本発明は、画素領域と非画素領域とを有し、対向された第1、第2の基板を有する液晶表示装置の製造方法であって、インクジェット装置のノズルから、スペーサ粒子が分散されているスペーサ粒子分散液を前記第1の基板上に吐出し、前記第1の基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置する工程と、スペーサ粒子が配置された前記第1の基板を、スペーサ粒子を介して対向するように前記第2の基板に重ね合わせる工程と、重ね合わせられた第1、第2の基板間に液晶を注入する、若しくは、前記第1、第2の基板を重ね合わせる工程の前に第1の基板又は第2の基板上に液晶を配置する工程とを備え、前記スペーサ粒子分散液は、沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒を少なくとも含有し、前記スペーサ粒子を配置する工程において、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液中に含まれる沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒の量が0.5〜15ngである液晶表示装置の製造方法である。
また、本発明は、本発明の液晶表示装置の製造方法によりえられた液晶表示装置である。
また、本発明は、インクジェット装置を用いて液晶表示素子の基板上に吐出され、基板上にスペーサ粒子を配置するのに用いるスペーサ粒子分散液であって、沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒を少なくとも含有し、前記沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒が1重量%以上含有されているスペーサ粒子分散液である。
以下、本発明を詳述する。
本発明は、画素領域と非画素領域とを有し、対向された第1、第2の基板を有する液晶表示装置の製造方法である。
図1は、本発明の液晶表示装置の製造方法により製造される液晶表示装置を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
図1に示す液晶表示装置1では、2枚の第2の基板2、第1の基板3が対向し合うように配置されている。
第2の基板2を構成する透明基板2Aの内表面には、ブラックマトリックス4が等間隔に形成されている。ブラックマトリックス4上、及び、ブラックマトリックス4間の透明基板2Aの内表面には、赤、緑、青の3色からなるカラーフィルタ5がほぼ一定の厚みとなるように形成されている。カラーフィルタ5上には、表面が平坦となるようにオーバーコート層6が形成されている。オーバーコート層6を覆うように、ほぼ一定の厚みのITO透明電極7が形成されており、そのITO透明電極7をほぼ一定の厚みの配向膜8が覆っている。
他方、第1の基板3を構成する透明基板3Aの内表面には、ブラックマトリックス3と対応する位置において、配線9が形成されている。配線9−9間、かつ、配線9−9と一定間隔を隔てるように、透明基板3Aの内表面にほぼ一定の厚みのITO透明電極10が形成されている。配線9とITO透明電極10とを覆うように、ほぼ一定の厚みの配向膜11が形成されている。第1の基板3では、配線9が形成されている部分において配向膜11は、隆起部分11aを有する。
第2の基板2と第1の基板3とは、それぞれの外周縁近傍によって、図示しないシール材を介して接合されている。第2の基板2と第1の基板3とにより囲まれた空間に、液晶12が封入されている。ブラックマトリックス3に対応する位置、すなわち非画素領域に複数のスペーサ粒子13が配置されている。スペーサ粒子13により第1、第2の基板3、2の間隔が規制されて、適正な液晶層の厚みが維持されている。
なお、本発明では、スペーサ粒子が配置される基板を第1の基板と呼ぶものとし、上述した第2の基板2にスペーサ粒子が配置される場合には、第2の基板が第1の基板となる。
本発明の液晶表示装置の製造方法は、インクジェット装置のノズルから、スペーサ粒子が分散されているスペーサ粒子分散液を上記第1の基板上に吐出し、上記第1の基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置する工程を有する。
本工程において、インクジェット装置のノズルから、スペーサ粒子が分散されているスペーサ粒子分散液を上記第1の基板上に吐出し、上記第1の基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置する方法を、図2(a)〜(c)を用いて説明する。図2(a)〜(c)に、スペーサ粒子が配置される過程を段階的に部分切欠正面断面図で示す。
図2(a)に示すように、ブラックマトリックス4に対応する非画素領域、すなわち配線9部分の配向膜11の隆起部分11aを含むように、1個又は複数個のスペーサ粒子13を含むスペーサ粒子分散液13Aを吐出する。吐出されたスペーサ粒子分散液13Aは、図2(b)に示すように、ブラックマトリックス4に対応する非画素領域に着弾する。しかる後、スペーサ粒子分散液13Aが乾燥されて、図2(c)に示すように、スペーサ粒子13がブラックマトリックス4に対応する非画素領域、すなわち配線9部分の配向膜11の隆起部分11aの段差面に配置される。図2(c)に示すように、スペーサ粒子分散液13Aが乾燥される際にスペーサ粒子13が複数個含まれていると、隆起部分11aの段差面に向かってスペーサ粒子13が寄り集まるように移動し、複数のスペーサ粒子13が互いに接するように配置される。
上記のようにして、図3に部分切欠正面断面図で示すように、1個又は複数個のスペーサ粒子13がブラックマトリックス4に対応する非画素領域にそれぞれ配置された第1の基板3が得られる。この第1の基板3は、スペーサ粒子13を介して対向するように第2の基板2に重ね合わせられる。重ね合わせられた第1,第2の基板3,2間に液晶を注入するか、若しくは、第1、第2の基板3、2を重ね合わせる前に第1の基板3又は第2の基板2上に液晶12が配置され、図1に示す液晶表示装置1が構成される。
(スペーサ粒子)
本発明に用いられるスペーサ粒子の材料は特に限定されず、例えば、シリカ粒子等の無機系粒子であってもよく、有機高分子等の有機系粒子であってもよい。なかでも、液晶表示装置の基板上に形成されている配向膜を傷つけない程度の適度な硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、更にセル内部でスペーサ粒子が移動し難いことから、有機系粒子が好ましく使用される。
上記有機系粒子としては特に限定されないが、例えば、強度等が適度な範囲であるため、単官能単量体と多官能単量体との共重合体が好ましく用いられる。
上記共重合体を構成する単官能単量体と多官能単量体との比率としては特に限定されず、有機系粒子に要求される強度や硬度により適宜調整され得る。
上記単官能単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。これら単官能単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等の2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記単官能単量体又は多官能単量体として、親水性基を有する単量体が用いられてもよい。親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスフォニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基が挙げられる。
上記親水性基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸、及び、それらのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等のカルボキシル基を有する単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有する単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスフォニル基を有する単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレートやジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリロイル基を有するアミン類等のアミノ基を有する化合物;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基とエーテル基とをともに有する単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有する単量体等が挙げられる。
単官能単量体と多官能単量体とを共重合させてスペーサ粒子を得る方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等の各種重合法が挙げられる。
上記懸濁重合法では、得られるスペーサ粒子の粒子径分布が広範囲であり、多分散のスペーサ粒子が得られる。上記懸濁重合法により得られたスペーサ粒子の分級操作を行うことにより、所望とする粒子径、粒子径分布を有する多種のスペーサ粒子を得ることができる。一方、シード重合法又は分散重合法では、分級工程を経ることなく単分散のスペーサ粒子が得られるため、特定の粒子径のスペーサ粒子を大量に得る際に好適である。
上記懸濁重合法とは、所望とする粒子径となるように、単量体及び重合開始剤からなる単量体組成物を貧溶媒中に分散させて重合させる方法である。懸濁重合法では、分散媒として、通常水に分散安定剤を加えたものが使用される。分散安定剤としては、媒体中に可溶の高分子が挙げられ、より具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。またノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。重合条件としては、上記重合開始剤や単量体の種類により異なるが、通常、重合温度は50〜80℃の範囲であり、重合時間は3〜24時間の範囲である。
上記シード重合法とは、ソープフリー重合や乳化重合により合成された単分散の種粒子に、単量体をさらに吸収させることにより、所望とする粒子径まで種粒子を膨らませる重合方法である。種粒子に用いられる有機単量体としては特に限定されず、例えば上述した単量体を用いることができる。単分散の種粒子に吸着される単量体としては、シード重合時の相分離を抑制するために、単分散の種粒子と親和性のある単量体を用いることが好ましい。単分散の種粒子に吸着される単量体としては、粒子径分布をより一層単分散とし得るため、スチレン及びその誘導体等がより好ましく用いられる。
上記種粒子の粒子径分布は、シード重合後の粒子径分布にも反映されるため、単分散であることが好ましく、Cv値が5%以下であることが好ましい。シード重合時に吸収させる単量体として、相が分離することを防止するため、種粒子と類似の組成を有する単量体を用いることが好ましい。種粒子がスチレン系の粒子である場合には、シード重合時に吸収させる単量体として、芳香族系ジビニル単量体を用いることがより好ましい。種粒子がアクリル系の粒子である場合には、シード重合時に吸収させる単量体として、アクリル系多官能ビニル単量体を用いることがより好ましい。
上記シード重合法では、必要に応じて分散安定剤が用いられる。分散安定剤としては、媒体中に可溶な高分子であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。また、ノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。
上記シード重合法では、種粒子1重量部に対して、単量体20〜100重量部を添加し、吸着させることが好ましい。
