるヨーモーメントによって車両に付与されるヨーモーメントを修正することにより旋回応答性を向上させる技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2005−306081号公報 特開平8−268248号公報 特開2006−21589号公報
EPS等、電源装置を動力源として必要とする手段は、電源の負荷状態によってはその使用を制限されることがあり、その場合、上述した如き従来の技術に係る制御を含む各種操舵制御の実行が実質的に困難となる。即ち、従来の技術には、EPS等を介した操舵制御により車両の挙動を安定させようとしても、電源の負荷状態によっては車両の挙動を十分に制御し得ず、車両の挙動が相対的に不安定になりかねないという技術的な問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、電源の負荷状態が車両の挙動に与える影響を軽減し得る車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る車両の制御装置は、電源装置、該電源装置から供給される電力により少なくとも一部が駆動され、少なくとも前輪に操舵力を付与可能な操舵力付与手段並びに前記前輪及び後輪の各々に制動力を付与可能な制動力付与手段を備えた車両を制御する車両の制御装置であって、前記前輪の操舵時における前記車両の挙動の状態に対応付けられた所定の指標値を特定する第1特定手段と、前記特定された指標値に基づいて、前記操舵力の少なくとも一部として前記挙動を安定させる方向に前記前輪を操舵する安定化操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する操舵制御手段と、前記車両の減速期間の少なくとも一部において、前記安定化操舵力の代わりに前記各々に付与される制動力により前記挙動が安定するように前記制動力付与手段を制御する制動制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る「電源装置」とは、例えばセルモータ、シガライタ、ブロワ、ヘッドライト又はカーナビゲーション装置等車両に備わる各種補機類の電源装置として機能し得る例えば車載用12Vバッテリ等であってもよいし、このような補機用バッテリとは独立して構成された専用のバッテリ等であってもよい。更には、これら各種バッテリから供給される電圧を適宜昇圧せしめた、相対的に高圧な2次電圧を供給可能なバッテリであってもよい。
本発明に係る「操舵力付与手段」とは、係る電源装置から供給される電力により少なくとも一部が駆動され、少なくとも前輪に、運転者による操舵操作に応じて、状況によっては運転者による操舵操作とは無関係にその時点の車両の運動状態等に応じて、操舵力を付与可能な手段を包括する概念である。係る概念が担保される限りにおいて、操舵力付与手段における、例えば物理的、機械的、機構的又は電気的な構成は何ら限定されない趣旨である。
尚、本発明に係る操舵力付与手段とは、運転者による例えばステアリングホイール等の操作手段を介した操舵操作に係る操作量(例えば、操舵角や操舵トルク)に対応する操舵力(或いは操舵トルク)を機械的に対象車輪に伝達する、例えばラックアンドピニオンやボールナット方式の公知の各種操舵装置を含んで規定されるか否かによらず、電源装置から供給される電力により、例えば然るべき制御系の制御を介して駆動され得る例えばモータ等の各種アシスト手段を少なくとも含む趣旨であり、好適には、例えばEPSやアクティブステア装置等のように、操舵装置及び当該各種アシスト手段の各々少なくとも一部が相互に一体に構成された形態を採る。
このような本発明に係る操舵力付与手段によれば、例えば運転者がステアリングホイールを操作する際にステアリングシャフト等に生じる操舵トルク又は例えば運転者によるステアリングホイールを操作する際のステアリングホイールの操舵角や操舵速度等に応じて、或いは例えばこのような運転者による操舵操作とは無関係にその時点における車両の運動状態に応じて、例えばモータ等から例えば操舵力(操舵トルク)をアシストするアシスト操舵力(アシスト操舵トルク)が出力され、操舵装置の一部の動作、例えばステアリングシャフトの回転運動、或いは例えばラックアンドピニオン形式の操舵装置であれば、例えばラックの往復運動やピニオンギアの回転運動等がアシストされる。或いはこのような運転者の操舵操作とは全く無関係に、車両の運動状態に応じて操舵装置を介した対象車輪の操舵角が例えばモータ等から出力される操舵トルクにより直接制御される。この結果、対象車輪には、これらアシストトルクや操舵トルク等を含む操舵力が伝達される。
本発明に係る車両には、このような操舵力付与手段に加え、制動力付与手段が備わる。本発明に係る「制動力付与手段」とは、前輪及び後輪の各々に制動力を付与可能な手段を包括する概念であり、例えば、ABS(Antilock Braking System)等を含むものとしてのECB(Electronic Controlled Braking system:電子制御式ブレーキシステム)等の形態を採る。
本発明に係る制動力付与手段における例えば物理的、機械的、機構的又は電気的な構成は、前輪及び後輪の各々に対し個別に制動力を付与可能である限りにおいて何ら限定されず、例えば、当該各々の制動力を制御すべく当該各々に個別に設けられるホイルシリンダに供給される制動液の液圧を、各々の車輪速、スリップ状態、車両のヨーレート、前後加速度或いは横加速度等に応じて例えば電動ポンプや各種電磁制御弁等の駆動制御を介して変化せしめることにより、当該各々の制動力を個別に制御することが可能に構成された、ブレーキアクチュエータ等の液圧制御系統を適宜介して、当該各々の制動力が個別に制御される構成を有していてもよい。尚、本発明に係る制動力付与手段が、好適にはECB等の形態を採り得ることに鑑みれば、制動力付与手段もまた、上述した電源装置の負荷となる。
本発明に係る車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1特定手段により、前輪の操舵時における車両の挙動の状態に対応付けられた所定の指標値が特定される。
ここで、「前輪の操舵時における車両の挙動の状態に対応付けられた所定の指標値」とは、例えば車両における速度、ヨーレート、前後加速度及び横加速度、車輪に加わる前後力、横力及び摩擦力、車輪速、車輪のスリップ率、車輪の接地荷重、操舵角、操舵速度並びに操舵トルク等、それ単体で或いは他の指標値と適宜組み合わされることによって、予め前輪操舵時、即ち旋回(回頭)時における車両の挙動を定性的又は定量的に表し得るものとして規定された指標値を包括する概念である。
尚、本発明における「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する例えば電気信号等として検出すること、予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択する又はそのような選択を介して推定すること、それら検出された物理的数値若しくは電気信号又は選択若しくは推定された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従って導出すること、或いはこのように検出、選択、推定又は導出された値等を単に電気信号等として取得すること等を包括する広い概念である。
指標値が特定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る操舵制御手段により、係る特定された指標値に基づいて、操舵力の少なくとも一部として、車両の挙動が安定する方向に前輪を操舵せしめる安定化操舵力が付与されるように操舵力付与手段が制御される。
ここで、安定化操舵力の付与によって車両の挙動を安定させる態様は、第1特定手段により特定された指標値に基づいてなされ且つ何らこの種の制御がなされない場合と比較して幾らかなりとも車両の挙動が安定し得る限りにおいて何ら限定されない趣旨であり、例えば、運転者が意図する方向よりも旋回外側へ車両が膨らんでいる(即ち、アンダーステアが生じている)場合に操舵角を増加せしめる旨の安定化操舵力が付与されてもよいし、運転者が意図する方向よりも旋回内側へ車両が切れ込んでいる(即ち、オーバーステアが生じている)場合に操舵角を減少せしめる旨の安定化操舵力が付与されてもよい。或いは、安定化操舵力の一つとして、車両のヨー方向への振動(以下、適宜「ヨー振動」と称する)と、操舵輪たる前輪の振動、或いは更に係る前輪の振動が操舵装置を介してステアリングホイールに伝達された状態としてのステアリングホイールの振動(以下、これらを総称する概念として適宜「ステアリング振動」なる言葉を使用する)との連成を収束させる旨の後述する収束操舵力が付与されてもよい。
