〔本発明の第一の実施の形態〕
以下、本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機を図1から図5に基づいて説明する。図1は本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機を外観斜め上方より見た概略図、図2は側方より見た概略縦断面図、図3は水槽の筒形状の軸方向(図2のC.L.に平行な方向)より見た水槽内部の構成を示す概略縦断面図、図4は正面より見た水槽の支持構造を示す概略縦断面図、図5は上方より見た概略横断面図を示す。
本発明の第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図1に示すように、その外観面を構成する外箱1を備えている。この外箱1は、その上面が天板2、その下部が底台3にて構成されるとともに、前後左右面を成す胴部4を備えている。天板2は、その後方側に一段低くした段部2aを設けており、この段部2aには後述する水道水給水口9および風呂水給水口10が配されている。また、図2に示すように、天面2の裏側(外箱1の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部には、後述するサスペンション52、53、54の一端が連結される金属製の板材よりなるサスペンション取付部17が設けられる。
底台3は、水平断面形状が略矩形状を有し、その上部を構成する胴部4に対して前後左右方向のそれぞれの面がドラム式洗濯機本体の内側方向に向けて一段小さくなるように構成される。底台3の底面下側には、設置の際に床面と接触してドラム式洗濯機を支持する脚3aが、略矩形状の底台3のそれぞれの頂点近傍に取り付けられる。また、底台3の底面上側には、図4に示すように、後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部18、19が配される。図4に示すように、ダンパー取付部18は左側、ダンパー取付部19は右側となるように配されており、側方より見てダンパー取付部18およびダンパー取付部19が同じ位置となるように構成される。なお、図2にはダンパー取付部18の符号に対してダンパー取付部19の符号が括弧書きにて示されているが、これは図示の方向である側方より見てダンパー取付部18およびダンパー取付部19が同じ位置に取り付けられることを示しており、これ以降、図面に示される括弧書きでない符号および括弧書きの符号が同じ位置を指している場合は、図示する方向より見てそれらの符号の構成が同じ位置に設けられることを示す。
胴部4は、図5に示すように、水平断面形状が略矩形状を有し、その前面側は、図2に示すように、上方に向かうにつれて鉛直面に対して後方側へと面が傾斜するように側面から見て略円弧形状に構成される。胴部4の前面側には、図1に示すように、外箱1内外を連通する外箱開口部4aと、洗剤、漂白剤および柔軟剤を収容する洗剤ケース6と、操作キーや表示部を有する操作パネル7とが設けられる。
外箱開口部4aは、胴部4にヒンジ(図示せず)で回動自在に取り付けられた開閉扉5で開閉されるようになっている。洗剤ケース6は、胴部4内側に設けられる図示しない容器を備え、胴部4の外箱開口部4aの上方左部に前後方向にスライド自在に配される。操作パネル7は、洗剤ケース6の右側である胴部4の外箱開口部4aの上方右部に設けられており、使用者の操作により各種設定や運転指示を入力することができる。
ドラム式洗濯機の内部側である操作パネル7の背面側には、図2に示すように、ドラム式洗濯機の動作を制御する制御回路8が配置される。制御回路8は、その図示しない記憶手段に記憶された“標準コース”や“毛布コース”、“ドライコース”といった運転プログラムを適宜、使用者が設定することにより洗い工程、すすぎ工程、脱水運転(及び乾燥工程)までを連続して若しくは各々の工程を単独で行うようにドラム式洗濯機各部の動作を制御する。
天板2の後方側の一段低くした段部2aには、図2に示すように、市水を供給する蛇口(図示せず)からの水をドラム式洗濯機内へと給水する水道水給水口9と、風呂の水をドラム式洗濯機内へと給水する風呂水給水口10とを備えている。水道水給水口9より供給された市水は、給水パイプ11、洗剤ケース6およびこの洗剤ケース6を備える給水容器12、給水容器12と後述する水槽20とを接続する給水ダクト13を経て、水槽20内に流入する。給水パイプ11には、給水弁14が設けられており、この給水弁14を制御回路8からの制御に基づき開閉動作させることにより水槽20内への市水の供給の制御がなされる。給水ダクト13は、例えばナイロンやゴム等の可撓性を有する材質により成り、水槽20の振動を外箱1に伝えにくい構成とされる。また、風呂水給水口10より吸引された風呂水は、風呂水パイプ15、洗剤ケース6およびこの洗剤ケース6を備える給水容器12、給水容器12と水槽20とを接続する給水ダクト13を経て、後述する水槽20に流入する。風呂水パイプ15には、風呂水ポンプ16が設けられており、この風呂水ポンプ16を制御回路8からの制御に基づき駆動または停止させることにより水槽20内への風呂水の供給の制御がなされる。
外箱1の内部には、図2に示すように、有底の筒形状を有する水槽20が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽20は、図3に示すように、その筒形状の軸方向(図2のC.L.に平行な方向)より見て上部側周壁は円筒状を有するとともに下部側周壁の一部が外径側に突出するように形成される。水槽20は、その軸方向に対して前方側を成す前部21と、水槽20の軸方向に対して後方側を成す後部22とをネジ29にて結合させて構成される。前部21には、その上方外周面に後述するサスペンション52、53の一端が連結されるサスペンション取付部23、24が設けられる。図5に示すように、サスペンション取付部23は左側、サスペンション取付部24は右側となるように配される。また、図2に示すように、サスペンション取付部23および24は水槽20の最上部よりも低い位置に配されるとともに側方より見て同じ位置となるように構成される。後部22には、図5に示すように、上方外周面の後方側中央部に後述するサスペンション54の一端が連結されるサスペンション取付部25が設けられる。また、後部22には、図4に示すように、下方外周面に後述するダンパー50、51の一端が連結されるダンパー取付部26、27が配される。図4に示すように、ダンパー取付部26は左側、ダンパー取付部27は右側となるように配されており、側方より見てダンパー取付部26およびダンパー取付部27が同じ位置となるように構成される。
