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JP2007321190A - 疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法 Download PDF

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JP2007321190A JP2006152043A JP2006152043A JP2007321190A JP 2007321190 A JP2007321190 A JP 2007321190A JP 2006152043 A JP2006152043 A JP 2006152043A JP 2006152043 A JP2006152043 A JP 2006152043A JP 2007321190 A JP2007321190 A JP 2007321190A
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Abstract

【課題】高い疲労強度を有する鋼材を安定して提供する。
【解決手段】C:0.35〜0.7mass%、Si:0.30〜1.1 mass%、Mn:0.2 〜2.0 mass%、Al:0.005 〜0.25mass%、Ti:0.005 〜0.1mass%、Mo:0.05〜0.6mass%、B:0.0003〜0.006 mass%、S:0.06 mass%以下、P:0.020 mass%以下およびCr:0.2 mass%以下をTi(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にする共に、母材組織を、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率を10%以上とし、さらに高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径が硬化層全厚にわたり12μm 以下とし、さらに高周波焼入れ・焼きもどし後の表面残留応力を−700MPa以下とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面に高周波焼入れによる硬化層をそなえる、自動車ドライブシャフトおよび等速ジョイントなどに適用して好適な、焼入れ後の疲労特性に優れた鋼材ならびにその製造方法に関するものである。
従来、自動車用ドライブシャフトや等速ジョイントなどの機械構造用部品は、熱間圧延棒鋼に、熱間鍛造、さらには切削、冷間鍛造などを施して所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ−焼戻しを行うことにより、機械構造用部品としての重要な特性である、ねじり疲労強度を確保しているのが一般的である。
他方、近年、環境問題から自動車用部材に対する軽量化への要求が強く、この観点から自動車用部品の疲労強度を一層向上することが要求されている。
上述したような疲労強度を向上させる手段としては、これまでにも種々の方法が提案されている。
例えば、ねじり疲労強度を向上させるためには、高周波焼入れによる焼入れ深さを増加させることが考えられる。しかしながら、焼入れ深さを増加してもある深さで疲労強度は飽和する。
また、ねじり疲労強度の向上には、粒界強度の向上も有効であり、この観点から、TiCを分散させることによって旧オーステナイト粒径を微細化する技術が提案されている(例えば特許文献1参照のこと)。
上記の特許文献1に記載された技術では、高周波焼入れ加熱時に微細なTiCを多量に分散させることで、旧オーステナイト粒径の微細化を図るものであるため、焼入れ前にTiCを溶体化しておく必要があり、熱間圧延工程で1100℃以上に加熱する工程を採用している。そのため、熱間圧延時に加熱温度を高くする必要があり、生産性に劣るという問題があった。
さらに、上記の特許文献1に開示された技術をもってしても、近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えられないところにも問題を残していた。
また、特許文献2には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品の半径Rとの比(CD/R)を 0.3〜0.7 に制限した上で、このCD/Rと高周波焼入れ後の表面から1mmまでのオーステナイト結晶粒径γf、高周波焼入れままの(CD/R)=0.1 までの平均ビッカース硬さHfおよび高周波焼入れ後の軸中心部の平均ビッカース硬さHcで規定される値Aを、C量に応じて所定の範囲に制御することによってねじり疲労強度を向上させた機械構造用軸物部品が提案されている。
しかしながら、この部品では、焼入れ硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径に考慮が払われていないため、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。
さらに、特許文献3には、硬化層深さCDと高周波焼入れ軸物部品の半径Rとの比(CD/R)を 0.3〜0.7 に制限した上で、部品の表面にショットピーニングを施して該表面圧縮残留応力を700N/mm以上とすることによって、ねじり疲労強度を向上させた軸物部品が提案されている。
しかしながら、この部品では、焼入れ硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径に考慮が払われていないため、やはり近年のねじり疲労強度に対する要求には十分に応えることができなかった。