ここで特に、上述した操舵制御手段の制御による安定化操舵力の付与は、例えば運転者の操舵操作をアシストする旨の操舵力の付与とは性質が異なり、過渡的、連続的、且つ高負荷であることが多い。一方で、電源装置の電力容量は有限であり、安定化操舵力の恒常的な実行に耐え得る程度には余裕が無い場合が多い。とりわけ、上述したように車両の補機類と共用される場合にはその傾向が顕著である。このため、この種の車両では、電源装置の負荷状態によっては、安定化操舵力の付与による車両の挙動制御が困難になる可能性があり、必然的に車両の挙動が不安定になる可能性がある。
そこで、本発明に係る車両の制御装置では、以下の如くにして、電源の負荷状態が車両の挙動に与える影響を軽減せしめている。即ち、本発明に係る車両の制御装置によれば、その動作時には、ECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制動制御手段の作用により、車両の減速期間の少なくとも一部において、安定化操舵力の代わりに、前輪及び後輪の各々に付与される制動力により前輪操舵時における車両の挙動が安定するように制動力付与手段が制御される。
安定化操舵力を付与することによる挙動制御を制動力の付与によって代替させる態様は、この種の代替制御が何らなされない場合と比較して(即ち、安定化操舵力の付与を単に実行しないのみに留める場合と比較して)幾らかなりとも車両の挙動を安定ならしめる限りにおいて何ら限定されず、例えば、左右前輪のいずれか一方に加わる制動力或いは更に左右後輪のいずれか一方に加わる制動力を、夫々他方に対し相対的に増加せしめ、特定の方向への旋回を抑制する(或いは特定方向への旋回を促進する)こと等であってもよい。
ここで、車両の減速期間には、この種の挙動制御とは別に元々制動制御手段による制御を介した制動力付与手段による制動動作が行われている。従って、例えば車輪相互間の制動力配分を変化させる等して、制動力を車両の挙動制御に供した所で、電源装置の負荷状態へ与える影響は無視し得る程度に、少なくとも新たに安定化操舵力を付与するために操舵力付与手段を動作せしめるよりは小さくて済む。
或いは、制動力付与手段と操舵力付与手段各々の構成によっては、主として減圧弁や保持弁等の各種電磁開閉弁の開閉動作によってなされる制動力の付与の方が、操舵力の付与によって操舵装置の一部を物理的に駆動するよりも電力負荷が小さくて済む。
このように、本発明に係る車両の制御装置によれば、車両の減速期間において安定化操舵力を付与すべき条件が満たされる場合の少なくとも一部において、元々作動している制動力付与手段によって付与される制動力により、安定化操舵力を付与するのと同様の効果を得ることが可能となる。従って、電源装置の負荷状態に実質的な影響を与えることなく車両の挙動を安定ならしめることが可能となり、電源装置の負荷状態が車両の挙動に与える影響を軽減することが可能となるのである。
本発明に係る車両の制御装置の一の態様では、前記第1特定手段は、前記指標値の少なくとも一部として前記前輪に作用する横力に対応する指標値及び前記後輪に作用する横力に対応する指標値を夫々特定し、前記操舵制御手段は、前記前輪に作用する横力に対する前記後輪に作用する横力の比率が前記車両にヨー振動が生じる比率となる場合に、前記安定化操舵力として、前記ヨー振動を収束させる方向に前記前輪を操舵する収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する。
この態様によれば、第1特定手段は、前述した指標値の少なくとも一部として、前輪に作用する横力(以下、適宜「前輪横力」と称する)に対応する指標値及び後輪に作用する横力(以下、適宜「後輪横力」と称する)に対応する指標値を夫々特定する。前輪横力に対する後輪横力の比率は、車両にヨー振動が発生するか否かを規定する指標となり得る。
ヨー振動とステアリング振動とは相互に作用し合う関係にあり、ヨー振動によってステアリング振動の発生が促され、またステアリング振動によりヨー振動の発生が促される。特に、ステアリング振動の位相とヨー振動の位相とが互いに逆相の関係となった場合、即ち、ステアリング振動とヨー振動とが相互に連成する場合には、ヨー振動の収束(即ち、同時にステアリング振動の収束)が遅くなり、車両のヨー方向の挙動(即ち、前輪操舵時における車両の挙動の一例)が不安定となり易い。
本態様によれば、当該比率が、車両をヨー振動させるものとして規定された比率となる場合に、安定化操舵力として、例えば中立(ニュートラルステア)方向等、係るヨー振動を収束させる方向に前輪を操舵する収束操舵力が付与され、この収束操舵力により、ステアリング振動に対応する前輪におけるキングピン軸周りのモーメントが相殺される。このため、車両のヨー振動を効率的且つ効果的に収束させることが可能となり、ヨー振動とステアリング振動との連成を速やかに収束させることが可能となる。
尚、「車両をヨー振動させるものとして規定された比率となる場合に」とは、必ずしも前輪横力に対する後輪横力の比率を判断基準として用いずともよい趣旨であり、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、前輪横力に対する後輪横力の比率との間の対応関係が判明している或いは推定可能である場合には、判断基準として、例えば、後輪横力に対する前輪横力の比率或いは前輪操舵角に対する後輪横力の比率等、前輪横力及び後輪横力各々に対応する指標値に基づいた各種指標が使用されてよい趣旨である。
尚、この態様では、前記操舵制御手段は、前記前輪に作用する横力に対する前記後輪に作用する横力の比率が所定値以上となる場合に、前記収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御してもよい。
この態様によれば、ヨー振動が生じる比率として、前輪横力に対する後輪横力の比率が所定値以上となる場合に前輪に収束操舵力が付与されるため、ヨー振動が生じるか否かに係る判断を比較的簡便に行うことができる。また、ヨー振動は、少なくとも車両がスピンしない範囲では、前輪横力に対し後輪横力が大きい程顕著に生じ易い傾向があり、このように収束操舵力が付与された場合には実践的にみて有利である。
収束操舵力が付与される、本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記前輪に作用する横力の微分値及び前記後輪に作用する横力の比例値に基づいて前記収束操舵力を決定する収束操舵力決定手段を更に具備し、前記操舵制御手段は、前記決定された収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る収束操舵力決定手段により、前輪横力の微分値及び後輪横力の比例値に基づいて収束操舵力が決定されるため、収束操舵力を好適に決定することが可能となる。
本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記挙動が安定するように前記各々に付与される制動力の相互比率を決定する相互比率決定手段を更に具備し、前記制動制御手段は、前記車両の減速期間の少なくとも一部において、前記決定された相互比率に基づいて前記制動力付与手段を制御する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る相互比率決定手段により、安定化操舵力の付与に代替させる際の、車輪各々の制動力の相互比率が決定される。
制動力の相互比率を変化させた場合、車輪各々におけるキングピン軸周りのモーメントが、車輪各々について相違することになり、車両を特定の方向へ旋回させることが、或いは特定の方向への車両の旋回を促すことが可能となる。従って、この場合、安定化操舵力或いは収束操舵力の付与によって前輪の操舵を促すのと同様の効果を、制動力の付与により得ることが可能となる。
尚、相互比率決定手段に係る相互比率の決定態様は、安定化操舵力或いは収束操舵力の付与に幾らかなりとも代替し得る限りにおいて何ら限定されず、例えば、予め収束操舵力と制動力の相互比率とを、実験的に、経験的に、或いはシミュレーション又は数値演算等に基づいて一対一、一対多、多対一又は多対多に対応付けることが可能である場合には、そのような対応関係を表してなるマップから付与すべき安定化操舵力或いは収束操舵力に対応する値を適宜選択することにより相互比率が決定されてもよいし、このような安定化操舵力或いは収束操舵力を求める過程を経ることなく、予め設定された、然るべきアルゴリズムや算出式等に基づく数値演算の結果としてその都度個別具体的に係る相互比率が決定されてもよい。
