JP2006251318A - 反射防止構造体を有する部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 サブミクロンピッチの非常に細かなパターンを有する反射防止構造体を、X線リソグラフィを用いて容易に製造するための反射防止構造体を有する部材の製造方法を提供する
【解決手段】 X線マスク1をX線の照射方向を法線とする面Lに対してθだけ傾けて配置する。この状態のX線マスク1を介して部材2の表面にX線を露光する。これにより、部材2の表面には、X線マスク1のマスクパターンpよりも小さいピッチであるpcosθのピッチを有する露光パターンが形成される。次いで、露光された部材2を現像する。これにより、部材2の表面には、X線マスク1のマスクパターンよりも微細なピッチを有する反射防止構造体が形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】 X線マスク1をX線の照射方向を法線とする面Lに対してθだけ傾けて配置する。この状態のX線マスク1を介して部材2の表面にX線を露光する。これにより、部材2の表面には、X線マスク1のマスクパターンpよりも小さいピッチであるpcosθのピッチを有する露光パターンが形成される。次いで、露光された部材2を現像する。これにより、部材2の表面には、X線マスク1のマスクパターンよりも微細なピッチを有する反射防止構造体が形成される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、反射防止構造体を有する部材の製造方法に関し、より特定的には、X線リソグラフィを用いて形成される反射防止構造体を有する部材の製造方法に関する。
入射光に対する反射防止処理が施されたレンズなどの光学素子やカメラ鏡筒などの光学部品は、様々な用途で用いられている。これらの光学素子や光学部品の光学機能面には、蒸着、スパッタリング、および塗装等の手法により反射防止処理が一般的に施されており、低屈折率層からなる単層膜や低屈折率層と高屈折率層とを積層した多層膜等の反射防止膜が形成されている(例えば、特許文献1)。
このような反射防止膜は、蒸着やスパッタリングという一般的な方法で形成できるため広く用いられていたが、反射防止膜の光学的膜厚を高精度に制御するためには複雑な工程が必要となるため、生産性やコスト面での改善が望まれていた。また、このような反射防止膜は、波長依存性があるため、所定の波長以外での反射防止効果は小さくなり、撮像光学機器において必要とされる可視光領域全域で良好な反射防止を達成することは非常に困難であり、さらに、入射角が大きくなると反射防止効果が小さくなるという角度依存性の問題もあるため、波長依存性と角度依存性とが改善された反射防止の方法が望まれていた。
そこで、これらの問題点を改善する方法として、近年、光学素子あるいは光学部品の表面に、反射防止構造体と呼ばれる、非常に微細な錐状凹凸形状をアレイ状に配列した構造体を形成する技術が注目を集めている。反射防止構造体とは、より具体的には、錐状凹凸形状が入射光の波長以下のピッチ(例えば、可視光であればサブミクロンピッチ)でアレイ状に並べられたものであり、この錐状凹凸形状のピッチと高さの比であるアスペクト比は1以上である。
このような反射防止構造体を光学素子あるいは光学部品の表面に形成すると、表面の屈折率分布は非常に滑らかに変化するようになり、錐状凹凸形状の配列ピッチよりも長い波長の入射光は、ほとんど全て光学素子あるいは光学部品内部に進入する。したがって、光学素子あるいは光学部品の表面からの光の反射を防止することができる。また、入射光の入射角度が大きくなっても、反射防止効果はそれほど小さくならないという特徴を持つ。このように、光学素子あるいは光学部品の表面に反射防止構造体を形成できれば、反射防止膜での課題である波長依存性と入射角依存性とが解決できる。
反射防止構造体を形成するには、サブミクロンレベル以下の超微細加工技術が必要となる。例えば、特許文献2に記載された方法では、まず、石英ガラス等からなる光学素子の材料表面に、電子ビーム(EB)描画法によりパターニングすることによりレジストパターンを形成し、このレジストパターンを元にして、光学素子の材料表面に直接にサブミクロンピッチのクロム(Cr)マスクを形成する。そして、光学素子材料のマスクで覆われた以外の部分をドライエッチング処理により微細加工し、反射防止構造体を形成するものである。
特許文献2のように、サブミクロンピッチの非常に細かなパターンの形成には、EB描画法が用いられるのが一般的である。しかしながら、サブミクロンパターンのパターニングにEB描画法を用いると、非常に長時間の描画時間を要する。描画するパターン形状や条件にもよるが、例えば、5mm角の領域に250nmピッチで円形パターン(直径0.2μm)を描画するには、約5時間の描画時間を要する。したがって、カメラ鏡筒の内面全体に対応する面積(50mm角)に描画するには、500時間もの描画時間が必要となり、直接に、光学材料に反射防止構造体を形成して量産することは現実的に不可能である。さらには、EB描画法を用いる方法では、レンズなどの曲面形状の表面に微細パターンを描画することは非常に困難であり、非常に特殊な3次元位置制御のできるステージを備えた電子ビーム描画装置が必要となる。
一方、最近では、X線リソグラフィの技術を用いた、サブミクロンレベルの微細な構造体を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4)。X線は、波長が短く直進性に優れているので、従来は困難であったサブミクロンレベルの微細な構造を加工するのに適している。図15(a)は、X線リソグラフィによる反射防止構造体の製造方法を説明する模式図である。図15(a)において、X線マスク1は、X線吸収領域3およびX線透過領域4が、形成しようとする反射防止構造体に対応して配置されたマスクパターンを有する。X線吸収領域3は、X線マスク1を構成する基板上にメンブレンを形成し、このメンブレン上にX線吸収体を配置することで形成される。部材2は、感光性材料にて形成される。
X線マスク1は、一般的には、マスクパターンを高精度に部材に転写するために、部材2の露光面に対して平行になるように配置される。また、X線マスク1と部材2とは、一定の距離Dを持って配置される。X線マスク1と部材2との間に一定の距離Dを設けるのは、上述のようにX線マスク1には非常に薄く破壊されやすいメンブレンが使用されており、紫外線を用いたフォトリソグラフィの様にX線マスク1と部材2とを密着させて露光すると、X線マスク1が破壊されるおそれがあるためである。このように、X線マスク1と部材2との間に距離Dを設けても、X線は波長が短く直進性に優れているので、所望のパターン強度でX線を部材2上に露光することができる。したがって、X線リソグラフィは、レンズ面のように平面ではない部材2の表面に反射防止構造体を形成する場合のように、X線マスク1と部材2との距離が大きくなる部分が生じることが避けられない場合に特に有効である。
上記のように配置されたX線マスク1を介して部材2にX線露光を行うと、X線マスク1を透過したX線はそのまま直進し、部材2の照射面に垂直に照射され、部材2の内部でも直進して部材2を感光させる。これにより、露光後の部材2の表面には、マスクパターンに対応した形状およびピッチpを有するX線強度分布を持った感光部分が形成される。
次に、このような露光処理が行われた部材2に現像処理を行う。図15(b)は、現像後の部材2の状態を示す模式図である。現像処理によって部材2の表面には、マスクパターンに対応した形状の凹部が形成され、図15(b)に示すように、マスクパターンと同じピッチpを有する微細構造体90が形成される。微細構造体90を構成する構造単位は、露光時のX線照射方向を含む平面を断面とした時に、その断面形状は矩形形状となっている。
特開2001−127852号公報
特開2001−272505号公報
特開2000−035500号公報
特許第3521205号公報
しかしながら、構造単位の断面形状が矩形形状である微細構造体90では、前述のような表面での滑らかな屈折率分布変化が得られず、反射防止効果に劣るものとなる。そこで、特許文献3のようなX線マスク1あるいは部材2の少なくとも一方を移動させて両者の相対的な位置関係を変更しながら複数回のX線露光を行う方法や、特許文献4のような部分露光と全面露光とを組み合わせた二重露光法を用いて、柱状構造の側壁部分が斜めになるように部材2の感光した部分のX線強度分布を機械的に変化させることで、錐形状を構造単位とする反射防止構造体を形成できる。
