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JP2008040262A - 反射防止膜形成用の硬化性組成物 - Google Patents

反射防止膜形成用の硬化性組成物 Download PDF

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JP2008040262A
JP2008040262A JP2006216093A JP2006216093A JP2008040262A JP 2008040262 A JP2008040262 A JP 2008040262A JP 2006216093 A JP2006216093 A JP 2006216093A JP 2006216093 A JP2006216093 A JP 2006216093A JP 2008040262 A JP2008040262 A JP 2008040262A
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group
curable
polymer
film
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Application number
JP2006216093A
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Inventor
Tomohiro Yoshida
知弘 吉田
Yoshito Ando
善人 安藤
Shinichi Chaen
伸一 茶圓
Masahiko Yamada
雅彦 山田
Fumihiro Kamiya
文宏 上谷
Takayuki Araki
孝之 荒木
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Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
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Abstract

【課題】耐薬品性、防汚性、耐擦傷性、表面の潤滑性などに優れた低屈折率層を形成することができ、この層を有する反射防止膜および3層構造の反射防止フィルムは視認性に優れると共に防汚性にも優れる実用的な反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】(A)硬化性含フッ素ポリマー、(B)含フッ素表面改質剤、および(C)中空シリカ微粒子を含む硬化性組成物であって、該(A)成分が末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素アルキル基を有する構造単位を含み、(B)成分がCH2=CX1COO−(X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基)を有しパーフルオロポリエーテル単位を有していてもよい含フッ素化合物である反射防止膜形成用の硬化性組成物、これを用いて形成した反射防止膜および反射防止フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、低屈折率でかつ防汚性に優れた反射防止膜形成用の硬化性組成物、ならびに該組成物から製造される反射防止膜および反射防止フィルムに関する。
最近のマルチメディアの発達に伴い、各種の表示機器において、その視野性(斜めから見たときの映り込みが少ない性質。以下、「視認性」ともいう)の向上が益々重要となってきており、テレビなどの大型表示装置においても、より見やすくすることが求められており、この視認性の改善が技術的な課題となっている。
視認性の改善方法としては、反射防止膜を有する反射防止フィルムを貼り付けたりする方法がある。こうした反射防止フィルムは、通常、透明な基材フィルムにハードコート層を設け、その上に低屈折率層を設けることにより作製されている。
低屈折率層の屈折率を下げる方法の一つとして、中空シリカ微粒子を配合して微細な空間を低屈折率層中に設ける方法がある。しかし、中空シリカ微粒子を配合すると耐薬品性が低下したり、汚れが付着しやすくなってしまう。
ところで反射防止フィルムは視認性の改善を最大の課題としており、したがって、その表面が汚れてしまうと、反射防止(映り込みの防止)という課題が解決できたとしても、実用面で問題が残る。
そこで反射防止フィルムの防汚性を改善するために、防汚層を最外層に設けることが提案されている(特許文献1)。
特許文献1の反射防止フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に、ハードコート層、有機ケイ素化合物またはその重合体と中空シリカ微粒子からなる低屈折率層、フッ素含有シラン化合物からなる防汚層が順次積層された4層構造のフィルムとなっている。
しかしこの4層構造の反射防止フィルムは、層が一つ増えることによる作業性および生産性の低下のほか、低屈折率層と防汚層との密着性を充分に配慮しなければならず、材料の選択が限られてしまう。
また防汚成分を低屈折率層に配合した3層構造の反射防止フィルムも提案されている(特許文献2)。
特許文献2の反射防止フィルムでは、透明基材上に設けられたハードコート層に、有機ケイ素化合物またはその重合体のいずれかからなる組成物とパーフルオロポリエーテル基含有珪素化合物またはその重合体のいずれかからなる組成物との共重合体、さらに中空シリカ微粒子を含む低屈折率コーティング剤を塗布して防汚性の低屈折率層が形成されている。
しかし、特許文献2記載の反射防止フィルムは、日常生活で使用する掃除用品などに含まれている水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどの薬品に対する耐性に劣り、反射防止膜が剥離してしまうという課題が残っている。
特開2002−277604号公報 特開2002−265866号公報
本発明は、特許文献2における薬品による反射防止膜の剥離といった課題を解決し、さらに防汚性を維持しつつ、低反射率化が可能であるという特性を付与できる反射防止膜、そうした反射防止膜を形成しうる硬化性組成物、および該反射防止膜を有する反射防止フィルムを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、
(A)硬化性含フッ素ポリマー、(B)含フッ素表面改質剤、および(C)中空シリカ微粒子を含む硬化性組成物であって、該(A)成分が、式(1):
−(M)−(A)− (1)
[式中、構造単位Mは、式(M):
Figure 2008040262
(式中、XaおよびXbは同じかまたは異なり、HまたはF;XcはH、F、CH3またはCF3;XdおよびXeは同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;m1は0〜3の整数;m2およびm3は同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
構造単位Aは、構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマーを100モル%まで含む硬化性含フッ素ポリマーであり、
該(B)成分が式(2):
Figure 2008040262
(式中、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基;R1はケイ素原子を有しないが、環構造、ヘテロ原子および/または官能基は有していてもよい(n1+n4)価の有機基;Rf1はパーフルオロポリエーテル基;R2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基);n1は1〜3の整数;n2は0または1;n3は0〜50;n4は1〜3の整数)で示され、かつフッ素原子を含む数平均分子量が100〜6000の含フッ素化合物である反射防止膜形成用の硬化性組成物に関する。
かかる硬化性組成物は、さらに(D)成分として2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む硬化剤(ただし、(B)成分とは異なる)、および/または(E)成分として活性エネルギー線硬化開始剤を含んでいてもよい。
本発明はまた、これらの硬化性組成物の硬化被膜であって、該硬化被膜の膜厚が0.03〜0.5μmである反射防止膜、さらには透明基材フィルム上にハードコート層、ついで前記硬化性組成物の硬化被膜が他の層を介さずに直接形成されてなる反射防止フィルムにも関する。
本発明の硬化性組成物によれば、耐薬品性、防汚性、耐擦傷性、表面の潤滑性などに優れた低屈折率層を形成することができ、この層を有する反射防止膜および3層構造の反射防止フィルムは視認性に優れると共に防汚性にも優れる実用的な反射防止フィルムを提供することができる。
本発明の反射防止膜形成用の硬化性組成物は、(A)硬化性含フッ素ポリマー、(B)含フッ素表面改質剤および(C)中空シリカ微粒子を含む。以下、各成分について説明する。
(A)硬化性含フッ素ポリマー:
硬化性含フッ素ポリマー(A)は、国際公開第02/18457号パンフレットに式(1)で示されている硬化性含フッ素ポリマーである。
すなわち、式(1):
−(M)−(A)− (1)
[式中、構造単位Mは、式(M):
Figure 2008040262
(式中、XaおよびXbは同じかまたは異なり、HまたはF;XcはH、F、CH3またはCF3;XdおよびXeは同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;m1は0〜3の整数;m2およびm3は同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
構造単位Aは、構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマーを100モル%まで含む硬化性含フッ素ポリマーである。
構造式Mは、式(m):
CXab=CXc−(CXdem1−(C=O)m2−(O)m3−Rf (m)
(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1、m2およびm3は式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
つまり、上記の側鎖に反応により硬化可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する含フッ素エチレン性単量体の単独重合体、またはその含フッ素エチレン性単量体を必須成分として有する共重合体である。
Yの少なくとも1個はRfの末端に結合していることが好ましい。なお、以下の構造式において使用するYは、特記しない限り式(M)で定義したYである。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位MはなかでもM1が好ましく、M1は式(M1):
Figure 2008040262
(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1およびm3は式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M1は、式(m1):
CXab=CXc−(CXdem1−(O)m3−Rf (m1)
(式中、Xa、Xb、Xc、Xd、Xe、Rf、m1およびm3は式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
上記構造単位M1を含む重合体は、特に屈折率が低く、特にM1のホモポリマーやM1を増やした組成の重合体においても屈折率を低くすることができ、好ましいものである。
さらにM1のより好ましい具体例は構造単位M2であり、構造単位M2は式(M2):
Figure 2008040262
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M2は、式(m2):
CH2=CF−CF2−O−Rf (m2)
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
つまり、上記のM2はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素アリルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くできるだけでなく、重合性が良好であり、特にホモ重合性、含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好であるため好ましい。
また、M1のもう1つの好ましい具体例は構造単位M3であり、構造単位M3は式(M3):
Figure 2008040262
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される構造単位である。
構造単位M3は、式(m3):
CF2=CF−O−Rf (m3)
(式中、Rfは式(M)と同じ)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位である。
上記M3はエチレン性炭素−炭素二重結合を末端に有する含フッ素ビニルエーテルの構造単位であり、屈折率を低くでき、また含フッ素エチレン系単量体との共重合性が良好である点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるYは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の有機基である。
つまり、Y中の炭素−炭素二重結合は重縮合反応や環化反応、付加反応などを起こす能力を有し、硬化(架橋)体を得ることができるものである。詳しくは、たとえばラジカルやカチオンの接触によって本発明の硬化性含フッ素ポリマー分子間で、または硬化性含フッ素ポリマーと必要に応じて加えられる硬化(架橋)剤との間で重合反応や縮合反応を起こし、硬化(架橋)物を得ることができるものである。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、Yの好ましくは
Figure 2008040262
(式中、Y1は末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜5のアルケニル基、または含フッ素アルケニル基、m4およびm5は同じかまたは異なり0または1)であり、Y1の好ましくは
−CXf=CXgh
(式中、XfはH、F、CH3またはCF3;XgおよびXhはHまたはF)であり、ラジカルやカチオンの接触による硬化反応性が高く好ましいものである。
1の好ましい具体例としては、
Figure 2008040262
などがあげられる。
またYのより好ましくは、
−O(C=O)CXf=CXgh
(式中、Xf、XgおよびXhは上記と同じ)で示されるY2があげられ、特にラジカルの接触による硬化反応性がより高い点で好ましく、光硬化などにより容易に硬化物を得ることができる点で好ましい。
上記Y2のより好ましい具体例としては、
Figure 2008040262
などがあげられる。
その他のYとしては、
Figure 2008040262
があげられる。
なかでも、−O(C=O)CF=CH2の構造を有するものが屈折率を低くでき、さらに硬化(架橋)反応性が特に高く効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
