JP2007169673A - 鋼の熱処理方法、転がり支持装置の転動部材の製造方法、転がり支持装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バックアップロール用軸受のような大型軸受の転動部材を製造する場合であっても、大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を生じ難くする。
【解決手段】内輪1、外輪2、ころ3のうち少なくとも一つの転動部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭又は浸炭窒化と、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の冷却と、焼入れ及び焼戻しとをこの順で施して作製し、その芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下とする。
【選択図】図2
【解決手段】内輪1、外輪2、ころ3のうち少なくとも一つの転動部材を、鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭又は浸炭窒化と、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の冷却と、焼入れ及び焼戻しとをこの順で施して作製し、その芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、鋼の熱処理方法と、転がり支持装置(転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド等)の転動部材の製造方法と、転がり支持装置に関する。
鋼板の熱間圧延工程において、鋼板の上下に配置される一対の圧延ロールには、生産性の面から、より小径で高荷重に耐えることが求められている。このため、鋼板の上下方向外側には、径の大きなバックアップロールが配置されて、圧延加工時に加わる荷重や衝撃による圧延ロールのたわみを抑制している。
このバックアップロールを回転自在に支持するバックアップロール用軸受には、長寿命に加えて、優れた耐荷重性及び耐衝撃性が要求される。このため、バックアップロール用軸受を構成する転動部材(内輪、外輪、転動体)としては、焼入れ性の良好な鋼種(例えば、浸炭鋼)からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭又は浸炭窒化と、焼入れ及び焼戻しとを施すことにより、転がり面をなす表層部の硬さをHRC60(Hv697)以上とし、芯部の硬さをHRC30〜48(Hv302〜484)としたものが用いられている。
このバックアップロールを回転自在に支持するバックアップロール用軸受には、長寿命に加えて、優れた耐荷重性及び耐衝撃性が要求される。このため、バックアップロール用軸受を構成する転動部材(内輪、外輪、転動体)としては、焼入れ性の良好な鋼種(例えば、浸炭鋼)からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭又は浸炭窒化と、焼入れ及び焼戻しとを施すことにより、転がり面をなす表層部の硬さをHRC60(Hv697)以上とし、芯部の硬さをHRC30〜48(Hv302〜484)としたものが用いられている。
しかしながら、上述した従来の製造方法で得られる転動部材では、熱処理時に芯部のオーステナイト結晶に粗大粒が生じて破損の起点となったり、芯部と浸炭又は浸炭窒化が施された表層部との間で引っ張り応力が発生したりすることにより、芯部の材料強度が使用環境下で必要とされる材料強度よりも下回り、芯部で内部起点型の破損が生じる場合がある。
このため、特許文献1では、芯部と表層部との間に発生する引っ張り応力を小さくし、芯部で生じる内部起点型の破損を抑制するために、内輪及び外輪のうち少なくとも一方に浸炭又は浸炭窒化の表面硬化処理を施すとともに、内輪及び外輪のうち少なくとも一方の軸受端面の表層部の硬さをHv550以上Hv690以下とすることが提案されている。
また、特許文献2では、芯部で生じる内部起点型の破損を抑制するために、バックアップロール用軸受の内輪を、平均粒子径3μm以上30μm以下の酸化物系介在物が単位面積(160mm2 )当たり80個以下で、そのうち平均粒子径10μm以上の酸化物系介在物の構成比率が2%未満である軸受鋼で形成することが提案されている。
ところで、バックアップロール用軸受の使用環境が更に過酷になるにつれて、上述した特許文献1や特許文献2に記載の技術では、上述した内部起点型の破損を生じ難くして、長寿命に加え、優れた耐荷重性及び耐衝撃性を得ることが難しくなってきている。
