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JP2006015966A - 車両用サスペンション制御装置 - Google Patents

車両用サスペンション制御装置 Download PDF

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JP2006015966A
JP2006015966A JP2004198571A JP2004198571A JP2006015966A JP 2006015966 A JP2006015966 A JP 2006015966A JP 2004198571 A JP2004198571 A JP 2004198571A JP 2004198571 A JP2004198571 A JP 2004198571A JP 2006015966 A JP2006015966 A JP 2006015966A
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Kouichi Tomita
晃市 富田
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Abstract

【課題】 車体質量状態に応じた減衰力制御を簡便に行い得る制御装置を提供する。
【解決手段】 車両用サスペンション制御装置70を、車体質量状態が標準状態である場合の減衰力変更アクチュエータ36の各々の制御目標値を車体質量状態に応じて補正することで、各アクチュエータの制御目標値を決定し、その決定した制御目標値に基づいて制御を行うように構成し、さらに、その補正に用いるための補正値として、車体剛体振動の減衰比が車体質量状態によらずに概ね一定となるような補正値であって各アクチュエータ36に対して共通する補正値を決定する手段82を備えさせる。車体を1つの剛体とみなして補正値を決定しているため、車体質量状態の変化に対応するための適切な補正値を、簡便に決定できることになる。また、その補正値が各アクチュエータ36についての補正に共通するものであることから、アクチュエータ36の制御自体も簡便となる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、車両に設けられたサスペンションシステムに関し、詳しくは、各車輪に設けられたサスペンション装置の減衰力を調節するための制御装置に関する。
サスペンション装置は、それの減衰力が主にショックアブソーバによって発生させられる構造のものが多く、近年の車両においては、アクチュエータによってその減衰力を可変とする構造のものが多く採用されている。サスペンション装置によって発生させられる適切な減衰力は、搭乗者の数,搭乗位置,荷物の積載量,積載位置等に依拠する車体質量状態によって異なるため、例えば、下記特許文献に記載されているような技術を用いて、車体質量状態を考慮した制御を行うことが検討されている。特に、特許文献1および特許文献2には、スカイフック理論に基づく制御が記載されており、その制御では、4輪の各々に設けられたサスペンション装置の各々についての減衰係数を、それら各々において支持する車体の部分質量(それら文献では、「ばね下の支持荷重」とされている)の各々に基づいて補正し、そのことによって、各サスペンション装置において適切な減衰力を発生させるようにしている。
特開平7−69025号公報 特開平5−238234号公報 特開平5−26521号公報
上記特許文献1および2に記載の技術では、減衰係数を補正するための補正値、つまり、減衰力変更するためのアクチュエータの制御目標値を、4つの車輪の各々のアクチュエータに対して個別に決定する必要があることから、制御が煩雑なものとなっており、制御の簡便性という点においては、満足できるものとはなっていない。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、車体質量状態に応じた減衰力制御を簡便に行い得る制御装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用サスペンション制御装置は、車体質量状態が標準状態である場合の減衰力変更アクチュエータの各々の制御目標値を車体質量状態に応じて補正することで、各アクチュエータの制御目標値を決定し、その決定した制御目標値に基づいて制御を行う制御装置において、その補正に用いるための補正値として、車体剛体振動の減衰比が車体質量状態によらずに概ね一定となるような補正値であって各アクチュエータに対して共通の補正値を決定する手段を設けたことを特徴とする。
本発明の車両用サスペンション制御装置によれば、車体を1つの剛体とみなした場合の車体振動の減衰比が概ね一定となるように補正値を決定しているため、車体質量状態の変化に対応するための適切な補正値を、簡便に決定できることになる。また、その補正値が各アクチュエータについての補正に共通するものであることから、アクチュエータの制御自体も簡便となる。つまり、本発明によれば、車体質量状態に応じた適切な減衰力調整を簡便に行い得る制御装置が実現することになる。なお、本発明の種々の態様およびそれらの作用,効果については、下記〔発明の態様〕の項において、詳しく説明する。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(5)項が請求項4に、(6)項が請求項5に、(8)項が請求項6に、(9)項が請求項7に、(11)項が請求項8に、それぞれ相当する。
(1)車輪の各々に対して設けられたサスペンション装置の各々の減衰力を変更するためにそれらサスペンション装置の各々に設けられた減衰力変更アクチュエータの各々を制御する制御装置であって、
車体質量状態が標準状態である場合における前記減衰力変更アクチュエータの各々の制御目標値である標準目標値を決定する標準目標値決定部と、
車体質量状態を直接的あるいは間接的に示す情報である車体質量状態関連情報を取得する車体質量状態関連情報取得部と、
その車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量状態関連情報に基づいて、車体剛体振動の減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように、前記標準目標値を補正するための各サスペンション装置に共通の補正値を決定する補正値決定部と、
前記標準目標値決定部によって決定された標準目標値と前記補正値決定部によって決定された補正値とに基づいて前記減衰力変更アクチュエータの各々の制御目標値を決定し、その制御目標値に基づいてそれら減衰力変更アクチュエータの各々を制御するアクチュエータ制御部と
を備えた車両用サスペンション制御装置。
本項に記載の制御装置が備える補正値決定部は、上記標準目標値を補正するための補正値を決定する。その決定にあたって、車体剛体振動、つまり、車体を1つの剛体とみなした場合の車体振動についての減衰比が車体の質量状態によらず概ね一定になるように、補正値を決定することができる。そのようなプロセスにしたがって補正値を決定すれば、車体質量状態に応じて各サスペンション装置において適切な減衰力を発生させ得るための適切な補正値を、簡便に決定することが可能となる。また、上記補正値決定部は、各減衰力変更アクチュエータに共通する補正値を決定するため、1つの補正値によって複数のアクチュエータの制御目標値の補正が可能となり、各アクチュエータの制御、詳しくは、各アクチュエータの制御目標値の決定が簡便に行われることになる。したがって、上述したような補正値を決定する補正値決定部を備えた本態様の制御装置によれば、車体質量状態に応じた適切な減衰力調節を簡便に行うことが可能となるのである。
本項の態様の制御装置の制御対象となる各輪の「サスペンション装置」は、その構造が特に限定されるものではなく、例えば、コイルスプリングをサスペンションスプリングとして有するサスペンション装置(いわゆる「コイルサスペンション」と呼ばれるサスペンション装置である),気体ばねをサスペンションスプリングとして有するサスペンション装置(いわゆる「エアサスペンション」と呼ばれるサスペンション装置である)等、種々の構造のサスペンション装置が制御の対象となり得る。各サスペンション装置の減衰力の発生機構についても、特に限定されるものではなく、当該各サスペンション装置が備えるショックアブソーバ等の懸架シリンダによって減衰力を発生させるといった一般的な機構を始めとして、種々の機構を採用し得る。また、その減衰力を変更する機構(減衰係数を変更する機構と観念することもできる)であるところの「減衰力変更アクチュエータ」(以下、単に「アクチュエータ」という場合がある)に関しても、特に限定はされず、例えば、アブソーバのピストンに設けられたオリフィス部の作動液通過面積を変更する機構、作動液の通路をシャッタによって開閉する機構等の種々の機構のうちの1つまたは複数を組み合わせたような機構等、広く公知の機構を採用することが可能である。アクチュエータの駆動源としては、電磁式モータ,電磁式ソレノイド等種々のものを採用することができ、例えば、それらの駆動源を制御作動することによって、自身が制御作動させられるような機構のアクチュエータを採用することができる。また、アクチュエータは、減衰力を段階的に変更可能なものであってもよく、連続的に変更可能なものであってもよい。
