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JP2007175107A - プリオンの不活化方法 - Google Patents

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Shinji Fujii
慎二 藤井
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Abstract

【目的】医療器具等の被洗浄物に対する、ドデシル硫酸ナトリウム水溶液による実用的で安全なプリオンの不活化方法を実現する。
【構成】耐圧容器20内に貯留された、ドデシル硫酸ナトリウム濃度が3重量%以上の洗浄液中に被洗浄物を配置する。そして、耐圧容器20から給排気装置50により排気して耐圧容器20の内圧が洗浄液の水蒸気圧以上に維持されるよう減圧した後、洗浄液を100℃以上で3分間以上加熱する。この過程の耐圧容器20からの排気中を除く任意の時期において、超音波発信装置60からの超音波振動を洗浄液に与えてキャビテーションを発生させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、プリオンの不活化方法、特に、被洗浄物に付着したプリオンを不活化するための方法に関する。
プリオンは、一部にはウイルスと考える説もあるが、一般にはDNAまたはRNAコアを持たない感染性タンパク質と理解されており、スクレイピーに冒されたヒツジやヤギおよびウシ海綿状脳症(BSE)に冒されたウシなどの動物からヒトへ感染する可能性がある、クールー、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)および家族性致死性不眠症等の潜伏期間が非常に長い致死性疾病の発症原因として恐れられている。そして、ヒトへのプリオンの感染は、牛肉などの摂取による場合やプリオンに感染したヒトから血液、臓器および硬膜の提供を受けた場合のほか、プリオン感染者に対して用いられた履歴のある手術用器具類等の各種の医療器具を通じて起こる可能性があるものと考えられている。
そこで、非特許文献1、2は、医療器具を通じたプリオン感染を防止する観点から、医療器具の好ましい処理法(滅菌法)を挙げており、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いた滅菌法(以下、「SDS処理」と云う)をプリオンの完全な不活化法として推奨している。SDS処理では、3%SDS溶液(洗浄液)を用い、医療器具を100℃で3分間処理する必要がある。
しかし、SDSは、水に溶解しにくい粉末状の界面活性剤であるため、水中においてプリオンとの確実な接触を確保することができる均質な洗浄液を調製するのが困難である。また、プリオンは、血液や生体組織片に紛れて医療器具に付着している場合が多いため、SDS処理の効果を高めるためには、医療器具から洗浄液中へ汚染物を完全に移行させる(すなわち、医療器具から汚染物を完全に分離して洗浄液中で分散させる)必要がある。ところが、非特許文献1、2は、いずれも、洗浄液の調製方法を含め、SDS処理の具体的な方法を示していないため、一部にはSDS処理の実用性に対する疑問すら生じている(例えば非特許文献2)。また、SDS処理は、洗浄液を100℃に加熱するため、洗浄液の沸騰や蒸発によりプリオンを含む飛沫や蒸気を環境中へ拡散させる危険性もある。
厚生労働省、厚生労働省遅発性ウイルス感染調査研究班、「クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル 改訂版」、48−49頁、2002年 白石ら、「プリオンの消毒」、臨床と微生物、Vol29、No.4、90−91頁、2002年7月
本発明の目的は、医療器具等の被洗浄物に対するSDS処理による実用的で安全なプリオンの不活化方法を実現することにある。
本願において、「プリオン」という用語は、プリオン類似物、すなわちそれ自体はプリオンではないが、プリオンと同じ構造を有するかまたは同じ特性を示すタンパク質も含む概念として用いる。