また、圧縮残留応力の付与をショットピーニングにて機械的に行うために、圧縮残留応力を表面に均等に付与することが難しく、所期した特性を得るにはショットピーニング処理条件を厳密に制御する必要があり、実際的な手法とは言い難いものであった。また、工程が付加されるため、コストが上昇する問題もあった。
特開2000−154819号公報(特許請求の範囲、段落〔0008〕) 特開平8−53714 号公報(特許請求の範囲) 特開平7−90379 号公報(特許請求の範囲)
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、高周波焼入れにより疲労強度を大幅に向上させた鋼材の有利な製造方法について提案することを目的とする。
さて、発明者らは、前記したような疲労強度を効果的に向上させるべく、鋭意検討を行った。特に、かかる疲労強度の代表例としてねじり疲労強度に着目して、詳細な検討を行った。
その結果、以下に述べるように、鋼の化学組成、組織、焼入れ条件および焼入れ後の硬化層全厚にわたる旧オーステナイト粒径ならびに表面残留応力を最適化することにより、優れたねじり疲労強度が得られるとの知見を得た。
(1)適正な化学組成に調整した鋼に、焼入れを施し、焼入れ硬化層全厚にわたる旧オーステナイト粒径を12μm 以下とすることによって、ねじり疲労強度が顕著に向上する。具体的には、化学組成に関しては、特にSiおよびMoを適正な範囲で添加することによって、高周波焼入れ加熱時におけるオーステナイトの核生成サイト数が増加し、またオーステナイト粒の成長が抑制されることにより、焼入れ硬化層の粒径が効果的に微細化し、その結果ねじり疲労強度が顕著に向上する。特に、Siを0.30mass%以上添加することにより、高周波焼入れ後に、硬化層全厚にわたり粒径:12μm 以下の硬化層が得られる。
(2) 母材の組織、すなわち焼入れ前の組織を、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織が特定の分率で含有された組織にすると、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織がフェライト−パーライト組織に比べて炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトであるフェライト/炭化物の界面の面積が増えて、生成したオーステナイトが微細化する。その結果、焼入れ硬化層の粒径が微細となり、これにより粒界強度が向上し、ねじり疲労強度が増加する。
(3) 上記したように、化学組成および組織を調整した鋼材を使用し、高周波焼入れ条件(加熱温度、時間、焼入れ回数)を適正に制御することで、硬化層粒径が顕著に微細化し、粒界強度が向上する。具体的には、加熱温度:800 〜1000℃、より好ましくは 800〜950℃で、かつ加熱時間:5秒以下とすることにより、硬化層全厚にわたり粒径:12μm 以下の微細粒を安定して得ることができる。特に、Mo添加鋼に対して、加熱温度:800 〜1000℃、より好ましくは 800〜950 ℃に制御して高周波焼入れを行うことにより、一層微細な硬化層粒径が得られる。さらに、上記条件での焼入れ処理を2回以上繰り返すことにより、1回の焼入れに比べてさらに微細な硬化層粒径が得られる。
(4) 上記したように、化学組成および組織を調整した鋼材を使用し、高周波焼入れ後の焼戻し時の冷却速度を適正に制御することによって、圧縮残留応力が顕著に増加し、疲労強度が向上する。具体的には、焼戻し時の冷却速度:30℃/s以上、好ましくは50℃/s以上、さらに好ましくは 100℃/s以上で冷却することにより、表面残留応力が−700MPa 以下の高圧縮残留応力を安定して得ることができる。なお,焼戻し時の加熱温度および保持時間については炉加熱あるいは高周波加熱等による一般的な焼戻しを行えばよく、特に規定しない。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.35〜0.7 mass%、
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.1 mass%、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
をTi(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、母材組織が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10%以上であり、さらに高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径が硬化層全厚にわたり12μm 以下であり、高周波焼入れ・焼きもどし後の表面残留応力が−700MPa以下であることを特徴とする疲労特性に優れた鋼材。
2.前記1において、高周波焼入れ後の硬化層厚みが2mm以上である疲労特性に優れた鋼材。
3.前記1または2において、前記鋼材が、さらに
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になる疲労特性に優れた鋼材。
4.C:0.35〜0.7 mass%、
Si:0.30〜1.1 mass%、
Mn:0.2 〜2.0 mass%、
Al:0.005 〜0.25mass%、
Ti:0.005 〜0.1 mass%、
Mo:0.05〜0.6 mass%、
B:0.0003〜0.006 mass%、
S:0.06mass%以下、
P:0.02mass%以下および