このため、近年、鋼のオーステナイト結晶粒径を微細化することで、材料強度を高める技術が注目を集めている。
オーステナイト結晶粒径は、焼入れ前の組織に依存しているため、焼入れ前の組織が微細である程、焼入れ後にオーステナイトの核生成サイトが増加して、オーステナイト結晶粒径を微細化することができる。ここで、焼入れ前の組織を微細化するためには、浸炭又は浸炭窒化後の冷却速度を速くすることが効果的であると言われている。
このため、近年、鋼のオーステナイト結晶粒径を微細化することで、材料強度を高める技術が注目を集めている。
オーステナイト結晶粒径は、焼入れ前の組織に依存しているため、焼入れ前の組織が微細である程、焼入れ後にオーステナイトの核生成サイトが増加して、オーステナイト結晶粒径を微細化することができる。ここで、焼入れ前の組織を微細化するためには、浸炭又は浸炭窒化後の冷却速度を速くすることが効果的であると言われている。
しかしながら、上述した結晶粒径の微細化技術を、バックアップロール用軸受のような大型軸受(例えば、内径120m以上の軸受)の転動部材に適用しようとした場合には、以下に示す不具合が生じる。すなわち、バックアップロール用軸受のような大型軸受では、転動部材の素材として焼入れ性の良好な鋼種を用いていることから、浸炭又は浸炭窒化後に焼入れで急速に冷却すると、組織全体が不均一な冷却によってマルテンサイトに変態するため、焼歪みによる変形が大きくなり、生産性が良好ではなくなる。
そこで、本発明は、バックアップロール用軸受のような大型軸受の転動部材を製造する場合であっても、大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を生じ難くできるようにすることを課題としている。
そこで、本発明は、バックアップロール用軸受のような大型軸受の転動部材を製造する場合であっても、大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を生じ難くできるようにすることを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、15℃/min以上300℃/min以下の冷却速度で行った後に、焼入れ及び焼戻しを行うことを特徴とする鋼の熱処理方法を提供する。
本発明に係る鋼の熱処理方法によれば、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、15℃/min以上300℃/min以下の冷却速度で行うことにより、素材として焼入れ性が良好な鋼を用いた場合であっても、組織全体が均一な冷却によってマルテンサイトに変態するため、大きな変形を生じることなく、鋼の芯部のオーステナイト結晶粒径や残留引っ張り応力に起因する内部起点型の破損を生じ難くできる。
本発明に係る鋼の熱処理方法によれば、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、15℃/min以上300℃/min以下の冷却速度で行うことにより、素材として焼入れ性が良好な鋼を用いた場合であっても、組織全体が均一な冷却によってマルテンサイトに変態するため、大きな変形を生じることなく、鋼の芯部のオーステナイト結晶粒径や残留引っ張り応力に起因する内部起点型の破損を生じ難くできる。
本発明はまた、互いに対向配置される軌道面を有する第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材の間に転動自在に配置され、前記軌道面に対する転動面を有する転動体と、を転動部材として備え、前記転動体が転動することにより、前記第1部材及び前記第2部材のうち一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置の前記転動部材を製造する方法において、鋼からなる素材を所定形状に加工した後に、浸炭又は浸炭窒化と、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の冷却と、焼入れ及び焼戻しとをこの順で施すことにより、その芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下とすることを特徴とする転がり支持装置の転動部材の製造方法を提供する。