本発明に係るプリオンの不活化方法は、被洗浄物に付着したプリオンを不活化するための方法であり、耐圧容器に貯留された、ドデシル硫酸ナトリウム濃度が3重量%以上になるようドデシル硫酸ナトリウムとそれを溶解するための用水とを含む洗浄液中に被洗浄物を配置する工程1と、洗浄液を貯留した耐圧容器から排気し、耐圧容器の内圧を洗浄液の水蒸気圧以上に維持しながら減圧する工程2と、工程2の後で耐圧容器を気密化し、洗浄液を100℃以上で3分間以上加熱する工程3とを含んでいる。そして、この不活化方法では、耐圧容器からの排気中を除く工程1から工程3の任意の時期において、洗浄液にキャビテーションを発生させる。
この不活化方法では、工程2において耐圧容器の内圧を減圧すると、粉末状のドデシル硫酸ナトリウム内に含まれる空気が排出される。この結果、用水に溶解しにくいドデシル硫酸ナトリウムは、用水との接触面積が大きくなり、用水への溶解が促進される。このような工程2において、耐圧容器の内圧は、洗浄液の水蒸気圧以上に維持されるため、洗浄液は沸騰しない。このため、被洗浄物からのプリオンを含む可能性のある蒸気や飛沫により耐圧容器を汚染したり、減圧時における耐圧容器からの排気によりプリオンを環境中へ拡散したりする危険性を防止することができる。また、この工程2では、耐圧容器の内圧の減圧により、被洗浄物に付着した汚れが被洗浄物から剥離(分離)し、被洗浄物が洗浄されると共に、被洗浄物から分離した汚れが洗浄液中に分散しやすくなる。そして、工程3を実施すると、被洗浄物から分離した汚れに含まれるプリオンおよび被洗浄物に残留しているプリオンは、洗浄液中のドデシル硫酸ナトリウムの作用により不活化される。
このような不活化工程において、所定の時期に洗浄液にキャビテーションを発生させると、洗浄液中で発生する気泡により、ドデシル硫酸ナトリウムの用水への溶解がさらに促進され、また、被洗浄物からの汚れの分離がより効果的に促進される。この結果、洗浄液は、全体のドデシル硫酸ナトリウム濃度が3重量%以上の安定な濃度に均一化され、また、被洗浄物に付着していたプリオンは、そのような洗浄液中へ分散しやすくなる。この結果、工程3では、被洗浄物からのプリオンと洗浄液との接触性が高まり、プリオンが効果的に不活化される。
この不活化方法では、工程2において、耐圧容器への外気導入と耐圧容器からの排気とを繰り返し、耐圧容器の内圧を変動させることができる。この場合、粉末状のドデシル硫酸ナトリウム内に含まれる空気がより効果的に排出され、ドデシル硫酸ナトリウムの用水への溶解がより促進される。また、被洗浄物からの汚れの分離がさらに促進され、被洗浄物に付着していたプリオンは、洗浄液中へより分散しやすくなる。
また、この不活化方法では、通常、耐圧容器の内圧が減圧状態に設定された状態で耐圧容器を気密化し、工程3を実施するか、或いは、工程2において減圧された耐圧容器へ外気を導入してから耐圧容器を気密化し、工程3を実施する。
さらに、この不活化方法では、通常、洗浄液に超音波振動を与えてキャビテーションを発生させるか、或いは、洗浄液の高速撹拌によりキャビテーションを発生させる。また、この不活化方法では、少なくとも工程2から工程3への移行過程において、洗浄液にキャビテーションを発生させるのが好ましい。
この不活化方法において用いる、ドデシル硫酸ナトリウムを溶解するための用水は、軟水が好ましい。用水として軟水を用いる場合は、被洗浄物が医療器具の場合、被洗浄物に付着した血液の凝集を防ぐことができるため、工程2等において被洗浄物に付着した汚れがより効果的に分離して洗浄液中へ分散し、プリオンの不活化効果を高めることができる。
本発明に係るプリオンの不活化方法は、耐圧容器を用いた上述の工程を含んでいるため、SDS処理により、医療器具等の被洗浄物に付着したプリオンを実用的にかつ安全に不活化することができる。
図1を参照して、本発明に係るプリオンの不活化方法を実施するための洗浄装置の一例を説明する。図において、洗浄装置1は、耐圧容器20、給水経路30、排水経路40、給排気装置50および超音波発信装置60を主に備えている。
