JP2006028273A - 炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法 - Google Patents
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Abstract
【要約書】
【課題】有機シラン単分子膜に代わる潤滑膜として、環境負荷が小さい炭化水素系の薄膜を用い、かつ潤滑油の離脱を防ぐため、潤滑剤を強固に固体表面上に固定した炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法を得ることを課題とする。
【解決手段】固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させたことを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤、及び固体表面に、化学気相蒸着法(PVD)、物理的蒸着法(CVD法)等の真空環境下で表面改質膜を形成し、続いて該固体表面に形成した表面改質膜を大気に暴露させることなく、真空環境下で該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層若しくは数分子層固定させることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜による固体表面の潤滑方法。
【選択図】 図1
【課題】有機シラン単分子膜に代わる潤滑膜として、環境負荷が小さい炭化水素系の薄膜を用い、かつ潤滑油の離脱を防ぐため、潤滑剤を強固に固体表面上に固定した炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法を得ることを課題とする。
【解決手段】固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させたことを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤、及び固体表面に、化学気相蒸着法(PVD)、物理的蒸着法(CVD法)等の真空環境下で表面改質膜を形成し、続いて該固体表面に形成した表面改質膜を大気に暴露させることなく、真空環境下で該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層若しくは数分子層固定させることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜による固体表面の潤滑方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、超高密度記録装置、精密位置決め機構、精密搬送装置、精密回転機械、マイクロマシン、宇宙用軸受などの微小機械の摺動要素として有用な炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤(膜)及び潤滑方法に関するものである。
磁気ディスクドライブのヘッドディスクインターフェース(HDI)では、長期的摩擦、摩耗安定性、耐腐蝕性を確保するために、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜及び高分子潤滑膜が用いられている。
最近、有機シラン系単分子膜を磁気ディスクドライブ、MEMS分野の潤滑膜又は耐凝着膜としての応用を図るための研究が行なわれている(非特許文献1及び非特許文献2参照)が、この有機シラン分子は、環境に対する負荷が大きいという弱点を持っている。
また、有機分子を真空中で蒸着する研究も行われており、関連する技術資料としては、非特許文献3及び非特許文献4を挙げることができる。
最近、有機シラン系単分子膜を磁気ディスクドライブ、MEMS分野の潤滑膜又は耐凝着膜としての応用を図るための研究が行なわれている(非特許文献1及び非特許文献2参照)が、この有機シラン分子は、環境に対する負荷が大きいという弱点を持っている。
また、有機分子を真空中で蒸着する研究も行われており、関連する技術資料としては、非特許文献3及び非特許文献4を挙げることができる。
一方、微小機械では、表面を表面改質膜で被覆した後、摩擦を低下させ、また摩擦要素が接触したときの衝撃をやわらげるため、大気圧空気の下で潤滑剤が塗布されているが、ナノメータレベルの位置決めあるいは作動精度を期待し、ナノメータ厚さの、主としてフッ素系高分子パーフルオロポリエーテルなどの潤滑剤が用いられている。
超高密度記録装置、精密位置決め機構、精密搬送装置、精密回転機械、マイクロマシン、宇宙用軸受などにおいては潤滑剤給油が困難なため長期間のメンテナンスフリーが要求されている。
しかし、潤滑剤には流動性あるいは蒸発性があるため、潤滑剤が必要な部位からの離脱、枯渇が不可避である。特に、回転部分からのスピンアウト(遠心力による飛散)が重大な潤滑油離脱の原因として挙げられている。
