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JP2008050788A - 既設建物の耐震補強構造 - Google Patents

既設建物の耐震補強構造 Download PDF

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JP2008050788A JP2006226150A JP2006226150A JP2008050788A JP 2008050788 A JP2008050788 A JP 2008050788A JP 2006226150 A JP2006226150 A JP 2006226150A JP 2006226150 A JP2006226150 A JP 2006226150A JP 2008050788 A JP2008050788 A JP 2008050788A
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Takashi Kamiya
隆 神谷
Yoichi Ueda
洋一 上田
Masahiro Enomoto
将弘 榎本
Kazuo Yamada
和夫 山田
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Abstract

【課題】適切な設計耐力に基づいた、優れた耐力を有する既設建物の耐震補強構造を提供すること。
【解決手段】既設建物の外壁側に位置する柱体12の外面と梁体14の外面に、柱体12や梁体14を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成される補強体16が固着された耐震補強構造10とする。このとき、柱体12の外面と補強体16との間や梁体14の外面と補強体16との間には、アンカーボルト22が打設されていても良い。
【選択図】図1

Description

本発明は、既設建物の耐震補強構造に関し、さらに詳しくは、既設建物の外側から柱体や梁体を補強する既設建物の耐震補強構造に関するものである。
従来、既設建物の耐震補強構造としては、建物を使用しながら工事を進めることができ、既設の壁やサッシ等を解体せずに施工することが可能であるという利便性から、建物の外部からの作業で施工するものが提案されている。
例えば特許文献1には、図7で示すように、既設建物の外壁側に位置する柱体(梁体)62の外面に、外面から打設されたアンカーボルト64により、鋼板66入りコンクリート68からなる補強体70が一体にされ、設けられた既設建物の耐震補強構造60が開示されている。
このものにおいて、従来は、打設されたアンカーボルト64によって、補強体70が既設建物の柱体(梁体)62と一体にされていると考えられていたので、アンカーボルト64のダボ抵抗を評価したせん断耐力式で、補強体70と既設建物の柱体(梁体)62との間の接合部の設計耐力を評価していた。
特許第3051071号公報
ところが、地震発生時に、アンカーボルトは、補強体と既設建物の柱体や梁体との間の接合部が大きく変位してから耐力を発揮する。これに対し、特許文献1に示されるもののように、既設建物の柱体や梁体の外側に補強体を増設する耐震補強では、柱体と梁体とで構成される既設架構の内周側に補強体を増設する耐震補強と異なり、補強体が既設架構に拘束されないため、補強体と既設建物の柱体や梁体との間の接合部が大きく変位すると、耐震性能が急激に劣化する。
つまり、既設建物の柱体や梁体の外側に補強体を増設する耐震補強では、アンカーボルトのダボ抵抗による設計耐力を評価すると、耐震性能が急激に劣化する範囲での評価となるため、接合部の設計耐力が正しく評価されていない。よって、この場合には、補強体と既設建物の柱体や梁体との間の接合部が大きく変位していない範囲において接合部の設計耐力を評価するべきである。
このときの接合部のせん断抵抗要素は固着抵抗と考えられているが、現状では固着抵抗を適切に評価し得るせん断耐力式の評価方法が提案されていなかった。そのため、適切な設計耐力に基づいて、優れた耐力を有する既設建物の耐震補強を行なうことが望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、適切な設計耐力に基づいた、優れた耐力を有する既設建物の耐震補強構造を提供することにある。
そこで、本発明者らが鋭意研究した結果、接合部の固着強度は、既設建物の柱体や梁体を構成するコンクリートの割裂引張強度で評価することができるという知見を得た。そして、この知見により、適切な設計耐力に基づいて、優れた耐力を有する既設建物の耐震補強構造を完成するに至った。