上記シード重合に使用される媒体としては特に限定されず、使用する単量体によって適宜変更し得るが、一般的に好ましく使用される有機溶媒としては、アルコール類、セロソルブ類、ケトン類又は炭化水素を挙げることができる。これらの媒体は単独で、又はこれらと互いに相溶可能な他の有機溶剤、水等と混合されて用いられる。媒体と互いに相溶可能な他の有機溶剤としては、具体的には、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、シメチルスルホキシド、酢酸エチル、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、2−ブタノンなどのケトン類等を挙げることができる。
上記分散重合法とは、単量体は溶解するが、生成したポリマーは溶解しない貧溶媒系で重合を行い、この系に高分子系分散安定剤を添加し、粒子形状の生成ポリマーを析出させる方法である。
上記分散重合法において、架橋成分が配合されると粒子の凝集が起こりやすく、安定的に単分散架橋粒子を得ることが困難であるが、条件を調整することにより単分散架橋粒子を得ることができる。
上記重合に際しては、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が好適に用いられる。重合開始剤は、重合に用いられる単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で添加されることが好ましい。
スペーサ粒子の粒子径は、特に限定されず、液晶表示素子の種類により適宜変更される。上記スペーサ粒子の粒子径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。粒子径が1μm未満であると、スペーサ粒子が十分機能せず対向する基板同士が接触することがあり、20μmを超えると、基板上の非画素領域等からスペーサ粒子がはみ出しやすくなる。また、粒子径が大きすぎると、対向する基板間の距離が大きくなり、近年の液晶表示素子の小型化等の要請に十分に対応できない。
スペーサ粒子は、適正な液晶層の厚みを維持するためのギャップ材として用いられる。よって、スペーサ粒子には一定の強度が求められる。スペーサ粒子の圧縮強度を示す指標として、スペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)が用いられる。適正な液晶層の厚みを維持するためには、圧縮弾性率の好ましい下限は2000MPa、好ましい上限は15000MPaである。圧縮弾性率が2000MPaより小さいと、液晶表示素子を組立てる際のプレス圧によってスペーサ粒子が変形し、所望とする液晶層の厚みを得ることが困難なことがある。圧縮弾性率が15000MPaより大きいと、液晶表示素子にスペーサ粒子を配置するときに、基板表面に形成されている配向膜を傷つけることがある。
上記スペーサ粒子の圧縮弾性率(10%K値)は、特表平6−503180号公報に記載の方法に準拠して求められる。例えば、微小圧縮試験器(例えば、島津製作所製「PCT−200」等)を用い、粒子を直径50μmのダイアモンド製円柱からなる平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、最大試験荷重10gの条件下で基材粒子を圧縮した場合の圧縮変位(mm)を測定し、下記式により求めることができる。
K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:基材粒子の10%圧縮変形における荷重値(N)
S:基材粒子の10%圧縮変形における圧縮変位(mm)
R:基材粒子の半径(mm)
10%K値が上記条件を満たすスペーサ粒子を得るためには、スペーサ粒子は、エチレン性不飽和基を有する単官能又は多官能単量体を重合させてなる樹脂からなることが好ましく、この場合、構成成分として多官能単量体を少なくとも20重量%含有することがより好ましい。
上記スペーサ粒子は、回復率の下限が20%であることが好ましい。20%未満であると、上記スペーサ粒子を圧縮した場合に変形しても元に戻らないため製造する液晶表示装置の相対する基板同士を固定できないことがある。より好ましい下限は40%である。なお、上記回復率とは、スペーサ粒子に9.8mNの荷重を負荷した後の回復率をいう。
液晶表示素子のコントラストを向上させるため、スペーサ粒子は着色されて用いられてもよい。着色されたスペーサ粒子としては、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等により処理されたスペーサ粒子、又はスペーサ粒子の表面に有機物の膜が形成された後、高温で分解又は炭化されて着色されたスペーサ粒子等が挙げられる。なお、スペーサ粒子を構成する材質自体が着色している場合には、スペーサ粒子を着色させずに用いてもよい。
スペーサ粒子には、帯電可能な処理が施されていてもよい。帯電可能な処理とは、スペーサ粒子分散液中でもスペーサ粒子が何らかの電位を持つように処理することである。このスペーサ粒子の電位(電荷)は、ゼータ電位測定器等の既存の測定器を用いて、既存の測定方法によって測定される。
帯電可能な処理を施す方法としては、例えば、スペーサ粒子中に荷電制御剤を含有させる方法、帯電しやすい単量体成分を含む単量体を用いてスペーサ粒子を製造する方法、スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法等が挙げられる。
スペーサ粒子が帯電可能である場合には、スペーサ粒子分散液におけるスペーサ粒子の分散性、分散安定性が高められる。よって、スペーサ粒子を散布するときに、電気泳動効果によって配線部(段差)近傍にスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
上記荷電制御剤を含有させる方法としては、スペーサ粒子を得る際に、荷電制御剤を共存させて重合を行う方法、スペーサ粒子を構成するモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を、スペーサ粒子を構成するモノマーと共存させて重合を行う方法、後述するスペーサ粒子の表面修飾の際に、表面修飾に用いられるモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を共存させて共重合を行う方法、表面修飾層又はスペーサ粒子の表面官能基と反する官能基を有する荷電粒子をスペーサ粒子表面と反応させる方法等が挙げられる。
上記荷電制御剤としては、特に限定されないが、例えば特開2002−148865号に記載の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤としては、特に限定されないが、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ヒドロキシルカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。
上記荷電制御剤としては、具体的には、例えば尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、非金属カルボン酸系化合物、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及び、これらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類等が挙げられる。上記レーキ顔料に用いられるレーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等が挙げられる。これら荷電制御剤は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
上記荷電制御剤を含有するスペーサ粒子の極性は、上記荷電制御剤を適宜選択することにより設定され得る。すなわち、周囲の環境に応じて、スペーサ粒子を正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
上記帯電しやすい単量体成分を含む単量体を用いてスペーサ粒子を製造する方法としては、上述した単量体の中で、親水性官能基を有する単量体を組み合わせて用いる方法が挙げられる。これらの親水性官能基を有する単量体の中から適切な単量体を適宜選択して用いることにより、周囲の環境に応じて、スペーサ粒子を正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
上記スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法としては、例えば、特開平1−247154号公報に記載のように、スペーサ粒子表面に樹脂を析出させて修飾する方法、特開平9−113915号公報又は特開平7−300587号公報に記載のように、スペーサ粒子表面の官能基と反応する化合物をスペーサ粒子表面に作用させて修飾する方法、特開平11−223821号公報又は特開2003−295198号公報に記載のように、スペーサ粒子表面でグラフト重合を行って表面を修飾する方法、スペーサ粒子表面に化学的に結合した表面層を形成する方法等が挙げられる。これらの表面処理を施す際に、スペーサ粒子が帯電処理されるように適宜の方法が選択される。
上記スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法としては、液晶表示装置のセル中で、表面層が剥離して液晶に溶出することを防止するため、スペーサ粒子表面に化学的に結合した表面層を形成する方法が好ましい。
上記のように、スペーサ粒子に表面処理を施すことにより、スペーサ粒子の基板に対する接着性を高めることができる。また、スペーサ粒子を構成する単量体を適宜選択することにより、液晶表示素子において液晶の配向の乱れを抑制することができる。
(スペーサ粒子分散液)
上記スペーサ粒子を分散し得る媒体中に、上述したスペーサ粒子を分散させることにより、スペーサ粒子分散液を得ることができる。
本発明の液晶表示装置の製造方法では、上記スペーサ粒子分散液中に、媒体として沸点が200℃以上、かつ、20℃における表面張力が42mN/m以上である溶媒Xを少なくとも含有する。なお、本明細書において、「沸点」とは、1気圧下における沸点を言うものとする。
上記スペーサ粒子分散液中の溶媒Xの配合割合は、後述するインクジェット装置の1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液中に含まれる溶媒Xの量の下限が0.5ng、上限が15ngとなるように調整される。
1回で吐出される溶媒Xの量が0.5ng未満となるように配合された場合には、基板にスペーサ粒子分散液が吐出された後、スペーサ粒子分散液を乾燥させるときにスペーサ粒子が寄り集まらず、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子が配置され易くなる。1回で吐出される溶媒Xの量が15ngより多くなるように配合された場合には、基板にスペーサ粒子分散液が吐出された後、スペーサ粒子分散液を乾燥させるときに、例えば、70℃以上の高温下で乾燥させるか、又は、70℃未満の温度で長時間かけて乾燥させる必要がある。70℃以上の高温下で乾燥させる場合には、配向膜が損傷し易くなり、70℃未満の温度で長時間かけて乾燥させる場合には、例えば、乾燥に10分以上を要し生産効率が悪くなる。
上記溶媒Xは、スペーサ粒子を除くスペーサ粒子分散液中に1重量%以上含まれていることが好ましい。溶媒Xが1重量%未満であると、スペーサ粒子分散液が後述するインクジェット装置のノズルから安定に吐出できなかったり、スペーサ粒子が寄り集まりにくくなったりすることがある。常圧下で乾燥させる場合、より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は60重量%であり、更に好ましい下限は10重量%、更に好ましい上限は40重量%である。なお、基板上の非画素領域の面積が小さくスペーサ粒子分散液の吐出面積を小さくしたい場合には、上記溶媒Xの配合量の好ましい下限は70重量%、好ましい上限は90重量%である。また、スペーサ粒子がスペーサ分散液中で沈降しやすい場合、溶媒Xの含有割合の下限は80重量%、上限は100重量%の範囲であることが更に好ましい。