ここで、芯部のオーステナイト結晶粒径を平均値が19.2μmよりも大きくなったり、標準偏差が5.5よりも大きくなると、結晶粒の微細化による内部起点型剥離の抑制効果が得られなくなる。なお、大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を確実に生じ難くするためには、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、冷却速度が30℃/min以上300℃/min以下で行って、芯部のオーステナイト結晶粒径の平均値を17.8μm以下とし、その標準偏差を4.8以下にすることが好ましい。
本発明によれば、上述した本発明に係る鋼の熱処理方法を用いて、転動部材の芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下となるようにしたことにより、転動部材をなす素材として焼入れ性の良好な鋼を用いた場合であっても、転動部材に大きな変形を生じることなく、転動部材の芯部のオーステナイト結晶粒径や残留引っ張り応力に起因する内部起点型の破損を生じ難くできる。
よって、本発明に係る製造方法で得られた転動部材を用いることにより、バックアップローラ用軸受のような大型の転がり支持装置においても、長寿命に加えて、優れた耐荷重性及び耐衝撃性を得ることができる。
また、転がり支持装置の転動部材をなす鋼の組織は、組成の揺らぎ(偏析)や鍛造の影響を受けて、混粒となっていることが一般的である。このため、広い視野で観察すると、正確に粒度を把握することが困難であり、一方、JIS G 0551に規定されている結晶粒度の顕微鏡試験方法を用いて狭い視野で観察すると、1視野の観察で組織全体の粒度を把握することが困難である。
また、転がり支持装置の転動部材をなす鋼の組織は、組成の揺らぎ(偏析)や鍛造の影響を受けて、混粒となっていることが一般的である。このため、広い視野で観察すると、正確に粒度を把握することが困難であり、一方、JIS G 0551に規定されている結晶粒度の顕微鏡試験方法を用いて狭い視野で観察すると、1視野の観察で組織全体の粒度を把握することが困難である。
したがって、本発明者は、混粒の影響を受けずに、転動部材の芯部全体の旧オーステナイト結晶粒径を把握できる方法について鋭意検討を重ねた結果、1視野あたりの面積を30000μm2 以上500000μm2 以下として、30視野以上ランダムに観察することにより、転動部材の芯部のオーステナイト結晶粒径を正確に把握できることを見出した。
すなわち、本発明に係る転がり支持装置の転動部材の製造方法において、前記オーステナイト結晶粒径は、1視野あたり30000μm2 以上500000μm2 以下で30視野以上観察して得られた値とすることが好ましい。
すなわち、本発明に係る転がり支持装置の転動部材の製造方法において、前記オーステナイト結晶粒径は、1視野あたり30000μm2 以上500000μm2 以下で30視野以上観察して得られた値とすることが好ましい。
以下、本発明に係る鋼の熱処理方法について、詳細に説明する。
まず、混合ガス(例えば、RXガス+エンリッチガス)を導入した炉内で加熱保持することによる「浸炭」を行うか、混合ガス(例えば、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス)を導入した炉内で加熱保持することによる「浸炭窒化」を行う。
次に、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の範囲で、空冷、炉冷、ガス冷等で放冷する冷却を行う。ここで、冷却速度を15℃/minよりも遅くすると、芯部のオーステナイト結晶粒径を十分に微細化できずに、内部起点型の破損を十分に抑制できなくなる。一方、冷却速度を300℃/minよりも速くすると、組織全体が不均一な冷却によってマルテンサイトに変態するため、焼歪みによる変形が大きくなる。
まず、混合ガス(例えば、RXガス+エンリッチガス)を導入した炉内で加熱保持することによる「浸炭」を行うか、混合ガス(例えば、RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス)を導入した炉内で加熱保持することによる「浸炭窒化」を行う。
次に、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の範囲で、空冷、炉冷、ガス冷等で放冷する冷却を行う。ここで、冷却速度を15℃/minよりも遅くすると、芯部のオーステナイト結晶粒径を十分に微細化できずに、内部起点型の破損を十分に抑制できなくなる。一方、冷却速度を300℃/minよりも速くすると、組織全体が不均一な冷却によってマルテンサイトに変態するため、焼歪みによる変形が大きくなる。