また、前部21には、図2に示すように、外箱開口部4aに対向して開口する水槽開口部21aが設けられる。水槽開口部21aには、外箱開口部4aとの間にそれぞれの開口を相互に水密に連結させるドアパッキン28が取り付けられる。ドアパッキン28は、蛇腹部28aを備え、水槽20の振動を外箱1に伝えにくいようになっている。これにより、開閉扉5を閉じた際には開閉扉5とドアパッキン28のシール部28bとが水密に密着して、水槽20内の液体が外箱開口部4aより漏れ出ることを防止できる。水槽20の上側中央部には、給水ダクト13が接続されており、この給水ダクト13を介して水道水給水口9および風呂水給水口10からの給水が水槽20内へと流入する。
一方、水槽20の下側後方部にある床面からの高さが最も低い箇所には、図2に示すように、水槽20内の水や洗濯液等の液体を水槽20の外部へと排出するための排水ダクト30が接続される。この排水ダクト30は、水槽20内から流れて来た液体中の糸屑を除去するフィルタユニット31、排水弁33を介してドラム式洗濯機本体外部へと連通する排水ホース32に接続される。排水弁33は、制御回路8の制御に基づき開閉動作させることにより水槽20内からの水の排出の制御がなされる。
水槽20の内部には、図2に示すように、有底円筒状を有するドラム34が、水槽20と同様にその円筒軸(図2のC.L.)が水平軸に対して後方側を5〜30°下降傾斜するように配される。また、図3に示すように、ドラム34の円筒軸は水槽20の上部側周壁の円筒軸とほぼ同心に配される。すなわち、ドラム34の下部側周壁と水槽20の外径側に突出した下部側周壁との距離は、ドラム34の上部側周壁と水槽20の上部側周壁との距離よりも大きくなるように構成されており、ドラム34の下部側周壁と水槽20の外径側に突出した下部側周壁との間の空間に後述するヒータ部40が配される。ドラム34には、図2に示すように、外箱開口部4aおよび水槽開口部21aに対向して開口するドラム開口部34aが設けられており、これらの外箱開口部4a、水槽開口部21a、ドラム開口部34aを介してドラム34内への洗濯物の出し入れが行われる。
ドラム34は、その円筒周面の全体にわたって多数の小孔34bが設けられる(図2では12個の小孔34bだけを図示し、それ以外の小孔34bは図示省略している)。この小孔34bは、水槽20内とドラム34内とを連通させるものであり、水槽20内とドラム34内との空気や液体とが出入りできるようになっている。また、ドラム34の内壁面には、ドラム34の円筒中心軸方向に向かって突出するバッフル34cが設けられる。このバッフル34cは、周方向にn(n=2以上の自然数)回軸を有する回転対称となるように、例えば120°間隔にて3箇所(3回軸)に配置される。バッフル34cは、洗い工程またはすすぎ工程においてドラム34の回転に伴い、内包された洗濯物を持上げて洗濯水またはすすぎ水に落下させることを繰り返して洗濯物の洗浄またはすすぎを行うものである。
ドラム34の背面中央部には、その軸方向がドラム34の円筒軸と同一であるドラム軸34dが後方に突出するように設けられる。ドラム軸34dは、水槽20の後方側を形成する後部22の底面を貫通するとともに、その先端部が後部22の背面側にネジ35にて取り付けられる電動機たるモータ36に入り込む。モータ36は、その外周を覆うモータカバー36aと、ドラム軸34dを回動可能に支持する軸受36bと、ドラム軸34dを回転駆動させるロータ36cと、このロータ36cに磁力にて回転駆動力を付与するステータ36dとを備えている。モータ36は、制御回路8による制御に基づいてステータ36dを介してロータ36cを駆動させて、ドラム34を回転駆動させる。
また、ドラム開口部34a周辺部には、ドラム34の周面を半径方向内側に向けて小径となるように形成した絞り部34eを設けるとともに、その外周に沿って液体バランサ37が固着される。液体バランサ37は、環状を有する中空の外殻と、その内部に封入される塩水等の液体により構成される。この液体バランサ37は、特に脱水工程の高速回転時において洗濯物の偏りによってアンバランスが発生した際に、慣性による内部の液体の移動によってアンバランスを打ち消すことができるものである。
水槽20の周面内側下方且つドラム34の周面外側下方の右側の空間には、図2および図3に示すように、ヒータ部40が設けられる。ヒータ部40は、通風経路を形成するヒータカバー40aと、このヒータケース40a内に配されるヒータ40bを備えている。ヒータ40bは、洗い工程やすすぎ工程においては洗濯水やすすぎ水を加熱して洗浄効果やすすぎ効果を向上させ、また、乾燥工程においては水槽内の空気を加熱する。水槽20の周面内側下方且つドラム34の周面外側下方の左側の空間には、図3に示すように、除湿用の熱交換プレート41が配される。熱交換プレート41は開断面形状を有し、乾燥工程においてその上面に水道水給水口9から給水される水を流すことにより、水槽20内の空気を冷却する。水槽20の背面下部には、送風ファン42が取り付けられている。送風ファン42は、熱交換プレート41を通った空気を吸引するとともに、その吸引された空気をヒータ部40に排出する。
すなわち、第一の実施の形態のドラム式洗濯機の乾燥工程において、ヒータ部40により加熱された空気は、ドラム34内へと流れ込んで洗濯物の水分を気化させる。この気化した水分を多く含んだ湿潤空気は、熱交換プレート41にて冷却されて水分が凝縮して乾燥空気となる。この乾燥した空気は、送風ファン42を経てヒータ部40によって再加熱されて洗濯物の水分除去に供される。これらの動作が洗濯物の乾燥が終了するまで繰り返されることにより乾燥工程が進行する。また、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42は、水槽の下部に設けられるので、洗い工程やすすぎ工程においてこれらの部材は洗濯水やすすぎ水中に水没し、これらの部材に付着した糸屑等を除去することができる。
水槽20の外側下方には、水槽20を下方より弾性的に押し上げ支持する緩衝手段たる2本のダンパー50、51が配される。図4に示すように、ダンパー50は、前方より見て水槽20の左側部を支持し、ダンパー51は、前方より見て水槽20の右側部を支持する。第一の実施の形態においては、ダンパー50およびダンパー51は、それぞれ上方にオイルを封入したシリンダ部と、下方にコイルバネを備えた弾性を備え且つ減衰機能を有する一般的なオイルダンパーを用いているが、例えばエアダンパー等の同様の性能を備える他のダンパーも採用可能である。ダンパー50およびダンパー51は、その一端をそれぞれ水槽20の外周面に設けられるダンパー取付部26、27に弾性部材50a、51aを介して連結するとともに、他端をそれぞれ底台3の底面部に設けられるダンパー取付部18、19に弾性部材50b、51bを介して連結される。