上記課題を解決するために本発明に係る既設建物の耐震補強構造は、既設建物の外壁側に位置する柱体の外面および/または梁体の外面に、前記柱体および/または梁体を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成される補強体が固着されていることを要旨とするものである。
この場合、前記柱体の外面と前記補強体との間および/または前記梁体の外面と前記補強体との間に、アンカーボルトが打設されているものであっても良い。
本発明に係る既設建物の耐震補強構造によれば、既設建物の外壁側に位置する柱体の外面および/または梁体の外面に補強体が固着されているので、地震発生時には、補強体と既設建物の柱体および/または梁体との間の接合部が大きく変位する前の微小変形領域で耐力が発揮される。これによって、補強体と既設建物との一体化が図られ、地震によるせん断力が両者間で伝達される。
このとき、補強体は既設建物の柱体および/または梁体に固着されているので、接合部の設計耐力の評価において、アンカーボルトのダボ抵抗ではなく、微小変形領域で耐力を発揮する固着耐力を評価することができる。これによって、接合部の設計耐力が正しく評価される。
そして、固着耐力による固着強度は、既設建物の柱体および/または梁体を構成するコンクリートの割裂引張強度で評価することができる。既設建物の柱体や梁体を構成するコンクリートの割裂引張強度での固着強度の評価は、接合面のせん断耐力式での評価ではないので、接合面の目荒し程度やアンカーボルトの量、アンカーボルトの有効埋込み深さには関係しない。よって、これらの要因に影響されることなく固着強度が評価できるので、適切な設計耐力に基づいた耐震補強が可能となる。
そして、この知見により、補強体を、既設建物の柱体および/または梁体を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成しているので、少なくとも既設建物の柱体および/または梁体を構成するコンクリートが破壊される前に補強体が破壊されることはなく、適切な設計耐力に基づいた、優れた耐力を有する既設建物の耐震補強構造となる。
この場合、前記柱体の外面と前記補強体との間および/または前記梁体の外面と前記補強体との間にアンカーボルトが打設されていれば、大地震により接合面での既設部のコンクリートが破壊されても、既設建物から補強体が脱落するのを防止する。
以下、本発明の実施形態について、図を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る既設建物の耐震補強構造の一実施形態を表す概略図である。図2は、図1に示される既設建物の耐震補強構造の要部拡大断面図である。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る既設建物の耐震補強構造10は、既設建物の柱体12と梁体14とがあって、これら柱体12と梁体14のそれぞれの外面に補強体16が増設された構造である。既設建物の柱体12と梁体14は既設建物の外壁側に位置するものであり、補強体16は既設建物の外側に増設されている。既設建物の柱体12と梁体14はコンクリートで構成されている。柱体12や梁体14を構成するコンクリートは、特に限定されるものではなく、コンクリート、鉄筋コンクリート、鉄骨コンクリート、鉄筋鉄骨コンクリートのいずれであっても良い。
補強体16は、H形鋼からなる鉄骨18がコンクリート20に内包された鉄骨コンクリートであり、柱体12と梁体14を構成するコンクリートと、それぞれの外面でコンクリートにより固着されている。
補強体16を構成するコンクリートは、既設建物の柱体12と梁体14を構成するコンクリートよりも圧縮強度の高いものを用いる。
既設建物の柱体12・梁体14と補強体16との間には、H形鋼18に沿って2列に平行に配置されたアンカーボルト22が介在されている。
この既設建物の耐震補強構造10において、柱体12の補強部分を拡大して説明する。図2(a)に示されるように、既設建物の柱体12の外面12a側には、アンカーボルト22を取付ける取付孔24が設けられ、取付孔24にアンカーボルト22が接着剤により固定されている。アンカーボルト22には、挿通孔26を通して一対のナット28と座金30で挟んでH形鋼18が取付けられている。そして、アンカーボルト22とH形鋼18とを囲んで、柱体12の外面12aに補強体16のコンクリート20が打設されている。
次に、本実施形態に係る既設建物の耐震補強構造10を構築する方法(耐震補強工法)の一例について説明をする。
最初に、既設建物の外壁側に位置する柱体12と梁体14に、その外面からアンカーボルト22を一定のピッチで打設する。次に、アンカーボルト22にH形鋼18を固定してH形鋼18を既設建物の外壁側に配置する。例えば、柱体12や梁体14の外面から10cm程度離してH形鋼18を配置し、アンカーボルト22に取り付ける。
