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JP2006179963A - Nd−Fe−B系磁石 - Google Patents

Nd−Fe−B系磁石 Download PDF

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JP2006179963A
JP2006179963A JP2006092540A JP2006092540A JP2006179963A JP 2006179963 A JP2006179963 A JP 2006179963A JP 2006092540 A JP2006092540 A JP 2006092540A JP 2006092540 A JP2006092540 A JP 2006092540A JP 2006179963 A JP2006179963 A JP 2006179963A
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JP
Japan
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magnet
coercive force
hcj
sample
grain boundary
Prior art date
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Application number
JP2006092540A
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English (en)
Inventor
Toshiharu Suzuki
俊治 鈴木
Kenichi Machida
憲一 町田
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Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
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Publication date
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Abstract


【課題】希少資源であるDy等の希土類元素含有量を節減しても高保磁力、又は高残留磁
束密度が得られる高性能な希土類磁石を提供すること。
【解決手段】所定の形状寸法とするため機械加工を済ませた、内部にNd元素リッチな結
晶粒界層を有する磁石において、該結晶粒界層は、該磁石表面からのM元素(但し、Mは
、Pr,Dy,Tb,Hoから選ばれる希土類元素の一種又は二種以上)の拡散浸透によ
りM元素の濃度が富化されており、該M元素の拡散浸透量は、下記の式1、及び式2を満
たす量であり、Hcj≧1+0.2×M(ただし、0.05≦M≦10)・・・(式1)
ただし、Hcj:保磁力、単位(MA/m)、M:磁石全体に占めるM元素含有量(質量
%)、Br≧1.68−0.17×Hcj ・・・(式2)ただし、Br:残留磁束密度
、単位(T)、かつ該Hcjが、成膜前の磁石の保磁力の1.19倍以上であることを特
徴とする、Nd−Fe−B系磁石。
【選択図】図1

Description

本発明は、Nd−Fe−B系磁石において、Dy等の希少金属資源を有効活用した高性
能磁石に関する。
希土類−鉄−ホウ素系磁石、特にNd−Fe−B系の焼結磁石は永久磁石の中で最も高
性能磁石として知られており、ハードデスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や
磁気断層撮影装置(MRI)の磁気回路等に幅広く使用されている。上記の用途向けの磁
石においては磁気特性の内、高い残留磁束密度Brと高い最大エネルギー積(BH)ma
を特徴とする磁石が適し、保磁力Hcjはさほど高い必要性がない。
一方、近年の電気自動車用途のためには耐熱性が要求され、100〜200℃における
高温減磁を避けるために高保磁力を有する磁石が求められている。そのため、この磁石内
部のNdFe14B主相と周囲のNdリッチ副相の組織を最適に制御すると共に、磁石
中にNd元素より資源的に希少なDy元素を数〜十数質量%程度含有させることによって
保磁力を高めた焼結磁石が近年増加している。
しかし、この磁石はBr又は(BH)maxと、Hcjの値が相反する関係にあり、磁
石中のDy元素の添加量を増やしてHcjを増加させると、磁石の飽和磁束密度の急激な
減少を招いて前2者の値が低下してしまうため、これまで両者共に高い値を有する希土類
磁石は得られておらず、高性能(高Br)型と耐熱(高Hcj)型とに分類されて生産さ
れている。
Nd−Fe−B系磁石において、Brの低下を抑制しつつHcjを向上させるには、焼
結密度や各結晶粒の配向性を向上させたり、焼結条件と添加元素を工夫して結晶組織を微
細化させたりする等、多くの報告がある。この焼結磁石は核発生型の保磁力機構を持つこ
とが知られており、したがって、逆磁区の発生源となりやすい結晶粒界や磁石表面を清浄
化して磁気的に強化することが望ましい。そのためには、Ndより磁気異方性が大きいD
yやTb等を磁石合金内の結晶粒界に優先的に存在させるのが有効である。