本発明の式(1)の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、構造単位M、M1、M2およびM3に含まれるRfの好ましいものは、特に官能基Yが1個の場合、炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基、炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。これらの有機基は含まれる炭素原子にフッ素原子が結合していればよく、一般に、炭素原子にフッ素原子と水素原子または塩素原子が結合した含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基であるが、フッ素原子をより多く含有する(フッ素含有率が高い)ものが好ましく、官能基を除く有機基の酸素原子を除く分子量に対し、フッ素含有率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくはパーフルオロアルキレン基またはエーテル結合を有するパーフルオロアルキレン基である。これらによって、硬化性含フッ素ポリマーの屈折率を低くすることが可能となり、特に硬化物の硬度を高くする目的で硬化度(架橋密度)を高くしても屈折率を低く維持できるため好ましい。
炭素数は大きすぎると、含フッ素アルキレン基の場合は溶剤への溶解性を低下させたり透明性が低下することがあるため、またエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の場合はポリマー自身やその硬化物の硬度や機械特性を低下させることがあるため好ましくない。含フッ素アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20である。
好ましい具体例としては
Figure 2008040262
(XiおよびXjは同じかまたは異なりFまたはCF3;Xk、Xlは同じかまたは異なりHまたはF;o+p+qは1〜30;rは0または1;s、tは0または1)
である。
構造単位M2を与える単量体として好ましい具体例としては、
Figure 2008040262
があげられ、より詳しくは、
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
などがあげられる。
構造単位M3を与える単量体(m3)の好ましい具体例としては、
Figure 2008040262
などがあげられる。
さらに詳しくは、
Figure 2008040262
などがあげられる。
構造単位M2、M3以外の本発明の硬化性含フッ素ポリマーの構造単位Mを構成する単量体の好ましい具体例としては、たとえば
Figure 2008040262
などがあげられる。
より具体的には、
Figure 2008040262
などがあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)において構造単位Aは任意成分であり、構造単位M、M1、M2またはM3を与える単量体(m)、(m1)、(m2)および(m3)と共重合し得る単量体であれば特に限定されず、目的とする硬化性含フッ素ポリマーやその硬化物の用途、要求特性などに応じて適宜選択すればよい。
たとえば、つぎの構造単位が例示できる。
(1)官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A1)
これらは、硬化性含フッ素ポリマーおよびその硬化物の屈折率を低く維持しながら、基材への密着性や溶剤、特に汎用溶剤への溶解性を付与できる点で好ましく、そのほかYが関与する以外の架橋性などの機能を付与できる点で好ましい。官能基を有する好ましい含フッ素エチレン性単量体の構造単位は、一般式(A1):
Figure 2008040262
(式中、Xm、Xn、XoはHまたはF;XpはH、FまたはCF3;hは0〜2;iは0または1;Rf3aは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;D1は−OH、−CH2OH、−COOH、カルボン酸誘導体、−SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基またはシアノ基から選ばれるもの)で示される構造単位であり、なかでも式(A1−1):
Figure 2008040262
(式中、Rf3aおよびD1は式(A1)と同じ)
で示される構造単位が好ましい。
より具体的には、
Figure 2008040262
などの含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
また式(A1−2):
Figure 2008040262
(式中、Rf3aおよびD1は式(A1)と同じ)
で示される構造単位も好ましく例示でき、より具体的には、
Figure 2008040262
などの単量体から誘導される構造単位があげられる。
その他、官能基含有含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CFCF2−O−Rfa−D1、CF2=CF−Rfa−D1
CH2=CH−Rfa−D1、CH2=CHO−Rfa−D1
(これらの式においてRfaは式(M)のRfからYを除いた基)
などがあげられ、より具体的には、
Figure 2008040262
などがあげられる。
(2)官能基を含まない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位(A2)
これらは硬化性含フッ素ポリマーまたはその硬化物の屈折率を低く維持できる点で、またさらに低屈折率化することができる点で好ましい。また単量体を選択することでポリマーの機械的特性やガラス転移点などを調整でき、特に構造単位Mと共重合してガラス転移点を高くすることができ、好ましいものである。
含フッ素エチレン性単量体の構造単位としては一般式(A2):
Figure 2008040262
(式中、Xq、Xr、XsはHまたはF;XtはH、FまたはCF3;h1、i1、jは0または1;D2はH、FまたはCl;Rf4aは炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基)で示されるものが好ましい。
具体例としては、
Figure 2008040262
などの単量体から誘導される構造単位が好ましくあげられる。
(3)フッ素原子を有する脂肪族環状の構造単位(A3)
これらの構造単位を導入すると、透明性を高くでき、また、より低屈折率化が可能となり、さらに高ガラス転移点の硬化性含フッ素ポリマーが得られ、硬化物にさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
含フッ素脂肪族環状の構造単位としては式(A3):
Figure 2008040262
(式中、Xa1、Xa2、Xa4、Xa5、Xa7、Xa8は同じかまたは異なりHまたはF;Xa3、Xa6は同じかまたは異なりH、F、ClまたはCF3;Rf5aは炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;p2は0〜3の整数;p1、p3、p4、p5は同じかまたは異なり0または1の整数)で示されるものが好ましい。
たとえば、
Figure 2008040262
(式中、Rf5a、Xa3、Xa6は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
具体的には、
Figure 2008040262
Figure 2008040262
(式中、Xa4、Xa5は前記と同じ)などがあげられる。
(4)フッ素原子を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位
屈折率を悪化(高屈折率化)させない範囲でフッ素原子を含まないエチレン性単量体から誘導される構造単位を導入してもよい。
それによって、汎用溶剤への溶解性が向上したり、添加剤、たとえば光触媒や必要に応じて添加する硬化剤との相溶性を改善できるので好ましい。
非フッ素系エチレン性単量体の具体例としては、
αオレフィン類:
エチレン、プロピレン、ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど
ビニルエーテル系またはビニルエステル系単量体:
CH2=CHOR、CH2=CHOCOR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)など
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
CH2=CHCH2OR(R:炭素数1〜20の炭化水素基)、
CH2=CHCH2OCH2CH2COOH、
Figure 2008040262
など
アクリル系またはメタクリル系単量体:
アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類のほか、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル類などがあげられる。
(5)脂環式単量体から誘導される構造単位
構造単位Mの共重合成分として、より好ましくは構造単位Mと前述の含フッ素エチレン性単量体または非フッ素エチレン性単量体(前述の(3)、(4))の構造単位に加えて、第3成分として脂環式単量体構造単位を導入してもよく、それによって高ガラス転移点化、高硬度化が図られるので好ましい。
脂環式単量体の具体例としては、
Figure 2008040262
(m:0〜3、A、B、C、Dは、H、F、Cl、COOH、CH2OH、炭素数1〜5のパーフルオロアルキルなど)で示されるノルボルネン誘導体、
Figure 2008040262
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいて、構造単位M(M1、M2、M3)とAの組み合わせや組成比率は、上記の例示から目的とする用途、物性(特にガラス転移点、硬度など)、機能(透明性、屈折率)などによって種々選択できる。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーにおいては、構造単位M(M1、M2、M3)を必須成分として含むものであり、構造単位M自体で屈折率を低く維持し、透明性を付与する機能と硬化により硬化物に硬さ、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性を付与できる機能をあわせもつという特徴をもつ。したがって本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構造単位Mを多く含む組成、極端には構造単位Mのみ(100モル%)からなる重合体であっても屈折率を低く維持できる。さらに同時に硬化(架橋)密度の高い硬化物が得られ、高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性に優れた被膜が得られる点で好ましい。
またさらに、本発明の構造単位Mと共重合可能な単量体の構造単位Aとからなる共重合体の場合、構造単位Aを前述の例示から選択することによって、さらに高硬度(高ガラス転移点)や低屈折率の硬化物を与えるポリマーとすることができる。
構造単位Mと構造単位Aとの共重合体において、構造単位Mの含有比率は、硬化性含フッ素ポリマーを構成する全単量体に対し0.1モル%以上であればよいが、硬化(架橋)により高硬度で耐摩耗性、耐擦傷性に優れ、耐薬品性、耐溶剤性に優れた硬化物を得るためには2.0モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上とすることが好ましい。
特に耐擦傷性、耐傷付性に優れた硬化被膜の形成が必要な反射防止被膜の用途においては、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらには50モル%以上含有することが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーは、構成単位Mの比率を増やしても(硬化部位を増やしても)反射防止効果は低下しないため、特に反射防止膜用途において好ましいものである。
またさらに反射防止膜用途など透明性を必要とする場合、構造単位Mと構造単位Aの組合せが非晶性となり得る組合せと組成を有する硬化性含フッ素ポリマーであることが好ましい。
なかでも、低屈折率と高硬度を狙いとするコーティング組成物用の含フッ素ポリマーの好ましい形態としては、式(1−1):
−(M)−(A1)−(A2)− (1−1)
からなる硬化性含フッ素ポリマーである。
式(1−1)中の構造単位Mは、式(1)のエチレン性炭素−炭素二重結合を側鎖に有する構造単位Mであり、式(M1)、(M2)、(M3)で示した前記の好ましい具体例と同様のものが適用できる。
構造単位A1は、側鎖に官能基を有する含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは前記式(A1)で示される構造単位であり、前述の官能基を有する含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A1の具体例が同様に好ましく適用できる。
構造単位A2は、官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位であり、詳しくは前記式(A2)で示される構造単位であり、前述の官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体から誘導される構造単位A2の具体例が同様に好ましく適用できる。なかでも、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位が好ましい。
構造単位M、A1およびA2のそれぞれの存在比率は、M=0〜90モル%、A1=0〜99.9モル%およびA2=0〜99.9モル%であり、かつA1+A2=10〜99.9モル%であるのが好ましい。なかでも、M=10〜80モル%、A1=1〜60モル%およびA2=20〜85モル%であり、かつA1+A2=20〜90モル%であることが好ましい。構造単位Mが少なすぎると、硬化後の被膜の硬度が低くなったり、強度が不充分になる傾向にある。A1が少なすぎると、基材への密着性や塗布性、溶剤溶解性などが不足する傾向にある。A2が少なすぎると、基材への塗布性、レべリング性、溶剤溶解性が不足する傾向がある。
これら構造単位M、A1、A2からなる含フッ素ポリマーは、構造単位Mの硬化性部位により被膜などに硬さと機械的強度、耐溶解性を付与できる。また構造単位A1の官能基により、基材との密着性や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性(濡れ性やレベリング性)を付与できる。さらに構造単位A2により、含フッ素ポリマーに機械的強度や溶剤溶解性、基材に対する良好な塗布性を付与できる。
さらに構造単位M、A1、A2はいずれもフッ素原子を数多く含むものであるため、屈折率を低く維持しながら上記の機能を付与することができる点で、特に反射防止用のコーティング剤として好ましい硬化性含フッ素ポリマーである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)の分子量は、たとえば数平均分子量において500〜1000000の範囲から選択できるが、好ましくは1000〜500000、特に2000から200000の範囲から選ばれるものが好ましい。
