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JP2007331022A - ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法 Download PDF

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JP2007331022A JP2006168896A JP2006168896A JP2007331022A JP 2007331022 A JP2007331022 A JP 2007331022A JP 2006168896 A JP2006168896 A JP 2006168896A JP 2006168896 A JP2006168896 A JP 2006168896A JP 2007331022 A JP2007331022 A JP 2007331022A
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Masanobu Ishii
正信 石井
Yoshifumi Yoshida
佳史 吉田
Atsushi Kondo
穆 近藤
Setsuo Takagi
節雄 高木
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Iwatani Industrial Gases Corp
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Abstract

【課題】種々の母材に広く適用可能で、かつ脆化の抑制、強度確保が可能なステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】0.005〜0.018%のCと、0.60〜1.30%のSiと、0.35〜1.00%のMnと、1.5〜3.0%のMoと、22.0〜30.0%のCrと、0.03〜0.1%のAlと、0.05〜0.35%のVとを含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Pが0.030%以下、Sが0.030%以下に抑制された鋼塊が準備される鋳造工程と、鋼塊が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて加工される分塊圧延工程、棒鋼圧延工程および線材圧延工程とを備えている。そして、線材圧延工程よりも後の加工工程である伸線工程においては、1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法に関し、より特定的には、シールドガスを用いたアーク溶接に好適なフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法に関するものである。
近年、機械製品の性能向上に伴う素材への要求特性の上昇に起因して、耐食性、耐酸化性、耐熱性などに優れたステンレス鋼からなる部材の用途は拡大している。また、ステンレス鋼が有する光沢を利用し、製品のデザイン上の美観向上を目的として、ステンレス鋼が部材の素材として採用される場合も多くなっている。このような状況の下、ステンレス鋼からなる部材同士を連結する目的で、当該部材同士を溶接により接合する必要が生じることも多い。
今日では様々な種類のステンレス鋼が開発されており、部材の用途に適した鋼種が採用されている。たとえば、900℃を超えるような高温の排気ガスが通過する自動車の排気マニホールドにおいては、耐熱性に優れたフェライト系ステンレス鋼が採用されるのに対し、溶接性および強度が重視される用途においては、オーステナイト系ステンレス鋼が採用される。そして、このようなステンレス鋼からなる部材の溶接に際しては、溶接部の強度の向上等を考慮して、溶接される部材(母材)を構成する鋼種に応じた種々の溶接方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
特開2001−71145号公報
しかしながら、従来のステンレス鋼からなる部材の溶接においては、溶接部の強度等を考慮して、母材の鋼種に応じて溶接ワイヤの鋼種を変更する必要があった。そして、様々な種類のステンレス鋼が開発されている今日では、母材の鋼種ごとに溶接ワイヤを準備することは煩雑であり、種々の母材に広く適用可能な溶接ワイヤの開発が望まれていた。また、ステンレス鋼の溶接においては、溶接部の脆化および強度不足の問題や、溶接の容易性(溶接性;アークの安定性)が問題となる場合が多い。
そこで、本発明の目的は、種々の母材に広く適用可能で、かつ脆化の抑制および十分な強度の確保が可能であるとともに、溶接性を向上させることが可能な、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法を提供することである。
本発明に従ったステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法は、0.005質量%以上0.018質量%以下の炭素(C)と、0.60質量%以上1.30質量%以下の珪素(Si)と、0.35質量%以上1.00質量%以下のマンガン(Mn)と、1.5質量%以上3.0質量%以下のモリブデン(Mo)と、22.0質量%以上30.0質量%以下のクロム(Cr)と、0.03質量%以上0.1質量%以下のアルミニウム(Al)と、0.05質量%以上0.35質量%以下のバナジウム(V)とを含有し、残部鉄(Fe)および不可避的不純物からなり、リン(P)の含有量が0.030質量%以下、硫黄(S)の含有量が0.030質量%以下に抑制された鋼からなる鋼塊が準備される鋼塊準備工程と、当該鋼塊が、950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて加工される加熱加工工程とを備えている。そして、加熱加工工程よりも後の加工工程においては、1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施される。