本項の態様の制御装置は、各サスペンション装置の減衰力を調節する制御である減衰力調節制御が実行可能なものであればよい。具体的なハード構成が特に限定されるものではないが、例えば、コンピュータを主体とする電子制御装置とすることができる。また、制御装置は、互いに制御態様の異なる複数の制御モードの中から1つの制御モードを選択して、その選択されたモードの減衰力調節制御を実行するように構成されたものあってもよく、また、常に単一の制御態様の減衰力調節制御を実行するように構成されたものであってもよい。前者は、具体的には例えば、後に詳しく説明するように、バウンシングを対象とする制御モード,ピッチングを対象とする制御モード,ローリングを対象とする制御モードといったいくつかの制御態様の異なる複数の制御モードを設定し、それら中から、車両の挙動,走行状態等に応じて、適切な1つの制御モードを選択し、そのモードの減衰力調節制御を実行するような態様のものが含まれる。
本項の態様の制御装置の1つの機能部である「標準目標値決定部」は、車体質量状態が標準状態である場合におけるアクチュエータの制御目標値である標準目標値を決定する部分である。ここにいう「車体質量状態」とは、車体自体とそれに搭乗する搭乗者,積載される荷物等を含めたものと1つの車体として扱い、例えば、その車体の質量(以下の「車体質量」という場合がある),質量バランス,重心位置,各サスサスペンション装置が支持するばね上質量等がどのような状態にあるかを表す概念である。また、「車体質量状態の標準状態」とは、制御における基準となるある特定の車体質量状態であり、例えば、搭乗者,荷物等が存在しない空車の状態、平均的体重の運転者のみが運転席に着座している状態等といった各種の状態における任意の一状態として設定することが可能である。また、「制御目標値」は、例えば、セスペンション装置が発生させるべき減衰力状態の値、例えば、サスペンション装置が有すべき減衰係数の値とすることができる。また、その減衰力状態,減衰係数を実現可能なアクチュエータ作動状態(作動位置等を含む概念である)を示す値とすることもできる。アクチュエータの作動状態値の場合は、アクチュエータの構造,それが有する駆動源の種類等によって、種々異なるものとなる。具体的には、例えば、駆動源としてモータを有する場合にそのモータの回転位置であるとか、アクチュエータの作動ポジション,ポテンシャルといった値が、制御目標値となり得る。「標準目標値」は、制御の基礎となる制御目標値として位置付けられるものである。標準目標値は、各アクチュエータごとに決定されるものであるが、標準目標値決定部は、それそれのアクチュエータに対して1つのみの目標値を決定するものに限られない。例えば、先に説明したように、複数の制御モードの制御を実行可能とされた制御装置の場合、標準目標値設定部は、そのモードごとに異なる値の標準目標値を決定するものであってもよく、また、個別の制御を行う機能部ごとに、アクチュエータ制御部を備えることで、当該制御装置が複数のアクチュエータ制御部を備えるものとされてもよい。また、標準目標値決定部が標準目標値を決定するために基づく理論,振動モデル等も、特に限定されるものではない、例えば、スカイフックダンパ理論,非線形H∞制御理論等、既に公知の種々のアクティブ制御理論,セミアクティブ制御理論等を広く採用することが可能であり、複数の制御モードにおいて制御が実行される場合には、それぞれのモードにおいて、それらの理論等が異なるものであってもよい。
本項の態様の制御装置が備える「車体質量状態関連情報取得部」(以下、単に「情報取得部」という場合がある)は、車体質量状態関連量情報を取得する機能部であり、ここでいう「車体質量状態関連情報」(以下、単に「関連情報」という場合がある)とは、先に説明した車体質量状態を、直接的あるいは間接的に示す情報(パラメータ)である。情報取得部は、例えば、各種のセンサ等の検出値である基礎情報を基に、演算,マップ参照処理等を行って関連情報を得るように構成することが可能である。そのような構成に関してより具体的に説明すれば、例えば、車体の特定箇所と路面との距離、各車輪に対しての車輪車体間距離(各サスペンション装置が備えるアブソーバの伸縮長等を含む)、各サスペンション装置が気体ばねを有する場合の気体室の圧力等を検出するセンサを備え、それらのセンサによって検出された基礎情報を基に、車体質量、各サスペンション装置の支持質量(車体の部分質量)等の車体質量状態を直接的に示す情報を取得するように構成することが可能であり、さらに、それらの情報を基に、前側2輪,後側2輪の支持質量、左側2輪,右側2輪の支持質量、車体重心の位置等の車体質量状態を直接的に示す別の情報を取得するように構成することが可能である。なお、上記基礎情報は車体質量状態を間接的に示す情報と考えることができ、情報取得部は、基礎情報自体を関連情報として取得するような構成することも可能である。
本項の態様の制御装置が備える「補正値決定部」は、上記取得された関連情報に基づいて、上記補正値を決定する機能部である。「補正値」は、例えば、車体を1つの剛体とみなした場合の振動モデル,振動理論等に従って決定することが可能である。その場合の振動モデル等は、特に、限定されるものではない。例えば、各アクチュエータの標準目標値を共通して補正可能な1つの補正値が得られるようなものであればよく、既に公知の振動モデル等を始め種々の振動モデル等を採用することが可能である。先に説明したように、複数の制御モードにおいて制御を実行するような制御装置の場合等では、補正値決定部は、それら制御モードごとに異なる振動モデル等を採用するものであってもよい。つまり、補正値決定部が、各サスペンション装置に共通の補正値を複数決定するように構成することも可能である。なお、補正値は、標準目標値に加減される値といった狭い意味ではなく、広く補正処理に用いる値を意味する。例えば、標準目標値に乗除等されることによって適正な制御目標値を実質的に決定可能な値等をも広く採用することができる。具体的には、例えば、制御目標値が減衰係数等である場合には、それに掛けられる補正係数(「減衰力補正係数」,「ゲイン」等ということもできる)を補正値とすることができる。
本項の態様の制御装置が備える「アクチュエータ制御部」は、各クアクチュエータの上記制御目標値を決定し、その決定された目標値に基づくアクチュエータの作動制御を実行する機能部である。制御目標値は、先に説明した標準目標値と補正値とに基づいて決定される。その決定のための処理は、特に限定されるものではなく、例えば、各アクチュエータの標準目標値に単に共通の補正値を加減乗除等するような処理であってもよく、また、各標準目標値を一旦何らかの別の値に変換処理した後にその値に補正値による補正を行うような処理、標準目標値を補正値によって補正した後にその補正した値を何らかの別の値に変換処理するような処理等、種々の処理を採用可能である。アクチュエータの作動制御も、決定された制御目標値を基づくものであれば特にその具体的処理が限定されるものではなく、一般的なフィードフォワード制御,フィードバック制御等を始めとした種々の制御を採用可能である。なお、複数の制御モードにおいて制御を実行する態様の制御装置の場合、個別の制御を行う機能部ごとに、アクチュエータ制御部を備えることで、当該制御装置が複数のアクチュエータ制御部を備えるものとされてもよい。
(2)前記補正値決定部が、車体を1つの剛体とみなした振動モデルに基づく関数を用いて、前記車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量状態関連情報に基づいて前記補正値を算出するものである(1)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
本項に記載の態様は、平たく言えば、補正値決定部が、マップ等の参照データベースを参照することなく、単なる演算処理によって上記補正値を決定するように構成された態様である。マップ等を参照する処理は、特に、そのマップが複雑である場合等において、長い処理時間を要する。そのため、そのような処理では、応答性のよい制御が実行できない場合がある。また、適正な減衰力特性を得るためのマップデータを作成するにあたって、高度な技術の蓄積,長い時間に及ぶデータ収集等を必要とし、そのための負担が大きい。特に、先に説明したように複数の制御モードで制御が実行される場合において、各モードごとに異なるマップ等を参照するような処理を行うような場合には、上記負担はさらに大きくなる。本項に記載の態様は、単に関数を用いた算出処理によって、補正値が決定されるため、本態様の制御装置によれば、簡便,迅速な処理が期待でき、また、装置自体の開発も簡便に行えることになる。なお、本項の態様において、振動モデル,関数は1つに限定されない。例えば、複数の制御モードにおいて制御が実行される場合において、その制御モードごとに異なるモデルを採用し、異なる関数を採用することも可能である。