耐圧容器20は、その内部に後述する被洗浄物を収容するためのものであり、被洗浄物を出し入れするための開閉可能な蓋体(図示せず)を備えている。この蓋体は、閉鎖したときに、耐圧容器20を気密に設定することができるものである。耐圧容器20は、蓋体を含む全体の壁部が二重構造に形成されており、この二重構造の壁部により形成される、熱媒を充填するための一連の空間21を有している。空間21には、熱媒である水蒸気や冷水等の流体を導入するための熱媒導入装置22と、当該流体を空間21から排出するための熱媒排出装置23とが連絡している。熱媒導入装置22は、空間21内へ蒸気を供給するための、電磁弁22bを有する蒸気供給経路22aと、空間21内へ冷水を供給するための、電磁弁22dを有する冷水供給経路22cとを備えている。一方、熱媒排出装置23は、空間21から蒸気を排出するための、電磁弁23bを有する蒸気排出経路23aと、空間21から冷水を排出するための、電磁弁23dを有する冷水排出経路23cとを備えている。
また、耐圧容器20の内部には、後述する洗浄液の温度を計測するための温度センサー24と、耐圧容器20の内圧を計測するための圧力センサー25とが設けられている。
給水経路30は、耐圧容器20内で後述する洗浄液を調製するための用水を供給するためのものであり、耐圧容器20内へ延びており、また、耐圧容器20方向へ向けて軟水化装置31と電磁弁32とをこの順に有している。軟水化装置31は、水道水等の原水から硬度分(カルシウムおよびマグネシウム)を除去し、軟水を得るためのものである。したがって、この実施の形態において、給水経路30から耐圧容器20内へ供給される用水は軟水である。
排水経路40は、耐圧容器20内から後述する洗浄液を排出するためのものであり、耐圧容器20の底部から延び、また、電磁弁41を有している。
給排気装置50は、耐圧容器20の内外を通気するためのものであり、耐圧容器20内から延びる通気経路51を備えている。通気経路51は、耐圧容器20側から順に分岐経路52、電磁弁53および真空ポンプ54を備えている。分岐経路52は、端部が開口し、また、電磁弁55を有しており、通気経路51を経由して耐圧容器20の内部へ外気を導入するためのものである。真空ポンプ54は、耐圧容器20内の空気を吸引して排気するためのものであり、耐圧容器20の内圧を減圧状態に設定するためのものである。
超音波発信装置60は、後述する洗浄液に超音波振動を与えるためのものであり、耐圧容器20の底部に固定されている。
上述のような洗浄装置1は、図示しない制御装置をさらに備えている。この制御装置は、コンピュータ装置であり、入力部に温度センサー24および圧力センサー25等が連絡しており、また、出力部に各電磁弁22b、22d、23b、23d、32、41、53、55、真空ポンプ54および超音波発信装置60が連絡している。また、この制御装置は、後述する洗浄液の水温と、当該水温における洗浄液の水蒸気圧との関係を予め調べて得られたデータを記憶している。
次に、上述の洗浄装置1を用いたプリオンの不活化方法を説明する。この不活化方法においては、プリオンにより汚染されたもの若しくはプリオンにより汚染されている可能性がある各種の物品であって、高価であることなどの事情により使い捨てが困難なものを洗浄すると共に、当該物品に付着しているプリオンを不活化することができる。
この不活化方法を適用可能な物品(以下、「被洗浄物」と云う)は、特に限定されるものではないが、例えば、医療器具類、ウシ、ヤギおよびヒツジ等の動物の解体用具類および実験器具類等である。医療器具類としては、例えば、プリオン感染者に対して使用したクランプ類、鉗子類、はさみ類、ナイフ類、ケーブル類、パンチ類、ピンセット類、カニューレ類、キャリパー類、カーバー類、キュレット類、スケーラー類、拡張器類、クリップアプリケーター類、開創器類、コントラクタ類、エキスカベータ類、持針器類、吸引管類、凝固電極類、脳波計深部電極類、肋骨および胸骨スプレッダー類、双極性プローブ類および肋骨用鋏類等の手術用器具類を挙げることができる。これらの医療器具類は、獣医療分野において用いられるものであってもよい。また、動物の解体用具類としては、例えば、ノコギリ類、はさみ類およびナイフ類を挙げることができる。さらに、実験器具類としては、例えば、プリオンの研究に用いたビーカー類、試験管類、ろ過装置類、遠心機類および各種機器分析用のセル類などを挙げることができる。
以下、この不活化方法(以下、「洗浄方法」と云う場合がある)を工程毎に具体的に説明する。この洗浄方法は、人為的な作業が必要な部分を除き、洗浄装置1において、制御装置により自動的に実施される。
