本発明は、中空吸排気バルブ冷却装置に関するものである。特に、この発明は、中空吸排気バルブの内部に熱伝導媒体が封入された中空吸排気バルブ冷却装置に関するものである。
車両に搭載される内燃機関が有する吸排気バルブは、傘部と軸部とを有しているが、このうち傘部は燃焼室に面しているため、燃料が燃焼室で燃焼する際に、燃焼によって発生する熱が伝わり易くなっている。特に、近年の車両に搭載される内燃機関は、高出力化を図っているものも多く、このような高出力化を図った場合には、燃焼室で発生する熱も多いため、吸排気バルブの傘部に伝わる熱も多くなっている。そこで、従来の吸排気バルブでは、傘部に伝わる熱を逃がし易くしているものがある。
例えば、特許文献1では、吸排気バルブ内に中空部を設け、中空部内に熱伝導媒体となる圧粉体を封入している。内燃機関の運転時には、吸排気バルブは往復運動をするが、このように中空吸排気バルブ内に形成された中空部内に熱伝導媒体を封入することにより、熱伝導媒体は吸排気バルブの往復運動に伴って中空部内を往復運動する。これにより、内燃機関の運転時に燃焼室から傘部が受ける熱は熱伝導媒体に伝えられ、熱伝導媒体に伝えられた熱は熱伝導媒体が中空部内を往復運動することにより、軸部に伝えられる。これにより、傘部に伝えられた熱を逃がすことができ、傘部の温度が上昇し過ぎることを抑制することができた。
しかしながら、内燃機関の出力をさらに向上させ、内燃機関の運転時における燃焼室での発熱量がさらに大きくなった場合には、その発熱量に応じて熱伝導媒体によって傘部から軸部に伝えられる熱量も多くなり、軸部の温度が高くなり過ぎる虞がある。この軸部には、シリンダヘッド内を流れるオイルが内燃機関用バルブを伝わって燃焼室内に流入する事を防ぐオイルシールが接しているが、このオイルシールは、ゴム系の材料から形成されているため熱に弱い。このため、オイルシールに熱が加えられると、オイルシールを形成する材料が劣化してシール性が低減する虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オイルシールの熱劣化を抑制することのできる中空吸排気バルブ冷却装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、内燃機関に設けられ、且つ、軸部の一端に傘部を有すると共に前記軸部及び前記傘部の内部には中空部が形成されており、前記中空部には熱伝導媒体が封入される中空吸排気バルブと、前記軸部に接触するオイルシールと、前記軸部を摺動可能に支持すると共に、前記軸部における前記オイルシールに接触する部分と前記傘部との間に位置するバルブガイドと、前記バルブガイドとの間で熱交換をする冷媒を供給する冷媒供給手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、中空吸排気バルブが有する軸部を摺動可能に支持するバルブガイドとの間で熱交換をする冷媒を供給する冷媒供給手段を設けている。また、内燃機関運転時に燃焼室から吸排気バルブの傘部に伝えられる熱は、中空部に封入された熱伝導媒体を介して傘部から軸部に伝えられ、軸部に伝えられた熱は、軸部を支持するバルブガイドに伝えられる。このため、冷媒供給手段によって冷媒を供給し、当該冷媒とバルブガイドとの間で熱交換をさせてバルブガイドの温度を下げることにより、軸部の熱はバルブガイドに伝わり易くなり、軸部の温度上昇を抑制することができる。また、このバルブガイドは、軸部におけるオイルシールに接触する部分と傘部との間に位置している。このため、内燃機関の燃焼室から傘部に伝えられる熱は、軸部を伝わってオイルシールに到達するまでの間にバルブガイドに伝わるので、オイルシールに接触している部分の軸部の温度上昇が抑制される。これにより、燃焼室から傘部に伝えられる熱はオイルシールに伝わり難くなる。この結果、オイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記冷媒供給手段は、前記バルブガイドに前記冷媒を噴射することを特徴とする。
この発明では、冷媒を噴射することによりバルブガイドに冷媒を供給している。これにより、冷媒を直接バルブガイドに供給することができるので、バルブガイドから冷媒への放熱効果を向上させることができる。従って、より確実に冷媒とバルブガイドとの間で熱交換を行なうことができ、より確実にバルブガイドの温度を下げることができるので、これに伴ってより確実に軸部の温度上昇を抑制することができる。この結果、より確実にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記冷媒供給手段は、少なくとも一部が前記バルブガイドの近傍に設けられると共に内部に前記冷媒が通る冷媒通路を有していることを特徴とする。
