JP2007239087A - 高周波焼入方法、機械部材および転動部材 - Google Patents

Abstract

【課題】製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供する。また、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命な機械部材および転動部材を提供する。
【解決手段】高周波焼入方法１０は、高周波加熱により被処理物（転がり軸受内輪１）の全体を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法であって、転がり軸受内輪１の温度が調節される温度制御工程２０と、転がり軸受内輪１において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部がＡ_１点以上の温度である高温焼入温度に加熱されており、かつ応力付与部以外の部位がＡ_１点以上の温度であって、高温焼入温度よりも低い温度に加熱されている状態から、転がり軸受内輪１をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程３０とを備えている。
【選択図】図３

Description

本発明は高周波焼入方法、機械部材および転動部材に関し、より特定的には、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入を行なう高周波焼入方法、および高周波焼入方法により焼入が実施されて作製される機械部材および転動部材に関するものである。

近年、転がり軸受やハブ、等速ジョイントなどの転動部品やシャフト（軸）などを含む機械部品が使用される産業機械、輸送機械などの高性能化に伴い、機械部品が使用される環境は一層過酷になっている。そのため、機械部品を構成する軌道輪、転動体などの転動部材や軸などを含む機械部材に対しては、さらなる高強度化や長寿命化、特に過酷な環境下における高強度化や長寿命化が求められている。

機械部品が使用される環境は多岐にわたり、たとえば高温環境下で使用される場合には潤滑不良による表面損傷の発生、腐食環境下で用いられる場合には腐食による損傷の発生が問題となる。また、高速で運転される機械部品においては、クリープへの対策として、高い嵌め合いで部材同士が嵌合されて使用される場合が多く、表面に引張応力が作用した状態で使用されることに起因した強度低下が問題となる。

これに対し、機械部材を構成する素材の改良や、機械部材の表面に圧縮応力を生じさせること等を目的として浸炭焼入や高周波焼入による表面硬化処理などを実施することにより、機械部材の高強度化や長寿命化を達成する対策が提案されている。（たとえば特許文献１〜５参照）。
特開２００５−２９１３４０号公報 特開２０００−８０４４６号公報 特開２００２−１０２９２７号公報 特開２００５−２９９８５４号公報 特開平６−５７３２４号公報

しかし、浸炭焼入や高周波焼入による表面硬化処理では、機械部材の内部が硬化されていないため、剛性や強度の面で必ずしも十分とはいえない。たとえば、転動部材である転がり軸受の軌道輪や転動体においては、内部の強度が不十分であることに起因したケースクラックの発生や、大きな荷重が作用した場合の割れ強度の不足等の問題がある。また、シャフトにおいては、内部の強度が不十分であることに起因して、ねじり強度が不十分となる等の問題がある。また、耐食性や耐熱性などの向上を目的として、機械部材を構成する鋼にクロム（Ｃｒ）などの合金元素を多く含む高合金鋼が採用される場合、素材の焼入性が高くなるため、高周波焼入により機械部材の表層部のみを焼入硬化するという対策には、熱処理の制御が難しいという問題点がある。

さらに、素材の改良による対策は、素材コストの上昇を招来し、また、処理時間の長い浸炭焼入やその他の複雑な熱処理工程を採用することは、製造コストの上昇を招来する。これは、近年のコスト低減の要求に反するものであり、当該対策の採用に大きな障害となる。

そこで、本発明の一の目的は、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命な機械部材および転動部材を提供することである。

本発明の一の局面における高周波焼入方法は、高周波加熱により被処理物の全体を加熱してＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより、被処理物を焼入硬化する高周波焼入方法である。当該高周波焼入方法は、被処理物の温度が調節される温度制御工程と、被処理物において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部がＡ_１点以上の温度である高温焼入温度に加熱されており、かつ応力付与部以外の部位である焼入制御部がＡ_１点以上の温度であって、高温焼入温度よりも低い温度である低温焼入温度に加熱されている状態から、被処理物をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程とを備えている。

一般に、高周波焼入処理においては、被処理物の表層部の一部のみが加熱され、Ａ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより焼入硬化される。ここで、焼入硬化により被処理物を構成する鋼がマルテンサイト変態すると、当該変態は体積の膨張を伴うため、焼入硬化された表層部に極めて高い圧縮応力が残留する。その結果、当該表層部の一部は硬度が高いだけでなく、亀裂の発生および成長が抑制されるため、被処理物に高い疲労強度を付与することで長寿命化することができる。

しかし、上述のような近年の過酷化した機械部材の使用環境を考慮すると、表層部の一部のみを焼入硬化する高周波焼入が実施された機械部材では、焼入硬化されていない他の部分の強度不足に起因する問題点が生じている。

