まず、本実施例に係る電子手形運用システムの概要について説明する。本実施例に係る電子手形運用システムは、複数の電子手形運用装置をネットワークで接続して構成される。電子手形運用装置は、電子手形を運用するための各種処理を実現するサーバ装置であり、例えば、金融機関ごとに設置される。
このように複数の電子手形運用装置をネットワーク接続して電子手形運用システムを構成することにより、電子手形の運用に係る負荷が分散され、国内全ての金融機関で通用する電子手形を実現することができる。
また、本実施例に係る電子手形運用システムにおいては、ICカードを用いて電子手形を流通させる。手形を単に電子化しただけでは、なりすまし等によって、正規の所有者でない者が容易に手形を換金できてしまう。そこで、電子署名技術等を用いて手形の識別情報等を安全に記憶させたICカードを手形ごとに用意し、これを所有することを正規の所有者とみなす条件の一つとすることにより、なりすまし等の不正行為を防止する。
なお、本実施例では、手形の識別情報等を記憶させる媒体がICカードであることを前提として説明を行うが、手形の識別情報等を記憶させる媒体は、必ずしもICカードである必要はなく、他の携帯可能な記憶媒体であってもよい。
以下、本実施例に係る電子手形運用システムについて図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る電子手形運用システムの構成を示す図である。同図に示した電子手形運用システムは、A銀行101〜M銀行10mをネットワーク1で接続して構成されている。ネットワーク1は、例えば、インターネットや金融業界向けのVAN(Value Added Network)である。
A銀行101においては、電子手形運用装置100と、電子手形店舗端末2001〜200nとがネットワーク2により接続されている。そして、ネットワーク2は、ゲートウェイ装置(G/W)300を介してネットワーク1と接続されている。
電子手形運用装置100は、電子手形を運用するための各種処理を実現するサーバ装置であり、A銀行が所有するマシンルーム等に設置される。電子手形店舗端末2001〜200nは、顧客の依頼に従って行員等が電子手形に係る各種処理のための操作を行う装置であり、ICカードの情報を読み書きするためのリーダライタを備え、A銀行の本店および支店に設置される。ゲートウェイ装置300は、ネットワーク1とネットワーク2を接続し、不正アクセス等の監視を行う装置である。
B銀行102〜M銀行10mの内部もA銀行101と同様の構成になっている。そして、ネットワーク1には認証局20とゲートウェイ装置30も接続されている。認証局20は、電子署名における電子証明書の認証等を担当する機関である。ゲートウェイ装置30は、電子手形顧客端末5001〜500kが無線通信等を通じてネットワーク1へアクセスするための中継装置である。
電子手形顧客端末5001〜500kは、電子手形の利用者が電子手形の内容や状態等を照会するための装置であり、ICカードの情報を読み書きするためのリーダライタを備える。電子手形顧客端末5001〜500kは、無線通信やインターネット等の通信手段により、ゲートウェイ装置30を介してネットワーク1へアクセスし、電子手形運用装置100等に対して問合せを行う。
図2は、電子手形が振出されてから取立依頼がされるまでの処理の流れを示す図である。a社は、b社から原材料の納品を受け(ステップS101)、代金の支払いのために、b社を受取人とする手形の振出しをA銀行へ依頼する(ステップS102)。
依頼を受けたA銀行では、行員が電子手形店舗端末2001を操作して手形の振出しに必要な情報を電子手形運用装置100へ送信し、電子手形の振出しを登録するように依頼する。この依頼を受けた電子手形運用装置100は、手形番号を採番し、送信された情報と手形番号を対応付けて手形振出テーブル121に登録する。そして、採番した手形番号を電子手形店舗端末2001へ応答する(ステップS103)。
電子手形店舗端末2001は、手形番号を応答されると、少なくともこの手形番号を含む手形情報410を電子署名し、電子署名を検証するための電子証明書420とともにICカード400に書き込む(ステップS104)。以上で、電子手形の振出しのための処理は完了し、ICカード400は、受取人であるb社へ送付される(ステップS105)。
ICカード400を受け取ったb社は、電子手形の支払期日が近づくと、B銀行へICカード400を渡して取立てを依頼する(ステップS106)。依頼を受けたB銀行では、行員が電子手形店舗端末201を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う(ステップS107)。
このように電子署名の検証を行うことにより、手形情報410が偽造されたものではないことを確認することができる。従来の紙による手形の運用においては、偽造された手形を判別することは困難であったが、本実施例に係る電子手形においては容易に偽造を検出することができる。
ただし、電子署名の検証だけでは、取立依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することはできない。そこで、ICカード400にPIN(Personal Identification Number)認証機能をもたせ、これを利用することとしてもよい。
具体的には、A銀行においてICカード400に手形情報410を書き込む際に、乱数等を用いて新たに生成したPIN番号をICカード400に設定し、このPIN番号を印字した紙をb社へ送付する。そして、b社の担当者がB銀行にてICカード400を示して取立依頼を行う場合に、このPIN番号を電子手形店舗端末201に入力し、ICカード400に設定されているPIN番号と一致することの確認を受ける。これにより、例えば、ICカード400を拾得した者がb社の担当者になりすまして取立てや割引の依頼を行うことを防止することができる。
取立依頼の処理の流れの説明に戻って、B銀行の行員は、手形情報410の検証を行った後、電子手形店舗端末201を操作して、手形情報410に含まれていた情報と依頼人であるb社の情報とを自行の電子手形運用装置101へ送信し、取立依頼の登録を依頼する(ステップS108)。
この依頼を受けた電子手形運用装置101は、手形情報410に含まれていた手形番号を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置100は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する(ステップS109)。
応答を受けた電子手形運用装置101は、応答された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。そして、一致が確認された場合は、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末201へ応答する。一致が確認されなかった場合は、依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末201へ応答する(ステップS110)。