本発明者は、種々の母材に広く適用可能なステンレス鋼溶接ワイヤについて鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。すなわち、後述する所定の成分組成を有するステンレス鋼溶接ワイヤを用い、窒素ガスを含むシールドガスを採用したアーク溶接を実施すると、アークが安定し、溶接の容易性が向上する。また、フェライト系ステンレス鋼からなる当該溶接ワイヤが溶融し、その後凝固することにより形成される溶接部にはオーステナイト生成元素である窒素が固溶し、当該溶接部はフェライト単相ではなくフェライト−オーステナイトの混合組織となる。その結果、溶接部の鋼組織が微細化され、溶接部の脆化が抑制されるとともに、十分な強度を溶接部に付与することができる。さらに、当該ステンレス鋼溶接ワイヤを採用すれば、シールドガスにおける窒素濃度を変化させることにより、溶接部の鋼組織におけるフェライト相とオーステナイト相との割合を変化させることが可能となる。その結果、フェライト系ステンレス鋼からオーステナイト系ステンレス鋼まで種々のステンレス鋼からなる母材に合わせた溶接部を形成することが可能となり、種々の母材の溶接に広く適用することができる。
一方、フェライト系ステンレス鋼からなる上記ステンレス鋼溶接ワイヤは、難加工性材料であり、その製造工程においては、上記成分組成を有する鋼塊を所望のワイヤの形状に加工する加工工程が問題となる。具体的には、上記成分組成を有する鋼塊、または鋼塊が加工されて作製された中間製品を加熱して変形抵抗を低減し、変形量の大きな加工を行なう工程においては、変形抵抗をより低減するため、基本的にはより高温に加熱して加工を実施することが好ましい。しかし、上記成分組成を有する鋼塊および中間製品は、室温から融点直下の高温に至るまで相変態を起こさないフェライト系ステンレス鋼からなるため、高温に加熱されると、鋼塊および中間製品を構成する鋼組織における結晶粒が粗大化し、脆化しやすい。そして、1075℃を超える温度に加熱されると、結晶粒の粗大化が顕著となって脆化が進行する。その結果、延性および展性が低下し、加工が困難となる。一方、加熱温度が950℃未満では、変形抵抗が高く、変形量の大きな加工が困難となる。したがって、鋼塊または中間製品を加熱して変形量の大きな加工を行なう工程においては、950℃以上1075℃以下の温度に加熱して加工を行なうことが好ましい。
さらに、中間製品をワイヤの形状に加工する伸線工程などの工程を実施するに際しては、予め中間製品の硬度を低下させて加工を容易にするための焼鈍が実施される場合がある。この場合でも、1075℃を超える温度に加熱されると、結晶粒が粗大化して脆化が進行するため、加工が困難となる。したがって、当該工程においても、1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施される必要がある。
次に、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法に含まれる鋼塊準備工程において準備される鋼塊の成分組成を、上述の範囲に限定した理由の詳細について説明する。
Cは、溶接部の強度を向上させる元素である。また、Cは、鋼の製造工程において鋼中に不可避に含有される。C量を0.005質量%未満にまで低下させることは、鋼の製造コストを上昇させ、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造コスト上昇を招来するだけでなく、溶接部の強度を低下させる結果となる。一方、C含有量が0.018質量%を超えると、耐食性が低下するとともに、溶接部にマルテンサイト組織が生成して当該溶接部が脆化するおそれがある。そのため、Cの含有量は0.005質量%以上0.018質量%以下である。
Siは、溶融状態にある鋼において、鋼の特性に対して有害な酸素の含有量を低下させるために添加される元素であるとともに、溶接部の強度を向上させる機能を有する。そのため、含有量が少ない場合これらの効果が不十分となる。また、Si含有量が少ない場合、溶接時のビード形状が好ましくない形状である凸型となる。Siの含有量が0.60質量%未満では、このような問題が顕著となる。一方、Si含有量が1.30質量%を超えると、溶接時のアークが安定せず、溶融池に乱れを生じる。そのため、Si含有量は、0.60質量%以上1.30質量%以下である。なお、ビード形状が凸型となることを一層抑制するためには、Si含有量は0.80質量%以上であることが好ましい。また、溶接時のアークを一層安定させるためには、Si含有量は1.20質量%以下であることが好ましい。
Mnは、Siと同様に、溶融状態にある鋼において、鋼の特性に対して有害な酸素の含有量を低下させるために添加される元素であるとともに、溶接部の強度を向上させる機能を有する。そのため、含有量が少ない場合これらの効果が不十分となる。また、Mnの含有量が少ない場合、溶接時のスラグの形成が不十分となり、ビードの形成に悪影響を与える。Mnの含有量が0.35質量%未満では、このような問題が顕著となる。一方、Mnの含有量が1.00質量%を超えると、耐食性の低下、硬度上昇に伴う脆化、切削加工の容易性(切削性)の劣化などの問題を生じる。そのため、Mnの含有量は、0.35質量%以上1.00質量%以下である。