アンカーボルト22は、柱体12や梁体14にその軸方向に沿って1列または複数列打設する。アンカーボルト22を柱体12や梁体14の軸方向に沿って複数列に打設する場合、補強体16が柱体12や梁体14に、より強固に固定される点で好ましい。アンカーボルト22は、柱体12や梁体14に打設する際、接着剤(図示略)によって固定化される。アンカーボルト22とH形鋼18は、柱体12と梁体14の両方に打設しても良いし、柱体12か梁体14のいずれか一方のみに打設しても良い。
次いで、柱体12や梁体14に固定されたアンカーボルト22とH形鋼18とを囲むように型枠(図示略)を組み、アンカーボルト22とH形鋼18を包み込むように、この型枠内にコンクリート20を打設する。打設するコンクリート20には、柱体12や梁体14を構成するコンクリートよりも圧縮強度の高いコンクリートを用いる。コンクリート20が打設されると、柱体12や梁体14を構成するコンクリートの外面12aに補強体16のコンクリート20が固着される。
以上で構成される既設建物の耐震補強構造10によれば、既設建物の外壁側に位置する柱体12の外面と梁体14の外面に補強体16が固着されているので、地震により補強体16と既設建物の柱体12や梁体14との間の接合部が大きく変位する前の微小変形領域で耐力が発揮される。これによって、補強体16と既設建物との一体化が図られ、地震によるせん断力が両者間で伝達される。
そして、補強体16は、既設建物の柱体12や梁体14を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成されるので、少なくとも既設建物の柱体12や梁体14を構成するコンクリートが破壊される前に補強体16が破壊されることはなく、優れた耐力を有する。
さらに、柱体12の外面と補強体16との間や梁体14の外面と補強体16との間にアンカーボルト22が打設されているので、大地震により接合面での既設部のコンクリートが破壊されても、既設建物から補強体16が脱落するのを防止する。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、図1に示される既設建物の耐震補強構造10は、柱体12と梁体14の両方を補強するものであるが、柱体か梁体のいずれか一方のみを補強するものであっても良いのは勿論である。また、現場でコンクリート打設されてなる耐震補強構造において、アンカーボルト22を使用しないものであっても良い。補強体に内包される形鋼は、H形鋼18に限られるものではなく、種々の形鋼を用いることができる。また、プレート状鋼板であっても良い。形鋼や鋼板には、配筋されていても良い。補強体に用いるコンクリートは、繊維補強コンクリートにより強化されたものであっても良い。
また、補強体は、現場でコンクリート打設されるものだけでなく、図2(b)に示される既設建物の耐震補強構造32のように、プレキャストコンクリート34からなるものであっても良い。プレキャストコンクリート34は、無筋コンクリートでも良いし、鉄筋コンクリートでも良い。このとき、プレキャストコンクリート34は、接着剤36を介して、既設建物の柱体12などに固着される。
さらに、この補強架構の内周部に筋違型や間柱型などの制震部材を組み合わせることも可能である。
次に、実施例について説明する。
(試験体の概要)
試験体は、下記に示す既設部と補強部とが接合された要素モデルとした。既設部と補強部との間の接合方法は、表3の実施例1〜3で使用する試験体については、コンクリートによる固着とアンカーボルトとで接合されており、実施例4では、コンクリートによる固着で接合されている。つまり、実施例では、いずれもコンクリートにより固着されている。これに対し、比較例1では、アンカーボルトで接合されているものの、接合面でコンクリートは固着されていないものとした。また、既設部の接合面には、市松模様状にビシャン仕上げとした目荒し加工が施されている。補強部コンクリートの打設は、実際の補強工事と同様、接合面を垂直にして実施した。
既設部:500×1400×450mmの直方体コンクリート
補強部:300×800×200mmの直方体コンクリート
既設部および補強部のコンクリート材料特性を表1に示す。
(表1)
Figure 2008050788
試験体のアンカーボルトによるせん断設計耐力Qは、以下の(式1)〜(式4)を用いて計算した。すなわち、アンカーボルトを構成する鋼材の耐力とコンクリートの支圧強度とを比較して、いずれか小さい方をアンカーボルト1本当たりのせん断設計耐力Qとしている。
Q=n×Q・・・(式1)
=min[Qa1,Qa2] ・・・(式2)
a1=0.7×σ×S ・・・(式3)
a2=0.4×√(E×σ)×S ・・・(式4)
n:アンカーボルトの本数(本)
a1:鋼材の耐力で決まるアンカーボルト1本当たりのせん断耐力(N)
