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JP2007121786A - コーティング液の製造方法、およびそのコーティング液を用いた反射防止膜の製造方法 - Google Patents

コーティング液の製造方法、およびそのコーティング液を用いた反射防止膜の製造方法 Download PDF

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JP2007121786A JP2005315537A JP2005315537A JP2007121786A JP 2007121786 A JP2007121786 A JP 2007121786A JP 2005315537 A JP2005315537 A JP 2005315537A JP 2005315537 A JP2005315537 A JP 2005315537A JP 2007121786 A JP2007121786 A JP 2007121786A
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Tsutomu Otani
強 大谷
Akira Fujisawa
章 藤沢
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Abstract


【課題】 微粒子とバインダーを含む反射防止膜の製造方法において、優れた反射防止性能を有し、かつ必要充分な耐摩耗性など物理的耐久性,および耐薬品性など化学的耐久性を有する反射防止膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 内部に空隙を持ち、酸化物を主成分とするバインダー層と、粒径の一部がバインダー層に埋没している酸化物微粒子とを含む反射防止膜を製造するためのコーティング液の製造方法において、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を、加水分解させる工程が、2つ以上あることを特徴とするコーティング液の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車両用ガラス,ショーウィンドウなどの窓ガラス、眼鏡,カメラレンズなどの光学部材、またはブラウン管,液晶表示装置やプラズマディスプレイパネルなどの情報表示装置などに利用され得る反射防止膜の製造法に関し、とくに、ガラス基板上に施すことによって、光電変換装置用ガラス基板として好適に用いられ得る反射防止膜の製造方法に関する。
ガラスなど透明基材の表面には、その基材の機能に応じて、光をより多く透過させるため、または反射による不要な写り込みや眩惑を防止することを目的として、反射防止膜を形成することがある。
上述の反射防止膜を備えた基材は、車両用ガラス、ショーウィンドウまたは光電変換装置用基板などに利用される。たとえば、光電変換装置用基板においては、光電変換素子をその上に作製する、あるいは光電変換素子を保護することを目的として、透明基材が用いられる。光電変換素子には、この透明基材を通して光が入射する。そのため、この透明基体の透過率を高めることを目的として、この透明基材には反射防止膜が作製される。光電変換素子に限らず、上述の各種用途において、反射防止膜を備える基材は屋外に長期間放置され、また一度取り付けられると取り替えや交換が困難であることから、反射防止膜には、高い物理的化学的耐久性が求められている。
反射防止膜としては、透明基材の表面上に、その基材とは反射率の異なる1つ以上の膜を形成することによって反射率を低減させるものが知られている。たとえば、特開平4−357134号公報には、透明ガラス基板の表面に、屈折率の異なる2層の薄膜層を順次被覆してなる反射低減ガラスが開示されている。
特開平9−249411号公報には、シリコンアルコキシドと二酸化ケイ素微粉末を含有してなる分散液により形成された被膜であって、該被膜の表面から前記二酸化ケイ素微粉末の一部が露出している反射防止膜が開示されている。該反射防止膜の製造方法に関して、シリコンアルコキシドと二酸化ケイ素微粉末を含有してなる分散液を、透明基材の表面上に塗布し、乾燥および焼き付け処理を施すこと、該分散液は、二酸化ケイ素微粉末と、シリコンアルコキシド加水分解液に、メチルセロソルブとエタノールを混合して調製することが開示されている。
特開2002−182006号公報には、内部空隙率が50体積%以下のバインダー層と、平均粒径の1/4から1/2がバインダー層中に埋没している微粒子とを含む反射防止膜が開示されている。また、
好ましくは、反射防止膜の材料を含むコーティング液を透明基材に塗布し、加熱処理を行なって該反射防止膜を製造すること、および、該コーティング液は、微粒子の存在下で、加水分解可能な金属化合物,加水分解用触媒,水および溶媒を混合し、該金属化合物を加水分解して調製することが開示されている。
特開平4−357134号公報 特開平9−249411号公報 特開2002−182006号公報
しかし、上述の反射防止膜には、以下のような問題点があった。
特開平4−357134号公報に記載の反射低減ガラスに代表される、2層もしくはそれ以上の薄膜層を被覆する反射防止膜は、光の干渉作用を利用する。
干渉条件を満たすために、膜厚を厳密に規定する必要があり、膜厚の制御が困難である。また、2層以上の薄膜層を形成するためには、コーティング回数が2回以上必要となることから、製造コストが高く好ましくない。
特開平9−249411号公報に記載の反射防止膜は、シリカゾルと二酸化ケイ素微粒子からなるので、その膜の屈折率は1.46であり、反射率の低減効果が充分ではない。
特開2002−182006号公報に記載の反射防止膜は、バインダー層の内部空隙率が50体積%以下であるが、反射率の低減効果が充分ではない。
これらの状況に鑑み、本発明は、微粒子とバインダーを含む反射防止膜の製造方法において、優れた反射防止性能を有し、かつ必要充分な耐摩耗性など物理的耐久性,および耐薬品性など化学的耐久性を有する反射防止膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、バインダー層と、一部がバインダー層中に埋没している微粒子とを含む反射防止膜の製造方法について、とりわけ反射防止膜の材料を含むコーティング液の製造方法に着目して検討した。その結果、コーティング液を製造する際に、加水分解可能な金属化合物を複数回に分けて混合すれば良いことを見出し、本発明を完成させた。
本発明のコーティング液の製造方法は、内部に空隙を持ち、酸化物を主成分とするバインダー層と、粒径の一部がバインダー層に埋没している酸化物微粒子とを含む反射防止膜を製造するためのコーティング液の製造方法において、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を、加水分解させる工程が、2つ以上あることを特徴とする。好ましくは、前記微粒子の存在下で、前記の金属化合物の所定量を加水分解反応させる第1加水分解工程と、該第1加水分解工程の生成物と、前記金属化合物の残部とを混合して、さらに加水分解反応を行なわせる第2加水分解工程とを含む。
本発明の好ましいコーティング液の製造方法では、前記第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、前記第2加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物とが、同一化学種であってもよく、異なる化学種であってもよい。