このように取立依頼を受け付ける際に、電子署名の検証に加えて、振出金融機関に電子手形の内容を問い合わせ、ICカードに記憶されていた手形情報410と照合することにより、手形情報410が偽造されていないことをさらに厳重に確認することができる。
上記の処理の結果、b社の取立依頼がB銀行に受け付けられた場合、手形の支払期日が到来すると、B銀行からA銀行に決済の依頼が行われ、手形金額が、a社がもつA銀行の口座からb社がもつB銀行の口座へ移動することになる。
図3は、電子手形が裏書譲渡される場合の処理の流れを示す図である。裏書譲渡とは、手形の所持人を変更する取引を意味する。ステップS201〜205までの処理の流れは、図2に示したステップS101〜105までの処理の流れと同一であるので説明を省略する。
ICカード400を受け取ったb社は、電子手形の所持人をc社へ変更するため、B銀行へICカード400を渡して裏書処理を依頼する(ステップS206)。依頼を受けたB銀行では、行員が電子手形店舗端末201を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う(ステップS207)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、B銀行の行員は、手形情報410の検証を行った後、電子手形店舗端末201を操作して、手形情報410に含まれていた情報と新たな所持人の情報を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、所持人の変更の登録を依頼する。
この依頼を受けた電子手形運用装置100は、手形情報410に含まれていた手形番号に対応する情報を手形振出テーブル121から検索し、検索された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。そして、一致が確認された場合は、所持人の変更を裏書履歴テーブル123に登録し、依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末201へ応答する。一致が確認されなかった場合は、依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末201へ応答する(ステップS208)。
このようにして、裏書履歴テーブル123には、電子手形の裏書譲渡が行われるたびに裏書人と被裏書人の情報が対象の電子手形と対応付けられて登録されていく。
そして、依頼が受け付けられた場合、ICカード400は、新たな所持人であるc社に送付される(ステップS209)。そして、ICカード400を受け取ったc社は、電子手形の支払期日が近づくと、C銀行へICカード400を渡して取立てを依頼する(ステップS210)。
依頼を受けたC銀行では、行員が電子手形店舗端末202を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う(ステップS211)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、C銀行の行員は、手形情報410の検証を行った後、電子手形店舗端末202を操作して、手形情報410に含まれていた情報と依頼人であるc社の情報とを自行の電子手形運用装置102へ送信し、取立依頼の登録を依頼する(ステップS212)。
この依頼を受けた電子手形運用装置102は、手形情報410に含まれていた手形番号を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置100は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する。このとき、電子手形運用装置100は、裏書履歴テーブル123も検索し、当該の電子手形の最終の被裏書人がc社である旨を示す情報を応答に含める(ステップS213)。
応答を受けた電子手形運用装置102は、応答された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。ここで、電子手形運用装置102は、応答された情報に含まれていた最終の被裏書人と電子手形店舗端末202から送信された依頼人の情報が一致することも確認する。そして、一致が確認された場合は、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末202へ応答する。一致が確認されなかった場合は、依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末202へ応答する(ステップS214)。
なお、従来の手形の運用においては、金融機関に依頼することなく手形の裏書譲渡を行うことができていた。電子手形を利用する場合においても、同様の運用を実現することができる。金融機関に依頼することなく手形の裏書譲渡を行う場合の処理の流れを図4に示す。
ステップS301〜305までの処理の流れは、図2に示したステップS101〜105までの処理の流れと同一であるので説明を省略する。
ICカード400を受け取ったb社の担当者は、電子手形の所持人をc社へ変更するため、電子手形顧客端末5001を操作して、b社が裏書人でありc社が被裏書人である旨を示す裏書情報430をICカード400に追記する。そして、手形情報410と裏書情報430を連結した情報に対して電子署名し、電子署名を検証するための電子証明書440をICカード400に追記する(ステップS306)。
ここで、手形情報410と裏書情報430を連結した情報に対して電子署名を施しているのは、手形情報410と裏書情報430の組合せが改竄されることを防止するためである。裏書情報430のみに電子署名を施したのでは、手形情報410と電子証明書420を他の電子手形のものと置換されても、それを検出することができない。
このようにして、ICカード400には、電子手形の裏書譲渡が行われるたびに裏書情報430と電子証明書440の組合せが追記されていく。
そして、ICカード400は、新たな所持人であるc社に送付される(ステップS307)。そして、ICカード400を受け取ったc社は、電子手形の支払期日が近づくと、C銀行へICカード400を渡して取立てを依頼する(ステップS308)。
依頼を受けたC銀行では、行員が電子手形店舗端末202を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う。さらに、裏書情報430と電子証明書440を読み出し、電子証明書440を用いて、手形情報410と裏書情報430を連結した情報の電子署名の検証を行い、c社が当該の電子手形の所持人であることを確認する(ステップS309)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、C銀行の行員は、電子手形店舗端末202を操作して、手形情報410に含まれていた情報と依頼人であるc社の情報とを自行の電子手形運用装置102へ送信し、取立依頼の登録を依頼する(ステップS310)。