J. Choi, M.Kawaguchi & T. Kato : Self-Assembled Monolayers Formation on the MagneticHard Disk Surface and Friction Measurements,. J. Appl. Phys., 91(2002) 7574 W.R. Ashurst,C. Yau, C. Carraro, R. Maboudian & M.T. Dugger : Dichlorodimethylsilane asan Anti-Stiction Monolayer for MEMS: A Comparison to theOctadecyltrichorosilane Self-assembled Monolayer, J. Microelectromech. Syst.,10(2001) 41 草川・松山・永山・大澤著「磁気記録媒体上に蒸着した潤滑層の特性」、日本トライボロジー学会トライボロジー会議集(東京2001−5)pp.3−4 Y. Changand C.W. Frank; Vapor deposition -Polymerization of α-aminoacid N-carboxy anhydride on the silicon(100) native oxidesurface, Langmuir,14 (1998) 326-334
しかし、潤滑剤には流動性あるいは蒸発性があるため、潤滑剤が必要な部位からの離脱、枯渇が不可避である。特に、回転部分からのスピンアウト(遠心力による飛散)が重大な潤滑油離脱の原因として挙げられている。
J. Choi, M.Kawaguchi & T. Kato : Self-Assembled Monolayers Formation on the MagneticHard Disk Surface and Friction Measurements,. J. Appl. Phys., 91(2002) 7574 W.R. Ashurst,C. Yau, C. Carraro, R. Maboudian & M.T. Dugger : Dichlorodimethylsilane asan Anti-Stiction Monolayer for MEMS: A Comparison to theOctadecyltrichorosilane Self-assembled Monolayer, J. Microelectromech. Syst.,10(2001) 41 草川・松山・永山・大澤著「磁気記録媒体上に蒸着した潤滑層の特性」、日本トライボロジー学会トライボロジー会議集(東京2001−5)pp.3−4 Y. Changand C.W. Frank; Vapor deposition -Polymerization of α-aminoacid N-carboxy anhydride on the silicon(100) native oxidesurface, Langmuir,14 (1998) 326-334
本発明は、有機シラン単分子膜に代わる潤滑膜として、環境負荷が小さい炭化水素系の薄膜を用い、かつ潤滑油の離脱を防ぐため、潤滑剤を強固に固体表面上に固定した炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法を得ることを課題とする。
本発明によれば、以下に示す高強度・低摩擦炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤(膜)及び潤滑方法を提供する。
(1)固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させたことを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
(2)固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させた炭化水素系有機薄膜からなり、炭化水素系有機薄膜は一般式R−Xで表され、式中、Rは有機基を、Xは固体表面に結合し得る基又は元素を示し、有機基Rは、炭素数1〜18、の含炭素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基等)であり。Xは、ハイドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基や、ハロゲン元素(塩素、臭素等)、メルカプト基、スルホン酸基、リン酸基であることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
(3)固体表面に、化学気相蒸着法(CVD)、物理的蒸着法(PVD法)等の真空環境下で表面改質膜を形成し、続いて該固体表面に形成した表面改質膜を大気に暴露させることなく、真空環境下で該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層若しくは数分子層固定させることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜による固体表面の潤滑方法。