Moは、溶接時にシールドガスに含まれる窒素を、ブローホールを形成させることなく溶接部の鋼中に固溶させる機能を有する。含有量が1.5質量%未満では、当該機能が十分に発揮されない。一方、含有量が3.0質量%を超えると、窒化物の形成に起因した硬度上昇に伴う脆化、切削性の劣化などの問題を生じる。そのため、Mo含有量は、1.5質量%以上3.0質量%以下である。なお、ブローホールの形成を一層抑制するためには、Mo含有量は2.0質量%以上であることが好ましい。また、窒化物の形成に起因した脆化および切削性の劣化などの問題を一層抑制するためには、Mo含有量は2.5質量%以下であることが好ましい。
Crは、溶接部の耐食性、耐酸化性を向上させるとともに、前述の窒素の固溶によるオーステナイト相の形成に寄与する元素である。22.0質量%未満では、当該機能が十分に発揮されない。一方、含有量が30.0質量%を超えると、スピノーダル分解に起因した脆化(いわゆる475℃脆性)のため、ワイヤの形状への加工が難しくなる。したがって、Cr含有量は22.0質量%以上30.0質量%以下である。なお、ワイヤの形状への加工を一層容易にするためには、Cr含有量は27.0質量%以下とすることが好ましい。また、溶接部の耐食性および耐酸化性の向上、窒素の固溶によるオーステナイト相の形成などの機能を一層顕著に発揮させるためには、Cr含有量は24.0質量%以上であることが好ましい。
Alは、溶接部において鋼中に固溶しなかった窒素を窒化物として固定することにより、ブローホールの発生を抑制する機能を有する。含有量が0.03質量%未満では、当該機能が十分に発揮されない。一方、含有量が0.1質量%を超えると、溶接時においてビードの形成に悪影響を与えるとともに、アークが不安定になり、スパッタ(飛散物)が増加する。そのため、Al含有量は、0.03質量%以上0.1質量%以下である。
Vは、Alと同様に、ブローホールの発生を抑制する機能を有する。含有量が0.05質量%未満では、当該機能が十分に発揮されない。一方、含有量が0.35質量%を超えると、溶接時においてビードの形成に悪影響を与えるとともに、スパッタが増加する。また、含有量が0.35質量%を超えると、他の合金元素との間に金属間化合物を形成し、溶接部を脆化させる。そのため、V含有量は、0.05質量%以上0.35質量%以下である。
Pは、溶接割れを助長し、溶接部の靭性を著しく低下させる。含有量が0.030質量%を超えると、当該悪影響が大きくなるため、Pの含有量は、0.030質量%以下に抑制されることが好ましい。また、上記悪影響を一層確実に抑制するためには、Pの含有量は、0.020質量%以下に抑制されることが、より好ましい。
Sは、Pと同様に、溶接割れを助長し、溶接部の靭性を著しく低下させる。含有量が0.030質量%を超えると、当該悪影響が大きくなるため、Sの含有量は、0.030質量%以下に抑制されることが好ましい。また、上記悪影響を一層確実に抑制するためには、Sの含有量は、0.015質量%以下に抑制されることが、より好ましい。なお、S含有量が0.005質量%未満とされた場合、溶接部のビード形状が凸型となる傾向があるため、S含有量は0.005質量%以上としてもよい。
以上のように、鋼塊準備工程において上記成分組成を有する鋼からなる鋼塊が準備されることにより、窒素ガスを含むシールドガスを採用したアーク溶接に適用することで、溶接の容易性が向上するだけでなく、溶接部の脆化の抑制、十分な強度の付与を可能とし、かつ種々の母材の溶接に広く適用することが可能な成分組成をステンレス鋼溶接ワイヤに付与することができる。また、加熱加工工程において当該鋼塊が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて加工されるとともに、加熱加工工程よりも後の加工工程において1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施されることにより、比較的容易に上述の成分組成を有する鋼塊をワイヤの形状にまで加工することが可能となる。その結果、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法によれば、種々の母材に広く適用可能で、かつ溶接部の脆化の抑制および十分な溶接部の強度の確保が可能であるとともに、溶接の容易性を向上させることが可能なステンレス鋼溶接ワイヤを容易に製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法によれば、種々の母材に広く適用可能で、かつ脆化の抑制および十分な強度の確保が可能であるとともに、溶接の容易性を向上させることが可能な、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法の概略を示す図である。図1を参照して、実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法について説明する。