Cr:0.2 mass%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、熱間加工し、その後0.2 ℃/s以上の速度で冷却したのち、加熱温度:800 〜1000℃の条件下で高周波焼入れを行い、さらに冷却速度:30℃/s以上の条件下で焼戻しを行うことを特徴とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
5.前記4において、前記鋼素材が、さらに
Cu:1.0 mass%以下、
Ni:3.5 mass%以下、
Co:1.0 mass%以下、
Nb:0.1 mass%以下および
V:0.5 mass%以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
6.前記4または5において、前記冷却後に、高周波焼入れを複数回繰り返し、最終の高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
7.前記6において、前記複数回の高周波焼入れの全てについて、高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
8.前記4ないし7のいずれかにおいて、前記加熱温度範囲での加熱時間を、1回の高周波焼入れ当たり5秒以下とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
9.前記4ないし8のいずれかにおいて、高周波焼入れによる鋼材表面の硬化層厚みが2mm以上である疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
本発明によれば、ねじり疲労特性をはじめとして、曲げ疲労特性、転動疲労特性およびすべり転動疲労特性等の全ての疲労特性に優れた鋼材を安定して得ることができ、その結果、自動車用部材の軽量化等の要求に対し偉功を奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼材および鋼素材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.35〜0.7 mass%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。しかしながら、含有量が0.35mass%に満たないと、必要とされる疲労強度を確保するために焼入れ硬化深さを飛躍的に高めねばならず、その際焼割れの発生が顕著となり、またベイナイト組織も生成し難くなるため、0.35mass%以上を添加する。一方、0.7 mass%を超えて含有させると粒界強度が低下し、それに伴い疲労強度も低下し、また切削性、冷間鍛造性および耐焼き割れ性も低下する。このためCは、0.35〜0.7 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.4〜0.6 mass%の範囲である。
Si:0.30〜1.1 mass%
Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させると共に、オーステナイトの粒成長を抑制し、焼入れ硬化層の粒径を微細化する作用を有する。また、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。さらに、ベイナイト組織の生成にも有用な元素であり、これらのことにより疲労強度を向上させる。
このように、Siは、本発明において非常に重要な元素であり、0.30mass%以上の含有を必須とする。というのは、Si量が0.30mass%に満たないと、製造条件および焼入れ条件をいかように調整しても硬化層全厚にわたって旧オーステナイト粒径が12μm 以下の微細粒とすることができないからである。しかしながら、Si量が 1.1mass%を超えると、フェライトの固溶硬化により硬さが上昇し、切削性および冷間鍛造性の低下を招く。従って、Siは、0.30〜1.1 mass%の範囲に限定した。好ましくは0.40〜1.0 mass%の範囲である。
Mn:0.2 〜2.0 mass%
Mnは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化深さを確保する上で不可欠の成分であるため、積極的に添加するが、含有量が 0.2mass%未満ではその添加効果に乏しいので、0.2mass%以上とした。好ましくは 0.3mass%以上である。一方、Mn量が 2.0mass%を超えると焼入れ後の残留オーステナイトが増加し、かえって表面硬度が低下し、ひいては疲労強度の低下を招くので、Mnは2.0mass%以下とした。なお、Mnは含有量が多いと、母材の硬質化を招き、被削性に不利となるきらいがあるので、1.2 mass%以下とするのが好適である。さらに好ましくは 1.0mass%以下である。
Al:0.005 〜0.25mass%
Alは、脱酸に有効な元素である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化する上でも有用な元素である。しかしながら、含有量が 0.005mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.25mass%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Alは 0.005〜0.25mass%の範囲に限定した。好ましくは0.05〜0.10mass%の範囲である。
Ti:0.005 〜0.1 mass%