例えば、焼結磁石を製作する際にNdFe14Bを主とする合金と、Dy等を多く含
む合金若しくはNdFe14B組成と若干異なる合金等を別々に製作し、各粉末を適正
比率で混合して成形焼結することにより保磁力を向上させる方法の発明が知られている(
例えば、特許文献1、2)。また、異方性磁石粉末の製作において、NdFe14Bを
主とする合金粉末とDy合金粉末を混合して熱処理することにより、前者の粉末表面にD
yをコーティングして保磁力を増加する方法の発明が知られている(例えば、特許文献3
)。
特開昭61−207546号公報 特開平05−021218号公報 特開2000−96102号公報
上記の特許文献1、2には、2つの合金を出発原料としてNdFe14B主相よりも
Ndリッチ結晶粒界層に、より多くのDy元素等を分布させ、その結果として、残留磁束
密度の低下を抑制しつつ保磁力を向上させた焼結磁石が得られることが開示されており、
その技術の一部は現在の磁石製造に応用されている。
しかし、Dy等を多く含む合金製作に工数が別途かかること、該合金は粘いために数ミ
クロンまで粉砕するには超急冷法や水素脆化する方法等、特殊な方法を用いる必要がある
こと、NdFe14B組成合金より格段に酸化しやすいためにより一層の酸化防止が必
要であること、及び2つの合金の焼結と熱処理反応を厳密に制御する必要があること等、
製造面で多くの解決すべき課題がある。また、本方法によって得られる磁石においては、
現在、なお10質量%未満のDyが含有されるため、高保磁力型磁石は残留磁束密度が低
いものとなっている。
特許文献3には、Nd−Fe−B系磁石粉末と、Dy−Co又はTbH等の粉末とを
混合し高温で熱処理して、DyやTbを磁石粉末表面にコーティングさせることにより高
保磁力の異方性磁石粉末を得ている。しかし、この方法でもDy−Co又はTbH等の
粉末における粉砕や酸化等の問題を解消できず、また、Dy−Co又はTbH等の粉末
を完全に反応終結させて消滅させ、主とする磁石粉末のみを得ることが難しい。また、異
方性粉末においては、その結晶粒径は0.3ミクロン前後であり明確な結晶粒界層が認め
られないため、焼結磁石とは保磁力機構が異なりDyのコーティングが保磁力向上にどの
ように寄与しているかが不明である。
また、Nd−Fe−B系磁石は最終寸法の磁石を得るまでの加工工程において、特に酸
化や機械的な劣化を生じることが知られているが、上記の特許文献1、2では焼結磁石の
内部を構成する結晶組織を改良することはできるが、一般の磁石製品を製作するための切
断や研磨加工後の特性低下を免れることができない。同様に上記の特許文献3でも、改良
した磁石粉末にエポキシ樹脂等を添加混合して数百MPaの圧力で成型加工すると、その
過程で多くの粉末は圧縮と同時に破砕されて磁気特性が低下するため、製作されるボンド
磁石の性能は磁石粉末の本来の特性より低いものとなってしまう。
焼結磁石の内部組織は、6〜10ミクロンの微細で均一な主相結晶粒の周囲を1ミクロ
ン以下の厚さの均一で薄いNdリッチ結晶粒界層が取り囲んでいる。核発生型の磁石では
、減磁界が加わったときの逆磁区の発生をいかに抑止するかが保磁力の大小を決めるため
、逆磁区の核となりやすい不純物や不均一な組織を排除する必要がある。例えば、文献
D.Givord et al., J.Appl.Phys., 60 (1986) 32
63において、逆磁区は磁石内部の結晶粒界の乱れと磁石表面の酸化や機械的損傷によっ
て発生し、特に表面の影響が大きいことが指摘されている。また、実際に焼結磁石を機械
加工によって裁断して磁石厚さをおよそ1mm以下にした場合に、保磁力が著しく低下す
ることが良く知られている。
そこで、本発明では、希少資源であるDy等の希土類元素含有量を節減しても高保磁力
、又は高残留磁束密度が得られることを特徴とする高性能なNd−Fe−B系磁石を提供
することを目的とする。
焼結磁石の磁気特性の改良には最終製品を得るために所定の形状寸法とするため機械加
工などを済ませた磁石に対して、特性向上の技術を付加するのが合理的な解決法であり、
既に、本発明者らは、最終磁石製品の表面に希土類金属を成膜して拡散することにより、
磁気特性を向上させる技術に関する発明を特許出願した(特願2003−96866号)
本発明者らは、さらに技術内容を詳細に吟味した結果、従来の焼結磁石では得られない
保磁力を、Dy等のわずかな含有量で実現できるか、又は従来と同等のDy含有量におい
ては残留磁束密度を向上させることができる手段を見出した。この手段により、残留磁束
密度の低下を抑制して最大エネルギー積の大幅な向上を図ることができた。
本発明者らは、Nd−Fe−B系希土類磁石の保磁力機構を基に、焼結磁石の結晶組織
と磁石に含有されるDy等の元素の役割について詳細に実験調査を重ねた結果、Dy等の
希土類金属を結晶粒界層を利用して磁石内部側に薄く、表面側に濃く分布させることによ
り、磁石中のDy等の希土類金属を有効活用した高性能Nd−Fe−B系磁石の開発に成
功した。
すなわち、本発明は、(1)粉末成形と焼結法によって製作される磁石、又は粉末成形
と熱間塑性加工によって製作される磁石であって、最終製品を得るために所定の形状寸法
とするため機械加工を済ませた、内部にNd元素リッチな結晶粒界層を有する磁石におい
て、
該結晶粒界層は、該磁石表面からのM元素(但し、Mは、Pr,Dy,Tb,Hoから選
