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JP2006333850A - 生物粒子分離用基材 - Google Patents

生物粒子分離用基材 Download PDF

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JP2006333850A
JP2006333850A JP2005166039A JP2005166039A JP2006333850A JP 2006333850 A JP2006333850 A JP 2006333850A JP 2005166039 A JP2005166039 A JP 2005166039A JP 2005166039 A JP2005166039 A JP 2005166039A JP 2006333850 A JP2006333850 A JP 2006333850A
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Masaya Sumida
政哉 澄田
Takayuki Kusaka
孝之 草加
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

【課題】簡便、安全、安価且つ短時間操作で生物粒子が入った懸濁液から、生物粒子の分離および/または除去を行うことができる、生物粒子分離用基材やその製造方法の提供。
【解決手段】生物粒子分離用基材の製造方法。(1)陰性荷電または陽性荷電を有する水不溶性の基材表面を調製する工程、(2)前記(1)で調製した基材表面とは逆の荷電を有する重合体の水性溶液に前記(1)で調製した基材を浸漬する工程、(3)荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、生物粒子分離用基材の製造方法、あるいはそれを用いた生物粒子分離フィルターに関する。本発明により製造された生物粒子分離用基材を用いた生物粒子分離フィルターは基礎科学実験用器具や臨床医学における医療器具に用いることができる。
近年、細胞を積極的に活用して、生体の臓器組織の病変および/または欠損を治療する、いわゆる再生医療が大変注目を集めており、世界各国で研究開発が盛んに行われている(たとえば非特許文献1)。通常、これらの細胞が存在する部位には、しばしば不要な夾雑細胞が混在しており、夾雑細胞を除去し有用な細胞を濃縮分離する必要がある。通常、これらの細胞分離にはFicoll-Hypaque等を用いる比重遠心法や抗原抗体反応を利用し、磁性粒子などに固定されたモノクローナル抗体を用いる方法が用いられているが、いずれも操作が煩雑という問題点を有し、また、後者はさらにコスト高、当該抗体が市販されていなければ、新たに抗体を作成しなければならない等の問題点も有する。さらに、通常これらの細胞分離法はクリーンベンチ内で行われるものの、完全開放系の操作のため無菌性に難がありヒトへの臨床応用には安全上、問題を有する。モノクローナル抗体を用いる方法ではさらに、通常、モノクローナル抗体はヒト以外の動物タンパクであることによる安全上の問題点も有する。
一方、これらの問題点を克服するための技術開発も近年、散見されるようになった。たとえば特許文献1では繊維で構成された不織布にカルボキシル基および親水性鎖を導入した担体に、幹細胞の膜表面の抗原に対する抗体を固定化してなる幹細胞分離材が開示されている。確かに、本技術の幹細胞分離材を容器に詰め、フィルターを作成し細胞分離に用いれば操作が煩雑という問題点は解消されるが、抗体を用いるという点でコスト高、安全性という面の問題は未解決である。また特許文献2では平均孔径10〜1000μmの連続気孔を有するポリビニルアセタール樹脂から成ることを特徴とするリンパ球からT細胞を分離回収する細胞分離材が開示されている。本技術は安全性に問題のある抗体を用いず合成高分子を用いるという点で画期的であり、Tリンパ球の分離という点に限って言えば大変優れた技術と言えるが、逆に、Tリンパ球にしか応用できず、他の細胞分離への汎用性の無い技術である。
ところで、輸血医療の分野では、比較的、簡便・安全な操作のため、フィルターを用いた細胞分離技術は発達しており、例えば、特許文献3には疎水性重合性モノマー由来のユニットと塩基性含窒素部分を含む重合性モノマー由来のユニットとプロトン性中性親水性部分を含む重合性モノマー由来のユニットから構成されてなる白血球除去フィルター素材コート用ポリマーが開示されている。同発明はやはり安全性に問題のある抗体を用いず合成高分子を用いるという点では優れているが、なにより白血球の除去にだけに言及したもので、広く細胞一般に通用する製造方法について言及したものではないため、本発明とは全く技術的思想を異にする。また新規機能性ポリマー(ここでは白血球除去用)の発明による技術の最大の問題点は、検討のためにコート用ポリマーとして共重合組成を変化させたものを多種類新たに合成せねばならない点であり、これはコストや労力の点で非常に問題がある。