本発明の好ましいコーティング液の製造方法では、前記第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、前記第2加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物とのモル比が、20:80から60:40の範囲にある。
本発明のコーティング液の製造方法では、前記バインダー層の主成分が、シリカであり、前記微粒子が、シリカ微粒子であることがより好ましく、前記微粒子の平均粒径が10nm以上1000nm以下であることがさらに好ましい。
本発明の反射防止膜の製造方法は、上述の本発明の製造方法によって製造された記載のコーティング液を、基体上に塗布し、所定の温度で加熱処理することを特徴とする。
さらに、前記所定の温度が200〜450℃であることが好ましく、前記基体がガラス板であることが好ましい。
本発明の膜つきガラス板の1番目の形態は、前記ガラス板の両方の主表面に、上述の本発明の製造方法によって反射防止膜が製造されていることを特徴とする。
本発明の膜つきガラス板の2番目の形態は、前記ガラス板の一方の主表面に、上述の本発明の製造方法によって反射防止膜が製造され、前記ガラス板の他方の主表面には透明導電膜を含む薄膜が製造されていることを特徴とする。
本発明の膜つきガラス板の2番目の形態では、前記透明導電膜を含む薄膜は、フロート法によるガラス板製造工程において、ガラス素板を成形するための熔融金属スズ槽内で、化学気相成長法を用いて製造されることが好ましい。
本発明の光電変換装置用ガラス基板は、上述の本発明の膜つきガラス板を用いることを特徴とする。
本明細書において、「主成分とする」とは、慣用に従って、当該成分を含有する比率が50重量%以上であることをいう。「主成分とする」と記載していない原料、材料や物質についても、同様である。当該成分を含有する比率は、70重量%以上、さらには、90重量%以上であることが好ましい。
本発明のコーティング液の製造方法によれば、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を加水分解する工程が、2つ以上あるので、耐久性と反射防止性能に優れた反射防止膜を製造することのできるコーティング液を製造することができる。さらに、本発明の反射防止膜の好ましい製造方法によれば、加熱処理温度を450℃以下にすることができるので、より低コストで上述の反射防止膜を製造することができる。
以下、本発明によるコーティング液の製造方法、およびそのコーティング液を用いた反射防止膜の製造方法の好適な実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の製造方法によって製造されるコーティング液を用いて、基体上に製造される反射防止膜には、内部に空隙を持ち、酸化物を主成分とするバインダー層と、粒径の一部がバインダー層に埋没している酸化物微粒子とが含まれる。上述のバインダー層には、原料となる金属化合物が反応して生成した酸化物が含まれる。このバインダー層において、上述の酸化物が、上述の微粒子と基体とを結合させる作用の少なくとも一部を発揮する。
本発明のコーティング液の製造方法においては、上述のバインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を加水分解する工程を、少なくとも2つ含む。
(第1加水分解工程)
この工程においては、上述の微粒子の存在下で、上述の加水分解可能な金属化合物の一部を加水分解させる。好ましくは、上述の酸化物微粒子,所定の量の水,所定の種類および量の溶媒を含む分散液と、上述の加水分解可能な金属化合物の所定量とを、所定の温度で所定の時間だけ混合する。この際、加水分解反応の触媒をさらに混合することがより好ましい。この第1加水分解工程において、上述の所定量の金属化合物は、適切に加水分解される。
より好ましい第1加水分解工程は、上述の酸化物微粒子,所定の量の水,所定の種類および量の溶媒,所定の種類および量の触媒としての酸を含む分散液に、上述の加水分解可能な金属化合物の所定量を添加することによって行なう。
(第2加水分解工程)
この工程においては、上述の第1加水分解工程の生成物と、前記金属化合物の残部とを混合し、さらに加水分解反応を行なわせる。好ましくは、上述の第1加水分解工程の生成物,所定の種類および量の溶媒,上述の加水分解可能な金属化合物の所定量とを、所定の温度で所定の時間だけ混合する。この際、液量が増加するので、触媒の濃度が不適切に低下しないように、所定量の加水分解反応触媒を追加してもよい。
より好ましい第2加水分解工程は、上述の第1加水分解工程の生成物に、所定の種類および量の溶媒,所定量の加水分解反応触媒を添加し、さらに上述の加水分解可能な金属化合物を添加することによって行なう。
本発明の製造方法によるコーティング液を用いることによって、耐久性が劣らず、反射防止性能に優れた反射防止膜が得られるメカニズムは、完全には解明されていないが、発明者は以下のように考えている。
加水分解可能な金属化合物を酸化物微粒子の存在下で加水分解すると、加水分解生成物は、加水分解生成物相互間で脱水縮合反応するだけではなく、酸化物微粒子表面の水酸基とも縮合反応する。また、上述の加水分解反応および脱水縮合反応は、コーティング液が基体に塗布された後も引き続き起きるため、その加水分解生成物は、加水分解生成物相互間だけではなく、基体の表面の水酸基とも縮合反応する、と考えられる。
縮合反応は、コーティング後の加熱工程においても引き続き起こり、さらに溶媒や水などの揮発成分が気化し、さらに有機成分が燃焼除去されて、バインダー層が形成される。
反射防止膜の反射防止性能は、バインダー層の量が少ない,あるいはバインダー層の空隙率が高いほど向上する。そのためには、コーティング液に含まれる加水分解可能な金属化合物の含有量を減らすことが必要である。すると、コーティング液が塗布された後での加水分解生成物の量も減少するため、基板表面との縮合反応量も低下するので、製造される反射防止膜の耐久性が著しく劣化する。
本発明の製造方法によるコーティング液では、第1加水分解工程において混合された加水分解可能な金属化合物の加水分解生成物は、加水分解生成物相互間で脱水縮合反応するだけではなく、酸化物微粒子表面の水酸基とも縮合反応する。
さらに、第2加水分解工程において混合された加水分解可能な金属化合物は、主にコーティング液が塗布された後で加水分解されるので、その加水分解生成物は、基体の表面の水酸基との縮合反応に費やされる割合が高くなる、と考えられる。
したがって、本発明の製造方法によるコーティング液を用いると、少ないバインダー量あるいは高いバインダーの空隙率によって優れた反射防止性能が得られ、しかも、バインダーと基体の表面の水酸基とが、充分に縮合反応するので、耐久性が劣化しない。
なお、本明細書においては、主に酸化物微粒子表面の水酸基とも縮合反応する上述の加水分解生成物から生成するバインダーを、微粒子同士を固着するバインダーと呼び、主に基体の表面の水酸基との縮合反応する上述の加水分解生成物から生成するバインダーを、微粒子と基材を固着するバインダーと呼ぶ。
本発明の好ましいコーティング液の製造方法においては、第1加水分解で加水分解させる前記金属化合物と、第2加水分解で加水分解させる前記金属化合物とが、同一化学種であってもよく、異なる化学種であってもよい。
(加水分解金属化合物のモル比)
第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、第2加水分解工程で加水分解させる金属化合物とのモル比は、20:80から60:40の範囲であることが好ましく、40:60から55:45の範囲であることがより好ましい。このモル比が20:80より小さくなると、微粒子同士を固着するバインダーが少なくなり、一方60:40を超えると、微粒子と基材を固着するバインダーが少なくなり、いずれも反射防止膜の耐久性が悪くなる。なお、本明細書において、このモル比のことを、加水分解金属化合物のモル比、と呼ぶ。