ばれる希土類元素の一種又は二種以上)の拡散浸透によりM元素の濃度が富化されており

該M元素の拡散浸透量は、保磁力Hcjと拡散に与らずに磁石の最表面に残ったM元素及
び成膜前の磁石中に含まれるM元素を含む磁石全体に占めるM元素含有量の関係、及び残
留磁束密度Brと保磁力Hcjの関係が下記の式1、及び式2を満たす量であり、
Hcj≧1+0.2×M(ただし、0.05≦M≦10)・・・(式1)
ただし、Hcj:保磁力、単位(MA/m)、M:磁石全体に占めるM元素含有量(質量
%)
Br≧1.68−0.17×Hcj ・・・(式2)
ただし、Br:残留磁束密度、単位(T)
かつ該Hcjが、成膜前の磁石の保磁力の1.19倍以上であることを特徴とする、Nd
−Fe−B系磁石、である。
本発明の磁石は、粉末成形と焼結法によって製作した磁石、又は粉末成形と熱間塑性加
工によって製作したNd−Fe−B系磁石を、最終製品を得るために所定の形状寸法とす
るため機械加工を済ませた後、該磁石を減圧槽内に支持し、該減圧槽内で物理的手法によ
って蒸気又は微粒子化したM元素(但し、Mは、Pr,Dy,Tb,Hoから選ばれる希
土類元素の一種又は二種以上)又はM元素を含む合金を、該磁石の表面の全部又は一部に
飛来させて成膜し、かつ該磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ以
上に該磁石内部にM元素を磁石表面から拡散浸透させることによってM元素が富化された
結晶粒界層を形成するとともに結晶粒界層を主結晶粒を取り囲むほどの厚さとする方法に
よって得られる。
上記のように、M元素(但し、Mは、Pr,Dy,Tb,Hoから選ばれる希土類元素
の一種又は二種以上)を表面に成膜して拡散することにより、M元素を結晶粒界部に富化
させることによりDy等の希土類金属を磁石内部側に薄く、表面側に濃く分布させること
ができる。
Nd−Fe−B系焼結磁石において、大きな保磁力を得るためには異方性磁界の大きい
希土類元素を含有元素として利用すること、及び磁石の内部組織を均一微細に制御するこ
とが特に有効である。Rを希土類元素とした場合に、RFe14B化合物の中ではNd
よりPr、Dy、Tb、Hoが室温での異方性磁界が大きく、特にTbはNdのおよそ3
倍であることから保磁力向上にとって好適である。
ただし、これらの元素はいずれもNdより飽和磁化が小さいために、所望のエネルギー
積を確保するためにはその添加量を極力少なくする必要がある。さらに、結晶組織内のN
Fe14B主相のNd元素と置換すると磁束密度の低下が著しいために、結晶組織内
ではなくNdリッチ結晶粒界層に存在させるのが望ましい。
図1に、Dy金属を成膜した後に加熱して拡散浸透したNd−Fe−B系焼結磁石、即
ち、実施例1における本発明試料(3)のEPMAにおけるDy元素像(a)、とDyを
所定量添加した合金から出発した従来法によって製作した比較例試料(1)のEPMAに
おけるDy元素像(b)を示す。
本発明試料(3)の(a)像においては、Dy元素は磁石表面部(又は表面近傍)に濃
く分布し、磁石内部30〜40μm位まで結晶粒界に沿って拡散浸透していることがわか
る。結晶組織内には殆どDy元素は見られず、Dy元素が結晶粒界に優先的に拡散してい
ることがわかる。磁石の結晶粒界層における、表面側ほどDy元素濃度を濃くしたこの構
造が、比較例試料(1)より、Dy添加量が同じ場合には保磁力が増加する証拠となって
いる。
一方、比較例試料(1)の(b)像においては、磁石内部に部分的にDy元素の濃淡が
見られるが、総じてDy元素は平均的に分布している。また、図1(a)より、成膜した
Dy元素の拡散によっても、磁石最表面の1列目の結晶粒子は残存し、2列目の粒子も磁
石粒としての大きな形態変化がないことがわかる。なお、図11(a),(b)とも、上
側の磁石表面側の数ミクロンの層は磁石試料の研磨だれによるものである。
本発明磁石は、従来の焼結磁石と比較して優れた磁気特性を発現する。M元素(但し、
Mは、Pr,Dy,Tb,Hoから選ばれる希土類元素の一種又は二種以上)の含有量と
保磁力Hcj、及び残留磁束密度Brと保磁力Hcjの関係から表現すると、本発明磁石
においては、式1、Hcj≧1+0.2×M(ただし、0.05≦M10)、Hcj :
保磁力、単位(MA/m)、M:磁石全体に占めるM元素含有量(質量%)、さらに、上
記式1に加えて、式2、Br≧1.68−0.17×Hcj、Br :残留磁束密度、単
位(T)、で表されることが特徴である。なお、ここで、「磁石全体に占めるM元素含有
量」は、拡散に与からずに磁石の最表層にM元素が残った場合や、元の成膜前の磁石中に
M元素が含まれる場合は、これらのM元素の量を含む含有量となる。したがって、元の磁
石中に含まれるM元素含有量を減らし、磁石の表面に成膜したM元素をできるだけ多く拡
散させることが望ましいと言える。
図2は、本発明の磁石例と従来磁石(市販品;住友特殊金属(株)製のNEOMAX磁
石)について、保磁力とDy含有量の関係を調査したものであり、図3は、残留磁束密度
と保磁力の関係を表したものである。なお、磁気特性の値は着磁磁界の影響を受けるため
、理想的には測定用磁石の異方性磁界以上で着磁することが望ましいが、ここでは4MA
/mのパルス着磁をした後に測定をした。
図2より、本発明磁石は従来磁石と比較して全Dy含有量範囲において高い保磁力が得
られ、その効果の程度は、本発明磁石の場合に、Hcj≧1+0.2×Mの関係式が充分