特許文献3あるいは特許文献4に記載のような方法により、サブミクロンレベルの微細な反射防止構造体を形成する場合には、サブミクロンピッチの非常に細かなマスクパターンを有するX線マスク1を用いる必要がある。しかしながら、サブミクロンピッチの多角形や円等がアレイ状に配列された2次元的な周期構造を有するX線マスク1を製造することは、非常に困難である。例えば、電子ビームを用いた露光法(以下、EB描画法と称す)によりX線マスク1を形成する場合には、その作成に非常に時間がかかり、しかもX線マスク1の構造上、マスク形成に使用される吸収材やマスクパターンの形状等に制約があることから、費用や手間がかかるという問題がある。
また、電子ビームのスポット径の制約から、現状では、300nm未満のピッチを有するマスクパターンを形成することは困難であり、EB描画法により形成されたX線マスク1を用いてなる反射防止構造体のピッチは、300nmが限界とされている。300nmピッチの反射防止構造体であっても、反射光のみを除去すればよい光学系においては、可視光全域において十分な反射防止効果を得ることは可能である。しかしながら、透過光を利用するレンズなどの光学素子に利用する場合には、反射防止構造体のピッチが使用波長の半分以上のピッチであれば透過光に回折光が発生し、透過率の低下につながる。すなわち、反射光は低減できても、結果的に、回折光が発生することで透過率が低下する。この理由により、可視光全域を透過するレンズに使用する場合等には、200nmピッチ以下の反射防止構造体の形成が必要となる。
さらに、多角形や円等がアレイ状に配列された2次元的な周期構造のマスクパターンを形成する場合には、描画フィールドの重ね合わせ精度が100nm程度であることから、200nmピッチのマスクパターンを形成しようとすると、フィールドごとで、最大ピッチの半分のずれを生じてしまい、反射防止効果が低下する原因ともなる。
それ故に、本発明は、サブミクロンレベルの微細な反射防止構造体、より具体的には300nm未満のピッチを有する微細な反射防止構造体を、X線リソグラフィを用いて容易に製造できる反射防止構造体を有する部材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する発明は、X線露光法により部材の表面に反射防止構造体を形成するための方法に向けられている。この製造方法では、まず、X線マスクを介して、少なくとも構造体形成面を感光性材料にて形成された部材に向けてX線を露光する露光工程を行う。次に、露光された部材を現像する現像工程を行う。ここで、露光工程は、X線マスクをX線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態でX線を露光する。これにより、X線マスクに形成されたマスクパターンよりも微細なピッチの反射防止構造体を得ることができる。したがって、例えば、300nm以上のピッチでマスクパターンが形成されたX線マスクを用いても、部材の表面には、300nm未満のピッチで反射防止構造体を形成できる。
露光工程は、X線マスクを、X線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態で部材にX線を露光する第1の露光工程と、X線マスクおよび部材の少なくとも一方をX線の光軸まわりに回転させて両者の相対的な位置関係を変更した後、X線マスクを、X線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態で露光された部材にX線を露光する回転処理を少なくとも1回含む第2の露光工程とを有するようにしても良い。これにより、より一層微細で、かつ複雑な形状の反射防止構造体を形成することができる。このような方法に用いるX線マスクとしては、例えば、マスクパターンとしてラインアンドスペースパターンを有するものが挙げられる。
反射防止構造体が形成される部材は、光学素子または光学部品である。感光性材料には、ポリメタクリル酸メチルまたはフッ素系樹脂が好適に使用できる。また、反射防止構造体は、アスペクト比が1以上である錐形状を構造単位とし、この構造単位が反射を防止すべき光の波長以下のピッチで部材の構造体形成面にアレイ状に配置されてなるものが好ましい。
また、感光性材料が感光性レジストであるときには、現像工程の後に、この現像工程によってパターン形成された感光性レジストをマスクとして部材をドライエッチングするエッチング工程をさらに備えていても良い。また、感光性材料が感光性レジストであり、この感光性レジストからなる層の下にエッチングマスク用の材料からなるエッチングマスク層を有するときには、現像工程の後に、この現像工程によってパターン形成された感光性レジストをマスクとして、エッチングマスク層をウェットエッチングあるいはドライエッチングする第1のエッチング工程と、第1のエッチング工程によってパターン形成されたエッチングマスク層をマスクとして部材をドライエッチングする第2のエッチング工程をさらに備えることが好ましい。
また、現像工程の後には、反射防止構造体が形成された部材を用いて電鋳処理あるいはプレス成形を行うことにより複製型を形成する複製型形成工程をさらに備えていても良い。これにより、反射防止構造体が形成された部材を量産するための型を容易に得ることができる。そして、複製型形成工程の後には、複製型を用いて、樹脂材料あるいはガラス材料からなる成形用素材を成型加工する成型工程をさらに備えることで、反射防止構造体が形成された部材の量産が可能となる。
複製型形成工程において電鋳処理を行うときには、複製型の成形面に撥水処理を施す撥水処理工程を含んでいても良い。また、複製型形成工程においてプレス成形を行うときには、複製型の成形面に離型処理を施す離型処理工程を含んでいてもよい。また、成型工程には、具体的には、射出成形法またはプレス成形法を用いることが望ましい。
以上のように本発明によれば、X線マスクをX線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態でX線露光を行うことで、X線マスクが有するマスクパターンのピッチを縮小した状態で部材の表面にX線露光を行うことができる。そして、このようなX線露光が行われた部材に現像処理を施すことで、部材の表面に、サブミクロンレベルの微細な反射防止構造体、より具体的には300nm未満のピッチを有する微細な反射防止構造体を、容易に製造することができる。
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について説明する。図1(a)は、本実施形態に係るX線の露光工程を説明する模式図であり、図1(b)は、現像後の部材2の状態を示す模式図である。図1(a)において、X線マスク1は、X線吸収領域3およびX線透過領域4が形成しようとする反射防止構造体に対応して配置されたマスクパターンを有する。マスクパターンの形状は、形成しようとする反射防止構造体の形状に応じて適宜選択され、例えば、ラインアンドスペースパターン(以下、L/Sパターンと称す)、矩形状、楕円形状、六角柱形状、あるいは円柱形状等のX線吸収領域3あるいはX線透過領域4を有するものが適用できる。ここでは、L/Sパターンを有するX線マスク1を例に挙げて説明する。
以下に、本発明の第1の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について説明する。図1(a)は、本実施形態に係るX線の露光工程を説明する模式図であり、図1(b)は、現像後の部材2の状態を示す模式図である。図1(a)において、X線マスク1は、X線吸収領域3およびX線透過領域4が形成しようとする反射防止構造体に対応して配置されたマスクパターンを有する。マスクパターンの形状は、形成しようとする反射防止構造体の形状に応じて適宜選択され、例えば、ラインアンドスペースパターン(以下、L/Sパターンと称す)、矩形状、楕円形状、六角柱形状、あるいは円柱形状等のX線吸収領域3あるいはX線透過領域4を有するものが適用できる。ここでは、L/Sパターンを有するX線マスク1を例に挙げて説明する。
部材2は、反射防止構造体が必要とされるあらゆる部材2を含み、例えば、光路中に配置されて使用される光学機能面を有する光学素子や光学部材等が挙げられる。光学素子とは、具体的には、レンズ、マイクロレンズアレイ、プリズム、ミラー、フィルター、光学シート、並びに回折格子等である。光学部品とは、具体的には、レンズ鏡筒のような光学素子を保持するための機構部品、光学素子を含む機器全体を保護する筐体部材、光学素子や光学部品の成形に用いる成形型、並びに成形型を得るための原盤等である。さらに、光学部品には、各種光デバイス(半導体レーザ素子や発光ダイオード等の発光素子、フォトダイオード等の受光素子、CCDやCMOS等の撮像素子、光通信に用いられる光スイッチや分岐器等)において、反射防止処理が必要な構造部分、液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマ発光パネル等のディスプレイパネルの表示部分等も含まれる。