なお、大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を確実に生じ難くするためには、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、冷却速度が30℃/min以上300℃/min以下で行うことが好ましい。
次に、再度A1変態点以上の温度に加熱した後に、水冷や油冷等で急冷する焼入れを行った後に、焼戻しを行う。この焼戻しは、鋼に大きな変形を生じることなく、鋼の芯部におけるオーステナイト結晶粒径を微細化するために、低温(例えば、150〜220℃程度)で行うことが好ましい。
次に、再度A1変態点以上の温度に加熱した後に、水冷や油冷等で急冷する焼入れを行った後に、焼戻しを行う。この焼戻しは、鋼に大きな変形を生じることなく、鋼の芯部におけるオーステナイト結晶粒径を微細化するために、低温(例えば、150〜220℃程度)で行うことが好ましい。
なお、本発明に係る転がり支持装置とは、例えば、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイドを指す。ここで、転がり支持装置が転がり軸受の場合には、第1部材及び第2部材は内輪及び外輪を指し、同様に、転がり支持装置がボールねじの場合には、第1部材及び第2部材はねじ軸及びナットを、転がり支持装置がリニアガイドの場合には、第1部材及び第2部材は案内レール及びスライダをそれぞれ指す。
また、本発明に係る芯部とは、浸炭又は浸炭窒化による影響を受けていない部分(浸炭層又は浸炭窒化層よりも深い部分)を指す。
さらに、本発明で用いる鋼としては、例えば、SMn420,SMn420C等のマンガン鋼や、SCr415,SCr420等のクロム鋼や、SCM415,SCM420等のクロムモリブデン鋼や、SNC415等のニッケルクロム鋼や、SNCM420,SNCM815等のニッケルクロムモリブデン鋼の浸炭鋼を好適に用いることができる。
さらに、本発明で用いる鋼としては、例えば、SMn420,SMn420C等のマンガン鋼や、SCr415,SCr420等のクロム鋼や、SCM415,SCM420等のクロムモリブデン鋼や、SNC415等のニッケルクロム鋼や、SNCM420,SNCM815等のニッケルクロムモリブデン鋼の浸炭鋼を好適に用いることができる。
本発明に係る鋼の熱処理方法によれば、浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、15℃/min以上300℃/min以下の冷却速度で行った後に、焼入れ及び焼戻しを行うことにより、鋼からなる素材に大きな変形を生じることなく、内部起点型の破損を生じ難くできる。 また、本発明に係る転がり支持装置の転動部材の製造方法によれば、本発明に係る鋼の熱処理方法を用いて、転動部材の芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下となるようにすることにより、転動部材に大きな変形を生じることなく、転動部材の芯部で内部起点型の破損を生じ難くできる。
よって、本発明に係る製造方法で得られた転動部材を用いることにより、バックアップロール用軸受のような大型の転がり支持装置においても、長寿命に加えて、優れた耐荷重性及び耐衝撃性を得ることができる。
よって、本発明に係る製造方法で得られた転動部材を用いることにより、バックアップロール用軸受のような大型の転がり支持装置においても、長寿命に加えて、優れた耐荷重性及び耐衝撃性を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、図1に示す日本精工株式会社製呼び番号NU228(内径:140mm,外径:250mm,幅:42mm)の円筒ころ軸受を、以下に示す手順で作製した。 この円筒ころ軸受は、図1に示すように、互いに対向配置される軌道面1a,2aを有する内輪(第1部材)1及び外輪(第2部材)2と、この内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置され、軌道面に対する表面(転動面)を有するころ(転動体)3と、保持器4と、を備えている。
本実施形態では、図1に示す日本精工株式会社製呼び番号NU228(内径:140mm,外径:250mm,幅:42mm)の円筒ころ軸受を、以下に示す手順で作製した。 この円筒ころ軸受は、図1に示すように、互いに対向配置される軌道面1a,2aを有する内輪(第1部材)1及び外輪(第2部材)2と、この内輪1及び外輪2の間に転動自在に配置され、軌道面に対する表面(転動面)を有するころ(転動体)3と、保持器4と、を備えている。
内輪1、外輪2、及びころ3は、以下に示す手順で作製した。