これに対し、本発明者は、被処理物（機械部材）の表層部の一部に圧縮応力を残存させることによる疲労強度の向上と、その他の部分の硬度向上による全体の強度の確保とを両立する熱処理方法に関して鋭意検討し、以下の知見を得た。

すなわち、被処理物の全体がＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却されることにより、被処理物全体が焼入硬化される場合であっても、部位によって異なった加熱温度から冷却して焼入硬化することにより、被処理物を構成する鋼の素地中に固溶する炭素の濃度（固溶炭素濃度）を部位によって変化させ、所望の部位に実用上十分な大きさの圧縮応力を付与することができる。つまり、所望の部位の固溶炭素濃度を相対的に他の部位に比べて大きくすることで、焼入による当該部位の膨張率を他の部位に比べて大きくし、当該部位に圧縮応力を残存させることが可能である。

本発明の一の局面における高周波焼入方法によれば、温度制御工程において、被処理物の温度が調節されつつ、焼入制御工程において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部が他の部位に比べて高い温度に加熱されている状態から、Ｍ_Ｓ点以下の温度に冷却されるため、応力付与部における固溶炭素濃度が相対的に他の部位に比べて高くなる。その結果、応力付与部には圧縮応力が付与され、疲労強度が向上する。一方、応力付与部以外の部位は、応力付与部よりは低温であるものの、Ａ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却されて焼入硬化されるため、応力付与部以外の部位の強度も十分に確保される。その結果、被処理物を高強度化、長寿命化することができる。さらに、本発明の一の局面における高周波焼入方法は、処理時間の長い浸炭焼入やその他の複雑な熱処理工程を含む熱処理方法を採用するものではないため、製造コストを抑制しつつ、上記優れた特性を被処理物に付与することができる。また、被処理物の加熱に高周波加熱を利用することで、たとえば被処理物のうち誘導コイルに近い部位と遠い部位とで、被処理物の温度を変化させることが容易となる。

以上より、本発明の一の局面における高周波焼入方法によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供することができる。

上記一の局面における高周波焼入方法において好ましくは、温度制御工程は、被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により被処理物が加熱される加熱工程とを含んでいる。さらに、焼入制御工程は、被処理物の応力付与部および焼入制御部の温度が測定される焼入用測温工程と、焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき、応力付与部が高温焼入温度に加熱され、かつ焼入制御部が低温焼入温度に加熱されるように加熱時間が調節され、被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、冷却開始信号に基づいて、被処理物が冷却されることにより被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含んでいる。

高周波焼入においては、一般的な雰囲気炉のように炉内の雰囲気を介して被処理物が加熱される焼入方法とは異なり、被処理物が誘導加熱により直接加熱される。そのため、被処理物の温度を測定するためには、被処理物を直接測温する必要がある。しかし、高周波焼入設備には、被処理物を均一に加熱するため、被処理物を回転等させるための駆動機構が設けられている場合が多く、接触式の温度計の設置が困難である場合が多い。

このように、高周波焼入においては被処理物の測温が容易ではなく、温度と時間との熱処理条件による熱処理の制御（温度制御）が難しい。そのため、一般に、高周波焼入においては、電力と時間との熱処理条件による熱処理の制御（電力制御）が採用される場合が多い。この電力制御による高周波焼入においては、被処理物に付与される加熱履歴が必ずしも明確ではない。

これに対し、本発明の一の局面における高周波焼入方法の好ましい態様では、温度制御工程において、被処理物の温度のデータがリアルタイムでフィードバックされて被処理物が所望の温度に加熱されるとともに、焼入制御工程において、被処理物の応力付与部および焼入制御部の両方の温度の情報がリアルタイムで取得され、これに基づいて冷却のタイミングを決定して、被処理物を焼入硬化することができる。そのため、応力付与部が高温焼入温度に加熱され、かつ焼入制御部が低温焼入温度に加熱されるように加熱時間を調節することが容易となる。

ここで、焼入制御部は、たとえば被処理物において、磁束の侵入が最も少なく、温度上昇の小さい部位とすることができる。また、応力付与部に明確な圧縮応力を付与するためには、高温焼入温度は、低温焼入温度よりも２０℃以上高い温度であることが好ましい。さらに、応力付与部に十分な圧縮応力を付与するためには、高温焼入温度は、低温焼入温度よりも５０℃以上高い温度であることが、より好ましい。

本発明の他の局面における高周波焼入方法は、高周波加熱により被処理物の全体を加熱してＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより、被処理物を焼入硬化する高周波焼入方法である。当該高周波焼入方法は、被処理物の温度が調節される温度制御工程と、被処理物において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部がＡ_１点以上の温度である焼入温度に加熱されており、かつ応力付与部以外の部位である焼入制御部が応力付与部よりも短い時間、焼入温度に加熱されている状態から、被処理物をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程とを備えている。