この発明では、少なくとも一部がバルブガイドの近傍に設けられる冷媒通路を設けているので、冷媒は冷媒通路内を循環させてバルブガイド近傍に供給することができる。これにより、内燃機関に中空吸排気バルブが複数設けられている場合に、冷媒通路を複数のバルブガイドの近傍を循環するように設けることにより、冷媒を効率よくバルブガイド近傍に供給することができる。この結果、効率よく複数のバルブガイドの熱を放熱させることができ、このため、より確実にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記冷媒通路は、前記バルブガイドの外周面に形成された溝部を有していることを特徴とする。
この発明では、冷媒通路が、バルブガイドの外周面に形成された溝部を有しているので、冷媒を直接バルブガイドに接触させることができる。これにより、バルブガイドの熱を、より確実に冷媒に対して放熱することができる。また、上記と同様に冷媒を効率よく複数のバルブガイドに供給することができる。これらの結果、効率よく複数のバルブガイドの熱を放熱させることができると共に、より確実にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記冷媒通路は、前記バルブガイドに対して開口するように形成された溝部を有していることを特徴とする。
この発明では、冷媒通路が、バルブガイドに対して開口するように形成された溝部を有しているので、冷媒を直接バルブガイドに接触させることができる。これにより、バルブガイドの熱を、より確実に冷媒に対して放熱することができ、また、上記と同様に冷媒を効率よく複数のバルブガイドに供給することができる。これらの結果、効率よく複数のバルブガイドの熱を放熱させることができると共に、より確実にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記内燃機関は車両に搭載されており、前記車両には、前記車両の車室内に導入される空気と前記内燃機関を冷却する冷却水との間で熱交換を行なう車室ヒータが設けられており、前記バルブガイドとの間で熱交換をした後の前記冷媒は、前記車室ヒータに向かって流れる前記冷却水と熱交換を行なうことを特徴とする。
バルブガイドとの間で熱交換をする冷媒の一例として、内燃機関内を循環するオイルを用いた場合で、この発明を説明すると、この発明では、当該オイルと、車室ヒータに向かって流れる冷却水との間で熱交換しているので、バルブガイドの熱が伝えられて温度が上昇したオイルの熱を、この冷却水に対して放熱することができる。オイルは、バルブガイドから熱を受けるため、バルブガイド以外の部分で放熱した方がよく、車室ヒータに向かって流れる冷却水は、車室の温度を上げることができるように、温度を高くした方がよい。そこで、これらの間で熱交換をすることにより、中空吸排気バルブが燃焼室から受けた熱を車室ヒータ用の熱として利用することができると共に、オイルの温度を下げることができるので、バルブガイドを介して中空吸排気バルブの軸部の温度上昇を、より確実に抑制することができる。この結果、車室ヒータで車室の温度を上げ易くすることができると共に、より確実にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
また、この発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、前記冷媒は、前記内燃機関内を循環するオイルを用いることを特徴とする。
この発明では、冷媒として、内燃機関内を循環するオイルを用いているので、独立した冷媒用の経路を形成する必要がなく、オイル用の経路からバルブガイドの冷却用の経路を追加することにより、バルブガイドの冷却を行なうことができる。この結果、容易にオイルシールの熱劣化を抑制することができる。
本発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、オイルシールの熱劣化を抑制することができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、本発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置が有する中空吸排気バルブは、吸気バルブと排気バルブとがあるが、以下の説明では、中空吸排気バルブの一例として排気バルブを有する中空吸排気バルブ冷却装置について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。同図に示す中空吸排気バルブ冷却装置1は、中空吸排気バルブとなる排気バルブ5と、バルブガイド20と、オイルシール30とを有しており、さらに、バルブガイド20の近傍には冷媒供給手段となるオイルジェットノズル45が設けられている。当該中空吸排気バルブ冷却装置1は、前記排気バルブ5が往復運動をすることにより、シリンダヘッド40に形成された排気通路(図示省略)を開閉するように設けられている。なお、図1は、排気バルブ5が排気通路を閉じている状態の中空吸排気バルブ冷却装置1を示している。