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bの焼入れ性向上効果を十分に発揮させる作用を有する。この効果を得るためには、少なくとも 0.005mass%の含有を必要とするが、0.1 mass%を超えて含有されるとTiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となって疲労強度の著しい低下を招くので、Tiは 0.005〜0.1 mass%の範囲に限定した。好ましくは0.01〜0.07mass%の範囲である。さらに、Nを確実に固定して、Bによる焼入れ性向上により、ベイナイトとマルテンサイト組織を得る観点からは、Ti(mass%)/N(mass%)≧3.42を満足させることが好適である。
Mo:0.05〜0.6 mass%
Moは、ベイナイト組織の生成を促進することにより、焼入れ加熱時のオーステナイト粒径を微細化し、焼入れ硬化層の粒径を細粒化する作用がある。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイトの粒成長を抑制することにより、焼入れ硬化層の粒径を微細化する作用がある。特にこの効果は、高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃より好ましくは 800〜950 ℃とすることにより、一層顕著となる。さらに、焼入れ性の向上に有用な元素であるため、焼入れ性を調整するために用いられる。加えて、Moは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を有効に阻止する元素でもある。
このように、Moは、本発明において非常に重要な元素であり、含有量が0.05mass%に満たないと、製造条件や焼入れ条件をいかように調整しても硬化層全厚にわたって旧オーステナイト粒径が12μm 以下の微細粒とすることができない。しかしながら、 0.6mass%を超えて含有させると、圧延材の硬さが著しく上昇し、加工性の低下を招く。従って、Moは0.05〜0.6 mass%の範囲に限定した。好ましくは 0.1〜0.6 mass%の範囲である。さらに好ましくは 0.3〜0.4 mass%の範囲である。
B:0.0003〜0.006 mass%
Bは、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織の生成を促進する効果を有する。またBは、微量の添加によって焼入れ性を向上させ、焼入れ時の焼入れ深さを高めることによりねじり強度を向上させる効果もある。さらにBは、粒界に優先的に偏析して、粒界に偏析するPの濃度を低減し、粒界強度を向上させ、もって疲労強度を向上させる作用もある。
このため、本発明では、Bを積極的に添加するが、含有量が0.0003mass%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 0.006mass%を超えて含有させるとその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招くため、Bは0.0003〜0.006 mass%の範囲に限定した。好ましくは0.0005〜0.004 mass%の範囲である。さらに好ましくは0.0015〜0.003 mass%の範囲である。
S:0.06mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる有用元素であるが、0.06mass%を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは0.06mass%以下に制限した。好ましくは0.04mass%以下である。
P:0.020 mass%以下
Pは、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、疲労強度を低下させる。また、焼割れを助長する弊害もある。従って、Pの含有は極力低減することが望ましいが、0.020 mass%までは許容される。
Cr:0.2 mass%以下
Crは、炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。従って、Crの含有は極力低減することが望ましいが、0.2 mass%までは許容できる。好ましくは0.05mass%以下である。
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:1.0 mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、疲労強度を向上させる。さらに、炭化物の生成を抑制することにより、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、疲労強度を向上させる。しかしながら、含有量が1.0 mass%を超えると熱間加工時に割れが発生するため、1.0 mass%以下の添加とする。なお好ましくは0.5 mass%以下である。
Ni:3.5 mass%以下
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ性を調整する場合に用いる。また、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制して、疲労強度を向上させる元素でもある。しかしながら、Niは極めて高価な元素であり、3.5 mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、3.5 mass%以下の添加とする。なお、0.05mass%未満の添加では焼入れ性の向上効果および粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.05mass%以上含有させることが望ましい。好ましくは 0.1〜1.0 mass%である。