この依頼を受けた電子手形運用装置102は、手形情報410に含まれていた手形番号を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置100は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する(ステップS311)。
応答を受けた電子手形運用装置102は、応答された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。そして、一致が確認された場合は、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末202へ応答する。一致が確認されなかった場合は、依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末202へ応答する(ステップS312)。
図5は、電子手形が割引される場合の処理の流れを示す図である。割引とは、支払期日前に手形を資金化する取引を意味する。ステップS401〜405までの処理の流れは、図2に示したステップS101〜105までの処理の流れと同一であるので説明を省略する。
ICカード400を受け取ったb社は、電子手形を資金化するため、B銀行へICカード400を渡して割引処理を依頼する(ステップS406)。依頼を受けたB銀行では、行員が電子手形店舗端末201を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う(ステップS407)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、B銀行の行員は、手形情報410の検証を行った後、電子手形店舗端末201を操作して、手形情報410に含まれていた情報と依頼人であるb社の情報とを自行の電子手形運用装置101へ送信し、割引処理の実行を依頼する(ステップS408)。
この依頼を受けた電子手形運用装置101は、手形情報410に含まれていた手形番号を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置100は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する(ステップS409)。
応答を受けた電子手形運用装置101は、応答された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。ここで、一致が確認されなかった場合は、電子手形運用装置101は、割引依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末201へ応答する。
一方、一致が確認された場合、電子手形運用装置101は、B銀行を当該の電子手形の所持人とするための裏書処理の実行を依頼する(ステップS410)。そして、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、割引金額を算出して割引処理に係る情報を手形割引テーブル124に登録した後、割引依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末201へ応答する(ステップS411)。
そして、電子手形運用装置101によって割引依頼が受け付けられた場合、B銀行からb社に対して割引金額を差し引いた手形金額が支払われる(ステップS412)。
このように、本実施例に係る電子手形運用システムは、従来の手形が備えていた裏書や割引といった機能を損なうことなく手形の電子化を実現することができ、さらに、手形の安全性を向上させることができる。また、本実施例に係る電子手形運用システムは、従来の手形が備えていなかった機能を実現することもできる。以下に、一例を示す。
図6は、電子手形が移管・分割される場合の処理の流れを示す図である。甲社によって振出された手形Xを乙社が丙社へ裏書譲渡しようとした場合、甲社の信用が低いことを理由に丙社から受け取りを拒否されることがある。このような場合、手形Xの支払義務を自社が負うことを条件にして、乙社が手形Xを銀行に裏書譲渡し、これと引き換えに乙社を振出人とする新たな手形Yの振出しを銀行から受けることができれば、この新たな手形Yを丙社へ譲渡することが可能になる。
このように、手形の支払義務を自社が負うことを条件にして、その手形を金融機関に裏書譲渡し、これと引き換えに新たな手形の振出しを受ける取引を本明細書では移管と呼ぶこととする。また、金融機関に移管を依頼する場合に、当初の手形の金額を割り振って複数の手形の振出しを受けることも可能であり、この取引を本明細書では分割と呼ぶこととする。
移管および分割は、金融機関にとっては、手数料収入の機会が増加するという利点がある。また、依頼する企業等にとっては、振出人等に問題のある手形を自社を振出人とする新たな手形に置き換えることにより、他社との取引を円滑に進めることができ、また、手形の支払期日が実質的に延長されることになるため、資金計画に余裕が生まれるという利点がある。
図6におけるステップS501〜505までの処理の流れは、図2に示したステップS101〜105までの処理の流れと同一であるので説明を省略する。
ICカード400を受け取ったb社は、c社から原材料の納品を受け(ステップS506)、代金の支払いのために、B銀行へICカード400を渡して移管処理を依頼する(ステップS507)。依頼を受けたB銀行では、行員が電子手形店舗端末201を操作してICカード400から手形情報410と電子証明書420を読み出し、電子証明書420を用いて手形情報410の電子署名の検証を行う(ステップS508)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、B銀行の行員は、手形情報410の検証を行った後、電子手形店舗端末201を操作して、手形情報410に含まれていた情報と、依頼人であるb社の情報と、新たな手形の受取人であるc社の情報とを自行の電子手形運用装置101へ送信し、移管処理の実行を依頼する(ステップS509)。
この依頼を受けた電子手形運用装置101は、手形情報410に含まれていた手形番号を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置100は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する(ステップS510)。
応答を受けた電子手形運用装置101は、応答された情報と手形情報410に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。ここで、一致が確認されなかった場合は、電子手形運用装置101は、移管依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末201へ応答する。
