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JP2007228878A - 慢性疲労症候群の診断方法 - Google Patents

慢性疲労症候群の診断方法 Download PDF

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JP2007228878A JP2006054414A JP2006054414A JP2007228878A JP 2007228878 A JP2007228878 A JP 2007228878A JP 2006054414 A JP2006054414 A JP 2006054414A JP 2006054414 A JP2006054414 A JP 2006054414A JP 2007228878 A JP2007228878 A JP 2007228878A
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一仁 六反
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恭子 森田
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信太郎 伴
Takuya Saijo
卓也 西城
Hisashi Sugiyama
寿 杉山
Toshiro Saito
俊郎 斎藤
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Abstract

【課題】被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を、簡便に、しかも客観的かつ高精度に評価するための新規な方法を提供する。
【解決手段】被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いて、選ばれたいずれかのマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定する診断方法。
【効果】僅かの末梢血で、慢性疲労症候群の診断を容易に実施できる。また数多くのRNA発現量から生体機能を多面的に把握することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、慢性疲労症候群の診断方法に関する。より詳しくは、被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いて、選ばれたマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定することを特徴とする慢性疲労症候群の診断方法に関する。
疲労感や倦怠感は、日常的に誰もが経験している感覚であり、『体がだるい』という訴えは、毎年、厚生労働省の「国民生活基礎調査」の有訴者率の上位にランクされている。
1985年の健康に関する国民意識調査では、調査時に疲労感を認めた人が66.4%にのぼる。その71.7%の人は「1晩の睡眠により疲労感は回復する」と回答しており、疲労・倦怠感は、短期的なものであり、慢性疲労はごくまれなものと思われてきた。しかし、1998年に厚生労働省の疲労調査研究班が愛知県豊川保健所管内の15〜65歳の男女4000名に疫学調査を行ったところ、疲労感を自覚している人の割合は約60%であり、その半数を超える人々(全体の35.8%)が半年以上続く慢性疲労を認め、5人に1人は作業能力の低下を感じていることも判明した。
“倦怠感”を主訴とする場合、臨床的には(1)器質的疾患(悪性腫瘍、感染症、内分泌・代謝性疾患等)、(2)非器質的疾患(気分障害、身体表現性障害等)、(3)過労(疲れて当然と思われる状況がある)、(4)心配状態(病気を心配しているが、異常のないことを保証すると安心して症状がなくなる)、(5)原因不明の慢性疲労に分けられる。
このうち、原因不明の慢性疲労の中に“慢性疲労症候群(CFS)”が含まれてくる。“慢性疲労”とは半年以上の期間続く自覚的な疲労感すべてを意味し、疲労感の程度や疲労感以外の症状の有無、病気に罹患しているか否かなどは関係しない。したがって、日常生活にはまったく支障をきたさない程度のごく軽い疲労感でも、半年以上の期間続いている場合には慢性疲労と呼ばれている。一方、“慢性疲労症候群”は1つの疾病を意味するものであり、厚生労働省や米国防疫センターが定めた診断基準を満たす診断名である。すなわち、疲労の程度が激しく、1ヶ月に数日間は会社や学校を休まざるを得ないような状態が半年以上持続または繰り返し、医師の診察と臨床検査により明らかな疾病が見つからないことが診断の条件となる。