ここで、上記溶媒Xが1重量%以上含有されているスペーサ粒子分散液、すなわち、インクジェット装置を用いて液晶表示素子の基板上に吐出され、基板上にスペーサ粒子を配置するのに用いるスペーサ粒子分散液であって、沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒を少なくとも含有し、前記沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上である溶媒が1重量%以上含有されているスペーサ粒子分散液もまた、本発明の1つである。
上記溶媒Xの沸点が200℃未満であると、後述するインクジェット装置のノズルの先端でスペーサ粒子分散液が乾燥し易く、ノズルの目詰まりが生じ易くなる。なお、沸点が180℃未満の溶媒のみを含むスペーサ粒子分散液では、ノズルの目詰まりがより一層生じ易くなる。また、沸点が200℃未満である溶媒は粘度、比重が低いため、沸点が200℃以上の溶媒を含まない場合には、スペーサ粒子分散液の粘度を適度な範囲とすることが困難である。また、沸点が200℃未満の溶媒のみを含むスペーサ粒子分散液では、スペーサ粒子が沈降し易くなる。
上記溶媒Xの表面張力が42mN/m未満であると、基板にスペーサ粒子分散液が吐出された後、スペーサ粒子分散液を乾燥させるときにスペーサ粒子が寄り集まらず、非画素領域にスペーサ粒子が配置され易くなる。
上記溶媒Xとしては、上述した沸点及び表面張力を有するものであれば特に限定されず、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン、ニトロベンゼン等が挙げられる。なかでも、乾燥時に短時間で効果的にスペーサ粒子を寄せ集めることができるため、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及びグリセリンが好ましく用いられる。乾燥時に短時間でより一層効果的にスペーサ粒子を寄せ集めることができるため、グリセリンがより好ましく用いられる。溶媒Xとして、上述した溶媒が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記スペーサ粒子分散液中には、上記溶媒X以外に、例えばノズルから吐出される温度において液体である各種溶媒が含まれていてもよい。なかでも、水溶性又は親水性の溶媒が好ましい。インクジェット装置には、水系媒体用のノズルが用いられることがある。水系媒体用のノズルが用いられる場合には、スペーサ粒子分散液の媒体として疎水性の強い溶媒を用いると、ノズルを構成する部材中に溶媒が侵入したり、部材を接着している接着剤の一部が溶媒に溶解することがある。よって、水系媒体用のノズルが用いられる場合には、スペーサ粒子分散液中には、水溶性又は親水性の溶媒が含まれていることが好ましい。
上記水溶性又は親水性の溶媒としては、水の他、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコールの多量体;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のプロピレングリコールの多量体;グリコール類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等の低級モノアルキルエーテル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等の低級ジアルキルエーテル類;モノアセテート、ジアセテート等のアルキルエステル類、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール類、ジオール類のエーテル誘導体、ジオール類のアセテート誘導体、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類又はそのエーテル誘導体、アセテート誘導体、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルフォラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルフォン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。
上記スペーサ粒子分散液は、沸点が150℃以上である溶媒を含むことが好ましい。更に、沸点が150℃以上、かつ、表面張力が30mN/m以上である溶媒を含むことがより好ましい。沸点が150℃以上、かつ、表面張力が30mN/m以上である溶媒を含むと、後述する後退接触角(θr)を大きくすることができる。また、沸点が150℃以上、かつ、表面張力が30mN/m以上である溶媒を含むと、基板にスペーサ粒子分散液を吐出し着弾させたときの液滴径が小さくなるため、液滴の拡がりが生じ難い。更に、液滴の着弾中心に向かってスペーサ粒子が移動し易くなる。よって、基板にスペーサ粒子を高精度に配置することができる。
上記スペーサ粒子分散液の表面張力は、好ましい下限が25mN/m、好ましい上限が50mN/mである。上記スペーサ粒子分散液の表面張力が25mN/mより低いと、基板にスペーサ粒子分散液を吐出し着弾させたときの液滴径が大きくなりすぎることがあり、また、インクジェット装置のヘッドのノズル面が濡れたりして吐出状態が不安定になることがある。50mN/mを超えると、ヘッドにスペーサ分散液を充填する際、インクジェット装置のヘッド内のインク室に、気泡が残存しやすく吐出しなくなる等の不具合が生じることがある。但し、インクジェット装置のヘッド内のインク室等の接液部分を親水性の高い材料(例えば、SUS、セラミック、ガラス等)で構成する場合、及び/又は、スペーサ分散液を充填する前に2−プロパノール等の表面張力が低くインク室を良くぬらす溶剤で充填し、気泡を充分に除去した後、気泡を巻き込まないようにしてスペーサ分散液で流路、ヘッド内を置換できる場合は、このように設備上・工程上手間がかかるものの、50mN/mを超えるスペーサ分散液でも吐出可能となる。
スペーサ粒子分散液の表面張力は、上述した溶媒を適宜組み合わせることにより調整される。
上記スペーサ粒子分散液の表面張力を50mN/m以下とするために、スペーサ粒子分散液の溶媒は、上記溶媒X等に加えて、沸点が150℃未満の溶媒を更に含むことがより好ましい。沸点が70℃以上、100℃未満の溶媒を含むことが更に好ましい。
上記沸点が150℃未満の溶媒としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等の低級モノアルコール類やアセトン等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。この中では、2−プロパノールが最も好ましい。
上記沸点が150℃未満の溶媒は、上記スペーサ分散液を基板上に吐出した後、乾燥させる際に比較的低い温度で揮発する。特に、上記スペーサ分散液においては、配向膜に溶媒が高温で接触すると配向膜を汚染して液晶表示装置の表示品質を損なうため、乾燥温度をあまり高くすることができない。従って、上記沸点が150℃未満の溶媒を用いることが好ましい。但し、上記沸点が150℃未満の溶媒が室温で揮散しやすいと、上記スペーサ分散液の製造時や貯蔵時に凝集粒子が発生しやすくなったり、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ分散液が乾燥しやすくなって、インクジェット吐出性が損なわれたりするので、室温で揮散しやすい溶媒は好ましくない。
基板に吐出されたスペーサ粒子分散液を乾燥させる温度が高温であると、配向膜が損傷し、液晶表示装置の表示画質が劣化することがあるが、上記沸点が150℃未満である溶媒を使用することにより、乾燥温度を低くでき、配向膜の損傷を防ぐことができる。
スペーサ粒子を除くスペーサ粒子分散液100重量部に対して、沸点が150℃未満である溶媒の含有量の好ましい下限は1.5重量部、好ましい上限は50重量部である。1.5重量部未満であると、乾燥速度が遅くなり、液晶表示装置の生産効率が低下することがある。50重量部を超えると、インクジェット装置のノズルの先端でスペーサ粒子分散液が乾燥し易くなり、更に、スペーサ粒子分散液を製造する際や、スペーサ粒子分散液を保管している際にスペーサ粒子分散液が乾燥し、スペーサ粒子が凝集することがある。
上記沸点が150℃未満である溶媒は、20℃における表面張力が28mN/m未満であることが好ましく、25mN/m以下であることがより好ましい。溶媒の表面張力が28mN/m以上であると、スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなり、インクジェット装置のノズルの接液部分の表面張力によっては、吐出性が悪くなることがある。
上記スペーサ粒子分散液が、沸点150℃未満、表面張力が28mN/m未満である溶媒を含むと、後述するインクジェット装置にスペーサ粒子分散液を導入し易くなり、吐出する際には吐出性が向上する。
上記スペーサ粒子分散液を乾燥させる際には、沸点が低い溶媒が先に揮発する。沸点が低い溶媒が先に揮発することにより、残存しているスペーサ粒子分散液における溶媒Xの比率が高くなる。溶媒Xの比率が高くなると、残存しているスペーサ粒子分散液の表面張力がより一層高くなり、スペーサ粒子が着弾地点中心に向かって移動し易くなる。
スペーサ粒子分散液の20℃における粘度の好ましい下限は5mPa・sより大きく、好ましい上限は20mPa・s未満であることが好ましい。粘度が5mPa・s以下であると、上記スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子が経時により沈降し易くなる。粘度が20mPa・s以上であると、ノズルからスペーサ粒子分散液を吐出する際に、吐出量の制御が困難なことがある。吐出性を制御するためには、スペーサ粒子分散液を過剰に加温しなければならないことがある。
スペーサ粒子分散液の20℃における比重の好ましい下限は1.00g/cm3である。1.00g/cm3未満であると、スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子が経時により沈降し易くなる。
上記スペーサ粒子分散液の沈降速度の好ましい下限は150分以上である。上記沈降速度とは、内径φ5mmの試験管にスペーサ粒子分散液を高さ10cmとなるように導入した後、静置したときに、目視にて試験管底にスペーサ粒子の堆積が確認されるまでの時間をいう。
上記スペーサ粒子分散液の沈降速度が150分以上であると、スペーサ粒子分散液をインクジェット装置に導入した後からスペーサ粒子分散液を吐出するまでの間に、スペーサ粒子が沈降し難くなる。よって、インクジェット装置を用いて、スペーサ粒子分散液を安定に吐出することができる。
基板上に吐出された際に、スペーサ粒子分散液の基板に対する後退接触角(θr)は5度以上であることが好ましい。後退接触角が5度以上であると、基板に吐出したスペーサ粒子分散液を乾燥させるときに、スペーサ粒子分散液の着弾中心に向かって液滴が縮小し易くなる。また、1つの液滴中に複数のスペーサ粒子が含まれている場合でも、着弾中心に向かってスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
後退接触角とは、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液が基板上に着弾した後、乾燥させるまでの過程で、基板上に着弾したスペーサ粒子分散液の着弾径が小さくなり始めたとき、すなわち液滴が縮小し始めたときの接触角、又は液滴の揮発成分の内80〜95重量%が揮発した際の接触角をいう。
後退接触角を5度以上にする方法としては、上述したスペーサ粒子分散液の溶媒の組成を調整する方法、又は、基板を表面処理する方法等が挙げられる。
上記スペーサ粒子分散液の溶媒の組成を調整する際には、後退接触角が5度以上である溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を併用してもよい。2種以上の溶媒を混合して用いると、スペーサ粒子の分散性、スペーサ粒子分散液を用いるときの作業性、スペーサ粒子分散液の乾燥速度等を容易に調整することができる。