に成り立つことが判る。同様にして、図3から、本発明磁石は、従来磁石A及びBと比較
して高残留磁束密度と高保磁力が得られ、Br≧1.68−0.17×Hcjの関係式が
成り立ち、必然的にエネルギー積も向上する。
本発明によれば、上記のとおり、上記のM元素を結晶粒界層を利用して磁石表面直下部
とそれに続く結晶粒界部の表面側になるほど濃化して分布させることによって、従来磁石
より少ない元素含有量で従来磁石と同等以上の保磁力を発現させ、又は従来磁石と同等の
M元素含有量においては保磁力を増加させ、かつ残留磁束密度を向上させることができる
。これにより、磁石中のDy等の希少資源である希土類元素の含有量を節減することが可
能になる。
<作用>
M元素を磁石表面に成膜後に熱処理を行うと、M元素は焼結磁石内の浸透しやすい結晶
粒界に多く、主結晶内に少し拡散浸透する。M元素の拡散する深さは3ミクロン〜100
0ミクロン位であり、この拡散領域はM元素が主に拡散した結晶粒界層内にM−Nd−F
e−O成分の相が形成され、一部M元素が拡散した主結晶粒内にNd−Fe−B−M成分
の相が形成される。この結晶粒界層の厚さは数十ナノメートル〜1ミクロン位である。
そして、M元素を多く含んだ結晶粒界層が形成されることによって保磁力が増加する。
従来のNd−Fe−B系焼結磁石においても、主結晶粒(Nd−Fe−B)と結晶粒界層
(数〜数百ナノメートルの厚さで、主にNd,Fe,Oから構成されてNdリッチ相と呼
称されている)があり、磁石が原料に加えられた少量のM元素を含む場合には、磁石のあ
らゆる部位の結晶粒界層に均等にM元素が富化しているが、結晶粒界の主成分がNdのた
めと、結晶粒界層で完全には主結晶を包囲しきれていない等の理由により、高い保磁力が
得られない。
本発明では、焼結磁石や、原料粉末を成形後に熱間で塑性加工をした磁石に既に存在す
る結晶粒子間の薄いNdリッチな結晶粒界層にM元素を多く存在させると共に、主結晶を
完全に取り囲むほどの厚さの結晶粒界層を形成するため、保磁力の大幅な増加が果たされ
るものと推察される。
本発明によれば、Nd−Fe−B系磁石表面にDy,Tb等の希土類金属を成膜し、拡
散して磁石内部よりも表面側の希土類濃度を高くすることによって、従来の焼結磁石より
少ない希土類金属含有量で従来の焼結磁石と同等以上の大きな保磁力を出現させることが
できるか、又は従来と同等のDy含有量においては残留磁束密度を向上させることができ
る。これにより、磁石のエネルギー積の向上、及び希少資源であるDy等の資源問題の解
決に寄与するものである。
以下、本発明のNd−Fe−B系磁石及びその製造方法を更に詳しく説明する。本発明
磁石における磁気特性の値は、磁石の成分組成や製法、磁石の体積、M元素の種類等によ
って影響を受けるが、適正な条件で製作することにより高い保磁力と高い残留磁束密度と
が両立したバランスの良い磁石が得られる。
本発明の方法で対象とするNd−Fe−B系磁石は、原料合金を数ミクロンに粉砕して
成形、焼結してなる焼結磁石や、原料粉末を成形後に熱間塑性加工をした磁石等を、最終
製品を得るために所定の形状寸法とするため機械加工などを済ませた、内部に希土類元素
リッチな結晶粒界層を有する磁石である。Nd−Fe−B系焼結磁石は、典型的な核発生
型の保磁力機構を示すために本発明の効果が大きい。
また、本発明においては、Nd−Fe−B系磁石の大きさにとらわれないが、体積が小
さい磁石ほど、また、体積に対する表面積比の大きい磁石ほど顕著な効果を示す。この理
由は、本発明が表面からの希土類金属の堆積と拡散による磁気特性の向上を基本としてい
るために磁石サイズが影響し、小体積の磁石ほど従来磁石と比較した場合に高保磁力が得
られやすいという特徴を有している。したがって、本発明において対象とする磁石は、平
板又は円筒形状を問わず磁石の肉厚が10mm以下、より好ましくは、2mm以下である
磁石表面に供給して堆積又は成膜する金属は、Ndよりも磁気異方性が大きく、且つ磁
石を構成するNdリッチ結晶粒界層等に容易に拡散浸透することを目的とするため、希土
類金属のPr、Dy、Tb、Hoから選ばれるM元素の一種以上の単独又は上記のM元素
を相当量含有する合金や化合物、例えば、Tb−Fe合金やDy−Co合金、又はTbH
等を用いることができる。
上記のM元素は、磁石表面に単に被覆されているだけでは磁気特性の向上が認められな
いため、成膜した金属成分の少なくとも一部が磁石内部に拡散して構成元素の一部である
Nd等の希土類金属リッチ相と反応した結晶粒界層を形成するようにすることが必須であ
る。
このため、通常は成膜した後に500〜1000℃における熱処理を行って成膜金属を
拡散させる。スパッタリングの場合には、磁石試料を保持具と共に熱しておくか、又はス
パッタリング時のRF及びDC出力を上げて成膜することにより成膜中の磁石を上記温度
範囲、例えば800℃位にまで上昇させることができるため、実質的に成膜させながら同
時に拡散を行うこともできる。
また、保磁力を増加させるには、熱拡散処理によって浸透する上記のM元素の深さが、
磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径以上の場合に有効となる。例えば、Nd−F
e−B系焼結磁石の結晶粒径はおよそ6〜10μmであるので、磁石最表面に露出してい