本発明に係る車両の制御装置の他の態様では、前記電源装置の負荷状態を特定する第2特定手段と、前記特定された負荷状態に基づいて前記電源装置が高負荷状態にあるか否かを判別する判別手段とを更に具備し、前記制動制御手段は、前記車両の減速期間に前記電源装置が前記高負荷状態にある場合に、前記安定化操舵力の代わりに前記各々に付与される制動力により前記挙動が安定するように前記制動力付与手段を制御する。
この態様によれば、ECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2特定手段の作用により、例えばSOC(State Of Charge:充電状態)センサ等により検出される電源装置のSOCやSOH(劣化状態)等の各種指標値、或いは例えば車両において電源装置の負荷となる各種補機の動作状態等に基づいて電源装置の負荷状態が特定される。
更に、ECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る判別手段により、この特定された負荷状態に基づいて電源装置が高負荷状態にあるか否かが判別される。
ここで、「高負荷状態」とは、車両の挙動制御に供すべき安定化操舵力の付与に実践上の困難が伴い得る負荷状態、或いは近未来的にそのような状態に陥ると予測され得る負荷状態等、現実的、客観的或いは合理的にみて、安定化操舵力の付与を禁止すべきものと規定し得る負荷状態を包括する概念である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、適宜図面を参照して本発明の車両の制御装置に係る実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両10の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の基本的な構成を概念的に示す概略構成図である。
図1に示すように、車両10は、左前輪FL及び右前輪FR、並びに左後輪RL及び左後輪RRを備え、前輪及び後輪の少なくとも一方が不図示のエンジンの駆動力を得ることにより駆動されると共に、前輪が操舵されることにより所望の方向に進行することが可能に構成されている。
車両10は、ECU100及びEPS200を備える。ECU100は、夫々不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「車両の制御装置」の一例である。ECU100は、EPS200の動作及びそれに付随する各部の動作を制御するための後述する各種処理を実行することが可能に構成されている。
EPS200は、所謂電動式パワーステアリング装置であり、操舵輪である前輪FL及びFRを、運転者によるステアリングホイール11の操作に応じて操舵することが可能に構成された、本発明に係る「操舵力付与手段」の一例である。
EPS200には、ラックアンドピニオン式の操舵方式が採用されており、ステアリングホイール11に一方の端部が接続されるステアリングシャフト12と、該ステアリングシャフト12の他方の端部に接続されるラックアンドピニオン機構13とが備わっている。尚、EPS200には他の操舵方式が採用されていても構わない。
ラックアンドピニオン機構13は、ステアリングシャフト12の回転方向の力を、ラックバー14の往復動方向の力に変換することが可能に構成される。また、ラックバー14の両端は、タイロッド(符号省略)を介して前輪FL及びFRに連結されており、ラックバー14の往復運動に応じて、前輪FL及びFRの向きが変わる構成となっている。
EPS200は更に、ステアリングホイール11の回転角度である操舵角θを検出することが可能に構成された舵角センサ16、ステアリングホイール11の操作を介してステアリングシャフト12に加えられる操舵トルクMTを検出することが可能に構成されたトルクセンサ17、及び運転者の操作負担を軽減する補助操舵力を発生させると共に不図示の減速ギアを介してステアリングシャフト12に補助操舵力を付与することが可能に構成された電動モータ18とを備えている。舵角センサ16及びトルクセンサ17は、夫々ECU100と電気的に接続されており、夫々検出された操舵角θ及び操舵トルクMTは、ECU100により絶えず把握される構成となっている。また、電動モータ18は、不図示のモータ制御系を介してECU100と電気的に接続されており、その動作状態がECU100により制御される構成となっている。
車両10は、ロール角算出回路19、車速センサ20、横力センサ21並びにタックイン判定回路22を備える。ロール角算出回路19は、不図示の横Gセンサにより検出される車両10の横方向加速度に基づいて車両10のロール角RAを算出することが可能に構成されている。また、算出されたロール角RAは、ロール角算出回路19と電気的に接続されたECU100によって把握される構成となっている。
車速センサ19は、車両10の速度(以下、適宜「車速」と称する)Vを検出することが可能に構成されたセンサである。また、横力センサ21は、車両10における前輪の横力Ff及び後輪の横力Frを夫々検出することが可能に構成されたセンサである。各センサは、ECU100と電気的に接続されており、各々において検出された車速V並びに横力Ff及びFrは、ECU100により把握される構成となっている。
タックイン判定回路22は、不図示のヨーレートセンサ及びスロットル開度センサにより検出される車両10のヨーレートγ及びスロットル開度Oに基づいて、車両10にタックインが発生しているか否かを判定することが可能に構成されており、電気的に接続されたECU100に対し、タックインが発生しているか否かを表す制御信号S1を出力することが可能に構成されている。
尚、車両10では、横力センサ21により直接横力Ff及びFrが検出されるが、横力センサ21を設けることに代えて、例えばECU100が他のパラメータに基づいて横力Ff及びFrを演算等により推定(言い換えれば、算出)するように構成してもよい。他の各種センサについても同様に、センサを設けることでセンサの検出対象を直接的に検出するように構成してもよいし、或いはセンサを設けることに代えて、例えばECU100が他のパラメータに基づいてセンサの検出対象を演算等により推定するように構成してもよい。
一方、車両10における各車輪には、夫々に対応するホイルシリンダ15FL、15FR、15RL及び15RRが備わっている。各ホイルシリンダは、図示せぬ制動部材に対し、供給される液圧に応じた駆動力を付与することが可能に構成されており、各車輪には、この駆動力に応じた制動力が制動部材を介して伝達される構成となっている。
各ホイルシリンダに供給される液圧は、ブレーキアクチュエータ23によって制御される。ブレーキアクチュエータ23は、不図示のブレーキペダルに接続されたマスタシリンダ、マスタシリンダによって与えられる液圧を各ホイルシリンダに分配する各種管路、各ホイルシリンダに伝達される液圧を個別に昇圧、減圧及び保持するための各種電磁開閉弁並びに電動ポンプ等を備え、各部の動作がブレーキアクチュエータ23と電気的に接続されたECU100によって制御される構成となっている。即ち、車両10では、各車輪に作用する制動力を、運転者のブレーキ操作から独立して制御することが可能であり、各ホイルシリンダ及びブレーキアクチュエータ23は、所謂ECBの一例を構成している。尚、以降の説明においては、車両10におけるこのような電子制御式ブレーキシステム全体を指す用語として適宜「ECB」なる言葉を使用することとする。
バッテリ24は、前述したEPS200及びECBに対し電力を供給可能に構成された、本発明に係る「電源装置」の一例である。尚、バッテリ24は、図1において不図示の、エアコンディショナ、シガライタ、各種ライト類及びカーナビゲーション装置等、車両10の各種補機類の電源としても機能するように構成されており、例えば直流12ボルトバッテリ等の形態を採る。
バッテリ24にはSOCセンサ25が設置されている。SOCセンサ24は、バッテリ24の充電状態(本実施形態ではバッテリ残量と等価であり、本発明に係る「負荷状態」の一例である)を検出することが可能に構成されており、検出されたバッテリの充電状態は、係る充電状態を表す制御信号としてSOCセンサ25と電気的に接続されたECU100に出力される構成となっている。
<実施形態の動作>
<EPS200の基本動作>
車両10では、EPS200によって、運転者の操舵負担が軽減される。具体的には、ECU100は、舵角センサ16から出力される操舵角θ、トルクセンサ17から出力される操舵トルクMT、ロール角算出回路19から出力される車両10のロール角RA、車速センサ20から出力される車速V、横力センサ21から出力される前輪の横力Ff及び後輪の横力Fr並びにタックイン判定回路22から出力されるタックインが発生しているか否かを表す制御信号S1に基づいて、電動モータ18が発生すべきトルクである目標操舵トルクTaを算出する。