Co:1.0 mass%以下
Coは、炭化物の生成を抑制して、炭化物による粒界強度の低下を抑制し、強度および疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは極めて高価な元素であり、1.0 mass%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するので、1.0 mass%以下の添加とする。なお、0.01mass%未満の添加では、粒界強度の低下抑制効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.02〜0.5 mass%である。
Nb:0.1 mass%以下
Nbは、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させる。しかしながら、0.1 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.1 mass%を上限とする。なお、0.005 %未満の添加では、析出強化作用および焼戻し軟化抵抗性の向上効果が小さいため、0.005 mass%以上添加することが望ましい。好ましくは、0.01〜0.05mass%である。
V:0.5 mass%以下
Vは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果により疲労強度を向上させる。しかしながら、0.5 mass%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、0.5 mass%以下とする。なお、0.01mass%未満の添加では、疲労強度の向上効果が小さいので、0.01mass%以上添加することが望ましい。好ましくは0.03〜0.3 mass%である。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分で、母材組織の調整も重要である。
すなわち、本発明においては、母材の組織、すなわち焼入れ前の組織(高周波焼入れ後の硬化層以外の組織に相当)が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率を体積分率(vol%)で10%以上とする必要がある。この理由は、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織は、フェライト−パーライト組織に比べて炭化物が微細に分散した組織であるため、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイトである、フェライト/炭化物界面の面積が増加し、生成したオーステナイトが微細化するため、焼入れ硬化層の粒径を微細化するのに有効に寄与するからである。そして、焼入れ硬化層の粒径の微細化により、粒界強度が上昇し、疲労強度が向上する。
ここに、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率は20 vol%以上とすることがより好ましい。
また、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率の上限は90 vol%程度とするのが好適である。というのは、これらの合計の組織分率が90vol %を超えると焼入れによる硬化層の旧オーステナイト粒の微細化効果が飽和するだけでなく、被削性が急激に劣化するからである。
なお、焼入れ後の硬化層の粒径の微細化に関しては、マルテンサイト組織もベイナイト組織と同程度の効果を有するが、工業的な観点からは、マルテンサイト組織に比べてベイナイト組織の方がより合金元素の添加量が少なくて済み、また被削性の点でも有利であり、さらに低い冷却速度で生成させることが可能であるため、製造上有利である。
ここで、図1に、鋼中のベイナイト組織分率およびマルテンサイト組織分率が被削性および高強度化に及ぼす影響について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、ベイナイト組織とマルテンサイト組織は、微細化による高強度化の面ではほぼ同等であったが、被削性(硬さ)の面ではベイナイト組織の方が優れていた。特に、ベイナイト組織分率が25〜85%の範囲では、高強度化と被削性の両者をバランス良く得ることができた。とりわけ好ましいベイナイト組織分率は30〜70%の範囲である。
なお、ベイナイト組織あるいはマルテンサイト組織以外の残部組織は、フェライト、パーライト等いずれでもよく、特に規定しない。
さらに、本発明では、高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径の調整も重要である。すなわち、高周波焼入れ後の硬化層に関し、その全厚にわたって旧オーステナイト粒径を12μm 以下とする必要がある。というのは、焼入れ硬化層の全厚にわたる粒径が12μm を超えると、十分な粒界強度が得られず、満足いくほどの疲労強度の向上が望めないからである。なお、好ましくは10μm 以下、さらに好ましくは5μm 以下である。
ここに、焼入れ硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径の測定は、次のようにして行う。
高周波焼入れ後の本発明の鋼材では、高周波焼入れした部分の鋼材最表層は面積率で 100%のマルテンサイト組織を有する。そして、表面から内部にいくに従い、ある深さまでは 100%マルテンサイト組織の領域が続くが、ある深さから急激にマルテンサイト組織の面積率が減少する。