る結晶粒子の半径に相当する3μm以上が最低限必要である。これ未満では主結晶粒を包
むNdリッチ結晶粒界層との反応が不充分となり、保磁力の向上がわずかなものとなる。
3μm以上深くなると保磁力が著しく増加するが、過度に深く拡散すると主相のNdと置
換する確率が多くなって残留磁化を下げるため、拡散処理条件を調整して所望の磁気特性
とする。
このようにすることにより、例えば、磁石最表層のM元素の濃度は約100質量%で、
M元素が拡散した結晶粒界層では数十質量%(磁石表面に近いほど高濃度)、M元素が拡
散した結晶粒界層と主相を平均化した領域(例えば、数十ミクロン)で測定すると数質量
%となる。また、元の磁石の結晶粒界層の厚さは通常数〜数百ナノメートルであるが、M
元素の拡散富化により数十ナノメートルから1ミクロン程度に厚くなる。このようにM元
素が濃縮した希土類リッチの結晶粒界層中のM元素の濃度は、例えば、表面から10ミク
ロンの深さ位置で約50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは9
0質量%以上である。
なお、熱処理によってM元素は磁石内部に浸透するが、相互拡散によって元の磁石表面
に存在するNdやFe元素の一部が、成膜したM元素にも取り込まれる。ただし、M元素
の膜内でのこの種の反応量はわずかであるために磁石特性にほとんど悪影響を及ぼさない
。膜の一部が拡散処理後に拡散されずに磁石表面に残存しても構わないが、M元素を節減
して十分な効果を得るためには、完全に拡散させることが望ましい。
M元素の成膜厚さは0.02〜50μm、望ましくは0.5〜20μmであり、より好
ましい下限値は、実施例1〜3に示すように2μmである。M元素が磁石の表面から内部
に向かって拡散浸透し明らかに分布している深さ、すなわち拡散層は3〜1000μm、
望ましくは10〜200μmである。これらの値の範囲は、磁石サイズが小さくなると必
然的に小さくする必要があり、また、保磁力をより大きくしたい場合には成膜厚さを大き
くして拡散深さを大きくする。
例えば、磁石の厚さが1mm以下の微小磁石の場合には、成膜厚さが0.02μm程度
においてもそれを拡散させることにより保磁力の増加効果が認められる。成膜厚さが増加
するほど拡散により磁石全体に占める上記のM元素の含有量が増加し保磁力も増大するが
、およそ50μm以上になると非磁性元素であるM元素の含有量が大きくなり、磁石全体
の残留磁束密度の低下が大きくなるため、所望とする保磁力と残留磁束密度を考慮して成
膜厚さと拡散条件を制御する必要がある。
磁石全体に占めるM元素の含有量は0.05質量%以上、10質量%以下とする。0.
05質量%未満では、磁石表面に供給して拡散するべきM量が少なすぎるため、保磁力の
増加効果がほとんど認められない。より好ましくは、実施例の本発明試料(6)〜(15
)に示すように、0.6質量%以上である。10質量%を超えると残留磁束密度の低下が
無視できなくなり、最大エネルギー積も大幅に低下してしまうために、希土類磁石の本来
の磁気特性を得ることが難しい。また、10質量%を含有することによってHcjは3M
A/m以上となり、車用の耐熱用途に充分適用可能となる。
磁石表面への希土類金属Mの供給法については特に限定されるものではなく、蒸着、ス
パッタリング、イオンプレーティング、レーザーデポジション等の物理的成膜法や、CV
DやMO−CVD等の化学的気相蒸着法、及びメッキ法等の適用が可能である。ただし、
成膜ならびに後の加熱拡散の各処理においては、希土類金属の酸化や磁石成分以外の不純
物を防止するために、酸素や水蒸気等が数十ppm以下の清浄雰囲気内で行うことが望ま
しい。
各種形状寸法を有する磁石表面の全部又は一部に上記のM元素の均一な膜を形成するに
は、複数のターゲットを用いて磁石表面に3次元的に金属成分Mを成膜させるスパッタリ
ング法、又はM元素をイオン化させて、静電気的な吸引による強被着特性を利用して成膜
させるイオンプレーティング法が特に有効である。
また、上記の作業における希土類磁石のプラズマ空間内の保持については、一個又は複
数個の磁石を線材や板材で回転自在に保持する方法や、複数個の磁石を皿上の容器に並べ
るか、金網製の籠に装填して転動自在に保持する方法を採用することができる。このよう
な保持方法により3次元的に磁石表面全体に均一な膜を形成することができる。
図4に、本発明の製造方法を実施するのに好適な三次元スパッタ装置の概念を示す。図
4において、輪状をした成膜金属からなるターゲット1及びターゲット2を対向させて配
置し、その間に水冷式の銅製高周波コイル3を配置する。円筒形状磁石4の筒内部には、
電極線5が挿入されており、該電極線5はモータ6の回転軸に固定されて円筒形状磁石4
を回転できるように保持している。穴のない円柱や角柱形状磁石の場合は、複数個の磁石
製品を金網製の籠に装填して転動自在に保持する方法を採用できる。
さらに、陰極切り替えスイッチ(A)により円筒形状磁石4の逆スパッタが実施可能な
機構を有している。逆スパッタ時は電極線5を通じて磁石4を負電位にして、磁石4の表
面のエッチングをする。通常スパッタ作業時はスイッチ(B)に切り替えて行う。通常ス
パッタ時は電極線5に電位を与えずにスパッタ成膜をするのが一般的であるが、成膜する
金属の種類や膜質制御のため、場合によっては電極線5を通じて磁石4に正のバイアス電