一方、一致が確認された場合、電子手形運用装置101は、B銀行を当該の電子手形の所持人とするための裏書処理の実行を電子手形運用装置100に依頼する(ステップS511)。そして、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、さらに、新たな手形の振出しを行うために、手形番号を採番し、送信された情報と手形番号を対応付けて手形振出テーブル121に登録し、依頼前後の手形の対応を手形移管テーブル125に登録する。そして、採番した手形番号を電子手形店舗端末201へ応答する(ステップS512)。
そして、電子手形運用装置101から手形番号が応答された場合、電子手形店舗端末201は、少なくともこの手形番号を含む手形情報411を電子署名し、電子署名を検証するための電子証明書421とともにICカード401に書き込む(ステップS513)。以上で、移管処理は完了し、新たに振り出された電子手形に対応するICカード401は、受取人であるc社へ送付される(ステップS514)。
なお、上記の処理は移管の場合、すなわち、移管前後の電子手形が1対1で対応する場合であるが、分割の場合、すなわち、移管後の手形が複数存在する場合は、電子手形運用装置101における手形番号の採番と、手形振出テーブル121および手形移管テーブル125への情報登録は、移管後の手形の件数分だけ行われ、それぞれの電子手形に対応した手形情報等がICカードに個別に書き込まれる。
ICカード401を受け取ったc社は、電子手形の支払期日が近づくと、C銀行へICカード401を渡して取立てを依頼する(ステップS515)。依頼を受けたC銀行では、行員が電子手形店舗端末202を操作してICカード401から手形情報411と電子証明書421を読み出し、電子証明書421を用いて手形情報411の電子署名の検証を行う(ステップS516)。なお、ここで、PIN認証等を用いて、依頼者が当該の電子手形の正当な所持人であることを確認することとしてもよい。
そして、C銀行の行員は、手形情報411の検証を行った後、電子手形店舗端末202を操作して、手形情報411に含まれていた情報と依頼人であるc社の情報とを自行の電子手形運用装置102へ送信し、取立依頼の登録を依頼する(ステップS517)。
この依頼を受けた電子手形運用装置102は、手形情報411に含まれていた手形番号を振出金融機関であるB銀行の電子手形運用装置101へ送信し、この手形番号に対応する電子手形の情報を送信するように依頼する。そして、電子手形運用装置101は、手形振出テーブル121から該当する情報を検索して応答する(ステップS518)。
応答を受けた電子手形運用装置102は、応答された情報と手形情報411に含まれていた情報とを照合し、内容が一致することを確認する。そして、一致が確認された場合は、取立処理に必要な情報を手形取立テーブル122に登録し、依頼を受け付けた旨を電子手形店舗端末202へ応答する。一致が確認されなかった場合は、依頼を拒絶する旨を電子手形店舗端末202へ応答する(ステップS519)。
これまで、電子手形の支払期日が到来する前の処理について説明してきたが、電子手形の支払期日が到来した後は、振出金融機関に手形金額を請求し、送金された金額を所持人の口座に入金する処理等を行う必要がある。この処理は金融機関間で相互に行われることになるため、相殺処理と呼ばれる。
電子手形の相殺処理は、例えば、BANCS(BANks Cash Service)のような既存のオンライン提携ネットワーク網を利用して実現することができる。図7は、電子手形の相殺処理の流れを示す図である。同図は、B銀行が取立依頼を受け付けた電子手形の手形金額を振出金融機関であるA銀行に請求する場合の処理の流れを示している。
B銀行の電子手形運用装置101は、手形取立テーブル122を検索し、支払期日が到来した電子手形が存在することを認識すると、当該の電子手形の手形金額の送金を振出金融機関であるA銀行の電子手形運用装置100に依頼する(ステップS601)。
依頼を受けた電子手形運用装置100は、手形発行テーブル121を検索し、送金を依頼された電子手形に対する請求がまだ行われていないことを確認した後、振出人の口座から手形金額を引き落とし、オンライン提携ネットワーク網を通じてB銀行に送金し、その旨を応答する。そして、手形発行テーブル121に当該の電子手形の取引が完了した旨を記録する(ステップS602)。
そして、応答を受けた電子手形運用装置101は、手形金額を当該の電子手形の所持人の口座に入金し、手形取立テーブル122に当該の電子手形の取引が完了した旨を記録する。なお、振出人の口座が残高不足であった場合、電子手形運用装置100は、その旨を電子手形運用装置101へ応答し、手形金額の送信を行わない。そして、電子手形運用装置101は、手形取立テーブル122に当該の電子手形が不渡りとなった旨を記録する。
従来、手形の相殺処理は、手形交換所を介して金融機関間で紙の手形を交換し合う形で実施されていた。そのため、手形の支払期日が到来しても取立依頼された金融機関が手形金額を受け取るまでに数日を要していた。手形を電子化し、オンラインで相殺処理を行うことにより、金融機関は、取立依頼された手形の支払期日が到来した後、速やかに手形金額を受け取ることが可能になる。
ただし、上記のように、電子手形の相殺処理にともなう手形金額のやりとりを電子手形ごとに行った場合、オンライン提携ネットワーク網の負荷が増大する可能性がある。そこで、各金融機関において振出金融機関ごとに請求する手形金額を取りまとめ、この情報を交換し合って請求金額の差分のみをやりとりする運用とすることもできる。この場合における処理の流れを図8に示す。
なお、図8においては、A銀行とB銀行の間で相殺処理を行う場合の例が図示されているが、この方式では、多数の銀行間で相殺処理を実施することが可能である。
A銀行の電子手形運用装置100は、自身の手形取立テーブル122から支払期日が到来した電子手形の情報を抽出し、振出金融機関ごとに手形金額を集計した結果と、各電子手形の明細情報を相殺センタ40へ送信する。そして、B銀行の電子手形運用装置101も、自身の手形取立テーブル122から支払期日が到来した電子手形の情報を抽出し、振出金融機関ごとに手形金額を集計した結果と、各電子手形の明細情報を相殺センタ40へ送信する(ステップS701)。
そして、相殺センタ40は、全ての金融機関から情報が送信された後、金融機関の組合せごとに請求金額の差額を求め、その差額を請求金額が大きかった金融機関から請求金額が小さかった金融機関への請求金額とする。そして、各金融機関から送信された電子手形の明細情報を振出金融機関ごとに編成し直し、該当する金融機関へ請求金額の差額情報とともに送信する(ステップS702)。
相殺センタ40から請求金額の差額情報を受信したA銀行の電子手形運用装置100は、この情報に従って金融機関ごとに請求金額を送金する。同様に、B銀行の電子手形運用装置101も、受信した差額情報に従って金融機関ごとに請求金額を送金する。