また、以下のうち8項目を満たす必要もある。
1)微熱ないし悪寒
2)喉の痛み
3)首あるいは脇のリンパ節の腫れ
4)原因不明の脱力感
5)筋肉の痛みまたは不快感
6)軽く動いただけでその後24時間以上続く全身倦怠感
7)頭痛(新たに出現、または以前より程度や頻度が増悪)
8)関節の痛み
9)精神神経症状(まぶしい、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつのうち、いずれか1つ)
10)睡眠障害(不眠や過眠)
11)発症時、これらの主な症状が短期間(数時間から数日)で出現する
CFSと鑑別すべき疾患としては、先に挙げた(1)器質的疾患、(2)非器質的疾患、(3)疲労、(4)心配状態などが挙げられる。
CFSの発症や再発には、ストレス、感染、神経・内分泌系のネットワークの乱れなどが関与することが推定されているが、未だ明らかではない。また、CFSは、身体疾患のみならず、うつ病をはじめとする精神疾患との鑑別も難しく、又、確立した治療法もないため、多くの患者が診断と治療を求めて多施設を渡り歩いている。
従来の診断方法の大きな問題点は、診断に熟練した臨床能力を要することである。慢性疲労症候群に関する十分な知識と経験が必要であることは言うまでもないが、似た症状を示す疾患は多く、それらとの鑑別診断も必須となる。したがって、診断には十分な研修を積んだ専門医師が当らなければならない。しかし、プライマリ・ケア医にとって、客観的検査所見のない慢性疲労症候群の診断は必ずしも容易ではない。
診断に習熟を要するのは、簡便かつ客観的な病状評価方法が存在しないことが大きな要因となっている。客観的な指標を目指して、これまでにもいくつかの検査方法が試みられているが、簡便性という観点をも考慮すると、日常診療への応用は到底望むことが出来ないのが現状である。
因みに、疲労度を評価する方法としては:精神的疲労感、肉体的疲労感などの各質問評価結果を数値データとしてCRTディスプレイに表示する方法(特許文献1参照);視覚機能や聴覚機能を計測して、その疲労度を評価する方法(特許文献2参照);身体部位における振動を検出し、疲労度を診断する方法(特許文献3参照);体液中のアシルカルチニンの濃度を指標として疲労度を評価する方法(特許文献4参照)などが提案されているが、いずれも慢性疲労症候群を診断する方法ではない。
一方、細胞ゲノム中の5−HTTLPRの遺伝子型を判定することで慢性疲労症候群の罹患リスクを予測する方法(特許文献5参照)や、末梢血単核細胞などのRnase L含有細胞の細胞抽出物中において、約30kDaのRnase L分子を検出することで慢性疲労症候群を診断する方法(特許文献6参照)も提案されているが、メッセンジャーRNAを対象とした診断方法ではない。
メッセンジャーRNAを対象とした慢性疲労症候群の診断方法も報告されているが(非特許文献1〜3参照)、本発明者らの抽出したマーカー遺伝子群とは異なるマーカー遺伝子群を用いられているうえ、検体処理方法が異なり、密度勾配遠心を使うなど実用的ではない。さらに、密度勾配遠心を使って白血球を分離することはそれだけで刺激に基づく信号が細胞内に入り、遺伝子発現が変動するとの指摘もある(非特許文献4参照)。
特開平8−164127号公報 特開2005−168856号公報 国際公開2002/094091号パンフレット 特開2005−70024号公報 特開2005−13147号公報 特表2000−516818号公報 J.Clin.Pathol. 2005;58;p826−832 Clin.Exp.Allergy, 2003;33:p1450−1456 Dis Markers, 2002;18:p193−199 Neuroscience Letters, 2005;381;p57−62
本発明の目的は、慢性疲労症候群の罹患の有無を、簡便に、しかも客観的かつ高精度に診断するための新規な方法を提供することにある。