分子量が低すぎると、硬化後であっても機械的物性が不充分となりやすく、特に硬化物や硬化膜が脆く強度不足となりやすい。分子量が高すぎると、溶剤溶解性が悪くなったり、特に薄膜形成時に成膜性やレベリング性が悪くなりやすく、また硬化性含フッ素ポリマーの貯蔵安定性も不安定となりやすい。コーティング用途としては、最も好ましくは数平均分子量が5000から100000の範囲から選ばれるものである。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)は、構造単位Mの種類、含有率、必要に応じて用いられる共重合構造単位Aの種類によって種々決定できるが、硬化性含フッ素ポリマー自体(硬化前)の屈折率が1.45以下であることが好ましく、さらには1.40以下、特には1.38以下であることが好ましい。基材や下地の種類によって変化するが、これら低屈折率を維持し、硬化(架橋)が可能であることで、反射防止膜用のベースポリマーとして好ましいものとなり得る。
またさらに硬化性含フッ素ポリマーでは、汎用溶剤に可溶であることが好ましく、たとえばケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤の少なくとも1種に可溶または上記汎用溶剤を少なくとも1種含む混合溶剤に可溶であることが好ましい。
汎用溶剤に可溶であることは、コーティング用途、特に0.1μm程度の薄膜形成が必要な反射防止膜を各種透明フィルムやディスプレイ基板に形成する場合、成膜性、均質性に優れるため好ましく、反射防止膜形成における生産性の面でも有利である。
本発明の硬化性含フッ素ポリマーを得るためには、一般にはYを有する単量体を予め合成し、重合して得る方法;一旦、他の官能基を有する重合体を合成し、その重合体に高分子反応により官能基変換し、官能基Yを導入する方法など、国際公開第02/18457号パンフレットに記載の方法が採用できる。
(B)含フッ素表面改質剤
含フッ素表面改質剤(B)は、低屈折率層の表面に防汚性を付与する役割を主として有する成分であり、式(2):
Figure 2008040262
(式中、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基;R1はケイ素原子を有しないが、環構造、ヘテロ原子および/または官能基は有していてもよい(n1+n4)価の有機基;Rf1はパーフルオロポリエーテル基;R2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基);n1は1〜3の整数;n2は0または1;n3は0〜50;n4は1〜3の整数)で示され、かつフッ素原子を含む数平均分子量が100〜6000の含フッ素化合物である。
この含フッ素表面改質剤(B)は、シロキサン結合を含まない点で特許文献2に記載のパーフルオロポリエーテル基含有有機ケイ素化合物と異なり、耐薬品性に優れる点で有利である。
本発明で使用する含フッ素表面改質剤(B)は低屈折率層の自由表面に偏析しやすい特性を有しており、少ない量でも低屈折率層の表面に優れた防汚性を付与することができる。また、CH2=CX1COO−を有しており、硬化性含フッ素ポリマーの炭素−炭素二重結合と反応して、ポリマーに化学的に固定されるためブリードアウトしにくく、長期間防汚性を維持することができる。
式(2)において、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基であり、合成が容易である点および低屈折率化が良好な点から、特にH、CH3、F、CF3が好ましい。
Rf1はパーフルオロポリエーテル基であり、好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロエーテル単位の1種または2種以上が組み合わされた基である。パーフルオロエーテル単位の具体例としては、たとえば−OCF2−、−CF2O−、−OCF2CF2−、−CF2CF2O−、−OCF2CF2CF2−、−CF2CF2CF2O−、−OCF(CF3)−、−CF(CF3)O−、−OCF2CF(CF3)−、−CF(CF3)CF2O−、−OCF(CF3)CF2−、−CF2CF(CF3)O−などが例示できる。
パーフルオロエーテル単位の繰り返し数n3は0〜50であり、好ましくは1〜40、さらに好ましくは5〜30である。n3が0の場合、R2はフルオロアルキル基、特にパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基)である。
アルキル基としては炭素数1〜20、さらには1〜8の直鎖状または分子鎖状のアルキル基が例示できる。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などである。
フルオロアルキル基としては炭素数1〜20、さらには1〜8の直鎖状または分子鎖状のフルオロアルキル基が例示できる。特に低屈折率化が良好な点からパーフルオロアルキル基が好ましい。具体的にはCF3、C25、C37、C49、C613、C817などがあげられる。
2はCH2=CX2COO−でもよい。R2におけるX2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基であり、特に合成が容易である点および低屈折率化が良好な点からH、CH3、F、CF3が好ましい。
n1は1〜3であり、好ましくは1または2である。
式(2)で示される含フッ素表面改質剤(B)としては、より具体的にはつぎのものが例示できる。
(B1)国際公開公報WO03/002628号パンフレットおよび特開2006−37024号公報に記載されている反応性表面改質剤であって、反応性基としてCH2=CX1COO−を有する化合物:
すなわち、ジイソシアネートを3量化させたトリイソシアネート(B1a)および少なくとも2種の活性水素含有化合物(B1b)の組合せからなる反応性基含有組成物であり、成分(B1b)は、少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(B1b−1)と、活性水素と自己反応性基を有するモノマー(B1b−2)を必須の組合せとして含んでなる組成物である。
自己反応性基としては、ラジカル重合性の自己反応性基があげられる。
たとえばトリイソシアネート(B1a)と成分(B1b)とを反応させることによって、すなわちトリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b)に存在する活性水素を反応させることによって、少なくとも1つの自己反応性基を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(B1A)の形で得ることができる。トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b)に存在する活性水素の当量比は、NCO基1当量に対して活性水素が少なくとも1当量、特に1:1であることが好ましい。
トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基と成分(B1b−1)および(B1b−2)を同時に反応させてもよいし、あるいは成分(B1b−1)および(B1b−2)を順次反応させてもよい。
トリイソシアネート(B1a)1モルに対して、成分(B1b−1)の有する活性水素と成分(B1b−2)の有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、さらには少なくとも3モルであることが好ましい。
成分(B1b−1)の適当な量はトリイソシアネート(B1a)1モルに対して、下限が0.0001モル、さらには0.01モル、特に0.1モルであり、上限が2モル、さらには1.5モル、特に1.0モルである。
成分(B1b−2)の適当な量はトリイソシアネート(B1a)1モルに対して、下限が1モル、さらには1.2モル、特に1.5モルであり、上限が2.5モル、さらには2モル、特に1.8モルである。
成分(B1b)は、さらに(B1b−1)および(B1b−2)以外の活性水素を有する化合物(B1b−3)を含んでもよい。成分(B1b−3)を含む場合、化合物(B1A)は成分(B1a)と、成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)とを反応させることにより得られる。トリイソシアネート(B1a)に成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)を同時に反応させてもよいし、あるいは成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)を順次(添加は記載の順序に限定されない)添加して反応させてもよい。
トリイソシアネート(B1a)に存在するNCO基に成分(B1b−2)を1モル以上反応させ、残りのNCO基を成分(B1b−1)および(B1b−3)と反応させることが好ましい。トリイソシアネート(B1a)1モルに対して、成分(B1b−1)、(B1b−2)および(B1b−3)が有する活性水素の総和が2.5〜3.5モル、少なくとも3モル、特に3モルであることが好ましい。
トリイソシアネート(B1a)を得るために使用するジイソシアネートとしては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート基が脂肪族的に結合したジイソシアネート;たとえばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイシシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート基が芳香族的に結合したジイソシアネートなどがあげられる。
トリイソシアネート(B1a)の例としては、たとえば
Figure 2008040262
などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせである(B1b)は、前記のとおり、少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル(B1b−1)および活性水素と自己反応性官能基を有するモノマー(B1b−2)の組合せを含んでいるが、必要に応じて、前記(B1b−1)および(B1b−2)以外の活性水素を有する化合物(B1b−3)をさらに組み合わせてもよい。なお、活性水素を有する基としては、たとえば活性水酸基などの活性水素含有基が例示できる。
パーフルオロポリエーテル(B1b−1)としては、パーフルオロポリエーテル基に加えて、1つの分子末端に1つの水酸基を有するか、あるいは両末端のそれぞれに1つの水酸基を有する化合物が好ましい。
パーフルオロポリエーテル(B1b−1)は、一般式:
Figure 2008040262
(式中、X4はFまたは−CH2OH基;Y4およびZ4は同じかまたは異なりFまたは−CF3;aは1〜16の整数、cは0〜5の整数、b、d、eおよびgは同じかまたは異なり、0〜100の整数、hは0〜16の整数)で示される化合物であることが特に好ましい。
具体例としては、国際公開公報WO03/002628号パンフレットに記載されているものが例示でき、それらのうちでも、パーフルオロポリエーテル(PEPE)部分の数平均分子量が1000以上、特に1500以上で、10000以下、特に5000以下、さらには3000以下のものが好ましい。分子量が小さくなると防汚性や潤滑性が低下する傾向にあり、大きくなりすぎると溶剤に溶けにくくなる傾向にある。また、末端部分も適正な架橋密度が得られる点から片末端アルコール変性体が好ましい。
活性水素と自己反応性官能基を有するモノマー(B1b−2)は、活性水素、特に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよびビニルモノマーであることが好ましい。
モノマー(B1b−2)としては、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、HO(CH2CH2O)iCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3、i=2〜10)、CH3CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシジブチル(メタ)アクリレート)、CH3CH2CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシジブチル(メタ)アクリレート)、C65OCH2CH(OH)CH2OCOC(R3)C=CH2(R3:H、CH3;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)、アリルアルコール、HO(CH2kCH=CH2(k=2〜20)などがあげられる。特に反応生成物の溶剤溶解性に優れる点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
任意の成分である活性水素を有する化合物(B1b−3)は、パーフルオロポリエーテル基および自己反応性官能基の両方を有さず、少なくとも1つの活性水素を有する化合物であることが好ましい、化合物(B1b−3)の好ましい例をつぎにあげる。
(B1b−3−1)炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐鎖状炭化水素からなる1価のアルコール、
(B1b−3−2)
Figure 2008040262
(B1b−3−3)炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐鎖状炭化水素からなる2級アミン、
(B1b−3−4)芳香族基を有する2級アミン、
(B1b−3−5)フルオロアルキルアルコール:
Q(CF2l(CH=CH)m(CH2oOH
(式中、Qは水素原子、フッ素原子、(CF3)2CF−基;lは1〜10の整数;mは同じかまたは異なり0または1;oは1〜10の整数)、
(B1b−3−6)ポリアルキレングリコールモノエステル、たとえば式:
4(OCH2CH2pOH、R4(OCH2CH2CH2qOH
(式中、R4は炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素、アセチル基またはアルキルフェノキシ基;pおよびqは1〜20の整数)、
(B1b−3−7)芳香族アルコール
などがあげられる。
このうち特に好ましいものとしては、たとえば
Figure 2008040262
を含み、反応副生成物として
Figure 2008040262
などを含んでもよい。
(B2)特開2005−29743号公報に記載されている含フッ素グラフト重合体または含フッ素ブロック重合体のうちで、CH2=CX1COO−を有する化合物:
すなわち枝ポリマーおよび幹ポリマーを有してなり、枝ポリマーおよび幹ポリマーの少なくとも一方が炭素数1〜8のフルオロアルキル基を有する繰り返し単位からなるブロックを有し、他方がオキシアルキレン基を有する繰り返し単位を有する含フッ素グラフト重合体である。
フルオロアルキル基を有するモノマーとしては、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーなどがあげられる。
フルオロアルキル基含有ビニルモノマーは、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートや、フルオロアクリル基を有するα位がハロゲン原子、CF3、CF2HまたはCFH2に置換されたアクリレートであってよい。