このように、ダンパー50、51は、水槽20を弾性的に押し上げ支持し、また、ダンパー50、51と水槽20および外箱1との連結が弾性部材50a、51a、50b、51bを介して行われるので、水槽20からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、図4に示すように、前方より見て、ダンパー取付部18はダンパー取付部26に対して左側となるように、ダンパー取付部19はダンパー取付部27に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部18とダンパー取付部19およびダンパー取付部26とダンパー取付部27はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部18およびダンパー取付部19はそれぞれダンパー取付部26およびダンパー取付部27に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1(図2および図4参照)とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2(図4参照)とを結ぶP1−P2軸(図4参照)がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽20の外側上方には、水槽20を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる2本のサスペンション52およびサスペンション53と、別の懸架手段たるサスペンション54が配される。図5に示すように、サスペンション52(第1の懸架装置の一例)は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション53(第2の懸架装置の一例)は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション52、53、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部17の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽20の外周面に設けられたサスペンション取付部23、24、25に連結される。第一の実施の形態においては、サスペンション52、53、54は、それぞれ一般的なコイルバネを用いているが、例えばエアダンパー等の弾性的に吊り下げ支持可能なものも採用可能である。このように、サスペンション52、53、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽20からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、図2に示すように、サスペンション取付部17は、サスペンション取付部24(23)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部25に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図2に示すように、サスペンション53(52)はサスペンション53(52)の水槽20からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ1(0°<θ1<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽20からサスペンション取付部17へと向かう支持の方向軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ2(0°<θ2<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション53(52)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、図2に示すように、サスペンション取付部17は、後述する振動体負荷57の重心の位置G1よりも前方となるように配されており、サスペンション53(52)による水槽20の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。また、図5に示すように、サスペンション取付部17は外箱1の前後方向における中央部の左端部から右端部までの全幅にわたって設けられ、また、サスペンション52、53、54が上方より見てそれぞれドラム式洗濯機の前後方向と平行となるように配される。
このドラム式洗濯機において、外箱1内にダンパー50、51およびサスペンション52、53、54によって水槽20(ダンパー取付部26、27およびサスペンション取付部23、24、25含む)とともに弾性支持される部材として、ドラム34(バッフル34c、ドラム軸34d含む)、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42、液体バランサ37が挙げられる。以降は、洗濯工程または乾燥工程において水槽20とともに振動するこれらの部材(水槽20、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート41、送風ファン42、液体バランサ37)より成る構成を荷重負荷55と呼称する。また、洗い工程またはすすぎ工程においては、ドラム内に投入される洗濯物と、水槽20内に供給される洗濯水またはすすぎ水とがダンパー50、51およびサスペンション52、53、54に対する負荷となって水槽20とともにダンパー50、51およびサスペンション52、53、54によって弾性支持される。これらの洗い工程またはすすぎ工程においてダンパー50、51およびサスペンション52、53、54に対する負荷となる洗濯物や洗濯水またはすすぎ水より成る重量体を洗濯負荷56と呼称する。また、荷重負荷55と洗濯負荷56とを合計した重量体を振動体負荷57と呼称する。
荷重負荷55の重心の位置をg1、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重心の位置をg2、このときの振動体負荷57の重心の位置をG1として図2に示す。本発明の第一の実施の形態において、洗濯負荷56の重心の位置g2は荷重負荷55の重心の位置g1の前方且つ下方に存在する。振動体負荷57の重心は、洗濯負荷56の重心の位置g2と荷重負荷55の重心の位置g1とを結ぶ線分上の点G1となる。ここで、ダンパー50、51は、図2に示すように、荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1との間の位置を支持するように配されている。具体的には、ダンパー50およびダンパー51のそれぞれの弾性支持の方向軸と一致する鉛直平面と、荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1とを結ぶ線分とが交点を有することを意味する。