その後、A銀行の電子手形運用装置100は、相殺センタ40から送信された電子手形の明細情報と手形発行テーブル121の情報とを照合しながら、振出人の口座から手形金額を引き落としていく。同様に、B銀行の電子手形運用装置101も、振出人の口座から手形金額を引き落としていく。
ここで、例えば、A銀行にて振出されB銀行にて取立依頼された電子手形の振出人の口座残高が不足していた場合、電子手形運用装置100は、B銀行の電子手形運用装置101へその旨を通知し(ステップS703)、電子手形運用装置101は、該当する電子手形の手形金額をA銀行へ返金する(ステップS704)。
次に、本実施例に係る電子手形運用装置の構成について説明する。ここでは、電子手形運用装置100の構成について説明するが、電子手形運用装置101および102も同様の構成を有する。
図9は、電子手形運用装置100の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、電子手形運用装置100は、制御部110と、記憶部120と、ネットワークインターフェース部130とを有する。ネットワークインターフェース部130は、ネットワークを介して各種情報をやりとりするためのインターフェース部である。
制御部110は、電子手形運用装置100を全体制御する制御部であり、手形振出部111と、手形取立受付部112と、手形裏書部113と、手形割引部114と、手形移管部115と、手形検証部116と、手形情報問合せ部117と、問合せ対応部118と、手形相殺部119とを有する。
手形振出部111は、電子手形店舗端末2001〜200nの依頼を受けて電子手形の振出処理を実行する処理部である。具体的には、手形番号を採番し、電子手形店舗端末2001〜200nから送信された振出人、期日、金額等の情報とともに記憶部120の手形振出テーブル121へ登録した後、手形番号を依頼元へ応答する処理を行う。
手形取立受付部112は、電子手形店舗端末2001〜200nの依頼を受けて電子手形の取立受付処理を実行する処理部である。具体的には、電子手形店舗端末2001〜200nから送信された手形番号等を手形検証部116へ引き渡して検証させ、電子手形が正規のものであることを確認した後、取立てに必要な情報を記憶部120の手形取立テーブル122へ登録する処理を行う。
手形裏書部113は、電子手形店舗端末2001〜200n、もしくは、電子手形運用装置101等の他の電子手形運用装置の依頼を受けて電子手形の所持人の変更を登録する処理部である。具体的には、所持人の変更を依頼された電子手形の手形番号等を手形検証部116へ引き渡して検証させ、電子手形が正規のものであることを確認した後、所持人の変更を示す情報を記憶部120の裏書履歴テーブル123へ登録する処理を行う。
手形割引部114は、電子手形店舗端末2001〜200nの依頼を受けて電子手形の割引処理を実行する処理部である。具体的には、電子手形店舗端末2001〜200nから送信された手形番号等を手形検証部116へ引き渡して検証させ、電子手形が正規のものであることを確認した後、振出金融機関の電子手形運用装置に対して自行を当該の電子手形の所持人とするように裏書を依頼する。
そして、取立てに必要な情報を記憶部120の手形取立テーブル122へ登録し、割引金額の算出を行ってその結果を記憶部120の手形割引テーブル124へ登録し、算出した割引金額を依頼元へ応答する。なお、割引金額の算出は、電子手形運用装置100でなく、電子手形店舗端末2001〜200nで行うこととしてもよい。
手形移管部115は、電子手形店舗端末2001〜200nの依頼を受けて電子手形の移管・分割処理を実行する処理部である。具体的には、電子手形店舗端末2001〜200nから送信された手形番号等を手形検証部116へ引き渡して検証させ、電子手形が正規のものであることを確認した後、振出金融機関の電子手形運用装置に対して自行を当該の電子手形の所持人とするように裏書を依頼する。
そして、移管前の電子手形の取立てに必要な情報を記憶部120の手形取立テーブル122へ登録した後、手形番号を採番し、これを振出人等の情報とともに手形振出テーブル121へ登録し、移管前後の手形の対応を示す情報を記憶部120の手形移管テーブル125へ登録する処理を新たに振出す電子手形ごとに実行する。そして、採番した手形番号を受取人と対応付けて依頼元へ応答する。
手形検証部116は、引き渡された情報を正規の電子手形の情報と比較し、内容が一致するか否かを検証する処理部である。手形検証部116は、引き渡された情報に含まれる手形番号が当該の電子手形運用装置にて管理されている電子手形のものである場合は、記憶部120の手形振出テーブルから該当する電子手形の情報を読み出して比較を行う。
一方、引き渡された情報に含まれる手形番号が他の電子手形運用装置にて管理されている電子手形のものである場合は、手形検証部116は、手形情報問合せ部117に依頼してその電子手形運用装置から該当する電子手形の情報を送信させる。
また、手形検証部116は、引き渡された情報に含まれる手形番号に対応する電子手形が裏書譲渡されている場合には、最新の所持人を考慮して比較を行う。
手形情報問合せ部117は、手形検証部116の依頼に基づいて他の電子手形運用装置から電子手形の情報を送信させる処理部である。問合せ対応部118は、他の電子手形運用装置の手形情報問合せ部117からの依頼に対応して、手形振出テーブル121から該当する電子手形の情報を検索して応答する処理部である。問合せ対応部118は、検索した電子手形に対応する情報が裏書履歴テーブル123に存在する場合は、最新のレコードの被裏書人の情報を当該の電子手形の最新の所持人として応答に含める。
手形相殺部119は、支払期日が到来した電子手形の手形金額の請求と送金等を実行することにより相殺処理を実現する処理部である。手形相殺部119の処理の詳細については後述する。
記憶部120は、各種情報を記憶する記憶部であり、手形振出テーブル121と、手形取立テーブル122と、裏書履歴テーブル123と、手形割引テーブル124と、手形移管テーブル125とを記憶する。
手形振出テーブル121は、当該の電子手形運用装置にて振出処理された電子手形の情報が登録されるテーブルである。手形振出テーブル121の一例を図10に示す。同図に示すように、手形振出テーブル121は、手形番号、手形金額、振出日、期日、口座番号、振出人名称、受取人名称、状態コード、取立銀行の銀行番号および支店番号、取立日といった項目を有し、電子手形ごとにレコードが登録される。
手形番号は、電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。手形金額は、支払期日後に電子手形の所持人が資金化できる金額である。振出日は、電子手形が振出された日であり、期日は、電子手形を満額で資金化できるようになる支払期日である。
口座番号は、電子手形の振出人が当該の銀行に開設している口座の番号である。この口座番号は、支払期日以降に手形金額が請求された場合にその金額を引き落とすために利用される。振出人名称は、電子手形の振出人の名称であり、受取人名称は、電子手形の受取人の名称である。