さらに、特許文献4は、静電荷パターンによる血液、体液等の成分分離方法が記載されており、このなかには、次のことが記載されている;「細胞は、細胞膜上のムコ多糖タンパク質複合体、或いは糖鎖末端のシアル酸などにもとづき、全体として負電荷、上皮細胞系で−30〜−40mVを有することが知られており、基質の荷電状態がその接着と増殖に影響を及ぼすと言われている」(2頁15〜20行)。しかしながら、同発明は、細胞分離材の製造方法に言及したものではなく、特許請求の範囲の「(1)導電性層を介在させて支持体上に光導電性層を形成した感光体と、導電性層を介在させて支持体上に絶縁層を形成した電荷保持媒体とを対向配置し、感光体および電荷保持媒体の導電性層間に電圧を印加しながら感光体側から画像露光を行って電荷保持媒体に画像状に電荷を蓄積させ、電荷保持媒体の電荷パターンに応じて細胞を増殖させることにより成分分離を行うことを特徴とする静電荷パターンによる血液、体液等の成分分離方法。」という記載から分かるように新規な細胞分離方法に関する発明であり、本発明のような細胞分離用基材の製造方法については一切記載が無く、技術思想は全く異なる。
一方、陽性荷電を有する高分子電解質と陰性荷電を有する高分子電解質を反応させて生成する高分子電解質錯体は医学・生物学の分野では古くから用いられており、たとえば、非特許文献2には糖尿病治療のための人工膵島用に、陽性荷電を有する高分子電解質たるポリ−L−リジンと、陰性荷電を有する高分子電解質たるアルギン酸を反応させて作成した免疫隔離膜が開示されているが、本技術は移植された細胞(この場合は膵島)を免疫反応から遮蔽するために細胞をマイクロカプセル化するためのものであり、細胞分離基材とは一切関係が無い。また、特許文献5には陽性荷電を有する高分子電解質たるキトサンに陰性荷電を有する高分子電解質たるセルロース誘導体を反応させて作成した細胞培養基材が開示されている。そして、明細書には以下の記載がある(ここでPECとは高分子電解質錯体polyelectrolyte complexの略である)「本発明においては、キトサンとセルロース誘導体との組合せや配合比を変化させることにより、生成するPECの荷電バランスを容易に変更し、調整することができる。即ち、種々の荷電バランスを有するPECを用いることで、細胞培養基材の表面電荷を調整し、その使用条件に従って表面特性を適宜選択することが可能となる」。これは本発明にも一部取り入れられている考え方であるが、同発明では細胞培養基材への言及のみで、細胞分離基材への応用の言及は見あたらない。

特開平08-033708号公報 特開平02-227070号公報 WO2003/011924(再表03/011924)号公報 特開平02-245182号公報 特開平06-277038号公報 (株)シーエムシー出版、「再生医療工学の最先端」、2002年 (株)化学同人、「化学フロンティア3 再生医工学」、2001年
本発明の目的は、簡便で安全な細胞など生物粒子の分離を行うための生物粒子分離用基材の簡便で低コストの製造方法及びそれを用いた生物粒子分離フィルターを提供することにある。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を進めた。まずは、安全性に問題のある抗体を用いることなく人工物を用いることをあらかじめ決定し、その人工物の中でも、生物粒子表面の荷電差を認識する材料を用いることを次に決定した。ここで、本発明者らは荷電を有する官能基の組み合わせを検討し、新規重合体の設計・合成を行い、生物粒子分離用基材を作成するという従来の常套手段では、簡便な製造方法に到達できないと考え、さらに検討を重ねた。その結果、生物粒子分離用基材においては前例の無い技術である高分子電解質錯体の利用に到達し、実際に同方法で種々の表面荷電を有し、電荷に応じた種々の生物粒子分離挙動を有する生物粒子分離用基材の作成に成功し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は
(1)下記の工程を順次行うことを特徴とする、生物粒子分離用基材の製造方法。(a)陰性荷電または陽性荷電を有する水不溶性の基材表面を調製する工程、(b)前記(a)で調製した基材表面とは逆の荷電を有する重合体の水性溶液に前記(a)で調製した基材を浸漬する工程、(c)荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する工程
(2)さらに(c)の工程の終了後に、(d)前記(b)の工程に用いた重合体とは逆の荷電を有する重合体の水溶液に浸漬、(e)荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する工程を行う(1)に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
(3)(d)及び(e)の工程を複数回繰り返すことを特徴とする(2)に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
(4)前記(a)で調製する基材表面の荷電が陰性荷電であることを特徴とする(1)に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
(5)前記(a)で調製する基材表面の荷電が陽性荷電であることを特徴とする(2)に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
(6)(1)から(4)のいずれかに記載の方法によって製造される生物粒子分離用基材であって、陽性荷電を有する重合体が、ポリイオンコンプレックスを形成して基材表面上に結合しており、且つ、コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−200μ当量/m2 〜+100μ当量/m2であることを特徴とする、生物粒子分離用基材。
