JP2007084534A - 口腔用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、歯周病細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスが口腔組織へ付着することを防止する口腔用組成物を提供する。
【解決手段】アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドを含有する口腔用組成物。
【選択図】図13
【解決手段】アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドを含有する口腔用組成物。
【選択図】図13
Description
本発明は、口腔内細菌の口腔内組織への付着抑制効果を有し、歯周病の予防及び治療に用いられる口腔用組成物に関する。
歯周病は、歯に付着する細菌の凝集塊であるデンタルプラークが原因となり引き起こされる。このプラークの中には、歯周病に深く関わっていると考えられている細菌として、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、タンネレラ・フォルサイシア(Tannerella forsythia)等の黒色色素産生嫌気性桿菌(BPR)、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)などが見出されている。これらの細菌はさまざまなビルレンス因子(付着素、莢膜多糖、組織分解酵素、有機酸、硫化物、内毒素)を生産し歯周病を引き起こす。
特に、前記ポルフィノモナス・ジンジバリスは、歯周組織を破壊するアルギニン特異的タンパク質分解酵素(Arg-gingipain)やリジン特異的タンパク質分解酵素(Lys-gingipain)を生産するため、歯周病の重要な病原菌として考えられており、複数の研究グループによって成人性歯周炎との病因論的関連性が指摘されている。
特に、前記ポルフィノモナス・ジンジバリスは、歯周組織を破壊するアルギニン特異的タンパク質分解酵素(Arg-gingipain)やリジン特異的タンパク質分解酵素(Lys-gingipain)を生産するため、歯周病の重要な病原菌として考えられており、複数の研究グループによって成人性歯周炎との病因論的関連性が指摘されている。
歯周病の重要な病原菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスの口腔内組織への付着を防止することは、歯周病の予防に効果的であると考えられる。
ポルフィロモナス・ジンジバリスの口腔内組織への付着を予防する技術については、例えば、リジンやアルギニンがポルフィロモナス・ジンジバリスの頬粘膜上皮細胞への付着を抑制する報告がある(非特許文献1)。ヒスタチンの一次構造である8残基から24残基の合成ペプチドがポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性を阻害する報告がある(非特許文献2)。ポルフィロモナス・ジンジバリスの菌体外凝集素(Exohemagglutinin)の赤血球凝集活性を、アルギニンやグアニジル化アルブミンが阻害する報告(非特許文献3)やリジンやアルギニンが阻害する報告(非特許文献4)がある。
ポルフィロモナス・ジンジバリスの口腔内組織への付着を予防する技術については、例えば、リジンやアルギニンがポルフィロモナス・ジンジバリスの頬粘膜上皮細胞への付着を抑制する報告がある(非特許文献1)。ヒスタチンの一次構造である8残基から24残基の合成ペプチドがポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性を阻害する報告がある(非特許文献2)。ポルフィロモナス・ジンジバリスの菌体外凝集素(Exohemagglutinin)の赤血球凝集活性を、アルギニンやグアニジル化アルブミンが阻害する報告(非特許文献3)やリジンやアルギニンが阻害する報告(非特許文献4)がある。
一方、分子内に塩基性アミノ酸が2以上連続して結合したペプチドが歯肉上皮細胞や唾液被覆ヒドロキシアパタイトにポルフィロモナス・ジンジバリスが付着する事を抑制する効果を特徴とした口腔用組成物に関する報告がある(特許文献1)。
しかしながら、これらは凝集抑制効果が弱い、あるいは高価な化学合成長鎖ペプチドを用いる点が問題であった。
また、下記式(1)で示される、微生物発酵によるポリアミノ酸またはその誘導体が抗菌性を有するという報告がある(特許文献2)。
本発明は、歯周病細菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスが口腔組織へ付着することを防止する口腔用組成物を提供することを課題とする。
本発明者等は、口腔組織へ歯周病細菌が付着することを防止する口腔内組成物を求めて、鋭意研究を重ねた結果、ある種の微生物が発酵生産する特定のペプチドがポルフィロモナス・ジンジバリスに対する抗菌活性(生育阻害活性)はないものの、ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着、及びポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制することを見出した。そこで、ある種の微生物が産生するペプチドを口腔用組成物として用いることを検討した。すなわち本発明は以下の通りである。
(1) アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドを含有する口腔用組成物。
(2) 前記ペプチドが下記式(I)又は(II)で表される構造であることを特徴とする、(1)に記載の口腔用組成物。
(Argはアルギニン、Hisはヒスチジンを表す。また、R1は水素、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又はインドールを表し、R2は水酸基、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又はインドールを表し、nは2以上の整数を示す。)
(3) 前記ペプチドが下記式(I)で表される構造であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の口腔用組成物。
(4) 前記アルギニンのD体アルギニンとL体アルギニンの比率が、D体アルギニン:L体アルギニン=10:90〜0:100であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(5) 前記アルギニンがL体アルギニンであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(6) 前記ヒスチジンのD体ヒスチジンとL体ヒスチジンの比率が、D体ヒスチジン:L体ヒスチジン=100:0〜70:30であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(7) 前記ヒスチジンがD体ヒスチジンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(8) 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の1〜20量体であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
(9) 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の5量体であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(10) 前記ペプチドが、微生物の発酵生産により製造されたペプチドであることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(11) 前記ペプチドの含有量が0.001〜10重量%であることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(12) 前記ペプチドの含有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(13) ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着、及びポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制することを特徴とする、(1)〜(12)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(14) 歯周病予防用であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(15) 歯周病治療用であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(1) アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドを含有する口腔用組成物。