ECU100は、この算出した目標操舵トルクTaに応じた電流が電動モータ18に供給されるように図示せぬモータ制御系を制御し、電動モータ18が駆動される。これにより、電動モータ18からステアリングシャフト12に操舵補助力が加えられ、その結果、運転者の操舵負担が軽減される。また、ラックアンドピニオン機構13により、ステアリングシャフト12の回転方向の力が、ラックバー14の往復動方向の力に変換される。
<EPS200による操舵トルク制御>
次に、図2乃至図10を参照して、本実施形態に係るEPS200の動作について、より詳細に説明する。
図2は、EPS200の動作全体を概念的に示すフローチャートである。図2に示すように、イグニッションがOFFになっている場合(ステップS100:NO)、実質的に処理が待機状態に制御され、イグニションがONになっている場合には(ステップS100:YES)、EPS200が作動する。
具体的には、ECU100の動作により目標操舵トルクTaが算出され(ステップS200)、該算出された目標操舵トルクTaに応じて、電動モータ18が駆動されることで操舵トルク制御が行なわれる(ステップS300)。
図3は、図2のステップS200における目標操舵トルクTaの算出動作を示すフローチャートである。図3に示すように、目標操舵トルクTaを算出する場合には、まずステアリングがオーバーシュート状態にあるか(又は、オーバーシュート状態になるおそれがあるか)否かが判定される(ステップS210)。言い換えれば、ステアリングの振動と車両のヨー振動とが互いに連成され、車両10がふらつく状態にあるか(又は、ふらつく状態になる可能性があるか)否かが判定される。尚、ステップS210におけるオーバーシュート状態の判定動作については、図4を参照して後に詳述する。
ステップS210における判定の結果、ステアリングがオーバーシュート状態にない(又は、ステアリングがオーバーシュート状態になるおそれがない)と判定された場合には(ステップS210:NO)、図6及び図7を参照しながら後に詳述する態様で、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される(ステップS230)。
他方、ステップS210における判定の結果、ステアリングがオーバーシュート状態にある(又は、ステアリングがオーバーシュート状態になるおそれがある)と判定された場合には(ステップS210:YES)、続いて、運転者によるステアリングホイール11の操舵方向と前輪FL及びFRに付与される操舵力の方向が逆であるか(つまり、逆アシストであるか)否かを判定する逆アシスト判定が行われる(ステップS220)。尚、ステップS220における逆アシスト判定動作については、図5を参照して後に詳述する。
ステップS220における判定の結果、逆アシストであると判定された場合には(ステ
ップS220:YES)、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される(ステップS230)。
他方、ステップS220における判定の結果、逆アシストでないと判定された場合には(ステップS220:NO)、収束操舵トルクTcが目標操舵トルクTaとして算出される(ステップS240)。尚、収束操舵トルクTcについては後述する。基本操舵トルクTb又は収束操舵トルクTcが目標操舵トルクTaとして算出されると、ステップS200に係る目標操舵トルクTaの算出動作は終了する。
図4は、図3のステップS210におけるオーバーシュート状態の判定動作を示すフローチャートである。図4に示すように、オーバーシュート状態が判定される場合には、先ず前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が、所定の閾値OS1よりも大きいか否かが判定される(ステップS211)。
ステップS211における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が、閾値OS1よりも大きいと判定された場合には(ステップS211:YES)、ステアリングがオーバーシュート状態にあると判定される(ステップS214)。
他方、ステップS211における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が、閾値OS1よりも大きくないと判定された場合には(ステップS211:NO)、続いて、前輪FL及びFRの舵角δに対するロール角RAの比率が所定の閾値OS2よりも大きいか否かが判定される(ステップS212)。
ステップS212における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対するロール角RAの比率が閾値OS2よりも大きいと判定された場合には(ステップS212:YES)、ステアリングがオーバーシュート状態にあると判定される(ステップS214)。
他方、ステップS212における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対するロール角RAの比率が閾値OS2よりも大きくないと判定された場合には(ステップS212:NO)、ステアリングがオーバーシュート状態にない(つまり、ステアリングは安定している)と判定される(ステップS213)。従って、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される。
尚、ステップS211における判定に加えて又は代えて、前輪FL及びFRの横力Ffに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率(つまり、Fr/Ff)が、所定の閾値OS3よりも大きいか否かを判定するように構成してもよい。この場合、前輪FL及びFRの横力Ffに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が、閾値OS3よりも大きいと判定された場合には、ステアリングがオーバーシュート状態にあると判定される。前輪FL及びFRの横力Ffに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が、閾値OS3よりも大きくないと判定された場合には、続いてステップS212の判定が行われる。
また、閾値OS1、OS2及びOS3は、前輪FL及びFRの舵角δと後輪RL及びRRの横力Frとのヒステリシスループや、前輪FL及びFRの舵角δとロール角RAとのヒステリシスループや、前輪FL及びFRの横力Ffに対する後輪RL及びRRの横力Frとのヒステリシスループ(特に、車速が相対的に低い場合のヒステリシスループ及び車速が相対的に高い場合のヒステリシスループ)に基づいて、車両10の各種特性等を考慮しつつ、実験的、経験的、数学的若しくは理論的に、又はシミュレーション等を用いて、EPS200が備え付けられる車両10毎に好適な値が設定されることが好ましい。但し、ステアリングがオーバーシュート状態にあるか否かを好適に判定することができる閾値であれば、その設定態様は限定されない。
図5は、図3のステップS220における逆アシスト判定動作を示すフローチャートである。図5に示すように、逆アシストが判定される場合には、まず運転者によるステアリングホイール11の操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆であるか否かが判定される(ステップS221)。
ステップS221における判定の結果、運転者によるステアリングホイール11の操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆であると判定された場合には(ステップS221:YES)、続いて、前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が所定の閾値OS4よりも大きいか否かが判定される(ステップS225)。具体的には、ステアリング振動が発生しているか否かが判定される。このため、閾値OS4は、上述した閾値OS1よりも大きな値となる。また、OS4についても、前輪FL及びFRの舵角δと後輪RL及びRRの横力Frとのヒステリシスループに基づいて、車両10の各種特性等を考慮しつつ、実験的、経験的、数学的若しくは理論的に、又はシミュレーション等を用いて、EPS200が備え付けられる車両10毎に好適な値が設定されることが好ましい。但し、ステアリング振動が発生しているか否かを好適に判定することができる閾値であれば、その設定態様は限定されない。
ステップS225における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が閾値OS4よりも大きいと判定された場合には(ステップS225:YES)、逆アシストでないと判定される(ステップS226)。従って、収束操舵トルクTcが目標操舵トルクTaとして算出される。