(7)コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−30μ当量/m2 〜 +10μ当量/m2であることを特徴とする、(6)に記載の生物粒子分離用基材。
(8)液体導入口と液体導出口を有する容器内に(6)または(7)に記載の生物粒子分離用基材を収納した生物粒子分離フィルター
(9)生物粒子含有液を、(8)に記載の生物粒子分離フィルターで濾過することを特徴とする生物粒子の分離方法
である。
本発明によれば、簡便で安全な生物粒子の分離を行うための生物粒子分離用基材の簡便、低コストな製造方法を提供することが出来る。
本発明について以下、具体的に説明する。
本発明でいう生物粒子分離用基材とは、生物粒子の分離に用いる材料のことであるが、ここでいう生物粒子とはヒトや動物の細胞(細菌や真菌を含む)とウイルスのことを言う。また、生きている細胞やウイルスに限らず、死細胞や不活性化したウイルスやそれらの断片(たとえば細胞の断片であるDNAや細菌の断片であるリポ多糖)も含まれる。本発明でいう細胞の例は以下のものがあげられるがこれらに限定されるものではない。有核細胞、単核球、多核細胞、白血球、赤血球、顆粒球、好中球、好塩基球、好酸球、骨髄球、赤芽球、リンパ球、Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、サプレッサーTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、NKT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、造血幹/前駆細胞(以下、造血幹細胞と略す)、線維芽細胞、軟骨芽細胞、間葉系幹/前駆細胞(stroma stem cellまたはmesenchymal stem cell)、巨核球、血小板、脂肪細胞、肝実質細胞、肝非実質細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、内分泌細胞、外分泌細胞、膵β細胞、膵α細胞、膵δ細胞、膵PP細胞、腎メサンギウム細胞、腎尿細管細胞、腎糸球体細胞、神経細胞、成人幹細胞(SP細胞、MAPCなど)、ES細胞、各種腫瘍細胞などがあげられる。また、単一の細胞だけでなく、細胞の集合体、たとえば内分泌細胞の集合体である膵島も含まれる。
本発明でいう生物粒子の分離とは、少なくとも一種類以上の生物粒子を含有する生物粒子含有液から、所望の生物粒子を分離回収することまたは除去することを言う。所望の生物粒子は一種類の場合と複数種の場合がある。生物粒子含有液の例としては生体由来か否かで分けられる。生体由来の例としては骨髄、臍帯血(臍帯血だけでなく胎盤血管から採取されたものも含む)、末梢血(顆粒球コロニー刺激因子等の造血因子を投与して採血されたものも含む)およびこれらに遠心分離、培養(分化誘導、増幅)、凍結解凍、遺伝子導入等の何らかの処理を施したもの、あるいは膵臓、肝臓、腎臓、心臓、胃、腸、脾臓等の各種臓器や筋肉、血管、骨、皮膚等の各種組織から酵素消化法等により抽出した細胞を何らかの液体に再浮遊したもの及びこれらに何らかの前述の処理を施したものがあげられる。
また生体由来でないものの例としては、たとえば細胞が産生する有用物質を用いて医薬品や食品などを生産する場合、細胞が産生する有用物質を含む溶液があげられる(特に、細菌、真菌、ウイルスが分離対象はこの場合が多い。この場合、細菌、真菌、ウイルスなどの生物粒子が含有されているかどうかは明らかではないが、ここでは生物粒子含有液として扱う)。したがって、生物粒子の分離に用いる材料、すなわち、本発明で言う生物粒子分離用基材とは、生物粒子含有液に含まれる生物粒子に接触し分離動作を実現する材料のことを言う。また、生物粒子分離動作の形式としては、所望の生物粒子を吸着させ、それ以外の生物粒子を吸着させずに通過させ、その後、吸着している所望の生物粒子を何らかの方法により回収するものと、不要な生物粒子を吸着させ、それ以外の生物粒子(所望の生物粒子を含む)を通過させて回収するものの両方を含む。
本発明による製造方法においてはまず、陰性荷電または陽性荷電を有する水不溶性の基材表面を調製するが、この調整法としては、陰性荷電または陽性荷電を有する材料そのものにより基材を作成する方法または、原料基材そのものを構成している材料は陰性荷電または陽性荷電を有しないが、何らかの表面処理により陰性荷電または陽性荷電を導入する方法がある。前者の例としては、陰性荷電であれば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基を含有するモノマーから重合された重合体やこれらの基を含有する天然高分子、陽性荷電であれば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イミノ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基を含有するモノマーから重合された重合体やこれらの基を含有する天然高分子があげられる。また、後者の例としては、たとえば、ポリエチレンのような、陰性荷電も陽性荷電も有しない重合体上にグラフト重合やシランカップリング剤、硫化水素ガスや塩化水素ガスなどによる化学的処理、プラズマ処理やコロナ処理による物理的処理により表面を陰性荷電または陽性荷電に改質することがあげられる。次に、ここで調製した基材表面とは逆の荷電を有する重合体の水溶液に基材を浸漬する。