本発明者らは、慢性疲労症候群の病態を客観的に評価するために、検体として容易に得られ、しかも、ストレスに関連する因子の受容体の多くを発現する末梢血白血球に着目した。そして、ストレス応答に関連する約1500遺伝子のメッセンジャーRNAの発現パターンを網羅的に解析し、パターン化することで、慢性疲労症候群の罹患の有無を評価し得る方法を見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いて、表1及び表2から選ばれるマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定する慢性疲労症候群の診断方法を提供する。
表1に記載された遺伝子は有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子である。前記マーカー遺伝子は、健常者と慢性疲労症候群患者との遺伝子発現解析において、ベイズ推定をしないdoitall.pair有意差検定によりp値が0.05以下の遺伝子であり、健常者に比べて患者で発現が増加している遺伝子10個と発現が減少している遺伝子2個から成る。表1には、各マーカー遺伝子の遺伝子記号、発現比の平均値、p値、GenBank番号、名前/アノテーションが示されている。被検者の検体(末梢血)由来のメッセンジャーRNAを用いて、前記表1記載のマーカー遺伝子の発現プロファイルを検査することにより、該被検者が慢性疲労症候群に罹患しているか否かを判定することができる。
また、表2に記載された遺伝子は、別の有意差検定で選出した有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子である。前記マーカー遺伝子は、健常者と慢性疲労症候群患者との遺伝子発現解析において、ベイズ推定をするpierre.pair有意差検定によりp値が0.05以下の遺伝子で、健常者に比べて患者で発現が増加している遺伝子35個から成る。表1と同様、表2には、各マーカー遺伝子の遺伝子記号、発現比の平均値、p値、GenBank番号、名前/アノテーションが示されている。表1記載のマーカー遺伝子と同様に、被検者の検体(末梢血)由来のメッセンジャーRNAを用いて、前記表2記載のマーカー遺伝子の発現プロファイルを検査することにより、該被検者が慢性疲労症候群に罹患しているか否かを判定することができる。
本明細書の実施例では、患者及び健常者から得た全血よりRNAを抽出し、表1又は表2に記載のマーカー遺伝子について、DNAチップを用いて遺伝子発現解析を行った。ここでDNAチップとは、ガラス等の支持基体上に多数の遺伝子に相当する塩基配列を有するDNA断片を固定化したものであり、ハイブリダイゼーションにより、サンプル中のRNAを検出するものである。解析は、遺伝子の網羅的な発現解析が可能であれば、上記DNAチップに代えて、他のDNA固相化試料(DNAアレイ、ビーズ、メンブレンフィルター等)や定量法を利用してもよい。対象患者は、未治療の慢性疲労症候群患者のうち、本診断法開発のための研究に参加することについて文書により説明し同意を得た者とした。診断は、CDCの慢性疲労症候群の診断基準に従った。各患者に対し、性、年齢の合致した健常対照者を選定し、比較対照とした。患者サンプルと健常者サンプル間の各遺伝子の発現量比を求め、患者/健常者比較データのすべてにおいて蛍光強度が300以上である遺伝子群を解析対象遺伝子とした。患者/健常者比較データにおいて、発現量が有意に増加もしくは減少している遺伝子を有意差検定により抽出し、健常者に比べ、患者において発現量が有意に増加している遺伝子、及び有意に減少している遺伝子を、慢性疲労症候群の罹患の有無を評価するための指標、すなわち「慢性疲労症候群マーカー遺伝子」として選定した。
被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定する方法としては、表1及び/又は表2に記載のマーカー遺伝子に関して、被検者、患者、健常者の遺伝子発現のプロファイルを比較解析することにより行うことができる。
例えば、被検者由来のRNAサンプルと、健常者由来のRNAサンプルを互いに発光波長の異なる蛍光色素でラベルした後、表1及び/又は表2に記載の遺伝子を搭載した同一の慢性疲労症候群評価用DNAチップ上で競合ハイブリダイゼーションを行う。チップ上の各プローブの蛍光強度は、被検者と健常者の各遺伝子の発現強度比を示し、その発現プロファイルを上記の表1及び/又は表2に記載の遺伝子の患者/健常者の発現比較した遺伝子発現プロフィル元データと比較解析することにより、被検者の罹患の有無を診断することができる。また、健常者由来のRNAサンプルの代わりに、一定のRNAサンプル(例えば、市販のユニバーサルRNAサンプル)をコントロールサンプルとして用いて、表1及び/又は表2に記載の遺伝子に関して、被検者、患者、健常者間の比較解析を行っても良い。さらに、ユニバーサルRNAサンプルの蛍光強度の代わりに、被検者、患者、健常者、それぞれの1色の蛍光強度をチップ間、遺伝子間でノーマリゼーションしたデータセットを基準として用いる、所謂、1色法でも実施することができる。