(酸化物微粒子)
酸化物微粒子の種類は、とくに限定されるものではないが、二酸化ケイ素(SiO)を主成分とする微粒子,すなわちシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子は、屈折率が1.4前後と比較的低い。そのため、内部に空隙を持つバインダー層と、粒径の一部がバインダー層に埋没している酸化物微粒子とによる反射防止効果に加え、屈折率が低いことによる反射防止効果にも寄与することができる。また、シリカ微粒子は、化学的耐久性が高いことや、製造が容易であるなどの点からも、本発明の酸化物微粒子として好適である。シリカ微粒子としては、たとえばゾルゲル法によりシリコンアルコキシドをアンモニアなどの塩基性触媒の存在下で反応させて合成したシリカ微粒子,ケイ酸ソーダなどを原料とするコロイダルシリカ,あるいは気相合成したヒュームドシリカなどが挙げられる。また、シリカ微粒子には、シリカ以外の微量成分が含まれていてもよい。例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウムまたはタンタルなどの酸化物が含まれてもよい。
微粒子の形状はとくに限定されるものではなく、球状,回転楕円体状,紡錘形状,ラグビーボール状または各種結晶形状を例示することができる。球状,回転楕円体状または紡錘形状の球形の微粒子であれば、平面が存在しないため鏡面反射が極めて生じ難い点で好ましい。さらに、球状の微粒子であれば、比表面積が最小であることから外部との接触面積が小さく耐摩耗性に優れる点で好ましい。したがって、反射防止膜に第一義的に耐摩耗性を求める場合は、微粒子の形状は球形に近い方が好ましい。
微粒子の粒径は、とくに限定されるものではないが、その平均値で10nm以上、さらには20nm以上が好ましい。平均粒径が10nm未満である場合は、微粒子が隙間なく充填されるため、反射防止膜の見かけ上の屈折率が十分に低下せず、その反射防止機能が発揮され難くなる。一方、平均粒径が大きすぎると、微粒子と基材との密着性が低下し、反射防止膜の耐摩耗性が不足し易い。そのため、微粒子の平均粒径は1000nm以下が好ましい。なお、この平均粒径は、一次粒子の平均粒径であり、微粒子が凝集した二次粒子の平均粒径ではない。
(平均粒径の測定)
微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真に基づいて判定する。具体的には、つぎの通りである。測定サンプルの任意の箇所を倍率50000倍で撮影する。これらの写真について、微粒子が最も鮮明に写っている箇所に30×30mmの枠を書き込み、その枠内にある微粒子(一次粒子)の最大径を、スケールを用いて計測する。なお、枠線に掛かる粒子は、面積の半分以上が枠内に入っているもののみ計測する。そして、測定した全ての微粒子の最大径を平均して微粒子の粒径とする。
(バインダー層の原料)
バインダー層は、微粒子と基材の間および微粒子同士間に介在し、これらの相対的な位置関係を強固に固定する。そして、その内部に孔隙を有することから見かけ上の屈折率が低く、反射防止膜の反射率の低減に寄与する。バインダー層の材質としては、とくに限定されるものではないが、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物またはタンタル酸化物を主成分とするもの、あるいはこれらの混合物からなるものが好ましい。
このようなバインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物として、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr)またはタンタル(Ta)を金属として含むアルコキシドを例示できる。これらの金属化合物を原料に用いて製造した酸化物を主成分とするバインダー層は、物理的強度と化学的安定性が高く、耐摩耗性および耐候性に優れる。上述した金属化合物のうち、とくに、シリコンアルコキシド、具体的にはシリコンテトラアルコキシドまたはそのオリゴマーを用いることが好ましい。なぜなら、これらの原料から形成されるバインダー層は、シリカ(二酸化ケイ素)を主成分とする。シリカは屈折率が低いので、高い反射防止効果を得ることができるからである。また、これらの原料を用いると、厚い反射防止膜の膜厚を、比較的容易に形成ことができるからである。
また、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物として、上述以外の化合物を用いることもできる。たとえば、金属のハロゲン化物、あるいはイソシアネート基,アシルオキシ基またはアミノキシ基などを有する金属化合物を例示できる。つまり、加水分解反応によって生じる生成物が、一般式M(OH)
(Mは金属イオン,nは金属イオンMの価数に対応した自然数)で表現される金属化合物であれば、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物として用いることができる。
なお、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物の一部として、アルコキシドの一種であるRM(OR’)n−mで示される化合物(Rはアルキル基などの有機基、R’は主としてアルキル基である有機基、mは1から(n−1)までの自然数)を用いる場合、その含有量は、バインダー層の全固形分において、金属酸化物に換算して50質量%以下であることが好ましい。
(コーティング液塗布後の加熱処理)
コーティング液を塗布した基材を加熱処理することにより、酸化物微粒子,バインダー層および基材間の接着性を向上することができる。加熱処理の温度は、200〜450℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。200℃未満では、縮合反応が充分に進行しないためバインダー層が形成されないだけでなく、溶媒などがバインダー層に残存して、バインダー層の接着力が極端に低下することがある。加熱処理温度を200℃以上にすれば、塗布したコーティング液は確実にゲル化し、充分な接着力が生じる。さらに、加熱処理温度を350℃以上にすれば、塗布したコーティング液に含まれていた有機成分を充分に除去することができ、製造される反射防止膜をさらに緻密化し、耐久性をより向上することができる。
加熱処理温度を450℃より高くしてもよいが、この加熱処理に必要とされるコストが高くなる。加熱処理温度が350℃以上であれば、450℃以下であっても、従来の反射防止膜と同等以上の耐久性を持つ反射防止膜を製造することができる。さらに、耐熱温度が450℃以下の基材、たとえば軟化点の低い光学ガラス製物品に、反射防止膜を製造することができる。また、加熱時間は5秒から5時間が好ましく、30秒〜1時間がより好ましい。
(コーティング液の塗布方法)
コーティング液の基材への塗布方法は、とくに限定されないが、スピンコーティング法,ロールコーティング法,カーテンコーティング法,ディップコーティング法,またはフローコーティング法などの各種コーディング法、あるいはフレキソ印刷法,スクリーン法印刷法,グラビア印刷法,または曲面印刷法を例示することができる。工業的規模で生産する場合には、上述の塗布方法のうち、生産性・安定性・再現性の点からフレキソ印刷法が適している。