本発明の他の局面における高周波焼入方法によれば、被処理物において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部が、応力付与部以外の部位よりも、Ａ_１点以上の温度である焼入温度に長い時間加熱されている。そのため、上記本発明の一の局面における高周波焼入方法と同様に、応力付与部においては、応力付与部以外の部位よりも相対的に固溶炭素濃度が高くなっている。その結果、応力付与部には圧縮応力が付与され、疲労強度が向上して長寿命化される。一方、応力付与部以外の部位は、応力付与部よりは短時間であるものの、Ａ_１点以上の温度に加熱された状態からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却されて焼入硬化されるため、応力付与部以外の部位の強度も十分に確保される。その結果、被処理物を高強度化、長寿命化することができる。さらに、本発明の他の局面における高周波焼入方法は、処理時間の長い浸炭焼入やその他の複雑な熱処理工程を含む熱処理方法を採用するものではないため、製造コストを抑制しつつ、上記優れた特性を被処理物に付与することができる。また、被処理物の加熱に高周波加熱を利用することで、たとえば被処理物のうち誘導コイルに近い部位と遠い部位とで、容易に被処理物が焼入温度に保持されている時間を変化させることができる。

以上より、本発明の他の局面における高周波焼入方法によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供することができる。

上記本発明の他の局面における高周波焼入方法において好ましくは、温度制御工程は、被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により被処理物が加熱される加熱工程とを含んでいる。焼入制御工程は、被処理物の応力付与部および焼入制御部の温度が測定される焼入用測温工程と、焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき、応力付与部が焼入温度に加熱され、かつ焼入制御部が焼入温度に応力付与部よりも短い時間加熱されるように加熱時間が調節され、被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、冷却開始信号に基づいて、被処理物が冷却されることにより被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含んでいる。

これにより、温度制御工程において、被処理物の温度のデータがリアルタイムでフィードバックされて被処理物が所望の温度に加熱されるとともに、焼入制御工程において、被処理物の応力付与部および焼入制御部の両方の温度の情報がリアルタイムで取得され、これに基づいて冷却のタイミングを決定して、被処理物を焼入硬化することができる。そのため、応力付与部が所望の時間、焼入温度に加熱され、かつ焼入制御部が応力付与部よりも短い時間、焼入温度に加熱されるように加熱時間を調節することが容易となる。

ここで、焼入制御部は、たとえば被処理物において、磁束の侵入が最も少なく、温度上昇の小さい部位とすることができる。また、応力付与部に明確な圧縮応力を付与するためには、焼入制御部が焼入温度またはそれ以上の温度に保持される時間は、応力付与部が焼入温度に保持される時間の１／３以下であることが好ましい。さらに、応力付与部に十分な圧縮応力を付与するためには、焼入制御部が焼入温度またはそれ以上の温度に保持される時間は、応力付与部が焼入温度に保持される時間の１／５以下であることが、より好ましい。

本発明に従った機械部材は、上記本発明の高周波焼入方法により焼入硬化されて作製されたことを特徴とする。本発明の機械部材によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な上記本発明の高周波焼入方法により焼入硬化されていることにより、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命な機械部材を提供することができる。

本発明に従った転動部材は、上記本発明の高周波焼入方法により焼入硬化されて作製されたことを特徴とする。本発明の転動部材によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な上記本発明の高周波焼入方法により焼入硬化されていることにより、製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命な転動部材を提供することができる。

なお、本発明の機械部材は、たとえば、ギア、シャフトの他、転がり軸受の軌道輪および転動体、等速ジョイントのアウターレース、インナーレースおよび転動体などの転動部材など、鋼からなる機械部材に適用することができる。

以上の説明から明らかなように、本発明の高周波焼入方法によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、被処理物を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供することができる。さらに、本発明の機械部材および転動部材によれば製造コストの上昇を抑制しつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命な機械部材および転動部材を提供することができる。

以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。

（実施の形態１）
図１は、本発明の一実施の形態である実施の形態１における機械部材（転動部材）としての転がり軸受内輪の構成を示す概略断面図である。図１を参照して、実施の形態１における転がり軸受内輪の構成を説明する。

図１を参照して、実施の形態１における転動部材としての転がり軸受内輪１は、円環状の形状を有している。そして、転がり軸受内輪１は、外周面１Ａに転動体としての玉などが接触しつつ転走するための転走面１Ｃが形成されている。さらに、転がり軸受内輪１は、転がり軸受内輪１の内周部を貫通する軸などが接触し、当該軸と転がり軸受内輪１とが一体に回転可能となるように、当該軸などに対して転がり軸受内輪１を固定する内周面１Ｂを有している。