遺伝子の発現解析方法は、DNAチップに限定されず、DNAアレイやメンブレンフィルター等の他のDNA固相化試料を用いた核酸ハイブリダイゼーション法、RT-PCRやリアルタイムPCR等の定量的PCR法、ノーザンブロット法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、及びディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法等、当該技術分野で知られた任意の解析方法を用いることができる。特に、多数の遺伝子を一度に網羅的に解析できるという点で、DNAチップ、DNAアレイ、メンブレンフィルター、及びビーズ等のDNA固相化試料を用いた解析方法が好ましい。
遺伝子を検出するためのプローブは、周知の方法に従って、表1及び表2から選ばれる各マーカー遺伝子の特異性の高い領域(例えば、3’UTR部分)に相補的な配列として設計することができ、25−100塩基長の合成オリゴプローブ、あるいは300−1000塩基長のPCR産物を使用することができる。固相上へのプローブの固定化方法は、特に限定されず、周知の方法に従い、合成したプローブを固相上にスポットするか、プローブを固相上で合成
すればよい。DNAチップを用いた検査システムの一例を図1に示す。
実際の臨床検査の現場では、被検者の遺伝子発現データと、あらかじめ取得しておいた健常者及び慢性疲労症候群患者の遺伝子発現データとを比較解析する手段を有するシステムを用意する。該システムでは、被検者、健常者及び慢性疲労症候群患者の遺伝子発現データに加えて、それぞれの年齢及び性別などの臨床データを加えて比較解析を実施する。例えば、患者及び健常者の発現データを年齢、性別に分けてデータベースとして蓄えて置けば、データベースから被検者と年齢、性別が合致したデータを取り出すだけで、被検者と患者、健常者の比較解析を行うことができる。許容される年齢差としては5歳以内が望ましい。また、患者及び健常者の発現データをコンピュータにあらかじめ学習させておき、被検者の発現データが患者と健常者のどちらの発現パターンに近いかをコンピュータに判断させることにより、被検者の罹患の有無を診断することもできる。
データの解析方法は、クラスタ解析のほか、サポートベクターマシン等の機械学習のアルゴリズム等、当該技術分野で知られた任意の解析方法を用いることができる。システムの概要を図2に示す。
本発明によれば、慢性疲労症候群の罹患の有無を、被検者のほんの数ccの末梢血から得たRNAの遺伝子発現解析により、簡便に、しかも客観的かつ高精度に診断することができ、従来、困難であった慢性疲労症候群の診断を容易に実施することができる。本発明の方法は、従来の限られた因子を測定する方法に比べ、数多くのRNA発現量から生体機能を多面的に把握することになるので、慢性疲労症候群のような複雑な疾患の診断方法として原理的にも適切であり、効用大なるものである。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕慢性疲労症候群マーカー遺伝子の選定
1.患者及び健常対照者
対象患者は、名古屋大学医学部附属病院総合診療部を2000年2月から2004年5月までの間に受診した未治療の慢性疲労症候群患者のうち、本診断法開発のための研究に参加することについて文書により説明し同意を得た者とした。本研究は名古屋大学医学部附属病院倫理委員会の承認を得ている。診断は、CDCの慢性疲労症候群の診断基準に合致するものとした。また、各患者に対し、性、年齢の合致する健常者を選び、健常対照者とした。
治療前のサンプルを得た11名の患者は、男性4名、女性7名、年齢は25歳から55歳まで(平均35.7歳)であった。11名のうち3名は軽い2次性のうつ状態ないし不安状態を示したが、メインの症状は慢性疲労症候群である。
2.遺伝子発現解析