これらの部材2は、少なくとも構造体形成面が感光性材料にて形成されているものであれば良く、全体が感光性材料にて形成されたものであっても良い。感光性材料としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂やフッ素系樹脂等の光学樹脂が好適に使用できる。ここでは、全体が感光性材料にて形成された平板状の部材2を例に挙げて説明する。
本実施形態の特徴部分は、図1(a)に示すX線露光工程において、X線マスク1と部材2とを平行に配置するのではなく、X線マスク1を、X線の照射方向を法線とする面Lに対してθだけ傾けて部材2の上部に配置する点にある。本実施形態において、X線マスク1を傾けて露光することができるのは、X線の直進性が非常によく、マスクと部材を離して露光しても、X線マスク1のマスクパターンを忠実に転写することが可能だからである。ただし、X線マスク1との距離をあまり大きくしていくと、異なるX線透過領域4を通過したX線同士が回折によって重なりあい、干渉の影響を受ける場合がある。しかしながら、このような干渉が生じても、反転形状を有する反射防止構造体が形成されるだけであるため、反射防止構造体の反射防止効果は損なわれるものではない。
上記のように配置されたX線マスク1を介して部材2に向けてX線露光を行うことで、部材2の表面には、X線マスク1に形成されたマスクパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影され、pcosθのピッチを有するX線投影図が形成される。この点について、より具体的に説明する。
図2は、X線マスク1のL/Sパターンと、部材2の表面におけるX線投影図との関係を示す模式図である。図2(a)は、L/Sパターンを有するX線マスク1の構成を示す模式図である。L/Sパターンとは、X線吸収領域3とX線透過領域4とが平行縞状に形成されたマスクパターンであり、ここでは、X線吸収領域3とX線透過領域4との幅が1対1で形成されている。L/Sパターンを有するX線マスク1を用いて、図1(a)に示すような露光処理を行うと、部材2の表面には、図2(b)に示すようなX線投影図5が形成される。図2(b)において、X線投影図5の長さaは、L/Sパターンの長さaと同じであるが、幅は、L/Sパターンの幅bよりも縮小されてbcosθとなり、ピッチは、より密なpcosθとなっている。
次に、上記のような露光処理が施された部材2に、現像処理を施すのであるが、L/SパターンのX線マスク1を用いた場合、上記した露光処理だけでは、部材2の表面には、縞状の配列方向に沿ってピッチが縮小されたX線投影図5が形成されるだけである。したがって、現像後の部材2の表面には、ピッチは縮小されているものの、マスクパターンと同様の形状の凹部が形成された構造体が形成される。そこで、実際には、マスクパターンの形状や部材の材質等に応じて、錐形状の構造単位からなる反射防止構造体が形成されるように、複数回の露光処理やエッチング処理等を適宜組み合わせて行う必要がある。例えば、L/SパターンのX線マスク1であれば、X線マスク1または部材2の少なくとも一方を相対的に回転移動させて複数のX線露光処理を行う。これにより、部材2の表面に、L/Sパターンをピッチの配列方向に縮小して重畳したパターンに対応する強度分布を高精度に得ることができる。なお、錐形状の反射防止構造体を得るための露光処理やエッチング処理等については、具体例を挙げて、後述する。
続いて、上記のような処理が施された部材2に、現像処理を行う。現像処理は、例えば、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノールを主成分とする現像液に露光後の部材2を浸漬することにより行う。現像処理後の部材2の表面には、図1(b)に示すように、pcosθのピッチを有し、錐形状を構造単位とする反射防止構造体6が形成される。本実施形態に係る反射防止構造体6とは、ピッチと高さの比であるアスペクト比が1以上である錐形状を構造単位とし、この構造単位が、反射を防止すべき光の波長以下のピッチでアレイ状に配列されているものである。ただし、錐形状の構造単位は、厳密な幾何学的形状である必要はなく、実質的に錐形状であればよい。
以上のように本実施形態によると、X線マスク1をX線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置するという簡易な構成で、X線マスク1が有するマスクパターンのピッチpよりも微細なピッチpcosθを有する反射防止構造体6を形成できる。したがって、従来のX線リソグラフィでは、X線マスク1のマスクパターンのピッチを、反射を防止すべき光の波長以下のピッチとなるようにしていたが、本実施形態では、X線マスク1に形成されたマスクパターンのピッチpが反射を防止すべき光の波長と同程度もしくはそれ以上であっても、部材2の表面には、反射を防止すべき光の波長未満のピッチで反射防止構造体6を形成できる。これにより、300nmピッチ以上のマスクパターンを有するX線マスク1を用いても、従来は作成が困難であった300nmピッチ未満の反射防止構造体6を、EB描画法等のように高コストで生産性の低い方法によらずに容易に製造することができる。
また、X線リソグラフィは、X線マスク1と部材2とを間隔を持って配置してX線露光を行うため、曲面形状を有する部材2の表面にも好適に反射防止構造体6を形成できる。このX線リソグラフィにおいて、本実施形態を適用することで、可視光全域を透過するレンズ等にも300nmピッチ未満、より好ましくは200nmピッチ以下の反射防止構造体6を形成することが可能となり、光学機器において必要とされる波長の全域にわたって反射防止効果に優れた反射防止構造体6の形成が可能となる。
以下に、光学レンズの製造方法を例に挙げ、本実施形態を具体例に基づき説明する。まず、光学レンズの製造に使用するX線マスク1の製造方法について説明する。図3は、一般的なEB描画法によるX線マスク1の製造工程を説明する図である。図3(a)は、直径100mmのシリコンウェハ12上に、30mm角の炭化シリコン(SiC)メンブレン13を形成した状態を示す。図3(b)は、SiCメンブレン13上にタンタル(Ta)吸収体薄膜14を形成した状態を示す。図3(c)は、必要部分のシリコンウェハ12を除去する裏窓加工を行い、次いで、Ta吸収体薄膜14上にEBレジスト層15を形成した状態を示す。
図3(d)は、EB描画後の基板の状態を示す。EB描画法により、SiCメンブレン13上には、ピッチ300nmのEBレジストからなるL/Sパターンの微細構造体16が形成された。この状態の基板に、ドライエッチング処理を施す。図3(e)は、ドライエッチング処理後の基板の状態を示す。ドライエッチング処理により、Ta吸収体薄膜14が選択的に除去される。これにより、図3(e)に示すように、厚さ1μmでピッチ300nmのTa吸収体薄膜からなるL/Sパターンの微細構造体26を備えたX線マスク1が得られる。ここで得られたX線マスク1のピッチ300nmは、Ta吸収体薄膜14の厚みを1μmとしたとき、現状のEB描画法で作製できる最小のものである。Ta吸収体薄膜14の厚みが厚いほど、細い線は形成しにくくなる。
次に、上記のようにして作製された、300nmピッチのL/Sパターンを有するX線マスク1を用いて、レンズの表面に反射防止構造体を形成する。ここでは、図4、図5、および図6を用いて、同一のX線マスク1を用いて複数回の露光処理を行うことにより、レンズの表面に反射防止構造体を形成する方法について説明する。図4は、レンズの表面に反射防止構造体を形成する工程を説明する図であり、図5は、第1および第2の露光処理におけるX線マスク1のマスクパターンと、部材2の表面におけるX線投影図を示す模式図であり、図6は、露光処理後に形成されるX線強度分布を示す模式図である。
図4(a)は、第1の露光工程を説明する図である。図4(a)において、X線マスク1は、曲面形状を有するレンズ7に対して、X線の照射方向を法線とする面Lに対して、傾きθを持って配置される。このときのX線マスク1のL/Sパターンは、図5(a)に示す配置である。そして、この状態のX線マスク1の側から、X線露光を行う。ここでは、θを約48°とし、X線照射を15A・minとした。これにより、レンズ7の表面には、図5(b)に示すように、L/Sパターンのピッチ方向にcosθ、すなわちcos48°だけ縮小された形状のX線投影図40aが形成される。
第1の露光処理が終了すると、X線マスク1は、X線の光軸まわりに90°回転した状態で配置される。図4(b)は、第2の露光工程を説明する図である。X線マスク1のマスクパターンは、90°回転されることにより、図5(c)に示すような配置となる。ただし、X線の照射方向を法線とする面Lに対する傾き角度θは48°のままである。このような状態で配置されたX線マスク1を介して、レンズ7の表面に向けて第2のX線照射を行う。ここでのX線照射についても、15A・minとした。このX線照射により、レンズ7の表面には、図5(d)に示すように、L/Sパターンのピッチ方向にcosθ、すなわちcos48°だけ縮小された形状のX線投影図40bが形成される。