なお、コーティング液を塗布する前に、基材の表面を前処理しておくことが好ましい。前処理としては、アルコール,アセトンまたはヘキサンなどの有機溶媒による脱脂洗浄,アルカリまたは酸による洗浄,研磨剤による表面研磨,超音波洗浄,紫外線照射処理,紫外線オゾン処理あるいはプラズマ処理など、およびそれらを組み合わせた方法を挙げることができる。上述の前処理を行なうことによって、コーティング液を均一に塗布することが、より容易にできるようになる。
(触媒の種類と添加量)
上述の第1加水分解工程および第2加水分解工程で用いる触媒としては、酸が好ましく、無機酸がより好ましく、塩酸または硝酸がさらに好ましい。なお、この触媒として有機酸を用いることもできるが、その場合は酢酸が好ましい。
とくに、バインダーの原料となる金属化合物として、金属アルコキシドを用いる場合、触媒として上述の酸を用いることが好ましい。触媒として酸を用いると、金属アルコキシドの加水分解が促進され、加水分解生成物がより多く生成するようになる。そのため、酸化物微粒子と基体との間をより強固に結合することができる。
コーティング液において、触媒としての酸の含有量は、バインダーの原料となる金属化合物に対するモル比で、0.001〜4にすることが好ましい。
一方、触媒として塩基を用いることもできる。触媒として塩基を用いる場合は、アンモニアあるいは弱酸のアンモニウム塩が好ましい。触媒として塩基を用いる場合、第1加水分解工程および第2加水分解工程において、加水分解の反応速度と比較して脱水縮合の反応速度が速くなる傾向がある。加水分解分解に対する脱水縮合の反応速度が速くなると、加水分解生成物の縮重合が三次元的に進行するようになり、生成するバインダー層は、架橋結合の著しい重合体からなるようになる。このようなバインダー膜は、緻密ではなく、多孔質なので、反射防止膜の強度が低下する虞がある。
(加水分解に用いられる水)
本発明のコーティング液は、加水分解工程を含むので、コーティング液の製造工程では、水が存在する必要がある。コーティング液を製造するための原料において、水の含有量は、バインダーの原料となる金属化合物に対するモル比で、0.1〜100にすることが好ましい。水の含有量が、上述のモル比で0.1より小さい場合は、金属化合物の加水分解が十分に促進されない。一方、350を越えると、焼成時にコーティング液に含まれている水が蒸発しにくくなり、膜の耐久性が劣化する。
(加水分解可能な金属化合物として金属ハロゲン化物を用いる場合)
バインダー層の原料としての加水分解可能な金属化合物として、塩素含有化合物、たとえばSiCl,TiClなど金属塩化物を用いる場合は、コーティング液の製造工程において、水および触媒を意図して添加する必要はない。なぜなら、塩素含有化合物は、非常に加水分解されやすいので、溶媒中に微量に含まれる水分や雰囲気中の水分などを消費して加水分解反応が開始する。一旦この加水分解が開始されると、加水分解の副生成物として塩酸が生じ、この塩酸が触媒として作用し、加水分解反応がさらに促進されるからである。
(溶媒)
溶媒は、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を溶解できるものであればとくに制限されない。溶媒には、たとえば、炭素数6以下の1価アルコール,炭素数6以下のグリコールエーテル,炭素数6以下のグリコールを用いることができる。これらの溶媒のうち、アルコール類としてはメタノール,エタノール,プロパノール,ブタノールまたはジアセトンアルコール、セロソルブ類としてはエチルセロソルブ,ブチルセロソルブまたはプロピルセロソルブ、グリコール類としてはエチレングリコール,ヘキシレングリコールまたはプロピレングリコールが好ましい。また、上述の溶媒を2種類以上混合して用いることによって、得られる反射防止膜の外観品質や耐久性の向上を実現できるので、より好ましい。
(微粒子含有比率)
また、コーティング液において、酸化物微粒子と、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物との含有量の比は、酸化物微粒子:金属化合物=50:50〜99:1の範囲であることが好ましい。なお、この比率は、コーティング液に含まれる、酸化物微粒子の重量と、金属化合物を酸化物に換算した酸化物の重量との比率と定義する。また、この比のことを、本明細書では、微粒子含有比率、と呼ぶ。
上述の微粒子含有比率は、そのコーティング液を用いて製造した反射防止膜の、反射防止性能と耐久性に影響を与える。この観点から、本発明のより好ましい実施形態として、次の2形態を例示することができる。
(第1の実施形態)
この実施形態は、反射防止性能の向上、つまり反射防止膜を製造した直後の反射率の低減に着眼したものである。この実施形態に好ましい微粒子含有比率は、微粒子:金属化合物=75:25〜99:1の範囲であり、より好ましくは79:21〜93:7の範囲である。このより好ましい範囲内にあれば、そのコーティング液を用いて製造した反射防止膜は、より優れた反射防止性能を示す。
(第2の実施形態)
この実施形態は、耐久性の向上に着眼したものである。この実施形態に好ましい微粒子含有比率は、微粒子:金属化合物=50:50〜70:30の範囲であり、より好ましくは60:40〜65:35の範囲である。このより好ましい範囲内にあれば、そのコーティング液を用いて製造した反射防止膜は、より優れた耐久性を示す。
コーティング液の好ましい材料配合比を表1に例示する。
Figure 2007121786
(ガラス板)
本発明のコーティング液を用いた反射防止膜の製造方法においては、透明基材として、ガラス板を用いることが好ましい。ガラス板は、とくに限定されないが、その組成は、たとえばソーダライムシリケートガラス,高歪点ガラス,低アルカリガラス,無アルカリガラスや光学ガラスであって、たとえばフロート法,ロールアウト法,ダウンドロー法やヒュージョン法で製造されたガラス板を用いることができる。上述のガラス板のうち、とくに、フロート法で製造されたソーダライムシリケートガラス板が、表面平面度・平滑性が高く、入手性に優れているので好ましい。
(膜つきガラス板)
本発明のコーティング液を用いて反射防止膜を製造された膜つきガラス板は、光電変換装置用ガラス基板として好適に用いることができる。この場合、ガラス板としては、上述のガラス板のうち、とくに、フロート法で製造された、可視光透過率の高いソーダライムシリケートガラス板を用いることが好ましい。
上述の光電変換装置用ガラス基板として用いる場合、本発明の膜つきガラス板を、カバーガラスとして用いてもよい。カバーガラスとは、別個に製造された光電変換素子を覆い、機械的衝撃や、風雨などによる化学的な侵食から、その素子を保護し、同時に入射光をその素子に到達させる役割を担うものである。この場合、本発明の膜つきガラス板には、その両方の主表面に、反射防止膜を製造することが好ましい。
また、本発明の膜つきガラス板は、上述の光電変換装置用ガラス基板として用いて、光電変換装置を構成する光電変換素子を一体に形成してもよい。この場合、ガラス板の片側の主表面には本発明のコーティング液を用いて反射防止膜を製造し、他方の主表面には、透明導電膜を含む薄膜が製造を製造することが好ましい。
このようにすると、反射防止膜を光の入射側に向けて配置され、その反射防止性能によって、光電変換層により多くの光を導くことができる。また、光が反射防止膜の表面、好ましくは微粒子表面で散乱することにより、光電変換層における光路長を長くすることができ、いわゆる光閉じ込め効果を発揮させることができるようになる。
上述の光電変換装置用ガラス基板として用いる場合、本発明の膜つきガラス板における反射防止膜が作製されている主表面での反射率(他方の主表面での反射を除外した反射率)は、2.5%以下、さらには1.5%以下であることが好ましい。