患者から、PAXgene Blood RNA System(キアゲン社製)を用いて5 cc採血し、トータルRNAを抽出した。採血は、午前10時から午後1時までの空腹時とし、医師又は看護師が安静下に肘静脈より採血した。トータルRNAの収量は、5-15マイクログラムであった。
次に、各患者より抽出したトータルRNAを5マイクログラムずつ取り出し、T7プロモータ配列を付加したオリゴ(dT)24プライマーをアニールさせ、まず、First strand DNA合成を行った。次に、このFirst strand DNAを鋳型にして、T7プロモータ配列を有するSecond strand DNAを合成した。最後にSecond strand DNAを鋳型にして、T7 RNA polymeraseによるRNA合成を行った。合成したRNA 6マイクログラムに対し、ランダムヘキサマーをアニールさせ逆転写酵素反応を行い、Cy5-dCTPを鎖中に取り込ませることで蛍光標識したcDNAを合成した。
各患者に対して、性、年齢の合致した健常対照者11名から、患者の場合と同様に5 cc採血した後トータルRNAを抽出し、蛍光ラベルとしてCy3を用いた以外は同様の手順でcDNAを合成した。
比較解析を行う2種類のcDNAを等量混合した後、DNAチップ(日立製作所社製薬物応答解析用DNAチップ)にかけてハイブリダイゼーションを62℃で12時間行った。洗浄後、スキャナー(GSI-Lumonics社製ScanArray 5000)により各スポットの蛍光強度を測定し、患者サンプルと健常対照者サンプルの各遺伝子における発現量の比を求めた。
3.データ解析
3.1 慢性疲労症候群のマーカー遺伝子の選定(I)
解析対象とする遺伝子は、11組のデータすべてにおいて蛍光強度が300以上である遺伝子群(1072個)とした。まず、患者/健常者比較データにおいて、発現量が有意に増加もしくは減少している遺伝子を有意差検定(ベイズ推定なし:doitall.pair:p値<0.05)により抽出した。健常者と比べ、患者において発現量が有意に増加している遺伝子は10個、有意に減少している遺伝子が2個であった。これらの遺伝子を表1に、クラスタ解析結果を図3に示す。これらの遺伝子は、被検者が慢性疲労症候群に罹患しているか否かの判定、すなわち慢性疲労症候群のマーカー遺伝子として有用である。
Figure 2007228878
3.2 慢性疲労症候群のマーカー遺伝子の選定(II)
解析対象とする遺伝子は、11組のデータすべてにおいて蛍光強度が300以上である遺伝子群(1072個)とした。まず、患者/健常者比較データにおいて、発現量が有意に増加もしくは減少している遺伝子を有意差検定(ベイズ推定あり:pierre.pair:p値<0.05)により抽出した。健常者と比べ、患者において発現量が有意に増加している遺伝子は35個見つかった。これらの遺伝子を表2に、クラスタ解析結果を図4に示す。これらの遺伝子は、被検者が慢性疲労症候群に罹患しているか否かの判定、すなわち慢性疲労症候群のマーカー遺伝子として有用である。
Figure 2007228878
4. 慢性疲労症候群のマーカー遺伝子のリアルタイム定量PCRによる確認
4.1 検量線作成用標準サンプルの逆転写反応
検量線作成用標準サンプルはHuman Blood,Peripheral Leukocyte total RNA(BD Biosciences社、カタログ番号636580) を使用し、Oligo-dTプライマーによる逆転写反応を行った。逆転写産物(cDNA)250ngまたは50ngを起点とし、各遺伝子解析に対して5段階、5倍希釈系列を作製し、PCRの鋳型とした。
4.2 患者、健常者由来のトータルRNA検体の逆転写反応
各トータル RNA検体はOligo-dTプライマーにより逆転写反応を行った。PCRの鋳型としては、逆転写産物(cDNA)を50ngまたは10ng使用した。内在性コントロールGAPDHに対しても同様である。
4.3 PCR条件と装置
標準サンプルならびに各検体は3実験づつ(N=3)、PCRを行った。条件は、95℃×10min、(95℃×15s、60℃×1min)×40サイクルでPCRを行った。装置は、アプライドバイオシステムズ PRISM 7900HTを使用した。
4.4 検量線作成とデータ解析
専用ソフトSDS2.1(アプライドバイオシステムズ社)を用いて検量線を作成した。標準サンプルの測定値をもとに、縦軸に△Rn(増加蛍光量)、横軸にCycle数をプロットして、遺伝子ごとに増幅曲線を自動作成した。次に、全標準サンプルの指数関数増幅領域にThreshold Lineの横軸を設定し、増幅曲線との接点に当たるcycle数(CT値)を決定した。さらに、縦軸にCT値、横軸にQuantityをプロットした検量線を遺伝子ごとに自動作成した。