以上のように、X線吸収領域3とX線透過領域4との幅が1対1で形成されたL/Sパターンを有するX線マスク1を用いて、このX線マスク1をX線の照射方向を法線とする面Lに対する傾きθを持った状態で配置するとともに、L/Sパターン同士が直交するようにして、第1および第2の露光処理を行うことで、各露光処理後のレンズ7の表面には、L/Sパターンのピッチpがパターンの配列方向に縮小された形のL/Sパターン、すなわちpcosθ(48°)=200nmのピッチを有するL/Sパターンを重畳したX線の強度分布が形成される。なお、図4(a)および図4(b)では、X線マスク1の傾き角度θを図示するために、図4(a)と図4(b)とでは、便宜上、視点を90°づつ変えて図示している。
図6(a)は、2回の露光処理後に部材2の表面に形成されるX線の強度分布を示す模式図であり、図6(b)は、図6(a)に示すX線の強度分布を立体的に示した斜視拡大図である。レンズ7の表面に露光されるパターンは、図6(a)に示すように、X線露光量が3レベルの正方格子である。すなわち、露光後のレンズ7の表面には、まったくX線が露光されない領域(図6(a)中、「0」と記す)と、1回だけX線が露光された領域(図6(a)中、「1」と記す)と、2回ともX線が露光された領域(図6(a)中、「2」と記す)とが形成される。
すなわち、図6(a)において、2回のX線露光が行われた領域「2」および1回のX線露光が行われた領域「1」は、ともに現像処理により凹部となる。このとき、凹部の形成深さは、照射されるX線量が多いと深くなる。したがって、凹部は、2回の露光処理が施された領域の方が、1回の露光処理が施された領域よりも深くなる。以上のようにして、図6(b)に示す3レベルの単位構造が周期的に形成された形状に対応するX線強度分布を得ることができる。
第2の露光処理が終了すると、引き続き、第3の露光処理を行う。図4(c)は、第3の露光工程を説明する図である。第3の露光処理では、図4(c)に示すように、X線マスク1を取り除いた状態で、第1および第2の露光処理と同様に、15A・minの露光処理を行う。この第3の露光処理は、錐形状の構造単位を有する反射防止構造体を形成するための処理であり、これにより、図6(b)に示す立体的な構造体のエッジ部分がなまったX線強度分布が形成される。
上記第1〜第3の露光処理が終了すると、レンズ7に現像処理を施す。現像処理は、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノールを主成分とする現像液に、レンズ7を浸漬して行った。図4(d)は、現像後のレンズ7の状態を示す模式図である。現像処理により、レンズ7の表面には、ピッチ200nm、高さ300nmの四角錐形状の構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体6が形成された。
以上のように、本実施形態によると、X線マスク1を傾けて配置した第1および第2の露光処理と、X線マスク1を除いた第3の露光処理とを行い、レンズ7に現像処理を施すことで、錐形状の3レベルの構造単位が反射率を低減すべき光の波長以下(ここでは200nm)のピッチでアレイ状に配列させることが可能となり、レンズ7の表面に入射する光に対して優れた反射防止効果を奏することが可能となる。また、ピッチ300nmのX線マスク1を用いても、サグ量が大きく、可視光全域を透過するレンズ7の表面に、反射防止効果に優れた反射防止構造体を、EB描画法等のように高コストで生産性の低い方法によらずに容易に形成できる。なお、従来は、同様のX線マスク1と部材2とを平行に配置して露光処理を行っていたため、部材2の表面には、X線マスク1と等ピッチのX線強度分布しか形成できず、現像処理後には、ピッチ300nmの反射防止構造体しか形成できなかった。そのため、透過光を利用するレンズ7に、十分な回折光の抑制効果を得ることはできず、結果的に透過率を高める効果が小さいものとなる。それに比べて、本実施の形態のように200nm以下のピッチの反射防止構造体は、透過においても回折光を発生しないので、透過率が著しく高くなる。
また、上記説明では、X線マスク1のL/Sパターンにおいて、X線吸収領域3とX線透過領域4との幅を1対1としたが、任意の比率としてよい。また、回転中心付近と周辺付近との間で幅を変化させるようにL/Sパターンを形成すると、反射率に波長依存性を持たせることも可能である。
また、上記説明では、X線マスク1をX線の光軸まわりに90°回転させてパターンを重畳させる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、X線マスク1をX線の光軸まわりに270°回転させてパターンを重畳させてもよいし、複数回回転させてもよい。要は、最終的に、L/Sパターン同士が直交する関係になるようにX線マスク1を回転させればよい。また、X線マスク1を回転させる代わりに部材2を回転させてもよい。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について、説明する。第1の実施形態では、X線に感光する材料からなる部材に、直接、X線マスク1を90°回転させて2回の露光処理を行い、現像して部材を得る例について説明したが、本実施形態では、X線に感光しない部材の表面に反射防止構造体を形成する方法について説明する。すなわち、X線に感光しない部材の表面に感光性材料を塗布し、同一のX線マスク1を用いて、このX線マスク1をX線の光軸まわりに60°回転させて3回の露光処理を行い、さらにエッチング処理を行って反射防止構造体を形成する。以下、図7、図8、図9、および図10を用いて、本発明の第2の実施形態について具体例を挙げて説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成をなすものには同一の符号をつけてその説明を省略する。
以下に、本発明の第2の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について、説明する。第1の実施形態では、X線に感光する材料からなる部材に、直接、X線マスク1を90°回転させて2回の露光処理を行い、現像して部材を得る例について説明したが、本実施形態では、X線に感光しない部材の表面に反射防止構造体を形成する方法について説明する。すなわち、X線に感光しない部材の表面に感光性材料を塗布し、同一のX線マスク1を用いて、このX線マスク1をX線の光軸まわりに60°回転させて3回の露光処理を行い、さらにエッチング処理を行って反射防止構造体を形成する。以下、図7、図8、図9、および図10を用いて、本発明の第2の実施形態について具体例を挙げて説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成をなすものには同一の符号をつけてその説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造工程を説明する図であり、図8は、第1、第2、および第3の露光処理におけるX線マスク1のマスクパターンと、部材2表面におけるX線投影図を示す模式図である。
図7(a)は、第1の露光工程を説明する図である。図7(a)において、X線マスク1は、シリコンウェハを基板とし、SiCメンブレンにX線を吸収するTa薄膜が形成されたX線吸収領域3と、Ta薄膜が形成されていないX線透過領域4とが平行縞状に形成されたL/Sパターンを有する。L/Sパターンは、図8(a)に示すように、X線吸収領域3とX線透過領域4との幅が1対1で形成されたものであり、ピッチは300nmである。部材2は、石英ガラス基板8の表面にPMMAを主成分とするX線レジスト層9をスピンコート法により、約500nmの厚みで形成し、100℃で30分間、オーブンでプリベーキングを行ったものである。
X線マスク1は、第1の実施形態と同様に、X線の照射方向を法線とする面Lに対してθ(=48°)だけ傾けて配置されており、この状態のX線マスク1を介して部材2の表面に向けて第1のX線照射が行われる。これにより、部材2の表面には、図8(b)に示すように、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影され、部材2の表面には、pcosθ(48°)、すなわち200nmのピッチを有するX線投影図40cが形成される。