(4)真空蒸着により炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させることを特徴とする(3)記載の固体表面の潤滑方法。
(1)固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させたことを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
(2)固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させた炭化水素系有機薄膜からなり、炭化水素系有機薄膜は一般式R−Xで表され、式中、Rは有機基を、Xは固体表面に結合し得る基又は元素を示し、有機基Rは、炭素数1〜18、の含炭素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基等)であり。Xは、ハイドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基や、ハロゲン元素(塩素、臭素等)、メルカプト基、スルホン酸基、リン酸基であることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
(3)固体表面に、化学気相蒸着法(CVD)、物理的蒸着法(PVD法)等の真空環境下で表面改質膜を形成し、続いて該固体表面に形成した表面改質膜を大気に暴露させることなく、真空環境下で該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層若しくは数分子層固定させることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜による固体表面の潤滑方法。
(4)真空蒸着により炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させることを特徴とする(3)記載の固体表面の潤滑方法。
本発明の炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法は、炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤を強固に固体表面上に固定することによって潤滑油の離脱を効果的に防止できるとともに、有機シラン単分子膜に代わる潤滑膜として、環境負荷が小さいという優れた効果を有する。
真空中で表面改質膜を気相蒸着すると、表面改質蒸着膜は活性が高く反応しやすい。したがって、本発明においては表面改質膜を大気に暴露することなく、炭化水素系有機分子を表面改質膜上に真空蒸着する。これによって、炭化水素系有機分子は表面改質蒸着膜と化学結合し、強固な潤滑薄膜を形成することができる。
なお、本明細書で言う炭化水素系有機薄膜とは、炭化水素系の有機分子を固体上に、例えば真空蒸着することにより、有機分子が固体上に化学吸着して形成する単分子若しくは数分子の厚さの薄膜を意味する。これらの薄膜は真空蒸着等の化学蒸着(CVD)法が最も有効であるが、スパッタリング等の物理蒸着(PVD)法によって形成することもできる。
なお、本明細書で言う炭化水素系有機薄膜とは、炭化水素系の有機分子を固体上に、例えば真空蒸着することにより、有機分子が固体上に化学吸着して形成する単分子若しくは数分子の厚さの薄膜を意味する。これらの薄膜は真空蒸着等の化学蒸着(CVD)法が最も有効であるが、スパッタリング等の物理蒸着(PVD)法によって形成することもできる。
固体上に形成する炭化水素系有機化合物は、下記一般式(1)で表される物質である。式中、Rは有機基を示し、Xは固体表面に結合し得る基又は元素を示す。
R−X (1)
固体基板上の改質膜表面に化学結合した炭化水素系有機分子からなる薄膜の構造の説明図を図1に示す。
R−X (1)
固体基板上の改質膜表面に化学結合した炭化水素系有機分子からなる薄膜の構造の説明図を図1に示す。
有機基Rは、炭素数1〜18、好ましくは5〜12の含炭素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基等)が包含する。Xには、ハイドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲン元素(塩素、臭素等)、メルカプト基、スルホン酸基、リン酸基等が包含する。
本発明において用いる固体としては、ダイヤモンドライクカーボン、カーボン、シリカ、シリコン、ガラス、金属等を使用することができるが、特にこれらに制限されない。すなわち、本願発明の炭化水素系有機分子を潤滑剤として使用する対象物であり、固体基板上の改質膜表面に化学結合した炭化水素系有機分子からなる薄膜を形成して使用できるものであれば良い。
表面改質膜には、前記ダイヤモンドライクカーボン以外の様々な膜を使用することができ、特に制限はない。