(3)前記補正値決定部が、車体のバウンシングに対する制御において用られる前記補正値であるバウンシング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのバウンシング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するバウンシング補正値決定部を備えた(1)項または(2)項に記載の車両用サスペンション装置。
本項に記載の態様は、バウンシング制御が可能な制御装置に関する態様である。本項にいう「バウンシングに対する制御(バウンシング制御)」は、決して狭い意味に解釈されるものではなく、車体のバウンシング挙動に対応するための制御を広く含む概念である。詳しく言えば上記バウンシング補正値、例えば、車体を1つの剛体としたバウンシング振動モデルに基づいて決定された補正値によって補正されることが好適な制御という意味である。
(4)前記車体質量状態関連情報取得部が、前記車体質量状態関連情報として、少なくとも車体質量関連情報を取得するものであり、
前記バウンシング補正値決定部が、前記車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量関連情報に基づいて前記バウンシング補正値を決定するものである(3)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
本項に記載の態様は、バウンシング制御を行う制御装置において、補正値の決定の際に依拠する車体質量状態関連情報を限定した態様である。本項にいう「車体質量関連情報」は、先に説明した車体質量状態関連情報の下位に属する概念であり、車体質量を直接的にあるいは間接的に表す情報を意味する。具体的には、例えば、各サスペンション装置の支持質量、前側2輪,後側2輪の支持質量、左側2輪,右側2輪の支持質量等を直接的にあるいは間接的に示す情報も、車体質量関連情報に含まれる。
(5)前記バウンシング補正値決定部が、前記バウンシング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるバウンシング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるバウンシング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるバウンシング減衰係数との比の値に決定するものである(3)項または(4)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
本項に記載の態様は、バウンシング制御が可能な制御装置において、特定の値が補正値として決定される態様である。例えば、車体を1つの剛体とみなしたバウンシング振動モデルであって、後の〔実施例〕で示すような特定の振動モデルに基づいて補正値を決定することによって実現される。本項の態様における「バウンシング減衰係数」は、車体を1つの剛体とみなした場合のバウンシングに関する減衰係数であり、例えば、車体全体が1つのサスペンション装置で懸架されていると仮定した場合におけるそのサスペンション装置において発生させられる減衰係数と考えることが可能である。また、本項の態様において補正値として決定される「現実の車体質量状態におけるバウンシング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるバウンシング減衰係数との比(以下、「バウンシング減衰係数比」という場合がある)」は、目標制御値が各サスペンション装置が有すべき減衰係数である場合には、目標制御値の決定において、標準目標値としての減衰係数に乗じられる係数(減衰力補正係数の一種である)として利用することが可能である。
(6)前記補正値決定部が、車体のピッチングに対する制御において用いられる前記補正値であるピッチング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのピッチング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するピッチング補正値決定部を備えた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
(7)前記車体質量状態関連情報取得部が、前記車体質量状態関連情報として、少なくとも車体質量関連情報および車体重心前後方向位置関連情報を取得するものであり、
前記ピッチング補正値決定部が、前記車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量関連情報および車体重心前後方向位置関連情報に基づいて、前記ピッチング補正値を決定するものである(6)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
(8)前記ピッチング補正値決定部が、前記ピッチング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるピッチング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるピッチング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるピッチング減衰係数との比の値に決定するものである(6)項または(7)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
上記一連の項は、ピッチング制御が可能な制御装置の各種態様を示した項である。上記の項における「ピッチングに対する制御(ピッチング制御)」は、決して狭い意味に解釈されるものではなく、車体のピッチング挙動に対応するための制御を広く含む概念である。詳しく言えば上記ピッチング補正値、例えば、車体を1つの剛体としたピッチング振動モデルに基づいて決定された補正値によって補正されることが好適な制御という意味である。具体的には、例えば、ダイブ制御,スクワット制御等のような制御である。上記一連の項の態様は、先のバウンシング制御に関する一連の項の態様と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。なお、上記の態様における「ピッチング減衰係数」は、車体を1つの剛体とみなした場合のピッチングに関する減衰係数を意味する。また、上記「車体重心前後方向位置関連情報」は、先に説明した車体質量状態関連情報の下位に属する概念であり、車体重心の前後方向における位置を直接的にあるいは間接的に示す情報である。具体的には、例えば、車体重心と前輪軸線あるいは後輪軸線との距離、2つの前輪、あるいは2つの後輪が支持する支持質量の関係等を直接的にあるいは間接的に示す情報も、車体重心前後方向位置関連情報に含まれる。
(9)前記補正値決定部が、車体のローリングに対する制御において用いられる前記補正値であるローリング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのローリング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するローリング補正値決定部を備えた(1)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
(10)前記車体質量状態関連状態取得部が、前記車体質量状態関連情報として、少なくとも車体質量関連情報を取得するものであり、
前記ローリング補正値決定部が、前記車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量関連情報に基づいて、前記ローリング補正値を決定するものである(9)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
(11)前記ローリング補正値決定部が、前記ローリング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるローリング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるローリング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるローリング減衰係数との比の値に決定するものである(9)項または(10)項に記載の車両用サスペンション制御装置。