図1を参照して、実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法は、鋼塊準備工程としての鋳造工程と、加熱加工工程としての分塊圧延工程、棒鋼圧延工程および線材圧延工程と、冷間加工工程としての伸線工程と、仕上げ工程とを備えている。すなわち、まず鋳造工程において、0.005質量%以上0.018質量%以下のCと、0.60質量%以上1.30質量%以下のSiと、0.35質量%以上1.00質量%以下のMnと、1.5質量%以上3.0質量%以下のMoと、22.0質量%以上30.0質量%以下のCrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAlと、0.05質量%以上0.35質量%以下のVとを含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Pの含有量が0.030質量%以下、Sの含有量が0.030質量%以下に抑制された鋼からなる鋼塊が準備される。具体的には、たとえばAOD精錬(アルゴン酸素脱ガス精錬)により精錬され、かつ上記成分組成に調整された溶鋼が鋳造用の鋳型に流し込まれた後冷却され、当該成分組成を有する鋼塊(インゴット)が作製される。
次に、鋳造工程において作製された鋼塊が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて圧延されることにより、第1中間製品としての鋼片が作製される第1加熱加工工程としての分塊圧延工程が実施される。
さらに、分塊圧延工程において作製された鋼片が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されてさらに圧延されることにより、第2中間製品としての棒鋼が作製される第2加熱加工工程としての棒鋼圧延工程が実施される。
さらに、棒鋼圧延工程において作製された棒鋼が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されてさらに圧延されることにより、第3中間製品としての線材が作製される第3加熱加工工程としての線材圧延工程が実施される。
次に、線材圧延工程において作製された線材が、所望の形状にまで加工されることにより、最終ワイヤサイズの鋼線が作製される伸線工程が実施される。具体的には、線材圧延工程において作製された線材がダイスを用いて引抜加工されることにより、所望の断面形状を有する鋼線に加工される。このとき、伸線工程においては、当該引抜加工を容易にするため、線材を所定の温度にまで加熱した後、徐冷することにより線材の硬度を低下させる焼鈍が、引抜加工に先立って実施されてもよい。そして、当該伸線工程における焼鈍は、1075℃を超える温度に加熱されることなく実施される。
また、線材圧延工程において作製された線材を、直接所望のステンレス鋼溶接ワイヤの形状にまで加工することが困難な場合、焼鈍を含む伸線工程を繰り返して実施することにより段階的に引抜加工を実施し、最終的に所望のステンレス鋼溶接ワイヤの形状にまで加工してもよい。この場合でも、各伸線工程における焼鈍は、1075℃を超える温度に加熱されることなく実施される。すなわち、加熱加工工程である線材圧延工程よりも後の加工工程である伸線工程においては、1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施される。
次に、伸線工程において作製された最終ワイヤサイズの鋼線に対して、表面の傷などを除去する仕上げ加工や、防錆油の塗布などの仕上げ処理が行なわれる仕上げ工程が実施される。これにより、実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤは完成し、実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法は完了する。
実施の形態1のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法によれば、鋳造工程において上記成分組成を有する鋼からなる鋼塊が準備されることにより、窒素ガスを含むシールドガスを採用したアーク溶接に適用することで、溶接の容易性が向上するだけでなく、溶接部の脆化の抑制、十分な強度の付与を可能とし、かつ種々の母材の溶接に広く適用することが可能な成分組成をステンレス鋼溶接ワイヤに付与することができる。また、加熱加工工程である分塊圧延工程、棒鋼圧延工程および線材圧延工程において当該鋼塊が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて加工されるとともに、加熱加工工程よりも後の加工工程である伸線工程において1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施されることにより、比較的容易に上述の成分組成を有する鋼塊をワイヤの形状にまで加工することが可能となる。その結果、実施の形態1のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法によれば、種々の母材に広く適用可能で、かつ溶接部の脆化の抑制および十分な溶接部の強度の確保が可能であるとともに、溶接の容易性を向上させることが可能なステンレス鋼溶接ワイヤを容易に製造することができる。
なお、上記実施の形態1においては、分塊圧延工程の後に棒鋼圧延工程が実施されたうえで、線材圧延工程が実施される場合について説明したが、分塊圧延工程の後、棒鋼圧延工程が実施されることなく、線材圧延工程が実施されてもよい。また、上記実施の形態1においては、鋳造工程の後に分塊圧延工程が実施される場合について説明したが、分塊圧延工程に代えて、鋼塊が950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて鍛造されることにより、第1中間製品としての鋼片が作製される第1加熱加工工程としての分塊鍛造工程が実施されてもよい。鋳造工程において作製された鋼塊が比較的少量である場合や、通常と異なる形状の鋼片を作製したい場合、加工サイズの自由度の高い分塊鍛造工程を採用することが適切である。