洗い工程やすすぎ工程、脱水工程といった洗濯工程や、乾燥工程において、水槽20の姿勢は、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2とを結ぶP1−P2軸に対する、振動体負荷57の重心の前後方向の位置の影響を受ける。つまり、振動体負荷57の重心がP1−P2軸に対して前方にある場合、水槽20は、P1−P2軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P1−P2軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図2に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷57にはP1−P2軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽20はP1−P2軸を中心として左回りに回動することとなる。
逆に、振動体負荷57の重心がP1−P2軸に対して後方にある場合、水槽20は、P1−P2軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P1−P2軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図2に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷57にはP1−P2軸を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽20はP1−P2軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽20は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機においては、荷重負荷55の重心の位置g1に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷57の重心が前方側へとシフトし、水槽20の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。前述のようにサスペンション52、53は水槽20の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P1とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P2とを結ぶP1−P2軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与え、また、サスペンション54は、水槽20の後方側を上方且つ前方側、つまり、P1−P2軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽20のP1−P2軸を中心とする回動を防止させることができる。さらに、サスペンション52、53、54は上方へと引っ張る効果を有しており、水槽20の前方側および後方側の沈み込みを防止できる。特に、問題となりやすい水槽20の前方側の沈み込みを防止することにより、水槽20の振動がドアパッキン28を介して外箱1へと伝播するのを防ぐとともに、ドアパッキン28の過変形による傷みを防止することができる。また、外箱1の胴部4前面側上部にサスペンション52、53の取り付け部が必要ないため、外箱1の胴部4前面側上部の形状に制約を受けることがない。
また、一般的にドラム式洗濯機は、洗濯負荷56の重量がゼロの状態にて運転されることはなく、また、定格重量の洗濯物が投入された状態にて運転されることも少ない。また、振動が特に発生しやすい脱水工程においては、定格重量の洗濯物が投入された場合でも水槽20内の液体が排水された状態でドラム34が回転するので(洗濯物が吸水している液体は除く)、脱水工程での振動体負荷57の重心位置は前後方向において点G1と点g1との間に存在することとなる。このため、第一の実施の形態のように、ダンパー50、51を荷重負荷55の重心の位置g1と振動体負荷57の重心の位置G1との間の位置を支持するように配置することにより、ドラム34に投入される洗濯物の量に関わらず水槽の姿勢を維持可能なドラム式洗濯機を提供できる。
また、第一の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図2および図5に示すように、サスペンション取付部23および24は、水槽20の最上部が存在する中央部ではなく、その最上部よりも低い位置にある前部21の外周面左側部および前部21の外周面右側部に配しているため、水槽20の最上部と天板2との間のスペースに配される構成は存在しない。つまり、水槽20は外箱1内において高い位置に配置することができる。そのため、この水槽20の内部に配されるドラム34や、外箱1および水槽20、ドラム34の前方に設けられる開口(外箱開口部4a、水槽開口部21a、ドラム開口部34a)を外箱1の高さに対して高い位置とすることができる。すなわち、ドラム式洗濯機の製品高さを高くすることなく、洗濯物の容易な出し入れを可能とできる。
また、水槽20は、その水平面内において回動方向へのモーメント(図5において水槽20の左側部が前方側へと変位させようとするモーメントおよび右側部が後方側へと変位させようとするモーメント、または水槽20の左側部が後方側へと変位させようとするモーメントおよび右側部が前方側へと変位させようとするモーメント)が発生した場合、水平面内における回動中心をP3とすると、水槽20は、この点P3を中心として左回り(反時計回り)、または右回り(時計回り)に回動することとなる。これに対し、図5に示すように、サスペンション52はその水平面内における引っ張り力のP3とサスペンション取付部23とを結ぶ直線に対して垂直をなす方向へのベクトル成分(破線矢印A)による水槽20を水平面内における右回り(時計回り)へ回転させるモーメントを、サスペンション53はその水平面内における引っ張り力のP3とサスペンション取付部24とを結ぶ直線に対して垂直をなす方向へのベクトル成分(破線矢印B)による水槽20を水平面内における左回り(反時計回り)へ回転させるモーメントを水槽20に作用させるので、効率的に水槽20の水平面内における回動を防止させることができる。
〔本発明の第二の実施の形態〕
次に、本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機を図6および図7に基づいて説明する。図6は本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図、図7は上方より見た概略横断面図を示す。なお、この第二の実施の形態については、上述した第一の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第一の実施の形態と異なる部分のみ説明を行う。