そして、転がり軸受内輪１は、以下に説明する実施の形態１における高周波焼入方法により焼入硬化されて作製されている。そのため、応力付与部としての転走面１Ｃを含む転走領域１Ｄは、Ａ_１点以上の温度である高温焼入温度に加熱されており、かつ応力付与部以外の部位である焼入制御部としての内周面１Ｂが、Ａ_１点以上の温度であって、上記高温焼入温度よりも低い低温焼入温度に加熱されている状態から、Ｍ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより焼入硬化されている。その結果、転走領域１Ｄは、転がり軸受内輪１のその他の領域よりも固溶炭素濃度が高くなっている。したがって、転走面１Ｃには、圧縮応力が付与されているとともに、転がり軸受内輪１は全体として焼入硬化されている。そのため、転がり軸受内輪１は、製造コストの上昇が抑制されつつ、過酷な環境下においても高強度、長寿命となっている。

なお、転がり軸受内輪１をさらに高強度、長寿命とするためには、圧縮応力が付与される領域は表面だけでなく、ある程度の深さを有する領域であることが好ましく、具体的には転走領域１Ｄの転走面１Ｃからの深さは肉厚（転走面１Ｃに対して垂直な面における厚み）の１／２０以上であることが好ましい。一方、転走領域１Ｄの深さが肉厚の１／３を超える場合、転走領域１Ｄに生じた圧縮応力に釣り合うように内周面１Ｂに生じる引張応力が大きくなり、内周面１Ｂの強度が許容範囲を超えて低下するおそれがある。そのため、転走領域の深さは、肉厚の１／３以下であることが好ましい。

次に、本発明の一実施の形態である実施の形態１における高周波焼入設備について説明する。図２は、実施の形態１における高周波焼入設備の構成を示す概略図である。図２を参照して、本発明の実施の形態１における高周波焼入設備の構成を説明する。

図２を参照して、実施の形態１における高周波焼入設備９０は、高周波加熱により被処理物としての転がり軸受内輪１の全体を加熱して焼入硬化する高周波焼入方法に使用される高周波焼入設備である。当該高周波焼入設備９０は、転がり軸受内輪１の温度を調節するための温度制御装置５０と、加熱された転がり軸受内輪１が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置６０とを備えている。

温度制御装置５０は、転がり軸受内輪１の温度データを取得し、転がり軸受内輪１の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置としての第１放射温度計３と、第１放射温度計３に接続され、第１放射温度計３からの温度の情報に基づき転がり軸受内輪１の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置４と、温度調節装置４に接続され、温度調節装置４からの温度制御信号に基づき、高周波加熱により転がり軸受内輪１を加熱する加熱装置２とを含んでいる。加熱装置２に含まれる誘導コイルは、転がり軸受内輪１の外周側を取り囲むように配置されている。

焼入制御装置６０は、焼入用測温装置としての第１放射温度計３および第２放射温度計５と、冷却タイミング調節装置６と、冷却装置７とを含んでいる。焼入用測温装置としての第１放射温度計３および第２放射温度計５は、転がり軸受内輪１の応力付与部である転走面１Ｃ（誘導コイルに対向する面）および焼入制御部である内周面１Ｂ（誘導コイルに対向する面の裏側の面）のそれぞれの温度データを取得し、転がり軸受内輪１の温度データに基づく温度の情報を出力する機能を有している。冷却タイミング調節装置６は、第１放射温度計３および第２放射温度計５に接続され、第１放射温度計３および第２放射温度計５からの温度の情報に基づき、転走面１Ｃが高温焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが低温焼入温度に加熱されるように加熱時間を調節し、転がり軸受内輪１が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する機能を有している。冷却装置７は、冷却タイミング調節装置６に接続され、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受内輪１を冷却することにより転がり軸受内輪１を焼入硬化する機能を有している。冷却装置７は、たとえば冷却液を転がり軸受内輪１に噴射することにより冷却する焼入液噴出装置である。

ここで、第１放射温度計３は、温度制御用測温装置と焼入制御用測温装置とを兼ねて設置されている。また、温度調節装置４および冷却タイミング調節装置６は、たとえばそれぞれパーソナルコンピュータであり、１台のパーソナルコンピュータで温度調節装置４と冷却タイミング調節装置６とを兼ねる構成であってもよい。

なお、温度制御用測温装置および焼入用測温装置に用いる測温装置の種類は、上述のように放射温度計でもよいが、装置のレイアウト上可能であるならば熱電対などの接触式温度計でもよい。