工程1
先ず、耐圧容器20の蓋体を開け、耐圧容器20内へ被洗浄物を投入する。そして、耐圧容器20内へ粉末状のドデシル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」と云う)の所定量を投入し、耐圧容器20の蓋体を気密に閉鎖する。この状態で、電磁弁32を所定時間開放し、給水経路30から耐圧容器20内へ軟水化装置31で軟水化された所定量の用水を供給する。この結果、耐圧容器20内では、SDSと用水とが混合されて洗浄液が調製され、この洗浄液中に被洗浄物が配置される。そして、被洗浄物に付着している汚れは、徐々に洗浄液中へ分散し始める。
この工程において用いるSDSおよび用水の量は、洗浄液におけるSDSの濃度が3重量%以上になるよう設定する必要がある。SDS濃度が3重量%未満の場合は、非特許文献1において指摘されている通り、被洗浄物に付着しているプリオンの不活化効果が不十分になる可能性がある。ここにおいて、SDS濃度は、被洗浄物に付着している汚れの重量を考慮して設定するのが好ましい。
工程2
次に、真空ポンプ54を作動させ、電磁弁53を開放する。これにより、通気経路51を通じて耐圧容器20内の空気が排気され、耐圧容器20の内圧が減圧される。この結果、洗浄液に含まれる粉末状のSDS中から空気(気泡)が排出され、SDSは用水との接触面積が大きくなるため、水に溶解しにくいSDSの用水への溶解が促進される。また、被洗浄物に付着している気泡が同時に排出され、被洗浄物の表面と洗浄液との接触効果が高まる。この結果、被洗浄物に付着した汚れが被洗浄物から剥離(分離)しやすくなり、被洗浄物から分離した汚れが洗浄液中へ分散しやすくなる。
この工程においては、温度センサー24により測定した洗浄液の温度から制御装置に記憶されたデータに基づいて洗浄液の水蒸気圧を判定し、耐圧容器20の内圧が洗浄液の水蒸気圧以上に維持されるよう耐圧容器20内の空気を排気する。このような排気は、圧力センサー25により計測される耐圧容器20の内圧に基づいて、電磁弁53の開度により調整することができる。耐圧容器20の内圧が洗浄液の水蒸気圧未満になると、洗浄液が沸騰し、通気経路51や大気をプリオンで汚染してしまう可能性がある。具体的には、プリオンが分散し始めた洗浄液が沸騰すると、その際に発生する洗浄液の飛沫が通気経路51内へ侵入し、通気経路51内にプリオンが付着する可能性がある。また、洗浄液の沸騰により発生する水蒸気が通気経路51を通じて大気中へ排出され、水蒸気に含まれるプリオンを大気中へ拡散させるおそれがある。
この工程においては、通常、耐圧容器20内が減圧状態に設定された後、一定時間毎に、電磁弁53が閉鎖されかつ電磁弁55が開放された状態の設定(以下、「外気導入設定」と云う)と、電磁弁53が開放されかつ電磁弁55が閉鎖された状態の設定(以下、「排気設定」と云う)とを繰返すのが好ましい。外気導入設定では、分岐経路52から通気経路51を経由して耐圧容器20内へ外気が自然に導入され、耐圧容器20の内圧が上昇する。一方、排気設定では、外気導入設定において耐圧容器20内へ導入された外気が通気経路51を通じて排気され、耐圧容器20の内圧が低下する。これにより、耐圧容器20の内圧は、一定時間毎に変動することになる。そして、このような内圧の変動の結果、粉末状のSDS中に残留している空気がより効果的に排出されることになり、用水へのSDSの溶解がより促進される。また、同時に、被洗浄物の表面に付着した気泡がより効果的に除去され、被洗浄物と洗浄液との接触効率がさらに高まるため、被洗浄物表面に付着したプリオンを含む汚れが洗浄液中へより分散しやすくなる。
因みに、このような外気導入設定と排気設定との繰返しにおいて、排気設定では、既述のように、温度センサー24により測定した洗浄液の温度から制御装置に記憶されたデータに基づいて洗浄液の水蒸気圧を判定し、耐圧容器20の内圧が洗浄液の水蒸気圧以上に維持されるよう耐圧容器20内の空気を排気する必要がある。
工程3
次に、給排気装置50の電磁弁53、55を閉鎖して耐圧容器20を気密化し、耐圧容器20を加熱する。この際、耐圧容器20は、工程2において上述のように内圧が減圧された状態で気密化されてもよいし、減圧された後に給排気装置50により内部へ外気を導入して復圧(例えば大気圧への復圧)がなされた後に気密化されてもよい。