上記2種以上の溶媒が混合して用いられる場合には、混合される溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の後退接触角が5度以上であることが好ましい。最も沸点の高い溶媒の後退接触角が5度未満であると、乾燥過程において最も沸点の高い溶媒が残留することになるが、この場合スペーサ粒子分散液の液滴径が大きくなり、基板上で液滴が拡がり易くなる。また、着弾中心に向かってスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
上記後退接触角は、スペーサ粒子分散液が基板に着弾した直後の初期の接触角に比べて小さくなる傾向にある。初期の接触角では、スペーサ粒子分散液を構成する溶媒が基板表面に充分接触していない状態であるが、後退接触角では、溶媒が基板表面に充分接触しているためと考えられる。後退接触角が初期の接触角に対して著しく低い場合には、溶媒によって配向膜が損傷を受けていることがある。
上記スペーサ分散液の基板に対する初期の接触角の好ましい下限は10度、好ましい上限は110度である。10度未満であると、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液が基板上に拡がり、スペーサ粒子の配置間隔が大きくなることがある。初期の接触角が110度より大きいと、基板上を液滴が移動し易くなり、配置精度が低くなったり、スペーサ粒子と基板との密着性が悪くなったりすることがある。
インクジェット装置のノズルから吐出されるときのスペーサ粒子分散液の粘度の好ましい下限は0.5mPa・s、好ましい上限は15mPa・sである。吐出されるときのスペーサ粒子分散液の粘度が、0.5mPa・s未満であると、吐出量を制御することが困難なことがあり、15mPa・sを超えると、吐出が困難なことがある。より好ましい下限は5mPa・s、より好ましい上限は10mPa・sである。
また、上記スペーサ粒子分散液を吐出する際に、インクジェット装置のノズルをペルチェ素子や冷媒等を用いて冷却したり、ヒーター等で加温することで、吐出されるときのスペーサ粒子分散液の温度を−5℃から50℃の範囲に調整することが好ましい。
上記スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の固形分濃度の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は5重量%である。0.01重量%未満であると、吐出された液滴中にスペーサ粒子が含まれないことがあり、5重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが目詰まりしやすくなり、また吐出された液滴中に含まれるスペーサ粒子の数が多すぎて、乾燥過程でスペーサ粒子が移動し難くなる。より好ましい下限は0.2重量%、より好ましい上限は2重%である。
なお、スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の固形分濃度は、基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数により適宜設定される。
上記スペーサ粒子は、上記スペーサ粒子分散液中に単粒子状に分散されていることが好ましい。スペーサ粒子分散液中に凝集したスペーサ粒子が存在すると、吐出精度が低下したり、インクジェット装置のノズルが目詰まりすることがある。
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、スペーサ粒子分散液中に接着性を付与するための接着成分が添加されていてもよい。更に、スペーサ粒子の分散性を高めたり、表面張力や粘度等の物理的な特性を制御して吐出精度を高めたり、乾燥時のスペーサ粒子の移動性能を高めるために、各種の界面活性剤、粘性調整剤などがスペーサ粒子分散液に添加されていてもよい。
ここで、上記スペーサ粒子分散液は、上述した溶剤を含有するものであるが、該溶剤の組成は、後述するインクジェット装置のヘッド内のインク室の状態等に合わせて適宜組み合わせて調整することが好ましい。
更に、上記スペーサ粒子分散液は、上述した通り溶剤として上述した溶媒Xを含有するが、表面張力が高い基板上でもスペーサ粒子の寄り集まりをさせる場合、上記溶剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、上記沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤が好ましい下限が2重量%、好ましい上限が40重量%(更に好ましい下限は5重量%、更に好ましい上限は20重量%)と、上記沸点が150℃以上で表面張力が30mN/m以上の溶剤が好ましい下限が0重量%、好ましい上限が95重量%(更に好ましい下限は40重量%、更に好ましい上限は90重量%)と、上記溶媒Xが好ましい下限が1重量%、好ましい上限が96重量%(更に好ましい下限は3重量%、更に好ましい上限は40重量%)と、水が好ましい下限が0重量%、好ましい上限が60重量%(更に好ましい下限は5重量%、更に好ましい上限は40重量%)との組み合わせが挙げられる。更に好ましくは、上記沸点が150℃以上で表面張力が30mN/m以上の溶剤と溶媒Xとを足した割合は、30〜96重量%(更に好ましくは40〜90重量%)、かつ、上記沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤と水とを足した割合は、4〜70重量%(更に好ましくは6〜55重量%)である。
上記沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤が2重量%未満であると、上記スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなりすぎ、スペーサ粒子分散液をヘッドの導入する際にインク室に気泡が残存し、吐出しないノズルが発生する問題が起こる確率が高くなる。40重量%を超えると、上記スペーサ粒子分散液の表面張力が低くなりすぎ、スペーサ粒子分散液を基板上に吐出した際、基板上に着弾した液滴の着弾径が大きくなりスペーサ粒子が基板上で寄り集まりにくくなったりする問題が発生する。
また、水と沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤とを加えた量が4重量%未満であると、上記スペーサ粒子分散液の粘度が高すぎ、インクジェットヘッドより吐出しづらくなる(駆動電圧が高く成りすぎる)問題が発生することがあり、70重量%を超えると、上記スペーサ粒子分散液の粘度が低くなりすぎ、吐出安定性、特に高周波数駆動状態の安定性が低くなる問題が発生することがある。
上記溶媒Xが1重量%未満であると、表面張力が高い基板上でスペーサ粒子が寄り集まりにくくなる問題が発生し、96重量%を超えると、基板上に着弾した上記スペーサ粒子分散液液滴を乾燥するのに時間がかかり生産性が落ちる問題が発生したり、高温で加熱する必要が生じ配向膜に損傷を与える可能性が高くなる等の問題が発生したりする。
なお、例えば、インクジェット装置のヘッド内のインク室等の接液部分を親水性の高い材料(SUS、セラミック、ガラス等)で構成する場合、及び/又は、上記スペーサ粒子分散液を充填する前に2−プロパノール等の表面張力が低くインク室を良くぬらす溶剤で充填し、気泡を充分に除去した後、気泡を巻き込まないようにして上記スペーサ粒子分散液で流路、ヘッド内を置換できる場合は、上記溶剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、上記沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤は2重量%未満で配合されることが好ましく、上記沸点が150℃以上で表面張力が30mN/m以上の溶剤が好ましい下限が0重量%、好ましい上限が95重量%(更に好ましい下限は40重量%、更に好ましい上限は90重量%)と、上記溶媒Xが好ましい下限が1重量%、好ましい上限が96重量%(更に好ましい下限は3重量%、更に好ましい上限は40重量%)と、水が好ましい下限が4重量%、好ましい上限が70重量%(更に好ましい下限は6重量%、更に好ましい上限は55重量%)との組み合わせが挙げられる。
更に好ましくは、上記溶媒Xと沸点が150℃以上で表面張力が30mN/m以上の溶剤とを足した割合は、30〜96重量(更に好ましくは40〜90重量%)、かつ、上記沸点が150℃未満で表面張力が28mN/m未満の溶剤と水とを足した割合は、4〜70重量%(更に好ましくは6〜55重量%)である。
上記溶剤がこのような組み合わせである場合、水が4重量%未満であると、上記スペーサ粒子分散液の粘度が高すぎインクジェットヘッドより吐出しづらくなる(駆動電圧が高くなりすぎる)問題が発生することがあり、70重量%を超えると、上記スペーサ粒子分散液の粘度が低くなりすぎ、吐出安定性、特に高周波数駆動状態の安定性が低くなる問題が発生することがある。
上記溶媒Xが1重量%未満であると、表面張力が高い基板上でスペーサ粒子が寄り集まりにくくなる問題が発生し、96重量%を超えると、基板上に着弾した上記スペーサ粒子分散液液滴を乾燥するのに時間がかかり生産性が落ちる問題が発生したり、高温で加熱する必要が生じ配向膜に損傷を与える可能性が高くなる等の問題が発生したりする。
また、上記スペーサ粒子分散液は、接着剤を含有することが好ましい。
上記接着剤は、基板上に着弾した上記スペーサ粒子分散液が乾燥する過程において接着力を発揮し、スペーサ粒子をより強固に基板に固着させる役割を有するものである。上記スペーサ分散液が上記接着剤を含有することで、乾燥時に短時間で効果的にスペーサ粒子を寄せ集めるという上述した効果に加え、配置したスペーサ粒子を強固に基板に固着できることとなる。
上記接着剤は、上記スペーサ粒子分散液中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。上記接着剤が分散している場合、その分散径は、スペーサ粒子の粒径の10%以下であることが好ましい。
上記接着剤は、スペーサ粒子のギャップ保持能力を損なわないように、非常に柔軟な、すなわち、(硬化後の)弾性率がスペーサ粒子に比較して低いものが好適である。
上記接着剤としては、ガラス転移点が150℃以下である熱可塑性樹脂;溶剤の気散により固化する樹脂;熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記接着剤は、なかでも、低分子量のものが好適に用いられる。
上記ガラス転移点が150℃以下である熱可塑性樹脂は、基板を熱圧着する際の熱により溶融又は軟化して接着力を発揮し、スペーサ粒子を基板に強固に固定させることができる。
上記ガラス転移点が150℃以下である熱可塑性樹脂は、配向膜溶剤に溶解しないものであることが好ましく、また、配向膜を溶解しないものであることが好ましい。配向膜溶剤に溶解したり、配向膜を溶解したりする熱可塑性樹脂を用いた場合、液晶汚染の原因となることがある。
上記ガラス転移点が150℃以下であり、かつ、配向膜溶剤に溶解したり、配向膜を溶解したりしない熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂;ポリブタジエン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン等のポリビニル樹脂;ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエン−スチレン樹脂等の共重合体において、モノマー成分を調整したりしてガラス転移点が150℃以下となるものも用いることができる。
上記スペーサ粒子分散液の溶剤の揮発により硬化する樹脂は、スペーサ粒子分散液に配合されている間は硬化していない状態であって、上記スペーサ粒子分散液を基板に吐出後、溶剤が揮発することで硬化し、スペーサ粒子を基板に強固に固定することができる。
このような樹脂としては、例えば、溶剤が水系の場合には、ブロックイソシアネートを利用したアクリル接着剤等が挙げられる。なかでも、水溶性でかつ架橋できるようなものが好ましい。