逆の荷電を有する重合体とは、たとえば、最初に調製した基材表面が陰性荷電を有していたら、ここで用いる重合体は陽性荷電、最初に調製した基材表面が陽性荷電を有していたら、ここで用いる重合体は陰性荷電という具合である。陰性荷電を有する重合体の例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸基を含有するモノマーから重合された重合体やこれらの基を含有する天然高分子があげられる。
また、陽性荷電を有する重合体の例としては1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イミノ基、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基を含有するモノマーから重合された重合体やこれらの基を含有する天然高分子があげられる。これらの重合体は水性溶液にして前記の基材を浸漬するのであるが、ここでいう水性溶液とは、少なくとも50重量%は水を溶媒として含むものをいう。また、均一の溶液が得られるならば有機溶媒を含んでも良い。さらに必要に応じ、水溶性の無機物質、有機物質を添加してもよい。たとえば、キトサンは純水には不溶であるので塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸やクエン酸、酢酸、リンゴ酸などの有機酸を水に添加して溶解させ水性溶液とする。本発明による製造方法においては次に荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する。ここで、荷電を有する重合体を含まない水性溶液としては、純水が一般的に用いられるが、洗浄のため必要に応じ非イオン性の界面活性剤などの水溶性物質を含有した溶液でも良い。
本発明による製造方法においては、必要に応じ、その後、さらなる浸漬工程を繰り返してもよい。たとえば、最初に陰性荷電表面を有する基材を調製し、そこに前記基材の表面とは逆の荷電たる陽性荷電を有する重合体の水性溶液に浸漬し、荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄した後に、浸漬した重合体とは逆の荷電たる陰性荷電を有する重合体の水溶液に浸漬し、荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄するという具合である。これらは必要に応じ複数回繰り返してもよい。複数回繰り返すことの長所としては積層により膜厚が厚くなり強固になることが考えられるが、一方で、操作を繰り返すことで煩雑になるので、適宜選択する。
次に本発明による生物粒子分離用基材について説明する。本発明の製法方法では最表面が陰性荷電を有する生物粒子分離用基材と陽性荷電を有する生物粒子分離用基材の両方を簡便に製造することができるが、中でも最表面の形成に用いる重合体は陽性荷電を有する重合体である場合が、より好ましいと考えている。この場合、陽性荷電を有する重合体はいわゆるポリイオンコンプレックスを形成して基材表面(複数積層をしない場合は陰性荷電を有する最初の基材、複数積層をする場合は直近に陰性荷電を有する重合体の浸漬により形成した表面)と結合しているが、ここでいうポリイオンコンプレックスとは陰性荷電を有する重合体と陽性荷電を有する重合体がイオン結合により結合して形成される水不溶性の物質を言う。また、本発明においてポリイオンコンプレックス(polyioncomplex:PIC)と高分子電解質錯体(polyelectrolyte complex:PEC)は同様の意味として用いる。
本発明による生物粒子分離用基材の表面荷電はコロイド滴定法により測定した時に表面荷電が−200μ当量/m2〜+100μ当量/m2であることが好ましく、より好ましくは−30μ当量/m2〜+10μ当量/m2 である。ここでいうコロイド滴定法とは、1946年に寺山により創案された高分子電解質の滴定法である。その原理は陽性荷電を有する重合体と陰性荷電を有する重合体がイオン会合し、瞬時に複合体(前述のポリイオンコンプレックス)を形成することに基づいている。滴定の終点検出には、陽性荷電重合体の標準物質としては塩化ポリジアルジメチルアンモニウム、陰性荷電重合体の標準物質としてはポリビニル硫酸カリウムが使用されることが多い。たとえば、1/400 Nの塩化ポリジアルジメチルアンモニウム溶液を、1/400 Nのポリビニル硫酸カリウム標準液で滴定すると、徐々に白濁し、滴定の終点では指示薬として加えたトルイジンブルーが青色から赤紫色に変色する。TBは陽性荷電色素であり、液性が陽性荷電コロイドである限り、元の青色を保っているが、滴定終点でポリビニル硫酸カリウムが一滴でも過剰になると、陰性荷電コロイドに吸着され赤紫色に鋭敏に変色する。この原理により、荷電量を測定するものである。
本発明による生物粒子分離用基材の荷電量を規定するにはコロイド滴定法のほかにも、ゼータ電位測定装置や電気泳動装置を用いる方法などがあるが、本発明者らは、特別な装置を必要としない、不織布や粒子といった材料表面の性状に左右されず測定できる、という理由で、コロイド滴定法が最も好ましいと考えている。
陽性荷電を有するとは、有機溶媒の含有量が50%未満の水溶液、および湿度10%RHから100%RHの通常大気中において、動物細胞が生存できるpHすなわちpHが5〜10、より望ましくはpHが6.5〜8.5の範囲において重合体の荷電が陽性である状態をいう。該水溶液中には塩化ナトリウムなどの無機塩類が存在していてもかまわない。陰性荷電を有するとは上述の条件に置いて重合体の荷電が陰性である状態をいう。