例えば、硬質膜としては、チタンカーボン(TiC)、チタンナイトライド(TiN)、シリコンカーバイド(SiC)、クロムナイトライド(CrN)、酸化シリコン(SiO2)セラミックス系改質膜、あるいはクロム(Cr)などの金属系改質膜を使用することができる。軟質膜としては、銀、金、鉛などの薄膜がある。通常、これらを摩擦部分にコーティングし、さらに前記有機薄膜を真空蒸着などの手段により潤滑膜を形成する。
表面改質膜には、前記ダイヤモンドライクカーボン以外の様々な膜を使用することができ、特に制限はない。
例えば、硬質膜としては、チタンカーボン(TiC)、チタンナイトライド(TiN)、シリコンカーバイド(SiC)、クロムナイトライド(CrN)、酸化シリコン(SiO2)セラミックス系改質膜、あるいはクロム(Cr)などの金属系改質膜を使用することができる。軟質膜としては、銀、金、鉛などの薄膜がある。通常、これらを摩擦部分にコーティングし、さらに前記有機薄膜を真空蒸着などの手段により潤滑膜を形成する。
(高強度・低摩擦炭化水素系有機薄膜の製造の具体例)
真空装置内に固体基板を固定し、化学気相蒸着法(CVD)などにより固体基板表面に表面改質薄膜を形成し、続いて真空装置内搬送機構などによって、該固体表面を大気に暴露することなく、例えば蒸着用の真空装置に搬送し、固定する。
蒸着用の真空装置内には、液体状あるいは固体状の炭化水素系有機分子を予め用意しておき、該固体表面を固定後に真空蒸着を開始する。
該固体表面と炭化水素系有機分子との間に設けられた開口機構(シャッター)および炭化水素系有機分子の加熱により蒸着量を調整する。
液体炭化水素系有機分子の場合には加熱は重要ではないが、固体炭化水素系有機分子の場合には溶融温度より高く、気化温度よりも低い温度に設定する。
炭化水素系有機分子蒸着真空装置内の圧力は、10-1〜10-4Pa、好ましくは10-2〜10-3Paに保つ。
真空装置内に固体基板を固定し、化学気相蒸着法(CVD)などにより固体基板表面に表面改質薄膜を形成し、続いて真空装置内搬送機構などによって、該固体表面を大気に暴露することなく、例えば蒸着用の真空装置に搬送し、固定する。
蒸着用の真空装置内には、液体状あるいは固体状の炭化水素系有機分子を予め用意しておき、該固体表面を固定後に真空蒸着を開始する。
該固体表面と炭化水素系有機分子との間に設けられた開口機構(シャッター)および炭化水素系有機分子の加熱により蒸着量を調整する。
液体炭化水素系有機分子の場合には加熱は重要ではないが、固体炭化水素系有機分子の場合には溶融温度より高く、気化温度よりも低い温度に設定する。
炭化水素系有機分子蒸着真空装置内の圧力は、10-1〜10-4Pa、好ましくは10-2〜10-3Paに保つ。
(真空蒸着法による炭化水素系有機薄膜の形成試験)
真空蒸着法による炭素系有機薄膜の形成を行った。まず、単結晶シリコン基板上にダイヤモンドライクカーボン皮膜を化学気相蒸着法(CVD)にて形成した。形成条件は以下の通りである。
・
使用ガス:メタン(CH4)
・
ガス流用:毎分25 cc
・
基準真空圧力:10-5Pa
・
蒸着圧力:0.7Pa
・
RFパワー:100W
・
バイアス電圧:-30V
・
皮膜厚さ:150nm
続いて、大気に暴露せずに真空蒸着チャンバに搬送して、該固体表面を130°Cに熱してデカノール(CH3(CH2)6CH2OH)の真空蒸着を行った。
デカノールを1cc程度入れたるつぼと該固体表面との間にはシャッターを置き、シャッターを開閉することで蒸着時間を調整し、30分間の真空蒸着を行った。蒸着圧力は10-2Pa〜10-3Paに保った。
真空蒸着後に、ヘプタン(C6H14)に浸漬して30秒間の超音波洗浄を行った。この洗浄により、強固に吸着していないデカノール分子は洗い流される。
真空蒸着法による炭素系有機薄膜の形成を行った。まず、単結晶シリコン基板上にダイヤモンドライクカーボン皮膜を化学気相蒸着法(CVD)にて形成した。形成条件は以下の通りである。
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使用ガス:メタン(CH4)
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ガス流用:毎分25 cc
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基準真空圧力:10-5Pa
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蒸着圧力:0.7Pa
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RFパワー:100W
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バイアス電圧:-30V
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皮膜厚さ:150nm
続いて、大気に暴露せずに真空蒸着チャンバに搬送して、該固体表面を130°Cに熱してデカノール(CH3(CH2)6CH2OH)の真空蒸着を行った。