上記熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂は、スペーサ粒子分散液に配合されている間は硬化していない状態で、スペーサ粒子分散液を基板に吐出後、加熱及び/又は光照射することにより硬化し、スペーサ粒子を基板に強固に固定することができる。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられる。また、加熱により反応が開始するアルコキシメチルアクリルアミド等;予め架橋剤を混合しておき、加熱することにより架橋反応(ウレタン反応、エポキシ架橋反応等)が起こるような反応性官能基を有する樹脂;加熱により反応して架橋性高分子になるような単量体混合物(例えば、エポキシ基を側鎖に有するオリゴマーと、開始剤との混合物)等も用いることができる。
上記光硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、光により反応を開始する開始剤と、種々の単量体との混合物(例えば、光ラジカル開始剤と、アクリルモノマー−バインダー混合物;光酸発生開始剤とエポキシオリゴマー混合物等);光により架橋する反応基を有する高分子(けいひ酸系化合物等);アジド化合物等が挙げられる。
上記スペーサ粒子分散液では、上記接着剤は、下記一般式(1)で表される構成単位と、下記一般式(2)で表される構成単位とを有し、かつ、下記一般式(1)で表される構成単位の含有量が5〜90モル%、下記一般式(2)で表される構成単位の含有量が10〜95モル%である共重合体(A)と、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、芳香族多価フェノール及び芳香族多価アミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種の多価化合物(B)との混合物であることが好ましい。なお、以下、上記共重合体(A)と多価化合物(B)との混合物である接着成分を「混合物からなる接着剤」ともいう。
式中、R1、R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数1〜8のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、又は、芳香族基を表す。また、上記シクロアルキル基および芳香族基は置換基を有していてもよい。
上記接着剤が上記混合物からなる接着剤であると、上記スペーサ粒子分散液は、通常の酸−エポキシ共重合体で見られるような架橋反応の進行によるゲル化が起こらず、上記混合物からなる接着剤のエポキシ基含有率を上昇させることが可能となる。また、上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液は、高濃度かつ低粘度を実現することができるために、インクジェット装置によるスペーサ粒子の散布が可能であり、かつ、スペーサ粒子とともに基板上に散布された上記混合物からなる接着剤は、スペーサ粒子を基板上に固着する高い能力を持ち、更に、硬化後は高い架橋密度が得られるため、各種耐性に優れたギャップ保持材を形成することができる。また、耐熱性を向上させることもできる。すなわち、接着剤として上記混合物からなる接着剤を含有することで、インクジェット装置を用いてスペーサ分散液の液滴を吐出して基板上の所定の位置に着弾させた後、乾燥させることによりスペーサ粒子を基板上の所定の位置に正確かつ強固に配置することができる。
上記混合物からなる接着剤に含有される共重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構成単位(以下、構成単位(a1)ともいう)と、一般式(2)で表される構成単位(以下、構成単位(a2)ともいう)とを有する。
上記構成単位(a1)となるモノマーとしては、例えば、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物が挙げられる。
上記エポキシ基を有するラジカル重合性化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等が挙げられる。なかでも、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好適に用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記共重合体(A)において、上記構成単位(a1)の含有量の下限は5モル%であり、上限は90モル%である。5モル%未満であると、上記混合物からなる接着剤の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまい、90モル%を超えると、上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液がゲル化してしまう。好ましい下限は10モル%、好ましい上限は70モル%である。
上記構成単位(a2)となるモノマーとしては、例えば、モノオレフィン系不飽和化合物が挙げられる。
上記モノオレフィン系不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸環状アルキルエステル;シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート等のアクリル酸環状アルキルエステル;フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等のジカルボン酸ジエステル;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、スチレン、ジシクロペンタニルメタアクリレ−ト、p−メトキシスチレンが好適に用いられる。これらは、単独で用いられてよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体(A)において、上記構成単位(a2)の含有量の下限は10モル%であり、上限は95モル%である。10モル%未満であると、上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液がゲル化してしまい、95モル%を超えると、上記混合物からなる接着剤の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまう。好ましい下限は30モル%、好ましい上限は90モル%である。
ここで、上記構成単位(a1)となるモノマーと、上記構成単位(a2)となるモノマーとのみから共重合体を製造する際には、エポキシ基とカルボン酸基とが反応し、架橋して重合系がゲル化してしまうことがある。
しかしながら、上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液は、該混合物からなる接着剤として上記多価化合物(B)を含有するため、通常の酸−エポキシ共重合体で見られるような架橋反応の進行によるゲル化が起こらず、上記混合物からなる接着剤のエポキシ基含有率を上昇させることが可能となる。また、上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液は、高濃度かつ低粘度を実現することができるために、インクジェット装置によるスペーサ粒子の散布が可能であり、かつ、スペーサ粒子とともに基板上に散布された上記混合物からなる接着成分は、スペーサ粒子を基板上に固着する高い能力を持ち、更に、硬化後は高い架橋密度が得られるため、各種耐性に優れたギャップ保持材を形成することができる。また、耐熱性を向上させることもできる。
このような構成単位(a1)と構成単位(a2)とを有する共重合体(A)を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上述した構成単位(a1)となるモノマーと、構成単位(a2)となるモノマーとが、上記配合比となるように公知の溶剤中で共重合する公知の方法が挙げられる。
上記多価化合物(B)は、上記共重合体(A)の硬化剤として機能するものであり、このような上記多価化合物(B)としては、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、芳香族多価フェノール及び芳香族多価アミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種である。
上記多価カルボン酸無水物としては、例えば、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等の脂肪族ジカルボン酸無水物;1、2、3、4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂環族多価カルボン酸二無水物;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等のエステル基含有酸無水物等が挙げられる。なかでも、芳香族多価カルボン酸無水物が、耐熱性の見地から好適である。
また、市販されている無色の酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に使用することができる。市販されている無職の酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えばアデカハードナーEH−700(旭電化工業社製)、リカシッドHH、リカシッドMH−700(新日本理化社製)、エピキュア126、エピキュアYH−306、エピキュアDX−126(油化シェルエポキシ社製)、エピクロンB−4400(大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
上記多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。なかでも、反応性、耐熱性等の見地から芳香族多価カルボン酸が好適である。
これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記混合物からなる接着剤において、上記共重合体(A)と多価化合物(B)との配合比として特に限定されないが、上記共重合体(A)100重量部に対して、上記多価化合物(B)の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は100重量部である。1重量部未満であると、硬化物の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまうことがあり、100重量部を超えると、未反応の硬化剤が多量に残り、硬化物の耐熱性及び液晶への非汚染性が低下してしまうことがある。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は50重量部である。
上記混合物からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液においては、上記混合物からなる接着剤は、上記共重合体(A)及び多価化合物(B)以外の成分が含有されていてもよく、例えば、硬化促進剤、接着助剤等の配合剤が必要に応じて配合されていてもよい。
上記硬化促進剤は、一般に上記共重合体(A)のエポキシ基と多価化合物(B)との反応を促進し、架橋密度を高めるために使用されるものであり、例えば、2級窒素原子又は3級窒素原子を含むヘテロ環構造を有する化合物が好適であり、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、インダール、ベンズイミダゾール、イソシアヌル酸等が挙げられる。具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体が挙げられ、なかでも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールが好適に用いられる。
これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤が含有されている場合、その配合量としては特に限定されないが、上記共重合体(A)100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が2重量部である。0.01重量部未満であると、硬化促進剤を配合する効果を殆ど得ることができず、2重量部を超えると、未反応の硬化促進剤が残り、硬化物の耐熱性及び液晶への非汚染性が低下してしまうことがある。