本発明において、不織布表面の理論的実効表面積の算出方法は、不織布を構成する繊維を円柱と仮定した場合の表面積であり、以下の式[式1]で示される。

実効表面積(m2/g)= 4 / 不織布素材の比重(d)×不織布平均繊維径(μm) [式1]
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
(陽性荷電を有する重合体の調整)
N,N,N',N-tetramethylethylenediamine(2.32g,20mmol)と、α-α'-dichloro-p-xylene(3.50g,20mmol)をDMSO 100mlに溶解し室温で12時間撹拌した。得られた白色沈殿をグラスフィルターでろ別し、アセトンで洗浄後、減圧乾燥することによって第4級アンモニウム基含有重合体であるpoly[(dimethylimino)ethylene(dimethylimino)methylene-1,4-phenylenemethylenedichloride] (以下、重合体1と表記)4.37gを得た。この重合体1の分子量はNMRより重合末端のプロトン量を求め、Mw=12,500であった。
ジメチルアミノエチルメタクリレート:DMAEMA(6.29g,40mmol)をエタノール20gに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル:AIBN(33mg,0.20mmol)を添加し氷冷下溶解させながら、容器内をアルゴン置換した。容器を密栓後70℃で8時間反応した。反応液を多量のn−ヘキサンに加え生じた沈殿を減圧下乾燥し、第3級アミノ基含有単独重合体であるポリジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、重合体2と表記)4.70gを得た。この重合体2の分子量はPMMA換算でMw=88,000であった。
上記と同様にジメチルアミノエチルメタクリレート:DMAEMA(6.29g,40mmol)をエタノール20gに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル:AIBN(2mg,0.01mmol)を添加し氷冷下溶解させながら、容器内をアルゴン置換した。容器を密栓後70℃で8時間反応した。反応液を多量のn−ヘキサンに加え生じた沈殿を減圧下乾燥し、第3級アミノ基含有単独重合体であるポリジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、重合体3と表記)4.70gを得た。この重合体3の分子量はPMMA換算でMw=500,000であった。
(生物粒子分離用基材の作製)
ポリプロピレン不織布P03040(旭化成せんい社製、平均繊維系20μm)を特開平3−269160に記載のスルホン化装置を用いてSO3ガスによりスルホン酸基を表面に導入した。このときのスルホン酸の含有量は、蛍光X線分析装置により全硫黄(S)量として、0.54%であった。このスルホン化ポリプロピレン不織布を、1N NaOH液に30分浸漬し表面のスルホン酸基をNa型とした。脱イオン水で6回洗浄後、洗浄液のpHが中性であることを確認してから、終濃度0.2wt%になるように重合体1を脱イオン水に溶解しpH=6〜8の間に調整した水溶液に浸漬し、室温で1時間反応した。脱イオン水で4回洗浄後、該不織布を凍結乾燥することによって、陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材を製造した。
(コロイド滴定法による基材表面荷電の定量)
実施例2ようにして作製した生物粒子分離用基材を12mmφに打ち抜き、透明な試験管に入れ、1/4000 Nに調整した標準ポリカチオン液polydiallyldimethylammoniumchloride:PDAC(和光純薬)を1ml添加後、トルイジンブルー指示薬液(和光純薬)30μlを加えた。1/4000 Nに調整した標準ポリアニオン液potassiumpolyvinylsulfate:PVSK(和光純薬)にて滴定を行った。滴定の終点はトルイジンブルーの液の色が青色から赤紫色に変化したところとした。PVSK液の滴定量と予め添加したPDAC液の差異から、本発明の生物粒子分離用基材12mmφの表面荷電を算出し、更に不織布表面の理論的実効表面積当たりで規格化することによって、基材表面荷電を定量化した。実施例2のスルホン化ポリプロピレン不織布の表面荷電は−51.18μ当量/m2であり、更に実施例2で作製した陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材の表面荷電は−13.72μ当量/m2であった。
(生物粒子分離用基材充填フィルターの作製)
実施例2ようにして作製した生物粒子分離用基材を直径8.5mmに打ち抜き、2.5mlのシリンジ筒(テルモ社製)に10枚重ねて充填することによって、液体導入口と液体導出口を有する容器内に生物粒子分離用基材を収納した。以上の操作によって生物粒子分離用基材充填フィルターを作製した。
(線維芽細胞除去実験)