第1の露光処理が終了すると、X線マスク1は、X線の光軸まわりに60°回転した状態で配置される。図7(b)は、第2の露光工程を説明する図である。X線マスク1のマスクパターンは、L/SパターンのX線吸収領域3とX線透過領域4との境界部分においてX線の光軸まわりに左方向に60°回転されることにより、図8(c)に示すような配置となる。ただし、X線の照射方向を法線とする面Lに対する傾き角度θは、48°のままである。このような状態で配置されたX線マスク1を介して部材2の表面に向けて第2のX線照射が行われると、部材2の表面には、図8(d)に示すように、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影される。これにより、部材2の表面には、pcosθ(48°)、すなわち200nmのピッチを有するX線投影図40dが形成される。
第2の露光処理が終了すると、X線マスク1は、さらにX線の光軸まわりに左方向に60°回転した状態で配置される。図7(c)は、第3の露光工程を説明する図である。X線マスク1のマスクパターンは、L/SパターンのX線吸収領域3とX線透過領域4との境界部分においてX線の光軸まわりに60°回転されることにより、図8(e)に示すような配置となる。ただし、X線の照射方向を法線とする面Lに対する傾き角度は48°のままである。このような状態で配置されたX線マスク1を介して部材2の表面に向けて第3のX線照射が行われると、部材2の表面には、図8(f)に示すように、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影される。これにより、部材2の表面には、pcosθ(48°)、すなわち200nmのピッチを有するX線投影図40eが形成される。なお、第1〜第3の露光処理は、いずれも12A・minでX線露光を行った。
上記のように、第1、第2および第3の露光処理が行われると、各露光処理後の部材2の表面には、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形のL/Sパターンを重畳したX線の強度分布が形成されるため、最終的に部材2の表面には、縮小された3つのL/Sパターン同士が互いに60°の角度をなすようにして重畳された三角格子パターンを有するX線の強度分布が形成される。なお、図7(a)、図7(b)および図7(c)では、X線マスク1の傾き角度θを図示するために、各図において、便宜上、視点を60°づつ変えて図示している。
図9(a)は、第1、第2および第3の露光処理後に部材2の表面に形成されるX線の強度分布を示す模式図であり、図9(b)は、図9(a)に示すX線の強度分布を立体的に示した斜視拡大図である。上記の方法で部材2表面に露光されるパターンは、図9(a)に示すように、X線露光量が4レベルの三角格子である。すなわち、露光後の部材2表面には、まったくX線が露光されない領域(図9(a)中、「0」と記す)と、1回だけX線が露光された領域(図9(a)中、「1」と記す)と、2回だけX線が露光された領域(図9(a)中、「2」と記す)と、3回ともX線が露光された領域(図9(a)中、「3」と記す)とが形成される。
続いて、図9(b)に示すようなX線強度分布が形成された部材2に、現像処理を施す。図7(d)は、第3の露光処理後の部材2に現像処理を施した状態を示す図である。現像処理は、3回のX線露光処理が施された部材2を、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノールを主成分とする現像液に浸漬して行った。これにより、部材2の表面には、図9(a)に示すX線強度分布に基づいて、図9(a)の反転形状となるピッチ200nm、高さ500nmである柱状の構造単位がアレイ状に配列された構造体10が形成された。すなわち、図9(a)において、X線が露光された領域は、すべて現像により凹部となる。このとき、凹部の形成深さは、照射されるX線量が多いと深くなる。したがって、凹部は、3回のX線露光が行われた領域「3」、2回のX線露光が行われた領域「2」、1回だけX線が露光された領域「1」、全く露光されない領域「0」の順に深くなる。以上のようにして、図9(b)に示す4レベルの単位構造が周期的に形成された形状と反転した形状の構造を得ることができる。しかしながら、構造体10は柱状構造を重ね合わせた構造をしているので、十分な反射防止効果が得られるものではない。
そこで、本実施形態では、X線レジストからなる構造体10をマスクとして、石英ガラス基板8にエッチング処理を施し、エッチングによって、角を削り、錐状形状とし、反射防止効果を付与する。図7(e)は、エッチング処理後の石英ガラス基板8の状態を示す模式図である。このような状態の石英ガラス基板8を得るために、構造体10が形成された石英ガラス基板8をRFドライエッチング装置に入れ、反応ガスとしてCHF3 ガスおよびO2 ガスを用いて、石英ガラス基板8の表面にエッチング処理を施した。これにより、石英ガラス基板8の表面には、ピッチ200nm、高さ250nmであり、アスペクト比が1.25の錐形状の構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体11が形成された。この場合、X線レジスト層9と石英ガラス基板8のエッチングレート比は2:1であった。反射防止構造体11が形成された石英ガラス基板8の表面反射率を測定したところ、波長が250nm以上の光について平均で約0.2%の値を示した。
以上のように、本実施形態によると、複数回の露光処理とエッチング処理とを組み合わせることで、石英ガラス基板8のようにX線に感光しない部材を用いても、反射防止効果に優れた反射防止構造体を容易に形成することができる。
なお、上記説明では、X線マスク1をX線の光軸まわりに60°づつ回転させてパターンを重畳させる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、X線マスク1をX線の光軸まわりに120°づつ回転させてパターンを重畳させてもよいし、第1の露光処理後のX線マスク1をX線の光軸まわりに60°回転させて第2の露光処理を行い、さらにX線マスク1を逆方向に120°回転させて第3の露光処理を行うことにより、L/Sパターンを重畳することもできる。また、第1の露光処理後のX線マスク1をX線の光軸まわりに120°回転させて第2の露光処理を行い、さらに逆方向に60°回転させて第3の露光露光処理を行うことにより、L/Sパターンを重畳すること等も可能である。要は、最終的に、L/Sパターン同士がそれぞれ60°の角度をなす関係になるようにX線マスク1を回転させればよい。また、X線マスク1を回転させる代わりに部材2を回転させてもよい。
また、上記説明では、X線マスク1のL/Sパターンにおいて、X線吸収領域3とX線透過領域4の幅を1対1としたが、任意の比率としてよい。また、回転中心付近と周辺付近との間で幅を変化させるようにL/Sパターンを形成すると、反射率に波長依存性を持たせることも可能である。
さらに、上記説明では、X線マスク1をL/SパターンのX線吸収領域3とX線透過領域4との境界部分においてX線の光軸まわりに回転させてパターンを重畳させる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、X線マスク1をL/SパターンのX線吸収領域3あるいはX線透過領域4においてX線の光軸まわりに回転させてパターンを重畳させるようにしてもよい。以下に、図10を用いて、X線マスク1をL/SパターンのX線吸収領域3においてX線の光軸まわりに回転させた例について説明する。
図10(a)は、図7(a)〜図7(c)に示す露光処理と同様に、3回の露光後の部材2表面に形成されるX線の強度分布を示す模式図であり、図10(b)は、図10(a)に示すX線の強度分布を立体的に示した斜視拡大図である。ただし、X線マスク1は、上述のように、L/SパターンのX線吸収領域3においてX線の光軸まわりに60°づつ回転させている。図10(a)において、部材2表面に形成されるパターンは、X線露光量が4レベルの三角格子である。ただし、この例では、X線マスク1をX線吸収領域3においてX線の光軸まわりに回転させているので、正六角形状のパターンを含む三角格子となっている。すなわち、露光後の部材2の表面には、まったくX線が露光されない領域(図10(a)中、「0」と記す)と、1回だけX線が露光された領域(図10(a)中、「1」と記す)と、2回だけX線が露光された領域(図10(a)中、「2」と記す)と、3回ともX線が露光された領域(図12(a)中、「3」と記す)とが形成される。
以上のようにして、図10(b)に示す4レベルの単位構造が周期的に形成された形状に対応するX線強度分布を得ることができる。図10(b)に示すX線強度分布に基づき部材2を現像すると、図10(b)に示す4レベルの単位構造が周期的に形成された形状と反転した形状の構造を得ることができる。しかしながら、得られる構造体は、柱状構造を重ね合わせた構造をしているので、十分な反射防止効果を有するものとは言えない。