更に、上記スペーサ粒子分散液では、上記接着剤は、下記一般式(1)で表される構成単位及び下記一般式(2)で表される構成単位と、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位とを有する共重合体であり、上記共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位の含有量が1〜70モル%、下記一般式(2)で表される構成単位の含有量が10〜98モル%、及び、上記不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位の含有量が1〜70モル%であることが好ましい。なお、以下、上記一般式(1)で表される構成単位及び下記一般式(2)で表される構成単位と、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位とを有する共重合体である接着剤を「共重合体からなる接着剤」ともいう。
式中、R1、R3は、それぞれ水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数1〜8のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のシクロアルキル基、又は、芳香族基を表す。また、上記シクロアルキル基及び芳香族基は置換基を有していてもよい。
上記接着剤が上記共重合体からなる接着剤であると、上記スペーサ分散液は、上記共重合体からなる接着剤が不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位を有するため、上記共重合体からなる接着剤に含まれるエポキシ基とカルボン酸基とが反応して重合系がゲル化しにくく、また、保存安定性にも優れたものとなる。更に、加熱のみによって上記共重合体からなる接着剤が容易に硬化するため、特定の硬化剤を用いる必要が無く、基板上の配向膜及び液晶に対する汚染物質がきわめて少ない液晶表示装置のギャップ保持材を得ることができる。すなわち、接着剤として上記共重合体からなる接着剤を含有することで、インクジェット装置を用いてスペーサ粒子を基板上の所定の位置に正確かつ強固に配置することができ、かつ、液晶表示装置の製造に用いた際に、配向膜及び液晶に対する汚染性が低いものとなる。
上記共重合体からなる接着剤は、上記一般式(1)で表される構成単位(以下、構成単位(a)ともいう)及び上記一般式(2)で表される構成単位(以下、構成単位(b)ともいう)と、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位(以下、構成単位(c)ともいう)とを有する共重合体である。
上記構成単位(a)となるモノマーとしては特に限定されず、例えば、上述した混合物からなる接着剤における構成単位(a1)と同様のエポキシ基を有するラジカル重合性化合物が挙げられる。
上記共重合体において、上記構成単位(a)の含有量の下限は1モル%であり、上限は70モル%である。1モル%未満であると、上記共重合体からなる接着剤の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまい、70モル%を超えると、上記共重合体からなる接着剤を含有するスペーサ分散液がゲル化してしまう。好ましい下限は5モル%、好ましい上限は40モル%である。更に好ましい上限は20モル%である
上記構成単位(b)となるモノマーとしては特に限定されず、例えば、上述した混合物からなる接着剤の構成単位(a2)と同様のモノオレフィン系不飽和化合物が挙げられる。
上記共重合体において、上記構成単位(b)の含有量の下限は10モル%であり、上限は98モル%である。10モル%未満であると、上記共重合体からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液がゲル化してしまい、98モル%を超えると、上記共重合体からなる接着剤の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまう。好ましい下限は20モル%、好ましい上限は90モル%である。
上記構成単位(c)となるモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸、及び、これらの無水物等が挙げられる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好適に用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体において、上記構成単位(c)の含有量の下限は1モル%であり、上限は70モル%である。1モル%未満であると、上記共重合体からなる接着剤の耐熱性及び耐薬品性が低下してしまい、70モル%を超えると、上記共重合体からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液がゲル化してしまう。好ましい下限は5モル%であり、好ましい上限は40モル%である。更に好ましい上限は20モル%である。
ここで、上記構成単位(a)となるモノマーと、上記構成単位(b)となるモノマーとのみから共重合体を製造する際には、エポキシ基とカルボン酸基とが反応し、架橋して重合系がゲル化してしまうことがある。
しかしながら、上記共重合体からなる接着剤は、上記構成単位(c)となるモノマーが、上記構成単位(a)となるモノマー及び構成単位(b)となるモノマーと、上述した範囲で共重合されているため、エポキシ基とカルボン酸基とが反応して重合系がゲル化しにくく、また保存安定性にも優れたものとなる。
また、上記共重合体からなる接着剤を含有するスペーサ粒子分散液は、加熱のみによって上記共重合体からなる接着剤が容易に硬化するため、特定の硬化剤を用いる必要が無く、スペーサ粒子分散液からの基板上の配向膜及び液晶に対する汚染物質がきわめて少ない液晶表示装置のギャップ保持材を得ることができる。
上記接着剤のスペーサ粒子分散液への添加量としては特に限定されないが、好ましい下限は0.001重量%、好ましい上限は10重量%である。0.001重量%未満であると、接着剤を添加する効果、すなわち、スペーサ粒子を固着させる効果が得られないことがあり、10重量%を超えると、乾燥後にスペーサ粒子が接着剤により覆い尽くされて、ギャップ精度が悪化したり、スペーサ粒子分散液の粘度が上がり吐出精度が悪化したりすることがある。より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は5重量%である。
なお、本発明においてスペーサ粒子分散液の溶剤としては、スペーサを寄せ集めたりする等してスペーサ粒子の集合範囲を狭小化するために好ましいとして、親水性の高い溶剤が好適に使用される。従って、上記「混合物からなる接着剤」、上記「共重合体からなる接着剤」とも、スペーサ分散液の溶剤に容易に溶解又は分散できるように、親水性溶剤溶解性の高い接着剤が好適である。
なお、上記親水性溶剤溶解性の高い接着剤としては、上記「混合物からなる接着剤」及び「共重合体からなる接着剤」と同様に、ポリビニルアルコールやその変性物、カルボキシメチルセルロース等のセルロースのような多糖類ポリマーやその変性物も使用することができる。
このような接着剤を、沸点が200℃以上、かつ、表面張力が42mN/m以上の溶剤を含有するスペーサ粒子分散液に使用すると、液滴の乾燥とともに液滴径が小さくなり、溶解している接着剤もそれとともに縮んでいくので、乾燥後の接着剤の存在範囲を小さくすることができる。
上記スペーサ粒子分散液の溶剤への溶解性の観点から、上記接着剤やそれを構成する共重合体の重量平均分子量は40万以下であることが好ましく、20万以下であることがより好ましい。40万を超えると、スペーサ分散液の溶剤への溶解性が悪くなるだけではなく、スペーサ粒子分散液の粘度が上がったり、チクソ性が生じたりして、インクジェット吐出において吐出性に悪影響を及ぼす問題が発生したりすることがある。また、40万を超えると、接着剤自体が高分子分散剤等のような界面活性剤としての働きを有するようになり、基板に着弾後のスペーサ粒子分散液の液滴が縮みにくくなることも考えられる。
親水性溶剤溶解性の高い接着剤を得るために、混合物からなる接着剤においても、共重合体からなる接着材においても、共重合体が親水性官能基を有するモノマー単位を少なくとも20重量%以上含有することが好ましく、40重量%以上含有することがより好ましい。
上記親水性官能基を有するモノマーとしては、上述した構成単位(c;不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物由来の構成単位)となるモノマーのほか、例えば、水酸基、スルホニル基、ホスホニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基等の親水性官能基を有するビニル系単量体が挙げられる。なかでも、液晶との相互作用が少ないことから、水酸基、カルボキシル基(カルボン酸基)及びエーテル基を有するビニル系単量体が好適である。
上記親水性官能基を有するビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有するビニル系単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有するビニル系単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスホニル基を有するビニル系単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基及びエーテル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有するビニル系単量体等が挙げられる。これらの親水性官能基を有するビニル系単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(インクジェット装置)
次に、本発明において、上記スペーサ粒子分散液を基板上に吐出するときに用いるインクジェット装置について説明する。
本発明に用いられるインクジェット装置としては特に限定されず、一般的な吐出方法によるインクジェット装置が用いられる。吐出方法としては、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出するサーマル方式等が挙げられる。中でも、スペーサ粒子分散液への熱的な影響が小さため、ピエゾ方式が好適である。
本発明の液晶表示装置の製造方法では、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量の好ましい下限は5ng、好ましい上限は35ngである。5ng未満であると、スペーサ粒子分散液の吐出が困難なことがあり、35ngを超えると、基板に吐出されたスペーサ粒子分散液量が多すぎて乾燥に時間を要し、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を短時間で効果的に寄せ集めることができないことがある。
1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の量を制御する方法としては、ノズルの口径を最適化する方法や、インクジェットヘッドを制御する電気信号を最適化する方法がある。後者はピエゾ方式のインクジェット装置を用いた時に特に効果的である。
上記インクジェット装置のスペーサ粒子分散液を収納しているインク室の接液部は、表面張力が31mN/m以上親水性の材料で構成されていることが好ましい。接液部の材料としては、親水性ポリイミド等の親水性の有機材料も用いることもできるが、耐久性の点で無機材料、すなわちセラミックスやガラス、腐食性が少ないステンレス等の金属材料が好適に用いられる。
通常のヘッドでは、電圧印加部品に対する絶縁等を確保するため、接液部に樹脂等が用いられる。接液部に用いられる樹脂は、表面張力が31mN/mより低い材料からなることが多い。この場合、スペーサ粒子分散液をヘッドに導入する際に、スペーサ粒子分散液のなじみが悪く、気泡が残存し易い。気泡が残存したノズルでは、スペーサ粒子分散液を吐出できないことがある。