次に、上述の高周波焼入設備を用いた本発明の一実施の形態である実施の形態１における高周波焼入方法について説明する。図３は、本発明の一実施の形態である実施の形態１における高周波焼入方法の概略を示す図である。

図２および図３を参照して、本実施の形態における高周波焼入方法１０は、高周波加熱により被処理物（転がり軸受内輪１）の全体を加熱してＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより、転がり軸受内輪１を焼入硬化する高周波焼入方法である。高周波焼入方法１０は、転がり軸受内輪１の温度が調節される温度制御工程２０と、転がり軸受内輪１において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部としての転走面１ＣがＡ_１点以上の温度である高温焼入温度に加熱されており、かつ転走面１Ｃ以外の部位である焼入制御部としての内周面１ＢがＡ_１点以上の温度であって、高温焼入温度よりも低い温度である低温焼入温度に加熱されている状態から、転がり軸受内輪１をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程３０とを備えている。

そして、温度制御工程２０は、転がり軸受内輪１の温度が測定される温度制御用測温工程２３と、温度制御用測温工程２３において測定された温度の情報に基づき、転がり軸受内輪１の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程２４と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により転がり軸受内輪１が加熱される加熱工程２２とを含んでいる。

焼入制御工程３０は、焼入用測温工程３５と、冷却タイミング調節工程３６と、冷却工程３７とを含んでいる。焼入用測温工程３５では、転がり軸受内輪１の転走面１Ｃおよび内周面１Ｂの温度が測定される。冷却タイミング調節工程３６では、焼入用測温工程３５において測定された温度の情報に基づき、転走面１Ｃが高温焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが低温焼入温度に加熱されるように加熱時間が調節され、転がり軸受内輪１が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される。冷却工程３７では、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受内輪１が冷却されることにより転がり軸受内輪１が焼入硬化される。

実施の形態１における高周波焼入設備９０を用いて実施の形態１における高周波焼入方法１０によって被処理物としての転がり軸受内輪１を焼入硬化することにより、転走面１Ｃにおける固溶炭素濃度が相対的に他の部位に比べて高くなる。その結果、転走面１Ｃには圧縮応力が付与され、疲労強度が向上するとともに、転走面１Ｃ以外の部位も、Ａ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却されて焼入硬化されるため、強度が十分に確保される。その結果、転がり軸受内輪１を高強度化、長寿命化することができる。

さらに、実施の形態１における高周波焼入方法は、処理時間の長い浸炭焼入やその他の複雑な熱処理工程を含む熱処理方法を採用するものではないため、製造コストを抑制しつつ、上記優れた特性を転がり軸受内輪１に付与することができる。また、転がり軸受内輪１の加熱に高周波加熱を利用することで、転がり軸受内輪１のうち誘導コイルに近い部位（転走面１Ｃ）と遠い部位（内周面１Ｂ）とで、容易に転がり軸受内輪１の温度を変化させることができる。

さらに、温度制御工程２０において、転がり軸受内輪１の温度のデータがリアルタイムでフィードバックされて転がり軸受内輪１が所望の温度に加熱されるとともに、焼入制御工程３０において、転走面１Ｃおよび内周面１Ｂの両方の温度の情報がリアルタイムで取得され、これに基づいて冷却のタイミングを決定して、転がり軸受内輪１を焼入硬化することができる。そのため、転走面１Ｃが高温焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが低温焼入温度に加熱されるように加熱時間を調節することが容易となる。

以上より、実施の形態１における高周波焼入方法によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、転がり軸受内輪１を高強度化、長寿命化することが可能な高周波焼入方法を提供することができる。

なお、Ａ_１点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、Ｍ_Ｓ点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。

（実施の形態２）
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態２における高周波焼入方法、高周波焼入設備および機械部材（転動部材）について説明する。実施の形態２における高周波焼入方法、高周波焼入設備および機械部材（転動部材）は、基本的には実施の形態１における高周波焼入方法、高周波焼入設備および機械部材（転動部材）と同様の構成を有している。

しかし、実施の形態２における高周波焼入方法は、焼入制御工程３０において、高周波焼入設備９０は、焼入制御装置６０において、実施の形態１とは異なっている。また、実施の形態２における機械部材（転動部材）としての転がり軸受内輪１は、これに起因して、実施の形態１の転がり軸受内輪１とは異なっている。

すなわち、実施の形態２における高周波焼入設備９０においては、焼入制御装置６０の冷却タイミング調節装置６は、第１放射温度計３および第２放射温度計５に接続され、第１放射温度計３および第２放射温度計５からの温度の情報に基づき、転走面１Ｃが焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが当該焼入温度に転走面１Ｃよりも短い時間加熱されるように加熱時間を調節し、転がり軸受内輪１が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する機能を有している。また、実施の形態２における高周波焼入方法１０においては、焼入制御工程３０の冷却タイミング決定工程３６では、焼入用測温工程３５において測定された温度の情報に基づき、転走面１Ｃが焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが当該焼入温度に転走面１Ｃよりも短い時間加熱されるように、加熱時間が調節され、転がり軸受内輪１が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される。