各検体のQuantityと平均値の算出も、上記と同様にソフトが増幅曲線を自動作成し、CT値を決定し、その検量線とCT値より、各検体のQuantityを遺伝子ごとに自動算出した。そして、各検体のQuantityの3実験平均値(±標準偏差(STv))とCV((変動係数)値を遺伝子ごとに算出した。その際、CV値<11%であることを確認した。その後、各遺伝子に対する平均値を内在性コントロール用遺伝子GAPDHで補正した。相対値は、健常者サンプルを1にした時の患者サンプルの発現変化量として表した。
4.5 慢性疲労症候群のマーカー遺伝子のリアルタイム定量PCRによる確認
表1記載の遺伝子に関して、7組の患者および健常者の検体を用いて、DNAチップ解析および定量PCR解析をした結果を表3に示す。なお、HSPA2およびCOX7Cの2遺伝子に関しては、アプライドバイオシステム社から購入したプライマー・セットが設計上の理由から不適であった為、ここでは解析をしなかった。DNAチップの結果と定量PCRの結果はよく一致している。
Figure 2007228878
〔実施例2〕マーカー遺伝子による慢性疲労症候群の診断
1.被検者
名古屋大学医学部附属病院総合診療部を2000年2月から2004年5月までの間に受診した患者のうち、本診断法開発のための研究に参加することについて文書により説明し同意を得た者とした。本研究は名古屋大学医学部附属病院倫理委員会の承認を得ている。診断は、CDCの慢性疲労症候群の診断基準に合致するものとした。また、各患者に対し、性、年齢の合致する健常者を選び、健常対照者とした。
治療前のサンプルを得た11名の慢性疲労症候群患者は、男性4名、女性7名、年齢は25歳から55歳まで(平均35.7歳)であった。11名のうち3名は軽い2次性のうつ状態ないし不安状態を示したが、メインの症状は慢性疲労症候群である。慢性疲労症候群でない患者15名は、男性3名、女性12名、年齢は23歳〜61歳まで(平均37.6歳)であった。15名の内、2名は病名保留、3名は器質的疾患、10名は精神疾患、内2名は軽い2次性の慢性疲労状態であったがメインは精神疾患である。
2.遺伝子発現解析
被検者より、PAXgene Blood RNA System(キアゲン社製)を用いて各々5 cc採血し、トータルRNAを抽出した。トータルRNAの収量は、5-10 マイクログラムであった。各被検者より抽出したトータルRNA 5マイクログラムに対して、T7プロモータ配列を付加したオリゴ(dT)24プライマーをアニールさせ、まず、First strand DNA合成を行った。次に、このFirst strand DNAを鋳型にして、T7プロモータ配列を有するSecond strand DNAを合成した。最後にSecond strand DNAを鋳型にして、T7 RNA polymeraseによるRNA合成を行った。RNA 6 マイクログラムに対し、ランダムヘキサマーをアニールさせて逆転写酵素反応を行い、Cy5-dCTPを鎖中に取り込ませることで蛍光標識したcDNAを合成した。
コントロールとして、各被検者と性別及び年齢が合致する健常者から採血し、前記被検者サンプルと同様にCy3-cDNAを合成した。それぞれの被検者サンプルから作製したCy5-cDNAと、コントロールサンプルのCy3-cDNAを6 マイクログラムずつ等量混合した後、DNAチップ(日立製作所社製薬物応答解析用DNAチップ)にかけハイブリダイゼーションを62℃で12時間行った。洗浄後スキャナー(GSI-Lumonics社製 ScanArray 5000)により各スポットの蛍光強度を測定し、数値化ソフトウエア(GSI-Lumonics社製 QuantArray)を用いて各遺伝子におけるコントロールサンプルと各被検者サンプルとの発現強度比を求めた。
3.被検者の診断
3.1慢性疲労症候群のマーカー遺伝子(I)を用いた被検者の診断
上記26人の被検者を表1の慢性疲労症候群のマーカー遺伝子(I)12個でクラスタリング解析した結果を図5に示す。7名が慢性疲労症候群と、11名が慢性疲労症候群外と診断され、8名が境界領域であった。
3.2慢性疲労症候群のマーカー遺伝子(II)を用いた被検者の診断