(2) 前記ペプチドが下記式(I)又は(II)で表される構造であることを特徴とする、(1)に記載の口腔用組成物。
(3) 前記ペプチドが下記式(I)で表される構造であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の口腔用組成物。
(5) 前記アルギニンがL体アルギニンであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(6) 前記ヒスチジンのD体ヒスチジンとL体ヒスチジンの比率が、D体ヒスチジン:L体ヒスチジン=100:0〜70:30であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(7) 前記ヒスチジンがD体ヒスチジンであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(8) 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の1〜20量体であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
(9) 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の5量体であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(10) 前記ペプチドが、微生物の発酵生産により製造されたペプチドであることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(11) 前記ペプチドの含有量が0.001〜10重量%であることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(12) 前記ペプチドの含有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする、(1)〜(11)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(13) ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着、及びポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制することを特徴とする、(1)〜(12)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(14) 歯周病予防用であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
(15) 歯周病治療用であることを特徴とする、(1)〜(13)のいずれか一に記載の口腔用組成物。
本発明の口腔用組成物は、口腔組織へ歯周病細菌が付着することを防止することができるので、例えば歯周病予防剤又は治療剤に用いられる。
本発明の口腔用組成物は上述の通りペプチドを含む。該ペプチドは、アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドであり、下記一般式(2)又は(3)で示される。好ましい構造は下記一般式(2)、すなわち、アルギニンをN末端とし、アルギニンとヒスチジンが交互に連鎖した構造である。本発明の口腔用組成物は、該ペプチドを1種又は2種以上組み合わせて含有してもよい。
上記一般式(2)および(3)において、Argはアルギニンを表し、Hisはヒスチジンを表す。また、R1は水素、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又はインドールを表し、R2は水酸基、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又
はインドールを表し、nは2以上の整数を示す。
上記一般式(2)および(3)に示されるペプチドは、一般的にポリアルギニルヒスチジンと呼ばれ、本明細書でも同様に呼称する。尚、ポリアルギニルヒスチジンは「pRH」と略して標記することもできる。「p」はポリの略であり、「R」はアルギニンの一文字表記、「H」はヒスチジンの一文字表記である。
はインドールを表し、nは2以上の整数を示す。
上記一般式(2)および(3)に示されるペプチドは、一般的にポリアルギニルヒスチジンと呼ばれ、本明細書でも同様に呼称する。尚、ポリアルギニルヒスチジンは「pRH」と略して標記することもできる。「p」はポリの略であり、「R」はアルギニンの一文字表記、「H」はヒスチジンの一文字表記である。
前記アルギニンは、D体アルギニンでもL体アルギニンでも良い。一般式(2)又は(3)における、アルギニンの好ましい比率はD体:L体=10:90〜0:100である。より好ましくは全てL体アルギニンである。この比率は、後述するアルギニンおよびヒスチジンのD体・L体の分析に基づく値である。
前記ヒスチジンは、D体ヒスチジンでもL体ヒスチジンでも良い。一般式(2)又は(3)における、ヒスチジンの好ましい比率はD体:L体=100:0〜70:30である。より好ましくは全てD体ヒスチジンである。この比率は、後述するアルギニンおよびヒスチジンのD体・L体の分析に基づく値である。
前記ポリアルギニルヒスチジンを構成するアルギニンおよびヒスチジンのD体・L体の分析、すなわち、アルギニンおよびヒスチジンの光学純度の検定について以下に示す。
ポリアルギニルヒスチジンを、6N塩酸溶液中で100℃、20時間加熱することにより加水分解し、アルギニンおよびヒスチジンの混合物を調製する。調製されたアルギニンおよびヒスチジンの混合物を、光学分割カラム(ダイセル工業CROWNPAK CR(+)、移動相はpH1.5の過塩素酸水溶液、カラム温度は4℃)を装着した高性能液体クロマトグラフィー装置(HPLC)にて分析する。検出は200nmの吸収を測定する。対照実験としては、D−ヒスチジン、L−ヒスチジン、D−アルギニン、L−アルギニンの4種のアミノ酸標準品、化学合成した2種のポリアミノ酸(N末端 L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His C末端およびN末端 L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His C末端)を6N塩酸溶液中で100℃、20時間加熱することにより加水分解した標準品を、同じ条件でHPLC分析する。これにより、アルギニンおよびヒスチジンのD体・L体が分析され、比率が定まる。
ポリアルギニルヒスチジンを、6N塩酸溶液中で100℃、20時間加熱することにより加水分解し、アルギニンおよびヒスチジンの混合物を調製する。調製されたアルギニンおよびヒスチジンの混合物を、光学分割カラム(ダイセル工業CROWNPAK CR(+)、移動相はpH1.5の過塩素酸水溶液、カラム温度は4℃)を装着した高性能液体クロマトグラフィー装置(HPLC)にて分析する。検出は200nmの吸収を測定する。対照実験としては、D−ヒスチジン、L−ヒスチジン、D−アルギニン、L−アルギニンの4種のアミノ酸標準品、化学合成した2種のポリアミノ酸(N末端 L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His-L-Arg-D-His C末端およびN末端 L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His-L-Arg-L-His C末端)を6N塩酸溶液中で100℃、20時間加熱することにより加水分解した標準品を、同じ条件でHPLC分析する。これにより、アルギニンおよびヒスチジンのD体・L体が分析され、比率が定まる。
一般式(2)および(3)において、上述の通り、N末端のR1は、水素、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又はインドールであり、C末端のR2は、水酸基、糖、アシル、ビオチニル、チオール、フェノール、又はインドールである。好ましくは、N末端のR1は水素であり、C末端のR2は水酸基である。
本発明において、ポリアルギニルヒスチジンの重合度nは特に限定されないが、好ましい重合度nは1〜20であり、さらに好ましい重合度は5である。重合度5のポリアルギニルヒスチジンは、微生物発酵により安価に製造できるため、特に好ましく用いられる。
重合度は以下の如く測定される。
ポリアルギニルヒスチジンの分子量を、飛行時間型質量分析計を用いて、MALDI-TOF Mass(マトリックス支援脱離イオン化−飛行時間測定)法によって測定する。得られた分子量から、H2O分子量(約18)を差し引いた後に、アルギニン残基量(156.18)とヒスチジン残基量(137.14)を合計した値(293.32)で除することによって重合度を算出する。前記残基量とはアミノ酸分子からH2O分子量を差し引いた値である。