前記排気バルブ5は、傘部10と軸部15とを有している。前記傘部10は、円錐形に近い形状で形成されており、円錐形の底面はバルブ面11として形成されている。このバルブ面11は、当該中空吸排気バルブ冷却装置1が設けられる内燃機関(図示省略)の燃焼室(図示省略)に面している。また、前記軸部15は、傘部10の斜面12側に位置しており、軸部15の一方の端部が円錐形の頂部に接続され、軸方向が円錐形の高さ方向と平行な方向になる向きで形成されている。
前記軸部15と前記傘部10とには、内部に連続した空洞が形成されており、この空洞は中空部16となっている。この中空部16には、例えばナトリウムなどからなる熱伝導媒体18が封入されている。この熱伝導媒体18は、少なくとも前記内燃機関の運転時には液体の状態になっている。
前記バルブガイド20は、前記シリンダヘッド40に固定されている。また、当該バルブガイド20は、略円筒形の形状で軸部15の周囲に設けられている。このバルブガイド20の形状である円筒形の内側の孔の径は、軸部15の径と同程度の径となっており、この孔に軸部15は挿通されている。このため、この孔がバルブガイド接触部21となって軸部15に接触している。また、このようにバルブガイド接触部21は軸部15の径と同程度の径の孔の形状で形成され、軸部15はこのバルブガイド接触部21に挿通されているため、当該軸部15はバルブガイド20によって軸方向以外の方向の動きが規制されている。即ち、軸部15は、バルブガイド20によって摺動可能に支持されている。
前記オイルシール30は、シリンダヘッド40に固定された静止部品となっており、また、軸部15における傘部10側の端部である傘部側端部15aと反対側の端部でオイルシール側端部15b付近に接触している。このオイルシール30には、軸部15の径とほぼ同じ径の孔が形成されており、この孔に軸部15は挿通されている。このため、この孔がオイルシール接触部31となって軸部15に接触している。また、このようにオイルシール接触部31は、軸部15の径と同程度の径の孔で形成されているため、オイルシール接触部31は、所定の幅で軸部15の周方向の全周に渡って接触している。また、このオイルシール30は、ゴム系の材料で形成されており、このため弾力性を有しているので、オイルシール接触部31は、ほとんど隙間が無い状態で軸部15に接触している。これにより、オイルシール30と軸部15との間をシールすることができるので、軸部15とバルブガイド20との間に、シリンダヘッド40内を流れるオイルが流れ込むことが抑制され、このオイルが排気バルブ5に沿って燃焼室方向に流れることが抑制される。
また、バルブガイド20は、シリンダヘッド40における当該バルブガイド20を固定している部分から露出しているが、前記オイルジェットノズル45は、このシリンダヘッド40から露出したバルブガイド20の近傍に設けられている。また、オイルジェットノズル45は、内燃機関内を循環するオイル48を、シリンダヘッド40から露出したバルブガイド20に対して冷媒として噴射できるように形成されている。
この実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。当該中空吸排気バルブ冷却装置1が設けられる内燃機関を運転した際には、当該内燃機関の燃焼室に面しているバルブ面11が、燃焼室内で燃料が燃焼することにより燃焼による熱を受ける。このバルブ面11が受けた熱は、その一部が前記中空部16内に封入された熱伝導媒体18に伝えられる。
図2は、図1の排気バルブが移動した状態を示す図である。前記排気バルブ5は、内燃機関の運転時に排気通路を開閉するように設けられているが、排気通路の開閉は、排気バルブ5が前記軸部15の軸方向に作動することによって行なわれる。この排気バルブ5が、オイルシール30が設けられている方向に移動(図1参照)すると排気通路は閉じられ、排気バルブ5が傘部10の方向に移動(図2参照)すると排気通路は開かれる。内燃機関の運転時には、このように排気バルブ5は軸部15の軸方向に往復運動をするが、排気バルブ5が往復運動をすると前記中空部16内に位置する熱伝導媒体18は、慣性によって排気バルブ5の動きとは異なる動きで中空部16内を移動する。この熱伝導媒体18は、傘部10のバルブ面11からの熱によって温度が高くなっているが、熱伝導媒体18が中空部16内を移動することにより、熱伝導媒体18の熱は軸部15に伝えられる。その際に、熱伝導媒体18は傘部10方向から、オイルシール側端部15b方向に移動する際に熱伝導媒体18は軸部15に熱を伝えながら移動するため、軸部15における傘部側端部15a側から温度が高くなっていく。