他方、ステップS225における判定の結果、前輪FL及びFRの舵角δに対する後輪RL及びRRの横力Frの比率が閾値OS4よりも大きくないと判定された場合には(ステップS225:NO)、逆アシストであると判定される(ステップS227)。従って、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される。
他方、ステップS221における判定の結果、運転者によるステアリングホイール11の操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆でないと判定された場合には(ステップS221:NO)、続いて、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が所定の閾値OS5_1より小さいか否か及びステアリングホイール11の操舵速度(つまり、操舵角速度dθ)の絶対値が所定の閾値OS5_2より小さいか否かが判定される(ステップS222)。
ステップS222における判定の結果、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS5_1より小さく且つステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS5_2より小さいと判定された場合には(ステップS222:YES)、逆アシストであると判定される(ステップS227)。従って、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される。
尚、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS5_1より小さくなくとも、ステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS5_2より小さければ、逆アシストであると判定するように構成してもよい。また、ステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS5_2より小さくなくとも、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS5_1より小さければ、逆アシストであると判定するように構成してもよい。
他方、ステップS222における判定の結果、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS5_1より小さくない、又はステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS5_2より小さくないと判定された場合には(ステップS222:NO)、続いて、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が所定の閾値OS6_1より大きいか否か及びステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が所定の閾値OS6_2より大きいか否かが判定される(ステップS223)。
ステップS223における判定の結果、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS6_1より大きく且つステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS6_2より大きいと判定された場合には(ステップS223:YES)、逆アシストであると判定される(ステップS227)。従って、基本操舵トルクTbが目標操舵トルクTaとして算出される。
尚、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS6_1より大きくなくとも、ステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS6_2より大きければ、逆アシストであると判定するように構成してもよい。また、ステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS6_2より大きくなくとも、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS6_1より大きければ、逆アシストであると判定するよ
うに構成してもよい。
他方、ステップS223における判定の結果、ステアリングホイール11の操舵角θの絶対値が閾値OS6_1より大きくない、又はステアリングホイール11の操舵速度dθの絶対値が閾値OS6_2より大きくないと判定された場合には(ステップS223:NO)、続いて、車両10がタックイン状態にあるか(又は、タックイン状態になるおそれがあるか)否かが判定される(ステップS224)。係る判定は、タックイン判定回路22から出力される制御信号S1に基づいて行われる。
ステップS224における判定の結果、車両がタックイン状態にある(又は、タックイン状態になるおそれがある)と判定された場合には(ステップS224:YES)、逆アシストであると判定される(ステップS227)。従って、基本操舵トルクTbが目標操舵ト
ルクTaとして算出される。
他方、ステップS224における判定の結果、車両がタックイン状態にない(又は、タックイン状態になるおそれがない)と判定された場合には(ステップS224:NO)、逆アシストでないと判定される(ステップS226)。従って、収束操舵トルクTcが目標操舵トルクTaとして算出される。
尚、閾値OS5_1、OS5_2、OS6_1及びOS6_2についても車両10の各種特性等を考慮しつつ、実験的、経験的、数学的若しくは理論的に、又はシミュレーション等を用いて、EPS200が備え付けられる車両10毎に好適な値が設定されることが好ましい。
図6は、図3のステップS230における基本操舵トルクTbの算出動作を示すフローチャートである。図6に示すように、基本操舵トルクTbを算出する場合には、まず基本操舵トルクTbを算出するために必要な各種信号(例えば、車速Vや操舵トルクMT等)が読み込まれる(ステップS231)。続いて、ステップ231において読み込まれた各種信号に基づいて、基本操舵トルクTbが算出される(ステップS232)。
具体的には、図7に示す操舵トルクMTと基本操舵トルクTbとの関係を示すグラフに基づいて、基本操舵トルクTbが算出される。ステアリングホイール11のあそびを確保するために、操舵トルクMTが相対的に小さい場合には基本操舵トルクTbを0として算出する。操舵トルクMTがある程度の大きさになった場合には、操舵トルクMTが大きくなるにつれてより大きい基本操舵トルクTbを算出する。操舵トルクMTが所定の値よりも大きくなった場合には、操舵トルクMTの大きさによっても変動しない一定値の基本操舵トルクTbを算出する。このとき、車速Vが速くなるほど、基本操舵トルクTbの値を小さくするように構成してもよい。
次に、ステップS240における収束操舵トルクTcの算出動作について説明する。ECU100は、収束操舵トルクTcを算出する際、まず車速依存係数KV1及びKV2を設定する。
具体的には、図8に示す車速依存係数KV1対車速Vの関係を示すグラフに基づいて
、車速依存係数KV1が設定される。同様に、図9に示す車速依存係数KV2対車速V
の関係を示すグラフに基づいて、車速依存係数KV2が設定される。
図8及び図9に示す車速依存係数KV1及びKV2は、車両10の平面方向における運動を示す運動方程式を用いて求めることができる。具体的には、車両10の慣性モーメントをIとし、前軸から車両10の重心位置までの距離をLfとし、後軸から車両10の重心位置までの距離をLrとし、トレール量をLtとし、車両10のスリップ角をβとし、前輪側のコーナリングパワーをKfとし、後輪側のコーナリングパワーをKrとすると、車両10の運動方程式は、(1)式から(4)式にて示される。尚、下記の各式において、「d()」とは()の微分値を表す。例えば、dγとはγの微分値を表す。
I・dγ=Ff・Lf−Fr・Lr・・・・・・・(1)
m・V・(dβ+γ)=Ff+Fr・・・・・・・・(2)
Ff=2Kf・(δ−β−Lf/V・γ)・・・・・(3)
Fr=2Kr・(−β+Lr/V・γ)・・・・・・(4)
更に、本実施形態においては、EPS200は、トルク入力を行っているため、前輪FL及びFRの慣性モーメントをIhとし、粘性係数をChとし、操舵トルクをThとすると、以下の(5)式が成立する。
Ih・d(dδ)+Ch・dδ+Ff・Lt=Th・・・(5)