状態コードは、電子手形の状態を示すコードであり、「未請求」、「完了」もしくは「引落不能」のいずれかの値をとる。「未請求」は、この項目の初期値であり、当該の電子手形の決済がまだ行われていないことを示す。「完了」は、当該の電子手形の決済が正常に完了していることを示し、「引落不能」は、残高不足等により決済を正常に行うことができなかったことを示す。
取立銀行の銀行番号および支店番号は、それぞれ、当該の電子手形の決済を請求した銀行の銀行番号と支店番号であり、取立日は、決済が請求された日である。これらの項目は、決済が請求されるまでは値が設定されない。
手形取立テーブル122は、当該の電子手形運用装置にて取立受付処理、割引処理もしくは移管・分割処理が実行された電子手形の情報が登録されるテーブルである。手形取立テーブル122の一例を図11に示す。同図に示すように、手形取立テーブル122は、手形番号、手形金額、振出日、期日、振出人名称、依頼人名称、口座番号、依頼区分、状態コード、取立銀行の銀行番号および支店番号、取立日といった項目を有し、電子手形ごとにレコードが登録される。
手形番号は、電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。手形金額は、支払期日後に振出金融機関に請求する金額である。振出日は、電子手形が振出された日であり、期日は、振出金融機関に電子手形の決済を請求する期日である。振出人名称は、電子手形の振出人の名称である。手形番号〜振出人名称には、振出金融機関の電子手形運用装置において手形振出テーブル121に登録されている当該の電子手形の同名の項目と同じ値が登録される。
依頼人名称は、取立等を依頼した依頼人の名称である。口座番号は、電子手形の決済後に手形金額を入金する口座の番号である。この口座番号には、当該のレコードが取立受付処理によって登録されたものである場合には、依頼人の口座番号が設定され、当該のレコードが割引処理もしくは移管・分割処理によって登録されたものである場合には、当該の銀行自身の口座番号が設定される。
依頼区分は、当該のレコードがいずれの処理によって登録されたものであるかを示すコードであり、「取立」、「割引」もしくは「移管」のいずれかの値をとる。状態コードは、電子手形の状態を示すコードであり、「未請求」、「完了」もしくは「不渡り」のいずれかの値をとる。「未請求」は、この項目の初期値であり、当該の電子手形の決済がまだ行われていないことを示す。「完了」は、当該の電子手形の決済が正常に完了していることを示し、「不渡り」は、残高不足等により決済を正常に行うことができなかったことを示す。
取立銀行の銀行番号および支店番号は、それぞれ、当該の電子手形の取立て等が依頼された銀行の銀行番号と支店番号であり、取立日は、決済が請求された日である。取立日は、決済が請求されるまでは値が設定されない。
裏書履歴テーブル123は、当該の電子手形運用装置にて振出処理された電子手形の裏書譲渡の履歴が登録されるテーブルである。裏書履歴テーブル123の一例を図12に示す。同図に示すように、裏書履歴テーブル123は、手形番号、裏書人名称、被裏書人名称、裏書日といった項目を有し、裏書譲渡が行われるごとにレコードが登録される。
手形番号は、電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。裏書人名称は、裏書人の名称であり、被裏書人名称は、被裏書人の名称である。裏書日は、裏書譲渡が行われた日である。
手形割引テーブル124は、当該の電子手形運用装置にて割引処理が実行された場合に割引に関する情報が登録されるテーブルである。手形割引テーブル124の一例を図13に示す。同図に示すように、手形割引テーブル124は、手形番号、割引金額、依頼人名称、口座番号、依頼日といった項目を有し、割引処理が行われるごとにレコードが登録される。
手形番号は、電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。割引金額は、割引処理において手形金額から割り引かれた金額であり、依頼人名称は、割引の依頼人の名称である。口座番号は、依頼人の口座番号であり、割引された電子手形が不渡りとなった場合に、この口座から債権の回収が行われる。依頼日は、割引が依頼された日である。
手形移管テーブル125は、当該の電子手形運用装置にて移管・分割処理が実行された場合に移管前後の電子手形の対応を示す情報が登録されるテーブルである。手形移管テーブル125の一例を図14に示す。同図に示すように、手形移管テーブル125は、移管前手形番号、移管後手形番号、依頼人名称、口座番号、依頼日といった項目を有し、移管後の電子手形ごとにレコードが登録される。
移管前手形番号は、移管前の電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。移管後手形番号は、移管により新たに振出された電子手形を識別するための識別番号であり、振出金融機関の銀行番号および支店番号と、通番とからなる。依頼人名称は、移管・分割の依頼人の名称である。口座番号は、依頼人の口座番号であり、移管前の電子手形が不渡りとなった場合に、この口座から債権の回収が行われる。依頼日は、移管・分割が依頼された日である。
次に、本実施例に係る電子手形運用装置の処理手順について説明する。ここでは、電子手形運用装置100の処理手順について説明するが、電子手形運用装置101および102も同様の処理手順により各種処理を実行する。
図15は、電子手形の振出し時の処理手順を示すフローチャートである。電子手形運用装置100が電子手形店舗端末2001〜200nから電子手形の振出しの依頼と振出しに必要な情報の送信を受け付けると(ステップS1001)、手形振出部111は、手形番号を採番し(ステップS1002)、送信された振出人、期日、金額等の情報とともに手形番号を手形振出テーブル121へ登録し(ステップS1003)、手形番号を依頼元へ応答する(ステップS1004)。
図16は、電子手形の取立依頼時の処理手順を示すフローチャートである。電子手形運用装置100が電子手形店舗端末2001〜200nから電子手形の取立の受付依頼と取立てに必要な情報の送信を受け付けると(ステップS1101)、手形情報問合せ部117は、送信された情報に含まれる手形番号に対応する電子手形の情報を振出元の電子手形運用装置へ問い合せる(ステップS1102)。
そして、手形検証部116は、応答された情報と電子手形店舗端末2001等から送信された情報を照合し、送信された情報が正規の電子手形のものであるか否かを検証する(ステップS1103)。
ここで、送信された情報が正規の電子手形のものであることが確認された場合(ステップS1104肯定)、手形取立受付部112は、取立てに必要な情報を手形取立テーブル122へ登録し(ステップS1105)、依頼を受け付けた旨を依頼元に応答する(ステップS1106)。
一方、送信された情報が正規の電子手形のものでないことが確認された場合(ステップS1104否定)、手形取立受付部112は、依頼を拒絶する旨を依頼元に応答する(ステップS1107)。