このように、温度が高くなった軸部15には、バルブガイド20が接触している。このため、軸部15の熱は、バルブガイド接触部21を伝わってバルブガイド20に伝えられ、これにより、軸部15の熱の一部は、バルブガイド20に放熱される。また、このバルブガイド20には、オイルジェットノズル45によりオイル48が吹き付けられている。このため、バルブガイド20の熱は、オイルジェットノズル45によって吹き付けられたオイル48に伝わり、バルブガイド20の温度は低下する。一方、オイルジェットノズル45によってバルブガイド20に吹き付けられ、バルブガイド20の熱が伝えられたオイル48は、シリンダヘッド40内に設けられた作動部分を潤滑する他のオイルと同様に、オイルの循環経路(図示省略)を流れて内燃機関内を循環する。
軸部15のオイルシール側端部15b付近には、オイルシール30が接触している。このオイルシール30は、静止部品となってシリンダヘッド40に固定されている。このため、内燃機関の運転時に排気バルブ5が往復運動をした際には、排気バルブ5はオイルシール30に対して摺動するように接触する。また、オイルシール30は、排気バルブ5が排気通路を閉じた場合でも(図1参照)、開いた場合でも(図2参照)、常に軸部15に接触している。
また、バルブガイド20は、軸部において、このようにオイルシール30が接触している側の端部であるオイルシール側端部15bと、傘部側端部15aとの間に位置しており、オイルシール側端部15bと傘部側端部15aとの間の部分の軸部15に接触している。内燃機関運転時における排気バルブ5の軸部15の温度は、傘部10側から高くなっていくが、軸部15の傘部側端部15aとオイルシール側端部15bとの間の部分では、バルブガイド20に放熱している。このため、燃料の燃焼時にバルブ面11が受けた熱は、傘部側端部15aからオイルシール側端部15bまでの間で放熱され、オイルシール側端部15bには伝わり難くなっている。このため、燃料の燃焼時に発生する熱は、軸部15を介してオイルシール30に伝わり難くなっている。
以上の中空吸排気バルブ冷却装置1は、排気バルブ5が有する軸部15の周囲に設けられたバルブガイド20に、冷媒となるオイル48を供給するオイルジェットノズル45が設けられている。また、内燃機関運転時に燃焼室から排気バルブ5の傘部10に伝えられる熱は、中空部16に封入された熱伝導媒体18を介して傘部10から軸部15に伝えられ、軸部15に伝えられた熱は、軸部15に接触しているバルブガイド20に伝えられる。このため、オイルジェットノズル45によってオイル48をバルブガイド20に供給してオイル48とバルブガイド20との間で熱交換をさせ、バルブガイド20の温度を下げることにより、軸部15の熱はバルブガイド20に伝わり易くなる。これにより、軸部15の温度上昇を抑制することができる。また、バルブガイド20は、オイルシール側端部15b付近、即ち軸部15においてオイルシール30に接触する部分と傘部10との間に位置しており、この部分に位置する軸部15の周囲に設けられて軸部15を摺動可能に支持している。このため、内燃機関の燃焼室から傘部10に伝えられる熱は、軸部15を伝わってオイルシール30に到達するまでの間にバルブガイド20に伝わるので、オイルシール30に接触している部分の軸部15の温度上昇が抑制される。これにより、燃焼室から傘部10に伝えられる熱は、オイルシール30に伝わり難くなる。この結果、オイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
また、バルブガイド20の近傍にオイルジェットノズル45を設け、このオイルジェットノズル45でオイル48を噴射してバルブガイド20に吹き付けている。これにより、冷媒となるオイル48を直接バルブガイド20に供給することができ、バルブガイド20からオイル48への放熱効果を向上させることができる。従って、より確実にバルブガイド20の温度を下げることができるので、軸部15の温度もバルブガイド20に伝わり易くなり、より確実に軸部15の温度上昇を抑制することができる。この結果、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
また、バルブガイド20の冷却用の冷媒として、内燃機関内を循環するオイル48を用いているので、バルブガイド20の冷却用の冷媒を新たに用意する必要がなく、新たな冷媒が通る経路を独立して新たに設ける必要がなくなる。つまり、新たな冷媒用の経路を独立して設けずに、オイル48用の経路にバルブガイド20の冷却用の経路を追加することにより、バルブガイド20の冷却を行なうことができる。この結果、容易にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