フルオロアクリレート基含有アクリレートとしては、たとえばつぎのものが例示できる。
Figure 2008040262
(式中、Rfは炭素数1〜21のフルオロアルキル基;R5は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基;R6は炭素数1〜10のアルキレン基;R7は水素原子、フッ素原子、塩素原子、CF3、CFH2またはメチル基;Arは置換基を有していてもよいアリーレン基;nは1〜10の整数)
フルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としてはつぎのものが例示できる。
CF3(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2pCH=CH(CH2qOCOCH=CH2
(CF32CF(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
H(CF2p(CH2qOCOCH=CH2
CF3CHFCF2(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2pCH=CH(CH2qOCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
H(CF2p(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3CHFCF2(CH2pOCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2pSO2N(Cs2s+1)(CH2qOCOCH=CH2
CF3(CF2pSO2N(Cs2s+1)(CH2qOCOC(CH3)=CH2
CF3610(CF2pSO2N(CH3)(CH2qOCOCH=CH2
CF3610(CF2pSO2N(CH3)(CH2qOCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OCOCH3)CH2OCOCH=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
(CF32CF(CF2pCH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2
[p=0〜20、q=1〜10、s=1または2]
Figure 2008040262
上記のフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートは2種以上を混合して用いることももちろん可能である。
オキシアルキレン基を有する繰り返し単位は、オキシアルキレン基を有するビニルモノマーから誘導することができる。オキシアルキレン基を有するビニルモノマーが、枝ポリマーまたは幹ポリマー、例えば、幹ポリマーを構成する。
オキシアルキレン基を有するビニルモノマーは、オキシアルキレン基および炭素−炭素二重結合を有するモノマーである。オキシアルキレン基の炭素数は、2〜6であってよく、オキシアルキレン基はオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であることが好ましい。
ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマーの例としては、次のものが挙げられる。
HO(C24O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、n=1〜100]、
HO(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、n=1〜100]、
HO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、m=1〜20、n=1〜20]、
H(CH2pO(C24O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、n=1〜100]、
H(CH2pO(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、n=1〜100]、
H(CH2pO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、m=1〜20、n=1〜20]、
H(CH2pO(C24O)m−(C36O)nCOC(R8)C=CH2
[R8:HまたはCH3、p=1〜20、m=1〜20、n=1〜20]、
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
[R8:HまたはCH3、m=1〜20、n=1〜20]
枝ポリマーおよび幹ポリマーは、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーおよびオキシアルキレン基含有ビニルモノマーに加えて、他の共重合可能なモノマーを含有してもよい。他の共重合可能なモノマーは、付加重合性モノマー(すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物)であれば何でも良い、他の共重合可能なモノマーは、非フッ素系モノマーまたはフッ素系モノマーのいずれであってもよい。
非フッ素系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルは、(メタ)アクリル酸と、脂肪族アルコール、例えば、一価アルコールまたは多価アルコール(例えば、2価アルコール)とのエステルであってもよい。
非フッ素系モノマーとしては、例えば以下のものを例示できる。
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、アルコキシポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートグリシジルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グルコシルエチルメタクリレート、メタクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等の(メタ)アクリレート類;スチレン、p−イソプロピルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド類;ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類。
さらに、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルキルケトン、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
フッ素系モノマーとしては、
フッ素化オレフィン(炭素数、例えば2〜20)、例えば、CF3(CF27CH=CH2
Figure 2008040262
(R9は、H、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基)
などが挙げられる。
本発明において、グラフト重合体は、幹ポリマーのイソシアネート基部分に、枝ポリマーがグラフト化されたグラフト重合体であってよい。
1つの態様において、幹ポリマーは、イソシアネート基含有ビニルモノマーから誘導された繰り返し単位および他の共重合可能なモノマー(例えば、フルオロアルキル基を有するビニルモノマーおよび/またはオキシアルキレン基を有するビニルモノマー、特にオキシアルキレン基を有するビニルモノマー)から誘導された繰り返し単位を有する。イソシアネート基含有ビニルモノマーから誘導された繰り返し単位に存在するイソシアネート基が枝ポリマーの活性水素基と反応して、枝ポリマーと結合することができる。
本明細書において、イソシアネート基含有ビニルモノマーとは、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基を有する重合性化合物を意味する。一般に、イソシアネート基含有ビニルモノマーにおいて、炭素−炭素二重結合およびイソシアネート基のそれぞれの数は1である。通常、イソシアネート基含有ビニルモノマーの分子は、分子の一末端に炭素−炭素二重結合、他末端にイソシアネート基を有する。
イソシアネート基含有ビニルモノマーの例は、
(i)イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル、
(ii)式:H2C=C(R10)−A1−NCO
[R10:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分岐状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基)、A1:直接結合または炭素数1〜20の炭化水素基]で示されるビニルイソシアネート、または
(iii)イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(一般に、1つの炭素−炭素二重結合および1つの活性水素含有基を有する化合物)(iii−2)との反応物
である。
イソシアネート基含有(メタ)アクリレートエステル(i)としては、
2C=C(R11)COO(CH2CH2O)n(CH2m−NCO
[R11:HまたはCH3、n:0〜20、m:1〜20]
(例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート)
が挙げられる。
ビニルイソシアネート(ii)としては、
2C=C(R12)−NCO
[R12:炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)]、
2C=C(R13)−(CH2n−NCO
[R13:Hまたは炭素数1〜20(例えば、1〜10)の直鎖状、分枝状もしくは環状炭化水素基(例えば、アルキル基、またはシクロヘキシル基)、n:2〜20]、
2C=C(R14)−Ph−C(R152−NCO
[R14:HまたはCH3、R15:HまたはCH3、Ph:フェニレン基]
が挙げられる。
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートが挙げられる。
炭素−炭素二重結合および活性水素を有する化合物(iii−2)(以下、「活性水素を有するモノマー」ともいう)としては、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
HO(CH2CH2O)nCOC(R16)C=CH2
[R16:HまたはCH3、n=2〜20]、
アミノエチル(メタ)アクリレート
が挙げられる。
イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)と、活性水素を有するモノマー(iii−2)の反応は、溶剤(特に、非プロトン性溶剤、例えばエステル系溶剤)中で、要すればジブチルスズジラウレート等の触媒を用いて行ってよい。反応において、活性水素を有するモノマー(iii−2)の量は、イソシアネート基を2つ有する化合物(iii−1)に対して1.0〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.7当量であってよい。
イソシアネート基含有ビニルモノマーの量は、幹ポリマーに対して、下限が1重量%、さらには2重量%、特に6重量%であってよく、上限が30重量%、さらには20重量%、特に10重量%であってよい。
幹ポリマーは、イソシアネート基含有ビニルモノマーに加えて、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーまたはオキシアルキレン基含有ビニルモノマーの少なくとも一方(特に、オキシアルキレン基含有ビニルモノマー)、ならびに要すれば他のモノマー(非フッ素モノマーおよび/またはフッ素モノマー)から構成される。
枝ポリマーは、連鎖移動剤、フルオロアルキル基含有ビニルモノマーまたはオキシアルキレン基含有ビニルモノマーの少なくとも一方(特に、フルオロアルキル基含有ビニルモノマー)、ならびに要すれば他のモノマー(非フッ素モノマーおよび/またはフッ素モノマー)を用いて形成できる。
連鎖移動剤は、両末端に活性水素基を有する連鎖移動剤、例えば活性水素基を有するアルキレンチオール連鎖移動剤または活性水素基を有するアリール連鎖移動剤であってよい。活性水素基としては、OH、NH2、SO3H、NHOH、COOH、SHが挙げられる。アルキレンチオールのアルキレン基の炭素数は、1〜20であってよい。
アルキレンチオール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
HS(CH2nOH[nは1〜20、特に2、4、6、11]、
HSCH2COOH、
HSCH2CH(CH3)COOH、
HSCH2CH2SO3Na、
HSCH2CH2SO3H、
Figure 2008040262
アリール連鎖移動剤の例は次のとおりである。
Figure 2008040262
Figure 2008040262
連鎖移動剤の活性水素基は、幹ポリマーのイソシアネート基と反応して−NH−C(=O)−結合(アミド結合)を形成する。活性水素基がOH基である場合は、ウレタン結合(−NH−C(=O)−O−)を形成する。活性水素基がNH2基である場合は、ウレア結合(−NH−C(=O)−NH−)を形成する。連鎖移動剤1.0当量に対して、幹ポリマーのイソシアネート基の量が1.0〜2.5当量、さらには1.0〜2.0当量であることが好ましい。
連鎖移動剤の量は、枝モノマーの量に対してモル比で、0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.6であってよい。枝モノマーを重合して得られた枝ポリマーの1つの末端には、連鎖移動剤が結合している。連鎖移動剤は、枝ポリマーの鎖の長さを調節できる。枝ポリマーの分子の数は、連鎖移動剤1分子に対し3〜25分子、好ましくは4〜20分子のモノマーであってよい。
このうち特に好ましいものとしては、たとえばフルオロアクリル基含有アクリレートとして、C49CH2CH2OCOCH=CH2、ポリオキシアルキレン基を有するビニルモノマーとしてポリプロピレングリコールメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートからなる含フッ素グラフト重合体などがあげられる。
これらの含フッ素表面改質剤(B)のうち、防汚性の点から、特に(B1)が好ましい。
この含フッ素表面改質剤(B)に加えて、防汚性を付与する他の防汚剤を配合してもよい。他の防汚剤としては、含フッ素表面改質剤(B)に含まれない含フッ素ポリエーテル化合物などがあげられる。その場合、力学特性の劣化や、含フッ素ポリマーとの相分離による白濁を考慮して添加量を決める必要がある。具体的には含フッ素ポリエーテル化合物の末端をカルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシシラン基としておけば、被膜中に固定されやすくなる。また、同様のポリエーテル化合物を予め形成した反射防止膜表面(硬化前または硬化後の被膜)に塗布しても同様の効果がある。
(C)中空シリカ微粒子
中空シリカ微粒子(C)は屈折率を低下させるために配合される成分であり、特許文献1、2などで使用されている公知の材料である。
具体的には、特開2004−203683号公報、特開2006−021938号公報などに記載されている中空シリカ微粒子が使用できる。好ましいものとして、触媒化成工業(株)製のELCOMが例示できる。