(光電変換装置用ガラス基板の一実施形態)
図1は、本発明のコーティング液を用いて製造された光電変換装置用ガラス基板の一形態の断面図である。この光電変換装置用ガラス基板では、ガラス板5の一方の主表面上に、下地膜1,酸化錫を主成分とする透明導電膜2とがこの順に形成されており、他方の主表面上に、シリカ微粒子7およびバインダーからなる反射防止膜6が形成されている。
(下地膜)
下地膜1は、第1の下地層1aと第2の下地層1bからなる2層膜とすることが好ましい。この場合、第1の下地層1aは、酸化錫を主成分とすることが好ましい。また、第2の下地層1bは、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種類の酸化物を主成分として含むことが好ましく、二酸化ケイ素膜を主成分とすることがとくに好ましい。
好ましい2層の下地膜の例として、屈折率1.6〜2.5,厚さ5〜100nmの第1下地層と、屈折率1.4〜2.0,厚さ10〜40nmの第2下地層とを、ガラス板側からこの順に積層した構成を挙げる。この下地膜を被着させておくと、透明導電層での反射率を低減することができ、導電膜を含む薄膜によって生じる反射干渉色を低減させることができる。さらに、この下地膜は、アルカリバリアとしても働く。ガラス板がアルカリ成分を含む場合、アルカリ成分は、この下地膜によって、その移動を遮られる。アルカリ成分が導電膜中へ拡散することがないので、アルカリ成分を含むガラス板を用いた場合であっても、導電膜の導電性が低下してしまう虞がない。
下地膜1は、単層とすることもできる。下地膜が単層である場合は、二酸化ケイ素,SiOC(酸炭化ケイ素)あるいは酸化アルミニウムなどを主成分とする膜であることが好ましい。単層の下地膜の膜厚としては、10〜40nmを例示できる。
(透明導電膜)
透明導電膜2としては、酸化スズ、酸化インジウムや酸化亜鉛を主成分とする薄膜などを用いることが好ましい。とくに、フッ素や塩素などのハロゲン,アンチモンなどの不純物を添加した酸化スズを主成分とする薄膜が適している。透明導電膜2のシート抵抗は、5〜15Ω/□(スクエア)が好ましい。この値を考慮すると、透明導電膜2の好ましい膜厚は400〜1200nmである。
(成膜方法)
上述の透明導電層や下地膜を形成する方法としては、真空蒸着法,スパッタリング法,塗布法,および熱分解酸化反応を伴う化学蒸着法などが挙げられる。とくに、化学蒸着法のうち、化学気相成長(Chemical Vapor
Deposition:CVD)法あるいは溶液スプレー法、分散液スプレー法、粉末スプレー法等のスプレー法を用いることが好ましい。これらの方法によると、薄膜の生産性が高く、形成された薄膜の耐久性が優れ、薄膜を形成したガラス板の風冷強化や化学強化が可能だからである。さらに、膜厚の均一性やガラスの歪を主に考慮すると、トータル的にはCVD法が優れている。
上述の観点から、上述の各薄膜の製造には、ガラス成形時、とくにフロート成形時の熱エネルギーを利用して、高温のガラスリボン上にCVD法で成膜する、いわゆるオンラインCVD法を用いるとよい。この製法では、その温度は、ガラスリボンの成形温度領域、つまり620〜750℃程度以上と高温である。
透明導電膜が形成されるガラス基板面がフロートガラスのトップ面であり、低反射膜が形成されるガラス基板面がフロートガラスのボトム面であることが好ましい。フロートガラスのボトム面は、トップ面と比較して、平坦性に優れている。たとえば、本発明のコーティング液を、ロールコート法によって塗布して反射防止膜を製造する場合、ボトム面に塗布する方が、微粒子による凹凸の制御性に優れている。
(オンラインCVD)
図2にオンラインCVD法を実施するための装置の模式図を示す。この装置では、まず、熔融炉(フロート窯)11からスズフロート槽(フロートバス)12内に、熔融ガラスを流し込む。流し込んだ熔融ガラスは、スズ浴15上で帯状のガラスリボン10に成形される。スズフロート槽内には、このガラスリボン10の表面から、所定距離を隔てて所定個数のコータ16(図示した形態では3つのコータ16a,16b,16c)が、配置されている。これらのコータからは、ガス状の原料を供給し、ガラスリボン10上に連続的に薄膜を形成していく。また、複数のコータを利用すれば、ガラスリボン10上に、下地膜および透明導電膜とを連続的に形成することもできる。薄膜形成後は、ガラスリボン10を、ローラ17により引き上げて、徐冷炉13へと送り込む。なお、徐冷炉13で徐冷されたガラスリボンは、図示を省略する切断装置により、所定の大きさのガラス板へと切断される。
なお、オンラインCVD法とスプレー法とを併用して透明導電膜を形成してもよい。例えば、オンラインCVD法とスプレー法とをこの順に実施することも可能である。例えば、フロートバス内においてCVD法による成膜を実施し、ガラスリボン進行方向のフロートバスより下流側において、スプレー法による成膜を実施する。さらに、CVD法を徐冷炉で行なうこともできる。
(スズ原料)
CVD法やスプレー法で使用できるスズ原料としては、モノブチルスズトリクロライド、四塩化スズ、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、テトラメチルスズが挙げられる。また、ジメチルスズジクロライドやモノブチルスズトリクロライドのような有機スズ化合物は、穏やかに反応を進行させることができ、高品質な薄膜を得ることができる点で好ましい。
(酸化原料)
金属酸化物薄膜を形成させる場合の反応性気体を、酸化原料と呼ぶ。酸化原料としては、水蒸気や酸素を組み合わせて使用することが望ましい。水蒸気は塩化物のスズ原料を加水分解反応によって分解するのに都合がよい。また、酸化原料として、その他に空気,メチルアルコールやエチルアルコールなどのアルコール類を用いることもできる
(導電性向上のための添加成分)
透明導電膜の導電性を向上させるには、アンチモンやフッ素の化合物を添加することが好ましい。アンチモンの化合物としては、三塩化アンチモンや五塩化アンチモンなどが、フッ素化合物としては、フッ化水素やトリフルオロ酢酸,ブロモトリフルオロメタンおよび/またはクロロジフルオロメタンなどが挙げられる。さらに導電性を高めるには、フッ素の添加が好ましい。透明導電膜中の好ましいフッ素濃度は、0.2質量%以下である。このとき透明導電膜の屈折率は約1.9となる。なお、この透明導電膜には、ケイ素,アルミニウム,亜鉛,銅,インジウム,ビスマス,ガリウム,ホウ素,バナジウム,マンガンおよび/またはジルコニウムなど他の微量成分が含まれていてもかまわない。ただし、これら微量成分の含有量を0.02質量%以下とすることが好ましい
(酸化ケイ素膜原料)
下地膜として酸化ケイ素を主成分とする薄膜をCVD法で形成する場合、ケイ素原料としては、モノシラン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、1,2−ジメチルシラン、1,1,2−トリメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメチルジシランなどのシラン類、テトラメチルオルトシリケートおよび/またはテトラエチルオルトシリケートなどを用いればよい。この場合の酸化原料としては、酸素,水蒸気,乾燥空気,二酸化炭素,一酸化炭素,二酸化窒素および/またはオゾンなどが挙げられる。なお、上述のシラン類がガラス表面に到達するまでに反応してしまわないように、エチレン,アセチレンまたはトルエンなどの不飽和炭化水素ガスを併用してもよい。
(酸化アルミニウム原料)