上記一連の項は、ローリング制御が可能な制御装置の各種態様を示した項である。上記項における「ローリングに対する制御(ローリング制御)」は、決して狭い意味に解釈されるものではなく、車体のローリング挙動に対応するための制御を広く含む概念である。詳しく言えば上記ローリング補正値、例えば、車体を1つの剛体としたローリング振動モデルに基づいて決定された補正値によって補正されることが好適な制御という意味である。上記一連の項の態様は、先のバウンシング制御に関する一連の項の態様と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。なお、上記の態様における「ローリング減衰係数」は、車体を1つの剛体とみなした場合のローリングに関する減衰係数を意味する。
以上、バウンシング,ピッチング,ローリングのそれぞれに対する3つの制御について説明したが、請求可能発明の態様となり得る制御装置は、上記3つの制御のうちいずれかのみを実行する制御装置であってもよく、また、それら3つの制御のうちいずれかの2以上の制御を実行可能とし、それら2以上の制御のうちの1つを選択して実行するような制御装置であってもよい。後者の制御装置は、具体的には例えば、当該制御装置が実行する制御に応じて、上記バウンシング補正値,ピッチング補正値,ローリング補正値のうちのいずれか2以上のもののうちから、制御に用いる1つの補正値を選択する補正値選択部を備えた態様のものとすることができ、また、当該制御装置が実行する制御に応じて、バウンシング補正値決定部と,ピッチング補正値決定部,ローリング補正値決定部のうちのいずれか2以上のものうちから、実行させる1つの補正値決定部を選択する補正値決定部選択部を備えた態様のものとすることができる。上記後者の制御装置、特に3つの制御を実行可能とする制御装置では、車体質量状態の変化に対応する減衰力の調節に関し、より適切な制御が実行されることになる。
以下、本発明の一実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、以下の説明では、まず、実施例の車両用サスペンション制御装置において補正値決定の根拠となる振動モデル、および、そのモデルから導出される補正値決定のために利用される関数について説明し、その後に、当該制御装置の制御対象となるサスペンション装置を含んで構成されるサスペンションシステムの全体構成、減衰力調節制御における制御モード、当該制御装置による減衰力調整制御、当該制御装置の機能構成について、順に説明行う。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<補正値決定の根拠となる振動モデルおよび補正値決定に利用される関数>
本実施例では、標準目標値を補正する補正値は、車体を1つの剛体とみなした振動モデルから導出される関数(以下、「補正値決定関数」という場合がある)を利用して算出される。本実施例では制御装置は、バウンシング制御,ピッチング制御,ローリング制御の3つの制御を実行するが、それぞれの制御において、補正値決定関数が依拠する振動モデルが互いに異なっている。以下に、それぞれの制御における振動モデルと補正値決定関数を、順に説明する。
(A)バウンシング制御
図1(a)に、バウンシング制御での補正値決定において依拠する振動モデルの概念図を示す。図から解るように、本振動モデルは、車体10を1つの剛体してみなし、その車体が1つのサスペンション装置20(1つのばね22と1つのダンパ24とによって構成されれいる)によって懸架されているとみなした振動モデルであり、単純化された振動モデルである。図において、Mは車体質量を、Xは車体10の上下変位量を、Kはばね22のばね定数を、Cはダンパ24の減衰係数を、それぞれ表している。
図1(a)のモデルは、バウンシング制御に特化したものであることから、ばね22のばね定数Kをバウンシングばね定数KB、ダンパ24の減衰係数Cをバウンシング減衰係数CBとすれば、そのモデルにおける運動方程式は、
M・X”+CB・X’+KB・X=0 ・・・(1)
X”+2・ζB・ωB・X’+ωB 2・X=0 ・・・(2)
と表すことができる。なおここで、X’は変位速度,X”は変位加速度であり、ζBはバウンシング減衰比,ωBはバウンシング共振を決定するパラメータ(ωB/2πが共振周波数となる)であって、
ζB=CB/{2・(M・KB1/2} ・・・(3)
ωB=(KB/M)1/2 ・・・(4)
が成立する。
上記振動モデルに基づくバウンシング制御では、バウンシング減衰比ζBが一定であれば、車体質量Mが異なる場合であっても、同様の減衰特性が得られることになる。そこで、バウンシング減衰比ζBが一定であるという条件の下、標準状態における車体質量(標準車体質量)をM0,標準状態とは異なるある特定状態における車体質量をM1とし、標準状態におけるバウンシングばね定数をKB0,特定状態におけるバウンシングばね定数をKB1とすれば、特定状態でのバウンシング減衰係数CB1に対する標準状態でのバウンシング減衰係数CB0に対する比(以下、「バウンシング減衰係数比」という)は、
B1/CB0={(M1/M0)・(KB1/KB0)}1/2 ・・・(5)
となる。
ここで、サスペンション装置のサスペンションスプリングがコイルばねである場合、つまりコイルサスペンション装着車の場合は、
B1/KB0=1 ・・・(6)
となるため、上記バウンシング減衰係数比は、
B1/CB0=(M1/M01/2=α1/2 ・・・(7)
となる。ちなみに、αは車体質量比であり、α=M1/M0と定義されるものである。また、サスペンション装置のサスペンションスプリングが気体ばねである場合、つまり、エアサスペンション装着車の場合は、
B/M=cont. ・・・(8)
となるため、上記減衰係数比は、
B1/CB0=α ・・・(9)
となる。つまり、M0は既知であることから、M1を取得すれば、バウンシング減衰係数比(CB1/CB0)は求まることになる。
したがって、上記振動モデルに依拠するバウンシング制御においては、車体質量が変動している場合には、上記バウンシング減衰係数比(CB1/CB0)を補正係数つまりバウンシング補正値として使用し、その補正値と各サスペンション装置の標準目標とに基づいて各サスペンション装置の目標制御値を決定することによって、適切な減衰力調節が可能となる。より具体的に言えば、例えば、制御目標値が各サスペンション装置において有すべき減衰係数である場合には、上記補正値を、各サスペンション装置の標準目標値としての標準目標減衰係数に乗ずることによって、制御目標値である目標減衰係数を決定すればよいのである。
(B)ピッチング制御
図1(b)に、ピッチング制御での補正値決定において依拠する振動モデルの概念図を示す。図から解るように、本振動モデルは、車体10を1つの剛体してみなし、その車体の前輪側,後輪側が、それぞれ1つずつの前側サスペンション装置20f,後側サスペンション装置20r(それぞれ1つの前側ばね22f,後側ばね22rと、1つの前側ダンパ24f,後側ダンパ24rとによって構成されている)によって懸架されているとみなした振動モデルであり、単純化された振動モデルである。図において、Mfは車体質量Mのうちの前輪によって支持される部分質量である前輪支持質量(前輪側ばね上質量)を、Mrは車体質量Mのうちの後輪によって支持される部分質量である後輪支持質量(後輪側ばね上質量)を、Xfは車体の前側サスペンション装置22fに支持されている部位の上下変位量(前側上下変位量)を、Xrは車体の後側サスペンション装置22rに支持されている部位の上下変位量(後側上下変位量)を、それぞれ表しており、Gは車体の重心を、Lfは車体重心Gの車体前後方向における前輪軸線からの距離である対前輪重心距離を、Lrは車体重心Gの車体前後方向における後輪軸線からの距離である対後輪重心距離を、θPはピッチング角を、それぞれ示している。また、Kf,Krの各々はばね22f,22rの各々のばね定数を、Cf,Crの各々はダンパ24f,24rの各々の減衰係数を表している。
図1(b)のモデルにおける運動方程式は、
P・θP”+CP・θP’+KP・θP=0 ・・・(10)
θP”+2・ζP・ωP・θP’+ωP 2・θP=0 ・・・(11)
と表される。なおここで、θP’はピッチング角速度,θP”はピッチング角加速度であるまた、IPはピッチング慣性モーメント,CPはピッチング減衰係数,KPはピッチング剛性であって、
f=−θP・Lf ・・・(12)
r=θP・Lr ・・・(13)
とみなせることから、それぞれ、
P=Mf・Lf 2+Mf・Lf 2 ・・・(14)
P=Cf・Lf 2+Cr・Lr 2 ・・・(15)
P=Kf・Lf 2+Kr・Lr 2 ・・・(16)
と関係付けられるものである。さらに、ζPはピッチング減衰比,ωPはピッチング共振を決定するパラメータ(ωP/2πが共振周波数となる)であって、
ζP=CP/{2(IP・KP1/2} ・・・(17)
ωP=(KP/IP1/2 ・・・(18)
が成立する。