ポリアルギニルヒスチジンの分子量を、飛行時間型質量分析計を用いて、MALDI-TOF Mass(マトリックス支援脱離イオン化−飛行時間測定)法によって測定する。得られた分子量から、H2O分子量(約18)を差し引いた後に、アルギニン残基量(156.18)とヒスチジン残基量(137.14)を合計した値(293.32)で除することによって重合度を算出する。前記残基量とはアミノ酸分子からH2O分子量を差し引いた値である。
前記ポリアルギニルヒスチジンの配列は、生成したポリアルギニルヒスチジンを自動エドマン分解分析装置(アプライドバイオシステムズ社製、モデル492)により解析する。これにより、本発明の口腔用組成物に含まれるポリアルギニルヒスチジンはアルギニンとヒスチジンが交互に連鎖した構造を持つことが判明する。
上記一般式(2)又は(3)に示されるポリアルギニルヒスチジンは、当該技術分野で既知の化学合成法、生化学的な方法、微生物発酵等の公知の方法によって製造される。本発明の口腔用組成物に含まれるポリアルギニルヒスチジンを安価に製造する方法としては、微生物の発酵生産が最も好ましい。
前記ポリアルギニルヒスチジンの化学合成法としては、例えば、1963年にR.B.Merrifieldにより開発された、ペプチドのC末端カルボキシル基を固相支持体に共有結合させ、N末端方向に順次アミノ酸を結合してペプチドを合成する方法、側鎖が保護されたαNH2保護アミノ酸やN末端保護ペプチド、αカルボキシ保護アミノ酸やC末端保護ペプチドをカルボジイミドなどの縮合剤を用いてカップリングする方法、タンパク質分解酵素の逆反応を用いてペプチド結合を生成する方法、ならびに側鎖保護アルギニンと側鎖保護ヒスチジンのN−カルボキシ無水物を重合させる方法等が挙げられる。
前記ポリアルギニルヒスチジンの生化学的な製造方法としては、例えば、ポリアルギニルヒスチジンをコードするDNAまたはRNAを用いて、生物に備わる転写、翻訳系の機能により、細胞内或いは無細胞タンパク質合成系内で遺伝子工学的に製造する方法が挙げられる。
前記ポリアルギニルヒスチジンの微生物発酵による製造方法としては、例えば、特許文献2(WO2004/014944 A1)に示される方法が挙げられる。以下に、微生物発酵による製造方法の例を示す。
本発明に用いられるポリアルギニルヒスチジンの製造においては、好ましくはエピクロエ属の菌株を用いる。好ましい微生物はエピクロエキビエンシス(Epichloe kibiensis)E18株(FERM P-18923)またはその変異体である。尚、該エピクロエキビエンシス(Epichloe kibiensis)E18株(FERM P-18923)(以下、「E18株」と称す。)は茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている(微生物の表示:Epichloe kibiensis E18)。E18株を親株として、変異体誘導や組み換え遺伝子技術などにより、ポリアルギニルヒスチジンの生産性を高める派生菌株を得ることができる。派生菌株は、人為的に突然変異を誘発されたものや、スクリーニングで得られたものなどを包含する。
本発明に含まれるポリアルギニルヒスチジンを生産する微生物、例えばE18株などの培地は、微生物の性質に応じて適宜選択され、市販品から入手可能であるが、当業者既知の方法で調製することもできる。液体状又は固体状の適当な組成で構成される完全培地、合成培地、半合成培地を用いることができるが、操作の容易性等から液体培地が適する。培地は、一般的な成分として、炭素源、窒素源、無機塩及びその他栄養物が含まれていれば、いかなるものでも良い。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フルクトース、グリセロール、スターチなどが挙げられ、その含有量は0.1〜10%(w/v)が好ましい。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カゼイン加水分解物、アミノ酸などの有機化合物や、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム等の無機アンモニウム塩などが挙げられ、その含有量は0.1〜5%(w/v)が好ましい。所望により、培地に他の栄養源(例えば無機塩類、リン酸イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、硫酸イオン等を与えるもの)、ビタミン類(例えばビタミンB1)、抗生物質(例えばアンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン等)を加えてもよい。
培養は、好気的条件下で振盪培養、攪拌培養等により行なうことができる。培養温度は約25〜40℃であり、培地のpHは2.0〜8.0、好ましくは3.0〜8.0、より
好ましくは約5.0である。培養期間は、通常1日〜14日間であるが、それ以上の期間、培養を続けることができる。
E18株を親株として誘導される上記の派生菌株(変異株)も同様に培養することができる。
好ましくは約5.0である。培養期間は、通常1日〜14日間であるが、それ以上の期間、培養を続けることができる。
E18株を親株として誘導される上記の派生菌株(変異株)も同様に培養することができる。
生産されたポリアルギニルヒスチジンが培養液中に分泌されている場合、培養物をろ過又は遠心分離して粗生成物を単離する。生成されたポリアルギニルヒスチジンの精製は、回収した培養液上清から、天然又は合成のアミノ酸やタンパク質の精製、単離に用いられる当該技術分野で既知の方法(例えば、イオン交換樹脂処理法、活性炭吸着処理法、有機溶媒沈殿法、減圧濃縮法、凍結乾燥法、結晶化法等)を適宜組み合わせて実施することができる。生産されたポリアルギニルヒスチジンが培養微生物のペリプラズム及び細胞質中に存在するときは、ろ過や遠心分離によって細胞を集め、それらの細胞壁及び/又は細胞膜を、例えば超音波及び/又はリゾチーム処理によって破壊して、デブリス(細胞破砕物)を得る。このデブリスを適当な水溶液(例えば緩衝液)に溶解させ、上記の方法に準じて生成物を単離、精製することができる。
E18株により産生されるポリアルギニルヒスチジンの物理化学的性質は以下の通りである。
(1)6N塩酸溶液による加水分解処理により、アルギニンおよびヒスチジンのみが生成する。
(2)ポリアルギニルヒスチジンおよびその加水分解物は坂口反応およびパウリ反応に陽性である。
(3)モノマー間の結合様式はα位カルボキシル基とα位アミノ基間のペプチド結合である。
(4)自動エドマン分解法により決定されるアミノ配列は、N末端をアルギニンとするアルギニンとヒスチジンの交互の繰り返しである。
(5)MALDI−TOF Mass(マトリックス支援脱離イオン化―飛行時間測定)法による分子量測定では、分子量が約1486である分子が主成分である。このほかにも約293の規則的な分子量の差を持って、異なる分子の混成物である。
(6)生成したヒスチジンは薄層クロマトグラフィーにおいて、ヒスチジン標準品と同一のRf値(0.19)を示し、ニンヒドリン反応、パウリ反応に陽性である。
(7)生成したヒスチジンの光学純度は、光学分割カラムによるクロマトグラフィー分析により、約85%がD体である。
(1)6N塩酸溶液による加水分解処理により、アルギニンおよびヒスチジンのみが生成する。
(2)ポリアルギニルヒスチジンおよびその加水分解物は坂口反応およびパウリ反応に陽性である。
(3)モノマー間の結合様式はα位カルボキシル基とα位アミノ基間のペプチド結合である。
(4)自動エドマン分解法により決定されるアミノ配列は、N末端をアルギニンとするアルギニンとヒスチジンの交互の繰り返しである。
(5)MALDI−TOF Mass(マトリックス支援脱離イオン化―飛行時間測定)法による分子量測定では、分子量が約1486である分子が主成分である。このほかにも約293の規則的な分子量の差を持って、異なる分子の混成物である。
(6)生成したヒスチジンは薄層クロマトグラフィーにおいて、ヒスチジン標準品と同一のRf値(0.19)を示し、ニンヒドリン反応、パウリ反応に陽性である。
(7)生成したヒスチジンの光学純度は、光学分割カラムによるクロマトグラフィー分析により、約85%がD体である。
上記化学合成法、生化学的な方法、微生物発酵法などにより得られるポリアルギニルヒスチジンの残基中遊離した官能基には、各種の化学修飾(例えばアシル化等)を行なうことが可能である。これらの誘導体化の方法は当該技術分野で既知である。例えば、ポリアルギニルヒスチジン中のアルギニン残基に側鎖として遊離するグアニジノ基をアルカリ加水分解することで、オルニチンに変更できる。アルギニンとオルニチンは、それぞれのグアニジノ基およびアミノ基の解離定数が異なるため、アルギニンとオルニチンの構成比を適宜調節して、用途目的に最適な電解性官能基の解離定数(pKa)を持ったポリアルギニルヒスチジンを製造することができる。
本発明の口腔用組成物に含まれるポリアルギニルヒスチジンは、後述の試験例に示すように、口腔内微生物に対して顕著な生育阻害活性を示さない。また、前記ポリアルギニルヒスチジンは、ポルフィロモナス・ジンジバリスの有力な病原因子であるアルギニン特異的タンパク質分解酵素とリジン特異的タンパク質分解酵素の酵素活性を阻害しない。