この実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置と略同様の構成であるが、オイルジェットノズルは設けずにバルブガイドの近傍にオイル通路を設けている点に特徴がある。他の構成は実施例1と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図3は、本発明の実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。同図に示す中空吸排気バルブ冷却装置50は、シリンダヘッド40のバルブガイド20の近傍に、内燃機関内を循環するオイル52が通る冷媒通路であるオイル通路51が、孔状の通路の形状で形成されている。このオイル通路51は冷媒供給手段の一部として形成されており、シリンダヘッド40のバルブガイド20近傍においてバルブガイド20から離間した状態でバルブガイド20の周囲に形成されている。つまり、オイル通路51は、バルブガイド20に近接した状態でバルブガイド20の周囲に形成されている。さらに、複数の気筒(図示省略)を有する内燃機関には排気バルブ5は複数設けられているが、オイル通路51は、これらの複数の排気バルブ5の軸部15の周囲に設けられた各バルブガイド20の近傍に設けられている。また、各バルブガイド20の近傍に設けられるオイル通路51は、全て連続して形成されている。つまり、各バルブガイド20の近傍に設けられるオイル通路51は、全て連通している。
この実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。当該中空吸排気バルブ冷却装置50が設けられる内燃機関を運転した際には、上述したオイル52が内燃機関内を循環するように、内燃機関が有するオイルポンプ(図示省略)が作動する。オイルポンプが作動すると、オイル52が内燃機関内を循環するが、このオイル52は、バルブガイド20の近傍に形成されるオイル通路51内にも供給され、オイル通路51内を流れる。このオイル通路51はバルブガイド20に近接しているため、オイル通路51内を流れるオイル52との間で熱交換が行われる。即ち、内燃機関の運転中には、排気バルブ5の傘部10は燃料の燃焼時の熱を燃焼室から受け、傘部10が受けた熱は軸部15に伝えられる。
この軸部15のオイルシール側端部15b付近にはオイルシール30が接触しているが、傘部10から伝えられた熱の大部分は、軸部15におけるオイルシール側端部15bに伝えられるまでの間に、傘部側端部15aとオイルシール側端部15bとの間に位置し、この部分で軸部15に接触するバルブガイド20に伝えられる。これにより、内燃機関の運転時に排気バルブ5の傘部10が燃焼室から受け、さらに排気バルブ5の軸部15に伝えられた熱は、バルブガイド20を介してオイル通路51内のオイル52に伝えられる。オイル通路51は複数の排気バルブ5の軸部15の周囲に設けられる各バルブガイド20の近傍に形成され、各バルブガイド20の近傍に形成されるオイル通路51は連通しているため、オイル通路51内を流れるオイル52は、全てのバルブガイド20との間で熱交換を行なう。このため、複数の排気バルブ5の軸部15に伝えられた熱は、全てバルブガイド20を介してオイル通路51内のオイル52に伝えられる。
以上の中空吸排気バルブ冷却装置50は、バルブガイド20の近傍に、バルブガイド20に近接するオイル通路51を設けているので、冷媒となるオイル52をバルブガイド20近傍に供給する際に、オイル通路51内を循環させて供給することができる。これにより、内燃機関に排気バルブ5が複数設けられている場合に、オイル52がバルブガイド20の熱を受けながら次々に複数のバルブガイド20の近傍を流れるようにすることができる。従って、オイル52を効率よくバルブガイド20近傍に供給することができる。この結果、効率よく複数のバルブガイド20の熱を放熱させることができ、このため、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
この実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置と略同様の構成であるが、バルブガイドに、オイルが流れる溝部を形成している点に特徴がある。他の構成は実施例2と同様なので、その説明を省略するとともに、同一の符号を付す。図4は、本発明の実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。同図に示す中空吸排気バルブ冷却装置60は、バルブガイド61の外周面62に、内燃機関内を循環するオイルが通り、冷媒通路の一部である溝部63が形成されている。この溝部63は冷媒供給手段の一部として形成されており、バルブガイド61の外周面62のうち、シリンダヘッド40に接触する部分に形成されており、バルブガイド61においてシリンダヘッド40に接触する部分の外周面62の全周にかけて形成されている。この溝部63の幅は、シリンダヘッド40とバルブガイド61とが接触している部分における軸部15の軸方向の長さよりも狭く、溝部63の深さは、バルブガイド61の外周面62からバルブガイド接触部64までの厚さよりも浅くなっている。この溝部63は、複数形成されている排気バルブ5の周囲に設けられた全てのバルブガイド61に形成されている。