中空シリカ微粒子の好ましい平均粒子径として反射防止フィルムの光学特性が特に良好な点から1〜100nm、さらには10〜80nmである。
本発明の硬化性組成物における配合割合は、(A)成分100質量部に対し、(B)成分は1〜15質量部、さらには1〜10質量部であることが好ましい。この範囲で配合するときに防汚性および耐擦傷性などの特性が特に優れたものになる。(C)成分は、(A)成分100質量部に対し、1〜150質量部、さらには1〜100質量部であることが好ましい。この範囲で配合するときに防汚性および耐薬品性などの特性が特に優れたものになる。
本発明の硬化性組成物はさらに、(D)2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む硬化剤を含んでいてもよい。
(D)成分は硬化剤としての役割をもつものであり、また2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む化合物であって式(2)に含まれるものは、この(D)成分には含まれない。
硬化剤(D)としては、2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む公知の硬化剤が使用できる。
2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む公知の硬化剤(D1)としては、たとえばジオール、トリオール、テトラオールなどの多価アルコール類のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体が一般的に知られている。
具体的には、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物があげられる。
また、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含む含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基を有する多価アルコールの2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基、α−フルオロアクリレート基に置き換えた多官能アクリル系単量体も利用でき、特に硬化物の屈折率を低く維持できる点で好ましい。
具体例としては
Figure 2008040262
(Rfdは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキル基;RhはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)、
Figure 2008040262
(Rfeは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基またはエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基;RiはHまたは炭素数1〜3のアルキル基)
などの一般式で示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましくあげられる。
これらのうち耐擦傷性が良好な点からペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのそれぞれの多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基がアクリレート基、メタクリレート基、α−フルオロアクリレート基のいずれかに置き換えられた化合物、
Figure 2008040262
(RfeおよびRiは前記と同じ)
などで示される含フッ素多価アルコール類の2個以上のヒドロキシル基をアクリレート基、メタアクリレート基またはα−フルオロアクリレート基に置き換えた構造のものが好ましい。
硬化剤(D)を配合する場合は、硬化性含フッ素ポリマー(A)100質量部に対して、40質量部以下、好ましくは1〜40質量部、特に1〜30質量部である。多くなりすぎると屈折率が高くなる傾向にある。
本発明の硬化性組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線を照射して硬化させる方法、熱により硬化させる方法などが採用できる。これらのうち、耐熱性が低く、熱で変形や分解、着色が起こりやすい基材、たとえば透明樹脂基材などにも適応できる点から、活性エネルギー線硬化開始剤(E)を用いる活性エネルギー線硬化方法が好ましい。
活性エネルギー線硬化開始剤(E)としては、たとえば350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、電子線、X線、γ線などが照射されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、硬化性含フッ素ポリマーの炭素−炭素二重結合の硬化(架橋反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものを使用する。
本発明の組成物における活性エネルギー線硬化開始剤(E)は、硬化性含フッ素ポリマー(A)中の側鎖の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、含フッ素表面改質剤(B)、配合する場合は硬化剤(D)中のα,β−不飽和結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長域など)と照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(A)を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン、ヒドロキシプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパンー1−オンなど
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなど
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
含フッ素ポリマーの種類によっては、また上記の活性エネルギー線硬化開始剤の種類によっては、お互い相溶性がわるく、コーティング組成物自体が、または塗布後の被膜が白濁してしまい、透明性や硬化反応性が低下する場合がある。
本発明者らは、活性エネルギー線硬化開始剤(E)自体にフッ素原子、含フッ素有機基を導入することで含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できることを見出した。
具体的には、含フッ素アルキル基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を有する含フッ素アルキル基、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基を開始剤中に含むものが好ましく、たとえばOH基を有する開始剤に上記含フッ素有機基を有する含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)などをエステル結合で導入した構造のもの、アミノ基を有する開始剤に含フッ素カルボン酸(多価カルボン酸)をアミド結合で導入した構造のものなどがあげられる。
硬化開始剤(E)に含フッ素有機基を導入することによって、高フッ素化率の含フッ素ポリマーにおいても、相溶性が良好で、硬化反応性や被膜の透明性を改善できる点で好ましい。
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの光開始助剤を添加してもよい。
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する場合、硬化開始剤としては、つぎのものが例示できる。
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
これらのカチオン反応性の活性エネルギー線硬化開始剤においても、フッ素原子や含フッ素有機基を導入することで上記と同様に含フッ素ポリマーとの相溶性が改善できる。
本発明の硬化性組成物には溶剤(F)を使用してもよく、溶剤に溶解または分散させることによって種々の基材にコーティングし、塗膜を形成することができ、塗膜形成後、活性エネルギー線などの照射によって効率よく硬化でき、硬化被膜が得られる点で好ましい。
溶剤(F)は、硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)、活性エネルギー線硬化開始剤(E)および必要に応じて添加する他の硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が均一に溶解または分散するものであれば特に制限はないが、特に硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)を均一に溶解するものが好ましい。この溶剤を使用する態様は特に反射防止膜用途など薄層被膜(0.1μm前後)が要求される分野で透明性が高く、均質な被膜を生産性よく得られる点で好ましい。
かかる溶剤(F)としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
またさらに、硬化性含フッ素ポリマー(A)、含フッ素表面改質剤(B)、要すれば硬化剤(D)の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、たとえばCH3CCl2F(HCFC−141b)、CF3CF2CHCl2/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
Figure 2008040262
などのフッ素系アルコール類、
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCF2CFClCF2CFCl2などがあげられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
これらのなかでもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤などが、塗装性、塗布の生産性などの面で好ましいものである。
また、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させる際、これら汎用溶剤とともに含フッ素アルコール系溶剤を混合することで、塗布乾燥後のポリマー被膜の基材に対するレベリング性が改善される。
このレベリング性改善効果は、樹脂基材、特にアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンに対して高く、なかでもポリエチレンテレフタレート基材に対して特に顕著である。
添加する含フッ素系アルコールとしては、沸点が50℃以上、好ましくは80℃以上のもので、硬化性含フッ素ポリマーを溶解させるものであればよい。
たとえば、
Figure 2008040262
などが好ましい具体例である。
含フッ素系アルコールは、それのみで溶剤として用いてもよいが、前述のケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、非フッ素系アルコール溶剤、芳香族系溶剤などの汎用溶剤に加えて用いても効果的である。
混合して用いる場合の添加量は、溶剤全体に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、特に10〜30質量%添加するのが好ましい。
本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)と含フッ素表面改質剤(B)と中空シリカ微粒子(C)、要すれば硬化剤(D)と活性エネルギー線硬化開始剤(E)との硬化性含フッ素樹脂組成物、さらに溶剤(F)を含めた硬化性組成物に、さらに必要に応じて他の硬化剤(G)を添加してもよい。
併用可能な他の硬化剤(G)としては、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有しかつラジカルまたは酸で重合できるものが好ましく、具体的には前記含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)以外のアクリル系モノマーなどのラジカル重合性の単量体、ビニルエーテル系モノマーなどのカチオン重合性の単量体があげられる。これら単量体は、炭素−炭素二重結合を1つ有する単官能であってもよい。
これらの炭素−炭素不飽和結合を有する他の硬化剤(G)は、本発明の組成物中の活性エネルギー線硬化開始剤(E)と光などの活性エネルギー線との反応で生じるラジカルやカチオンで反応し、本発明の組成物中の硬化性含フッ素ポリマー(A)の側鎖の炭素−炭素二重結合や前記含フッ素表面改質剤(B)および硬化剤(D)のα,β−不飽和結合と共重合によって架橋することができるものである。
単官能のアクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸エステル類、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類のほか、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基などを有する(メタ)アクリル酸エステル類などが例示される。
なかでも硬化物の屈折率を低く維持するために、フルオロアルキル基を有するアクリレート系単量体が好ましく、たとえば一般式:
Figure 2008040262
(Xb1はH、CH3またはF;Rfbは炭素数2〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表わされる化合物が好ましい。
具体的には、
Figure 2008040262
(Xb1は前記と同じ)
などがあげられる。
また、これら例示の単官能アクリル系単量体を硬化剤として本発明の組成物に用いる場合、なかでも特にα−フルオロアクリレート化合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
本発明の組成物において、活性エネルギー線硬化開始剤(E)の添加量は、硬化性含フッ素ポリマー(A)中の炭素−炭素二重結合の含有量、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)の含有量、上記他の硬化剤(G)の使用の有無や硬化剤の使用量によって、さらには用いる開始剤(E)、活性エネルギー線の種類や、照射エネルギー量(強さと時間など)によって適宜選択されるが、他の硬化剤(G)を使用しない場合では、硬化性含フッ素ポリマー(A)と含フッ素表面改質剤(B)と硬化剤(D)の合計量100質量部に対して0.01〜30質量部、さらには0.05〜20質量部、最も好ましくは、0.1〜10質量部である。
詳しくは、硬化性含フッ素ポリマー(A)中に含まれる炭素−炭素二重結合と含フッ素表面改質剤(B)と硬化剤(D)中のα,β−不飽和結合の合計量の含有量(モル数)に対し、0.05〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%、最も好ましくは、0.5〜10モル%である。
溶剤(F)の含有量としては、溶解させる固形分の種類、他の硬化剤(G)の使用の有無や使用割合、塗布する基材の種類や目標とする膜厚などによって適宜選択されるが、組成物中の全固形分濃度が0.5〜70質量%、好ましくは1〜50質量%となるように配合するのが好ましい。