NIH-3T3(ATCC:CRL-1658;マウス株化線維芽細胞)、HEPES-NaOH(20mM)(Sigma社製)、ペニシリン−ストレプトマイシン(米国、GIBCO-BRL社製)、および10%のFBS(GIBCO-BRL社製)を含むDMEM培地(pH7.4)(GIBCO BRL社製11995-065)で継代培養した。実験時は組織培養用dish上の両細胞を、生理的リン酸緩衝食塩液pH=7.4 (以下PBS(-)と記載)で洗浄後、37℃に保温した0.05%トリプシン−0.53mM EDTA-4Na液(以下:トリプシン液と記載;GIBCO-BRL社製)を添加し、タンパク分解酵素であるトリプシン消化条件を(2min ; 37℃)処理した。その後、血清(FBS)含有培地を添加することによって、トリプシンの作用を止め、さらにピペットによる水流(以下ピペッティングと記載)で組織培養用dish底面の細胞を剥離し回収した。
上記で作製したフィルターに、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を10%FBS入りDMEM培地に懸濁した細胞懸濁液(5×10E5 cells/ml) 2.5mlずつを自然落下により通液し、そのフィルター通過液を回収した。このフィルターに要した時間は1分未満であり、重力による落下という簡便な方法且つ短時間で処理することが可能であった。
フィルター通過前後の細胞数をCyQUANT(モレキュラープローブ社)により、説明書に従って算出した。これをもとに算出した細胞の除去率は、陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターで73.2%であった。比較のために重合体1を表面に固定化していない、スルホン化ポリプロピレン不織布を充填したフィルターで同様の実験を行ったものでは、24.7%であった。 このように本発明の陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターにより、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を効果的に除去出来ることが明らかとなった。また、実施例3の表面荷電の定量値と併せて考えると、コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−30μ当量/m2 〜+10μ当量/m2であることを特徴とする、生物粒子分離用基材が特に好ましいことが明らかとなった。
(非線維芽細胞除去実験)
RINr細胞(ラット膵島腫瘍由来株化インスリノーマ細胞;参考文献:Proceedings National Academy of Science, USA 77(6) p3519-3523)は、HEPES-NaOH(20mM)(Sigma社製)、ペニシリン−ストレプトマイシン(GIBCO-BRL社製)、および5%のFBS(GIBCO-BRL社製)を含むRPMI1640培地(pH7.4)(SIGMA社製R-8758)で継代培養した。実験時は組織培養用dish上の細胞をPBS(−)で洗浄後、37℃に保温したトリプシン液で2分間処理後、血清(FBS)含有培地を添加することによって、トリプシンの作用を止め、ピペッティングを行い組織培養用dish底面の細胞を剥離し回収した。
実施例4で作製した生物粒子分離用基材充填フィルターに、RINr細胞を10%FBS入りDMEM培地に懸濁した細胞懸濁液(5×10E5 cells/ml) 2.5mlずつを自然落下により通液し、そのフィルター通過液を回収した以外は実施例4と全く同様に操作を行った。
これをもとに算出した細胞の除去率は、陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターで29.6%であった。また、重合体1を表面に固定化していない、スルホン化ポリプロピレン不織布を充填したフィルターで同様の実験を行ったものでは、17.9%であった。このように本発明の陽性荷電を有する重合体1がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターでは、線維芽細胞ではない、インスリノーマ細胞であるRINr細胞を実質的に除去しない。これは実施例4の結果と併せ、線維芽細胞とインスリノーマ細胞との分離選択性が認められることを示しており、本発明の生物粒子分離用基材は、2種類の細胞を含む細胞懸濁液からの生物粒子の分離に、有用であることが明らかとなった。
(生物粒子分離用基材の作製)
実施例2と同様に、ポリプロピレン不織布P03040(旭化成せんい社製、平均繊維系20μm)を特開平3−269160に記載のスルホン化装置を用いてSO3ガスによりスルホン酸基を表面に導入した。このスルホン化ポリプロピレン不織布を、1N NaOH液に30分浸漬し表面のスルホン酸基をNa型とした。脱イオン水で6回洗浄後、洗浄液のpHが中性であることを確認してから、終濃度0.2wt%になるように、実施例1で作製した第3級アミノ基含有単独重合体である、重合体2または重合体3を脱イオン水に溶解しpH=6〜8の間に調整した水溶液に浸漬し、室温で1時間反応した。脱イオン水で4回洗浄後、該不織布を凍結乾燥することによって、陽性荷電を有する重合体2または重合体3がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材を製造した。
(コロイド滴定法による基材表面荷電の定量)
実施例6で作製した、生物粒子分離用基材を12mmφに打ち抜き、透明な試験管に入れ、実施例3と同様にコロイド滴定法により、基材表面荷電を定量化した。実施例6で作製したスルホン化ポリプロピレン不織布の表面荷電は−34.98μ当量/m2であり、実施例6で作製した陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材の表面荷電は-4.58μ当量/m2であり、更に陽性荷電を有する重合体3がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材の表面荷電は−8.02μ当量/m2であった。