本発明では、高周波焼入れした部分について、鋼材表面から、マルテンサイト組織の面積率が98%に減少するまでの深さ領域を硬化層と定義する。
そして、この硬化層について、表面から硬化層厚の 1/5位置、1/2 位置および4/5 位置それぞれの位置における平均旧オーステナイト粒径を測定し、いずれの平均旧オーステナイト粒径も12μm 以下である場合に、焼入れ硬化層の全厚にわたる旧オーステナイト粒径が12μm 以下であるとする。
なお、平均旧オーステナイト粒径の測定は、光学顕微鏡により、400 倍(1視野の面積:0.25mm×0.225 mm)から1000倍(1視野の面積:0.10mm×0.09mm)で、各位置毎に5視野観察し、画像解析装置により平均粒径を測定することにより行う。
さらに、本発明において、高周波焼入れ−焼戻し後の残留応力を−700MPa以下とする必要がある。この理由は、疲労強度には残留応力が大きく影響し、引張の残留応力、すなわち正(+)の応力が発生した場合、疲労強度は劣化する。圧縮の残留応力、すなわち負(−)の応力が発生した場合、疲労強度は向上する。圧縮残留応力の場合、−700MPa超でもそれなりの効果は得られるが、本発明のように740MPa以上というような非常に高い疲労強度を得ようとする場合には、−700MPa以下の高い圧縮残留応力が必要である。なお、-700MPa以下とは絶対値で700より大きいことを意味する。
さらに、本発明において、高周波焼入れによる硬化層厚みは2mm以上とすることが好適である。というのは、所望特性が転動疲労寿命のような極表層付近の組織のみに依存するような場合には、硬化層厚みが1mm程度でもそれなりの効果は得られるが、本発明のように疲労強度を問題とする場合には、硬化層厚みは厚いほど有利である。従って、より好ましい硬化層厚みは、2.5mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。
以下に、本発明の製造条件について説明する。
所定の成分組成に調整した鋼材を、棒鋼圧延または熱間鍛造後、必要に応じて冷間圧延、冷間鍛造または切削加工を施したのち、高周波焼入れを施して、製品とする。
本発明では、母材組織を、上述したベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10 vol%以上の組織とするために、高周波焼入れを施す前の素材鋼材については、圧延・鍛造等の熱間加工により所定の形状に加工したのち、0.2 ℃/s以上の速度で冷却する必要がある。というのは、冷却速度が0.2 ℃/s未満の場合には、ベイナイトあるいはマルテンサイト組織が得られ難くなり、これら組織の合計の組織分率が10 vol%に達しない場合が生じるからである。熱間加工後の冷却速度の好適範囲は 0.3〜30℃/sである。
なお、熱間加工は 900℃超〜1150℃の温度範囲で行うことが好ましい。900 ℃以下では、必要なベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織が得られず、一方1150℃超では加熱コストが大きくなるため、経済的に不利となるからである。
次に、本発明では、上述した硬化層を得るために高周波焼入れを施すが、この高周波焼入れ時の加熱温度範囲は 800〜1000℃とする必要がある。というのは、加熱温度が 800℃未満の場合、オーステナイト組織の生成が不十分となり、上述した硬化層組織の生成が不十分となる結果、十分な疲労強度を確保することができず、一方、加熱温度が1000℃超えの場合、オーステナイト粒の成長が促進されて粗大となり、硬化層の粒径が粗大となるため、やはり疲労強度の低下を招くからである。より好ましい加熱温度範囲は 800〜950 ℃である。
なお、上記の効果は、Moを本発明範囲で含有させた鋼において、より顕著に発現する。
ここで、図2に、Mo添加鋼(Mo:0.05〜0.6 mass%)とMo無添加鋼について、高周波焼入れ時の加熱温度と硬化層の旧オーステナイト粒径との関係について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、Mo添加鋼およびMo無添加鋼いずれにおいても、高周波焼入れ時の加熱温度を低下させることで硬化層の旧オーステナイト粒径を小さくできるが、Mo添加鋼においては、加熱温度を1000℃以下好ましくは 950℃以下とすることにより、特に顕著に硬化層粒径の微細化が達成される。
上記した高周波焼入れを複数回繰り返す場合には、少なくとも最終の高周波焼入れを、加熱温度:800 〜1000℃として行えばよい。さらに、高周波焼入れを複数回繰り返す場合には、全ての高周波焼入れについて、加熱温度:800 〜1000℃とすることが最も望ましい。そして、2回以上の繰り返し焼入れを行うことで、1回焼入れに比べてさらに微細な硬化層粒径を得ることができる。
なお、高周波焼入れを複数回繰り返す場合、少なくとも最終の高周波焼入れによる焼入れ深さは、それ以前の高周波焼入れによる焼入れ深さと同等またはそれ以上とすることが好ましい。というのは、硬化層の結晶粒径は、最後の高周波焼入れに一番強く影響されるので、最後の高周波焼入れによる焼入れ深さが、それ以前の高周波焼入れによる焼入れ深さよりも小さいと、硬化層全厚にわたる平均結晶粒径がむしろ大きくなり、かえって疲労強度が低下する傾向にあるからである。
さらに、高周波焼入れは、上記加熱温度範囲における加熱時間を5秒以下とすることが好ましい。というのは、加熱時間を5秒以下とした場合には、5秒を超える場合に比べて、オーステナイトの粒成長をさらに抑制することができ、非常に微細な硬化層粒径を得ることができる。より好ましい加熱時間は3秒以下である。