また、シリンダヘッド40には、孔状の通路の形状で形成されたオイル通路65が形成されており、オイル通路65は、バルブガイド61の溝部63に対して開口している。さらに、オイル通路65は、複数形成されるバルブガイド61の全ての溝部63に対して開口するように、複数のオイル通路65がバルブガイド61間に位置するように形成されている。バルブガイド61間に位置する各オイル通路65が、それぞれ溝部63に開口することによって、複数のバルブガイド61に形成される溝部63は、全て接続されている。
この実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置60は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。内燃機関を運転すると、実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50と同様にオイル通路65内をオイル66が循環する。このオイル通路65は、バルブガイド61に形成された溝部63に対して開口しているので、オイル66は溝部63内を流れる。その際に、内燃機関の運転時に排気バルブ5の傘部10が燃焼室から受けた熱は、軸部15からバルブガイド61に伝わり、バルブガイド61から溝部63内を流れるオイル66に伝えられる。さらに、このオイル66はオイル通路65を流れて他のバルブガイド61の溝部63、または、内燃機関の他の部分に流れる。
以上の中空吸排気バルブ冷却装置60は、冷却通路の一部としてバルブガイド61の外周面62に溝部63を形成している。これにより、溝部63にオイル66が流れた際に、オイル66はバルブガイド61に接するように流れる。換言すると、溝部63は、オイル66がバルブガイド61に接触するように設けられている。このため、オイル66を直接バルブガイド61に接触させることができるので、バルブガイド61の熱を、より確実にオイル66に対して放熱することができる。また、複数のバルブガイド61の全てに溝部63は形成されており、これらの溝部63はオイル通路65によって接続されているので、実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50と同様に、オイル66がバルブガイド61の熱を受けながら次々に複数のバルブガイド61の溝部63を流れるようにすることができ、オイル66を効率よくバルブガイド61に供給することができる。これらの結果、効率よく複数のバルブガイド61の熱を放熱させることができると共に、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
図5は、実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置の変形例を示す図である。なお、実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置60は、溝部63はバルブガイド61に形成されているが、溝部63はバルブガイド61以外の部分に形成してもよい。例えば、図5に示すように、冷媒通路の一部となる溝部70はシリンダヘッド40におけるバルブガイド61の周囲で、バルブガイド61に接触する部分に形成してもよい。溝部70をシリンダヘッド40に形成する場合でも、溝部70をシリンダヘッド40におけるバルブガイド61に接触する部分に、バルブガイド61に対して開口するように形成することにより、溝部70内を流れるオイル66を、直接バルブガイド61に接触させつつ流すことができる。また、バルブガイド61が複数形成され、各バルブガイド61の周囲に溝部70が形成されている場合において、溝部70同士をオイル通路65で接続した場合には、オイル66がバルブガイド61の熱を受けながら次々に複数の溝部70を流れるようにすることができる。これらの結果、効率よく複数のバルブガイド61の熱を放熱させることができると共に、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
図6は、実施例に係る中空吸排気バルブ冷却装置の変形例を示す図である。また、上述した中空吸排気バルブ冷却装置1、50、60において冷媒となるオイルは内燃機関内を循環しつつバルブガイド20、61(図1、図3、図4参照)との間で熱交換をしているが、バルブガイド20、61と熱交換をした後、さらに熱交換をしてもよい。例えば、前記内燃機関が車両に搭載されており、当該車両に車室ヒータ(図示省略)が設けられている場合には、図6に示すように、オイルが車室ヒータに向かって流れる冷却水との間で熱交換を行なうように形成されていてもよい。つまり、車両の室内、即ち車室内(図示省略)に設けられる車室ヒータは、運転中の内燃機関から熱を受けることによって温度が高くなった冷却水と車室内に導入される空気との間で熱交換を行なうことによって車室内の温度を上昇させているが、シリンダヘッド40内を通りバルブガイド20、61との間で熱交換をするオイルを、この冷却水との間で熱交換をするようにしてもよい。