本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図6に示すように、その外観面を構成する外箱1を備えている。外箱1の上面を構成する天面2の裏側(外箱1の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部には、図6に示すように、後述するサスペンション65、66、54の一端が連結される金属製の板材よりなるサスペンション取付部60が設けられる。
外箱1の内部には、図6に示すように、有底の筒形状を有する水槽61が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽61は、外箱開口部4aに対向して開口する水槽開口部62aを備えてその軸方向に対して前方側を成す前部62と、水61の軸方向に対して後方側を成す後部22とをネジ29にて結合させて構成される。前部62には、その上方外周面に後述するサスペンション65、66の一端が連結されるサスペンション取付部63、64が設けられる。図7に示すように、サスペンション取付部63は左側、サスペンション取付部64は右側となるように配される。また、サスペンション取付部63および64は、図6に示すように、水槽61の最上部よりも低い位置に配されるとともに側方より見て同じ位置となるように構成される。
また、水槽61の外箱1への取り付け状態においては、第一の実施の形態と同様にダンパー取付部18はダンパー取付部26に対して左側となるように、ダンパー取付部19はダンパー取付部27に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部18とダンパー取付部19およびダンパー取付部26とダンパー取付部27はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部18およびダンパー取付部19はそれぞれダンパー取付部26およびダンパー取付部27に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P4(図4のP1に相当)とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P5(図4のP2に相当)とを結ぶP4−P5軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽61の外側上方には、水槽61を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション65、66、54が配される。図6に示すように、サスペンション65(第1の懸架装置)は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション66(第2の懸架装置)は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54(第3の懸架装置)は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション65、66、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部60の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽61の外周面に設けられたサスペンション取付部63、64、25に連結される。このように、サスペンション65、66、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽61からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、第一の実施の形態と同様に、サスペンション取付部60は、サスペンション取付部64(63)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部25に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図6に示すように、サスペンション66(65)はサスペンション66(65)の水槽61からサスペンション取付部60へと向かう支持の方向軸を前後方向に平行な鉛直平面へ投影した軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ3(0°<θ3<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽61からサスペンション取付部60へと向かう支持の方向軸を前後方向に平行な鉛直平面へ投影した軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ4(0°<θ4<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション66(65)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、サスペンション取付部60は、第一の実施の形態と同様に、後述する振動体負荷68の重心の位置よりも前方となるように配されており、サスペンション66(65)による水槽61の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。図7に示すように、サスペンション取付部60は外箱1の前後方向における中央部の左端部から右端部までの全幅にわたって設けられる。また、サスペンション65のサスペンション取付部60との接続位置はサスペンション取付部63に対して左側、サスペンション66のサスペンション取付部60との接続位置はサスペンション取付部64に対して右側、サスペンション54のサスペンション取付部60との接続位置はサスペンション取付部25に対して前後方向に一致する位置に配置される。具体的には、サスペンション65はサスペンション65の水槽61からサスペンション取付部60へと向かう支持の方向軸の水平面への投影軸と前より後へ向かう方向軸とがθ5(0°<θ5<90°)の角度を成すように、また、サスペンション66はサスペンション66の水槽61からサスペンション取付部60へと向かう支持の方向軸の水平面への投影軸と前より後へ向かう方向軸とがθ6(0°<θ6<90°)の角度を成すように配される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷67は、水槽61、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、ダンパー50、51は、図6に示すように、荷重負荷67の重心の位置g3と、洗濯負荷56の荷重負荷67と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷68の重心の位置G2との間の位置を支持するように配されている。