図17は、電子手形の裏書依頼時の処理手順を示すフローチャートである。電子手形運用装置100が電子手形店舗端末2001〜200n、もしくは、他の電子手形運用装置から電子手形の裏書依頼と裏書に必要な情報の送信を受け付けると(ステップS1201)、手形検証部116は、送信された情報に含まれる手形番号に対応する電子手形の情報を手形振出テーブル121から検索する(ステップS1202)。
そして、手形検証部116は、検索された情報と電子手形店舗端末2001等から送信された情報を照合し、送信された情報が正規の電子手形のものであるか否かを検証する(ステップS1203)。
ここで、送信された情報が正規の電子手形のものであることが確認された場合(ステップS1204肯定)、手形裏書部113は、所持人の変更を示す情報を裏書履歴テーブル123へ登録し(ステップS1205)、依頼を受け付けた旨を依頼元に応答する(ステップS1206)。
一方、送信された情報が正規の電子手形のものでないことが確認された場合(ステップS1204否定)、手形裏書部113は、依頼を拒絶する旨を依頼元に応答する(ステップS1207)。
図18は、電子手形の割引依頼時の処理手順を示すフローチャートである。電子手形運用装置100が電子手形店舗端末2001〜200nから電子手形の割引依頼と割引に必要な情報の送信を受け付けると(ステップS1301)、手形情報問合せ部117は、送信された情報に含まれる手形番号に対応する電子手形の情報を振出元の電子手形運用装置へ問い合せる(ステップS1302)。
そして、手形検証部116は、応答された情報と電子手形店舗端末2001等から送信された情報を照合し、送信された情報が正規の電子手形のものであるか否かを検証する(ステップS1303)。
ここで、送信された情報が正規の電子手形のものであることが確認された場合(ステップS1304肯定)、手形割引部114は、振出金融機関の電子手形運用装置に対して自行を当該の電子手形の所持人とするように裏書を依頼する(ステップS1305)。
そして、裏書が正常に完了した旨の応答を受信すると(ステップS1306肯定)、電子手形の取立て必要な情報を手形取立テーブル122へ登録し(ステップS1307)、割引金額の算出を行ってその結果を手形割引テーブル124へ登録し(ステップS1308)、算出した割引金額と、依頼を受け付けた旨とを依頼元に応答する(ステップS1309)。
一方、送信された情報が正規の電子手形のものでないことが確認された場合(ステップS1304否定)、もしくは、裏書が正常に完了しなかった旨の応答を受信した場合(ステップS1306否定)、手形割引部114は、依頼を拒絶する旨を依頼元に応答する(ステップS1310)。
図19は、電子手形の移管・分割依頼時の処理手順を示すフローチャートである。電子手形運用装置100が電子手形店舗端末2001〜200nから電子手形の移管・分割依頼と移管・分割に必要な情報の送信を受け付けると(ステップS1401)、手形情報問合せ部117は、送信された情報に含まれる手形番号に対応する電子手形の情報を振出元の電子手形運用装置へ問い合せる(ステップS1402)。
そして、手形検証部116は、応答された情報と電子手形店舗端末2001等から送信された情報を照合し、送信された情報が正規の電子手形のものであるか否かを検証する(ステップS1403)。
ここで、送信された情報が正規の電子手形のものであることが確認された場合(ステップS1404肯定)、手形移管部115は、振出金融機関の電子手形運用装置に対して自行を当該の電子手形の所持人とするように裏書を依頼する(ステップS1405)。
そして、裏書が正常に完了した旨の応答を受信すると(ステップS1406肯定)、移管前の電子手形の取立てに必要な情報を手形取立テーブル122へ登録する(ステップS1407)。
そして、手形番号を採番し(ステップS1408)、これを振出人等の情報とともに手形振出テーブル121へ登録し(ステップS1409)、移管前後の手形の対応を示す情報を手形移管テーブル125へ登録する(ステップS1410)。ここで、依頼された全ての電子手形の登録が完了していなければ(ステップS1411否定)、ステップS1408に復帰して次の電子手形の振出処理を実行し、依頼された全ての電子手形の振出しが完了していれば(ステップS1411肯定)、採番した手形番号を受取人と対応付けた情報と、依頼を受け付けた旨とを依頼元に応答する(ステップS1412)。
一方、送信された情報が正規の電子手形のものでないことが確認された場合(ステップS1404否定)、もしくは、裏書が正常に完了しなかった旨の応答を受信した場合(ステップS1406否定)、手形移管部115は、依頼を拒絶する旨を依頼元に応答する(ステップS1413)。
図20は、相殺処理の処理手順を示すフローチャートである。同図は、図7に示した方式で相殺処理を行う場合の処理手順を示しており、各電子手形運用装置の手形相殺部119は、所定の時間に手形取立テーブル122を走査し、支払期日が到来しており、決済がまだされていない電子手形を見つけるたびにこの処理手順を実行する。
手形相殺部119は、支払期日が到来しており、決済がまだされていない電子手形を見つけると、その電子手形の振出元の電子手形運用装置に対してその電子手形の決済要求を送信する(ステップS1501)。
相手方の電子手形運用装置の手形相殺部119は、電子手形の決済要求を受信すると(ステップS1601)、該当する電子手形を手形振出テーブル121から検索する(ステップS1602)。ここで、該当する電子手形が存在しなかった場合、もしくは、該当する電子手形が既に決済されている場合は(ステップS1603否定)、その旨を要求元へ応答する(ステップS1609)。
該当する電子手形が未決済の場合は(ステップS1603肯定)、振出人の口座から手形金額を引き落とす(ステップS1604)。ここで、振出人の口座の残高不足等により引き落としを行うことができなかった場合は(ステップS1605否定)、手形振出テーブル121の該当レコードの状態コードを「引落不能」に変更し(ステップS1608)、手形金額を引き落とすことができなかった旨を要求元へ応答する(ステップS1609)。
振出人の口座から手形金額を引き落とすことができた場合は(ステップS1605肯定)、手形振出テーブル121の該当レコードの状態コードを「完了」に変更し(ステップS1606)、オンライン提携ネットワーク網を通じて手形金額を要求元の銀行へ送金した後(ステップS1607)、決済が正常に完了した旨を要求元へ応答する(ステップS1609)。
要求元の手形相殺部119は、電子手形の決済要求に対する応答を受信すると(ステップS1502)、その内容が、決済が正常に完了したことを示すものであれば(ステップS1503肯定)、決済要求した電子手形に対応する手形取立テーブル122のレコードの状態コードを「完了」に変更し(ステップS1504)、そのレコードに設定されている口座に手形金額を入金する(ステップS1505)。