(生物粒子分離用基材充填フィルターの作製)
実施例4と同様にして、実施例6で作製した生物粒子分離用基材を直径8.5mmに打ち抜き、2.5mlのシリンジ筒(テルモ社製)に10枚重ねて充填することによって、液体導入口と液体導出口を有する容器内に生物粒子分離用基材を収納した。以上の操作によって生物粒子分離用基材充填フィルターを作製した。
(線維芽細胞除去実験)
実施例4と同様に、上記で作製したフィルターに、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を10%FBS入りDMEM培地に懸濁した細胞懸濁液(5×10E5 cells/ml) 2.5mlずつを自然落下により通液し、そのフィルター通過液を回収した。フィルター通過前後の細胞数をCyQUANT(モレキュラープローブ社)により、説明書に従って算出した。これをもとに算出した細胞の除去率は、陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターで98.9%であり、陽性荷電を有する重合体3がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材充填フィルターで98.6%であった。比較のために、重合体2も重合体3も、いずれも表面に固定化していない、スルホン化ポリプロピレン不織布を充填したフィルターで同様の実験を行ったものでは、19.7%であった。このように陽性荷電を有する重合体2または重合体3がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された、本発明の生物粒子分離用基材充填フィルターにより、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を効果的に除去出来ることが明らかとなった。また、実施例1の各重合体の分子量の値と併せて考えると、ポリイオンコンプレックス化させるための、重合体の分子量は分離性能に影響しないことが明らかとなった。また、実施例7の表面荷電の定量値と併せて考えると、コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−30μ当量/m2 〜+10μ当量/m2であることを特徴とする、生物粒子分離用基材が特に好ましいことが明らかとなった。
(生物粒子分離用基材の作製)
実施例2と同様に、ポリプロピレン不織布P03040(旭化成せんい社製、平均繊維系20μm)を特開平3-269160に記載のスルホン化装置を用いてSO3ガスによりスルホン酸基を表面に導入した。このスルホン化ポリプロピレン不織布を、1N NaOH液に30分浸漬し表面のスルホン酸基をNa型とした。脱イオン水で6回洗浄後、洗浄液のpHが中性であることを確認してから、終濃度がそれぞれ0.2wt%,0.04wt%,0.008wt%,0.0016wt%,になるように、実施例1で作製した第3級アミノ基含有単独重合体である、重合体2を脱イオン水に溶解しpH=6〜8の間に調整した水溶液に浸漬し、室温で1時間反応した。脱イオン水で4回洗浄後、該不織布を凍結乾燥することによって、陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化され、かつ表面荷電のことなる一連の生物粒子分離用基材を製造した。これらの基材を以下順に、それぞれ、重合体2−0.2wt%, 重合体2−0.04wt%、 重合体2−0.008wt%, 重合体2−0.0016wt%と表記する。
(コロイド滴定法による基材表面荷電の定量)
実施例9で作製した、生物粒子分離用基材を12mmφに打ち抜き、透明な試験管に入れ、実施例3と同様にコロイド滴定法により、基材表面荷電を定量化した。実施例9で作製したスルホン化ポリプロピレン不織布の表面荷電は−30.24μ当量/m2であり、実施例9で作製した陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された生物粒子分離用基材の表面荷電は、重合体2−0.2wt%が−0.25μ当量/m2であり、重合体2−0.04wt%が−0.73μ当量/m2であり、 重合体2−0.008wt%が−3.89μ当量/m2であり、 重合体2−0.0016wt%が−15.08μ当量/m2であった。
(生物粒子分離用基材充填フィルターの作製)
実施例4と同様にして、実施例9で作製した生物粒子分離用基材を直径8.5mmに打ち抜き、2.5mlのシリンジ筒(テルモ社製)に10枚重ねて充填することによって、液体導入口と液体導出口を有する容器内に生物粒子分離用基材を収納した。以上の操作によって生物粒子分離用基材充填フィルターを作製した。
(線維芽細胞除去実験)
実施例4と同様に、上記で作製したフィルターに、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を10%FBS入りDMEM培地に懸濁した細胞懸濁液(5×10E5 cells/ml) 2.5mlずつを自然落下により通液し、そのフィルター通過液を回収した。フィルター通過前後の細胞数をCyQUANT(モレキュラープローブ社)により、説明書に従って算出した。これをもとに算出した細胞の除去率は、陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された、一連の生物粒子分離用基材充填フィルターである、重合体2−0.2wt%で90.1%であり, 重合体2−0.04wt%で88.9%であり, 重合体2−0.008wt%で84.7%であり, 重合体2−0.0016wt%で71.5%であった。比較のために、重合体2を表面に固定化していない、スルホン化ポリプロピレン不織布を充填したフィルターで同様の実験を行ったものでは、10.5%であった。