振動体負荷68の重心がP4−P5軸に対して前方にある場合、水槽61は、P4−P5軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P4−P5軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図6に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷68にはP4−P5軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽61はP4−P5軸を中心として左回りに回動することとなる。逆に、振動体負荷68の重心がP4−P5軸に対して前方にある場合、水槽61は、P4−P5軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P4−P5軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図6に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷68にはP4−P5軸を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽61はP4−P5軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽61は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機においては、荷重負荷67の重心の位置g3に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷68の重心が前方側へとシフトし、水槽61の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。サスペンション65、66は水槽61の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P4とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P5とを結ぶP4−P5軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与え、また、サスペンション54は、水槽61の後方側を上方且つ前方側、つまり、P4−P5軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽61のP4−P5軸を中心とする回動を防止するとともに、特に問題となりやすい水槽61の前方側の沈み込みを防止できる。また、外箱1の胴部4前面側上部にサスペンション65、66の取り付け部が必要ないため、外箱1の胴部4前面側上部の形状に制約を受けることがない。
また、第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図6および図7に示すように、サスペンション取付部63および64は、水槽61の最上部が存在する中央部ではなく、その最上部よりも低い位置にある前部62の外周面左側部および前部62の外周面右側部に配しているため、水槽61の最上部と天板2との間のスペースに配される構成は存在しない。つまり、水槽61は外箱1内において高い位置に配置することができる。そのため、第一の実施の形態と同様に、この水槽61の内部に配されるドラム34や、外箱1および水槽61、ドラム34の前方に設けられる開口(外箱開口部4a、水槽開口部20a、ドラム開口部34a)を外箱1の高さに対して高い位置とすることができる。すなわち、ドラム式洗濯機の製品高さを高くすることなく、洗濯物の容易な出し入れを可能とできる。
また、水槽61は、その水平面内において回動方向へのモーメント(図7において水槽61の左側部が前方側へと変位させようとするモーメントおよび右側部が後方側へと変位させようとするモーメント、または水槽61の左側部が後方側へと変位させようとするモーメントおよび右側部が前方側へと変位させようとするモーメント)が発生した場合、水槽20は水平面内における回動中心をP6とすると、この点P6を中心として左回り(反時計回り)、または右回り(時計回り)に回動することとなる。これに対し、図7に示すように、サスペンション65はその水平面内における引っ張り力のP6とサスペンション取付部63とを結ぶ直線に対して垂直をなす方向へのベクトル成分(破線矢印A´)による水槽61水平面内における右回り(時計回り)へ回転させるモーメントを、サスペンション66はその水平面内における引っ張り力のP6とサスペンション取付部64とを結ぶ直線に対して垂直をなす方向へのベクトル成分(破線矢印B´)による水槽61を水平面内における左回り(反時計回り)へ回転させるモーメントを水槽61に作用させるわけであるが、サスペンション65および66はそれぞれ水槽61を後方左側および後方右側へと引っ張り力を与えるため、第一の実施の形態に比べてこの破線矢印A´およびB´のベクトル成分は大きい。すなわち、第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機は第一の実施の形態よりも効率的に水槽61の水平面内における回動を防止させることができる。
〔本発明の第三の実施の形態〕
次に、本発明の第三の実施の形態に係るドラム式洗濯機を図8および図9に基づいて説明する。図8は本発明の第二の実施の形態に係るドラム式洗濯機を側方より見た概略縦断面図、図9は上方より見た概略横断面図を示す。なお、この第三の実施の形態については、上述した第二の実施の形態と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略し、第二の実施の形態と異なる部分のみ説明を行う。
本発明の第三の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図8に示すように、その外観面を構成する外箱1を備えている。外箱1の上面を構成する天面2の裏側(外箱1の内部側)のドラム式洗濯機の前後方向における中央部には、図8に示すように、後述するサスペンション75、76、54の一端が連結される金属製の板材よりなるサスペンション取付部70が設けられる。