上記振動モデルに基づくピッチング制御では、ピッチング減衰比ζPが一定であれば、車体質量状態、詳しくは、前輪支持質量Mf,後輪支持質量Mf,対前輪重心距離Lf,対後輪重心距離Lrが異なる場合であっても、同様の減衰特性が得られることになる。そこで、ピッチング減衰比ζPが一定であるという条件の下、標準状態におけるピッチング慣性モーメントをIP0,標準状態とは異なるある特定状態におけるピッチング慣性モーメントをIP1とし、標準状態におけるピッチング剛性をKP0,特定状態におけるピッチング剛性をKP1とすれば、特定状態でのピッチング減衰係数CP1に対する標準状態でのピッチング減衰係数CP0に対する比(以下、「ピッチング減衰係数比」という)は、
P1/CP0={(IP1/IP0)・(KP1/KP0)}1/2 ・・・(19)
となる。一方、モデルに従えば、
P1/IP0=(Mf1・Lf1)/(Mf0・Lf0)=αf・βf ・・・(20)
P1/IP0=(Mr1・Lr1)/(Mr0・Lr0)=αr・βr ・・・(21)
が成立する。ちなみに、Mf0,Mf1の各々は、標準状態,特定状態の各々における前輪支持質量、Mr0,Mr1の各々は、標準状態,特定状態の各々における後輪支持質量であり、Lf0,Lf1の各々は、標準状態,特定状態の各々における対前輪重心距離、Lr0,Lr1の各々は、標準状態,特定状態の各々における対後輪重心距離である。また、αf,αrは、それぞれ前側車体質量比,後側車体質量比であって、それぞれ、αf=Mf1/Mf0,αr=Mr1/Mr0と定義されるものであり、βf,βrは、それぞれ対前輪重心距離比,対向輪重心距離比であって、それぞれ、βf=Lf1/Lf0,βr=Lr1/Lr0と定義されるものである。また、モデルに従えば、
P1/KP0=(Kf1・Lf1 2+Kr1・Lr1 2)/(Kf0・Lf0 2+Kr0・Lr0 2
・・・(22)
であり、すなわち、
P1/KP0=A・αf 2・βf 2 ・・・(23)
P1/KP0=A・αr 2・βr 2 ・・・(24)
が成立する。ちなみに、Kf0,Kf1は、前側ばね22fの標準状態,特定状態におけるばね定数であり、Kr0,Kr1は、後側ばね22rの標準状態,特定状態におけるばね定数である。また、Aは、次式で表される。
A=(Kf1/Mf1 2+Kr1/Mr1 2)/(Kf0/Mf0 2+Kr0/Mr0 2
・・・(25)
以上のことから、ピッチング減衰係数比は、
P1/CP0=A1/2・αf 3/2・βf 3/2 ・・・(26)
P1/CP0=A1/2・αr 3/2・βr 3/2 ・・・(27)
となる。
ここで、コイルサスペンション装着車の場合は、
f0=Kf1 ・・・(28)
r0=Kr1 ・・・(29)
が成立する。つまり、Kf0,Kr0およびMf0,Mr0が既知であることから、Mf1,Mr1を取得すれば、ピッチング減衰係数比(CP1/CP0)を算出することが可能である。また、エアサスペンション装着車の場合は、
f0/Mf0=Kf1/Mf1 ・・・(30)
r0/Mr0=Kr1/Mr1 ・・・(31)
が成立する。つまり、Kf0/Mf0およびKr0/Mr0が既知であることから、同様に、Mf1,Mr1を取得すれば、上記ピッチング減衰係数比(CP1/CP0)を算出することが可能である。
したがって、上記振動モデルに依拠するピッチング制御においては、前輪支持質量,後輪支持質量,車体重心の前後方向における位置の少なくともいずれかが変動している場合には、上記ピッチング減衰係数比(CP1/CP0)を補正係数つまりピッチング補正値として使用し、その補正値と各サスペンション装置の標準目標とに基づいて各サスペンション装置の目標制御値を決定することによって、適切な減衰力調節が可能となる。より具体的に言えば、例えば、制御目標値が各サスペンション装置が有すべき減衰係数である場合には、上記補正値を、各サスペンション装置の標準目標値である標準目標減衰係数に乗ずることによって、制御目標値である目標減衰係数を決定すればよいのである。
<ローリング制御>
振動モデルの図示は省略するが、ローリング制御においても、上記2つの制御の場合と同様、車体を1つの剛体として扱う。ローリング角をθRと、ローリング角速度をθR’と、ローリング角加速度をθR”とすれば、ピッチングモデルの場合と同様、ローリングモデルにおける運動方程式は、
R・θR”+CR・θR’+KR・θR=0 ・・・(32)
θR”+2・ζR・ωR・θR’+ωR 2・θR=0 ・・・(33)
と表される。なおここで、IRはローリング慣性モーメント,CRはローリング減衰係数,KRはローリング剛性である。また、ζRはローリング減衰比,ωRはローリング共振を決定するパラメータ(ωR/2πが共振周波数となる)であって、
ζR=CR/{2(IR・KR1/2} ・・・(34)
ωR=(KR/IR1/2 ・・・(35)
が成立する。
上記振動モデルに基づくローリング制御では、ローリング減衰比ζRが一定であれば、車体質量状態が異なる場合であっても、同様の減衰特性が得られることになる。そこで、ローリング減衰比ζRが一定であるという条件の下、標準状態におけるローリング慣性モーメントをIR0,標準状態とは異なるある特定状態におけるピッチング慣性モーメントをIR1とし、標準状態におけるローリング剛性をKR0,特定状態におけるローリング剛性をKR1とすれば、特定状態でのローリング減衰係数CR1に対する標準状態でのローリング減衰係数CR0に対する比(以下、「ローリング減衰係数比」という)は、ピッチングモデルの場合と同様、
R1/CR0={(IR1/IR0)・(KR1/KR0)}1/2 ・・・(36)
となる。一方、ピッチングモデルと異なり、ローリングによっても重心Gの左右方向のずれが小さいものとみなせば、
R1/IR0=M1/M0=α ・・・(37)
が成立する。ちなみに、M0,M1の各々は、標準車体質量,特定状態の車体質量であり、αは、先に説明した車体質量比である。
また、実際の車両では、前輪側のサスペンション装置と後輪側のサスペンション装置では、ばね定数が互いに異なることが一般的であり、そのことを考慮して、標準状態,特定状態の前輪側サスペンション装置のばね定数を、それぞれKf0,Kf1と、標準状態,特定状態の後輪側サスペンション装置のばね定数を、それぞれ、Kr0,Kr1とし、さらに、前輪側のトレッドをTrfと、後輪側のトレッドをTrrとすれば、
R1/KR0
={(Kf1+Kr1)・(Trf/2)2・2}/{(Kf0+Kr0)・(Trr/2)2・2
・・・(38)
とななる。また、一般的に、前輪側のトレッドTrfと後輪側のトレッドTrrとは、略等しいと考えることができるため、
R1/KR0=(Kf1+Kr1)/(Kf0+Kr0) ・・・(39)
となる。また、標準状態,特定状態の前輪支持質量を、それぞれMf0,Mf1と、標準状態,特定状態の後輪支持質量を、それぞれ、Mr0,Mr1とし、
f0=Kf0/Mf0 ・・・(40)
f1=Kf1/Mf1 ・・・(41)
r0=Kr0/Mr0 ・・・(42)
r1=Kr1/Mr1 ・・・(43)
とすれば、上記式は、
R1/KR0=(Ff1・Mf1+Fr1・Mr1)/(Ff0・Mf0+Fr0・Mr0
・・・(44)
となる。
コイルサスペンション装着車の場合は、
R1/KR0=1 ・・・(45)
が成立するため、上記ローリング減衰係数比(CR1/CR0)は、
R1/CR0=α1/2 ・・・(46)
となり、M0が既知であるため、M1を取得すれば、ローリング減衰係数比(CR1/CR0)を算出することが可能である。
また、エアサスペンション装着車の場合は、
f0=Ff1 ・・・(47)
r0=Fr1 ・・・(48)
が成立するため、上記(KR1/KR0)は、
R1/KR0=(Ff0・Mf1+Fr0・Mr1)/(Ff0・Mf0+Fr0・Mr0
・・・(49)
となり、
B=(Ff0・Mf1+Fr0・Mr1)/(Ff0・Mf0+Fr0・Mr0) ・・・(50)
とすれば、上記ローリング減衰係数比(CR1/CR0)は、
R1/CR0=(α・B)1/2 ・・・(51)
となる。また、Kf0,Kr0,Mf0,Mr0が既知であることから、Ff0,Fr0が既知であり、Mf1,Mr1を取得すれば、上記Bの値は算出可能である。また、既知であるMf0,Mr0からM0が、取得したMf1,Mr1からM1が、それぞれ求まり、αが算出できることから、ローリング減衰係数比(CR1/CR0)が算出可能である。
したがって、上記振動モデルに依拠するローリング制御においては、前輪支持質量,後輪支持質量の少なくともいずれかが変動している場合には、上記ローリング減衰係数比(CR1/CR0)を補正係数つまりローリング補正値として使用し、その補正値と各サスペンション装置の標準目標とに基づいて各サスペンション装置の目標制御値を決定することによって、適切な減衰力調節が可能となる。より具体的に言えば、例えば、制御目標値が各サスペンション装置において有すべき減衰係数である場合には、上記補正値を、各サスペンション装置の標準目標値に乗ずることによって、制御目標値を決定すればよいのである。
<車両用サスペンションシステムの構成>
本実施例のサスペンション制御装置によって制御される車両用サスペンションシステム全体のハード構成を、図2に示し、そのハード構成のうち当該制御装置が行う減衰力調節制御に関係の深い部分のブロック図を、図3に示す。以下、それらの図を参照しつつ、本サスペンションシステムの構成を説明する。