インクジェット装置のノズルの口径は、スペーサ粒子の粒子径に対して7倍以上であることが好ましい。ノズルの口径が7倍未満であると、スペーサ粒子の粒子径に対してノズル径が小さすぎて吐出精度が低下したり、著しい場合はノズルが閉塞し吐出できないことがある。
吐出精度が低下する理由は、以下のように考えられる。例えばピエゾ方式のインクジェット装置では、ピエゾ素子の振動によりピエゾ素子に近接したインク室にインクを吸引した後、インク室からインクを送り出し、インクをノズルの先端から吐出している。液滴の吐出方法としては、吐出の直前にノズル先端のメニスカス、すなわちインクと気体との界面を引き込んでから、液を押し出す引き打ち法とメニスカスが待機停止している位置から直接液を押し出す押し打ち法が挙げられる。一般的なインクジェット装置では、吐出される液滴が小さいため、前者の引き打ち法が主流である。本発明では、ノズルの径がある程度大きく、かつ吐出される液滴が小さいことが求められるため、引き打ち法が有効である。
しかしながら、引き打ち法では、吐出の直前にメニスカスが引き込まれる。このため、ノズルの口径が小さい場合、例えばノズルの口径がスペーサ粒子の粒子径の7倍未満であるときには、図4(a)に示すように、引き込んだメニスカス21近傍にスペーサ粒子22があると、引き込んだメニスカス21が軸対称とならないことがある。よって、メニスカス21が引き込まれた後に、メニスカス21が押し出される際に、スペーサ粒子分散液23の液滴が直進せずに曲がると考えられる。この場合、吐出精度が低下する。吐出の際の液滴の曲がりをなくすために、ノズルの口径を大きくしすぎると、吐出される液滴が大きくなり、液滴の着弾径も大きくなる。よって、荷電インクやスペーサ粒子22の配置精度が低下する。
ノズルの口径が大きい場合、例えばノズルの口径がスペーサ粒子の粒子径の7倍以上であるときには、図4(b)に示すように、引き込んだメニスカス21近傍にスペーサ粒子22が存在しても、メニスカス21はスペーサ粒子22の影響を受けない。よって、メニスカス21は軸対称に引き込まれる。よって、メニスカス21が引き込まれた後に、メニスカス21が押し出される際に、スペーサ粒子分散液23の液滴が直進すると考えられる。この場合、吐出精度が良好となる。
上記インクジェット装置のノズル口径としては特に限定されないが、好ましい下限は20μmであり、好ましい上限は100μmである。20μm未満であると、粒子径が2〜10μmのスペーサ粒子を吐出した場合に、粒子径との差が小さすぎて吐出精度が低下したり、ノズル閉塞を起こして吐出不能となったりすることがある。100μmを超えると、吐出される液滴の径が大きくなって、基板上に吐出された液滴の径も大きくなるので、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
上記ノズルから吐出される液滴の径としては特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は80μmである。
ノズルから吐出される液滴の径を上記好ましい範囲に制御する方法としては特に限定されず、例えば、ノズルの口径を最適化する方法やインクジェット装置を制御する電気信号を最適化する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られてもよい。特に、ピエゾ方式のインクジェット装置を用いる場合には、後者の方法を採ることが好ましい。
また、基板上に吐出された液滴の径としては特に限定されないが、好ましい下限は30μmであり、好ましい上限は150μmである。30μm未満とするためには、ノズル口径を非常に小さくする必要が生じ、スペーサ粒子によるノズル閉塞の可能性が大きくなったり、ノズル加工の精度を高めなければならなくなることがある。150μmを超えると、スペーサ粒子の配置精度が粗くなることがある。
上記インクジェット装置のヘッドには、上述したようなノズルが複数個、一定の配置方式により設けられる。例えば、上記ノズルは、ヘッドの移動方向に対して直交する方向に等間隔で64個又は128個設けられる。なお、上記ノズルは、複数列の設けられていてもよい。
上記インクジェット装置におけるノズルの間隔は、ピエゾ素子等の構造やノズルの口径等により制約を受ける。よって、上述したように一定の間隔で設けられたノズルに対して、ノズルの間隔とは異なる間隔でスペーサ粒子分散液を基板に吐出する場合には、その吐出間隔に対して様々なヘッドを準備しなければならない。しかしながら、様々なヘッドを準備するのは困難である。よって、吐出間隔がヘッドの間隔より小さい場合は、通常はヘッドのスキャン方向に直角に配置されているヘッドを基板と平行に保ったままで、基板と平行な面内でヘッドを傾けてあるいは回転させて吐出する。他方、吐出間隔がノズルの間隔より大きい場合は、全てのノズルを用いてスペーサ粒子分散液の吐出せず、一部のノズルのみを用いて吐出したり、さらにヘッドを傾けるなどして吐出する。
生産効率等を高めるために、複数個のヘッドをインクジェット装置に取り付けることも可能である。しかしながら、取り付けるヘッドの数を増やした場合には、その制御がより一層困難になる。
図10(a)、(b)に、本発明に用いられるインクジェット装置のヘッドの一例を模式的に示す。図10(a)は、インクジェットヘッドの一例の構造を模式的に示す部分切欠斜視図である。図10(b)は、ノズル孔部分において断面構造を示す部分切欠斜視図である。
図10(a)、(b)に示すように、ヘッド100は吸引等によって予めインクが充填されるインク室101、及び、インク室101からインクが送り込まれるインク室102を備えている。ヘッド100には、インク室102から吐出面103に至るノズル孔104が形成されている。吐出面103は、インクによる汚染を防止するため、予め撥水処理がされている。ヘッド100には、インクの粘度を調整するための温度制御手段105が設けられている。ヘッド100は、インク室101からインク室102にインクを送り込む機能を有する。ヘッド100は、インク室102に送り込まれたインクをノズル孔104から吐出する機能するピエゾ素子106を備えている。
ヘッド100では、温度制御手段105が設けられている。よって、インクの粘度が高すぎる場合には、ヒーターによりインクを加熱し、インクの粘度を低下させることができる。他方、インクの粘度が低すぎる場合には、ペルチェによりインクを冷却し、インクの粘度を上昇させることができる。
(液晶表示装置用の基板)
本発明に用いられる液晶表示装置用の第1、第2の基板としては、例えば、通常液晶表示装置のパネル基板として使用されるガラスや樹脂板等が挙げられる。また、第1の基板又は第2の基板として、画素領域にカラーフィルタが設けられた基板を用いることができる。この場合、画素領域はブラックマトリックスで画されており、ブラックマトリックスが非画素領域を構成する。ブラックマトリックスは、実質的にほとんど光を通さないクロム等の金属やカーボンブラック等が分散された樹脂等からなる。
本発明の液晶表示装置の製造方法において、インクジェット装置のノズルから、スペーサ粒子が分散されているスペーサ粒子分散液を上記第1の基板上に吐出し、上記第1の基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置する工程では、上述したインクジェット装置とスペーサ粒子分散液とを用いることで、図2を用いて説明したように、第1の基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を配置することができる。
上記のように、スペーサ粒子分散液が基板に吐出されて着弾したときに、スペーサ粒子分散液の後退接触角が5度以上であることが好ましい。後退接触角を高くする方法としては、例えば基板の表面を低エネルギー表面とする方法が挙げられる。
上記基板の表面を低エネルギー表面とする方法としては、フッ素膜やシリコーン膜等の低エネルギー表面を有する樹脂を基板表面に設ける方法、液晶分子の配向を規制するために配向膜と呼ばれる、通常0.1μm以下である樹脂薄膜を基板表面に設ける方法が挙げられる。一般的には樹脂薄膜を基板表面に設ける方法が行われる。樹脂薄膜を構成する材料としては、通常ポリイミド樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂膜は、溶剤に可溶なポリアミック酸を基板に塗設した後に熱重合させたり、可溶性ポリイミド樹脂を基板に塗設した後に乾燥させて構成される。ポリイミド樹脂としては、基板の表面を低エネルギー表面とし得るために、長鎖の側鎖、主鎖を有するもがより好ましく用いられる。塗設された配向膜は、液晶の配向を制御する目的で表面がラビング処理されることが好ましい。なお、スペーサ粒子分散液の溶媒としては、配向膜中に浸透したり、溶解するなどして配向膜を汚染することがない溶媒を選ぶことが好ましい。
上記スペーサ粒子分散液が吐出される第1の基板には、非画素領域に対応する領域に、低エネルギー表面を有する箇所があることが好ましい。すなわち、スペーサ粒子分散液の液滴が低エネルギー表面を有する箇所に配置されることが好ましい。ここで、非画素領域に対応する領域とは、非画素領域を有する基板の非画素領域、すなわち、例えば、カラーフィルタ基板であれば上述のブラックマトリックス形成部分を指す。あるいは、非画素領域を有する基板を他方の基板と重ね合わせた際に、他方の基板において、非画素領域を有する基板の非画素領域に対向している領域が、非画素領域に対応する領域である。例えば、TFT液晶パネルであれば、他方の基板はTFTアレイ基板であり、TFTアレイ基板と非画素領域を有する基板とを重ね合わせた際に、TFTアレイ基板の配線部等が非画素領域に対応する領域である。
上記基板表面の低エネルギー表面を有する箇所の表面エネルギーの好ましい上限は50mN/mである。50mN/mを超えると、インクジェット装置を用いて吐出できる程度の表面張力を有するスペーサ粒子分散液を使用する限り、吐出された液滴が基板上で濡れ拡がりスペーサ粒子が非画素領域からはみ出すことがある。より好ましい上限は40mN/mである。
上記基板表面に配向膜等を設けて構成された低エネルギー表面は、上記スペーサ粒子分散液が着弾する箇所だけであってもよく、基板表面全体であってもよい。パターニング等の工程の煩雑さを考慮すると、通常は基板表面全体が低エネルギー表面とされる。
上記基板において、スペーサ粒子分散液の液滴の着弾中心部分には、段差が設けられていることが好ましい。この場合、スペーサ粒子が所定の位置に効果的に移動するため、スペーサ粒子の配置精度を高めることができる。また、スペーサ粒子分散液の液滴の着弾中心部分には、静電的に作用する荷電インクが吐出され、荷電インクが乾燥されていることが好ましい。
上記基板表面に設けられる段差とは、基板上に設けられた配線等によって周囲との高低差が形成された非意図的な凹凸、あるいはスペーサ粒子を集めるために意図的に設けられた凹凸をいい、凸凹の構造は問わない。従って、上記段差は、凹凸形状における凹部又は凸部と、基板の平坦部すなわち基準面との段差をいう。
上記段差としては、具体的には、例えばTFTアレイ基板では、図5(a)〜(c)に示すようにゲート電極やソース電極による0.2μm程度の段差、図5(g)に示すようにアレイによる1.0μm程度の段差等が挙げられる。
また、例えば、カラーフィルタ基板では、図5(d)〜(f)、(h)に示すようにブラックマトリックス上でのカラーフィルタ間の1.0μm程度の凹部段差等が挙げられる。
上記スペーサ粒子の粒子径をD(μm)、段差の高低差をB(μm)としたときに、段差の高低差が0.01μm<|B|<0.95Dの関係を満たすことが好ましい。段差の高低差が0.01μmより小さいと、段差周辺にスペーサ粒子が寄り集まり難いことがあり、0.95Dを超えるとスペーサ粒子による基板のギャップ調整効果が充分でないことがある。
上記基板表面に段差がある場合には、スペーサ粒子分散液が基板に吐出され乾燥される段階で、液滴の一部が段差部分に固定されるので、段差周辺の限られた位置にスペーサ粒子を配置することができる。よって、非画素領域に対応する領域に段差を設けることにより、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を集めることができる。