実施の形態２における高周波焼入設備９０を用いて実施の形態２における高周波焼入方法１０によって被処理物としての転がり軸受内輪１を焼入硬化することにより、転走面１Ｃにおける固溶炭素濃度が相対的に他の部位に比べて高くなる。その結果、転走面１Ｃには圧縮応力が付与され、疲労強度が向上するとともに、転走面１Ｃ以外の部位も、Ａ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却されて焼入硬化されるため、強度が十分に確保される。その結果、転がり軸受内輪１を高強度化、長寿命化することができる。

さらに、実施の形態２における高周波焼入方法は、処理時間の長い浸炭焼入やその他の複雑な熱処理工程を含む熱処理方法を採用するものではないため、製造コストを抑制しつつ、上記優れた特性を転がり軸受内輪１に付与することができる。また、転がり軸受内輪１の加熱に高周波加熱を利用することで、転がり軸受内輪１のうち誘導コイルに近い部位（転走面１Ｃ）と遠い部位（内周面１Ｂ）とで、焼入温度に保持される時間を変化させること容易となる。

さらに、温度制御工程２０において、転がり軸受内輪１の温度のデータがリアルタイムでフィードバックされて転がり軸受内輪１が所望の温度に加熱されるとともに、焼入制御工程３０において、転走面１Ｃおよび内周面１Ｂの両方の温度の情報がリアルタイムで取得され、これに基づいて冷却のタイミングを決定して、転がり軸受内輪１を焼入硬化することができる。そのため、転走面１Ｃが所望の時間、焼入温度に加熱され、かつ内周面１Ｂが転走面１Ｃよりも短い時間、当該焼入温度に加熱されるように加熱時間を調節することが容易となる。

以上より、実施の形態２における高周波焼入設備により実施の形態２における高周波焼入方法を実施することにより、製造コストの上昇を抑制しつつ、転がり軸受内輪１を高強度化、長寿命化することができる。

以下、本発明の実施例について説明する。機械部材を構成する鋼がたとえば、ＪＩＳ ＳＵＪ２などの軸受鋼やＪＩＳ Ｓ５３Ｃなどの炭素鋼である場合であっても、本発明の高周波焼入方法は有効に適用することができるが、３質量％以上のクロムを含有する鋼（たとえばＡＩＳＩ Ｍ５０、ＪＩＳ ＳＫＨ４、ＪＩＳ ＳＵＳ４４０Ｃ、ＪＩＳ ＳＵＳ４２０Ｊ２など）である場合、焼入の際の加熱温度が高くなるため（たとえば１０００℃以上）、本発明の高周波焼入方法の制御が容易であり、適用に適している。

本実施例では、ＡＩＳＩ Ｍ５０を素材として採用し、本発明の高周波焼入方法の効果を確認する試験を実施した。以下、試験の方法について説明する。

本発明の実施例として、ＡＩＳＩ Ｍ５０の鋼材から外径φ６０ｍｍ、内径φ４５ｍｍ、幅ｔ１５ｍｍのリング状試験片を作製した後、上述の実施の形態２の方法で焼入硬化を実施した。応力付与部は外周面、焼入制御部は内周面とした。また、加熱温度は外周面、内周面ともに１１５０℃とし、それぞれ１１５０℃に到達した後の時間を３水準に変化させて、焼入を実施した。

一方、比較例として、上記実施例と同様にＡＩＳＩ Ｍ５０の鋼材から外径φ６０ｍｍ、内径φ４５ｍｍ、幅ｔ１５ｍｍのリング状試験片を作製した後、雰囲気炉において１１１０℃に６００秒間保持した後、急冷することにより焼入を実施した試験片も作製した。

そして、外周面および内周面の硬度、外周面の圧縮応力、外周面から内周面に向けての硬度分布および軸を圧入した場合のリング状試験片の転動疲労寿命を調査する試験を実施した。

次に、試験方法について説明する。外周面および内周面の硬度は、当該外周面および内周面の硬度をロックウェル硬度計により測定した。外周面の圧縮応力は、Ｘ線応力測定装置により、周方向に平行な応力を測定した。硬度分布は、焼入硬化されたリング状試験片を外周面に垂直な面で切断し、ビッカース硬度計を用い、外周面直下から内周面に向けて外周面に垂直な方向に硬度を測定することにより、調査した。さらに、軸を圧入した場合のリング状試験片の転動疲労寿命は、以下のように調査した。