さらに、分塊鍛造工程が採用される場合、当該工程での鍛造に使用される鍛造機には、鋼塊に接触して荷重を負荷することにより当該鋼塊を変形させるハンマーが、バネにより支持されている、バネ式鍛造機が採用されることが望ましい。これにより、鍛造時において、鋼塊に対いて衝撃荷重が負荷されることが抑制されるとともに、鋼塊に負荷される荷重の分布を均一化することが可能となる。その結果、鍛造時の割れの発生が抑制され、ステンレス鋼溶接ワイヤを一層容易に製造することが可能となる。
(実施の形態2)
図2は、本発明の一実施の形態である実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法の概略を示す図である。図2を参照して、実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法について説明する。
図2を参照して、実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法は、基本的には図1に基づいて説明した実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法と同様の構成を有している。しかし、実施の形態2においては、実施の形態1の鋳造工程および分塊圧延工程が、鋼塊準備工程としての連続鋳造工程によって置き換えられている点で実施の形態1とは異なっている。
すなわち、図2を参照して、実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法においては、まず、鋼塊準備工程としての連続鋳造工程が実施される。具体的には、実施の形態1と同様の成分組成に調整された溶鋼がタンディッシュに流し込まれ、さらに当該タンディッシュからタンディッシュの下部に配置され、冷却水などにより冷却された連続鋳造用鋳型を通過することにより冷却され、連続的に凝固することにより鋳片となる。このようにして作製された鋳片は、切断機を用いて適切な長さに切断され、上記成分組成を有する鋼塊としての連続鋳造鋼塊が作製される。そして、この連続鋳造鋼塊を実施の形態1における鋼片として取り扱い、以下実施の形態1と同様に棒鋼圧延工程、線材圧延工程、伸線工程および仕上げ工程を実施することにより、実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤが完成する。
実施の形態2のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法によれば、実施の形態1のように溶鋼を一旦冷却して凝固させ、鋼塊を作製した後、当該鋼塊を再加熱して加工することにより鋼片を作製するのではなく、溶鋼が凝固した後切断することにより、直接鋼片(連続鋳造鋼塊)が作製される。その結果、実施の形態1における鋼塊の再加熱を省略することができるため、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造コストを低減することができる。
なお、上記実施の形態1および実施の形態2の線材圧延工程における加熱は、誘導加熱により実施されてもよい。誘導加熱は、一般的なバーナー等を利用した加熱炉による加熱に比べて、短時間で棒鋼を950℃以上1075℃以下の温度域に加熱することができる。その結果、製造効率が向上し、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造コストを低減することができる。
また、線材圧延工程における圧延に使用される圧延機には、被圧延物の外周面に対してそれぞれ異なった方向から接触する3つのロールより被圧延物を圧延する、3ロール圧延機が採用されることが好ましい。一般的に使用されている2ロール孔型圧延機は、被圧延物が長手方向に垂直な方向に広がる現象(幅広がり)が発生しやすい。これに対し、3ロール圧延機は、幅広がりを抑制することが可能であり、比較的展性および延性が小さい本発明のステンレス鋼溶接ワイヤを構成する鋼(フェライト系ステンレス鋼)の圧延に好適である。
さらに、線材圧延工程における圧延に使用される圧延機は、複数台の圧延機が直列に配置されたタンデム圧延機であることが好ましい。上述のように、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤを構成する鋼は、比較的展性および延性が小さい。そのため、変形率の小さい圧延を複数回実施し、所望の形状の線材を作製することが可能なタンデム圧延機は、線材圧延工程において使用される圧延機として好適である。
また、線材圧延工程における最終圧延は、ステッケルミルを用いて実施されることが好ましい。ここで、ステッケルミルとは、巻取り機と、巻取り機を取り囲むように配置された保温炉とを有する1対のファーネスコイラと、当該1対のファーネスコイラの間に設置された圧延ロールとを備え、各巻取り機が反転可能に構成された圧延機である。このステッケルミルを採用することにより、線材圧延工程においては、巻取り機を反転させることで被圧延物(線材)を往復させつつ、圧延ロールにより段階的に圧延を実施するとともに、巻き取られた被圧延物は保温炉によって保温される。そのため、比較的展性および延性が小さい鋼から構成される本発明のステンレス鋼溶接ワイヤに傷が発生することを抑制し、高品質なステンレス鋼溶接ワイヤを製造することができる。