耐圧容器20の加熱では、熱媒導入装置22の電磁弁22bを開放し、空間21内へ蒸気供給経路22aから蒸気を導入する。これにより、空間21内に蒸気が充填され、耐圧容器20内の洗浄液が加熱される。そして、このような耐圧容器20の加熱により、洗浄液の温度を100℃以上に設定し、この温度を3分間以上維持する。これにより、被洗浄物に付着しているプリオンおよび洗浄液中に分散したプリオンが感染性のない安全な状態に不活化される。
因みに、この実施の形態では、洗浄液用の用水として軟水を用いているため、被洗浄物が血液の付着した医療器具の場合、上述のような洗浄液の加熱をしても血液の凝集が生じ難い。このため、プリオンは、血液中に含まれるものであっても洗浄液との接触性が保たれるため、効果的に不活化される。
キャビテーション工程
この洗浄方法では、給排気装置50による耐圧容器20からの排気中、例えば、工程2において、電磁弁53を開放して真空ポンプ54により耐圧容器20内からの空気を排気している場合を除く上述の工程1から工程3の任意の時期において、超音波発信装置60を作動させ、洗浄液に超音波振動を与える。このような超音波振動により、洗浄液ではキャビデーションが発生し、SDSの用水への溶解がさらに促進され、洗浄液は濃度が均一なSDS溶液となる。また、被洗浄物に付着した汚れは、キャビテーション時に発生する気泡の作用を受けてより効果的に被洗浄物から分離され、また、被洗浄物から分離した汚れは、洗浄液中へ分散しやすくなる。この結果、被洗浄物の洗浄効果が高まり、また、被洗浄物から分離したプリオンと洗浄液との接触性が高まるため、プリオンをより効果的に不活化することができる。
なお、超音波振動によるキャビテーションの発生は、少なくとも工程2から工程3への移行過程、すなわち、工程2の後に耐圧容器20を気密化してから洗浄液が100℃に加熱されるまでの間において実施するのが好ましい。この移行過程においてキャビテーションを発生させると、キャビテーションによる上述のような洗浄液濃度の均一化効果、被洗浄物の洗浄効果およびプリオンと洗浄液との接触性がより高まり、プリオンをより効果的に不活化することができる。
因みに、耐圧容器20からの上述のような排気中において超音波発信装置60を作動させ、洗浄液にキャビテーションを発生させた場合は、洗浄液の液面上で発生する微細な気泡(エアロゾル)が耐圧容器20から併せて排出されることになるため、当該エアロゾル中に含まれるプリオンにより通気経路51を汚染したり、大気中へプリオンを拡散したりするおそれがある。
後処理工程
工程3の後、電磁弁22bを閉鎖し、耐圧容器20の加熱を停止する。そして、耐圧容器20の内圧が大気圧以上の場合は、耐圧容器20を冷却して内圧を大気圧へ戻す。ここでは、電磁弁23bを開放して蒸気排出経路23aを通じて空間21から蒸気を排出し、また、電磁弁22d、23dを開放して冷水供給経路22cを通じて空間21内へ冷水を供給すると共に供給された冷水を冷水排出経路23cを通じて排出する。この際、必要に応じて電磁弁55を併せて開放し、耐圧容器20から分岐経路52を通じて排気して内圧を大気圧へ戻すこともできる。この場合、洗浄液の蒸気が分岐経路52から大気中へ排出される可能性があるが、被処理物に付着していたプリオンは工程3において既に不活化されているため、当該蒸気は、実質的にプリオンを含まず、大気を汚染しない。
次に、電磁弁55を開放した状態で電磁弁41を開放し、耐圧容器20内の洗浄液を排水経路40を通じて排出する。洗浄液が排出されたら、電磁弁41を閉鎖し、給水経路30から耐圧容器20内へ用水を供給する。これにより、耐圧容器20内の被洗浄物は、用水中に浸漬され、すすぎ処理される。この際、電磁弁41を開放しながら用水を供給してもよい。このようにすると、耐圧容器20において、用水を供給しながら排出することができるため、被洗浄物をより短時間で効果的にすすぎ処理することができる。