まず、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM815)からなる素材を所定形状に加工した後、図2に示すように、混合ガス(RXガス+エンリッチガス)を導入した炉内で所定時間加熱保持する浸炭と、冷却速度を1〜900℃/minの範囲で行う冷却(空冷)と、RXガスを導入した炉内で所定時間加熱した後急冷する焼入れ(油冷)と、焼戻しと、をこの順で施す熱処理を行った。
まず、ニッケルクロムモリブデン鋼(SNCM815)からなる素材を所定形状に加工した後、図2に示すように、混合ガス(RXガス+エンリッチガス)を導入した炉内で所定時間加熱保持する浸炭と、冷却速度を1〜900℃/minの範囲で行う冷却(空冷)と、RXガスを導入した炉内で所定時間加熱した後急冷する焼入れ(油冷)と、焼戻しと、をこの順で施す熱処理を行った。
このようにして得られた内輪1の観察検査用サンプルを用いて、芯部(炭素含有率と窒素含有率とが素材と同じ部分)のオーステナイト結晶粒径(γ結晶粒径)の平均値と標準偏差とを、以下に示す手順で測定した。
オーステナイト結晶粒径の平均値は、まず、内輪1を切断して、その切断面を研磨した後、飽和ピクリン酸溶液でエッチングすることにより、芯部のオーステナイト粒界を現出させた。次に、オーステナイト結晶粒界を現出させた芯部において、50視野(1視野あたり30000〜500000μm2 )の写真を、光学顕微鏡(200〜1000倍)を用いて撮影した。次に、得られた写真を用いてオーステナイト結晶粒径を測定し、50視野の平均値を算出した。また、得られた写真を用いて、オーステナイト結晶粒径の標準偏差を算出した。これらの結果は、表1に併せて示した。
オーステナイト結晶粒径の平均値は、まず、内輪1を切断して、その切断面を研磨した後、飽和ピクリン酸溶液でエッチングすることにより、芯部のオーステナイト粒界を現出させた。次に、オーステナイト結晶粒界を現出させた芯部において、50視野(1視野あたり30000〜500000μm2 )の写真を、光学顕微鏡(200〜1000倍)を用いて撮影した。次に、得られた写真を用いてオーステナイト結晶粒径を測定し、50視野の平均値を算出した。また、得られた写真を用いて、オーステナイト結晶粒径の標準偏差を算出した。これらの結果は、表1に併せて示した。
また、得られた内輪1の観察検査用サンプルを用いて、内輪1の熱処理前後の真円度を測定し、その寸法差を算出した。この結果は、No.11の寸法差を1とした時の比で、表1に併せて示した。
なお、得られた外輪2及びころ3は、内輪1と同様の熱処理が施されているため、表層部のオーステナイト結晶粒径の平均値及び標準偏差は、上述した内輪1と同様であった。
さらに、得られた内輪1、外輪2、及びころ3の寿命試験用サンプルと、黄銅製のもみぬき保持器4とを用いてころ軸受を組み立てた後、以下に示す条件で寿命試験を行った。<寿命試験条件>
ラジアル荷重:P/C=0.6
回転速度:1000min-1
潤滑油:Ro68
なお、得られた外輪2及びころ3は、内輪1と同様の熱処理が施されているため、表層部のオーステナイト結晶粒径の平均値及び標準偏差は、上述した内輪1と同様であった。
さらに、得られた内輪1、外輪2、及びころ3の寿命試験用サンプルと、黄銅製のもみぬき保持器4とを用いてころ軸受を組み立てた後、以下に示す条件で寿命試験を行った。<寿命試験条件>
ラジアル荷重:P/C=0.6
回転速度:1000min-1
潤滑油:Ro68
表1に示すように、浸炭後の冷却速度を15〜300℃/minとしたNo.1〜No.6では、No.7〜No.11と比べて、長寿命が得られ、変形量が少なかった。
一方、浸炭後の冷却速度を300℃/minよりも速くしたNo.7,No.8では、長寿命は得られたが、変形量が多くなっていた。
また、浸炭後の冷却速度を15℃/minよりも遅くしたNo.9〜No.11では、変形量は小さかったが、短寿命であった。
表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、寿命との関係を示す図3のグラフを作成した。図3のグラフから、冷却速度を15℃/min以上にすることで、No.11の1.5倍以上の寿命が得られていることが分かる。
一方、浸炭後の冷却速度を300℃/minよりも速くしたNo.7,No.8では、長寿命は得られたが、変形量が多くなっていた。
また、浸炭後の冷却速度を15℃/minよりも遅くしたNo.9〜No.11では、変形量は小さかったが、短寿命であった。