a2:コンクリートの支圧強度で決まるアンカーボルト1本当たりのせん断耐力(N)
σ:アンカーボルトの降伏点強度(N/mm
S:アンカーボルトの断面積(mm
:既設部のコンクリートのヤング係数(N/mm
σ:既設部のコンクリートの圧縮強度(N/mm
ここで、σ=387(N/mm)、S=286.5(mm)、E=21106(N/mm)、σ=16.0(N/mm)であるので、Qa1=78.0(kN)、Qa2=66.6(kN)となり、(式1)〜(式4)によれば、実施例1〜4および比較例1のいずれも、試験体のせん断設計耐力Qはアンカーボルト本数×Qa2となる。したがって、アンカーボルトが3本の場合、Q=200(kN)、アンカーボルトが4本の場合、Q=267(kN)、アンカーボルトが5本の場合、Q=333(kN)となる。
(試験方法の概要)
本試験は、既設建物の外壁側に位置する梁体の外面中央部における補強を想定している。このような位置では、補強部の面外方向に対する剛性がスラブを含めた既設部に比べて小さいために、偏芯曲げにより接合面に作用する鉛直応力は梁体端部の接合面に集中し、梁体中央部の既設部と補強部との間の接合面にはせん断応力のみが負荷される純せん断応力状態に近いとの想定に基づく。よって、この接合面への載荷は、以下に述べる方法で行なった。
図3は、実施例における試験方法を表す概略図であり、平面図(a)および正面図(b)である。図3に示されるように、試験体38の補強部40が正面を向くように、試験体38の既設部42をボルト44で載荷フレーム46に固定する。次に、載荷フレーム46の両側から接合面38aと同一平面上に配置された一対の油圧ジャッキ48a,48bを補強部40の両側部に当接させ、一対の油圧ジャッキ48a,48bを左右に伸縮させることにより、接合面38aにせん断力のみを負荷(載荷)する。
このときの載荷プログラムを、表2に示す。載荷プログラムは、サイクル1〜5では、ダボ抵抗を評価したアンカーボルトのせん断設計耐力(アンカーボルト本数×Qa2)を荷重制御にて載荷し、サイクル6〜10では、既設部と補強部との間の変位量を基準として変位制御にて載荷した。
(表2)
Figure 2008050788
なお、最大耐力は、上記載荷プログラムに基づいて載荷したときの最大荷重とし、固着耐力は、荷重を加えたときに変位が大きくなるところの荷重とした。よって、固着耐力は、上記載荷プログラムの変位制御による載荷で、サイクル6の目標変位(0.4mm)に達する前の、剛性が低下するときの荷重になっている。
(実施例)
上記載荷プログラムに基づいて、油圧ジャッキにより各試験体の補強部に荷重を加え、試験体の既設部と補強部との間の接合面にせん断力を負荷(載荷)して、最大耐力と固着耐力を測定した。その結果を表3に示す。また、実施例1により測定された荷重と変位との関係を図4に示す。図4(a)は、サイクル1〜6での荷重と変位との関係を拡大して示したものであり、図4(b)は、サイクル1〜10での荷重と変位との関係を示したものである。
(比較例)
補強部の既設部へのコンクリートの固着をなくした以外、実施例1と同じ条件で、最大耐力と固着耐力を測定した。その結果を表3に示す。また、比較例1により測定された荷重と変位との関係を図5に示す。図5(a)は、サイクル1での荷重と変位との関係を拡大して示したものであり、図5(b)は、サイクル1〜10および押切での荷重と変位との関係を示したものである。
(表3)
Figure 2008050788
実施例1では、図4(a)に示すように、アンカーボルトのせん断設計耐力(267kN、図中破線で示す)を載荷目標とした荷重制御によるサイクル1〜5で変位の進展はなく弾性的な挙動を示し、変位制御によるサイクル6でその目標変位(0.4mm)に達する前に剛性が低下している。その結果、固着耐力は391kNであった。また、目標変位(0.4mm)での耐力は513kNであった。そして、サイクル6で荷重が固着強度に達したので、図4(b)に示すように、それ以降のサイクル7〜10では、各目標変位での耐力が徐々に低下している。よって、サイクル6の目標変位(0.4mm)での耐力513kNが最大耐力となった。
一方、比較例1では、図5(a)に示すように、アンカーボルトのせん断設計耐力(267kN、図中破線で示す)を載荷目標とした荷重制御によるサイクル1から変位の進展がみられた。また、図5(b)に示すように、変位制御によるサイクル6〜10では、変位の進展に伴い各目標変位での耐力が徐々に低下している。そして、変位を押切にすると、変位が10mmを超えたところで初めてアンカーボルトのせん断設計耐力(267kN)を超える耐力が発揮され、変位が約25mmのときに最大耐力301kNを示した。