すすぎ処理の後、電磁弁41、55を閉鎖し、真空ポンプ54を作動させる。そして、電磁弁53を開放すると、耐圧容器20内が減圧される。これにより、耐圧容器20内の水分や被洗浄物に付着している水分が蒸発し、耐圧容器20内および被洗浄物が乾燥処理される。また、水分が蒸発することで耐圧容器20内の熱が潜熱として奪われ、被洗浄物が冷却される。このような減圧工程においては、空間21内へ蒸気を供給し、耐圧容器20の内温を高めてもよい。このようにすると、耐圧容器20内の水分および被洗浄物に付着している水分が蒸発しやすくなり、乾燥処理を短時間で完了することができる。
以上のようにして処理された被洗浄物は、耐圧容器20の蓋体を開放すると、耐圧容器20から取り出すことができ、安全に再利用することができる。
[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態では、超音波発信装置60からの超音波振動により洗浄液においてキャビテーションを発生させたが、キャビテーションは他の手段により発生させてもよい。例えば、耐圧容器20内に撹拌器を配置し、この撹拌器で洗浄液を高速撹拌してキャビテーションを発生させることもできる。
(2)上述の実施の形態において、洗浄液は、工程1から工程2の過程においても徐々に加熱することができる。この場合、用水に対してSDSをより効果的に溶解させることができ、また、被洗浄物からの汚れの分離がより効果的に促進されることになる。この場合の洗浄液の加熱は、既述の通り、空間21内へ蒸気を導入して耐圧容器20を加熱することにより実施する。また、この場合、洗浄液は、被洗浄物に付着した蛋白質の凝集を防止し、洗浄効果を維持若しくは高めるため、加熱温度を50℃以下に設定するのが好ましい。
(3)上述の実施の形態において、後処理工程のすすぎ処理においては、耐圧容器20内にすすぎ用の用水を貯留した状態で耐圧容器20の内圧を変動させてもよい。この内圧の変動は、工程2で説明した外気導入設定と排気設定との繰返しにより実施することができる。この場合、被洗浄物に付着した空気(気泡)を除去することができるため、用水が被洗浄物と接触しやすくなり、すすぎ効果が高まる。
(4)上述の実施の形態では、用水として軟水を用いているが、被洗浄物が医療器具以外のもの(すなわち、血液の付着がないもの)の場合、用水として通常の水道水を用いることもできる。
本発明に係るプリオンの不活化方法を実施するための洗浄装置の縦断面概略図である。
符号の説明
20 耐圧容器
50 給排気装置
60 超音波発信装置

Claims (8)

  1. 被洗浄物に付着したプリオンを不活化するための方法であって、
    耐圧容器に貯留された、ドデシル硫酸ナトリウム濃度が3重量%以上になるようドデシル硫酸ナトリウムとそれを溶解するための用水とを含む洗浄液中に前記被洗浄物を配置する工程1と、
    前記洗浄液を貯留した前記耐圧容器から排気し、前記耐圧容器の内圧を前記洗浄液の水蒸気圧以上に維持しながら減圧する工程2と、
    前記工程2の後で前記耐圧容器を気密化し、前記洗浄液を100℃以上で3分間以上加熱する工程3とを含み、
    前記耐圧容器からの排気中を除く工程1から工程3の任意の時期において、前記洗浄液にキャビテーションを発生させる、
    プリオンの不活化方法。
  2. 工程2において、前記耐圧容器への外気導入と前記耐圧容器からの排気とを繰り返し、前記耐圧容器の内圧を変動させる、請求項1に記載のプリオンの不活化方法。
  3. 前記耐圧容器の内圧が減圧状態に設定された状態で前記耐圧容器を気密化し、工程3を実施する、請求項1または2に記載のプリオンの不活化方法。
  4. 工程2において減圧された前記耐圧容器へ外気を導入してから前記耐圧容器を気密化し、工程3を実施する、請求項1または2に記載のプリオンの不活化方法。
  5. 前記洗浄液に超音波振動を与えて前記キャビテーションを発生させる、請求項1から4のいずれかに記載のプリオンの不活化方法。
  6. 前記洗浄液の高速撹拌により前記キャビテーションを発生させる、請求項1から4のいずれかに記載のプリオンの不活化方法。
  7. 少なくとも工程2から工程3への移行過程において、前記洗浄液にキャビテーションを発生させる、請求項1から6のいずれかに記載のプリオンの不活化方法。
  8. 前記用水が軟水である、請求項1から7のいずれかに記載のプリオンの不活化方法。
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