(1)式から(5)式を用いて、車両10のヨー振動を抑制する(言い換えれば、車両10の減衰を大きくする)ことを重視しながら目標操舵トルクTaを求めると(つまり、(5)式の右辺に目標操舵トルクTaを加えた式を解くことで)、後輪RL及びRRの横力Fr及び該横力Frの微分値に基づいて目標操舵トルクTa(ここでは収束操舵トルクTc)を設定すればよいことが判明する。具体的には、目標操舵トルクTaを、後輪RL及びRRの横力Frにある係数Aを掛け合わせた値と、後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrにある係数Bを掛け合わせた値との和に設定すればよいことが判明する。この係数A及びBが夫々、車速依存係数KV1及びKV2に相当する。このようにして求められる車速依存係数KV1及びKV2は、図8及び図9に示すように、夫々車速Vに依存して変化する。
特に、車速依存係数KV1は、ある車速(具体的には、ニュートラルステアとなる状態)を境界として、符号が反転する。具体的には、ある車速以下での車速依存係数KV1は正の値をとり、ある車速以上での車速依存係数は負の値を取る。これは、ある車速以上では、車両の挙動がオーバーステア気味になりやすいことから、該オーバーステアを抑制するために(つまり、車両のヨー振動を抑制するために)、運転者の操舵の方向とは逆の方向への操舵を考慮しながら(言い換えれば、運転者がハンドルを切りにくくなるような)目標操舵トルクTaが設定されることを示している。つまり、車両10の挙動が安定するような目標操舵トルクTaが設定されることを示している。
このように、目標操舵トルクTaとしての収束操舵トルクTcは、KV1・Fr+KV2・dFrという式に基づいて算出することができる。
尚、車速Vが異常な場合(例えば、ハイドロプレーニング現象等が発生している場合等)には、車速依存係数KV1を0に設定することが好ましい。
尚、本実施形態では、上記の如き収束操舵トルクTcが適用されるが、車両の挙動等によっては、上記収束操舵トルクTcでは不十分な場合も生じ得る。そのような場合に備え、車両10の各種状況に応じた係数を設定し、係る係数に基づいてより精細に収束操舵力を設定してもよい。
具体的には、例えば、悪路係数KBを設定してもよい。この場合、悪路係数KBは、例えば0から1の間の数値に設定される。車両10が悪路(例えば、低μ路や、凹凸路等の車速Vが大きく、不規則に又は意図せず変動する路面)を走行している場合には、悪路係数KBが例えば0に設定される。或いは、車両10が悪路を走行している場合には、悪路係数KBを0よりも大きく且つ1未満の値に設定してもよい。他方、車両10が悪路を走行していない場合(即ち、舗装路等の通常路を走行している場合)には、悪路係数KBを例えば1に設定する。
また、例えば前後加速度係数KAが設定されてもよい。前後加速度係数KAは、例えば0から1の間の数値に設定される。
この場合、前後加速度係数KAは、車両10の前後加速度の絶対値が所定値以下の場合には、例えば1に設定される。車両10の前後加速度の絶対値が所定値以下の場合には、車両10の前後加速度の絶対値が大きい程、前後加速度係数KAがより小さな値に設定される。或いは、前後加速度の絶対値が所定値以上である場合には又は車両10にピッチが生じている場合には、前後加速度係数が0に設定されてもよい。
一方、前後加速度が変化し始めてからの経過時間に応じて前後加速度係数が設定されるように構成してもよい。例えば、前後加速度が変化し始めた場合には、車両10に固有のピッチ周期に相当する時間が経過するまでは、前後加速度係数を0に設定しておき、ピッチ周期に相当する時間が経過した後は、時間の経過と共に徐々に大きな値に設定するように構成してもよい。
また、例えばABS係数KX1及びKX2が設定されてもよい。ABS係数KX1及びKX2は、例えば0から1の間の数値に設定される。
この場合、ABS係数KX1及びKX2は、例えば、ABS制御が行われている場合には、夫々が0に設定されてもよい。尚、ここで言うABS制御とは、本実施形態に備わるECBにより実現可能な制御であり、例えば、個々の車輪に対応付けられて備わる車輪速センサ(図1には不図示)によって検出される車輪速等に基づいて各車輪がロックしないように制動力の配分を行う制御等を指す。
その後、ABS制御が終了した場合には、まずABS係数KX2を徐々に大きな値に設定し、ABS制御が終了してから一定時間が経過した後には、続いてABS係数KX1を徐々に大きな値に設定する。このとき、ABS係数KX2の単位時間当たりの増分は、ABS係数KX1の単位時間当たりの増分よりも大きい。
尚、ABS制御が終了した後に、ABS係数KX1及びABS係数KX2を徐々に大きくしていく動作に代えて、ABS制御が終了した後の一定期間はABS係数KX2を1に設定し且つABS係数KX1を0に設定し、その後更に一定期間経過した後にABS係数KX1を1に設定するように構成してもよい。
尚、VSC(Vehicle Stability Control)やTRC(TRaction Control)等の前後力制御が行われている場合についても、ABS制御の場合と同様の態様で、ABS係数KX1及びKX2を設定することが好ましい。
また、例えばサス係数KZが設定されてもよい。サス係数KZは、例えば0から1の間の数値に設定される。
この場合、サスペンション制御が行われていなければ、サス係数KZは例えば1に設定される。他方、サスペンション制御が行われている場合には、サス係数KZは例えば0又は0より大きく且つ1未満の値に設定される。
また、スタビライザ制御等の接地荷重可変制御が行われている場合についても、サスペ
ンション制御の場合と同様の態様で、サス係数KZを設定することが好ましい。
このような各種係数が、例えば上記した全て設定される場合には、例えばK1=KV1×KB×KA×KX1×KZなる数式によって、後輪RL及びRRの横力Frに実際に掛け合わされる係数であるK1が算出されてもよい。
同様に、例えばK2=KV2×KX2なる数式によって、後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrに実際に掛け合わされる係数であるK2が算出されてもよい。
これらK1及びK2と、算出された後輪RL及びRRの横力Fr及び後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrとに基づいて、収束操舵トルクTcが算出されてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る操舵トルクの制御によれば、ステアリングがオーバーシュート状態にあるか否かを好適に判定することができる。そして、ステアリングがオーバーシュート状態にある場合には、収束操舵トルクTcを目標操舵トルクTaとして設定することができる。
この際、図2のステップS300に係る動作により、この収束操舵トルクTcが電動モータ18から出力されることにより、左右前輪FL及びFRにおけるキングピン軸周りのモーメントがステアリング振動と車両のヨー振動との連成を収束させる方向に作用するため、ステアリングがオーバーシュート状態にある場合でも、ステアリング振動とヨー振動とが互いに連成する(具体的には、逆相で共振してしまう)ことを防止することができる。その結果、前輪FL及びFRの振動を収束させることができる。つまり、ステアリングの収束性を向上させつつ、車両10の収束性をも向上させることができる。
加えて、トルク入力による寄与を考慮しながら、車両10の平面方向における運動方程式に基づいて収束操舵トルクTcを算出しているため、高精度に(或いは、より最適な)収束操舵トルクTcを算出することができる。
加えて、前輪FL及びFRの舵角δや、前輪FL及びFRの横力Ffや、後輪RL及びRRの横力Frや、ロール角RA等をモニタリングすることで、ステアリングがオーバーシュート状態にあるか否かを好適に或いは高精度に判定することができる。
特に、図4のステップS212に示すようにステップ前輪FL及びFRの舵角δに対するロール角RAの比率をモニタリングしているため、例えばミニバンやSUV(Sport Utility Vehicle)等の車高の高い車両においても、ステアリングがオーバーシュート状態にあるか否かを好適に或いは高精度に判定することができる。このような利点を考慮すると、車高の高い車両に対して選択的に図4のステップS212の動作を行い、例えばスポーツカータイプのセダンやクーペ等の車高の低い車両に対しては図4のステップS212の動作を行わないように構成してもよい。