外箱1の内部には、図8に示すように、有底の筒形状を有する水槽71が、その後方側が水平面に対して5〜30°下降傾斜するように配される。水槽71は、外箱開口部4aに対向して開口する水槽開口部72aを備えてその軸方向に対して前方側を成す前部72と、水61の軸方向に対して後方側を成す後部22とをネジ29にて結合させて構成される。前部72には、その上方外周面に後述するサスペンション75、76の一端が連結されるサスペンション取付部73、74が設けられる。図9に示すように、サスペンション取付部73は左側、サスペンション取付部74は右側となるように配される。また、サスペンション取付部73および74は、図8に示すように、水槽71の最上部よりも低い位置に配されるとともに側方より見て同じ位置となるように構成される。
また、水槽71の外箱1への取り付け状態においては、第二の実施の形態と同様にダンパー取付部18はダンパー取付部26に対して左側となるように、ダンパー取付部19はダンパー取付部27に対して右側となるように配される。すなわち、ダンパー50、51はその取付状態において、前方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、側方より見てダンパー取付部18とダンパー取付部19およびダンパー取付部26とダンパー取付部27はそれぞれの前後方向と上下方向が同じ位置となるように配されるとともに、ダンパー取付部18およびダンパー取付部19はそれぞれダンパー取付部26およびダンパー取付部27に対して鉛直下方に配置される。すなわち、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P7(図4のP1に相当)とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P8(図4のP2に相当)とを結ぶP7−P8軸がドラム式洗濯機の左右方向と一致する水平軸と平行を成すとともに、ダンパー50およびダンパー51は、その弾性支持する軸方向が同一の鉛直平面上となるように配置される。
水槽71の外側上方には、水槽71を上方より弾性的に吊り下げ支持する懸架手段たる3本のサスペンション75、76、54が配される。図8に示すように、サスペンション75(第1の懸架装置)は上方より見て水槽の前方左側部、サスペンション76(第2の懸架装置)は上方より見て水槽の前方右側部、サスペンション54(第3の懸架装置)は上方より見て水槽の後方方中央部を支持する。サスペンション75、76、54は、その一端をそれぞれサスペンション取付部70の左側部、右側部、中央部に連結するとともに、他端を水槽71の外周面に設けられたサスペンション取付部73、74、25に連結される。このように、サスペンション75、76、54は、弾性的に吊り下げ支持するので、水槽71からの外箱1への振動の伝播、ひいては床への振動の伝達を発生しにくくすることができる。
また、第二の実施の形態と同様に、サスペンション取付部70は、サスペンション取付部74(73)に対して後方側且つ上方側となるように、サスペンション取付部25に対して前方側且つ上方側となるように配される。つまり、図8に示すように、サスペンション76(75)はサスペンション76(75)の水槽71からサスペンション取付部70へと向かう支持の方向軸を前後方向に平行な鉛直平面へ投影した軸と前方から後方へと向かう水平軸とがθ7(0°<θ7<90°)の角度を成すように、また、サスペンション54はサスペンション54の水槽71からサスペンション取付部70へと向かう支持の方向軸を前後方向に平行な鉛直平面へ投影した軸と後方から前方へと向かう水平軸とがθ8(0°<θ8<90°)の角度を成すように配される。すなわち、サスペンション76(75)およびサスペンション54はその取付状態において、側方より見て略「ハ」の字状となるように取り付けられる。また、サスペンション取付部70は、第二の実施の形態と同様に、後述する振動体負荷78の重心の位置よりも前方となるように配されており、サスペンション76(75)による水槽71の前方部の持ち上げ効果を高めることができる。図9に示すように、サスペンション取付部70は外箱1の前後方向における中央部の左端部から右端部までの全幅にわたって設けられる。また、サスペンション75のサスペンション取付部70との接続位置はサスペンション取付部73に対して右側、サスペンション76のサスペンション取付部70との接続位置はサスペンション取付部74に対して左側、サスペンション54のサスペンション取付部70との接続位置はサスペンション取付部25に対して前後方向に一致する位置に配置される。具体的には、サスペンション75はサスペンション75の水槽71からサスペンション取付部70へと向かう支持の方向軸の水平面への投影軸と前より後へ向かう方向軸とがθ9(0°<θ9<90°)の角度を成すように、また、サスペンション76はサスペンション76の水槽71からサスペンション取付部70へと向かう支持の方向軸の水平面への投影軸と前より後へ向かう方向軸とがθ10(0°<θ10<90°)の角度を成すように配される。
このドラム式洗濯機において、荷重負荷77は、水槽71、ドラム34、モータ36、ヒータ部40、熱交換プレート(本実施例においては図示せず。第一の実施の形態の図3同様にヒータ部40の左側に配される)、送風ファン42、液体バランサ37より構成される。ここで、ダンパー50、51は、図6に示すように、荷重負荷77の重心の位置g4と、洗濯負荷56の荷重負荷77と定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56(重心の位置g2)とを合計した振動体負荷78の重心の位置G3との間の位置を支持するように配されている。
振動体負荷78の重心がP7−P8軸に対して前方にある場合、水槽71は、P7−P8軸よりも前方側にある部分が下方へ向けて、P7−P8軸よりも後方側にある部分が上方へ向けて変位しようとする。すなわち、図8に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷78にはP7−P8軸を中心とする左回り(反時計回り)のモーメントが発生して、水槽71はP7−P8軸を中心として左回りに回動することとなる。逆に、振動体負荷78の重心がP7−P8軸に対して前方にある場合、水槽71は、P7−P8軸よりも前方側にある部分が上方へ向けて、P7−P8軸よりも後方側にある部分が下方へ向けて変位しようとする。すなわち、図8に示された右側面からの縦断面図において振動体負荷78にはP7−P8軸を中心とする右回り(時計回り)のモーメントが発生して、水槽71はP7−P8軸を中心として右回りに回動することとなる。さらに、この回動変位に加え、定格重量の洗濯物投入時の洗濯負荷56の重量が加わるので、ダンパー50、51は縮み、水槽71は全体的にさらに下方に変位することとなる。