そこで、この例においても、図7(d)に示す工程と同様に、X線レジストからなる構造体10をマスクとして、石英ガラス基板8にエッチング処理を施し、エッチングによって、角を削り、錐状形状とし、反射防止効果を付与する。そして、図7(e)に示す工程と同様に、エッチング処理を行うことで、石英ガラス基板8の表面には、上記と同様に、ピッチ200nm、高さ250nmの錐形状の構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体11が形成され、表面反射率が約0.2%と優れた反射防止効果を奏する石英ガラス基板8が得られる。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について、具体例に基づき説明する。本実施形態では、石英ガラス基板8のようにX線に感光しない部材の表面に、第2の実施形態よりもさらにアスペクト比の大きな反射防止構造体を形成する方法について説明する。
以下に、本発明の第3の実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造方法について、具体例に基づき説明する。本実施形態では、石英ガラス基板8のようにX線に感光しない部材の表面に、第2の実施形態よりもさらにアスペクト比の大きな反射防止構造体を形成する方法について説明する。
図11は、本実施形態に係る反射防止構造体を有する部材の製造工程を説明する図である。図11(a)は、第1の露光工程を説明する図である。図11(a)において、部材2は、石英ガラス基板8とX線レジスト層9との間にエッチングマスク層20を有する。エッチングマスク層20は、Cr、Ni、Fe等のエッチングマスク材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法により形成することができる。ここでは、Crからなる厚み200nmのエッチングマスク層20を例に挙げて説明する。X線レジスト層9はスピンコート法により500nmの厚みで形成したものである。このような構成を有する部材2に対して、第1の実施形態に使用したのと同じ300nmのピッチを有するX線マスク1を、X線の照射方向を法線とする面Lに対してθ(=48°)だけ傾けて配置し、この状態でX線マスク1の側から15A・minで第1のX線露光を行った。これにより、部材2の表面には、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影され、pcosθ(48°)、すなわち200nmのピッチを有するL/SパターンのX線投影がなされる。
第1の露光処理が終了すると、X線マスク1を、X線の光軸まわりに90°回転した状態で配置し、この状態のX線マスク1を介して第2のX線露光を行った。図11(b)は、第2の露光工程を説明する図である。なお、X線マスク1の傾き角度θは、48°のままであり、X線露光は、15A・minである。これにより、部材2の表面には、第1の露光工程で形成されたL/Sパターンと直交し、L/Sパターンのピッチpが配列方向に沿って縮小された形でX線が投影され、pcosθ(48°)、すなわち200nmのピッチを有するL/SパターンのX線投影がなされる。なお、図11(a)および図11(b)では、X線マスク1の傾き角度θを図示するために、図11(a)と図11(b)とでは、便宜上、視点を90°づつ変えて図示している。
次に、第1および第2の露光処理を行った部材2を、2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノールを主成分とする現像液に浸漬して現像処理を行った。図11(c)は、現像後の部材2の状態を示す模式図である。現像処理により、エッチングマスク層20の表面には、第2の実施形態と同様に、ピッチ200nm、高さ500nmである、四角柱形状の構造単位がアレイ状に配列されたX線レジストからなる構造体21が形成された。
次に、X線レジストからなる構造体21をマスクとして、エッチングマスク層20に第1のエッチング処理を施す。図11(d)は、第1のエッチング処理後における部材2の状態を示す模式図である。このような状態の部材2を得るために、構造体21が形成された部材を、RFドライエッチング装置に入れ、エッチングガスとしてArガスを用いて、エッチングマスク層20に第1のエッチング処理を施した。これにより、石英ガラス基板8の表面には、ピッチ200nm、高さ150nmのCrからなる柱状の構造単位がアレイ状に配列された構造体22が形成された。この時、構造体22を構成する各構造単位は、エッチング処理によって多少角が削られた形状となっているが、Crからなるエッチングマスク層20の膜厚が薄いため、ほぼ柱状構造を保っている。ここで、X線レジスト層9とエッチングマスク層20とのエッチングレート比は、10:3であった。
さらに、Crからなる構造体22をマスクとして、石英ガラス基板8に第2のエッチング処理を施す。図11(e)は、第2のエッチング処理後における石英ガラス基板8の状態を示す模式図である。このような状態の石英ガラス基板8を得るために、Crからなる構造体22が形成された石英ガラス基板8を、RFドライエッチング装置に入れ、そして、反応ガスとしてCHF3 ガスおよびO2 ガスを用いて、石英ガラス基板8の表面にエッチング処理を施す。このエッチング処理によって、石英ガラス基板8の表面には柱状の構造単位が形成されるとともに、各構造単位の角が削り取られて錐状形状となり、反射防止効果が付与される。結果として、石英ガラス基板8の表面には、ピッチ200nm、高さ750nmであり、アスペクト比が3の錐形状の構造単位がアレイ状に配列された反射防止構造体23が形成された。この場合、Crからなる柱状の構造体22と石英ガラス基板8とのエッチングレート比は、1:5であった。
以上のように、本実施形態によると、表面がX線レジスト層9にて形成され、その下にエッチングマスク層20が形成された部材2を用いて、現像処理後に第1および第2のエッチング処理を行うことで、第2の実施形態よりもさらにアスペクト比の大きな反射防止構造体を得ることができ、反射防止効果を高めることができた。反射防止構造体23が形成された石英ガラス基板8の表面反射率を測定したところ、波長が250nm以上の光について平均で約0.05%の値を示した。
以上、各実施形態では、X線リソグラフィにより部材の表面に直接に反射防止構造体を形成する方法について説明した。これらの方法により製造された反射防止構造体を有する部材は、光学素子や光学部品を成形するための成形型あるいはこの成形型を形成するためのマスタ型としても用いることができる。上記各実施形態に係る方法により製造された部材を成形型として用いるときには、部材がガラス材料や金属材料にて形成されていれば、プレス成形や射出成形等のように高温高圧雰囲気下で使用される成形型にも適用できる。しかしながら、部材が樹脂材料にて形成されているときには、プレス成形や射出成形等には適用できないため、この部材をマスタ型として複製金型を作成する必要がある。このように、上記各実施形態で作成した部材を成形型あるいはマスタ型として用いることで、反射防止構造体を備えた部材を、射出成形やプレス成形といった簡易な方法で量産することが可能となる。以下に、その詳細について説明する。
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態に係る方法により作成された反射防止構造体を有する部材を用いて、電鋳処理により複製型を製造する方法について、具体例を挙げて説明する。図12は、本発明の第4の実施形態に係る複製型の製造工程を説明する図である。図12(a)は、第1の実施形態に係る方法により作成された反射防止構造体6を有するレンズ7の断面図である。レンズ7は、PMMA樹脂にて形成されていることから導電性を有するものではない。そこで、電鋳処理を行えるようにレンズ7に無電解メッキ層を形成して導電性を付与する。
本実施形態では、第1の実施形態に係る方法により作成された反射防止構造体を有する部材を用いて、電鋳処理により複製型を製造する方法について、具体例を挙げて説明する。図12は、本発明の第4の実施形態に係る複製型の製造工程を説明する図である。図12(a)は、第1の実施形態に係る方法により作成された反射防止構造体6を有するレンズ7の断面図である。レンズ7は、PMMA樹脂にて形成されていることから導電性を有するものではない。そこで、電鋳処理を行えるようにレンズ7に無電解メッキ層を形成して導電性を付与する。
図12(b)は、無電解メッキ層を形成するための処理工程を説明する断面図である。図12(b)に示すように、反射防止構造体6を有するレンズ7に、増感処理およびPdによる活性化処理を行った後、無電解メッキ用のNi/Bメッキ溶液60に浸漬する。これにより、反射防止構造体6を有するレンズ7の表面には、厚み40nmの無電解Ni/Bメッキ層61が形成される。