この結果を基に、補強部のコンクリートの、既設部のコンクリートへの固着の影響についてみると、比較例1のように固着がないときには、アンカーボルトのせん断設計耐力(267kN)を5回経験した後の6サイクル目以降においては、大きく変位した(変位が10mmを超える)ところでようやくアンカーボルトのせん断設計耐力(267kN)と同じ耐力が発揮された。また、最大耐力に至るには、更に大きな変形(変位が25mm程度)が必要であることが確認された。これに対し、実施例1のように固着があるときには、アンカーボルトのせん断設計耐力(267kN)を5回経験した後の6サイクル目においても、変位が0.1mmより小さい微小変形領域でアンカーのせん断設計耐力(267kN)を大幅に上回る固着耐力が発揮されることが確認された。
既設建物の外側に補強体を増設する外側耐震補強では、補強体と既設建物の柱体や梁体との間の接合部が大きく変位すると耐震性能が急激に劣化するので、微小変形領域で耐力設計するべきであり、本実施形態に係る耐震補強では、アンカーボルトのせん断設計耐力ではなく、接合面の固着耐力で耐力設計するのが良いと考える。
また、実施例1〜4により、アンカーボルトの本数の耐力への影響についてみると、表3に示されるように、0本から5本の範囲でアンカーボルトの本数を変えた実験結果から、アンカーボルトの本数の増加に伴い固着耐力が上昇するといった関係は見られなかった。そして、固着耐力を発揮するときの変位は、図4(a)の例に示すように、いずれのときも0.1mm以下であり、アンカーボルトによるダボ抵抗が、微小変形領域での固着耐力にほとんど影響していないことが確認された。
よって、接合部の設計耐力の評価において、アンカーボルトのダボ抵抗ではなく、微小変形領域で耐力を発揮する固着耐力を評価することによって、接合部の設計耐力が正しく評価されると考える。
次に、固着強度と既設部のコンクリートの割裂引張強度との関係について述べる。
接合面には純せん断応力が均一に作用しているとの想定に基づくと、図6に示す既設部コンクリートのMohrの破壊包絡線との関係により、(式5)が成り立つ。
τ=σ・・・(式5)
τ:既設部コンクリートの固着強度(N/mm
σ:既設部コンクリートの割裂引張強度(N/mm
但し、固着強度(N/mm)=固着耐力/接合面積(mm)であり、接合面積は、既設部と補強部との間の接合面積(=240000mm)である。
ここで、既設部コンクリートの割裂引張強度は、既設部コンクリートの材齢から求まる。表1には、材齢と既設部コンクリートの割裂引張強度との関係について示しており、これより実施例1−4で使用した試験体についての既設部コンクリートの割裂引張強度は、表3に示すように、1.87〜1.90(N/mm)の範囲にある。
これに対し、実施例1〜4により、各試験体で測定した固着耐力による固着強度は、表3に示すように、1.57〜2.04(N/mm)の範囲にある。すなわち、既設部コンクリートの割裂引張強度と実施例1〜4で測定した固着耐力による固着強度とが良く一致していることが分かる。
以上、(式5)と、実験結果より表された表3に示される既設部コンクリートの割裂引張強度と固着強度との関係から、固着強度は既設建物の柱体や梁体を構成するコンクリートの割裂引張強度で評価できることが確認された。
そして、この知見により、補強体を、既設建物の柱体および/または梁体を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成している。
本発明に係る既設建物の耐震補強構造は、鉄骨鉄筋コンクリート建築、鉄筋コンクリート建築、鉄骨建築等の各種の建築構造物の耐震補強に使用することができ、必要によっては土木構造物等の耐震補強にも使用することができる。
本発明に係る既設建物の耐震補強構造の一実施形態を表す概略図である。 図1に示される既設建物の耐震補強構造の要部拡大断面図である。 実施例の試験方法を表す概略図である。 実施例1での荷重と変位との関係を示すグラフである。 比較例1での荷重と変位との関係を示すグラフである。 既設部コンクリートのMohrの破壊包絡線を示すグラフである。 従来の既設建物の耐震補強構造を表す断面図である。
符号の説明
10 既設建物の耐震補強構造
12 柱体
14 梁体
16 補強体
22 アンカーボルト

Claims (2)

  1. 既設建物の外壁側に位置する柱体の外面および/または梁体の外面に、前記柱体および/または梁体を構成するコンクリートの圧縮強度よりも高い圧縮強度を有するコンクリートで構成される補強体が固着されていることを特徴とする既設建物の耐震補強構造。
  2. 前記柱体の外面と前記補強体との間および/または前記梁体の外面と前記補強体との間には、アンカーボルトが打設されていることを特徴とする請求項1に記載の既設建物の耐震補強構造。
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