具体的には、車室ヒータに向かって流れる冷却水の経路であるヒータ用冷却水経路82は、運転時の内燃機関を冷却する冷却水用の経路である冷却水経路81から分岐して形成されている。このヒータ用冷却水経路82と、バルブガイド20、61との間で熱交換を行なうオイルが流れる経路であるオイル経路80とが近接するように、熱交換部83を設けてもよい。この熱交換部83は、オイル経路80におけるバルブガイド20、61の下流側で、オイル経路80とヒータ用冷却水経路82とが近接するように設けられており、また、オイル経路80内を流れるオイルとヒータ用冷却水経路82内を流れる冷却水との間で熱交換を行なうことができるように設けられている。
このため、内燃機関の運転時には、熱交換部83には、バルブガイド20、61との間で熱交換を行なうことにより、バルブガイド20、61の熱を受けて温度が高くなったオイルが流れる。また、熱交換部83は、オイル経路80内を流れるオイルとヒータ用冷却水経路82内を流れる冷却水との間で熱交換を行えるように設けられているため、オイル経路80内のオイルは、熱交換部83でヒータ用冷却水経路82内の冷却水に対して放熱する。これにより、オイル経路80内のオイルは熱交換部83を通過する際に放熱して温度が下がり、ヒータ用冷却水経路82内の冷却水は熱交換部83を通過する際に熱を受けて温度が上昇する。
このように、オイル経路80内のオイルは、熱交換部83を通過する際に温度が下がるので、再びバルブガイド20、61との間で熱交換を行なう際に、より多くの熱をバルブガイド20、61から受けることができる。これにより、排気バルブ5の軸部15の熱が放熱され、軸部15の温度上昇が抑制されるので、これに伴いオイルシール30(図1、図3、図4参照)の温度上昇を抑制することができる。一方、ヒータ用冷却水経路82内の冷却水は、熱交換部83を通過する際に温度が上昇するので、車室ヒータ使用時において車室内の温度を早急に上昇させることができる。即ち、熱交換部83を設けることにより、高温になったオイルを冷却することができると共に、車室内を早期に暖気でき、さらに、排気バルブ5が燃焼室から受けた熱を、車室ヒータ用の熱として利用することができる。これらの結果、車室ヒータで車室の温度を上げ易くすることができると共に、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
また、実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50では、実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置1と同様に冷媒として内燃機関内を循環するオイル52を用いているが、冷媒は運転時における内燃機関冷却用の冷却水を用いてもよい。実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50のシリンダヘッド40にはオイル通路51が形成されているが、シリンダヘッド40には、このオイル通路51と同等の形状の冷却水通路を形成し、冷媒としてオイル52の代わりに冷却水を用いてもよい。実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50のオイル通路51と同等の形状の冷却水経路を形成することにより、冷却水経路内の冷却水はバルブガイド20に接触しないため冷却水は燃焼室内に入り込む虞がなく、冷媒として冷却水を用いることができる。冷却水の経路にはラジエータ(図示省略)が設けられており、冷却水はラジエータによって外部の空気に放熱しつつ、内燃機関の各部を冷却している。このため、この冷却水によってバルブガイド20を冷却することにより、より確実にバルブガイド20の温度を下げることができ、さらに、排気バルブ5の軸部15の温度上昇を抑制し、オイルシール30の温度上昇を抑制することができる。この結果、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
また、実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置1は、1つのバルブガイド20の近傍に1つのオイルジェットノズル45が設けられているのみであるが、1つのバルブガイド20の近傍に複数のオイルジェットノズル45を設け、1つのバルブガイド20に対して複数のオイルジェットノズル45からオイル48を噴射して供給してもよい。これにより、バルブガイド20の広い範囲にオイル48を吹き付けて供給することができるので、より確実にバルブガイド20の熱をオイル48に対して放熱することができる。従って、軸部15の熱は、より確実にバルブガイド20に対して放熱し易くなり、軸部15の温度上昇を抑制できるので、これに伴いオイルシール30の温度上昇も抑制できる。この結果、より確実にオイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