更に、図5のステップS221に示すように、運転者による操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆である場合には、運転者が緊急回避操舵を行っている可能性が高いことを考慮して、運転者の操舵に応じた基本操舵力Tbを目標操舵トルクTaに設定することにより、回避性能の悪化を防止することができる。つまり、運転者の緊急回避の意思を尊重することができる。
但し、運転者による操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆である場合であっても、図5のステップS225に示すように、ステアリング振動が生じている又は生じ得る場合には、収束操舵トルクTcを目標操舵トルクTaに設定することにより、操舵感よりも車両10の安定性を重視することができる。
尚、運転者による操舵方向と、電動モータ18により付与される操舵力が前輪FL及びFRを操舵する方向とが逆である場合には、運転者による操舵方向とは逆の方向への操舵力が設定される原因となる、後輪RL及びRRの横力Frに掛け合せる係数KV1(或いはK1)を小さくしてもよい。収束操舵トルクTcを算出する際の、後輪RL及びRRの横力Frの比例値の寄与率を小さくしてもよい。
更に、本実施形態によれば、図5のステップS222に示すように、操舵角θの絶対値や操舵速度dθの絶対値が相対的に小さい範囲においては運転者が操舵感の変化を感じやすいことを考慮して、操舵トルクMTに応じた基本操舵トルクTbを目標操舵トルクTaとして設定することで、ドライバーの操舵感を悪化させない。
更に、図5のステップS223に示すように、操舵角θの絶対値や操舵速度dθの絶対値が相対的に大きい範囲においては運転者が緊急回避操舵を行っている可能性があることを考慮して、操舵トルクMTに応じた基本操舵トルクTbを目標操舵トルクTaとして設定することで、運転者の緊急回避の意思を尊重することができる。
更に、図5のステップS224に示すように、タックインが発生している場合には、タ
ックインに起因して後輪RL及びRRの横力Frが変動しやすい或いは前輪FL及びFRの操舵によっても所望の横力Frが必ずしも得られないことを考慮して、操舵トルクMTに応じた基本操舵トルクTbを目標操舵トルクTaとして設定することができる。
更に、収束操舵トルクTcの設定態様によっては、車両10が悪路を走行している場合には、ノイズが大きい後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrの収束操舵トルクTcの算出への寄与率を下げる又は0にする(言い換えれば、ノイズが小さい後輪RL及びRRの横力Frに基づいて収束操舵トルクTcを算出する)ことにより、悪路による影響を極力排除しながら、収束操舵トルクTcを好適に算出することができる。
更に、収束操舵トルクTcの設定態様によっては、車両10が加減速している場合には、加減速に起因して大きく変動する後輪RL及びRRの横力Frの収束操舵トルクTcの算出への寄与率を下げる又は0にする(言い換えれば、加減速によってもそれほど大きく変動しない後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrに基づいて収束操舵トルクTcを算出する)ことにより、加減速による影響を極力排除しながら、収束操舵トルクTcを好適に算出することができる。
更に、収束操舵トルクTcの設定態様によっては、車両10に対してABS制御等の前後力制御が行われている場合には、前後力制御に起因して大きく変動する後輪RL及びRRの横力Frの収束操舵トルクTcの算出への寄与率を下げる又は0にする(言い換えれば、前後力制御によってもそれほど大きく変動しない後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrに基づいて収束操舵トルクTcを算出する)ことにより、前後力制御による影響を極力排除しながら、収束操舵トルクTcを好適に算出することができる。
更に、収束操舵トルクTcの設定態様によっては、サスペンション制御等の接地荷重可変制御が行われている場合には、接地荷重制御に起因して大きく変動する後輪RL及びRRの横力Frの収束操舵トルクTcの算出への寄与率を下げる又は0にする(言い換えれば、接地荷重可変制御によってもそれほど大きく変動しない後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrに基づいて収束操舵トルクTcを算出する)ことにより、接地荷重可変制御による影響を極力排除しながら、収束操舵トルクTcを好適に算出することができる。
更に、車速Vが異常な場合には、変動が大きい後輪RL及びRRの横力Frの収束操舵トルクTcの算出への寄与率を下げる又は0にする(言い換えれば、変動が小さい後輪RL及びRRの横力Frの微分値dFrに基づいて収束操舵トルクTcを算出する)ことにより、車速Vの異常による影響を極力排除しながら、収束操舵トルクTcを好適に算出することもできる。
尚、上述した実施形態は、操舵トルクMT及び目標操舵トルクTに基づいて前輪FL及びFRの操舵を行っている。しかしながら、操舵角θに基づいて前輪FL及びFRの操舵をアクチュエータにより行う、いわゆるアクティブステアの場合であっても、ステアリングがオーバーシュート状態にある場合に、上記動作と同様の態様で操舵を行うことにより、上述した各種利益を享受することができる。
ところで、図2のステップS300に係る動作により、目標操舵トルクTaとして基本操舵トルクTb或いは収束操舵トルクTcが電動モータ18から出力され、操舵トルクの制御が実行されるのであるが、EPS200に係るこのような電動モータ18の動作は、バッテリ24の電力負荷となるため、運転者の操舵補助を目的とした基本操舵トルクTbの出力はさておき、ヨー振動とステアリング振動との連成を収束させるための収束操舵トルクTcの付与は、バッテリ24の負荷状態によってはその実行が困難となる。
そこで、本実施形態では、図10に示すように、ステップS300に係る操舵トルク制御を実行している。ここに、図10は、ステップS300に係る操舵トルク制御のフローチャートである。
図10において、ECU100は、目標操舵トルクTaが収束操舵トルクTcであるか否かを判別する(ステップS310)。収束操舵トルクTcでない場合、即ち目標操舵トルクTaが基本操舵トルクTbである場合(ステップS310:NO)、ECU100は、電動モータ18を制御して、基本操舵トルクTbを出力させる(ステップS350)。
目標操舵トルクTaが収束操舵トルクTcである場合(ステップS310:YES)、ECU100は、車両10が制動期間中であるか否かを判別する(ステップS320)。車両10が制動期間中であるか否かは、基本的にはブレーキペダルが操作されているか否かによって判別可能である。或いは、ブレーキペダルの操作とは無関係に、例えばブレーキアクチュエータ23の動作状態から各車輪に制動力が付与されているかを判別してもよい。
車両10が制動期間中でない場合(ステップS320:NO)、ECU100は、電動モータ18を制御して、収束操舵トルクTcを出力させる(ステップS360)。車両10が制動期間中である場合(ステップS320:YES)、ECU100は更に、バッテリ24が所定の高負荷状態にあるか否かを判別する(ステップS330)。
バッテリ24が高負荷状態にあるか否かは、SOCセンサ25の制御信号に基づいて行なわれる。より具体的には、係る制御信号によって示されるバッテリ24のSOCが所定値未満である場合に、バッテリ24が高負荷状態であると判別される。但し、このような判別の態様は一例に過ぎず、SOCセンサ25から出力される制御信号によらずに、バッテリ24の負荷となる各種補機の動作状態に基づいて、或いはバッテリ24から出力される電圧の変動状態等に基づいて、高負荷状態に係る判別を行ってもよい。即ち、現時点におけるバッテリ24の負荷状態が、バッテリ24の電力を利用して電動モータ18から収束操舵トルクTcを出力せしめるのに好ましくない状態であるかを判別可能な限りにおいて、係る判別の態様は何ら限定されない趣旨である。
バッテリ24が高負荷状態にない場合(ステップS330:NO)、ECU100は、電動モータ18を制御して収束操舵トルクTcを出力させる(ステップS360)。
尚、車両10が制動期間中にない場合(ステップS320:NO)であっても、バッテリ24が高負荷状態にある場合がある。そのような場合には、収束操舵トルクTcの付与が現実的に見て困難であるか否かは別として、ステップS360に係る収束操舵トルクTcの付与を禁止ししてもよい。このようにすれば、バッテリ24の過度な使用を制限することができるため好適である。また、この際、所定のインジケータ等を介し、収束操舵トルクTcの付与が禁止された旨を運転者に告知してもよい。