図４は、軸を圧入した場合のリング状試験片の転動疲労寿命を調査するために使用されたリング回転疲労試験機の構成を示す概略図である。図４を参照して、リング状試験片の転動疲労寿命の調査方法について説明する。

図４を参照して、リング回転疲労試験機７０は、円筒状の形状を有する駆動ロール７３と、負荷ロール７２と、案内ロール７５とを備えている。駆動ロール７３、負荷ロール７２および案内ロール７５は、回転軸が平行になるとともに、外周面がリング状試験片７１に接触可能なように配置されている。そして、リング回転疲労試験機７０は、給油ノズル７４をさらに備えており、当該給油ノズル７４により、試験片７１に対して潤滑油を給油可能な構成となっている。

転動疲労寿命試験は、内周に軸７６が圧入されたリング状試験片７１が、駆動ロール７３、負荷ロール７２および案内ロール７５に外周面において接触するようにセットされ、駆動ロール７３および負荷ロール７２により径方向に圧縮される応力を負荷されつつ、駆動ロール７３が回転することにより駆動され、案内ロール７５に案内されて回転することにより実施された。そして、外周面に割れが発生するまでの時間を調査し、当該時間を転動疲労寿命とした。試験片の形状は、外径φ６０ｍｍ、内径φ４５ｍｍ、幅ｔ１５ｍｍ、荷重１０７．８ｋＮ、回転速度４０００ｒｐｍ、潤滑油はタービン油ＶＧ６８とした。また、圧入される軸は内径φ４５ｍｍに対して８０μｍおよび１２０μｍ太いものの２水準とし、その結果、リング状試験片７１の外周面における嵌め合い応力はそれぞれ２００ＭＰａおよび３１０ＭＰａの２水準となった。試験はそれぞれの軸について２個ずつ実施された。

次に、上記試験の結果について説明する。表１は、本発明の実施例および比較例の外周面および内周面の硬度、外周面の圧縮応力を、各試験片の焼入条件とともに示す表である。表１を参照して、実施例Ａ〜Ｃの外周面の硬度は６１〜６１．５ＨＲＣ、比較例の外周面の硬度は６１．５ＨＲＣとなっており、ほぼ同一の硬度となっていた。一方、内周面の硬度は、加熱時間が長いほど高硬度となっているが、最も硬度の低い実施例Ａでも５２ＨＲＣ以上の硬度を有しており、転走面として使用されるような過酷な条件で使用されない限り、十分な硬度となっている。また、内周面の加熱時間に対する外周面の加熱時間の比が大きいほど、外周面の圧縮応力が大きくなっており、内周面と外周面との加熱時間が同じである比較例では、圧縮応力は０となっていた。

図５は、実施例Ａのリング状試験片の外周面直下から内周面に向けての外周面に垂直な方向における硬度分布の測定結果を示す図である。図５において、横軸は外周面からの深さ、縦軸は硬度を示している。図５を参照して、リング状試験片の硬度分布について説明する。

図５を参照して、内周面と外周面との硬度差の最も大きい実施例Ａの試験片においても、表層部のみを焼入硬化する一般的な高周波焼入方法で焼入硬化された部材において、表面直下に形成される硬度が急激に低下する領域は形成されておらず、むしろ硬度が徐々に低下する浸炭焼入された部材に近い硬度分布となっている。このことから、本発明の高周波焼入方法で焼入硬化された機械部材においては、大きな荷重が作用した場合に、硬度が急激に低下する領域で生じる内部割れが抑制されていることが分かる。

表２および表３は、外周面における嵌め合い応力が、それぞれ２００ＭＰａおよび３１０ＭＰａである場合の転動疲労寿命試験の結果を、外周面に付与された圧縮応力の大きさとともに示す表である。

表２を参照して、外周面の嵌め合い応力が２００ＭＰａである場合、外周面の圧縮応力が大きいほど、寿命が長くなっていることが分かる。そして、本発明の実施例の寿命は、比較例の寿命の３倍以上となっている。ここで、表中の「＞３００」は、試験開始から３００時間経過後においても外周面に割れが発生せず、試験を中止したことを示している。

表３を参照して、外周面の嵌め合い応力が３１０ＭＰａである場合、外周面における嵌め合いの応力が高くなったことに伴い、表２の場合よりも寿命が全体として低下している。しかし、この場合でも、本発明の実施例の寿命は、比較例の寿命の３倍以上となっている。