上記26人の被検者を表2の慢性疲労症候群のマーカー遺伝子(II)35個でクラスタリング解析した結果を図6に示す。4名が慢性疲労症候群と、10名が慢性疲労症候群外と診断され、12名が境界領域であった。
以上のように、特定遺伝子群の発現解析による慢性疲労症候群の診断は、臨床所見による結果とよい一致を示し、本発明の有効性が高いことが示された。
本発明の方法は、臨床現場における、慢性疲労症候群の客観的な診断方法として有用である。
図1は本発明の慢性疲労症候群のDNAチップを用いた検査システムの概念図である。図中、F1はDNAチップ、F2は本発明で選択された遺伝子に相当するプローブDNA、F3は励起光源及び蛍光検出器、F4は蛍光検出器制御コンピュータを表す。 図2は本発明の慢性疲労症候群の評価システムの概念図である。図中、個人情報データベースには性、年齢等の情報管理が格納されている。 図3は有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子群(I)のクラスタ解析結果を示す。 図4は有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子群(II)のクラスタ解析結果を示す。 図5は有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子群(I)を用いた被検者の診断結果を示す。 図6は有用な慢性疲労症候群のマーカー遺伝子群(II)を用いた被検者の診断結果を示す。

Claims (9)

  1. 被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いた、表1及び表2から選ばれるいずれかのマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定することを特徴とする慢性疲労症候群の診断方法。
  2. 被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いた、表1に記載のマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定することを特徴とする慢性疲労症候群の診断方法。
  3. 被検者の末梢血由来のメッセンジャーRNAを用いた、表2に記載のマーカー遺伝子の発現解析結果に基づき、該被検者の慢性疲労症候群の罹患の有無を判定することを特徴とする慢性疲労症候群の診断方法。
  4. 前記遺伝子発現解析が、被検者の遺伝子発現のプロファイルと、慢性疲労症候群患者及び健常者の遺伝子発現のプロファイルとを比較解析することにより行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の慢性疲労症候群の診断方法。
  5. 前記遺伝子発現解析が、チップ、アレイ、メンブレンフィルター、及びビーズを含むDNA固相化試料のいずれかを用いて行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の慢性疲労症候群の診断方法。
  6. 前記遺伝子発現解析が、RT−PCR、リアルタイムPCR、ノーザンブロット法、サブトラクション法、ディファレンシャル・ディスプレイ法、及びディファレンシャル・ハイブリダイゼーション法から選ばれるいずれかの方法を用いて行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の慢性疲労症候群の診断方法。
  7. 表1に記載のマーカー遺伝子にそれぞれ特異的にハイブリダイズし、該遺伝子を検出するための各プローブ、及び/又は
    表2に記載のマーカー遺伝子にそれぞれ特異的にハイブリダイズし、該遺伝子を検出するための各プローブを、固相上に固定化したことを特徴とする慢性疲労症候群の診断用固相化試料。
  8. 被検者の遺伝子発現データと、あらかじめ取得しておいた健常者及び慢性疲労症候群患者の遺伝子発現データとを比較解析する手段を有することを特徴とする慢性疲労症候群の診断システム。
  9. 前記被検者、健常者及び慢性疲労症候群患者の遺伝子発現データに、それぞれの年齢及び性別のデータを加えて比較解析する手段を有することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
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