デカノールを1cc程度入れたるつぼと該固体表面との間にはシャッターを置き、シャッターを開閉することで蒸着時間を調整し、30分間の真空蒸着を行った。蒸着圧力は10-2Pa〜10-3Paに保った。
真空蒸着後に、ヘプタン(C6H14)に浸漬して30秒間の超音波洗浄を行った。この洗浄により、強固に吸着していないデカノール分子は洗い流される。
(浸漬法による炭化水素系有機薄膜の形成)
一方、比較のため、上記段落番号[0013]と同様の条件でダイヤモンドライクカーボン皮膜を化学気相蒸着した固体表面を、大気に曝した後にデカノール原液に浸漬して浸漬法にてデカノール分子の固定を試みた。
浸漬時間を30分間から120時間まで変化させ、また浸漬後にヘプタンに浸漬して30秒間の超音波洗浄を行った。この洗浄により強固に吸着していないデカノール分子は洗い流される。
一方、比較のため、上記段落番号[0013]と同様の条件でダイヤモンドライクカーボン皮膜を化学気相蒸着した固体表面を、大気に曝した後にデカノール原液に浸漬して浸漬法にてデカノール分子の固定を試みた。
浸漬時間を30分間から120時間まで変化させ、また浸漬後にヘプタンに浸漬して30秒間の超音波洗浄を行った。この洗浄により強固に吸着していないデカノール分子は洗い流される。
(炭化水素系有機薄膜の形成の確認)
炭化水素系有機薄膜の形成を確認するために、水に対する接触角を測定した。デカノール膜が形成されていれば、該固体表面は疎水性を示し、約100度の接触角となる。
図2に示すように、大気中に曝した後の浸漬法では120時間の浸漬でも接触角は84度に留まり、十分なデカノール膜が形成されているとは言えない。
しかし、本願発明の例で示す通り、大気中に暴露していない真空蒸着法の場合には、30分間の真空蒸着でデカノール膜が形成され、しかも段落番号[0013]の通り、蒸着後に超音波洗浄を行っているにもかかわらず、上記の結果になったので、このデカノール膜は該固体表面に強固に吸着しているのが分かる。
炭化水素系有機薄膜の形成を確認するために、水に対する接触角を測定した。デカノール膜が形成されていれば、該固体表面は疎水性を示し、約100度の接触角となる。
図2に示すように、大気中に曝した後の浸漬法では120時間の浸漬でも接触角は84度に留まり、十分なデカノール膜が形成されているとは言えない。
しかし、本願発明の例で示す通り、大気中に暴露していない真空蒸着法の場合には、30分間の真空蒸着でデカノール膜が形成され、しかも段落番号[0013]の通り、蒸着後に超音波洗浄を行っているにもかかわらず、上記の結果になったので、このデカノール膜は該固体表面に強固に吸着しているのが分かる。
(炭化水素系有機薄膜蒸着試料の摩擦力測定)
原子間力顕微鏡を用いて、上記段落番号[0013]の方法で作成した試料の摩擦実験を行った。比較のために、炭化水素系有機薄膜蒸着前のダイヤモンドライクカーボン表面の摩擦力も測定した。
なお、原子間力顕微鏡で用いた針はSi3N4製で、すべり速度は平均6μm/sで、押付け荷重は10nN〜33nNである。測定結果を図3に示す。
図3から分かるように、蒸着前に比べて炭化水素系有機薄膜を蒸着すると、ダイヤモンドライクカーボン表面の摩擦力に比べ、炭化水素系有機薄膜蒸着後の摩擦力が30%〜40%低下した。
原子間力顕微鏡を用いて、上記段落番号[0013]の方法で作成した試料の摩擦実験を行った。比較のために、炭化水素系有機薄膜蒸着前のダイヤモンドライクカーボン表面の摩擦力も測定した。
なお、原子間力顕微鏡で用いた針はSi3N4製で、すべり速度は平均6μm/sで、押付け荷重は10nN〜33nNである。測定結果を図3に示す。
図3から分かるように、蒸着前に比べて炭化水素系有機薄膜を蒸着すると、ダイヤモンドライクカーボン表面の摩擦力に比べ、炭化水素系有機薄膜蒸着後の摩擦力が30%〜40%低下した。
(フッ素を含む炭化水素系有機膜の作成)
X線光電子分光測定によって炭化水素系有機膜の確認を行うための試料作成を真空蒸着法および浸漬法(試料の改質膜を大気中に暴露)によって行った。
ただし、X線光電子分光測定の特性から、有機膜に特定の元素が含まれていることが好ましく、そのためここではパーフルオロデカノールCF3(CF2)6CH2OHを用いた。パーフルオロデカノールは常温で固体であり、また融点は82度〜84度であるため、蒸着チャンバ内のるつぼに入れて100°Cに加熱した。
また、浸漬法で用いたパーフルオロデカノール溶液の溶媒にはエタノールを用い、濃度は100mMである。その他の試料作成条件は段落番号[0013]および[0014]と同じである。
X線光電子分光測定によって炭化水素系有機膜の確認を行うための試料作成を真空蒸着法および浸漬法(試料の改質膜を大気中に暴露)によって行った。
ただし、X線光電子分光測定の特性から、有機膜に特定の元素が含まれていることが好ましく、そのためここではパーフルオロデカノールCF3(CF2)6CH2OHを用いた。パーフルオロデカノールは常温で固体であり、また融点は82度〜84度であるため、蒸着チャンバ内のるつぼに入れて100°Cに加熱した。
また、浸漬法で用いたパーフルオロデカノール溶液の溶媒にはエタノールを用い、濃度は100mMである。その他の試料作成条件は段落番号[0013]および[0014]と同じである。