以上より、本発明の高周波焼入方法により焼入硬化された機械部材は、部材内部において急激な硬度低下が存在せず、かつ部材全体において十分な硬度を有している。そのため、大きな荷重が作用した場合でも部材の内部における内部割れの発生や塑性変形が抑制されることが分かった。また、本発明の高周波焼入方法により焼入硬化された機械部材は、表面の所望の部位に十分な大きさの圧縮応力を付与することができるため、たとえば嵌め合いが大きく、表面に引張応力が作用するような環境下で使用される場合であっても、長寿命な機械部材となっていることが分かった。

今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

本発明の高周波焼入方法、機械部材および転動部材は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入を行なう高周波焼入方法、焼入が実施されて作製される機械部材および転動部材に特に有利に適用され得る。

実施の形態１における機械部材（転動部材）としての転がり軸受内輪の構成を示す概略断面図である。 実施の形態１における高周波焼入設備の構成を示す概略図である。 実施の形態１における高周波焼入方法の概略を示す図である。 軸を圧入した場合のリング状試験片の転動疲労寿命を調査するために使用されたリング回転疲労試験機の構成を示す概略図である。 実施例Ａのリング状試験片の外周面直下から内周面に向けての外周面に垂直な方向における硬度分布の測定結果を示す図である。

符号の説明

１ 転がり軸受内輪、１Ａ 外周面、１Ｂ 内周面、１Ｃ 転走面、１Ｄ 転走領域、２ 加熱装置、３ 第１放射温度計、４ 温度調節装置、５ 第２放射温度計、６ 冷却タイミング調節装置、７ 冷却装置、１０ 高周波焼入方法、２０ 温度制御工程、２２ 加熱工程、２３ 温度制御用測温工程、２４ 温度調節工程、３０ 焼入制御工程、３５ 焼入用測温工程、３６ 冷却タイミング決定工程、５０ 温度制御装置、６０ 焼入制御装置、７０ リング回転疲労試験機、７１ リング状試験片、７２ 負荷ロール、７３ 駆動ロール、７４ 給油ノズル、７５ 案内ロール、７６ 軸、９０ 高周波焼入設備。

Claims (6)

1. 高周波加熱により被処理物の全体を加熱してＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより、前記被処理物を焼入硬化する高周波焼入方法であって、
   前記被処理物の温度が調節される温度制御工程と、
   前記被処理物において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部がＡ_１点以上の温度である高温焼入温度に加熱されており、かつ前記応力付与部以外の部位である焼入制御部がＡ_１点以上の温度であって、前記高温焼入温度よりも低い温度である低温焼入温度に加熱されている状態から、前記被処理物をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程とを備えた、高周波焼入方法。
2. 前記温度制御工程は、
   前記被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、
   前記温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、
   前記温度制御信号に基づいて、前記高周波加熱により前記被処理物が加熱される加熱工程とを含み、
   前記焼入制御工程は、
   前記被処理物の前記応力付与部および前記焼入制御部の温度が測定される焼入用測温工程と、
   前記焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記応力付与部が前記高温焼入温度に加熱され、かつ前記焼入制御部が前記低温焼入温度に加熱されるように加熱時間が調節され、前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、
   前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物が冷却されることにより前記被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含む、高周波焼入方法。
3. 高周波加熱により被処理物の全体を加熱してＡ_１点以上の温度からＭ_Ｓ点以下の温度に冷却することにより、前記被処理物を焼入硬化する高周波焼入方法であって、
   前記被処理物の温度が調節される温度制御工程と、
   前記被処理物において、圧縮応力を付与すべき部位である応力付与部がＡ_１点以上の温度である焼入温度に加熱されており、かつ前記応力付与部以外の部位である焼入制御部が前記応力付与部よりも短い時間、前記焼入温度に加熱されている状態から、前記被処理物をＭ_Ｓ点以下の温度に冷却する焼入制御工程とを備えた、高周波焼入方法。
4. 前記温度制御工程は、
   前記被処理物の温度が測定される温度制御用測温工程と、
   前記温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、
   前記温度制御信号に基づいて、前記高周波加熱により前記被処理物が加熱される加熱工程とを含み、
   前記焼入制御工程は、
   前記被処理物の前記応力付与部および前記焼入制御部の温度が測定される焼入用測温工程と、
   前記焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記応力付与部が前記焼入温度に加熱され、かつ前記焼入制御部が前記焼入温度に前記応力付与部よりも短い時間加熱されるように加熱時間が調節され、前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、
   前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物が冷却されることにより前記被処理物が焼入硬化される冷却工程とを含む、高周波焼入方法。
5. 請求項１〜４のいずれか１項に記載の高周波焼入方法により焼入硬化されて作製されたことを特徴とする、機械部材。
6. 請求項１〜４のいずれか１項に記載の高周波焼入方法により焼入硬化されて作製されたことを特徴とする、転動部材。

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