本サスペンションシステムは、4輪独立懸架式のサスペンションシステムであり、各車輪30ごとに、懸架シリンダ32を主体とするエアサスペンション装置34が配備されている。懸架シリンダ32は、ニューマチックシリンダであり、ショックアブソーバ,気体を収容するエアチャンバ等を有する一般的な構造のものである。各懸架シリンダ32は、上部に、電磁式モータを駆動源とする減衰力変更アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」という場合がある)36を備えており、そのアクチュエータ36は、アブソーバロッドに挿通するコントロールロッドを回転させることにより、アブソーバ内に設けられた減衰力変更バルブを操作するものとされている。そのバルブの操作により、各懸架シリンダ32において発生する減衰力が変更される。ちなみに、バルブは複数の段階(例えば、9段階)に可変のものとされており、各懸架シリンダ32の減衰力は、アクチュエータ36によって複数の段階に切り換わるようにされている。また、各懸架シリンダ32は、エアチャンバ内に収容される気体量を変更可能とされており、その気体量の変更によって、各サスペンション装置34によって支持される車体の被支持部の高さが変更可能とされている。つまり、本サスペンションシステムは、車高調整機能を有するものとなっている。車高調整のためのデバイスとして、コンプレッサ38,前輪側ハイトコントロールバルブ40,後輪側ハイトコントロールバルブ42、ハイトコントロールスイッチ44等が設けられている。
本サスペンションシステムは、車両走行状態等、車両に関する各種情報を検出するための各種センサ等を有している。それら各種センサ等を順次説明すれば、2つの前輪には、車両走行速度の基礎情報となる車輪回転速度を検出するための車輪速センサ50が設けられ、各懸架シリンダ32の傍らには、上記車体の被支持部の高さ位置を検出するためのハイトコントロールセンサ52が設けられている。それらハイトコントロールセンサ52の各々は、各被支持部の上下方向の変位加速度を検出するためのGセンサが内臓されている。また、各懸架シリンダ32には、各サスペンション装置34が支持する車体の部分質量(「支持荷重」と通称されることもある)の基礎情報となるエアチャンバ内気体圧を検出するための気体圧センサ54が設けられている。さらには、ブレーキ操作の有無を検出するためのストップランプスイッチ56が、ステアリングホイールの操舵角を検出するための舵角センサ58が、各ドアの開閉状態を検出するためのドアカーテシスイッチ60が、それぞれ設けられている。
本サスペンションシステムは、自身を制御するサスペンション制御装置としてのサスペンション電子制御ユニット(以下、「サスペンションECU」あるいは単に「ECU」という場合がある)70を備えている。ECU70は、CPU,ROM,RAM,バス,I/O等を含んで構成されるコンピュータを主体とするものであり、各種ハードデバイスの各々の駆動回路(ドライバ)をも含んで構成されている。例えば、減衰力調節制御に関係の深いデバイスに関して言えば、上記減衰力変更アクチュエータ36の各々は、コンピュータのI/Oに、それらアクチュエータ36ごとに個別の駆動回路を介して接続されている。また、I/Oには、上記センサ等も接続され、減衰力調節制御を行う際に、ECU70は、上記車両に関する各種情報が入手可能とされている。なお、車両の加速状態に関する情報を取得すべく、エンジン電子制御ユニット(エンジンECU)72も、I/Oに接続されている。ちなみに、減衰力制御に関する情報は、インストゥルメントパネルに設けられたコンビネーションメータ74等に表示される。
<車両用サスペンション制御装置が実行する制御モード>
本実施例のサスペンション制御装置であるサスペンションECU70は、車両の走行状態に応じて、以下の5つのモードの減衰力調節制御を選択的に実行する。
a)あおり制御
b)ごつごつ感応制御
c)アンチダイブ制御
d)アンチスクワット制御
e)アンチロール制御
上記各制御は、いずれも、各懸架シリンダ32の減衰力変更アクチュエータ36を個々に独立して制御することによって行われる。以下、それぞれの制御を簡単に説明すれば、「あおり制御」は、比較的大きな路面の凹凸に対して、適切な減衰力特性が得られるように行われる制御であり、「ごつごつ感応制御」は、荒れた路面の走行時等のごつごつ感を減少させる制御であって、発生する減衰力を比較的低い値として乗り心地を担保するとともに車体のフラット感を実現するための制御である。また、「アンチダイブ制御」は、車両減速時に発生する車体のダイブ状態におけるダイブ速度を緩やかにして操縦性・安定性を確保するための制御であり、「アンチスクワット制御」は、車両加速時に発生する車体のスクワット状態におけるスクワット速度を緩やかにして、操縦性・安定性を確保するための制御である。さらに、「アンチロール制御」は、操舵時の状態に応じて減衰力を適正化し、旋回時に発生する車体のロール状態におけるロール速度を緩和して、操縦性・安定性を確保するための制御である。後に詳しく説明するが、ECU70は、車両の走行状態等に基づいて、いずれの制御モードで制御を行うべきか決定し、その決定した制御モードに対して設定されているプロセスに従って、アクチュエータの制御目標値を決定してその目標値に基づく減衰力調節を行うようにされている。
本実施例では、以上の5つのモードの減衰力調節制御は、以下に示す3つの上位制御モードに区分される。
A)バウンシング制御
B)ピッチング制御
C)ローリング制御
具体的に言えば、あおり制御,ごつごつ感応制御が「バウンシング制御」に、アンチダイブ制御,アンチスクワット制御が「ピッチング制御」に、アンチロール制御が「ローリング制御」に、それぞれ含まれる。後に詳しく説明するが、上記制御目標値の決定では、まず車体質量状態が標準状態である場合の標準目標値が決定され、その標準目標値を車体質量状態に応じた所定の補正値による補正が行われる。その補正に用いる補正値は、上記3つの上位制御モードごとに決定されるようになっており、5つの制御モードの各々における補正値は、その各々が属する上位制御モードごとに決定された補正値が採用されることになる。
<車両用サスペンション制御装置による減衰力調節制御>
本実施例のサスペンション制御装置であるECU70による減衰力調節制御は、図4にフローチャートを示す減衰力調節制御プログラムが実行されることによって行われる。その制御プログラムは、ECU70が有するコンピュータのROMに格納されており、車両のイグニッションスイッチがON状態とされた後、短い時間間隔(例えば、十〜数十msec)をおいて繰り返し実行される。以下、図4のフローチャートに従って、本サスペンションシステムにおける減衰力調節制御の実際のプロセスを説明する。
減衰力調整制御では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、車体質量状態を取得する条件下にあるか否かが判断される。車体質量状態取得条件は、本実施例では、(1)車両のドアがすべて閉じられていること、および、(2)車両が走行状態ではないことの2つであり、その2つを充足する場合に、車体質量状態を取得可能と判断される。つまり、本ステップの処理は、車両への乗員の乗り降りあるいは荷物の積み下ろしがない状態であり、かつ、車両が静止している状態において、現時点での車体質量状態を取得することを目的とする処理である。車両のドアの開閉は、ドアカーテシスイッチ60の検出信号に基づいて判断され、車両が走行状態であるか否かは、車輪速センサ30の検出信号に基づいて判断される。S1において、車両の状態が車体質量状態取得条件を充足していると判断された場合は、次のS2の補正値決定のための処理がなされ、充足していないと判断された場合は、そのS2の処理はスキップされる。
S2の補正値決定のための処理は、図5にフローチャートを示す補正値決定ルーチンが実行されて行われる。補正値決定のための処理では、まず、S21において、各懸架シリンダ32のエアチャンバ内の気体圧が、基礎情報として取得される。この気体圧の取得は、各懸架シリンダ32に設けられている気体圧センサ54の検出信号に基づいてなされる。続く、S22において、各サスペンション装置34によって支持される車体の部分質量すなわち各サスペンション装置34の支持質量が取得される。具体的に言えば、ROMには、各サスペンション装置34ごとの気体圧と支持質量との関係が、既知データとして、マップの形式で格納されており、そのマップを参照して、取得された気体圧における各サスペンション装置34の支持質量を求める処理が行われる。
次に、S23において、取得された各輪の支持質量に基づいて、現時点での車体質量M1,前輪支持質量Mf1,後輪支持質量Mr1,対前輪重心距離Lf1(あるいは対後輪重心距離Lr1)が算出される。この算出は、単純な算術演算に従うものであり、ここでは具体的な算出式の説明は省略する。上記S21〜S23の処理の結果、車体質量状態関連情報、詳しくは、車体質量関連情報,車体重心前後方向位置関連情報が取得されるのである。