図12(c)および図12(d)は、無電解メッキ層61が形成されたレンズ7に電気メッキ処理を施すための電鋳処理工程を説明する断面図である。図12(c)に示すように、無電解メッキ層61が形成されたレンズ7をカソードとして、対極にNi電極を用い、スルファミン酸ニッケル電解液62に浸漬し、0.5A/dm2 〜5A/dm2 の条件下で電気メッキを施した。これにより、無電解メッキ層61で覆われた反射防止構造体6の形成面にNiメッキ層63が2mmの厚みで形成される。次いで、図12(d)に示すように、Niメッキ層63が形成されたレンズ7を、塩基性溶液64に浸漬する。これにより、レンズ7を溶解し、複製型65が形成される。
図12(e)は、塩基性溶液64から取り出して、レンズ7を剥離した状態の複製型65の状態を示す断面図である。得られた複製型65には、反射防止構造体6と反転形状を有する反射防止構造体66が形成される。
以上のように、本実施形態によると、射出成形やプレス成形に使用できる型を電鋳処理により容易に製造することができる。なお、電鋳処理により形成された複製型65の成形面には、撥水処理が施されていても良い。撥水処理に使用する撥水処理剤には、従来公知の材料が使用でき、複製型65の成形面にこのような撥水処理材料をコーティングすることで、成形加工に用いる際に、成形用素材、特に樹脂材料の付着が防止できるとともに低温での成形加工が可能となり、成形サイクルの短縮化が図れる。なお、本実施形態において、複製型65とは、実際に成形加工に使用する型としての機能だけでなく、それ自身が光学機能を有する部材として機能することも可能である。
(第5の実施形態)
本実施形態では、第4の実施形態で作成した複製型65を用いて、射出成形により、表面に反射防止構造体が形成されたレンズを製造する方法について説明する。図13は、本発明の第5の実施形態に係るレンズを製造する過程における各段階での状態を示す図である。図13(a)は、射出成形を行う成形機の構成を示す断面図である。図13(a)において、成形機は、ベース型67aおよび67bの間にインサート型としての複製型65が組み込まれて、樹脂が充填されるキャビティが構成されている。キャビティの内面全体には、シランカップリング剤が塗布されることにより表面保護離型層68が形成されている。
本実施形態では、第4の実施形態で作成した複製型65を用いて、射出成形により、表面に反射防止構造体が形成されたレンズを製造する方法について説明する。図13は、本発明の第5の実施形態に係るレンズを製造する過程における各段階での状態を示す図である。図13(a)は、射出成形を行う成形機の構成を示す断面図である。図13(a)において、成形機は、ベース型67aおよび67bの間にインサート型としての複製型65が組み込まれて、樹脂が充填されるキャビティが構成されている。キャビティの内面全体には、シランカップリング剤が塗布されることにより表面保護離型層68が形成されている。
図13(b)は、キャビティ内に樹脂を充填する状態を示す図である。図13(b)において、複製型65は80°Cに加熱されており、キャビティ内には、ベース型67aおよび67bの側部より流動状態にあるポリオレフィン樹脂69が供給される。
図13(c)は、キャビティ内にポリオレフィン樹脂69が充填された状態を示す図である。図13(c)において、ポリオレフィン樹脂69は、完全に固化するまで冷却処理される。ポリオレフィン樹脂69が完全に固化すると、ベース型67aおよび67bが開かれて樹脂が取り出される。
図13(d)は、得られたレンズ70の構成を示す断面図である。レンズ70には、複製型65に形成された反射防止構造体66の反転形状を有する反射防止構造体71が形成される。反射防止構造体71が形成されたレンズ70の表面の反射率を測定したところ、第1の実施形態で示したレンズ7とまったく同じような低反射率が得られ、波長が250nm以上の光について、レンズ全体にわたって、平均で約0.4%の値を示した。
以上のように、本実施形態によると、レンズ70のような曲面上にも容易に反射防止構造体71を形成でき、しかも、短時間で生産性良くレンズ70を量産できる。なお、上記説明では、ポリオレフィン樹脂69を用いて射出成形を行ったが、その他、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、あるいはポリエチレン樹脂等の樹脂やガラス等のように加熱軟化できる材料についても適用できる。
また、上記説明では、反射防止構造体71が形成される部材として、片側に凸面を持つレンズ70を例に挙げて説明したが、複製型65を上型および下型の両方に用いれば、両側に凸面を持つレンズであっても容易に曲面上に反射防止構造体を形成できる。また、複製型65の形状や配置等を適宜変化させることにより様々な形状および用途に適用できる部材にも適用できる。
さらに、本実施形態では、第4の実施形態に係る方法により電鋳処理が施された型を複製型65として用いたが、耐熱性や強度を満たすものであれば、第2あるいは第3の実施形態に係る方法により製造された石英ガラスなどから成る型であっても射出成形に用いる型として適用できる。
なお、本実施形態では、射出成形を行った例を挙げて説明したが、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、あるいはポリエチレン樹脂等の樹脂やガラス等のように加熱軟化できる材料を用いた成形加工としてはプレス成形も適用できる。
(第6の実施形態)
本実施形態では、第2の実施形態に係る方法により反射防止構造体が形成された部材(ここでは石英レンズ)を成形型として用い、プレス成形により、表面に反射防止構造体が形成された部材を製造する方法について説明する。図14は、本発明の第6の実施形態に係るレンズを製造する過程における各段階での状態を示す図である。
本実施形態では、第2の実施形態に係る方法により反射防止構造体が形成された部材(ここでは石英レンズ)を成形型として用い、プレス成形により、表面に反射防止構造体が形成された部材を製造する方法について説明する。図14は、本発明の第6の実施形態に係るレンズを製造する過程における各段階での状態を示す図である。
図14(a)は、プレス成形を行う成形機の構成を示す断面図である。図14(a)において、チャンバー80は、その内部を全て窒素(N2 )ガスに置換されており、上型81と下型82とが対向して配置されている。上型81は、第2の実施形態に係る製造方法により反射防止構造体が形成された石英ガラスからなる凹レンズであり、図示されていない駆動軸によって上下可動に構成されている。下型82は、炭化タングステン(WC)を主成分とした材料からなり、レンズの成形材料を保持できるように凹部が形成されている。そして、上型81の成形面および下型82の凹部には、離型性の向上を図るために、離型膜83が形成されている。離型膜83は、スパッタリング法により形成されたIr−Rh合金薄膜であり、上型81に形成された離型膜83の厚みは0.01μmであり、下型82に形成された離型膜83の厚みは0.03μmである。
下型82の凹部には、レンズの成形材料となるガラス基板84が載置されている。ガラス基板84はクラウン系硼珪酸ガラス(転移点Tg:501°C、屈伏点At:549°C)からなり、その表面には、窒化硼素(BN)を主成分とする離型剤からなる離型剤85が形成されている。
図14(b)は、ガラス基板84にプレス加工を行う状態を示す。図14(b)において、上型81は下降して、ガラス基板84を590℃、1000Nの条件下で3分間プレス成形する。プレス加工が終了すると、冷却処理を行うことなく、14(c)に示すように、上型81を上昇させる。これにより、成形されたガラスレンズ86の表面には、上型81に形成された反射防止構造体とは反転形状を有する反射防止構造体87が形成され、図14(d)に示すような、レンズ86が得られる。レンズ86の表面反射率を測定したところ、波長が250nm以上の光について平均で約0.2%の値を示した。
以上のように本実施形態によると、第2の実施形態に係る方法により製造された部材を成形型として用いることにより、反射防止構造体を有する部材を容易に製造できる。これにより、反射防止効果に優れた部材を容易に量産できる。また、得られた部材は、さらに射出成形やプレス成形に使用するための型として用いることも可能である。さらに、上記説明では、上型81および下型82の成形面に離型膜83を形成したが、この離型膜83がなければ、ガラス基板84を構成するガラス材料が部分的ではあるが直接に型に接触して融着を生じてしまい、ガラス基板84を型から離型できなくなることがある。このとき、ガラス材料を無理に離型しようとすると、ガラス材料あるいは型が割れることがあるため、本実施形態においては、上型81および下型82の成形面に離型膜83を形成することが好ましい。さらに、第3の実施形態に係る方法により製造された石英ガラスなどから成る、アスペクト比の大きな反射防止構造体を有する型を用いると、さらに反射率の小さな部材の成形が可能となる。