下地膜として酸化アルミニウムを主成分とする薄膜をCVD法で形成する場合、アルミニウム原料としては、トリメチルアルミニウム,アルミニウムトリイソポプロポキサイド,塩化ジエチルアルミニウム,アルミニウムアセチルアセトネートおよび/または塩化アルミニウムなどを用いればよい。この場合の酸化原料としては、酸素,水蒸気および/または乾燥空気などが挙げられる。
本発明による光電変換装置用ガラス基板では、透明導電膜の表面にも凹凸を付与することが好ましい。透明導電膜の表面での凹凸は、光電変換層での光路長を長くする光閉じこめ効果に寄与するからである。透明導電膜の表面の凹凸は、透明導電膜を成膜した後、該膜表面をエッチングすることなどによっても形成できるが、透明導電膜の表面に露出した結晶粒子からなる凸部(図1の3で例示する)の形状を反映した凹凸をそのまま利用してもよい。
本発明による光電変換装置用ガラス基板では、ガラス基板の一対の主表面に、それぞれ、ともに表面に凹凸を有する低反射膜と透明導電膜とが形成されていることが好ましい。光電変換装置用ガラス基板全体のヘイズ率としては、2〜80%が好ましく、4〜30%がより好ましい。ヘイズ率が2%より小さいと「光閉じ込め効果」が十分に得られず、ヘイズ率が80%より大きいと光の散乱が大きくなり過ぎて、実質的な反射率が増加するので、好ましくない。
[実施例]
以下、実施例により本発明の光電変換装置用ガラス基板をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(透明導電膜つきガラス板の製造)
図2に模式的に示した装置を用いて、透明導電膜つきガラス板を製造した。通常のソーダライムシリケート組成になるように、通常のガラス原料を調合してバッチを製造し、このバッチをガラス熔融窯11で、1500〜1600℃に加熱して熔融し、熔融ガラスとした。この溶融ガラスを、熔融炉内で1000〜1100℃まで冷却し、成形に適した粘性に調整して、フロートバス12に流し込んだ。
バス内におけるガラスリボン10の温度は600〜750℃程度に制御し、表面に膜を形成するコータ16におけるガラスリボン10の温度は約650℃とした。フロートバス内において、槽内最上流側に位置する第1コータ16aから、ジメチルスズジクロライドの蒸気,酸素および窒素からなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が25nmのSnO膜を成膜した。引き続いて、第2コータ16bから、モノシラン,エチレン,酸素および窒素からなる混合ガスを供給し、第1コータで製造されたSnO膜の上に、膜厚が25nmのSiO膜を積層して成膜した。さらに、第3〜第5のコータ16c〜16eから、ジメチルスズジクロライドの蒸気,酸素,窒素、およびフッ化水素ガスからなる混合ガスを供給し、第2コータで製造されたSiO膜上に、膜厚が600nmのフッ素ドープSnO膜(SnO:F膜)を積層して成膜した。
成膜後、ガラスリボン6を徐冷炉13で徐冷し、さらに搬送下流側に配置した切断機(図示せず)により、910mm×910mmの所定寸法に切断した。こうして、透明導電膜付きガラス板を得た。
(平均反射率)
上述の透明導電膜付きガラス板の全光線透過率,および該ガラス板の透明導電膜が成膜されていない主平面での平均反射率を、分光光度計(島津製作所社製 UV−3100)を用いて測定した。反射率については、被測定面に対し法線方向から光を入射し、反射角8°の直接反射光を積分球に導入して測定した。平均反射率は、上述のようにして測定した反射スペクトルのうち、波長400〜800nmの範囲を平均化して算出した。なお、ガラス板裏面(非測定面)にはサンドブラスト処理および黒色スプレー塗布を行ない、非測定面からの反射光を排除した。その結果、上述の透明導電膜付きガラス基板の全光線透過率は、82.8%であり、平均反射率は、4.1%だった。
(ヘイズ率)
次に、上述の透明導電膜付きガラス基板のヘイズ率を、積分球式光線透過率測定装置(スガ試験機(株)製 HGM−2DP)を用い、JIS K7105−1981(プラスチックの光学特性試験法)に規定の曇価測定法に基づいて測定した。その結果、上述の透明導電膜付きガラス基板のヘイズ率は8.0%であった。
(実施例1〜3)
この実施例1〜3は、上述した第1の実施形態にかかる実施例である。
(コーティング液の製造)
(第1加水分解工程)
平均一次粒径110nmのシリカ微粒子の分散液(水溶媒 固形分15質量%)56.7gを十分撹拌しながら、これにエチルセロソルブ40.2g,濃塩酸(HClとして37質量%含有)0.5gおよびテトラエトキシシラン2.6gを添加した。この混合液の攪拌を、室温で24時間行なった。
この第1加水分解工程において、バインダーの原料となる加水分解可能な金属化合物であるテトラエトキシシランを、酸化物微粒子であるシリカ微粒子の存在下で加水分解し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
(第2加水分解工程)
上述の第1加水分解工程生成物のうち、42gを取り分け、充分に攪拌しながら、これにプロピレングリコール10g,ジアセトンアルコール46.7g,濃塩酸0.25gおよびテトラエトキシシラン1.09gを添加した。この混合液の攪拌を、室温で30分間行ない、コーティング液を製造した。この第2加水分解工程においては、第1加水分解工程と同一化学種である金属化合物を、加水分解させた。
この実施例のコーティング液において、加水分解金属化合物のモル比は、50:50であった。コーティング液を製造するための原料において、水は、シリカ微粒子分散液の分散媒,および塩酸水溶液の溶媒である水として含まれている。この水の含有量については、水の、テトラオルトシランに対するモル比で表わして、108だった。また、微粒子含有比比率は85:15だった。総固形分は、分散液中のシリカ微粒子と、シリカに換算したテトラオルトシランとの質量の総和が、コーティング液全体の質量に占める割合で表わして、4.2%だった。
(反射防止膜の製造)
上述のようにして製造したコーティング液を、上述の透明導電膜付きガラス板の、透明導電膜が製造されていない主表面に塗布した。塗布については、フレキソ法により行なった。塗布後のガラス板は、400℃に保った加熱炉内に10分間保持して、加熱処理を行なった。このようにして、一方の主表面には反射防止膜が製造され、他方の主表面には透明導電膜を含む薄膜が製造された膜つきガラス板を製造した。
(反射防止膜の特性評価)
この反射防止膜について、上述の(平均反射率)に記載した方法により、平均反射率を測定した。その結果を表2に示すが、平均反射率は1.2%だった。
Figure 2007121786
(耐摩耗性)
この反射防止膜の耐摩耗性は、JIS R3221:2002に記載のテーバー摩耗試験に準じて評価した。このJISは、熱線反射ガラスに関するものであって、テーバー式の摩耗ホイールを用いて膜面側を摩耗させ、その前後での可視光透過率の差を求めるものである。一方、本実施例の耐摩耗性の評価では、テーバー式の摩耗ホイールで膜面側を摩耗させた前後での平均反射率の差を求めた点が異なる。
具体的には、上述のJISで定められた、テーバー式のNo.CS−10Fの摩耗ホイールを用い、各摩耗ホイールを4.9Nで反射防止膜に押しつけ、100回転させた後の平均反射率反射率を測定し、摩耗試験前の平均反射率との差を求めた。その結果を表2に示すが、平均反射率は2.4%であり、摩耗試験によって反射率が1.2%高くなった。
(耐アルカリ性試験1)
この反射防止膜の耐アルカリ性は、JIS R3221:2002に記載の耐アルカリ性試験に準じて評価した。このJISでは、所定のアルカリ水溶液に浸漬し、その前後での可視光透過率の差を求めるものである。本実施例の耐摩耗性の評価では、アルカリ水溶液浸漬後に、この反射防止膜を乾布で擦り、剥離の有無を確認した点が異なる。