第三の実施の形態に係るドラム式洗濯機においては、荷重負荷77の重心の位置g4に対して洗濯負荷56の重心が下方且つ前方にあるため、洗濯負荷56の重量が増加するにつれて振動体負荷78の重心が前方側へとシフトし、水槽71の前方側の沈み込みの変位は大きくなる。サスペンション75、76は水槽71の前方側を上方且つ後方側、つまり、ダンパー取付部26とダンパー50との接続位置P7とダンパー取付部27とダンパー51との接続位置P8とを結ぶP7−P8軸を中心として右回りへ回転させる引っ張り力を与え、また、サスペンション54は、水槽71の後方側を上方且つ前方側、つまり、P7−P8軸を中心として左回りへ回転させる引っ張り力を与えるので、効率的に水槽71のP7−P8軸を中心とする回動を防止するとともに、特に問題となりやすい水槽71の前方側の沈み込みを防止できる。また、外箱1の胴部4前面側上部にサスペンション75、76の取り付け部が必要ないため、外箱1の胴部4前面側上部の形状に制約を受けることがない。
また、第三の実施の形態に係るドラム式洗濯機は、図8および図9に示すように、サスペンション取付部73および74は、水槽71の最上部が存在する中央部ではなく、その最上部よりも低い位置且つ第一の実施の形態や第二の実施の形態に比してさらに低い位置にある前部72の外周面左側部および前部72の外周面右側部のさらに左右方向における中央部よりも遠い側に配しているため、水槽71の最上部と天板2との間のスペースに対するサスペンション取付部73、74およびサスペンション75、76の影響を小さくできる。つまり、水槽71は、第一の実施の形態や第二の実施の形態に比して外箱1内においてさらに高い位置に配置することができる。そのため、この水槽71の内部に配されるドラム34や、外箱1および水槽71、ドラム34の前方に設けられる開口(外箱開口部4a、水槽開口部20a、ドラム開口部34a)を外箱1の高さに対してさらに高い位置とすることができる。すなわち、ドラム式洗濯機の製品高さを高くすることなく、洗濯物の容易な出し入れを可能とできる。さらには、サスペンション取付部73、74をより下方に配置することにより上記したθ7の角度を大きくできるため、水槽71前方部の沈み込み防止効果をも向上できる。
また、外箱1内において水槽71よりも高い位置には、水道水給水口9または風呂水給水口10から給水ダクトに至る経路が配置される。これらの給水経路の構成は、水槽の最上部と干渉しないように外箱1内の最上部左側または右側に設けられる(各実施の形態においては最上部左側)。第三の実施の形態において、サスペンション取付部70とサスペンション75または76との接続位置はサスペンション取付部73または74に対して左右方向における中央部側に配しているので、外箱1内に水槽71を高い位置へ配置しつつ、外箱1内の最上部左側または右側の給水経路やその他の構成の配置スペースを確保できる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、水槽を外箱内に上方より懸架支持するサスペンション52、53、65、66、75、76の一実施形態を図10に基づいて説明する。図10(a)および(b)はサスペンション52の短縮状態および伸長状態における概略断面図を示す。なお、サスペンション53、65、66、75、76はサスペンション52と同様の構造を備えており、説明は省略する。サスペンション52は、図10(a)に示すように、その上端部および下端部にそれぞれ外箱および水槽に接続される接続部52aおよび52bを備える。また、サスペンション52は、接続部52aおよび52bとの間に接続部52aの下端部が突入するシリンダ52cと、シリンダ52cに内包されて接続部52aの下端部に配される鍔部52dと、シリンダ52c内面上端部と鍔部52d上面との間を弾性的に支持するコイルばね52eとを備えている。水槽の前方側の一定の距離以上の下方への変位によってサスペンション52が図10(a)の短縮状態から図10(b)の伸長状態へと移行すると、コイルばね52eを構成する上下の線材が接触して、それ以上伸びないようになる。つまり、サスペンション52は水槽の前方部の下方への変位を制限するように作用するとともに、コイルばね52eがこのストッパー機能を有する。このように、サスペンション52のストッパー機能により、水槽は図2、図6、図8に示す側面概略図における左回り(反時計回り)の回動が制限されて水槽の振動による外箱への接触を防止できる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、水槽の後方側を支持するサスペンションの弾性支持の方向軸の前後方向と平行をなす鉛直平面への投影軸と水平面とがなす角度(各実施例に於けるθx(x=2、4、8))よりも水槽の前方側を支持するサスペンションの弾性支持の方向軸の前後方向と平行をなす鉛直平面への投影軸と水平面とがなす角度(各実施例に於けるθy(y=1、3、7))の方が大きくなるようにすると、水槽の前方部を上方に持ち上げる効果が高まり、水槽の前方側の沈み込みを抑えることができる。また、水槽の後方側を支持するサスペンションのばね定数よりも水槽の前方側を支持するサスペンションのばね定数の方が大きくなるようにすると、水槽の前方部を上方に持ち上げる効果が高まり、水槽の前方側の沈み込みを抑えることができる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、サスペンション取付部24(23)、64(63)、74(73)は水槽の外周面に取り付けられる(図2、図6、図8参照)が、サスペンション取付部24´(23´)、64´(63´)、74´(73´)のように水槽の前面側に設ける(図2、図6、図8参照)こともできる。このように水槽の前方側を支持するサスペンションの水槽側のサスペンション取付部を水槽の外周面から前面側に変更することにより、水槽の前方側を支持するサスペンションの水槽側の支持位置と、ダンパーの水槽側の支持位置との前後方向の距離が大きくなるので、小さな引張応力にて水槽の前方側を懸架支持できるようになる。
また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、サスペンションまたはダンパーの水槽側への取付部を水槽に一体に設けることにより部品点数の削減および原価の低減を可能とできる。また、水槽の前方部および後方部を支持するサスペンションの外箱側への取付位置を左右方向に対してほぼ一列となるように配すると、外箱側のサスペンション取付部は前後方向の幅を小さくできるのでサスペンション取付部の小型化や軽量化が可能となる。また、本発明の各実施の形態のドラム式洗濯機において、ダンパーは弾性支持だけでなく減衰機能を備えるが、このダンパーのすべてまたは一部を減衰機能を有しないものとし、代わりにサスペンションのすべてまたは一部に減衰機能を設けてもよい。