表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、寿命との関係を示す図3のグラフを作成した。図3のグラフから、冷却速度を15℃/min以上にすることで、No.11の1.5倍以上の寿命が得られていることが分かる。
また、表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、変形量との関係を示す図4のグラフを作成した。図4のグラフから、冷却速度を300℃/min以下にすることで、変形量をNo.11の3.2倍以下にできることが分かる。
さらに、表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、芯部のオーステナイト結晶粒径の平均値との関係を示す図5のグラフを作成した。図5のグラフから、冷却速度を15〜300℃/minとした範囲では、芯部のオーステナイト結晶粒径が19.2μm以下となっていることが分かる。
さらに、表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、芯部のオーステナイト結晶粒径の標準偏差との関係を示す図6のグラフを作成した。図6のグラフから、冷却速度を15〜300℃/minとした範囲では、芯部のオーステナイト結晶粒径の標準偏差が5.5以下となっていることが分かる。
さらに、表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、芯部のオーステナイト結晶粒径の平均値との関係を示す図5のグラフを作成した。図5のグラフから、冷却速度を15〜300℃/minとした範囲では、芯部のオーステナイト結晶粒径が19.2μm以下となっていることが分かる。
さらに、表1に示す結果に基づいて、浸炭後の冷却速度と、芯部のオーステナイト結晶粒径の標準偏差との関係を示す図6のグラフを作成した。図6のグラフから、冷却速度を15〜300℃/minとした範囲では、芯部のオーステナイト結晶粒径の標準偏差が5.5以下となっていることが分かる。
以上の結果から、ころ軸受の内輪1、外輪2、及びころ3を、浸炭鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭と、冷却速度が15〜300℃/minの冷却と、焼入れ及び焼戻しとをこの順で施すことで作製し、その芯部において、オーステナイト結晶粒径の平均値を19.2μm以下とし、オーステナイト結晶粒径の標準偏差を5.5以下とすることにより、大きな変形を生じることなく、寿命を長くできることが確認できた。
1 内輪(第1部材)
1a 軌道面
2 外輪(第2部材)
2a 軌道面
3 転動体
1a 軌道面
2 外輪(第2部材)
2a 軌道面
3 転動体
Claims (4)
- 浸炭又は浸炭窒化後の冷却を、15℃/min以上300℃/min以下の冷却速度で行った後に、焼入れ及び焼戻しを行うことを特徴とする鋼の熱処理方法。
- 互いに対向配置される軌道面を有する第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材の間に転動自在に配置され、前記軌道面に対する転動面を有する転動体と、を転動部材として備え、前記転動体が転動することにより、前記第1部材及び前記第2部材のうち一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置の前記転動部材を製造する方法において、
鋼からなる素材を所定形状に加工した後、浸炭又は浸炭窒化と、冷却速度が15℃/min以上300℃/min以下の冷却と、焼入れ及び焼戻しと、をこの順で施すことにより、
その芯部のオーステナイト結晶粒径を、平均値が19.2μm以下で、標準偏差が5.5以下とすることを特徴とする転がり支持装置の転動部材の製造方法。 - 前記オーステナイト結晶粒径は、1視野あたり30000μm2 以上500000μm2 以下で30視野以上観察して得られた値とすることを特徴とする請求項2に記載の転がり支持装置の転動部材の製造方法。
- 互いに対向配置される軌道面を有する第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材の間に転動自在に配置され、前記軌道面に対する転動面を有する転動体と、を転動部材として備え、前記転動体が転動することにより、前記第1部材及び前記第2部材のうち一方が他方に対して相対移動する転がり支持装置において、
前記第1部材、前記第2部材、及び前記転動体のうち少なくとも一つの転動部材は、請求項2又は3に記載の製造方法で得られた転動部材であることを特徴とする転がり支持装置。
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