続くS24において、バウンシング制御で用いられる補正値であるバウンシング補正値が算出される。本実施例では、バウンシング補正値は、先に説明したバウンシング減衰係数比(CB1/CB0)とされている。サスペンション装置34がいわゆるエアサスペンションであることから、補正値決定関数である前述の式(9)に基づいて、バウンシング減衰係数比が算出されることになる。この算出には、先に取得されている現時点での車体質量M1の値が利用される。なお、この算出において必要とされるところの標準状態における車体質量M0の値は、既知データとしてROMに格納されている。
続くS25において、ピッチング制御で用いられる補正値であるピッチング補正値が算出される。本実施例では、ピッチング補正値は、先に説明したピッチング減衰係数比(CP1/CP0)とされている。サスペンション装置34がいわゆるエアサスペンションであることを考慮し、補正値決定関数である式(26)(あるいは式(27))に基づいて、ピッチング減衰係数比が算出される。この算出には、先に取得されている現時点での前輪支持質量Mf1,後輪支持質量Mr1,対前輪重心距離Lf1(あるいは対後輪重心距離Lr1)が利用される。なお、この算出において必要とされるところの標準状態における前輪支持質量Mf1,後輪支持質量Mr1,対前輪重心距離Lf1(あるいは対後輪重心距離Lr1),ばね定数Kf0,Kr0の値は、既知データとしてROMに格納されている。
次のS26において、ローリング制御で用いられる補正値であるローリング補正が算出される。本実施例では、ローリング補正値は、先に説明したローリング減衰係数比(CR1/CR0)とされている。サスペンション装置34がエアサスペンションであることから、補正値決定関数である前述の式(51)に基づいて、ローリング減衰係数比が算出される。この算出には、先に取得されている現時点での車体質量M1,前輪支持質量Mf1,後輪支持質量Mr1が利用される。なお、この算出において必要とされるところの標準状態における車体質量M0,前輪支持質量Mf0,後輪支持質量Mr1,ばね定数Kf0,Kr0の値は、既知データとしてROMに格納されている。
上記S24〜S26の処理によって、それぞれが各サスペンション装置32ごとの制御目標値決定において依拠する共通の補正値であるところの、3つの補正値が算出される。そして、S24〜S26の処理によって算出された3つの補正値は、ECU70のコンピュータのRAMに格納されることによって、更新される。なお、上記S24〜S26は、いわゆるエアサスペンション装着車の場合の処理であるが、コイルサスペンション装着車である場合は、それぞれ、前述の式(7),式(26)(あるいは式(27)),式(46)に基づいて、各制御ごとの補正値である3つの減衰係数比を算出すればよい。また、上記S21およびS22では、本車両がエアサスペンション装着車であることに依拠して、チャンバ内の気体圧に基づいて、上記車体質量状態関連情報を取得するようにされていた。それに対し、車両がコイルサスペンション装着車である場合には、例えば、前述のハイトコントロールセンサ40,42等に類似するセンサ等を設け、それらのセンサ等によって検出されたところの、各サスペンション装置34の各々の被支持部の高さ位置に基づいて、前述の各車体質量状態関連情報を取得するように構成することも可能である。
S2の補正値決定処理が終了した後、あるいは、その処理がスキップされた後に、S3〜S6の制御モード決定処理が実行される。この制御モード決定処理では、まず、S3において、車体がピッチング制御モードの制御を行うべきかか否かが判断される。詳しく言えば、ダイブ状態(ダイブしているあるいはダイブしそうな状態)あるいはスクワット状態(スクワットしているスクワットしそうな状態)であるか否かが判断される。具体的には、ストップランプスイッチ56の信号に基づいてブレーキ操作がなされていると判断され、かつ、車輪速センサ50の検出信号に基づいて車両の減速度が所定値以上であると判断された場合に、ダイブ状態であると判断され、また、エンジンECU72からの情報に基づいてエンジンが所定の回転数以上であると判断され、かつ、車輪速センサ50の検出信号に基づいて車両の加速度が所定値以上であると判断された場合に、スクワット状態であると判断される。S3において、ダイブ状態あるいはスクワット状態であると判断された場合、つまりピッチング制御を行うべきであると判断された場合は、S4において、アンチダイブ制御を行うべきか否かが判断される。ダイブ状態である場合は、制御モードがアンチダイブ制御に決定され、スクワット状態である場合は、制御モードがアンチスクワット制御に決定される。
S4において、ピッチング制御モードの制御を行うべきでないと判断された場合は、S5において、ローリング制御モードの制御を行うべきか否かが判断される。詳しくは、車体がロール状態(ロールしているあるいはロールしそうな状態)であるか否かが判断される。具体的には、車輪速センサ50の検出信号に基づく車両走行速度と、舵角センサ58の検出信号に基づくステアリングホイールの操舵角とに基づいて、所定のヨーレートが発生する場合にロール状態であると判断される。S5において、ロール状態であると判断された場合、つまり、ローリング制御モードの制御を行うべきであると判断された場合は、制御モードがアンチロール制御に決定される。
S5において、ローリング制御を行うべきではないと判断された場合には、バウンシング制御モードの制御を行うことに決定され、続くS6において、ごつごつ感応制御を行うべきか否かが判断される。具体的には、ハイトコントロールセンサ52が内蔵するGセンサの上下加速度に基づいて、路面の荒れの程度を推測し、その推測結果に基づいて判断される。S6においてごつごつ感応制御を行うべきであると判断された場合は、制御モードがごつごつ感応制御に決定される。ごつごつ感応制御を行うべきでないと判断された場合は、制御モードがあおり制御に決定される。S3〜S6の制御モード決定処理によって、上記5つの制御モードに決定され、その決定の結果によって、S7〜S11の5つの個別モード制御a〜eのいずれかの処理が実行されることになる。
S7〜S11の個別モード制御に関する処理は、個別モード制御aルーチンないし個別モード制御eルーチンのいずれかが実行されることになる。それらのルーチンは類似するものであることから、それらが総括された仮想的な1つのルーチンとして、図6にフローチャートを示す個別モード制御ルーチンを例示し、そのルーチンを説明する中で、上記5つの個別モード制御ルーチンa〜eをまとめて説明する。
個別モードの制御では、まずS31において、4つのアクチュエータ36の各々について、それぞれ制御目標値であって、車体質量状態が標準状態である場合の目標値である標準目標値が決定される。標準目標値は、5つの個別モードの各々において、異なる理論,プロセス等に従って、例えば、ハイトコントロールセンサ52が備えるGセンサの検出値等に基づいて決定される。この標準目標値の決定に関しては、既に公知の種々の理論、プロセス等を広く採用することができるため、ここでの説明は省略する。また、先に説明したように、本実施例では、制御目標値として、各懸架シリンダ32の特性値である減衰係数を採用しており、S31では、各アクチュエータ36に対して、標準状態における目標減衰係数である標準目標減衰係数C0 *が決定されることになる。
続くS32では、標準目標減衰係数C0 *の補正において採用される補正値が選択される。補正値は、制御モードに応じたものが、RAMに格納されている3つの補正値の中から選択される。繰り返すが、あおり制御,ごつごつ感応制御の場合はバウンシング補正値が、アンチダイブ制御,アンチスクワット制御の場合にはピッチング補正値が、アンチロール制御の場合にはローリング補正値が、それぞれ、減衰係数補正値Dとして選択される。
次のS33では、実際に用いられる制御目標値である目標減衰係数C1 *が決定される。具体的には、先に決定されている標準目標減衰係数C0 *が補正され、詳しくは、4つのアクチュエータ36の標準目標減衰係数C0 *の各々に、選択された1つの減衰係数補正値Dが乗じられて、目標減衰係数C1 *が決定される。次のS34では、目標減衰係数C1 *に基づいて、4つのアクチュエータ36の制御が行われる。具体的に言えば、目標減衰係数C1 *の値に応じて各アクチュエータ36の作動位置が段階的に定められており、どの段階の作動位置に各アクチュエータ36を作動させるかが決定され、その決定された作動位置となるようにアクチュエータ36に作動指令が発せられる。
以上説明した一連の処理を終了して、1回の減衰力調節制御プログラムの実行が終了する。先に説明したように、この減衰力調節制御プログラムは、イグニッションスイッチがOFFとされるまで、短い時間間隔をおいて連続して繰り返される。上記プログラムの実行によってなされる減衰力調節制御は、車体質量状態に応じて適切に減衰力が調節されることに加え、4つのアクチュエータ36の各々に対する制御目標値が、1つの共通の補正値によって補正されるため、簡便な制御となっている。