本発明の組成物は、前述の化合物のほかに、必要に応じて種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、たとえばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、防汚剤(シリコーン系、フッ素系)、補強剤などがあげられる。
また、本発明の組成物は、硬化物の硬度を高める目的で無機化合物の微粒子を配合することもできる。
無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、オルガノシリカゾル(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)などの微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性などを向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤などを用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、たとえば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンまたはこれらの混合物などの金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物などがあげられる。
本発明の硬化性組成物は、溶剤(F)に対して硬化性含フッ素ポリマー(A)または添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成するため、また比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
塗装法としては、膜厚をコントロールできるのであれば公知の塗装法を採用することができる。
たとえば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが採用でき、基材の種類、形状、生産性、膜厚のコントロール性などを考慮して選択できる。
本発明の硬化性樹脂組成物を基材に塗布したのち乾燥により得られる被膜は、紫外線、電子線または放射線などの活性エネルギー線を照射することによって光硬化させることができる。
光硬化すると本発明の硬化性含フッ素ポリマー(A)中の炭素−炭素二重結合が分子間および含フッ素表面改質剤(B)と、硬化剤(D)、(G)が存在すればこれらの硬化剤を介して重合し、ポリマー中の炭素−炭素二重結合が減少または消失する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐摩耗性、耐擦傷性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。
本発明の硬化性組成物の各成分のより好ましい組合せとしては、たとえばつぎのものが例示できるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(例I)
(A)成分:M1のホモポリマーおよび/または−(M1)−(A1)−(A2)−
(B)成分:B1
(C)成分:平均粒子径10〜80nm、屈折率1.25〜1.35
(D)成分:多官能アクリレート化合物、α―フルオロアクリレート化合物
(E)成分:アセトフェノンおよび/またはフッ素を導入したもの
(F)成分:ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、含フッ素アルコール系溶剤、芳香族系溶剤
組成割合((A)成分100質量部(固形分)に対する量)
(B)成分:1〜10質量部
(C)成分:1〜100質量部
(D)成分:0〜30質量部
(E)成分:0〜10質量部
(F)成分:適量
効果:低反射率化と耐擦傷性、防汚性の向上を可能にし、耐薬品性が特に良好である。
用途:特に反射防止膜、反射防止フィルムなどに好適である。
本発明はまた、本発明の硬化性組成物の硬化被膜であって、膜厚が0.03〜0.5μmの反射防止膜にも関する。
本発明は、硬化性含フッ素ポリマー(A)自体が硬化(架橋)可能な炭素−炭素不飽和結合を有し、それ自体が低屈折率なものであるうえ、さらに中空シリカ微粒子(C)を配合して屈折率をさらに低下させることができ、さらにまた含フッ素表面改質剤(B)が表面に偏析することによって、透明基材に所定の膜厚で塗布し、要すれば硬化剤を用いて硬化させることによって反射防止効果と、長期間の防汚性が達成でき、しかも高硬度、耐摩耗性、耐擦傷性がさらに改善された反射防止膜が得られる。かかる含フッ素ポリマー(A)を使用するときは、さらに塗装性(平滑性、膜厚均一性)も良好で、かつ硬化後の被膜に低分子量の単量体成分なども残留しにくく、表面のタック感もなく塗膜性能に優れたものとなる。
硬化は、熱や光(開始剤を含む系において)などの手段を取り得るが、透明な樹脂基材に反射防止膜を施す場合、高い温度をかけることは、基材の熱劣化、熱変形をおこしやすいため好ましくない。したがって光硬化による硬化が好ましい。
本発明の硬化性組成物を光硬化して、反射防止膜を得る方法としては、硬化性組成物を基材に塗布し、乾燥等により被膜(未硬化)を形成したのち、紫外線、電子線、放射線などの活性エネルギー線を照射することによって硬化被膜を得る方法が採用され、光照射は、空気中、窒素などの不活性ガス気流下のいずれの条件下で行なってもよい。なかでも、不活性ガス気流下で光照射する方法が、硬化反応性が良好な点で好ましく、より高い硬度の被膜が得られる。
また、酸重合性の炭素−炭素二重結合を有する硬化性含フッ素ポリマー(A)を活性エネルギー線の照射により酸を発生する開始剤と組合わせて用いることもでき、光照射時において空気(酸素)などの影響を受けにくく、硬化反応が達成できる点で好ましい。
本発明の反射防止膜に用いる硬化性含フッ素ポリマーは、前記した具体的例示の中から、硬化性含フッ素ポリマー自体、透明性が高く、非晶性でかつ屈折率が1.40以下のもの、好ましくは1.38以下のものが選ばれる。さらにそのなかから、目標とする硬さ、基材の種類、塗装方法、条件、膜厚、均一性、基材との密着性などに応じて適宜選択して用いることが好ましい。
本発明の反射防止膜に用いる活性エネルギー線硬化開始剤(E)は、前述の硬化性含フッ素樹脂組成物で例示したものと同じものが利用でき、硬化性含フッ素ポリマー中の炭素−炭素不飽和結合の種類(反応性、含有量)、含フッ素表面改質剤(B)、硬化剤(D)の種類(反応性、含有量)、硬化条件、塗料のポットライフなどを考慮して種類、使用量など、前述の範囲の中から適宜選択できる。
溶剤(F)は、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装の生産性に応じて種類、使用量など前述の例示のなかから適宜選択されるが、透明樹脂基材を溶解させたり、膨潤させたりする溶剤は好ましくない。特にケトン系、酢酸エステル系、アルコール系および芳香族炭化水素系溶剤から選ばれるものが好ましい。
本発明の反射防止膜において、要すれば硬化剤(D)と前述のものと同様の他の硬化剤(G)を併用してもよい。他の硬化剤(G)を併用することにより、硬化被膜の硬度をより高くすることができる。
これらのコーティング組成物を塗布後、含フッ素ポリマーを硬化させたのちの硬化物(被膜)は、屈折率が1.49以下、好ましくは1.45以下であり、さらに1.40以下であることが好ましい。最も好ましくは1.38以下であり、低い方が反射防止効果としてより有利である。
各種基材に施される反射防止膜の好ましい膜厚は、膜の屈折率や下地の屈折率によって変わるが0.03〜0.5μmの範囲から選択され、好ましくは0.07〜0.2μm、より好ましくは0.08〜0.12μmである。膜厚が低すぎると可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となり、高すぎると反射率はほぼ空気と膜の界面の反射のみに依存するようになるので、可視光における光干渉による反射率の低減化が不充分となる傾向がある。なかでも適切な膜厚は反射防止膜を施したのちの物品の反射率の最小値を示す波長が通常420〜720nm、好ましくは520〜620nmとなるように膜厚を設定するのが好ましい。
本発明の反射防止膜を施す物品、すなわち基材の種類は特に限定されない。たとえば、ガラス、石材、コンクリート、タイルなどの無機材料;塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂;鉄、アルミ、銅などの金属;木、紙、印刷物、印画紙、絵画などをあげることができる。また、物品の特定部分以外の部分に反射防止膜を施し、その特定部分の形状を反射光によって浮かび上がらせることにより、物品の装飾性を向上することもできる。
基材の中でもアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂などの透明樹脂基材、特にフィルム状の基材に好ましく施され、効果的に反射防止効果を発揮できる。
本発明は、以下のような形態の物品に適用した場合に効果的である。
プリズム、レンズシート、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、背面投写型ディスプレイのスクリーン、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品;
ショーウインドーのガラス、ショーケースのガラス、広告用カバー、フォトスタンド用のカバーなどに代表される透明な保護版;
CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイなどの保護板;
光磁気ディスク、CD・LD・DVDなどのリードオンリー型光ディスク、PDなどの相転移型光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;
フォトレジスト、フォトマスク、ペリクル、レチクルなどの半導体製造時のフォトリソグラフィー関連部材;
ハロゲンランプ、蛍光灯、白熱電灯などの発光体の保護カバー;
上記物品に貼り付けるためのシートまたはフィルム。
本発明の反射防止膜は、本発明の硬化性組成物の溶液を基材に直接塗布し、光照射し、0.1μm程度の厚みの硬化被膜としてもよいが、基材との間にアンダーコート層を形成し、その上にトップコートとして反射防止膜を形成してもよい。
アンダーコートの効果は大きく分けて3つあり、トップコートの耐擦傷性を高めたり、基材を保護したり、基材よりも高屈折率の層を加えることにより反射防止効果を高めることにある。トップコートの耐擦傷性を高めるためには特開平7−168005号公報に例示されるような自己修復性のアンダーコートを用いればよい。また、基材の保護のためにはハードコートと一般に呼ばれる塗料を用いればよい。ハードコート用には硬化型のアクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコンアルコキシド系化合物の硬化物、金属アルコキシド系化合物の硬化物などが例示できる。これらすべてに熱硬化法が適用できる。アクリル樹脂およびエポキシ樹脂については、光(紫外線)硬化法が生産性の面で好ましい。
CRTやプラズマディスプレイなどでは、装置の特性として表面に静電気がたまりやすい。そこで、上記のようなアンダーコート層および/またはトップコート層に導電性を付与する添加剤を混ぜることが好ましい。添加剤としては、−COO−、−NH2、−NH3 +、−NR11a12a13a(ここで、R11a、R12aおよびR13aは、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基など)、−SO3−などのイオン性基を含むポリマー、シリコーン化合物、無機電解質(たとえばNaF、CaF2など)などがあげられる。
また、ほこりの付着を防止する目的で、反射防止膜のアンダーコート層および/またはトップコート層に帯電防止剤を添加することが好ましい。添加剤としては上記の導電性を付与する添加剤に加え、金属酸化物の微粒子、フルオロアルコキシシラン、界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性系、ノニオン系など)、有機高分子(パイ共役系、固体電解質型、4級アンモニウム型、スルホン酸型など)などがあげられる。
アンダーコート層に添加する帯電防止剤としては、効果が永続すること、効果が湿度の影響を受けにくいこと、帯電防止効果が高いこと、透明性、屈折率が高いために基材の屈折率を調整できるので反射防止効果を高めることができることなどの理由から、固体電解質型有機高分子、4級アンモニウム型有機高分子、金属酸化物の微粒子(具体的にはアンチモンをドープした酸化錫(ATO)、インジウムを含む酸化錫(ITO)など)などが好ましい。透明性の面ではATOが好ましく、帯電防止効果もしくは導電性の面ではITOが好ましい。また、帯電防止効果が必要ない場合でも、容易に屈折率を調節できるため、これらの添加剤を用いて反射防止効果を高めることもできる。
また、ATO、ITOが光を散乱・吸収しやすいので、光の透過を妨げないためには、アンダーコート層の厚さはサブミクロン程度であることが好ましい。反射防止効果の波長依存性を小さくし、全波長にわたって反射防止効果を高めるためには、含フッ素ポリマー硬化物の屈折率にもよるが、膜厚は0.05〜0.3μmが好ましい。最適な屈折率も、同様に含フッ素ポリマーの屈折率に依存するが、1.55〜1.95が好ましい。
含フッ素ポリマー硬化被膜に帯電防止性を与えるのであれば、屈折率が高くなりにくく反射防止効果に悪影響が少ないという面から、アルコキシシラン系の帯電防止剤が好ましい。フルオロアルコキシシランは屈折率が高くなる作用がさらに小さく、加えて表面特性が改良される効果も期待できるので、さらに好ましい。
また、上記したような膜の一部を改質するという方法とは全く異なった方法として、特開平8−142280号公報に示されるように反射防止能に悪影響を及ぼさない膜厚で界面活性剤の層を形成する方法がある。本発明に適用した場合、ほこり付着防止など、防汚性を向上するという効果がある。ハードコート層を形成した場合も同様の効果がある。
ハードコート層は、通常使用されている公知のハードコート形成用の組成物であるアルコキシシランやポリシラザンの溶液を塗布後、加熱・硬化させる方法により形成することができる。また、紫外線硬化型アクリル塗料やメラミン架橋の硬化膜も使用可能である。
またさらに、艶消し剤として微粒子を混合したコーティング剤を下地に施したもの、すなわちアンチグレア(AG)処理した基材フィルム(たとえばTACフィルムなど)上に、本発明の反射防止膜を施してもよい。それによって、低グロス、低反射の反射防止フィルムが得られ、LCDなどに用いることにより、より一層鮮明な画像が得られるので好ましい。
本発明の反射防止膜は、フッ素含有率も高く、表面接触角も低く、それ自体、撥水性、非粘着性、防汚性を有しており、反射防止と防汚層を兼ね備えることができる。
硬化性含フッ素ポリマーの薄膜を形成する方法として、硬化性含フッ素ポリマーのディスパージョンを塗り、乾燥し、そののち必要に応じて焼成して造膜する方法と、溶液(均一溶液)を塗布し、乾燥する方法がある。薄膜の形成が容易であることから、溶液塗布が好ましい。その際、膜厚を充分にコントロールできるのであれば、公知の塗装法を採用することができる。たとえばロールコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法を採用することができる。このような方法の中から、生産性、膜厚コントロール性、歩留まりなどのバランスを考慮して、最適な塗装法を決定する。フィルム、シートなどに反射防止膜を形成したのち、これを基材に貼り付けてもよい。