本発明は、デジタルカメラやプリンタ装置等に用いられるレンズ素子、プリズム素子等光路中の光線に対する反射防止処理が必要な光学機能面を持つ光学素子に好適である。また、本発明は、それら光学素子の保持に用いられる構造部材や光学素子を含む機器全体を保護する筐体部材等に適用することにより、不要光を防止する反射防止面とすることができる。さらに、本発明は、半導体レーザ素子や発光ダイオード等の発光素子や、フォトダイオード等の受光素子、CCDやCMOS等の撮像素子や、光通信に用いられる光スイッチや分岐器等の各種デバイスにおいて、反射防止処理が必要な部分に形成することにより、各デバイスの機能を向上させることができる。さらに、本発明は、液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマ発光パネル等のディスプレイパネルの表示部分に適用してもよい。その他、本発明は、光学機器に用いられる反射防止処理が必要なあらゆる部材に対して広く適用可能である。
1 X線マスク
2 部材
3 X線吸収領域
4 X線透過領域
5 X線投影図
6 反射防止構造体
7 レンズ
8 石英ガラス基板
9 X線レジスト層
10 構造体
11 反射防止構造体
12 シリコンウェハ
13 SiCメンブレン
14 Ta吸収体薄膜
15 EBレジスト層
16、26 L/Sパターンの微細構造体
20 エッチングマスク層
21、22 構造体
23 反射防止構造体
40a、40b、40c、40d、40e、40f X線投影図
60 Ni/B溶液
61 無電解メッキ層
62 スルファミン酸ニッケル電解液
63 Niメッキ層
64 塩基性溶液
65 複製型
65a、65b ベース型
66 反射防止構造体
68 表面保護離型層
69 ポリオレフィン樹脂
70 レンズ
71 反射防止構造体
80 チャンバー
81 上型
82 下型
83 離型膜
84 ガラス基板
85 離型剤
86 レンズ
87 反射防止構造体
2 部材
3 X線吸収領域
4 X線透過領域
5 X線投影図
6 反射防止構造体
7 レンズ
8 石英ガラス基板
9 X線レジスト層
10 構造体
11 反射防止構造体
12 シリコンウェハ
13 SiCメンブレン
14 Ta吸収体薄膜
15 EBレジスト層
16、26 L/Sパターンの微細構造体
20 エッチングマスク層
21、22 構造体
23 反射防止構造体
40a、40b、40c、40d、40e、40f X線投影図
60 Ni/B溶液
61 無電解メッキ層
62 スルファミン酸ニッケル電解液
63 Niメッキ層
64 塩基性溶液
65 複製型
65a、65b ベース型
66 反射防止構造体
68 表面保護離型層
69 ポリオレフィン樹脂
70 レンズ
71 反射防止構造体
80 チャンバー
81 上型
82 下型
83 離型膜
84 ガラス基板
85 離型剤
86 レンズ
87 反射防止構造体
Claims (14)
- X線露光法により部材の表面に反射防止構造体を形成するための方法であって、
X線マスクを介して、少なくとも構造体形成面を感光性材料にて形成された部材に向けてX線を露光する露光工程と、
露光された前記部材を現像する現像工程とを備え、
前記露光工程は、前記X線マスクを前記X線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態で当該X線を露光することを特徴とする、反射防止構造体を有する部材の製造方法。 - 前記露光工程は、前記X線マスクを、前記X線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態で前記部材にX線を露光する第1の露光工程と、
前記X線マスクおよび前記部材の少なくとも一方を前記X線の光軸まわりに回転させて両者の相対的な位置関係を変更した後、当該X線マスクを、前記X線の照射方向を法線とする面に対して傾けて配置した状態で前記露光された部材に前記X線を露光する回転処理を少なくとも1回含む第2の露光工程とを有することを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。 - 前記X線マスクのマスクパターンは、ラインアンドスペースパターンであることを特徴とする、請求項2に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記部材は、光学素子または光学部品であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記感光性材料は、ポリメタクリル酸メチルまたはフッ素系樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記反射防止構造体は、アスペクト比が1以上である錐形状を構造単位とし、当該構造単位が反射を防止すべき光の波長以下のピッチで部材の前記構造体形成面にアレイ状に配置されてなることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記感光性材料は、感光性レジストであり、
前記現像工程の後に、当該現像工程によってパターン形成された前記感光性レジストをマスクとして前記部材をドライエッチングするエッチング工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。 - 前記感光性材料は、感光性レジストであり、前記感光性レジストからなる層の下にはエッチングマスク用の材料からなるエッチングマスク層を有し、
前記現像工程の後に、当該現像工程によってパターン形成された前記感光性レジストをマスクとして、前記エッチングマスク層をウェットエッチングあるいはドライエッチングする第1のエッチング工程と、前記第1のエッチング工程によってパターン形成されたエッチングマスク層をマスクとして前記部材をドライエッチングする第2のエッチング工程とをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。 - 前記現像工程の後に、前記反射防止構造体が形成された部材を用いて電鋳処理を行うことにより複製型を形成する複製型形成工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記現像工程の後に、前記反射防止構造体が形成された部材を用いてプレス成形を行うことにより複製型を形成する複製型形成工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記複製型形成工程は、前記複製型の成形面に撥水処理を施す撥水処理工程を含むことを特徴とする、請求項9に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記複製型形成工程は、前記複製型の成形面に離型処理を施す離型処理工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記複製型形成工程の後に、前記複製型を用いて、樹脂材料あるいはガラス材料からなる成形用素材を成型加工する成型工程をさらに備えることを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
- 前記成型工程は、射出成形法またはプレス成形法により行うことを特徴とする、請求項13に記載の反射防止構造体を有する部材の製造方法。
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JP2005067239A JP2006251318A (ja) | 2005-03-10 | 2005-03-10 | 反射防止構造体を有する部材の製造方法 |
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-
2005
- 2005-03-10 JP JP2005067239A patent/JP2006251318A/ja active Pending
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US8665688B2 (en) | 2007-01-18 | 2014-03-04 | Sony Corporation | Optical device, method of manufacturing the same, replica substrate for producing optical device, and method of producing the same |
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WO2021137274A1 (ja) * | 2019-12-30 | 2021-07-08 | ナルックス株式会社 | 石英ガラス基板に微細凹凸表面構造を製造する方法 |
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