一方、本発明の口腔用組成物に含まれるポリアルギニルヒスチジンは、後述の試験例に示すように、口腔内微生物であるポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性を抑
制する。また、前記ポリアルギニルヒスチジンは、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着を阻害し、また、ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制する。
制する。また、前記ポリアルギニルヒスチジンは、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着を阻害し、また、ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制する。
本発明の口腔用組成物は、ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着、及びポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制するポリアルギニルヒスチジンを含有するので、口腔組織へ歯周病細菌が付着することを防止することができる。
本発明におけるこの効果は、歯周炎、歯肉炎、歯根膜炎、智歯周囲炎、インプラント周囲炎等の歯周疾患、う蝕(虫歯)、口内炎、口臭などの各種症状、疾患の予防、治療に有効であり、本発明の組成物はこれらにも用いられる。中でも、本発明の組成物は歯周病予防及び歯周病治療に適している。
本発明におけるこの効果は、歯周炎、歯肉炎、歯根膜炎、智歯周囲炎、インプラント周囲炎等の歯周疾患、う蝕(虫歯)、口内炎、口臭などの各種症状、疾患の予防、治療に有効であり、本発明の組成物はこれらにも用いられる。中でも、本発明の組成物は歯周病予防及び歯周病治療に適している。
本発明の口腔用組成物は、常法に従ってポリアルギニルヒスチジンを配合して製造され、本発明の口腔用組成物は、製剤の剤型に応じて、例えば、混和、混練、増粒、打錠、コーティング、滅菌処理、乳化などの慣用の方法で製造される。口腔用組成物中の該ポリアルギニルヒスチジン配合量は0.001〜10重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%である。
本発明の口腔用組成物は、口腔用組成物であれば特に剤型の限定はなく口腔内投与されるものであればよい。例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル剤、ガム剤等の固形製剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エリシキル剤等の液剤、ゲル剤、軟膏剤等として製剤化可能である。これらの製剤方法は、公知の方法によって製造することができる。また、製剤化にあたっては、剤型に応じて適切な担体等を選択し、これを配合できる。
本発明の口腔用組成物は、ポリアルギニルヒスチジンの効果を損なわない範囲で任意成分を適宜配合することができる。任意成分としては例えば、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、湿潤剤、甘味料、矯味剤、矯味矯臭剤、香料、防腐剤、pH調整剤、色素、賦形剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、乳化剤、乳化助剤、非水性ビヒクル、酸化防止剤、張液、懸濁化剤、保存剤、可溶化剤、分散剤、増粘剤、可塑剤、吸着剤、抗酸化剤、その他の薬剤などが挙げられる。
本発明の口腔組成物は、例えば、練歯磨、粉歯磨、液状歯磨、泡状歯磨等の歯磨き剤、歯肉マッサージクリーム、局所塗布剤、マウスウォッシュ、うがい液、口中清涼剤、チューインガムなどの様々な形態をとることが可能である。これらの形態の中でも、好ましい形態としては、練歯磨、うがい液、洗口液、チューイングガムなどが挙げられ、さらに好ましい形態は、練歯磨、洗口液、チューイングガムである。
以下に、ポリアルギニルヒスチジンの作用を示す試験例を記載する。
(試料:ポリアルギニルヒスチジン(pRH)の製造例)
<最初のアミノ酸の樹脂への結合>
Fmoc-D-His(Trt)-OH(メルク株式会社製:Cas No.135610-90-1)6gとジイソプロピルエチルアミン(Diisopropylethylamine:Cas No.7087-68-5)(以下「DIPEA」と称す)5gを、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide:Cas No. 68-12-2)(以下「DMF」と称す)20mlとジクロロメタン(Dichloromethane :Cas No. 75-09-2)(以下「DCM」と称す)50mlに溶解させた。その溶解液に2−クロロトリチルクロライドレジン(2-Chlorotrityl chloride resin:メルク株式会社製)(以下「2-ClTrt resin」と称す
)5gを加え30℃で2時間撹拌し、反応させた。
反応後、得られた樹脂を約50mlの後述する溶媒で洗浄した。洗浄はDCM:MeOH:DIPEA(17:2:1)で3回、DCMで3回、DMFで2回、DCMで2回順次洗浄を行った後、KOH上で真空乾燥させ、Fmoc-D-His(Trt)-resinを得た。
<αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作>
合成したFmoc-D-His(Trt)-resin(あるいはFmoc保護ペプチジル樹脂)の全量を、ピペリジン(Piperidine Cas No.110-89-4)20容積%を含むDMF溶液およそ50mlに加え30℃で3時間振盪させ、液をすてた。再度同じ処理を3回〜4回繰返し、最後に樹脂を約50mlのDMFで洗浄した。
<カップリング操作>
Fmoc-L-Arg(pbf)-OH(メルク社製:Cas No.154445-77-9) 26g、HBTU(Cas No94790-37-1)14.9g、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole :Cas No.2592-95-2)(以下「HOBt」と称す) 5.4gを約80mlのDMFに溶解させた。さらに10gのDIPEAを加えて混合した。混合液を直ちにαアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行った樹脂(His(Trt)がN末端)に加えて30℃で2時間反応させた。
αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行った樹脂(Arg(pbf)がN末端)にヒスチジンを結合させる場合は、Fmoc-D-His(Trt)-OHを25gにして上記と同様にカップリング操作を行なった。
<ペプチド鎖の伸長>
目的の鎖長のペプチドになるまで、αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作とカップリング操作を繰り返した。
本試験では、アルギニンとヒスチジンを交互に結合させ、(アルギニン−ヒスチジン)の5量体となるまで、上記αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作とカップリング操作を繰り返した。
<樹脂からのペプチドの切り出し>
はじめに、樹脂のαアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行い、N末端のFmoc基を除去した。次に、樹脂を約50mlのDMF−酢酸(60:40)およびDCMで5回づつ洗浄した。最後に約50mlのメタノールで樹脂を5回洗浄したのちKOH上で一夜真空乾燥した。
この樹脂に、トリフルオロ酢酸(以下「TFA」と称す)(Trifluoroacetic Acid:Cas No. 76-05-1):トリイソプロピルシラン(以下「TIS」と称す)(Triisopropylsilane:Cas No.6485-79-6):水=95:2.5:2.5(体積比)の混合液25mlを加え、室温で時々撹拌して24時間放置した。得られた溶液を吸引ろ過し、ろ過液を回収した。樹脂を50mlの同混合液で2回洗浄し、同様にろ過液を回収した。回収したろ過液に氷冷したエチルエーテル2lを滴下して沈殿物を形成させた。これを吸引ろ過して沈殿物を回収し、少量の冷エチルエーテルで沈殿物を更に洗浄した。この沈殿物を真空乾燥し粗ペプチドを得た。
<精製>
1%CH3CN(0.1%TFA)水溶液に25mg/mlの濃度で粗ペプチドを溶解させ、下記のセミ分取カラムによって精製した。
サンプル:4ml(25mg/ml)
カラム:YMC Pack ODS−A、20mmI.D.×250mm
溶離液:0.1%TFA、グラジエント CH3CN1%→60%(80min)
流速:5ml/min
温度:室温
検出:220nm
HPLCの溶出部分をダウエックスカチオン交換樹脂(H型)30mlのカラムに通し、水で洗浄した後に1mol/Lの塩酸で溶出させた。溶出部分を凍結乾燥させ、約48gのpRHを得た。