図6(a)〜(c)に示すように、スペーサ粒子分散液が乾燥された後、スペーサ粒子31が配置される箇所は、一般的には凸部33ならば角となり、凹部33であればそのくぼみの中となる。凹部33の大きさがスペーサ粒子の粒子径や、吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の着弾径よりも大きい場合には、凹部33の中だけでなく、凹部33の周辺部にもスペーサ粒子が配置される。
配線等により形成された段差部分、又は、配向膜等を挟んでその近傍に金属種がある場合、もしくは、配線部分に帯電制御剤が含まれている場合には、静電的相互作用、すなわち静電的な電気泳動効果により液滴中のスペーサ粒子が特定の位置に移動する。よって、スペーサ粒子の寄り集まりを制御するために、金属種や、帯電制御剤の種類を調整することが好ましい。また、配線に表面処理が施されている場合にも、静電的な電気泳動効果により液滴中のスペーサ粒子が特定の位置に移動する。この場合、配線等の表面処理に使用される化合物に対して、例えばイオン性の官能基を用いて化合物の官能基等を変えることが好ましい。なお、ソース配線やゲート配線等の配線や基板表面全体に、回路が破損しない程度の正又は負の電圧を印加し、スペーサ粒子の寄り集まりを制御することができる。基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数(散布密度)は、50〜350個/mm2の範囲にあることが好ましい。
上記スペーサ粒子分散液は、下記式(1)で表される値以上の間隔で、基板に吐出されることが好ましい。吐出間隔は、基板に着弾したスペーサ粒子分散液の2つの液滴間の最短距離をいう。
3 5 ×[D/(2−3cosθ+cos3θ)]1/3(μm)・・・式(1)
上述した式(1)中、Dはスペーサ粒子の粒子径(μm)を表し、θは上述した初期接触角を表す。
上述した式(1)で表される値よりも小さな間隔で吐出すると、基板に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴の合着が起こり、乾燥過程で一カ所に向かってスペーサ粒子が寄り集まらないことがある。この場合、乾燥後のスペーサ粒子の配置精度が低下する。また、1つのノズルから吐出されるスペーサ粒子分散液の量を少なくするためノズルの口径を小さくすると、スペーサ粒子の粒子径がノズルの口径に対して相対的に大きくなるため、例えば、ノズルから同一方向に向けて直線的にスペーサ粒子を常に吐出できず、飛行曲がりが生じ、スペーサ粒子の配置精度が低下する。また、スペーサ粒子により、ノズルが閉塞することがある。
上記スペーサ粒子は、ブラックマットリックス等の非画素領域に対応する領域、又は、配線等の非画素領域に対応する領域に配置されれば、配置される部分及び配置パターンは特に限定されない。しかしながら、スペーサ粒子が画素領域にはみ出すのを防止するために、例えば、基板の非画素領域に対応する領域が格子状に形成されている場合には、格子状の非画素領域に対応する領域の縦横交差する格子点を狙ってスペーサ粒子分散液を吐出することがより好ましい。
1つの箇所におけるスペーサ粒子の配置個数は、配置箇所によって適宜設定され得るが、一般的には1〜12個程度であることが好ましい。平均配置個数として2〜6個程度であることが好ましい。その配置個数は、スペーサ粒子の粒子径及びスペーサ粒子分散液の濃度により適宜調整され得る。
スペーサ粒子分散液を基板に吐出する際には、インクジェット装置のヘッドのスキャンを1回で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。特に、スペーサ粒子を配置する間隔が、上述した式(1)で表される値よりも小さい場合は、上述した式(1)で表される値の整数倍の間隔でスペーサ粒子分散液を吐出し、スペーサ粒子分散液を乾燥させた後、その間隔分だけヘッドを移動させ、スペーサ粒子分散液を再度吐出することが好ましい。スペーサ粒子分散液の吐出に際しては、ヘッドの移動方向を例えば1回毎に交互に変えて往復させながら吐出してもよく、ヘッドを一定方向にのみ移動させながら吐出してもよい。
上記スペーサ粒子を基板に配置する方法としては、特開2002−015493号公報に記載のように、基板表面に垂線を引いたときに、この垂線対して所定の角度を有するようにヘッドを傾けて液滴を吐出し、更にヘッドと基板との相対的な移動速度をコントロールする。このようにすることで、スペーサ粒子分散液の液滴の着弾径を小さくでき、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することができる。
また、上記スペーサ粒子分散液をインクジェット装置により吐出する基板表面の非画素領域内に凸部が形成されている場合、該凸部上に上記スペーサ粒子分散液を吐出することが好ましい。上記凸部上にスペーサ粒子を配置することができ、例えば、粒径が5μm以下程度の微小なスペーサ粒子を用いた場合であっても、製造する液晶表示装置の液晶層の厚みを適度な範囲とすることができる。この場合、上記スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子の粒子径が5μm以下であり、20℃における表面張力が33mN/m以上、かつ、スペーサ粒子濃度が0.01〜5重量%であり、上述したスペーサ粒子を配置する本工程において、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の重量が5〜20ngであることが好ましい。1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ分散液の重量が5〜20ngであるため、凸部上に吐出されたスペーサ粒子分散液の液滴の着弾径を小さくすることができ、従って、基板表面の非画素領域に対応する領域に形成された凸部上にスペーサ粒子を高精度に配置することができる。
上記凸部の形状としては、格子状の形成であってもよく、長さ方向と幅方向とを有する形状であってもよい。なお、長さ方向と幅方向とを有する形状には、長方形、楕円形等が含まれる。
上記凸部上に上記スペーサ粒子分散液を吐出する場合、該凸部は格子状の形状を有し、上記スペーサ粒子分散液が吐出される部分の凸部の幅は、下限が15μm、上限が40μmであることが好ましい。凸部の幅が上記範囲にあることで、凸部上に吐出されたスペーサ粒子分散液が凸部上からはみ出すことを確実に防ぐことができ、スペーサ粒子をより一層高精度に配置することができる。よって、製造する液晶表示装置の表示画質を高めることができる。
(スペーサ粒子分散液の乾燥方法)
上記スペーサ粒子分散液を基板に吐出し、吐出されたスペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後、スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法について説明する。
上記スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後、スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法としては特に限定されず、基板が載置されたステージを加熱する方法、基板に熱風を吹き付ける方法、遠赤外線等により基板を加熱する方法、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液を減圧乾燥により乾燥させる方法等が挙げられる。乾燥過程では、スペーサ粒子を液滴の着弾中心付近に寄せ集めるために、乾燥温度、乾燥時間、分散液の沸点、分散液の表面張力、分散液の配向膜に対する接触角、分散液中のスペーサ粒子濃度等を適当な条件に設定することが好ましい。
上記基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液を乾燥させる方法として基板を減圧乾燥する方法が、基板に熱を与える必要がなく、基板や、基板上の配向膜、スペーサ粒子が加熱による損傷を受けないため好ましい。
基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液を減圧乾燥により乾燥させる場合には、スペーサ粒子分散液を吐出した基板を減圧装置に入れてスペーサ粒子分散液を乾燥してもよく、或いはスペーサ粒子配置装置自体を減圧乾燥機中に設置し、スペーサ粒子分散液を乾燥してもよい。このようにすることによって、基板上のスペーサ粒子分散液の乾燥速度を調整することができる。減圧装置としては、基板を入れる減圧室に、その減圧室に比べ容量の大きい、例えば予め減圧された減圧タンクが接続されているものが挙げられ、この減圧装置を用いれば、急速にかつ容易に減圧することができるため好ましい。
乾燥過程でスペーサ粒子を液滴の着弾中心点付近に寄せ集めるためには、スペーサ粒子が基板表面を移動している間に液体が無くならないように、ある程度時間をかけて乾燥することが好ましい。すなわち、溶媒が急激に乾燥しない温度で乾燥することが好ましい。高温の溶媒が長時間配向膜と接触すると、配向膜を汚染して液晶表示装置としての表示画質を損なうことがあるため、低温下で乾燥することが好ましい。
室温で揮発しやすい溶媒を用いたり、溶媒が急激に揮発するような条件でスペーサ粒子分散液を使用すると、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥し易く吐出性が悪くなることがある。また、スペーサ粒子分散液を製造する際や、スペーサ粒子分散液を保管している際にスペーサ粒子分散液が乾燥し、スペーサ粒子が凝集することがある。
上記スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾したときの基板の表面温度は、スペーサ粒子分散液に含まれる最も低沸点の溶媒の沸点よりも20℃以上低い温度であることが好ましい。基板の表面温度が、最も低沸点の溶媒の沸点−20℃より高いと、最も低沸点の溶媒が急激に揮散して、スペーサ粒子が移動し難くなり、著しい場合は溶媒の急激な沸騰により、スペーサ粒子を含む液滴が基板表面を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。
上記スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後に、基板の表面温度を徐々に上昇させながら、溶媒を乾燥させる。このとき、乾燥が完了するまでの基板の表面温度は90℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。乾燥が完了するまでの基板の表面温度が90℃を超えると、配向膜が汚染されて液晶表示装置の表示画質を低下することがある。なお、基板表面の液滴が消失した時点を、乾燥が完了時点とする。
上記スペーサ粒子分散液の乾燥が完了した後、基板に対するスペーサ粒子の固着性を高めたり、残留溶剤を除去するため、例えば120〜230℃程度の温度に基板をさらに加熱してもよい。
本発明の液晶表示装置の製造方法は、スペーサ粒子が配置された上記第1の基板を、スペーサ粒子を介して対向するように上記第2の基板に重ね合わせる工程と、重ね合わせられた第1、第2の基板間に液晶を注入する、若しくは、上記第1、第2の基板を重ね合わせる工程の前に第1の基板又は第2の基板上に液晶を配置する工程とを有する。
すなわち、上述した工程によりスペーサ粒子が配置された第1の基板は、スペーサ粒子が配置されていない第2の基板と、スペーサ粒子を介して対向し合うように重ね合わせられる。第1、第2の基板は、例えば、外周縁近傍において周辺シール剤を用いて加熱圧着された後、第1、第2の基板間の空隙に液晶が充填されて液晶表示装置が作製される(真空注入法)。
あるいは、例えば、第1の基板又は第2の基板のいずれか一方の基板の外周縁近傍に、周辺シール剤を塗布し、周辺シール剤で囲まれた範囲内に液晶を滴下する。しかる後、他方の基板と貼り合わせて、シール剤が硬化されて液晶表示装置が作製される(液晶滴下工法)。
このような本発明の液晶表示装置の製造方法によると、インクジェット装置を用いて、基板上の非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することができ、例えば、図1に示す構造の液晶表示装置を好適に製造することができる。
本発明の液晶表示装置の製造方法により得られた液晶表示装置もまた、本発明の1つである。