(非線維芽細胞除去実験)
実施例5と同様にしてインスリノーマ細胞であるRINr細胞での細胞分離実験を行った。実施例11で作製した生物粒子分離用基材充填フィルターに、RINr細胞を10%FBS入りDMEM培地に懸濁した細胞懸濁液(5×10E5 cells/ml) 2.5mlずつを自然落下により通液し、そのフィルター通過液を回収した以外は実施例11と全く同様に操作を行った。
細胞の除去率は、陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された、一連の生物粒子分離用基材充填フィルターである、重合体2−0.2wt%で30.6%であり、 重合体2−0.04wt%で37.9%であり、 重合体2−0.008wt%で57.1%であり、 重合体2−0.0016wt%で12.2%であった。比較のために、重合体2を表面に固定化していない、スルホン化ポリプロピレン不織布を充填したフィルターで同様の実験を行ったものでは、7.1%であった。
このように陽性荷電を有する重合体2がポリイオンコンプレックスによって表面に固定化された、一連の表面荷電の生物粒子分離用基材充填フィルターにより、線維芽細胞であるNIH-3T3細胞を効果的に除去出来ることが実施例11で明らかとなった。これに加え実施例12では、線維芽細胞ではないインスリノーマ細胞であるRINr細胞も、本発明の製造方法を用いることによって、表面荷電を変化させ、RINr細胞に最適な細胞分離挙動をしめす生物粒子分離用基材を簡便に創出しうることが明らかとなった。このように本発明は、対象とする生物粒子毎に最適な表面荷電の基材を簡便・安全・安価・迅速に提供できる。
また、実施例10の表面荷電の定量値と併せて考えると、コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−30μ当量/m2 〜 +10μ当量/m2であることを特徴とする、生物粒子分離用基材が特に好ましいことが明らかとなった。
本発明による生物粒子分離用基材は基礎科学における実験用器具や臨床医学、さらには産業用のプロセスフィルターに用いられる。特定の生物粒子が分離された細胞懸濁液は、そのまま、または必要に応じて、さらなる分離精製(洗浄を含む)、培養、活性化、増幅、遺伝子導入、凍結保存等の処理が施された後、生体への移植や細胞生物学や免疫学等の基礎科学実験に用いられる。あるいはウイルスや細菌などを含む、有用タンパク質含有液などから生物粒子を除去することによって、安全性の高い医薬品等の製造に使用することが出来る。

Claims (9)

  1. 下記の工程を順次行うことを特徴とする、生物粒子分離用基材の製造方法。(1)陰性荷電または陽性荷電を有する水不溶性の基材表面を調製する工程、(2)前記(1)で調製した基材表面とは逆の荷電を有する重合体の水性溶液に前記(1)で調製した基材を浸漬する工程、(3)荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する工程
  2. さらに(3)の工程の終了後に、(4)前記(2)の工程に用いた重合体とは逆の荷電を有する重合体の水溶液に浸漬、(5)荷電を有する重合体を含まない水性溶液で基材を洗浄する工程を行う請求項1に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
  3. (4)及び(5)の工程を複数回繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の
    生物粒子分離用基材の製造方法
  4. 前記(1)で調製する基材表面の荷電が陰性荷電であることを特徴とする請求項1に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
  5. 前記(1)で調製する基材表面の荷電が陽性荷電であることを特徴とする請求項2に記載の生物粒子分離用基材の製造方法
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の方法によって製造される生物粒子分離用基材であって、陽性荷電を有する重合体が、ポリイオンコンプレックスを形成して基材表面上に結合しており、且つ、コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−200μ当量/m2 〜+100μ当量/m2であることを特徴とする、生物粒子分離用基材。
  7. コロイド滴定法により表面荷電を測定した時の表面荷電が−30μ当量/m2 〜+10μ当量/m2であることを特徴とする、請求項6に記載の生物粒子分離用基材。
  8. 液体導入口と液体導出口を有する容器内に請求項6または7に記載の生物粒子分離用基材を収納した生物粒子分離フィルター
  9. 生物粒子含有液を、請求項8に記載の生物粒子分離フィルターで濾過することを特徴とする生物粒子の分離方法


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