<最初のアミノ酸の樹脂への結合>
Fmoc-D-His(Trt)-OH(メルク株式会社製:Cas No.135610-90-1)6gとジイソプロピルエチルアミン(Diisopropylethylamine:Cas No.7087-68-5)(以下「DIPEA」と称す)5gを、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide:Cas No. 68-12-2)(以下「DMF」と称す)20mlとジクロロメタン(Dichloromethane :Cas No. 75-09-2)(以下「DCM」と称す)50mlに溶解させた。その溶解液に2−クロロトリチルクロライドレジン(2-Chlorotrityl chloride resin:メルク株式会社製)(以下「2-ClTrt resin」と称す
)5gを加え30℃で2時間撹拌し、反応させた。
反応後、得られた樹脂を約50mlの後述する溶媒で洗浄した。洗浄はDCM:MeOH:DIPEA(17:2:1)で3回、DCMで3回、DMFで2回、DCMで2回順次洗浄を行った後、KOH上で真空乾燥させ、Fmoc-D-His(Trt)-resinを得た。
<αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作>
合成したFmoc-D-His(Trt)-resin(あるいはFmoc保護ペプチジル樹脂)の全量を、ピペリジン(Piperidine Cas No.110-89-4)20容積%を含むDMF溶液およそ50mlに加え30℃で3時間振盪させ、液をすてた。再度同じ処理を3回〜4回繰返し、最後に樹脂を約50mlのDMFで洗浄した。
<カップリング操作>
Fmoc-L-Arg(pbf)-OH(メルク社製:Cas No.154445-77-9) 26g、HBTU(Cas No94790-37-1)14.9g、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole :Cas No.2592-95-2)(以下「HOBt」と称す) 5.4gを約80mlのDMFに溶解させた。さらに10gのDIPEAを加えて混合した。混合液を直ちにαアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行った樹脂(His(Trt)がN末端)に加えて30℃で2時間反応させた。
αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行った樹脂(Arg(pbf)がN末端)にヒスチジンを結合させる場合は、Fmoc-D-His(Trt)-OHを25gにして上記と同様にカップリング操作を行なった。
<ペプチド鎖の伸長>
目的の鎖長のペプチドになるまで、αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作とカップリング操作を繰り返した。
本試験では、アルギニンとヒスチジンを交互に結合させ、(アルギニン−ヒスチジン)の5量体となるまで、上記αアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作とカップリング操作を繰り返した。
<樹脂からのペプチドの切り出し>
はじめに、樹脂のαアミノ基保護Fmoc基の脱保護操作を行い、N末端のFmoc基を除去した。次に、樹脂を約50mlのDMF−酢酸(60:40)およびDCMで5回づつ洗浄した。最後に約50mlのメタノールで樹脂を5回洗浄したのちKOH上で一夜真空乾燥した。
この樹脂に、トリフルオロ酢酸(以下「TFA」と称す)(Trifluoroacetic Acid:Cas No. 76-05-1):トリイソプロピルシラン(以下「TIS」と称す)(Triisopropylsilane:Cas No.6485-79-6):水=95:2.5:2.5(体積比)の混合液25mlを加え、室温で時々撹拌して24時間放置した。得られた溶液を吸引ろ過し、ろ過液を回収した。樹脂を50mlの同混合液で2回洗浄し、同様にろ過液を回収した。回収したろ過液に氷冷したエチルエーテル2lを滴下して沈殿物を形成させた。これを吸引ろ過して沈殿物を回収し、少量の冷エチルエーテルで沈殿物を更に洗浄した。この沈殿物を真空乾燥し粗ペプチドを得た。
<精製>
1%CH3CN(0.1%TFA)水溶液に25mg/mlの濃度で粗ペプチドを溶解させ、下記のセミ分取カラムによって精製した。
サンプル:4ml(25mg/ml)
カラム:YMC Pack ODS−A、20mmI.D.×250mm
溶離液:0.1%TFA、グラジエント CH3CN1%→60%(80min)
流速:5ml/min
温度:室温
検出:220nm
HPLCの溶出部分をダウエックスカチオン交換樹脂(H型)30mlのカラムに通し、水で洗浄した後に1mol/Lの塩酸で溶出させた。溶出部分を凍結乾燥させ、約48gのpRHを得た。
<ポリアルギニルヒスチジンの物性>
1.純度試験
ポリアルギニルヒスチジンを高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC)にて分析した。ポリアルギニルヒスチジン0.5μl(0.01mg/μl)のサンプルを以下の条件で、測定した。その際のピーク純度は98.5%であった。
カラム:YMC Pack ODS−A、4.6mmI.D.×150mm
溶離液:0.1%TFA、グラジエント CH3CN1%→60%(25min)
流速:1ml/min
温度:室温
検出:220nm
1.純度試験
ポリアルギニルヒスチジンを高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC)にて分析した。ポリアルギニルヒスチジン0.5μl(0.01mg/μl)のサンプルを以下の条件で、測定した。その際のピーク純度は98.5%であった。
カラム:YMC Pack ODS−A、4.6mmI.D.×150mm
溶離液:0.1%TFA、グラジエント CH3CN1%→60%(25min)
流速:1ml/min
温度:室温
検出:220nm
2.アミノ酸分析
ポリアルギニルヒスチジンを6N HCl、110℃で22時間加水分解したのち、アミノ酸分析装置(日立製L−8800)にてアミノ酸を定量した。この結果、モル比[アルギニン:ヒスチジン=5.00:5.01]であった。
また、ポリアルギニルヒスチジンの元素分析を行った。元素分析の結果を表1に示す。理論値と実験値はほぼ一致した。
ポリアルギニルヒスチジンを6N HCl、110℃で22時間加水分解したのち、アミノ酸分析装置(日立製L−8800)にてアミノ酸を定量した。この結果、モル比[アルギニン:ヒスチジン=5.00:5.01]であった。
また、ポリアルギニルヒスチジンの元素分析を行った。元素分析の結果を表1に示す。理論値と実験値はほぼ一致した。
3.質量分析
Deconvolution法に基づき質量分析測定を行なった。イオン化は電子スプレーイオン化法(ESI-MS)で行なった。測定結果は1485であり、理論値1484.64とほぼ一致した。
Deconvolution法に基づき質量分析測定を行なった。イオン化は電子スプレーイオン化法(ESI-MS)で行なった。測定結果は1485であり、理論値1484.64とほぼ一致した。
(試験例1)
ポリアルギニルヒスチジンの歯周病細菌に対する抗菌効果
<微生物菌株>
1.ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis) ATCC 33277株、W50株
2.アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans) ATCC 29523株、Y4株
3.プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia) ATCC 49046株
4.プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens) ATCC 25261株
5.フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum) ATCC 23726株、 ATCC 25586株
6.トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola) ATCC 33520株
<試験内容1>
上記の凍結保存した菌株をそれぞれ、酵母抽出物(1 g/l)、ヘミン(5 mg/ml)およびメナジオン (1 mg/l)を添加したTSB培地を用いて嫌気的に35℃で48時間培養したものを前培養菌液とした。
pRH溶液(1 μg/ml, 5 μg/ml, 10 μg/ml, 50 μg/ml, 100 μg/ml, 500 μg/ml)をそれぞれ含むTSB培地5 mlに、前培養菌液を100 μl添加し、24時間後、48時間後のそれぞれ光学密度(O. D. 660 nm)を測定した。前記培地にpRH溶液のみ添加した場合のO. D.