<車両用サスペンション制御装置の機能構成>
上記減衰力調整制御を実行するサスペンション制御装置であるサスペンションECU70を、それの機能を中心に表現すれば、図7に示す機能ブロック図のようになる。以下に、この図を参照しつつ、ECU70の機能構成を説明する。
ECU70は、車体質量状態関連情報取得部80、補正値決定部82、制御モード決定部84、複数の個別モード制御部86、データ・プログラム格納部88を含んで構成されている。補正値決定部82は、バウンシング補正値決定部90、ピッチング補正値決定部92、ローリング補正値決定部94の3つの決定部を備えており、また、各個別モード制御部86は、標準目標値決定部96と、アクチュエータ制御部98とを備えている。さらに、データ・プログラム格納部88は、既知データ格納部100を備えている。
車体情報関連情報取得部80は、車両が備える各種センサ等の情報を基に、車体質量状態を直接的あるいは間接的に示す情報である車体質量状態関連情報を取得する機能部であり、上記S21〜S23の処理を実行する部分に相当する。補正値決定部82は、標準目標値決定部96によって決定された標準目標値を補正するための補正値を決定する機能部であり、上記S24〜S26の処理を実行する部分に相当する。詳しくは、S24の処理を実行する部分がバウンシング補正値決定部90と、S25の処理を実行する部分がピッチング補正値決定部92と、S26の処理を実行する部分がローリング補正値決定部94とされている。制御モード決定部84は、各種センサ等の情報に基づいて車両走行状態等を推定し、その推定に基づいて、下記の5つの制御モードの中から、実際に行う個別の制御モードを決定する機能部であり、上記S3〜S6の処理を実行する部分に相当する。個別モード制御部86は、a)あおり制御,b)ごつごつ感応制御,c)アンチダイブ制御,d)アンチスクワット制御,e)アンチロール制御のそれぞれに対応して5つ設けられている。それぞれの個別モード制御部86が備える標準目標値決定部96は、制御モードに応じて、4輪のそれぞれに対応するアクチュエータの各々の標準目標値を決定する機能部であり、上記S31を実行する部分に相当する。また、アクチュエータ制御部98は、標準目標値決定部96によって決定された標準目標値と補正値決定部82によって決定された補正値とに基づいてアクチュエータ36の各々に対する実際の制御に用いる制御目標値を決定し、その制御目標値に基づいてアクチュエータ36の各々を制御する機能部であり、上記S32〜S34を実行する部分に相当する。データ・プログラム格納部88は、上記減衰力調節制御プログラムや、減衰力調節制御にもちいられる各種データを格納する機能部であり、当該ECU70が備えるコンピュータのROM等の一部を含んで構成されている。特に、既知データ格納部100は、補正値の決定の際に利用される標準状態における車体質量M0等の前記既知データを格納する部分とされている。
本発明の実施例である車両用サスペンション制御装置が車体質量状態に応じた減衰力調節制御を行う際に依拠する車体の振動モデルを示す概念図である。 本実施例のサスペンション制御装置によって制御される車両用サスペンションシステム全体のハード構成を示す斜視図である。 図2に示すハード構成のうち、減衰力調節制御に関係の深い部分についてのブロック図を示す。 本実施例のサスペンション制御装置によって実行される減衰力調節制御プログラムを示すフローチャートである。 図4に示す減衰力調節制御プログラムの一部を構成する補正値決定ルーチンを示すフローチャートである。 図4に示す減衰力調節制御プログラムの一部を構成する個別制御ルーチンを示すスローチャートである。 本実施例のサスペンション制御装置の機能を模式的に示す機能ブロック図である。
符号の説明
32:懸架シリンダ 34:エアサスペンション装置 36:減衰力変更アクチュエータ 54:気体圧センサ 70:サスペンション電子制御ユニット(車両用サスペンション制御装置) 80:車体質量状態取得部 82:補正値決定部 84:制御モード決定部 86:個別モード制御部 88:データ・プログラム格納部 90:バウンシング補正値決定部 92:ピッチング補正値決定部 94:ローリング補正値決定部 96:標準目標値決定部 98:アクチュエータ制御部 100:既知データ格納部

Claims (8)

  1. 車輪の各々に対して設けられたサスペンション装置の各々の減衰力を変更するためにそれらサスペンション装置の各々に設けられた減衰力変更アクチュエータの各々を制御する制御装置であって、
    車体質量状態が標準状態である場合における前記減衰力変更アクチュエータの各々の制御目標値である標準目標値を決定する標準目標値決定部と、
    車体質量状態を直接的あるいは間接的に示す情報である車体質量状態関連情報を取得する車体質量状態関連情報取得部と、
    その車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量状態関連情報に基づいて、車体剛体振動の減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように、前記標準目標値を補正するための各サスペンション装置に共通の補正値を決定する補正値決定部と、
    前記標準目標値決定部によって決定された標準目標値と前記補正値決定部によって決定された補正値とに基づいて前記減衰力変更アクチュエータの各々の制御目標値を決定し、その制御目標値に基づいてそれら減衰力変更アクチュエータの各々を制御するアクチュエータ制御部と
    を備えた車両用サスペンション制御装置。
  2. 前記補正値決定部が、車体を1つの剛体とみなした振動モデルに基づく関数を用いて、前記車体質量状態関連情報取得部が取得した車体質量状態関連情報に基づいて前記補正値を算出するものである請求項1に記載の車両用サスペンション制御装置。
  3. 前記補正値決定部が、車体のバウンシングに対する制御において用られる前記補正値であるバウンシング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのバウンシング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するバウンシング補正値決定部を備えた請求項1または請求項2に記載の車両用サスペンション装置。
  4. 前記バウンシング補正値決定部が、前記バウンシング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるバウンシング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるバウンシング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるバウンシング減衰係数との比の値に決定するものである請求項3に記載の車両用サスペンション制御装置。
  5. 前記補正値決定部が、車体のピッチングに対する制御において用いられる前記補正値であるピッチング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのピッチング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するピッチング補正値決定部を備えた請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
  6. 前記ピッチング補正値決定部が、前記ピッチング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるピッチング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるピッチング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるピッチング減衰係数との比の値に決定するものである請求項5に記載の車両用サスペンション制御装置。
  7. 前記補正値決定部が、車体のローリングに対する制御において用いられる前記補正値であるローリング補正値を、前記車体剛体振動の減衰比としてのローリング減衰比が車体質量状態によらず概ね一定となるように決定するローリング補正値決定部を備えた請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の車両用サスペンション制御装置。
  8. 前記ローリング補正値決定部が、前記ローリング補正値を、車体剛体振動の減衰係数であるローリング減衰係数についての比の値であって、現実の車体質量状態におけるローリング減衰係数と車体質量状態が標準状態である場合におけるローリング減衰係数との比の値に決定するものである請求項7に記載の車両用サスペンション制御装置。
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