一方、応答の内容が、決済が正常に完了したことを示すものでなければ(ステップS1503否定)、決済要求した電子手形に対応する手形取立テーブル122のレコードの状態コードを「不渡り」に変更する(ステップS1506)。
上記実施例で説明してきた電子手形運用装置100の機能は、あらかじめ用意された電子手形運用プログラムをコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、電子手形運用プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
図21は、電子手形運用プログラム1071を実行するコンピュータ1000を示す機能ブロック図である。このコンピュータ1000は、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)1010と、ユーザからのデータの入力を受け付ける入力装置1020と、各種情報を表示するモニタ1030と、各種プログラム等を記録した記録媒体からプログラム等を読み取る媒体読取り装置1040と、ネットワークを介して他のコンピュータとの間でデータの授受を行うネットワークインターフェース装置1050と、各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)1060と、ハードディスク装置1070とをバス1080で接続して構成される。
そして、ハードディスク装置1070には、図9に示した制御部110と同様の機能を有する電子手形運用プログラム1071と、図9に示した記憶部120に記憶される各種データに対応する電子手形運用データ1072とが記憶される。なお、電子手形運用データ1072を、適宜分散させ、ネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶させておくこともできる。
そして、CPU1010が電子手形運用プログラム1071をハードディスク装置1070から読み出してRAM1060に展開することにより、電子手形運用プログラム1071は、電子手形運用プロセス1061として機能するようになる。そして、電子手形運用プロセス1061は、電子手形運用データ1072から読み出した情報等を適宜RAM1060上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開したデータ等に基づいて各種データ処理を実行する。
なお、上記の電子手形運用プログラム1071は、必ずしもハードディスク装置1070に格納されている必要はなく、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されたこのプログラムを、コンピュータ1000が読み出して実行するようにしてもよい。また、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等を介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータ(またはサーバ)等にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ1000がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
上述してきたように、本実施例では、電子手形の決済のための請求や送金をネットワークを通じて行うように構成したので、電子手形運用を金融機関ごとに設けて負荷分散を図りながら、電子手形の相殺処理を迅速に行うことができる。
なお、本実施例において示した各種構成は一例であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で配置等を変更することが可能である。
(付記1)電子手形の運用を行うための電子手形運用プログラムであって、
当該の金融機関にて取立依頼を受け付けた電子手形の情報を記憶する記憶手段から支払期日が到来した電子手形の情報を検索する検索手順と、
前記検索手順により情報が検索された電子手形の決済を該電子手形の振出元の金融機関へネットワークを通じて請求する請求手順と、
前記請求手順による請求に対して請求金額を当該の金融機関へ送金した旨の応答がされた場合に、該請求に対応する電子手形の決済が正常に完了した旨を前記記憶手段に記憶させる結果記録手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする電子手形運用プログラム。
(付記2)前記結果記録手順は、前記請求手順による請求に対して請求金額を送金できない旨の応答がされた場合に、該請求に対応する電子手形が不渡りとなった旨を前記記憶手段に記憶させることを特徴とする付記1に記載の電子手形運用プログラム。
(付記3)前記請求手順による請求に対して請求金額を当該の金融機関へ送金した旨の応答がされた場合に、該請求に対応する電子手形の所持人の口座に前記請求金額を入金する入金手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記1または2に記載の電子手形運用プログラム。
(付記4)当該の金融機関にて振出された電子手形の決済の依頼を受けた場合に、当該の金融機関にて振出された電子手形の情報を記憶する記憶手段から該当する電子手形の情報を検索し、検索された情報に登録されている振出人の口座から請求金額を引き落とし、引落しが成功したならば、オンライン提携ネットワーク網を通じて前記請求金額を依頼元の金融機関へ送金し、その旨を依頼元へ応答する引落手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の電子手形運用プログラム。
(付記5)前記引落手順は、引落しが成功しなかったならば、その旨を依頼元へ応答することを特徴とする付記4に記載の電子手形運用プログラム。
(付記6)電子手形の運用を行うための電子手形運用装置であって、
当該の金融機関にて取立依頼を受け付けた電子手形の情報を記憶する記憶手段から支払期日が到来した電子手形の情報を検索する検索手段と、
前記検索手段により情報が検索された電子手形の決済を該電子手形の振出元の金融機関へネットワークを通じて請求する請求手段と、
前記請求手段による請求に対して請求金額を当該の金融機関へ送金した旨の応答がされた場合に、該請求に対応する電子手形の決済が正常に完了した旨を前記記憶手段に記憶させる結果記録手段と
を備えたことを特徴とする電子手形運用装置。
(付記7)電子手形の運用を行うための電子手形運用方法であって、
当該の金融機関にて取立依頼を受け付けた電子手形の情報を記憶する記憶手段から支払期日が到来した電子手形の情報を検索する検索工程と、
前記検索工程により情報が検索された電子手形の決済を該電子手形の振出元の金融機関へネットワークを通じて請求する請求工程と、
前記請求工程による請求に対して請求金額を当該の金融機関へ送金した旨の応答がされた場合に、該請求に対応する電子手形の決済が正常に完了した旨を前記記憶手段に記憶させる結果記録工程と
を含んだことを特徴とする電子手形運用方法。