位を与えてスパッタ成膜をすることもある。通常スパッタ中は、Arイオンとターゲット
1、2から発生する金属粒子、及び金属イオンが混在したプラズマ空間7を形成して、円
筒形状磁石4の表面の上下左右前後から3次元的に金属粒子が飛来して成膜される。
このような方法で成膜した磁石は、成膜しながら拡散させていない場合は、スパッタ装
置内を大気圧に戻した後にスパッタ装置に連結したグロープボックスに大気に触れずに移
送して、同じく該グローブボックス内に設置した小型電気炉に装填して、成膜した金属成
分を磁石内部に拡散させるために熱処理を行う。
なお、一般に希土類金属は酸化され易いため、成膜、拡散後の磁石表面に錆防止のため
に、NiやAl等の耐食性金属や無機物質、又は撥水性のシラン系被膜を形成して実用に
供することが望ましい。また、磁石の表面金属がDyやTbの場合にはNdと比較して空
気中での酸化進行が著しく遅いため、磁石の用途によっては耐食性被膜を設けることを省
略することも可能である
以下、本発明を実施例にしたがって詳細に説明する。
Nd12.5Fe78.5Co組成の合金インゴットから、ストリップキャスト
法によって厚さ約0.3mmの合金薄片を製作した。次に、この薄片を容器内に充填し、
500kPaの水素ガスを室温で吸蔵させた後に放出させることにより、大きさ0.1〜
0.2mmの不定形粉末を得て、引き続きジェットミル粉砕をして約3μmの微粉末を製
作した。
この微粉末にステアリン酸カルシウムを0.05質量%添加混合した後、金型に充填し
て磁界中プレス成形をし、真空炉に装填して1080℃で1時間焼結をし、さらに切断、
穴あけ、円筒研削等の機械加工をして外径2.4mm、内径1mm、長さ3mmの体積が
11.2mmの円筒形状磁石を製作した。これを比較例試料(1)とした。
次に、図4に示す3次元スパッタ装置を用い、この円筒形状磁石表面へDy金属を成膜
した。ターゲットとしてDy金属を装着して、この円筒形状磁石の両端面と外表面にDy
金属を成膜した。ターゲット金属は純度99.9%のDyを用い、寸法形状は、外径80
mm、内径30mm、厚さ20mmの輪状とした。
実際の成膜作業は以下の手順で行った。上記円筒形状磁石の筒内部に直径0.3mmの
タングステン線を挿入してセットし、スパッタ装置内を5×10−5Paまで真空排気し
た後、高純度Arガスを導入して装置内を3Paに維持した。次に、陰極切り替えスイッ
チを(A)側にして、RF出力30WとDC出力2Wを加えて5分間の逆スパッタを行っ
て磁石表面の酸化膜を除去した。続いて、切り替えスイッチを(B)側にして、RF出力
60WとDC出力100Wを加えて10分間の通常スパッタを行って厚さ3μmのDy膜
を形成した。
得られた成膜磁石は、装置内を大気圧に戻した後にスパッタ装置に連結したグローブボ
ックスに大気に触れずに移送して、同じく該グローブボックス内に設置した電気炉に装填
して1段目を600℃〜1000℃で10分間、2段目を600℃で20分間の熱処理を
行った。これらを表1に示すように1段目の処理温度に応じて本発明試料(1)〜(5)
とした。また、熱処理をしない成膜磁石を比較例試料(2)とした。なお、熱処理におけ
る磁石の酸化を防止するため、グローブボックス内は精製Arガスを循環させ、酸素濃度
を2ppm以下に、露点を−75℃以下に維持した。
各試料の磁気特性は、4.8MA/mのパルス着磁を印加した後に振動試料型磁力計を
用いて測定した。表1に、各試料の磁気特性値を示す。また、本発明試料(3)と比較例
試料(1)を酸溶解してICP分析をした結果、Dy元素の含有量は前者が0.84質量
%で後者が0.02質量%であり、特に、後者は測定誤差レベルであった。表1に、比較
例試料及び本発明試料の磁気特性を示す。
Figure 2006179963
表1から明らかなように、Dy金属を成膜して熱処理を行った本発明試料(1)〜(5
)はいずれも成膜前の磁石である比較例試料1より約1.19倍以上の保磁力の増加が認
められ、関係式Hcj=1+0.2×M(=0.84)から算出された1.168(MA
/m)を超える値が得られ、同時に高い磁気エネルギー積を示すことがわかった。
この理由は拡散により焼結磁石表面直下部と表面下部の結晶粒界部の表面側ほど高濃度
の希土類金属が分布することにより、逆磁区の発生を抑制でき、したがって保磁力が向上
したためと推察される。また、成膜したままで熱処理していない比較例試料(2)は熱処
理を実施しないために拡散層が形成されず、保磁力の増加はみられない。なお、本発明試
料(3)を用いてEPMA観察したDy元素像は、図1に示したとおりである。
実施例1と同じNd12.5Fe78.5Co組成の合金を出発原料として一辺
が24mmの焼結磁石ブロックを製作し、砥石による切断と研削、及び放電加工によって
、外径4mm、厚さ1mm、体積12.6mmの円盤形状磁石を製作した。Dy及びT
bの各金属ターゲットを3次元スパッタ装置に取り付けた後、この磁石をコイル状に巻い
たタングステン電極線の内側に装入し、順次ターゲット交換をして各金属をそれぞれ成膜
した。成膜作業は、実施例1と同様に逆スパッタを行って磁石表面の酸化膜を除去した後
、RF出力60WとDC出力200Wを加えて5〜50分間の通常スパッタを行って2〜
18μmの皮膜を形成した。
続いて、磁石2個のうち1個をグローブボックス内の電気炉に装填し、900℃で10
分間と600℃で20分間の熱処理を行って本発明試料とした。その内訳は、Dy膜厚が