さらに、線材圧延工程において作製される線材においては、フェライト相のスピノーダル分解に起因した脆化(475℃脆性)を回避する必要がある。したがって、線材圧延工程において作製される線材は、圧延後550℃から400℃までの温度範囲において徐冷されないことが好ましい。具体的には、550℃から400℃までの温度範囲において30℃/分以上の冷却速度で冷却されることが好ましい。ここで、当該線材の冷却速度を上昇させるため、圧延後の線材に対してブロアを用いた衝風冷却を実施してもよい。
以下、実施例1について説明する。本発明のステンレス鋼溶接ワイヤを構成する鋼の熱間加工性を調査する実験を行なった。実験の手順は、以下のとおりである。
まず、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤを構成する鋼と同様の成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼を溶製した。当該鋼の成分組成を表1に示す。表1において、上段は成分の元素記号を示しており、下段は各成分の含有割合(単位:質量%)を示している。また、表1に記載された成分の残部はFeおよび不可避的不純物である。
Figure 2007331022
この鋼を加工することにより、両端部にネジ加工が施された棒状の試験片(両端のネジ加工部の直径12mm、中央の試験部位としての平行部の直径6mm、標点距離35mm)を作製した。さらに、グリーブル試験機を用いて、当該試験片を900℃〜1150℃の温度範囲に加熱し、当該試験片を軸方向に引張ることにより試験部位において破断させた。そして、破断後の試験部における直径の減少割合を絞り値として記録した。
図3は、実施例1における実験結果を示す図である。図3において、横軸は加熱温度、縦軸は絞りを示している。図3を参照して、実施例1の実験結果について説明する。
図3を参照して、測定された絞りは、1075℃を超えると急激に低下していることが分かる。このことから、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造工程において、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤを構成する鋼が1075℃を超えるに加熱されて加工された場合、破断、あるいは割れが発生するおそれがあるといえる。このことから、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造工程における加工は、1075℃を超える温度に加熱されることなく実施される、すなわち1075℃以下に加熱されて実施される必要があることがわかる。また、実際の生産時における温度のばらつきや温度管理の容易性を考慮すると、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造工程における加工は、絞りが大きく、かつ安定している1050℃以下に加熱されて実施されることが好ましいといえる。
一方、ステンレス鋼の圧延や鍛造などの加工においては、絞りが60%以上となる条件の下で加工が実施されることで、加工時の破断や割れが抑制される。本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造工程における加工が、950℃以上の温度に加熱されて実施されることにより、当該条件は満たされる。さらに、本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造工程における加工は、絞りが大きく、かつ安定している1000℃以上の温度に加熱されて実施されることが好ましいことが分かる。
本発明のステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法は、シールドガスを用いたアーク溶接に好適なフェライト系ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法に特に有利に適用され得る。
実施の形態1におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法の概略を示す図である。 実施の形態2におけるステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法の概略を示す図である。 実施例1における実験結果を示す図である。

Claims (1)

  1. 0.005質量%以上0.018質量%以下のCと、0.60質量%以上1.30質量%以下のSiと、0.35質量%以上1.00質量%以下のMnと、1.5質量%以上3.0質量%以下のMoと、22.0質量%以上30.0質量%以下のCrと、0.03質量%以上0.1質量%以下のAlと、0.05質量%以上0.35質量%以下のVとを含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、Pの含有量が0.030質量%以下、Sの含有量が0.030質量%以下に抑制された鋼からなる鋼塊が準備される鋼塊準備工程と、
    前記鋼塊が、950℃以上1075℃以下の温度域に加熱されて加工される加熱加工工程とを備え、
    前記加熱加工工程よりも後の加工工程においては、1075℃を超える温度に加熱されることなく加工が実施される、ステンレス鋼溶接ワイヤの製造方法。
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