具体的には、上述のJISで定められた、23℃に保った、濃度1N(1kmol/L)の水酸化ナトリウム溶液に、この反射防止膜つきガラス板を24時間浸漬した。浸漬後、浸漬したガラス板を精製水で水洗し、乾燥し、乾布としてキムワイプ(株式会社クレシア(旧社名:十条キンバリー)製)を用いて擦過し、反射防止膜の剥離の有無を目視で観察した。
この擦過は、以下のようにして行なった。まず、6×6cmに切断したキムワイプを3回折り曲げて1.5×3cmで8枚重ねの短冊状にした。この短冊を、1辺が1cmのアルミニウム製立方体の連続する3面に、事務用両面接着テープを用いて貼付した。短冊を貼付した3面のうち、中央の面を反射防止膜に接触させ、反射防止膜に対して9.8N・cm−2(1kgf・cm−2)の圧力を印加した状態で、2cm/sの相対速度で距離10cmに渡って移動させ、1回の擦過とした。この擦過を10回行ない、反射防止膜の剥離の有無を目視で観察した。その結果を表2に示すが、反射防止膜の剥離は確認できなかった。なお、表中の記号は、つぎの観察結果を示す。
○・・・膜は全く剥離していなかった
△・・・膜の一部が剥離し、擦過傷が多数観察された
×・・・膜はガラス板上にほとんど残存していなかった
Figure 2007121786
この実施例では、加水分解金属化合物のモル比を、25:75とした以外は、実施例1と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例1と同じシリカ微粒子の分散液 56.7g,
エチルセロソルブ 41.5g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 1.3g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程では、
上述の第1加水分解工程生成物 42g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 46.1g,
塩酸 0.25g,
テトラエトキシシラン 1.65g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表2に示す。
この実施例では、シリカ微粒子として平均一次粒径60nmのものを用いたこと,コーティング液において、微粒子含有比率を、95:5としたこと以外は、実施例1と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
平均一次粒径60nmのシリカ微粒子の分散液(分散媒:水,固形分:15質量%) 60.5g,
エチルセロソルブ 38.1g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 0.9g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程では、
上述の第1加水分解工程生成物 44g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 42.5g,
塩酸 0.4g,
テトラエトキシシラン 0.4g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表2に示す。
[比較例1]
この比較例では、加水分解金属化合物のモル比を、100:0とした以外は、実施例1と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。つまり、本比較例において、第2加水分解工程と称する工程では、加水分解させる金属化合物を添加しないので、実質的に第2加水分解工程が存在しないことになる。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例1と同じシリカ微粒子の分散液 56.7g,
エチルセロソルブ 37.6g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 5.2g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程は、
上述の第1加水分解工程生成物 42g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 47.7g,
塩酸 0.25g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表2に示す。
[比較例2]
この比較例では、加水分解金属化合物のモル比を、10:90とした以外は、実施例1と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例1と同じシリカ微粒子の分散液 56.7g,
エチルセロソルブ 42.3g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 0.5g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程は、
上述の第1加水分解工程生成物 42g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 45.8g,
塩酸 0.25g,
テトラエトキシシラン 1.9g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表2に示す。
[比較例3]
この比較例では、加水分解金属化合物のモル比を、100:0とした以外は、実施例3と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。つまり、本比較例は、実質的に第2加水分解工程が存在しない点で、比較例1と同様である。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例3と同じシリカ微粒子の分散液 60.5g,
エチルセロソルブ 37.3g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 1.7g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程は、
上述の第1加水分解工程生成物 44g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 45.2g,
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表2および表3に示す。
(実施例4)
この実施例4は、上述した第2の実施形態にかかる実施例である。
この実施例では、コーティング液において、微粒子含有比率を、70:30とした以外は、実施例1と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例1と同じシリカ微粒子の分散液 46.7g,
エチルセロソルブ 47.6g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 5.2g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程は、
上述の第1加水分解工程生成物 42g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 45.5g,
塩酸 0.25g,
テトラエトキシシラン 2.2g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性を評価した。耐アルカリ性は、上述の耐アルカリ性試験1、および以下に示す耐アルカリ試験2を実施した。