2μmで含有量が0.6質量%のものを本発明試料(6)とし、以下、膜厚に応じて含有
量が1.3質量%、2.5質量%、3.6質量%、5.1質量%のものを本発明試料(7
)から(10)とした。また、TbはDyとほぼ同じスパッタ率のためにスパッタ時間が
同じ場合は膜厚もほぼ同じになり、Tb含有量が0.6質量%の本発明試料(11)から
同5.1質量%の本発明試料(15)とした。なお、Dy及びTb元素含有量はICP分
析によって求めた。
一方、Nd12.5Fe78.5Co組成においてNdの一部をDyで置換し、
Dy含有量の異なる各種の合金インゴットを溶解した。これらの合金を、ストリップキャ
スト法によって薄片化して、粉砕、成形、焼結、機械加工をして、上記と同じ寸法、体積
の磁石を製作した。Dy置換した磁石はその含有量が0.5質量%のものを比較例試料(
3)とし、以下1.4質量%、2.4質量%、3.4質量%、5.2質量%のものを比較
例試料(4)から(7)とした。
図5に、各磁石試料のDy及びTb含有量に対する保磁力の測定結果を示す。なお、図
中には、Hcj=1+0.2×M(ここで、Mは、Dy又はTbの質量%である)の関係
式を一点鎖線で挿入している。図5より、本発明試料はいずれのDy又はTb含有量にお
いても比較例試料と比較して大きな保磁力を持つことが明らかになった。また、別の見方
をすれば、本発明試料において、従来法による比較例試料と同じ保磁力を得るには、比較
例試料中のDy量を大幅に節減できることが推測できる。
なお、本発明試料(11)と(15)の試料についてEPMAにより磁石中のTb元素
の分布状況を観察した。その結果、磁石最表面部にTb層が存在し、且つ表面から50μ
mの深さまでTb元素が結晶粒界に沿って表面側ほど濃く分布していることが明らかにな
った。また、本発明試料(11)と比較して本発明試料(15)では、結晶粒界層が厚く
、且つ覆っている結晶粒の数が多いことが観察された。
図6に、上記各試料における保磁力と残留磁束密度の関係を示す。また、図5同様に、
Br=1.68−0.17×Hcjの関係式を一点鎖線で挿入した。図6より、本発明試
料は比較例試料よりも大きな残留磁束密度と保磁力とを合わせ持つことが明らかになり、
この結果、磁石の最大エネルギー積も向上した。また、本実施例によるとDy及びTb量
が多いほど比較例に対するBrの向上が著しいことが明らかになった。
Nd12Dy0.5Fe807.5組成の原料合金から、実施例2と同様の工程によ
って外径4mm、厚さが0.2mm、0.4mm、1mm、2mm、又は4mmの円盤形
状磁石を製作した。次に、3次元スパッタ装置にこれらの磁石を装着し、逆スパッタを行
って磁石表面の酸化膜を除去した後、RF出力100WとDC出力120Wを加え15分
間の通常スパッタを行って磁石表面に2μmのDy金属膜を形成した。続いて、成膜した
磁石をグローブボックス内の電気炉に装填し、800℃で30分間熱処理を行って、本発
明試料(16)〜(20)とした。また、スパッタを実施しない外径4mmで厚さ1mm
の焼結磁石を比較例試料(8)とした。
各試料の磁気特性は振動試料型磁力計によって測定し、元の焼結磁石中及び成膜部分を
含めた合計のDy含有量をICP分析によって調べた。また、厚さ1mmの本発明試料(
18)の断面をEPMAによって観察した結果、磁石表面から内部に向かって約40μの
深さまで結晶粒界に沿って表面側ほど濃くDy元素の拡散が認められた。
表2に、Dy量、保磁力、及びHcj=1+0.2×M(Mは、Dy質量%)の関係式
より計算された保磁力(*計算)を示す。表2より、本発明試料は、いずれも比較例試料
(8)より著しく大きな保磁力を示すことが判った。磁石の厚さが同じ1mmの本発明試
料(18)と比較例試料(8)を比較すると、Dy量がわずか0.6質量%増加すること
によって保磁力は約45%増加しており、従来のDy含有量が1.8質量%の焼結磁石に
おいてはこのような大きい保磁力を得ることができなかった。また、本発明試料はいずれ
も上記関係式によって求めた保磁力(*計算)より大きい保磁力が得られた。
Figure 2006179963
Nd−Fe−Co−Dy−B系の急冷粉末をホットプレスした後、800℃で熱間塑性
加工をして製作された外径10mm、内径2mm、長さ6mm、体積が452mmの異
方性磁石を準備し、その一つを比較例試料(9)とした。他の試料を、神港精機(株)製
のアーク放電型イオンプレーティング装置内の回転ホルダーに取り付け、装置内を1×1
−4Paまで真空排気した後に高純度Arガスを導入して装置内を2Paに維持した。
試料を20回転/分で回転させながら−500Vの電圧を印加し、電子銃によって溶解蒸
発させかつ熱電子放射電極とイオン化電極によって生成させたDyイオンを、溶解ルツボ
の直上に設置された試料に向けて20分間付着させた。次に、この試料をグローブボック
ス内の小型電気炉に装填し、800℃で60分間の熱処理を行って本発明試料(21)を
得た。
各試料のDy量はICP分析によって求め、Dy元素の分布状況をEPMAによって観
察した。比較例試料(9)は、Dy元素が磁石全体に分布しており、結晶粒界部に高濃度
のDy分布は判別し難かった。一方、本発明試料(21)は磁石表面に4μmのDy層と
、表面下部約40μmの深さまで結晶粒界に沿って表面側ほど高濃度のDy元素の分布が
認められた。