660 nmの値を差し引いたものを菌による濁度とした。
<試験結果1>
pRHはプレボテラ・ニグレセンス ATCC 25261株に対しては100 μg/ml以上の濃度で増殖阻害効果がみられたが(図4)、他の供試菌株に対しては500 μg/mlの濃度では増殖阻害はみられなかった(図1〜3,5〜9)。以上のようにポリアルギニルヒスチジンは口腔内微生物に対して著しい生育阻害活性は見出せなかった。
ポリアルギニルヒスチジンの歯周病細菌に対する抗菌効果
<微生物菌株>
1.ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis) ATCC 33277株、W50株
2.アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans) ATCC 29523株、Y4株
3.プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia) ATCC 49046株
4.プレボテラ・ニグレセンス(Prevotella nigrescens) ATCC 25261株
5.フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum) ATCC 23726株、 ATCC 25586株
6.トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola) ATCC 33520株
<試験内容1>
上記の凍結保存した菌株をそれぞれ、酵母抽出物(1 g/l)、ヘミン(5 mg/ml)およびメナジオン (1 mg/l)を添加したTSB培地を用いて嫌気的に35℃で48時間培養したものを前培養菌液とした。
pRH溶液(1 μg/ml, 5 μg/ml, 10 μg/ml, 50 μg/ml, 100 μg/ml, 500 μg/ml)をそれぞれ含むTSB培地5 mlに、前培養菌液を100 μl添加し、24時間後、48時間後のそれぞれ光学密度(O. D. 660 nm)を測定した。前記培地にpRH溶液のみ添加した場合のO. D.
660 nmの値を差し引いたものを菌による濁度とした。
<試験結果1>
pRHはプレボテラ・ニグレセンス ATCC 25261株に対しては100 μg/ml以上の濃度で増殖阻害効果がみられたが(図4)、他の供試菌株に対しては500 μg/mlの濃度では増殖阻害はみられなかった(図1〜3,5〜9)。以上のようにポリアルギニルヒスチジンは口腔内微生物に対して著しい生育阻害活性は見出せなかった。
(試験例2)
ポリアルギニルヒスチジンがポルフィロモナス・ジンジバリスのタンパク質分解酵素に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの有力な病原因子であるアルギニン特異的タンパク質分解酵素(Arg-gingipain;以下「RGP」と称す)とリジン特異的タンパク質分解酵素(Lys-gingipain;以下「KGP」と称す)の酵素活性の阻害を検討した。
<試験内容2>
pRH(最終濃度100 μg/ml, 1000 μg/ml)と基質(RGPに対してはBz-Arg-methylcoumarinamide、KGPに対してはBoc-Val-Leu-Lys- methylcoumarinamide:最終濃度、各100 μM)を、 NaCl(100 mM)、CaCl2(5 mM)、システイン(10 mM)を添加したTris-HCl緩衝液(pH 7.6)800μlに溶解し、ポルフィロモナス・ジンジバリス培養上清200 μlを加え、室温で15分反応させた。2 mM TLCKを添加することにより反応を停止させ、遊離したメチルクマリンアミドを分光蛍光光度計(励起波長:380 nm、蛍光波長:460 nm)で測定した。
また、阻害率は下記式(1)で求めた。
阻害率(%)
=(ブランク蛍光強度―サンプル蛍光強度)
÷ブランク蛍光強度×100 (1)
ブランク蛍光強度はpRHを添加しないで反応した際の蛍光強度を表す。
サンプル蛍光強度はpRHを添加して反応した際の蛍光強度を表す。
<試験結果2>
pRHは、KGPに対しては100 μg/mlのときに5.7%の阻害率、1000 μg/mlのとき23.1%の阻害率であった(図10)。RGPの場合は100 μg/mlのときに0.2%の阻害率、1000 μg/mlのとき7.7%の阻害率であった(図11)。pRHはKGP、RGPの何れに対しても顕著な阻害は示さなかった。
ポリアルギニルヒスチジンがポルフィロモナス・ジンジバリスのタンパク質分解酵素に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの有力な病原因子であるアルギニン特異的タンパク質分解酵素(Arg-gingipain;以下「RGP」と称す)とリジン特異的タンパク質分解酵素(Lys-gingipain;以下「KGP」と称す)の酵素活性の阻害を検討した。
<試験内容2>
pRH(最終濃度100 μg/ml, 1000 μg/ml)と基質(RGPに対してはBz-Arg-methylcoumarinamide、KGPに対してはBoc-Val-Leu-Lys- methylcoumarinamide:最終濃度、各100 μM)を、 NaCl(100 mM)、CaCl2(5 mM)、システイン(10 mM)を添加したTris-HCl緩衝液(pH 7.6)800μlに溶解し、ポルフィロモナス・ジンジバリス培養上清200 μlを加え、室温で15分反応させた。2 mM TLCKを添加することにより反応を停止させ、遊離したメチルクマリンアミドを分光蛍光光度計(励起波長:380 nm、蛍光波長:460 nm)で測定した。
また、阻害率は下記式(1)で求めた。
阻害率(%)
=(ブランク蛍光強度―サンプル蛍光強度)
÷ブランク蛍光強度×100 (1)
ブランク蛍光強度はpRHを添加しないで反応した際の蛍光強度を表す。
サンプル蛍光強度はpRHを添加して反応した際の蛍光強度を表す。
<試験結果2>
pRHは、KGPに対しては100 μg/mlのときに5.7%の阻害率、1000 μg/mlのとき23.1%の阻害率であった(図10)。RGPの場合は100 μg/mlのときに0.2%の阻害率、1000 μg/mlのとき7.7%の阻害率であった(図11)。pRHはKGP、RGPの何れに対しても顕著な阻害は示さなかった。
(試験例3)
ポリアルギニルヒスチジンがポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスは強い赤血球凝集活性を有しているため、それに対する阻害効果を検討した。
<試験内容3>
連続2倍希釈したポルフィロモナス・ジンジバリス培養上清およびO. D. 660 nm = 2に調製したポルフィロモナス・ジンジバリス菌体90 μlと試料ポリアルギニルヒスチジン(最終濃度10 μg/ml、100 μg/ml 、500 μg/ml)20 μlを 96穴マイクロタイタープレートに加え、ヒトから採血して得た1mlの血液を生理食塩水49mlに懸濁した試験液90 μlを添加し、室温で2時間静置後、肉眼で赤血球凝集活性がみられる最小濃度を判定した。
<試験結果3>
ポリアルギニルヒスチジンがポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスは強い赤血球凝集活性を有しているため、それに対する阻害効果を検討した。
<試験内容3>