一方、制動期間中においてバッテリ24が高負荷状態にある場合(ステップS330:YES)、ECU100は、電動モータ18によるトルク出力を禁止し、収束操舵トルクTcによるキングピン軸周りのモーメント制御を、ECBによる制動力配分によって代替する(ステップS340)。
具体的には、ECU100は、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーションや数値演算に基づいて、収束操舵トルクTcが前輪に付与された場合と同様の効果を得られるように適合された、収束操舵トルクTcの値と各車輪に作用させる制動力の配分比率との対応関係に基づいて、収束操舵トルクTcの値に対応する制動力の配分比率を決定し、係る決定された配分比率と、元々必要とされている制動力とに基づいてブレーキアクチュエータ23を制御することによって、係る代替制御を実行する。ステップS340、ステップS350又はステップS360に係る処理が実行されると、ステップS300に係る操舵トルクの制御は終了する。
ここで、図11及び図12を参照し、ECBによるこのような代替制御の詳細について説明する。図11は、制動時に車両10における一の車輪(ここでは左前輪FLとする)に作用するモーメントを説明するための模式図である。
図11において、左前輪FLに制動力Fが作用しているとする。ここで、左前輪FLに対応するキングピン軸KPFLから制動力の作用点までの距離(モーメントアーム)をYとすると、キングピン軸KPFL周りのモーメントは、図示の通り左旋回方向に作用し、その値はF×Yとなる。即ち、図示モーメントFYとなる。
図12は、ECBによる代替制御の一例を表す模式的概念図である。尚、同図において、図11と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図12において、FL、FR、RL及びRRの各車輪に、夫々制動力F1、F2、F3及びF4が作用しているものとする。この場合、夫々に対応するキングピン軸KPFL、KPFR、KPRL及びKPRRの周りに作用するモーメントは、夫々モーメントF1Y、F2Y、F3Y及びF4Yとなる。
ここで、収束操舵トルクTcが、例えば、前輪を図示右方向へ旋回させる方向へ出力されるものとする。この場合、図示のように、制動力F2が制動力F1よりも大きくなるようにブレーキアクチュエータ23が制御されることにより、前輪については、モーメントF2YがモーメントF1Yよりも大きくなり、右旋回方向へのモーメントが相対的に大きくなる。このため、収束操舵トルクTcが右旋回方向へ加えられたのと同様の効果を得ることができる。
一方、後輪については、制動力F3が制動力F4よりも大きくなるようにブレーキアクチュエータ23が制御されることにより、モーメントF3YがモーメントF4Yよりも大きくなり、左旋回方向へのモーメントが相対的に大きくなる。ステアリング振動とヨー振動との連成が生じている場合、各々の振動が逆相となっているから、後輪側については前輪側と反対に左旋回方向へのモーメントを相対的に大きくすることにより、車両10におけるステアリング振動とヨー振動との連成を好適に抑制することが可能となる。
このように、本実施形態によれば、制動期間については、車両10に備わる各車輪への制動力配分を制御することにより、前輪に収束操舵トルクTcを作用させるのと同様の効果が得られ、例えば、バッテリ24の負荷状態によって収束操舵トルクTcの出力が困難である状況であっても、前述したような、ステアリング振動とヨー振動との連成を抑制することが可能となる。即ち、電源の負荷状態が車両の挙動に与える影響を軽減することが可能となるのである。
尚、車両10におけるステアリング振動とヨー振動との連成を収束させるためのECBにおける制動力の配分態様は、このような配分が何らなされない場合と比較して幾らかなりとも係る連成を収束させ得る限りにおいて何ら限定されない。例えば、係る配分比率は、収束操舵トルクTcの関係が予め明らかとなっておらずともよく、例えば収束操舵トルクTcを算出する過程における各種制御信号等に基づいて全く独立に決定されてもよい。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明の一実施形態に係る車両の概略構成図である。 図1の車両におけるEPSの動作全体を示すフローチャートである。 図2のステップS200における動作を示すフローチャートである。 図3のステップS210における動作を示すフローチャートである。 図3のステップS220における動作を示すフローチャートである。 図3のステップS230における動作を示すフローチャートである。 操舵トルクと基本操舵トルクとの関係を示すグラフである。 車速依存係数KV1と車速との関係を示すグラフである。 車速依存係数KV2と車速との関係を示すグラフである。 図2のステップS300における動作を示すフローチャートである。 制動時に一の車輪に作用するモーメントを説明する模式図である。 制動力の付与によって収束操舵トルクの付与を代替する一例を表す模式概念図である。
符号の説明
FL、FR、RL,RR…車輪、10…車両、100…ECU、200…EPS、11…ステアリングホイール、12…ステアリングシャフト、13…ラックアンドピニオン機構、15FL、15FR、15RL、15RR…ホイルシリンダ、16…舵角センサ、17…トルクセンサ、18…電動モータ、19…ロール角算出回路、20…車速センサ、21…横力センサ、22…タックイン判定回路、23…ブレーキアクチュエータ、24…バッテリ、25…SOCセンサ。

Claims (6)

  1. 電源装置、該電源装置から供給される電力により少なくとも一部が駆動され、少なくとも前輪に操舵力を付与可能な操舵力付与手段並びに前記前輪及び後輪の各々に制動力を付与可能な制動力付与手段を備えた車両を制御する車両の制御装置であって、
    前記前輪の操舵時における前記車両の挙動の状態に対応付けられた所定の指標値を特定する第1特定手段と、
    前記特定された指標値に基づいて、前記操舵力の少なくとも一部として前記挙動を安定させる方向に前記前輪を操舵する安定化操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する操舵制御手段と、
    前記車両の減速期間の少なくとも一部において、前記安定化操舵力の代わりに前記各々に付与される制動力により前記挙動が安定するように前記制動力付与手段を制御する制動制御手段と
    を具備することを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記第1特定手段は、前記指標値の少なくとも一部として前記前輪に作用する横力に対応する指標値及び前記後輪に作用する横力に対応する指標値を夫々特定し、
    前記操舵制御手段は、前記前輪に作用する横力に対する前記後輪に作用する横力の比率が前記車両にヨー振動が生じる比率となる場合に、前記安定化操舵力として、前記ヨー振動を収束させる方向に前記前輪を操舵する収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記操舵制御手段は、前記前輪に作用する横力に対する前記後輪に作用する横力の比率が所定値以上となる場合に、前記収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記前輪に作用する横力の微分値及び前記後輪に作用する横力の比例値に基づいて前記収束操舵力を決定する収束操舵力決定手段を更に具備し、
    前記操舵制御手段は、前記決定された収束操舵力が付与されるように前記操舵力付与手段を制御する
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の制御装置。
  5. 前記挙動が安定するように前記各々に付与される制動力の相互比率を決定する相互比率決定手段を更に具備し、
    前記制動制御手段は、前記車両の減速期間の少なくとも一部において、前記決定された相互比率に基づいて前記制動力付与手段を制御する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
  6. 前記電源装置の負荷状態を特定する第2特定手段と、
    前記特定された負荷状態に基づいて前記電源装置が高負荷状態にあるか否かを判別する判別手段と
    を更に具備し、
    前記制動制御手段は、前記車両の減速期間に前記電源装置が前記高負荷状態にある場合に、前記安定化操舵力の代わりに前記各々に付与される制動力により前記挙動が安定するように前記制動力付与手段を制御する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
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