本発明においても、反射防止膜の基材への密着性を高めるために、シラン化合物を添加してもよい。被膜中に添加するシラン化合物の量は数質量%程度でよい。また、基材表面をシラン化合物で処理しておくことも、密着性の改善のために効果がある。本発明においてはいずれの場合でも、シラン化合物は硬化膜の屈折率をほとんど増加させないため、反射防止効果への悪影響は非常に少ない。
本発明はまた、透明基材フィルム上にハードコート層、ついで前記硬化性組成物の硬化被膜(本発明の反射防止膜)が他の層を介さずに直接形成されてなる3層構造の反射防止フィルムにも関する。
透明基材フィルムとしては、上記のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂などの透明樹脂基材フィルムが例示できる。透明基材フィルムの膜厚は、50〜200μm程度である。
ハードコート層としては上記のように、通常使用されている公知のハードコート形成用の組成物であるアルコキシシランやポリシラザンの溶液を塗布後、加熱・硬化させる方法により形成することができる。また、紫外線硬化型アクリル塗料やメラミン架橋の硬化膜も使用可能である。ハードコート層の膜厚は、1〜10μm程度である。
本発明の反射防止フィルムは、このハードコート層上に直接トップコートとして本発明の防汚性を有する反射防止膜を形成したものである。
かかるトップコートとしての反射防止膜では、前述のように含フッ素表面改質剤(B)が表面近傍に偏析しており、優れた防汚性能を長期間発揮できる。
つぎに本発明を合成例、製造例および実施例などに基づいて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
(1)NMR:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR分析:PERKIN ELMER社製のFT−IR SPECTROMETER 1760X
(3)重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による。昭和電工(株)製のShodex GPC−104を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−604を1本、GPC KF−603を1本、GPC KF−602を2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.5ml/分で流して測定したデータより算出する。
合成例1(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのホモポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mLのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
Figure 2008040262
を20g、
[H−(CF2CF23−COO−]2
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、十分に窒素置換を行った後、窒素気流下20℃で24時間攪拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、重合体17.6gを得た。
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は9000、重量平均分子量は22000であった。
製造例1(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200mLの四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル80mL、合成例1で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの単独重合体5.0gと、ピリジン1.0gを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、攪拌を行いながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFの1.2gをジエチルエーテル20mLに溶解したものを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間攪拌を継続した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗を繰返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
−OOCCF=CH2基含有含フッ素アリルエーテル/OH基含有含フッ素アリルエーテル=50/50モル%
の共重合体を含んでいた。
また、NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。
得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えた後、エーテルをエバポレーターにより留去し、固形分濃度15.0質量%に調整した(この含フッ素ポリマー溶液を「AR1」と略す)。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMIBKに1質量%の濃度に溶かした溶液を1.7g加えて、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
合成例2(OH基を有する含フッ素アリルエーテルとフッ化ビニリデンの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた300ml内容量のステンレススチール製オートクレーブに、パーフルオロ(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノール)を34.2gとCH3CCl2F(HCFC−141b)を200g、ジノルマルプロピルパーオキシカーボネート(NPP)の50重量%メタノール溶液を0.16g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内を窒素ガスで置換した。ついでバルブからフッ化ビニリデン(VdF)を5.8g仕込み、40℃にて振とうさせながら反応を行った。反応の進行とともに、系内のゲージ圧が反応前の4.4MPaG(4.5kgf/cm2G)から12時間後に0.98MPaG(1.0kgf/cm2G)まで低下した。
この時点で未反応モノマーを放出し、析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサンとトルエンの混合溶剤(50/50)で再沈殿させることにより共重合体を分離した。この共重合体を真空乾燥し、共重合体31.2gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMR分析および19F−NMR分析により分析したところ、VdF/OH基含有含フッ素アリルエーテルが38/62(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は12000、重量平均分子量18000であった。
製造例2(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
合成例2で得たOH基含有含フッ素アリルエーテルとVdFの共重合体を5.0gとピリジンを1.1g、α−フルオロアクリル酸フルオライドを1.0g用いた以外は製造例1と同様にして含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を合成した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
−OOCCF=CH2基含有含フッ素アリルエーテル/OH基含有含フッ素アリルエーテル/VdF=48/14/38モル%
の共重合体を含んでいた。
得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えた後、エーテルをエバポレーターにより留去し、固形分濃度15.0質量%に調整した(この含フッ素ポリマー溶液を「AR2」と略す)。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMIBKに1質量%の濃度に溶かした溶液を1.7g加えて、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
合成例3(OH基を有する含フッ素アリルエーテルと末端にメチルエステル構造をもつ含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を9.6gとCH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOCH3を9.6g入れ、よく攪拌し、
[H−(CF2CF23−COO]2
の8.0重量%パーフロヘキサン溶液を2.0g入れ、十分に窒素置換を行った後、窒素気流下20℃で20時間攪拌を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた個体をアセトンに溶解させたものを、HCFC225/ヘキサン=1/1溶液に注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体15.5gを得た。
この重合体を1H−NMR分析および19F−NMR分析により分析したところ、OH基含有含フッ素アリルエーテル/メチルエステル末端を持つ含フッ素アリルエーテルが42/58(モル%)であった。また、THFを溶媒として用いるGPC分析により測定した数平均分子量は72000、重量平均分子量117000であった。
製造例3(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマーの合成)
合成例3で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルのコポリマーを5.0gとピリジンを1.0g、α−フルオロアクリル酸フルオライドを1.7g用いた以外は製造例1と同様にして含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)を合成した。
このエーテル溶液を19F−NMR分析により調べたところ、
−OOCCF=CH2基含有含フッ素アリルエーテル/OH基含有含フッ素アリルエーテル/メチルエステル末端を持つ含フッ素アリルエーテル=38/4/58モル%
の共重合体を含んでいた。
得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素硬化性ポリマー(エーテル溶液)にメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えた後、エーテルをエバポレーターにより留去し、固形分濃度15.0質量%に調整した(この含フッ素ポリマー溶液を「AR3」と略す)。
得られたポリマー溶液10gに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをMIBKに1質量%の濃度に溶かした溶液を1.7g加えて、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
製造例4(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の合成)
滴下ロート、コンデンサー、温度計、攪拌装置を装着した2Lの3口フラスコにSUMIDUR N3300(商品名。ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体。住友バイエルウレタン製。NCO基含有率21.9%)144gをHCFC−225の200gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬(株)製の一級試薬)0.2gを加え、空気中室温で攪拌しながら4.5時間かけてDEMNUM[商品名。ダイキン工業(株)製。CF3CF2O−(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2CH2OH、n=10.9]202gをHCF−225の300gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間攪拌した。30℃〜40℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート96gを30分間で滴下し6時間攪拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失したのを確認後(生成物の19F−NMR分析からも−CF2CH2OHの消失を確認)、50℃以下の減圧蒸留によりHCFC−225を留去し、つぎの2種類のパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート:
Figure 2008040262
を含む組成物442gを得た(この組成物を「PFPE1」と略す)。
製造例5(パーフルオロポリエーテルα―フルオロアクリレートの合成)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた500ml四口フラスコに、DEMNUM[商品名。ダイキン工業(株)製。CF3CF2CF2O−(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2CH2OH、n約20]18g、ピリジン1.0g、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロメタキシレン125gを仕込み5℃以下に氷冷した。窒素気流下、攪拌を行いながら、α―フルオロアクリル酸フルオライド0.84gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロメタキシレン5mlに溶解したものを約10分間かけて滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上げさらに、4時間攪拌した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗を繰返した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついで溶液を濾過により分離した。ろ液からエバポレーターによって溶媒を留去した後、さらに70℃に加熱しながら真空乾燥を行い、
CH2=CFCOOCH2CF2CF2(OCF2CF2CF2)OCF2CF2CF3
を含む粘度の高い無色透明な液体18.8g得た(この組成物を「PFPE2」と略す)。
実施例1〜9
表1にそれぞれ示すように、製造例1で得たAR1に製造例4で得たPFPE1、製造例5で得たPFPE2および濃度20質量%の中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)を加え、充分に攪拌して硬化性組成物を得た。
比較例1〜3
比較として、表2にPFPE1およびPFPE2を配合しなかった硬化性組成物も調製した。