連続2倍希釈したポルフィロモナス・ジンジバリス培養上清およびO. D. 660 nm = 2に調製したポルフィロモナス・ジンジバリス菌体90 μlと試料ポリアルギニルヒスチジン(最終濃度10 μg/ml、100 μg/ml 、500 μg/ml)20 μlを 96穴マイクロタイタープレートに加え、ヒトから採血して得た1mlの血液を生理食塩水49mlに懸濁した試験液90 μlを添加し、室温で2時間静置後、肉眼で赤血球凝集活性がみられる最小濃度を判定した。
<試験結果3>
表2より、ポリアルギニルヒスチジンの濃度とともにポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性が低くなっていることが分かる。pRHは、ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性を濃度依存的に阻害することが分かった。
(試験例4)
ポリアルギニルヒスチジンのポルフィロモナス・ジンジバリスの唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズへの付着に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの線毛は唾液タンパク質のうち、高プロリンタンパク質、高プロリン糖タンパク質、スタセリンと特異的に結合することが報告されている。従って、ポルフィロモナス・ジンジバリスの唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズへの付着に及ぼすポリリジンおよびアルギニルヒスチジンの影響を検討した。
<試験内容4>
2 mgのハイドロキシアパタイトビーズ(以下「HA」と称す)を150 μlのヒト無刺激唾液と室温で1晩インキュベートし、KCl緩衝液(50 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 1 mM CaCl2, 0.1 M MgCl2) で洗浄した。得られた唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズを以下「sHA」と称す。このsHAに、5 μCi/mlの3Hを添加した培地で培養することにより放射能ラベルしたポルフィロモナス・ジンジバリス(2 x 108 cells)とpRH又はポリリジン(各0.1 mg/ml, 1 mg/ml, 10 mg/ml)をそれぞれ添加し、軽く攪拌しながら室温で1時間インキュベートし、パーコールおよびKCl緩衝液で洗浄し、サンプルを得た。また、sHAに、放射能ラベルしたポルフィロモナス・ジンジバリス(2 x 108 cells)のみを添加し、軽く攪拌しながら室温で1時間インキュベートし、パーコールおよびKCl緩衝液で洗浄し、ブランクサンプルを得た。これらサンプルのsHAに結合したポルフィロモナス・ジンジバリスの3Hを測定し、下記式(2)より阻害率を算出した。
阻害率(%)
=(ブランク3H値―サンプル3H値)
÷ブランク3H値×100 (2)
ブランク3H値はpRH又はポリリジンを添加しないで処理したブランクサンプルのポルフィロモナス・ジンジバリスの3H測定値を表す。
サンプル3H値はpRH又はポリリジンを添加して処理したサンプルのポルフィロモナス・ジンジバリスの3H測定値を表す。
<試験結果4>
pRHはsHAに対するポルフィロモナス・ジンジバリスの吸着を濃度依存的に阻害することが明らかであるが、一方pRHと同様に塩基性のペプチドであるポリリジンはsHAに対する吸着を阻害しなかった(図12)。
ポリアルギニルヒスチジンのポルフィロモナス・ジンジバリスの唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズへの付着に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの線毛は唾液タンパク質のうち、高プロリンタンパク質、高プロリン糖タンパク質、スタセリンと特異的に結合することが報告されている。従って、ポルフィロモナス・ジンジバリスの唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズへの付着に及ぼすポリリジンおよびアルギニルヒスチジンの影響を検討した。
<試験内容4>
2 mgのハイドロキシアパタイトビーズ(以下「HA」と称す)を150 μlのヒト無刺激唾液と室温で1晩インキュベートし、KCl緩衝液(50 mM KCl, 1 mM KH2PO4, 1 mM CaCl2, 0.1 M MgCl2) で洗浄した。得られた唾液被覆ハイドロキシアパタイトビーズを以下「sHA」と称す。このsHAに、5 μCi/mlの3Hを添加した培地で培養することにより放射能ラベルしたポルフィロモナス・ジンジバリス(2 x 108 cells)とpRH又はポリリジン(各0.1 mg/ml, 1 mg/ml, 10 mg/ml)をそれぞれ添加し、軽く攪拌しながら室温で1時間インキュベートし、パーコールおよびKCl緩衝液で洗浄し、サンプルを得た。また、sHAに、放射能ラベルしたポルフィロモナス・ジンジバリス(2 x 108 cells)のみを添加し、軽く攪拌しながら室温で1時間インキュベートし、パーコールおよびKCl緩衝液で洗浄し、ブランクサンプルを得た。これらサンプルのsHAに結合したポルフィロモナス・ジンジバリスの3Hを測定し、下記式(2)より阻害率を算出した。
阻害率(%)
=(ブランク3H値―サンプル3H値)
÷ブランク3H値×100 (2)
ブランク3H値はpRH又はポリリジンを添加しないで処理したブランクサンプルのポルフィロモナス・ジンジバリスの3H測定値を表す。
サンプル3H値はpRH又はポリリジンを添加して処理したサンプルのポルフィロモナス・ジンジバリスの3H測定値を表す。
<試験結果4>
pRHはsHAに対するポルフィロモナス・ジンジバリスの吸着を濃度依存的に阻害することが明らかであるが、一方pRHと同様に塩基性のペプチドであるポリリジンはsHAに対する吸着を阻害しなかった(図12)。
(試験例5)
ポリアルギニルヒスチジンのポルフィロモナス・ジンジバリスの初期デンタルバイオフィルム形成菌への付着に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの定着にはすでに歯面に定着している口腔常在グラム陽性菌への付着(共凝集)が重要であると考えられている。したがって、ポルフィロモナス・ジンジバリスと代表的な初期デンタルバイオフィルム形成菌の一つであるストレプト
コッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を濁度測定法により測定した。<試験内容5>
1.共凝集活性の測定
10 mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH 6.0)の反応液中に、ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(各5 x 108 cells/ml)を加え、分光光度計(UV-265FW;島津製作所)を用いて、37℃で攪拌しながら、O.D.550nmの変化を7.5分間連続的に記録測定した。7.5分間連続的記録とは、ある時点の前後0.5分間、すなわち各1分間の吸光度差を連続的にかつ自動的に計算させ記録したものである。得られた測定値の中から最大の吸光度変化量を読み取りその値をAとする。また、10mMPBS(pH6.0)の反応液中に、ポルフィロモナス・ジンジバリス(5 x 108 cells/ml)のみを加え、同様に測定した際の最大の吸光度変化量をBとすると、共凝集活性は、下記の式(3)から算出から算出される。
共凝集活性 = A−B (3)
2.阻害率の測定