また、実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置1では、オイルジェットノズル45でオイル48を噴射することによりバルブガイド20にオイル48を供給しているが、オイルジェットノズル45を制御し、オイルジェットノズル45でのオイル48の噴射は、バルブガイド20の温度が高くなりそうな場合にのみ噴射してもよい。例えば、バルブガイド20に温度センサ(図示省略)を設けてバルブガイド20の温度を検出し、バルブガイド20の温度が所定の温度よりも高くなった場合にのみオイルジェットノズル45からオイル48を噴射してもよい。または、オイルジェットノズル45に向かうオイル48の経路におけるオイルジェットノズル45の近傍に、油圧が高くなった場合にのみ開くバルブ(図示省略)を設け、油圧が高くなった場合、即ち、内燃機関の回転数が高くなった場合にのみオイルジェットノズル45にオイル48を供給してオイルジェットノズル45からオイル48を噴射してもよい。
または、内燃機関の運転を制御するECU(Electric Control Unit)(図示省略)から内燃機関の運転状況の情報を取り出し、この運転状況の情報より、バルブガイド20の温度が高くなりそうな場合にのみオイルジェットノズル45からオイル48を噴射してもよい。これらにより、バルブガイド20の温度を低下させる必要がない場合にはオイルジェットノズル45から噴射をしないので、その分、オイルジェットノズル45を作動させる消費電力の低減を図ることができると共に、バルブガイド20の温度を低下させる必要がある場合には、確実にオイルジェットノズル45からオイル48を噴射することができる。これらの結果、消費電力の低減を図ると共に、オイルシール30の熱劣化を抑制することができる。また、これらの制御は、実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置1のみでなく、実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置50や実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置60に適用してもよい。つまり、バルブガイド20の温度が高くなりそうな場合にのみ、オイル通路51、65にオイル52、66が流れるようにしてもよい。
また、上述した中空吸排気バルブ冷却装置1、50、60では、中空吸排気バルブ冷却装置1、50、60が有する中空吸排気バルブの一例として排気バルブ5を説明しているが、本発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置1、50、60が有する中空吸排気バルブは、排気バルブ5以外の中空吸排気バルブでもよく、吸気バルブでもよい。排気バルブ5以外の中空吸排気バルブでも、バルブ面11が燃焼室に面し、中空部16内に熱伝導媒体18を有することにより、当該中空吸排気バルブの軸部15に接触するオイルシール30の温度が上昇する虞がある場合には、本発明を適用することにより、オイルシール30の熱劣化を抑制することができる。
以上のように、本発明に係る中空吸排気バルブ冷却装置は、オイルシールを有する中空吸排気バルブ冷却装置に有用であり、特に、中空吸排気バルブ内に熱伝導媒体が封入された中空部が形成されている場合に適している。
本発明の実施例1に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。
図1の排気バルブが移動した状態を示す図である。
本発明の実施例2に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。
本発明の実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置を示す概略図である。
実施例3に係る中空吸排気バルブ冷却装置の変形例を示す図である。
実施例に係る中空吸排気バルブ冷却装置の変形例を示す図である。
符号の説明
1、50、60 中空吸排気バルブ冷却装置
5 排気バルブ
10 傘部
11 バルブ面
12 斜面
15 軸部
15a 傘部側端部
15b オイルシール側端部
16 中空部
18 熱伝導媒体
20、61 バルブガイド
21、64 バルブガイド接触部
30 オイルシール
31 オイルシール接触部
40 シリンダヘッド
45 オイルジェットノズル
48、52、66 オイル
51、65 オイル通路
62 外周面
63、70 溝部
80 オイル経路
81 冷却水経路
82 ヒータ用冷却水経路
83 熱交換部