実施例1〜9および比較例1〜3でそれぞれ調製した硬化性組成物について、硬化前と硬化後の屈折率を測定した。結果を表1および表2に示す。
(硬化前の屈折率の測定)
硬化開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)を添加しなかったほかは実施例1〜9および比較例1〜3と同様にして調製した硬化性組成物の5質量%MIBK溶液をアプリケーターを用いPETフィルム上に乾燥後の膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥後、得られたキャスト膜をPETフィルムから剥離し、この剥離したフィルムについてアッベ屈折率計により、25℃で550nmの波長の光で屈折率を測定した。結果を表1に示す。
(硬化後の屈折率の測定)
実施例1〜9および比較例1〜3でそれぞれ調製した硬化性組成物をアルミニウム箔上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が約100μmとなるように塗布し、50℃で10分間乾燥した。乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて3000mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射して硬化させた後、アルミ箔を希塩酸で溶かし、硬化フィルムを作製した。得られた硬化フィルムについてアッベ屈折率計により、25℃で550nmの波長の光で屈折率を測定した。結果を表1に示す。
つぎに実施例1〜9および比較例1〜3でそれぞれ調製した硬化性組成物を用いて反射防止膜を形成した。
(反射防止膜の形成)
各硬化性組成物を未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温で1000〜2000回転でコートし、50℃で5分間乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が90〜110nmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した。乾燥後の被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて3000mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射して硬化させ、反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜について、つぎの特性を調べた。結果を表1および2に示す。
(摩擦係数)
摩擦抵抗試験機(新東化学(株)製のHEIDON−14。商品名)を用いて移動速度10mm/min、移動距離10mmで測定を行う。
(接触角)
接触角計(協和界面化学製のCA−DT。商品名)を用いて純水およびn−ヘキサデカンの3μLの液量での接触角を測定する。
(油性インキのハジキ拭き取り性)
反射防止膜表面に油性ペン(ゼブラ(株)製のマッキー。商品名)で線を描き、油性インキのはじきと、1分間放置した後に付着した油性インキをキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で3回拭き取ったときの反射防止膜表面の状態を目視で判定する。
評価は、つぎの基準とする。
○:油性インキをはじき、完全に拭き取ることができる。
△:油性インキをはじかず、拭き取り跡が残る。
×:油性インキをはじかず、拭き取ることもできない。
(指紋付着拭き取り性)
反射防止膜表面に指を押し付け、指紋の付きやすさおよび付着した指紋をキムワイプ(商品名。十條キンバリー(株)製)で3回拭き取ったときの反射防止膜表面の状態を目視で判定する。
評価は、つぎの基準とする。
○:指紋がつきにくく、完全に拭き取ることができる。
△:指紋の付着は少ないが、拭き取り跡が残る。
×:指紋が付着し、拭き取ることもできない。
なお、表1および2において、各略号はつぎのものを示す。
AR1:製造例1で得られた硬化性含フッ素ポリマー
PFPE1:製造例4で得られたパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート
PFPE2:製造例5で得られたパーフルオロポリエーテルα―フルオロアクリレート
PS1:濃度20質量%の中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)
開始剤1:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
MIBK:メチルイソブチルケトン
Figure 2008040262
Figure 2008040262
実施例10〜27および比較例4〜9
AR1に代えて、製造例2および製造例3で得たAR2およびAR3を用いた以外は実施例1〜9および比較例1〜3と同様にして硬化性組成物を調製し、同様にして反射防止膜を作製した。
得られた反射防止膜について、実施例1と同様にして、屈折率、摩擦係数、接触角、油性インキのハジキ拭き取り性および指紋付着拭き取り性を評価した。結果を表3〜5に示す。
なお表3〜5において、各略号はつぎのものを示す。
AR2:製造例2で得られた硬化性含フッ素ポリマー
AR3:製造例3で得られた硬化性含フッ素ポリマー
PFPE1:製造例4で得られたパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート
PFPE2:製造例5で得られたパーフルオロポリエーテルα―フルオロアクリレート
PS1:濃度20質量%の中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)
開始剤1:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
MIBK:メチルイソブチルケトン
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
製造例6(含フッ素活性エネルギー線硬化開始剤の合成)
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四口フラスコに、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを2.0g、ピリジンを1.0g、CF3CF2CHCl/CClF2CF2CHClF混合物(HCFC−225)を20g仕込み5℃に冷却した。窒素気流下、攪拌を行いながら、
Figure 2008040262
の2.5gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに4時間攪拌した。反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄を行って有機層を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後蒸留により生成物2.6gを単離した(収率62%)。
得られた生成物を1H−NMR分析、19F−NMR分析およびIR分析により調べたところ、
Figure 2008040262
であった。
実施例28
製造例1で得られたα−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマーの固形分濃度15.0質量%のMIBK溶液(AR1)に、表2に示すように製造例4で得られたPFPE1および濃度20質量%の中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(硬化剤(D))、イルガキュア907(商品名。チバスペシャリティケミカルズ社製の活性エネルギー線硬化開始剤)を加え、硬化性組成物を調製した。
実施例29〜36および比較例10〜15
表6および表7に示すような配合比で、実施例28と同様にして硬化性組成物を調製した。
なお、表6および表7において、各略号はつぎのものを示す。
AR1:製造例1で得られた硬化性含フッ素ポリマー
AR2:製造例2で得られた硬化性含フッ素ポリマー
AR3:製造例3で得られた硬化性含フッ素ポリマー
PFPE1:製造例4で得られたパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート
PFPE2:製造例5で得られたパーフルオロポリエーテルα―フルオロアクリレート
PS1:濃度20質量%の中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)
開始剤2:イルガキュア907(商品名。チバスペシャリティケミカルズ社製)
開始剤3:
Figure 2008040262
MIBK:メチルイソブチルケトン
d1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
d2:
Figure 2008040262
Figure 2008040262
Figure 2008040262
つぎに実施例28〜36および比較例10〜15でそれぞれ調製した硬化性組成物を用いて反射防止フィルムを作製した。
(反射防止フィルムの作製)
PETフィルム(東レ(株)製のルミラーU46)の片面にハードコート処理(東洋インキ製造(株)製のハードコート剤フルシェードUV−S4(商品名)。屈折率1.55、膜厚5μm)を施したものの上に、実施例28〜36および比較例10〜15でそれぞれ調製した硬化性組成物をバーコーター#7を用いて塗布し、70℃で1分間乾燥後、チッ素パージ下、1J/cm2の紫外線を照射し、反射防止フィルムを作製した。
得られた各反射防止フィルムについて、実施例1と同様にして、摩擦係数、接触角、油性インキハジキ拭き取り性および指紋付着拭き取り性の評価を行い、加えて、つぎの反射率、鉛筆硬度、耐摩耗性および耐薬品性試験の評価を行った。結果を表8および9に示す。
(反射率)
反射防止フィルムを貼り付けたアクリル板を5°正反射ユニットを装着した可視紫外線分光器にセットし、視感度平均反射率(%)および最低反射率(%)を測定する。測定には(株)日立ハイテクノロジー製のU−4000・SPECTROMETERを使用する。
(鉛筆硬度)
JIS K5400に従って測定する。
(耐擦傷性)
ラビングテスター((株)井元製作所製のラビングテスターIMC−1506型。商品名)にスチールウール(#0000)をとりつけ、200gf/cm2の荷重で反射防止フィルムの反射防止膜表面を20往復擦った後の反射防止フィルムの表面状態を目視で観察する。
評価は、つぎの基準とする。
○:傷無し
△:傷2〜3本
×:傷数十本
××:傷多数
(耐薬品性)
(i)アルカリ水溶液浸漬後のHAZE変化
反射防止フィルムを25℃で3%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬し純水で洗浄し乾燥後、HAZE値を測定し、試験前後のHAZE値の差(ΔHAZE)をみる。
(HAZE値の測定法)
ASTM D1003に準拠。
(ii)漂白剤浸漬後のHAZE変化
25℃で漂白剤(ライオン(株)製のハイター。商品名。次亜塩素酸ナトリウム、アルキルアミンオキシド、水酸化ナトリウム含有)に30分間浸漬し純水で洗浄し乾燥後、HAZE値を測定し、試験前後のHAZE値の差(ΔHAZE)をみる。
比較例6
テトラエトキシシラン5g、1Nの硝酸0.15g、純水2.5gおよびエタノール5gを混合した。20%中空シリカゾルMIBK分散溶液(触媒化成工業(株)製のELECOM DK−1006SIV。商品名。平均粒径55nm;屈折率1.30)6.25g、エタノール105gを加え、硬化性組成物を得た。
(反射防止フィルムの作製)
PETフィルム(東レ(株)製のU46。商品名)の片面にハードコート処理(東洋インキ製造(株)製のハードコート剤フルシェードUV−S4(商品名)。屈折率1.55、膜厚5μm)を施したものの上に、上記で調製した硬化性組成物をバーコーター#7を用いて塗布し、70℃で1分間乾燥して比較用の反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例28と同様にして、摩擦係数、接触角、油性インキハジキ拭き取り性、指紋付着拭き取り性、反射率、鉛筆硬度、耐擦傷性および耐薬品性試験の評価を行った。結果を表9に示す。
Figure 2008040262
Figure 2008040262

Claims (7)

  1. (A)硬化性含フッ素ポリマー、(B)含フッ素表面改質剤、および(C)中空シリカ微粒子を含む硬化性組成物であって、該(A)成分が、式(1):
    −(M)−(A)− (1)
    [式中、構造単位Mは、式(M):
    Figure 2008040262
    (式中、XaおよびXbは同じかまたは異なり、HまたはF;XcはH、F、CH3またはCF3;XdおよびXeは同じかまたは異なり、H、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基にY(Yは末端にエチレン性炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜10の1価の有機基)が1〜3個結合している有機基;m1は0〜3の整数;m2およびm3は同じかまたは異なり、0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位;
    構造単位Aは、構造単位Mを与える含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体に由来する構造単位である]で示され、構造単位Mを0.1〜100モル%および構造単位Aを0〜99.9モル%含む数平均分子量500〜1000000の含フッ素ポリマーを100モル%まで含む硬化性含フッ素ポリマーであり、
    該(B)成分が式(2):
    Figure 2008040262
    (式中、X1はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基;R1はケイ素原子を有しないが、環構造、ヘテロ原子および/または官能基は有していてもよい(n1+n4)価の有機基;Rf1はパーフルオロポリエーテル基;R2はアルキル基、フルオロアルキル基、またはCH2=CX2COO−(X2はH、Cl、F、CF3または炭素数1〜10のアルキル基);n1は1〜3の整数;n2は0または1;n3は0〜50;n4は1〜3の整数)で示され、かつフッ素原子を含む数平均分子量が100〜6000の含フッ素化合物である反射防止膜形成用の硬化性組成物。
  2. (A)成分100質量部に対し、(B)成分が1〜10質量部および(C)成分が1〜150質量部である請求項1記載の組成物。
  3. (D)2個以上のα,β−不飽和エステル基を含む硬化剤(ただし、(B)成分とは異なる)を含む請求項1または2記載の組成物。
  4. 硬化剤(D)が(A)成分100質量部に対し1〜40質量部である請求項3記載の組成物。
  5. 活性エネルギー線硬化開始剤(E)を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物の硬化被膜であって、該硬化被膜の膜厚が0.03〜0.5μmである反射防止膜。
  7. 透明基材フィルム上にハードコート層、ついで請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物の硬化被膜が他の層を介さずに直接形成されてなる反射防止フィルム。
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