共凝集活性測定の際に、pRH溶液(最終濃度0.1 mg/ml,0.5 mg/ml, 1 mg/ml, 2.5 mg/ml)を添加し、前述と同様にO.D.550nmの変化を7.5分間連続的に記録測定し、最大の吸光度変化量を読み取った。阻害率の計算は、pRH溶液を添加しない時の共凝集活性をC、pRH溶液を添加した時の共凝集活性をDとすると下記の式(4)から算出される。
阻害率(%)=(C−D)÷C×100 (4)
<試験結果5>
pRH溶液は、2.5mg/mlの濃度で、33%の凝集阻害活性を示した(図13)。
ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリスの両者を加えたときの最大の吸光度変化量(A)に対して、ストレプトコッカス・オラリスのみを加えて同様に測定した際の最大の吸光度変化量は、Aの1%以下の変化量であった。一方、ポルフィロモナス・ジンジバリスのみを加えて、同様に測定した際の最大の吸光度変化量(B)は、Aの約30%の変化量であった。
ポリアルギニルヒスチジンのポルフィロモナス・ジンジバリスの初期デンタルバイオフィルム形成菌への付着に及ぼす影響
ポルフィロモナス・ジンジバリスの定着にはすでに歯面に定着している口腔常在グラム陽性菌への付着(共凝集)が重要であると考えられている。したがって、ポルフィロモナス・ジンジバリスと代表的な初期デンタルバイオフィルム形成菌の一つであるストレプト
コッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を濁度測定法により測定した。<試験内容5>
1.共凝集活性の測定
10 mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH 6.0)の反応液中に、ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(各5 x 108 cells/ml)を加え、分光光度計(UV-265FW;島津製作所)を用いて、37℃で攪拌しながら、O.D.550nmの変化を7.5分間連続的に記録測定した。7.5分間連続的記録とは、ある時点の前後0.5分間、すなわち各1分間の吸光度差を連続的にかつ自動的に計算させ記録したものである。得られた測定値の中から最大の吸光度変化量を読み取りその値をAとする。また、10mMPBS(pH6.0)の反応液中に、ポルフィロモナス・ジンジバリス(5 x 108 cells/ml)のみを加え、同様に測定した際の最大の吸光度変化量をBとすると、共凝集活性は、下記の式(3)から算出から算出される。
共凝集活性 = A−B (3)
2.阻害率の測定
共凝集活性測定の際に、pRH溶液(最終濃度0.1 mg/ml,0.5 mg/ml, 1 mg/ml, 2.5 mg/ml)を添加し、前述と同様にO.D.550nmの変化を7.5分間連続的に記録測定し、最大の吸光度変化量を読み取った。阻害率の計算は、pRH溶液を添加しない時の共凝集活性をC、pRH溶液を添加した時の共凝集活性をDとすると下記の式(4)から算出される。
阻害率(%)=(C−D)÷C×100 (4)
<試験結果5>
pRH溶液は、2.5mg/mlの濃度で、33%の凝集阻害活性を示した(図13)。
ポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリスの両者を加えたときの最大の吸光度変化量(A)に対して、ストレプトコッカス・オラリスのみを加えて同様に測定した際の最大の吸光度変化量は、Aの1%以下の変化量であった。一方、ポルフィロモナス・ジンジバリスのみを加えて、同様に測定した際の最大の吸光度変化量(B)は、Aの約30%の変化量であった。
Claims (15)
- アルギニンとヒスチジンが交互に結合したペプチドを含有する口腔用組成物。
- 前記アルギニンのD体アルギニンとL体アルギニンの比率が、D体アルギニン:L体アルギニン=10:90〜0:100であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記アルギニンがL体アルギニンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ヒスチジンのD体ヒスチジンとL体ヒスチジンの比率が、D体ヒスチジン:L体ヒスチジン=100:0〜70:30であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ヒスチジンがD体ヒスチジンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の1〜20量体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ペプチドが(アルギニン−ヒスチジン)の5量体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ペプチドが、微生物の発酵生産により製造されたペプチドであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ペプチドの含有量が0.001〜10重量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 前記ペプチドの含有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- ポルフィロモナス・ジンジバリスの赤血球凝集活性、ポルフィロモナス・ジンジバリスと唾液被覆ハイドロキシアパタイトとの付着、及びポルフィロモナス・ジンジバリスとストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)との共凝集を抑制することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 歯周病予防用であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
- 歯周病治療用であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
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JP2006228165A JP2007084534A (ja) | 2005-08-26 | 2006-08-24 | 口腔用組成物 |
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---|---|---|---|---|
JP2011511091A (ja) * | 2008-02-08 | 2011-04-07 | コルゲート・パーモリブ・カンパニー | 塩基性アミノ酸のペプチドおよびプロテアーゼを含む組成物および方法 |
JP2012527456A (ja) * | 2009-05-18 | 2012-11-08 | コルゲート・パーモリブ・カンパニー | ポリグアニジニウム化合物を含有する口腔用組成物及び製造の方法並びにその使用 |
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2006
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WO2023276785A1 (ja) * | 2021-06-29 | 2023-01-05 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | 歯周病の体外診断方法、及び、Pg菌検出方法 |
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