(耐アルカリ性:耐アルカリ性試験2)
この試験は、耐アルカリ性試験1よりも厳しい条件で、耐アルカリ性試験を行なうものである。この試験は、アルカリ溶液が飽和水酸化カルシウム溶液、温度が60℃、浸漬時間が40時間とした以外、上述の耐アルカリ試験1と同様に実施した。
これらの結果を表3に示す。
[比較例4]
この比較例では、加水分解金属化合物のモル比を、100:0とした以外は、実施例4と同じ方法で反射防止膜付きガラス板を製造した。つまり、本比較例は、実質的に第2加水分解工程が存在しない点で、比較例1および3と同様である。
具体的には、以下の通りである。第1加水分解工程に用いる原料として、
実施例1と同じシリカ微粒子の分散液 46.7g,
エチルセロソルブ 42.4g,
塩酸 0.5g,
テトラエトキシシラン 10.4g
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、第1加水分解工程の生成物100gを製造した。
第2加水分解工程は、
上述の第1加水分解工程生成物 42g
プロピレングリコール 10g,
ジアセトンアルコール 48g,
を実施例1と同じ手順で添加・攪拌し、コーティング液を製造した。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表3に示す。
[比較例5]
この比較例は、特開2002−182006号の実施例1を追試したものである。すなわち、平均一次粒径110nmのシリカ微粒子の分散液(水溶媒 固形分15質量%)46.67gを十分撹拌し、これにエチルセロソルブ41.93g、塩酸1gおよびテトラエトキシオルソシラン10.4gを順次添加して、100gの溶液Aを作製した。
この溶液Aを50g取り分け、これに別途調製したプロピレングリコール40gとジアセトンアルコール10gの混合溶液Bを添加し、よく撹拌してコーティング液を製造した。
したがって、本比較例は、実質的に第2加水分解工程が存在しない点で、比較例1,3および4と同様である。
上述のコーティング液を、実施例1と同じ方法で塗布し、塗布されたガラス板を加熱処理し、反射防止膜つきガラス板を製造した。
この反射防止膜付きガラス板について、実施例1と同じ方法で、平均反射率,ヘイズ率,耐摩耗性および耐アルカリ性を評価した。その結果を表3に示す。
(実施例と比較例の比較検討)
表2および表3に示す評価結果から、以下の結論を導出することができる。
(第1の実施形態について)
実施例1〜3の反射防止膜付きガラスは、耐摩耗試験前の平均反射率が1.2%以下であり、比較例1,2,4および5の何れよりも明らかに小さいので、優れた反射防止効果を有する。さらに、耐摩耗試験による反射防止性能の劣化が1.5%以下であり、比較例1〜3の何れよりも明らかに小さいので、優れた耐久性を有する。さらに、反射防止膜が剥離しないので、比較例1〜3の何れよりも明らかに優れた耐アルカリ性を有する。
(第2の実施形態について)
実施例4の反射防止膜付きガラスは、耐摩耗試験による反射防止性能の劣化が0.5%であり、比較例1〜5の何れよりも明らかに小さいので、極めて優れた耐久性を有する。さらに、反射防止膜が剥離しないので、比較例1〜5の何れよりも明らかに優れた耐アルカリ性を有する。しかも、耐摩耗試験前の平均反射率が1.6%であり、好適な反射防止効果を有する。
上述したように、第1および第2の実施形態において、本発明の製造方法によって製造された反射防止膜付きガラス板は、光電変換装置用ガラス基板として適している。
本発明のコーティング液の製造方法による反射防止膜は、高い可視光透過率と良好な耐久性を有するため、たとえば情報表示装置用ガラス基板や、乗り物やビルなどの窓ガラス用途に、多大な利用価値を有する可能性がある。
本発明によって製造したコーティング液を用いて製造した光電変換装置用基板の一形態の断面図である。 本発明によって製造したコーティング液を用いて製造した光電変換装置用基板を製造するために用いる装置の構成を示す図である。
符号の説明
1 下地膜
1a 第1の下地層
1b 第2の下地層
2 透明導電膜
3 凸部
5 ガラス板
6 低反射膜
7 シリカ微粒子
10 ガラスリボン
11 溶融窯
12 スズフロート槽
13 徐冷炉
15 スズ浴
16 コータ
17 ロール

Claims (15)

  1. 内部に空隙を持ち、酸化物を主成分とするバインダー層と、粒径の一部がバインダー層に埋没している酸化物微粒子とを含む反射防止膜を製造するためのコーティング液の製造方法において、バインダー層の原料となる加水分解可能な金属化合物を、加水分解させる工程が、2つ以上あることを特徴とするコーティング液の製造方法。
  2. 前記微粒子の存在下で、前記の金属化合物の所定量を加水分解反応させる第1加水分解工程と、該第1加水分解工程の生成物と、前記金属化合物の残部とを混合して、さらに加水分解反応を行なわせる第2加水分解工程とを含む請求項1に記載のコーティング液の製造方法。
  3. 前記第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、前記第2加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物とが、同一化学種である請求項2に記載のコーティング液の製造方法。
  4. 前記第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、前記第2加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物とが、異なる化学種である請求項2に記載のコーティング液の製造方法。
  5. 前記第1加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物と、前記第2加水分解工程で加水分解させる前記金属化合物とのモル比が、20:80から60:40の範囲にある請求項2〜4の何れか1項に記載のコーティング液の製造方法。
  6. 前記バインダー層の主成分が、シリカである請求項1〜5の何れか1項に記載のコーティング液の製造方法。
  7. 前記微粒子が、シリカ微粒子である請求項1〜6の何れか1項に記載のコーティング液の製造方法。
  8. 前記微粒子の平均粒径が10nm以上1000nm以下である請求項1〜7の何れか1項に記載のコーティング液の製造方法。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載のコーティング液を、基体上に塗布し、所定の温度で加熱処理することを特徴とする反射防止膜の製造方法。
  10. 前記所定の温度が200〜450℃である請求項9に記載の反射防止膜の製造方法。
  11. 前記基体が、ガラス板である請求項9または10に記載の反射防止膜の製造方法。
  12. 前記ガラス板の両方の主表面に、請求項11に記載の反射防止膜の製造方法によって反射防止膜が製造された、膜つきガラス板。
  13. 前記ガラス板の一方の主表面には、請求項11に記載の反射防止膜の製造方法によって反射防止膜が製造され、前記ガラス板の他方の主表面には透明導電膜を含む薄膜が製造された膜つきガラス板。
  14. 前記透明導電膜を含む薄膜は、フロート法によるガラス板製造工程において、ガラス素板を成形するための熔融金属スズ槽内で、化学気相成長法を用いて製造された請求項13に記載の膜つきガラス板。
  15. 請求項12〜14の何れか1項に記載の膜つきガラス板を用いた光電変換装置用ガラス基板。
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