表3に、Dy量と磁気特性の結果を示す。表3より、本発明試料は、少量のDy含有量
においても著しく大きな保磁力が得られ、Br≧1.68−0.16×Hcjの関係式、
及びHcj=1+0.2×M(Mは、Dy質量%)の関係式より計算されたBr(*計算
及びHcj(*計算)より優れた磁気特性が得られた。
Figure 2006179963
Nd10PrFe77.5Co7.5組成の原料合金を溶解し、粉砕、成形、焼
結工程を経て、縦20mm、横60mm、厚さ2mm、体積が2400mmの平板状磁
石を準備した。この磁石を、アネルバ(株)製のL−250S型スパッタリング装置内の
SUS基板上に載せ、その上部に、80質量%Tb−20質量%Co組成の合金ターゲッ
トを、SUS304製のバックプレートに固定して配置した。
装置内を真空排気後、高純度Arガスを導入して圧力を5Paに維持し、抵抗加熱によ
ってSUS基板を約550℃に加熱したまま、逆スパッタを行って磁石表面の酸化膜を除
去した。ここでは、基板加熱と併行して成膜中での磁石試料の温度上昇を利用して成膜と
同時に拡散を行うことを目的とし、RF出力を150W、DC出力を600Wまで上げて
スパッタリングを開始した結果、磁石試料が赤熱するのが観測され、色調より温度は約8
00℃に達していると推測された。この基板加熱と試料加熱を維持した状態で30分間成
膜を行い、一旦スパッタを中断して試料を表裏反転させた後、再度、同一条件で30分間
成膜作業を行って、本発明試料(22)を製作した。
EPMAによる試料観察の結果、磁石最表面におよそ20μmのTb−Co層と、その
下部の80μmの深さまで結晶粒界に表面側ほど高濃度のTbとCo元素が分布している
ことが明らかになった。また、ICP分析結果による磁石中のTb量は、2.7質量%で
あった。そこで、出発合金中のNdとPr比率を変えず、Co量を微調整してTbを2.
4質量%添加した合金を別途溶解し、同一寸法形状の磁石を製作して比較例試料(10)
とした。比較例試料(10)のEPMA観察によれば、TbとCo元素とも磁石全体にほ
ぼ均一に分布しており、結晶粒界と主相におけるTb濃度差は×2000倍の画像で見分
けることが困難であった。
各試料を切断して3枚を重ね合わせ、BHトレーサによって磁気測定を行った結果、比
較例試料(10)のHcjが1.47MA/mに対して、本発明試料(22)のHcjは
1.88MA/mであり、同一Tb量で大きな保磁力を示し、車等の耐熱用途向けに好適
な保磁力が得られた。本実施例により、成膜と拡散処理を同一工程で行っても本発明の効
果があることが明白になった。なお、本発明試料を60℃で90%RHの湿度試験に供し
た結果、耐食性が向上し、磁石内部の結晶粒界へのCo元素の拡散浸透が好影響を及ぼし
ていると推察された。
図1は、Dy成膜後に熱処理した本発明試料(3)のEPMAにおけるDy元素像(a)と、比較例試料(1)のEPMAにおけるDy元素像(b)である。 図2は、本発明試料と比較例試料における、Dy含有量と保磁力の関係を表す図である 図3は、本発明試料と比較例試料における、残留磁束密度と保磁力の関係を表す図である。 図4は、本発明の方法に好適に使用できる3次元スパッタ装置のターゲット周辺の模式図である。 図5は、本発明及び比較例試料の、Dy及びTb含有量に対する保磁力の関係を表す図である。 図6は、本発明及び比較例試料の、保磁力と残留磁束密度の関係を表す図である。
符号の説明
1,2:金属ターゲット
3 :水冷式高周波コイル
4 :円筒形状磁石
5 :電極線
6 :モータ
7 :プラズマ空間


Claims (4)

  1. 粉末成形と焼結法によって製作される磁石、又は粉末成形と熱間塑性加工によって製作さ
    れる磁石であって、最終製品を得るために所定の形状寸法とするため機械加工を済ませた
    、内部にNd元素リッチな結晶粒界層を有する磁石において、
    該結晶粒界層は、該磁石表面からのM元素(但し、Mは、Pr,Dy,Tb,Hoから選
    ばれる希土類元素の一種又は二種以上)の拡散浸透によりM元素の濃度が富化されており

    該M元素の拡散浸透量は、保磁力Hcjと拡散に与らずに磁石の最表面に残ったM元素及
    び成膜前の磁石中に含まれるM元素を含む磁石全体に占めるM元素含有量の関係、及び残
    留磁束密度Brと保磁力Hcjの関係が下記の式1、及び式2を満たす量であり、
    Hcj≧1+0.2×M(ただし、0.05≦M≦10)・・・(式1)
    ただし、Hcj:保磁力、単位(MA/m)、M:磁石全体に占めるM元素含有量(質量
    %)
    Br≧1.68−0.17×Hcj ・・・(式2)
    ただし、Br:残留磁束密度、単位(T)
    かつ該Hcjが、成膜前の磁石の保磁力の1.19倍以上であることを特徴とする、Nd
    −Fe−B系磁石。
  2. 拡散浸透によりM元素の濃度が、表面から10μmの深さ位置で50質量%以上に富化さ
    れていることを特徴とする請求項1記載のNd−Fe−B系磁石。
  3. 該磁石は、M元素を含まない組成の合金原料から製作されたものであることを特徴とする
    請求項1記載のNd−Fe−B系磁石。
  4. 肉厚が10mm以下であることを特徴とする請求項1記載のNd−Fe−B系磁石。
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