(X線光電子分光測定の結果)
図4に真空蒸着法で作成した試料及び図5に浸漬法(試料上の改質膜を大気中に暴露)で作成した試料のX線光電子分光測定結果を示す。この測定では比測定試料に含まれる元素の結合エネルギーが計測でき、その結果から試料が含む元素を特定できる。
図4にはフッ素のピークが観察されるが、図5からは観察されなかった。以上から、真空蒸着法で炭化水素系有機膜を蒸着した場合には、超音波洗浄にもかかわらず、強固にフルオロデカノール膜が存在していることがわかる。
図4に真空蒸着法で作成した試料及び図5に浸漬法(試料上の改質膜を大気中に暴露)で作成した試料のX線光電子分光測定結果を示す。この測定では比測定試料に含まれる元素の結合エネルギーが計測でき、その結果から試料が含む元素を特定できる。
図4にはフッ素のピークが観察されるが、図5からは観察されなかった。以上から、真空蒸着法で炭化水素系有機膜を蒸着した場合には、超音波洗浄にもかかわらず、強固にフルオロデカノール膜が存在していることがわかる。
本発明の炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法は、炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤を強固に固体表面上に固定することによって潤滑油の離脱を効果的に防止できるとともに、有機シラン単分子膜に代わる潤滑膜として、環境負荷が小さいという優れた効果を有するので、超高密度記録装置、精密位置決め機構、精密搬送装置、精密回転機械、マイクロマシン、宇宙用軸受などの微小機械の摺動要素として有用である。
Claims (4)
- 固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させたことを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
- 固体表面上に表面改質膜を形成し、続いて該固体表面の表面改質膜を大気に暴露することなく、該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させた炭化水素系有機薄膜からなり、炭化水素系有機薄膜は一般式R−Xで表され、式中、Rは有機基を、Xは固体表面に結合し得る基又は元素を示し、有機基Rは、炭素数1〜18、の含炭素基(アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基等)であり。Xは、ハイドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基や、ハロゲン元素(塩素、臭素等)、メルカプト基、スルホン酸基、リン酸基であることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤。
- 固体表面に、化学気相蒸着法(CVD)、物理的蒸着法(PVD法)等の真空環境下で表面改質膜を形成し、続いて該固体表面に形成した表面改質膜を大気に暴露させることなく、真空環境下で該表面改質膜上に炭化水素系の潤滑剤分子を1層若しくは数分子層固定させることを特徴とする高強度で低摩擦係数を備えた炭化水素系有機薄膜による固体表面の潤滑方法。
- 真空蒸着により炭化水素系の潤滑剤分子を1層もしくは数分子層固定させることを特徴とする請求項3記載の固体表面の潤滑方法。
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JP2004206566A Pending JP2006028273A (ja) | 2004-07-13 | 2004-07-13 | 炭化水素系有機薄膜からなる潤滑剤及び潤滑方法 |
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JP (1) | JP2006028273A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105909963A (zh) * | 2016-04-15 | 2016-08-31 | 哈尔滨工业大学 | 一种膜-油复合润滑方法 |
CN105909962A (zh) * | 2016-04-15 | 2016-08-31 | 哈尔滨工业大学 | 一种膜-脂复合润滑方法 |
WO2024154562A1 (ja) * | 2023-01-16 | 2024-07-25 | キヤノンオプトロン株式会社 | 固形物、光学部材、固形物の製造方法、表面形成方法、眼鏡、タッチパネル、スマートフォン、及びタブレット端末 |
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2004
- 2004-07-13 JP JP2004206566A patent/JP2006028273A/ja active Pending
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