さらにまた、高周波焼入れ時の加熱速度および上記加熱時間で保持した後の降温速度が大きいと、オーステナイトの粒成長が生じ易くなるので、高周波焼入れ時の加熱速度および加熱保持後の降温速度は 200℃/s以上とすることが好ましい。より好ましくは 500℃/s以上である。
高周波焼入れに続いて焼戻しを施すが、本発明では、上述した表面残留応力を得るために焼戻し時の冷却速度を30℃/s以上とする必要がある。というのは、冷却速度が30℃/s未満の場合、冷却時の熱応力の発生が不十分となり、上述した表面残留応力の生成が不十分となる結果、十分な疲労強度を確保することができないからである。より好ましい冷却速度は50℃/s以上であり,さらに好ましい冷却速度は100℃/s以上である。
表1に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは 300×400mm であった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150 mm角ビレットに圧延したのち、24〜60mmφの棒鋼に圧延した。圧延の仕上温度はベイナイトあるいはマルテンサイト組織生成の観点から好適な温度として 900℃超とした。圧延後の冷却は表2に示す条件とした。
次いで、この棒鋼から、平行部:20mmφ、応力集中係数α=1.5 の切欠を有するねじり試験片を作製し、このねじり試験片に、周波数:15kHzの高周波焼入れ装置を用いて、加熱速度は 800℃/s、加熱保持後の降温速度は1000℃/sとして、表2に示す加熱温度および保持時間での焼入れを行った後、加熱炉あるいは高周波加熱装置を用いて、表2に示す条件で焼戻しを行い、その後ねじり疲労試験を行った。
残留応力の測定は、ねじり試験片の平行部(切欠部隣接位置)でX線残留応力測定装置を用いて行った。
ねじり疲労試験は、最大トルク:4900 N・m (= 500 kgf・m )のねじり疲労試験機を用いて、両振りで応力条件を変えて行い、1×105 回の寿命となる応力を疲労強度として評価した。
得られた結果を表2に併記する。
また、同じ条件で作製したねじり試験片について、鋼材の母材組織、焼入れ後の硬化層厚み、硬化層の全厚にわたって得られる平均硬化層粒径(旧オーステナイト粒径)を、光学顕微鏡を用いて測定した。
表2には、これらの結果も併記する。
ここで、硬化層厚みについては、前述したように、鋼材表面からマルテンサイト組織の面積率が98%に減少する深さまでとした。また、高周波焼入れを複数回実施したものについては、それぞれの焼入れ後の硬化層厚みを測定した。さらに、硬化層粒径については、表面から硬化層厚の 1/5位置、1/2 位置および4/5 位置それぞれの位置における平均旧オーステナイト粒径を測定し、それらの最大値を示した。なお、硬化層粒径の測定は、硬化層の厚さ方向に切断した断面について、水:500 gに対しピクリン酸:50gを溶解させたピクリン酸水溶液に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:11g、塩化第1鉄:1gおよびシュウ酸:1.5 gを添加したものを腐食液として作用させ、旧オーステナイト粒界を現出させて行った。また、高周波焼入れを複数回実施したものについては、最終焼入れ後の平均旧オーステナイト粒径を測定した。
Figure 2007321190
Figure 2007321190
Figure 2007321190
Figure 2007321190
表2から明らかなように、本発明で規定した成分組成範囲を満足し、かつ本発明の高周波焼入れ条件並びに焼戻し条件を満たして製造した鋼材はいずれも、硬化層の旧オーステナイト粒径が全厚にわたって12μm 以下を満たしており、その結果 700 MPa以上の高いねじり疲労強度を得ることができた。
なお、表2中のNo.1と2を比較すると、焼入れ回数を1回から2回に増やすことで、硬化層の粒径が微細化し、ねじり疲労強度がさらに上昇することが分かる。
また、No.7、No.35およびNo.36を比較すると、焼入れ回数を1回から2回に増やした場合において、2回目の焼入れ深さの方が浅い場合(No.35)には、1回しか施さなかった場合よりもねじり疲労強度はむしろ低下するのに対し、2回目の焼入れ深さを深くした場合(No.36)には、1回しか施さなかった場合に比べてねじり疲労強度は大幅に向上した。No.36では、硬化層厚方向で、表面から硬化層厚の 4/5位置で最も旧オーステナイト粒径が大きく、3.5μmであったが、表層近傍(表面から硬化層厚の1/5位置)では旧オーステナイト粒径は 2.6μmであり、表層の粒径が微細化していることが、疲労強度の向上に寄与したものと考えられる。
No.37〜46は、Al量がより好ましい範囲(0.05〜0.1 mass%)にあるものであるが、これらはいずれも粒径がより細かくなり、疲労強度も向上している。
これに対し、No.10は、加工後の冷却速度が小さいため、ベイナイトとマルテンサイトの合計組織分率が10%未満となっており、その結果、硬化層粒径が粗大となり、ねじり疲労強度が低い。
No.23は、硬化層粒径は微細であるものの、C含有量が本発明の範囲より高いため、粒界強度の低下を招き、そのためねじり疲労強度が劣っている。
No.24、25および26は、それぞれC、SiおよびMoの含有量が本発明の適正範囲よりも低いため、硬化層粒径が粗大となり、ねじり疲労強度が劣っている。
No.27はB含有量が低く、またNo.28はMn含有量が、No.29はSおよびP含有量が、No.30はCr含有量が、それぞれ本発明の適正範囲を超えているため、いずれも粒界強度の低下を招き、ねじり疲労強度が劣っている。
No.31は、Ti含有量が本発明の適正範囲を超えているため、ねじり疲労強度が劣っており、逆にNo.34はTi含有量が低いため、硬化層粒径が粗大となり、ねじり疲労強度が劣っている。
No.32は、高周波焼入れ時の加熱温度が高すぎるため硬化層の粒径が粗大となり、一方No.33は、高周波焼入れ時の加熱温度が低すぎるため硬化層が形成されず、いずれもねじり疲労強度に劣っている。
No.51〜52は、Moを含有しない鋼の場合であるが、それぞれNo.5、3との比較から明らかなように、加熱温度が1000℃以下でMoによる細粒化効果が顕著になることが分かる。
No.4、No.8は、それぞれNo.3、No.7に対して焼戻し時冷却速度を小さくした例であるが、残留応力が-700MPa超になってしまっており、ねじり疲労強度が低下している。
なお、上記の実施例では、疲労特性として主にねじり疲労特性を例に挙げて説明したが、本発明によれば、他の疲労特性、すなわち曲げ疲労特性、転動疲労特性およびすべり転動疲労特性等のような旧オーステナイト粒界での破壊、亀裂進転が関与する疲労特性についても、同様な優れた効果を得られることは言うまでもない。
鋼中のベイナイト組織分率およびマルテンサイト組織分率が被削性および高強度化に及ぼす影響を示したグラフである。 Mo添加鋼(Mo:0.05〜0.6 mass%)とMo無添加鋼について、高周波焼入れ時の加熱温度が硬化層の旧オーステナイト粒径に及ぼす影響を示したグラフである。

Claims (9)

  1. C:0.35〜0.7 mass%、
    Si:0.30〜1.1 mass%、
    Mn:0.2 〜2.0 mass%、
    Al:0.005 〜0.25mass%、
    Ti:0.005 〜0.1 mass%、
    Mo:0.05〜0.6 mass%、
    B:0.0003〜0.006 mass%、
    S:0.06mass%以下、
    P:0.02mass%以下および
    Cr:0.2 mass%以下
    をTi(mass%)/N(mass%)≧3.42の下に含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、母材組織が、ベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織を有し、かつこれらベイナイト組織とマルテンサイト組織の合計の組織分率が10%以上であり、さらに高周波焼入れ後の硬化層の旧オーステナイト粒径が硬化層全厚にわたり12μm 以下であり、高周波焼入れ・焼きもどし後の表面残留応力が−700MPa以下であることを特徴とする疲労特性に優れた鋼材。
  2. 請求項1において、高周波焼入れ後の硬化層厚みが2mm以上である疲労特性に優れた鋼材。
  3. 請求項1または2において、前記鋼材が、さらに
    Cu:1.0 mass%以下、
    Ni:3.5 mass%以下、
    Co:1.0 mass%以下、
    Nb:0.1 mass%以下および
    V:0.5 mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になる疲労特性に優れた鋼材。
  4. C:0.35〜0.7 mass%、
    Si:0.30〜1.1 mass%、
    Mn:0.2 〜2.0 mass%、
    Al:0.005 〜0.25mass%、
    Ti:0.005 〜0.1 mass%、
    Mo:0.05〜0.6 mass%、
    B:0.0003〜0.006 mass%、
    S:0.06mass%以下、
    P:0.02mass%以下および
    Cr:0.2 mass%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼素材を、熱間加工し、その後0.2 ℃/s以上の速度で冷却したのち、加熱温度:800 〜1000℃の条件下で高周波焼入れを行い、さらに冷却速度:30℃/s以上の条件下で焼戻しを行うことを特徴とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  5. 請求項4において、前記鋼素材が、さらに
    Cu:1.0 mass%以下、
    Ni:3.5 mass%以下、
    Co:1.0 mass%以下、
    Nb:0.1 mass%以下および
    V:0.5 mass%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  6. 請求項4または5において、前記冷却後に、高周波焼入れを複数回繰り返し、最終の高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  7. 請求項6において、前記複数回の高周波焼入れの全てについて、高周波焼入れ時の加熱温度を 800〜1000℃とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  8. 請求項4ないし7のいずれかにおいて、前記加熱温度範囲での加熱時間を、1回の高周波焼入れ当たり5秒以下とする疲労特性に優れた鋼材の製造方法。
  9. 請求項4ないし8のいずれかにおいて、高周波焼入れによる鋼材表面の硬化層厚みが2mm以上である疲労特性に優れた鋼材の製造方法。

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